JPS6224021B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は塩基性リン酸カリウム亜鉛系化合物を
有効成分とする無公害の防錆顔料に関するもので
ある。 従来、防錆顔料として、最も代表的なものとし
て鉛丹、あるいはジンククロメートが広範囲に使
用されている。これ等の防錆顔料は極めて優れた
防錆力を示すが、その組成中に有毒金属である
鉛、クロムなどを含有しているためにその毒性が
最近問題として取り上げられ、これに対する新し
い低毒性あるいは無公害性の防錆顔料の開発が要
請されていた。この要望に応じて無公害性の防錆
顔料として多くの提案がなされている。 これまでに無公害防錆顔料として(a)金属縮合リ
ン酸塩系例えば縮合リン酸アルミニウム、(b)金属
リン酸塩系例えばリン酸ケイ素、リン酸チタニウ
ム、(c)金属亜リン酸塩系例えば亜リン酸亜鉛、バ
リウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩、(d)金属
次亜リン酸塩系例えば次亜リン酸カルシウムまた
は次亜リン酸鉄、および(e)金属モリブデン酸塩例
えば亜鉛酸、カルシウム塩など数多くの提案がな
されたが、これらの無公害防錆顔料は、防錆力が
鉛系、クロメート系に及ばず、防錆顔料として決
定的なものではない。従つて、これらの提案され
た顔料は必要は防錆性を得るために２〜３種組合
わせて使用さえされているのが現状である。 本発明者等は無公害防錆顔料の研究を続けてい
たところ亜リン酸カリウム亜鉛系化合物が白色で
かつ優れた防錆性を示す顔料であることを見出し
既に特許出願（特願昭56−180316号、特開昭58−
84109号）したが、更に開発していたところ新規
な塩基性リン酸カリウム亜鉛系化合物が同じくす
ぐれた防錆性があることを知見し本発明を開発し
た。すなわち、本発明は一般式ZnO・lK₂O・
mP₂O₅・nH₂O〔式中ｌ＝0.01〜0.5、ｍ＝0.13〜
0.5およびｎ＝０〜２を表わす〕で示される塩基
性リン酸カリウム亜鉛化合物からなる防錆顔料で
ある。 本発明にかかわる塩基性リン酸カリウム亜鉛系
化合物は上記モル比の範囲内で変化する組成にお
いて、それぞれ異つたＸ線回折パターンを示し、
いずれもJCPDS（Joint Committee on Powder
Diffraction Standards）には認められない新規
化合物である。 化学物質としては、例えば種々のモル比の異つ
た塩基性リン酸カリウム亜鉛（xZnO・
yKZnPO₄）、リン酸カリウム亜鉛と塩基性リン酸
カリウム亜鉛との複塩、リン酸カリウム亜鉛とリ
ン酸亜鉛との複塩、塩基性リン酸カリウム亜鉛と
リン酸亜鉛との複塩等が考えられるが、防錆顔料
としては上記化合物は勿論、それらの化合物ある
いは遊離の酸化亜鉛等が上記のモル比内において
混合物状態のものであつてもよい。 即ち、上記の一般式で示される化学組成の物質
は極めて防錆作用にすぐれ、それ以外の組成のも
の、例えば中性のリン酸カリウム亜鉛あるいは酸
性のリン酸カリウム亜鉛系化合物は防錆作用に劣
るか殆んで期待できない。 本発明にかかわる防錆顔料は原理的には、次式
の反応式 aKOH＋bZnO＋cH₃PO₄ →ZnO・lK₂O・mP₂O₅・nH₂O↓ （式中ａ、ｂ、ｃは反応生成物のｌ、ｍ、ｎに相
当する任意の定数を表わす） によつて生成する。 上記反応において、使用できる原料のうち亜鉛
原料としては、例えば酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭
酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸水
素亜鉛、活性亜鉛華等の酸化亜鉛又はそれを生成
させうる亜鉛化合物、カリウム原料としては、酸
化カリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム、
リン酸水素カリウム等の酸化カリウム又はそれを
生成しうるカリウム化合物およびリン酸原料とし
ては、リン酸、リン酸亜鉛、リン酸水素亜鉛、リ
ン酸カリウム、リン酸水素カリウムなどのリン酸
又はそれを生成しうるリン酸化合物が適当であ
る。なお、他の原料として上記以外の塩類例え
ば、硫酸亜鉛、硫酸カリウム、リン酸ナトリウム
などとの反応によつてもリン酸カリウム亜鉛は生
成しうるが、副生する塩類の分離および洗浄が必
要となるので製造工程上好ましくは上記の原料を
用いる方がよいが、特に他の原料が使用できない
というものではない。 本反応を行うに当り原料の種類や、反応装置の
如何によつて種々の混合反応が採用されるので所
望の方式を適宜設定することができるが、例えば
代表的には酸化亜鉛を分散させた水酸化カリウム
水溶液（Ａ液）にリン酸（Ｂ液）を適下する方法
あるいはＡ液とＢ液とを同時に接触混合させる方
法、酸化亜鉛水性スラリーにリン酸および水酸化
カリウム水溶液を同時又は個別経時的に添加する
方法、又はリン酸亜鉛、リン酸混合水溶液に水酸
化カリウムを添加する方法などがあげられるが必
ずしも上記方法に限定されるものではない。また
この反応はバツチ式、連続式のいずれも可能であ
り、反応装置によつては通常の撹拌混合、スタテ
イクミキサーでの混合、剪断混合あるいはそれら
の組合せにより均一な混合反応を行わせる。 反応は、通常は常圧下で行なわれ、特に加圧す
る必要はない。反応温度は通常、常温から約100
℃の範囲で行なわれ、特に冷却する必要はない。
しかし反応速度は温度に比較するので反応の完結
までに室温では約10時間、100℃では約１時間を
要する。 反応系原液の滴下速度は反応温度が低いときに
はゆつくりと、反応温度が高いときには早くてよ
い。但し、早急に調合すると粗い粒子が出来、湿
式ボールミル等で粉砕する必要が生ずる。 反応系原液は分散液又は水溶液であるが、その
濃度は如何なる濃度でもよいけれども極度に低濃
度の場合には濾液が多量になり、又、高濃度の場
合には反応液の充分な撹拌が困難になるので通常
の沈澱反応における常識的濃度を選定することが
望ましい。 反応は充分に撹拌をしながら行なわれるので、
それに適する撹拌機と反応容器を用いるのがよ
い。 このような適宜の反応条件下で、必要に応じて
加熱、撹拌を行ない完全に反応が終了した後、常
法により濾過して沈澱を分離し、乾燥、粉砕して
製品とする。製品は特に水洗の必要はなく、又、
乾燥温度は一般に100〜250℃で行なうのがよい。 分離濾液中には塩基性リン酸カリウム亜鉛が溶
解度の量だけ含有されているために次回の製造に
用いる原料であるカリウム化合物の溶解、又は亜
鉛化合物の分散懸濁に使用する。このようにして
得られた塩基性リン酸カリウム亜鉛系化合物は白
色の製品で、適切な反応条件を選ぶことによつ
て、特別に粒度の調節をしなくとも顔料として使
用可能な適宜の粒度の製品が得られる利点があ
る。 又本発明の塩基性リン酸カリウム亜鉛系化合物
は原料のカリウム化合物、亜鉛化合物及びリン酸
を適宜に選定することにより、塩基性リン酸カリ
ウム亜鉛系化合物を必ず含有した白色の製品を得
ることが出来る。なお防錆顔料としては、いずれ
の組成又はいずれの方法によつても同様の効果を
示すことから、主として塩基性リン酸カリウム亜
鉛系化合物に起因する作用と考えられる。従つ
て、如何なる組成又は製法の態様を選択するか
は、原料の種類や製品の具体的用途に応じて適宜
決定すればよい。 次に、本発明の効果を列挙すると下記の通りで
ある。 (1) 本発明の塩基性リン酸カリウム亜鉛系化合物
含有物は無公害、低毒性の白色の防錆顔料とし
て有利な利用価値を有し、白色であるために自
由に調色が出来るので防錆効果のある調合ペイ
ントの製造が可能である。 (2) 塩基性リン酸カリウム亜鉛系化合物含有物を
構造物用塗料である乾性油を用いたJIS塗料と
して使用する場合、従来の鉛系の防錆顔料配合
品に比べて防錆力は同等であり、特にクロム酸
系の防錆顔料より優れた防錆力を有する。 (3) 本発明の製品は無公害、低毒性であるため
に、特に食品分野において有用であり、食品関
係の工場又は冷蔵庫、冷凍庫、電子レンジ、食
品用ケースその他廚房用品等の食品関係機器の
防錆顔料として、或いは子供用の玩具用防錆塗
料用として利用できる。 (4) 合成樹脂の添加剤、触媒及び還元剤としての
利用も可能である。 次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに
具体的に説明する。 実施例 １〜９ 原料として酸化亜鉛（亜鉛華１号）、水酸化カ
リウム、85％リン酸を使用し、表１に示すモル比
により下記の方法で防錆顔料を製造した。 回転数最高3000r.p.mの翼型撹拌機を取り付け
た10のステンレス製反応槽に水４を入れ表１
に示す所定量の水酸化カリウムを溶解させ、次い
で表１に示す所定量の亜鉛華を加えて分散させる
（Ａ液）。これに５モル／に調製したリン酸水溶
液（Ｂ液）を約１時間30分かけて表１に示す所定
量を適下する。Ｂ液適下後65℃に加温し、約１時
間撹拌を続け反応を完結させた後、濾過して固液
を分離し、ケーキを120℃で乾燥させた後粉砕し
て防錆顔料を得た。得られた製品成分を併せて表
１に示す。 実施例 10〜15 原料として酸化亜鉛（亜鉛華１号）、リン酸水
素二カリウム、85％リン酸を使用し、表２に示す
モル比により下記の方法で防錆顔料を製造した。 亜鉛華の表２に示す所定量を水５に分散させ
る（Ａ液）。リン酸水素二カリウム及び85％リン
酸の表２に示す所定量を５の水に溶解させる
（Ｂ液）。上記のＡ液及びＢ液をそれぞれ50℃に加
温せしめ、定量ポンプで各々30ml／分で、ラボポ
ンプに送り込み、ポンプ中で反応を行なわせる。
ポンプの出口から撹拌機を取り付けた２の滞溜
槽に送る。反応の終つた順から常法により固液を
分離し、120℃で乾燥させたのち粉砕して防錆顔
料を得た。得られた製品成分を併せて表２に示
す。 実施例 16〜20 原料として酸化亜鉛、水酸化亜鉛、水酸化カリ
ウム、75％リン酸を使用し、表３のモル比により
下記の方法で防錆顔料を製造した。 酸化亜鉛（亜鉛華１号）を表３に示す所定量を
撹拌機を備えた10の反応槽中で水４に分散さ
せ、次いで水酸化カリウムを溶解させる（Ａ
液）。75％リン酸および水酸化亜鉛（試薬）の表
３に示す所定量に水を加えて４とする（Ｂ
液）。 Ａ液を室温中で撹拌し、Ｂ液を約50ml／分の速
度でＡ液中に滴下する。反応中発熱するが、冷却
することなく滴下を続ける。滴下終了後85℃に加
温して約30分間撹拌を続け反応を終結させた後、
反応物の半量づつ10の磁製ボールミル中で３時
間粉砕後、常法により固液を分離、乾燥、粉砕し
て防錆顔料を得た。得られた製品成分を併せて表
３に示す。 比較例 １〜４ 実施例１〜９と同様の原料を用いて、表４に示
す原料モル比により実施例１〜９とと同様の方法
で反応を行い防錆顔料を得た。得られた製品成分
を併せて表４に示す。 但し、反応を完結させた後、固液を分離させず
に水溶液を蒸発乾固させて比較例用顔料とした。

【表】

【表】

【表】

【表】 次に、上記の各防錆顔料の防錆試験結果を示
す。 ◎塗料化方法 下記の配合組成で塗料化を行つた。 防錆顔料 3.0重量部 三酸化チタン（ルチン型） 12.0重量部 沈降性硫酸バリウム 32.0重量部 ビヒクル（注１） 40.0重量部 ミネラルスピリツト 12.0重量部 ドライヤー（注２） 1.0重量部 但し 注１ ベツコゾール1334〔大日本インキ化学(株)
製〕不揮発分50％、中油アルキツド樹脂 注２ 液状ドライヤー（JISK−56911種Ａ） 上記の配合原料とガラスビーズ〔東芝硝子(株)製
GB603〕100ｇを200mlのマヨネーズビンに入れ、
ペイントシエーカーを用いて１時間分散させて塗
料化した。 ◎防錆試験 上記の方法で製造した塗料を冷間圧延鋼板
〔日本テストパネル工業(株)製JISG3141SPCC−
SB、1.0×70×150mm〕にバーコーターを用い
て１回塗りし、乾燥後の膜厚が15μｍになるよ
うにする。この後上塗りをすることなく５％食
塩水による塩水噴霧試験〔スガ試験機(株)製、塩
水噴霧試験機、ST−ISO−２を使用〕を行う
ことにより防錆能力の性能評価をした。防錆試
験評価の結果を表５に示す。

【表】 【図面の簡単な説明】

第１図〜第９図は、本発明の塩基性リン酸カリ
ウム亜鉛系化合物のＸ線回折図を示す。 第１図……実施例７、第２図……実施例８、第
３図……実施例９、第４図……実施例14、第５図
……実施例15、第６図……実施例17、第７図……
実施例18、第８図……実施例19、第９図……実施
例20。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 一般式ZnO・lK₂O・mP₂O₅・nH₂O〔式中ｌ
   ＝0.01〜0.5、ｍ＝0.13〜0.5およびｎ＝０〜２を
   表わす〕で示される塩基性リン酸カリウム亜鉛系
   化合物からなる防錆顔料。