JPS6218339Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は回転切削工具において、切刃構造を改
良することにより切刃損傷を防止して切削安定性
を向上し、回転軸方向の竪送り及び回転軸と直角
方向の横送り両用の切削性能を良好にしたもので
ある。金型のキヤビテイ加工等に使用されるボー
ルエンドミルの切削は一般にその加工条件が種々
変化し、竪送り及び横送り切削を同時或は別個に
行う等複雑であるため、従来のボールエンドミル
ではこれを充分満足させられない。すなわち球状
の底刃を持つボールエンドミルでは外径部より回
転中心部に向かうに従つて切削速度が零に近づ
き、回転中心部では切屑排出も円滑でないため、
特に回転中心部の切刃損傷が生じやすく長時間の
切削に耐え得ず経済的切削が困難な場合が多い。

本考案は一つの切削工具を用いて、竪送り切削
において回転中心部の切刃の損傷を防止し、且つ
横送り切削においても安定にして能率的な切削を
可能ならしめる如く、円形板状切刃の取付方法を
改善考案したものである。次にこれを実施例の図
によつて説明する。第１図、第２図および第３図
において１は円筒状回転工具本体であり、２はそ
の回転軸で３は円形板状のスローアウエイチツプ
である。４はスローアウエイチツプを取付ける溝
であり、該チツプ３はその中央取付け穴を介して
止めねじにより、前記溝４内に着脱可能に取付け
られている。またスローアウエイチツプの円形板
面と回転軸とのなすアキシアルレーキ角をθとす
る。

本考案において切削安定性を改善するため円形
板状チツプの取付位置は、円形板面の中心０が回
転軸２よりａなる距離に取付ける。第３図はθ＝
０の場合に、工具を回転させた状況を示す。

Ｄは切刃の外周のえがく軌跡円の直径、ｄはチ
ツプ切刃を構成する円形の直径で、０はその円形
の中心点、Ａ，Ｂ，Ｃは竪送りの切削において切
削に関与する切刃でＡは外周部、Ｂは切刃の尖端
部Ｃは回転中心部で切削速度が零の位置である。

第３図で切刃Ａ，Ｂ，Ｃが180゜回転して反対
側に来た場合それぞれA′，B′，Ｃとなりチツプ
の中心点０は０′に来る。竪送りの場合、Ｃ点に
おいて被削材より受ける軸方向の切削反力をＴと
すればＣ点の切刃稜の受ける力は円形切刃の中心
０に向かう垂直圧力T₁と接線方向のT₂に分解し
てその作用を考えると、従来のボールエンドミル
においては、その回転軸付近の切刃と切削反力の
方向が略々垂直の関係にあるため、また円形チツ
プを用いたボールエンドミルの場合（実開昭53−
51686号公報参照）にも、回転中心軸とチツプ中
心との距離が、せいぜい0.2mm程度しか離れてい
ないために切削反力Ｔがすべて切刃損傷に関与し
切刃の損傷を促進している。

これに反し本考案においては、回転軸付近の切
刃方向と切削反力方向が傾斜した関係にあるの
で、切刃損傷を著しく軽減する効果を示す。

これを詳述すれば 第３図においてＴとT₁のなす角をαとし線分
００′と回転軸２の交点C′とすれば次の関係が成
立する。

従つて(1)より 従つて切刃の損傷の主原因であるT₁は(2)式より
ａを大きくとることにより小さくなるから、切削
条件に応じてａを選定すれば回転軸付近の切刃損
傷を軽減し得ることが明らかで、これが従来困難
であつた、竪送り切削の性能を向上した本考案の
著しい効果である。

本考案の場合、チツプの大きさ、取付け位置等
については、次のような実験をした。機械は立形
３番フライス盤を用い、被削材はS50C，FC20，
SKD61，SUS304の中から適宜選択し、使用工具
径は27mm（シヤンク径25.0mm）と45mm（シヤンク
径42.0mm）の２種類で、仕上みがき丸棒の先端に
チツプ取付け溝を設け種々のサイズの研摩丸チツ
プ（超硬合金、材種P30相当）をロー付接着した
第１図乃至第２図に類似の簡易ロー付回転工具を
複数製作し、縦送り突込み作業と、横送りＲ付け
作業とを乾式切削にて種々の切削条件のもとで行
つた。

すなわち被削材の種類、切削条件等を変化させ
た試験の結果ａおよびθは次の範囲が適当であ
る。

ａ＝１／３ｄ〜１／５ｄ …(3) θ＝−10゜〜＋15゜ 且つ円弧状切刃稜は必ず回転軸２付近を通る如
くする。尚、チツプ直径ｄと切刃の外周のえがく
軌跡円の直径Ｄとの間には(3)式より ｄ≒0.6D〜0.7D（５／７Ｄ） の関係が導き出される。

ここで、これらの数値を選んだ理由を説明す
る。

(イ) θ＝−10゜〜＋15゜ θが−10゜を越えて負に大きくなると切れ味
が悪くビビリやすくなり、一方 ＋15゜を越えて大きくなると円弧稜が工具回
転軸付近を通過しているので、外周部の切刃Ａ
では芯下り量が大きくなり、チツプ底面稜が被
削材をこすらないために、その分チツプの逃げ
角を大きく取る必要があり、このため切刃強度
の低下よりチツピングしやすくなつたので、θ
をこの範囲とした。

(ロ) ａ＝１／３ｄ〜１／５ｄ ａが1/3ｄより大きくなると、竪送り切削時の
切刃長さ（CBA部）が大きくなり過ぎて切削抵
抗の増加よりビビリが生じやすくなり、回転中心
部の切刃Ｃでピツチングや欠損が生じやすくな
る。またａが1/5ｄより小さくなると、竪送り切
削時に切刃尖端部である切刃Ｂを境にして外周側
切刃BA部に対する内周側切刃BC部の長さが短く
なりすぎ、外周側切刃BA部による丸チツプを回
転軸２方向へ押し付ける径方向の力のみが大きく
なりすぎて、送り方向と直角の径方向での切削バ
ランスが極端に悪くなり、ビビリを生じやすくな
る。また横送り切削時には切刃尖端部の切刃Ｂ
は、切削速度が零の回転中心軸付近に近づき、切
屑圧着からのピツチングを含めた刃先損傷を生じ
やすくなつたからである。

上記に対し、本考案の工具で横送り切削を行う
場合には、その切削に関与する切刃は円形稜AB
の部分であつて、AB上の各点はすべて回転軸よ
りかなり離れた点であるので、切削速度が零付近
で発生し易い切屑圧着等の刃先損傷および切屑の
流れ不良で生じる刃先損傷が著しく軽減すること
ができ、従来のボールエンドミルにおいて回転軸
付近の切刃が損傷し易い欠点が解消されたことも
本考案の著しい効果である。

以上述べた竪送りおよび横送り切削における本
考案の効果は、切刃ABおよびBCの切刃を直線状
にした場合も一見類似の効果を期待しうる如く錯
覚されるが直線部と直線部の境界角部が損傷を生
じ易いため、この部分を円弧状にする等の配慮が
必要となり形状的に複雑になるため製造の難易と
製造費用について比較すれば円形切刃の採用は数
等優れたものであることは明らかである。

以上説明した如く本考案は竪送りおよび横送り
切削両用の工具において、回転軸付近の切刃損傷
を防止するためスローアウエイの円形または円弧
板状の切刃の取付け位置を、その直径の1/3〜1/5
程度、工具の回転中心軸から偏位させて取付けた
点を特徴とし、特に竪送り切削においては従来の
ボールエンドミルで到達し得ない性能を発揮する
と共に、横送り切削においても切削安定性を確保
し、複数種類にわたる加工にあたつて刃先損傷防
止による刃先の長寿命保持に効果をあげたばかり
でなく、単純な形状のスローアウエイの円形板状
の切刃は、製造も容易で寸法精度並に仕上精度の
高く性能の良い製品を安価に供給し、且つ工具寿
命の延長を期待しうる利点がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案回転切削工具の一実施例を示す
正面図。第２図はその側面図。第３図はその機能
を示す解説図である。 １……本体、２……回転軸、３……スローアウ
エイチツプ、４……取付溝。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 円柱状をなす回転切削工具本体の尖端に１個
   の円形又は円弧板状の刃をその回転軌跡面より
   も工具本体が内側にくるように取付け、その円
   形又は円弧板面が切削掬い面となり円弧稜が切
   刃となる如くし、その際円形又は円弧板面の中
   心の位置は、工具本体回転軸より前記円形また
   は円弧板の直径の1/3〜1/5距離を置くと共に、
   その円弧稜の一部は工具回転軸付近を通過する
   如く取付けることにより竪送りおよび横送り両
   用の切削性能を良好にしたことを特徴とする回
   転切削工具。 ２ 切刃の円形又は円弧板面の工具本体回転軸に
   対するアキシアルレーキ角を、−10度乃至＋15
   度の範囲としたことを特徴とする実用新案登録
   請求の範囲第１項記載の回転切削工具。