JPS6217706B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は血液学分野における重要な検査項目で
あるヘマトクリツト値を測定するための積層一体
型ヘマトクリツト値測定材料に関するものであ
る。 よく知られているように、血液は血漿と、その
中に懸濁された有形成分、即ち赤血球、白血球、
血小板などから成り立つている。全血液に対して
赤血球が占める容積のパーセントをヘマトクリツ
ト値と称し、貧血の程度を知るための重要なデー
タとなる。従来ヘマトクリツト（以下、HCTと
略記する。）値を測定する方法として遠心沈澱
法、電均抵抗法、比重測定法などが公知の方法と
して利用されているが、いずれも測定に時間がか
かる上、操作が面倒であつたり、湿式法であるた
め手や装置を汚ごしたりする欠点があつた。 本発明の目的は微小容量の全血を１滴点着する
だけの操作でHCT値測定を可能にする簡易ドラ
イタイプの測定材料を提供することである。 本発明は、 水不透過性平面支持体の上に、バインダー層、
および平均孔径0.1μｍから2.5μｍの範囲の非繊
維質多孔性膜または100双から200双相当の範囲の
空隙を有する繊維質多孔性材料からなり、親水性
表面を有し、層の内部の空隙の表面または層の内
部が親水性で、かつ水に不溶性である多孔性展開
層がこの順に一体に設けられてなるヘマトクリツ
ト値測定材料である。 以下においては本発明の一具体例である添付図
面に記載のHCT値測定シートに基づいて設明す
る。本発明のHCT値測定シートの基本的構造
は、第１図に示した如く、水不透過性支持体１の
上に、多孔性展開層３が積層されて一体化したシ
ート状物、または第２図に示した如く疎水性平面
支持体１の上にバインダー層２と多孔性展開層３
が積層されて一体化したシート状物である。バイ
ンダー層２は、通常の製造工程において、疎水性
支持体１と多孔性展開層３を流体接触状態で接着
するのに好ましいバインダー層である。 HCTを測定するときは、本発明HCT値測定シ
ートの鳥かん模型図第３図に示したように、多孔
性膜展開層側Ａの方向から、シート上に全血を点
着する。全血は５〜100μの間の量、たとえば
10μが適当量である。点着された血液はすぐに
同心円状に親水性の多孔性展開層中に滲みこみな
がら水平方向に展開され、数10秒以内に赤血球を
含む着色した同心内円５と着色のうすい同心外円
６が形成され展開が終了する。ヘマトクリツト値
の算出は第３図の展開外円７の直径又は、展開外
直径と内直径８、をＡ方向又はＢ方向から実測
し、予め用意された換算表を用いて直ちにHCT
値を求めることができる。 本発明のHCT値測定シートの展開層には、繊
維質または非繊維質の親水性表面を有し多孔性展
開層の空隙の表面または多孔性展開層の内部が親
水性で水に不溶性である多孔質膜が用いられる。
多孔性の程度は、親水性の程度、多孔性の状態、
孔の形状、孔の分布の仕方などによつて異なるの
で一概には決められないが、非繊維質の多孔性材
料からなる場合にはその平均孔径が約0.1μｍか
ら約2.5μｍの範囲、好ましくは約0.4μｍから約
２μｍの範囲であり、繊維質の多孔性材料からな
る場合の例として、織物（ブロード）の場合約
100双から約200双の範囲、好ましくは約120双か
ら約160双の範囲である。 かかる親水性の多孔性展開層としては、特公昭
48−2999号、特開昭49−53888号、特開昭52−
131786号などに開示されたメンブランフイルタ、
メンブランフイルタを親水化処理したものやポー
ラス粉体膜などの非繊維質多孔質膜、特願昭54−
72047号に記載の親水化処理した織物、ガラス繊
維、紙などからなるシート状物などを用いること
ができるが、中でも後述の如き特性のメンブラン
フイルターが特によい。メンブランフイルターを
用いる場合その孔径は約0.1μｍから約３μｍの
範囲のものを用いることができ、好ましくは約
0.4μｍから約２μｍの範囲である。 多孔性展開層の厚さは10μｍ以上なら特に制限
はないが、使用液量、測定精度、操作性などの観
点からして、約30μｍから約３mmの範囲、好まし
くは約50μｍから約１mmの範囲、特に好ましくは
100μｍから500μｍの範囲のものが用いられる。 本発明に用いられる多孔性展開層は単一な素材
よりなる均一構造のものでもよいが、異なる物性
のものを組み合せて、性能を向上させたものでも
よい。 水不透過性平面支持体またはバインダー層の上
に多孔性展開層を一体に形成する方法としては、
予め既成の多孔性膜や織物をラミネートして一体
化する方法と、多孔性展開膜を形成する能力のあ
る溶液または分散液を水不透過性平面支持体また
はバインダー層上に塗布、乾燥することによつ
て、多孔性展開層を一体に形成する方法とがある
が、いずれも適宜利用することができる。 本発明のヘマトクリツト値測定シートに用いら
れる多孔性展開層はその試料点着面と多孔性展開
層の空隙の表面または多孔性展開層の内部の親水
性が高く、血液が点着されたとき、点着平面内で
ほぼ等方的に血液が展開される性能を有すること
が必要である。かかる性能を発揮するためには、
多孔性素材を親水化処理する必要がある。親水化
処理の方法とは、カチオン、アニオン、ノニオン
性界面活性剤や可塑剤など親水性化合物、コロイ
ド（例、ゼラチン）を用いる吸着処理、酸、アル
カリ処理による加水分解などよる親水化法、親水
性化合物との反応による化学的親水化法、コロナ
処理、火災処理、紫外線照射、放電加工、蒸着処
理、吹き付け処理、などがある。 PH緩衡液、抗凝固剤、抗溶血剤、酸化防止剤、
酸化剤などヘモグロビンの色相を安定させる試
薬、色素、顔料、無機塩、アルデヒド、イソシア
ネート、過酸化水素などの赤血球膜改質試薬など
を多孔性展開層中に加えておくことも精度の向上
や、読み取りなど操作性の向上に役立つ。 本発明のHCT値測定シートを形成する材料
は、水不透過性平面支持体として金属や材木、
紙、ガラスなどの板状のものは又はポリエステル
（例、ポリエチレンテレフタレート、ビスフエノ
ールＡのポリカルボネート）、セルロースエステ
ル（例、セルロースジアセテート、セルロースト
リアセテート、セルロースアセテートプロピオネ
ート）、ポリメチルメタクリレートなどの合成樹
脂フイルムなどが用いられる。水不透過性平面支
持体の厚さは約10μｍから約３mm、好ましくは約
20μｍから約１mm、最も好ましくは約50μｍから
約500μｍの範囲である。これらの中で透明な平
面支持体は、展開円の直径実測をHCT値測定シ
ートのいずれの側からも行うことができるので便
利である。 本発明のHCT値測定シートは水不透過性平面
支持体の上に親水性の多孔性展開層を設けて一体
にした構成よりなるが、多孔性展開層を支持体上
に流体接触状態で均一に接着させる機能を果たす
と同時に、多孔性展開層による血液試料の展開を
適切な範囲に調節する機能を果すためにバインダ
ー層を用いることができる。バインダー層は疎水
性バインダーを用いることもできるが、HCTを
精度よく測定するには親水性バインダーを主体と
して用いることが望ましい。多孔性展開層上に点
着された血液は多孔性展開層中で均一展開される
と同時に親水性であるときにはバインダー層に浸
透する。バインダー層は本質的に半透膜の特性を
有しており、水分及び低分子化合物は、バインダ
ー層中に拡散、浸透していくが、赤血球、白血
球、血小板などの粒子はバインダー層中には浸透
せず、多孔性展開層中及び多孔性展開層とバイン
ダー層の界面に均一に拡がる。アルブミン、グロ
ブリンなどの高分子量化合物は、バインダー層の
マトリツクスの細かさの程度に応じてバインダー
層中に浸透する場合としない場合とがある。 バインダー層に用いられる疎水性バインダーと
しては、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリメ
チルメタクリレート、塩化ビニル−酢酸ビニル共
重合体、セルロースエステルなどの熱可塑性樹脂
やポリウレタン、メラミンなどの熱硬化性樹脂が
用いられる。 バインダー層に用いられる親水性バインダーと
しては、ゼラチン、アガロース、デキストランな
どの天然高分子物質、ポリビニルアルコール、ポ
リアクリルアミド、ポリアクリル酸などの親水性
合成高分子物質などの広い範囲の物質を利用でき
るが、水に対する膨潤性、ゲル形成能が優れてお
り、製造、接着、吸水などの性質が良好な写真用
ゼラチンがもつとも好ましい。 バインダー層には、展開調節の他、ヘマグロビ
ンの色相の安定化、浸透拡散、析出防止などを目
的として、各種の添加剤を加えることができる。
これらの添加剤としては、ノニオン、カチオン、
アニオン系界面活性剤、可塑剤、無機塩、有機酸
塩、PH緩衡剤、顔料、色素、固体微粒子繊維、酸
化剤、還元剤、酸、アルカリ、など低分子、高分
子の化合物がある。展開直径の読み取りを容易に
する為に、血清のPHで呈色又は消色するPH指示薬
やアルブミンなどの血清成分と反応して呈色する
ブロモクレゾールグリーンなどの呈色試薬を加え
ることもできる。 バインダー層は接着性の向上、読みとりやすさ
の向上、カールの防止などを目的として、場合に
よつては２層又はそれ以上の層に分けることもで
きる。バインダー層膜厚は0.1μｍから１mm、好
ましくは１μｍから100μｍ、特に好ましくは５
μｍから50μｍの範囲である。 本発明のHCT値測定シートは、その多孔性展
開層の上に血液を点着した結果形成される、血液
の展開円の直径を測定するだけで、HCT値を知
ることができる方法をも提供するものである。 その原理は親水性の多孔性展開層が、その展開
性に於いて、検体の粘性すなわち血中の粒形成分
の含有率に大きく依存する性質を利用している。
この点に於いて前述した、特開昭49−53888号、
特開昭52−131786号及び特願昭54−72047号に記
載の血液化学分析用の多層一体型分析要素に用い
られる展開層の特性とは、異つた特性を有するも
のである。即ち、上述の多層−体型分析要素に用
いられる展開層の特性は、シート上に点着した液
量が一定であれば展開面積は一定となる特性を有
するものであることが、該要素が定量分析特性を
発揮するための必須の条件であつた。この場合検
液の粘性が多少異なつても展開面積は一定となる
必要があり、このような特性を獲保する為に種々
の工夫がなされている。 これに対し本発明のHCT値測定シートに用い
られる親水性の多孔性展開層の多孔性の程度が前
述の平均孔径または双数の範囲のものを用いるこ
とにより、血液に対する展開のしやすさが血液の
粘性に直接依存することが特徴である。粘性の低
い血液、すなわちHCT値が小さい血液は展開し
やすいので展開円の直径が大きく、粘性の高い血
液、すなわちHCT値が大きい血液は展開されに
くいので展開円の直径が小さいような特性を多孔
性展開層が有している。これは血液の粘性、すな
わちヘマトクリツト値に対して展開円の直径が負
の比例定数を持つ直接関係をもつことを意味す
る。本発明のHCT値測定シートを用いてHCT値
を測定するには、あらかじめ標準状態の血液の一
定量を用いて展開円の直径（または展開円の面
積）とHCT値との関係を測定して換算表または
検量線を作成しておき、HCT値が未知の血液試
料については、換算表または検量線作成に用いた
と同量の未知の血液試料を多孔性展開層に点着し
展開し、その展開円の直径またはその面積を測定
するだけでHCT値を知ることができる。 本発明のHCT値測定シートはまた、血液量を
正確に秤量しない場合にも実施できる点で大きな
特徴をもつている。血液は血球成分と血漿成分と
から成り立つており、本発明のHCT値測定シー
トの多孔性展開層の上に血液を付着して展開する
と、血液成分を含む展開部分を内円、血漿成分の
みよりなる展開部分を外円とする２重円が描かれ
る。この内円と外円の直径の比または面積比が血
液試料のHCT値と一定の関係にあることが見出
された。従つて、前述した試料の一定量を展開
し、展開直径を求める方法と同様、あらかじめ、
内円と外円の面積比あるいは直径比を求めて、
HCT値との間の検量線を求めておけば、血液量
を正確に秤量することなしにHCT値を知ること
ができる。 実施例 １ Ａ ヘマトクリツト測定シートの調製 ゼラチン用下塗り処理が施されている厚さ
185μｍの透明なポリエチレンフタレート
（PET）フイルム上に、ポリオキシエチレンノ
ニルフエノルキシエーテル（ノニオン界面活性
剤、日本油脂製HS210）0.2％、ゼラチン10％
を含む溶液を塗布し乾燥膜厚が15μｍのゼラチ
ンからなるバインダー層を形成した。上記塗布
膜を水にて湿潤させ、一方、0.5％（重量比）
の界面活性剤H210を含む平均孔径1.2μｍのミ
クロフイルター（富士写真フイルム製FM−
120）を圧着ラミネートして、ヘマトクリツト
値測定シートを調製した。 Ｂ 血液試料の調製 新鮮なACD保存血を遠心分離し、血球成分
と血漿成分とに分けたのち、両者を種々の割合
で混合した試料を調製した。それぞれの調製試
料について、アムコ遠心器（Ｅ−24）及びキヤ
ピラリ−ヘマトクリツト管を用いて、ヘマトク
リツト値を実測した。ヘマトクリツト値が０〜
70％の範囲わたる標準血液サンプルが得られ
た。 Ｃ 測定 Ａによつて調製したHCT値測定シートを30
mm×30mmのチツプに裁断した。Ｂによつて調製
したHCT値が０％〜70％の範囲で異なる血液
試料の10μをマイクロピペツトで採取し、
HCT値測定シート上に点着した。点着後およ
そ30秒後に赤血球を含む内円と血漿よりなる外
円とからなる２重の展開円が得られた。点着し
た面とは逆の透明PETフイルム側から展開円
の外径を測定した。外円の直径とＣよつて得た
HCT値との関係は第５図のごとく、展開円
（外円）の直径がHCT値と負の比例定数をもつ
直線関係にあることが確認された。 実施例 ２ 実施例1Aで作成し30mm×30mmの大きさに裁断
したHCT値測定チツプ上に実施例1Bで調製した
HCT値が７〜61％の範囲の血液試料の１滴（お
よそ20μ）を点着した。点着後30秒後に展開円
について赤血球を含む赤色の内径と血漿部分より
なる外径を測定し、その比を求めた。第１表に示
すような相関が得られた。展開円の内径／外径の
比とHCT値との間に１次の相関があることが確
認された。

【表】 実施例 ３ 実施例１で用いたと同じHCT値測定シートの
多孔性展開層の上に、抗凝固剤としてヘパリンを
用いて人の静脈より採血した新鮮血の10μを点
着した。30秒後に展開外円の直径を測定したとこ
ろ9.5mmであつた。第５図の検量線よりHCT値は
43％と算出された一方同じ血液試料を実施例1B
と同様の手段によりヘマトクリツト管を用い遠心
法で測定したヘマトクリツト値を求めたところ43
％であつた。本発明のHCT値測定シートを用い
て測定したHCT値と従来公知のヘマトクリツト
管を用いて遠心法で測定したHCT値とがよく一
致することが明らかになつた。 実施例 ４ 厚さ100μｍの透明PETフイルム上に感圧接着
性組成物が塗布されてなる巾18mmの市販の接着テ
ープ（日東電工製接着テープ）上に、0.2％のア
ルキルフエノキシポリエトキシエタノール（ノニ
オン界面活性剤、ロームアンドハース社製、トリ
トンＸ−405）を含浸して親水化処理した平均孔
径0.8μｍのミクロフイルター（富士写真フイル
ム製FM−80）を圧着ラミネートして、HCT値測
定シートを作成した。 このシートの上に実施例1Bで調製した標準血
液試料を点着し、展開外円の直径を測定した。遠
心法によつて測定したHCT値と、展開直径の間
には１次の相関が認められた。 実施例 ５ ゼラチン下塗層が設けられている厚さ180μｍ
の無色透明PETフイルムの上に実施例１と同様
な厚さ15μｍのゼラチンバインダー層を設けた。
ついでゼラチンバインダー層を水で一様に湿潤さ
せ、0.5％（重量比）のノニオン性界面活性剤
HS210を含む、太さ100双のPET紡績糸製で厚さ
約140μｍのブロード織物を圧着ラミネートし一
体化してヘマトクリツト値測定用シートを調製し
た。 実施例1Bと同様にして調製した標準血液試料
を用い、実施例1Cと同様にして２重の展開円の
外円の面積を測定したところ、第２表に示すよう
な数値が得られ、ヘマトクリツト値と展開円の面
積との間に相関があることが確認された。この関
係を検量線としてヘマトクリツト値を求められる
ことが明らかである。

【表】 【図面の簡単な説明】

第１図は水不透過性平面支持体の上に親水性の
多孔性展開層が一体に設けられてなるヘマトクリ
ツト値測定材料の一具体例であるヘマトクリツト
値測定シートの断面概念図である。第２図は水不
透過性平面支持体の上にバインダー層と親水性の
多孔性展開層がこの順に一体に設けられてなるヘ
マトクリツト値測定材料の一具体例であるヘマト
クリツト値測定シートの断面概念図である。第３
図は第２図で断面の概念が示されるヘマトクリツ
ト値測定シートを用いて血液をその多孔性展開層
に点着して展開した状態を示す鳥かん図である。
第４図は第３図に示されるヘマトクリツト値測定
シートの多孔性展開層において血液が展開された
状態を示す概念図である。 第１図ないし第４図において、１…水不透過性
平面支持体、２…バインダー、３…親水性の多孔
性展開層、５…展開円の内円、６…展開円の外
円、７…展開円の外円の直径、８…展開円の内円
の直径、Ａ…血液を点着する方向および展開円を
多孔性展開層側から観察・測定する方向、Ｂ…透
明な水不透過性平面支持体を用いた場合に支持体
側から展開円を観察・測定する方向を表わす。 第５図は実施例1Cで測定されたヘマトクリツ
ト値と展開円（外円）の直径との関係を示すグラ
フである。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 水不透過性平面支持体の上に、バインダー
   層、および平均孔径0.1μｍから2.5μｍの範囲の
   非繊維質多孔性膜または100双から200双相当の範
   囲の空隙を有する繊維質多孔性材料からなり、親
   水性表面を有し、層の内部の空隙の表面または層
   の内部が親水性で、かつ水に不溶性である多孔性
   展開層がこの順に一体に設けられてなるヘマトク
   リツト値測定材料。