JPS6139009B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は有用節足動物または有用軟体動物の重
量維持法に関する。 エビ類、貝類、イカ類等の有用節足動物または
有用軟体動物は古来より食品として親しまれてき
たが、沿岸漁業の長期的低落はこれらの漁獲量を
著しく低下させ、遠洋漁業または輸入によつてこ
れらの需要が満たされている。 また遠洋漁業においては漁業専管水域の実質的
施行により入漁料を支払う事となり、有用節足動
物または有用軟体動物のタンパク質を含めた栄養
を加工工程で減耗させる事は許されざる事となつ
た。 一方、遠洋漁業または輸入によつて得られる有
用節足動物または有用軟体動物は通常凍結保存に
よつて輸送され、解凍に際しては多かれ少なかれ
ドリツプの流出はまぬがれない。また解凍後、冷
蔵庫等で保存される様なものについてもウイープ
として流出する栄養成分等が−有用節足動物また
は有用軟体動物の保存経歴が凍結か非凍結かでウ
イープ量が著しく異なり−非常に多い。さらには
加熱の際、例えば煮熟等による重量低下も凍結保
存経歴をもつと著しい。すなわちドリツプ、ウイ
ープおよび加熱により多量に流逸するタンパク質
等の栄養を考えると、重大なタンパク質等の減耗
であり、資源の有効利用の立場から極めて憂うべ
き事であると言わざるを得ない。一方、後に実施
例をもつて詳しく述べられるが、100重量部の有
用節足動物または有用軟体動物が解凍、冷蔵静置
および加熱の各工程を経る事により40〜50重量部
にまで減少する事の経済的損失は計り知れない程
である。 この様な現況において、特に水産物加工業界で
は有用節足動物または有用軟体動物のドリツプを
可能な限り少なくするため凍結法や解凍法をいろ
いろと研究しているが、ドリツプの本質について
不明な点が多く残され、また加熱時の重量低下防
止についても経験的な煮熟法が採用されているに
過ぎず、有効な重量維持法の開発を強く要望して
いる。 従来、水産物のドリツプおよびウイープ防止に
は二価の金属イオンを与えてタンパク質の架橋結
合化による構造変化を計る法等が採用されるが、
有効性が乏しく必要以上にタンパク質を硬化させ
てしまう欠点がある。 加熱時の重量維持には食品表面上にフイルムを
形成する多糖類等の高分子化合物を用いる事があ
るが、殆んど形成フイルムが水溶性であるため効
果が明確でなく、経済的損失を補正できる程の効
果はない。 一方、通常の食品の重量維持にはポリリン酸、
メタリン酸、ピロリン酸等のナトリウム塩または
カリウム塩である重合リン酸塩が多用される。こ
れら重合リン酸塩は親水性極性基の増加によると
ころの吸水膨潤、タンパク解膠化促進による保水
力の増加等により重量維持がなされると理解され
るが、しかし、有用節足動物または有用軟体動物
であるエビ類、貝類、イカ類では重合リン酸塩の
もつ保水力に由来する重量維持は極めて一時的
で、解凍、冷蔵静置および加熱という一連の加工
工程を経ると無処理のものよりむしろ重合リン酸
塩処理により重量維持が困難になる事を経験し
た。 上記に対して本発明者は種々研究を重ねた結果
有用節足動物または有用軟体動物の凍結、冷蔵ま
たは加熱製品を製造する際、有用節足動物または
有用軟体動物を凍結、冷蔵または加熱する前にメ
タリン酸ナトリウム、リン酸三カリウムおよび酵
母自家消化物を含む水溶液に浸漬処理した後、凍
結、冷蔵または加熱すれば、当該各工程における
重量維持率が重合リン酸塩類または高分子化合物
等による処理に比較して著しく高まる事を見出し
た。 すなわち本発明は有用節足動物または有用軟体
動物の凍結、冷蔵または加熱製品を製造する際、
有用節足動物または有用軟体動物を凍結、冷蔵ま
たは加熱する前にメタリン酸ナトリウム、リン酸
三カリウムおよび酵母自家消化物を含む水溶液に
浸漬処理した後、凍結、冷蔵または加熱する事を
特徴とする重量維持法である。なおここで言う有
用節足動物または有用軟体動物とはエビ類、貝
類、イカ類等をさし、魚類の如くの背椎動物では
体表組織が強靭で本発明では発明成分の組織内浸
入が妨げられる。 前述した如くメタリン酸ナトリウムを含む重合
リン酸塩類では重量維持が一時的である。しかし
重合リン酸塩類のもつ特性を有さないリン酸三カ
リウムと重合リン酸塩類中のメタリン酸ナトリウ
ムとの共存によつて重量維持能が高まりかつ安定
した事は、リン酸三カリウムの水溶液がアルカリ
である事と関連しない。なぜならアルカリにPHを
持つ重合リン酸塩では当該能の向上と安定が計れ
ない事を経験しているからである。さらに酵母自
家消化物と前二者の共存によつて当該能が飛躍的
に高まり、より安定化した事は酵母自家消化物中
の粗せん維分、SH基化合物の作用と考える事も
できるが、未確認の物質を含め、組成が複雑であ
り総合的作用とみなせる。 本発明において重量維持に使用するメタリン酸
ナトリウムとしては異なる重合度であつても好適
に用いる事ができるが高重合物のヘキサメタリン
酸ナトリウムが最適である。 また酵母自家消化物は食用酵母であるキヤンデ
イダ ユーテイリスまたはサツカロマイセス セ
レビシエ等を原料として自家消化作用を完遂した
ものであれば好適に用いる事ができる。 メタリン酸ナトリウム、リン酸三カリウムおよ
び酵母自家消化物を含む水溶液に有用節足動物ま
たは有用軟体動物を浸漬処理するにあたつて、有
用節足動物または有用軟体動物としては漁獲直後
であつても、凍結解凍されたものであつてもよ
く、それ以降の加工工程、例えば凍結、冷蔵静
止、加熱等の各工程で重量維持率は飛躍的に高ま
る。 当該有用節足動物または有用軟体動物の本発明
浸漬時間は１時間〜１晩程度が適当であり、浸漬
液量は当該有用節足動物または有用軟体動物が漬
かる程度、通常50〜100％重量部程度でよい。ま
た本発明は海水程度の塩水を溶媒とする事になん
らの障害がない。 以下に実施例をあげて本発明のすぐれた点を説
明する。 実施例 １ 市販凍結ムキエビを流水解凍し、1000ｇ宛下記
第一表に示す試験溶液に一晩浸漬後、一日冷蔵庫
内で静置保存し、後100℃で５分煮熱した。その
結果は第一表に示す通りである。なお重量維持率
はことわりのない限り材料重量（本例では1000
ｇ）に対する百分率で算出した。

【表】 第一表で明らかな様にメタリン酸ナトリウムを
含む重合リン酸塩類では一時的な加水増量がみら
れるが、静置保存中にウイープとして流出してし
まい煮熟後の重量は無処理よりむしろ低い。一方
本発明では重量維持が極めて優秀でメタリン酸ナ
トリウム、リン酸三カリウムおよび酵母自家消化
物の共存により特異的な現象として重量の維持が
なされている事に疑う余地がない。 実施例 ２ 漁獲直後のクルマエビを500ｇ宛下記第二表に
示す試験溶液に一晩浸漬後、−25℃で凍結、約二
週間後室温下で解凍、100℃、５分間で煮熟し
た。その結果は第二表に示す通りである。

【表】 実施例 ３ 市販凍結ムキエビを流水解凍し各1000ｇ宛下記
第三表に示す試験溶液に一晩浸漬後、各々を四群
に分配し、100℃で５分、10分、15分、20分間煮
熟した。その結果は第三表に示す通りである。但
し本実施例での重量維持率は加熱直前の重量に対
する百分率である。

【表】 実施例 ４ 新鮮トリ貝を各500ｇ宛下記第四表に示す試験
溶液に一晩浸漬後、−25℃で凍結、約二週間後室
温下で解凍、100℃で５分間煮熟した。その結果
は第四表に示す通りである。

【表】

【表】 以上、実施例で明らかな様に本発明によつて有
用節足動物または有用軟体動物の重量維持は前例
のない極めて高いレベルでかつ安定している事が
容易にわかる。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 有用節足動物または有用軟体動物の凍結、冷
   蔵または加熱製品を製造する際、有用節足動物ま
   たは有用軟体動物を凍結、冷蔵、または加熱する
   前にメタリン酸ナトリウム、リン酸三カリウムお
   よび酵母自家消化物を含む水溶液に浸漬処理した
   後、凍結、冷蔵または加熱する事を特徴とする有
   用節足動物または有用軟体動物の重量維持法。 ２ メタリン酸ナトリウム１重量部に対してリン
   酸三カリウムを約0.1〜１重量部、酵母自家消化
   物を約0.01〜0.2重量部の配合でなる配合物を２
   〜10％重量部含む水溶液に有用節足動物または有
   用軟体動物を浸漬する特許請求の範囲第１項記載
   の方法。 ３ 酵母自家消化物が食用酵母を酸または酵素等
   により得る人為的タンパク加水分解物でなく、自
   家消化作用による分解および合成を完遂してなる
   複合物である特許請求の範囲第２項記載の方法。