JPS6119599B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は耐熱耐酸化性カーボン又はグラフアイ
ト複合材の製造法に関するものである。カーボン
又はグラフアイトは耐熱温度が高く、しかも加工
性がよいために高温の熱処理用部材、高温で使用
される耐摩摺動部材等に広い分野で使用されてい
る、しかし乍ら、空気中又は酸化性雰囲気で使用
する場合は酸化消耗し易く、又金属、合金の種類
によつては接触反応して部分的に溶着し剥離して
損耗し易いなどの欠点があつた。本発明はかゝる
カーボン又はグラフアイトの欠点を解消するため
になされたものである。 従来、上述のような問題を解決するために、
Al₂O₃を表面に被覆する方法が気相反応により、
Si₃N₄を被覆させるなどの方法が試みられてい
る。しかし乍ら、前述の方法では例えば超硬合金
の焼結の際に敷板として用いる場合溶出Coとの
反応で溶着する問題があり、後述の方法ではせつ
かく安価なカーボンが高価なものとなつてしまい
利用範囲が限られてしまう。本発明は上記の欠点
も無く安価なカーボン又はグラフアイト部材の製
造法を提案するものである。 本発明の特徴はカーボン（炭素）またグラフア
イト（黒鉛）の表面に酸化ジルコニウム
（ZrO₂）とMgAl₂O₄等のスピネル構造の酸化物と
の複合酸化物もしくはこの複合酸化物に酸化イツ
トリウム（Y₂O₃）または酸化カルシウム（CaO）
を含む複合酸化物の被覆層を有する積層又は複合
材であることである。 本発明者らは炭素又は黒鉛に種々の材料を溶射
して金属との溶着性を調査した結果、上記の材料
を被覆した場合が最も良い結果を得たものであ
る。 溶射材料としてZrO₂またはこれにY₂O₃を添加
した粉末が知られているが、これを炭素板表面に
溶射したのみでは本発明の目的は達せられず、被
覆層にスピネル構造の酸化物を含む複合酸化物と
し、安定化熱処理することによつて本発明の目的
は達せられる。 被覆層の厚みとしては、10μ以下では溶射被覆
の場合被覆層が存在しない部分が生じ易く、この
箇所に酸化によつて全体の被覆の効果が発揮でき
ず、又、1000μ（１mm）を越えると被覆層と炭素
又はグラフアイト（黒鉛）との熱膨張係数差によ
り、界面の熱応力が大きくなり被覆層が剥離した
り、接合強度が不充分で取り扱い中に脱落したり
する。 次にZrO₂に対しスピネル構造の酸化物の量を
種々変化させて炭素板表面に溶射被覆して金属と
溶着テスト行つた結果、ZrO₂に対し重量比で1/5
から5/1の比率でスピネル構造の酸化物を混合し
た場合に最もよい結果を示した。この組成比以外
では部分的な溶着があり、不充分であつた。 また上記複合酸化物にCaO又はY₂O₃を添加す
ることによつて被覆層はより一層安定した強度を
有することがわかつた。Y₂O₃，CaOはZrO₂の変
態防止効果があることが一般に知らているが、溶
射被覆においては、その効果が20重量％以下の含
有の場合のみ有効であることがわかつた。20％を
越えると、Y₂O₃，CaO自身の炭素による熱力学
的安定性とZrO₂、スピネル構造金属酸化物の構
造の安定性が低下するこてがＸ線回析で確かめら
れた。 又、同時に溶着性が不安定となり炭素との接合
強度が著しく低下する。 上記の複合酸化物を炭素又は黒鉛の表面に溶射
被覆したのち、これを更に加熱によつて安定化処
理を行うことが本発明の特徴である。これによつ
て予め配合した各酸化物成分が不安定状態から安
定状態となり、この熱処理に於てスピネル構造の
酸化物が存在することが被覆層及び炭素との密着
強度向上に著しく効果を発揮することがわかつ
た。 一般に溶射による被覆物は急冷が伴うため完全
な平衡状態でなく、物質構造として不安定であ
る。従つて、いわゆる焼鈍的な意味の安定化と、
他にZrO₂，−Y₂O₃−CaO間の焼結反応を促進させ
てZrO₂の相変態を阻止させる安定化の両方の効
果がある。 この高温加熱による安定化処理しないものは少
しの使用には耐えるが、被覆層の構造が不安定で
あるため、超硬合金の焼結敷板として使用すると
分解、変質し使用耐数は著しく低下してしまうの
である。 更に溶射する前に炭素又は黒鉛部材の被覆前を
サンドブラストによつて前処理することによつて
酸化物の炭素間の密着強度が更に向上することが
わかつた。このサンドブラストによつて炭素又は
グラフアイトの表面に付着している異物を除去洗
浄と、表面に凹凸をつけ被覆層との接触面積を大
きくすることによつて熱歪の３次元的変化の歪吸
収の効果がある。このことは本発明品を繰返し使
用する場合の寿命に特に良い結果を示した。 上記の安定処理の温度は1000〜1500℃の範囲が
好ましく、1000℃以下では酸化物層の熱拡散が進
まず安定化の効果なく、1500℃以上では密着強度
が低下する場合がある。 炭素表面に溶射する方法は酸素−アセチレンガ
スによる炎溶射法、プラズマによる溶射法、いず
れでも構わない。また該複合酸化物を有機溶剤に
懸濁させ炭素又は黒鉛に塗布して乾燥焼付けても
よいが経済的でない。 尚、溶射する前に250℃〜350℃で被覆すべき炭
素板を乾燥するのが望ましい。 次に実施例によつて詳細に説明する。 実施例 １ 予め、300℃で炭素板を乾燥処理したのち、
ZrO₂、スピネル酸化物（MgAl₂O₄）、Y₂O₃の粉末
を第１表に示す重量比で配合し、酸素、アセチレ
ントーチにより、50×150×５mmの炭素板表面に
溶射被覆した。次にこの被覆した炭素板を第１表
に示す温度で熱処理して各種の炭素、複合酸化物
複合板を作製した。これらの複合板の被覆層の有
する面上にWC−20％Co組成の粉末をIT／cm²で
型押した成型体を各５ケ載せ、真空中で1400℃、
１時間焼結処理した。この処理を５回成型体を変
えて行つた。焼結炉から取出した各複合炭素板と
被焼結材（超硬合金）の溶着状況を観察し、全然
溶着せず福焼結材がすぐ取れる状態を優で示し、
すぐ取れるが多少接触面が変色している場合を良
で示し、溶着もせず、被焼結材がすぐ取れるが被
覆層が剥離しかゝつているものを可とし、炭素板
のみを使用した時と同じく被焼結材と溶着してい
る場合を不可と表現して、各々の結果第１表に示
した。この表でわかる如く、本発明による組成範
囲の被覆層を有する複合板は1400℃の高温で液相
を生ずるWC−Co超硬合金との反応性が無く、焼
結敷板材として寿命が長いことがわかる。 尚、実験No.４のものは52回使用しても被焼結材
と全然反応せず、安定な被覆層であることが証明
された。 従来実施例１の様な敷板としては炭素又は黒鉛
板の上に黒鉛板粉、Al₂O₃粉末を適宜混合して散
布し、その上に被焼結材を載せて使用したいた
が、本発明による複合板ではこのような面倒な作
業をする必要なく何回も使用できるので焼結コス
トを著しく下げることが可能となつた。 実施例 ２ 予めサンドブラスト（＃300）を行つた炭素板
に対し、実施例１と同様にして第２表の組成の粉
末をプラズマ溶射により約50μの厚さで被覆し、

【表】 そのあと1400℃で１時間安定化処理を行い、実
施例１と同様に被焼結材との反応状況を10回の焼
結後、調べた結果を第２表に示す。 本発明によるスピネル構造の酸化物とZrC₂と
の酸化物にY₂O₃，CaOを添加したものが反応性
少く何回もの使用に耐えることがわかる。

【表】

【表】 以上、超硬合金の焼結用敷板としての実施例を
示したが、被覆層は高硬度で耐摩耗性のセラミツ
クスであり、高温で摺動して使用する耐摩摺動部
材としても優れた材料である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 炭素またはグラフアイトの表面に、ZrO₂と
   スピネル構造の金属酸化物との混合物もしくはこ
   の混合物にY₂O₃またはCaOを20重量％以下含む
   混合物を膜厚10〜1000μで溶射被覆したのち1000
   〜1500℃で加熱安定化処理することを特徴とする
   耐熱性複合材料の製造法。 ２ 混合物の組成が、ZrO₂とスピネル構造の金
   属酸化物との比が重量が1/5乃至5/1であることを
   特徴とする特許請求の範囲第１項記載の耐熱性複
   合材料の製造法。 ３ 該スピネル構造の金属酸化物が、MgAl₂O₄
   であることを特徴とする特許請求の範囲第１項記
   載の耐熱性複合材料の製造法。 ４ 炭素またはグラフアイトの表面を予めサンド
   ブラストにより洗浄及び凹凸化することを特徴と
   する特許請求の範囲第１項記載の耐熱性複合材料
   の製造法。