JPS6113392Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、車両用ステアリング装置のうち特
にボールねじ式ステアリング装置に関するもので
ある。

この種のステアリング装置は、ウオームシヤフ
ト外周とウオームナツト内周とに形成されている
螺旋溝の間に複数個のボール（鋼球）を転動可能
に組み込み、ステアリングホイールの操作に連動
するウオームシヤフトの回転に伴い、上記の螺旋
溝に沿つて転動するボールの動きを通じてウオー
ムナツトがウオームシヤフトの軸線に沿つて往復
動作する構造となつている。そして、上記の各螺
旋溝とボールとの間には、これらのボールを円滑
に転動させるために充分なクリアランスがとられ
ている。しかしながら、このクリアランスが大き
すぎると、ステアリング操作時（操舵時）にウオ
ームナツトがある単一のボールを支点として上記
クリアランスの範囲で不規則な動き（こじれ）を
起こすことがある。このウオームナツトの動き
は、ウオームシヤフトを所定の角度だけ無効に回
動させる結果となり、ステアリング操作の剛性感
（ダイレクト感）が不足し、あるいは中立位置が
不明確となるといつた不都合を招く。また、ある
単一のボールに過大負荷が加わると、そのボール
や螺旋溝の転動面に圧痕等が生じるおそれもあ
る。

なお、上記の各螺旋溝はボール転動面として高
精度の研摩仕上げが要求されるのであるが、内周
面に螺旋溝をもつウオームナツトにおいては、そ
の螺旋溝の研摩が非常に困難であつた。

このような従来の事情にかんがみて考案はステ
アリング操作時におけるウオームナツトの“こじ
れ”を防止して操舵フイーリングを良好に保持す
るとともに、単一のボールによる過大な負荷の負
担を避け、各ボールに適当な予圧を付与すること
ができ、しかもウオームナツトの螺旋溝について
は、その仕上げ精度をラフにすることができるボ
ールねじ式ステアリング装置の提供を、その目的
とするものである。

この考案の上記目的は、ウオームナツトをウオ
ームシヤフトの軸線に沿つて二分割し、これらの
各分割ナツトの螺旋溝に、これらの分割ナツトに
わたつて連続するボールガイド部材を組み込んだ
状態で両分割ナツトをボール結合することで達成
される。

以下この考案の構成を、図面で示す実施例に従
つて説明する。

まず、ボールねじ式ステアリング装置の要部を
表した第１図及び第２図において、ギヤハウジン
グ１に対して回転自在に軸支されたウオームシヤ
フト２の軸上にはウオームナツト３が配設されて
いる。このウオームナツト３の側面にはセクタシ
ヤフト５のセクタ６と常にかみ合つたラツク歯４
が形成されている。また、ウオームシヤフト２の
外周面とウオームナツト３の内周面とには、相互
に対応する螺旋溝２ａ，３ａがそれぞれ形成され
ており、これらの両溝２ａ，３ａ間には第２図で
示すように複数個のボール７が組み込まれてい
る。これらのボール７はウオームシヤフト２の回
転操作により、上記の螺旋溝２ａ，３ａに沿つて
軸線し、ウオームナツト３の外側に設けたリター
ンガイド８を通つて循環する。すなわち、ステア
リングホイール（図示しない）の操作に連動して
上記のウオームシヤフト２が回転すると、上述し
た各ボール７の軸線動作を介してウオームナツト
３がシヤフト２の軸線に沿つて往復動作し、もつ
てこのナツト３のラツク歯４とかみ合うセクタ６
がセクタシヤフト５と共に回転するのである。

上記のウオームナツト３は、第３図及び第４図
からも明らかなように、ウオームシヤフト２の軸
線に沿つて上記のようにリターンガイド８を有す
る側とラツク歯４を有する側とに分割されてい
る。このように分割された各分割ナツト３Ａ，３
Ｂの螺旋溝３ａには、半割チユーブの如き形状を
呈し、かつ両分割ナツト３Ａ，３Ｂにわたつて連
続する螺旋状のボールガイド部材２０が組みつけ
られている。このガイド部材２０の存在により、
ウオームナツト３は二分割されても、その螺旋溝
３ａは連続した構成になる。また、ウオームナツ
ト３側におけるボール７の転動面は当然のことな
がら上記ガイド部材２０の内周面であるから、螺
旋溝３ａは第２図，第３図で示されているように
断面を矩形状に形成してもよく、また第５図〜第
７図で示すように加工しやすいその他の形状を選
ぶことも可能である。さらに、上記螺旋溝３ａの
仕上げ精度は、さほど重要でなく、この螺旋溝３
ａと比較して加工の簡単なガイド部材２０内面の
仕上げ精度を充分に確保すれば、ボール転動面の
精度は高められる。

上記の分割ナツト３Ａ，３Ｂのうち、一方の分
割ナツト３Ａには第３図から明らかなようにボル
ト挿通孔１０が形成され、他方の分割ナツト３Ｂ
には上記の挿通孔１０と対応する位置でねじ孔１
１が形成されている。これらの挿通孔１０及びね
じ孔１１は複数個所（例えば二個所）に形成され
ており、これらの挿通孔１０からねじ孔１１にボ
ルト２１をねじ込むことによつて両分割ナツト３
Ａ，３Ｂを結合している。

この構成によれば、上記ボルト２１の締めつけ
トルクを調整することにより、ウオームシヤフト
２及びウオームナツト３とボール７との間のクリ
アランスが調整され、このクリアランスを軸線方
向の全体にわたつて小さくすることができる。こ
の結果、例えば車輪側から前記セクタシヤフト５
に入力（負荷）があつた場合、ウオームナツト３
に“こじれ”が生じてウオームシヤフト２が回転
し、ステアリング操作の剛性感を損うといつた不
都合が防止される。また、第３図で示すように分
割ナツト３Ａ，３Ｂの合せ面に合成樹脂などの弾
性材よりなるプレート２２を介在させ、あるいは
ボルト２１の頭部と分割ナツト３Ａの上面との間
にウエーブワツシヤ等のばね座金２３を介在させ
ることにより、上記のクリアランス調整を適正に
なし、かつ各ボール７に適当な予圧を与えること
も可能となる。

上記ウオームナツト３の“こじれ”を防止する
には、ウオームナツト３の両端部位のクリアラン
スのみを小さくすることによつても達成し得る。
そこで、第８図で示すようにウオームナツト３の
螺旋溝３ａ内径を、このナツト３の両端に向かつ
て徐々に小さくなるように形成し、ここに組み込
むガイド部材２０も溝に対応する螺旋状のものを
使用する。この第８図の実施例によれば、先に述
べた実施例の場合よりもガイド部材２０によるボ
ール転動面の寸法精度の確保は、ウオームナツト
３の両端部位のみでよく、前述したボールねじク
リアランスもより簡単に調整することができる。

以上のように、この考案はボールねじクリアラ
ンスをウオームナツト全長にわたつて小さく抑
え、かつボールに適当な予圧を付与することがで
きるので、ステアリング操作時などにおいてウオ
ームナツトがウオームシヤフトに対して“こじ
れ”を起こすなどの事態を防止し、もつてステア
リング操作の剛性感不足や中立位置が不明確にな
ることを避け、同時に特定のボールによる過大負
荷の負担といつ不都合をも解消することができ
る。

特に、この考案にあつてはウオームナツトを分
割してこれら相互をボルト結合した構成であるも
のの、ウオームナツトのボール転動面は両分割ナ
ツトにわたつて連続するボールガイド部材によつ
て形成してあるので、ボールの転動動作は円滑な
ものとなり、しかも作業の困難なウオームナツト
内周における螺旋溝の加工仕上げを避け、加工の
簡単な上記ガイド部材内面の仕上げ精度を確保す
ることでボール転動面を高精度に維持することが
できる。

【図面の簡単な説明】

図面はこの考案の実施例を示し、第１図はボー
ルねじ式ステアリング装置のギヤハウジング内部
を表した断面図、第２図はウオームシヤフトとウ
オームナツトとの関連を表した断面図、第３図は
ウオームナツトのみを表した断面図、第４図は第
３図の−線断面図、第５図〜第７図はウオー
ムナツトの螺旋溝の各種形状を表したそれぞれの
断面図、第８図は異なる実施例のウオームナツト
を表した断面図である。 ２……ウオームシヤフト、２ａ……螺旋溝、３
……ウオームナツト、３Ａ，３Ｂ……分割ナツ
ト、３ａ……螺旋溝、７……ボール、２０……ボ
ールガイド部材、２１…ボルト。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ステアリングホイールの操作に連動して回転す
   るウオームシヤフトの外周面と、このシヤフトの
   軸上に配設されるウオームナツトの内周面とのそ
   れぞれに相互に対応する螺旋溝が形成されてお
   り、これらの螺旋溝間に複数個のボールが転動可
   能に組み込まれ、このウオームシヤフトの回転操
   作に伴つて前記の螺旋溝に沿つて転動するボール
   の動きを通じてウオームナツトがウオームシヤフ
   トの軸線に沿つて往復動作するボールねじ式のス
   テアリング装置であつて、前記ウオームナツトを
   ウオームシヤフトの軸線に沿つて二分割し、これ
   らの分割ナツトの螺旋溝に、これらの分割ナツト
   にわたつて連続するボールガイド部材を組み込
   み、かつ両分割ナツトをボルトによつて結合した
   ことを特徴とするボールねじ式ステアリング装
   置。