JPS6035384B2 - 油彩画用白色系絵具 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、粒子径４仇ｍから１２０皿ｍの範囲にある酸
化ジルコニウム粉末を着色の主成分とする新規な油彩画
用絵具に関するものである。

その目的とするところは、無毒性にして安定な高品位の
ホワイト及びグレィ油絵具を提供するところにある。こ
こでグレィ油絵具とは、ホワイト顔料を主成分として池
成分顔料を含有させたホワイト以外の色調を有する絵具
を総称する。油絵具は、色村としての顔料．乾性油を主
成分とする辰色剤・形状維持のための助剤．及び乾燥促
進剤などを練り合せて製造される。

現在、ホワイト油絵具としては、亜鉛華を主成分とする
ジンクホワイト及び鉛白を主成分とするシルバーホワイ
トが普及している。ホワイト油絵具の需要量は、全油絵
具の中で約４０％を占めている。ジンクホヮィトは、油
絵具の中で最も多量に使用されているものである。しか
し、その主成分である亜鉛畠戦ま、展色剤の乾性油と反
応して亜鉛石鹸を形成し、これによって塗膜の劣化を促
進させ、それを脆弱化し、無数のひび割れを発生させる
。このような現象は、従来から斯界の関係者及び画家に
よって認められており、これに関する多くの報告もある
。最近のものとして例えば、牧島．豊田．岡村．色村．
４４．１５６（１９７１）．に詳細に報告されている。
このように、ジンクホワィトの形成塗膜には欠陥があり
、描画上トラブルが多し、にも拘わらず未だ適切なる改
善方法が見し・出されていない現状である。シルバーホ
ワイトは、輝いた白色で乾性油とともに強い塗膜を形成
するので油絵具として古くから広く愛用されてきた。

しかし、その主成分である塩基性炭酸鉛は、かつて化粧
品として使用され鉛毒を起したことで余りにも有名であ
る。このような毒物の使用は公害のおそれもあり、油絵
具として好ましくない。また、このシルバーホワイトは
ウルトラマリン．バーミリオン．カドミウムイエローな
どの硫化物系顔料を使用した油絵臭と温色すると、後日
、黒ずんでくる。なお、硫化水素ガスに会っても黒変す
るので、工場地帯や火山地帯の絵画には使用できない。
その黒変の原因は、黒色硫化鉛の生成に基づくものであ
る。このようなことは、桑原．安藤．「顔料及び絵具ｒ
ｌ９５．共立出版（昭５４刊）．に詳述されている。
チタン白を使用したチタニウムホワイト絵具は、弦性油
とは反応せず、かつ無毒性で塗膜上の欠陥もない。

ところで、油絵具は、被覆を主目的とする塗料とは異る
性質が要求される。チタニウムホワイトは、油絵具とし
て着色力及び隠ベイ力が大なるがために、かえって油絵
具としての適応性がないのである。描画上、これを使用
して色を混合したり、幾層にも塗り重ねたりする場合、
他の色を著しく減殺し、かつ彩度を小さくして階色調と
する。．これらの欠点は、辰色剤に対しチタン白の含有
量を調整するのみでは着色力と隠ベイ力のバランスがと
れないので、改善できない。さらに、着色力を維持し過
大な隠ベイ力を抑制することは不可能である。このよう
な理由でチタニウムホワイトは油絵具として適応性に乏
しく、その使用量は少ない。本発明は、上記のようなホ
ワイト油絵具に随伴する種々の欠点を除き、油彩画に適
した高品位のホワイト及びグレィ油絵具を開発したもの
である。

すなわち、平均粒子径４仇ｍから１２０伽ｍの範囲にあ
る酸化ジルコニウム粉末を油絵具用顔料に採用すること
によって、塗膜のひび割れを無くし、温色による減色や
彩度の低下を少〈し、深みのある優美な色調を有する新
規なホワイト油絵具を調製することに成功したものであ
る。一般に、顔料の色は、化合物の結晶構造に基づく光
の吸収．屈折率及び粒子形態などによって変わる。

同じ化合物の場合、粒子が細かくなれば粒子の表面積が
大きくなり、表面反射光の量が増加する。従って、下地
を被覆する隠ベイ力は大きくなる。しかし、ある限界ま
では、粒子が小さくなるほど隠ベイ力は増加するが、粒
子径が可視光線の波長の１ノ２以下になると散乱．回折
などの複雑な光学現象によって透明・性を帯びて急激に
低下する。つまり、粒子径に対して隠ベイ力の最大値が
現れる。この値は、また屈折率及び展色剤の種類などに
よって影響される。白色顔料の隠ベイ力が最大値を示す
粒子径を屈折率．比重と共に表１に示した。これらのこ
とは、久保田．「粉体」Ｐ．９０３．丸善（昭５４刊）
及び桑原．安藤．「顔料及び絵具」Ｐ．３２．共立出版
（昭５４刊）に詳述されている。表１ ｘ，日本化学会編．「化学便覧．基礎編１」丸善（１９
８０）。

表１は、既知の白色顔料の諸物性を整理し、酸化ジルコ
ニウム粉末と対比させたものである。これらの数値をそ
れぞれ比較考慮するれば、酸化ジルコニウム粉末を顔料
として使用する場合の最適粒子径×の値及び隠ベイ力な
どが推定される。発明者等は、このような推論に基づく
発想を以て、下記の実験を行い、新しい白色系油絵具を
発明するに至ったのである。次に、酸化ジルコニウム（
ＩＶ）．−名ジルコニァ．Ｚの２について説明する。

純度のよい製品は、ジルコニウムの含水酸化物または酸
素酸塩を加熱脱水して製造する。約１０００午０におい
て、単斜晶系（低温型）から正方晶系（高低型）へ結晶
転移する。ジルコニア．Ｚｒ０２は、硬くて融点が高く
、極めて安定な化合物である。古くから耐火物材料とし
て使用されてきたが、戦後、特殊磁器及び電磁器として
用途が拡大している。本発明に使用するものは、単斜晶
系（低温型）で粒子径４０〜１２０仇ｍの徴粉体である
。これの製造法の一例を示せば、硫酸ジルコニウムＺｒ
（Ｓ０４）２水溶液にアンモニア水などのアルカリ水溶
液を加え、ゲル状の白色沈殿Ｚｒ０２．ｘ比○を作り、
水洗．乾燥．脱水して微粉末を得る。この際、沈殿反応
させる水溶液の濃度や温度などの条件を調節することに
よって各種粒子径のＺｒ０２が製造できる。次に、研究
結果について説明する。

実験に用いた粒子径の相違する酸化ジルコニウム粉末は
、前記含水酸化ジルコニウムＺｒ０２．×比○の製造条
件を調節して４種類調製した。すなわち、試料Ａ（平．
．・均粒子径５肌ｍ）．試料Ｂ（同１０仇ｍ）．試料Ｃ
（同２０仇血）．試料Ｄ（同５０皿ｍ）．試料Ｅ（同１
００仇皿）である。これらの着色力及び健ベイ力を測定
し、その比ｔ＝隠妻へ色イ刃力を求めた。対照試料とし
て市販の亜鉛華．鉛白及びチタン白を用い、それぞれの
試験結果を表２に掲げた。なお、着色力及び隠ベイ力の
測定は、ＪＩＳＫ５１０１−５〜６の方法によって行い
、チタン白の着色力を１００とし、その他の顔料の着色
力及び腿ベイ力を換算して示したものである。表 ２ 表２に見られるように、チタン白の着色力及び隠ベイ力
が抜群であり、とくに隠ベイ力が大きい。

これらが余りにも過大であるがために、チタン白を使用
した絵具と他の絵具との退色や多重塗りを行うと他の色
を減殺し、また彩度を低下させる。チタン白を微粉末ケ
イ酸などの透明顔料で薄めて使用すると、着色力と隠ベ
イ力は同時に低下するが、両者の比ｔの値を変えること
はできない。従って、チタン白を用いた絵具において着
色力を保持して隠ベイ力を下げることは不可能である。
多くの画家の意見及び油絵具製造技術者の長年の経験か
ら、ホワイト油絵具としての適応性は、着色力と隠ベイ
力との間の調和が必要であり、それを数値で示すと表２
の結果より、着色力：１０〜３０，ｔ：１．０〜８．０
の範囲にあることが好ましいと判断された。

本発明にかかわる粒子径４０〜１２０皿ｍの酸化ジルコ
ニウム粉末Ａ．Ｂ．Ｃ．Ｄ．Ｅは、着色力：１１〜２６
，ｔ：１．２〜７．０でホワイト油絵臭用として好適の
範囲にある。亜鉛華や鉛白と近似値を示していることが
明らかである。従って、これを以てホワイト及びグレィ
油絵具を製造すれば、古くから愛用されてきたジンクホ
ワィトやシルバーホワイトのような優美な色調を有し、
しかも毒性や塗腰のひび割れの起こらない高品位の油絵
具が製造できる。本発明の油絵具の原料となる酸化ジル
コニウム粉末は、粒子径４仇ｍから１２０ｍｍの範囲の
もので、結晶系として単斜晶系（低温型）または正方晶
系（高温型）のどちらでもよい。

また、これらの粒子表面をアルミナ．シリカ及びステア
リン酸などで表面被覆を施し改善したものでもよい。粒
子径が上記範囲にあるものは、油絵具として適切なる顔
料特性を示し、深みのある優美な審美的効果を表わすも
のである。なお、廉色剤としては、サフラー油．ケシ油
及び油変性アルキド樹脂などが使用される。次に、これ
を実施例について説明する。

実施例 １ 微粒子酸化ジルコン粉末Ａ．平均粒子経５０ｎｍ１〇〇
‐鷹芯ケシ油 ３０．
０碇部ステアリス酸カルシウム ０．９礎
都ナフテン酸カルシウム ０．０３部上
記の重量配合による混合物を、セラミック製ロールミル
で混練し、分散良好な油絵具を調製した。

その結果を前記表２の試験結果と同じ比較値で示せば、
着色力：１５．０．隠ベイ力：１．６その比ｔ：８．８
であった。ホワイト油絵具としてやや透明性を有する深
みを感じさせる色調である。実施例 ２酸化ジルコン粉
末Ｃ．平均粒子径２０瓜ｍ１００‐０〇部 ケシ油 ２５．０碇部ス
テアリン酸カルシウム ０．７５部ナフ
テン酸カルシウム ０．０＄郡上記の
混合物を実施例１と同様の方法で混練し、油絵具を調製
した。

その結果を表２と同じ比較値で示すと、着色力：２５．
隠ベイ力：１４．５その比ｔ：１．７であった。これは
やや着色力が大きいが、混色による相手色の減色も適度
であるすぐれたホワイト油絵具であった。実施例 ３ 酸化ジルコン粉末Ｅ．平均粒子径１００ｍｍ１〇〇‐〇
鷹Ｋケシ油 ２０．０
碇部ステアリン酸カルシウム ０．６の郭
ナフテン酸カルシウム ０．０２部上
記の混合物を実施例１と同様の方法で混練し、油絵具を
調製した。

その結果を表２と同じ比較値で示すと、着色力：１３．
４．隠ベイ力：１１．０．その比ｔ：１．２．であった
。これは、着色力がやや低く、透明性を有する、ねばり
のある油絵具である。実施例 ４ 酸化ジルコン粉末Ｃ．平均粒子径２０仇ｍ１００‐０〇
部 ペンジジンイエ。

一 ７．５＄部サフラワー油
３０．０碇都ステアリン酸カルシウム
０．９疎郭ナフテン酸コバルト
０．０３部上記の混合物を実施例１と同様の
方法で混練し、ベンジジンィェロ‐１のを微粒子酸化ジ
ルコンで薄めたいわゆるグレィ油絵具と総称されるレモ
ンイエロー油絵具を調製した。その結果、ＪＩＳ２８９
０１による色表示で、ｘ：０．４２６．ｙ：０．４６０
．Ｙ（％）：７５．０３の色度を示した。この絵具は、
酸化ジルコン粉末の代りに従来通りの亜鉛華で調製した
ものに比較して色差△Ｅ：０．４でＮＢＳ単位で、かす
かに色差を感ずる程度であった。この塗膜は、後日、冷
化によってひび割れの生じることのない安定なものであ
る。本発明のホワイト及びグレィ油絵具の特徴を要約す
ると次のようである。

○’鉛化合物のような有毒成分を含有していない。

‘２｝ 形成塗膜は、長規安定性があり、経日変化によ
って脆弱化しない。

糊 塗膜は、経日変化によってひび割れを生じない。

【４’他の絵具との温色は自由で、それによって後日、
変色を起こすおそれはない。

｛５｝ 深みのある優雅な色調を有する高品位の油絵貝
である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 乾性油を展色剤とし、それに粒子径４０ｎｍから１
   ２００ｎｍの範囲にある酸化ジルコニウム粉末を分散状
   態で含有させることを特徴とする油彩画用白色系絵具。 ２ 酸化ジルコニウム粉末を主成分とし、それに他成分
   の顔料を混合分散させることを特徴とする１項記載の油
   彩画用白色系絵具。