JPS589199B2 - スエ−ドヨウゴウセイヒカクノ セイゾウホウホウ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は通気性に優れ、外観、風合いおいて天然スエー
ドに酷似したスエード様合成皮革を製造する方法に係る
ものである。

従来のスエード様擬革としては、生布又は合成樹脂シー
ト上に短繊維を植毛加工したもの、あるいは塩化ビニー
ル等のスポンジレザーの表面を研削したもの等が知られ
ているが、前者は植毛した短繊維が抜けやすく、後者は
強度が弱く、外観、風合においても両者とも天然スエー
ドとは程遠いものであった。

特にスポンジレザーの表面を均一厚味に研削することは
困難でムラのないスエード様外観を得ることは極めて難
しかった。

又ポリウレタンエラストマー塗布基材を湿式凝固し脱溶
媒して縦に揃った無数の気孔から成る蜂窩状構造を有す
るポリウレタンフィルムを形成し、該蜂窩状構造の中間
をスリツターにより才断して内部の気孔を露出しスエー
ド様擬革を得る方法がある。

しかし、この方法では均一な径をもつ気孔が均一に分布
した蜂窩状構造を形成するように製造条件を調整するの
が難しく、又気孔の径が同径に揃うフイルム層の深さで
才断ずるのは擬革が軟かく又薄いため難しく、従って色
艶にムラが生じてしまい商品価値を損ねた。

更に発泡した塩ビルザーをその中間から２枚に剥ぐ方法
では、均等厚味に剥ぐのが難しく、従って均一なムラの
ないスエード外観を得るのは難しかった。

又従来の方法として、基体上にポリウレタンエラストマ
ーの重合体溶液を塗布した後、この重合体溶液層の表面
に微粒子を付着させ、更にその上に組成の違うポリウレ
タンエラストマーの重合体溶液を塗布し、凝固した後２
層の境界で剥離を行い剥離後の表面を毛羽立てる方法も
あるが、この方法は剥離した後、その微粒子を取り除か
なければならず、工程が増えて実用的でなく、又表面の
毛羽立でのための均一な切削が難しく、ムラのないスエ
ード表面が得難かった。

一方本発明者等はポリウレタンエラストマー中に過剰の
水中発泡剤を混入して発泡密度の大きい湿式擬革を形成
し表皮を研削する方法も試みたが均一な気孔密度を得る
のがなかなか難しかった。

又塩ビシート表面に発泡剤を塗布して発泡させシート表
面を凹凸状に荒してスエード状とすることも試みられた
が均一な緻密な気孔を得るのは困難であった。

本発明は、これら従来のスエード様擬革の欠点を改良し
た新規な製造方法に係るもので、通気性、柔軟性に優れ
外観、風合において極めて天然スエードに酷似したスエ
ード様合成皮革の製造方法に係るものである。

すなわち、本発明の要旨はポリウレタンエラストマーを
主成分きする重合体溶液から湿式凝固法により合成皮革
を製造する方法において、湿式凝固して２枚の重合体シ
ート状物を形成する際、又は形成後に２枚の重合体シー
ト状物間に発泡剤層を介在せしめ、温水に浸漬又は加熱
処理により該発泡剤層中の発泡剤を発泡し２枚の重合体
シート状物を剥離し、スエード様合成皮革を得る方法に
在る。

本発明を更に詳細に説明すれば、第１の方法として編布
、織布、不織布等又は離型性坦体等の基村上にポリウレ
タンエラストマーを主成分とする重合体の溶液を適宜方
法により塗布し、温水等を入れた凝固浴槽に浸漬し、該
重合体溶液を凝固脱溶媒し、微孔性の重合体シート状物
を得る。

次にすぐに水分を表面に含んだ状態の該重合体シート状
物の表面上に発泡剤や発泡促進剤を粉体塗装するか又は
該重合体シート状物を乾燥後、発泡剤や発泡促進剤を主
成分として配合したウレタンエラストマーを主成分とす
る溶液等の配合物を塗布し発泡剤層を形成する。

該発泡剤層の上面にウレタンエラストマーを主成分とす
る重合体の溶液をスプレーコーティング又はスクリーン
コーティング等の適宜方法により塗布し、次いで必要に
応じて該塗布面に編布、織布、不織布等の基材を積層し
、温水槽等の脱溶媒槽に浸漬し、塗布した発泡剤層の上
側の重合体を凝固し、溶液を脱溶媒して発泡剤層上にも
微孔件の重合体シート状物を形成し、その結果２枚の重
合体シート状物とその中間の発泡剤層から成る積層シー
トを得る。

前記発泡剤層の発泡剤として温水で発泡するものを使用
した場合には、脱溶媒槽の温水の温度を高くすることに
より発泡剤を発泡することができる。

しかし、温水に浸漬しても発泡しない発泡剤を使用した
場合には、更に凝固浴槽から該積層シートを取り出した
後加熱炉中等を通して加熱し、発泡剤層中の発泡剤、発
泡促進剤を発泡せしめる。

凝固浴又は加熱炉における発泡終了後、該積層シートを
乾燥した後、発泡した発泡剤層部分、即ち上下の微孔性
の重合体シート状物の界面から剥離し２枚のスエード様
合成皮革を得る。

第２の方法としては、基材上にポリウレタンエラストマ
ーを主成分とする重合体の溶液を塗布し更に発泡剤や発
泡促進剤を粉体塗装するか又は発泡剤や発泡促進剤を含
有するウレタンエラストマー混合溶液等の配合物をスプ
レーやスクリーン等の適宜方法により塗布し、発泡剤層
を形成する。

一方他の基村上にポリウレタンエラストマーを主成分と
する重合体の溶液を塗布し、この塗布面を該発泡剤層に
貼り合せて密着し、基材、重合体溶液、発泡剤層、重合
体溶液、基材の順に積層した積層シートを得る。

この積層シートを温水槽等の凝固溶槽中に浸漬し、重合
体溶液の凝固及び脱溶媒を行い２枚の微孔性重合体シー
ト状物の積層シートを形成する。

次に該積層シートを加熱炉等に導き発泡剤層中の発泡剤
を発泡せしめる。

発泡剤層中の発泡剤として温水で発泡するものを使用し
た場合には、凝固槽の温水により該発泡剤を発泡せしめ
るため、加熱炉による発泡工程は不要となる。

次に積層シートを乾燥した後、発泡した発泡剤層部分、
即ち形成された上下の微孔件の重合体シート状物の界面
から剥離し、２枚のスエード様合成皮革を得る。

基村上に塗布する重合体溶液中の重合体は、ポリウレタ
ンエラストマーを主成分とするものであるが、合成皮革
素材としての公知のポリウレタンエラストマーを使用し
、その物性改良として必要に応じて塩化ビニル、酢酸ビ
ニル、アクリル、ナイロン、ＥＶＡ等の樹脂を適宜量配
合した重合体である。

この重合体を溶媒に溶解して重合体溶液とするもので、
この溶媒としてはジメチルホルムアミド、ジメチルアセ
トアミド、ジメチルスルフオオキサイド、テトラヒド口
フラン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、
シクロヘキサノン酢酸メチル、酢酸ブチル等が使用でき
る。

該重合体溶液の基村上への塗布方法としては、ドクター
ナイフコーター、リバースロールコーター、ロールコー
クー、スクリーン印刷、スプレー法、カーテンフローコ
ークー等の一般の方法により行うが、発泡剤層上に塗布
する場合は特にスプレー法、カーテンフローコーター等
の方法が発泡剤層の破壊防止の点から好ましい。

発泡剤や発泡促進剤の塗布方法としては、粉体塗装、ス
プレー法等によるが、発泡剤や発泡促進剤を配合したウ
レタンエラストマー溶液等の配合物を塗布する方法とし
ては、上記の一般の方法が可能である。

重合体シート状物を凝固槽から取り出した後、その上に
発泡剤層を形成する場合、又その後重合体溶液を塗布す
る場合は、該重合体シート状物を凝固槽から取り出して
まだ水分で濡れている状態で塗布することが必要である
。

これは重合体シート状物が重合体溶液の溶媒により溶解
されて破壊されるのを防止するためである。

基材としては編布、織布、不織布及び離型性の坦体が使
用できるが、後の剥離工程において重合体シート状物が
伸長されて変形したりするのを防ぐためには編布、織布
不織布等の合成皮革の構成材となるものを使用するのが
好ましい。

基材として離型性の坦体を使用し、形成された重合体シ
ート状物が編布、織布、不織布等の構成材を有していな
い場合に、スエード様の重合体シート状物の形成後、接
着剤を介して上記の構成材を該重合体シート状物に接着
してもよい。

発泡剤層形成に使用する発泡剤としては、無機系のもの
として炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸
ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、有機系のものでは、パ
ラトルエンスルフオニルヒドラジド及びその誘導体、４
，４′−オキシビスベンゼンスルフオニルヒドラジド、
アゾビスイソブチ口ニトリルあるいはジニトロペンタメ
チレンテトラミン、アゾジカルボン酸アミド等を使用す
る。

発泡促進剤は上記の発泡剤の中、発泡温度が高いものと
組み合せて使用し、ジニトロソベンタメチレンテトラミ
ンにはサリチル酸、安息香酸、マレイン酸等の有機酸又
は尿素系発泡促進剤を使用し、アゾジカルボン酸アミド
に対しては酸化亜鉛等の金属酸化物やステアリン酸カド
ミウム、ステアリン酸亜鉛、ステリアン酸鉛等の金属塩
、尿素系発泡促進剤等を使用する。

該発泡剤として炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム
、重炭酸ナトリウム等は温水中にて発泡するものである
。

一般に、重合体シート状物は凝固槽において脱溶媒され
微細気孔が形成されるが、基材層附近は脱溶媒が比較的
ゆっくりと行われ、従って比較的大きな気泡が形成され
るが、重合体シート状物の表面附近は脱溶媒が速かに行
われるため気孔の小さい緻密な皮膜層が形成され、従っ
てスエードを得るにはこの皮嘆層を切削しなければなら
なかった。

しかし本発明では、重合体シート状物を２層としたため
に２層の重合体シート状物の界面、即ち発泡剤層に接す
る部分は脱溶媒が遅れて気孔が比較的大きくなり、更に
発泡剤の発泡により更に気孔が大きく、気孔密度もその
他の部分より大きくなる。

従って発泡剤層部分において２層の重合体シート状物の
接着強度は大巾に減少する。

その結果発泡終了後の上下の微孔性重合体シート状物を
剥離する工程において界面から極めて容易に剥離でき、
均一厚味のシートが得られるものである。

又その剥離面は気孔密度が高く、大きな気孔が２つに分
断され、極めてスエード様外観に似た形状に形成される
。

上記の重合体シート状物の剥離は積層シートの一端にお
いて爪又はナイフ等により２つに剥ぎ両方向に分離して
引張り、更に２つのロールに各々の端部を巻き付けて全
積層シートを剥離するものである。

上記発泡剤の発泡は、赤外線ヒーター、ガスヒーター、
蒸気ヒーター等の装置から成る加熱オーブン中を通して
加熱発泡せしめ、温度は１４０〜２８０℃とする。

又温水中にて発泡する発泡剤を使用の場合は、その温水
の温度としては３５℃〜８０℃とし、その浸漬時間は１
〜２４時間が好ましい。

重合体溶液の凝固において、必要ならば低温度の水槽に
おける予備凝固を行い、次に温水による凝固を行っても
良い。

０℃〜３０℃の低温の水による予備凝固を行うと温水に
おける発泡に耐える程度の重合体シート状物が凝固して
形成され、又気孔が太きく形成され、特に温水にて発泡
する発泡剤を使用する場合は必要である。

発泡剤層の形成において、重合体溶液塗布面上に全面に
発泡剤層を形成せず、部分的に模様状に塗布し、発泡剤
を発泡することにより、部分的にスエード外観を有する
装飾性に優れたシート状物を得ることも可能である。

又２枚の重合体シート状物を剥離した後にスエード様の
外観を有するシート状物を染色、もみ加工、表面処理等
を公知の方法により行なって外観、風合を更に向上させ
ることも勿論可能である。

本発明は、２枚の重合体シート状物の積層シートを湿式
凝固し、更にその中間の発泡剤層で発泡させるため気孔
の大きな気孔密度の高い切断面が表面に現れ、外観、風
合において天然スエードに酷似し、表面の気孔切断面の
ムラがなく同一色艶のスエード様合成皮革が得られる。

又重合体シート状物は湿式凝固による比較的径の大きい
微細気孔を有しており、又皮膜層を有していないため極
めて透湿性に優れ柔軟性がある。

製造方法においてもパフ加工する必要もなく、一度に２
枚の合成皮革が得られ、製造能率が良く、コストの安い
製品の大量生産が可能である。

上述の如く、本発明のスエード様合成皮革は柔軟性や透
湿性に優れ、外観、風合において天然スエードに酷似し
ており、衣料、鞄、家具材として有用である。

次に実施例を挙げて本発明を説明する。

なお説明中、部とあるのは重量部を表わすものとする。

実施例 １ ポリウレタンエラストマーの３０％ジメチルフォルムア
ミド溶液１００部、アセトン３５部、着色剤１３部、炭
カル（２００メッシュ）２０部、から成る混合溶液をミ
キサーでよく攪拌した後、織布土にドクターナイフコー
ター法により約１．５ｍｍの厚味に塗布し、次に４０℃
の温水中に２０分間浸漬し、水中から引き出した後、重
炭酸ナトリウムを５００ｇ／ｍ２の割合で粉体塗装し、
該発泡剤塗布面上に上記のポリウレタンエラストマーの
混合溶液を約１．５ｍｍの厚味にカーテンフローコーテ
ィング法により塗布し、次いで織布をこの塗布面に積層
し軽く圧着して積層シートとし、６０℃の温水中にこの
積層シートを３０分間浸漬し、ポリウレタンエラストマ
ーを凝固し、脱溶媒し、重炭酸ナトリウムを発泡させる
。

次いで、温水中から積層シートを取り出し、発泡した部
分から剥離し２枚のスエード様シートを得、更にこれを
加熱乾燥してスエード様合成皮革とする。

実施例 ２ ポリウレタンエラストマーの３０％ジメチルフォルムア
ミド溶液１００部、ジメチルフォルムアミド１０部、ア
セトン１０部、充填剤２０部、着色剤１３部から成る混
合溶液をミキサーでよく攪拌した後綿織布上にドクター
ナイフコークー法により約１．２ｍｍの厚味に塗布し、
次いでポリウレタンエラストマーの３０％ジメチルフォ
ルムアミド溶液１００部と、アゾジカルボン酸アミド５
部、Ｃａ−Ｂａ系安定剤５部から成る接着剤配合物を、
厚味０．５ｍｍに塗布する。

一方綿織布上にドクターナイフコーター法により、同じ
く上記ウレタンエラストマー混合溶液を約１．２ｍｍの
厚味に塗布し、この塗布面に先の発泡剤含有の接着剤配
合物を塗布した塗布シートを合せ圧着ロール等により一
体とし積層シートとする。

次にこの積層シートを５０℃の温水中に３０分間浸漬し
た後、温水から該積層シートを取り出し２００℃の加熱
オーブン中を通して発泡剤を発泡せしめる。

次いで積層シートを発泡層から剥ぎ２枚のス工ード様合
成皮革を得た。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 基材上にポリウレタンエラストマーを主成分とする
   重合体溶液を塗布し、凝固槽に浸漬し湿式凝固させてシ
   ート状物を得、次に該シート状物質上に発泡剤を主成分
   とする発泡剤層を形成し、該発泡剤層上にポリウレタン
   エラストマーを主成分とする重合体溶液を塗布し、必要
   に応じて基剤を積層し、凝固槽に浸漬して重合体を凝固
   すると共に発泡剤層の発泡剤を発泡させるか又は発泡さ
   せずに爾後の加熱処理により発泡剤層中の発泡剤を発泡
   させ、次に発泡した発泡剤層部分から形成された２枚の
   シート状物質を剥離することを特徴とするスエード様合
   成皮革の製造方法。 ２ 基剤上にポリウレタンエラストマーを主成分とする
   重合体溶液を塗布し、該塗布面上に発泡剤を主成分とす
   る発泡剤層を形成し、一方他の基材上にポリウレタンエ
   ラストマーを主成分とする重合体溶液を塗布し、該発泡
   剤層を形成したシート状物質と積層一体化し、該積層シ
   ートを凝固槽に浸漬し、ポリウレタンエラストマー溶液
   を凝固させると共に発泡剤層中の発泡剤を発泡させるか
   又は発泡させずに次の加熱処理により発泡剤層中の発泡
   剤を発泡させ、次に発泡した発泡剤層部分から形成され
   た２枚のシート状物質を剥離することを特徴とするスエ
   ード様合成皮革の製造方法。