JPS5823033Y2 - 冷却用圧縮機の潤滑装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は強制潤滑回路を具備した冷却用圧縮機、特に自
動車用冷房装置に搭載される圧縮機の潤滑装置に関する
ものである。

一般に自動車に搭載される圧縮機は自動車のエンジンに
よって駆動するため低速回転から高速回転までの広範囲
の回転数となり、特にアイドリング時や交通渋帯による
低速運転時などでは冷媒圧力が上昇するため、圧縮機内
部の軸承部分及び摩擦部分への充分な給油による潤滑が
行なわれないと圧縮機の寿命に大きな影響を及ぼすこと
となっていた。

また、シャフトシールの正常な動作を行なうにはシール
面への給油を行なう必要があり、シール面の油膜が切れ
ると異常摩耗によってガス漏れが発生する危険が生じて
いた。

このため圧縮機のひとつの形態である揺動式圧縮機にお
いては吸入室と筒状ケーシング内の圧力差を利用したブ
ローバイ（ｂｌｏｗ−ｂｙ）ガスによる潤滑装置を用い
ていたが、このような潤滑方法にあっては冷媒回路への
潤滑油の流出量が多大となり、特に高速回転時には圧縮
機内残油量が極端に少なくなるとともに始動初期にあっ
ては、冷媒回路内に流出した潤滑油が冷媒と共に圧縮機
の吸入口に戻ってくるまでに長い時間がかかつていた。

このため、冷媒回路全長が長い装置にあっては潤滑不良
による焼付が発生する危険があった。

また冷媒回路を冷媒と共に循環して吸入室に戻ってきた
潤滑油のうちシリンダーのブローバイ（ｂｌｏｗ−ｂｙ
）ガスと共に圧縮機のケーシング内に入ることの出来る
量は僅かであり、残りは再び圧縮機により吐出側回路へ
流出してしまうため、圧縮機を利用する初期に封入する
潤滑油量としては実際に潤滑に役立つ油量の２〜４倍が
必要であった。

ざらに冷媒回路中に含まれる油量が多いと冷媒回路中の
凝縮器、蒸発器などの熱交換器における効率が低下し、
冷房装置の性能を低下させていた。

また、凝縮機あるいは蒸発器が圧縮機から遠い位置に設
置されて回路が長くなる場合あるいは回路の途中に潤滑
油の停滞しやすい個所がある場合には個々の冷房システ
ムに対する必要な油量をその都度決定し封入しなければ
ならなかった。

このためクランク室内壁面上に段差部分を設けるととも
にフロントハウジングにシャフトシール部とクランク室
を連通ずる油孔を穿設することによって楔形ロータの回
転によって生ずる遠心力により潤滑油が回転方向に流れ
出し、内壁面上を流動するのでこれを段差部分によって
受けとめ、油孔に導ひいてシャフトシール部に潤滑油を
供給していたが、潤滑油の流れは段差部分によって方向
変換されるとともに、油孔流人時にまた方向変換を行な
っているため、段差部分に沿って流れてきた潤滑油が油
孔人口部において漏れてしまっていた。

本考案はこのような欠陥を除去するため、筒状ケーシン
グ内壁面上に形成した段差部分の内周端に側面板を配す
ることによって段差部分に沿って流れる潤滑油の逃げを
防ぐとともに、油孔人口部での漏れを防ぎ、良好な潤滑
を行なう圧縮機を提供することを目的とする。

以下本考案を実施例を示す図面により説明する。

１は筒状ケーシングで内部にクランク室１ａを形成し、
一端には複数個のシリンダー３を設けたシリンダーブロ
ック２を配する。

該シリンダーブロック２の一端は吸入口Ｉと吐出口８を
穿設する弁板４、ガスケット５及び吸入室９と吐出室１
０を形成したシリンダーヘッド６によって閉塞し、前記
筒状ケーシング１の他端は中央部に主軸１１を支承した
フロントハウジング１２によって閉塞する。

１３は筒状ケーシング１の内壁面に軸方向にある角度を
有して設けた段差部分でフロントハウジング１２方向に
連続し、内周端には側面板１４を一体に形成する。

また段差部分１３の終端と対向し接触するフロントハウ
ジング１２の壁面上には、フロントハウジング１２内を
貫通し、クランク室１ａ側とシールポケット部１６を連
通ずる第１の油孔１５の一端を開口している。

シールポケット部１６には圧縮機内の冷媒ガスが漏れる
のを防止するためシャフトシール１８を配するとともに
、内端にはラジアル軸受１７を配して主軸１１を支承し
ている。

なお、主軸１１の中心部にはシールポケット部１６とク
ランク室１ａを連通ずる第２の油孔１９を穿設する。

２０は主軸１１の内端に嵌合した楔形ロータで、傾斜面
側には中央部に傘歯車２１を固着したプラネットプレー
ト２２を配し、該傘歯車２１はシリンダーブロック２の
中央孔に固着した歯数の等しい傘歯車２３と鋼球２４を
介して噛合い、プラネットプレート２２の回転を防止す
る。

該プラネットプレート２２の側面上には一端をシリンダ
ー３内に配したピストン２５と連結するロフト２６の端
部を球連結する。

フロントハウジング１２と楔形ロータ２０、楔形ロータ
２０とプラネットプレート２２の間隙には各部の運動を
円滑に行なわせるスラストニードルベアリング２７とス
ラストレース２８を挾持スる。

尚２９は筒状ケーシング１のクランク室１ａ内とシリン
ダーヘッド６の吸入室９を連通しているバランスホール
で、クランク室１ａ側の開口部には堰３０を形成する。

上記のような構成にてなる本考案において、クランク室
１ａ内に封入された潤滑油は圧縮機が駆動すると筒状ケ
ーシング１の内径に対しである間隙を有する楔形ローダ
２０によってクランク室１ａ内にかき上げられ、これに
遠心力が作用して筒状ケーシング１の内壁面に沿った流
れが生ずる。

この内壁面に沿った潤滑油の流れが、内壁面上に形成し
た段差部分１３によってフロントハウジング１２方向へ
の流れに変換され、段差部分１３及び側面板１４に沿っ
てフロントハウジング１２方向へ流れる。

フロントハウジング１２内壁面に到達した潤滑油は該内
壁面上に開口を有する第１の油孔１５に流入するが、段
差部分１３の内周端に側面板１４を設けているので到達
した潤滑油は全て油孔１５内に流入し、シールポケット
部１６に向かう。

第１の油孔１５よりシールポケット部１６に流入した潤
滑油はシャフトシール１８を潤滑するとともに、一部は
主軸１１に穿設した第２の油孔１９に流入して楔形ロー
タ２０とプラネットレート２２の間隙に流出し、流出し
た潤滑油によって鋼球２４を潤滑するとともに、楔形ロ
ータ２０の回転による遠心力で外周方向に飛ばされ、楔
形ロータ２０とプラネットプレート２２の間隙に配した
スラストニードルベアリング２７を潤滑するとともに、
プラネットプレート２２側面上にかしめたロット２６の
球面部を潤滑する。

またシールポケット部１６内の潤滑油は主軸１１とラジ
アル軸受１７の間隙を通過してクランク室１ａ内に戻る
が、この時ラジアル軸受１７の潤滑を行ない、さらにク
ランク室１ａに戻った潤滑油はフロントハウジング２と
楔形ロータ２０の間隙に流入し、楔形ロータ２０の回転
による遠心力で外周に飛ばされる時、フロントハウジン
グ１２内壁面と楔形ロータ２０の間隙に挾持したスラス
トニードルベアリング２１を潤滑する。

なおシリンダー３内に於けるピストン２５の圧縮行程で
は圧縮ガスの一部がシリンダー３とピストン２５の間隙
よりブローパイ（ｂｌｏｗ−ｂｙ）ガスとしてクランク
室１ａ内に漏れる。

このブローパイ（ｂｌｏｗ−ｂｙ）ガスはクランク室１
ａ内に開口したバランスホール２９により再び吸入室９
に戻されるが、ブローパイ（ｂｌｏｗ−ｂｙ）ガスはプ
ラネットプレート２２等に当ってガスに含まれている潤
滑油を分離するので、これによってピストン２５とロッ
ト２６の結合部等の潤滑を行なう。

なお、バランスホール２９上に堰３０を設けることによ
って筒状ケーシング１内壁面上を流れる潤滑油がバラン
スホール２９より流出することを防ぐ。

第２図及び第４図ａに示すように筒状ケーシング１内壁
面上に第１の油孔１５の中心線上で対称となる２つの段
差部分１３ａ、１３ｂを形成し、該段差部分１３ａ、１
３ｂに側面板１４を一体に形成すると、主軸１１を逆回
転させても潤滑油は第１の油孔１５よりシールポケット
部１６へ流入し、再びクランク室１ａ内に戻る回路を流
れて各部を潤滑する。

また、第５図に示すように、クランク室１ａとシールポ
ケット部１６を連通ずる第１の油孔１５を断面積がクラ
ンク室１ａ側で大きく、シールポケット部１６側で小さ
くなる２段孔あるいはテーパ一孔とすると、クランク室
１ａ内の楔形ロータ２０とシールポケット部１６内のメ
カニカルシールヘッドの回転によって生ずる遠心力の影
響が少なくなり、シールポケット部１６内への潤滑油の
流入が良好となる。

以上のように本考案は筒状ケーシング１の内壁面上にあ
る角度を有した直線状あるいは曲線状の段差部分１３を
１つあるいは２つ設けるとともに、該段差部分１３の内
周端に側面板１４を一体に形成しているので、主軸１１
の回転方向にかかわらず、段差部分１３によって流れの
方向を変換された潤滑油がフロントハウジング１２に穿
設した第１の油孔１５方向に流れ、該第１の油孔１５に
流入する時に該油孔１５より漏れる油量が減少し、圧縮
機内を循環する油量が増大するので各部への給油を良好
に行なえる効果を有する。

また、楔形ロータ２０とメカニカルシールヘッドの回転
によって生ずる遠心力が第１の油孔１５に流入する潤滑
油に与える圧力損失は第１の油孔１５を２段孔あるいは
テーパ一孔とすることによって緩和することができ、シ
ールポケット部１６には必要量の潤滑油が流入し、良好
な潤滑効果を得られる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示すもので、第１図は圧縮機の
正面図、第２図は平面図、第３図は第１図のＡ−Ａ’線
断面図、第４図ａは第２図のＢ−Ｂ’線断面図、ｂは本
考案の別の実施例を示す段差部分の断面図、第５図は本
考案の別の実施例を示すフロントハウジング部の断面図
である。 １・・・・・・筒状ケーシング、２・・・・・・シリン
ダーブロック、３・・・・・・シリンダー １１・・・
・・・主軸、１２・・・・・・フロントハウジング、１
３・・・・・・段差部分、１４・・・・・側面板、１５
・・・・・・第１の油孔、１６・・・・・・シールポケ
ット部、１８・・・・・・シャフトシール、１９・・・
・・・第２の油孔、２０・・・・・・楔形ロータ、２５
・・・−・・ピストン。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. １．主軸１１に固定したピストン駆動手段と、これによ
   り往復運動を行なう複数個のピストン２５を有し、該ピ
   ストン駆動手段を内包し、その一端あるいは両端にピス
   トン２５を往復運動させる複数個のシリンダー３を有す
   るシリンダーブロック２を設置した筒状ケーシング１の
   前端に主軸１１を貫通させて支承し、シャフトシール１
   ８を内包するシールポケット部１６を設けたフロントハ
   ウジングあるいはフロントヘッド１２を配した圧縮機に
   おいて、該筒状ケーシング１の内壁面上に軸方向に対し
   て任意の角度を有する直線状あるいは曲線状の段差部分
   １３を設け、該段差部分１３の終端が対向・接触するフ
   ロントハウジングあるいはフロントヘッド１２にシール
   ポケット部１６まで連通ずる第１の油孔１５を穿設し、
   該第１の油孔１５の一端を段差部分１３の終端と接触す
   る壁面に開口し、前記主軸１１にはシールポケット部１
   ６と筒状ケーシング１のクランク室１ａ内を連通ずる第
   ２の油孔１９を穿設するとともに、前記段差部分１３の
   内周端上に側面板１４を設けたことを特徴とする冷却用
   圧縮機の潤滑装置。 ２、第１の油孔１５を断面積がクランク室１ａ側で大き
   くシールポケット部１６側で小さくなるようにしたこと
   を特徴とする実用新案登録請求の範囲第１項記載の冷却
   用圧縮機の潤滑装置。