JPS6242159B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、冷媒ガスを圧縮する回転斜板式圧縮
機に関し、特に、潤滑機構の改善に関する。

一般に、回転斜板式圧縮機は、駆動軸に傾斜し
て固装された斜板の回転に伴なつてピストンがシ
リンダボア内を往復動し、吸入弁及び吐出弁と協
働して圧縮作用を行なうように構成されている。
前記斜板とピストンとの間にはボールとシユーと
が互いに滑動自在に介設され、斜板の回転運動の
ピストンの往復運動への変換が円滑に行なわれる
ようになつている。そして、これら斜板、ボー
ル、シユー及びピストン間の接触部分には激しい
摩擦が発生しており、このため、これら接触部分
には潤滑油を常時供給する必要がある。

従来、前記接触部分へ潤滑油を供給する潤滑油
供給機構の一つとして、差圧方式があり、駆動軸
の回転に伴なつて回転する斜板によりシリンダブ
ロツク内下方のオイル溜りから潤滑油をはね上げ
オイルミストとし、このオイルミストが前記接触
部分に供給されるとともに、斜板室と連通するシ
リンダボア内のピストンの往復動により発生する
斜板室と低圧室側との圧力差により該低圧室側に
導びかれ、駆動軸を回転自在に支持しているラジ
アル軸受等の潤滑を行なうようになつている。

しかしながら、この差圧方式に依ると、圧縮機
内の保持潤滑油が減少しオイル溜り内の潤滑油レ
ベルが低下して斜板によるはね上げ量が一時的に
減少し、その結果前記接触部分の潤滑が十分に行
われなくなり焼付けが発生すると云う欠陥があ
る。特に、上述した斜板室上部のボールとシユー
は摺動摩擦の度合が大きい上に潤滑油の供給量が
比較的少ないために、前記ピストン、シリンダボ
ア、ラジアル軸受等の圧縮機の他の部分に比して
焼付けが発生し易い。

上述のオイル溜り内の保持潤滑油が減少する原
因としては、オイルミストが前述したように圧力
差により低圧室内に導びかれるが、特に圧縮機の
始動直後は斜板の回転開始によりオイル溜り内の
圧力が急激に低下し、オイルの発泡現象が生じて
比較的多量の潤滑油が低圧室内に導びかれ、低圧
室から冷媒ガスと共にシリンダボア内に吸入され
て吐出され冷房サイクル内を循環し、この循環途
中において潤滑油が停滞し圧縮機への戻りが遅れ
た場合、冷房サイクルからの冷媒や潤滑油の漏出
があつた場合等、圧縮機への帰還冷媒ガスが減少
するために圧縮機に戻される潤滑油の量が減少す
ること等が挙げられる。

従つて、本発明は上述した不具合を解消するた
めになされたものであり、一時的に潤滑油レベル
が低下しても斜板とシユーやボール等との接触部
分の潤滑を確保するため、圧縮機の低圧室に吸引
される冷媒ガスの一部を分流して斜板室内に流通
させるようにした補助的給油機構を有する回転斜
板式圧縮機を提供することを目的とする。

以下本発明の実施例を図面を参照して説明す
る。

第１図乃至第３図は本発明の一実施例を示し、
一対のシリンダブロツク１，１が互いに軸方向に
整合して結合され、その両側にはバルブプレート
２，２を挾んでシリンダヘツド３，３が固装され
ている。このシリンダブロツク１，１の軸心に沿
つて図示しない駆動源により駆動される駆動軸４
がフロント側を外部に突出して挿入されている。

斜板５が駆動軸４に傾斜して固装され、一対の
シリンダブロツク１，１内に形成された斜板室６
内に配され、この斜板５と駆動軸４とは、スラス
トベアリング７，７及びラジアルベアリング８，
８を介してシリンダブロツク１，１に対して回転
自在に支持されている。

３個の複動形のピストン９が駆動軸４と平行
で、且つ円周方向に等間隔にシリンダブロツク
１，１に形成された例えば３個のシリンダボア１
２内に各々摺動自在に挿入されている。

これらのピストン９は、各々その中央部分の内
側が斜板５の周縁をまたぐようにえぐられ、その
えぐられた部分の対向する両端面に半球状のボー
ルポケツト１０，１０が形成され、これらのボー
ルポケツト１０，１０に嵌められたボール１１，
１１、及びこのボール１１，１１に係合するシユ
ー２８，２８を介して、斜板５の両側面を挾み付
けるようにして斜板５とかみ合つている。従つ
て、駆動軸４の回転に伴なつて斜板５は揺動回転
してその両側面に摺接されるシユー２８，２８に
押圧力を与え、これにより各ピストン９が夫々の
シリンダボア１２内を往復動する。

上記各シリンダボア１２は、その両側がバルブ
ブレート２，２によつて閉じられていると共に、
その中央側が斜板室６に連通している。

前記シリンダヘツド３，３のそれぞれには隔壁
１３，１３が形成され、シリンダヘツド内部をシ
リンダブロツク１，１の外方端側にそれぞれ位置
して設けられた低圧室１４，１４と高圧室１５，
１５とに仕切つている。リア側の低圧室１４と高
圧室１５には、数パーセントの潤滑油が混入した
冷房サイクルから低圧室に吸引される冷媒ガス
（以下、「冷媒ガス」という。特許請求の範囲も同
じ。）が吸入又は吐出される吸入口１６と吐出口
（図示せず）とがそれぞれ設けられている。ま
た、低圧室１４，１４はバルブプレート２，２に
形成された吸入孔１７，１７を介して、また高圧
室１５，１５は同じくバルブプレート２，２に形
成された吐出孔１８，１８を介してそれぞれのシ
リンダボア１２と連通し、吸入孔１７，１７と吐
出孔１８，１８はバルブプレート２，２の両側に
設けられた吸入弁１９，１９と吐出弁２０，２０
とにより閉じられるようにされている。さらに、
フロント側の低圧室１４とリア側の低圧室１４と
は、この実施例においてはシリンダブロツク１，
１及びバルブプレート２，２に形成された吸入通
路２１を介して、両高圧室１５，１５同志は同じ
くシリンダブロツク１，１に形成された吐出通路
２２を介してそれぞれ連通されている。この吸入
通路２１及び吐出通路２２は、斜板室６を囲む仕
切部材２３によつて斜板室６と仕切られている。
尚、フロント側の低圧室１４にはシール装置２７
が配され、フロントシリンダヘツド３と駆動軸４
との間をシールしている。

オイル溜り２９が、斜板室６の下方でフロント
及びリアシリンダヘツド３，３まで延長されて形
成されており、このオイル溜り２９内に溜められ
ている潤滑油に斜板５の周縁が漬つている。

第３図および第４図に示すように、前記仕切部
材２３は夫々前後シリンダブロツク１，１と一体
に形成され互いに軸方向に整合して結合されたフ
ロント側分割体２３ａとリア側分割体２３ｂとを
斜板室６の軸方向略中央位置にて互いに突き合わ
せて構成されている。吸入通路２１内において、
フロント側分割体２３ａの軸方向に延びる側壁の
内方端部には案内壁２４が半径方向外方に突出す
るように形成されている。この案内壁２４は両分
割体２３ａ，２３ｂの突き合せ面２５から若干間
隔をおいた分割体２３ａの側壁の内方端近傍から
半径方向外方に一体に延出する半径方向壁部２４
ａと、該壁部２４ａから軸方向に且つ冷媒ガス流
の上流側に向つて一体に延びる軸方向壁部２４ｂ
とから成つている。半径方向壁部２４ａは仕切部
材２３本体側面に対し直角に従つて冷媒ガスの流
れ方向に直角に配置されている。また、軸方向壁
部２４ｂは前記突合せ面２５と略同一面上に終止
する自由端を有し、且つ仕切部材２３の側面とシ
リンダブロツク１の対向内面との間の吸入通路２
１部分の横断方向略中央に位置して冷媒ガス流を
分流するようにされている。前記案内壁２４の内
面とリア側分割体２３ｂの対向内方端面とにより
冷媒ガス流入孔２６が画成され、この流入孔２６
の一端は案内壁２４の軸方向壁部２４ｂの自由端
とリア側分割体２３ｂの対向内方端間にて吸入通
路２１内に軸方向に且つ冷媒ガス流の上流側に向
けて開口し、他端は半径方向壁部２４ａ側面とリ
ア側分割体２３ｂの対向内方端間にて斜板室６の
軸方向の略中央に半径方向に向けて開口してい
る。

また、仕切部材２３の半径方向に延びるフロン
ト側端壁には斜板室６と吸入通路２６とを連通す
る冷媒ガス流出孔２７が形成されている。

上記構成において、駆動軸４を回転させると、
斜板５が揺動回転してピストン９がそれぞれのシ
リンダボア１２内を往復動し、吸入弁１９，１９
及び吐出弁２０，２０と協働して圧縮作用が行な
われる。それと共に斜板５の回転によつてオイル
溜り２９の潤滑油がはね上げられ、斜板５とシユ
ー２８，２８、シユー２８，２８とボール１１，
１１、ボール１１，１１と各ピストン９との接触
部分給油される。

吸入口１６からリア側の低圧室１４に流入した
冷媒ガスは、低圧室１４内で矢印で示すように分
かれ、その一部が吸入通路２１を介してフロント
側の低圧室１４に送られる。このとき、吸入通路
２１を通過する冷媒ガスの一部は、矢印で示すよ
うに、案内壁２４の軸方向壁部２４ｂによつて流
入孔２６内に分流される。この分流された冷媒ガ
スは半径方向壁部２４ａに衝突して下方向に偏向
され斜板室６のほぼ中央に導びかれる。そして、
斯く導入された冷媒ガスはこの斜板室６内におい
て斜板５の揺動に伴つてその両側面に衝打され、
これにより、その方向が急激に変更されるので、
冷媒ガス中の潤滑油が分離され、斜板５とシユー
２８，２８等の接触部分に給油される。斯く潤滑
油を分離された冷媒ガスは冷媒ガス流出孔２７か
ら吸入通路２１へと排出されていく。

従つて、オイル溜り２９のオイルレベルが低下
して斜板５による潤滑油のはね上げが一時的にな
くなつても上記接触部分への給油が確保されるの
で、焼付等の危険をなくすることができる。ま
た、冷媒ガス中の潤滑油が斜板室６内で分離され
るので、潤滑油のオイル溜り２９への帰還を早め
ることができるのである。

さらに、冷媒ガス流入孔２６の上部を覆うよう
に軸方向壁部２４ｂが延設されているので、斜板
５によつてはね上げられた潤滑油がこの冷媒ガス
流入孔２７を通過して吸入通路２１内に飛散して
漏洩してしまう事態が防止される。従つて、潤滑
油の漏洩によるオイル溜り内の潤滑油レベルの低
下を防止することができるとともに、冷媒中に潤
滑油が混入することよる冷房能力の低下現象を抑
制することができる。

尚、半径方向壁部２４ａと冷媒ガス流入孔２６
とは冷媒ガスを斜板室６のほぼ中央に導びくため
のものであるから、第５図乃至第７図に示す他の
実施例によつても同様の作用効果を奏することが
できる。第５図は半径方向壁部２４ａを、吸入通
路２１内の冷媒ガス流の上流方向に傾斜して形成
した例を、第６図は半径方向壁部２４ａを同じ冷
媒ガス流の下流方向に傾斜して形成した例を、ま
た、第７図は案内壁２４を仕切部材２３本体と別
体に形成し、該本体２３に溶着、溶着等適当な手
段で固着した例をそれぞれ示すものである。

第８図は本発明の更に別の実施例を示し、この
実施例では、仕切部材２３のフロント側分割体２
３a′の半径方向寸法をその軸方向長さ全体に亘つ
て大きく設定し、該分割体２３a′の内方端とリア
側分割体２３ｂの内方端とを、両分割体２３a′，
２３ｂの突合せ面２５と同一平面上において互い
に半径方向に食い違つた位置にあるようにし、両
内方端間に冷媒ガス流入孔２６′を冷媒ガス流路
上流側に向つて吸入通路２１内に軸方向に開口す
るように画成したものである。この構成に依れ
ば、前述した第１図乃至第７図の実施例について
述べたと同様の効果が得られることに加え、これ
らの実施例に対して、前述した案内壁２４を特に
形成する必要がないのでフロント側分割体２３
a′の成形加工がより容易にできると云う利点があ
る。尚、フロント側分割体２３a′の内方端を第８
図の破線に示すようにリア側分割体２３ｂの内方
端を覆うように更に冷媒ガス流路上流側に延出さ
せてもよく、これにより斜板５によりはね上げら
れた潤滑油が斜板室６から流入孔２６′を介して
吸入通路２１内に漏出する可能性をより小さくす
ることができる。

尚、第１図および第８図に示すように、仕切部
材のフロント側分割体２３ａ，２３a′のフロント
側端壁には冷媒ガス流出孔２７を形成している
が、リア側分割体２３ｂのリア側端壁にも同様の
流出孔をフロント側分割体２３ａ，２３a′の流出
孔２７に代えてまたはこの流出孔２７と共に設け
てもよい。

以上説明したように、本発明に依れば、一方の
低圧室と他方の低圧室とを連通する吸入通路を通
過する冷媒ガスを斜板室内に導びく流入孔を斜板
室と吸入通路とを仕切る仕切部材の側面に形成
し、且つこの流入孔を冷媒ガスの流路上流側に向
つて軸方向に吸入通路内に開口させたので、斜板
とシユー等の接触部分に給油する一手段を提供す
ることができ、そのためオイル溜りの潤滑油の量
が十分でない場合でも焼付等を防止することがで
きると共に、冷媒ガス中の潤滑油が斜板室内で分
離されるから潤滑油の帰還を早めることができ、
しかも、斜板によりはね上げられた潤滑油の吸入
通路への漏洩を防止することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図乃至第４図はこの発明の第１の実施例を
示し、第１図は縦断面図、第２図は斜板、ピスト
ン、ボール及びシユーを省略した第１図の−
線断面図、第３図は第２図の−線断面図、第
４図は要部拡大図であり、第５図は同第２の実施
例の要部を示す断面図、第６図は同第３の実施例
の要部を示す断面図、第７図は同第４の実施例の
要部を示す断面図、第８図は同第５の実施例の要
部を示す断面図である。 １……シリンダブロツク、５……斜板、６……
斜板室、１４……低圧室、１６……吸入口、２１
……吸入通路、２３……仕切部材、２３ａ，２３
a′，２３ｂ……分割体、２４……案内壁、２６，
２６′……冷媒ガス流入孔、２７……冷媒ガス流
出孔。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 互いに軸方向に整合して結合された２つのシ
   リンダブロツクと、各シリンダブロツクの外方端
   側に設けられ一方が冷媒ガス吸入口を備える２つ
   の低圧室と、両低圧室同志を連通する吸入通路
   と、吸入通路と斜板を収容する斜板室とを仕切り
   軸方向に延びる側壁と半径方向に延びる両端壁と
   から成る仕切り部材とを備える回転斜板式圧縮機
   において、前記仕切り部材の側壁に前記吸入通路
   と前記斜板室とを連通する冷媒ガス流入孔を、冷
   媒ガス流の上流側に向けて開口するように形成す
   るとともに、前記仕切部材の両端壁の少なくとも
   一方に斜板室と吸入通路とを連通する冷媒ガス流
   出孔を形成して成ることを特徴とする回転斜板式
   圧縮機。 ２ 前記冷媒ガス流入孔を前記仕切り部材の側壁
   の斜板室の軸方向の略中央に対応する部分に、そ
   の一端が斜板室の軸方向の略中央部分に開口し他
   端を吸入通路内に軸方向に向けて開口するように
   形成させて成る、特許請求の範囲第１項記載の回
   転斜板式圧縮機。 ３ 前記仕切部材の側壁に、前記吸入通路側に冷
   媒ガス流方向に対し傾斜角をもつて延出する半径
   方向壁部と、該半径方向壁部から一体に軸方向に
   且つ吸入通路の冷媒ガス流上流側に向つて延びる
   軸方向壁部とから成る冷媒ガス案内壁を形成し、
   前記冷媒ガス流入孔を前記軸方向壁部と半径方向
   壁部に沿つて形成して成る、特許請求の範囲第１
   項記載の回転斜板式圧縮機。 ４ 前記仕切部材を互いに軸方向に整合して結合
   された２つの分割体により形成し、前記案内壁を
   これら２つの分割体のいずれか一方の内方端部に
   形成して成る、特許請求の範囲第３項記載の回転
   斜板式圧縮機。 ５ 前記仕切壁を互いに軸方向に整合して結合さ
   れた２つの分割体により形成し、前記吸入通路内
   の冷媒ガス流下流側の分割体の半径方向寸法を他
   方の分割体のそれより大きく設定して両分割体の
   対向内方端を半径方向に食い違つた位置に配置
   し、これら対向内方端間に前記冷媒ガス流入孔を
   画成して成る、特許請求の範囲第１項記載の回転
   斜板式圧縮機。