JPH1187634A - 薄膜キャパシタ - Google Patents

薄膜キャパシタ

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JPH1187634A
JPH1187634A JP9238088A JP23808897A JPH1187634A JP H1187634 A JPH1187634 A JP H1187634A JP 9238088 A JP9238088 A JP 9238088A JP 23808897 A JP23808897 A JP 23808897A JP H1187634 A JPH1187634 A JP H1187634A
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Japan
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thin film
film
lower electrode
perovskite
dielectric
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JP9238088A
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Takashi Kawakubo
隆 川久保
Kazuhide Abe
和秀 阿部
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大きな残留分極と低い抗電界を持つ強誘電体
薄膜キャパシタや、大きな誘電率を持つ常誘電体薄膜キ
ャパシタが求められている。 【解決手段】 下部電極2として表面に立方晶系または
正方晶系の {001}面または {011}面が現れている導電性
材料を用いる。この下部電極2の {001}面または{011}
面上に、BaTiO3 を主成分とすると共に、そのBサ
イト元素のTiをZr、HfおよびSnから選ばれた少
なくとも 1種の元素により置換し、室温において斜方晶
系または菱面体晶系の結晶構造が安定となる組成を有す
るペロブスカイト型酸化物からなる誘電体薄膜3を配向
成長させる。これにより、歪んだ斜方晶系もしくは全く
新しい単斜晶系のペロブスカイト型結晶構造をもつ誘電
体薄膜3とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体記憶装置等
に用いられる薄膜キャパシタに関する。
【0002】
【従来の技術】最近、記憶媒体として強誘電体薄膜を用
いた記憶装置(強誘電体メモリ(FRAM))の開発が
行われており、一部では既に実用化されている。強誘電
体メモリは不揮発性であり、電源を落とした後も記憶内
容が失われず、しかも強誘電体薄膜の膜厚が十分に薄い
場合には自発分極の反転が早く、DRAM並みに高速の
書き込みおよび読み出しが可能である等の特徴を有して
いる。また、 1ビットのメモリセルを 1つのトランジス
タと 1つの強誘電体薄膜キャパシタで作製することがで
きるため、大容量化にも適している。
【0003】ここで、強誘電体メモリに用いる強誘電体
薄膜には、残留分極が大きい、抗電界が小さい、残留分
極の温度依存性が小さい、残留分極の長時間保持が可能
である(リテンション)等の特性を有することが求めら
れている。
【0004】現在、強誘電体材料としては、主としてジ
ルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3 (以下、
PZTと略記する))が用いられている。PZTはジル
コン酸鉛とチタン酸鉛の固溶体であるが、ほぼ 1:1のモ
ル比で固溶したものは自発分極が大きく、低い電界でも
反転することができ、記憶媒体として優れていると考え
られている。さらにPZTは、強誘電体相と常誘電体相
の転移温度(キュリー温度)が573K以上と比較的高いた
め、通常の電子回路が使用される温度範囲(例えば393K
以下)では、記憶された内容が熱によって失われる心配
が少ないという利点を有している。
【0005】しかしながら、PZTは良質な薄膜を作製
することが難しいことが知られている。第一に、PZT
の主成分である鉛は773K以上で蒸発しやすく、そのため
組成の正確な制御が難しい。第二に、PZTはペロブス
カイト型結晶構造を形成したときに初めて強誘電性が現
れるが、このペロブスカイト型結晶を持つPZTは得に
くく、パイロクロアと呼ばれる結晶構造の方が容易に得
られやすいという問題がある。また、シリコンデバイス
に応用した場合には、主成分である鉛のシリコン中への
拡散を防ぐことが難しいという問題もある。
【0006】PZT以外ではチタン酸バリウム(BaT
iO3 (以下、BTOと略記する))が代表的な強誘電
体として知られている。BTOはPZTと同じくペロブ
スカイト型結晶をもち、キュリー温度は約393Kであるこ
とが知られている。Pbと比べるとBaは蒸発しにくい
ので、BTOは薄膜作製過程で組成の制御が比較的容易
である。また、BTOは結晶化した場合にペロブスカイ
ト型以外の結晶構造をとることがほとんどない。
【0007】上記したような長所を有するにもかかわら
ず、BTOの薄膜キヤパシタが強誘電体メモリの記憶媒
体としてさほど検討されていない理由としては、BTO
はPZTと比べて残留分極が小さく、しかも残留分極の
温度依存性が大きいことが挙げられる。この原因はBT
Oのキュリー温度が低い(393K)ことにある。BTOを用
いて強誘電体メモリを作製した場合、373K以上の高温に
さらされた際に記憶内容が失われるおそれがあるばかり
ではなく、通常電子回路が使用される温度範囲(358K以
下)でも残留分極の温度依存性が大きく、動作が不安定
である。従って、BTOからなる強誘電体薄膜を使用し
た薄膜キャパシタは、強誘電体メモリの記憶媒体として
の用途に適さないと考えられてきた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、BT
O薄膜を使用した薄膜キャパシタは、強誘電体メモリの
記憶媒体としての用途に適さないと考えられてきた。こ
れに対して本発明者らは先に、下部電極に例えばSrR
uO3 (以下、SROと略記する)を用いると共に、こ
のSROの格子定数に比較的近く、かつやや大きい格子
定数を持つ誘電体材料、例えばBax Sr1-x TiO3
(以下、BSTOと略記する)を選択し、またRFマグ
ネトロンスパッタ法等の成膜過程でミスフィット転位が
比較的入りにくい成膜方法を採用してエピタキシャル成
長させることによって、エピタキシャル効果により本来
の立方晶(x≦0.7)あるいは正方晶(x>0.7)構造の誘電体
の格子定数よりも膜厚(c軸)方向に格子定数が伸び、
面内(a軸)方向の格子定数が縮んだ状態を保つことが
できることを見出した(特開平8-139292号公報参照)。
その結果、強誘電キュリー温度を高温側にシフトさせ、
室温領域で大きな残留分極を示し、かつ358K程度まで温
度を上げても十分に大きな残留分極を保持できる強誘電
体薄膜が実現可能であることを確認している。
【0009】例えば、基板としてMgO単結晶基板やS
rTiO3 単結晶基板を用い、下部電極としてSRO
(格子系は擬立方晶であり、立方晶に換算したときの格
子定数a=0.3930nm)を使用し、誘電体としてBSTOの
xが0.30〜0.90の組成領域を用いることによって、本来
室温では強誘電性を示さないはずの組成領域(x≦0.7)で
も強誘電性が発現し、またもともと室温で強誘電性を示
す組成領域(x>0.7)では、本来室温以上にあるキュリー
温度がさらに上昇するという、実用上好ましい強誘電体
特性が実現できることを実験的に確認している。
【0010】ところが、本発明者らのその後の実験か
ら、誘電体としてBSTOエピタキシャル膜を用い、強
誘電性を発現あるいは強誘電性を強化した強誘電体薄膜
は、不揮発性メモリの記憶媒体として用いる際に、次の
ような難点を有していることが分かった。すなわち、残
留分極量が十分に大きく、かつリーク電流が低く抑えら
れるように、Ba/Sr組成比、膜厚、下部電極との不
整合歪量等を選んだ場合には、分極を反転させるための
抗電界が高くなってしまう。
【0011】より具体的には、通常のバルクのBTO単
結晶の抗電界は 0.5〜2kV/cmであるのに対し、強く歪ま
せたエピタキシャルBTO膜では抗電界が500kV/cm〜2M
V/cm程度となり、たとえ膜厚20nm程度の極薄誘電体薄膜
にしても、その抗電圧は数Vにもなってしまう。このよ
うな強誘電体薄膜を半導体メモリのキャパシタに適用す
る場合、メモリの電源電圧は年々低下して数年後には1V
以下になることが予想されており、大きな抗電界は実用
上問題となるため、抗電界を低下させることが強く望ま
れる。
【0012】本発明は、格子歪を利用した誘電体薄膜を
半導体メモリ等に使用する際に予想される難点を克服す
るためになされたものであり、優れた強誘電性もしくは
常誘電性を有し、しかも強誘電性を利用する場合には残
留分極の温度依存性が低い薄膜キャパシタ、さらには抗
電界を低下させた薄膜キャパシタを提供することを目的
としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明における第1の薄
膜キャパシタは、請求項1に記載したように、下部電極
と、前記下部電極上に形成されたペロブスカイト型酸化
物からなる誘電体薄膜と、前記誘電体薄膜上に形成され
た上部電極とを具備する薄膜キャパシタにおいて、前記
下部電極は表面に立方晶系または正方晶系の {001}面が
現れている導電性材料からなり、かつ前記誘電体薄膜は
前記下部電極の {001}面上に配向成長していると共に、
単斜晶系のペロブスカイト型結晶構造をもつことを特徴
としている。
【0014】あるいは請求項2に記載したように、下部
電極と、前記下部電極上に形成されたペロブスカイト型
酸化物からなる誘電体薄膜と、前記誘電体薄膜上に形成
された上部電極とを具備する薄膜キャパシタにおいて、
前記誘電体薄膜はBaTiO3 を主成分とし、かつ単斜
晶系のペロブスカイト型結晶構造をもつことを特徴とし
ている。
【0015】本発明における第2の薄膜キャパシタは、
請求項3に記載したように、下部電極と、前記下部電極
上に形成されたペロブスカイト型酸化物からなる誘電体
薄膜と、前記誘電体薄膜上に形成された上部電極とを具
備する薄膜キャパシタにおいて、前記下部電極は表面に
立方晶系または正方晶系の {011}面が現れている導電性
材料からなり、かつ前記誘電体薄膜は前記下部電極の
{011}面上に配向成長していると共に、斜方晶系または
単斜晶系のペロブスカイト型結晶構造をもつことを特徴
としている。
【0016】あるいは請求項4に記載したように、下部
電極と、前記下部電極上に形成されたペロブスカイト型
酸化物からなる誘電体薄膜と、前記誘電体薄膜上に形成
された上部電極とを具備する薄膜キャパシタにおいて、
前記誘電体薄膜はBaTiO3 を主成分とし、かつ前記
下部電極との格子不整合に基く歪みを有する斜方晶系ま
たは単斜晶系のペロブスカイト型結晶構造をもつことを
特徴としている。
【0017】本発明の薄膜キャパシタにおいて、前記誘
電体薄膜は例えば請求項5に記載したように、BaTi
3 を主成分とすると共に、前記BaTiO3 の少なく
ともBサイト元素のTiがZr、HfおよびSnから選
ばれた少なくとも 1種の元素により置換され、室温にお
いて斜方晶系または菱面体晶系の結晶構造が安定となる
組成を有するペロブスカイト型酸化物からなるものであ
る。さらに、請求項6に記載したように、前記単斜晶系
ないしは斜方晶系のペロブスカイト型結晶構造を有する
誘電体薄膜の底面の格子定数をaf およびbf (ただし
f ≦bf )とし、かつ底面に垂直方向の格子定数をc
f としたとき、前記bf およびcf は1.002<cf /b
f < 1.100の関係を満足することが好ましい。
【0018】本発明の薄膜キャパシタにおいては、例え
ば下部電極に立方晶または正方晶の{001}面もしくは {0
11}面を有する導電性材料を選択し、これら {001}面も
しくは {011}面上に本来の斜方晶系または菱面体晶系か
ら歪ませた斜方晶系もしくは単斜晶系のペロブスカイト
型結晶構造をもつ誘電体薄膜を配向成長させている。こ
のように、ペロブスカイト型酸化物からなる誘電体薄膜
に歪を誘起することによって、大きな残留分極もしくは
誘電率を得ることができ、さらにはキュリー温度を向上
させることが可能となる。
【0019】さらに、例えばBaTiO3 誘電体のBサ
イト元素であるTiをZr、HfおよびSnから選ばれ
た少なくとも 1種の元素により置換し、本来のバルク結
晶では斜方晶系や菱面体晶系が安定な組成を選び、これ
ら誘電体よりもわずかに小さい格子定数を持つ立方晶系
または正方晶系の {001}面もしくは {011}面上に配向成
長させて、本来の斜方晶系または菱面体晶系から歪ませ
た斜方晶系もしくは単斜晶系のペロブスカイト型結晶構
造とすることによって、大きな残留分極と低い抗電界を
有する強誘電体薄膜キャパシタ、もしくは大きな誘電率
を持つ常誘電体薄膜キャパシタが得られる。
【0020】ここで、図1に基本となるBaTiO3
電体の温度と安定な結晶構造との関係を示す。すなわ
ち、BaTiO3 は高温では立方晶、393K(120℃)以下
では正方晶、273K(0℃)以下では斜方晶、183K(-90℃)
以下では菱面体晶に変態する。このとき、立方晶ではa
=b=cで分極は生じず常誘電体であるが、正方晶はa
=b<cであり、伸びたc軸方向である〈 001〉方向に
分極が生じて強誘電体となる。斜方晶は本来のペロブス
カイト基本格子とは単位胞の取り方が異なるが、本来の
基本格子で考えるとa<b=cであり、同様に伸びたb
軸とc軸からなる面対角の方向である〈 011〉方向に分
極が生じる。菱面体晶ではa=b=cであるが、それぞ
れの軸の作る角は、角ab=角bc=角ac≠90゜であ
り、同様に伸びた対角方向である〈 111〉方向に分極を
生じる。ただし、本来のBaTiO3 の斜方晶および菱
面体晶は上記したように室温下では安定に存在し得ない
ものである。
【0021】次に、BaTiO3 結晶に各種の元素を置
換していったときの相転移温度の変化を図2に示す。す
なわち、Aサイト元素であるBaをSrやCaで置換し
た場合には、正方晶−立方晶転移温度(キュリー温度)
や正方晶−斜方晶転移温度が低下していき、室温では置
換量が多くなると正方晶から立方晶が安定になる。ここ
で、前述したように正方晶や立方晶のBaTiO3 結晶
を、下部電極との格子不整合を利用して面内に圧縮歪を
導入して正方晶に強く歪ませることで、強誘電性を発現
させたり、強誘電性を増大させることができる。ただ
し、この場合には抗電界が大きくなる。
【0022】一方、Bサイト元素であるTiをZr、H
fおよびSnから選ばれた少なくとも 1種の元素により
置換した場合、抗電界は低下して、いわゆるソフト強誘
電体になることが知られている(K.Nagata and K.Taiyo
ta, JJAP 28, Suppl. 28-2(1988) pp.98-101)。相変態
に関しては、正方晶−立方晶転移温度(キュリー温度)
が低下するのはAサイト置換と同様であるが、正方晶−
斜方晶転移温度や斜方晶−菱面体晶転移温度は著しく上
昇する。すなわち、室温では置換量が多くなると正方
晶、斜方晶、菱面体晶の順で安定になる。
【0023】しかしながら、バルクの誘電体のままでは
強誘電キュリー温度が393Kからさらに低下するため、半
導体メモリ等には適さない。一方、少量のBサイト元素
を置換した正方晶の結晶に関しては、同様に、下部電極
との格子不整合を利用して面内に圧縮歪を導入して強く
歪んだ正方晶にすることで、強誘電性を増大させると共
にキュリー温度を上昇させることができる。
【0024】すなわち、例えばBaTiO3 結晶のBサ
イト元素であるTiをZr、HfおよびSnから選ばれ
た少なくとも 1種の元素により置換し、室温において斜
方晶系または菱面体晶系の結晶構造が安定となる組成を
有するペロブスカイト型酸化物を、誘電体薄膜として使
用することによって、抗電界を下げることができる。た
だし、本来の斜方晶系または菱面体晶系のままでは、上
述したようにキュリー温度が低下してしまう。そこで、
これら誘電体薄膜を立方晶系または正方晶系の{001}面
もしくは {011}面上に配向成長させ、本来の斜方晶系ま
たは菱面体晶系から歪ませた斜方晶系もしくは単斜晶系
のペロブスカイト型結晶構造とすることによって、低い
抗電界を維持したまま、室温での残留分極およびキュリ
ー温度を向上させることができる。また、誘電体薄膜の
組成によっては、大きな誘電率と高いキュリー温度をも
つ常誘電体薄膜キャパシタが得られる。
【0025】立方晶系または正方晶系の {001}面もしく
は {011}面上に配向成長させた際の結晶系は、 {001}面
上に本来の結晶系が斜方晶系であるペロブスカイト型酸
化物(例えばBサイト元素の一部を置換したBaTiO
3 )を配向成長させると単斜晶系(I) となり、本来の結
晶系が菱面体晶系であるペロブスカイト型酸化物を配向
成長させると単斜晶系(I) とは異なる単斜晶系(II)とな
る。また、 {011}面上に本来の結晶系が斜方晶系である
ペロブスカイト型酸化物を配向成長させると歪んだ斜方
晶系となり、本来の結晶系が菱面体晶系であるペロブス
カイト型酸化物を配向成長させると単斜晶系(III) とな
る。
【0026】このように、本発明の薄膜キャパシタは、
歪んだ斜方晶系もしくは全く新しい単斜晶系のペロブス
カイト型結晶構造をもつ誘電体薄膜を有するものであ
り、ペロブスカイト型酸化物の組成や歪量によって強い
強誘電性と低い抗電界を兼ね備えたFRAMに適した強
誘電体薄膜キャパシタや、非常に大きな誘電率をもつD
RAMに適した常誘電体薄膜キャパシタを得ることがで
きる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための形
態について説明する。
【0028】図3は、本発明の第1の薄膜キャパシタの
一実施形態の構成を示す図である。同図において、1は
基板であり、この基板1としてはSrTiO3 単結晶基
板やMgO単結晶基板等の酸化物単結晶基板、もしくは
Si基板等の半導体基板が用いられる。基板1としてS
i基板を用いる場合には、例えばポリシリコン(poly-S
i)やタングステン(W)等からなるプラグを有するも
のであってもよい。
【0029】上述した基板1上には、下部電極2、ペロ
ブスカイト型酸化物からなる膜厚20〜 100nm程度の誘電
体薄膜3および上部電極4が順に形成されており、これ
らによって薄膜キャパシタ5が構成されている。この薄
膜キャパシタ5は、例えばFRAM(強誘電体メモリ
(不揮発性メモリ))の電荷蓄積部(記憶媒体)として
使用されるものである。ただし後述するように、誘電体
薄膜3の組成や歪量によっては、誘電率を増大させたD
RAM用の薄膜キャパシタとして使用することもでき
る。
【0030】なお、基板1と下部電極2との間には、密
着性を向上させるTa、TiN、Ti1-x Alx N等か
らなるアドヒージョン層や、これらの間の反応を防ぐと
共に拡散を防止する、PtやRuあるいはRuの酸化物
等からなるバリヤ層等を介在させてもよい。また、薄膜
キャパシタ5の具体的なデバイス構造は特に限定される
ものではなく、平面型、スタック型、内堀り式トレンチ
型等、いかなる構造であってもよい。
【0031】上述した薄膜キャパシタ5を構成する各層
のうち、誘電体薄膜3には例えばBaTiO3 (BT
O)を主成分とするぺロブスカイト型酸化物が用いら
れ、特にBaTiO3 の少なくともBサイト元素のTi
をZr、HfおよびSnから選ばれた少なくとも 1種の
元素により置換し、室温において斜方晶系または菱面体
晶系の結晶構造が安定となる組成を有するペロブスカイ
ト型酸化物が用いられる。BTOのBサイト元素の一部
をZr、Hf、Snで置換することによって、前述した
ように室温では斜方晶系や菱面体晶系の結晶構造が安定
となりやすく、さらにBTOの抗電界を下げることがで
きる。ここで、Zr、Hf、Sn元素によるBサイト元
素の置換量は 2〜90モル% の範囲とすることが好まし
い。Bサイト元素の置換量が 2モル% 以下では抗電界が
十分に小さくならず、一方90モル% を超えると強誘電性
が小さくなり、また誘電率も低下する。
【0032】BTO等の誘電体薄膜3の主成分となるぺ
ロブスカイト型酸化物の元素置換はBサイト元素に限ら
ず、例えばBTOのAサイト元素であるBaの一部をS
rやCa等の元素で置換してもよい。SrやCa等によ
るAサイト置換は、強誘電性や誘電率の向上、またキュ
リー温度の向上等に寄与する。Aサイト元素の置換量は
95モル% 以下とすることが好ましい。Aサイト元素の置
換量が95モル% を超えると強誘電性が小さくなり、また
誘電率も低下する。
【0033】BTOを主成分とするペロブスカイト型酸
化物からなる誘電体薄膜3は、Bサイト元素やAサイト
元素の置換量、さらには後述する歪量により、強誘電体
薄膜もしくは常誘電体薄膜となる。従って、薄膜キャパ
シタ5の使用目的に応じて、ペロブスカイト型酸化物の
組成や歪量を設定するものとする。例えば、Bax Sr
1-x TiO3 の場合、Baのモル分率xが0.30〜 1の範
囲であると強誘電性を示す。なお、Baのモル分率xは
リーク電流等を防ぐ上で、0.95以下とすることが好まし
い。一方、Baのモル分率xが 0〜 0.3の範囲であると
常誘電性を示す。これらはBサイト元素の置換量によっ
ても変化する。
【0034】上述した誘電体薄膜3を配向成長させる際
の下地となる下部電極2には、表面に立方晶系または正
方晶系の (001)面が現れている導電性材料が用いられ
る。下部電極2の構成材料としては、立方晶系または正
方晶系の結晶構造を有し、かつBaTiO3 のa軸(0.3
992nm)よりやや小さい格子定数、具体的に 0.385〜0.39
8nm程度の格子定数をもつ、耐酸化性に優れた導電性材
料であれば、種々の材料を使用することができる。具体
的には、(Ba,Sr,Ca)RuO3 、(Ba,S
r,Ca)ΜoO3 、LaSrCuO3 等の各種の導電
性ペロブスカイト型酸化物、もしくはPt等の貴金属を
使用することができる。
【0035】このような導電性材料からなる下部電極2
は、その表面に立方晶系または正方晶系の (001)面が現
れるように基板1上に形成される。そして、この下部電
極2の立方晶系または正方晶系の (001)面上に、室温に
おいて斜方晶系または菱面体晶系の結晶構造が安定とな
る組成を有するペロブスカイト型酸化物からなる誘電体
薄膜3を配向成長させる。
【0036】なお、上部電極4は特に限定されるもので
はないが、下部電極2と同様な導電性ペロブスカイト型
酸化物、あるいはPt、Ru、Ru酸化物等で構成する
ことが好ましい。
【0037】ここで、下部電極2上に形成する誘電体薄
膜3は、下部電極2に対して少なくとも配向成長してい
ればよく、さらに言えば下部電極2の個々の結晶粒の上
に誘電体薄膜3の個々の結晶粒が配向成長していればよ
く、これにより下部電極2の拘束作用によって、格子定
数の差に基く歪をBTOを主成分とするぺロブスカイト
型酸化物からなる誘電体薄膜3に誘起することができ
る。
【0038】配向成長の具体例としては、例えばRFマ
グネトロンスパッタ法等の成膜過程でミスフィット転位
が比較的入りにくい成膜方法を採用したエピタキシャル
成長が挙げられる。ただし、エピタキシャル成長に限ら
れるものではなく、下部電極2と誘電体薄膜3との界面
で局所的にエピタキシャル成長しているような場合であ
ってもよい。局所的なエピタキシャル成長の例として
は、下部電極2と誘電体薄膜3との積層部が基板面に対
して略垂直方向に連続し、かつ結晶方位を引継いだ柱状
グレインを有する多結晶構造膜により構成された構造が
挙げられる。すなわち、下部電極2の結晶粒の大きさや
面方位を誘電体薄膜3の結晶粒が引継ぐことによって、
下部電極2から誘電体薄膜3まで連続成長した柱状グレ
インを有する多結晶構造膜である。このような柱状グレ
イン内においては、下部電極2と誘電体薄膜3との界面
が格子整合しているため、誘電体薄膜3に下部電極2に
よる拘束作用に基く歪を誘起することができる。
【0039】下部電極2と誘電体薄膜3との界面の整合
性については、下部電極2表面における面内の直交する
2つの軸長as およびbs (ただしas <bs )と、そ
の上に配向成長させた誘電体薄膜3の面内の直交する 2
つの軸長af およびbf (ただしaf <bf )との間
に、0.99<af /as <1.01および0.99<bf /bs
1.01の関係を存在することが好ましい。af /as およ
びbf /bs が上記関係から外れると、誘電体薄膜3に
拘束作用に基く歪を良好に誘起することができないおそ
れがある。
【0040】ここで、下部電極2の立方晶系または正方
晶系の (001)面上に、室温において斜方晶系が安定なペ
ロブスカイト型酸化物からなる誘電体薄膜3を配向成長
させた場合、
【数1】 の構造をとる単斜晶(I) となる。この新たに発見された
単斜晶(I) は、X線回折による構造解析により確認され
ている。この単斜晶(I) をバルクの結晶系と比較する
と、結晶の面の作る角度、すなわち角ab=角bc=90
゜、角ac≠90゜である点は斜方晶と同一であるが、軸
長がa、b軸がほぼ等しくc軸がそれらより大きいとこ
ろは斜方晶と異なり、本来は斜方晶である結晶が下部電
極2の表面構造に拘束されて配向成長した結果、c軸が
伸びた単斜晶(I) になったと考えることができる。
【0041】また、下部電極2の立方晶系または正方晶
系の (001)面上に、室温において菱面体晶系が安定なペ
ロブスカイト型酸化物からなる誘電体薄膜3を配向成長
させた場合、
【数2】 の構造をとる単斜晶(II)となる。この新たに発見された
単斜晶(II)は、X線回折による構造解析により確認され
ている。この単斜晶(II)をバルクの結晶系と比較する
と、結晶の面の作る角度、すなわち角ab=90°、角a
c=角bc≠90゜である点は菱面体晶と一部共通する
が、軸長がa、b軸がほぼ等しくc軸がそれらより大き
いところは菱面体晶と異なり、本来は菱面体晶である結
晶が下部電極2の表面構造に拘束されて配向成長した結
果、c軸が伸びた単斜晶(I) になったと考えることがで
きる。
【0042】上述した単斜晶(I) および単斜晶(II)は、
いずれも歪量により膜厚方向のc軸方向に強誘電性を示
し、また歪量が小さい場合や組成によって大きな誘電率
を示し、さらには格子歪に基いて高いキュリー温度を有
するものである。誘電体薄膜3のc軸方向への歪量は、
単斜晶(I) または単斜晶(II)のペロブスカイト型結晶構
造を有する誘電体薄膜3の底面の格子定数をaf および
f (ただしaf <bf )とし、かつ底面に垂直方向の
格子定数をcf としたとき、bf およびcf は1.002<
f /bf < 1.100の関係を満足することが好ましい。
f /bf が1.002未満であると、歪による強誘電性も
しくは常誘電性の向上効果やキュリー温度の上昇効果が
十分に得られないおそれがある。一方、cf /bf
1.100を超えるとペロブスカイト型酸化物本来の特性が
低下する。
【0043】ここで、Bサイトの置換量が増大すると、
正方晶、単斜晶(I) 、単斜晶(II)の順に安定相が現れ
る。また、正方晶や単斜晶のc軸とa軸の比c/aで定
義される歪量についてみると、歪量が増大すると単斜晶
(I) や単斜晶(II)に変態するに必要なBサイト置換元素
の量が多くなる傾向にある。さらに、Bサイトの置換量
が増大すると、抗電界は著しく低下するが、残留分極は
緩やかに減少していく。歪量が増大すると、常誘電性か
ら強誘電性が強くなる傾向がある。SrやCa等による
Aサイト元素の置換量を増大させると、強誘電性は弱く
なる傾向にある。これら単斜晶(I) および単斜晶(II)は
温度に対して非常に安定で、上述した正方晶と単斜晶
(I) の遷移領域や単斜晶(I) と単斜晶(II)の遷移領域に
あるごく一部の膜を除くと、223K(-50℃)の低温から47
3K(200℃)の高温まで結晶が安定であり、強誘電体の場
合には大きな残留分極値を維持し、常誘電体の場合には
大きな誘電率を維持するものである。
【0044】上述したように、例えばBaTiO3 結晶
のBサイト元素をZr、HfおよびSnから選ばれた少
なくとも 1種の元素により置換し、室温において斜方晶
系または菱面体晶系の結晶構造が安定となる組成を有す
るペロブスカイト型酸化物を、下部電極2の立方晶系ま
たは正方晶系の {001}面上に配向成長させて、誘電体薄
膜3の結晶構造を単斜晶(I) または単斜晶(II)のペロブ
スカイト型結晶構造とすることによって、強誘電体の場
合には大きな残留分極値、低い抗電界、高いキュリー温
度が得られ、室温領域で示す大きな残留分極値を358K程
度まで温度を上げても十分に保持することができ、常誘
電体の場合には大きな誘電率が得られる。さらに、BT
Oを主成分とするぺロブスカイト型酸化物からなり、歪
誘起強誘電性を付与した誘電体薄膜3は、従来の強誘電
性材料であるPZT等に比べて組成制御が容易で、また
結晶構造的にも安定である。
【0045】このようなことから、例えば強誘電性を付
与した誘電体薄膜3を有する薄膜キャパシタ5を用いる
ことによって、実用性の高い不揮発性の半導体記憶装置
(FRAM)を作製することが可能となる。また、薄膜
キャパシタ5は上記した強誘電体薄膜キャパシタに限ら
ず、常誘電体の誘電率を増大させたDRAM用の薄膜キ
ャパシタとして使用することも可能である。
【0046】次に、本発明の第2の薄膜キャパシタの実
施形態について、図4を参照して説明する。
【0047】図4は、本発明の第2の薄膜キャパシタの
一実施形態の構成を示す図である。前述した実施形態と
同様に、SrTiO3 単結晶基板やMgO単結晶基板等
の酸化物単結晶基板、もしくはSi基板等の半導体基板
からなる基板11上には、下部電極12、ペロブスカイ
ト型酸化物からなる膜厚20〜 100nm程度の誘電体薄膜1
3および上部電極14が順に形成されており、これらに
よって薄膜キャパシタ15が構成されている。この薄膜
キャパシタ15は前述した実施形態と同様に、例えばF
RAMやDRAMの電荷蓄積部として用いられる。
【0048】誘電体薄膜13には、例えばBaTiO3
(BTO)を主成分とするぺロブスカイト型酸化物が用
いられ、特にBaTiO3 の少なくともBサイト元素の
TiをZr、HfおよびSnから選ばれた少なくとも 1
種の元素により置換し、室温において斜方晶系または菱
面体晶系の結晶構造が安定となる組成を有するペロブス
カイト型酸化物が用いられる。BTOのBサイト元素の
一部をZr、Hf、Snで置換することによって、前述
したように室温では斜方晶系や菱面体晶系の結晶構造が
安定となりやすく、さらにBTOの抗電界を下げること
ができる。
【0049】Zr、Hf、Sn元素によるBサイト元素
の置換量は、前述した実施形態と同様に 2〜90モル% の
範囲とすることが好ましい。さらに、BTOのAサイト
元素であるBaの一部をSrやCa等の元素で置換する
ことに関しても、前述した実施形態と同様であり、Aサ
イト元素の置換量は95モル% 以下とすることが好まし
い。前述したように、BTOを主成分とするペロブスカ
イト型酸化物からなる誘電体薄膜13は、Bサイト元素
やAサイト元素の置換量、さらには後述する歪量によっ
て、強誘電体薄膜もしくは常誘電体薄膜となる。従っ
て、薄膜キャパシタ5の使用目的に応じて、ペロブスカ
イト型酸化物の組成や歪量を設定するものとする。
【0050】上述した誘電体薄膜13を配向成長させる
際の下地となる下部電極12としては、表面に立方晶系
または正方晶系の (011)面が現れている導電性材料が用
いられる。下部電極12の構成材料としては、立方晶系
または正方晶系の結晶構造を有し、かつBaTiO3
a軸(0.3992nm)よりやや小さい格子定数、具体的には0.
385〜 0.398nm程度の格子定数をもつ耐酸化性に優れた
導電性材料であれば、種々の材料を使用することができ
る。具体的には、(Ba,Sr,Ca)RuO3 、(B
a,Sr,Ca)ΜoO3 、LaSrCuO3 等の各種
の導電性ペロブスカイト型酸化物、もしくはPt等の貴
金属を使用することができる。
【0051】このような導電性材料からなる下部電極1
2は、その表面に立方晶系または正方晶系の (011)面が
現れるように基板11上に形成される。そして、この下
部電極12の立方晶系または正方晶系の (011)面上に、
室温において斜方晶系または菱面体晶系の結晶構造が安
定となる組成を有するペロブスカイト型酸化物からなる
誘電体薄膜13を配向成長させる。配向成長については
前述した通りであり、また下部電極12と誘電体薄膜1
3との界面の整合性についても同様に、0.99<af /a
s <1.01および0.99<bf /bs <1.01の関係を満足さ
せることが好ましい。
【0052】下部電極12の立方晶系または正方晶系の
(011)面上に、室温において斜方晶系が安定なペロブス
カイト型酸化物からなる誘電体薄膜13を配向成長させ
た場合、バルクの斜方晶系とは下部電極12基板に応じ
て各軸長の比が異なる斜方晶系が出現する。すなわち、
バルクで出現する斜方晶はab <bb =cb であるのに
対して、下部電極12の (011)面上に配向成長させた誘
電体薄膜13の結晶は、成長面をab面とするとaf
f ≠cf となる。
【0053】このときに、膜厚方向のc軸方向の歪cf
/bf は、下地層である下部電極12の表面に現れてい
る 2つの軸長であるas 、bs (a<b)の軸長に深い
関係がある。本来のバルクでの誘電体の軸長であるab
やbb に対して、対応する軸長であるas 、bs がそれ
ぞれわずかに(0.2%から2%程度)大きい場合に、c軸方
向の歪cf /bf が大きくなり、そのときに強い強誘電
性や大きな誘電率が得られ、さらにキュリー温度が上昇
する。
【0054】また、下部電極12の立方晶系または正方
晶系の (011)面上に、室温において菱面体晶系が安定な
ペロブスカイト型酸化物からなる誘電体薄膜13を配向
成長させた場合、成長面をab面とすると、af <bf
≠cf 、角ab=角bc=90゜、角ac≠90゜の構造を
とる単斜相(III) となる。この場合も同様に、膜厚方向
のc軸方向の歪cf /bf が大きい場合に強い強誘電性
や大きな誘電率が得られ、さらにキュリー温度が上昇す
る。
【0055】上述した歪んだ斜方晶および単斜相(III)
は、いずれも歪量により膜厚方向のc軸方向に強誘電性
を示し、また歪量が小さい場合や組成によって大きな誘
電率を示し、さらには格子歪に基いて高いキュリー温度
を有するものである。誘電体薄膜3のc軸方向への歪量
は、歪んだ斜方晶および単斜相(III) のペロブスカイト
型結晶構造を有する誘電体薄膜13の底面の格子定数を
f およびbf (ただしaf <bf )とし、かつ底面に
垂直方向の格子定数をcf としたとき、bf およびcf
は 1.002<cf /bf < 1.030の関係を満足することが
好ましい。
【0056】ここで、BaTiO3 結晶のBサイト元素
であるTiをZr、HfおよびSnから選ばれる少なく
とも 1種の元素で置換していくと、斜方晶から単斜相に
相転移する傾向にある。また、斜方晶や単斜相のb軸と
a軸の比c/bで定義される歪量についてみると、歪量
が増大すると単斜相に相転移するに必要なBサイト置換
元素の量が多くなる傾向にある。さらに、Bサイトの置
換量が増大すると、抗電界は著しく低下するが、残留分
極は緩やかに減少していく。歪量が増大すると、常誘電
性から強誘電性が強くなる傾向がある。SrやCa等に
よるAサイト元素の置換量を増大させると、強誘電性は
弱くなる傾向にある。
【0057】これら歪んだ斜方晶および単斜相(III) は
温度に対して非常に安定で、上述した斜方晶と単斜晶の
遷移領域にあるごく一部の膜を除くと、223K(-50℃)の
低温から473K(200℃)の高温まで結晶が安定であり、強
誘電体の場合には大きな残留分極値を維持し、常誘電体
の場合には大きな誘電率を維持するものである。
【0058】上述したように、例えばBaTiO3 結晶
のBサイト元素をZr、HfおよびSnから選ばれた少
なくとも 1種の元素により置換して、室温において斜方
晶系または菱面体晶系の結晶構造が安定となる組成を有
するペロブスカイト型酸化物を、下部電極12の立方晶
系または正方晶系の {011}面上に配向成長させて、誘電
体薄膜13の結晶構造を歪んだ斜方晶または単斜相(II
I) のペロブスカイト型結晶構造とすることによって、
強誘電体の場合には大きな残留分極値、低い抗電界、高
いキュリー温度が得られ、室温領域で示す大きな残留分
極値を358K程度まで温度を上げても十分に保持すること
ができ、常誘電体の場合には大きな誘電率が得られる。
さらに、BTOを主成分とするぺロブスカイト型酸化物
からなり、歪誘起強誘電性を付与した誘電体薄膜13
は、従来の強誘電性材料であるPZT等に比べて組成制
御が容易で、また結晶構造的にも安定である。
【0059】このようなことから、例えば強誘電性を付
与した誘電体薄膜13を有する薄膜キャパシタ15を用
いることによって、実用性の高い不揮発性の半導体記憶
装置(FRAM)を作製することが可能となる。また、
薄膜キャパシタ15は上記した強誘電体薄膜キャパシタ
に限らず、常誘電体の誘電率を増大させたDRAM用の
薄膜キャパシタとして使用することも可能である。
【0060】次に、本発明の薄膜キャパシタを半導体メ
モリに応用する際の構造例について述べる。図5はSi
基板を使用し、トランジスタとキャパシタをSOI構造
で積層した半導体メモリの製造工程例を示している。同
図において、21は第1導電型半導体基板、22はバリ
ヤ金属層、23は下部電極、24は誘電体薄膜、25は
上部電極、26は張合せ用絶縁膜、27はSOI基板、
28はSOI基板27の張合せ用絶縁膜、29は素子間
分離絶縁膜、30はキャパシタの上部電極25とトラン
ジスタのソース/ドレイン電極とを接続するための接続
孔、31は接続孔30に埋め込んだコンタクトプラグ、
32は側壁拡散層、33は不純物拡散層、34はゲート
酸化膜、35はワード線、36はビット線、37と38
は層間絶縁膜である。以下に、製造工程を示す。
【0061】まず、図5(a)に示すように、第1のS
i(110) 基板21上に、バリヤ金属層22として(T
i,Al)N膜、下部電極23としてSrRuO3 膜、
強誘電膜24としてBa(Ti0.85Zr0.15)O3 膜、
さらに上部電極25としてSrRuO3 膜を、いずれも
スパッタ法によって、基板温度873Kで連続成膜によりエ
ピタキシャル成長した後、公知の方法で上部電極25の
パターニングを行う。
【0062】次に、図5(b)に示すように、張合せ用
絶縁膜としてBPSG層26を、例えば 500nm程度形成
し、その表面を例えばCMP法により平坦化する。さら
に、別途表面にBPSG層28を形成し平坦化した第2
のSi基板27′(基板方位は(100))を用意し、第1の
Si基板21と第2のSi基板27′とを、平坦化した
BPSG層26、28同士を突き合わせて接着する。接
着は公知の方法、例えば 1173K程度の熱処理により行
う。
【0063】次いで、図5(c)に示すように、第2の
Si基板27′の裏面から研磨していき、例えば 150nm
程度の厚さのSOI基板27を形成する。このほか、ス
マートカット等の接着、研磨によるSOI基板の形成方
法を用いてもよい。もちろんSOI基板27の表面は、
後のトランジスタ形成工程に耐えるように鏡面研磨され
ている。次に、例えば反応性イオンエッチング(RIE
法)を用いてSOI基板27に溝を掘り、その溝にSi
2 等の絶縁膜を埋め込んで平坦化する。これにより、
いわゆるトレンチ分離型の素子分離層(STI)29を
形成する。
【0064】次に、通常のフォトリソグラフィー法とR
IE法等のプラズマエッチングを用いて、接続孔30を
開口する。この際のエッチング条件として、SOI層
(Si層)27とSTIのSiO2 層29を共にエッチ
ングする条件を選択し、上部電極25としてのSrRu
3 膜をストッパーとして用いて選択的にストップさせ
るとよい。次いで、全面に例えばN+ 型不純物を含んだ
ポリSi膜を約 200nm程度の膜厚で堆積し、全面をCM
P等の方法でエッチバックすることにより、接続孔30
にN+ ポリSi層からなる埋込み層(コンタクトプラ
グ)31を形成する。この後、RTA(Rapid Thermal
Anneal)法で 1073K×20秒程度の条件にて、窒素雰囲気
でアニールすることによりN+ 側壁拡散層32を形成す
る。
【0065】この後、図5(d)に示すように、公知の
プロセスを使用して、不純物拡散層33、ゲート酸化膜
34、ワード線35からなるトランジスタや、ビット線
36を形成する。
【0066】上述したようなプロセスによって、Si(1
10) 基板上に形成したエピタキシャルBTOキャパシタ
と、Si(100) 基板上に作製したトランジスタとからな
るメモリセルを構成することができる。
【0067】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例およびその評
価結果について述べる。
【0068】比較例1 まず、図3に示したような表面が平滑なSrTiO3 (1
00) 単結晶基板1上に、下部電極2として (100)配向の
SrRuO3 薄膜を基板温度773KでRFマグネトロンス
パッタ法により形成し、本比較例および後述する実施例
1〜3、比較例2における導電性の基板とした。
【0069】上記したSrRuO3 膜上に、強誘電体膜
3として膜厚約40nmのBaTiO3膜をRFマグネトロ
ンスパッタ法により形成した。スパッタターゲットとし
ては薄膜組成と同一組成の焼結体(4インチ径、 5mm厚)
を用いた。成膜中の基板温度は873Kとし、スパッタ雰囲
気はアルゴンと酸素の混合ガスとした。作製した膜の組
成をICP−MASS(誘導結合プラズマ質量分析)法
で分析し、ほぼ化学量論組成であることを確認した。次
いで、強誘電体膜3上に上部電極4としてPt膜をRF
スパッタ法により形成した。このPt膜はリフトオフ法
により 100×100μm の形状に加工した。
【0070】このようにして作製したSrRuO3 膜お
よびBaTiO3 膜のθ-2θ法によるX線回折には、い
ずれもぺロブスカイト型結晶構造の (001)、 (002)、
(003)面からの回折線のみが現れており、これらの膜が
(001)面が配向したぺロブスカイト型結晶構造を持つこ
とを示していた。またこれらの膜のRHEED観察か
ら、これらの膜がエピタキシャル成長していることが確
認された。さらに、 4軸ゴニオメータを持つX線回折装
置により極点図を作成して、詳細に結晶構造を解析した
ところ、a=b= 0.392nm、c= 0.423nm、角ab=角
ac=角bc=90゜の正方晶が (001)方位に配向成長し
ていることが確かめられた。
【0071】次に、この比較例1による強誘電体薄膜キ
ャパシタの強誘電ヒステリシス曲線を、 500Hzの 3角波
を印加して測定した。その結果、残留分極量は 2Pr=0.
55C/m2 と大きかったものの、抗電圧も 2Vc=4.3Vとか
なり大きかった。また、強誘電性は473K以上まで安定で
あった。
【0072】実施例1 比較例1と同様のSrRuO3 膜上に、強誘電体膜3と
して膜厚約40nmのBa(Ti0.85Zr0.15)O3 膜をR
Fマグネトロンスパッタ法により形成した。この組成の
バルク結晶は、菱面体晶構造をとることが知られてい
る。スパッタターゲットとしては、薄膜組成と同一組成
の焼結体(4インチ径、 5mm厚)を用いた。成膜中の基板
温度は873Kとし、スパッタの雰囲気はアルゴンと酸素の
混合ガスとした。作製した膜の組成をICP−MASS
(誘導結合プラズマ質量分析)法で分析し、ほぼ化学量
論組成であることを確認した。次に、強誘電体膜上に上
部電極4としてPt膜をRFスパッタ法により形成し
た。Ρt膜はリフトオフ法により 100× 100μm の形状
に加工した。
【0073】このようにして作製したSrRuO3 膜お
よびBa(Ti0.85Zr0.15)O3膜のθ-2θ法による
X線回折には、いずれもぺロブスカイト型結晶構造の
(001)、 (002)、 (003)面からの回折線のみが現れてお
り、これらの膜が (001)面が配向したぺロブスカイト型
構造を持つことを示していた。またこれらの膜のRHE
ED観察から、これらの膜がエピタキシャル成長してい
ることが確認された。さらに、 4軸ゴニオメータを持つ
X線回折装置により極点図を作成して、詳細に誘電体膜
の結晶構造を解析したところ、a=b= 0.393nm、c=
0.426nm、角ab=90゜、角ac=角bc=89.7゜の単
斜晶が (001)方位に配向成長していることが確かめられ
た。
【0074】次に、この実施例1による強誘電体薄膜キ
ャパシタの強誘電ヒステリシス曲線を、 500Hzの 3角波
を印加して測定した。その結果、残留分極量は 2Pr=0.
52C/m2 と大きく、さらに抗電圧は 2Vc=0.8Vと比較例
1よりはるかに小さな値が得られた。また、強誘電性は
473K以上まで安定であった。これらの誘電特性から、強
誘電体メモリ用キャパシタとして好適であることが分か
った。
【0075】実施例2 比較例1と同様のSrRuO3 膜上に、強誘電体膜3と
して膜厚約40nmのBa(Ti0.95Sn0.05)O3 膜をR
Fマグネトロンスパッタ法により形成した。この組成の
バルク結晶は、斜方晶構造をとることが知られている。
スパッタターゲットとしては、薄膜組成と同一組成の焼
結体(4インチ径、 5mm厚)を用いた。成膜中の基板温度
は873Kとし、スパッタの雰囲気はアルゴンと酸素の混合
ガスとした。作製した膜の組成をICP−MASS(誘
導結合プラズマ質量分析)法で分析し、ほぼ化学量論組
成であることを確認した。次に、強誘電体膜上に上部電
極4としてPt膜をRFスパッタ法により形成した。Ρ
t膜はリフトオフ法により100× 100μm の形状に加工
した。
【0076】このように作製したSrRuO3 膜および
Ba(Ti0.95Sn0.05)O3 膜のθ-2θ法によるX線
回折には、いずれもぺロブスカイト型結晶構造の (00
1)、(002)、 (003)面からの回折線のみが現れており、
これらの膜が (001)面が配向したぺロブスカイト型構造
を持つことを示していた。またこれらの膜のRHEED
観察から、これらの膜がエピタキシャル成長しているこ
とが確認された。さらに、 4軸ゴニオメータを持つX線
回折装置により極点図を作成して、詳細に誘電体膜の結
晶構造を解析したところ、a=b= 0.393nm、c= 0.4
24nm、角ab==角bc=90゜、角ac=89.8゜の単斜
晶が (001)方位に配向成長していることが確かめられ
た。
【0077】次に、この実施例2による強誘電体薄膜キ
ャパシタの強誘電ヒステリシス曲線を、 500Hzの 3角波
を印加して測定した。その結果、残留分極量は 2Pr=0.
54C/m2 と大きく、さらに抗電圧は 2Vc= 1.5V と小さ
な値が得られた。また、強誘電性は473K以上まで安定で
あった。これらの誘電特性から、強誘電体メモリ用キャ
パシタとして好適であることが分かった。
【0078】比較例2 比較例1と同様のSrRuO3 膜上に、誘電体膜3とし
て膜厚約40nmの(Bax Sr1-x )TiO3 膜(x=0〜0.
5)をRFマグネトロンスパッタ法により形成した。スパ
ッタターゲットとしては、薄膜組成と同一組成の焼結体
(4インチ径、 5mm厚)を用いた。成膜中の基板温度は87
3Kとし、スパッタ雰囲気はアルゴンと酸素の混合ガスと
した。作製した膜の組成をICP−MASS(誘導結合
プラズマ質量分析)法で分析し、ほぼ化学量論組成であ
ることを確認した。次に、誘電体膜上に上部電極4とし
てPt膜をRFスパッタ法により形成した。Pt膜はリ
フトオフ法により 100× 100μm の形状に加工した。
【0079】このようにして作製したSrRuO3 膜お
よび(Bax Sr1-x )TiO3 膜のθ-2θ法によるX
線回折には、いずれもペロブスカイト型結晶構造の (00
1)、(002)、 (003)面からの回折線のみが現れており、
これらの膜が (001)面が配向したぺロブスカイト型構造
を持つことを示していた。またこれらの膜のRHEED
観察から、これらの膜がエピタキシャル成長しているこ
とが確認された。さらに、 4軸ゴニオメータを持つX線
回折装置により極点図を作成して、詳細に誘電体膜の結
晶構造を解析したところ、a=b= 0.391nm、c= 0.3
95〜 422nm(Ba分率による)、角ab=角ac=角b
c=90゜の正方晶が (001)方位に配向成長していること
が確かめられた。
【0080】次に、この比較例2による薄膜キャパシタ
の誘電率を 10kHzの正弦波を加えて測定した。その結
果、Ba分率xが 0.2で比誘電率の極大値をとり、その
値は620であった。
【0081】実施例3 比較例1と同様のSrRuO3 膜上に、誘電体膜3とし
て膜厚約40nmの(Bax Sr1-x )(Ti0.75
0.25)TiO3 膜(x=0〜 0.5)膜をRFマグネトロン
スパッタ法により形成した。スパッタターゲットとして
は、薄膜組成と同一組成の焼結体(4インチ径、 5mm厚)
を用いた。成膜中の基板温度を873Kとし、スパッタ雰囲
気はアルゴンと酸素の混合ガスとした。作製した膜の組
成をICP−MASS(誘導結合プラズマ質量分析)法
で分析し、ほぼ化学量論組成であることを確認した。次
に、誘電体膜の上に上部電極4としてPt膜をRFスパ
ッタ法により形成した。Pt膜はリフトオフ法により 1
00× 100μm の形状に加工した。このようにして作製し
たSrRuO3 膜および(Bax Sr1-x )(Ti0.75
Zr0.25)TiO3 膜のθ-2θ法によるX線回折には、
いずれもぺロブスカイト型結晶構造の (001)、 (002)、
(003)面からの回折線のみが現れており、これらの膜が
(001)面が配向したぺロブスカイト型構造を持つことを
示していた。またこれらの膜のRHEED観察から、こ
れらの膜がエピタキシャル成長していることが確認され
た。さらに、 4軸ゴニオメータを持つX線回折装置によ
り極点図を作成し、詳細に誘電体膜の結晶構造を解析し
たところ、a=b= 0.391nm、c=0.397〜 428nm(B
a分率による)、角ab=90゜、角ac=角bc=89.8
゜の単斜晶が (001)方位に配向成長していることが確か
められた。
【0082】次に、この実施例3による薄膜キャパシタ
の誘電率を 10kHzの正弦波を加えて測定した。その結
果、Ba分率xが 0.4で比誘電率の極大値をとり、その
値は1150であった。このように、比較例2に示した正方
晶結晶における最大値よりもはるかに大きい値を示し
た。これらの誘電特性から、DRAM用キャパシタとし
て好適であることが分かった。
【0083】実施例4 図4に示すような表面が平滑なSrTiO3 (110) 単結
晶基板11上に、下部電極12として (110)配向のSr
RuO3 薄膜を基板温度773KでRFマグネトロンスパッ
タ法により形成し、本実施例および後述する実施例5〜
6における導電性の基板とした。
【0084】上記したSrRuO3 膜上に、強誘電体膜
13として膜厚約40nmのBaTiO3 膜をRFマグネト
ロンスパッタ法により形成した。スパッタターゲットと
しては、薄膜組成と同一組成の焼結体(4インチ径、 5mm
厚)を用いた。成膜中の基板温度は873Kとし、スパッタ
雰囲気はアルゴンと酸素の混合ガスとした。作製した膜
の組成をICP−MASS(誘導結合プラズマ質量分
析)法で分析し、ほぼ化学量論組成であることを確認し
た。次に、強誘電体膜12上に上部電極14としてPt
膜をRFスパッタ法により形成した。Pt膜はリフトオ
フ法により 100×100μm の形状に加工した。
【0085】このようにして作製したSrRuO3 膜お
よびBaTiO3 膜のθ-2θ法によるX線回折には、い
ずれもペロブスカイト型結晶構造の (110)、 (220)、
(330)面からの回折線のみが現れており、これらの膜が
(110)面が配向したペロブスカイト型構造を持つことを
示していた。またこれらの膜のRHEED観察から、こ
れらの膜がエピタキシャル成長していることが確認され
た。さらに、 4軸ゴニオメータを持つX線回折装置によ
り極点図を作成して、詳細に結晶構造を解析したとこ
ろ、ペロブスカイトの単位胞が〈 110〉方向に歪んだ斜
方晶であり、a=0.391nm、b= 0.553nm、c= 0.595n
m、角ab=角ac=角bc=90゜の結晶であり、c軸
方向の歪c/bは 1.076と大きく歪んでいることが分か
った。
【0086】次に、この実施例4による強誘電体薄膜キ
ャパシタの強誘電ヒステリシス曲線を、 500Hzの 3角波
を印加して測定した。その結果、残留分極量は 2Pr=0.
55c/m2 と大きいが、抗電圧も 2Vc=4.3Vとかなり大き
かった。また、強誘電性は473K以上まで安定であった。
これらの特徴から、強誘電体膜としては優れた性質を有
しており、用途によっては適している。ただし、半導体
メモリ用の強誘電体膜ないしは高誘電率膜としては抗電
圧が若干大きい。
【0087】実施例5 実施例4と同様のSrRuO3 膜上に、強誘電体膜13
として膜厚約40nmのBa(Ti0.85Zr0.15)O3 膜を
RFマグネトロンスパッタ法で形成した。この組成のバ
ルク結晶は菱面体晶構造をとることが知られている。ス
パッタターゲットとしては薄膜組成と同一組成の焼結体
(4インチ径、 5mm厚)を用いた。成膜中の基板温度は87
3K、スパッタ雰囲気はアルゴンと酸素の混合ガスとし
た。作製した膜の組成をICP−MASS(誘導結合プ
ラズマ質量分析)法で分析し、ほぼ化学量論組成である
ことを確認した。次に、強誘電体膜上に上部電極14と
してPt膜をRFスパッタ法により形成した。Ρt膜は
リフトオフ法により 100×100μm の形状に加工した。
【0088】このようにして作製したSrRuO3 膜お
よびBa(Ti0.85Zr0.15)O3膜のθ-2θ法による
X線回折には、いずれもペロブスカイト型結晶構造の
(110)(220)、 (330)面からの回折線のみが現れており、
これらの膜が (110)面が配向したペロブスカイト型構造
を持つことを示していた。またこれらの膜のRHEED
観察から、これらの膜がエピタキシャル成長しているこ
とが確認された。さらに、 4軸ゴニオメータを持つX線
回折装置により極点図を作成して、詳細に結晶構造を解
析したところ単斜晶であり、a= 0.392nm、b= 0.554
nm、c= 0.598nm、角ab=角bc=90゜、角ac=8
9.7°の結晶であり、c軸方向の歪c/bは 1.074と大
きく歪んでいることが分かった。
【0089】次に、この実施例5による強誘電体薄膜キ
ャパシタの強誘電ヒステリシス曲線を、 500Hzの 3角波
を印加して測定した。その結果、残留分極量は 2Pr=0.
51C/m2 と大きく、さらに抗電圧は 2Vc=1.2Vと実施例
4よりも小さな値が得られた。また、強誘電性は473K以
上まで安定であった。これらの特徴から、強誘電体膜と
して優れた性質を有し、特に抗電圧が低い点で半導体メ
モリ用の強誘電体膜としては最適な性質を有していた。
【0090】実施例6 実施例4と同様のSrRuO3 膜上に、強誘電体膜13
として膜厚約40nmのBa(Ti0.95Sn0.05)O3 膜を
RFマグネトロンスパッタ法により形成した。この組成
のバルク結晶は斜方晶構造をとることが知られている。
スパッタターゲットとしては、薄膜組成と同一組成の焼
結体(4インチ径、 5mm厚)を用いた。成膜中の基板温度
は873Kとし、スパッタ雰囲気はアルゴンと酸素の混合ガ
スとした。作製した膜の組成をICP−MASS(誘導
結合プラズマ質量分析)法で分析し、ほぼ化学量論組成
であることを確認した。次に、強誘電体膜上に上部電極
14としてPt膜をRFスパッタ法により形成した。Ρ
t膜はリフトオフ法により 100× 100μm の形状に加工
した。
【0091】このようにして作製したSrRuO3 膜お
よびBa(Ti0.95Sn0.05)O3膜のθ-2θ法による
X線回折には、いずれもペロブスカイト型結晶構造の
(110)(220)、 (330)面からの回折線のみが現れており、
これらの膜が (110)面が配向したペロブスカイト型構造
を持つことを示していた。またこれらの膜のRHEED
観察から、これらの膜がエピタキシャル成長しているこ
とが確認された。さらに、 4軸ゴニオメータを持つX線
回折装置により極点図を作成して、詳細に結晶構造を解
析したところ、ペロブスカイトの単位胞が〈 110〉方向
に歪んだ斜方晶であり、a= 0.393nm、b= 0.555nm、
c= 0.590nm、角ab=角ac=角bc=90゜の結晶で
あり、c軸方向の歪c/bは 1.063と大きく歪んでいる
ことが分かった。
【0092】次に、この実施例6による強誘電体薄膜キ
ャパシタの強誘電ヒステリシス曲線を、 500Hzの 3角波
を印加して測定した。その結果、残留分極量は 2Pr=0.
46C/m2 と大きく、さらに抗電圧は 2Vc=1.9Vと小さな
値が得られた。また、強誘電性は473K以上まで安定であ
った。これらの特徴から、強誘電体膜として優れた性質
を有し、特に抗電圧が低い点で半導体メモリ用の強誘電
体膜としては最適な性質を有していた。
【0093】実施例7 実施例4と同様のSrRuO3 膜上に、誘電体膜13と
して膜厚約40nmの(Bax Sr1-x )(Ti0.75Zr
0.25)TiO3 膜(x=0〜0.5)膜をRFマグネトロンスパ
ッタ法により形成した。スパッタターゲットとしては、
薄膜組成と同一組成の焼結体(4インチ径、 5mm厚)を用
いた。成膜中の基板温度は873Kとし、スパッタ雰囲気は
アルゴンと酸素の混合ガスとした。作製した膜の組成を
ICP−MASS(誘導結合プラズマ質量分析)法で分
析し、ほぼ化学量論組成であることを確認した。次に、
誘電体膜上に上部電極14としてΡt膜をRFスパッタ
法により形成した。Pt膜はリフトオフ法により 100×
100μm の形状に加工した。
【0094】このようにして作製したSrRuO3 膜お
よび(Bax Sr1-x )(Ti0.75Zr0.25)TiO3
膜のθ-2θ法によるX線回折には、いずれもペロブスカ
イト型結晶構造の (110)、 (220)、 (330)面からの回折
線のみが現れており、これらの膜が (001)面が配向した
ペロブスカイト型構造を持つことを示していた。またこ
れらの膜のRHEED観察から、これらの膜がエピタキ
シャル成長していることが確認された。さらに、 4軸ゴ
ニオメータを持つX線回折装置により極点図を作成し
て、詳細に誘電膜の結晶構造を解析したところ、ペロブ
スカイトの単位胞が歪んだ単斜晶であり、a= 0.391n
m、b= 0.552nm、c= 0.561〜 0.588nm、(Ba分率
xによる)、角ab=角bc=90°、角ac=89.7゜の
結晶であり、c軸方向の歪c/bは 1.016〜 1.06574と
大きく歪んでいることが分かった。
【0095】次に、この実施例7による薄膜キャパシタ
の誘電率を 10kHzの正弦波を加えて測定した。その結
果、Ba分率xが 0.3で比誘電率の極大値をとり、1230
と非常に大きい値を示した。これらの誘電特性から、D
RAM用キャパシタとして好適であることが分かった。
【0096】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、大
きな残留分極と低い抗電界と高いキュリー温度を有する
強誘電体薄膜キャパシタや、大きな誘電率を有する常誘
電体薄膜キャパシタが実現でき、その工業的価値は極め
て大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 BaTiO3 結晶の温度と安定な結晶相との
関係を示す図である。
【図2】 BaTiO3 結晶に各種の元素を置換してい
ったときの相転移温度の変化を示すグラフである。
【図3】 本発明による薄膜キャパシタの一実施形態の
構造を示す断面図である。
【図4】 本発明による他の薄膜キャパシタの一実施形
態の構造を示す断面図である。
【図5】 本発明の薄膜キャパシタを半導体メモリに応
用する場合の製造工程の一例を示す図である。
【符号の説明】
1、11……基板 2、12……下部電極 3、13……誘電体薄膜 4、14……上部電極 5、15……薄膜キャパシタ
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01L 27/108 H01L 29/78 371 21/8242 21/8247 29/788 29/792

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下部電極と、前記下部電極上に形成され
    たペロブスカイト型酸化物からなる誘電体薄膜と、前記
    誘電体薄膜上に形成された上部電極とを具備する薄膜キ
    ャパシタにおいて、 前記下部電極は表面に立方晶系または正方晶系の {001}
    面が現れている導電性材料からなり、かつ前記誘電体薄
    膜は前記下部電極の {001}面上に配向成長していると共
    に、単斜晶系のペロブスカイト型結晶構造をもつことを
    特徴とする薄膜キャパシタ。
  2. 【請求項2】 下部電極と、前記下部電極上に形成され
    たペロブスカイト型酸化物からなる誘電体薄膜と、前記
    誘電体薄膜上に形成された上部電極とを具備する薄膜キ
    ャパシタにおいて、 前記誘電体薄膜はBaTiO3 を主成分とし、かつ単斜
    晶系のペロブスカイト型結晶構造をもつことを特徴とす
    る薄膜キャパシタ。
  3. 【請求項3】 下部電極と、前記下部電極上に形成され
    たペロブスカイト型酸化物からなる誘電体薄膜と、前記
    誘電体薄膜上に形成された上部電極とを具備する薄膜キ
    ャパシタにおいて、 前記下部電極は表面に立方晶系または正方晶系の {011}
    面が現れている導電性材料からなり、かつ前記誘電体薄
    膜は前記下部電極の {011}面上に配向成長していると共
    に、斜方晶系または単斜晶系のペロブスカイト型結晶構
    造をもつことを特徴とする薄膜キャパシタ。
  4. 【請求項4】 下部電極と、前記下部電極上に形成され
    たペロブスカイト型酸化物からなる誘電体薄膜と、前記
    誘電体薄膜上に形成された上部電極とを具備する薄膜キ
    ャパシタにおいて、 前記誘電体薄膜はBaTiO3 を主成分とし、かつ前記
    下部電極との格子不整合に基く歪みを有する斜方晶系ま
    たは単斜晶系のペロブスカイト型結晶構造をもつことを
    特徴とする薄膜キャパシタ。
  5. 【請求項5】 請求項1、請求項2、請求項3または請
    求項4記載の薄膜キャパシタにおいて、 前記誘電体薄膜は、BaTiO3 を主成分とすると共
    に、前記BaTiO3 の少なくともBサイト元素のTi
    がZr、HfおよびSnから選ばれた少なくとも1種の
    元素により置換され、室温において斜方晶系または菱面
    体晶系の結晶構造が安定となる組成を有するペロブスカ
    イト型酸化物からなることを特徴とする薄膜キャパシ
    タ。
  6. 【請求項6】 請求項1、請求項2、請求項3または請
    求項4記載の薄膜キャパシタにおいて、 前記単斜晶系ないしは斜方晶系のペロブスカイト型結晶
    構造を有する誘電体薄膜の底面の格子定数をaf および
    f (ただしaf ≦bf )とし、かつ底面に垂直方向の
    格子定数をcf としたとき、前記bf およびcf は 1.0
    02<cf /bf< 1.100の関係を満足することを特徴と
    する薄膜キャパシタ。
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