JPH1180886A - ドラム缶用冷延鋼板およびその製造方法ならびに鋼製高強度ドラム缶 - Google Patents
ドラム缶用冷延鋼板およびその製造方法ならびに鋼製高強度ドラム缶Info
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- JPH1180886A JPH1180886A JP23993897A JP23993897A JPH1180886A JP H1180886 A JPH1180886 A JP H1180886A JP 23993897 A JP23993897 A JP 23993897A JP 23993897 A JP23993897 A JP 23993897A JP H1180886 A JPH1180886 A JP H1180886A
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Abstract
後高強度を有するドラム缶用冷延鋼板およびその製造方
法を提案する。 【解決手段】 重量%で、C:0.10%以下、Si:0.20%
以下、Mn:1.0 %以下、P:0.04%以下、S:0.03%以
下、Al:0.150 %以下とし、とくにN含有量を0.0050〜
0.0200%と多量に添加した組成とし、固溶N量を0.0010
%以上とする。熱間圧延における圧延仕上温度、圧延終
了後急冷し、巻取り温度:650 ℃以下で巻取り、熱延板
としたのち、該熱延板を酸洗・冷間圧延し、再結晶温度
以上で焼鈍を行い、あるいはさらに調質圧延を施す。上
記製造方法により得た冷延鋼板から加工した胴板、天板
および地板のうち少なくとも1つに用いることにより鋼
製高強度ドラム缶とする。
Description
缶に係り、鋼製ドラム缶用素材として好適な冷延鋼板お
よびその製造方法に関する。
る。1つはJIS Z 1600に鋼製オープンドラムとして規定
されているオープン型ドラムであり、他の1つはJIS Z
1601に液体用鋼製ドラムとして規定されている密封型ド
ラムである。これらのドラム缶は、天板、地板および胴
板から構成されており、さらに天板には大小各1個の口
金(栓)が設けられている。また、これらドラム缶の容
量は 200リットル〜20リットルまでの、オープン型では
1種〜5種、密封型では1種〜4種に分類されている。
塗料、接着剤、合成樹脂製品等の粘性を有する液体を保
管、運搬する容器として、また、密閉型ドラムは石油製
品、化学製品等の各種液体を保管、運搬する容器として
使用されている。オープン型ドラムは、鋼板を円筒状に
曲げ成形しシーム溶接して接合した胴体と円盤状の地板
を巻き締めた容器で、開放された上面にガスケットを装
着した着脱可能な天板を置き、バンドをはめボルトまた
はレバーを用いて胴体に締めつけて使用する。一方、密
閉型ドラムは、シーム溶接により接合した胴体の両端に
円盤状の地板および円盤状の天板を巻き締めて製造され
る。さらに、通常これらドラム缶の外面には化成処理、
塗装が、内面にも必要により化成処理、塗装が施され
る。
部、接合部、巻き締め部の健全性が要求され、JIS 規格
には気密試験(水圧試験)、落下試験、積み重ね試験等
を実施することが規定されている。さらに、実際に使用
するに際し、缶体には種々の応力が、様々な形態で負荷
されるため、これら応力負荷に対し、実用上問題となる
変形を生じないように缶体が高い室温強度を有すること
が要求されている。
S G 3131に規定される熱間圧延軟鋼板および鋼帯、ある
いはJIS G 3141に規定される冷間圧延鋼板あるいは鋼帯
とされている。また、使用する鋼板の板厚はドラム缶の
種類、級別に応じ1.6mm 〜0.5mm までの範囲に規定され
ている。例えば、密封型ドラムの容量 200リットルの1
種H級の場合には、胴板、天板、地板とも板厚1.6mm の
鋼板を使用することが決められている。
重視して、低炭素アルミキルド箱焼鈍材が用いられてい
た。その典型的鋼組成は、0.05〜0.10%C−0.2 〜0.5
%Mn−〜0.05%Si−0.04〜0.10%Al−0.0015〜0.0030%
Nである。しかし、その後、鋼板の製造プロセスが連続
化を志向し、より高生産効率の設備である連続焼鈍設備
による、連続焼鈍材が広範囲に適用されるようになっ
た。連続焼鈍材の鋼組成は上記低炭素アルミキルド箱焼
鈍材とほとんど同一のものが使用されてきた。現在で
は、この低炭素アルミキルド鋼連続焼鈍材が、わが国、
欧米においても主流となっている。ドラム缶用に製造さ
れている素材の引張特性の一例としては板厚1.0 〜1.2m
m で、降伏応力(YS):23kgf/mm2 、引張強度(TS):
35kgf/mm2 、伸び(EL):42%程度である。また、一部
の板厚の厚いドラム缶材には熱延材も適用されるが、そ
の割合は低い。
ラム缶用素材の板厚を薄くしようとする試みがなされて
きた。しかし、素材の板厚減少に伴う缶体強度の低下を
補償するためには素材の高強度化を図る必要がある。ま
た、ドラム缶は1回のみの使用ではなく、一度内容物を
入れて使用されたのち内部を洗浄して再度あるいは再々
度、平均的には4〜5回繰り返して使用されるのが一般
的である。再使用するに当たっては、内面の付着物や外
面の塗装を除去するために、通常、ショットブラスト処
理を行う。このショットブラスト処理により缶体に発生
する変形量が大きい場合には、そのドラム缶は積み重ね
ができず、再生利用に不適となる。したがって、このシ
ョットブラスト処理による缶体の変形量の大小は再生利
用を決定する一つの因子となっている。
このショットブラスト処理による缶体の変形は、単に使
用する鋼板の室温強度のみを増加して防止しうるもので
はないことが新たに判明した。すなわち、ショットブラ
スト処理の前に、缶体を約800 ℃に加熱する焼却処理が
実施される場合があり、その後、缶体が完全に冷却しな
いうちにショットブラスト処理を行う場合が多い。本発
明者らは、上記したショットブラスト処理による缶体の
変形量が少ないことに加えて、高温加熱時の変形や200
〜500 ℃でのショットブラスト処理による変形が少ない
ことが再生利用を決定する重要な因子となっていること
を新たに知見した。このようなことから、缶体が200 ℃
以上における高い高温強度を有することも要求されてい
る。
性、溶接性、接合性(巻き締め性)等のドラム缶の製缶
時に素材に要求される特性を全て満足させるのが困難で
あった。例えば、合金元素の固溶による高強度化の方法
や加工硬化、析出硬化による高強度化の方法では、延性
の低下が著しく、成形性や巻き締め性が劣化し、缶体落
下試験での損傷が大きくなる。また、合金元素の固溶、
組織の微細化や低温変態生成物の増加による強化方法で
は、溶接部の強度低下や加工性の劣化を生じやすく、割
れ発生などで気密性が低下するなどの問題があり、さら
に鋼板各部における材質の均一性にも問題があった。
例えば特開昭56-77039号公報には、冷間圧延により降伏
点が70〜100kg/mm2 とした未焼鈍の0.4 〜0.9mm 厚冷延
鋼板を缶胴板素材として、缶胴部と天板、地板との接続
に供される加工部のみに熱処理を行い軟質化して成形性
を確保するドラム缶の製造方法が提案されている。しか
しながら、この技術では、800 ℃での焼却処理時に缶体
が焼鈍され、再生利用が著しく制御され、さらに、未焼
鈍のため歪が発生したり、熱処理による表面酸化被膜の
生成に加えて、加工部のみを熱処理するため工程が複雑
となり大量生産に適さないなどの問題があり、実用化す
るまでに至っていない。
される特性をすべて満足する適切な鋼板の高強度化の方
法がなく、素材の薄肉化は達成できていないのが現状で
ある。
題を有利に解決し、薄肉化が達成でき軽量で低コスト
で、しかも再生利用回数を増加できるドラム缶を製造す
るために、ドラム缶用素材として、伸び35%以上を有し
成形性、溶接性、巻き締め性に優れかつ製缶後高強度を
有する延性および焼付け硬化性に優れたドラム缶用冷延
鋼板およびその製造方法を提案することを目的とする。
課題を解決するために鋼板組成、製造方法について種々
検討した結果、ドラム缶成形時には比較的低強度で、そ
の後の塗装・焼付け工程で顕著な強度上昇が期待できる
鋼板をドラム缶素材として利用すれば、優れた製缶性と
高強度化をともに満足できることに想到し、ドラム缶用
素材として、従来、積極的に利用されていなかった固溶
Nによる強化を利用した鋼板を使用することにより、従
来材と同等の溶接性、溶接部の成形性を示し、しかも製
缶後歪時効硬化により高い缶強度を有するドラム缶とす
ることができることを見いだした。しかも、従来にない
高い高温強度を示すドラム缶となり、缶体を内外から加
熱するような特殊な用途にも使用できることも新たに見
いだした。一方、従来のように、固溶Cによる強化のみ
を利用した鋼板では、延性の低下が著しくドラム缶用素
材としては不適であるという知見も得た。
たものである。すなわち、本発明は、重量%で、C:0.
10%以下、Si:0.20%以下、Mn:1.0%以下、P:0.04
%以下、S:0.03%以下、Al:0.150 %以下、N:0.00
50〜0.0200%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物
からなることを特徴とするドラム缶用冷延鋼板である。
下、Si:0.20%以下、Mn:1.0 %以下、P:0.04%以
下、S:0.03%以下、Al:0.150 %以下、N:0.0050〜
0.0200%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物から
なり、かつ前記N含有量のうち、固溶Nとして0.0010%
以上含有することを特徴とする伸び35%以上を有し延性
および焼付け硬化性に優れたドラム缶用冷延鋼板であ
る。
下、Si:0.20%以下、Mn:1.0 %以下、P:0.04%以
下、S:0.03%以下、Al:0.150 %以下、N:0.0050〜
0.0200%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物から
なる鋼素材を、加熱し仕上圧延温度を800 ℃以上とする
熱間圧延加工を施し、該熱間圧延加工終了後2sec 以内
に強制冷却を開始し、巻取り温度:650 ℃以下で巻取
り、熱延板としたのち、該熱延板を酸洗し、ついで冷間
圧延により冷延板とし、該冷延板に再結晶温度以上で焼
鈍を行い、あるいはさらに調質圧延を施すことを特徴と
する延性および焼付け硬化性に優れたドラム缶用冷延鋼
板の製造方法である。
を胴板、天板および地板のうちの少なくとも1つに用い
たことを特徴とする鋼製高強度ドラム缶である。
限定理由について説明する。 C:0.10%以下 Cは、基地中に固溶し鋼板強度を増加させるが、0.10%
を超えると炭化物を形成し延性を劣化させるとともに、
溶接部の硬化が顕著になり、ドラム缶製缶時のフランジ
成形工程において割れが多発し、また、ドラム缶の強度
試験として特徴的な落下試験において、巻締め部が破断
して漏れを生じ不良となる危険性が大きい。このため、
本発明では成形性の観点からC含有量の上限を0.10%と
した。なお、さらに成形性の観点からはC含有量は0.02
%以上0.08%以下とするのが好ましい。
冷間圧延性、表面処理性、耐食性が劣化する。このた
め、Si含有量は0.20%以下に限定した。なお、とくに耐
食性が要求される用途に用いる場合にはSi含有量は0.10
%以下に限定するのが好ましい。
量に応じて添加する。また、Mnは結晶粒を微細化する作
用を有しており、Mnの添加は材質上好ましい。しかし、
多量に添加すると、耐食性が劣化する傾向となるうえ、
鋼板を硬質化させ冷間圧延性を劣化させる。さらにMnの
多量添加は溶接性、溶接部の成形性をも劣化させる傾向
となるため、Mn含有量は1.0 %以下に制限した。なお、
良好な耐食性、成形性が要求される場合にはMn含有量は
0.60%以下とするのが好適である。
ジ加工性やネック加工性を劣化させるとともに、耐食性
を著しく劣化させる。また、Pは鋼中で偏析する傾向が
強く、溶接部の脆化をもたらす。このようなことからP
は0.04%以下に制限した。なお、好ましくは0.02%以下
である。
板の伸びを減少させ、さらに耐食性を低下させるため、
できるだけ低減するのが好ましいが、0.03%までは許容
できる。なお、良好な加工性が要求される場合には0.01
5 %以下とするのが望ましい。
有用な元素であり、さらに組織を微細化させる作用も有
しており、積極的に添加する。しかし、Al含有量が0.15
%を超えると鋼板表面性状が劣化し、固溶N量が顕著に
低減する。このため、Al含有量は0.15%以下に限定し
た。なお、材質の安定性という観点からは0.010 〜0.08
0 %の範囲が好ましい。
加させる作用を有している。本発明では、所定量の固溶
Nを確保し固溶強化により鋼板の強度を増加させる。こ
のためには、N含有量は少なくとも0.0050%以上とする
必要がある。しかし、0.0200%を超えて含有すると鋼板
の内部欠陥発生率が増加し、さらに鋳造時の割れ発生が
顕著となる。このため、N含有量は0.0050〜0.0200%の
範囲に限定した。なお、製造工程全体を考慮し、材質の
安定・歩留り向上という観点からは0.0070〜0.0170%の
範囲が好適である。
る溶接性、溶接部の加工性を全く阻害せず、鋼板強度の
増加に有効に寄与する。また、Nはドラム缶の缶体強度
の向上に対し、通常の固溶強化以上の効果を示し、「歪
時効硬化」を起こしているといえる。本発明の範囲内の
N含有量であれば、シーム溶接部硬さの顕著な増加は認
められない。
が、不可避的不純物は、Cu:0.2 %以下、Ni:0.2 %以
下、Cr:0.2 %以下、Mo:0.2 %以下、Nb:0.02%以
下、Ti:0.02%以下、B:0.0010%以下の範囲に制限す
るのが好ましい。これら元素が含有されることにより鋼
板強度は増加するが、溶接性、溶接部の加工性および化
成処理性が著しく劣化するため、ドラム缶への適用は極
めて困難となり、上記範囲に限定する。
て説明する。上記した組成の溶鋼を転炉、電気炉等通常
公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法、造塊法、薄スラ
ブ鋳造法等公知の方法で、スラブに凝固させ鋼素材とす
るのが好ましい。これら公知の鋳造方法のなかでもマク
ロ偏析を防止するため連続鋳造法が好ましい。
加熱温度は、とくに限定しないが、材質均一化のため10
00〜1300℃の範囲とするのが好適である。1300℃を超え
ると結晶粒が粗大化し、伸び特性が劣化する。また、10
00℃未満では、変形抵抗が高くなり圧延荷重が増加して
熱間圧延が困難となる。
る。仕上圧延温度を800 ℃以上とすることにより、均一
で微細な熱延板組織が得られ、これにより最終製品の組
織も均一微細化が図れる。さらに、熱延板段階で固溶N
を安定して確保でき、最終製品での機械的特性も安定す
る。仕上圧延温度が800 ℃未満では、均一微細な組織が
得られない。一方、仕上圧延温度が1000℃を超えると、
仕上圧延中のスケールに起因した疵の発生が顕著とな
り、表面の健全性が要求されるドラム缶用としては好ま
しくない。なお、材質の均一性から仕上圧延温度は820
〜920 ℃の範囲が好ましい。
を開始する。圧延終了後、速やかに強制冷却を開始す
る。強制冷却の開始は、圧延終了後2sec 以内とするの
が、最終製品の常温強度、高温強度を向上させるために
有効である。強制冷却は、水冷あるいはミスト冷却とす
るのが好ましく、冷却速度として50℃/s以上が好まし
い。圧延後強制冷却することにより、圧延歪により促進
され易いAlN の析出を防止することができ、冷延・焼鈍
工程を経ても有効に固溶Nを確保できる下地ができる。
さらに、圧延後強制冷却することにより、結晶粒の成長
が抑制され熱延板組織の均一微細化が達成される。
め、エッジ部には直接水がかからないように、冷却中の
マスキングを行うのが好ましい。これにより、ドラム缶
の製缶時におけるフランジ加工性、巻締め部の健全性が
確保できる。巻取り温度は650 ℃以下とする。巻取り温
度を650 ℃以下とすることにより、熱延板中の固溶Nを
確保し、最終製品で所定量以上(0.0010%以上)の固溶
Nを得ることができる。しかし、巻取り温度が400 ℃未
満となると、熱延板形状が悪化し、さらに鋼板幅方向の
硬度差が大きくなり冷間圧延後の鋼板形状を悪化させる
恐れがある。このため、巻取り温度は650 ℃以下好まし
くは400 ℃以上とするのがよい。
延板とする。熱延板の酸洗条件はとくに規定する必要は
なく表面スケールが除去できればよく、通常公知の方
法、例えば、塩酸、硫酸等の酸で表面スケールを除去す
る。熱延板を所定の板厚の冷延板とするために冷間圧延
を施すが、本発明では冷間圧下率等圧延条件をとくに限
定する必要はないが、冷間圧下率は最終板形状の改善、
組織の微細化の点から40〜85%の範囲とするのが好まし
い。
る。焼鈍は再結晶温度以上の温度で行う。ここでは、再
結晶温度は再結晶終了温度を意味する。焼鈍を再結晶終
了温度未満で実施すると、組織が未再結晶組織となる。
未再結晶組織は、強度は高いが延性が低く、また、高温
に晒された場合に急激に軟化する傾向を示すため、高温
に晒される用途、例えば、溶接組立を行うドラム缶等の
用途には不適となる。さらに、鋼板の幅方向、長手方向
で材質のばらつきが大きくなる。このため、冷延板の焼
鈍は再結晶終了温度以上の温度で実施するものとする。
なお、固溶N量の確保のために、加熱温度に60sec 以下
の時間保持することが好ましい。
イクルとし、とくに過時効処理を施す必要はない。しか
し、過時効処理を行ってもとくに材質の変化はみられな
いため、過時効を行うヒートサイクルの連続焼鈍設備を
利用してもよい。なお、冷延焼鈍板の表面を清浄とする
ため、必要に応じ、焼鈍後酸洗を行ってもよい。
される。調質圧延は、降伏点伸びを消滅、あるいは軽減
し、さらに鋼板表面粗度の調整および原板の形状性の改
善のために実施する。調質圧延の圧下率は5%以下とす
るのが好ましい。圧下率が5%を超えると鋼板の延性が
劣化する。なお、表面粗度の調整のためには1%以上5
%以下とするのが好ましい。
処理を施してもよい。施される表面処理としては、錫め
っき、クロムめっき、ニッケルめっき、ニッケル・クロ
ムめっき、亜鉛めっき等のめっき、各種合金めっき、化
成処理など通常の冷延鋼板に適用される表面処理がいず
れも好適に適用できるのは言うまでもない。また、冷延
後、連続溶融亜鉛めっきラインで、溶融亜鉛めっき処理
を施される溶融亜鉛めっき鋼板としてもよい。また、こ
れらのめっき後あるいは、直接、塗装あるいは有機樹脂
フィルムを貼って製缶してもなんら問題はない。
は、35%以上の高い伸びを示し、さらに、0.0010%以上
の固溶N量を含有しており、該冷延鋼板を用いて製缶し
たドラム缶は、従来の鋼板を用いた場合にくらべ、製缶
後に塗装・焼付け工程を施すことにより、焼付け硬化に
より高い常温強度と、高温域(具体的には300 〜800
℃)での高い高温強度を有するドラム缶となる。なお、
製缶後の缶強度を安定して高強度とするためには、固溶
N量は0.0015〜0.0100%の範囲とするのが好ましい。固
溶N量の調整は、鋼素材の全N量と熱延(冷延)焼鈍条
件の組合せで行うのが好ましい。
全N量から臭素エステルによる溶解による析出N分析法
で得られた析出N量を差し引いたN量をいう。ドラム缶
の製缶を安定して行うためには缶素材の延性が重要な因
子であり、伸び値が35%以上の鋼板であれば、安定した
製缶が可能である。伸び値の測定は引張試験により行う
が、試験片の採取方向はドラム缶成形時に円周方向とな
る方向とする。
上の時効指数を示す鋼板である。さらに、ドラム缶体と
して、局部変形に対する高い抵抗力、高温でのより高い
強度を得るためには好ましくは7kgf/mm2 以上の時効指
数を有する鋼板が望ましい。時効指数の調整は、主とし
て固溶N量を調整して行うのが望ましい。本発明の冷延
鋼板を素材として用いることにより、成形工程と塗装−
焼付け工程を経たのち、高い常温強度と高温強度を有す
るドラム缶が得られる。また、本発明鋼板は、特別な促
進時効処理を施さなくても室温における1日程度の自然
時効により十分硬化し、塗装後焼付け条件の微妙な変動
にも鈍感であり、安定した缶体強度が確保できる。この
点は、従来の固溶Cのみを利用する場合に比べて有利な
点である。
ら採取した引張試験片に7.5 %の引張予歪を与え除荷
し、100 ℃×60min の時効を行ったのち、再度引張試験
を行い変形応力を求め、時効前の変形応力と時効後の降
伏応力の差を時効指数とする。なお、従来通常に用いら
れる2%予歪を付加して、170 ℃で20min 時効する方法
では、ドラム缶体の強度と対応しなかった。この理由は
不明であるが、Nによる歪時効硬化を利用していること
が1つの要因と思われる。
れている。本発明の冷延鋼板を素材として天板、地板を
プレス加工し、胴板を曲げ成形し、その両端部を重ねシ
ーム溶接あるいは突合わせ溶接により接合し缶胴部と
し、缶胴部の両端に地板(および天板)を巻締めにより
装着してドラム缶を形成する。地板のみを巻き締めたオ
ープンタイプと、天板も巻き締めたクローズタイプがあ
る。ドラム缶に成形したのち、化成処理、塗装−焼付け
工程を施す。本発明の冷延鋼板を用いたドラム缶では、
塗装後の焼き付け工程で、強度が大きく増加し、従来に
はない高い缶体強度を示すようになる。本発明の冷延鋼
板をドラム缶体の胴板、天板、地板の少なくとも1つに
適用することにより、缶体強度増加の効果が得られる。
連続鋳造法で260 mm厚のスラブ(鋼素材)とした。つい
で、これらスラブを表2に示す条件で熱間圧延を施し、
圧延終了後0.1 〜1.5secで水冷を開始し、表2に示す温
度で巻取り、熱延板とした。ついで、これら熱延板を酸
洗・冷間圧延により1.21mm厚の冷延板とした。これら冷
延板に表2に示す条件で連続焼鈍を行い、ついで調質圧
延を施し最終仕上板厚を1.2mm 厚とした。
および500 ℃における引張強さ、0.5 %変形応力で代替
する)、時効指数を求めた。なお、時効指数の測定方法
は、製品鋼板から採取した引張試験片に7.5 %の引張予
歪を与え除荷したのち、100℃×60min の時効を行い、
再度引張試験を行い降伏応力を求め、時効前の降伏応力
と時効後の降伏応力の差を時効指数とした。
3 )は、40%以上の伸びを示し、延性の低下を伴うこと
なく常温強度、および500 ℃における高温強度が増加し
ている。また、本発明例は時効指数も5kg/mm2以上を有
し、本発明範囲を外れる比較例(No.4)にくらべ高い時
効性を有していることがわかる。また、組成が本発明範
囲をはずれる比較例(No.5〜 No.7 )は、伸びが低く延
性が劣化している。
ス加工し、胴板を曲げ成形し両端部をシーム溶接して缶
胴部とし、缶胴部の両端に天板、地板を巻き締めにより
装着し容量 200リットルの密封型ドラムとした。なお、
外面にはメラミン塗装を施し、内面にはリン酸亜鉛によ
る化成処理を施し、塗装後焼付け処理(180 ℃)を施し
た。製缶に際し、製缶時の加工性、溶接性等を調査し製
缶性とした。
を充填し、1.2mの高さから落下させ漏れおよび変形量を
調査する落下試験を実施した。なお、落下試験における
変形量は、比較例(No.4)の変形量を1.00とし、比較例
に対する比で示している。また、再生利用試験として、
これらドラム缶に、ドラム缶再生処理に相当する処理
(800 ℃にて5min 保持後、200 ℃まで冷却し、ショッ
トブラスト処理する)を複数回実施した。なお、ショッ
トブラストはスチールショットを用い、ショット条件は
一定とした。各処理を実施後、缶体の歪量を測定し、そ
の値が基準地以上となる処理回数を再生利用限界回数と
して求めた。
す。表3から、本発明例は、製缶性も問題なく、落下試
験において漏れを生じることもなく、さらに落下試験に
おける変形量も比較例にくらべ減少し、缶体の高強度化
が達成されていることがわかる。また、本発明例の再生
利用限界回数は、比較例にくらべ、増加しており、この
ことからも本発明例のドラム缶は缶体強度が増加してい
ることがわかる。
け処理を行わず、直ちに落下試験を実施した場合と、焼
付け処理を行った場合について落下後の変形量を比較し
た。その結果、本発明の範囲を外れる比較例では、焼付
け処理により、たかだか3%程度の変形量の改善であっ
たが、本発明例では、20%程度の顕著な変形量の改善が
確認された。このことから、本発明鋼板が優れた焼付け
硬化特性を有し、缶体強度の上昇に有効に寄与しててい
ることがわかる。
進時効処理を施さなくても室温における1日程度の自然
時効により完全な焼付け時の時効による強度上昇の80%
以上十分硬化することが確認されており、塗装後焼付け
条件の微妙な変動にも鈍感であり、安定したドラム缶体
強度が確保できる。さらに、本発明の鋼板で構成された
ドラム缶は、概ね100 ℃以上で数分加熱されれば、完全
時効状態(210 ℃×20分の時効を経た状態)の95%以上
の缶体強度が得られ、それ以上の温度上昇に対しても変
化率は小さい。従って、本発明鋼を用いたドラム缶であ
れば、塗装・焼付け条件が100 ℃(この温度では焼付け
自体は不十分であるが)以上に加熱されれば、所望する
缶強度が確保でき、操業の温度変動などに対しても安定
して缶体強度が確保される。
そのような低温度、短時間の焼付けでは十分な缶強度を
安定して確保することができなかった。概ね、170 ℃±
10℃にて20分の焼付けが必須である。また、油類を充填
し、−40℃の低温で上記した落下試験を実施したが、常
温における試験結果と同様な結果が得られた。 (実施例2)0.035 wt%C−0.01wt%Si−0.35wt%Mn−
0.008wt %P−0.005wt %S−0.035wt %Alを基本組成
としてN含有量を表4に示すように0.0020〜0.0150wt%
の範囲で変化した鋼素材(スラブ)を用い、表4に示す
条件で熱間圧延を施し、圧延終了後水冷し、表4に示す
温度で巻取り熱延板とした。製品板での固溶N量を変化
させるため、熱延加熱条件、圧延仕上条件を変化させて
熱延板とした。ついで、これら熱延板を酸洗・冷間圧延
により冷延板とした。これら冷延板に表4に示す条件で
連続焼鈍(均熱時間40sec 一定)を行い、ついで調質圧
延を施し最終仕上板厚を1.0mm 厚とした。
工し、胴板を曲げ成形し両端部をシーム溶接して缶胴部
とし、缶胴部の両端に天板、地板を巻き締めにより装着
し容量200lの密封型ドラムとした。なお、外面にはメラ
ミン塗装を施し、内面にはリン酸亜鉛による化成処理を
施し、塗装後焼付け処理(150 ℃)を施した。これらド
ラム缶について、常温(30℃)および300 ℃で、ドラム
缶外部から、円周方向の圧縮応力となるように集中荷重
を負荷して、その際生じる缶体の変形量を測定した。さ
らに、実施例1と同様に再生利用試験を実施した。その
結果を表4に示す。
明例 No.8 〜 No.14)では、荷重負荷により生じる変形
量が、比較例に比べ高温および常温とも著しく減少する
ことがわかる。また、缶体再生利用試験における限界回
数も比較例に比べて著しく増加している。なお、ドラム
缶内部の圧力を高くした場合の缶体の変形量について
も、測定したが外部からの圧縮応力負荷に比べ大きな相
違はみられず、本発明例のドラム缶の変形量が比較例の
変形量にくらべ少ない傾向は同様に確認できた。
の温度が高い状態(概ね70℃程度)で充填され、完全に
冷えきらない条件で蓋をされる場合がある。その場合に
は、冷却過程で缶内部が負圧になり、缶体が十分な強度
を有していないと、大気圧による座屈現象を起こすこと
が知られている。座屈を生ずる圧力(大気圧に対して負
圧)を調査したところ、同一の製缶条件で比較して、本
発明鋼を使用したドラム缶は、従来鋼を使用したドラム
缶に比して、約10%程度高い強度が得られ、より高い温
度あるいはより不利な条件での充填が行われた場合でも
缶体の座屈現象を起こしにくく、より高効率の充填が可
能となり、大気圧力による缶体の形状不良も発生しにく
くなる。
らに固溶N量を0.0010wt%以上含む本発明の冷延鋼板を
ドラム缶素材として、缶を製造すれば、製缶性の低下も
なく、常温および高温の缶体強度の増加が図れ、その結
果再生利用回数の増加が期待できる。ここでは、容量 2
00リットルの密封型ドラムについてのみ説明したが、オ
ープン型のドラム缶、さらに小容量のドラム缶に対して
適用しても同様の効果があることはいうまでもない。
となく、ドラム缶の強度増加が達成でき、内容物保管に
対する信頼性が向上し、さらに再生利用回数の大幅な増
加が見込めなど産業上格段の効果が期待できる。さら
に、鋼板の薄肉化が達成でき、製缶コストの低減にも寄
与できるという効果もある。
Claims (4)
- 【請求項1】 重量%で、 C:0.10%以下、 Si:0.20%以下、 Mn:1.0 %以下、 P:0.04%以下、 S:0.03%以下、 Al:0.150 %以下、 N:0.0050〜0.0200% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなること
を特徴とするドラム缶用冷延鋼板。 - 【請求項2】 重量%で、 C:0.10%以下、 Si:0.20%以下、 Mn:1.0 %以下、 P:0.04%以下、 S:0.03%以下、 Al:0.150 %以下、 N:0.0050〜0.0200% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、か
つ前記N含有量のうち、固溶Nとして0.0010%以上含有
することを特徴とする伸び35%以上を有し延性および焼
付け硬化性に優れたドラム缶用冷延鋼板。 - 【請求項3】 重量%で、 C:0.10%以下、 Si:0.20%以下、 Mn:1.0 %以下、 P:0.04%以下、 S:0.03%以下、 Al:0.150 %以下、 N:0.0050〜0.0200% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素
材を、加熱し仕上圧延温度を800 ℃以上とする熱間圧延
加工を施し、該熱間圧延加工終了後2sec 以内に強制冷
却を開始し、巻取り温度:650 ℃以下で巻取り熱延板と
したのち、該熱延板を酸洗し、ついで冷間圧延により冷
延板とし、該冷延板に再結晶温度以上で焼鈍を行い、あ
るいはさらに調質圧延を施すことを特徴とする延性およ
び焼付け硬化性に優れたドラム缶用冷延鋼板の製造方
法。 - 【請求項4】 請求項1または2に記載の冷延鋼板を胴
板、天板および地板のうち少なくとも1つに用いたこと
を特徴とする鋼製高強度ドラム缶。
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