JP2010106295A - ドラム缶用冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】特に適正なベークハードニング性を有して、鋳造歩留まりに優れ低コストの且つ低温靭性に優れ再処理においても十分な強度を有して、変形し難いドラム缶用冷延鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.0015〜0.060%、Si:0.0015〜0.060%、Mn:0.15〜0.60%、P:0.0015〜0.060%、S:0.0015〜0.060%、Al:0.015〜0.060%、N:0.0015%以上〜0.0050%未満を含有し、残部がFeおよび不可否的不純物からなり、かつ、前記C,Nのうち、固溶NとCの合計で、0.0005〜0.0020%であることを特徴とするドラム缶用冷延鋼板およびその製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼製高強度ドラム缶に係り、鋼製ドラム缶用素材として好適な冷延鋼板およびその製造方法に関する。具体的には、ベークハード型高強度低コスト良低温靭性鋼製ドラム缶用冷延鋼板およびその製造方法に関する。
本発明が対象とするドラム缶は、JIS Z 1600に規定の鋼製オープンドラムと、JIS Z 1601に液体用鋼製ドラムとして規定されている密封型ドラムの2タイフ゜がある。ドラムの構成として天板、地板および胴板から構成されており、密封型ドラムでは円筒状に曲げ成形しシーム溶接して接合した胴板から構成され、オーフ゛ン型ドラムでは胴板と地板のみ巻き締めして、天板は着脱可能なのが特徴である。また、外面および内面に必要に応じて化成処理や塗装処理がされる。
ドラム缶には、製缶の精度および溶接部、接合部、巻き締め部の健全性が要求され、JIS規格には機密試験(水圧試験)、落下試験、積み重ね試験等を実施することが規定されている。また、輸送等で外力を受けた際に変形すると積み重ね等に支障を生じ外観も損なうため、強度が要求される。
またドラム缶は、再生処理として回収後加熱処理(800℃近傍)後直ぐにショットブラスト処理を実施するため、加熱処理で軟化およびショットブラスト処理で変形が生じないことが必須条件になる。さらに、近年寒冷地でも使用することを想定して、低温靭性も具備することが必要になっている。
ドラム缶素材として使用できる鋼板は、JIS G 3131に規定される熱間圧延軟鋼板および鋼帯、あるいはJIS G 3141に規定される冷間圧延鋼板あるいは鋼帯とされている。また、使用する鋼板の板厚はドラム缶の種類、級別に応じ1.6mm 〜0.5mm までの範囲に規定されている。例えば、密封型ドラムの容量 200リットルの1種H級の場合には、胴板、天板、地板とも板厚1.6mm の鋼板を使用することが決められている。
従来はドラム缶用鋼板としては、加工性を重視して、低炭素アルミキルド箱焼鈍材が用いられていた。その典型的鋼組成は、0.05〜0.10%C−0.2 〜0.5 %Mn−〜0.05%Si−0.04〜0.10%Al−0.0015〜0.0030%Nである。しかし、その後、鋼板の製造プロセスが連続化を志向し、より高生産効率の設備である連続焼鈍設備による、連続焼鈍材が広範囲に適用されるようになった。連続焼鈍材の鋼組成は上記低炭素アルミキルド箱焼鈍材とほとんど同一のものが使用されてきた。現在では、この低炭素アルミキルド鋼連続焼鈍材が、わが国、欧米においても主流となっている。ドラム缶用に製造されている素材の引張特性の一例としては板厚1.0 〜1.2mm で、降伏応力(YS):23kgf/mm、引張強度(TS):35kgf/mm、伸び(EL):42%程度である。また、一部の板厚の厚いドラム缶材には熱延材も適用されるが、その割合は低い。
最近、缶製造コストを低減するために、ドラム缶用素材の板厚を薄くしようとする試みがなされてきた。しかし、素材の板厚減少に伴う缶体強度の低下を補償するためには素材の高強度化を図る必要がある。また、ドラム缶は1回のみの使用ではなく、一度内容物を入れて使用されたのち内部を洗浄して再度あるいは再々度、平均的には4〜5回繰り返して使用されるのが一般的である。再使用するに当たっては、内面の付着物や外面の塗装を除去するために、通常、ショットブラスト処理を行う。このショットブラスト処理により缶体に発生する変形量が大きい場合には、そのドラム缶は積み重ねができず、再生利用に不適となる。したがって、このショットブラスト処理による缶体の変形量の大小は再生利用を決定する一つの因子となっている。
このショットブラスト処理による缶体の変形は、単に使用する鋼板の室温強度のみを増加して防止しうるものではないことが新たに判明した。すなわち、ショットブラスト処理の前に、缶体を約800 ℃に加熱する焼却処理が実施される場合があり、その後、缶体が完全に冷却しないうちにショットブラスト処理を行う場合が多い。本発明者らは、上記したショットブラスト処理による缶体の変形量が少ないことに加えて、高温加熱時の変形や200 〜500 ℃でのショットブラスト処理による変形が少ないことが再生利用を決定する重要な因子となっている。このようなことから、缶体が200 ℃以上における高い高温強度を有することも要求されている。
高強度鋼板を適用したドラム缶としては、例えば特開昭56-77039号公報(下記特許文献1)には、冷間圧延により降伏点が70〜100kg/mmとした未焼鈍の0.4 〜0.9mm 厚冷延鋼板を缶胴板素材として、缶胴部と天板、地板との接続に供される加工部のみに熱処理を行い軟質化して成形性を確保するドラム缶の製造方法が提案されている。しかしながら、この技術では、800 ℃での焼却処理時に缶体が焼鈍され、再生利用が著しく制御され、さらに、未焼鈍のため歪が発生したり、熱処理による表面酸化被膜の生成に加えて、加工部のみを熱処理するため工程が複雑となり大量生産に適さないなどの問題があり、実用化するまでに至っていない。
その対策として、特開平11-080886号公報(下記特許文献2),特開平11-080889号公報(下記特許文献3),特開平11-302782号公報(下記特許文献4)に記載された技術が開示されているが、何れも本発明の課題を達成することができなかった。
即ち、特許文献2や特許文献3には、固溶Cのみの強化では延性の低下が大になるので、N添加(0.0050〜0.0200%)の複合が好ましいとの開示がされている。しかしながらこの場合にはNが高いことにより、連続鋳造時に表面割れ等が発生し易く、歩留まり低下によるコスト増が発生することや、寒冷地で使用した場合の低温靭性の特性が不十分であった。
また、特許文献4では、Nb添加による細粒化による溶接部の溶接後の成形時の品質確保に必須であるとの開示があるが、Nb添加した場合に整粒の再結晶組織を得るためには焼鈍温度を過剰に上げる必要があり、C,Nが過剰に溶け込み延性を劣化させる弊害があることと製造性の影響と同時にコストアップにもなるという課題があった。
特開昭56-77039号公報 特開平11-080886号公報 特開平11-080889号公報 特開平11-302782号公報
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、特に適正なベークハードニング性を有して、鋳造歩留まりに優れ低コスト且つ低温靭性に優れ再処理においても十分な強度を有して、変形し難いドラム缶用冷延鋼板およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋼板組成、製造方法について種々検討した結果、適正量のC,Nを制御した上で、熱間圧延時の条件の加熱温度と仕上げ温度、巻き取りの最適化ならびに連続焼鈍工程での到達温度と冷却速度の過時効条件の最適な組み合わせにより上記課題を解決できる優れたドラム缶用冷延鋼板およびその製造方法を見出し、本発明を成したものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)質量%で、C:0.0015〜0.060%、Si:0.0015〜0.060%、Mn:0.15〜0.60%、P:0.0015〜0.060%、S:0.0015〜0.060%、Al:0.015〜0.060%、N:0.0015%以上〜0.0050%未満を含有し、残部がFeおよび不可否的不純物からなり、かつ、前記C,Nのうち、固溶NとCの合計で、0.0005〜0.0020%であることを特徴とするドラム缶用冷延鋼板。
(2)質量%で、C:0.0015〜0.060%、Si:0.0015〜0.060%、
Mn:0.15〜0.60%、P:0.0015〜0.060%、S:0.0015〜0.060%、Al:0.015〜0.060%、N:0.0015%以上〜0.0050%未満を含有し、残部がFeおよび不可否的不純物からなる鋼素材を、1000〜1200℃の温度に加熱し、820〜920℃の温度で熱間圧延し、600〜700℃の温度で捲取り後、酸洗デスケーリングし、40〜85%の圧下率で冷延間圧延を行い、660〜720℃の温度で30〜300秒間再結晶処理した後、5℃/秒以上の冷却速度で300〜450℃まで冷却し、300〜450℃の温度範囲で10〜300秒保持した過時効処理を行い、1〜5%の圧下率で調質圧延を施すことにより、固溶NとCの合計が0.0005〜0.0020%の鋼板を製造することを特徴とするドラム缶用冷延鋼板の製造方法。
本発明によれば、適正量のC,Nを制御した上で、熱間圧延時の条件の加熱温度と仕上げ温度、巻き取りの最適化ならびに連続焼鈍工程での到達温度と冷却速度の過時効条件の最適な組み合わせにより上記課題を解決できる優れたドラム缶用冷延鋼板およびその製造方法を提供することができるうえ、鋼板の薄肉化が達成でき、製缶コストの低減にも寄与できるなど産業上有用な著しい効果を奏する。
本発明は上記の知見に基づいて構成されたものである。すなわち本目的を達成するための本発明は、鋼板の組成については質量%で、C:0.0015〜0.060%、Si:0.0015〜0.060%、Mn:0.15〜0.60%、P:0.0015〜0.060%、S:0.0015〜0.060%、Al:0.015〜0.060%、N:0.0015%以上〜0.0050%未満を含有し、残部がFeおよび不可否的不純物からなり、かつ、前記C,Nのうち、固溶NとCの合計で、0.0005〜0.0020%であることを特徴とするドラム缶用高強度冷延鋼板およびその製造方法である。
まず、本発明の鋼板の化学組成の限定理由について説明する。以下の説明において、各成分の含有量は質量%を示す。
「C:0.0015〜0.060%」
Cは延性を低下させ加工性を悪化させる有害な元素であるが、その量を制限すればドラム缶再生に極めて有効な元素となり、本発明にとって最も重要な化学成分となる。特に上限については0.060%を超えると有害な側面が顕著になるので0.060%以下、好ましくは0.040%以下とする。ただし効果的なBH強化を得るためには0.0015%以上含有させることが望ましく、必要なBH効果に応じて増やすものとする。また鋼中の固溶C量は5ppm以上10ppm未満の範囲であることが望ましい。この固溶C量は内部摩擦法により分析されたものとする。この値が5ppm未満だと充分なBH効果が期待できず、一方、10ppm以上になると常温保管においてもBH効果が現われてドラム缶の曲げ加工時に缶強度に必要な真円が得られなくなる。従って調質圧延ままの鋼板においては必ずこの固溶C範囲を確保する必要がある。
「Si:0.0015〜0.060%」
Siは、強化元素として有用であるが、多量に含有すると冷間圧延性、表面処理性、耐食性が劣化する。このため、Si含有量は0.0015〜0.060%が好ましい。
「Mn:0.15〜0.60%」
Mnは結晶粒を微細化する作用を有しており、Mnの添加は材質上、0.15%以上が好ましい。しかし、多量に添加すると、耐食性が劣化する傾向となるうえ、鋼板を硬質化させ冷間圧延性を劣化させるため、Mn:0.15〜0.60が好ましい範囲である。
「P:0.0015〜0.060%」
Pは、鋼を著しく硬質化させ、ドラム缶製造時のフランジ加工性やネック加工性を劣化させるとともに、耐食性を著しく劣化させる。また、Pは鋼中で偏析する傾向が強く、溶接部の脆化をもたらす。このようなことからP含有量は0.0015〜0.060%が好ましい。
「S:0.0015〜0.060%」
Sは、鋼中では主として介在物として存在するため、鋼板の伸びを減少させ、さらに耐食性を低下させるため、できるだけ低減するのが好ましく、また、熱間延性を劣化させ、鋳造や熱間圧延の阻害要因となるので0.060%以下とする。
一方、Sの低減にかかるコストを勘案して0.0015%以上とする、従ってS:0.0015〜0.060%とする。
「Al:0.015〜0.060%」
Alは、脱酸元素として添加され鋼の清浄度を向上させる有用な元素であり、さらに組織を微細化させる作用も有しており、積極的に添加する。しかし、Al含有量が多いと鋼板表面性状が劣化し、固溶N量が顕著に低減する。このため、Al含有量は0.060%以下が好ましい。また、AlNの析出により結晶粒成長を抑えるピン止め効果を有するため、0.015〜0.060%%の範囲が好ましい。
「N:0.0015%以上〜0.0050%未満」
Nは固溶NとしてBH効果を増加させる元素であるが、C以上に常温保管においてBH効果が現われやすくドラム缶の曲げ加工時の真円確保が得難くなる。従って極力少なく使用することが望ましいが、鋼製造が大気中で行われており不可避的に混入する元素であるからAl添加によりNをAlNとして固定する。ここでN量が0.0050%を超えるとAlによる安定したN固定が困難となるのでN量は0.0050%以下、好ましくは0.0025%以下とする。本発明においてはBH効果をNによらずCのみで得ることを目指しているが、5ppm未満の微量NであればBH効果への補助的強化作用が期待できるので下限を0.0015%とする。
「前記C,N含有量のうち、固溶NとCの合計で、0.0005〜0.0020%」
製缶後の缶強度を安定して高強度にするためには、前記C,N含有量のうち、固溶NとCの合計で、0.0005〜0.0020%の範囲とするのが好ましい。固溶N量の調整は、鋼素材の全N量およびC量と熱延(冷延)焼鈍条件の組合せで行うことができる。
なお、本発明でいう固溶Nと固溶C量とは、鋼中の全N量とC量から臭素エステルによる溶解による析出分析法で得られた析出量を差し引いたN量とC量の合計をいう。
上記以外の鋼材成分の残部はFeおよび不可避的不純物からなり、下記の成分を添加してもよい。
また、Cu:0.2 %以下、Ni:0.2 %以下、Cr:0.2 %以下、Mo:0.2 %以下、Nb:0.02%以下、Ti:0.02%以下、B:0.0010%以下の範囲に制限するのが好ましい。これら元素が含有されることにより鋼板強度は増加するが、溶接性、溶接部の加工性および化成処理性が著しく劣化するため、ドラム缶への適用は極めて困難となり、上記範囲に限定する。
つぎに、鋼板の製造条件の限定理由について説明する。
上記組成の溶鋼を転炉、電気炉等通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法、造塊法、薄スラブ鋳造法等公知の方法で、スラブに凝固させ鋼素材とするのが好ましい。これら公知の鋳造方法のなかでもマクロ偏析を防止するため連続鋳造法が好ましい。
また、熱間圧延時の加熱温度を1000-1200℃の範囲とし、仕上げ温度を900-920℃に制御して、巻取りを行い、素材製造時の焼鈍工程で需要家での塗装ベーキング時に必要量のC,Nを溶け込ませ、析出させ需要家での再使用時の熱処理では更に素材製造時の焼鈍後の冷却時に塗装焼き付け時に生成したセメンタイトが適度に溶解して、固溶強化機構で再度ハイテン化することができる。
「1000〜1200℃の範囲に加熱」
鋼素材を、加熱し熱間圧延を施す。スラブ加熱温度は析出したAlNの再固溶を防止し、熱延前段階で固溶N量を抑える温度域とするため1200℃以下の範囲とするのが好適である。また、1000℃未満では、変形抵抗が高くなり圧延荷重が増加して熱間圧延が困難となる。
「820〜920℃範囲で熱間圧延」
A3変態点以上の温度域で熱延することにより均一な組織が得られ、最終製品の材質も均質となるうえ、熱延板段階で固溶Nを安定して確保でき、最終製品での機械的特性も安定するため熱間圧延温度は820℃以上とする。一方、熱間圧延温度が920℃を超えると熱延ワークロールに肌荒れが進展し表面品位が著しく劣化する。
「600〜700℃の範囲で捲取り」
加熱段階のAlN溶解で固溶したNをAlNとして再析出させる捲取り温度範囲とするため600℃以上で捲き取り、700℃超で捲き取ると材質バラツキが大きい。
上記のスラフ゛加熱と熱間圧延温度の組合せにより熱延鋼板中のNはAlNとして析出され、固溶Nは10ppm以下となる。
熱延板は酸洗し、ついで冷間圧延により冷延板とする。熱延板の酸洗条件はとくに規定する必要はなく表面スケールが除去できればよく、通常公知の方法、例えば、塩酸、硫酸等の酸で表面スケールを除去する。熱延板を所定の板厚の冷延板とするために冷間圧延を施す。
「40〜85%の範囲で冷延間圧延」
熱延にて得られた均一組織を細粒化し、かつ焼鈍時の鋼板形状を平坦に維持して最終製品形状を良好に保つため、冷間圧延の圧下率は40〜85%の範囲とするのが好ましい。
「焼鈍温度660〜720℃で30〜300秒間の範囲で再結晶処理」
冷延板は再結晶温度以上の温度660〜720℃の範囲で30〜300秒間焼鈍する。ここでは、再結晶温度は再結晶終了温度を意味する。焼鈍を再結晶終了温度未満で実施すると、組織が未再結晶組織となる。未再結晶組織は、強度は高いが延性が低く、また、高温に晒された場合に急激に軟化する傾向を示すため、高温に晒される用途、例えば、溶接組立を行うドラム缶等の用途には不適となる。さらに、鋼板の幅方向、長手方向で材質のバラツキが大きくなる。
なお、固溶N量の確保のため660〜720℃の範囲で30〜300秒間の時間保持することが好ましい。
焼鈍はBAFを使わず過時効炉を有する連続焼鈍にて行う。焼鈍サイクルは炭化物が溶解し固溶Cが増え、かつAlNが析出し固溶Nが低減する温度域と時間の範囲であり、熱延段階で固溶N≦10ppmとなった鋼板は再結晶処理時に更にAlN析出が進み固溶N量は1〜2ppmとなる。
「5℃/秒以上の冷却速度」
再結晶温度から過時効温度域までを5℃/秒以上で冷却することにより結晶粒内炭化物の析出を誘起させる。
「過時効温度300〜450℃で10〜300秒間保持する過時効処理」
粒内、粒界の炭化物析出サイトに過剰な固溶Cが析出できる温度と時間の範囲とするため、 300〜450℃の範囲で10〜300秒間保持して過時効処理を行う。過時効処理は低温になると固溶C析出に長時間を要すので下限を300℃とする。一方、平衡的に固溶されるCが多くなる高温域の上限は450℃とする。この温度域で平衡的に固溶したC量は10ppm以下である。保定時間が長いほど固溶C析出は進むが10〜300秒で効果が徐々に弱まり、上限時間以上の保定は生産性を阻害する。
熱延および連続焼鈍+過時効処理にて固溶Nは1〜2ppm、固溶Cは10ppm未満となる。内部摩擦法による測定では固溶C+N合計は5〜20ppmである。
焼鈍済みの冷延鋼板はさらに調質圧延を施される。調質圧延は、降伏点伸びを消滅、あるいは軽減し、さらに鋼板表面粗度の調整および原板の形状性の改善のために実施する。調質圧延の圧下率は8%以下とするのが好ましい。圧下率が8%を超えると鋼板の延性が劣化するし、圧延反力が大きくなりすぎて圧延機の許容荷重を越えることがある。なお、表面粗度の調整のためには1%以上5%以下とするのが好ましい。
調質圧延済みの鋼板は、必要に応じ、亜鉛めっき、クロムめっき、錫めっき、錫−亜鉛合金めっきなどの表面処理を行ってもよい。また、表面処理を行う場合も行わない場合も防錆や潤滑性を持たせるため、クロメート処理や潤滑塗装などを行ってもよい。フィルムをラミネートしてもよい。
ドラム缶は、胴、天板、地板から構成されている。本発明の冷延鋼板を素材として天板、地板をプレス加工し、曲げ加工により円筒を成形し、その両端部を重ねシーム溶接あるいは突合わせ溶接により接合し缶胴部とし、缶胴部の両端に地板(および天板)を巻締めにより装着してドラム缶を形成する。地板のみを巻き締めたオープンタイプと、天板も巻き締めたクローズタイプがある。ドラム缶に成形したのち、化成処理、塗装−焼付け工程を施す。本発明の冷延鋼板を用いたドラム缶では、塗装後の焼き付け工程で、強度が大きく増加し、従来にはない高い缶体強度を示すようになる。本発明の冷延鋼板をドラム缶体の胴板、天板、地板の少なくとも1つに適用することにより、缶体強度増加の効果が得られる。また、ドラム缶を再生利用する際の加熱でも強度が落ちにくいので15回もの再生利用に耐える。従来は4〜5回程度の再生利用しかできなかった。特許文献2にあるように固溶Nだけを活用しても、再生利用の際の加熱で固溶NがAlNとして析出してしまうため、強度が低下のしかたが比較的大きい。これに対して本願では連続焼鈍時の過時効処理で析出したFeCが700℃付近で溶解して固溶Cが増えるため、再生利用を数多く行っても強度のが低下しにくい。ただし、15回以上再生利用すると結晶粒が急激に大きくなり強度が低下してしまうので再生利用の上限を15回とした。これは、析出物が溶解してしまうことでピン留め効果がなくなるためと考えられる。 本発明の冷延鋼板は、主に固溶NによるBH効果にてドラム缶製造時の塗料乾燥での強度向上と主に固溶CによるBH効果にて再生利用での強度確保を実現することができる。
ドラム缶用鋼板の材質の一例は板厚1.0〜1.2mmで、降伏点(以下、YPと称す)=225MPa、引張り強度(以下、TSと称す)=343MPaである。探索試験の素材はドラム缶素材に使われる低炭素アルミキルド鋼スラブとした。鋼成分は表1のとおりである。これを1235℃狙いにて加熱し、900℃狙いにて熱間圧延し、670℃狙いにて捲き取った。さらにデスケーリングし、冷間圧延し、連続焼鈍にて再結晶焼鈍と400℃かつ120秒の過時効(OA)処理を施し、1%狙いの調質圧延を施した冷延鋼板のYP、TS測定と内部摩擦法による固溶(C+N)量測定を行った。調圧後YPは376MPa、TSは396MPaであり、固溶(C+N)量は9ppm%である。この鋼板を電気炉に装入し700℃に加熱し、その温度に60秒間保定し、その後電気炉から取り出して空冷による急速冷却処理を行い、常温でのYP、TS測定と内部摩擦法による固溶(C+N)量調査を行った。このYP、TS値はショットブラストなしの鋼板強度である。この加熱焼却処理と材質測定を最大25回繰り返した結果を表2および図1に示す。また、冷延鋼板製造工程でのC,Nの状態を表3に示し、また、ドラム缶製造工程及び再生利用でのC,Nの状態を表4に示す。
この結果から以下のことが立証された。
(1)調質圧延まま鋼板と1〜15回焼却処理された鋼板のYP、TS値は同等にある。
(2)15回焼却した鋼板の固溶(C+N)量は25ppm%であり、素材鋼板9ppmより増加しておりショットブラストによるBH効果が強化される。
また、表5に示す化学成分の鋼を実機転炉にて溶製し、連続鋳造し、次いで表2に示す熱間圧延と冷間圧延を施し板厚を1.22mmとした。本発明材の連続焼鈍は過時効処理が可能な炉にて再結晶焼鈍しており、次いで2%の調質圧延を施して仕上げ板厚を1.2mmとした。比較材には過時効処理が生じないよう過時効炉板温を300℃以下とした再結晶焼鈍を施した。本発明材および比較材とも調質圧延の圧下率は2%とした。得られた冷延鋼板から固溶C、N量と引張り強度を調査する試験片を切り出し、固溶C、N量および缶体強度の指標であるYP、TS値を調査した。次いでこれらの冷延鋼板を実際にドラム缶に成形した際の加工性能を調査した。これらの結果を表7に示す。
ドラム缶は円筒形状に曲げ加工した胴板の両端部をシームあるいは突合せ溶接した後、天板、地板を捲き締めて作られる。ドラム缶体となった後は化成処理され、塗装と焼付けが施される。本発明の連続焼鈍材は従来のBAF焼鈍材と異なり固溶Cおよび少量の固溶Nを有しており焼付けによって歪み時効によるBH強化が生じて、塗装前のより強度増加した缶体が得られる。
表7から本発明例1〜6は良好な缶体成形性能を有していることが判る。一方、比較例7、8,12は固溶C、N量が本発明範囲上限を超えており、曲げ加工性が不良であった。また比較例9、11は再生利用回数が4回と少ない。比較例9はAl量が本発明範囲下限を外れており、比較例11はN量が本発明範囲下限を外れている。いずれの条件もAlN析出量が不足して結晶粒成長を抑えるピン止め効果が弱く、再生時の800℃焼鈍にて粒成長軟化が促進されたと推察される。比較例10も再生利用回数が3と少ないが、これはAl量が本発明上限外れにあり、AlN析出物が粗大化してピン止め効果を失ったことによるものと推察される。
Figure 2010106295
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Figure 2010106295
本発明のドラム缶用冷延鋼板に加熱焼却処理と材質測定を最大25回繰り返した結果を示す図である。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.0015〜0.060%、
    Si:0.0015〜0.060%、
    Mn:0.15〜0.60%、
    P:0.0015〜0.060%、
    S:0.0015〜0.060%、
    Al:0.015〜0.060%、
    N:0.0015%以上〜0.0050%未満を含有し、
    残部がFeおよび不可否的不純物からなり、
    かつ、前記C,Nのうち、固溶NとCの合計で、0.0005〜0.0020%であることを特徴とするドラム缶用冷延鋼板。
  2. 質量%で、
    C:0.0015〜0.060%、
    Si:0.0015〜0.060%、
    Mn:0.15〜0.60%、
    P:0.0015〜0.060%、
    S:0.0015〜0.060%、
    Al:0.015〜0.060%、
    N:0.0015%以上〜0.0050%未満を含有し、
    残部がFeおよび不可否的不純物からなる鋼素材を、1000〜1200℃の温度に加熱し、820〜920℃の温度で熱間圧延し、600〜700℃の温度で捲取り後、酸洗デスケーリングし、40〜85%の圧下率で冷延間圧延を行い、660〜720℃の温度で30〜300秒間再結晶処理した後、5℃/秒以上の冷却速度で300〜450℃まで冷却し、300〜450℃の温度範囲で10〜300秒保持した過時効処理を行い、1〜5%の圧下率で調質圧延を施すことにより、固溶NとCの合計が0.0005〜0.0020%の鋼板を製造することを特徴とするドラム缶用冷延鋼板の製造方法。
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