JP2008208399A - ドラム缶用薄肉冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.005〜0.10%、Si:0.005〜0.20%、Mn:0.1〜1.0%、P:0.005〜0.20%、S:0.03%以下、Al:0.01%〜0.1%、N:0.0080〜0.0200%を含有する組成の鋼素材に、加熱温度:1150℃以上の温度に加熱し仕上圧延終了温度:850℃以上とする熱間圧延を施し、圧延終了後2s以内に冷却を開始し、平均冷却速度75℃/s以上で650℃以下まで冷却し、巻取温度:650℃以下で巻取る工程と、酸洗、冷間圧延を施す工程と、焼鈍温度:750℃以下の温度で再結晶焼鈍する焼鈍処理を施す工程と、あるいはさらに伸び率:0.5〜5%の調質圧延を施す工程とを施す。これにより、固溶Nが0.0070%以上で、かつ固溶N/Nが0.60超で、製缶性に優れ、かつ焼付け硬化性に優れた板厚1.0mm未満のドラム缶用薄肉冷延鋼板となる。
【選択図】なし
Description
このような要求に対応できるものとして、例えば、特許文献1には、ドラム缶用冷延鋼板およびその製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術は、重量%で、C:0.10%以下、Si、Mn、P、S、Alを適正範囲に限定し、さらにN:0.0050〜0.0200%を含有し、熱延(冷延)焼鈍条件の組み合わせで、前記N含有量のうち、固溶Nとして0.0010%以上、好ましくは0.0015%以上0.0100%以下含有するように調整した鋼板とするものである。この技術により製造された鋼板は、ドラム缶成形時には比較的低強度で、その後の塗装・焼付け工程で強度の上昇が期待できる、延性および焼付け硬化性に優れた鋼板であり、板厚1.0mmの薄肉鋼板で、予変形−100℃×60minの時効処理後に、5.5kgf/mm2(54MPa)以上8.5 kgf/mm2(83MPa)以下の降伏応力の増加(時効指数)を示すことが確認されている。
(1)質量%で、C:0.005〜0.10%、Si:0.005〜0.20%、Mn:0.1〜1.0%、P:0.005〜0.20%、S:0.03%以下、Al:0.01%〜0.1%、N:0.0080〜0.0200%を含み、固溶Nが0.0070%以上で、かつ固溶N/Nが0.60超となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、焼付け硬化性に優れることを特徴とする板厚1.0mm未満のドラム缶用薄肉冷延鋼板。
C:0.005%〜0.10%
Cは、鋼に固溶し鋼板強度を増加させる作用を有する元素である。本発明では、塗装焼付処理前の鋼板自体の降状強さを200MPa以上とすることが好ましい。というのは、鋼板自体の降状強さが200MPa未満では、製缶時あるいは製缶後、塗装焼付処理前の缶体の取扱い時にへこみ、形状不良が生じやすく、へこみ、形状不良が生じた缶体は使用できなくなるためである。鋼板の降状強さを200MPa以上とするためには、Cを0.005%以上含有する必要がある。一方、0.10%を超える含有は、炭化物を形成して延性が低下するとともに、ドラム缶胴部のシーム溶接時に溶接部の硬さが顕著に増加し、ドラム缶製缶時のフランジ加工工程において割れが発生する場合がある。このようなことから、Cは0.005〜0.10%の範囲に限定した。なお、更なる成形性向上の観点から、好ましくは0.02〜0.08%である。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。塗装焼付処理前の鋼板自体の強度として降状強さ:200MPa以上を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.20%を超える多量のSi含有は、冷間圧延性、表面処理性、化成処理性、耐食性を砥下させる。このため、Siは0.005〜0.20%の範囲に限定した。なお、より厳しい化成処理性、耐食性が要求される用途においては、Siは0.10%以下とするのが好ましい。
Mnは、Sによる熱間割れを抑制する作用を有する元素であり、また、Mnは結晶粒を微細化する作用を有する。このような効果を確保するためには、0.1%以上の含有を必要とするが、1.0%を超える多量の含有は、耐食性が低下する傾向となるほか、鋼板をより硬質化させ、冷間圧延性を低下させる。また、Mnの多量含有は溶接性、および溶接後の溶接部成形性を低下させる。このため、Mnは0.1〜1.0%の範囲に限定した。なお、より良好な耐食性、成形性が要求される用途においては、Mnは0.60%以下とすることが好ましい。
Pは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、塗装焼付処理前の鋼板自体の強度として降状強さ:200MPa以上を得るためには0.005%以上の含有を必要とするが、0.20%を超える多量含有は、鋼板を著しく硬質化させ、ドラム缶製缶時のフランジ加工性やネック加工性を著しく低下させる。またPは、鋼中で偏析する傾向が強く、溶接部の脆化をもたらす。このため、Pは0.005〜0.20%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.10%以下である。
Sは、鋼中で主として介在物として存在し、鋼板の延性を低下させるとともに、さらに耐食性をも低下させる。このため、Sはできるだけ、低下させることが好ましいが、0.03%までであれば、それらの低下は小さく、許容できるため、上限とした。なお、0.005%未満の過度のS低減は、精錬を長時間化し、精錬コストを高騰させるため、下限を0.005%程度とすることが好ましい。なお、より良好な成形性が要求される用途においては、0.015%以下とすることが好ましい。
Alは、脱酸剤として作用し、鋼の清浄度を向上させる作用を有する元素であり、0.01%以上の含有を必要とする。Alが0.01%未満では脱酸効果が小さく、介在物が残存して成形性を低下させる。一方、0.1%を超える含有は、鋼板の表面清浄性を低下させ、また本発明で重要な固溶N量が著しく低減する。このため、Alは0.01〜0.10%の範囲に限定した。なお、材質安定性の観点から、0.02〜0.08%とするのが好ましい。
Nは、本発明で最も重要な元素である。Nは、鋼中に固溶し、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、所定量の固溶Nを確保し、所定値以上の鋼板強度を確保するためには、Nは少なくとも0.0080%以上含有する必要がある。しかし、0.0200%を超えて多量に含有すると、鋼板の内部欠陥発生率が増加し、さらに鋳造時の割れ発生が顕著となる。このため、Nは0.0080〜0.0200%の範囲に限定した。なお、材質の安定性、歩留り向上の観点から好ましくは、0.0100〜0.0180%の範囲である。
固溶状態のN(固溶N)は、ドラム缶に製缶した後に加えられる、化成処理、塗装焼付処理等の、熱処理によって、製缶時に導入された転位(歪)に固着し、転位の易動度を低下させ、強度を上昇させる。所望の焼付け硬化性を確保するためには、0.0070%以上の固溶N量を確保する必要がある。なお、本発明でいう「固溶N」とは、10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール溶液を電解液として用いた電解抽出法により溶解、抽出された電解残渣を化学分析することにより得られたN量を析出N量として、鋼中の全N量から析出N量を差し引いたN量をいう。
本発明では、優れた成形性と優れた焼付け硬化性を確保する観点から、上記したN量、固溶N量の範囲で、かつ固溶N量と全N量の比、固溶N/Nが0.60超を満足するように、N量、固溶N量をそれぞれ調整する。固溶N/Nが、0.60以下では、上記した所望の焼付け硬化性を確保することができない。固溶N以外のN量、すなわち析出N量が多くなると、AINが多くなり、固溶N量を確保できなくなるため、焼付け硬化性が低下する。
本発明では、上記した組成の鋼素材に熱間圧延を施し熱延板とする熱間圧延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に再結晶焼鈍を施し冷延焼鈍板とする焼鈍工程と、あるいはさらに調質圧延工程とを順次施し、板厚1.0mm未満の薄肉冷延鋼板とする。
熱間圧延工程では、上記した鋼素材に、加熱温度:1150℃以上、好ましくは1300℃以下の温度に加熱し、仕上圧延終了温度を850℃以上、好ましくは1000℃以下とする熱間圧延を施す。
冷却は、水冷、あるいはミスト冷却等の強制冷却とする。冷却開始が熱間圧延終了から2sを超えて遅くなると、最終製品での所望の固溶N量を確保することができなくなる。このようなことから、熱間圧延終了後、2s以内に強制冷却を開始することとした。
650℃以下の温度域まで冷却された熱延板は、ついで、該温度域、すなわち、巻取り温度:650℃以下で、巻き取られる。
巻取り温度を650℃以下とすることにより、熱延板中の固溶N量を所定値以上とすることができ、最終製品での所定の固溶N量を確保することができる。しかし、巻取り温度が400℃未満では、熱延板の形状が悪化し、さらに鋼板幅方向の硬度差が大きくなり、冷間圧延後の鋼板形状を悪化させる恐れがある。このため、巻取り温度は650℃以下、好ましくは400℃以上とするのが望ましい。
なお、熱延板の酸洗条件は、特に規定する必要はなく、表面のスケールが除去できる条件であればよく、常用の方法、例えば、塩酸、硫酸等の酸で表面スケールを除去することが好ましい。酸洗された熱延板は、ついで、冷問圧延を施され、所定の板厚の冷延板とされる。本発明では、冷間圧下率等、冷間圧延条件を特に規定する必要はない。なお、冷間圧下率は、最終板形状の改善、組織微細化の観点から40%〜85%の範囲とすることが好ましい。
焼鈍工程では、冷延板に、焼鈍温度:750℃以下の温度で再結晶焼鈍する焼鈍処理を施し、冷延焼鈍板とする。
焼鈍処理では再結晶を完了させる再結晶焼鈍を施す。焼鈍時に再結晶が十分に完了しないと、冷延焼鈍板の組織に未再結晶組織が認められ、降伏強さが高くなりすぎてドラム缶への製缶時、および溶接時に形状不良等を引き起こすとともに、十分な焼付け硬化性を確保できなくなる。ただし、焼鈍温度は、750℃以下とする必要がある。焼鈍温度が750℃を超えて高温となると、冷延時に存在した固溶NがAlNとして析出していまい、最終製品での固溶N量を所定の量とすることができなくなる。ここで、本発明で使用する鋼素材の組成範囲では、再結晶が完了する温度は概ね600℃以上である。なお、再結晶の完了は、焼鈍処理後の鋼材の組織観察を行い、未再結晶組織がないことを確認すれば良い。また、均一、微細な組織とするという観点から、焼鈍温度での保持時間は、30s以上とすることが好ましい。
焼鈍工程後、冷延焼鈍板には、必要に応じて、さらに伸び率:0.5〜5%の調質圧延を施す調質圧延工程を施しても良い。
調質圧延工程における調質圧延は、降伏点伸びの消滅、あるいは軽減、さらには、鋼板表面粗さの調整および形状改善、のために行う。調質圧延の伸び率が、0.5%未満では上記した効果が期待できない。一方、5%を超えると、鋼板の延性が低下する。このため、調質圧延の伸び率は0.5〜5%に限定することが好ましい。なお、より厳格な形状が要求される場合には、1〜3%とすることが望ましい。
(1)固溶N量分析
得られた冷延鋼板から、電解抽出用試験片を採取し、10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール溶液を電解液として、電解を実施して、鉄を溶解し、電解残渣を抽出した。得られた電解残渣の化学分析により、N量を求め析出N量とした。鋼中の全N量から析出N量を差し引き、固溶N量とした。
得られた冷延鋼板から、圧延方向に直交する方向が引張方向となるようにJIS 5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、降伏強さYS、伸びElを求め、引張特性を評価した。
(3)時効硬化試験
得られた冷延鋼板から、圧延方向に直交する方向が引張方向となるようにJIS 5号引張試験片を採取した。採取した引張試験片に、引張試験により7.5%の引張予歪を付加し、徐荷したのち、100℃×60minの熱処理(時効処理)を施し、ついで引張試験を行い、降伏応力(YSBH)を求めた。熱処理前後の降伏応力の差ΔYSを算出し、焼付け硬化性指数BHとした。
得られた冷延鋼板から、天板、地板をプレス加工し、胴板を曲げ成形し両端部をシーム溶接して缶胴部とし、該缶胴部の両端に天板、地板を巻締めにより装着し、容量200リットルの密封型ドラムとした。
ここで、製缶性の評価は、成形の可否および成形後の外観を評価し、外観に問題なく成形できた場合は良、成形不良あるいは外観不良の場合は不良とした。上記した評価項目においてすべてが良の場合を、製缶性が良好として○、いずれかが不良の場合を、製缶性が不良として×と評価した。
Claims (3)
- 質量%で
C:0.005〜0.10%、 Si:0.005〜0.20%、
Mn:0.1〜1.0%、 P:0.005〜0.20%、
S:0.03%以下、 Al:0.01〜0.1%、
N:0.0080〜0.0200%
を含み、固溶Nが0.0070%以上で、かつ固溶N/Nが0.60超となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、焼付け硬化性に優れることを特徴とする板厚1.0mm未満のドラム缶用薄肉冷延鋼板。 - 質量%で
C:0.005〜0.10%、 Si:0.005〜0.20%、
Mn:0.1〜1.0%、 P:0.005〜0.20%、
S:0.03%以下、 Al:0.01〜0.1%、
N:0.0080〜0.0200%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材に、加熱温度:1150℃以上の温度に加熱し仕上圧延終了温度:850℃以上とする熱間圧延を施し、該熱間圧延終了後2s以内に冷却を開始し、平均冷却速度75℃/s以上とする冷却を650℃以下まで施し、巻取り温度:650℃以下で巻取り熱延板とする熱間圧延工程と、該熱延板に酸洗、冷間圧延を施し冷延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に焼鈍温度:750℃以下の温度で再結晶焼鈍する焼鈍処理を施し、冷延焼鈍板とする焼鈍工程と、あるいはさらに伸び率:0.5〜5%の調質圧延を施す調質圧延工程と、を順次施すことを特徴とする、焼付け硬化性に優れた板厚1.0mm未満のドラム缶用薄肉冷延鋼板の製造方法。 - 前記焼鈍処理を施した後、300〜500℃の温度域まで冷却し、該温度域の温度で5s以上保持する過時効処理を行うことを特徴とする請求項2に記載のドラム缶用薄肉冷延鋼板の製造方法。
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