JPH1180175A - 重合性リン酸エステルの精製方法 - Google Patents
重合性リン酸エステルの精製方法Info
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- JPH1180175A JPH1180175A JP24870897A JP24870897A JPH1180175A JP H1180175 A JPH1180175 A JP H1180175A JP 24870897 A JP24870897 A JP 24870897A JP 24870897 A JP24870897 A JP 24870897A JP H1180175 A JPH1180175 A JP H1180175A
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Abstract
リン酸ジエステルと重合性リン酸モノエステルの混合物
を簡便な操作で且つ一度に大量に得る。 【解決手段】 不純物を含む重合性リン酸エステルの混
合物を加熱処理した後、塩基性水溶液で抽出し、その抽
出液を酸により酸性にすることにより、重合性リン酸ジ
エステル又は重合性リン酸ジエステルと重合性リン酸モ
ノエステルの混合物を分離、回収する。
Description
ステル精製方法に関する。更に詳しくは、歯科材料等と
して好適に使用できる高純度の重合性酸性リン酸エステ
ルを効率的に得るための精製方法に関する。
等のリン酸エステルは、重合触媒、界面活性剤、金属結
合溶剤、繊維の帯電防止剤等様々な分野で用いられてい
る。特にリン酸エステルの中でも分子中に(メタ)アク
リロイル基等の重合性基を有する重合性酸性リン酸エス
テルは、重合性、無機化合物の溶解性、金属への密着性
等が優れており、繊維処理剤、塗料、接着用前処理剤、
接着剤、歯科材料等で用いられてる。これら重合性リン
酸エステルは、一般に五酸化二リン等のリン酸無水物あ
るいは塩化ホスホリル等のリン酸塩化物と、アルコール
との縮合反応により工業的に製造されている。しかしな
がら、この様な方法では重合性リン酸モノエステル、重
合性リン酸ジエステル、及び重合性リン酸トリエステル
が併産されるがこれらの生成比を完全に制御することは
一般にできないため、工業的に利用価値の低いい重合性
リン酸トリエステルの生成も避けられない。また、該方
法ではその反応は強酸性下等の過酷な条件下で行われる
ため、様々な不純物の副生も避けられない。特に(メ
タ)アクリロイル基等の重合性基を有するリン酸エステ
ルを合成する際には、原料として使用するアルコールは
リン酸とエステル化する水酸基以外にも反応性の比較的
高い重合性基を有することになるため、副反応が更に起
こり易く不純物の量が多くなる。また、得られる重合性
酸性リン酸エステル自体の反応性も高いため、反応生成
物から純度の高い重合性酸性リン酸エステルを効率よく
回収(精製)することは困難である。従来重合性リン酸
エステルは、それほど高い純度が要求されない工業用接
着剤等の用途に使用されることが多かったため、その精
製が問題になることはあまりなかった。しかし、重合性
リン酸エステルは歯科材料等の医療材料分野にも使用さ
れるようになっており、該分野に於いて製品の高性能化
や高安全性への要求が高まるにつれて、重合性リン酸エ
ステルにおいても高純度化の要求が高まってきている。
本発明者等が調べたところ、一般に前記方法で製造され
る工業的に入手可能な重合性酸性リン酸エステル(以
下、単に「粗重合性リン酸エステル」とも言う。)に
は、(i)水溶性の低い不純物(以下、単に「非水溶性不
純物」とも言う。用途によっては前記重合性リン酸トリ
エステルも該非水溶性不純物に含まれる。)、(ii)塩基
性水溶液には溶解するが酸性水溶液には溶解しない不純
物(以下、単に「酸性不純物」とも言う。)及び(iii)
酸性、塩基性に関係なく容易に水に溶解する不純物(以
下、単に「易水溶性不純物」とも言う。)の3つのタイ
プの不純物が存在することが確認された。実験室規模で
精製効率を考えなければ上記のような不純物を取り除い
て重合性リン酸エステルを精製することは可能であるが
(例えば、日本化学会編 第4版実験化学講座 第22
巻等)、工業的規模で効率よく上記のような不純物を取
り除く精製方法は知られていない。即ち、前記不純物の
うち非水溶性不純物と易水溶性不純物は、粗重合性酸性
リン酸エステルを塩基性水溶液で抽出し、ついで酸を加
えて酸性にすることにより水溶液中から重合性酸性リン
酸エステルを分離させること(以下、この方法を「塩基
性水溶液抽出法」とも言う。)により分離することがで
きるが、酸性不純物はこの方法で取り除くことはできな
い。また、重合性リン酸モノエステルは弱酸性でも水に
溶解する場合が多いため、粗重合性リン酸エステルを一
旦弱酸性溶液中に抽出し、その抽出液を強酸性にした
り、イオン濃度を上昇させる事により塩を析出させるこ
とにより重合性リン酸モノエステルのみを分離すること
は可能であるが、この方法では工業的に有用な重合性リ
ン酸ジエステルが回収できず効率的にも経済的にも問題
がある。
重合性酸性リン酸エステルを、簡便且つ効率よく得る方
法の開発が望まれていた。
解決すべく鋭意研究した結果、粗重合性リン酸エステル
に含まれる前記酸性不純物が加熱処理により重合性酸性
リン酸エステルと非水溶性不純物に変換されることを見
出した。そして、加熱処理後の粗重合性リン酸エステル
に塩基性水溶液抽出法を適用することにより高純度の重
合性酸性リン酸エステルが効率よく得られることを見出
し本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、塩基性
水溶液に可溶性で且つ酸性水溶液に不溶性の不純物を含
有する重合性リン酸エステルを加熱処理したのち塩基性
水溶液で抽出し、得られた抽出液を酸性にすることによ
り重合性リン酸エステルを分離して回収することを特徴
とする重合性酸性リン酸エステルの精製方法である。
溶液に可溶で且つ酸性水溶液に不溶の不純物を含有する
重合性リン酸エステル(以下、単に「未精製重合性リン
酸エステル」とも言う。)から高純度の重合性リン酸エ
ステル回収することができる。ここで、精製目的物であ
る未精製重合性リン酸エステル中の重合性リン酸エステ
ルは、重合性リン酸モノエステル及び重合性リン酸ジエ
ステルの少なくとも1種を含むものであればよい。重合
性リン酸トリエステルは、特に歯科用材料の分野に於い
ては利用価値が低く不純物と見なされることが多いた
め、上記重合性リン酸エステルは重合性リン酸ジエステ
ル及び重合性リン酸モノエステルを主成分とするもので
あることが好ましい。なお、本発明の精製方法では重合
性リン酸トリエステルは非水溶性不純物として取り除か
れる。また、本発明で使用する未精製重合性リン酸ステ
ル中の重合性リン酸エステルがリン酸ジエステルを含有
する場合には、本発明の精製方法採用したときの効果が
特に顕著である。なぜならば、従来の技術で前記したよ
うに重合性リン酸モノエステルの精製には他の方法を適
用することもできるが、この様な方法をリン酸ジエステ
ルを含有する未精製重合性リン酸ステルに適用した場合
にはリン酸ジエステルが有効に回収できないからであ
る。上記重合性リン酸エステルは、1分子中に少なくと
も一つの重合性不飽和基を有するものであれば、特に限
定されず公知の化合物を使用することができる。重合性
不飽和基としては、ビニル基、アリル基、ビニルオキシ
基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロ
イルアミノ基等が挙げられる。これら重合性不飽和基の
なかでも、(メタ)アクリロイルオキシ基を重合性不飽
和基として有する重合性酸性リン酸エステルは一般に酸
性不純物を多く含むので本発明の精製方法を適用するの
に特に適している。なお、これら重合性不飽和基はエス
テル結合を介して直接リン原子に結合していても良く、
又カルボニル構造やエーテル結合を有する2価の有機基
を介して結合していても良い。そして、該2価の有機基
にはアセチル基やホルミル基等のカルボニル基類、メト
キシ基やエトキシ基等のアルコシキ基類、フッ素や塩素
等のハロゲン原子類で置換されていてもよい。また、重
合性酸性リン酸エステルがジエステルである場合には、
エステル結合を介してリン原子と結合している有機基の
うち少なくともいずれか一方の有機基に重合性不飽和基
が含まれていれば良く、重合性不飽和基を有さない基が
結合していても良い。これら重合性不飽和基を有さない
有機基は特に限定されず、置換若しくは非置換のアルキ
ル基、置換若しくは非置換のアリール基など任意の有機
基を取りうる。なお、上記置換アルキル基、置換アリー
ル基等の置換基としてはメトキシ基やエトキシ基等のア
ルコシキ基類、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子
類等が挙げられる。本発明で好適に使用できる未精製重
合性リン酸エステル中の重合性エステルを具体的に例示
すれば、モノ又はビス(2−アクリロイルオキシエチ
ル)アシッドフォスフェート、モノ又はビス(3−アク
リロイルオキシプロピル)アシッドフォスフェート、モ
ノ又はビス(2−アクリロイルオキシプロピル)アシッ
ドフォスフェート、モノ又はビス(6−アクリロイルオ
キシヘキシル)アシッドフォスフェート、モノ又はビス
(10−アクリロイルオキシデシル)アシッドフォスフ
ェート、モノ又はビス(1−クロロメチル−2−アクリ
ロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート、モノ又
はビス(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドフ
ォスフェート、モノ又はビス(3−メタクリロイルオキ
シプロピル)アシッドフォスフェート、モノ又はビス
(2−メタクリロイルオキシプロピル)アシッドフォス
フェート、モノ又はビス(6−メタクリロイルオキシヘ
キシル)アシッドフォスフェート、モノ又はビス(10
−メタクリロイルオキシデシル)アシッドフォスフェー
ト、モノ又はビス(1−クロロメチル−2−メタクリロ
イルオキシエチル)アシッドフォスフェート、2−メタ
クリロイルオキシエチルフェニルアシッドフォスフェー
ト等及びこれらの任意の混合物が挙げられる。これら、
重合性酸性リン酸エステルの中でも、モノ(2−メタク
リロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート及び/
又はビス(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッド
フォスフェートからなる重合性酸性リン酸エステルは、
その優れた物性及び優れた生物学的安全性のため需要が
多いことから、本願発明の精製方法を適用するのが特に
効果的である。本発明で使用する未精製重合性リン酸エ
ステル中の塩基性水溶液に可溶性で且つ酸性水溶液に不
溶性の不純物とは前記の酸性不純物と同義であり、例え
ば五酸化二リン等のリン酸無水物あるいは塩化ホスホリ
ル等のリン酸塩化物と、アルコールとの縮合反応により
製造される重合性リン酸エステル中にほぼ不可避的に含
まれるものである。また、酸性不純物は、複雑な構造を
有する複数の化合物の混合物からなっているため、該酸
性不純物を構成する個々の化合物を特定することは非常
に困難であるが、その存在自体は重合性リン酸エステル
を塩基性水溶液及び酸性水溶液で抽出したものをガスク
ロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーで分析する
ことにより簡単に確認することが出来る。なお、本発明
者等が酸性不純物について分析を行ったところ、該酸性
不純物には重合性リン酸エステルの誘導体が含まれてい
ることが確認された。従って、本発明で使用するの精製
方法で使用できる未精製重合性リン酸エステルとして
は、前記した粗重合性リン酸エステルのほか上記のよう
な方法で酸性不純物の存在が確認できる重合性リン酸エ
ステルであればその製法に拘わらず何ら制限無く使用す
ることが出来る。未精製の重合性リン酸エステルが酸性
不純物を含んでいない場合には、前記塩基性水溶液抽出
法で高純度の重合性リン酸エステルが効率よく得られる
ため特に本発明の精製方法を適用する優位性は認められ
ない。本発明の精製方法では、塩基性溶液抽出法を行う
前に未精製重合性リン酸エステルを加熱処理することが
重要である。該加熱処理によって塩基性水溶液に可溶で
ある酸性不純物が分解されて塩基性水溶液に不溶な非水
溶性不純物に変化し、塩基性溶液抽出法により重合性リ
ン酸エステルと分離することが可能となる。本発明の精
製方法における加熱処理条件は酸性不純物が分解される
条件であれば特に限定されず、未精製重合性酸性リン酸
エステル中の重合性酸性リン酸エステル種類、含まれる
酸性不純物含有量及び、精製後に得ようとする純度を勘
案して適宜決定すればよい。加熱処理の温度及び時間
は、重合性酸性リン酸エステルの安定性や、作業効率、
安全性等を考慮して決定すればよいが、一般的には70
℃〜120℃で2時間以上加熱することが好ましい。温
度が低い場合には加熱処理にかかる時間が長大になり、
工業的には非現実的な時間が必要となる。また、高温で
の必要以上の長時間の処理はエネルギーを無意味に浪費
するのみで、特に利点はない。なお、未精製重合性酸性
リン酸エステル中に水分が含まれると加熱処理中に重合
性リン酸エステルが加水分解され、かえって不純物が増
加したり、回収率(精製効率)が低下したりする。この
ため、加熱処理前には未精製重合性リン酸エステルを脱
水処理しておくことが好ましい。具体的には、五酸化二
リン等のリン酸無水物の添加、トルエン等の有機溶媒を
加えて水分を共沸により除去する、シリカゲル、硫酸ナ
トリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、モレキ
ュラーシーブス等の乾燥剤を加える等して未精製重合性
酸性リン酸エステル中の水分量を1wt%以下、好まし
くは0.5wt%以下にしておくのが好適である。ま
た、高温で長時間処理する場合には、重合性リン酸エス
テルの重合が誘発されることがあるので、ハイドロキノ
ンモノメチルエーテルや2、6−ジターシャリーブチル
−4−メチルフェノール、2,4,6−トリターシャリ
ーブチルフェノール等の重合禁止剤を添加する、空気や
酸素を吹き込みながら加熱処理するなどの重合禁止手段
を講じることが好ましい。本発明の精製方法では、未精
製重合性リン酸エステルを加熱処理した後、塩基性水溶
液で抽出し、得られた抽出液を酸性にすることにより精
製された重合性リン酸エステルを分離して回収する。こ
こで、加熱処理以降の操作(即ち塩基性水溶液抽出法)
は、重合性リン酸エステルがリン酸酸性を示すために塩
基性水溶液にはリン酸塩の形で溶解することができるが
酸性水溶液には溶解し難いという性質を利用して非水溶
性不純物と易水溶性不純物を除くものであり、一般的な
酸性有機化合物の精製方法と変わるものではない。従っ
て、上記方法としては、酸性有機化合物を精製する方法
として一般的に知られている方法が何ら制限なく適用で
きる。以下に、代表的な方法について具体的に説明す
る。抽出に用いる塩基性水溶液は、塩基性を示す水溶液
であれば特に限定されず、公知の塩基性化合物の水溶液
が使用できる。具体的には、アンモニア水;水酸化ナト
リウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ
金属の水酸化物の水溶液;炭酸ナトリウム、炭酸カリウ
ム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸リチウム、炭酸水素
ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム等の
アルカリ金属の炭酸塩の水溶液;エチルアミン、ブチル
アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチル
アミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジ
ン、ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセ
ン等の有機塩基類の水溶液等が挙げられる。アルカリ金
属の水酸化物のアルカリ金属の炭酸塩の水溶液は何れも
臭気がなく、特にアルカリ金属の炭酸塩の水溶液はpH
調節が比較的容易である。また、カリウムの塩基性塩の
水溶液は重合性リン酸エステルと接触したときに形成さ
れるリン酸塩の溶解度(即ち、重合性リン酸エステルの
溶解性)が高いという特徴がある。これらの点から塩基
性水溶液としては炭酸カリウムの水溶液を使用するのが
特に好適である。これら塩基性水溶液中の塩基性化合物
の濃度は、重合性酸性リン酸エステルを中和し、生成し
たリン酸塩を水溶液中に抽出できる量であれば特に制限
なく、使用する未精製重合性リン酸エステルの量および
塩基性水溶液の量等に応じて適宜決定すればよいが、一
般には0.5〜6Nである。また、抽出の際に用いる塩
基性水溶液の量は、重合性リン酸エステルの塩をほぼ全
て溶解させ得る量であれば特に制限がないが、一般的に
は重量で未精製重合性リン酸エステルの等量から10倍
量程度である。なお、使用する塩基性水溶液中の塩基性
化合物の種類、濃度及び該水溶液の量は、抽出効率及び
好ましくない副反応の抑制の観点から、重合性リン酸エ
ステルの抽出が終了した時点でのpHが7.0〜10.
0となるように調整されているのが好ましい。なお、抽
出の際には、重合性リン酸エステルを取り扱い易くし、
また、非水溶性不純物(加熱処理により酸性不純物から
転化したもの及び当初から存在したもの)と塩基性水溶
液中にリン塩の形で抽出された重合性リン酸エステルと
の分離を良くするために非水溶性有機溶媒を共存させる
ことが好ましい。このような非水溶性有機溶媒として
は、非水溶性有機溶媒が何等制限無く使用できるが、毒
性や引火性、分離のしやすさの点からメチレンクロライ
ド、トルエン、酢酸エチル等を使用するのが好ましい。
塩基性水溶液により抽出によって大部分の非水溶性不純
物は重合性酸性リン酸エステルと分離されるが、得られ
た重合性酸性リン酸エステルを含む水溶液中には、まだ
少量の非水溶性不純物が含まれていることがあり、これ
を完全に取り除くために、抽出した水溶液をさらに非水
溶性有機溶媒で洗浄するのが好ましい。このときの洗浄
回数は通常1〜2回で十分である。塩基性水溶液による
抽出された重合性酸性リン酸エステルは、抽出水溶液に
酸を加えて酸性とすることにより分離される。このと
き、未精製重合性リン酸エステル中に最初から存在して
おり重合性酸性リン酸エステルと一緒に塩基性水溶液に
抽出された易水溶性不純物は、酸性にしても水相に溶解
しているため、分離された重合性リン酸エステルにはほ
とんど含まれない。従って、該分離物を回収することに
より高純度の重合性酸性リン酸エステルを得ることがで
きる。この時使用できる酸としては、重合性酸性リン酸
エステルを水に溶解し難くさせることのできる強さを有
する酸、即ち、リン酸よりも酸性度の強い(pKa値の
小さな)酸であれば公知の酸が特に制限がなく使用でき
る。このような酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、
硝酸等の無機強酸類や、メタンスルホン酸、トリフルオ
ロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスル
ホン酸類、トリクロロ酢酸、シュウ酸等のカルボン酸類
が挙げられるが、塩酸、硫酸が特に好適である。当該酸
の使用量は、抽出水溶液を酸性にし、重合性酸性リン酸
エステルを分離させ得る量であれば特に制限がないが、
一般的には塩基性水溶液中の塩基性化合物の量に対して
1〜3等量である。水溶液中から分離された重合性酸性
リン酸エステルを回収する方法としては、分液、濾過等
によりそのまま水層と分けて回収しても良いが、操作性
や回収効率の点からは、非水溶性有機溶媒を使用して分
離された重合性酸性リン酸エステルを溶解させて有機溶
媒溶液として回収することが好ましい。この時には、前
述した塩基性水溶液抽出時に用いたのと同じ非水溶性有
機溶媒を用いることができる。重合性酸性リン酸エステ
ルのうち、重合性リン酸モノエステルは酸性水溶液にも
少量溶解することがあるため、すべての重合性酸性リン
酸エステルが分離してこない場合がある。この様な場合
には、水溶液中に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化
リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の塩化
物類、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウ
ム等の硫酸塩類の中性塩を添加してイオン強度を高めて
重合性リン酸モノエステルの水への溶解度が低下させれ
ばよい。中性塩は、塩基性水溶液にて抽出を行う際に添
加しても良く、酸の添加と同時に加えても良い。このよ
うにして回収された重合性酸性リン酸エステル若しくは
その有機溶媒溶液は、少量の水を含んでいるので、常法
により脱水を行い、有機溶媒溶液の場合は引き続き常法
により有機溶媒の除去を行えばよい。
が、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるもの
ではない。なお、以下の実施例および比較例では未精製
重合性リン酸エステルとして以下のものを使用した。 (1)ライトエステルP−2M(共栄社化学:Lot.7032
783):2−メタクリロイルオキシエチルアシッドフォ
スフェート21%、ビス(2−メタクリロイルオキシエ
チル)アシッドフォスフェート41%(重合性リン酸エ
ステル純度62%)及び酸性不純物10%を含む混合物
である。以下、「P−2M−1」と略す。なお、重合性
リン酸エステルと酸性不純物以外の成分は非水溶性不純
物と易水溶性不純物である(このことは他の未精製重合
性リン酸エステル及び精製後の重合性リン酸エステルに
ついても同じである)。 (2)ライトエステルP−2M(共栄社化学:Lot.7031
250):2−メタクリロイルオキシエチルアシッドフォ
スフェート20%、ビス(2−メタクリロイルオキシエ
チル)アシッドフォスフェート38%(重合性リン酸エ
ステル純度58%)及び酸性不純物17%を含む混合物
である。以下、「P−2M−2」と略す。 (3)カヤマーPM2(日本化薬:Lot.612016):2−
メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート1
7%、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッ
ドフォスフェート44%(重合性リン酸エステル純度6
1%)及び酸性不純物14%を含む混合物である。以
下、「K−PM2」と略す。 (4)下記製造例1で製造された重合性リン酸エステル
(以下、「合成モノマー1」と略す。) (5)下記製造例2で製造された重合性リン酸エステル
(以下、「合成モノマー2」と略す。) (6)下記製造例3で製造された重合性リン酸エステル
(以下、「合成モノマー3」と略す。) (7)下記製造例4で製造された重合性リン酸エステル
(以下、「合成モノマー4」と略す。) また、上記各未精製重合性リン酸エステル及び精製後の
重合性リン酸エステルの純度は、液体クロマトグラフィ
ー(HPLC)分析を行って得られたクロマトグラムの
ピーク面積を基準に不純物を含めた全ピーク面積に対す
る重合性リン酸エステルのピーク面積として求めた。こ
のときのHPLCの測定条件は次の通りである。 使用カラム:イナートシルODS2、250(L)×4.6(I.
D.)、(GLサイエンス社) 展開溶媒:アセトニトリル/0.1wt%リン酸水溶液の7
0/30(体積比)の混合溶媒 流量:1.0ml/min 検出波長:210nm 分析時間:30分間 また、未精製重合性リン酸エステル中の酸性不純物の確
認は、未精製重合性リン酸エステル(A)、これを加熱
処理することなしに塩基性水溶液で抽出した抽出水溶液
(B)、その時点で塩基性水溶液中に抽出されなかった
残存物(C)、及び該水溶液を酸性にすることにより得
られた重合性リン酸エステル(D)と酸性にされた水溶
液(E)についてそれぞれHPLC分析を行い、
(A)、(B)及び(D)のHPLCチャートに共通し
てピークとして現れ且つ(C)及び(E)のHPLCチ
ャートには現れない{若しくは(A)及び(B)のチャ
ートと比べて著しくピーク強度の減少している}ピーク
が存在することを確認することにより行い、その定量は
該ピークについて前記重合性リン酸エステルの純度の決
定と同様にして行った。図1は未精製重合性リン酸エス
テルであるP−2M−1のHPLC分析チャートである
が、上記の方法により矢印で示されるピークが酸性不純
物に基づくものであることが確認されている。 製造例1 1リットルの三口フラスコに76.7g(0.5mol)の
塩化ホスホリルと350mlのメチレンクロライドをい
れて撹拌し、均一な溶液とし、氷冷下、97.5g(0.
75mol)の2−ヒドロキシエチルメタクリレートと1
00g(0.99mol)のトリエチルアミンの混合物を2
時間かけて滴下した。引き続いて50g(0.49 mo
l)のトリエチルアミンを加えた後、更に4時間撹拌
し、次いで200gの氷水を加えた後、1晩撹拌を行っ
た。反応混合物を1リットルの分液ロートに移し、有機
層(下層)を回収した。回収した有機層は塩化ナトリウ
ムを飽和させた0.1N塩酸200mlにて2回洗浄し
た。硫酸マグネシウムにて1晩乾燥させた後、ロータリ
ーエバポレーターにて濃縮し、169gの淡黄色粘稠液
体を得た。このものはHPLCによる分析により、2−
メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート2
0%と、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)アシ
ッドフォスフェートを35%(重合性リン酸エステル純
度55%)含む混合物であることを確認した。また、酸
性不純物の含有量は20%であった。 製造例2 1リットルの三口フラスコに35.5g(0.25mol)
の5酸化2リンと350mlのメチレンクロライドをい
れて撹拌して懸濁液とし、氷冷下、97.5g(0.75
mol)の2−ヒドロキシエチルメタクリレートと100
g(0.99mol)のトリエチルアミンの混合物を3時間
かけて滴下した。引き続いて50g(0.49mol)のト
リエチルアミンを加えた後、更に3時間撹拌し、次いで
200gの氷水を加えた後、1晩撹拌を行った。反応混
合物を1リットルの分液ロートに移し、有機層(下層)
を回収した。回収した有機層は塩化ナトリウムを飽和さ
せた0.1N塩酸200mlにて2回洗浄した。硫酸マ
グネシウムにて1晩乾燥させた後、ロータリーエバポレ
ーターにて濃縮し、145gの黄色粘稠液体を得た。こ
のものはHPLCによる分析により、2−メタクリロイ
ルオキシエチルアシッドフォスフェートとビス(2−メ
タクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェートと
をそれぞれ18%及び31%(重合性リン酸エステル純
度計49%)含む混合物であることを確認した。また、
酸性不純物の含有量は22%であった。 製造例3 1リットルの三口フラスコに76.7g(0.5mol)の
塩化ホスホリルと350mlのメチレンクロライドをい
れて撹拌し均一な溶液とし、氷冷下、108g(0.7
5mol)の2−ヒドロキシプロピルメタクリレートと1
00g(0.99mol)のトリエチルアミンの混合物を2
時間かけて滴下した。引き続いて50g(0.49mol)
のトリエチルアミンを加えた後、更に16時間撹拌し、
次いで200gの氷水を加えた後、1晩撹拌を行った。
反応混合物を1リットルの分液ロートに移し、有機層
(下層)を回収した。回収した有機層は塩化ナトリウム
を飽和させた0.1N塩酸200mlにて2回洗浄し
た。硫酸マグネシウムにて1晩乾燥させた後、ロータリ
ーエバポレーターにて濃縮し、155gの黄色粘稠液体
を得た。このものはHPLC及びNMRによる分析によ
り、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドフォス
フェートと、ビス(2−メタクリロイルオキシプロピ
ル)アシッドフォスフェートをそれぞれ20%及び38
%(重合性リン酸エステル純度58%)含む混合物であ
ることを確認した。また、酸性不純物は15%含有され
ていた。 製造例4 1リットルの三口フラスコに76.7g(0.5mol)の
塩化ホスホリルと350mlのメチレンクロライドをい
れて撹拌し均一な溶液とし、氷冷下、133.5g(0.
75mol)の6−ヒドロキシヘキシルメタクリレートと
100g(0.99mol)のトリエチルアミンの混合物を
2時間かけて滴下した。引き続いて50g(0.49mo
l)のトリエチルアミンを加えた後、更に2時間撹拌
し、次いで200gの氷水を加えた後、1晩撹拌を行っ
た。反応混合物を1リットルの分液ロートに移し、有機
層(下層)を回収した。回収した有機層は塩化ナトリウ
ムを飽和させた0.1N塩酸200mlにて2回洗浄し
た。硫酸マグネシウムにて1晩乾燥させた後、ロータリ
ーエバポレーターにて濃縮し、159gの黄色粘稠液体
を得た。このものはHPLC及びNMRによる分析によ
り、6−メタクリロイルオキシヘキシルアシッドフォス
フェートとビス(6−メタクリロイルオキシヘキシル)
アシッドフォスフェートとをそれぞれ18%及び32%
(重合性リン酸エステル純度50%)含む混合物である
ことを確認した。また、酸性不純物は24%含有されて
いた。 実施例1 100mlのガラス製サンプルびんに、P−2Mを12
0gいれ、フタを閉めた後、80℃に保ったインキュベ
ーター中にて4日間保存し、加熱処理を行った。加熱処
理後、放冷した後、1リットルのビーカーに移し、さら
に200mlのメチレンクロライドを加えてマグネティ
ックスターラーにて撹拌し、均一な溶液とした。そこ
へ、30gの炭酸カリウム(和光純薬:試薬特級)と4
0gの塩化ナトリウム(和光純薬:試薬特級)を200
gの水に溶解したものを20分間かけて徐々に加えた。
加え終わった後、更に20分間撹拌を行い、次いでそれ
を1リットルの分液ロートに移し替えて1時間放置し、
2層に分離した液の上層(水層)を取り出して再び1リ
ットルのビーカーに戻した。そこへ新たに200mlの
メチレンクロライドを加え20分間の撹拌を行った。再
度、分液ロート中に移し、1時間放置することにより分
離させ、上層(水層)を1リットルのビーカー中に回収
した。そこへ、塩酸(和光純薬:試薬特級)50gと水
10gの混合物を20分間かけて徐々に加えた。加え終
わった後、150mlのメチレンクロライドをさらに加
えて20分間撹拌を行い、次いでそれを1リットルの分
液ロートに移し替えた後、一晩放置した。2層に分離し
た液の下層(有機層)を500mlの三角フラスコ中に
取り出し、そこへシリカゲル(和光純薬:乾燥用、白
色、小粒状)60gを加え90分間放置した。濾紙(ア
ドバンテック東洋:No2、185mm)にてシリカゲ
ルをろ別、シリカゲルを30mlのメチレンクロライド
で洗浄し、洗浄液もろ液に加え、そこへ新たに60gの
上記と同じシリカゲルを加えて90分間放置後、再度上
記と同様に濾過した。濾液及びシリカゲルの洗浄液を回
収し、それを3日間静置し、濾過されなかったシリカゲ
ルの微粉末を沈降させた後、三たび濾過し、透明なろ液
を得た。次いで70mgのハイドロキノンモノメチルエ
ーテルを加えた後、300mlのナス型フラスコに移
し、ロータリーエバポレーターにて濃縮し、淡黄色透明
の粘稠液体として、精製された重合性リン酸エステルの
混合物74gを得た(回収率62%)。得られた重合性
酸性リン酸エステルの純度は93%(モノエステル31
%、ジエステル62%)あった。 実施例2〜7 加熱処理条件を表1に示す条件とする他は実施例1と同
様にして精製を行った。結果を表1に示した。
ルとして、表1に示したものを使用し、同じく表1に示
す加熱処理条件を採用する他は実施例1と同様にして精
製を行った。結果を表1に示した。 比較例1及び2 加熱処理を行わなかった以外は、実施例1及び実施例9
と同様にして精製を行った。結果を表1に示した。実施
例1〜7と比較例1との結果の比較、及び実施例9と比
較例2との結果の比較から、塩基性水溶液抽出法の前に
未精製重合性リン酸エステルを加熱処理することにより
精製により得られる重合性酸性リン酸エステルの純度が
高くなっていることが分かる。
り、純度の低い重合性酸性リン酸エステルを大量に簡便
且つ効率よく精製することが出来る。このことは、歯科
用材料等の医療材料分野において求められている高純度
の重合性酸性リン酸エステルを工業的規模で提供できる
ことを意味し、その意義は大きい。
−1のHPLC分析チャートである。
Claims (2)
- 【請求項1】 塩基性水溶液に可溶性で且つ酸性水溶液
に不溶性の不純物を含有する重合性リン酸エステルを加
熱処理したのち塩基性水溶液で抽出し、得られた抽出液
を酸性にすることにより重合性リン酸エステルを分離し
て回収することを特徴とする重合性酸性リン酸エステル
の精製方法。 - 【請求項2】 重合性リン酸エステルが(メタ)アクリ
ロイル基を有するリン酸エステルである請求項1記載の
重合性酸性リン酸エステルの精製方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24870897A JPH1180175A (ja) | 1997-09-12 | 1997-09-12 | 重合性リン酸エステルの精製方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24870897A JPH1180175A (ja) | 1997-09-12 | 1997-09-12 | 重合性リン酸エステルの精製方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1180175A true JPH1180175A (ja) | 1999-03-26 |
Family
ID=17182164
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP24870897A Withdrawn JPH1180175A (ja) | 1997-09-12 | 1997-09-12 | 重合性リン酸エステルの精製方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH1180175A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003131371A (ja) * | 2001-10-24 | 2003-05-09 | Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd | 難燃性の感光性ドライフィルムレジスト |
JP2011111432A (ja) * | 2009-11-30 | 2011-06-09 | Fujifilm Corp | リン酸エステルの精製方法、ポリマーの製造方法、及び、平版印刷版用版面処理剤 |
WO2013047786A1 (ja) | 2011-09-30 | 2013-04-04 | 日本化成株式会社 | 重合性無機粒子分散剤、該重合性無機粒子分散剤を含む無機有機複合粒子、および無機有機樹脂複合材 |
-
1997
- 1997-09-12 JP JP24870897A patent/JPH1180175A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003131371A (ja) * | 2001-10-24 | 2003-05-09 | Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd | 難燃性の感光性ドライフィルムレジスト |
JP2011111432A (ja) * | 2009-11-30 | 2011-06-09 | Fujifilm Corp | リン酸エステルの精製方法、ポリマーの製造方法、及び、平版印刷版用版面処理剤 |
WO2013047786A1 (ja) | 2011-09-30 | 2013-04-04 | 日本化成株式会社 | 重合性無機粒子分散剤、該重合性無機粒子分散剤を含む無機有機複合粒子、および無機有機樹脂複合材 |
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A761 | Written withdrawal of application |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 Effective date: 20040517 |
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A521 | Written amendment |
Effective date: 20040518 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 |
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A072 | Dismissal of procedure |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A072 Effective date: 20040809 |