JPH1171649A - 磁気特性に優れた電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents
磁気特性に優れた電磁鋼板およびその製造方法Info
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- JPH1171649A JPH1171649A JP9220394A JP22039497A JPH1171649A JP H1171649 A JPH1171649 A JP H1171649A JP 9220394 A JP9220394 A JP 9220394A JP 22039497 A JP22039497 A JP 22039497A JP H1171649 A JPH1171649 A JP H1171649A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 熱延の段階において{100}<001>方
位に高度に集積した集合組織を有する電磁鋼板を得る。 【解決手段】 P:0.2 〜1.2 wt%を含有し、残部が実
質的にFeの組成とし、かつ{100}<001>方位の
集積強度がランダム組織のそれの3倍以上の集合組織と
する。
位に高度に集積した集合組織を有する電磁鋼板を得る。 【解決手段】 P:0.2 〜1.2 wt%を含有し、残部が実
質的にFeの組成とし、かつ{100}<001>方位の
集積強度がランダム組織のそれの3倍以上の集合組織と
する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、変圧器や電動機
の鉄芯材料として有利に適合する電磁鋼板に関する。
の鉄芯材料として有利に適合する電磁鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】変圧器や電動機の鉄芯材料には、これら
機器の高効率化や小型化をはかるために、磁束密度が高
くかつ鉄損の低いことが要求される。この種の鉄芯材料
に供する電磁鋼板としては、上記の要求を満足する、優
れた特性を有するところから、Siを7wt%以下で含有す
るけい素鋼板が専ら用いられてきた。
機器の高効率化や小型化をはかるために、磁束密度が高
くかつ鉄損の低いことが要求される。この種の鉄芯材料
に供する電磁鋼板としては、上記の要求を満足する、優
れた特性を有するところから、Siを7wt%以下で含有す
るけい素鋼板が専ら用いられてきた。
【0003】ここで、Siを含有させると鉄損が低減され
る反面、磁束密度は低下する。そして、磁束密度が低い
と励磁電流が大きくなるため、鉄芯の巻線に起因した銅
損が増加することになる。そこで、この銅損の増加を回
避するために、透磁率を極力高くして一定磁界での磁束
密度を高める技術の開発が進められてきた。しかし、材
料固有の飽和磁束密度は上昇しないから、この種の改良
には限界がある。
る反面、磁束密度は低下する。そして、磁束密度が低い
と励磁電流が大きくなるため、鉄芯の巻線に起因した銅
損が増加することになる。そこで、この銅損の増加を回
避するために、透磁率を極力高くして一定磁界での磁束
密度を高める技術の開発が進められてきた。しかし、材
料固有の飽和磁束密度は上昇しないから、この種の改良
には限界がある。
【0004】一方、Si以外の合金元素については、磁気
特性、機械的特性とくに加工性および合金コストのいず
れかの特性においてSiよりも優れる元素もあるが、総合
的にはSiに勝るものはないというのが一般的見解であっ
た。しかしながら、発明者らがSi以外の合金元素につい
て電磁鋼板への適用を鋭意検討したところ、Fe−P系の
組成によって、電磁鋼板としてけい素鋼を凌駕する特性
が得られることを究明し、先に特開平9−41101 号公報
において提案した。ここに、高い飽和磁束密度を有し、
従来材と対比した場合に、鉄損および磁束密度のいずれ
か一方が同一水準にあるときに残る他方の特性を格段に
向上し得る、新たな電磁鋼組成が確立されたのである。
特性、機械的特性とくに加工性および合金コストのいず
れかの特性においてSiよりも優れる元素もあるが、総合
的にはSiに勝るものはないというのが一般的見解であっ
た。しかしながら、発明者らがSi以外の合金元素につい
て電磁鋼板への適用を鋭意検討したところ、Fe−P系の
組成によって、電磁鋼板としてけい素鋼を凌駕する特性
が得られることを究明し、先に特開平9−41101 号公報
において提案した。ここに、高い飽和磁束密度を有し、
従来材と対比した場合に、鉄損および磁束密度のいずれ
か一方が同一水準にあるときに残る他方の特性を格段に
向上し得る、新たな電磁鋼組成が確立されたのである。
【0005】さて、電磁鋼板は、使用時における磁化方
向の電磁特性が優れるような集合組織を持つことが望ま
しい。好適な集合組織は、使用形態によって異なるが、
EIコアのように直交する2方向に磁化方向を有する場
合には、圧延面の方位が{100}でかつ、圧延方向
(RD)の方位が<001>であるような、いわゆる立
方集合組織が最も望ましい。このような集合組織を得る
ことができれば、直交する2方向における磁束密度はさ
らに向上するため、上記Fe−P系の電磁鋼板において立
方集合組織を得ることは、極めて有意義である。
向の電磁特性が優れるような集合組織を持つことが望ま
しい。好適な集合組織は、使用形態によって異なるが、
EIコアのように直交する2方向に磁化方向を有する場
合には、圧延面の方位が{100}でかつ、圧延方向
(RD)の方位が<001>であるような、いわゆる立
方集合組織が最も望ましい。このような集合組織を得る
ことができれば、直交する2方向における磁束密度はさ
らに向上するため、上記Fe−P系の電磁鋼板において立
方集合組織を得ることは、極めて有意義である。
【0006】このような集合組織を得るために、主にけ
い素鋼を対象として種々の方法が提案されている。例え
ば特開平5−306438号公報に記載されている溶湯超急冷
法、特開平5−271774号公報に記載されるクロス圧延
法、文献“Growth of (110)[001]-OrientedGrains in H
igh-Purity Silicon Iron-A Unique Form of Secondary
Recrystalization”(TRANSACTIONS OF THE METALLURG
ICAL SOCIETY OF AIME, VOL 218, 1960 P.1033-1038)
に記載される三次再結晶法および特開昭62−262997号公
報に記載される柱状結晶成長法等が、それである。
い素鋼を対象として種々の方法が提案されている。例え
ば特開平5−306438号公報に記載されている溶湯超急冷
法、特開平5−271774号公報に記載されるクロス圧延
法、文献“Growth of (110)[001]-OrientedGrains in H
igh-Purity Silicon Iron-A Unique Form of Secondary
Recrystalization”(TRANSACTIONS OF THE METALLURG
ICAL SOCIETY OF AIME, VOL 218, 1960 P.1033-1038)
に記載される三次再結晶法および特開昭62−262997号公
報に記載される柱状結晶成長法等が、それである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
各方法のうち、超急冷法以外はすべて、好適な集合組織
を得るための手段を専ら冷間圧延と焼鈍に依存している
ので複雑な工程を必要し、また超急冷法についても、特
殊な冷却ロールを必要とすることから製造コストが高く
なるという問題があった。
各方法のうち、超急冷法以外はすべて、好適な集合組織
を得るための手段を専ら冷間圧延と焼鈍に依存している
ので複雑な工程を必要し、また超急冷法についても、特
殊な冷却ロールを必要とすることから製造コストが高く
なるという問題があった。
【0008】そこで、この発明は、複雑な工程を必要と
することなしにかつ低コストにて、熱間圧延段階におい
て{100}<001>方位に高度に集積した集合組織
を有する電磁鋼板を、その有利な製造方法と共に提案す
ることを目的とする。
することなしにかつ低コストにて、熱間圧延段階におい
て{100}<001>方位に高度に集積した集合組織
を有する電磁鋼板を、その有利な製造方法と共に提案す
ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】発明者らは、熱間圧延に
よって立方集合組織を形成し、2方向の磁気特性とりわ
け磁束密度を高めた電磁鋼板を得るために、鋭意研究を
重ねた結果、Pを主たる合金元素とし、さらに熱間仕上
げ圧延における圧延温度と圧下率を制御し、従来通常の
工程で採用されている条件よりも高温かつ強圧下条件と
することが、所期した目的の達成に極めて有効であると
の知見を得た。この発明は、上記の知見に立脚するもの
である。
よって立方集合組織を形成し、2方向の磁気特性とりわ
け磁束密度を高めた電磁鋼板を得るために、鋭意研究を
重ねた結果、Pを主たる合金元素とし、さらに熱間仕上
げ圧延における圧延温度と圧下率を制御し、従来通常の
工程で採用されている条件よりも高温かつ強圧下条件と
することが、所期した目的の達成に極めて有効であると
の知見を得た。この発明は、上記の知見に立脚するもの
である。
【0010】すなわち、この発明の要旨構成は次のとお
りである。 1.P:0.2 〜1.2 wt%を含有し、残部が実質的にFeの
組成になり、{100}<001>方位の集積強度がラ
ンダム組織のそれの3倍以上である集合組織を有するこ
とを特徴とする磁気特性に優れた電磁鋼板。
りである。 1.P:0.2 〜1.2 wt%を含有し、残部が実質的にFeの
組成になり、{100}<001>方位の集積強度がラ
ンダム組織のそれの3倍以上である集合組織を有するこ
とを特徴とする磁気特性に優れた電磁鋼板。
【0011】2.P:0.2 〜1.2 wt%を含み、さらにS
i、AlおよびMnのうちから選んだ1種または2種以上を
合計で0.1 〜5.0 wt%含有し、残部が実質的にFeの組成
になり、{100}<001>方位の集積強度がランダ
ム組織のそれの3倍以上である集合組織を有することを
特徴とする磁気特性に優れた電磁鋼板。
i、AlおよびMnのうちから選んだ1種または2種以上を
合計で0.1 〜5.0 wt%含有し、残部が実質的にFeの組成
になり、{100}<001>方位の集積強度がランダ
ム組織のそれの3倍以上である集合組織を有することを
特徴とする磁気特性に優れた電磁鋼板。
【0012】3.P:0.2 〜1.2 wt%を含有する組成に
なる鋼スラブを、熱間粗圧延後、圧下率(1パス):50
%以上および圧延終了温度:750 〜1050℃の条件下で熱
間仕上げ圧延を行うことを特徴とする磁気特性に優れた
電磁鋼板の製造方法。
なる鋼スラブを、熱間粗圧延後、圧下率(1パス):50
%以上および圧延終了温度:750 〜1050℃の条件下で熱
間仕上げ圧延を行うことを特徴とする磁気特性に優れた
電磁鋼板の製造方法。
【0013】4.P:0.2 〜1.2 wt%を含み、さらにS
i、AlおよびMnのうちから選んだ1種または2種以上を
合計で0.1 〜5.0 wt%含有する組成になる鋼スラブを、
熱間粗圧延後、圧下率(1パス):50%以上および圧延
終了温度:750 〜1050℃の条件下で熱間仕上げ圧延を行
うことを特徴とする磁気特性に優れた電磁鋼熱延板の製
造方法。
i、AlおよびMnのうちから選んだ1種または2種以上を
合計で0.1 〜5.0 wt%含有する組成になる鋼スラブを、
熱間粗圧延後、圧下率(1パス):50%以上および圧延
終了温度:750 〜1050℃の条件下で熱間仕上げ圧延を行
うことを特徴とする磁気特性に優れた電磁鋼熱延板の製
造方法。
【0014】5.上記3または4の方法において、熱間
仕上げ圧延後に、冷間圧延次いで焼鈍を行うことを特徴
とする磁気特性に優れた電磁鋼熱延板の製造方法。
仕上げ圧延後に、冷間圧延次いで焼鈍を行うことを特徴
とする磁気特性に優れた電磁鋼熱延板の製造方法。
【0015】この発明は、Pを含有した電磁鋼板におい
て、{100}<001>方位の集積強度がランダム組
織のそれの3倍以上である集合組織を有するため、電磁
特性に優れた鋼板を熱間圧延のみでまたは特殊な手法を
用いることなしに、提供することができ、大幅なコスト
低減を可能とする。ここで、電磁鋼板は、鉄損が低い場
合は磁束密度も低くなり、とくに圧延方向と直角の方向
(以下、C方向と示す)における特性に劣るのが通例で
ある。これに対して、この発明に従う電磁鋼板は、後述
する実験例に示すとおり、このような集積度を付与する
ことにより、熱間圧延のままで、しかも板厚が0.8 mm程
度と厚くても、現在の中級無方向性電磁鋼板と同等また
は少ない鉄損で、かつ大幅に高い磁束密度、すなわちW
15/50 が3〜6W/kgのときに、鉄損に応じてB50が1.75
〜1.81T以上を確保することができる。とりわけ、通常
は特性の劣るC方向において、W15/50 が3〜4W/kgの
ときにB50が1.75T以上、そしてW15/50 が4〜6W/kg
のときにB50が1.81T以上を確保できる。
て、{100}<001>方位の集積強度がランダム組
織のそれの3倍以上である集合組織を有するため、電磁
特性に優れた鋼板を熱間圧延のみでまたは特殊な手法を
用いることなしに、提供することができ、大幅なコスト
低減を可能とする。ここで、電磁鋼板は、鉄損が低い場
合は磁束密度も低くなり、とくに圧延方向と直角の方向
(以下、C方向と示す)における特性に劣るのが通例で
ある。これに対して、この発明に従う電磁鋼板は、後述
する実験例に示すとおり、このような集積度を付与する
ことにより、熱間圧延のままで、しかも板厚が0.8 mm程
度と厚くても、現在の中級無方向性電磁鋼板と同等また
は少ない鉄損で、かつ大幅に高い磁束密度、すなわちW
15/50 が3〜6W/kgのときに、鉄損に応じてB50が1.75
〜1.81T以上を確保することができる。とりわけ、通常
は特性の劣るC方向において、W15/50 が3〜4W/kgの
ときにB50が1.75T以上、そしてW15/50 が4〜6W/kg
のときにB50が1.81T以上を確保できる。
【0016】さらに、上記の熱延板を素材とすれば、こ
の素材に、電磁鋼板の一般に従う冷間圧延及び焼鈍の各
工程を付加することによって、現状の無方向性あるいは
二方向性けい素鋼板と同等または少ない鉄損で、かつ大
幅に高い磁束密度、とりわけ特性の劣るC方向におい
て、W15/50 が2〜4W/kgのときにB50が1.78T以上を
確保できる。すなわち、新規な成分系の下に{100}
<001>方位に集積した、この発明の特異な熱延板集
合組織を利用して、各種の高機能電磁鋼板を提供するこ
とができる。
の素材に、電磁鋼板の一般に従う冷間圧延及び焼鈍の各
工程を付加することによって、現状の無方向性あるいは
二方向性けい素鋼板と同等または少ない鉄損で、かつ大
幅に高い磁束密度、とりわけ特性の劣るC方向におい
て、W15/50 が2〜4W/kgのときにB50が1.78T以上を
確保できる。すなわち、新規な成分系の下に{100}
<001>方位に集積した、この発明の特異な熱延板集
合組織を利用して、各種の高機能電磁鋼板を提供するこ
とができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、この発明を由来するに至っ
た実験結果について説明する。真空小型溶解炉にて、
P:0.56wt%、C:0.003 wt%、Si:0.01wt%、Mn:0.
03wt%およびAl:0.05wt%を含有する組成、すなわちP
を含有し残部はFeおよび不純物の組成になる50kg鋼塊を
溶解し、熱間粗圧延により板厚:5mmに圧延した。この
鋼板を、1100℃にて30分間加熱後、ロール径が 700mmφ
の圧延機にて、周速:800 m/min 、圧下率:86%、圧
延終了温度:950 ℃にて圧延し、板厚:0.7 mmの熱延板
とした。
た実験結果について説明する。真空小型溶解炉にて、
P:0.56wt%、C:0.003 wt%、Si:0.01wt%、Mn:0.
03wt%およびAl:0.05wt%を含有する組成、すなわちP
を含有し残部はFeおよび不純物の組成になる50kg鋼塊を
溶解し、熱間粗圧延により板厚:5mmに圧延した。この
鋼板を、1100℃にて30分間加熱後、ロール径が 700mmφ
の圧延機にて、周速:800 m/min 、圧下率:86%、圧
延終了温度:950 ℃にて圧延し、板厚:0.7 mmの熱延板
とした。
【0018】この熱延板に1分間の焼鈍を施したのち、
その集合組織と磁気特性を調査した結果、{100}<
001>方位への集積度がランダム組織のそれの 5.8倍
と高く、また鉄損はW15/50 で6.2 W/kgと中級けい素鋼
板並みであるが、磁束密度はB50で 1.816Tと、今まで
にない優れた特性の熱延鋼板が得られた。ここで、特定
の方位の集積度は、その方位をもつ結晶粒の存在頻度
が、完全にランダムな方位分布をもつ組織に対して、ど
の程度であるかを示しており、次のように求めることが
できる。すなわち、鋼板試料の板面に平行の板厚中央部
分を研磨し、その研磨面について、X線回折のシュルツ
法にて、(110) 、(200) および(211) の不完全極点図を
数値データとして測定する。この測定データを、H.
J.Bunge 著の“Texture Analysis Materials Scienc
e”に記載されている、級数展開法を用いて、3次元方
位分布関数に変換する。この分布関数は、完全ランダム
分布であれば、いずれの方位も存在頻度が1になるよう
に正規化されていて、特定の方位の集積度を求めるに
は、その方位、ここでは{100}<001>方位にお
ける分布関数の値を採用すればよい。この値が、正しく
ランダム分布に対する集積度の倍数になる。なお、圧延
終了温度:700 ℃の条件で圧延した同組成の鋼板につい
ても同様に調査した結果、{100}<001>方位へ
の集積度が低下していることが判明した。
その集合組織と磁気特性を調査した結果、{100}<
001>方位への集積度がランダム組織のそれの 5.8倍
と高く、また鉄損はW15/50 で6.2 W/kgと中級けい素鋼
板並みであるが、磁束密度はB50で 1.816Tと、今まで
にない優れた特性の熱延鋼板が得られた。ここで、特定
の方位の集積度は、その方位をもつ結晶粒の存在頻度
が、完全にランダムな方位分布をもつ組織に対して、ど
の程度であるかを示しており、次のように求めることが
できる。すなわち、鋼板試料の板面に平行の板厚中央部
分を研磨し、その研磨面について、X線回折のシュルツ
法にて、(110) 、(200) および(211) の不完全極点図を
数値データとして測定する。この測定データを、H.
J.Bunge 著の“Texture Analysis Materials Scienc
e”に記載されている、級数展開法を用いて、3次元方
位分布関数に変換する。この分布関数は、完全ランダム
分布であれば、いずれの方位も存在頻度が1になるよう
に正規化されていて、特定の方位の集積度を求めるに
は、その方位、ここでは{100}<001>方位にお
ける分布関数の値を採用すればよい。この値が、正しく
ランダム分布に対する集積度の倍数になる。なお、圧延
終了温度:700 ℃の条件で圧延した同組成の鋼板につい
ても同様に調査した結果、{100}<001>方位へ
の集積度が低下していることが判明した。
【0019】さらに、上記で得られた熱延板を0.5 mmに
冷間圧延し、850 ℃で1分間の焼鈍を施したのち、その
集合組織と磁気特性を調査した結果、熱間圧延における
圧延終了温度が950 ℃であった場合には、{100}<
001>方位への集積度がランダム組織のそれの5.5 倍
と、熱延板段階での集積度がほぼ保たれており、また鉄
損はW15/50 で4.6 W/kg、磁束密度はB50で 1.821T
と、同程度の鉄損の従来の無方向性電磁鋼板に比べる
と、格段に高い磁束密度を持つ電磁鋼板が得られた。一
方、熱間圧延における圧延終了温度が700 ℃であった場
合は、冷延板においても{100}<001>方位への
集積度が低下していた。
冷間圧延し、850 ℃で1分間の焼鈍を施したのち、その
集合組織と磁気特性を調査した結果、熱間圧延における
圧延終了温度が950 ℃であった場合には、{100}<
001>方位への集積度がランダム組織のそれの5.5 倍
と、熱延板段階での集積度がほぼ保たれており、また鉄
損はW15/50 で4.6 W/kg、磁束密度はB50で 1.821T
と、同程度の鉄損の従来の無方向性電磁鋼板に比べる
と、格段に高い磁束密度を持つ電磁鋼板が得られた。一
方、熱間圧延における圧延終了温度が700 ℃であった場
合は、冷延板においても{100}<001>方位への
集積度が低下していた。
【0020】さらに、上記と同じ鋼種を熱間圧延条件も
同様とし、圧延終了温度が 950℃として、ただし、板厚
を1.25mmとした熱延板を作り、これを圧下率30、40、6
0、80、90、92%にて、それぞれ、0.88、0.75、0.50、
0.25、0.12、0.10mmの厚みに冷間圧延し、 850℃で1分
間の焼鈍を施した。その集合組織と磁気特性を調査した
結果、{100}<001>方位への集積度及びC方向
の磁束密度B50はつぎのようになった。
同様とし、圧延終了温度が 950℃として、ただし、板厚
を1.25mmとした熱延板を作り、これを圧下率30、40、6
0、80、90、92%にて、それぞれ、0.88、0.75、0.50、
0.25、0.12、0.10mmの厚みに冷間圧延し、 850℃で1分
間の焼鈍を施した。その集合組織と磁気特性を調査した
結果、{100}<001>方位への集積度及びC方向
の磁束密度B50はつぎのようになった。
【0021】
【表1】
【0022】すなわち、圧下率を40〜90%とすることに
より、{100}<001>方位の集積度が熱延板より
もさらに高まって、ランダム組織のそれの7倍以上にな
るとともに、C方向の磁束密度B50が1.86T以上の、き
わめて磁束密度の高い電磁鋼板が得られた。
より、{100}<001>方位の集積度が熱延板より
もさらに高まって、ランダム組織のそれの7倍以上にな
るとともに、C方向の磁束密度B50が1.86T以上の、き
わめて磁束密度の高い電磁鋼板が得られた。
【0023】この発明は、上記の実験事実に基づいたも
のであり、成分組成に加えて、熱間圧延条件が重要にな
る。すなわち、熱間圧延終了時における鋼板の温度が十
分に高く、かつ圧下率も十分に高い場合に限って、好適
な集合組織が得られるのである。さらに、適切な圧下率
の冷間圧延を施すことによって、この集合組織が強化さ
れるのである。この理由については完全に解明されてい
ないが、熱間圧延については、特定の条件下での圧延変
形時の再結晶において、正立方方位の結晶粒が優先的に
出現するためと考えられる。また、冷間圧延および焼鈍
における集合組織の集積度向上については、従来知見に
よれば強圧下により集合組織が破壊されて集積度が低下
すると考えられてきたが、それとは逆に集積度が向上し
ており、これは、熱延板の特殊な集合組織と関連してい
ると考えられるが、明確な説明ができるには至っていな
い。
のであり、成分組成に加えて、熱間圧延条件が重要にな
る。すなわち、熱間圧延終了時における鋼板の温度が十
分に高く、かつ圧下率も十分に高い場合に限って、好適
な集合組織が得られるのである。さらに、適切な圧下率
の冷間圧延を施すことによって、この集合組織が強化さ
れるのである。この理由については完全に解明されてい
ないが、熱間圧延については、特定の条件下での圧延変
形時の再結晶において、正立方方位の結晶粒が優先的に
出現するためと考えられる。また、冷間圧延および焼鈍
における集合組織の集積度向上については、従来知見に
よれば強圧下により集合組織が破壊されて集積度が低下
すると考えられてきたが、それとは逆に集積度が向上し
ており、これは、熱延板の特殊な集合組織と関連してい
ると考えられるが、明確な説明ができるには至っていな
い。
【0024】さて、この発明における各種条件の限定理
由について説明する。まず、成分組成について述べる
と、Pは比抵抗を増大させ、滑電流損を低減させる効果
がある。すなわち、Pの添加量が増加するとともに磁束
密度は若干低下するが、同一の比抵抗レベルでPとSiと
を比較すると、PはSiよりも磁束密度の低下が少ない点
で有利である。ここに、Pの含有量が0.2 wt%未満で
は、上記の効果が十分に現れず、一方1.2 wt%をこえる
とFe3P等が主に粒界に沿って析出するため、急激に磁束
密度が低下しかつ鉄損が増大するほか、加工性の劣化も
まねく。従って、P含有量は、0.2 〜1.2 wt%の範囲に
限定した。
由について説明する。まず、成分組成について述べる
と、Pは比抵抗を増大させ、滑電流損を低減させる効果
がある。すなわち、Pの添加量が増加するとともに磁束
密度は若干低下するが、同一の比抵抗レベルでPとSiと
を比較すると、PはSiよりも磁束密度の低下が少ない点
で有利である。ここに、Pの含有量が0.2 wt%未満で
は、上記の効果が十分に現れず、一方1.2 wt%をこえる
とFe3P等が主に粒界に沿って析出するため、急激に磁束
密度が低下しかつ鉄損が増大するほか、加工性の劣化も
まねく。従って、P含有量は、0.2 〜1.2 wt%の範囲に
限定した。
【0025】また、Pの働きを補助することを目的とし
て、比抵抗を増大する、Si、AlおよびMnのうちから選ん
だ1種または2種以上を合計で0.1 〜5.0 wt%含有する
ことができる。すなわち、これらの1種または2種以上
の合計が0.1 wt%未満では、添加効果が現れずに不純物
の域をこえないため、0.1 wt%を下限とする。一方、5.
0 wt%をこえると、磁束密度が低下し、また加工性も劣
化するため、5.0 wt%を上限とする。
て、比抵抗を増大する、Si、AlおよびMnのうちから選ん
だ1種または2種以上を合計で0.1 〜5.0 wt%含有する
ことができる。すなわち、これらの1種または2種以上
の合計が0.1 wt%未満では、添加効果が現れずに不純物
の域をこえないため、0.1 wt%を下限とする。一方、5.
0 wt%をこえると、磁束密度が低下し、また加工性も劣
化するため、5.0 wt%を上限とする。
【0026】一方、CおよびOについては、磁気特性、
その後の冷間圧延性や打ち抜き性の観点から、いずれも
0.01wt%以下に抑制することが好ましい。
その後の冷間圧延性や打ち抜き性の観点から、いずれも
0.01wt%以下に抑制することが好ましい。
【0027】次に、集合組織について説明すると、この
発明は{100}<001>方位に集積している組織を
特徴とし、この効果を素材として十分に活かすために
は、その集積度をランダム組織のそれの3倍以上とする
ことが重要である。
発明は{100}<001>方位に集積している組織を
特徴とし、この効果を素材として十分に活かすために
は、その集積度をランダム組織のそれの3倍以上とする
ことが重要である。
【0028】次に、製造条件について述べる。まず、圧
延終了温度については、 750℃未満では{100}<0
01>方位の集積強度がランダム組織のそれの3倍に満
たず、一方1050℃を超えると加熱炉送出から圧延までに
時間的制約を受けるだけでなく、高温での加熱を必要と
しコストの上昇を招くので、圧延終了温度は 750〜1050
℃の範囲に限定した。また、圧下率については、圧下率
が50%未満では、好適な集合組織を持つ再結晶に必要と
なる、十分な歪を付与できないため、圧下率は50%以上
に定めた。
延終了温度については、 750℃未満では{100}<0
01>方位の集積強度がランダム組織のそれの3倍に満
たず、一方1050℃を超えると加熱炉送出から圧延までに
時間的制約を受けるだけでなく、高温での加熱を必要と
しコストの上昇を招くので、圧延終了温度は 750〜1050
℃の範囲に限定した。また、圧下率については、圧下率
が50%未満では、好適な集合組織を持つ再結晶に必要と
なる、十分な歪を付与できないため、圧下率は50%以上
に定めた。
【0029】さらに、上記の熱間仕上げ圧延後に、冷間
圧延次いで焼鈍を行うことによって、磁気特性に優れた
冷延電磁鋼板が得られる。具体的には、冷間圧延におい
ては、熱延で得られた好適な集合組織を損なわないよう
に、好ましくは更に集合組織を向上させるように、その
圧下率を選定する。冷延圧下率が90%を超えると、集
合組織が乱れて集積度が低下してくるため、好ましくは
90%以下とする。冷延圧下率が低くなっても熱延板よ
りも磁気特性が悪くはないが、より向上させるために
は、好ましくは40%以上の圧下率とする。冷延圧下率
を40〜90%の範囲に選べば、{100}<001>
方位に集積強度がランダム組織のそれの7倍以上とな
り、磁気特性としては、W15/50 が2〜3W/kgのときに
B50が1.80T以上、また、W15/50 が3〜4W/kgのとき
にB50が1.86T以上と、更に優れた性能が得られる。
圧延次いで焼鈍を行うことによって、磁気特性に優れた
冷延電磁鋼板が得られる。具体的には、冷間圧延におい
ては、熱延で得られた好適な集合組織を損なわないよう
に、好ましくは更に集合組織を向上させるように、その
圧下率を選定する。冷延圧下率が90%を超えると、集
合組織が乱れて集積度が低下してくるため、好ましくは
90%以下とする。冷延圧下率が低くなっても熱延板よ
りも磁気特性が悪くはないが、より向上させるために
は、好ましくは40%以上の圧下率とする。冷延圧下率
を40〜90%の範囲に選べば、{100}<001>
方位に集積強度がランダム組織のそれの7倍以上とな
り、磁気特性としては、W15/50 が2〜3W/kgのときに
B50が1.80T以上、また、W15/50 が3〜4W/kgのとき
にB50が1.86T以上と、更に優れた性能が得られる。
【0030】
【実施例】実施例1 真空小型溶解炉にて、表2に示す各成分組成の50kg鋼塊
をそれぞれ溶解した。表2において、鋼(C) 、(D) およ
び(E) がこの発明に従う成分組成であり、鋼(D) がP単
独、そして鋼(C) および(E) がPに加えてSi、Alおよび
Mnを添加した例である。また、鋼(A) および(B) は通常
のけい素鋼板の組成の比較例である。さらに、鋼(F) は
Si、AlおよびMnの添加量がこの発明の範囲を外れた例で
ある。
をそれぞれ溶解した。表2において、鋼(C) 、(D) およ
び(E) がこの発明に従う成分組成であり、鋼(D) がP単
独、そして鋼(C) および(E) がPに加えてSi、Alおよび
Mnを添加した例である。また、鋼(A) および(B) は通常
のけい素鋼板の組成の比較例である。さらに、鋼(F) は
Si、AlおよびMnの添加量がこの発明の範囲を外れた例で
ある。
【0031】次いで、これら鋼塊を1150℃に加熱後、熱
間粗圧延により 1.3〜4.0 mm厚の板とした。この板を、
1100℃に加熱後、圧延終了温度を 600〜950 ℃に制御
し、 800m/min の圧延速度で1パスにて 0.8mmに仕上
げ(圧下率:40〜80%)、その後 750℃, 2時間の熱処
理、さらに引き続いて950 ℃, 1分間の熱処理を施し
た。なお、前者の熱処理はコイル巻き取りでの自己再結
晶を想定した処理である。
間粗圧延により 1.3〜4.0 mm厚の板とした。この板を、
1100℃に加熱後、圧延終了温度を 600〜950 ℃に制御
し、 800m/min の圧延速度で1パスにて 0.8mmに仕上
げ(圧下率:40〜80%)、その後 750℃, 2時間の熱処
理、さらに引き続いて950 ℃, 1分間の熱処理を施し
た。なお、前者の熱処理はコイル巻き取りでの自己再結
晶を想定した処理である。
【0032】かくして得られた各熱延鋼板について、X
線解析にて (110), (200), (211)極点図を求め、上記し
た級数展開法を用いて3次元方位解析を行い、3次元方
位分布密度を求めた。さらに、磁気測定を行い、 1.5T
励磁の時の鉄損値W15/50 および励磁磁場5000 A/mの時
の磁束密度B50を求めた。得られた結果を表3に示す。
線解析にて (110), (200), (211)極点図を求め、上記し
た級数展開法を用いて3次元方位解析を行い、3次元方
位分布密度を求めた。さらに、磁気測定を行い、 1.5T
励磁の時の鉄損値W15/50 および励磁磁場5000 A/mの時
の磁束密度B50を求めた。得られた結果を表3に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】No.1〜3は、通常のけい素鋼板組成によ
る比較例であり、その No.1と2との比較からわかるよ
うに、一般には合金添加量が増すと鉄損は減少するが磁
束密度も低下してしまう。次に、 No.3は、この発明の
圧延条件には適合するが、組成は従来のけい素鋼の一般
に従う、比較例である。 No.3は、高温かつ強圧下の圧
延を経たことによって{100}<001>方位の集積
強度が高まり、その結果として、とりわけC方向の磁気
特性が No.1および2に対して改善されたことがわか
る。
る比較例であり、その No.1と2との比較からわかるよ
うに、一般には合金添加量が増すと鉄損は減少するが磁
束密度も低下してしまう。次に、 No.3は、この発明の
圧延条件には適合するが、組成は従来のけい素鋼の一般
に従う、比較例である。 No.3は、高温かつ強圧下の圧
延を経たことによって{100}<001>方位の集積
強度が高まり、その結果として、とりわけC方向の磁気
特性が No.1および2に対して改善されたことがわか
る。
【0036】これに対して、 No.3と同様の圧延条件
で、かつこの発明の組成範囲に適合する No.4および5
は、とくにC方向の磁気特性において、同等の鉄損値の
No.3に比べて高い磁束密度が得られることが注目され
る。すなわち、この発明の圧延条件で得られた従来組成
の鋼板 No.3に比べて、この発明の圧延条件および組成
に従う鋼板 No.4および5は、C方向の鉄損が低くかつ
磁束密度が格段に高い、優れた特性が得られる。これ
は、この発明に従う No.6および8についても同様であ
る。
で、かつこの発明の組成範囲に適合する No.4および5
は、とくにC方向の磁気特性において、同等の鉄損値の
No.3に比べて高い磁束密度が得られることが注目され
る。すなわち、この発明の圧延条件で得られた従来組成
の鋼板 No.3に比べて、この発明の圧延条件および組成
に従う鋼板 No.4および5は、C方向の鉄損が低くかつ
磁束密度が格段に高い、優れた特性が得られる。これ
は、この発明に従う No.6および8についても同様であ
る。
【0037】また、 No.10は、Pに加えてSiおよびAlを
含有する発明例であり、この場合も従来の比較例 No.1
に比べ、同等の鉄損水準において格段に高い磁束密度と
なっている。
含有する発明例であり、この場合も従来の比較例 No.1
に比べ、同等の鉄損水準において格段に高い磁束密度と
なっている。
【0038】一方、 No.7および9は、成分組成は発明
範囲であるが、圧延条件が発明範囲から外れているた
め、従来組成の No.2よりは特性が優れるものの、 No.
3と同等程度の特性となる。なお、 No.11は、Si、Alお
よびMnの総量が発明範囲をこえるため、従来の磁気特性
の水準をこえることができない。
範囲であるが、圧延条件が発明範囲から外れているた
め、従来組成の No.2よりは特性が優れるものの、 No.
3と同等程度の特性となる。なお、 No.11は、Si、Alお
よびMnの総量が発明範囲をこえるため、従来の磁気特性
の水準をこえることができない。
【0039】実施例2 真空小型溶解炉にて、表2に示した各成分組成の50kg鋼
塊をそれぞれ溶解し、これら鋼塊を1150℃に加熱後、熱
間粗圧延により 1.3〜4.0 mm厚の板とした。この板を、
1100℃に加熱後、圧延終了温度を 600〜950 ℃に制御
し、 800m/minの圧延速度で1パス(圧下率:40〜80
%)にて 0.8mmに仕上げた。その後熱延板の表面のスケ
ールをショットブラスト処理にて除去し、0.5 mm厚まで
冷間圧延を行ってから、水素:35%および窒素65%の雰
囲気中で850 ℃、1分間の焼鈍を施した。
塊をそれぞれ溶解し、これら鋼塊を1150℃に加熱後、熱
間粗圧延により 1.3〜4.0 mm厚の板とした。この板を、
1100℃に加熱後、圧延終了温度を 600〜950 ℃に制御
し、 800m/minの圧延速度で1パス(圧下率:40〜80
%)にて 0.8mmに仕上げた。その後熱延板の表面のスケ
ールをショットブラスト処理にて除去し、0.5 mm厚まで
冷間圧延を行ってから、水素:35%および窒素65%の雰
囲気中で850 ℃、1分間の焼鈍を施した。
【0040】かくして得られた各冷延鋼板について、X
線解析にて (110), (200), (211)極点図を求め、上記し
た級数展開法を用いて3次元方位解析を行い、3次元方
位分布密度を求めた。さらに、磁気測定を行い、 1.5T
励磁の時の鉄損値W15/50 および励磁磁場5000 A/mの時
の磁束密度B50を求めた。得られた結果を表4に示す。
線解析にて (110), (200), (211)極点図を求め、上記し
た級数展開法を用いて3次元方位解析を行い、3次元方
位分布密度を求めた。さらに、磁気測定を行い、 1.5T
励磁の時の鉄損値W15/50 および励磁磁場5000 A/mの時
の磁束密度B50を求めた。得られた結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】No.1〜3は、通常のけい素鋼板組成によ
る比較例であり、その No.1と2との比較からわかるよ
うに、一般には合金添加量が増すと鉄損は減少するが磁
束密度も低下してしまう。次に、 No.3は、この発明の
圧延条件には適合するが、組成は従来のけい素鋼の一般
に従う、比較例である。 No.3は、高温かつ強圧下の圧
延を経たことによって{100}<001>方位の集積
強度が高まり、その結果として、とりわけC方向の磁気
特性が No.1および2に対して改善されたことがわか
る。
る比較例であり、その No.1と2との比較からわかるよ
うに、一般には合金添加量が増すと鉄損は減少するが磁
束密度も低下してしまう。次に、 No.3は、この発明の
圧延条件には適合するが、組成は従来のけい素鋼の一般
に従う、比較例である。 No.3は、高温かつ強圧下の圧
延を経たことによって{100}<001>方位の集積
強度が高まり、その結果として、とりわけC方向の磁気
特性が No.1および2に対して改善されたことがわか
る。
【0043】これに対して、 No.3と同様の圧延条件
で、かつこの発明の組成範囲に適合する No.4および5
は、とくにC方向の磁気特性において、同等の鉄損値の
No.3に比べて高い磁束密度が得られることが注目され
る。すなわち、この発明の圧延条件で得られた従来組成
の鋼板 No.3に比べて、この発明の圧延条件および組成
に従う鋼板 No.4および5は、C方向の鉄損が低くかつ
磁束密度が格段に高い、優れた特性が得られる。これ
は、この発明に従う No.6および8についても同様であ
る。
で、かつこの発明の組成範囲に適合する No.4および5
は、とくにC方向の磁気特性において、同等の鉄損値の
No.3に比べて高い磁束密度が得られることが注目され
る。すなわち、この発明の圧延条件で得られた従来組成
の鋼板 No.3に比べて、この発明の圧延条件および組成
に従う鋼板 No.4および5は、C方向の鉄損が低くかつ
磁束密度が格段に高い、優れた特性が得られる。これ
は、この発明に従う No.6および8についても同様であ
る。
【0044】また、 No.10は、Pに加えてSiおよびAlを
含有する発明例であり、この場合も従来の比較例 No.1
に比べ、同等の鉄損水準において格段に高い磁束密度と
なっている。
含有する発明例であり、この場合も従来の比較例 No.1
に比べ、同等の鉄損水準において格段に高い磁束密度と
なっている。
【0045】一方、 No.7および9は、成分組成は発明
範囲であるが、圧延条件が発明範囲から外れているた
め、従来組成の No.2よりは特性が優れるものの、 No.
3と同等程度の特性となる。なお、 No.11は、Si、Alお
よびMnの総量が発明範囲をこえるため、従来の磁気特性
の水準をこえることができない。
範囲であるが、圧延条件が発明範囲から外れているた
め、従来組成の No.2よりは特性が優れるものの、 No.
3と同等程度の特性となる。なお、 No.11は、Si、Alお
よびMnの総量が発明範囲をこえるため、従来の磁気特性
の水準をこえることができない。
【0046】実施例3 ここでは、冷延圧下率を高め、さらに優れた磁気特性を
得る場合の例を示す。表2の鋼塊を1150℃に加熱後、熱
間粗圧延により 2.0〜6.2 mm厚の板とした。この板を、
1100℃に加熱後、圧延終了温度を 600〜950 ℃に制御
し、800 m/minの圧延速度で1パスにて1.25mmに仕上げ
(圧下率:40〜80%)、仕上熱延板を得た。この仕上熱
延板の表面にショットをかけてスケールを落とし、0.5m
m まで圧下率60%にて冷間圧延し、水素35%、窒素65%
の雰囲気中で850 ℃、1分間の焼鈍を施した。
得る場合の例を示す。表2の鋼塊を1150℃に加熱後、熱
間粗圧延により 2.0〜6.2 mm厚の板とした。この板を、
1100℃に加熱後、圧延終了温度を 600〜950 ℃に制御
し、800 m/minの圧延速度で1パスにて1.25mmに仕上げ
(圧下率:40〜80%)、仕上熱延板を得た。この仕上熱
延板の表面にショットをかけてスケールを落とし、0.5m
m まで圧下率60%にて冷間圧延し、水素35%、窒素65%
の雰囲気中で850 ℃、1分間の焼鈍を施した。
【0047】かくして得られた各電磁鋼板について、X
線解析にて(110), (200), (211) 極点図を求め、上記し
た級数展開法を用いて3次元方位解析を行い、3次元方
位分布密度を求めた。さらに、磁気測定を行い、1.5 T
励磁の時の鉄損値W15/50 および励磁磁場5000 A/mの時
の磁束密度B50を求めた。得られた結果を表5に示す。
線解析にて(110), (200), (211) 極点図を求め、上記し
た級数展開法を用いて3次元方位解析を行い、3次元方
位分布密度を求めた。さらに、磁気測定を行い、1.5 T
励磁の時の鉄損値W15/50 および励磁磁場5000 A/mの時
の磁束密度B50を求めた。得られた結果を表5に示す。
【0048】
【表5】
【0049】No. 1〜3は、通常のけい素鋼板組成によ
る比較例であり、そのNo. 1と2との比較からわかるよ
うに、一般には合金添加量が増すと鉄損は減少するが磁
束密度も低下してしまう。次に、No. 3は、この発明の
圧延条件には適合するが、組成は従来のけい素鋼の一般
に従う比較例である。No. 3は、高温かつ強圧下の圧延
を経たことによって{100}<001>方位の集積強
度が高まり、その結果として、とりわけC方向の磁気特
性がNo. 1および2に対して改善されたことがわかる。
る比較例であり、そのNo. 1と2との比較からわかるよ
うに、一般には合金添加量が増すと鉄損は減少するが磁
束密度も低下してしまう。次に、No. 3は、この発明の
圧延条件には適合するが、組成は従来のけい素鋼の一般
に従う比較例である。No. 3は、高温かつ強圧下の圧延
を経たことによって{100}<001>方位の集積強
度が高まり、その結果として、とりわけC方向の磁気特
性がNo. 1および2に対して改善されたことがわかる。
【0050】これに対して、No. 3と同様の圧延条件
で、かつこの発明の組成範囲に適合するNo. 4および5
は、とくにC方向の磁気特性において、同等の鉄損値の
No. 3に比べて高い磁束密度が得られることが注目され
る。すなわち、この発明の圧延条件で得られた従来組成
の鋼板No. 3に比べて、この発明の圧延条件および組成
に従う鋼板No. 4および5は、C方向の鉄損が低くかつ
磁束密度が格段に高い、優れた特性が得られる。これ
は、この発明に従うNo. 6および8についても同様であ
る。
で、かつこの発明の組成範囲に適合するNo. 4および5
は、とくにC方向の磁気特性において、同等の鉄損値の
No. 3に比べて高い磁束密度が得られることが注目され
る。すなわち、この発明の圧延条件で得られた従来組成
の鋼板No. 3に比べて、この発明の圧延条件および組成
に従う鋼板No. 4および5は、C方向の鉄損が低くかつ
磁束密度が格段に高い、優れた特性が得られる。これ
は、この発明に従うNo. 6および8についても同様であ
る。
【0051】また、No. 10は、Pに加えてSiおよびAlを
含有する発明例であり、この場合も従来の比較例No. 1
に比べ、同等の鉄損水準において格段に高い磁束密度と
なっている。
含有する発明例であり、この場合も従来の比較例No. 1
に比べ、同等の鉄損水準において格段に高い磁束密度と
なっている。
【0052】一方、No. 7および9は、成分組成は発明
範囲であるが、圧延条件が発明範囲から外れているた
め、従来組成のNo. 2よりは特性が優れるものの、No.
3と同等程度の特性となる。なお、No.11 は、Si、Alお
よびMnの総量が発明範囲をこえるため、極めて高い水準
には至らない。
範囲であるが、圧延条件が発明範囲から外れているた
め、従来組成のNo. 2よりは特性が優れるものの、No.
3と同等程度の特性となる。なお、No.11 は、Si、Alお
よびMnの総量が発明範囲をこえるため、極めて高い水準
には至らない。
【0053】実施例4 ここでは冷延圧下率の影響を示す。表2の鋼(C)を用
い、熱間粗圧延により3.75〜14mm厚の板を作った。これ
らの板を、1100℃に加熱後、圧延終了温度を 950℃とし
て、800 m/min の圧延速度で1パスにて、0.75〜7.0mm
に仕上(圧下率50〜80%) 、仕上熱延板を得た。この仕
上熱延板の表面にショットをかけてスケールを落とし、
圧下率33〜63%にて0.5mm まで冷間圧延し、水素35%、
窒素65%の雰囲気中で850 ℃、1分間の焼鈍を施した。
その後、実施例1と同様の評価を行い、表6を得た。
い、熱間粗圧延により3.75〜14mm厚の板を作った。これ
らの板を、1100℃に加熱後、圧延終了温度を 950℃とし
て、800 m/min の圧延速度で1パスにて、0.75〜7.0mm
に仕上(圧下率50〜80%) 、仕上熱延板を得た。この仕
上熱延板の表面にショットをかけてスケールを落とし、
圧下率33〜63%にて0.5mm まで冷間圧延し、水素35%、
窒素65%の雰囲気中で850 ℃、1分間の焼鈍を施した。
その後、実施例1と同様の評価を行い、表6を得た。
【0054】
【表6】 No.13 は冷延圧下率が好適範囲内である発明例であり、
方位集積強度が高く、とくにC方向の磁束密度が極めて
高くなっている。No.12 は冷延圧下率が低すぎるため、
また、No.14 は冷延圧下率が過大であるため、いずれも
集積度がさほど大きくなく、磁束密度もやや低下してい
る。
方位集積強度が高く、とくにC方向の磁束密度が極めて
高くなっている。No.12 は冷延圧下率が低すぎるため、
また、No.14 は冷延圧下率が過大であるため、いずれも
集積度がさほど大きくなく、磁束密度もやや低下してい
る。
【0055】
【発明の効果】かくして、この発明によれば、従来の通
常の製造方法では実現不可能であった{100}<00
1>方位に高度に集積した高磁束密度電磁鋼板を、熱延
まで、また特殊な冷間圧延や焼鈍工程に頼ることなし
に、得ることができる。
常の製造方法では実現不可能であった{100}<00
1>方位に高度に集積した高磁束密度電磁鋼板を、熱延
まで、また特殊な冷間圧延や焼鈍工程に頼ることなし
に、得ることができる。
Claims (5)
- 【請求項1】 P:0.2 〜1.2 wt%を含有し、残部が実
質的にFeの組成になり、{100}<001>方位の集
積強度がランダム組織のそれの3倍以上である集合組織
を有することを特徴とする磁気特性に優れた電磁鋼板。 - 【請求項2】 P:0.2 〜1.2 wt%を含み、さらにSi、
AlおよびMnのうちから選んだ1種または2種以上を合計
で0.1 〜5.0 wt%含有し、残部が実質的にFeの組成にな
り、{100}<001>方位の集積強度がランダム組
織のそれの3倍以上である集合組織を有することを特徴
とする磁気特性に優れた電磁鋼板。 - 【請求項3】 P:0.2 〜1.2 wt%を含有する組成にな
る鋼スラブを、熱間粗圧延後、圧下率(1パス):50%
以上および圧延終了温度:750 〜1050℃の条件下で熱間
仕上げ圧延を行うことを特徴とする磁気特性に優れた電
磁鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 P:0.2 〜1.2 wt%を含み、さらにSi、
AlおよびMnのうちから選んだ1種または2種以上を合計
で0.1 〜5.0 wt%含有する組成になる鋼スラブを、熱間
粗圧延後、圧下率(1パス):50%以上および圧延終了
温度:750 〜1050℃の条件下で熱間仕上げ圧延を行うこ
とを特徴とする磁気特性に優れた電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 請求項3または4において、熱間仕上げ
圧延後に、冷間圧延次いで焼鈍を行うことを特徴とする
磁気特性に優れた電磁鋼板の製造方法。
Priority Applications (6)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9220394A JPH1171649A (ja) | 1997-06-30 | 1997-08-15 | 磁気特性に優れた電磁鋼板およびその製造方法 |
US09/134,305 US6248185B1 (en) | 1997-08-15 | 1998-08-14 | Electromagnetic steel sheet having excellent magnetic properties and production method thereof |
DE69827207T DE69827207T2 (de) | 1997-08-15 | 1998-08-14 | Elektrostahlblech mit hohen magnetischen Eigenschaften und Herstellungsverfahren |
KR10-1998-0032957A KR100449575B1 (ko) | 1997-08-15 | 1998-08-14 | 자기특성이 우수한 전기강판 및 그 제조방법 |
EP98306481A EP0897993B1 (en) | 1997-08-15 | 1998-08-14 | Electromagnetic steel sheet having excellent magnetic properties and production method thereof |
US09/779,041 US6416592B2 (en) | 1997-08-15 | 2001-02-08 | Electromagnetic steel sheet having excellent magnetic properties and production method thereof |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9-174072 | 1997-06-30 | ||
JP17407297 | 1997-06-30 | ||
JP9220394A JPH1171649A (ja) | 1997-06-30 | 1997-08-15 | 磁気特性に優れた電磁鋼板およびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1171649A true JPH1171649A (ja) | 1999-03-16 |
Family
ID=26495808
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP9220394A Withdrawn JPH1171649A (ja) | 1997-06-30 | 1997-08-15 | 磁気特性に優れた電磁鋼板およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH1171649A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015122891A (ja) * | 2013-12-24 | 2015-07-02 | Jfeスチール株式会社 | モータコアおよびその製造方法 |
-
1997
- 1997-08-15 JP JP9220394A patent/JPH1171649A/ja not_active Withdrawn
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015122891A (ja) * | 2013-12-24 | 2015-07-02 | Jfeスチール株式会社 | モータコアおよびその製造方法 |
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Legal Events
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