JPH1161267A - ラインパイプ用高Crマルテンサイト継目無鋼管の製造方法 - Google Patents

ラインパイプ用高Crマルテンサイト継目無鋼管の製造方法

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JPH1161267A
JPH1161267A JP22042197A JP22042197A JPH1161267A JP H1161267 A JPH1161267 A JP H1161267A JP 22042197 A JP22042197 A JP 22042197A JP 22042197 A JP22042197 A JP 22042197A JP H1161267 A JPH1161267 A JP H1161267A
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toughness
steel pipe
seamless steel
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JP22042197A
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Yukio Miyata
由紀夫 宮田
Mitsuo Kimura
光男 木村
Takaaki Toyooka
高明 豊岡
Takeshi Shimamoto
健 島本
Fumio Murase
文夫 村瀬
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 炭酸ガスおよび塩化物を含有する環境におい
ても、耐全面腐食性、耐孔食性および母材靱性に優れた
マルテンサイト継目無鋼管を提供する。 【解決手段】 単量%で、C:0.02%以下、Cr:10.0〜
14.0%、Ni:0.2 〜2.0%、Cu:0.2 〜1.0 %、V:0.0
2〜0.15%、N:0.02%以下を含有する鋼管素材を用い
て継目無鋼管に造管後直ちに焼入れし、ついでAc1点以
上Ac1点+50℃以下の温度で熱処理したのち冷却し、A
c1点未満で焼戻しする。さらに、Ti、Nb、Zr、Taの1種
または2種以上を合計で0.3 %以下含有してもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、石油や天然ガスを
輸送するラインパイプに用いて好適な高Crマルテンサイ
ト継目無鋼管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、石油・天然ガスは、掘削が容易な
ものは掘り尽くされ、腐食が厳しい、深度が深い、寒冷
地や海底といった掘削環境が厳しい坑井にも手をつけざ
るを得なくなっている。このような坑井から生産される
石油・天然ガスの中には、炭酸ガスを多量に含む場合が
多く、このような環境では、炭素鋼あるいは低合金鋼で
は著しく腐食されるので、従来、その防食手段としてイ
ンヒビタを添加することが行われてきた。しかし、イン
ヒビタの使用は、高コストとなることや、高温では効果
が不十分なことから、近年ではインヒビタを用いる必要
のない耐食材料を用いる傾向にある。このような耐食材
料として油井管では、Crを13%含有するマルテンサイト
系ステンレス鋼が広く用いられている。
【0003】一方、ラインパイプでは、API規格中に
C量を低減した12%Crマルテンサイト系ステンレス鋼が
規定されている。この鋼は、円周溶接に予熱、後熱が必
要であり高コストとなることや、溶接部の靱性に劣ると
いう欠点があることから、ラインパイプとして一般には
ほとんど採用されていない。このため、耐食性ラインパ
イプ用材料としては、溶接性と耐食性に優れているとの
理由で、Crを高めNi、Moを含有する二相ステンレス鋼が
用いられてきた。しかし、二相ステンレス鋼は坑井によ
っては過剰品質となり高コストとなるという問題があっ
た。
【0004】上記問題を克服する技術として、例えば特
開平4-99128 号公報にはマルテンサイト系ステンレス鋼
ラインパイプの製造方法が提案されている。特開平4-99
128号公報に記載された技術は、13%Cr系ステンレス鋼
でC、Nを低減し、さらにCuを1.2 〜4.5 %添加し、造
管後の焼入れ冷却速度を水冷以上の冷却速度で冷却する
ことにより、炭素ガスを含む腐食環境においても優れた
耐食性を示し、溶接熱影響部の硬さが低く、かつ焼割れ
の問題がなく、生産性にも優れた高強度ラインパイプの
製造方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た技術でもなお、寒冷地におけるパイプラインへの適用
には、靱性が十分でない。靱性を向上させるためにNiを
多量に添加すれば、靱性は向上するが、コスト高になる
という問題があった。本発明は、上記問題点を解決し、
優れた靱性を有し、かつ安価な高Crマルテンサイト継目
無鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を達成するため鋭意検討した結果、C量を0.02%以下に
低減し、Cuを添加し、さらにN量を0.02%以下、V量を
0.01〜0.15%に制限して、造管後直ちに空冷以上の冷却
速度で焼入れし、その後、二相域に加熱し、ついで焼戻
すことにより母材靱性が著しく向上することを新たに見
いだした。
【0007】本発明の基礎になった実験結果について説
明する。0.01%C−11%Cr−1.5 %Ni−0.5 %Cu−0.01
%Nからなる組成の鋼を溶製し、鋼管素材とした。この
鋼管素材を加熱し、φ273mm ×t13mmの継目無鋼管に造
管したのち、つぎのような3種類の処理、 冷却し、Ac3点以上に再加熱したのち焼入れしAc1
未満で焼戻す (Q-T)、 冷却し、Ac3点以上に再加熱したのち焼入れし、つい
で二相域で熱処理しAc1点未満で焼戻す (Q-Q'-T) 、 直ちに焼入れし、二相域で熱処理しAc1点未満で焼戻
す (DQ-Q'-T) 、処理をそれぞれ施した。
【0008】これら鋼管から採取した試験片について、
引張特性、衝撃靱性を調査した。その結果を、降伏強さ
と、−40℃におけるシャルピー衝撃試験の吸収エネルギ
ーとの関係で図1に示す。図1から、の DQ-Q'-T処理
が同一降伏強さで比較すると高い吸収エネルギーを示し
ている。本発明者らは、この現象について詳細に調査し
た結果、の Q-T処理を施された鋼管のシャルピー衝撃
試験片の脆性破面には明確な粒界破面が認められたのに
対し、のQ-Q'-T処理、あるいはの DQ-Q'-T処理を施
された鋼管のシャルピー衝撃試験片の脆性破面には明確
な粒界破面が認められなかった。
【0009】また、Q-T 処理を施された鋼管では炭窒化
物が粒界に分散して析出しているのに対して、Q-Q'-T処
理あるいはDQ-Q'-T 処理を施された鋼管では炭窒化物が
凝集して析出しており、炭窒化物の析出形態に大きな相
異が見られることを確認した。また、Q-Q'-T処理材とDQ
-Q'-T 処理材の破面を比較すると、DQ-Q'-T 処理材の方
が破面単位が小さいことが確認された。
【0010】Q-Q'-T処理あるいはDQ-Q'-T 処理を施され
た鋼管の靱性が高い理由は次のように考えられる。ま
ず、Q-T 処理材では、均一な組織を形成しており、炭窒
化物は粒界に均一に分散して析出し、この炭窒化物の粒
界析出により粒界が脆化し靱性が低いと考えられる。
【0011】一方、Q-Q'-T処理材およびDQ-Q'-T 処理材
においては、二相域熱処理(Q')時に、マルテンサイト相
中に一部オーステナイト相が生じる。C、Nの溶解度
は、マルテンサイト相中よりオーステナイト相中の方が
高いため、C、Nはマルテンサイト相からオーステナイ
ト相へ拡散、濃縮する。したがって、Q'処理中にC、N
が濃縮したオーステナイト相とC、Nが希釈された焼戻
しマルテンサイト相が形成されることになる。そしてそ
の後の焼戻しにより、炭窒化物を多量に含有する焼戻し
マルテンサイト相と、炭窒化物の非常に少ない粒界強度
の非常に高い焼戻しマルテンサイト相が形成される。こ
の粒界強度の高い焼戻しマルテンサイト相のため、靱性
が向上しているものと考えられる。
【0012】さらに、DQ-Q'-T 処理を施された鋼管の靱
性がQ-Q'-T処理を施された鋼管の靱性より高い理由は次
のように考えられる。すなわち、DQ-Q'-T 処理材では、
圧延後直ちに焼入れしてマルテンサイト組織を得ている
ことから、粒の細粒化が達成できており、さらに二相域
熱処理(Q')を施すことによる前述の機構による靱性向
上とも相まって、著しく靱性が向上すると考えられる。
【0013】本発明は、上記した知見に基づいて構成さ
れたものである。すなわち、本発明は、重量%で、C:
0.02%以下、Si:0.5 %以下、Mn:0.2〜3.0 %、Cr:1
0.0〜14.0%、Ni:0.2 〜2.0 %、Cu:0.2 〜1.0 %、
V:0.01〜0.15%、N:0.02%以下を含有し、残部Feお
よび不可避的不純物からなる鋼管素材を用いて継目無鋼
管とした後、空冷以上の冷却速度で焼入れし、その後、
Ac1点以上、Ac1点+50℃以下の温度で熱処理し、さら
にその後冷却してから、Ac1点未満の温度で焼戻すこと
を特徴とするラインパイプ用高Crマルテンサイト継目無
鋼管の製造方法である。
【0014】また、本発明は、重量%で、C:0.02%以
下、Si:0.5 %以下、Mn:0.2 〜3.0 %、Cr:10.0〜1
4.0%、Ni:0.2 〜2.0 %、Cu:0.2 〜1.0 %、V:0.0
1〜0.15%、N:0.02%以下を含み、さらにTi、Zr、N
b、Taのうちから選ばれた1種または2種以上を合計で
0.3%以下含有し、残部Feおよび不可避的不純物からな
る鋼管素材を用いて継目無鋼管とした後、空冷以上の冷
却速度で焼入れし、その後、Ac1点以上、Ac1点+50℃
以下の温度で熱処理し、さらにその後冷却してから、A
c1点未満の温度で焼戻すことを特徴とするラインパイプ
用高Crマルテンサイト継目無鋼管の製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】まず、本発明の継目無鋼管の成分
組成の限定理由について説明する。 C:0.02%以下 Cは、溶接熱影響部の硬さ低減、靱性向上、耐溶接割れ
性の向上、炭酸ガスおよび塩化物を含む環境下での耐全
面腐食性、耐孔食性の向上などの点からできるだけ低減
することが望ましい。とくに、予熱なしで溶接ができる
ためには、Cは0.02%以下とすることが必要となり、C
量の上限は0.02%とした。なお、より良好な溶接性確保
の点から0.015 %以下が好ましい。
【0016】Si: 0.5%以下 Siは脱酸剤として添加されるが、フェライト生成元素で
あるので、多量に含有するとフェライトが生成しやすく
なり、母材および溶接熱影響部の靱性を劣化させる。ま
た、フェライトが存在すると、熱間加工性が低下し、製
造に支障をきたす恐れがある。したがって、Si量は 0.5
%以下に限定した。好ましくは 0.3%以下である。
【0017】Mn: 0.2〜 3.0% Mnは、脱酸剤として作用し、さらに強度を増加させる元
素である。さらにオーステナイト生成元素であるため、
フェライト生成を抑制し、母材および溶接熱影響部の靱
性を向上させる働きも有している。このような効果を得
るためには、 0.2%以上必要であるが、 3.0%を超えて
添加しても効果は飽和するため、Mn量は0.2〜 3.0%、
好ましくは 1.0〜 2.0%とする。
【0018】Cr:10.0〜14.0% Crはマルテンサイト組織を確保し、かつ炭酸ガスを含む
腐食環境における耐食性および耐孔食性を高めるために
必要な基本元素である。これらの効果を得るためには1
0.0%以上の添加が必要である。また、14.0%を超えて
含有するとフェライトの生成が容易となり、マルテンサ
イト組織を安定して得るため、または熱間加工性の低下
を防止するためには、多量のオーステナイト生成元素の
添加が必要となり、コスト高となる。よって、Cr量は1
0.0〜14.0%とする。
【0019】Ni: 0.2〜 2.0% Niはオーステナイト生成元素であり、フェライトの生成
を抑制し、母材および溶接熱影響部の靱性を向上させ、
熱間加工性の低下を抑制する働きがある。また、炭酸ガ
スを含む腐食環境下における耐食性、耐孔食性を向上さ
せる。このような効果を得るためには 0.2%以上の添加
が必要であるが、 2.0%を超えて添加すると変態点が低
下し、焼戻し温度が低くなり、所定の強度・靱性を得る
ために長時間の焼戻しを必要とする。したがって、Ni量
は 0.2〜 2.0%の範囲とした。なお、好ましくは、より
安定な耐食性および焼戻し特性の確保の点から 0.5〜
1.7%である。
【0020】Cu: 0.2〜 1.0% CuはNi、Mnとともにオーステナイト生成元素であり、フ
ェライトの生成を抑制し、溶接熱影響部の靱性向上、耐
全面腐食性向上に効果があり、また、熱間加工性の低下
を抑制する効果もある。さらに、Cuは炭酸ガスおよび塩
化物を含有する環境で不動態皮膜を安定化する効果があ
り、耐孔食性の向上に寄与する。これらの効果を得るに
は 0.2%以上の添加が必要である。しかし、 1.0%を超
えて含有すると一部が固溶せず析出するようになり、溶
接熱影響部の靱性に悪影響を与える。よって、Cuは 0.2
〜 1.0%の範囲とした。なお、好ましくは 0.3〜 0.7%
である。
【0021】V:0.01〜0.15% Vは、高温強度の改善に有用な元素である。しかしなが
ら、0.01%未満では、80〜150 ℃における強度を確保す
るには十分でなく、一方、0.15%を超える添加では強度
が上昇し、靱性の劣化を招くため、Vは0.01〜0.15%の
範囲に限定した。なお、好ましくは0.03〜0.10%であ
る。
【0022】N:0.02%以下 Nは、Cと同様、溶接割れの回避、溶接熱影響部の靱性
向上、および溶接熱影響部の硬さ低減のためにできるだ
け低い方が望ましく、0.02%を超えるとこれらの効果が
十分に得られないため、0.02%以下に限定した。なお、
好ましくは0.015 %以下である。
【0023】Ti、Zr、Nb、Taのうちの1種または2種以
上の合計: 0.3%以下 Ti、Zr、Nb、TaはCとの親和力が強く、炭化物を形成す
る傾向が強い。Ti、Zr、Nb、Taの1種または2種以上を
添加し、Cr炭化物をTi、Zr、Nb、Taの炭化物に置換す
る。これによりCr炭化物量が減少し、耐食性とくに耐孔
食性に有効な有効Cr量を増加させることができる。
【0024】Ti、Zr、Nb、Taは母材、溶接熱影響部の靱
性向上に効果があるが、合計で 0.3%を超えると溶接割
れ感受性が増加することや靱性を劣化させることから、
合計0.3%を上限とした。なお、Ti単独では0.01〜0.2
%、Zr単独では0.01〜0.1 %、Nb単独では0.01〜0.1
%、Ta単独では0.01〜0.1 %が好ましい。複合添加した
場合には合計で0.03〜0.2 %が好ましい。
【0025】その他元素は、不可避的に含有するが、で
きるだけ低減するのが望ましい。例えば、P、Sはそれ
ぞれ0.03%、0.01%までは許容できるが、できるだけ低
減する。Oは0.01%まで許容できる。上記した組成を有
する鋼を、転炉あるいは電気炉で溶製し、連続鋳造法あ
るいは造塊法で凝固して鋼管素材とする。溶鋼の取鍋精
錬、真空脱ガス等は必要に応じ実施してよい。
【0026】凝固した鋼管素材は、Ac3点以上に加熱さ
れ、プラグミル方式、マンドレルミル方式などの熱間圧
延によって継目無鋼管とされ、あるいはさらにサイザ
ー、ストレッチレデューサにより熱間のままで所望の寸
法の鋼管に造管される。造管後直ちに、焼入れする直接
焼入れを施す。焼入れの冷却速度は空冷以上の冷却速度
で 200℃以下まで冷却する。
【0027】本発明の組成範囲では空冷でもマルテンサ
イト組織が得られるが、焼入れ冷却速度を空冷より速い
冷却速度とすれば、変態開始までのオーステナイト粒の
成長を抑制でき、変態後の組織が微細化し靱性が向上す
る。本発明では、造管後直ちに焼入れしたマルテンサイ
ト組織を利用するため、細粒化効果により、再加熱焼入
れした場合に比べ靱性が著しく向上する。
【0028】直接焼入れののち、Ac1点以上、Ac1点+
50℃以下に加熱する熱処理を行う。Ac1点以上の加熱に
より、マルテンサイトとオーステナイトの微細な二相組
織となる。C、Nの溶解度は、マルテンサイト相中より
オーステナイト相中の方が高いため、C、Nはマルテン
サイト相からオーステナイト相へ拡散、濃縮する。した
がって、二相域熱処理中にC、Nが濃縮したオーステナ
イト相とC、Nが希釈された焼戻しマルテンサイト相が
形成されることになる。そしてその後の焼戻しにより、
炭窒化物を多量に含有する焼戻しマルテンサイト相と、
炭窒化物の非常に少ない粒界強度の非常に高い焼戻しマ
ルテンサイト相が形成され、この粒界強度の高い焼戻し
マルテンサイト相のため、高靱性を有する鋼管となる。
【0029】しかし、Ac1点+50℃を超える熱処理を施
すと、C、Nが希釈された焼戻しマルテンサイト相の比
率が低くなる結果、最終的に粒界強度の高い焼戻しマル
テンサイト相の比率が低くなり、靱性向上効果が減少す
る。また、粒が粗大化することも靱性の低下につなが
る。また、この温度範囲の保持時間は10〜60min とする
のが好ましい。保持後の冷却は空冷以上の冷却速度で行
うのがよい。
【0030】焼戻しは、Ac1点未満、好ましくは 550℃
以上で行うのが好ましい。上記温度に加熱保持後空冷以
上の冷却速度で冷却する。焼戻しにより炭窒化物の少な
い粒界強度の高い焼戻しマルテンサイト相を含有する組
織となるため、高靱性を有する鋼管となる。この焼戻し
の保持時間は10〜60min とするのが好ましい。
【0031】
【実施例】
(実施例1)表1に示す組成の鋼を転炉で溶製し、真空
脱ガス処理を行い、連続鋳造法で凝固させ、鋼管素材と
した。これら鋼管素材を、マンネスマン−プラグミル方
式の製造設備で継目無鋼管とし、ついでサイザーで圧延
し、φ273mm ×t13mmに造管したのち、直ちに空冷また
は水冷にて焼入れた。ついで、これら鋼管は、表2に示
す二相域温度に加熱したのち、空冷または水冷し、さら
に、表2に示すAc1点未満の温度で焼戻した。
【0032】なお、比較例として、一部の鋼について造
管後冷却し、再加熱焼入れしたのち焼戻すQ-T 処理およ
び造管後冷却し、再加熱焼入れ−二相域熱処理したのち
焼戻すQ-Q'-T処理を施した。このように処理された鋼管
(母管)から試験片を採取し、機械的特性および腐食試
験を実施した。
【0033】腐食試験は母管の炭酸ガス腐食試験を実施
し、耐孔食性と耐全面腐食性を評価した。炭酸ガス腐食
試験は、オートクレーブ中で3.0MPaの炭酸ガスを飽和さ
せた20%NaCl水溶液中に、母管から採取した 3.0mm×25
mm×50mmの試験片を浸漬し、80℃で7日間保持した。耐
孔食性は、試験後、試験片を水洗、乾燥したのち肉眼で
試験片表面を観察し、孔食の有無を調査した。1個以上
孔食が発生したときは×、それ以外は○として評価し
た。
【0034】耐全面腐食性は、試験後、試験片を水洗、
乾燥したのち重量を測定し、重量減少速度を1年間での
厚み減少量に換算して評価した。厚み減少量が0.1mm/年
未満の場合を○、0.1mm/年以上の場合を×で表示した。
また、二相ステンレス鋼を溶接材料としてTIG溶接
(電圧:15V、電流:200 A、溶接速度:10cm/min、入
熱18kJ/cm)で鋼管継手を作製し、溶接熱影響部(ノッチ
位置: ボンドから1mm)シャルピー試験を-40 ℃で行
い、吸収エネルギー V-40(J)を求めた。
【0035】その結果を表2に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】本発明例は孔食の発生もみられず、厚み減
少量も 0.1mm/年未満であり、耐孔食性、耐全面腐食性
に優れ実用的に使用可能なレベルであり、さらに、母材
の靱性に優れ、かつ溶接熱影響部の-40 ℃におけるシャ
ルピー吸収エネルギーも高く、溶接熱影響部靱性は優れ
ており、ラインパイプ用として十分な特性である。本発
明の範囲をはずれた比較例の鋼管は、母材靱性に劣り、
溶接熱影響部靱性が低く、また孔食が発生し、厚み減少
量が大きいなど、本発明例に比較し特性は劣化してい
る。
【0039】
【発明の効果】このように本発明によれば、炭酸ガスお
よび塩化物を含有する環境で優れた耐孔食性および耐全
面腐食性を示し、かつ母材靱性、溶接熱影響部の靱性に
優れた石油・天然ガスなどを輸送するためのラインパイ
プ用鋼管が安価に提供でき、産業の発展に寄与するとこ
ろが極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】−40℃でのシャルピー衝撃試験吸収エネルギー
と降伏強さとの関係を示すグラフである。
フロントページの続き (72)発明者 豊岡 高明 愛知県半田市川崎町1丁目1番地 川崎製 鉄株式会社知多製造所内 (72)発明者 島本 健 愛知県半田市川崎町1丁目1番地 川崎製 鉄株式会社知多製造所内 (72)発明者 村瀬 文夫 愛知県半田市川崎町1丁目1番地 川崎製 鉄株式会社知多製造所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C:0.02%以下、 Si:0.5 %以下、 Mn:0.2 〜3.0 %、 Cr:10.0〜14.0%、 Ni:0.2 〜2.0 %、 Cu:0.2 〜1.0 %、 V:0.01〜0.15%、 N:0.02%以下 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼管素
    材を用いて継目無鋼管とした後、空冷以上の冷却速度で
    焼入れし、その後、Ac1点以上、Ac1点+50℃以下の温
    度で熱処理し、さらにその後冷却してから、Ac1点未満
    の温度で焼戻すことを特徴とするラインパイプ用高Crマ
    ルテンサイト継目無鋼管の製造方法。
  2. 【請求項2】 重量%で、 C:0.02%以下、 Si:0.5 %以下、 Mn:0.2 〜3.0 %、 Cr:10.0〜14.0%、 Ni:0.2 〜2.0 %、 Cu:0.2 〜1.0 %、 V:0.01〜0.15%、 N:0.02%以下 を含み、さらにTi、Zr、Nb、Taのうちから選ばれた1種
    または2種以上を合計で0.3%以下含有し、残部Feおよ
    び不可避的不純物からなる鋼管素材を用いて継目無鋼管
    とした後、空冷以上の冷却速度で焼入れし、その後、A
    c1点以上、Ac1点+50℃以下の温度で熱処理し、さらに
    その後冷却してから、Ac1点未満の温度で焼戻すことを
    特徴とするラインパイプ用高Crマルテンサイト継目無鋼
    管の製造方法。
JP22042197A 1997-08-15 1997-08-15 ラインパイプ用高Crマルテンサイト継目無鋼管の製造方法 Pending JPH1161267A (ja)

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