JPH1160386A - ニオブ酸リチウム膜の製造方法 - Google Patents

ニオブ酸リチウム膜の製造方法

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JPH1160386A
JPH1160386A JP22176197A JP22176197A JPH1160386A JP H1160386 A JPH1160386 A JP H1160386A JP 22176197 A JP22176197 A JP 22176197A JP 22176197 A JP22176197 A JP 22176197A JP H1160386 A JPH1160386 A JP H1160386A
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lithium niobate
lithium
producing
niobate film
precursor
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JP22176197A
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Yutaka Okabe
豊 岡部
Ichiro Koiwa
一郎 小岩
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Oki Electric Industry Co Ltd
Original Assignee
Oki Electric Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水(アルコール)に対する溶解性や安定性に
優れたニオブ酸リチウムの前駆体を作成し、このニオブ
酸リチウムの前駆体(前駆体溶液)の濃度を高めること
により、一定厚さのニオブ酸リチウム膜を形成する上
で、数十回もの重ね塗りを必要としない。 【解決手段】 少なくとも有機酸リチウムと、アルコキ
シニオブと、エタノールアミン系化合物とを反応させて
ニオブ酸リチウムの前駆体を作成する工程と、このニオ
ブ酸リチウムの前駆体を下地10に積層した後加熱し
て、ニオブ酸リチウムの前駆体からニオブ酸リチウム膜
12を作成する工程とを含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ニオブ酸リチウ
ム(LiNbO3 )膜の製造方法、特に、比較的厚膜の
ニオブ酸リチウム(LiNbO3 )膜を製造することが
できる製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ニオブ酸リチウム膜の製造方法と
して、粉粒体状のニオブ酸リチウムを分散させた溶液
を、下地上に塗布して、それを高温で焼結する方法が一
般に行われていた。
【0003】また、スパッタリング法や、真空蒸着法も
一部、ニオブ酸リチウム膜の製造方法として、検討され
ている。
【0004】そして、特公平3−75518には以下の
製造方法が開示されている。すなわち、まず、エトキシ
リチウムとペンタエトキシニオブのモル比が1:1とな
るように混合溶解し、そして、還流により複合アルコキ
シドを作成し、この複合アルコキシドを部分加水分解し
て、ニオブ酸リチウム(LiNbO3 )の前駆体を作成
する。そして、得られたニオブ酸リチウムの前駆体をサ
ファイア単結晶基板上に塗布して400℃以上の温度で
加熱焼成する工程を少なくとも1回以上繰り返し、基板
上に、ニオブ酸リチウム膜を、多層に積層せしめる製造
方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、粉粒体
状のニオブ酸リチウムを分散させた溶液を、下地上に塗
布して、それを高温で焼結する方法(高温焼結方法)で
は、均一で、クラックやホールがない、比較的厚膜のニ
オブ酸リチウム膜を作成することが困難であった。ま
た、かかる高温焼結方法では、1000℃を超える高温
が必要であるため、基材の材料が耐熱性材料に限られて
しまい、さらには、加熱装置も大型化するという問題が
あった。
【0006】また、スパッタリング法や、真空蒸着法で
は、製造装置が大型化し、また、製造条件の制御が容易
でなく、さらには、緻密で、比較的厚膜のニオブ酸リチ
ウム膜を作成することが困難であるという問題があっ
た。
【0007】また、特公平3−75518に開示された
ニオブ酸リチウム膜の製造方法は、ペンタエトキシニオ
ブが疎水性のために、これをアルコキシリチウムと反応
させて複合アルコキシド(ニオブ酸リチウム膜の前駆
体)を作成しても、この複合アルコキシドは水に対する
溶解性や安定性が乏しいという問題があった。したがっ
て、水中における複合アルコキシドの濃度を高めること
が困難であり、そのため濃度の薄い複合アルコキシドを
下地上に数十回も積層しては、その度に加熱する必要が
あった。よって、一定厚さのニオブ酸リチウム膜の形成
に極めて長時間を要していた。
【0008】したがって、水(アルコール)に対する溶
解性や安定性に優れたニオブ酸リチウム膜の前駆体を作
成し、このニオブ酸リチウム膜の前駆体の濃度を高める
ことにより、一定厚さのニオブ酸リチウム膜を形成する
にあたり、数十回もの重ね塗りを必要としないニオブ酸
リチウム膜の製造方法の出現が望まれていた。
【0009】そこで、発明者らは、鋭意検討した結果、
少なくとも有機酸リチウムと、アルコキシニオブと、エ
タノールアミン系化合物とからなるニオブ酸リチウムの
前駆体、あるいは少なくともアルコキシリチウムと、ア
ルコキシニオブと、エタノールアミン系化合物とからな
るニオブ酸リチウムの前駆体が水(アルコール)に対す
る溶解性や安定性が優れていることを見い出し、この発
明を完成させたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明の第1の実施形
態のニオブ酸リチウム膜の製造方法によれば、少なくと
も、有機酸リチウムと、アルコキシニオブと、エタノー
ルアミン系化合物とを反応させて、ニオブ酸リチウムの
前駆体を作成する工程と、このニオブ酸リチウムの前駆
体を下地に積層した後、加熱してニオブ酸リチウム膜を
作成する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】このようにしてニオブ酸リチウム膜を作成
すると、まず、アルコキシニオブとエタノールアミン系
化合物とがアルコール交換反応によりアルコキシニオブ
キレート化合物を生じやすい。そして、このアルコキシ
ニオブキレート化合物と有機酸リチウムとは、低温反応
であって、しかも、安定、迅速な化学反応である脱エス
テル化反応により反応して、ニオブ酸リチウムの前駆体
を容易に作成することができる。よって、このニオブ酸
リチウムの前駆体は、水に対する溶解性や安定性が優れ
ており、ニオブ酸リチウムの前駆体の濃度を高めること
ができ、結果としてニオブ酸リチウムの前駆体の濃度を
高めることができる。
【0012】なお、アルコキシニオブ(Nb(OR1
5 、R1 はアルキル基)とエタノールアミン系化合物
(N(C24 OH)(R22 、R2 はアルキル基ま
たはアルコール基)とのアルコール交換反応は、以下の
式(1)で表される。
【0013】 Nb(OR15 +N(C24 OH)(R22 ⇒ Nb(OR14 N(R2224 O+C24 OH (1) また、有機酸リチウム(R3 −COO−Li、R3 は炭
化水素)と、アルコキシニオブキレート化合物(Nb
(OR14 N(R2224 O)との脱エステル
化反応は、以下の式(2)で表される。
【0014】 R3 −COO−Li+(Nb(OR14 N(R2224 O) ⇒ Li−O−Nb(OR13 N(R2224 O+R3 −COO−R1 (2) したがって、濃度が高いニオブ酸リチウムの前駆体から
ニオブ酸リチウム膜を形成するため、一定厚さのニオブ
酸リチウム膜を形成するために、下地上に数十回も繰り
返しニオブ酸リチウムの前駆体溶液を積層する必要がな
くなった。また、アルコキシニオブキレート化合物と有
機酸リチウムとは、正確なモル比で反応するため、均一
なニオブ酸リチウム膜を形成することができ、したがっ
て、このニオブ酸リチウム膜を光導波路に用いた場合
に、光伝搬損失が小さく、また屈折率やSHG位相整合
定数について均一な光学特性を容易に得ることができ
る。
【0015】また、この発明の第1の実施形態のニオブ
酸リチウム膜の製造方法を実施するにあたり、アルコキ
シニオブとエタノールアミン系化合物とを予め反応させ
るのが好ましい。
【0016】このようにアルコキシニオブとエタノール
アミン系化合物とを予め反応させると、アルコール交換
反応により、より確実にアルコキシニオブキレート化合
物を生じやすい。そして、このアルコキシニオブキレー
ト化合物と有機酸リチウムとは脱エステル化反応により
反応して、ニオブ酸リチウムの前駆体を容易に作成する
ことができる。よって、ニオブ酸リチウムの前駆体の濃
度をより確実に高めることができる。
【0017】なお、この発明の第1の実施形態のニオブ
酸リチウム膜の製造方法を実施するにあたり(後述する
第2の実施形態のニオブ酸リチウム膜の製造方法にも該
当する)、好ましいエタノールアミン系化合物として
は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリ
エタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、メチル
ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチ
ルジエタノールアミン、ジプロピルエタノールアミン、
プロピルジエタノールアミン、ジブチルエタノールアミ
ン、ブチルジエタノールアミン、ジペンチルエタノール
アミン、ペンチルジエタノールアミン、ジヘプチルエタ
ノールアミン、ヘプチルジエタノールアミン、ジオクチ
ルエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ジ
ノニルエタノールアミン、ノニルジエタノールアミン、
ジデシルエタノールアミン、デシルジエタノールアミ
ン、ジベンジルエタノールアミン、ベンジルジエタノー
ルアミン等が挙げられ、これらの一種の単独使用のみな
らず二種以上の混合使用も好ましい。
【0018】また、この発明の第1の実施形態のニオブ
酸リチウム膜の製造方法を実施するにあたり、エタノー
ルアミン系化合物が、トリエタノールアミンであるのが
好ましい。
【0019】トリエタノールアミンは、上記したエタノ
ールアミン系化合物の中でも、アルコキシニオブとより
容易にアルコール交換反応しやすい上に、入手が容易
で、安価なためである。
【0020】また、この発明の第1の実施形態のニオブ
酸リチウム膜の製造方法を実施するにあたり、有機酸リ
チウムを飽和カルボン酸リチウムとするのが好ましい。
【0021】飽和カルボン酸リチウムは、それ自体耐熱
性や保存安定性に優れており、また、この飽和カルボン
酸リチウムを使用すれば、より化学的安定性に優れた、
屈折率やSHG位相整合定数について均一な特性を有す
るニオブ酸リチウム膜を得ることができるためである。
【0022】なお、飽和カルボン酸リチウムの好ましい
具体例としては、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、プロピ
オン酸リチウム、酪酸リチウム、吉草酸リチウム、カプ
ロン酸リチウム、エナント酸リチウム、カプリル酸リチ
ウム、ペラルゴン酸リチウム、カプリン酸リチウム、ウ
ンデカン酸リチウム、ドデカン酸リチウム、トリデカン
酸リチウム、テトラデカン酸リチウム、ペンタデカン酸
リチウム、ヘキサデカン酸リチウム、ヘプタデカン酸リ
チウム、オクタデカン酸リチウム、ノナデカン酸リチウ
ム、エイコサン酸リチウム、ヘンエイコサン酸リチウ
ム、ドコサン酸リチウム、トリコサン酸リチウム、テト
ラコサン酸リチウム、ペンタコサン酸リチウム、ヘキサ
コサン酸リチウム、ヘプタコサン酸リチウム、オクタコ
サン酸リチウム、ノナコサン酸リチウム、トリアコサン
酸リチウム、ヘントリアコンタン酸リチウム、ドトリア
コンタン酸リチウム、トリトリアコンタン酸リチウム、
テトラトリアコンタン酸リチウム、ペンタトリアコンタ
ン酸リチウム、へキサトリアコンタン酸リチウム、ヘプ
タトリアコンタン酸リチウム、オクタトリアコンタン酸
リチウム、ノナトリアコンタン酸リチウム、テトラコン
タン酸リチウム、ヘンテトラコンタン酸リチウム、ドテ
トラコンタン酸リチウム、トリテトラコンタン酸リチウ
ム、テトラテトラコンタン酸リチウム、ペンタテトラコ
ンタン酸リチウム、ヘキサテトラコンタン酸リチウム、
ヘプタテトラコンタン酸リチウム、オクタテトラコンタ
ン酸リチウム、ノナテトラコンタン酸リチウム、ペンタ
コンタン酸リチウム、ヘンペンタコンタン酸リチウム、
ドペンタコンタン酸リチウム、トリペンタコンタン酸リ
チウム、テトラペンタコンタン酸リチウム、ペンタペン
タコンタン酸リチウム、ヘキサペンタコンタン酸リチウ
ム、ヘプタペンタコンタン酸リチウム、オクタペンタコ
ンタン酸リチウム、ノナペンタコンタン酸リチウム、ヘ
キサコンタン酸リチウム、ドヘキサコンタン酸リチウ
ム、デセン酸リチウム、ウンデセン酸リチウム、ドデセ
ン酸リチウム、トリデセン酸リチウム、テトラデセン酸
リチウム、ペンタデセン酸リチウム、ヘキサデセン酸リ
チウム、ヘプタデセン酸リチウム、オクタデセン酸リチ
ウム、ノナデセン酸リチウム、エイコセン酸リチウム、
ヘンエイコセン酸リチウム、ドコセン酸リチウム、トリ
コセン酸リチウム、テトラコセン酸リチウム、ペンタコ
セン酸リチウム、ヘキサコセン酸リチウム、ヘプタコセ
ン酸リチウム、オクタコセン酸リチウム、ノナコセン酸
リチウム、シュウ酸リチウム、マロン酸リチウム、コハ
ク酸リチウム、グルタル酸リチウム、アジピン酸リチウ
ム、ピメリン酸リチウム、スベリン酸リチウム、アゼラ
イン酸リチウム、セバシン酸リチウムおよびこれらの誘
導体等であり、これらの1種の単独使用のみならず2種
以上の混合使用も好ましい。
【0023】また、この発明の第1の実施形態のニオブ
酸リチウム膜の製造方法を実施するにあたり、有機酸リ
チウムを、不飽和カルボン酸リチウムとするのが好まし
い。
【0024】不飽和カルボン酸リチウムは、アルコキシ
ニオブとの相溶性に優れており、また、この不飽和カル
ボン酸リチウムを使用することにより、屈折率やSHG
位相整合定数について、より均一な特性を有するニオブ
酸リチウム膜を得ることができるためである。
【0025】不飽和カルボン酸リチウムの好ましい具体
例としては、アクリル酸リチウム、プロピオール酸リチ
ウム、メタクリル酸リチウム、クロトン酸リチウム、イ
ソクロトン酸リチウム、オレイン酸リチウム、フマル酸
リチウム、マレイン酸リチウムおよびこれらの誘導体等
であり、これらのうち1種の単独使用のみならず2種以
上の混合使用も好ましい。
【0026】また、この発明の第1の実施形態のニオブ
酸リチウム膜の製造方法を実施するにあたり、有機酸リ
チウムを、芳香族カルボン酸リチウムとするのが好まし
い。
【0027】芳香族カルボン酸リチウムは、それ自体耐
熱性に優れており、また、この芳香族カルボン酸リチウ
ムを使用することにより、より化学的安定性に優れ、屈
折率やSHG位相整合定数について均一な特性を有する
ニオブ酸リチウム膜を得ることができるためである。
【0028】芳香族カルボン酸リチウムの好ましい具体
例としては、安息香酸リチウム、トルイル酸リチウム、
ナフトエ酸リチウム、サリチル酸リチウム、アントラニ
ル酸リチウム、ケイ皮酸リチウム、マンデル酸リチウム
およびこれらの誘導体等があり、これらのうち1種の単
独使用のみならず2種以上の混合使用も好ましい。
【0029】なお、この発明の第1の実施形態のニオブ
酸リチウム膜の製造方法によれば(後述する第2の実施
形態のニオブ酸リチウム膜の製造方法にも該当す
る。)、上述した有機酸リチウムと反応させるアルコキ
シニオブ(アルコキシニオブキレート化合物を作成する
ためのアルコキシニオブも含む。)については、Nb
(OR15 (R1 は、アルキル基を示す。)で表され
るものであれば特に限定されるものではなく、以下に示
すような種々のものが使用可能である。
【0030】アルコキシニオブの好ましい具体例として
は、ペンタメトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペ
ンタプロポキシニオブ、ペンタブトキシニオブ、ペンタ
ペントキシニオブ、ペンタヘキサキシニオブ、ペンタヘ
プトキシニオブ、ペンタオクトキシニオブ、ペンタノナ
キシニオブ、ペンタデコキシニオブ、1−メトキシ−4
−エトキシニオブ、2−メトキシ−3−エトキシニオ
ブ、3−メトキシ−2−エトキシニオブ、4−メトキシ
−1−エトキシニオブおよびこれらの誘導体等であり、
これらのうち1種の単独使用のみならず2種以上の混合
使用も好ましい。
【0031】そして、この発明の第1の実施形態のニオ
ブ酸リチウム膜の製造方法によれば(後述する第2の実
施形態のニオブ酸リチウム膜の製造方法にも該当す
る。)、アルコキシニオブが、ペンタメトキシニオブお
よびペンタエトキシニオブの双方あるいはいずれか一方
であることが好ましい。ペンタメトキシニオブまたはペ
ンタエトキシニオブは、アルコキシニオブの中でも、特
に反応性が高く、より確実に脱エステル化反応が行える
ためである。
【0032】また、この発明の第1の実施形態のニオブ
酸リチウム膜の製造方法によれば、脱エステル化反応
を、温度15〜40℃および0.1〜100時間の条件
で行うのが好ましい。
【0033】このような温度範囲で脱エステル化反応を
行えば、副反応が生じるおそれがなく、確実に有機酸リ
チウムと、アルコキシニオブ(アルコキシニオブキレー
ト化合物)とを反応させることができるためである。ま
た、このような脱エステル化反応の温度条件であれば、
沸点の低い溶媒を用いることができる点でも好ましい。
【0034】また、このような時間範囲で脱エステル化
反応を行えば、全体としての製造時間が著しく長くなる
ことはなく、さらにまた、有機酸リチウムと、アルコキ
シニオブ(アルコキシニオブキレート化合物)とを確実
に反応させて、脱エステル化反応を生じさせることがで
きるためである。
【0035】したがって、製造時間と、有機酸リチウム
およびアルコキシニオブ(アルコキシニオブキレート化
合物)の反応性のバランスがより良好な観点から、脱エ
ステル化反応を温度20〜30℃、1〜50時間の条件
で行うことがより好ましい。
【0036】また、この発明の第1の実施形態のニオブ
酸リチウム膜の製造方法によれば、脱エステル化反応
を、アルコール中で行うことが好ましい。
【0037】このようにアルコール中で有機酸リチウム
およびアルコキシニオブ(アルコキシニオブキレート化
合物)の脱エステル化反応を行うことにより、反応系を
適当な粘度に調整することができ、より確実にこれらの
反応成分を反応させることができるためである。
【0038】また、このようにアルコール中で脱エステ
ル化反応を行うと、この脱エステル化反応の生成物であ
るエステル化合物を、かかるアルコール中に溶解または
均一分散させることができる。したがって、アルコール
中で有機酸リチウムおよびアルコキシニオブ(アルコキ
シニオブキレート化合物)の脱エステル化反応がより進
みやすいという利点もある。
【0039】また、この発明の第2の実施形態のニオブ
酸リチウム膜の製造方法によれば、少なくとも、アルコ
キシリチウムと、アルコキシニオブと、エタノールアミ
ン系化合物とを反応させて、ニオブ酸リチウムの前駆体
を作成する工程と、このニオブ酸リチウムの前駆体を下
地に積層した後、加熱して、ニオブ酸リチウムの前駆体
からニオブ酸リチウム膜を作成する工程とを含むことを
特徴とする。
【0040】このように反応させると脱エステル化反応
を用いないで水(アルコール)に対する溶解性や安定性
に優れたニオブ酸リチウムの前駆体を作成することがで
きる。また、このように反応させると、水(アルコー
ル)中でのニオブ酸リチウムの前駆体の濃度を高めるこ
とができ、一定厚さのニオブ酸リチウム膜を形成する上
で、ニオブ酸リチウムの前駆体溶液における数十回もの
重ね塗りを必要とせずに、比較的厚膜のニオブ酸リチウ
ム膜を得ることができる。
【0041】なお、アルコキシニオブ(Nb(OR1
5 、R1 はアルキル基を表す。)とエタノールアミン系
化合物(N(C24 OH)(R22 、R2 はアルキ
ル基またはアルコール基を表す。)とのアルコール交換
反応は、第1の実施形態で説明したように、式(1)で
表される。
【0042】 Nb(OR15 +N(C24 OH)(R22 ⇒ Nb(OR14 N(R2224 O+C25 OH (1) また、アルコキシリチウム(R4 −O−Li、R4 はア
ルキル基を表す。)と、アルコキシニオブキレート化合
物(Nb(OR14 N(R2224 O)との脱
水縮合反応は、以下の式(3)で表される。
【0043】 R4 −O−Li+(Nb(OR14 N(R2224 O)+2H2 O ⇒ Li−O−Nb(OR13 N(R2224 O+R4 OH+R1 OH +H2 O (3) そして、この発明の第2の実施形態のニオブ酸リチウム
膜の製造方法を実施するにあたり、アルコキシリチウム
(R4 −O−Li、R4 はアルキル基を表す。)の種類
も特に問わないが、例えば、メトキシリチウム、エトキ
シリチウム、プロポキシリチウム、ブトキシリチウム、
ヘプトキシリチウム等が好ましい。これらのアルコキシ
リチウムがアルコキシニオブキレート化合物と脱水縮合
反応をして発生させるアルコ−ルは比較的低沸点であ
り、除去することが容易なためである。なお、これらの
アルコキシリチウムの使用は一種類に限らず、二種以上
を混合して使用しても良い。
【0044】また、この発明の第2の実施形態のニオブ
酸リチウム膜の製造方法を実施するにあたり、アルコキ
シニオブとエタノールアミン系化合物とを予め反応させ
るのが好ましい。
【0045】このようにアルコキシニオブとエタノール
アミン系化合物とを予め反応させると、第1の実施形態
において既に説明したように、アルコール交換反応によ
り、より確実にアルコキシニオブキレート化合物が生じ
やすい。そして、作成されたアルコキシニオブキレート
化合物とアルコキシリチウムとは脱水重縮合反応により
反応して、ニオブ酸リチウムの前駆体を作成することが
できる。よって、ニオブ酸リチウムの前駆体の濃度をよ
り確実に高めることができる。
【0046】また、この発明の第2の実施形態のニオブ
酸リチウム膜の製造方法を実施するにあたり、エタノー
ルアミン系化合物が、トリエタノールアミンであるのが
好ましい。
【0047】第1の実施形態において既に説明したよう
に、トリエタノールアミンは、アルコキシニオブとより
容易にアルコール交換反応しやすい上に、入手が容易で
あるためである。
【0048】また、この発明のニオブ酸リチウム膜の第
1および第2の実施形態のニオブ酸リチウム膜の製造方
法を実施するにあたり、ニオブ酸リチウムの前駆体の濃
度を、0.5〜5.0mol/リットルの範囲内の値に
調整する工程を含むのが好ましい。
【0049】このような範囲にニオブ酸リチウムの前駆
体の濃度を調整すると、一定の厚さのニオブ酸リチウム
膜を作成することができ、また、例えば、粘度との関係
で、下地上にかかる前駆体を積層する際に、均一な厚さ
のニオブ酸リチウム膜を作成することができる点で好ま
しい。
【0050】したがって、ニオブ酸リチウム膜の厚さ
と、膜の均一性とのバランスがより良好な観点から、ニ
オブ酸リチウムの前駆体の濃度を、0.8〜2.0mo
l/リットルの範囲内の値とするのがさらに良い。
【0051】また、この発明のニオブ酸リチウム膜の第
1および第2の実施形態のニオブ酸リチウム膜の製造方
法を実施するにあたり、下地上に積層されたニオブ酸リ
チウムの前駆体を、第1の温度と、第2の温度との、2
段階の温度で加熱し、かつ第2の温度を、第1の温度よ
りも高くしてあるのが好ましい。
【0052】このように2段階で加熱することにより、
アルコールやエステル化合物等の低沸点化合物を、まず
最初の第1の温度で効率的に飛散させる(除去する)こ
とができ、次に、第2の温度で、ニオブ酸リチウム以外
の高沸点化合物、例えば、ニオブ酸リチウムの前駆体に
おけるアルコキシ基に起因した炭素化合物等を効率的に
飛散させる(除去する)ことができる。すなわち、一段
階の加熱で、低沸点化合物および高沸点化合物を飛散さ
せようとすると、低沸点化合物が発泡して、均一なニオ
ブ酸リチウム膜が作成されないおそれがあるためであ
る。
【0053】また、この発明のニオブ酸リチウム膜の第
1および第2の実施形態のニオブ酸リチウム膜の製造方
法を実施するにあたり、ニオブ酸リチウムの前駆体を、
第1の温度として50〜250℃の範囲内で加熱するの
が好ましい。
【0054】このような範囲に第1の温度を制御する
と、アルコールやエステル化合物等の低沸点化合物を効
率的に飛散させる(除去する)ことができ、また、かか
る低沸点化合物が発泡するおそれも少ないためである。
なお、第1の温度の加熱時間としては、特に限定される
ものではないが、低沸点化合物を十分に飛散させ、ま
た、工程時間が著しく長くならないことから、1〜12
0分の範囲内が好ましい。
【0055】また、この発明のニオブ酸リチウム膜の第
1および第2の実施形態のニオブ酸リチウム膜の製造方
法を実施するにあたり、ニオブ酸リチウムの前駆体を、
第2の温度として、300〜500℃の範囲内で加熱す
るのが好ましい。
【0056】このように第2の温度範囲を制御すると、
ニオブ酸リチウム以外の高沸点化合物を効率的に飛散さ
せる(除去する)ことができ、また、均一なニオブ酸リ
チウム膜を作成することができるためである。なお、第
2の温度の加熱時間としては、特に限定されるものでは
ないが、高沸点化合物を十分に飛散させ、また、工程時
間が著しく長くならないことから、1〜120分の範囲
内が好ましい。
【0057】また、この発明のニオブ酸リチウム膜の第
1および第2の実施形態のニオブ酸リチウム膜の製造方
法を実施するにあたり、ニオブ酸リチウムを結晶化する
工程を含むのが好ましい。
【0058】このようにニオブ酸リチウムを結晶化する
と、より緻密で、クラックやホ−ルのないニオブ酸リチ
ウム膜が得られるためである。
【0059】また、この発明のニオブ酸リチウム膜の第
1および第2の実施形態のニオブ酸リチウム膜の製造方
法を実施するにあたり、ニオブ酸リチウムを結晶化する
結晶化工程の温度(結晶化温度)を500〜1000℃
の範囲内の値とするのが好ましい。
【0060】ニオブ酸リチウムの結晶化温度を、このよ
うな範囲に制御すると、ニオブ酸リチウムを効率的に結
晶化およびアニールすることができるとともに、簡易な
加熱手段を用いることができるためである。したがっ
て、ニオブ酸リチウムに対して、さらに効率的に結晶化
およびアニールすることができるとともに、より簡易な
加熱手段を用いることができることより、ニオブ酸リチ
ウムの結晶化温度を600〜800℃の範囲内の値とす
るのが良い。
【0061】また、この発明のニオブ酸リチウム膜の第
1および第2の実施形態のニオブ酸リチウム膜の製造方
法を実施するにあたり、ニオブ酸リチウムを結晶化する
結晶化工程を、酸素雰囲気中で行うのが好ましい。
【0062】このように、結晶化工程を、酸素雰囲気中
で行うと、ニオブ酸リチウムを結晶化するとともに、ア
ニール処理を施すことができ、より緻密で、耐久性が高
いニオブ酸リチウム膜が得られるためである。
【0063】また、この発明のニオブ酸リチウム膜の第
1および第2の実施形態のニオブ酸リチウム膜の製造方
法を実施するにあたり、下地が、サファイヤ(α−Al
23 )基板、シリコン基板、ニオブ酸リチウム基板お
よびタンタル酸リチウム基板からなる群から選択された
いずれか一つの基板とするのが好ましい。
【0064】これらの基板は、一定の耐熱性を有してお
り、また、ニオブ酸リチウム膜と高い密着力を示す点で
好ましい。さらに、これらの基板表面は、エッチング直
後には比較的荒れて、一定の凹凸を表面に有しているも
のの、ニオブ酸リチウム膜が、これらの基板表面の凹凸
を容易に埋めて、極めて均一な基板表面とすることがで
きる点でも好ましい。
【0065】特に、サファイア(α−Al23 )基
板、シリコン基板およびニオブ酸リチウム基板は、ニオ
ブ酸リチウム膜との密着力に優れている点で、この発明
の下地として好ましい。
【0066】また、この発明のニオブ酸リチウム膜の第
1および第2の実施形態のニオブ酸リチウム膜の製造方
法を実施するにあたり、ニオブ酸リチウム膜の厚さを
0.1〜1000μmの範囲内の値とするのが好まし
い。
【0067】ニオブ酸リチウム膜の厚さをこのような範
囲に制御することにより、より緻密で、クラックやホ−
ルのないニオブ酸リチウム膜が得られ、したがって、ニ
オブ酸リチウム膜は、より均一な屈折率やSHG位相整
合定数の特性を得ることができる。また、ニオブ酸リチ
ウム膜の厚さがこのような範囲でれば、例えば、下地と
してサファイア基板またはシリコン基板等を用いたとし
ても、これらの基板表面の凹凸を埋めて、極めて均一な
基板表面とすることもできる。
【0068】
【発明の実施の形態】この発明のニオブ酸リチウム膜の
製造方法の実施の形態を、以下に記載する実施例に基づ
いてさらに詳細に説明する。但し、言うまでもないが、
この発明の範囲は特に理由なく、以下に示す実施例の記
載に何ら限定されるものではない。
【0069】(実施例1) A.ニオブ酸リチウム膜の作成 まず、有機酸リチウムとして飽和カルボン酸リチウムを
用いて、以下に示す方法でニオブ酸リチウム膜を作成し
た。
【0070】(1)有機酸リチウムとして、飽和カルボ
ン酸リチウムである酢酸リチウムを用い、アルコキシニ
オブとして、ペンタエトキシニオブを用い、エタノール
アミン系化合物としてトリエタノールアミンを用い、そ
れぞれを1モルずつエタノール中に溶解させ、エタノー
ル溶液とした。
【0071】(2)この酢酸リチウム、ペンタエトキシ
ニオブおよびトリエタノールアミンを溶解させたエタノ
ール溶液を還流装置を用いて、温度23℃、24時間の
条件で還流させた。そして、このエタノール溶液を還流
させている間に、まず、ペンタエトキシニオブおよびト
リエタノールアミンを上記式(1)に準じてアルコール
交換反応させてエトキシニオブキレート化合物を作成し
た。そして、式(4)に示すように、このエトキシニオ
ブキレート化合物と酢酸リチウムとを反応させ、脱エス
テル化反応を行い、ニオブ酸リチウムの前駆体を作成し
た。
【0072】 Li(CH3 COO)+Nb(OC255 +N(C24 OH)3 ⇒ Li(CH3 COO)+Nb(OC254 N(C24 OH)22 4 O+C25 OH ⇒ Li−O−Nb(OC253 N(C24 OH)224 O+C2 5 OH+CH3 COOC25 (4) また、還流中、脱エステル化反応の生成物である酢酸エ
チルの生成量をFT−IR(フーリエ変換型赤外分光光
度計)によりモニタし、酢酸エチルの生成量が所定の値
となったことにより、酢酸リチウムおよびエトキシニオ
ブキレート化合物の脱エステル化反応が終了したことを
確認した。
【0073】なお、エタノール溶液中に、未反応の酢酸
リチウム、ペンタエトキシニオブおよびトリエタノール
アミンが一部残留していた場合にも、精製操作により、
これらの未反応物を簡単に取り除くことができる。
【0074】(3)エタノール溶液の還流を止めた後、
このニオブ酸リチウムの前駆体を含むエタノール溶液の
濃度が、1.0mol/リットルになるように、エタノ
ールを希釈剤として別途添加した。なお、かかるエタノ
ール溶液の濃度は、蒸発乾固法により容易に求めること
ができる。
【0075】ここで、ペンタエトキシニオブおよびトリ
エタノールアミンをアルコール交換反応させて作成した
エトキシニオブキレート化合物と酢酸リチウムとを反応
(脱エステル化反応)させて作成したニオブ酸リチウム
の前駆体が、なぜ水(アルコール)に対して安定で、か
つこのニオブ酸リチウムの前駆体の濃度をこのように高
くする(例えば、1.0mol/リットル)ことができ
るのかは必ずしも明確でないが、次のように推定するこ
とができる。
【0076】すなわち、トリエタノールアミンは、β位
に電気的に陰性な窒素原子を有しているため酸性度が高
い。そのため、ペンタエトキシニオブおよびトリエタノ
ールアミンのアルコール交換反応が容易に起こりやす
い。そして、このアルコール交換反応が起こると、窒素
原子はNb原子に容易に配位して、エトキシニオブキレ
ート化合物を作成しやすい。したがって、このエトキシ
ニオブキレート化合物が作成されることにより、疎水性
のエトキシ基の量が少なくなり、このエトキシニオブキ
レート化合物の水(アルコール)に対する溶解性や安定
性が向上するためと考えられる。また、トリエタノール
アミンは本来親水性であり、疎水性のペンタエトキシニ
オブと配位してエトキシニオブキレート化合物を作成す
ることにより、このペンタエトキシニオブの疎水性を、
少なからず親水性に近づけているためと考えられる。
【0077】一方、エトキシニオブキレート化合物にお
いて、窒素原子とNb原子とは強固に配位しており、嵩
高い窒素原子がNb原子に配位しているため、立体配置
の関係でNb原子に元々付いているエトキシ基自身は反
応しやすくなっていると考えられる。よって、エトキシ
ニオブキレート化合物と酢酸リチウムとの反応(脱エス
テル化反応)性も低下するおそれも少ないと考えられて
いる。実際、トリエタノールアミンを添加しない場合
と、添加した場合とで、上述した還流装置における還流
条件(温度23℃、24時間)は、全く変わっていな
い。
【0078】(4)この濃度調整されたエタノール溶液
を、スピンコータを用いて、直径3インチ(1インチは
2.54cm、以下同様である。)のサファイヤ基板上
に、約2.5μmの厚さに積層(塗布)した。
【0079】(5)そして、オーブン中、150℃(第
1の温度)、30分の条件で、ニオブ酸リチウムの前駆
体を含むエタノール溶液が積層されたサファイヤ基板を
加熱し、エタノールや酢酸エチルの低沸点化合物を十分
に飛散させて除去した。
【0080】(6)それから、同様に、オーブン中、4
50℃(第2の温度)、30分の条件で、ニオブ酸リチ
ウムの前駆体を含むエタノール溶液が積層されたサファ
イヤ基板を加熱し、ニオブ酸リチウム以外の高沸点化合
物、すなわちニオブ酸リチウムの前駆体におけるアルコ
キシ基に起因した炭素化合物等を十分に飛散させ除去し
た。
【0081】(7)そして、上記(4)〜(6)の操作
を5回繰り返し、ニオブ酸リチウム膜が積層されたサフ
ァイヤ基板を得た。
【0082】(8)それから、高温炉(マッフル炉)
中、酸素雰囲気中、700℃、30分の条件で、このニ
オブ酸リチウム膜が積層されたサファイヤ基板をさらに
加熱し、ニオブ酸リチウム膜を結晶化するとともに、か
かる膜に対してアニール処理を施した。
【0083】なお、最終的に得られたニオブ酸リチウム
膜の厚さは1μmであった。また、かかるニオブ酸リチ
ウム膜に対してX線回析測定を行ったところ、組成式L
iNbO3 で表されるニオブ酸リチウム(C軸配向)で
あることが確認された。
【0084】B.ニオブ酸リチウム膜の光導波路におけ
る光伝搬損失の測定 次に、上記製造方法に準じて得られたニオブ酸リチウム
膜に、図1(A)〜(D)に示すように光導波路を作成
し、かかる光導波路における光伝搬損失を測定した。す
なわち、ニオブ酸リチウム膜上に、以下のようにして光
導波路を作成した。
【0085】(A)厚さ500μmのサファイヤ基板1
0を用意した。
【0086】(B)次に、サファイヤ基板10上に、上
述した(1)〜(8)に記載の製造方法に基づいて、ニ
オブ酸リチウム膜12を作成した。なお、この例では、
ニオブ酸リチウム膜12の厚さを、一例として、1μm
としてある。
【0087】(C)次に、サファイヤ基板10上におけ
るニオブ酸リチウム膜12の上に、チタン(Ti)パタ
ーン14を(フォトリソグラフィ法)を用いて、パター
ニング形成した。
【0088】(D)そして、チタンパターン14が形成
されたニオブ酸リチウム膜12を有するサファイヤ基板
10を、熱拡散炉(図示せず)に入れた。それから、酸
素雰囲気下、1000℃、8時間の条件で、チタンパタ
ーン14をニオブ酸リチウム膜12内に拡散させ、断面
が半円形の光導波路16を形成した。
【0089】なお、上記製造方法により得られた光導波
路における光伝搬損失は、以下のように測定することが
できる。すなわち、長さを変えた光導波路を2種類用意
し、それぞれの光導波路内に、例えば波長1.53μm
のTMモード光を導波させ、光導波路における光出力
を、それぞれパワーメータを用いて測定する。それか
ら、光導波路における光伝搬損失を、長さを変えた光導
波路におけるそれぞれの光出力の差として算出すること
ができる。
【0090】そして、実際に測定した光導波路における
光伝搬損失は、約0.8dB/cmとなり、市販のニオ
ブ酸リチウム基板を用いた場合の光導波路における光伝
搬損失である0.5〜1.0dB/cmの値と同等の特
性を有していることが確認された。
【0091】また、実施例1の製造方法で作られたニオ
ブ酸リチウム膜について、屈折率をプリズムカプラを用
いて測定することができ、さらにSHG位相整合定数に
ついても、スペクトロアナライザとパワーメータとを組
み合わせて測定することができる。
【0092】この発明における実施例1の製造方法で作
られたニオブ酸リチウム膜は、酢酸リチウムおよびペン
タエトキシニオブを実質的に等モルで正確に反応させて
作成することができるため、均一な屈折率やSHG位相
整合定数の光学特性を有しているものと推定される。
【0093】(実施例2) A.ニオブ酸リチウム膜の作成 実施例1における酢酸リチウムの代わりに、アクリル酸
リチウムを用いた以外は、実施例1と同様に、ニオブ酸
リチウム膜を作成した。なお、実施例2において、実施
例1と同様の操作や手順については、既に説明してある
ため適宜省略する。
【0094】すなわち、有機酸リチウムとして、不飽和
カルボン酸リチウムであるアクリル酸リチウムを用い、
アルコキシニオブとしては、実施例1と同様にペンタエ
トキシニオブを用い、エタノールアミン系化合物として
トリエタノールアミンを用い、それぞれを、1モルずつ
エタノール中に溶解させ、アクリル酸リチウム、ペンタ
エトキシニオブおよびトリエタノールアミンを含むエタ
ノール溶液とした。
【0095】そして、このアクリル酸リチウム、ペンタ
エトキシニオブおよびトリエタノールアミンを溶解させ
たエタノール溶液を還流装置を用いて、実施例1と同様
に、温度23℃、24時間の条件で還流させた。そし
て、このエタノール溶液を還流させている間に、まず、
ペンタエトキシニオブおよびトリエタノールアミンを上
記式(1)に準じてアルコール交換反応させてエトキシ
ニオブキレート化合物を作成した。そして、このエトキ
シニオブキレート化合物とアクリル酸リチウムとを反応
させて式(5)に示すように脱エステル化反応を行い、
ニオブ酸リチウムの前駆体を作成した。
【0096】 Li(CH2 CH3 COO)+Nb(OC255 +N(C24 OH)3 ⇒ Li(CH2 CH3 COO)+Nb(OC254 N(C24 OH)224 O+C25 OH ⇒ Li−O−Nb(OC253 N(C24 OH)224 O+C2 5 OH+CH2 CH3 COOC25 (5) それから、スピンコータを用いて、直径6インチのサフ
ァイヤ基板上に、実施例1と同様に濃度調整されたエタ
ノール溶液を、約2.5μmの厚さに積層(塗布)し
た。
【0097】そして、オーブン中、150℃(第1の温
度)、30分の条件および、450℃(第2の温度)、
30分の条件で、ニオブ酸リチウムの前駆体を含むエタ
ノール溶液が積層されたサファイヤ基板を加熱し、さら
には、濃度調整されたエタノール溶液の積層(塗布)お
よび加熱を、4回繰り返した。
【0098】それから、実施例1と同様に、高温炉(マ
ッフル炉)中、酸素雰囲気下、700℃、30分の条件
で、このニオブ酸リチウム膜が積層されたサファイヤ基
板をさらに加熱し、ニオブ酸リチウム膜を結晶化すると
ともに、かかる膜に対してアニール処理を施した。
【0099】なお、最終的に得られたニオブ酸リチウム
膜の厚さは1μmであった。また、かかるニオブ酸リチ
ウム膜に対してX線回析測定を行ったところ、組成式L
iNbO3 で表されるニオブ酸リチウム(C軸配向)で
あることが確認された。
【0100】B.ニオブ酸リチウム膜の光導波路におけ
る光伝搬損失の測定 次に、実施例1の場合と同様に、上記製造方法で得られ
たニオブ酸リチウム膜に対して光導波路を作成し、かか
る光導波路における光伝搬損失をそれぞれ測定した。な
お、実施例2における光導波路の作成方法や条件は、上
述した実施例1の場合と同様であるため、ここでは説明
を省略する。
【0101】そして、長さを変えた光導波路を2種類用
意し、それぞれの光導波路内に波長1.53μmのTM
モード光を導波させ、光導波路における光出力を、それ
ぞれパワーメータを用いて測定した。それから、光導波
路における光伝搬損失を、長さを変えた光導波路におけ
るそれぞれの光出力の差として算出した。
【0102】その結果、光導波路における光伝搬損失
は、実施例2の場合も、約1.0dB/cmとなり、市
販のニオブ酸リチウム基板を用いた場合の光導波路にお
ける光伝搬損失である0.5〜1.0dB/cmの値と
同等の特性を有していることが確認された。
【0103】また、実施例2の製造方法で作られたニオ
ブ酸リチウム膜についても、屈折率をプリズムカプラを
用いて測定することができ、さらにSHG位相整合定数
についても、スペクトロアナライザとパワーメータとを
組み合わせて測定することができる。
【0104】そして、この発明における実施例2の製造
方法で作られたニオブ酸リチウム膜は、アクリル酸リチ
ウムおよびペンタエトキシニオブをより均一に混合する
ことができ、また、実質的にこれらを等モルで正確に反
応させて作成することができるため、ニオブ酸リチウム
膜は、均一な屈折率やSHG位相整合定数の光学特性を
有しているものと推定される。
【0105】(実施例3)実施例1における酢酸リチウ
ムの代わりに、芳香族カルボン酸リチウムである安息香
酸リチウムを用いた以外は、実施例1と同様に、ニオブ
酸リチウム膜を作成した。なお、実施例3において、実
施例1と同様の操作や手順については、既に説明してあ
るため適宜省略する。
【0106】すなわち、有機酸リチウムとして、芳香族
カルボン酸リチウムである安息香酸リチウムを用い、ア
ルコキシニオブとして、ペンタエトキシニオブを用い、
エタノールアミン系化合物としてトリエタノールアミン
を用い、それぞれを、1モルずつエタノール中に溶解さ
せ、安息香酸リチウム、ペンタエトキシニオブおよびト
リエタノールアミンを含むエタノール溶液とした。
【0107】そして、これらの安息香酸リチウム、ペン
タエトキシニオブおよびエタノールアミンを溶解させた
エタノール溶液を還流装置を用いて、実施例1と同様
に、温度23℃、24時間の条件で還流させた。そし
て、このエタノール溶液を還流させている間に、まず、
ペンタエトキシニオブおよびトリエタノールアミンを上
記式(1)に準じてアルコール交換反応させてエトキシ
ニオブキレート化合物を作成した。そして、このエトキ
シニオブキレート化合物とアクリル酸リチウムとを反応
させて式(6)に示すように脱エステル化反応を行い、
ニオブ酸リチウムの前駆体を作成した。
【0108】 Li(C610COO)+Nb(OC255 +N(C24 OH)3 ⇒ Li(C610COO)+Nb(OC254 N(C24 OH)224 O+C25 OH ⇒ Li−O−Nb(OCH33 N(C24 OH)224 O+C25 OH+C610COOC25 (6) それから、スピンコータを用いて、直径3インチのサフ
ァイヤ基板上に、実施例1と同様に濃度調整されたエタ
ノール溶液を、約2.5μmの厚さに積層(塗布)し
た。
【0109】そして、オーブン中、150℃(第1の温
度)、30分の条件および、450℃(第2の温度)、
30分の条件で、ニオブ酸リチウムの前駆体を含むエタ
ノール溶液が積層されたサファイヤ基板を加熱し、さら
には、濃度調整されたエタノール溶液の積層(塗布)お
よび加熱を、4回繰り返した。
【0110】それから、さらに実施例1と同様に、高温
炉(マッフル炉)中、酸素雰囲気下、700℃、30分
の条件で、このニオブ酸リチウム膜が積層されたサファ
イヤ基板をさらに加熱し、ニオブ酸リチウム膜を結晶化
するとともに、かかる膜に対してアニール処理を施し
た。
【0111】なお、最終的に得られたニオブ酸リチウム
膜の厚さは約1μmであった。また、かかるニオブ酸リ
チウム膜に対してX線回析測定を行ったところ、組成式
LiNbO3 で表されるニオブ酸リチウム(C軸配向)
であることが確認された。
【0112】次に、上記製造方法で得られたニオブ酸リ
チウム膜に光導波路を作成し、かかる光導波路における
光伝搬損失を測定した。なお、実施例3における光導波
路の作成方法や条件は、上述した実施例1の場合と同様
であるため、ここでは説明を省略する。
【0113】そして、長さを変えた光導波路を2種類用
意し、それぞれの光導波路内に波長1.53μmのTM
モード光を導波させ、光導波路における光出力を、それ
ぞれパワーメータを用いて測定した。それから、光導波
路における光伝搬損失を、長さを変えた光導波路におけ
るそれぞれの光出力の差として算出した。
【0114】その結果、光導波路における光伝搬損失
は、実施例3の場合も、約1.0dB/cmとなり、市
販のニオブ酸リチウム基板を用いた場合の光導波路にお
ける光伝搬損失である0.5〜1.0dB/cmの値と
同等の特性を有していることが確認された。
【0115】また、実施例3の製造方法で作られたニオ
ブ酸リチウム膜についても、屈折率をプリズムカプラを
用いて測定することができ、さらにSHG位相整合定数
についても、スペクトロアナライザとパワーメータとを
組み合わせて測定することができる。
【0116】そして、この発明における実施例3の製造
方法で作られたニオブ酸リチウム膜は、安息香酸リチウ
ムおよびペンタエトキシニオブを実質的に等モルで正確
に反応させて作成することができるため、ニオブ酸リチ
ウム膜は、均一な屈折率やSHG位相整合定数の光学特
性を有しているものと推定される。
【0117】(実施例4) A.ニオブ酸リチウム膜の作成 まず、第2の実施形態の製造方法により、以下に示すと
おりニオブ酸リチウム膜を作成した。
【0118】(1)アルコキシリチウムとして、エトキ
シリチウムを用い、アルコキシニオブとして、ペンタエ
トキシニオブを用い、エタノールアミン系化合物として
トリエタノールアミンを用い、それぞれを1モルずつエ
タノール中に溶解させ、さらに所定量の水を添加してエ
タノール溶液とした。
【0119】(2)これらエトキシリチウム、ペンタエ
トキシニオブおよびトリエタノールアミンを溶解させた
エタノール溶液を還流装置を用いて、温度23℃、24
時間の条件で還流させた。そして、このエタノール溶液
を還流させている間に、まず、ペンタエトキシニオブお
よびトリエタノールアミンを上記式(1)に準じてアル
コール交換反応させてエトキシニオブキレート化合物を
作成した。そして、このエトキシニオブキレート化合物
とエトキシリチウムとを反応させ、式(7)に示すよう
に脱水縮合反応を行い、ニオブ酸リチウムの前駆体を作
成した。
【0120】 Li(OC25 )+Nb(OC255 +N(C24 OH)3 +2H 2 O ⇒ Li(OC25 )+Nb(OC254 N(C24 OH)224 O+C25 OH+2H2 O ⇒ Li−O−Nb(OC253 N(C24 OH)224 O +3C25 OH+H2 O (7) (3)エタノール溶液の還流を止めた後、このニオブ酸
リチウムの前駆体を含むエタノール溶液の濃度が、1.
0mol/リットルになるように、エタノールを希釈剤
として別途添加した。なお、かかるエタノール溶液の濃
度は、蒸発乾固法により容易に求めることができる。
【0121】ここで、第2の実施形態の製造方法におい
ても、ペンタエトキシニオブおよびトリエタノールアミ
ンをアルコール交換反応させて作成したエトキシニオブ
キレート化合物と、エトキシリチウムとを反応(脱水縮
合反応)させて作成したニオブ酸リチウムの前駆体が、
なぜ水(アルコール)に対して安定で、かつこのニオブ
酸リチウムの前駆体の濃度をこのように高くする(例え
ば、1.0mol/リットル)ことができるのかは必ず
しも明確でないが、第1の実施形態の場合と同様に推定
できる。
【0122】すなわち、トリエタノールアミンは、ペン
タエトキシニオブと容易にアルコール交換反応を起こ
し、エトキシニオブキレート化合物が作成されることに
より、疎水性のエトキシ基の量が少なくなり、したがっ
て、このエトキシニオブキレート化合物の水に対する溶
解性や安定性が向上するためと考えられる。また、トリ
エタノールアミンが配位することにより、ペンタエトキ
シニオブの疎水性を、少なからず親水性に近づけている
ためと考えられる。
【0123】一方、エトキシニオブキレート化合物にお
いて、窒素原子とNb原子とは強固に配位しており、嵩
高い窒素原子がNb原子に配位しているため、立体配置
の関係でNb原子に元々付いているエトキシ基自身は反
応しやすくなっていると考えられる。よって、エトキシ
ニオブキレート化合物とエトキシリチウムとの反応(脱
水縮合反応)性も低下するおそれも少ないと考えられて
いる。実際、トリエタノールアミンを添加しない場合
と、添加した場合とで、上述した還流装置における還流
条件(温度23℃、24時間)は、全く変わっていな
い。
【0124】(4)この濃度調整されたエタノール溶液
を、スピンコータを用いて、直径3インチのサファイヤ
基板上に、約2.5μmの厚さに積層(塗布)した。
【0125】(5)そして、オーブン中、150℃(第
1の温度)、30分の条件で、ニオブ酸リチウムの前駆
体を含むエタノール溶液が積層されたサファイヤ基板を
加熱し、エタノールや酢酸エチルの低沸点化合物を十分
に飛散させて除去した。
【0126】(6)それから、同様に、オーブン中、4
50℃(第2の温度)、30分の条件で、ニオブ酸リチ
ウムの前駆体を含むエタノール溶液が積層されたサファ
イヤ基板を加熱し、ニオブ酸リチウム以外の高沸点化合
物、すなわちニオブ酸リチウムの前駆体におけるアルコ
キシ基に起因した炭素化合物等を十分に飛散させ除去し
た。
【0127】(7)そして、上記(4)〜(6)の操作
を5回繰り返し、ニオブ酸リチウム膜が積層されたサフ
ァイヤ基板を得た。
【0128】(8)それから、高温炉(マッフル炉)
中、酸素雰囲気中、700℃、30分の条件で、このニ
オブ酸リチウム膜が積層されたサファイヤ基板をさらに
加熱し、ニオブ酸リチウム膜を結晶化するとともに、か
かる膜に対してアニール処理を施した。
【0129】なお、最終的に得られたニオブ酸リチウム
膜の厚さは1μmであった。また、かかるニオブ酸リチ
ウム膜に対してX線回析測定を行ったところ、組成式L
iNbO3 で表されるニオブ酸リチウム(C軸配向)で
あることが確認された。
【0130】B.ニオブ酸リチウム膜の光導波路におけ
る光伝搬損失の測定 次に、上記製造方法で得られたニオブ酸リチウム膜に光
導波路を作成し、かかる光導波路における光伝搬損失を
測定した。なお、実施例4における光導波路の作成方法
や条件は、上述した実施例1の場合と同様であるため、
ここでは説明を省略する。
【0131】そして、長さを変えた光導波路を2種類用
意し、それぞれの光導波路内に波長1.53μmのTM
モード光を導波させ、光導波路における光出力を、それ
ぞれパワーメータを用いて測定した。それから、光導波
路における光伝搬損失を、長さを変えた光導波路におけ
るそれぞれの光出力の差として算出した。
【0132】その結果、光導波路における光伝搬損失
は、実施例4の場合、約0.8dB/cmとなり、市販
のニオブ酸リチウム基板を用いた場合の光導波路におけ
る光伝搬損失である0.5〜1.0dB/cmの値と同
等の特性を有していることが確認された。
【0133】(比較例1)エトキシリチウムとペンタエ
トキシニオブのモル比が1:1となるように、エタノー
ル中に混合、溶解し、エタノール溶液とした。そして、
このエトキシリチウムとペンタエトキシニオブとを含む
エタノール溶液を、23℃、24時間の条件で還流を行
い、複合アルコキシドを作成した。なお、還流中に、エ
トキシリチウムおよびペンタエトキシニオブが加水分解
しないように、乾燥した窒素雰囲気下に還流を行った。
【0134】次に、還流後の複合アルコキシドを含むエ
タノール溶液に、エタノールに希釈した脱炭酸水を滴下
して、エトキシリチウムおよびペンタエトキシニオブの
部分的な加水分解を行った。すなわち、脱炭酸水を滴下
した複合アルコキシドを含むエタノール溶液に対して、
23℃、24時間の条件でさらに還流を行なった。但
し、エトキシリチウムおよびペンタエトキシニオブがど
の程度加水分解されたかは、FT−IR(フーリエ変換
型赤外分光光度計)を用いて、加水分解により生じる水
酸基のピークを測定しても正確に判断することはできな
かった。
【0135】この後、エタノールを一部蒸発させて、濃
度約0.2mol/リットルの、加水分解された複合ア
ルコキシド(エトキシリチウムとペンタエトキシニオ
ブ)、すなわちニオブ酸リチウムの前駆体を含むエタノ
ール溶液とした。
【0136】そして、このニオブ酸リチウムの前駆体を
含むエタノール溶液に、直径3インチのサファイヤ基板
を浸漬し、一定速度で引き上げ塗布を行い、このエタノ
ール溶液が付着したサファイヤ基板を乾燥(風乾)させ
た。それから、ニオブ酸リチウムの前駆体が積層された
サファイヤ基板を250℃で、酸素と水蒸気の混合雰囲
気中に90分間保持し、さらには、乾燥酸素中に60分
間保持した。そして、約30回、ニオブ酸リチウムの前
駆体を含むエタノール溶液への浸漬および加熱乾燥を繰
り返した。
【0137】その後、ニオブ酸リチウムの前駆体が積層
されたサファイヤ基板を500℃の温度で加熱し、ニオ
ブ酸リチウム膜をサファイヤ基板上に得た。なお、最終
的に得られたニオブ酸リチウム膜の厚さは約1μmであ
った。
【0138】そして、かかるニオブ酸リチウム膜に対し
てX線回析測定を行ったところ、組成式LiNbO3
表されるニオブ酸リチウム(C軸配向)のピークが、わ
ずかに観察された。
【0139】また、上記製造方法で得られたニオブ酸リ
チウム膜に、実施例1と同様に光導波路を作成し、かか
る光導波路における光伝搬損失を測定した。そして、長
さを変えた光導波路を2種類用意し、それぞれの光導波
路内に波長1.53μmのTMモード光を導波させ、光
導波路における光出力を、それぞれパワーメータを用い
て測定した。
【0140】その結果、比較例1における光導波路にお
ける光伝搬損失は、約1.0dB/cmであったが、こ
の光伝搬損失の値がばらつきやすいという傾向が見られ
た。
【0141】
【発明の効果】この発明の第1の実施形態のニオブ酸リ
チウム膜の製造方法によれば、少なくとも、有機酸リチ
ウムと、アルコキシニオブと、エタノールアミン系化合
物とを反応させてニオブ酸リチウムの前駆体を作成する
工程と、このニオブ酸リチウムの前駆体を下地に積層し
た後、加熱してニオブ酸リチウム膜を作成する工程とを
含むことにより、水(アルコール)に対する溶解性や安
定性に優れたニオブ酸リチウムの前駆体を作成し、この
ニオブ酸リチウムの前駆体溶液の濃度を高めることによ
り、一定厚さのニオブ酸リチウム膜を形成する上で、十
数回ものニオブ酸リチウムの前駆体溶液の重ね塗りを必
要としなくなった。
【0142】また、この発明の第2の実施形態のニオブ
酸リチウム膜の製造方法によれば、少なくとも、アルコ
キシリチウムと、アルコキシニオブと、エタノールアミ
ン系化合物とを反応させてニオブ酸リチウムの前駆体を
作成する工程と、このニオブ酸リチウムの前駆体を下地
に積層した後、加熱してニオブ酸リチウム膜を作成する
工程とを含むことにより、水(アルコール)に対する溶
解性や安定性に優れたニオブ酸リチウムの前駆体を作成
し、このニオブ酸リチウムの前駆体溶液の濃度を高める
ことにより、一定厚さのニオブ酸リチウム膜を形成する
上で、十数回もの重ね塗りを必要としなくなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】光導波路の作成工程を説明するための図であ
る。
【符号の説明】
10:サファイヤ基板 12:ニオブ酸リチウム膜 14:チタン(Ti)パターン 16:光導波路

Claims (30)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ニオブ酸リチウム膜の製造方法におい
    て、 少なくとも、有機酸リチウムと、アルコキシニオブと、
    エタノールアミン系化合物とを反応させて、ニオブ酸リ
    チウムの前駆体を作成する工程と、 該ニオブ酸リチウムの前駆体を下地に積層した後、加熱
    して、該ニオブ酸リチウムの前駆体からニオブ酸リチウ
    ム膜を作成する工程とを含むことを特徴とするニオブ酸
    リチウム膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のニオブ酸リチウム膜の
    製造方法において、前記アルコキシニオブと前記エタノ
    ールアミン系化合物とを予め反応させることを特徴とす
    るニオブ酸リチウム膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載のニオブ酸リチ
    ウム膜の製造方法において、前記エタノールアミン系化
    合物が、トリエタノールアミンであることを特徴とする
    ニオブ酸リチウム膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載のニ
    オブ酸リチウム膜の製造方法において、前記有機酸リチ
    ウムが、飽和カルボン酸リチウムであることを特徴とす
    るニオブ酸リチウム膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれか1項に記載のニ
    オブ酸リチウム膜の製造方法において、前記有機酸リチ
    ウムが、不飽和カルボン酸リチウムであることを特徴と
    するニオブ酸リチウム膜の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜3のいずれか1項に記載のニ
    オブ酸リチウム膜の製造方法において、前記有機酸リチ
    ウムが、芳香族カルボン酸リチウムであることを特徴と
    するニオブ酸リチウム膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項に記載のニ
    オブ酸リチウム膜の製造方法において、前記アルコキシ
    ニオブが、ペンタメトキシニオブおよびペンタエトキシ
    ニオブの双方あるいはいずれか一方であることを特徴と
    するニオブ酸リチウム膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項に記載のニ
    オブ酸リチウム膜の製造方法において、前記脱エステル
    化反応を温度15〜40℃および0.1〜100時間の
    条件で行うことを特徴とするニオブ酸リチウム膜の製造
    方法。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれか1項に記載のニ
    オブ酸リチウム膜の製造方法において、前記脱エステル
    化反応をアルコール中で行うことを特徴とするニオブ酸
    リチウム膜の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜9のいずれか1項に記載の
    ニオブ酸リチウム膜の製造方法において、前記ニオブ酸
    リチウムの前駆体の濃度を0.5〜5.0mol/リッ
    トルの範囲内の値に調整する工程を含むことを特徴とす
    るニオブ酸リチウム膜の製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のいずれか1項に記載
    のニオブ酸リチウム膜の製造方法において、前記下地上
    に積層されたニオブ酸リチウムの前駆体を、第1の温度
    と、第2の温度との、2段階の温度で加熱し、かつ該第
    2の温度を、該第1の温度よりも高くしてあることを特
    徴とするニオブ酸リチウム膜の製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項11に記載のニオブ酸リチウム
    膜の製造方法において、前記第1の温度を50〜250
    ℃の範囲内の値とすることを特徴とするニオブ酸リチウ
    ム膜の製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項11または12に記載のニオブ
    酸リチウム膜の製造方法において、前記第2の温度を3
    00〜500℃の範囲内の値とすることを特徴とするニ
    オブ酸リチウム膜の製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項1〜13のいずれか1項に記載
    のニオブ酸リチウム膜の製造方法において、前記ニオブ
    酸リチウムの結晶化工程を含むことを特徴とするニオブ
    酸リチウム膜の製造方法。
  15. 【請求項15】 請求項14に記載のニオブ酸リチウム
    膜の製造方法において、前記結晶化工程の温度を500
    〜1000℃の範囲内の値とすることを特徴とするニオ
    ブ酸リチウム膜の製造方法。
  16. 【請求項16】 請求項14または15に記載のニオブ
    酸リチウム膜の製造方法において、前記結晶化工程を酸
    素雰囲気中で行うことを特徴とするニオブ酸リチウム膜
    の製造方法。
  17. 【請求項17】 請求項1〜16のいずれか1項に記載
    のニオブ酸リチウム膜の製造方法において、前記下地
    が、サファイア(α−Al23 )基板、シリコン基
    板、ニオブ酸リチウム基板およびタンタル酸リチウム基
    板からなる群から選択されたいずれか一つであることを
    特徴とするニオブ酸リチウム膜の製造方法。
  18. 【請求項18】 請求項1〜17のいずれか1項に記載
    のニオブ酸リチウム膜の製造方法において、前記ニオブ
    酸リチウム膜の厚さを0.1〜1000μmの範囲内の
    値であることを特徴とするニオブ酸リチウム膜の製造方
    法。
  19. 【請求項19】 ニオブ酸リチウム膜の製造方法におい
    て、 少なくとも、アルコキシリチウムと、アルコキシニオブ
    と、エタノールアミン系化合物とを反応させて、ニオブ
    酸リチウムの前駆体を作成する工程と、 該ニオブ酸リチウムの前駆体を下地に積層した後、加熱
    して、該ニオブ酸リチウムの前駆体からニオブ酸リチウ
    ム膜を作成する工程とを含むことを特徴とするニオブ酸
    リチウム膜の製造方法。
  20. 【請求項20】 請求項19に記載のニオブ酸リチウム
    膜の製造方法において、前記アルコキシニオブと前記エ
    タノールアミン系化合物とを予め反応させることを特徴
    とするニオブ酸リチウム膜の製造方法。
  21. 【請求項21】 請求項19または20に記載のニオブ
    酸リチウム膜の製造方法において、前記エタノールアミ
    ン系化合物が、トリエタノールアミンであることを特徴
    とするニオブ酸リチウム膜の製造方法。
  22. 【請求項22】 請求項19〜21のいずれか1項に記
    載のニオブ酸リチウム膜の製造方法において、前記ニオ
    ブ酸リチウムの前駆体の濃度を0.5〜5.0mol/
    リットルの範囲内の値に調整する工程を含むことを特徴
    とするニオブ酸リチウム膜の製造方法。
  23. 【請求項23】 請求項19〜22のいずれか1項に記
    載のニオブ酸リチウム膜の製造方法において、前記下地
    上に積層されたニオブ酸リチウムの前駆体を、第1の温
    度と、第2の温度との、2段階の温度で加熱し、かつ該
    第2の温度を、該第1の温度よりも高くしてあることを
    特徴とするニオブ酸リチウム膜の製造方法。
  24. 【請求項24】 請求項23に記載のニオブ酸リチウム
    膜の製造方法において、前記第1の温度を50〜250
    ℃の範囲内の値とすることを特徴とするニオブ酸リチウ
    ム膜の製造方法。
  25. 【請求項25】 請求項23または24に記載のニオブ
    酸リチウム膜の製造方法において、前記第2の温度を3
    00〜500℃の範囲内の値とすることを特徴とするニ
    オブ酸リチウム膜の製造方法。
  26. 【請求項26】 請求項19〜25のいずれか1項に記
    載のニオブ酸リチウム膜の製造方法において、前記ニオ
    ブ酸リチウムの結晶化工程を含むことを特徴とするニオ
    ブ酸リチウム膜の製造方法。
  27. 【請求項27】 請求項26に記載のニオブ酸リチウム
    膜の製造方法において、前記結晶化工程の温度を500
    〜1000℃の範囲内の値とすることを特徴とするニオ
    ブ酸リチウム膜の製造方法。
  28. 【請求項28】 請求項26または27に記載のニオブ
    酸リチウム膜の製造方法において、前記結晶化工程を酸
    素雰囲気中で行うことを特徴とするニオブ酸リチウム膜
    の製造方法。
  29. 【請求項29】 請求項19〜28のいずれか1項に記
    載のニオブ酸リチウム膜の製造方法において、前記下地
    が、サファイア(α−Al23 )基板、シリコン基
    板、ニオブ酸リチウム基板およびタンタル酸リチウム基
    板からなる群から選択されたいずれか一つであることを
    特徴とするニオブ酸リチウム膜の製造方法。
  30. 【請求項30】 請求項19〜29のいずれか1項に記
    載のニオブ酸リチウム膜の製造方法において、前記ニオ
    ブ酸リチウム膜の厚さを0.1〜1000μmの範囲内
    の値とすることを特徴とするニオブ酸リチウム膜の製造
    方法。
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