JPH1157842A - 管軸長方向の圧縮強度に優れた鋼管の製造方法 - Google Patents

管軸長方向の圧縮強度に優れた鋼管の製造方法

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JPH1157842A
JPH1157842A JP23114297A JP23114297A JPH1157842A JP H1157842 A JPH1157842 A JP H1157842A JP 23114297 A JP23114297 A JP 23114297A JP 23114297 A JP23114297 A JP 23114297A JP H1157842 A JPH1157842 A JP H1157842A
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pipe
steel
steel pipe
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tensile strength
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Hiroshi Okamoto
弘 岡本
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】最終冷間仕上げ加工に供する管寸法の特別な調
整が事実上不要で、最終の冷間仕上げ加工時の加工パラ
メータQ値が1.5超でも、管軸長方向の圧縮強度が引
張強度の80%以上である鋼管の製造方法。 【解決手段】縮径減肉を伴う最終冷間加工で製品管に要
求される管軸方向引張強度が付与された鋼管に、加工前
の管内径をID、加工前後の管内径差を△IDとしたと
き、「EDR=(△ID/ID)×100(%)」で定
義される加工度ERDが0.2〜5%の拡管加工または
/および200〜450℃の温度域に5分以上均熱保持
する熱処理を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、管軸長方向の圧縮
強度に優れた鋼管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、資源の枯渇に伴って過酷な腐食環
境で、しかも深いガス井や油井の開発が多く行われるよ
うになってきた。このため、これらの井戸に用いられる
鋼管としては、耐食性の観点からオーステナイト系ステ
ンレス鋼や二相ステンレス鋼、さらにはNi基合金など
からなる高合金製の鋼管が多く使用されるようになって
いる。
【0003】一方、上記の各井戸に用いられる鋼管は、
管軸長方向(以下、L方向という)の引張強度(0.2
%耐力)が規定され、種々のグレードに分類されてい
る。
【0004】しかし、上記の鋼および合金は、熱処理ま
までは強度が低い。従って、例えばAPI規格で規定さ
れる0.2%耐力の最小値が760〜965MPaとい
うような高強度の要求される上記の用途に供される鋼管
(以下、油井管という)は、所望の強度を確保するため
に、最終的に冷間にて縮径減肉加工仕上げして製造され
ている。
【0005】さらに、最近、その生産中に井戸の底部に
おける油井管の継手シール部から有害かつ腐食性の強い
ガス(例えば、硫化水素ガスなど)が漏洩しないように
するために継手シール部の設計変更が検討されており、
そのための油井管として、高いL方向の圧縮強度(0.
2%耐力)を有するものが要求されるようになってき
た。
【0006】ところが、従来は、適用鋼種とグレードに
よって若干異なるものの、所望の強度を調整確保するた
めの最終的な冷間での縮径減肉仕上げ加工を、下記の
式で求められる断面減少率Ra値で5〜50%の歪みを
付与して製造されていた。
【0007】 Ra={(S0 −S)/S0 }×100(%)・・・・ ただし、 S0 :加工前の管断面積(mm2 )、 S :加工後の管断面積(mm2 )。
【0008】しかし、上記のようにして最終的に冷間加
工仕上げして得られた油井管のL方向の圧縮強度は引張
強度よりも低くなり、そのうち、冷間抽伸法で仕上げら
れたもののなかにはL方向の圧縮強度(Y)の引張強度
(X)に対する下記の式で定義される比(LCT)が
80%未満で、L方向の圧縮強度(Y)が極端に低いも
のがあり、問題となっていた(「TEMPERATURE AND TEXT
URE EFFECTS ON PROPERTIES OF CRA'S」CORROSION 92 T
he NACE Annual Conference and Corrosion Sh-ow Pape
r No.58 参照)。
【0009】 LCT=(Y/X)×100(%)・・・・ ただし、 Y:L方向の圧縮強度(0.2%耐力、MPa)、 X:L方向の引張強度(0.2%耐力、MPa)。
【0010】そこで、本発明者は、上記の問題を解決す
る方法として、下記の式で定義される加工パラメータ
Q値を1.5以下にして最終の冷間仕上げ加工を行う方
法を発明し、先に特許出願(特願平8−234973
号)した。
【0011】Q=RT /RD ・・・・ ただし、 RT :肉厚減少率(%)、 RD :外径減少率(%)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の用途に
供される油井管としては、鋼種、グレードおよび寸法の
組み合わせが無限にあり、これら全てのものを対象に、
上記の式で定義される加工パラメータQ値を1.5以
下に設定して最終冷間仕上げ加工を施すには、次の問題
があることが明らかになった。
【0013】すなわち、最終の冷間仕上げ加工を1.5
以下の加工パラメータQ値に設定して行うためには、仕
上げるべき製品管の寸法が決まっているので、この最終
の冷間仕上げ加工に供する管寸法が制限される。そし
て、最終の冷間仕上げ加工に供する管寸法を所定の寸法
にするには、熱間製管法や溶接製管法で製造される素管
の寸法を変更したり、素管寸法を変更しない場合は前段
の塑性加工回数を増やすことが必要で、加工スケジュー
ルの大幅な変更調整作業を余儀なくされる。
【0014】その結果、加工スケジュールの大幅な変更
調整作業が煩わしいのに加え、その作業に多大な工数が
かかるほか、加工回数の増加はそのための工具が別途必
要で工具費が嵩むなどし、製品管の製造コストが上昇す
るという問題があった。このため、その解決策の開発が
望まれていた。
【0015】本発明は、上記の実状に鑑みてなされたも
ので、その課題は、最終の冷間仕上げ加工に供する管の
特別な寸法調整が不要で、最終の冷間仕上げ加工時にお
ける上記の加工パラメータQ値が1.5を超える場合で
も、上記のLCT値が80%以上である鋼管を確実に得
ることができ、加工パラメータQ値が1.5以下の場合
にはより高いLCT値を有する鋼管を得ることのできる
管軸長方向の圧縮強度に優れた鋼管の製造方法を提供す
ることにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)、(2)および(3)の管軸長方向の圧縮強度に
優れた鋼管の製造方法にある。
【0017】(1)最終の冷間仕上げ加工工程において
要求される鋼種、グレードに応じて必要な断面減少率を
もって縮径減肉加工が施され、所定の管軸方向引張強度
が付与された鋼管に、下記の式で定義される加工度E
RDが0.2〜5%の拡管加工を施すことを特徴とする
管軸長方向の圧縮強度に優れた鋼管の製造方法。
【0018】 ERD=(△ID/ID)×100(%)・・・・ ここで、 ID :拡管加工前の管内径(mm) △ID:拡管加工前後の管内径差(mm) (2)最終の冷間仕上げ加工工程において要求される鋼
種、グレードに応じて必要な断面減少率をもって縮径減
肉加工が施され、所定の管軸方向引張強度が付与された
鋼管に、200〜450℃の温度域に5分以上均熱保持
する熱処理を施すことを特徴とする管軸長方向の圧縮強
度に優れた鋼管の製造方法。
【0019】(3)最終の冷間仕上げ加工工程において
要求される鋼種、グレードに応じて必要な断面減少率を
もって縮径減肉加工が施され、所定の管軸方向引張強度
が付与された鋼管に、上記の式で定義される加工度E
RDが0.2〜5%の拡管加工を施した後、200〜4
50℃の温度域に5分以上均熱保持する熱処理を施すこ
とを特徴とする管軸長方向の圧縮強度に優れた鋼管の製
造方法。
【0020】上記(1)〜(3)に記載の本発明の方法
においては、上記の式で定義される加工パラメータQ
値を1.5以下に設定して縮径減肉加工することによ
り、所定の管軸方向引張強度が付与された鋼管を処理対
象にするのが好ましい。
【0021】本発明者は、多くの製造実験を行った結果
次のことを知見し、本発明をなすにいたった。
【0022】すなわち、最終の冷間仕上げ加工において
所定の管軸方向引張強度が付与された鋼管に、上記の
式で定義される加工度ERDが0.2%以上の拡管加工
を冷間にて施した場合、最終の縮径減肉を伴う冷間仕上
げ加工における加工パラメータQ値の如何にかかわら
ず、L方向の引張強度(X)が大きく向上しない反面、
L方向の圧縮強度(Y)が大きく向上し、80%以上の
LCT値を有する製品管が得られることを知見した。
【0023】また、上記の拡管加工に代えて、最終の冷
間仕上げ加工において所定の管軸方向引張強度が付与さ
れた鋼管に、200〜450℃の温度域に5分以上均熱
保持する熱処理を施した場合にも、上記同様に、最終の
冷間仕上げ加工における加工パラメータQ値の如何にか
かわらず、L方向の引張強度(X)が大きく向上しない
反面、L方向の圧縮強度(Y)が大きく向上し、80%
以上のLCT値を有する製品管が得られることをも知見
した。
【0024】また更に、上記の拡管加工後の鋼管に上記
の熱処理を施す場合には、80%以上のLCT値を有す
る製品管がより確実に安定して得られるのみならず、よ
り高いLCT値を有する製品管が得られ、最終の冷間仕
上げ加工における加工パラメータQ値を1.5以下に設
定する場合には、さらに高いLCT値を有する製品管が
より確実に安定して得られることも知見した。
【0025】
【発明の実施の形態】上記のガス井や油井に使用される
鋼管(具体的には油井管)は、通常、次のようにして製
造される。先ず、マンネスマン方式やユジーンセジュル
ネ方式などの熱間製管法、あるいはTIG溶接法やER
W法などの溶接製管法で素管を製造する。次いで、得ら
れた素管に、冷間抽伸機やコールドピルガーミルと称さ
れる冷間圧延機を用いて複数回の冷間加工と軟化熱処理
を施して最終製品寸法よりも若干大きい寸法の管に成形
する。引き続いて、用いた鋼種に応じて所定の金属組織
を付与するための熱処理を施した後、上記同様の冷間抽
伸機や冷間圧延機を用いて強度強化のために最終的な冷
間にての仕上げ加工を施すことにより、所定の寸法を有
する製品管に仕上げられる。
【0026】そして、上記最終の冷間にての仕上げ加工
工程においては、要求される強度を得るために、用いた
鋼種やグレードに応じた必要な断面減少率Raをもって
縮径減肉加工が施され、所定の管軸方向引張強度が付与
される。
【0027】従って、本発明においても、上記同様の製
造工程を経て油井管を製造するが、本発明では、上記の
最終工程において付与する加工度としては、そのグレー
ドに要求されるL方向の引張強度が得られる断面減少率
Raを付与すればよく、上記の加工パラメータQ値を必
ずしも1.5以下にする必要はない。このため、本発明
による場合には、最終の冷間仕上げ加工に供する管の寸
法範囲が広がり、加工スケジュールの大幅な変更調整作
業や余分な工具を保有する必要がなくなる。
【0028】なお、最終の冷間仕上げ加工工程において
付与する断面減少率Raは、用いる鋼種と要求されるグ
レードの強度レベルに応じて適宜な値に設定すればよい
ことはいうまでもない。
【0029】また、加工パラメータQ値は必ずしも1.
5以下にする必要はないが、加工パラメータQ値を1.
5以下に設定する場合には、前述したように、より高い
LCT値が得られる。従って、所定の管軸方向引張強度
を付与する最終の冷間仕上げ加工は、加工スケジュール
の大幅な変更調整が必要でない限り、加工パラメータQ
値を1.5以下に設定して行うのが好ましい。
【0030】本発明にあっては、上記のようにして最終
の冷間仕上げ加工が施された管に、冷間で拡管加工また
は/および熱処理を施すのであるが、拡管加工は前述の
式で定義される加工度ERDが0.2〜5%の範囲内
で施す必要があり、また熱処理は200〜450℃の温
度域に5分以上均熱保持する必要がある。
【0031】すなわち、拡管加工を施す場合、その加工
度ERDが0.2%未満であると、管に実質的な塑性変
形が生じないために何れの方向の強度も向上せず、LC
T値の向上効果が認められない。また、5%を超える加
工度ERDを付与すると、LCT値の向上効果が飽和す
るのみならず、強度が高くなりすぎてL方向の引張強度
Xが規格の上限値を外れるようになる。よって、本発明
では、拡管加工の加工度ERDを0.2〜5%と定め
た。
【0032】なお、拡管加工を施す場合における上記最
終の縮径減肉を伴う冷間仕上げ加工後の管寸法は、拡管
加工後の管寸法が製品管に要求される寸法の許容範囲内
に収まるように寸法調整されることはいうまでもない。
また、拡管加工は、どのような方法によってもよいが、
中広げプラグを用いた冷間加工手段によるのが最も効率
的である。
【0033】一方、熱処理を施す場合、その加熱保持温
度が200℃未満であると、何れの方向の強度も向上せ
ず、LCT値の向上効果が認められない。また、加熱保
持温度が450℃を超えると、LCT値の向上効果が飽
和するのみならず、鋼種が二相ステンレス鋼の場合、靱
性の低下が著しく、所定の靱性を確保することができな
くなる。さらに、その加熱保持時間が5分未満では、何
れの方向の強度も向上せず、LCT値の向上効果が認め
られないので、加熱保持時間は5分以上にする必要があ
る。なお、加熱保持時間の上限は特に定める必要はない
が、余り長くすると熱処理能率が低下し、製造コストが
増加するので、90分以下にとどめるのが好ましい。よ
って、本発明では、熱処理を施す場合の加熱保持温度と
保持時間を200〜450℃に5分以上均熱保持するこ
ととした。
【0034】以上のことは、後述する実施例の結果から
明らかである。
【0035】なお、熱処理を施す場合、鋼種が高Niの
オーステナイト系ステンレス鋼の鋼管については、45
0℃を超える温度に加熱保持してもその加熱保持温度が
600℃以下であれば、靱性低下がないのに加え、クロ
ーム炭化物が粒界に析出して耐食性が低下することもな
い。このため、高Niのオーステナイト系ステンレス鋼
の鋼管については、熱処理を施す場合の加熱保持温度を
200〜600℃にしても何等の問題もない。
【0036】ところで、最終の冷間仕上げ加工後の鋼管
に上記条件の拡管加工または/および熱処理を施した場
合、L方向の引張強度に比べて圧縮強度が大きく向上
し、それぞれの処理前に80%未満であったLCT値が
80%以上に向上し、また処理前に80%以上であった
LCT値がより一層向上するが、その理由は詳細には不
明であるが、次の理由によるものと推定される。
【0037】すなわち、拡管加工を施した場合には、最
終の縮径減肉加工時に生じた加工集合組織が最終の縮径
減肉加工とは逆方向の塑性変形を受けて減少するためと
推定される。また、熱処理を施した場合には、最終の縮
径減肉加工時に導入された転位の再配列が生じるためと
推定される。
【0038】以上に述べた本発明の方法に従って製造さ
れた管は、LCT値が80%以上という高いL方向の圧
縮強度を備えている。このため、この管を油井管として
使用する場合には、高い気密性の要求される継手シール
部を薄肉の管で確保することが可能で、経済性に優れて
いる。また、その製造に際して縮径減肉を伴う最終の冷
間仕上げ加工時に加工パラメータQ値を必ずしも1.5
以下にする必要がないこことから、素管寸法の変更や、
これに伴う加工スケジュールの大幅な変更調整作業、並
びに余分な工具保有が不要で、通常の加工スケジュール
で塑性加工できるので、その製品管のコスト低減が図れ
る。
【0039】
【実施例】
《実施例−1》二相ステンレス鋼と高Niのオーステナ
イト系ステンレス鋼からなり、最終の冷間仕上げ加工を
冷間抽伸機を用いて種々の加工度(断面減少率Raと加
工パラメータQ値)で施した後のL方向の引張強度と圧
縮強度(0.2%耐力:MPa)が表1に示す値である
4種類の鋼管を対象に、種々の加工度ERDで拡管加工
を施して製品管に要求される許容範囲内の寸法に仕上げ
た。この時、拡管加工は中広げプラグを用いる冷間加工
方法によって行った。
【0040】そして、拡管加工後の各鋼管から、外径
6.35mm、標点間距離25.4mmの棒状引張試験
片と、外径6.35mm、標点間距離12.7mmの棒
状圧縮試験片とをL方向から切り出し採取し、ASTM
のE8およびE9に準じて引張強度X(0.2%耐力)
と圧縮強度Y(0.2%耐力)を測定し、LCT値
(%)を調べた。その結果を、最終の冷間仕上げ加工時
の断面減少率Ra値と加工パラメータQ値、および拡管
加工の加工度ERD値と併せて表1に示した。
【0041】
【表1】
【0042】表1に示す結果から明らかなように、本発
明の方法に従って製造された本発明例の製品管(No.
2、3、5〜8、12、13、15および16)は、最
終の冷間仕上げ加工時の加工パラメータQ値が1.5超
で、拡管加工前に80%未満であったLCT値が全て8
0%以上になっている。
【0043】また、最終の冷間仕上げ加工時の加工パラ
メータQ値が1.5以下である本発明例の製品管(No.
10および17)は、拡管加工前に80%以上であった
LCT値がより高くなっている。
【0044】これに対し、0.2%未満の加工度ERD
で拡管加工を施した比較例の製品管(No. 1、4、11
および14)は、LCT値が全て80%未満のままで、
80%以上にはならなかった。
【0045】また、5.5%の加工度ERDで拡管加工
を施した比較例の製品管(No. 9)は、LCT値自体は
80%以上になったが、引張強度Xが高くなりすぎて規
格上限値外れになった。
【0046】《実施例−2》二相ステンレス鋼と高Ni
のオーステナイト系ステンレス鋼からなり、冷間抽伸機
を用いて最終の冷間仕上げ加工を種々の加工度(断面減
少率Raと加工パラメータQ値)で施し、所定の製品管
寸法に仕上げた後のL方向の引張強度と圧縮強度(0.
2%耐力:MPa)が表2に示す値である5種類の鋼管
を対象に、加熱保持温度と保持時間を種々変えて熱処理
を施した。
【0047】また、上記の実施例−1で拡管加工を施し
一部の鋼管(表1中のNo. 2と12)に、上記同様の熱
処理を施した。
【0048】そして、熱処理後の各鋼管から、外径6.
35mm、標点間距離25.4mmの棒状引張試験片
と、外径6.35mm、標点間距離12.7mmの棒状
圧縮試験片とをL方向から切り出し採取し、ASTMの
E8およびE9に準じて引張強度X(0.2%耐力)と
圧縮強度Y(0.2%耐力)を測定し、LCT値(%)
を調べた。その結果を、最終の冷間仕上げ加工時の断面
減少率Ra値と加工パラメータQ値、および熱処理温度
と保持時間と併せて表2に示した。
【0049】
【表2】
【0050】表2に示す結果から明らかなように、本発
明の方法に従って製造された本発明例の製品管(No. 3
〜6、8、9、11〜14および16)は、最終の冷間
仕上げ加工時の加工パラメータQ値が1.5超で、拡管
加工前に80%未満であったLCT値が全て80%以上
になっている。
【0051】また、最終の冷間仕上げ加工時の加工パラ
メータQ値が1.5以下である本発明例の製品管(No.
10および17)は、拡管加工前に80%以上であった
LCT値がより高くなっている。
【0052】さらに、本発明で規定する加工度ERDで
拡管加工を施した後、本発明で規定するに条件の熱処理
を施した本発明例の製品管(No. 18および19)は、
拡管加工後のLCT値がより高くなっている。
【0053】これに対し、本発明で規定する範囲を外れ
る条件で熱処理を施した比較例の製品管(No. 1、2お
よび15)は、LCT値が全て80%未満で、80%以
上にはならなかった。
【0054】また、500℃の加熱温度で熱処理を施し
た比較例(No. 7)は、LCT値自体は80%以上にな
ったが、靱性が著しく低下した。
【0055】
【発明の効果】本発明によれば、L方向の圧縮強度と引
張強度との強度比が80%以上の製品管を、塑性加工ス
ケジュールの大幅な変更調整作業を伴うことなく、確実
に製造することができる。この結果、L方向の圧縮強度
が設計に用いられた場合、その製品肉厚を薄肉化するこ
とが可能で、安価な製品を提供することができる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】最終の冷間仕上げ加工工程において要求さ
    れる鋼種、グレードに応じて必要な断面減少率をもって
    縮径減肉加工が施され、所定の管軸方向引張強度が付与
    された鋼管に、下記の式で定義される加工度ERDが
    0.2〜5%の拡管加工を施すことを特徴とする管軸長
    方向の圧縮強度に優れた鋼管の製造方法。 ERD=(△ID/ID)×100(%)・・・・ ここで、 ID :拡管加工前の管内径(mm) △ID:拡管加工前後の管内径差(mm)
  2. 【請求項2】最終の冷間仕上げ加工工程において要求さ
    れる鋼種、グレードに応じて必要な断面減少率をもって
    縮径減肉加工が施され、所定の管軸方向引張強度が付与
    された鋼管に、200〜450℃の温度域に5分以上均
    熱保持する熱処理を施すことを特徴とする管軸長方向の
    圧縮強度に優れた鋼管の製造方法。
  3. 【請求項3】最終の冷間仕上げ加工工程において要求さ
    れる鋼種、グレードに応じて必要な断面減少率をもって
    縮径減肉加工が施され、所定の管軸方向引張強度が付与
    された鋼管に、上記の式で定義される加工度ERDが
    0.2〜5%の拡管加工を施した後、200〜450℃
    の温度域に5分以上均熱保持する熱処理を施すことを特
    徴とする管軸長方向の圧縮強度に優れた鋼管の製造方
    法。
  4. 【請求項4】所定の管軸方向引張強度が付与された鋼管
    が、下記の式で定義される加工パラメータQ値が1.
    5以下の条件で縮径減肉加工されたものであることを特
    徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の管軸長方向
    の圧縮強度に優れた鋼管の製造方法。 Q=RT /RD ・・・・ ここで、 RT :肉厚減少率(%) RD :外径減少率(%)
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