JP2009279601A - アルミニウム中空押出材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 溶着部を有するアルミニウム中空押出材に対して、熱間バルジのような高温での拡管成形を高い拡管率が必要とされる一体成形加工によって行う場合に、溶着部の成形性を向上させ、かつ熱間成形後の成形品の肉厚変動を少なく抑えることができるアルミニウム中空押出材を提供する。
【解決手段】 熱間拡管成形の素材となる、溶着部を有するアルミニウム中空押出材であって、少なくとも後に拡管形成部となる領域(拡管形成予定部β)を含む部分に、熱間拡管加工前の段階で、冷間加工によって、次式で定義される、断面減少率(%)=[(加工前の断面積−加工後の断面積)/加工前の断面積]×100が15%以上の加工が付与されている。
【選択図】図4
【解決手段】 熱間拡管成形の素材となる、溶着部を有するアルミニウム中空押出材であって、少なくとも後に拡管形成部となる領域(拡管形成予定部β)を含む部分に、熱間拡管加工前の段階で、冷間加工によって、次式で定義される、断面減少率(%)=[(加工前の断面積−加工後の断面積)/加工前の断面積]×100が15%以上の加工が付与されている。
【選択図】図4
Description
本発明は、自動車、自動二輪車、鉄道車両、建築部材等のアルミニウム構造部材の素材として好適な、高温での拡管成形性に優れた溶着部を有するアルミニウム中空押出材とその製造方法に関するものである。
近年、地球温暖化等の環境問題や急激な原油価格高騰の影響で、自動車や自動二輪車、鉄道車両等の輸送機器において従来以上の燃費向上が求められている。このような状況のなかで、燃費向上に大きく寄与する車体の軽量化は今後さらに重要となってくるが、軽量化のための手段として、これらの輸送機器へのアルミニウム合金の適用が進んでおり、フレーム等に用いられる中空部材までその適用範囲が広がってきている。
従来、アルミニウム中空押出材を所定の形状に一体成形するための加工技術としては、常温で成形を行うハイドロフォーミングが主流であった。このハイドロフォーミングは、管材の型中での液圧による拡管成形が主体となる加工方法で、同一部材の断面を任意の形状に成形することができるという利点を生かし、自動車用構造材を中心に適用の範囲が広がっている。
しかし近年、例えば、特許文献1〜3などで示すように、高温で内圧を負荷してパイプの形状を変えることができる、別言すれば、材料を高温に加熱して延性を高め空気圧で成形する、熱間バルジ加工が注目されている。この熱間バルジ加工は、高温で成形を行うことにより変形抵抗が減少し、材料の伸びが増加する。そのため、前述の常温で成形を行うハイドロフォーミングと比べて拡管率を高く取ることができるようになり、それによってより複雑形状の成形が可能となったため、今後の利用拡大が期待されている技術である。
特開2002−096118号公報
特開2003−103327号公報
特開2005−325444号公報
ところで、前述の熱間バルジ加工に用いる管材(アルミニウム合金管)の製法には2種類のものが知られている。
1つはマンドレル押出と呼ばれるもので、図5に示すように、コンテナ101内のアルミニウム合金材からなるビレット200にあらかじめ穴を開けてその中に棒状のマンドレル102を通し、ダイス103を用いて押出加工を行うことで、マンドレル管200´を得る。なお、図中符号104はステム、105はブロックを示す。
このマンドレル押出の場合は、ビレット200が分断されることがなく溶着部が存在しないため、周方向で均一な強度分布が得られるという点で優れている反面、ビレット200の穿孔精度の限界や押出時にマンドレル102が振れる等の理由から、マンドレル管200´の偏肉が大きくなるといった欠点がある。
もう1つは、ポートホール押出と呼ばれるもので、図6に示すように、複数のポート孔301を備え、さらに内径を形成するマンドレル302を有する雄型ダイス300Aと、外径を形成する雌型ダイス300Bとを組み合わせたポートホールダイス300を使用して押出加工を行うことで、ポートホール管400´を得るものである。なお、図中符号304はステム、305はブロックを示す。
このポートホール押出の場合は、コンテナ303内のアルミニウム合金材からなるビレット300が、ポート部で一旦分断された後、チャンバー部でマンドレル302を囲むように溶着され、内径をマンドレル302、外径をダイス300Bによって成形されてポートホール管が得られる。そのため、ポートホール押出によって熱間成形されたポートホール管400´には溶着部が存在し、溶着部はそれ以外の部分(以下、「通常部」とよぶ)と性質が異なるため、後に拡管成形や曲げ成形を実施すると、溶着部は通常部と比較して成形性が異なるという欠点がある。
以上述べた2種類の管材のうち、偏肉(=管円周方向の肉厚最大値−管円周方向の肉厚最小値)の値を低く安定させることが困難なマンドレル押出管にあっては、熱間バルジ成形を安定して実施することが困難であるために、ポートホール押出管を適用することが望ましい。ただし、通常のポートホール管を用いた場合、前述したように、溶着部は通常部と比較して成形性が異なり、溶着部やこの近傍は通常部と比較して肉厚減少が起きやすくなるため、拡管率が高い場合はそれらの部位で破断する現象が発生する。そのため、熱間バルジ成形においてポートホール管を用いるためには、溶着部の成形性向上が課題となっていた。
更に、ポートホール押出材を高温拡管成形した際には、比較的拡管が進んだ成形部全体に亘って特有の肉厚変動不具合が生じる。この現象は特に拡管率が30%以上の場合に顕著に生じ、成形品の外観上は長手方向と平行な筋状の模様が円周方向全体にわたって発生する。このため成形品の強度面や外見面で好ましくないものとなり、これらの肉厚変動を改善することも課題となっていた。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、溶着部を有するアルミニウム中空押出材に対して、熱間バルジのような高温拡管成形を行う場合に、溶着部の成形性を向上させることで高い拡管率を実現し、かつ、成形後の成形品の肉厚分布を少なく抑えることができるアルミニウム中空押出材及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、拡管成形性に優れた溶着部を有するアルミニウム中空押出材を開発すべく種々実験を行う過程で、高温拡管用素管において、熱間バルジ成形前の素管に付与する冷間加工量がある一定以上の場合に、高温での拡管成形性が向上することを発見し、それを基に本発明を得ることができた。
即ち、上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるアルミニウム中空押出材は、熱間拡管成形の素材となる、溶着部を有するアルミニウム中空押出材であって、
少なくとも後に拡管形成部となる領域を含む部分に、熱間拡管加工前の段階で、冷間加工によって、次式で定義される
断面減少率(%)=[(加工前の断面積−加工後の断面積)/加工前の断面積]
×100
が15%以上の加工が付与されていることを特徴とする。
少なくとも後に拡管形成部となる領域を含む部分に、熱間拡管加工前の段階で、冷間加工によって、次式で定義される
断面減少率(%)=[(加工前の断面積−加工後の断面積)/加工前の断面積]
×100
が15%以上の加工が付与されていることを特徴とする。
また、請求項2によるアルミニウム中空押出材は、請求項1に記載のアルミニウム中空押出材であって、前記拡管加工は、300℃以上の温度で、空気もしくは空気以外の気体を加圧媒体として行われていることを特徴とする。
本発明の請求項3によるアルミニウム中空押出材の製造方法は、熱間拡管成形の素材となる、溶着部を有するアルミニウム中空押出材の製造方法であって、
少なくとも後に拡管形成部となる領域を含む部分に、熱間拡管加工前の段階で、冷間加工によって、次式で定義される断面減少率
断面減少率(%)=[(加工前の断面積−加工後の断面積)/加工前の断面積]
×100
が15%以上の加工を付与することを特徴とする。
少なくとも後に拡管形成部となる領域を含む部分に、熱間拡管加工前の段階で、冷間加工によって、次式で定義される断面減少率
断面減少率(%)=[(加工前の断面積−加工後の断面積)/加工前の断面積]
×100
が15%以上の加工を付与することを特徴とする。
請求項4によるアルミニウム中空押出材の製造方法は、前記拡管加工は、300℃以上の温度で、空気もしくは空気以外の気体を加圧媒体として行われていることを特徴とする。
請求項5によるアルミニウム中空押出材の製造方法は、請求項3又は4に記載のアルミニウム中空押出材の製造方法であって、前記冷間加工が、引抜加工、スピニング加工、又はスエージング加工であることを特徴とする。
請求項6によるアルミニウム中空押出材の製造方法は、請求項3から5のいずれか1項に記載のアルミニウム中空押出材の製造方法であって、前記冷間加工は、少なくとも後に行う高温拡管成形加工において、拡管率が30%以上となる部位に実施することを特徴とする。
本発明によれば、拡管成形の素材となる溶着部を有するアルミニウム中空押出材に対して、拡管加工前の段階で断面減少率15%以上の冷間加工が付与されており、後に熱間バルジのような高温で成形を行いかつ高い拡管率が必要とされる一体成形加工において、溶着部の成形性を向上させることができるようになるとともに、熱間成形後の成形品の肉厚変動を少なくできるようになる。
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るアルミニウム中空押出材の元材料となるポートホール押出管10(以下、「素材10」とよぶ)を示すものである。素材10には、ポートホール押出で不可避な溶着部αが存在する。この溶着部αは、一般に、通常部、つまり溶着部以外の部分と比較して加工性が異なる。そのため、図2示す金型Fのような成形型を用いて、熱間バルジ加工のような内圧を負荷して拡管する加工を行なった場合、溶着部αもしくはその近傍にて優先的に変形が進行し破断に至ってしまうために拡管率の高い加工ができない。
この溶着部αもしくはその近傍にて優先的に変形する原因については種々の理由が考えられるが、原因のひとつとして、溶着部と通常部との集合組織の差が挙げられる。すなわち、溶着部αと通常部では押出工具(例えば、図6のポートホールダイス300参照)内でのメタルフローが異なるため、熱間での加工履歴や熱履歴に違い(または差)が出てくる。その結果、成形後の管状成形体の溶着部αと通常部との集合組織に差が生じる。これは押出ダイス内で一旦分断したメタルが溶着部で溶着することによって中空材を得るポートホール押出では不可避な現象である。
この溶着部αもしくはその近傍にて優先的に変形する原因については種々の理由が考えられるが、原因のひとつとして、溶着部と通常部との集合組織の差が挙げられる。すなわち、溶着部αと通常部では押出工具(例えば、図6のポートホールダイス300参照)内でのメタルフローが異なるため、熱間での加工履歴や熱履歴に違い(または差)が出てくる。その結果、成形後の管状成形体の溶着部αと通常部との集合組織に差が生じる。これは押出ダイス内で一旦分断したメタルが溶着部で溶着することによって中空材を得るポートホール押出では不可避な現象である。
この問題に対して、本実施形態では、ポートホール押出管(素材10)に対し、図3に示す内容の冷間加工を施し、素管20を得るものである。すなわち、図3(A)に示す素材10に対して、高温拡管成形(同図(C)参照)にて得られる成形品30(同図(D)参照)の拡管成形部γ(同図(D)参照)であって、その拡管率が30%以上となる素管領域(拡管形成予定部β)を少なくとも対象として、断面減少率が15%以上となるように、熱間拡管加工前の段階に、引抜加工、スピニング加工、スエージング加工等の冷間加工を施すものである。
また、本実施形態のアルミニウム中空押出材を用いてアルミニウム成形品を製造する場合にあっては、この熱間バルジ加工において、前述したようにこの加工前に素管20が数十秒程度高温で保持されるため、例えばかりに一定の歪を受けた素管20を供試した場合、高温保持している段階で素管20の冷間加工部で再結晶が起きる。再結晶の起こった素材は、素管20の段階で溶着部と溶着部以外の通常部とで異なる集合組織を持っていたものが、この再結晶によってほぼ同じ集合組織を持つことになる。そのため、溶着部と溶着部以外の通常部とで成形性に差が見られなくなり、高温での拡管成形性が向上するのである。なお、再結晶とは、冷間加工などで塑性ひずみを受けた結晶が加熱されるとき、内部応力が減少する過程に続いて、ひずみが残っている元の結晶粒から内部ひずみのない新しい結晶の核が発生し、その数を増すとともに、各々の核は次第に成長して、元の結晶粒と置き換わっていく現象のことである。
上記したように、冷間加工とその後の高温拡管成形での加温過程での再結晶を経ることで、溶着部と溶着部以外の組織の差異が縮小乃至解消され拡管成形性が向上するが、これと同時に、前段落で述べた拡管率30%以上で顕著に生じる周方向の肉厚分布の不均一さが原因で発生する筋状不具合についても、その改善効果が得られる。
本発明における素管20の(冷間)加工度は、下記の(1)式によって定義される断面減少率、即ち、
断面減少率(%)=[(加工前の断面積−加工後の断面積)/加工前の断面積]
×100・・・(1)
が15%以上であることが望ましい。なお、15%以下の場合、冷間加工によって導入される転位が少ないため、後の高温拡管成形の加温過程(昇温保持過程)で、再結晶が発生する臨界加工度に達しない可能性がある。また、再結晶が発生した場合においても、再結晶の核生成サイトが少ないため、再結晶後の結晶粒径は粗大化してしまう。
断面減少率(%)=[(加工前の断面積−加工後の断面積)/加工前の断面積]
×100・・・(1)
が15%以上であることが望ましい。なお、15%以下の場合、冷間加工によって導入される転位が少ないため、後の高温拡管成形の加温過程(昇温保持過程)で、再結晶が発生する臨界加工度に達しない可能性がある。また、再結晶が発生した場合においても、再結晶の核生成サイトが少ないため、再結晶後の結晶粒径は粗大化してしまう。
ポートホール押出管を拡管成形した場合に溶着部が優先的に変形する原因は、溶着部と通常部の結晶粒径の差ではないが、その平均結晶粒径が200μmを超えると、溶着部、通常部に関係なく破断しやすくなり、成形性の向上が見られなくなる。そこで、本発明のように断面減少率を15%以上に設定することによって、再結晶後の結晶粒径を100μm以下とすることができ、また、再結晶後も溶着部、通常部間の結晶粒径に差は見られなくなる。なお、断面減少率の上限は、加工性を考慮すると、工業的に加工できるレベルであればいずれでもかまわないが、前述の断面減少率を大きくとりすぎると冷間加工時に成形不具合を生じたり、加工速度が低下したりするので、おおむね60%程度を上限にするのが望ましい。
熱間バルジ成形の際の成形温度は300℃以上であることが望ましい。300℃以下では、再結晶が完了するのに時間がかかり、熱間バルジ成形前に完全に再結晶させることができない。また、300℃以下では、素材の伸びも低下するため拡管率を高く取ることができない。一方、550℃を超えると、材料中で局部溶融が発生する可能性があるため好ましくない。従って、成形温度範囲としては300℃〜550℃が望ましいが、さらに好ましい温度範囲は450℃〜550℃である。
また、この発明による拡管成形性に優れたアルミニウム合金管を製造するためには、ポートホール押出成形した素材10(図3(A)参照))に通常の冷間引抜加工を実施すればよい。この冷間加工としては、前述の管全長にわたる引抜加工の代わりに、スピニング加工を用いても良い。スピニング加工は、マンドレルと呼ばれる心金とともに回転する管状素材にロールを押し付けて、それを管軸方向に動かすことによって円管状製品を作る回転しごき加工である。また、さらに別の冷間加工方法としてスエージング加工を用いても良い。スエージング加工は、円周方向に配置された2個または4個のダイスを回転させながら半径方向に往復させることによって管状素材の鍛造を行う回転鍛造加工法である。通常のスエージング加工は管端部を縮径する加工が一般的であるが、フォージング加工と呼ばれる、被加工材が回転し、ダイスを回転させずに半径方向のみ往復する加工によっても成形が可能である。
また、スピニング加工やスエージング加工を用いて素管20を供試する場合は、冷間加工後の素管20の肉厚を全長にわたって均一にする必要はなく、所望する高温加工での拡管率に応じて部分的に肉厚を調整した素管を用いることも可能である。特に、本発明では、前述したように、バルジ成形加工前の素材10に、予め冷間加工を付与する。これによって、最終的に得られるアルミニウム成形品30には、拡管加工部分について、成形性の向上と成形品の肉厚分布を均一にすることが可能になる。さらに、この素材に付与する冷間加工としては、例えば素材の全体に施す引抜加工の替わりに前述したスピニング加工又はスエージング加工を用いれば、素材の全体の中から必要な部分のみ選択して冷間加工を行うことができるので、冷間加工の加工時間短縮を図ることが可能となる。
次に、本発明の実施例を比較例と共に説明する。なお、実施例は全て丸管を拡管成形しているが、本発明は丸管に限定されることはなく、例えば角パイプ等の異形断面を持つ中空形材にも適用が可能である。
[実施例1]
JIS6063合金により、全長500mm、外径60mm、肉厚3mmの、ポートホール押出管、ポートホール押出管を元材とする引抜管(以下、ポートホール引抜管)、及びマンドレル押出管、を常法に従って製造した。
JIS6063合金により、全長500mm、外径60mm、肉厚3mmの、ポートホール押出管、ポートホール押出管を元材とする引抜管(以下、ポートホール引抜管)、及びマンドレル押出管、を常法に従って製造した。
ポートホール押出管は、押出ダイスの雄型のポートが4ヶ所有るものを使用して製造した。溶着部αは、図1に示すようにパイプ円周方向に90度ずつずれた位置に4ヶ所となる。ポートホール引抜管については、ポートホール押出素管の肉厚を種々に変更することによって引抜加工時の断面減少率を変更し、引抜加工後の外径が押出管と同様に、外径60mm、肉厚3mmの素管となるように製造し、試験材とした。
次に、図2に示す金型Fを準備し、この金型Fを所定温度に加熱後、この温度に加熱した図示外のパイプをパイプ挿入部F1にセットした。その後、パイプの両端部をシールし、パイプの両端を軸方向に押し込むと同時にパイプの内部に気体を注入し、数メガPaに加圧して拡管成形を実施した。なお、この金型Fのパイプ挿入部F1の最大径は120mmとなっており、パイプが破断せずに拡管された場合は、拡管成形前のパイプ最大外径60mmから拡管後のパイプ最大径が金型の最大径と同じ120mmとなり、その場合の拡管率は100%になる。なお、図2において符号FAは割り位置を示す。
なお、ここで、拡管率とは、次の(2)式、
拡管率(%)=[(拡管後の外径−拡管前の外径)/拡管前の外径]×100
・・・(2)
で定義されるものである。
拡管率(%)=[(拡管後の外径−拡管前の外径)/拡管前の外径]×100
・・・(2)
で定義されるものである。
なお、拡管率が大きいほど、成形性の良い材料であるといえる。本発明では、拡管率が従来例と比較して20%以上向上した場合を成形性向上に効果有りと判断した。
[表1]に示すように、種々の断面減少率を変えたサンプルを準備し、熱間バルジ成形を行い、最大拡管率の測定および成形品の表面の凹凸の有無を目視にて観察した。結果を[表1]に示す。
実施例1〜4は、本発明の範囲内の材料であり、全て最大拡管率が80%以上となっており、従来例8と比較して拡管率で20%以上の向上が見られ、従来例9の溶着部のないマンドレル管と同等の最大拡管率を得ることができた。なお、従来例8は、冷間加工を施さないポートホール押出管であるが、最大拡管率は55%であった。さらに、これら実施例1〜4の成形品の外観を確認した結果、表面に凹凸は見られなかった。
一方、比較例5、6は、冷間加工量が本発明の範囲外のものであり、最大拡管率の向上が見られていない。また、本発明の範囲外の比較例7は、成形温度が低いため、十分な伸びが得られず、最大拡管率は低くなった。また、比較例7は最大拡管率が小さいため表面の凹凸も見られない結果となった。
[実施例2]
JIS6063合金を用いるとともに押出ダイスの雄型のポートが4ヶ所有るものを使用して、初めに、外径60mm、肉厚3.2mmから6.0mmまでの素材、即ち図1及び図3(A)に示すようなポートホール押出管を常法に従って製造した。ポートホール押出管の溶着部αは、パイプ円周方向に90度ずつずれた位置に4ヶ所となる。その後、冷間加工として、スピニング加工とスエージング加工を実施し、図4に示すような熱間バルジ用の素管20´を製造した。
JIS6063合金を用いるとともに押出ダイスの雄型のポートが4ヶ所有るものを使用して、初めに、外径60mm、肉厚3.2mmから6.0mmまでの素材、即ち図1及び図3(A)に示すようなポートホール押出管を常法に従って製造した。ポートホール押出管の溶着部αは、パイプ円周方向に90度ずつずれた位置に4ヶ所となる。その後、冷間加工として、スピニング加工とスエージング加工を実施し、図4に示すような熱間バルジ用の素管20´を製造した。
スピニング加工およびスエージング加工は、種々の肉厚の素材10に対して内径を元のパイプのままとし、熱間バルジの拡管部(全長500mmに対して380mm)の肉厚が3mmとなるように、後に拡管形成部γ(図3(D)参照)となる拡管形成予定部βのみに加工を付与している(図4参照)。なお、両端部は、元の素材10の肉厚のままとした。スピニングおよびスエージング加工後の成形品断面の詳細は図4のとおりとなる。
[表2]に示したようなスピニング、スエージング加工によって拡管形成予定部βに種々の断面減少(リダクション)を与えた素管(図4に示す素管20´を含む)を準備し、これに図2及び図3(C)に示す金型Fを用いて熱間バルジ加工を行い、拡管加工を施した。これにより、図3(D)に示すようなアルミ二ウム成形品30を作製した。この後、前述した最大拡管率の測定および成形品の表面の凸凹の有無を目視にて観察した。結果を[表2]に示す。
実施例10〜13は、熱間バルジ加工によってアルミニウム成形品30を製造する前の、スピニング加工により冷間加工が付与されたときの状態を示す素管20´の成形結果である。これらの素管20´は、全て拡管率は90%以上となっており、成形性の向上が見られ、成形品表面の凹凸も見られなかった。
一方、実施例14〜17は、スエージング加工によって冷間加工が付与された素管20´の成形結果であるが、全て拡管率は95%以上となっており成形性の向上が見られた。また、成形品表面の凹凸も見られなかった。
一方、比較例18、19は、冷間加工量が本発明の範囲外の素管であり、通常のポートホール押出管と比較して最大拡管率の向上が見られなかった。また、成形品には表面の凹凸も見られた。
本発明によれば、溶着部を有するアルミニウム中空押出材を用いて熱間加工による拡管成形を行う場合において、熱間拡管成形前の段階で、アルミニウム中空押出材に対して断面減少率が15%以上の冷間加工を付与することにより高温での拡管成形性が向上するとの知見がこの発明者らによって得られており、この事実に基づき、少なくとも後に熱間拡管形成部となる領域を含む部分に、熱間拡管成形前の段階で、アルミニウム中空押出材に対して断面減少率が15%以上の冷間加工を付与することによって、熱間拡管成形後のアルミニウム合金管での溶着部の成形性を向上させ、かつ、熱間拡管成形後のアルミニウム合金管の肉厚変動を少なく抑えたアルミニウム中空押出材を提供することが可能となる。
10 アルミニウム中空押出材(素材)
20 20´ アルミニウム中空押出材(素管)
30 アルミニウム成形品
F 金型
FA 割り位置
F1 パイプ挿入部
α 溶着部
β 拡管形成予定部
γ 拡管形成部
20 20´ アルミニウム中空押出材(素管)
30 アルミニウム成形品
F 金型
FA 割り位置
F1 パイプ挿入部
α 溶着部
β 拡管形成予定部
γ 拡管形成部
Claims (6)
- 熱間拡管成形の素材となる、溶着部を有するアルミニウム中空押出材であって、
少なくとも後に拡管形成部となる領域を含む部分に、熱間拡管加工前の段階で、冷間加工によって、次式で定義される
断面減少率(%)=[(加工前の断面積−加工後の断面積)/加工前の断面積]
×100
が15%以上の加工が付与されていることを特徴とするアルミニウム中空押出材。 - 前記拡管加工は、300℃以上の温度で、空気もしくは空気以外の気体を加圧媒体として行われていることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム中空押出材。
- 熱間拡管成形の素材となる、溶着部を有するアルミニウム中空押出材の製造方法であって、
少なくとも後に拡管形成部となる領域を含む部分に、前記熱間拡管加工前の段階で、冷間加工によって、次式で定義される断面減少率
断面減少率(%)=[(加工前の断面積−加工後の断面積)/加工前の断面積]
×100
が15%以上の加工を付与することを特徴とするアルミニウム中空押出材の製造方法。 - 前記拡管加工は、300℃以上の温度で、空気もしくは空気以外の気体を加圧媒体として行われていることを特徴とする請求項3に記載のアルミニウム中空押出材の製造方法。
- 前記冷間加工は、引抜加工、スピニング加工、又はスエージング加工であることを特徴とする請求項3又は4に記載のアルミニウム中空押出材の製造方法。
- 前記冷間加工は、少なくとも後に行う高温拡管成形加工において、拡管率が30%以上となる部位に実施することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載のアルミニウム中空押出材の製造方法。
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2008
- 2008-05-21 JP JP2008132647A patent/JP2009279601A/ja active Pending
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