JPH1156393A - Atpの測定法およびatp測定用試薬キット - Google Patents

Atpの測定法およびatp測定用試薬キット

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JPH1156393A
JPH1156393A JP23910497A JP23910497A JPH1156393A JP H1156393 A JPH1156393 A JP H1156393A JP 23910497 A JP23910497 A JP 23910497A JP 23910497 A JP23910497 A JP 23910497A JP H1156393 A JPH1156393 A JP H1156393A
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JP
Japan
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atp
target
adenosine phosphate
measuring
phosphate deaminase
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Application number
JP23910497A
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English (en)
Inventor
Tatsuya Sakakibara
達哉 榊原
Seiji Murakami
成治 村上
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Kikkoman Corp
Original Assignee
Kikkoman Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】バックグラウンドATPをATP分解酵素によ
り分解する工程を含む標的ATPの測定法において、標
的ATPの測定を阻害することなくATP分解酵素を失
活させること。 【解決手段】1.バックグラウンドATPを、アデノシ
ンリン酸デアミナ−ゼにより分解した後、上記アデノシ
ンリン酸デアミナ−ゼを阻害剤により失活させ、次いで
標的ATPを測定することを特徴とする標的ATPの測
定法。 2.アデノシンリン酸デアミナ−ゼ及び阻害剤を成分と
するバックグラウンドATP分解用試薬キット。 3.(1)アデノシンリン酸デアミナ−ゼ、(2)阻害
剤、(3)標的ATPの測定に関与する物質、を含む標
的ATP測定用試薬キット。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ATP(アデノシ
ン−5´−三リン酸)の測定方法およびATP測定用試
薬キットに関する。
【0002】
【従来の技術】ATPは、すべての生物の細胞内に含ま
れるヌクレオチドである。試料中に含まれる測定するべ
きATP(以下「標的ATP」という)の測定は、各種
工業分野において広く行なわれている。特に、食品衛
生、バイオ、臨床検査、医学などの現場では、試料中の
微生物の有無の判定、該微生物の細胞数の計数等を目的
として、細胞内ATPの測定が行なわれている。細胞内
ATPを測定する場合、細胞を含む試料に界面活性剤等
を添加して細胞内ATPを抽出した後、抽出されたAT
Pを測定する方法が多用されている。
【0003】標的ATPの測定法としては、例えば生物
発光反応、具体的にはルシフェリン−ルシフェラーゼ発
光反応を利用する方法等が知られている。生物発光反応
を利用する方法は、高感度な測定が短時間で行なえると
いう点で優れている。
【0004】標的ATPの測定法においては、標的AT
P以外のATP(以下「バックグラウンドATP」とい
う)が測定系に混入することによる測定感度の低下が問
題となっていた。バックグラウンドATPが測定系(例
えば、試料、各種試薬、容器、測定器具・装置等)に混
入した場合、バックグラウンドATPが標的ATPと同
時に測定されるため、標的ATPのみを正確に測定する
ことが困難になる。
【0005】生物が存在する場所にはATPが存在する
ので、測定系へのバックグラウンドATPの混入を完全
に防止することは非常に困難である。また、測定系にお
いて精製度の低い試薬を使用する場合、該試薬にバック
グラウンドATPが混入しているおそれもある。例え
ば、酵母エキスを含む培地中に存在する微生物の細胞数
を、細胞内ATP量に基づいて計数する場合、酵母エキ
ス中にバックグラウンドATPが大量に存在するため、
細胞内ATPの正確な測定が困難になるという問題があ
った。
【0006】従って、標的ATPの測定法においては、
測定系へ混入したバックグラウンドATPを効率的に除
去する方法の確立が求められていた。
【0007】バックグラウンドATPの除去法として
は、メンブレンフィルタ−による濾過や、遠心分離によ
り試料中のバックグラウンドATPを除去する方法が知
られているが、これらの方法は操作が煩雑である。
【0008】その他の除去法としては、ATP分解酵素
(例えばアピラ−ゼ、アデノシントリホスファタ−ゼ、
ヘキソキナ−ゼ、ATPピロホスファタ−ゼ等)を使用
してバックグラウンドATPを分解する方法が知られて
いる(月刊フ−ドケミカル、食品化学新聞社発行、95
年5月号、第55〜63ペ−ジ;特開平2−6580
0;USP5,316,907、アナリティカル・バイ
オケミストリー(Analytical Bioche
mistry)第218巻 20−25ページ1994
年;ビュレティン・オブ・ザ・ジャパニーズ・ソサイア
ティー・オブ・サイエンティフィック・フィッシャリー
ズ(Bulletin of theJapanese
Society of Scientific Fi
sheries) 第52巻 9号 1695ページ
1986年;及びマリン・エコロジー−プログレス・シ
リーズ(Marine Ecology−Progre
ss Series) 13巻 305−309ページ
1983年)。
【0009】ATP分解酵素を使用してバックグラウン
ドATPを分解する方法は、操作が簡便であり、かつバ
ックグラウンドATPの分解効率が高いという点で優れ
ている。この方法では、標的ATPの測定に先立ち、測
定系からATP分解酵素を除去する必要がある。標的A
TPの測定時にATP分解酵素が存在していると、標的
ATPが分解されてしまうので、標的ATPの正確な測
定が不可能となるからである。
【0010】ATP分解酵素の除去法としては、固定化
アピラーゼを使用する方法が知られている(Nyren P.,
(1994) Journal of Biolumin. and Chemilumin.
9,29-34)。この方法は、試料に固定化アピラーゼを
作用させてバックグラウンドATPを分解し、標的AT
Pの測定時には固定化アピラーゼを除去するというもの
である。しかしながらこの方法は、酵素の固定化という
煩雑な操作が必要であり、またバックグラウンドATP
の分解効率にも問題があった。
【0011】その他の方法としては、ATP分解酵素を
含む試料を加熱して該酵素を失活させる方法や、測定系
に変性剤(例えばトリクロロ酢酸)を添加してATP分
解酵素を失活させる方法が知られている。しかしながら
これらの方法は、操作が煩雑であったり、変性剤が標的
ATPの測定を阻害するという問題があった。例えば、
標的ATPの測定法がルシフェリン−ルシフェラーゼ発
光反応を利用する方法である場合、上記変性剤としてト
リクロロ酢酸を用いると、測定系が酸性となり、発光反
応が阻害されるという問題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、バッ
クグラウンドATPをATP分解酵素により分解する工
程を含む標的ATPの測定法において、標的ATPの測
定を阻害することなくATP分解酵素を失活させること
を特徴とする標的ATPの測定法を提供することにあ
る。また、本発明の目的は、上記標的ATPの測定法に
用いられる試薬キットを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、ATP分
解酵素としてアデノシンリン酸デアミナーゼを使用する
場合、標的ATPの測定を阻害することのない該酵素の
阻害剤(以下、単に「阻害剤」という)としては、コホ
ルマイシンが非常に優れていることを見いだし、本発明
を完成した。
【0014】すなわち本発明は、以下に示す標的ATP
の測定法、バックグラウンドATP分解用試薬キットお
よび標的ATP測定用試薬キットに関する。 1.以下の工程を含むことを特徴とする標的ATPの測
定法 (1)測定系に存在するバックグラウンドATPを、ア
デノシンリン酸デアミナ−ゼにより分解する工程。 (2)上記アデノシンリン酸デアミナ−ゼを阻害剤によ
り失活させる工程。 (3)標的ATPを測定する工程。 2.以下の成分を含むバックグラウンドATP分解用試
薬キット。
【0015】(1)アデノシンリン酸デアミナ−ゼ (2)阻害剤 3.以下の成分を含む標的ATP測定用試薬キット (1)アデノシンリン酸デアミナ−ゼ (2)阻害剤 (3)標的ATPの測定に関与する物質
【0016】
【発明の実施の形態】
〔本発明における標的ATPの測定法について〕 1.アデノシンリン酸デアミナ−ゼによるバックグラウ
ンドATPの分解 本発明ではまず、測定系に存在するバックグラウンドA
TPを、アデノシンリン酸デアミナ−ゼにより分解す
る。
【0017】測定系とは、標的ATPの測定に関与する
物質、または該物質の組み合わせを意味する。標的AT
Pの測定に関与する物質とは、具体的には標的ATPを
含むと思われる試料、各種試薬、容器、測定器具・装置
等である。また、標的ATPの測定の前処理において使
用される試薬、容器、測定器具・装置等も、本発明でい
う測定系に含まれる。前処理とは、例えば、標的ATP
が細胞内ATPである場合に行われる、細胞内ATPの
抽出処理等である。
【0018】試料は、標的ATPを含むと思われるもの
であれば特に限定されないが、例えば飲食物・医薬品・
化粧品等の各工業製品・その半製品・その原料、海水、
河川水、工業用水、下水、土壌、尿、糞便、血液、喀
痰、膿汁、細胞の培養液等である。また、細菌汚染検
査、清浄度検査、拭き取り検査等の各種検査における検
体も、本発明の試料とすることができる。さらには、上
記試料を適当な溶媒(例えば、蒸留水、生理的食塩水、
リン酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液等
等)に懸濁した溶液を試料としてもよい。試料が固形分
を含む場合には、該試料を上記溶媒に懸濁するか、ミキ
サ−などでホモジナイズすれば溶液状のものと同様に扱
うことができる。
【0019】拭き取り検査における検体を試料とする場
合は、綿棒のような拭き取りスティックを無菌水で湿ら
せ検査箇所を拭き取った後に、無菌水又は試薬液をいれ
た試験管の中ですすぎ、その液体部分を試料とする。
【0020】標的ATPが細胞内ATPである場合は、
細胞を含むと思われる溶液あるいは細胞の培養液を試料
とすればよい。また、上記の溶液あるいは培養液を、親
水性または疎水性の濾過膜で濾過して細胞を捕捉した後
に該濾過膜を試料としてもよい。なお、ここでいう細胞
とは、例えば、酵母、カビ、キノコ、細菌、放線菌、単
細胞藻類、ウイルス、原生動物、動物または植物の細胞
及び組織培養物等を意味する。
【0021】細胞を捕捉した濾過膜を試料とする場合、
親水性濾過膜としては、例えば親水性ポリテトラフルオ
ロエチレン、親水性ポリビニリデンフルオライド、親水
性ポリアミド、アセチルセルローズ、ニトロセルローズ
等を材料とするフィルム状又はシート状のものが使用で
きる。また、疎水性濾過膜としては、例えばPVDF
(ポリビニリデンフルオライド)、PTFE(ポリトラ
フルオロエチレン)、PE(ポリエチレン)等を材料と
するものが使用できる。
【0022】アデノシンリン酸デアミナーゼは、脱アミ
ノ反応を触媒する公知酵素(E.C.3.5.4.6)であり、ア
デノシンリン酸エステルを基質とすることができる。ア
デノシンリン酸エステルとは、例えば、ATP、AD
P、AMP、アデノシン、サイクリックAMP等であ
る。
【0023】アデノシンリン酸デアミナ−ゼは、基質と
してATPを用いたときはイノシン三リン酸(ITP)
を生成し、ADPを用いたときはイノシン二リン酸(I
DP)を生成し、AMPを用いたときはイノシンモノリ
ン酸(IMP)を生成する。(赤堀四郎編「酵素ハンド
ブック」朝倉書店1982年12月1日発行、第611
ペ−ジ;馬場茂明ら編集、「臨床酵素ハンドブック」講
談社1982年9月10日発行、第55頁参照;「Th
e Journal of Generaland A
pplied Microbiology」第13巻、
335〜347ペ−ジ、1967年;「Agricul
tural and Biological Chem
istry」第29巻、6号、508〜514ペ−ジ、
1965年)。
【0024】アデノシンリン酸デアミナーゼにより、測
定系に存在するバックグラウンドATPが分解され、標
的ATPの正確な測定が可能となる。
【0025】なお、本発明でいう「バックグラウンドA
TPの分解」とは、測定系の全てのバックグラウンドA
TP分子を分解することのみならず、標的ATPの測定
に実質的に影響しない程度までバックグラウンドATP
の量を減少させることも意味する。
【0026】本発明のアデノシンリン酸デアミナーゼと
しては、例えば、真菌類(Aspergillus属 、Microspor
um audouini)、細菌(Desulfovibrio desulfurican
s)、紅藻類(Porphyra crispata、Porphyra yezoens
is)等を由来とする公知の酵素が使用できる。
【0027】また、脱アミノ反応を触媒する活性を有す
る限り、上記酵素のアミノ酸配列中の1または複数のア
ミノ酸に付加、欠失、置換等の変異が導入された変異型
アデノシンリン酸デアミナーゼを使用することもでき
る。
【0028】測定系に存在するバックグラウンドATP
を分解する方法は特に限定されない。バックグラウンド
ATPの分解は、例えば以下の方法により実施されう
る。 (1)試料や各種試薬等へのアデノシンリン酸デアミナ
−ゼの添加。 (2)容器、測定器具・装置等のアデノシンリン酸デア
ミナ−ゼ溶液による洗浄。
【0029】バックグラウンドATPの分解条件(試料
や試薬に添加するアデノシンリン酸デアミナ−ゼの終濃
度、アデノシンリン酸デアミナ−ゼと測定系との接触条
件等)は測定系の種類・性状等に応じて適宜設定すれば
よい。
【0030】2.阻害剤によるアデノシンリン酸デアミ
ナ−ゼの失活 ついで、測定系中に存在するアデノシンリン酸デアミナ
−ゼを、阻害剤により失活させる。本発明でいう阻害剤
とは、標的ATPの測定を阻害することなくアデノシン
リン酸デアミナ−ゼを失活させることができる物質をい
う。
【0031】なお、「アデノシンリン酸デアミナ−ゼの
失活」とは、アデノシンリン酸デアミナーゼの活性が完
全に抑制されることのみならず、測定すべきATPの測
定に実質的に影響しない程度まで、アデノシンリン酸デ
アミナーゼの活性が減少することも意味する。また「標
的ATPの測定を阻害することなく」とは、阻害剤の存
在が標的ATPの測定に全く影響しないことのみなら
ず、その存在が標的ATPの測定に実質的に影響しない
ことも意味する。
【0032】本発明の阻害剤としては、例えば、コホル
マイシン(Coformycin)を挙げることができる。コホル
マイシンは、標的ATPの測定を阻害することなくアデ
ノシンリン酸デアミナ−ゼを失活させることができるの
で、本発明の阻害剤として好適である。コホルマイシン
としては、例えばストレプトマイセス属(Streptomyces
属)等を由来とするもの、およびその誘導体が使用でき
る。なお、コホルマイシンとしては、市販品(例えば、
CALBIOCHEM社製)も使用できる。
【0033】阻害剤によりアデノシンリン酸デアミナ−
ゼを失活させる方法は特に限定されない。アデノシンリ
ン酸デアミナ−ゼの失活は、例えば以下の方法により実
施される。 (1)アデノシンリン酸デアミナ−ゼを含む測定系(試
料・各種試薬等)への阻害剤の添加。 (2)あらかじめアデノシンリン酸デアミナ−ゼ溶液で
洗浄された容器、測定器具・装置等の阻害剤溶液による
洗浄。
【0034】アデノシンリン酸デアミナ−ゼを失活させ
るための条件(試料や試薬に添加する阻害剤の終濃度、
阻害剤と測定系との接触条件等)は、測定系の種類・性
状および使用したアデノシンリン酸デアミナ−ゼの量等
に応じて適宜設定すればよい。溶液にコホルマイシンを
添加する場合、効率よくアデノシンリン酸デアミナ−ゼ
を失活させる点から、コホルマイシンの添加は下記の条
件で行なうことが好ましい。
【0035】(1)コホルマイシンの終濃度:100p
M以上、特に10nM〜1mMであることが好ましい) (2)反応時間:約2秒以上、特に10秒〜2分が好ま
しい) 3.標的ATPの測定 ついで試料中の標的ATPを測定する。なお、試料の種
類・性状によっては、標的ATPの測定に先立ち、前処
理を行うことが好ましい。前処理とは、例えば、標的A
TPが細胞内ATPである場合に行われる、細胞内AT
Pの抽出処理等である。
【0036】標的ATPの測定法は特に限定されない
が、例えばルシフェリン−ルシフェラーゼ発光反応を利
用する方法、ATP変換反応を利用する方法等が採用で
きる。以下に、標的ATPの測定法について具体例に説
明する。 (1)ルシフェリン−ルシフェラーゼ発光反応を利用す
る標的ATPの測定方法この方法は、ルシフェリンおよ
びルシフェラーゼを含む発光試薬と、標的ATPとを、
金属イオン(マグネシウムイオン等)の存在下で接触さ
せ、生成した光の発光量を測定することにより標的AT
Pを測定する方法である。
【0037】ルシフェリンおよびルシフェラーゼを含む
発光試薬(以下「ルシフェリン-ルシフェラーゼ発光試
薬」という)とは、例えば以下の(イ)〜(ハ)の成分
を含む試薬である。
【0038】(イ)ルシフェリン (ロ)ルシフェラーゼ (ハ)マグネシウムイオン ルシフェリン−ルシフェラーゼ発光反応を利用する方法
は、短時間で高感度な測定が可能である点、およびコホ
ルマイシンによる阻害を受けないという点で、本発明に
おける標的ATPの測定法として優れている。
【0039】該発光反応の模式図を以下に示す。
【化1】
【0040】ルシフェリン−ルシフェラーゼ発光反応と
しては、例えば、昆虫(ゲンジボタル、ヘイケボタル、
北米産ホタル、ヒカリコメツキムシ、ツチボタル等)を
由来とする反応系が使用できる。ルシフェラーゼとして
は、上記生物の発光組織から精製した天然型ルシフェラ
ーゼや、遺伝子工学的手法により調製した天然型ルシフ
ェラーゼ、さらには天然型ルシフェラーゼのアミノ酸配
列中の1または複数のアミノ酸に付加、欠失、置換等の
変異を導入した変異型ルシフェラーゼを使用することが
できる。
【0041】ルシフェリン−ルシフェラーゼ発光反応に
より生じた光の発光量は、ルミノメーター、例えばアロ
カ社製ルミネッセンスリーダーBLR−201(改良
型)、ベルトールド社製Lumat LB9501等により測定す
ることができる。また、細胞を捕捉した濾過膜を試料と
する場合、生物発光画像解析システム装置、例えばAR
GUSー50/CL〔テーパーファイバー付:浜松ホト
ニクス(株)社製〕を用いて濾過膜上の輝点を撮像する
ことにより、細胞数を測定することが可能である。
【0042】(2)ATP変換反応を利用する標的AT
Pの測定法 試料中の細胞の有無の判定や細胞数の計測を目的とする
場合、細胞中に含まれるアデノシンリン酸エステルであ
ってATP以外のもの(例えばAMP、ADP、サイク
リックAMP等)をATPに変換した後、全てのATP
を測定すれば、細胞の有無の判定等が容易になる。AT
P以外のアデノシンリン酸エステルをATPに変換する
反応を「ATP変換反応」という。
【0043】特にルシフェリン-ルシフェラーゼ発光反
応を利用して標的ATPを測定する場合、発光反応の結
果、ATPからAMPが生成するので、ATP変換反応
を利用してAMPからATPを再生させることにより、
発光量や発光時間を増加させることができる。
【0044】ATP変換反応を利用する方法は、標的A
TPの測定感度を向上させる方法として好適である。し
かしながら、測定系に、バックグラウンドATP、ある
いはATP以外のアデノシンリン酸エステルが混入して
いる場合、標的ATPの正確な測定が困難になるという
問題があった。
【0045】ATP分解酵素として知られるアピラーゼ
は、ATPおよびADPを脱リン酸化する酵素であり、
AMPには作用しない。一方、アデノシンリン酸デアミ
ナ−ゼは、試料等に混入したATP、AMP、ADPを
分解することができる。従って本発明は、ATP変換反
応を利用する標的ATPの測定法において、特に好適に
使用できる。
【0046】ATP変換反応としては、例えばピルベ−
トオルトホスフェ−トジキナ−ゼ(以下「PPDK」と
いう)が関与する反応が挙げられる。PPDKは、マグ
ネシウムイオン存在下で、AMP、ホスホエノ−ルピル
ビン酸及びピロリン酸に作用して、ATP、ピルビン酸
及びリン酸を生成させる反応を触媒し、その逆の反応も
触媒する公知酵素である。PPDKが触媒するATP生
成反応は以下の通りである。
【0047】
【化2】
【0048】PPDKの理化学的性質及び製法は公知で
あり、その入手は比較的に容易である。植物由来のPP
DKとしては、例えばトウモロコシ葉由来[Biochemistr
y 12、2862-2867 (1973)]及びサトウキビ葉由来[The Bio
chemical Journal 114、117-125(1969)]の酵素が挙げら
れる。 また、微生物由来のものとしては、例えばプロ
ピオニバクテリウム・シェルマニ(Propionibacterium s
hermanii)[Biochemistry10、721-729(1971)]、アセトバ
クタ−・キシリナム(Acetobacter xylinum)[Journal of
Bacteriology(1970)]、バクテロイデス・シンビオサス
(Bacteroides symbiosus)[Methods in Enzymology 42、1
99-212(1975)]及びミクロビスポ−ラ属[例えばミクロ
ビスポ−ラ・サ−モロ−ザ(Microbispora thermorosea)
IFO 14047]等に属する微生物の生産する酵素が挙げられ
る。ミクロビスポ−ラ・サ−モロ−ザ(Microbispora th
ermorosea IFO 14047)由来のPPDKを使用する場合、
酵素の精製及び活性測定は、特開平8−168375号
に記載の方法に従えばよい。
【0049】本発明のPPDKとしては、上記の生物か
ら精製した天然型PPDKの他、酵素活性を失わない範
囲で、天然型PPDKのアミノ酸配列中の1または複数
のアミノ酸に付加、欠失、置換等の変異が導入された変
異型PPDKを使用することもできる。
【0050】ATP変換反応を利用する標的ATPの測
定法の一例として、PPDKが関与するATP変換反応
と、ルシフェリン-ルシフェラーゼ発光反応とを組み合
わせた方法について説明する。この方法では、次の
(イ)〜(ニ)を含むATP変換反応試薬、ルシフェリ
ン−ルシフェラーゼ発光試薬、標的ATPを接触させ、
生成した光の発光量を測定する。
【0051】(イ)PPDK (ロ)ホスホエノ−ルピルビン酸 (ハ)ピロリン酸 (ニ)マグネシウムイオン又は他の金属イオン PPDKを利用することにより、AMPからATPが新
たに生成され、かつルシフェリン-ルシフェラーゼ発光
反応において消費されたATPも再生される。その結
果、発光量および発光時間が増大するので、測定感度が
向上する。
【0052】ATP変換反応試薬、発光試薬、標的AT
Pの反応は以下の通りである。
【0053】
【化3】
【0054】また、上記(イ)〜(ニ)を含むATP変
換反応試薬に、ピルビン酸キナーゼを加えた場合は、A
MPのみならず、ADPからもATPが生成する。その
反応は以下の通りである。
【0055】
【化4】
【0056】また、上記(イ)〜(ニ)を含むATP変
換反応試薬に、サイクリック3’,5’−ヌクレオチド
ホスホジエステラーゼを加えた場合は、AMPのみなら
ず、サイクリックAMPからもATPが生成する。その
反応は以下の通りである。
【0057】
【化5】
【0058】〔バックグラウンドATP分解用試薬キッ
トについて〕本発明のバックグラウンドATP分解用試
薬キットは、以下の成分を含むものである。
【0059】(1)アデノシンリン酸デアミナ−ゼ (2)阻害剤 阻害剤としては、例えば、コホルマイシンが挙げられ
る。(1)と(2)の成分は分離して保存する必要があ
る。また各成分は、乾燥状態または溶液状態で保存され
うる。また、各成分には、pH調製や保存性向上に関与
する物質を添加してもよい。そのような物質としては、
例えば、EDTA 2Na、ジチオスレイトール、硫酸アンモ
ニウム、シュークロース、HEPES等が挙げられる。
【0060】上記の各成分は、本発明の測定系で使用す
る他の試薬と混合して使用してもよい。 〔標的ATP測定用試薬キットについて〕本発明の標的
ATP測定用試薬キットは、以下の成分を含むものであ
る。
【0061】(1)アデノシンリン酸デアミナ−ゼ (2)阻害剤 (3)標的ATPの測定に関与する物質 阻害剤としては、例えば、コホルマイシンが挙げられ
る。
【0062】標的ATP測定用試薬キットにおいて、
(1)アデノシンリン酸デアミナ−ゼと(2)阻害剤と
は分離して保存する必要がある。また各成分は、乾燥状
態または溶液状態で保存されうる。また、各成分には、
pH調製や保存性向上に関与する物質を添加してもよ
い。そのような物質としては、例えば、EDTA 2Na、ジ
チオスレイトール、硫酸アンモニウム、シュークロー
ス、HEPES等が挙げられる。
【0063】なお、(1)と(3)の成分、あるいは
(2)と(3)の成分は混合して使用してもよい。混合
する成分の組み合わせは、採用する測定系の種類・性状
等に応じて適宜設定すればよい。また、各成分は、本発
明の測定系で使用する他の試薬と混合して使用してもよ
い。
【0064】「標的ATPの測定に関与する物質」と
は、特に限定されず、標的ATPを測定するために使用
される任意の物質を意味する。ルシフェリン-ルシフェ
ラーゼ発光反応を利用して標的ATPを測定する場合、
「標的ATPの測定に関与する物質」とは、例えば以下
の成分を含むものである。
【0065】(イ)ルシフェラーゼ (ロ)ルシフェリン (ハ)マグネシウムイオン又は他の金属イオン また、ATP変換反応とルシフェリン-ルシフェラーゼ
発光反応とを組み合わせた方法により標的ATPを測定
する場合、「標的ATPの測定に関与する物質」とは、
例えば以下の成分を含むものである。
【0066】(イ)ルシフェラーゼ (ロ)ルシフェリン (ハ)ピルベ−トオルトフォスフェ−トジキナ−ゼ (ニ)ホスホエノ−ルピルビン酸 (ホ)ピロリン酸 (ヘ)マグネシウムイオン又は他の金属イオン 〔本発明の具体例〕以下具体例により本発明をさらに詳
説する。 具体例1:(阻害剤がコホルマイシン、標的ATPが細
胞内ATPであり、標的ATPをルシフェリン−ルシフ
ェラーゼ発光反応を利用する方法により測定する場合) 1.アデノシンリン酸デアミナ−ゼによるバックグラウ
ンドATPの分解 まず、細胞を含む試料にアデノシンリン酸デアミナーゼ
溶液を添加して、試料中のバックグラウンドATPを分
解する。
【0067】試料としては、例えば、細胞を含む溶液、
細胞を捕捉した濾過膜等が使用できる。
【0068】アデノシンリン酸デアミナーゼによるバッ
クグラウンドATPの分解条件は、試料の種類・性状等
に応じて適宜設定すればよい。バックグラウンドATP
の分解は、例えば下記の条件で行なうことができる。
【0069】(1)アデノシンリン酸デアミナ−ゼの終
濃度:0.001U/ml以上(特に0.01〜10U
/mlであることが好ましい) (2)pH条件:弱酸性〜弱アルカリ性(特にpH5.
0〜8.0が好ましい) (3)反応温度:20〜50℃(特に40〜45℃が好
ましい) (4)反応時間:約2時間以内(特に1〜30分が好ま
しい) 試料やアデノシンリン酸デアミナ−ゼ溶液のpHの調整
には、リン酸緩衝液、ヘペス(HEPES)緩衝液、メ
ス(MES)緩衝液等が使用できる。
【0070】なお、アデノシンリン酸デアミナ−ゼの活
性は、以下の方法で測定するものとする。基質溶液(1
00mM酢酸ナトリウム(pH5.0)、1mM ED
TA、80μM ATP)3mlに酵素溶液100μl
を添加し、30℃で30分間反応した後に60%過塩素
酸100μlを添加して、反応を停止し、265nmの
吸光度ODを測定する。OD値が1分間当り2.4変化
する酵素量を1ユニット(U)とする。
【0071】2.コホルマイシンによるアデノシンリン
酸デアミナ−ゼの失活 バックグラウンドATPを分解した後の試料にコホルマ
イシン溶液を添加して、試料中のアデノシンリン酸デア
ミナーゼを失活させる。
【0072】コホルマイシン添加量や反応条件は、試料
の種類・性状、試料に添加したアデノシンリン酸デアミ
ナ−ゼの終濃度等に応じて適宜設定すればよい。効率よ
くアデノシンリン酸デアミナ−ゼを失活させる点から、
コホルマイシン溶液の添加は、例えば下記の条件で行な
うことができる。
【0073】(1)コホルマイシンの終濃度:100p
M以上、特に10nM〜1mMであることが好ましい) (2)反応時間:約2秒以上、特に10秒〜2分が好ま
しい) 3.細胞内ATPの抽出 測定感度の向上のため、細胞内ATPの測定に先立ち、
該ATPを細胞外に抽出することが好ましい。
【0074】ATPの抽出法は特に限定されないが、例
えば、ATP抽出試薬を試料に添加する方法が採用され
る。ATP抽出試薬としては、例えば、エタノールとア
ンモニアの混合液、メタノール、エタノール、界面活性
剤(塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、トリ
トンX100等)水溶液、トリクロル酢酸水溶液、過塩
素酸水溶液等が使用できる。
【0075】なお、コホルマイシンを試料に添加する工
程と、細胞内ATPの抽出工程とを同時に行ってもよ
い。その場合は、アデノシンリン酸デアミナーゼにより
試料中のバックグラウンドATPを分解した後、該試料
にコホルマイシンを含む抽出試薬を添加すればよい。 4.細胞内ATPの測定 試料中のアデノシンリン酸デアミナーゼを失活させた
後、細胞内ATPを測定する。細胞内ATPの測定法は
特に限定されないが、例えば、ルシフェリン−ルシフェ
ラーゼ発光反応を利用する方法が使用できる。その場合
は、以下の(イ)〜(ハ)の物質を含むルシフェリン-
ルシフェラーゼ発光試薬を試料に添加し、生じた光の発
光量を測定すればよい。
【0076】(イ)ルシフェリン (ロ)ルシフェラーゼ (ハ)マグネシウムイオン また、ATP変換反応を利用して細胞内ATPを測定す
る場合は、ATP変換反応試薬とルシフェリン-ルシフ
ェラーゼ発光試薬との混合試薬を調製し、該試薬を試料
に添加すればよい。その場合、以下の(イ)〜(ヘ)の
物質を含む発光試薬を試料に添加し、生じた光の発光量
を測定すればよい。
【0077】(イ)PPDK (ロ)ホスホエノ−ルピルビン酸 (ハ)ピロリン酸 (ニ)マグネシウムイオン又は他の金属イオン (ホ)ルシフェリン (ヘ)ルシフェラーゼ 具体例2:(阻害剤がコホルマイシン、拭き取り検査に
おける検体溶液が試料であり、かつ試料中に含まれるA
TPが標的ATPであって、標的ATPをATP変換反
応を利用する方法により測定する場合) 使用する試薬:以下の(イ)〜(ヘ)の物質を含むPP
DK発光試薬 (イ)PPDK (ロ)ホスホエノ−ルピルビン酸 (ハ)ピロリン酸 (ニ)マグネシウムイオン又は他の金属イオン (ホ)ルシフェリン (ヘ)ルシフェラーゼ 1.試薬中のバックグラウンドATPの分解 PPDK発光試薬にアデノシンリン酸デアミナ−ゼ溶液
を添加して、PPDK発光試薬中のバックグラウンドA
TPおよびアデノシンリン酸エステルを分解する。 2.コホルマイシンによるアデノシンリン酸デアミナ−
ゼの失活 アデノシンリン酸デアミナ−ゼを含むPPDK発光試薬
にコホルマイシン溶液を添加し、アデノシンリン酸デア
ミナ−ゼを失活させる。 3.標的ATPの測定 PPDK発光試薬に試料を添加する。PPDK発光試薬
と、試料中の標的ATPとの接触によりルシフェリン-
ルシフェラーゼ発光反応が起こる。生じた発光の発光量
を測定することにより標的ATPが測定される。PPD
K発光試薬中にはATP変換反応に関与する物質が含ま
れているので、発光量が増加し、かつ発光が長時間持続
する。
【0078】
【実施例】以下実施例により本発明を詳細に説明する。
なお、本発明は実施例により限定されない。
【0079】〔実施例1〕:(コホルマイシンによるア
デノシンリン酸デアミナ−ゼの失活、およびコホルマイ
シンのルシフェリン-ルシフェラーゼ発光反応に与える
影響に関する実験) (1)本発明 アデノシンリン酸デアミナーゼ(Aspergillus属由来)
を0.05U/mlで含有する蒸留水をサンプル液とした。サン
プル液100μlに150μMのコホルマイシン(CALBI
OCHEM社製)溶液を5μl添加して、30秒放置した
後、2x10-9 MのATP溶液を添加した。次いで、キッコー
マン社製ルシフェールLUを100μl添加し、発光量(RL
U)の経過をベルトールド社製Lumat LB9501にて2秒
ごとに計測した。
【0080】(2)比較例 コホルマイシンを添加しない比較例として、サンプル液
100μlに蒸留水を5μl添加して、30秒放置してから2x
10-9 M のATP溶液を添加した。そして、キッコーマン
社製ルシフェールLUを100μl添加した。発光の経過を上
記と同様に計測した。
【0081】(3)対照 対照として、蒸留水100μlに蒸留水を5μl添加して、3
0秒放置してから2x10-9 M のATP溶液を添加した。そ
して、キッコーマン社製ルシフェールLUを100μl添加し
た。発光の経過を上記と同様にして測定した。 (4)結果 結果を図1に示す。
【0082】比較例では、アデノシンリン酸デアミナ−
ゼによりATPが分解されるので発光の減衰が大きい。一
方、本発明では、コホルマイシンによりアデノシンリン
酸デアミナ−ゼが失活するのでサンプル液に添加したAT
Pが分解されず、発光の減衰が少ないことがわかる。
【0083】本発明と対照とを比較すると、コホルマイ
シンは、ルシフェリン-ルシフェラーゼ発光反応を阻害
しないことがわかる。
【0084】コホルマイシンの使用により、標的ATP
の測定を阻害することなくアデノシンリン酸デアミナ−
ゼを失活させることが可能となることがわかる。 〔実施例2〕:(標的ATPの測定法がATP変換反応を利用する方法である場 合の実験例) 試薬:PPDK発光試薬 ルシフェリン 0.5mM ゲンジボタルルシフェラーゼ 1.5mg/ml PPDK(Microbispora thermorosea IFO14047由来) 0.6U/ml ホスホエノールピルビン酸 1.4mM EDTA 2Na 1.0mM ジチオスレイトール 1.0mM 硫酸マグネシウム 15mM 硫酸アンモニウム 2.5mM ピロリン酸ナトリウム 14μM シュークロース 0.37% アデノシンリン酸デアミナーゼ(Aspergillus属由来) 0.1U/ml HEPES 50mM(pH7.0)
【0085】(1)本発明 PPDK発光試薬100μlに300μMコホルマイシン(CA
LBIOCHEM社製)溶液を5μl添加して30秒放置
し、PPDK発光試薬中のアデノシンリン酸デアミナ−
ゼを失活させた。
【0086】PPDK発光試薬に4x10-10 MATP溶液を1
0μl添加し、発光の経過をベルトールド社製Lumat LB9
501にて2秒ごとに計測した。 (2)比較例 コホルマイシンを添加しない比較例として、300μMコホ
ルマイシン溶液の代わりに、超純水5μlを添加する以外
は上記(1)と同様にして、発光を計測した。 (3)結果 結果を図2に示す。
【0087】比較例では、PPDK発光試薬中のアデノ
シンリン酸デアミナーゼにより測定系中のATPやAMPが分
解され、わずか5分間で発光が減衰してしまう。一方、
本発明ではPPDK発光試薬中のアデノシンリン酸デア
ミナーゼが失活されることにより、ATP変換反応が行
われるので、発光が長時間にわたって持続する。
【0088】本発明は、ATP変換反応を利用する標的
ATPの測定法において好適に使用されうることが分か
る。 〔実施例3〕:(細胞内ATPの測定による、大腸菌の
細胞数の測定) 使用する試薬:ルシフェリン-ルシフェラーゼ発光試薬 ルシフェリン 0.5mM ゲンジボタルルシフェラーゼ 1.5mg/ml 硫酸マグネシウム 10mM EDTA 2Na 1.0mM ジチオスレイトール 1.0mM シュークロース 0.37% HEPES 50mM(pH 7.5) (1)本発明 標準培地(酵母エキス0.25%、グルコース0.1%、トリ
プトン0.5%、pH7.1)8mlに大腸菌(Escherichia col
i NISL B-4300)を一白金耳植菌し、35℃で一晩静
置培養した。培養液を、新しい標準培地にて10000倍希
釈し、希釈液を試料とした。
【0089】試料に、終濃度1.0U/mlとなるようにアデ
ノシンリン酸デアミナーゼ(Aspergillus属由来)溶液
を添加して35℃で30分静置し、試料中のバックグラウ
ンドATPを分解した。
【0090】試料100μlに、300μMコホルマイシン
(CALBIOCHEM社製)溶液を5μl添加し、30秒
後にキッコーマン社製ATP抽出試薬100μlを添加した。
さらに20秒後にルシフェリン-ルシフェラーゼ発光試薬
を100μl添加して、キッコーマン社製ルミテスターK-10
0にて発光量を測定した。
【0091】あらかじめ作成したATP検量線より細胞内
ATP量を求めたところ、1.93x10-13mol/mlであった。
この値をあらかじめ求めた、一細胞あたりのATP量4x10
-18molで割って、細胞数を求めたところ、48300 CFU/m
lであった。
【0092】なお、一細胞あたりのATP量は、標準培地
中のバックグラウンドATPをアデノシンリン酸デアミナ
ーゼで分解し、オートクレーブでアデノシンリン酸デア
ミナーゼを失活させた培地を使用して求めた。 (2)比較例1 コホルマイシン300μMの溶液を5μl添加する代わりに、
超純水を5μl添加して上記と同様に細胞内ATP量を求め
たところ、3.67x10-14molであった。この値を一細胞あ
たりのATP量4x10-18 molで割って、細胞数を求めたと
ころ、9180 CFU/mlであった。 (3)比較例2 アデノシンリン酸デアミナ−ゼ溶液およびコホルマイシ
ン溶液の代わりに、超純水を使用した以外は上記(1)
と同様の操作を行い、細胞内ATP量を求めた。しかしな
がら、培養液に含まれていたバックグラウンドATPに
由来する強い発光が生じたため、細胞数の測定は不可能
であった。 (4)対照 上記試料を、標準寒天培地(酵母エキス0.25%、グルコ
ース0.1%、トリプトン0.5%、寒天1.5%、pH7.1)を用
いて、混釈培養法により、35℃で2日間培養して細胞数
を求めたところ、48600CFU/mlであった。 (4)結果 本発明では、抽出された細胞内ATPが分解されることな
く測定できる。従って、本発明の結果は、混釈培養法
(対照)により求めた細胞数と良く一致した。
【0093】しかしながら、比較例1では、試料中のア
デノシンリン酸デアミナーゼにより、抽出された細胞内
ATPが分解されてしまう。このため、比較例の結果は、
混釈培養法により求めた細胞数に比べ大幅に少なかっ
た。
【0094】 実施例4(細胞内ATPの測定による、濾過膜に捕捉された酵母の細胞数の測 定) 試薬 ・PPDK発光試薬 ルシフェリン 0.5mM ゲンジボタルルシフェラーゼ 1.5mg/ml PPDK(Microbispora thermorosea IFO14047由来)0.6U/ml ホスホエノールピルビン酸 1.4mM EDTA 2Na 1.0mM ジチオスレイトール 1.0mM 硫酸マグネシウム 15mM 硫酸アンモニウム 2.5mM ピロリン酸ナトリウム 14μM シュークロース 0.37% HEPES 50mM(pH7.0) ・ATP抽出試薬 エタノール90% 水酸化アンモニウム1% コホルマイシン 0.015mM
【0095】(1)本発明 サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisia
e, NISL Y-3398)をYM培地(1%グルコース、0.5%
ペプトン、0.3%酵母エキス、0.3%モルトエキス、pH
6.0)を用いて一晩培養を行い、培養液を市販のビール
で希釈した。得られた希釈液を試料とした。
【0096】濾過膜(日本ミリポア社製RMD特殊メン
ブレンフィルター:0.45μm疎水性格子入り、直径47m
m)を装着した濾過器に5mlの超純水を加え、さらに
試料0.1mlを加えてから吸引濾過した。さらに超純水1
0mlを用いて2回洗浄した後、0.5U/mlのアデノシンリ
ン酸デアミナーゼ(Aspergillus属由来)溶液5mlに
濾過膜を10分間浸漬した。
【0097】さらにアデノシンリン酸デアミナーゼ溶液
(0.01U/ml)5mlにて濾過膜を洗浄した後、ATP抽
出試薬を松下電工製超音波式噴霧器(EW622)にて10秒
間噴霧した。次いで濾過膜を50℃で乾燥させた。
【0098】濾過膜上に、PPDK発光試薬を10秒間
噴霧した後、5分間放置した。次いで、浜松ホトニクス
社製ARGUS 50にて濾過膜状の発光を10分間蓄積させ
た後、画像処理を行い、テレビモニター上で閾値以上の
輝点のみを撮像し細胞数を求めた。細胞数は41であっ
た。 (2)比較例1 コホルマイシンを含まないATP抽出試薬を用いた以外
は、上記(1)と同様の操作を行い、濾過膜上の細胞数
を求めた。細胞数は0であった。 (3)比較例2 アデノシンリン酸デアミナ−ゼ溶液およびコホルマイシ
ン溶液の代わりに蒸留水を使用した以外は上記(1)と
同様の操作を行い、濾過膜上の細胞数を求めた。しかし
ながら、ビールに含まれていたバックグラウンドATP
に由来する強い発光が濾過膜全体に生じたため、細胞数
の測定は不可能であった。 (4)対照 上記試料を、YM寒天培地上、35℃で48時間培養し
て、細胞数を求めた。細胞数は39であった。 (5)結果 比較例1では、標的ATPおよび発光反応において生成
したAMPが、アデノシンリン酸デアミナ−ゼにより分
解されるので、発光が短時間で減衰し、輝点が出現しな
かった。
【0099】一方、本発明では、コホルマイシンにより
アデノシンリン酸デアミナ−ゼが失活してATP変換反
応が継続するので、発光量および発光時間が増大し、輝
点が出現した。また、本発明の結果は、YM寒天培地を
用いて求めた細胞数と良く一致した。
【0100】
【発明の効果】本発明ではアデノシンリン酸デアミナ−
ゼにより、測定系に存在するバックグラウンドATPが
効率的に分解され、該アデノシンリン酸デアミナ−ゼ
は、阻害剤(標的ATPの測定を阻害しない物質、例え
ば、コホルマイシン)の添加により失活する。アデノシ
ンリン酸デアミナーゼとコホルマイシンとを組み合わせ
て用いることにより、バックグラウンドATPによる影
響(測定感度の低下等)を受けない標的ATPの測定が
可能となる。
【0101】本発明により、バックグラウンドATPを
ATP分解酵素により分解する工程を含む標的ATPの
測定法において、標的ATPの測定を阻害することなく
ATP分解酵素を失活させることを特徴とする標的AT
Pの測定法が提供され、また、該標的ATPの測定法に
用いられる試薬キットが提供された。
【0102】本発明は、各種工業分野、特に、食品衛生
・バイオ・臨床検査・医学などの現場における標的AT
Pの測定法として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の方法における発光量の経時変化
【図2】実施例2の方法における発光量の経時変化

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下の工程を含むことを特徴とする標的A
    TPの測定法 (1)測定系に存在するバックグラウンドATPを、ア
    デノシンリン酸デアミナ−ゼにより分解する工程。 (2)上記アデノシンリン酸デアミナ−ゼを阻害剤によ
    り失活させる工程。 (3)標的ATPを測定する工程。
  2. 【請求項2】標的ATPを測定する方法がルシフェリン
    −ルシフェラーゼ発光反応を利用する方法である、請求
    項1に記載の測定法。
  3. 【請求項3】標的ATPを測定する方法がATP変換反
    応を利用する方法である、請求項1に記載の測定法。
  4. 【請求項4】以下の工程を含むことを特徴とする細胞内
    ATPの測定法 (1)細胞を含む試料にアデノシンリン酸デアミナーゼ
    を添加して、試料中のバックグラウンドATPを分解す
    る工程。 (2)バックグラウンドATPを分解した後の試料に阻
    害剤を添加して、試料中のアデノシンリン酸デアミナー
    ゼを失活させる工程。 (3)細胞内ATPを測定する工程。
  5. 【請求項5】以下の工程を含むことを特徴とする細胞内
    ATPの測定法。 (1)細胞を含む試料にアデノシンリン酸デアミナーゼ
    を添加して、試料中のバックグラウンドATPを分解す
    る工程。 (2)バックグラウンドATPを分解した後の試料に阻
    害剤を添加して、試料中のアデノシンリン酸デアミナー
    ゼを失活させる工程 (3)細胞内ATPを抽出する工程 (4)抽出された細胞内ATPを測定する工程。
  6. 【請求項6】細胞内ATPを測定する方法がルシフェリ
    ン−ルシフェラーゼ発光反応を利用する方法である、請
    求項4または5に記載の測定法。
  7. 【請求項7】細胞内ATPを測定する方法がATP変換
    反応を利用する方法である、請求項4または5に記載の
    測定法。
  8. 【請求項8】以下の成分を含むバックグラウンドATP
    分解用試薬キット。 (1)アデノシンリン酸デアミナ−ゼ (2)阻害剤
  9. 【請求項9】以下の成分を含む標的ATP測定用試薬キ
    ット。 (1)アデノシンリン酸デアミナ−ゼ (2)阻害剤 (3)標的ATPの測定に関与する物質
  10. 【請求項10】以下の成分を含む標的ATP測定用試薬
    キット。 (1)アデノシンリン酸デアミナ−ゼ (2)阻害剤 (3)ルシフェラーゼ (4)ルシフェリン (5)マグネシウムイオン又は他の金属イオン
  11. 【請求項11】以下の成分を含む標的ATP測定用試薬
    キット。 (1)アデノシンリン酸デアミナ−ゼ (2)阻害剤 (3)ルシフェラーゼ (4)ルシフェリン (5)ピルベ−トオルトフォスフェ−トジキナ−ゼ (6)ホスホエノ−ルピルビン酸 (7)ピロリン酸 (8)マグネシウムイオン又は他の金属イオン
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