JPH1153967A - 配向性多結晶基材と酸化物超電導導体およびその製造方法 - Google Patents
配向性多結晶基材と酸化物超電導導体およびその製造方法Info
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- JPH1153967A JPH1153967A JP9208104A JP20810497A JPH1153967A JP H1153967 A JPH1153967 A JP H1153967A JP 9208104 A JP9208104 A JP 9208104A JP 20810497 A JP20810497 A JP 20810497A JP H1153967 A JPH1153967 A JP H1153967A
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Abstract
基材上に従来よりも速い成膜速度で堆積させることがで
きることを目的とするとともに、強度や硬度の高い基材
を用いてその上に結晶配向性の高い多結晶薄膜を形成
し、配向性に優れた多結晶薄膜を有すると同時に強度の
高い基材を備えた酸化物超電導導体を製造する技術の提
供を目的とする。 【解決手段】 本発明は、基材1と配向性多結晶中間層
2を具備してなり、更に配向性機能層3が積層される配
向性多結晶基材3であって、立方晶系の高融点の高硬度
金属からなり、圧延集合組織とされたことを特徴とす
る。
Description
材上に結晶配向性に優れた中間層を備えたもの、およ
び、更にその上に超電導特性の優秀な酸化物超電導層な
どの配向性機能層を備えた構造とその製造方法に関す
る。
は、液体窒素温度を超える臨界温度を示す優れた超電導
体であるが、現在、この種の酸化物超電導体を実用的な
超電導導体として使用するためには、種々の解決するべ
き問題点が存在している。その問題点の1つが、酸化物
超電導体の臨界電流密度が低いという問題である。
う問題は、酸化物超電導体の結晶自体に電気的な異方性
が存在することが大きな原因となっており、特に酸化物
超電導体はその結晶軸のa軸方向とb軸方向には電気を
流し易いが、c軸方向には電気を流しにくいことが知ら
れている。このような観点から酸化物超電導体を基材上
に形成してこれを超電導導体として使用するためには、
基材上に結晶配向性の良好な状態の酸化物超電導体を形
成し、しかも、電気を流そうとする方向に酸化物超電導
体の結晶のa軸あるいはb軸を配向させ、その他の方向
に酸化物超電導体のc軸を配向させる必要がある。
使用するためには、テープ状などの長尺の基材上に結晶
配向性の良好な酸化物超電導層を形成する必要がある。
ところが、金属テープなどの基材上に酸化物超電導層を
直接形成すると、金属テープ自体が多結晶体でその結晶
構造も酸化物超電導体と大きく異なるために、結晶配向
性の良好な酸化物超電導層は到底形成できないものであ
る。しかも、酸化物超電導層を形成する際に行なう熱処
理によって金属テープと酸化物超電導層との間で拡散反
応が生じるために、酸化物超電導層の結晶構造が崩れ、
超電導特性が劣化する問題がある。そこで本発明者ら
は、ハステロイテープなどの金属テープからなる図4に
示すような基材10の上にイットリウム安定化ジルコニ
ア(YSZ)などの多結晶薄膜(中間層)11を形成
し、この多結晶薄膜11上に、酸化物超電導体の中でも
臨界温度が約90Kであり、液体窒素(77K)中で用
いることができる安定性に優れたY1Ba2Cu3Ox系の
超電導層12を形成することで超電導特性の優れた超電
導導体13を製造する試みを種々行なっている。このよ
うな試みの中から本発明者らは先に、結晶配向性に優れ
た多結晶薄膜を形成するために、あるいは、超電導特性
の優れた超電導テープを得るために、特願平3−126
836号、特願平3−126837号、特願平2−20
5551号、特願平4−13443号、特願平4−29
3464号、特願平5−210777号などにおいて特
許出願を行なっている。
ば、成膜処理容器内に設けたターゲットの構成粒子をハ
ステロイテープなどのテープ状の基材上に堆積させる際
に、イオンソースから発生させたイオンビームを基材の
成膜面の法線に対して斜め方向からある特定の入射角度
(50〜60度)で照射しつつ堆積させ、基材上に多結
晶薄膜を形成する方法(イオンビームアシスト蒸着法:
IBAD法)により、結晶配向性に優れた多結晶薄膜を
形成することができる。この多結晶薄膜は、立方晶系の
結晶構造を有する微細な結晶粒が、多数、結晶粒界を介
して接合一体化されてなり、各結晶粒の結晶軸のc軸は
基材の上面(成膜面)に対して直角に配向されており、
各結晶粒の結晶軸のa軸どうしおよびb軸どうしが互い
に同一方向に向けられて基材の成膜面と平行な面に沿っ
て面内配向されており、また、図6に示すように多結晶
薄膜11を構成する各結晶粒20のa軸(あるいはb
軸)どうしは、それらのなす角度(粒界傾角K)を30
度程度以下に揃えて配向しているものである。そして更
に、この結晶配向性に優れた多結晶薄膜上にYBaCu
O系の超電導層をレーザー蒸着法等により成膜するなら
ば、酸化物超電導層の結晶配向性も優れたものになり、
これにより、77Kで臨界電流密度が105A/cm2以
上と高い酸化物超電導導体を得ることができる。
して製造された酸化物超電導導体13の他に、図5に示
すようなNiあるいはAgからなる配向性金属テープを
基材15とし、その上に反応防止中間層16と酸化物超
電導層17を積層してなる構造の酸化物超電導導体18
が知られている。この種の酸化物超電導導体において
は、NiあるいはAgからなる金属テープに圧延加工を
施してその組織を集合組織として組織的な配向性を高
め、この配向性金属テープを基に反応防止中間層と酸化
物超電導層の結晶配向性を高めようとした構造である。
IBAD法による酸化物超電導導体13は、優れた臨界
電流密度を示すものとして知られているが、中間層とし
て用いる多結晶薄膜11を成膜するために時間がかかり
製造効率が悪いという問題があった。これはIBAD法
が、イオンビームを斜め方向から照射しながらYSZの
原子の堆積を行う際に、並びの悪い配向性の悪いエネル
ギー的に不安定な原子をイオンビームのスパッタ効果で
弾き飛ばして除去し、並びの良い配向性の良好なエネル
ギー的に安定な原子のみを選択的に残して堆積させるこ
とで配向性の良好な多結晶薄膜を得ようとする技術であ
るので、スパッタによる原子の堆積効率が低下するため
に、通常のスパッタによる成膜に比べて成膜レートが悪
いことに起因している。なおここで、本発明者らが原子
の堆積の状態を観察した結果、IBAD法による原子の
堆積の進行は、初期において特に遅く、ある程度の厚さ
の配向性の良好な原子が堆積した後では比較的速いこと
が判明した。これは、原子の堆積の初期段階においては
特に並びの悪い配向性の悪い状態の原子が堆積しようと
するが、これら多くの並びの悪い原子をイオンビームが
弾きとばす結果、堆積の初期段階において特に成膜レー
トが悪く、ある程度配向性が整った状態で原子堆積が進
行した後は、その後に堆積される原子は良好な配向性で
堆積する確立が高いためであると思われる。今回本発明
者らは、このようなIBAD法に基づき、結晶配向性に
優れた多結晶薄膜を基材上に従来よりも速い成膜速度で
堆積させることができることを目的として本願発明に到
達した。
の基材15を用いた従来構造の酸化物超電導導体18
は、基材15の圧延による集合組織を利用した構造であ
るために、Ni、Agなどの比較的柔らかい基材(Ag
はHv=20〜30、NiはHv=80程度)を用いる必
要があった。ここで、超電導導体の適用技術は超電導磁
石あるいは超電導発電機などのように強大な磁力や大き
な機械力が作用する部材に適用されるので、基材はでき
る限り硬度や強度の高いものが好ましいがNiやAgで
は強度不足になるおそれがある。また、Niはそれ自身
強磁性を有するために、磁場応用の基材には適用できな
い問題がある。本発明者らはこのような従来構造の問題
に鑑み、強度や硬度の高い基材を用いてその上に結晶配
向性の高い多結晶薄膜を形成し、配向性に優れた多結晶
薄膜を有すると同時に強度の高い基材を備えた酸化物超
電導導体を製造する技術の提供を目的とする。
するために、基材と配向性多結晶中間層とを具備してな
り、配向性機能層が積層される配向性多結晶基材であっ
て、基材が立方晶系の高融点の高硬度金属からなり、圧
延集合組織とされたことを特徴とする。更に本発明は、
立方晶系の高融点の高硬度金属からなり、圧延集合組織
とされた基材と、この基材上に形成された配向性多結晶
中間層と、この配向性多結晶中間層上に形成された酸化
物超電導層とを具備してなる。次に本発明は、立方晶系
の高融点の高硬度金属からなる素材に対し、加工度90
%以上の圧延加工を施した後に再結晶温度以上の温度に
加熱する熱処理を施して基材を形成し、この基材上に中
間層の構成粒子を堆積させると同時に斜め方向からイオ
ンビームを照射して配向性多結晶中間層を形成するとと
もに、この配向性多結晶中間層上に酸化物超電導層を積
層することを特徴とする。
酸化物超電導層を積層してなる酸化物超電導導体の一実
施形態の断面構造を示すもので、この実施形態の酸化物
超電導導体1は、テープ状などの基材1の上面に中間層
(配向性多結晶薄膜)2が積層されて多結晶基材3が構
成され、この多結晶基材3の上面に酸化物超電導層(配
向性機能層)4が積層されてテープ状の酸化物超電導導
体5が構成されている。前記基材1は、Ni-Cr系
(具体的には、Ni-Cr-Fe-Mo系のハステロイ
B、C、X等)、W-Mo系、Fe-Cr系(例えば、オ
ーステナイト系ステンレス)、Fe-Ni系(例えば、
非磁性の組成系のもの)などの材料に代表される立方晶
系のHv=150以上の非磁性の合金からなることが好
ましく、これらの系の合金に90%以上の熱間圧延加工
が施され、更にその後に再結晶温度(1200〜150
0℃)以上の温度で数時間、例えば、1500℃の温度
で5時間の熱処理が施されて再結晶集合組織とされたも
のである。また、基材1の表面は表面粗さ±10〜20
nm、面内配向性を示すFWHM(半値全幅)の値が1
0゜程度とされていることが好ましい。
%、Fe:4〜20%、Mo:8〜30%、Co:0.
5〜2.5%、W:0.2〜4.5%、残部Niの組成を
主体とすることで知られるもので、Hv=200〜40
0の範囲の硬度が高いものである。 これらのハステロ
イに代表されるNi-Cr系の合金は、いずれも、高硬
度の合金であり、90%以上の強加工後に再結晶温度以
上で熱処理されることで集合組織とされて良好な結晶配
向性を示すようになる。前記中間層(配向性多結晶薄
膜)2は、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、
酸化セリウム(CeO2)、酸化イットリウム(Y
2O3)などからなり、本発明者らが特許出願している前
述のIBAD法により基材1上に成膜したものである。
製造に好適に用いられる多結晶薄膜の製造装置の一例を
示す図である。この多結晶薄膜の製造装置は、テープ状
の基材1を支持するとともに所望温度に加熱することが
できる基材ホルダ23と、基材ホルダ23上にテープ状
の基材1を送り出すための基材送出ボビン24と、多結
晶薄膜が形成されたテープ状の基材1を巻き取るための
基材巻取ボビン25と、前記基材ホルダ23の斜め上方
に所定間隔をもって対向配置された板状のターゲット3
6と、このターゲット36の斜め上方においてターゲッ
ト36の下面に向けて配置されたスパッタビーム照射装
置(スパッタ手段)38と、前記基材ホルダ23の側方
に所定間隔をもって対向され、かつ、前記ターゲット3
6と離間して配置されたイオンソース39とが真空排気
可能な成膜処理容器40内に収納された概略構成となっ
ている。
を備え、基材ホルダ23の上に送り出されたテープ状の
基材1を必要に応じて所望の温度に加熱できるようにな
っている。この基材ホルダ23はピン等により支持体2
3aに回動自在に取り付けられており、傾斜角度を調整
できるようになっている。このような基材ホルダ23
は、成膜処理容器40内のイオンソース39から照射さ
れるイオンビームの最適照射領域に配設されている。
は、前記基材送出ボビン24から基材ホルダ23上にテ
ープ状の基材1を連続的に送り出し、前記最適照射領域
で多結晶薄膜が成膜された基材1を基材巻取ボビン25
で巻き取ることで基材1上に連続成膜することができる
ようになっている。この基材巻取ボビン25は、前記最
適照射領域の外に配設されている。
薄膜を形成するためのものであり、目的の組成の多結晶
薄膜と同一組成あるいは近似組成のものなどを用いる。
ターゲット36として具体的には、MgOあるいはY2
O3で安定化したジルコニア(YSZ)、酸化セリウム
(CeO2)、酸化イットリウム(Y2O3)などを用い
るがこれらに限るものではなく、形成しようとする多結
晶薄膜に見合うターゲットを適宜用いれば良い。このよ
うなターゲット36は、ピン等によりターゲット支持体
36aに回動自在に取り付けられており、傾斜角度を調
整できるようになっている。前記スパッタビーム照射装
置(スパッタ手段)38は、容器の内部に、蒸発源を収
納し、蒸発源の近傍に引き出し電圧をかけるためのグリ
ッドを備えて構成されているものであり、ターゲット3
6に対してイオンビームを照射してターゲット36の構
成粒子を基材22に向けて叩き出すことができるもので
ある。
照射装置38と略同様の構成のものであり、容器の内部
に蒸発源を収納し、蒸発源の近傍に引き出し電圧をかけ
るためのグリッドを備えて構成されている。そして、前
記蒸発源から発生した原子または分子の一部をイオン化
し、そのイオン化した粒子をグリッドで発生させた電界
で制御してイオンビームとして照射する装置である。前
記イオンソース39は、図3に示すようにその中心軸線
Sを基材ホルダ23上の基材1の成膜面(表面)に対し
て入射角度θ(基材1の垂線(法線)Hと中心線Sとの
なす角度)でもって傾斜させて対向されている。この入
射角度θは50〜60度の範囲が好ましいが、より好ま
しくは55〜60度の範囲、最も好ましくは55度前後
である。従ってイオンソース39は基材22の成膜面の
法線Hに対してある入射角度θでもってイオンビームを
照射できるように配置されている。
22に照射するイオンビームは、YSZの中間層2を形
成する場合はHe+、Ne+、Ar+、Xe+、Kr+など
の希ガスのイオンビーム、あるいは、それらと酸素イオ
ンの混合イオンビームなどで良いが、CeO2を形成す
る場合はXe+、Kr+あるいはこれら2元素の混合イオ
ンビームを用いる。また、前記成膜処理容器40には、
この容器40内を真空などの低圧状態にするためのロー
タリーポンプ51およびクライオポンプ52と、ガスボ
ンベなどの雰囲気ガス供給源がそれぞれ接続されてい
て、成膜処理容器40の内部を真空などの低圧状態で、
かつ、アルゴンガスあるいはその他の不活性ガス雰囲気
または酸素を含む不活性ガス雰囲気にすることができる
ようになっている。さらに、前記成膜処理容器40に
は、この容器40内のイオンビームの電流密度を測定す
るための電流密度計測装置55と、前記容器40内の圧
力を測定するための圧力計55が取り付けられている。
の基材1上にYSZの多結晶薄膜を形成する場合につい
て説明する。テープ状の基材22上に多結晶薄膜を形成
するには、YSZからなるターゲット36を用い、基材
22を収納している成膜処理容器40の内部を真空引き
して減圧雰囲気とするとともに、基材送出ボビン24か
ら基材ホルダ23に基材1を所定の速度で送り出し、さ
らにイオンソース39とスパッタビーム照射装置38を
作動させる。
ト36に対してイオンビームを照射するとターゲット3
6の構成粒子が叩き出されて基材1上に飛来する。そし
て、基材ホルダ23上に送り出された基材1上にターゲ
ット36から叩き出した構成粒子を堆積させると同時に
イオンソース39から、例えば、Arイオンと酸素イオ
ンの混合イオンビームを照射して所望の厚みの多結晶薄
膜を成膜し、成膜後のテープ状の基材1を基材巻取ボビ
ン25に巻き取る。
度θは、50〜60度の範囲が好ましく、より好ましく
は55度前後である。ここでθを90度とすると、多結
晶薄膜のc軸は基材22上の成膜面に対して直角に配向
するものの、基材22の成膜面上に(111)面が立つ
ので好ましくない。また、θを30度とすると、多結晶
薄膜はc軸配向すらしなくなる。前記のような好ましい
範囲の入射角度でイオンビーム照射するならば多結晶薄
膜の結晶の(100)面が立つようになる。このような
入射角度でイオンビーム照射を行ないながらスパッタリ
ングを行なうことで、基材1上に形成されるYSZの多
結晶薄膜の結晶軸のa軸どうしおよびb軸どうしは互い
に同一方向に向けられて基材1の上面(成膜面)と平行
な面に沿って面内配向させることができる。
通常の無配向の基材上に原子の堆積を行っていると、原
子の堆積の初期段階においては並びの良い配向性の良好
な原子と並びの悪い配向性の悪い状態の原子の両方が堆
積しようとするが、これら多くの並びの悪い原子をイオ
ンビームが弾きとばす結果、堆積の初期段階において特
に成膜レートが悪くなる。しかし、この形態において用
いるのは、予め再結晶集合組織として配向性を高めた基
材1であるで、この基材1の上に堆積しようとするYS
Zの原子は、無配向基材上に堆積しようとする場合より
も良好に配向しようとする結果、配向性の良好な安定な
位置に存在する原子の割合が高くなり、堆積の初期段階
において並びの良い配向性の良好な原子が堆積しやすく
なり、成膜レートが向上するので、配向性の良好な中間
層としての多結晶薄膜2が早く生成する。
晶薄膜2上には酸化物超電導層4が積層され、例えば、
前述のようにして粒界傾角が精度良く揃えられた多結晶
薄膜2上にスパッタリングやレーザ蒸着法などの成膜法
により形成するならば、この多結晶薄膜2上に積層され
る酸化物超電導層4も多結晶薄膜2の配向性に整合する
ようにエピタキシャル成長して結晶化する。よって前記
多結晶薄膜2上に形成された酸化物超電導層4は、結晶
配向性に乱れが殆どなく、この酸化物超電導層4を構成
する結晶粒の1つ1つにおいては、基材1の厚さ方向に
電気を流しにくいc軸が配向し、基材1の長さ方向にa
軸どうしあるいはb軸どうしが配向している。従って、
得られた酸化物超電導層は、結晶粒界における量子的結
合性に優れ、結晶粒界における超電導特性の劣化が殆ど
ないので、基材1の長さ方向に電気を流し易くなり、M
gOやSrTO3の単結晶基材上に形成して得られる酸
化物超電導層と同じ程度の十分に高い臨界電流密度が得
られる。
多結晶薄膜2を成膜した後に、IBAD法ではない通常
のスパッタ法(イオンビームアシストを行わないスパッ
タ法やバイアススパッタ法)により多結晶薄膜2上に更
に同一材料製の多結晶薄膜6を成膜して2層構造の中間
層を形成しても良い。ここで、IBAD法による結晶配
向性の良好な多結晶薄膜2の上に多結晶薄膜6を成膜す
るならば、多結晶薄膜6は多結晶薄膜2に対してエピタ
キシャル成長して容易に成長するので、多結晶薄膜6の
結晶配向性も充分に高いものとすることができる。この
ようにするならば、成膜速度の遅いIBAD法の欠点を
補う形で充分な厚さの中間層(多結晶薄膜2と多結晶薄
膜6を合わせた分の層厚のもの)を容易に得ることがで
き、充分な厚さの多結晶薄膜2、6を備えた多結晶基材
3'を得ることができるとともに、その上に酸化物超電
導層4を設けることで図2に示す構造の酸化物超電導導
体を得ることができる。
Mn2.0%、Fe20%)からなる厚さ1mmの金属
テープを用い、超硬合金の加圧ロールを用いてこの金属
テープを熱間圧延加工(600℃)数パスで厚さ80μ
mに強圧延加工した。続いてこの金属テープを再結晶温
度以上の1500℃に5時間加熱後に冷却する熱処理を
施し、再結晶集合組織を有する金属テープ基材を得た。
この圧延後の金属テープの表面粗さの平均値は±20n
m以下であった。続いて、図3に示す構成の多結晶薄膜
の製造装置を使用し、この製造装置の成膜処理容器内部
をロータリーポンプおよびクライオポンプで真空引きし
て3.0×10-4トールに減圧した。また、ターゲット
はYSZ(安定化ジルコニア)製のものを用い、スパッ
タ電圧1000V、スパッタ電流100mA、イオンソ
ースから発生させるイオンビームの入射角度を基材の成
膜面の法線に対して55度に設定し、イオンソースのア
シスト電圧を300Vに、イオンソースの電流を60m
Aに設定して、基材上にターゲットの構成粒子を堆積さ
せると同時にイオンビームを照射して厚さ0.5μmの
膜状のYSZの多結晶薄膜を1時間かけて成膜した。
uKα線を用いたθ−2θ法によるX線回折試験を行っ
た結果、YSZの(200)面あるいは(400)面の
ピークが認められ、YSZの多結晶薄膜の(100)面
が基材表面と平行な面に沿って配向しているものと推定
することができ、YSZの多結晶薄膜がそのc軸を基材
の成膜面に垂直に配向させて形成されていることが判明
した。
SZの多結晶薄膜のa軸あるいはb軸が配向しているか
否かを測定した。その測定のためには、図6に示すよう
に、基材1上に形成された多結晶薄膜2にX線を角度θ
1で照射するとともに、入射X線を含む鉛直面におい
て、入射X線に対して2θ1の角度の位置にX線カウン
ター58を設置し、入射X線を含む鉛直面に対する水平
角度φの値を適宜変更して、即ち、基材1を図6におい
て矢印に示すように回転角φだけ回転させることにより
得られる回折強さを測定することにより多結晶薄膜2の
a軸どうしまたはb軸どうしの配向性を計測した。その
結果、この例の多結晶薄膜の場合、φを90度と0度と
した場合、即ち、回転角φに対して90度おきにYSZ
の(111)面のピークが現われた。これは、基板面内
におけるYSZの(011)ピークに相当しており、Y
SZの多結晶薄膜のa軸どうしまたはb軸どうしが配向
していることが明らかになった。
結晶層の各結晶粒における結晶配向性を測定した。この
測定では図6を基に先に説明した方法でX線回折を行な
う場合に、φの角度を−10度〜+10度まで1度刻み
の値に設定した際の回折ピークを測定した。その結果か
ら、得られたYSZの多結晶薄膜の回折ピークは、粒界
傾角±3〜5度以内では表われるが、±8〜10度では
消失していることが判明した。従って、得られた多結晶
薄膜の結晶粒の粒界傾角は、10度以内に収まっている
ことが判明し、良好な配向性を有することが明らかにな
った。
蒸着装置を用いて厚さ1.0μmの酸化物超電導層を形
成し、酸化物超電導導体を作製した。このレーザ蒸着装
置に備えるターゲットとしては、Y1.0Ba2.0Cu3.0
O7-xなる組成の酸化物超電導体からなるターゲットを
用いた。成膜処理室の内部を1×10-6トールに減圧し
た後、内部に酸素を導入し2×10-3トールとした後、
レーザ蒸着を行なった。ターゲット蒸発用のレーザとし
て波長193nmのArFレーザを用いた。この成膜
後、400゜Cで60分間、酸素雰囲気中において薄膜
を熱処理し、酸化物超電導導体を得た。
に冷却し、外部磁場0T(テスラ)の条件で4端子法に
て臨界電流密度の測定を行なった結果、臨界電流密度=
8.2×10A/cm2を示し、極めて優秀な超電導特性
を発揮することが確認できた。
配向性金属テープの代わりに、加工を施していない無配
向のハステロイ製金属テープを用いて実施例と全く同じ
処理を施し、基材テープ上に厚さ0.5μmのYSZの
中間層を形成したが、厚さ0.5μmの中間層を成膜す
るために前記と同じ条件で5時間を要した。この酸化物
超電導導体を液体窒素で77K冷却し、外部磁場0T
(テスラ)の条件で4端子法で臨界電流密度の測定を行
なった結果、臨界電流密度=8.0×10A/cm2を示
し、先の実施例と同等の優秀な超電導特性を発揮するこ
とを確認できたが、無配向金属テープを用いると中間層
の成膜に5倍の時間を要することが明らかになった。
性多結晶基材にあっては、基材と配向性多結晶中間層と
を具備してなり、配向性機能層が積層される配向性多結
晶基材であって、立方晶系の高融点の高硬度金属からな
り、圧延集合組織とされたものであるので、圧延集合組
織とされた配向性の良好な基材上に容易に配向性の良好
な多結晶中間層を有するものが得られる。そして、配向
性多結晶中間層上に形成する配向性機能層の結晶配向性
も配向性多結晶中間層に合わせて容易に配向させること
ができるので、結果的に結晶配向性に優れた配向性機能
層を得ることができる。また、基材は立方晶系の高融点
の高硬度金属からなるので、強度が高く、機械的な応力
が作用しやすい用途に対しても適用できる。
ては、立方晶系の高融点の高硬度金属からなり、圧延集
合組織とされた基材と、この基材上に形成された配向性
多結晶中間層と、この配向性多結晶中間層上に形成され
た酸化物超電導層とを具備してなることを特徴とするの
で、圧延集合組織とされた配向性の良好な基材上に容易
に配向性の良好な多結晶中間層を有するものが得られる
とともに、配向性多結晶中間層上に形成する酸化物超電
導層の結晶配向性も配向性多結晶中間層に合わせて容易
に配向させることができ、結果的に結晶配向性に優れ、
超電導特性の優れた酸化物超電導層を得ることができ
る。また、基材は立方晶系の高融点の高硬度金属からな
るので、強度が高く、機械的な応力が作用しやすい超電
導磁石、超電導発電器等の磁場応用用途に対しても強度
的な問題なく適用することができる。
系の高融点の高硬度金属からなる素材に対し、加工度9
0%以上の圧延加工を再結晶温度以上の温度で施して基
材を形成することで再結晶集合組織とすることができ、
結晶配向性の良好な基材とすることができる。そして、
この基材上に中間層の構成粒子を堆積させると同時に斜
め方向からイオンビームを照射して配向性多結晶中間層
を形成することで、配向性多結晶薄膜を構成するべき原
子を基材上に堆積させて並びの悪い不安定な位置にある
原子をイオンビームで除去しながら並びの良い結晶配向
性の良好な原子のみを選択的に残して堆積させる際に、
堆積の初期段階で配向性基材の配向性に合わせて原子を
並びの良い配向性の良い状態に優先的に堆積させること
ができるので、基材の配向性に沿うように配向性の良好
な配向性多結晶中間層を従来よりも短い時間で成膜する
ことができる。また、配向性多結晶中間層上に酸化物超
電導層を成膜するならば、配向性多結晶中間層上に良好
な結晶配向性でもって酸化物超電導層を成膜できるの
で、結果的に臨界電流特性の優れた超電導特性の優れた
酸化物超電導導体を従来方法よりも短い時間で製造する
ことができ、製造効率を向上できる効果がある。
導導体の第1の実施形態を示す断面図である。
導導体の第2の実施形態を示す断面図である。
る多結晶薄膜の製造装置の一例を示す概略構成図であ
る。
れた多結晶薄膜の一例を示す断面図である。
れた多結晶薄膜の他の例を示す断面図である。
置の概念図である。
示す略図である。
層)、3、3'・・・多結晶基材、4・・・酸化物超電導層
(配向性機能層)、5、5'・・・酸化物超電導導体。
Claims (3)
- 【請求項1】 基材と配向性多結晶中間層とを具備して
なり、更に配向性機能層が積層される配向性多結晶基材
であって、前記基材が立方晶系の高融点の高硬度金属か
らなり、圧延集合組織とされたことを特徴とする配向性
多結晶基材。 - 【請求項2】 立方晶系の高融点の高硬度金属からな
り、圧延集合組織とされた基材と、この基材上に形成さ
れた配向性多結晶中間層と、この配向性多結晶中間層上
に形成された酸化物超電導層とを具備してなることを特
徴とする酸化物超電導導体。 - 【請求項3】 立方晶系の高融点の高硬度金属からなる
素材に対し、加工度90%以上の圧延加工を施した後に
再結晶温度以上の温度に加熱する熱処理を施して基材を
形成し、この基材上に中間層の構成粒子を堆積させると
同時に斜め方向からイオンビームを照射して配向性多結
晶中間層を形成するとともに、この配向性多結晶中間層
上に酸化物超電導層を積層することを特徴とする酸化物
超電導導体の製造方法。
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- 1997-08-01 JP JP20810497A patent/JP4033945B2/ja not_active Expired - Fee Related
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