【発明の詳細な説明】
単純ヘルペスウイルスの診断技術分野
本発明は、一般に、ウイルス診断技術に関する。より詳細には、本発明は、単
純ヘルペスウイルス感染を正確に検出するための方法に関する。発明の背景
単純ヘルペスウイルス(「HSV」)感染は非常に流行しており、免疫無防備状
態の個人および新生児において、見かけ上無症候性の獲得から、重篤な疾患およ
び生命を脅かす感染に至るまでの範囲の発現を有する。これらの感染は、2つの
ウイルス、1型単純ヘルペスウイルス(「HSV-1」)および2型単純ヘルペスウ
イルス(「HSV-2」)によって引き起こされる。HSV-1は、口腔感染の主な原因で
あり、そして通常小児期に獲得されるが、一方で、HSV-2感染は、通常性的に伝
播する生殖器の感染である。しかし、これらの区別ははっきりとしておらず、生
殖器のヘルペスの25%までがHSV-1によって引き起こされる。最初の感染後、ウ
イルスは一生の潜伏性の状態を確立し、そして定期的に再活性化して、臨床的に
明らかな病変の発現または無症候性のウイルスの出芽を引き起こす。
一般に、HSVは、膜内にエンベロープ化された正二十面体のヌクレオカプシド
内にパッケージされた約150〜160kbpのゲノムを有する2本鎖DNAウイルスである
。この膜(またはエンベロープ)は、10以上のウイルス特異的糖タンパク質を含
み、この中で最も多いのは、gB、gC、gDおよびgEである。ウイルスのゲノムはま
た、被膜タンパク質VP16を含む、50以上の他のタンパク質をコードする。HSV-1
およびHSV-2のウイルスのゲノムは、共直線性であり、ゲノム全体にわたって50
%の相同性を共有する。gBおよびgDのようないくつかの遺伝子については、2つ
のウイルス型の間のアミノ酸同一性は80〜90%までにもなる。この類似性の結果
、多くのHSV特異的抗体は、両方のウイルス型に対して交差反応性である。1つ
のウイルス型の中では、糖タンパク質遺伝子の株間の配列の可変性には制限があ
る
(1〜2%)。HSVの株には、333およびPattonが含まれるが、これに限定されな
い。
HSV用の抗ウイルス剤である、アシクロビルが入手可能であるにもかかわらず
、HSV-2の人口に対する発生率は、8〜50%の範囲であり、そして増加している
。この増加の明らかな理由は、ほとんどの個人が自己の感染に気付いていないと
いうことである。さらに、伝染の大半は、無症候状態で出芽したウイルスから生
じる。
HSV感染の診断のために、いくつかのアッセイが開発されている。残念ながら
、これらのアッセイにはいくつかの欠点がある。最も一般的に用いられるアッセ
イは、ウイルスの培養を包含する。ウイルスの有意な試料は、感染の病変期初期
にしか入手し得ない。しかし、多くの個人は、以前にヘルペスに感染しているが
、無症候性である。このような個人は、進行中の病変を有することなく、無症候
性にウイルスを出芽し得、そして感染をウイルスの培養を用いて検出することは
できない。従って、ウイルスの培養によるHSVの検出は、再発性のヘルペスの症
状の発現については、偽陰性が高率であり、約50%もの高さになる。さらに、ウ
イルスの培養は遅く、この診断方法は、乳児の分娩直前または新生児の病気のよ
うに、迅速な結果が必要とされる潜在的に深刻な状況では使用し得ない。さらに
、培養は高価であり、ウイルスの試料は、研究室への輸送中に分解し得る。HSV
感染がHSV-1かHSV-2かを決定するために、付加的試験を行わなければならない。
抗原検出試験は、ウイルスの培養の代替策を提供する。しかし、ウイルスの培
養同様、これらの試験は進行中の病変からの試料を必要とし、従って、例えば無
症候性の感染の場合は、偽陰性が高率である。ウイルスの培養より迅速、かつ高
感度であるが、感染がHSV-1によるものかまたはHSV-2によるものかを決定するた
めには、付加的試験が必要である。
HSVに対する抗体を検出する血液検査である血清学的アッセイもまた試みられ
ている。これらの試験は、症候性および無症候性の感染の双方を検出し得る。し
かし、この試験によっては、抗体が形成される通常感染約2週間後まで、急性の
一次感染は正確に診断されない。従って、これらの方法は、最初の発生を診断す
るために有用でない。さらに、試験はしばしばHSV-1とHSV-2を混同する。
Ashleyら、J.Clin.Microbiol.(1988)26: 662-667は、最初の症候の発症2
1日後に、培養でHSV-2感染であると証明された患者の99%で、HSV-2の抗体を
検出すると言われるウエスタンブロットテストを記載している。この試験は、HS
V-1とHSV-2とを100%正確に識別することが示された。しかし、この試験は、50
もの個々のHSVタンパク質に対する抗体(これらの中には、1型に特異的なもの
もあれば、2型に特異的なものもある)を検出するために2工程のプロセスを用
い、実施が困難である。さらに、型特異的抗体を決定するために、2回のウエス
タンブロットを(1回はHSV-1抗原で、もう1回はHSV-2抗原で)行わなければな
らない。この技術は時間がかかり、そして結果の解釈は主観的なものである。研
究室技術者は、試験を適切に行うために、広範な訓練を受けなければならない。
タンパク質特異的イムノアッセイ法もまた開発されている。例えば、Ashleyら
、J.Clin.Microbiol.(1988)26: 662-667; Sanchez-Martinezら、J.Infect
.Dis.(1991)164: 1196-1199; Leeら、J.Clin.Microbiol.(1985)22: 641-
644; Leeら、J.Virol.Meth.(1986)14: 111-118を参照のこと。これらのアッ
セイは、gGのような、1つのウイルス性タンパク質に対する抗体を検出する。こ
のタンパク質は、HSV-1(gG1)およびHSV-2(gG2)に固有である。この試験は、
イムノドットフォーマットで行われ得、一般に、HSV-2に対する抗体の同定では
正確な結果を出すが、HSV-1抗体の同定では、多くの偽陽性を生じる。さらに、g
G2に対する抗体は、感染後6〜8週間は発達しないかもしれず、そしてまた被験
者の5〜10%では、gG抗体は、前述のアッセイフォーマットを用いては検出不可
のままである。
型特異的血清学的アッセイの広範囲にわたる入手可能性は、疾患の流行の蔓延
を防止するために、ヘルペス感染の診断のための重要なツールになる。発明の要旨
本発明は、HSV感染を診断するための、ならびにHSV-1とHSV-2感染との存在を
識別するための、単純で、極めて正確かつ効率的な方法を提供する。本アッセイ
方法は、型特異的HSV抗原および型共通HSV抗原の両方を利用し、一つの実施態様
では1工程のアッセイフォーマットで使用し得る。
従って、ある実施態様において、本発明は、HSV感染を検出する方法に関し:
(a)生物学的サンプルを提供する行程;
(b)上記生物学的サンプルと、1つ以上の精製HSV型特異的抗原および1つ以上
の精製HSV型共通抗原とを、上記生物学的サンプル中に存在する場合にHSV抗体が
上記型特異的抗原および/または上記型共通抗原に結合し得る条件下で、反応さ
せる行程;
(c)免疫グロブリン分子と結合し得る1つ以上の部分(moieties)を提供する行
程;および
(d)上記1つ以上の部分の有無を検出する行程、
を包含する。
なお別の実施態様において、本発明は、生物学的サンプル中においてHSV-1感
染とHSV-2感染とを区別するための方法に関し:
(a)型特異的HSV-1糖タンパク質(例えば、型特異的gG1ポリペプチドおよび/
またはgB1の型特異的エピトープ)、型特異的HSV-2糖タンパク質(例えば、gG2
ポリペプチド)、および型共通HSVポリペプチドをニトロセルロースストリップ
上に固定化する行程;
(b)行程(a)の上記ニトロセルロースストリップと、上記生物学的サンプルとを
、上記生物学的サンプル中に存在する場合に抗HSV-1および抗HSV-2抗体が上記型
特異的HSV-1もしくはHSV-2糖タンパク質および/または上記型共通HSVポリペプ
チドに結合し得る条件下で、接触させる行程;
(c)検出可能に標識された抗ヒト免疫グロブリン抗体を提供する行程;および
(d)上記生物学的サンプル中の結合した抗ヒト免疫グロブリン抗体の有無を検
出する行程、
を包含し、
これにより、上記生物学的サンプル中のHSV-1および/またはHSV-2感染の有無
を検出する。
特に好適な実施態様において、上記生物学的サンプルはヒト血清サンプルであ
り、上記HSVポリペプチドの膜貫通ドメインの全部または一部が欠失している。
なおさらなる実施態様において、本発明は、HSV感染を検出するための免疫診
断試験キットに関する。このキットは、型特異的HSV抗原および型共通HSV抗原、
ならびに免疫診断試験を行うための説明書を含む。
なおさらなる別の実施態様において、本発明は、生物学的サンプル中における
HSV-1感染とHSV-2感染とを区別するための免疫診断試験キットに関する。この試
験キットは、ニトロセルロースストリップ上に固定化された、型特異的HSV-1糖
タンパク質(例えばgG1ポリペプチドおよび/または型特異的gB1エピトープ)、
型特異的HSV-2糖タンパク質(例えば、gG2ポリペプチド)、および型共通HSVポ
リペプチド、ならびに免疫診断試験を行うための説明書を含む。
本明細書中の開示内容を考慮すれば、当業者は、本発明の上記およびその他の
実施態様を容易になし得る。図面の簡単な説明
図1は、本発明によるストリップイムノブロットアッセイ(SIA)の代表的な
結果を示す。
図2A〜2Dは、種々のgG1抗原を示す。図2Aは、gG1抗原が由来したgG1前
駆体分子を示す。図2Bは、HSV1gG1の構造を示す。図2Cは、SOD/HSV1gG1M-D
の構造を示す。図2Dは、SOD/HSV1gG1P-Dの構造を示す。
図3A〜3Hは、種々のgG2抗原を示す。図3Aは、gG2抗原が由来したgG2前
駆体分子を示す。図3Bは、HSV2gG2M-Dの構造を示す。図3Cは、SOD/HSV2gG2M
-Dの構造を示す。図3Dは、SOD/HSV2gG2R-Dの構造を示す。図3Eは、SOD/HSV2
gG2-N末端の構造を示す。図3Fは、SOD/HSV2gG2-C末端の構造を示す。図3Gは
、SOD/gG2M393-D649の構造を示す。図3Hは、SOD/gG2A489-D649の構造を示す。
図4は、本アッセイ方法での使用のためのgB1型特異的ペプチドのアミノ酸配
列を示す。発明の詳細な説明
本発明の実施は、特に明記しない限り、当業者の技術範囲内で、ウィルス学、
微生物学、分子生物学および組換えDNA技術の従来の方法を用いる。そのような
技術は文献に十分な記載がある。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A L
aboratory Manual(第2版、1989);DNA Cloning: A Practical Approach,第I
およびII巻(D.Glover編);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait編、1984)
;Nucleic Acid Hybridization(B.HamesおよびS.Higgins編、1985);Transc
ription and Translation(B.HamesおよびS.Higgins編、1984);Animal Cell
Culture(R.Freshney編、1986);Perbal、A Practical Guide to Molecular
Cloning(1984);Fundamental Virology、第2版、第IおよびII巻(B.N.Fields
およびD.M.Knipe編)を参照せよ。
本明細書において引用する前出または後出の全ての刊行物、特許および特許出
願は、その全体を本明細書において援用するものとする。
本明細書および付属の請求項において使用する、単数形「a」、「an」および
「the」は、内容が明らかに指示しない限り、複数の言及を包含するものとする
。
さらに、本明細書に記載する様々なHSVポリペプチドのアミノ酸配列は、特に
明記しない限り、全長前駆体分子(シグナル配列を含む)について番号付けして
いる。
I.定義
本発明の説明において、以下の用語を用い、そしてそれらは以下のように定義
されることが意図される。
「型特異的HSV抗原」は、HSV-1および有SV-2の両方ではなくHSV-1またはHSV-2
のいずれかに対する抗体と優勢に反応する1つ以上のエピトープを含む、HSV-1
またはHSV-2のいずれか由来のポリペプチドを意味する。代表的な型特異的HSV抗
原は以下を包含する。すなわち、HSV-1およびHSV-2糖タンパク質Cポリペプチド
(「gC1」および「gC2」)ならびにその型特異的ペプチドエピトープ;HSV-1お
よびHSV-2糖タンパク質Gポリペプチド(「gG1および「gG2」)ならびにその型
特異的ペプチドエピトープ、例えば、gG1のアミノ酸111位〜116位およびgG2のア
ミノ酸357位〜364位、553位〜572位、573位〜580位および601位〜608位;HSV-1
およびHSV-2糖タンパク質B(「gB1」および「gB2」)の型特異的ペプチドエピ
トープ、例えばgB2のアミノ酸18位〜228位(Goadeら、Abstracts of the 34th I
nterscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy、1994年1
0月4〜7日、アブストラスクトH6)およびgB1のアミノ酸1位〜50位(成熟分子を
参照して番号付けした)(アミノ酸31位〜80位(前駆体を参照して番号付けした
))内に見られる型特異的エピトープ、例えばgB1のアミノ酸1位〜46位および
1位〜47位(成熟分子を参照して番号付けした(アミノ酸31位〜76位および31位
〜77位(それぞれ前駆体分子を参照して番号付けした))(Pereiraら、Virolog
y(1989)172:11〜24;および以下の実施例を参照);ならびにHSV-1およびHSV-2
糖タンパク質D(「gD1」および「gD2」)の型特異的ペプチドエピトープである
。
「型共通HSV抗原」とは、HSV-1およびHSV-2の両方に対して生じる抗体と反応
する1つ以上のエピトープを含む、HSV-1またはHSV-2のいずれか由来のポリペプ
チドを意味する。代表的な型共通HSV抗原は以下を包含する。すなわち、gB1,gB
2、gD1、gD2、ウィルス性タンパク質16(「VP16」)ポリペプチドおよびその型
共通エピトープ、例えばgB2のアミノ酸228位〜903内に見られるものである(Goa
deら、Abstracts of the 34th Interscience Conference on Antimicrobial Age
nts and Chemotherapy、1994年10月4〜7日、アブストラスクトH6を参照)。
用語「ポリペプチド」は、gB、gD、gG、VP16などに対して用いる際には、任意
の様々なHSV-1またはHSV-2株由来のgB、gD、gG、VP16などのポリペプチド(天然
(native)、組換え、または合成)を指す。従って、この用語は、糖タンパク質、
テグメントタンパク質などを含む、任意の様々なHSVタンパク質に由来するポリ
ペプチドを含む。「糖タンパク質」とは、HSV膜中に見られるものに由来するポ
リペプチド(天然、組換え、または合成)、例えば、gB、gD、gGなどを意味する
。以下のポリペプチドに関する説明は、糖タンパク質にも等しく当てはまる。
ポリペプチドは、当該分子(reference molecule)の全長アミノ酸配列を含む
必要はなく、ポリペプチドがその所期の目的を果たすために必要なだけの分子を
含んでいればよい。従って、ポリペプチドが「型特異的」抗原として用いられる
際、分子の型特異的エピトープが1つのみまたはそれ以上存在している必要があ
る。ポリペプチドが「型共通」抗原として用いられる際は、HSV-1および有SV-2
の両方に対する抗体と反応する当該分子のエピトープが、1つ以上存在する。
従って、ポリペプチドは、当該分子の全長配列、フラグメント、短縮および部
分配列、ならびにアナログおよび前駆体形態を包含し得る。従ってこの用語は、
ポリペプチドが意図通り機能する限り、配列の欠失、付加および置換を意図して
いる。この点に関して、特に好ましい置換は、一般に性質が保存的な置換、すな
わち、それらの側鎖において関連するアミノ酸のファミリー内において起こる置
換である。具体的には、アミノ酸は一般に以下の4つのファミリーに分けられる
:(1)酸性−−アスパラギン酸およびグルタミン酸;(2)塩基性−−リジン、アル
ギニン、ヒスチジン;(3)非極性−−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシ
ン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非
荷電極性−−グリシン、アスパラギン、グルタミン、シスチン、セリン、スレオ
ニン、チロシンである。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは時
に芳香族アミノ酸として分類される。例えば、ロイシンをイソロイシンまたはバ
リンで、アスパラギン酸をグルタミン酸で、スレオニンをセリンで孤立した置換
(isolated replacement)をすること、または同様にアミノ酸を構造的に関連する
アミノ酸で保存的置換することは、生物学的活性に大きな影響を与えないことが
十分予測される。従って、当該分子と実質的に同じアミノ酸配列を有するが、タ
ンパク質の抗体結合能に実質的に影響しないようなわずかなアミノ酸置換を有す
るタンパク質は、当該ポリペプチドの定義内とする。
当該ポリペプチドの特に好適な欠失は、当該分子内に存在する膜貫通ドメイン
および細胞質ドメインの全部または一部の欠失を含む。そのような欠失は、分泌
を高め、そして従ってHSV-1および/またはHSV-2に対する抗体との反応性をなお
保ったままで、組換え的に産生した際の分子の回収を増加させる。所与のタンパ
ク質中の膜貫通ドメインの位置は、20個のアミノ酸の各々の疎水性および親水
性特性を利用して、タンパク質のアミノ酸配列からハイドロパシースケールを導
出するコンピュータプログラムを用いて、決定することができる(例えばKyteら
、J.Mol.Biol.(1982)157:105-132ならびに、HoppおよびにWoods,Proc.Natl
.Acad.Sci.USA(1981)78:3824-3828に記載がある)。
「gBポリペプチド」とは、上記定義を有するgB1またはgB2由来のポリペプチド
を意味する。gB1およびgB2のDNAおよび対応アミノ酸配列は公知であり、例えば
米国特許第5,244,792号およびStuveら、J.Virol.(1987)61:326-335に報告され
ている。全長前駆体gB1タンパク質は約904個のアミノ酸を含み、そのうち約1位
〜30位がシグナル配列を含む第1の疎水性領域を有し、31位〜約726位が可変極
性領域を有し、727位〜約795位のアミノ酸が膜貫通アンカーを含む第2の疎水性
領域を有し、そして796位〜約904位のアミノ酸が細胞質ドメインを含む第2の可
変極性領域を構成する。同様に、全長gB2タンパク質は約904アミノ酸長である。
最初の22個のアミノ酸はシグナル配列を構成し、そして成熟非グリコシル化タン
パク質は、この配列の開裂後において約98kDの予測分子量を有する。23位〜約72
3位のアミノ酸は、第1の可変極性領域を構成し、724位〜約798位のアミノ酸は
膜貫通ドメインを含み、そして799位〜約904位のアミノ酸は細胞質ドメインを含
む第2の可変極性領域を構成する。
細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインの全部または一部を欠くgBの代表的な短
縮誘導体は、以下の実施例に記載するが、米国特許第5,244,792号(例えば、遺
伝子の3'-末端から580塩基対を欠失し、そして194個のカルボキシル末端アミノ
酸を欠くタンパク質をコードするgB1遺伝子を含むプラスミドpHS114(ATCC受託番
号39651)および、3'-末端から637塩基対を欠失したgB2遺伝子を含むプラスミドp
H210の記載を参照)にも記載されている。米国特許第5,171,568号は、1187塩基
対gB1遺伝子フラグメントを有するプラスミドpHS127A(ATCC受託番号39652)を
記載している。HSV抗体と反応性を有するこれらの誘導体およびその他のいずれ
もが、本発明の方法において有用である。
「gDポリペプチド」とは、上記定義を有するgD1またはgD2由来のポリペプチド
を意味する。gD1およびgD2のDNAおよび対応アミノ酸配列は公知である。例えば
米国特許第4,818,694号;LaskyおよびDowbenko、DNA(1984)3:23-29を参照。gD1
およびgD2タンパク質は、全体として約86%の相同性を共有する。全長gD1およびg
D2は両方とも約393個のアミノ酸を有し、膜貫通ドメインは333位〜362位の残基
に位置し、そしてカルボキシ末端まで延びる細胞質ドメインは残基393位に位置
する。gD1およびgD2タンパク質は、1位から25位に位置するシグナル配列を有す
る。
細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインの全部または一部を欠くgDの代表的な短
縮誘導体は、米国特許第5,171,568号(例えば、gD2の最初の305個のアミノ酸お
よび最初の352個のアミノ酸をそれぞれコードするgD2遺伝子を含むプラスミドpH
S211およびpHS213の記載、ならびにgD1の315個のアミノ酸をコードするgD1遺伝
子を含むプラスミドpHS132の記載を参照);Laskyら、Bio/Technology(1984年6
月):527-532(最初の300個のアミノ酸残基を有するgD1ポリペプチドをコードす
る短縮gD1遺伝子を記載)に記載されている。また、米国特許第4,618,578号に記
載されているように(例えば、gD1のシグナル配列コード領域の欠失を含む600塩
基対の5'欠失を有するプラスミドpYHS116およびpYHS117の記載;上記600塩基対
ならびにgD1のアンカー配列の大部分を含むコード領域の3'末端における1300塩
基対の欠失を有するプラスミドpYHS118の記載;5'-末端までの600塩基対の欠失
と3'-末端における2400塩基対の欠失(膜アンカー領域全体の欠失およびgD1のア
ンカー配列の約700塩基対上流の欠失を含む)とを有するプラスミドpYHS119の記
載を参照)、シグナル配列の全部または一部を欠く様々なgDポリペプチドが構築
されている。HSV抗体と反応性を有するこれらの誘導体およびその他のいずれも
が、本発明の方法において有用である。
「gGポリペプチド」とは、上記定義を有するgG1またはgG2由来のポリペプチド
を意味する。gG1およびgG2のDNAおよび対応アミノ酸配列は公知である。例えば
、McGeochら、J.Mol.Biol.(1985)181:1-13、McGeochら、J.Gen.Virol.(1987
)68:19-38を参照。gG1遺伝子の構造を図2Aに示す。gG1遺伝子は、238個のアミ
ノ酸を有する糖タンパク質をコードし、21個のアミノ酸の予測シグナル配列、3
個の潜在的なN結合グリコシル化部位を有しかつシステイン残基を有さない167個
のアミノ酸の第1の可変極性領域(細胞外ドメインとも呼ばれる)、24個のアミ
ノ酸の疎水性膜貫通ドメインおよび24個のアミノ酸のC末端細胞質ドメインを有
する。
gG2遺伝子の構造を図3Aに示す。gG2糖タンパク質は699個のアミノ酸を含み
、21個のアミノ酸のシグナル配列、4個の潜在的なN結合グリコシル化部位を有
しかつ6個のシステイン残基を有する626個のアミノ酸の第1の可変極性領域、2
5個のアミノ酸の膜貫通結合ドメイン、および24個のアミノ酸のC末端細胞質ド
メインを有する。有用な型共通エピトープとして機能し得る、gG1およびgG2間の
限られた相同性を有する3つの小領域の位置は、以下の通りである:
膜貫通結合ドメインを含むC末端の部分を欠くgG1およびgG2遺伝子の両方の多
数の短縮誘導体ならびに、N末端短縮タンパク質を本明細書に記載する(図2、
3および4を参照)。これらの誘導体は、本発明の方法において有用である。
「VP16ポリペプチド」とは、上記定義を有するHSV-1またはHSV-2 VP16由来の
ポリペプチドを意味する。VP16は、ウィルスのキャプシドとエンベロープとの間
に位置するウィルス性テグメントタンパク質であり、そしてICP25、VmW65および
a-トランス誘導因子(aTIF)としても知られている。HSV-1 VPI6のDNAおよびアミ
ノ酸配列は報告されている。例えば、Campbellら、J.Mol.Biol.(1984)180:1、
およびTriezenbergら、Genes and Develop.(1988)2:718を参照せよ。同様に、HS
V-2 VP16のDNAおよび対応アミノ酸配列は公知である。例えば、1992年2月20日
に公開された国際公開第WO 92/02251号を参照せよ。HSV-1およびHSV-2 VP16は、
489個のアミノ酸を有する。2つのタンパク質は、約85%の相同性を共有する。ア
ミノ酸1位〜416位を含むVP16の短縮誘導体を、本明細書に記載する。HSV抗体と
反応性を有するこのVP16ポリペプチドならびにその他のVP16ポリペプチドは、本
発明の方法において有用である。
「エピトープ」とは、特定のB細胞およびT細胞が反応する、抗原上の部位を
意味する。この用語はまた、「抗原決定基」または「抗原決定部位」と同じ意味
で用いられる。1つのエピトープは、そのエピトープにユニークな立体配置にあ
る3つ以上のアミノ酸を有し得る。一般に、エピトープは少なくとも5個のその
ようなアミノ酸から構成され、さらに通常は、少なくとも8〜10個のそのような
アミノ酸から構成される。アミノ酸の立体配置を決定するための方法は当該分野
において公知であり、そして例えば、X線結晶解析および2次元核磁気共鳴など
が挙げられる。さらに、所与のタンパク質中のエピトープの同定は、当該分野で
周知の技術を用いて容易に達成される。例えば、Geysenら、Proc.Natl.Acad.
Sci.USA(1984)81:3998-4002(ペプチドを迅速に合成することによって所与の抗
原中の免疫原性エピトープの位置を決定するための一般的方法)、米国特許第4,
708,871号(抗原のエピトープを同定しそして化学的に合成するための手順)、
およびGeysenら、Molecular Immunology(1986)23:709-715(所与の抗体に高い親
和性を有するペプチドを同定する技術)を参照せよ。同一のエピトープを認識す
る抗体は、ある抗体が別の抗体の標的抗原への結合をブロックする能力を示す単
純なイムノアッセイにおいて、同定することが可能である。
「精製」タンパク質またはポリペプチドは、組換えまたは合成によって生成さ
れたタンパク質であって、組成物中に存在するタンパク質の量が粗ウィルス調製
物中に存在するタンパク質の量よりも実質的に大きいものである。一般に、精製
タンパク質は、≧50%均質であり、より好ましくは≧均質である。
本明細書において用いる、「生物学的サンプル」は、個体から単離された組織
または体液(fluid)のサンプルを指し、これらに限定されないが例として、血液
、血漿、血清、糞便、尿、骨髄、胆汁、髄液、リンパ液、皮膚サンプル、皮膚の
外分泌物、気道、腸管、および尿生殖器管、涙、唾液、乳、血球、器官、生検、
ならびにまたインビトロ細胞培養物成分のサンプル(これらに限定されないが例
として、培養培地中の細胞および組織(例えば組換え細胞)を増殖させることに
より得られる馴化培地、および細胞成分)を含む。
本明細書において用いる、「標識」および「検出可能な標識」とは、検出可能
な分子を指し、これらに限定されないが例として、放射性同位体、蛍光体、化学
発光体、酵素、酵素基質、酵素コファクター、酵素インヒビター、発色団、色素
、金属イオン、金属ゾル、リガンド(例えばビオチンまたはハプテン)などを含
む。「蛍光体」の用語は、検出可能な範囲の蛍光を示す能力を有する物質または
その一部を指す。本発明において使用し得る標識の特定例としては、フルオレセ
イン、
ローダミン、ダンシル、ウンベリフェロン、テキサスレッド、ルミノール、NADP
Hおよび、a-b-ガラクトシダーゼがある。
II.発明の実施の形態
本発明は、HSV感染を正確に検出し、そしてHSV-1感染とHSV-2感染とを区別す
るための新規な診断方法の発見に基づいている。この方法は、型特異的および型
共通HSV抗原を用いることにより、偽判定(false results)の発生を減少させる。
本方法は、単純な1工程アッセイ形式で実施され得、これは感染の検出ならびに
、存在する感染の型の同定の両方を、単一のアッセイで可能とする。
より特定すると、型共通抗原の存在により、HSV感染一般の診断が可能になる
。型特異的抗原の存在により、ウィルス型の決定、すなわち感染がHSV-1および
/またはHSV-2によって引き起こされたかどうかの決定が可能になる。型共通抗
原の存在により、型分類不可能な(untypable)サンプルにおいてさえも陽性判定
が得られる。従って、偽陰性の発生が減少する。
本発明の診断技術で用いる抗原は、様々な技術を用いて生成し得る。例えば、
当該分野において周知の組換え方法によって抗原を生成することができる。この
点に関して、HSVゲノムの公知の配列に基づいてオリゴヌクレオチドプローブを
案出し、そしてこれを用いてゲノムまたはcDNAライブラリーを本発明に有用な抗
原をコードするHSV遺伝子についてプローブしてもよい。次いで、標準的な技術
を用いて遺伝子をさらに単離することができ、また所望であれば、制限酵素を用
いて遺伝子を全長配列内の所望の位置において短縮することができる。
同様に、HSV遺伝子は、これを含有する細胞および組織から、フェノール抽出
などの公知の技術を用いて直接単離することができ、そして配列をさらに操作す
ることにより所望の短縮物を生成してもよい。例えば、DNAを得て単離するため
に用いる技術の記載について前出Sambrookらを参照せよ。最後に、HSV抗原をコ
ードする遺伝子は、公知の配列に基づいて合成的に生成することができる。ヌク
レオチド配列は、所望の特定アミノ配列に対する適切なコドンを用いて設計する
ことができる。一般には、配列を発現させる意図される宿主に好適なコドンが選
択されるであろう。完全な配列は、一般に、標準的な方法によって調製され、そ
して完全なコード配列に組み立てられた重複するオリゴヌクレオチドから組み立
てられる。例えば、Edge(1981)Nature 292:756、Nambairら、(1984)Science 223
:1299、Jayら(1984)J.Biol.Chem.259:6311を参照せよ。
一旦所望のタンパク質のコード配列が単離または合成されると、それらは昆虫
、哺乳動物、細菌、ウィルスおよび酵母発現系を含む様々な系(全て当該分野に
おいて周知である)における発現のために、任意の適切なベクターまたはリプリ
コンにクローンされ得る。例えば、バキュロウィルス系などの昆虫細胞発現系は
、当業者に公知であり、そして例えば、SummersおよびSmith、Texas Agricultur
al Experiment Station Bulletin No.1555(1987)に記載されている。バキュロウ
ィルス/昆虫細胞発現系のための材料および方法は、キット形態で、なかでもIn
vitrogen,SanDiego CAから市販されている(「MaxBac」キット)。同様に、細
菌および哺乳動物細胞発現系は、当該分野において周知であり、そして例えば、
前出Sambrookらに記載されている。酵母発現系もまた当該分野において公知であ
り、そして例えばYeast Genetic Engineering(Barrら編、1989)、Butterworths
,Londonに記載されている。
ウイルスシステム、例えば、Tomeiら、J.Virol.(1993)67:4017-4026および
Selbyら、J.Gen.Virol.(1993)74:1103-1113に記載のワクシニアベースの感
染/トランスフェクションシステムもまた、本発明による使用を見出す。このシ
ステムにおいて、細胞はまず、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼをコード
するワクシニアウイルス組換え体によりインビトロでトランスフェクトされる。
このポリメラーゼは、T7プロモーターを有するテンプレートを転写するのみとい
う点で高度な特異性を示す。感染後、細胞は、T7プロモーターにより駆動される
、目的のDNAによりトランスフェクトされる。ワクシニアウイルス組換え体から
細胞質内に発現したポリメラーゼは、トランスフェクトされたDNAをRNAに転写し
、次いでRNAは宿主の翻訳機構によりタンパク質に翻訳される。この方法は、大
量のRNAおよびその翻訳産物の、高レベルで一過性の細胞質生成を提供する。
選択された発現系および宿主に依存して、本発明の抗原は、目的の抗原が発現
される条件下において、発現ベクターにより形質転換された宿主細胞を増殖させ
ることにより産生される。次いで抗原は、宿主細胞から単離されて精製される。
発現系が抗原の分泌を提供する場合、抗原は培地から直接精製され得る。抗原が
分泌されない場合、抗原は細胞溶解物から単離される。適切な増殖条件および回
収方法の選択は、当業者の知識の範囲内である。
HSV抗原はまた、固相または溶液のペプチド合成などの化学合成により、当業
者に公知の方法を用いて産生され得る。ペプチドの化学合成は、問題の抗原が比
較的小さい場合に好適であり得る。固相ペプチド合成技術に関しては、例えば、
J.M.StewartおよびJ.D.Young、Solid Phase Peptide Synthesis、第2版、P
ierce Chemical Co.、Rockford、IL(1984)、ならびにG.BaranyおよびR.B.Mer
rifield、The Peptides: Analysis,Synthesis,Biology、E.GrossおよびJ.Me
ienhofer編、第2巻、Academic Press、New York、(1980)、3-254頁を参照され
たい。古典的溶液合成に関しては、例えば、M.Bodansky、Principles of Pepti
de Synthesis、Springer-Verlag、Berlin(1984)、ならびにE.GrossおよびJ.Me
ienhofer編、The Peptides: Analysis,Synthesis,Biology(上記)、第1巻を
参照されたい。
型特異的および型共通HSV抗原は、本明細書中において、生物学的サンプル中
のウイルスの反応性抗体の存在を検出するための診断薬として用いられる。例え
ば、HSV抗原と反応性する抗体の存在は、競合、直接反応、またはサンドイッチ
型アッセイなどのイムノアッセイを含む、標準的な電気泳動技術および免疫診断
技術を用いて検出され得る。このようなアッセイは、ウエスタンブロット、凝集
テスト、ELISAなどの酵素標識および酵素媒介イムノアッセイ、ビオチン/アビ
ジン型アッセイ、ラジオイムノアッセイ、免疫電気泳動法、免疫沈降などを含む
が、これらに限定されない。反応は概して、蛍光、ケミルミネッセンス、放射性
、酵素標識または色素分子などの指示標識、または抗原と、抗原に反応する抗体
との複合体の形成を検出する他の方法を含む。
上記のアッセイは概して、液相中の未結合抗体の、抗原−抗体複合体が結合す
る固相支持体からの分離を含む。本発明の実施に用いられ得る固相支持体は、ニ
トロセルロース(例えば、膜またはマイクロタイターウェルの形態で)、ポリ塩
化ビニル(例えば、シートまたはマイクロタイターウェル)、ポリスチレンラテ
ックス(例えば、ビーズまたはマクロタイタープレート)、ポリフッ化ビニリジ
ン、ジアゾ化紙、ナイロン膜、活性化ビーズ、磁気応答性ビーズなどの支持体を
含む。
代表的には、固相支持体はまず、適切な結合条件下において固相成分(例えば
、1以上の型特異的および1以上の型共通抗原)と反応し、その結果、成分は支
持体に十分固定化される。時々、抗原の支持体に対する固定化は、より良好な結
合特性を有するタンパク質にまず抗原を結合させることにより増強し得る。適切
な結合タンパク質は、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシ
アニン、免疫グロブリン分子、チログロブリン、卵白アルブミンおよび当業者に
周知の他のタンパク質を含む血清アルブミンなどのマクロ分子を含むが、これら
に限定されない。支持体に抗原を結合するために用いられ得る他の分子は、多糖
体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマーなど
を含む。このような分子およびこれらの分子を抗原に結合させる方法は、当業者
に周知である。例えば、Brinkley、M.A.Bioconjugate Chem.(1992)3:2-13、
Hashidaら、J.Appl.Biochem.(1984)6:56-63、ならびにAnjaneyuluおよびSta
ros、International J.of Peptide and Protein Res.(1987)30:117-124を参
照されたい。
固体支持体を固相成分と反応させた後、任意の固定化されなかった固相成分が
洗浄により支持体から除去され、支持体結合成分は、その後、適切な結合条件下
において、リガンド部分(例えば、固定化抗原に対する抗体)を含むと考えられ
る生物学的サンプルと接触する。洗浄により任意の非結合リガンドを除去した後
、二次的なバインダー部分が適切な結合条件下で添加される。そこにおいて、二
次的なバインダーは、結合リガンドと選択的に会合し得る。二次的なバインダー
の存在は、その後当該分野で周知の技術を用いて検出され得る。
より詳細には、ELISA法が用いられ得る。そこにおいて、マイクロタイタープ
レートのウェルが型特異的抗原または型共通的抗原によりコートされる。次いで
、抗HSV免疫グロブリン分子を含むかまたは含むと考えられる生物学的サンプル
が、コートされたウェルに添加される。1つのマイクロタイタープレートを用い
ることが望ましいアッセイにおいて、選択された数のウェルが第1の型特異的抗
原部分によりコートされ、異なるセットのウェルが第2の型特異的抗原部分によ
りコ
ートされ、そして第3のセットのウェルが型共通的抗原部分によりコートされる
。別の例において、一連のELISAが一緒に行われ得、そこにおいて、個々のプレ
ートは各型特異的および型共通抗原部分に対して用いられる。固定化抗原に対す
る抗体の結合を可能にするに十分なインキュベーション期間の後、プレートは、
未結合部分、および添加された、検出可能に標識された二次的な結合分子を除去
するために洗浄され得る。二次的結合分子は、任意の捕獲されたサンプル抗体と
反応することが可能となり、プレートは洗浄されて当該分野で周知の方法を用い
て二次的な結合分子の存在が検出される。
このように、1つの特定の実施態様において、生物学的サンプル由来の、結合
された抗型特異的または型共通抗原リガンドの存在は、抗体リガンドに対する抗
体を含む二次的バインダーを用いて容易に検出され得る。多くの抗ヒト免疫グロ
ブリン(Ig)分子は、当該分野において公知である(例えば、市販のヤギ抗ヒトIg
またはウサギ抗ヒトIg)。これらの分子は、当業者に公知の方法を用いて、西洋
ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはウレアーゼなどの、検
出可能な酵素標識に容易に結合され得る。その後、適切な酵素基質が、検出可能
シグナルを生成するために用いられる。他の関連する実施態様において、競合型
ELISA技術が、当業者に公知の方法を用いて実施され得る。
アッセイはまた、溶液中において、ウイルス性タンパク質およびこれらのウイ
ルス性タンパク質に特異的な抗体が沈降条件下で複合体を形成するように行われ
得る。1つの特定の実施態様において、型特異的および/または型共通抗原は、
直接的化学結合または間接的結合などにより、当該分野において公知の結合技術
を用いて固相粒子(例えば、アガロースビーズなど)に結合され得る。抗原でコ
ートされた粒子は、その後、適切な結合条件下において、型特異的および/また
は型共通HSV抗原に対する抗体を含むと考えられる生物学的サンプルと接触する
。結合した抗体間の架橋は、沈降され得かつ洗浄および/または遠心分離を用い
てサンプルから単離され得る粒子−抗原一抗体複合体凝集体の形成を引き起こす
。反応混合物は、上記の免疫診断法などの多数の標準的な方法のいずれかを用い
て抗体−抗原複合体の存在または不在を決定するために分析され得る。
なおさらなる実施態様において、免疫親和性マトリックスが提供され得る。そ
こにおいて、抗型特異的および/または抗型共通分子を含むと考えられる生物学
的サンプルからの抗体のポリクローナル集団が基体に固定化される。この点に関
して、サンプルの最初のアフィニティー精製が、固定化された抗原を用いて行わ
れ得る。従って、得られたサンプル調製物は、抗HSV部分のみを含んでおり、親
和性支持体における潜在的な非特異性結合特性を回避する。免疫グロブリンを(
インタクトまたは特定の断片のいずれかで)高い収率および良好な抗原結合活性
保持率で固定化する多くの方法が当該分野において公知である。固定化されたプ
ロテインAまたはプロテインGは、どの特定の方法にも限定されることなく、免
疫グロブリンを固定化するために用いられ得る。
従って、免疫グロブリン分子が一旦固定化されて免疫親和性マトリックスを供
給すると、各々が別々で異なる標識を有する型特異的および型共通抗原が、適切
な結合条件下において結合された抗体と接触する。任意の非特異的に結合した抗
原が免疫親和性支持体から洗浄された後、結合抗原の存在が、当該分野で公知の
方法を用いて、各々の特異的な標識についてアッセイすることにより決定され得
る。
本発明を用いてHSV感染を診断するのに特に好適な方法は、ストリップ免疫ブ
ロットアッセイ(SIA)技術(例えば、伝統的なウエスタンブロット技術とドット
(Chiron Corp,Emeryville,CA)テストの使用を含む。これらのアッセイにおい
て、1以上の型特異的および1以上の型共通抗原が、膜性支持体テストストリッ
プ上に個々の互いに離れたバンドとして固定化される。生物学的サンプル中の抗
HSV反応性の視覚化は、比色酵素基質と共に抗ヒトIgG酵素結合体を用いて達成さ
れる。抗ヒトIgMおよびヒトIgGなどの内部コントロールもまた、ストリップ上に
存在し得る。アッセイは、手動でまたは自動化されたフォーマットを用いて行わ
れ得る。
型特異的および型共通抗原を含む上記のアッセイ試薬は、上記のようなイムノ
アッセイを行うために、適切な指示および他の必要な試薬と共にキットとして提
供され得る。キットはまた、用いられる特定のイムノアッセイに依存して、適切
な標識および他のパッケージされた試薬および材料(すなわち、洗浄緩衝液な
ど)を含み得る。上記のような標準的なイムノアッセイはこれらのキットを用い
て行われ得る。
III.実験
以下に、本発明を実施する特定の実施態様の実施例を示す。実施例は、説明の
目的のためのみに提供され、如何なる点でも本発明の範囲を限定することは意図
されない。
用いられた数字(例えば、量、温度など)に関する正確さを確実にするために
努力がなされたが、ある程度の実験誤差および偏差は、言うまでもなく許容され
るべきである。
実施例1
HSV 診断アッセイにおいて使用される組換えgG1ポリペプチドの産生
a.SOD/HSV1gG1M-D
2つのオリゴヌクレオチド、5 AGG AAC CAT GGC AAT GTC GCC GGG CGC CAT GC
T GGC CGT TGT T3 および5 TCC CGT CGA CTA CTA GTC CAG GGC GGG GGA GGC AGT
GAG GAA CGA3を、HSV-1(株Patton)のgG1の190アミノ酸(Met1-Asp190)のアミノ
末端領域をコードするDNAフラグメントのPCR合成を開始するために使用した(Kud
lerら、Virology(1983)124:86-99)。(図2Bを参照)。このポリペプチドは、先に
HSV-1、株17についてMcGeochらによって報告されたgG1糖タンパク質のMet1-Asp1 89
と対応する(McGeochら、J.Mol.Biol.(1985)181:1-13)。1つのアミノ酸のず
れは、PCR実験においてテンプレートとして使用するDNA(プラスミドpSVgG1)が、
HSV-1、株17の対応するgG1 Glu79-Glu85アミノ酸ストレッチ中の1つの追加グル
タミン酸をコードするHSV-1単離体由来であったという事実のためである。
PCRで合成されたDNAフラグメントは、5末端においてNcoI制限部位およびATGコ
ドンを含み、そして3末端において2つの停止コドンおよび制限部位SalIを含ん
だ。これらの改変は、ウィルスタンパク質のクローニングを容易にするために導
入した。DNAを、NcoI/SalIで消化し、583bpフラグメントを、pSOD/HIV2PR113由
来の細菌ベクターにクローニングし(Pichuantesら、J.Biol.Chem.(1990)265:
13890-13898)、プラスミドpSODgG1を生成した。この細菌発現プラスミドは、SOD
/HSV1gG1M-D(35.7kDの分子量を有しヒトスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)お
よび上記したHSV-1gG1アミノ酸配列(図2C)からなるハイブリッドタンパク質)を
コードする。
b.SOD/HSV1gG1P-D
この33.2kDの組換え抗原は、シグナル配列が含まれていない(図2D)ことを除い
ては、上記SOD/HSV1gG1M-D抗原に類似している。
c.酵母中のgG1抗原の発現
酵母中での上記した組換えタンパク質の発現のために、以下の操作を行った;
HIV-1プロテアーゼ(Pichuantesら、Proteins Struct.Funct.Genet.(1989)6:3
24-337)をコードするプラスミドpSI1/PR179の833bp StuI/SalI挿入物を、pSODgG
1から単離した918bp StuI/SalIフラグメントと置換し、プラスミドシャトルベク
ターpSI/gG1を生成した。ADH2/GAPDHプロモータ-SOD/HSV1gG1配列を含む2408bp
BamHI/SalIカセットを、pSI/gG1から取り除き、酵母ベクターpBS24.1にクローニ
ングした(Pichuantesら、Protein Engineering: A Guide to Design and Produc
tion第6章、J.L.ClelandおよびC.Craik編、John Wiley & Sons、New York、NY
、印刷中)。生じるプラスミドpSODHSV1gG1M-Dは、酵母中に自己複製のための2m
配列、ハイブリッドプロモータADH2/GAPDH、転写終結を確実にするためのa-因
子ターミネータ、ならびに選択のための酵母遺伝子leu2-dおよびURA3を含む。細
菌におけるプラスミド複製および選択に必要な複製のCo/E1オリジンおよびβ-ラ
クタマーゼ遺伝子もまた、この組換えプラスミド中に存在する。SOD/HSV1gG1P-D
をコードするプラスミドのために、同様の手順を続けた。
S.cerevisiae JSC310[MAT a,leu2,ura3-52,prbl-1122,pep4-3,prcl-407
,::DM15(pGAP/ADR1::G418r),(cir0)]の細胞は、pSODHSV1gG1M-Dプラスミドで形
質転換され、酵母培地中のグルコースの消耗後(Pichuantesら、J.Biol.Chem.(19
90)265:13890-13898およびFranzusoffら、J.Biol.Chem.(1995)270:3154-3159)、
SOD(153アミノ酸)、2アミノ酸(Met-Ala)のリンカー、および190アミノ酸のHSV-
1gG1ポリペプチドからなる35.7kDの融合タンパク質を発現した(図2C)。ヌクレオ
チド配列を、pSOD-HSV1gG1 M/DのSOD/HSV1gG1コード領域のDNA塩基配列決定によ
り、照合した。
SODおよびHSV-1陽性血清に対するモノクローナル抗体を用いたクーマシーブル
ー染色および免疫ブロット分析によって検出したところ、組換えタンパク質は酵
母中で高レベルで発現した。タンパク質を以下のように精製した。形質転換した
酵母細胞を溶解し、溶解物を10,000rpmで1時間遠心分離した。上清を、50 mM M
ES(2-[N-モルホリノ]エタンスルホン酸)(pH5.2)で1:10に希釈し、S-セファロ
ースカラム上にかけた。0から1M NaCl勾配を用いて、タンパク質を溶出し、タ
ンパク質ピークをプールし、濃縮し、Sephacryl S-200 HRゲル濾過を用いてさら
に精製した。タンパク質ピークをプールし、濃縮し、そしてさらに使用するため
に保存した。
d.gG1t
gG1のシグナル配列および全細胞外ドメインを含むアミノ酸1から189を含む、
gG1tと称される追加の切形されたgG1の誘導体を以下のように作成した。以下の
プライマーを用いたPCRによって、gG1tをコードする遺伝子を、HSV-1EcoRIフラ
グメントH(株Patton)からクローニングした。
5末端 Pstl Met
5 AGT ACC GGA TCC CTG CAG ATG TCG CAG GGC GCC ATG
CGT G
3末端 BamHI 停止 Gluエピトープ
5 TTA TCA GGA TCC CTA TTC CAT TGG CAT GTA TTC GTC
CAG GGC GGG GGA GGC AGT
昆虫細胞系を用いて、以下のようにタンパク質gG1tを発現した。
PCRフラグメントを、PstIおよびBamHIで消化し、pAcC13バキュロウィルス発現
プラスミドに挿入し(Munemitsuら、Mol.Cell.Biol.(1990)10:5977-5982)、ジデ
オキシ鎖終結法を用いてその全体を配列決定した。このフラグメントは、シグナ
ル配列および全細胞外ドメインを含む、5末端から翻訳開始点までの567ヌクレオ
チド塩基対およびアミノ酸1から189をコードする領域を含んだ。フラグメント
の3末端においては、プライマーはまた、6-アミノ酸gluエピトープタグ(5 TTC
CAT TGG CAT GTA TTC 3)をコードした。このタグは、gluエピトープを特異的に
認識する対応する抗体の使用によりこのタグを担持するあらゆるタンパク質の同
定、定量、および精製を容易にする。
記載されるように(Kittsら、Nuc.Acids Res.(1990)18:5667-5672)、2mgの導
入ベクターpAc-gG1tまたはpAc-gG2tDNAを、0.5mgの直線化された、野生型ウィル
スDNAで、SF9細胞に同時トランスフェクトすることによって、gG1tをコードする
DNA配列を、pAcC13導入ベクター(Munemitsuら、Mol.Cell.Biol.(1990)10:5977-5
982)を介して、Autographa californicaバキュロウィルス(AcNPV)に組み換えた
。組換えバキュロウィルスを、プラーク精製により単離した(Smithら、Mol.Cell
.Biol.(1983)3:2156-2165)。1ml当たり1.5×106組換えAcNPV-感染したSF9細胞
の懸濁培養物からの上清を、1Lガラスエルレンマイヤーフラスコ中で、無血清培
地中で関連するバキュロウィルスと2-10のmoiで120rpmにて振とうする48時間の
感染に続いて、収穫した(Maiorellaら、Biotech.(1988)6:1406-1410)。培地を4
℃にて400-600×g10分間遠心分離し、0.8mm濾過し、濃縮し、精製の前に-80℃
にて保存した。
gG1ポリペプチドを、非イオン性界面活性剤NP-40を、最終濃度が0.2%となる
ように解凍濃縮された上清に加えて免疫精製した。上清を室温にて15分間インキ
ュベートし、9000rpmにて10分間遠心分離し、抗gluモノクローナル抗体をタンパ
ク質G-Sepharose Fast Flow(Pharmacia)に結合することによって調製したアフィ
ニティーカラムに付与した。結合タンパク質を、gly-ペプチド含有リン酸緩衝化
生理食塩水(PBS)中で溶出し、濃縮した。
精製したタンパク質を、SDS-PAGEを用いて評価した。gG1tバンドの移動度は、
分子量35kDのタンパク質のそれと対応していた。精製したタンパク質を、全ての
N-連結された炭水化物鎖を取り除くためにN-グリカナーゼで消化した。タンパク
質を、アミノ酸分析に供した。gG1tの予想されたアミノ酸組成は、測定されたも
のと良好に一致した。N末端アミノ酸配列決定を、Edman分解を用いてタンパク質
に対して行った。gG1tタンパク質は、配列分析により予想されたようにVal22か
ら開始し、タンパク質が21アミノ酸シグナル配列を有することを確認した。
タンパク質の同一性もまた、ウェスタンブロット分析により確認した。クーマ
シーブルー染色されたタンパク質の移動度と対応する移動度を有する単一バンド
は、抗gluモノクローナル抗体およびアルカリホスファターゼ接合されたヤギ抗
マウスIgGと反応した。
実施例2
HSV 診断アッセイにおいて使用される組換えgG2ポリペプチドの産生
a.gG2t
gG2(gG2t)をコードする遺伝子の切形された誘導体を、以下のプライマーを用
いたPCRによってHSV-2 HindIIIフラグメントL(株333)からクローニングした:
5末端 Pstl Met
5 AGT ACC GGA TCC CTG CAG ATG CAC GCC ATC GCT
CCC AGG
3末端 BamHI 停止 Gluエピトープ
5 TTA TCA GGA TCC CTA TTC CAT TGG CAT GTA TTC ATC
TAG AGC AGG GGA GGC CG
PCRフラグメントを、PstIおよびBamHIで消化し、pAcC13バキュロウィルス発現
プラスミドに挿入し、ジデオキシ鎖終結法を用いてその全体を配列決定した。こ
のフラグメントは、シグナル配列および全細胞外ドメインを含む、5末端から翻
訳開始点までの1953のヌクレオチド塩基対およびアミノ酸1から651をコードす
る領域を含んだ。フラグメントの3末端においては、プライマーはまた、上記し
たように6-アミノ酸glyエピトープタグ(5 TTC CAT TGG CAT GTA TTC 3)をコード
した。
gG1tについて上記したように、gG2tをコードするDNA配列を、pAcC13導入ベク
ター(Munemitsuら、Mol.Cell.Biol.(1990)10:5977-5982)を介して、Autographa
caiifornicaバキュロウィルス(AcNPV)に組み換えた。
精製したタンパク質を、SDS-PAGEを使用して評価した。gG2tバンドの移動度は
、分子量90kDのタンパク質のそれと対応していた。精製したタンパク質を、全て
のN-連結された炭水化物鎖を取り除くためにN-グリカナーゼで消化した。タンパ
ク質を、アミノ酸分析に供した。gG2t組成は、配列から計算したそれとは一致し
なかった。
不一致の源を決定するために、Edman分解を用いてN末端アミノ酸配列決定を行
った。gG2tタンパク質は、細胞外ドメインの中心にあるアミノ酸Ala345 に対応す
る配列Ala-Leu-Thrで開始していた。従って、バキュロウィルスに感染した昆虫
細胞中で発現したgG2タンパク質を、哺乳動物細胞中の他のウィルスタンパク質
の非存在下で発現したウィルスgG2タンパク質およびgG2タンパク質について先に
記載したように切断した。タンパク質は、Met344とAla345との間で切断すると思
われる。
gG2tタンパク質の同一性もまた、ウェスタンブロット分析により確認した。ク
ーマシーブルー染色されたタンパク質の移動度と対応する移動度を有する単一バ
ンドは、抗gG2モノクローナル抗体および西洋ワサビペルオキシダーゼ接合され
た抗マウス抗体と反応した。
b.SOD/HSV2gG2Arg21-Arg342(N 末端領域)およびSOD/HSV2gG2Leu343-Asp649(C 末端領域
)
上記説明したように、組換え的に産生されたgG2タンパク質は、アミノ酸344と
345との間でプロテアーゼによって細胞内的に切断されることが発見されたため
、gG2タンパク質は、高レベルの発現を達成するために、Gly22-Arg342およびLeu
343-Asp649のそれぞれに対するSOD融合からなる2つのフラグメントとして産生
された。
分子のアミノ末端部分(図3E)およびカルボキシル末端部分(図3F)を発現するよ
うに2つの構築物を作成した。N末端およびC末端gG2構築物を、以下のように昆
虫細胞内で発現させた。HSV-2からのgG2のC末端をコードする配列をサブクロー
ニングするストラテジーは、プラスミド、完全長gG2のためのバキュロウィルス
転移ベクターであるpAcgG2Lを独特なPstIおよびNcoI部位との間でクローニング
するための174bp PCR産物の生成を含んだ。5-プライムアンプリマー5 d-AACTGCA
GAAATGCTGGGGCCCTGCATGCTGCTGCTGCTGCTGCTGCTGGGCCTGAGGCTACAGCTCTCCCTGGGCATC
GCCTTGACCGAGGACGCGTCCTCCGAT-3を、ベクターpAcgG2L中のクローニング部位に相
補的なPstI制限部位、それに続く共通真核開始部位およびペプチドの正確な切断
のためにアミノ酸位置1にIleを有するヒト胎盤アルカリホスファターゼシグナ
ル配列の21コドン、それに続くgG2(Ala345-Asp354)のC末端の9コドンを含むよ
うに設計した。下流アンプリマー5 d-AGGGCGCCATGGCGGTGGCCGACA-3を、4つのコ
ドンgG2配列に直接上流に隣接するNcoI認識部位を含むように合成した。NcoI部
位は、PstIおよびNcoIでのベクターpAcgG2Lの消化および精製の間に取り除かれ
るN末端gG2をコードする1.1kb配列の代わりにPCR産生物を挿入するのを容易にす
る。標準PCR反応を、製造者の推奨に従ってベント(vent)ポリメラーゼで行った(
New England Biolabs,Beverly,MA)。増幅された産物を、Geneclean(RPI,Moun
t Prospect,IL)を用いてゲル精製し、PstIおよびNcoIで激しく消化し、PstI/Nc
oI-切断されたpACgG2Lに連結した。ベクターにクローニングされたPCR産物のオ
リジンおよび適合度を、バキュロウィルス導入ベクター中の独特なPstIおよびNc
oIクローニング部位にそれぞれ隣接する正配列決定プライマー5 D-GATAACCATCTC
GCAAATAAATAAG-3および逆配列決定プライマー5 d-CATCTCGTCGGGGGGAGTAGT-3によ
り確認した。アルカリホスファターゼリーダ配列、およびN末端的に切形されたg
G2を含む改変した導入ベクターはpAcapgG2Lと称した。
記載のように(Kittsら、Nuc.Acids Res.(1990)18:5667-5672)、0.5mgの直線化
された、野生型ウィルスDNAを有する2mgのプラスミドDNAでSf9昆虫細胞を同時
トランスフェクトすることによって、gG2のC末端をコードする配列、導入ベクタ
ーpAcapgG2Lを介して(親ベクターpAcC13、Munemitsuら、Mol.Cell.Biol.(1990)1 0
:5977-5982)、Autographa californicaバキュロウィルス(AcMNPV)に組み換えた
。組換えバキュロウィルスを、プラーク精製により単離した(Smithら、Mol.Cell
.Biol.(1983)3:2156-2165)。Log相で、1ml当たり1.5×10e6 Sf9細胞の懸濁培養
物を、2-10のmoiでバキュロウィルスに感染させ、ISFM7培地中で組換えタンパク
質
を産生した(Maiorellaら、Biotech.(1988)6:1406-1410)。無血清上清を、感染後
約48時間後のタンパク質精製のために収穫した。
N末端およびC末端gG2タンパク質はまた、酵母株AB122、JSC310、およびAD1に
おいて発現した。高い発現レベルのSOD/HSV2gG2Arg21-Arg342タンパク質を、酵
母不溶性画分中でクーマシーブルー染料によって検出した。タンパク質は、約55
kDの見かけ分子量を有する(翻訳された分子量は50.9)。酵母株AB122およびJSC31
0中での発現は、株AD1中でのそれよりも高かった。タンパク質は、抗HSV-2抗体
と免疫反応した。
SOD/HSV2gG2Leu343-Asp649を、AB122、JSC310、またはAD1の不溶性画分中で検
出しなかった。さらなる実験(クーマシーブルー染色および免疫ブロット分析)は
、タンパク質が、AB122およびJSC310細胞の可溶性画分中で見いだされたことを
示した。タンパク質は、約80kDの見かけ分子量を有していた(翻訳された分子量
は46.3kD)。
5つの別々のコロニー(C1〜C5)から得た細胞の全溶解物で検出されたように、
SOD/HSV2gG2-NtermおよびSOD/HSV2gG2-Ctermの酵母発現は、以下の通りであった
。クーマシーブルー染色されたタンパク質は、N末端抗原(予想分子量=50.9)が
、全ての培養物中(C1〜C5)で高レベルで発現したことを示した。このタンパク質
は、MAbからhSODと反応し、HSV-2陽性血清中に存在する抗体との弱い反応性を示
した。C末端抗原(予想分子量=46.3)は、クーマシーブルー染色により検出され
なかった。約80kDの見かけ分子量を有するタンパク質バンドを、ウェスタンブロ
ットにおいて検出した。このタンパク質は、HSV-2陽性血清と強く反応した。
細胞において発現する組換えタンパク質をより良好に特徴づけるために、各C3
クローンの全画分、可溶性画分および不溶性画分を調製した。結果は、ほとんど
のN末端抗原が、(hSOD/envタンパク質の場合に予想されたように)不溶性画分に
おいて見いだされたことを示した。C末端抗原は、クーマシーブルー染色によっ
て検出されなかったが、MAbからhSOD、およびHSV-2陽性血清に対するその反応性
によって明らかに同定された。驚くことに、hSOD/envタンパク質については、抗
原が、可溶性および不溶性画分の両方で検出された(可溶性画分における反応性
がより強かった)。約30kDのタンパク質バンドもまた、免疫ブロットにおいて検
出した。
c.SOD/Gg2M393-D649
gG2のMet393-Asp649に対するSOD融合からなる、より小さいHSV2gG2 C末端ポリ
ペプチドをコードするPCR DNA産物を構築した。(図3Gを参照)
d.SOD/gG2A489-D649
gG2のAla489-Asp649に対するSOD融合からなる、より小さいHSV2gG2 C末端ポリ
ペプチドをコードするPCR DNA産物を構築した。(図3Hを参照)
実施例3
HSV 診断アッセイにおける使用のための短縮型HSV VP16の産生
短縮型HSV VP16ポリペプチドを、以下のようにバキュロウイルス系で発現させ
た。C末端に6アミノ酸のglu-エピトープタグを有するアミノ酸1〜416をコー
ドする、HSV-2株G VP16の短縮型誘導体であるVP16-2tを、以下のプライマーを用
いて、プラスミドpSVVP-2(以下に記載する)からのPCR増幅によってクローン化
した。
5'末端 BgIII Met VP16
5’ACA GAT CTT ATG GAC CTG TTG GTC GAC
3'末端 ECoRI Stop Glu エピトープ
5’AG AAT TCA CTA TTC CAT TGG CAT
V16GTA TTC
GGT GGA CAG TCT GCG
1.38kbのPCRフラグメントをBgIIIおよびEcoRIで消化し、pAcC13バキュロウイ
ルス発現プラスミド(Munemitsuら、Mol.Cell.Biol.(1990)10:5977〜5982)に
挿入し、そしてその全体をジデオキシ鎖終止法を用いて配列決定した。この新し
いプラスミドを、pAcVP16Tと命名した。
VP16-2tをコードするDNA配列を、上でgG1tに関して記載したようにAutographa
califormicaバキュロウイルス(AcNPV)に組み換えた。
pHS226(国際公開番号WO/92/02251;ATCC寄託番号第68372号)由来のVP16-2を
コードする約2.0kbのEcoRI-BamHIフラグメントを単離し、そして予めEcoRIおよ
びBamHIで消化したpSV7dに挿入することにより、プラスミドpSVVP-2を得た。
pH2G512由来のVP16-2をコードするXhoI-SphI平滑末端フラグメントをpUC18のS
maI部位にクローン化して、pUC18からpHS226を作製した。
短縮型VP16ポリペプチドを、以下のように免疫精製した。20mMのTris-HCl、pH
8.2、1mMのEGTA、1mMのMgCl2、4mMのβ-メルカプトエタノール、1mg/mlのア
プロチニン、0.2%のNP-40、および、抗プロテイナーゼ反応混合液からなる緩衝
液を用いて、バキュロウイルス細胞培養物のペレットからVP16-2tを抽出した。
この抗プロテイナーゼ反応混合液は、ペプスタチン、ロイペプチン、E-64、pefa
bloc SC、EDTA、およびEGTAからなる。抽出物を遠心分離により清澄化し、そし
てPBS中でのglu-ペプチドで溶出した抗glu Protein G-Sepharose Fast Flow(Ph
armacia)カラム上で、VP16を精製した。
精製したタンパク質を、SDS-PAGEによって特徴づけた。VP16バンドの移動度は
、完全長のVP16については分子量65kDのタンパク質の移動度と一致し、VP16の短
縮型については45kDのタンパク質の移動度と一致した。タンパク質の同一性を、
抗gluモノクローナル抗体およびVP16のN末端に対するモノクローナル抗体であ
るLP1を用いて、ウエスタンブロットにより確認した。
実施例4
HSV 診断アッセイにおける使用のための組換えgDポリペプチドの産生
細胞外ドメインのアミノ酸1〜302をコードするgD2遺伝子フラグメントを哺乳
動物発現ベクターpSV7dにクローン化し、上述のようにpHS213を作製した(米国
特許第5,171,568号)。プラスミドをCHO細胞にトランスフェクトし、そして短縮
型gD2誘導体タンパク質を発現する安定な細胞株を選択し、次いでこれを、メト
トレキセートの濃度を増加させながら連続的に曝露することにより増幅させた。
標準的な技術を用いて、短縮型タンパク質を培地から精製した。特に、馴化培地
を濃縮し、濃縮した培地を酸で沈殿させ、そしてヘパリンセファロース、ブチル
650M、およびQ−セファロースファストフローカラムを含む一連のカラムを用い
た。生成物を濃縮し、ダイアフィルトレーションを行い、さらなる使用のために
保存した。
実施例5
HSV 診断アッセイにおける使用のための組換えgBポリペプチドの産生
a.HSV gB
米国特許第5,171,568号および同第5,422,792号;Pachlら、J.Virol.(1987)6 1
:315-325で開示された方法を用いて、本発明の診断アッセイにおける使用のた
めの、完全長のgBポリペプチド、ならびに膜貫通ドメインおよび細胞質ドメイン
の欠失を有するgBのフラグメントとを組換え的に産生した。
b.HSV gB の短縮型誘導体
膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインのすべてまたは一部分を欠くHSV gBの種
々の短縮型誘導体を、米国特許第5,171,568号および同第5,244,792号に記載され
るように構築した。特に、gB1遺伝子の3'末端から580bpを欠失し、そして194個
のカルボキシル末端アミノ酸を欠くタンパク質をコードするgB1遺伝子を含むプ
ラスミドpHS114(ATCC寄託番号第39651号)を構築した。3'末端から637bpを欠失
するgB2遺伝子を含むプラスミドpHS210もまた作製した。1187塩基対のgB1遺伝子
フラグメントを有するプラスミドpHS127A(ATCC寄託番号第39652号)もまた構築
した。
c.HSVgB2dTM
gB2抗原の発現ベクターであるプラスミドpPRgBdTMは、SV40初期プロモータの
制御下でgB遺伝子の欠失誘導体を含む。gB遺伝子誘導体は、膜貫通(TM)領域を
含む、アミノ酸Ala703からLeu776によって規定される領域を欠く長さのポリペプ
チ
ド808アミノ酸をコードする。この構築物は、アミノ酸Gln777からC末端を含む
。
この誘導体は、以前に用いた短縮型gB2(膜貫通ドメインおよびC終端領域の
両方を欠失していた)と比べてgB2タンパク質の分泌効率を改善するように構築
した。タンパク質誘導体はともに、gBタンパク質の実質的にすべての細胞外ドメ
インを含む。この構築物によってコードされるgB2ポリペプチド(gB2dTM)は、
細胞外ドメインと細胞質ドメインとの間の融合部でのKpnI部位のクローンニング
および導入の結果として挿入された2つの新しいアミノ酸Gly702およびThr703を
有する。
プラスミドpPRgBdTMはまた、アデノウイルス主要後期プロモータ(Ad-dhfr)
の制御下で、SV40複製起点、SV40ポリA付加部位、およびジヒドロ葉酸レダクタ
ーゼcDNAを含む。すべてのプラスミドの構築を以下に詳細に説明する。
d.プラスミドpPRgBdTMの構築
pPRgBdTMの構築のために用いた機構は、以下の通りである。プラスミドpHS214
-A由来の2.57kpのEcoRI-BamHIフラグメントとして、gB2dTM誘導体遺伝子配列を
得た。このフラグメントを、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントを用い
てインキュベートし、EcoRI部位およびBamHI部位を修復して末端を平滑化し、そ
の後、予めSaIIで切断し、そして末端を修復してクレノウDNAポリメラーゼIフ
ラグメントで平滑化し、その後アルカリホスファターゼで処理した哺乳動物細胞
発現ベクターpPR25に連結した。
プラスミドpHS214-Aの構築は、以下の通りである。完全なHSV-2 gB配列は、プ
ラスミドpHS208(米国特許第5,171,568号に記載される)の3467bpのNruIからBam
HIのフラグメント内に含まれる。膜貫通ドメインのアミノ酸Asp701からGln778を
欠失するgB2誘導体遺伝子gB2dTMを、以下の3つのフラグメントから組み立てた
:(1)22アミノ酸のシグナル配列および細胞外ドメインの604アミノ酸Ala1〜Ala6 04
とを含むgB2遺伝子の5'末端、ならびにSV40プロモータ、SV40ポリアデニル化
部位、および細菌内での複製に必要な配列を含むpSV7d(米国特許第5,171,568号
に記載される)ベクター配列のすべてを、プラスミドpHS214から、4360bpのXhoI
からBamHIのフラグメントとして得た;(2)プラスミドpHS208から、ヌクレオチ
ド1
870〜1980(gB遺伝子の最初のATGをヌクレオチド1と考える)に相補的な天然の
XhoI部位を含むプライマーAと、ヌクレオチド2158〜2169に相補的で、そして導
入されたKpnI部位を含むプライマーBとを用いて、294bpのPCRフラグメントとし
て、Leu605からAsp701までのgB2の細胞外ドメインの残りを得た。このフラグメ
ントを制限酵素XhoIおよびKpnIで消化し、そしてアガロースゲル電気泳動によっ
て単離した;および(3)操作されたKpnI部位を含むヌクレオチド2395〜2407に相
補的なPCRプライマーCと、終止コドンおよびBamHI部位を含むヌクレオチド2698
〜2715に相補的なPCRプライマーDとを用いることによって、アミノ酸Gln778か
らアミノ酸883位の終止コドンを含む細胞質ドメインを含むgB2遺伝子の3'末端を
、プラスミドpHS208から、321bpのKpnIからBamHIのフラグメントとして調製した
。このフラグメントを制限酵素KpnIおよびBamHIで消化し、ゲル電気泳動によっ
て単離した。これらの3つのフラグメント1、2、および3を互いに連結して、
発現ベクターpSV7dに誘導体gB2dTMを含むプラスミドpHS214-Aを作製した。
プラスミドpPR25は、スモールT抗原イントロンおよびポリアデニル化配列を
コードするSV40 DNAであるアデノウイルス-2主要後期プロモータ(Ad-2 MLP)の
制御下でジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)cDNAを含む、哺乳動物細胞発現ベク
ターである。pPR25の構築には、StuIでのプラスミドpPR21の消化、および発現ベ
クターpAD-dhfr由来の3388bpのNruI-EcoRIフラグメントの挿入が必要であった。
blaプロモータ、ならびにStuIおよびXhoIの制限部位を含む合成85-merをポリリ
ンカーのSspI部位に挿入することによって、pSV7dからプラスミドpPR21を誘導し
た。
pHS214の構築のために用いた機構は、以下の通りである。発現ベクター中に互
いに連結した2つのフラグメントとして、gB2遺伝子の短縮型誘導体を得た。pHS
208をTthIIIで消化し、そして1660bpフラグメントを単離して、pHS208からコー
ド配列の3'末端を得た。フラグメントの末端を、DNAポリメラーゼIのクレノウ
フラグメントでフィルインし、DNAをSphIで消化し、そしてgB2アミノ酸560〜718
をコードする配列を含む477bpのSphI-(TthII)フラグメントを単離した。
gB2タンパク質の591個のアミノ酸をコードする1.90kbpのHindIII-PvuIIフラグ
メントを含むプラスミドであるpHS210(米国特許第5,244,792号に記載され
る)から、短縮型gB2遺伝子の5'末端を得た。pHS210のgB2コード領域を、膜アン
カー配列と提案されているN末端の110アミノ酸をPvuII部位で切断した。pHS210
をHindIIIで消化し、フラグメントの末端をDNAポリメラーゼIのクレノウフラグ
メントでフィルインし、そしてDNAをSphIで消化した。1735bpの(HindIII)-SphI
フラグメントを単離した。
先で単離した2つのgB2遺伝子フラグメントを互いに連結し、フラグメントの
末端をDNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントでフィルインし、予めXgaIで
消化し、そしてDNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントで修復して平滑末端
化したpSV7dに挿入し、pHS214を作製した。
e.哺乳動物細胞におけるgB2dTMの発現
プラスミドpPRgBdTMを、COS7細胞およびdhfrCHO細胞の両方にトランスフェク
トした。Stuveら、J.Virol.(1987)61:326-335に記載されるように、ELISAに
よって培養培地へのgB2タンパク質の発現を確認した。分泌されたgB2dTMを発現
するCHO細胞株を、大規模な商業的生産用に選択した。この目的のために、dhfr
およびHSV gB2誘導体の両方の遺伝子を含むDNAプラスミドベクターpB2dTMで、内
因性ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr酵素をコードする遺伝子)を欠失するCHO
細胞をトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、dhfrを発現する細
胞だけが増殖し得るような選択培養培地で増殖させた。これらの細胞によるgB産
生のレベルは、dhfrの非競合阻害剤である薬剤メトトレキセート(MTX)の増大
する濃度を含む選択培地での段階的な培養プロセスによって増加した。dhfr遺伝
子のコピー数を増幅させることによって、細胞は、MTXの存在下で増殖する能力
を獲得した(Altら、J.Biol.Chem.(1978)235:1357-1370、およびKaufmanら
、Mol.Cellular Biol.(1981)1:1069-1076)。dhfr DNAに直接連結する第2の
遺伝子gB2もまた同時に増幅した(Kaufman,R.J.ら、J.Mol.Biol.159:601〜62
1(1982))。このプロセスは、バルク集団中の細胞の、MTX含有選択培地への曝
露、50〜400個の異なる単一コロニークローンの選択、96ウェルプレート、次い
で24ウェルおよび6ウェルプレートに連続的に通過させることによるコロニー細
胞数の拡大を必要とし、ELISAアッセイを用いて培養培地に分泌されるgBの量を
測定して同時にgB2の生産性を評価した。生産性にさらなる増大が観察されなく
なった場合は、このプロセスを停止した。
実施例6
gB2 型特異的エピトープおよび型共通エピトープの同定
gB2の3つの異なるセグメントを表す組換えタンパク質を、ヒトIgG抗体反応性
について試験した。これらの構築物は、gB2のアミノ酸18〜228を含むアミノ近位
タンパク質(gB2 SS2)、gB2のアミノ酸154〜503を含む中央部(gB2 AP2)、お
よびgB2のアミノ酸228〜903を含むカルボキシ近位部(gB2 SS1)を含んだ。これ
らの組換えタンパク質を、ウエスタンイムノブロットアッセイにおける抗体標的
として用いた。
HSV型特異的gG試験により既知のHSV血清型を有する45個体由来の血清サンプル
を評価した。gB2 SS2は、HSV 2+/1-個体由来の15の血清サンプルのうちの15と強
く反応性であった。これに対し、15のHSV 1+/2-血清サンプルの0、および15のH
SV 1-/2-血清サンプルの0は反応性であった。15のHSV 2+/1-血清サンプルの5
、15のHSV 1+/2-血清サンプルの0、および15のHSV 1-/2-血清サンプルの0にお
いて、gB2 AP2反応性が見られた。最後に、15のHSV 2+/1-血清サンプルの15、15
のHSV 1+/2-血清サンプルの15、および0から15のHSV 1-2-血清サンプルにおい
てgB2 SS1反応性が見られた。
このように、HSV gB2は、HSV-2抗体と反応するアミノ近位領域のエピトープ、
ならびにHSV-1抗体およびHSV-2抗体の両方と反応するカルボキシ近位領域のエピ
トープとを含む。このアッセイにおいて、これらのエピトープをそれぞれ型特異
的抗原および型共通抗原として用いることができる。
実施例7
HSV 診断アッセイにおける使用のための型特異的gB1ペプチドの合成
図4に示す成熟分子(前駆体分子を参照して番号を付けたアミノ酸31〜77)を
参照して番号を付けたgB1のアミノ酸1〜47を含む型特異的gB1ペプチドを、Carp
inoおよびHan、J.Amer.Chem.Soc.(1970)92:5748-5749、CarpinoおよびHan
、
J.Org.Chem.(1972)37:3404-3409、ならびにChangおよびMeienhofer、J.Pep
tide Protein Res.(1978)11:246-249に記載されるように、標準的な0.25mMス
ケールおよび標準的なABI FastMocプロトコル、化学薬品および試薬を用いて、A
BI433Aペプチドシンセサイザー(Foster City,CA)で合成した。BSAへの結合を
促進するためにシステイン残基をN末端に付加し(以下を参照のこと)、BSAに
結合したペプチドの量を測定する補助のためにノルロイシン残基をC末端に付加
した。
合成の後、Kingら、Int.J.Peptide Prot.Res;およびLundtら、Int.J.Pe
ptide Prot.Res.(1978)に記載されるように、樹脂支持体からペプチドを切断
した。Burkeら、J.Liq.Chromatogr.(1988)11:1229;およびHodgesら、Pepti
des: Chemistry and Biology Proceedings of the Tenth American Peptide Sym
posium、Marshal編、Escom Science Publishers、Leiden、オランダ(1988)、2
26頁の「逆相HPLCによるペプチドの精製の新規なアプローチ:サンプル置換クロ
マトグラフィー」に記載されるように、ペプチドを精製した。簡潔には、C18樹
脂および5倍のカラム容量の5〜50%のアセトニトリルを用いる45°勾配を使用
して逆相HPLCを行った。0.1%のTFAをイオン対形成剤として用いた。カラム溶出
を分画した。
これらの画分の分析HPLCを行い、上記のKingらおよびLundtらに記載のように
純度について試験した。分析用スケールC18逆相カラムを、5〜50%のアセトニ
トリル勾配およびイオン対形成剤として0.1%のTEAPとともに用いた。90%を上
回る純度の画分をプールした。最終的に精製したペプチドプールは、95%の純度
であった。
合成の後、ペプチドを、BSA(単量体、Sigma Chemicals Co.,St.Louis,MO
、カタログ番号A-1900)に結合させた。標準的な技術を用いて、Sulfo-SMCC(Pi
erce,Rockford,IL)を用いて化学的結合を行った。Brinkley、Bioconjugate C
hem.(1992)3:2-13;Hashidaら、J.Appl.Biochem.(1984)6:56-63;ならび
にAnjaneyuluおよびStaros、International Journal of Peptide and Protein R
esearch(1987)30:117-124を参照のこと。
ノルロイシンの存在についてアッセイすることによる標準的なアミノ酸分析技
術により確認されるように、1つのBSAに対する4.52 gB1ペプチドのモル比を得
た。
カップリングの後、30,000の分子量のカットオフを有する膜を用いるAmiconフ
ローセルでのダイアフィルトレーションにより、混合物から結合していないgB1
ペプチドを取り除いた。遊離のペプチドの除去を、分析用スケールカラムを用い
る逆相HPLCにより測定した。0.1%のTEAPをイオン対形成剤として用いて、5〜5
0%のアセトニトリルからの勾配を走査した。ペプチド結合体のエリアに対する
遊離のペプチドのエリアを比較した。
実施例8
型特異的および型共通HSV糖タンパク質を用いた
HSV 診断アッセイ
a.ストリップイムノブロットアッセイ(SIA)
上記の、バキュロウイルスで発現させたgG1およびgG2タンパク質を、型特異的
抗原として、別々の細いバンドで、gGIについては4mg/mlの濃度およびgG2につ
いては0.25mg/mlの濃度で、ニトロセルロースストリップに塗布した。実施例4
に記載したgD2タンパク質(HSV-1ホモログとHSV-2ホモログとの間で86%の同一性
を有する型共通タンパク質)を、さらに別のバンドとして1mg/mlの濃度で、同じ
ニトロセルロースストリップにコートした。内部コントロールとして、さらなる
バンドは、精製したヒトIgGを低濃度(185ng/ml)および高濃度(925ng/ml)で
、そして抗ヒトIgM(1mg/ml)を含んだ。
イムノブロットアッセイのために、ストリップを、各バッチにつき30ストリッ
プを有するバッチ様式で処理した。全ての工程を室温で行った。各ストリップに
番号をつけ、次に、別々のチューブに入れ、そのチューブに1mlの希釈液(ウシ
タンパク質の安定剤および界面活性剤を含むPBS、0.1%のアジ化ナトリウム、お
よび防腐剤として0.05%のゲンタマイシン硫酸塩)および20mlの血清サンプルを
加えた。チューブを4時間穏やかに振動させ、溶液を吸引によって取り除き、1m
lの新鮮な希釈液を各チューブに加えた。チューブを30分間振動させ、溶液を吸
引によって取り除き、そして洗浄緩衝濃縮物(50×)から作製された1mlの洗浄
緩衝液(防腐剤として0.01%のチメロサールを含むリン酸緩衝化界面活性剤溶液
)を、各チューブに加えた。各チューブの内容物を、1つの洗浄容器に空け、ス
トリップを20秒間回旋させることによって洗浄した。洗浄緩衝液を、デカントし
、30mlの新鮮な緩衝液を加え、そしてこのプロセスを繰り返した。残留溶液を吸
引によって取り除き、20mlの結合溶液(conjugate solution)(ウシタンパク質
安定剤を有し、防腐剤として0.01%のチメロサールを含有する、ペルオキシダー
ゼ標識ヤギ抗ヒトIgG(重鎖および軽鎖))を加えた。容器を、10分間110rpmで
回転させ、結合溶液をデカントし、そして洗浄工程を3回繰り返した。残留溶液
を、吸引によって再び取り除き、20mlの基質/現像液(メタノール/リン酸緩衝
過酸化水素中の4−クロロ−1−ナフトール)を加え、次に15〜20分間、110rpm
で回転させた。溶液をデカントし、そしてストリップを蒸留水中で2回洗浄した
。現像したストリップをペーパータオル上に表を上にして置き、暗所で30分間乾
燥させた。次に、ストリップを3時間以内の乾燥で読みとった。HSV抗原バンド
の色の強度に、以下のアルゴリズムを用いて、-(0)〜4+の範囲の値を割り当てた
。低IgGバンドに1+の値を割り当て、高IgGバンドに3+の値を割り当てる。次に、
gG1、gG2、およびgDバンドを、これらのバンドの強度がIgGのコントロールバン
ドの強度とどのように比較されるかに応じて、0〜4+でスコアする。
b.ランダムな血清サンプルのSIA、およびウエスタンブロットアッセイによ って得られた結果に対する結果との比較
HSVワクチン研究のために志願した個人由来のスクリーニングサンプルとして
得られた、738のランダムに選ばれた血清サンプルのセットを、上記のSIAアッセ
イを用いて、HSVの血清状態(serostatus)について分析した。≧1+でスコアさ
れる3つのHSV抗原バンドのいずれかを有するサンプルを、陽性とみなした。様
々な血清状態のクラスを示す代表的なサンプルを図1に示す。各サンプルのHSV
血清状態をまた、刊行された手順(Ashleyら、J.Clin.Micro.(1988)26:662
〜667)によるウエスタンブロットアッセイによって別々に決定した。
イムノブロットアッセイの結果と、ウエスタンブロットアッセイから得られた
診断との比較を表1に示す。ウエスタンブロットアッセイによって、HSV-1のみ
の血清陽性(seropositive)であるとみなされた327の血清のうち、286、すなわ
ち87.5%をイムノブロットによって診断した。2つのアッセイで一致しない結果
を出した51のサンプルを、様々な診断カテゴリに分配した;13をHSV1+2+に指定
し、3つをHSV2+のみとして指定した。ウエスタンブロットアッセイによってHSV
1+2+であった120の血清のうち、100(83.3%)をまた、イムノブロットアッセイ
によっても検出し、そして20を、HSV2+のみであると決定した。55の全サンプル
(ウエスタンブロットアッセイによってHSV1+またはHSV1+2+である447の全サン
プルの12.3%)が、検出可能なgG1抗体を有さなかった。これらのうち、26がgD2
抗体のみを有し、陽性の型分類不可能(positive untypable)と指定し、9を、
二重血清陰性(double seronegative)として指定し、そして20を、HSV2+のみと
して診断した。ウエスタンブロットアッセイによってHSV2+のみとして指定した
血清についての2つのアッセイ間に優れた一致があり、116のうち115(99.1%)
を、イムノブロットアッセイによって同様に診断した。同様に、174の血清をイ
ムノブロットアッセイによって二重血清陰性として指定し、これは、ウエスタン
ブロットアッセイによって二重血清陰性として指定した176の血清の98.9%に対応
する。
c.ランダムな血清サンプルのSIA、および型特異的gB1ペプチドを用いるウエ スタンブロットアッセイにより得られた結果に対する結果との比較
酵母中で産生され、実施例1aおよび2b(C末端領域)にそれぞれ記載される型
特異的gG1およびgG2と、実施例4に記載される型共通gD2タンパク質とを、実施
例8aに記載されるようなニトロセルロースストリップに塗布した。さらに、実施
例7に記載される合成の型特異的gB1-BSAペプチドを、別々の細いバンドで、1mg
/mlの濃度でニトロセルロースストリップに塗布した。内部コントロールとして
、さらなるバンドは、精製ヒトIgGを低濃度(185ng/ml)および高濃度(925ng/m
l)で、そして抗ヒトIgM(1mg/ml)を含んだ。
18〜50歳までの健康な成人からランダム選択された737の血清を、このSIAを用
いてスクリーニングしてHSV血清状態を決定した(表2)。これらのうち176(23
.9%)がHSVに対する抗体を持たず、419(56.8%)がHSV-1血清陽性であり、243(
33.0%)がHSV-2血清陽性であり、そして122のサブセットが、二重HSV-1および-2
血清陽性であった。さらなる21がgD2抗体のみを有し、従って、HSV血清陽性とし
て型分類不可能と指定した。これらの診断を、ウエスタンブロット(WB)アッセ
イによって決定したものと比較すると、SIAは、HSV-1陽性サンプルの92.4%、HSV
-2陽性サンプルの99.6%、およびHSV陰性サンプルの97.1%を正しく識別した。
gB1ペプチドは、260/297(87.5%)を診断したgG1タンパク質と比較して(表3
)、SIAによってHSV-1のみの血清陽性として指定した合計297の血清のうちの264
(88.9%)を診断した。従って、gB1ペプチドは、gG1タンパク質と同等に、この
目的のために良好な抗原であった。SIAによってHSV-1+HSV-2+として指定した122
の血清のうち、gG1タンパク質によって検出した108/122(88.5%)と比較して、g
B1ペプチドは、101/122、すなわち82.8%を検出した。SIAによってHSV-1+/2+とし
て診断した419の血清のうち、414が、ウエスタンブロット診断と一致した。gB1
ペプチドは、ウエスタンブロット分析によってHSV-2+のみであった3つの血清を
、HSV-1+/2+として診断した(3つのHSV-1偽陽性に対応)。gG1タンパク質は、
ウエスタンブロットによってHSV-2+のみであった1つの血清を、HSV-1+/2+とし
て診断し、両方の抗原からの結果を組み合わせて合計4/419(0.95%)のHSV-1偽
陽性を示した。従って、ウエスタンブロットにより415/449(92.4%)のHSV-1+サ
ン
プルが、SIAによって正確に診断された。gB1およびgG1抗原の両方は、最終HSV-1+
診断に等しく寄与した。従って、SIAを読みとるための最終的なアルゴリズムは
、gB1およびgG1抗原のバンドのどちらか一方または両方が陽性(血清がHSV-1+)
であるかどうかである。SIAによればHSV-1-であり、ウエスタンブロットによれ
ばHSV-1+である34のHSV-1+血清のうち、12をHSV-2+のみとして指定し、6つを、
HSV陰性として指定し、そして16を、HSV陽性として型分類不可能と指定した。SI
AアッセイにgB1ペプチドを加えることにより、gG1のみをHSV-1特異的抗原として
82.0%(-gB1)〜93.3%(+gB1)含むアッセイと比較して、HSV-1偽陰性の数が約5
0%減少した。
HSVウエスタンブロットアッセイと比較した、HSV SIA の実施の容易さ、およ
びより広範な有用性により、HSVの広範な血清学的スクリーニングを容易にし得
る。
*これらのうち3つは、WBによればHSV-2+のみであり;**これらのうち1つが、W
BによればHSV-2+のみである。
†これらは、gD2が陰性であるので、HSV陰性として診断された。
d.ELISA
gGのELISA方法を、以下の工程を用いて実行した。Immulon2マイクロタイター
プレート(Dynatech Laboratories、Chantilly、VAより入手可能)を、gG1また
はgG2抗原を用いて、ホウ酸塩緩衝液中のそれぞれの抗原を、2mg/ml(50l/ウェ
ル)で、4℃で一晩プレートに塗布することによりコートした。プレートを、0.
14MのNaClおよび0.05%のTriton X-100を含む洗浄緩衝液で4回洗浄し、そしてプ
レートを、10%ウシ胎児血清(FCS)、リン酸緩衝食塩水(PBS)中の0.3%のTween
20で、37℃で約2時間ブロックした。プレートを、適切な洗浄液、および0.25M
の二塩基リン酸ナトリウム、0.001MのEDTA、0.5MのNaCl、0.2Mのチメロサール、
0.01%のTriton X-100、0.001%のHCl、6N、および1%のカゼインを含む希釈溶液中
で1:20に希釈したヒト血清で4回洗浄した。サンプルを、50l/ウェルで加え、そ
してプレートを37℃で約2時間インキュベートした。
ヒト血清との反応の後、プレートを4回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ
(HRP)に結合されたCappel Fab'2のヤギ抗ヒトIgG(希釈溶液中で1:4000に希釈
(50l/ウェル))をウェルに加え、そして37℃で約1時間インキュベートした。
適切な洗浄溶液で4回洗浄した後、プレートを、50l/ウェルで加えられたOPD(o
-フェニレンジアミンジヒドロクロライド)溶液を用いて約15分間現像した。反
応を4NのH2SO4(50l/ウェルで加えられた)で停止させ、ELISAリーダーにおいてOD
490-650でプレートを読みとった。アッセイの結果を、以下の表4および5に示
す。
従って、HSV感染を検出する新規な方法が開示される。本発明の好適な実施態
様を、ある程度詳細に記載したが、明白な変更が、添付の請求の範囲によって定
義される、本発明の精神および範囲から逸脱することなく成され得ることが理解
される。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
//(C12P 21/02
C12R 1:91)
(C12P 21/02
C12R 1:865)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ
,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CZ,
DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,HU,I
L,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK
,LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,
MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,R
U,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TR
,TT,UA,UG,UZ,VN