JPH115062A - 耐食性に優れた有機被覆鋼板 - Google Patents

耐食性に優れた有機被覆鋼板

Info

Publication number
JPH115062A
JPH115062A JP20191397A JP20191397A JPH115062A JP H115062 A JPH115062 A JP H115062A JP 20191397 A JP20191397 A JP 20191397A JP 20191397 A JP20191397 A JP 20191397A JP H115062 A JPH115062 A JP H115062A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
organic
steel sheet
resin
film
group
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP20191397A
Other languages
English (en)
Inventor
Naoto Yoshimi
直人 吉見
Kenichi Sasaki
健一 佐々木
Yoshiharu Sugimoto
芳春 杉本
Masaru Sagiyama
勝 鷺山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NKK Corp, Nippon Kokan Ltd filed Critical NKK Corp
Priority to JP20191397A priority Critical patent/JPH115062A/ja
Publication of JPH115062A publication Critical patent/JPH115062A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 使用過程において安全で、かつ耐食性に
優れた表面処理鋼板を提供する。 【解決手段】 上記課題は、亜鉛系めっき鋼板またはア
ルミニウム系めっき鋼板の表面に、高分子マトリックス
にキレート形成基を有している高分子キレート化剤皮膜
が形成され、さらにその上層に有機樹脂皮膜または有機
複合シリケート皮膜が形成されていることを特徴とす
る、耐食性に優れた有機被覆鋼板によって解決される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、家電、建
材用途に最適な表面処理鋼板に関し、製品を取扱う作業
者・ユーザーへの影響、製造時の排水処理対策、さらに
は使用環境下での製品からの有害物質の揮発・溶出など
の環境問題に適応するために、製造時および製品中に環
境・人体に有害なクロム、鉛、カドミウム、水銀などの
重金属を全く含まない環境適応型表面処理鋼板に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】家電製品、建材、自動車を用途とする有
機複合被覆鋼板は、耐食性に優れることを長所とし、さ
らに用途に応じて、塗装性、潤滑性を付与した高機能鋼
板として幅広く実用化されている。ここで、有機複合被
覆鋼板とは、亜鉛系めっき鋼板の表面に、耐食性(耐白
錆性、耐赤錆性)を向上させる目的で、クロム酸、重ク
ロム酸またはその塩類を主要成分とした処理液によるク
ロメート処理を施し、さらにその表面に薄膜の有機樹脂
皮膜を形成したものである。例えば、特公平4−107
0号や特公平3−32638号がある。これらの有機複
合被覆鋼板は、基本的には、下地めっきの表面に形成さ
れたクロメート皮膜が塩水噴霧等の苛酷な腐食環境下で
も優れた防錆性を発揮するとともに、その表面の有機樹
脂皮膜層が保護皮膜として防錆性や塗装性を高めてい
る。また、有機樹脂中に防錆添加剤、固形潤滑剤を添加
することにより、高耐食性鋼板や潤滑鋼板としてのバリ
エーションが可能となる。
【0003】ここで、めっき表面に形成されるクロメー
ト処理は、低コストで防錆効果を付与できる極めて経済
的な防錆処理方法である。
【0004】しかし、クロメート処理は公害規制物質で
ある6価クロムを使用するものであり、処理工程ではク
ロム酸塩が人体へ悪影響を与えることや、排水処理後の
クロムスラッジの廃棄処理が困難であること、またクロ
メート処理後の製品から6価クロムが溶出するおそれが
あるなどの種々の問題を有している。従って、クロム酸
類の使用管理基準が厳しくなると同時に、クロメート処
理工場の管理、排水処理およびクロメート処理物による
二次汚染などの問題が進んでいる。各工場では排水関係
をクローズド化し、クロムイオンが外部に排出するのを
極力防止して公害対策を講じているのが現状である。さ
らに、ユーザーにおいてクロメート処理鋼板の防錆油、
プレス油の脱脂工程において、アルカリ系の脱脂液を用
いる際には、特にクロムの溶出がかなり多く、その脱脂
液中の脱クロム処理が必要である。
【0005】このようなことから、亜鉛系めっき鋼板の
白錆の発生を防止するためにクロメート処理によらな
い、無公害な処理技術が数多く提案されている。例え
ば、無機化合物、有機化合物、有機高分子材料、あるい
はこれらを組み合わせた溶液を用い、浸漬、塗布、電解
処理などの方法により薄膜を生成させる方法がある。
【0006】具体的には、 (1) モリブデン、タングステンなどの金属の酸化物を
用いる方法(例えば、特開昭57−5875号公報) (2) タンニン酸を用いた方法(例えば、特開昭51−
71233号公報) (3) 3価クロムで構成した6価クロムを含まない無公
害のクロメート処理方法(例えば、特開昭61−587
号公報) などが知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記(1)の方
法ではモリブデン、タングステンなどの金属酸化物の腐
食に対する安定領域はクロムのそれよりも狭く、クロメ
ートと同程度の耐食性を得ることは困難であった。
【0008】また、上記(2)の方法では、外観ムラのあ
る不均一な着色皮膜となる。
【0009】さらに、上記(3)の方法では、可溶性クロ
ムを使用している点から、クロムフリーのニーズには根
本的には応えられない。
【0010】本発明は、かかる事情に鑑みてなされたも
のであって、使用過程において安全で、かつ耐食性に優
れた表面処理鋼板を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明者らが鋭意検討を行った結果、亜鉛系めっき鋼
板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、特定のキ
レート形成基を有する高分子キレート化剤の皮膜を形成
し、その上層の有機樹脂皮膜を形成することになり、環
境・人体に有害なクロメート処理液を行わずに、無公害
で耐食性に優れた有機複合被覆鋼板を得ることに成功し
た。すなわち、本発明の有機複合被覆鋼板は以下の構成
からなる。
【0012】1.亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム
系めっき鋼板の表面に、高分子マトリックスにキレート
形成基を有している高分子キレート化剤皮膜が形成さ
れ、さらにその上層に有機樹脂皮膜または有機複合シリ
ケート皮膜が形成されていることを特徴とする、耐食性
に優れた有機被覆鋼板
【0013】2.亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム
系めっき鋼板の表面に、数平均分子量300以上の高分
子マトリックスにキレート形成基を有している高分子キ
レート化剤皮膜が乾燥後の膜厚で0.01〜3μm形成
され、さらにその上層に有機樹脂皮膜もしくは有機複合
シリケート皮膜が0.1〜3μmの膜厚で形成されてい
ることを特徴とする、耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0014】3.高分子マトリックスに付与されたキレ
ート形成基が、アミノ酸基、カルボキシル基、シチオカ
ルバミン酸基、ポリアミノ基、チオール基、ザンセート
基、チオウレイド基、ジチオ酸基、β−ジケトン基、ヒ
ドロキサムオキシム基およびこれらの塩の中から選ばれ
た少なくとも1種であることを特徴とする上記1または
2に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0015】4.キレート形成基を有する高分子マトリ
ックスが、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリ
エチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアミノ
化合物、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸、エポキシ樹
脂、フェノール樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン樹
脂、アクリル樹脂、デンプンの中から選ばれた少なくと
も一種であることを特徴とするじょうき、2または3に
記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板。
【0016】5.上層の有機樹脂皮膜および有機複合シ
リケート皮膜が以下の組成から成ることを特徴とする上
記1、2、3または4に記載の耐食性に優れた有機被覆
鋼板。 (A) 有機樹脂100重量部 (B) シリカを1〜100重量部
【0017】6.上層の有機樹脂皮膜および有機複合シ
リケート皮膜が以下の組成から成ることを特徴とする上
記1、2、3、4または5に記載の耐食性に優れた有機
被覆鋼板 (A) 有機樹脂100重量部 (B) ポリオレフィンワックス等の炭化水素系化合物、
フッ素樹脂系化合物、脂肪酸アミド系化合物、二硫化モ
リブデン、金属石けん、フッ化黒鉛、窒化ホウ素および
ポリアルキレングリコールの中から選ばれた少なくとも
1種の固形潤滑剤を1〜80重量部
【0018】従来、金属表面を腐食抑制剤(インヒビタ
ー)を用いて化学吸着法により防食する手法は古くから
知られており、主に鉄の防食方法として、冷却水系、ボ
イラー系、給水・給湯系などの水と金属が常時接触する
環境下で、水中にアミン系、リン酸系吸着剤を添加する
方法が実用化されている。
【0019】本発明は、これら水回り配管系の防食とは
もちろん目的・用途が異なり、建材、家電、自動車など
の鋼板の防錆を目的としている。ところが、これら防錆
鋼板の目的で、キレート形成基を有する化合物を主体と
する皮膜が実用化された例はほとんどない。その理由
は、(1)金属の種類により吸着能が異なり、亜鉛系めっ
き鋼板、アルミニウム系めっき鋼板と安定で緻密な吸着
皮膜を得ることが困難なこと、(2)上記キレート化剤は
一般に低分子量のため、塗料用高分子樹脂のような連続
皮膜を形成することが困難なこと、などの理由により十
分な防食機能が得られなかった。
【0020】上記の課題を克服するために本発明者らが
鋭意研究を重ねた結果、高分子マトリックスにキレート
形成基を付与した高分子キレート化剤が優れた防食効果
を有することを見いだしたのである。本発明の特徴は、
従来から知られているEDTA等の低分子量のキレート
化剤を防錆用途に適用したのではなく、有機高分子マト
リックスにキレート形成基を付与した高分子キレート化
剤を、亜鉛系めっき鋼板もしくはアルミニウム系めっき
鋼板に適用した点にある。さらに本発明の特徴は、その
キレート形成基が望ましくは特定の種類の中から選択さ
れたものであることである。さらに、有機高分子マトリ
ックスの種類についても望ましくは、特定の種類のもの
を選択することが特徴である。
【0021】その防食機構は必ずしも明確でないが、
(1)従来の低分子量のキレート化剤ではなく、有機高分
子を主体とする高分子キレート化剤とすることにより塗
料用樹脂のような有機皮膜を形成できる、(2)特定のキ
レート形成基により亜鉛系めっき鋼板もしくはアルミニ
ウム系めっき鋼板の表面と安定で強固な吸着・反応皮膜
を形成する、(3)キレート化形成基が皮膜形成時に溶出
した金属イオンをトラップし、錯体構造皮膜を形成する
こと、(4)従来の低分子量のキレート化剤ではなく、高
分子をマトリックスとする高分子キレート化剤を採用す
ることにより、キレート化形成基が皮膜形成時に溶出し
た金属イオンをトラップして錯体構造皮膜を形成した際
に、三次元の高分子錯体構造を有する皮膜を形成し、緻
密で安定な三次元イオン架橋構造皮膜を形成できる、
(5)さらに形成した皮膜を有する鋼板を腐食環境下に曝
したときに、アノード溶解によって溶出した金属イオン
をキレート形成基が補足し、上記4と同様の電気的に中
和な高分子錯体構造を生成することにより腐食の進行を
抑制するものと考えられる。
【0022】亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系め
っき鋼板の表面に形成された高分子キレート化剤を含む
皮膜は、高分子マトリックスが有機樹脂と同様に皮膜を
形成して腐食を抑制する効果のみならず、キレート形成
基がめっき皮膜の表面に吸着もしくは反応により緻密な
保護皮膜層を形成するとともに、さらに皮膜成形時に溶
出した亜鉛イオンをキレート形成基がトラップして錯体
構造を形成し、緻密なバリヤー層を形成することによる
防錆効果を発揮できる。さらに腐食環境中に置いても、
腐食によって生成した亜鉛イオンを皮膜中のフリーのキ
レート形成基がトラップし、安定な金属錯体構造を形成
することによって腐食の促進を抑制する効果を発揮する
ものである。これらの複数の防食効果により、初めてク
ロムを使わずに優れた耐食性を付与できたものである。
また、必要に応じて、防錆添加剤と固形潤滑剤などを添
加し、より優れた耐食性、潤滑性の付与を可能とならし
めるものである。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細とその限定理
由を説明する。
【0024】ベースとなる亜鉛系めっき鋼板としては、
亜鉛めっき鋼板、Zn−Niめっき鋼板、Zn−Feめ
っき鋼板(電気めっき、合金化溶融亜鉛めっき)、Zn−
Crめっき鋼板、Zn−Mnめっき鋼板、Zn−Coめ
っき鋼板、Zn−Co−Cr合金めっき鋼板、Zn−C
r−Niめっき鋼板、Zn−Cr−Feめっき鋼板、Z
n−Alめっき鋼板(例えば、Zn−5%Al合金めっ
き鋼板、Zn−55%Al合金めっき鋼板)、さらには
これらのめっきに金属酸化物、ポリマーなどを分散した
亜鉛系複合めっき鋼板(例えば、Zn−SiO2分散め
っき)を用いることができる。また、上記のようなめっ
きのうち、同種または異種のものを二層以上めっきした
複層めっき鋼板を用いることができる。アルミニウム系
めっき鋼板としては、アルミニウムめっき鋼板、Al−
Siめっき鋼板を用いることができる。また、上記のめ
っきと鋼板の間に、あらかじめNiなどの薄目付けのめ
っきを施しても良い。めっきの方法としては、電解法
(水溶液中での電解、非水溶媒中での電解)、溶融法、
気相法のうち、実施可能ないずれの方法を採用すること
ができる。
【0025】めっき鋼板の表面は高分子キレート化剤を
塗布する前に必要によりアルカリ基による脱脂処理、密
着性、耐食性を向上させるために表面調整処理等の前処
理を行うことができる。
【0026】次に、上記亜鉛系めっき鋼板またはアルミ
ニウム合金板の表面に形成される特定のキレート形成基
を有する高分子キレート化剤について説明する。
【0027】キレート形成基は、めっき金属表面と化学
吸着することにより防錆効果を生じ、さらに皮膜形成時
にめっきから溶出した金属イオンと反応して不溶性の緻
密なキレート錯体をめっき表面に形成する機能を有する
ものである。
【0028】有機高分子マトリックスに付与されたキレ
ート形成基には、アミノ酸基、カルボキシル基、シチオ
カルバミン酸基、ポリアミノ基、チオール基、ザンセー
ト基、チオウレイド基、ジチオ酸基、β−ジケトン基、
ヒドロキサムオキシム基等が使用される。アミノ酸基と
しては、例えば、グリシン基、β−アラニン基、イミノ
ジ酢酸基なども含まれる。以上のものには、Na塩、K
塩、アンモニウム塩、Li塩などで塩の形でもよい。好
ましいキレート形成基はジチオカルバミン酸基、チオー
ル基およびこれらのNa塩、K塩、アンモニウム塩、L
i塩などの塩である。
【0029】キレート形成基が導入される有機高分子マ
トリックスとしては、ポリエチレン、ポリビニルアルコ
ール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、
ポリアミノ化合物、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸、
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、スチレン−ジビニルベ
ンゼン樹脂、デンプン等が好適である。好ましい有機高
分子マトリックスはポリアミノ化合物、ポリエチレン、
ポリエチレンイミン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル
酸、エポキシ樹脂である。
【0030】有機高分子マトリックスの分子量として
は、任意のもので構わないが、300以上、好ましくは
千以上、より好ましくは1万以上、特に好ましくは5万
以上である。分子量が1千以下では、耐食性向上効果が
小さい。また、分子量が大きすぎると塗料組成物として
はゲル化するなどの問題が生じるため、望ましくは10
0万以下である。
【0031】以上のような高分子キレート化剤の例とし
ては、排水処理中の重金属や、飛灰中の重金属の補集を
狙いとして工業化されている重金属補集剤を適用するこ
とができる。たとえば、ミヨシ油脂(株)製エポフロック
L−1、エポフロックL−2、栗田工業(株)製ウエルク
リンK−100、ウエルクリンK−200などを適用す
ることができる。むろん上記以外の合成品でも構わな
い。
【0032】高分子キレート化剤皮膜には、腐食をさら
に抑制するための目的で、必要に応じて、シリカ、ポリ
りん酸塩、りん酸塩、モリブデン酸塩、フィチン酸塩、
ホスホン酸、ホスホン酸塩の中から1種以上を配合する
ことができる。
【0033】シリカは、コロイダルシリカ、ヒュームド
シリカいずれでもよい。コロイダルシリカとしては、例
えば、スノーテックス O、N、20、30、40、
C、S(以上、日産化学株製)を用いることができる。
また、ヒュームドシリカとしては、AEROSIL R
971、R812、R811、R974、R202、R
805、130、200、300、300CF(以上、
日本アエロジル製)を用いることができる。これらシリ
カは、腐食環境下で緻密で安定な亜鉛の腐食生成物の生
成に寄与し、この腐食生成物がめっき表面に緻密に形成
されることによって、腐食の促進を抑制することができ
ると考えられている。
【0034】シリカの配合量としては、高分子キレート
化剤100重量部に対して、1〜100重量部(シリカ
の固形分重量)とする。1重量部未満では、耐アルカリ
脱脂後の耐食性向上効果が少ない。一方、100重量部
超では、塗装性、加工性が低下するので好ましくない。
好ましくは、5〜80重量部が適当である。
【0035】シリカ以外の腐食抑制剤として、公知のポ
リりん酸塩(例えば、ポリりん酸アルミ:テイカK−W
HITE80、84、105、G105、90(以上、
テイカ株製))、りん酸塩(例えば、りん酸亜鉛、りん
酸二水素アルミニウム、亜りん酸亜鉛等)、モリブデン
酸塩、りんモリブデン酸塩(りんモリブデン酸アルミニ
ウム)、フィチン酸、フィチン酸塩、ホスホン酸、ホス
ホン酸塩を1種以上添加してもよい。
【0036】これらのシリカ以外の腐食抑制剤の配合量
は高分子キレート化剤100重量部に対し合計で1〜1
00重量部、好ましくは5〜80重量部が適当であり、
シリカと上記のシリカ以外の腐食抑制剤を併用する場合
には上記配合量はさらにシリカを加えた合計量である。
【0037】さらに、その他の添加剤として、着色染料
(例えば、有機溶剤可溶性アゾ系染料、水溶性アゾ系金
属染料等)、有機着色顔料(例えば、縮合多環系有機顔
料、フタロシアニン系有機顔料等)、無機顔料(酸化チ
タン)、キレート剤(チオール等)、導電性顔料(例え
ば、亜鉛、アルミニウム、ニッケルなどの金属粉末、リ
ン化鉄、アンチモンドープ型酸化錫など)、カップリン
グ剤(例えば、シランカップリング剤、チタンカップリ
ング剤など)、メラミン・シアヌル酸付加物等を添加す
ることができる。
【0038】高分子キレート化剤は溶液状態で塗布す
る。溶媒は高分子キレート化剤が水溶性の場合には水溶
液でよく、濃度は1%〜40%(重量%)程度でよい。
【0039】上述したような高分子キレート化剤皮膜
は、亜鉛系めっき鋼板もしくはアルミニウム系めっき鋼
板の表面に、クロメート処理を施さずに塗布する。乾燥
後の膜厚は、任意の膜厚で良いが、望ましくは、0.0
1〜3μmである。0.01μm未満では、耐食性が不
十分であり、一方、溶接性を要求する用途では、3μm
を越えると溶接性が低下する。より好ましくは0.05
〜2μm、さらに好ましくは0.1〜1.5μmであ
る。
【0040】上記の高分子キレート化剤を含む塗料組成
物を亜鉛系めっき鋼板もしくはアルミニウム系めっき鋼
板の表面に形成する方法としては、塗布、浸漬、スプレ
ーいずれでも良い。塗布処理方法としては、ロールコー
ター(3ロール方式、2ロール方式等)、スクイズコー
ター、ダイコーターなどいずれの方法でもよい。また、
スクイズコーター等による塗布処理、あるいは浸漬処
理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法
により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行
うことも可能である。
【0041】これらコーティングの後には、水洗するこ
となく加熱乾燥を行う。ただし、本発明高分子キレート
皮膜は下地亜鉛系めっき鋼板もしくはアルミニウム系め
っき鋼板と化学吸着もしくは反応により結合しているの
で、コーティング後の水洗工程を実施することも可能で
ある。
【0042】加熱乾燥処理方法としては、ドライヤー、
熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等を用いることが
できる。加熱処理は、到達板温で50〜300℃、好ま
しくは80〜250℃の範囲で行うことが望ましい。こ
の加熱温度が50℃未満では皮膜中の水分が多量に残
り、耐食性が不十分となる。また、300℃を越えると
非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じ耐食性
が低下する。
【0043】次に上層の有機樹脂皮膜および有機複合シ
リケート皮膜について説明する。
【0044】前述の高分子キレート化剤皮膜の表面に、
さらに、アルカリ脱脂後の耐食性および塗装性を向上さ
せる目的で、有機樹脂皮膜または有機複合シリケート皮
膜を形成させる。有機複合シリケート皮膜とは有機樹脂
をシラン化合物を介してシリカと複合化させた皮膜で、
例えば、特公昭60−33192に開示したものを用い
ることができる。
【0045】有機樹脂皮膜あるいは有機複合シリケート
皮膜に使用される有機樹脂としては、水溶性、水分散性
樹脂、有機溶剤可溶性樹脂いずれも用いることができる
が、コイルコーティングで短時間加熱乾燥させるには、
水分散性樹脂もくしは有機溶剤可溶性樹脂が好ましい。
最近の地球環境保護を目的としたVOC規制から、水系
樹脂が好ましい。これらのことから水分散性樹脂が好ま
しい。また、これらの水分散性樹脂をシランカップリン
グ剤を介してシリカと複合化させた有機複合シリケート
も好適である。
【0046】水分散性樹脂としては、以下のものを用い
ることができる。
【0047】(1) アクリル系樹脂 例えば、ポリアクリル酸及び共重合耐、ポリアクリル酸
エステル及びその共重合体、ポリメタクリル酸エステル
及びその共重合体、ポリメタクリル酸エステル及びその
共重合体、ウレタン−アクリル酸共重合体(またはウレ
タン変性アクリル樹脂)、スチレン−アクリル酸共重合
体等、さらにこれらの樹脂を他のアルキド樹脂エポキシ
樹脂、フェノール樹脂等によって変性させた樹脂とする
こともできる。
【0048】(2) エチレン系樹脂 例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メ
タクリル酸共重合体、カルボキシル変性ポリオレフィン
樹脂などのエチレン系共重合体、エチレン−不飽和カル
ボン酸共重合体、カチレン系アイオノマー等、さらにこ
れらの樹脂を他のアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノ
ール樹脂等によって変性させた樹脂とすることもでき
る。
【0049】(3) アルキド樹脂 例えば、油変性アルキド樹脂、ロジン変性アルキド樹
脂、フェノール変性アルキド樹脂、スチレン化アルキド
樹脂、シリコン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキ
ド樹脂、オイルフリーアルキド樹脂、高分子料オイルフ
リーアルキド樹脂等。
【0050】(4) エポキシ樹脂 例えば、エピクロルヒドリン型、グリシジルエーテル型
等のストレートエポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂
(エポキシエステル樹脂)、多塩基性変性エポキシ樹
脂、アクル樹脂変性エポキシ樹脂、アルキド(またはポ
リエステル)変性エポキシ樹脂、ポリブタジエン変性エ
ポキシ樹脂、フェノール変性エポキシ樹脂、アミンもし
くはポリアミン変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキ
シ樹脂等。
【0051】(5) ウレタン樹脂 ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系
ポリウレンタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等。
【0052】これら上記の二種類以上の水分散性樹脂を
併用してもよい。
【0053】また、樹脂の乾燥温度の低温化を狙いとし
て、樹脂粒子のコア部分とシェル部分とで、異なる樹脂
種類、または異なるガラス転移温度の樹脂からなるコア
・シェル型水分散性樹脂を用いることができる。また、
自己架橋性を有する水分散性樹脂、例えば、樹脂粒子に
アルコキシシラン基を付与することによって、樹脂の加
熱乾燥時にアルコキシシランの加水分解にらるシラノー
ル基の精製と樹脂粒子間のシラノール基の脱水縮合反応
を利用した粒子間架橋を利用することができる。
【0054】以上の水分散性樹脂の中で、耐食性、加工
性、塗装性を考慮すると、エチレン系樹脂系が好まし
く、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタク
リル酸共重合体、カルボキシル変性ポリオレフィン樹脂
などのエチレン系共重合体、エチレン−不飽和カルボン
酸共重合体、エチレン系アイオノマー等が好適である。
また、さらにその中でも、エチレン系アイオノマーが優
れた耐食性、加工性の他にも優れた耐黒変性を発揮す
る。このエチレン系樹脂に水分散性エポキシ樹脂、アク
リル樹脂、ウレタン樹脂を併用することができる。
【0055】さらにこれらの水分散性樹脂を加えて、水
溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性ブタ
ジエンラバー(SBR,NBR,MBR)、メラミン樹
脂、ブロックイソシアネート、オキサゾリン化合物等を
架橋剤として併用することが有効である。
【0056】有機溶剤可溶性樹脂としては (1) エポキシ樹脂 例えば、エピクロルヒドリン型、グリシジルエーテル型
等のストレートエポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂
(エポキシエステル樹脂)、多塩基性酸変性エポキシ樹
脂、アクリル樹脂変性エポキシ樹脂、アルキド(または
ポリエステル)変性エポキシ樹脂、ポリブタジエン変性
エポキシ樹脂、フェノール変性エポキシ樹脂、アミンも
くしはポリアミン変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポ
キシ樹脂等。これらのエポキシ樹脂もくしは変性エポキ
シ樹脂は、優れた耐食性、塗装性を付与することができ
る。
【0057】(2) ウレタン樹脂 油変性ポリウレタン樹脂、アルキド系ポリウレタン樹
脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系
ウレタン樹脂等。
【0058】(3) アルキド樹脂 例えば、油変性アルキド樹脂、ロジン変性アルキド樹
脂、フェノール変性アルキド樹脂、スチレン化アルキド
樹脂、シリコン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキ
ド樹脂、オイルフリーアルキド樹脂、高分子料オイルフ
リーアルキド樹脂等。
【0059】(4) アクリルシリコン樹脂 例えば、主剤としてアクリル系共重合体の側鎖又は末端
に加水分解性アルコキシシリル基を含み、これに硬化剤
を添加したもの。これらのアクリルシリコン樹脂を用い
た場合、優れた耐候性が期待できる。
【0060】(5) フッ素樹脂 フルオロオレフィン系共重合体のものがあり、これには
例えば、モノマーとしてアルキルビニルエーテル、シン
クロアルキルビニルエーテル、カルボン酸変性ビニルエ
ステル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル、テトラフ
ルオロプロピルビニルエーテル等と、フッ素モノマー
(フルオロオレフィン)との共重合体がある。これらフ
ッ素樹脂を用いたばしぽ、優れた耐候性と優れた疎水性
が期待できる。
【0061】上記の他、可溶性フェノール樹脂なども併
用できる。
【0062】以上の樹脂の二種類以上を組み合わせても
よい。
【0063】さらに、樹脂皮膜の耐食性、加工性を向上
させることを狙いとして、尿素樹脂(ブチル化尿素樹脂
等)、メラミン樹脂(ブチル化メラミン樹脂)、ブチル
化尿素・メラミン樹脂、ペンゾグアナミン樹脂等のアミ
ノ樹脂、ブロックイソシアネート、オキサゾリン化合
物、フェノール樹脂等の硬化剤を配合することができ
る。
【0064】上層の有機樹脂皮膜および有機複合シリケ
ート皮膜中には、腐食を抑制するための目的で、下層の
高分子キレート化剤皮膜と同様、無公害のシリカ、ポリ
りん酸塩、りん酸塩、モリブデン酸塩、フィチン酸塩、
ホスホン酸、ホスホン酸塩の中から1種以上を配合する
ことができる。
【0065】シリカとしては、コロイダルシリカ、ヒュ
ームドシリカいずれもでよい。水分散性、水溶性樹脂に
添加するコロイダルシリカとしては、例えば、スノーテ
ックスO、N、20、40、C、S(以上、日本産化学
株製)、有機溶剤可溶性樹脂に添加する有機溶剤分散性
シリカとしては、例えば、オルガノシリカゾルMA−S
T−M、IPT−ST、EG−ST、EG−ST−Z
L、NPC−ST、DMAC−ST、DMAC−ZL、
XBA−ST、MIBK−ST(以上、同)、OSCAL
1132、1232、1332、1432(以上へ触媒
化成製)を用いることができる。また水分散性、水溶製
有機溶剤可溶性樹脂樹脂に適したヒュームドシリカとし
ては、AEROSIL R971、R812、R81
1、R974、R202、R805、130、200、
300、300CF(以上、日本アエロジル製)を用い
ることができる。
【0066】シリカの配合量としては基体樹脂(有機樹
脂)100重量部に対して、1〜100重量部が適当で
ある。1重量部未満では、耐アルカリ脱脂後の耐食性向
上効果が少ない。一方、100重量部超では、塗装性、
加工性が低下するので好ましくない。好ましくは、5〜
80重量部が望ましい。
【0067】シリカを配合する方法としては、通常の分
散機による分散でもよく、また、あらかじめ水分散性樹
脂とコロイダルシリカを、シランカップリング剤を用い
て反応させた有機複合シリケートを用いてもよい。例え
ば、アクリル樹脂とシリカの有機複合シリケート、エポ
キシ樹脂とシリカの有機複合シリケートを併用したもの
を用いることができる。
【0068】シリカ以外の腐食抑制剤として、公知のポ
リりん酸塩(例えば、ポリりん酸アルミ:テイカK−W
HITE80、84、105、G105、90(以上、
テイカ株製))、りん酸塩(例えば、りん酸亜鉛、りん
酸二水素アルミニウム、亜りん酸亜鉛等)、モリブデン
酸塩、りんモリブデン酸塩(りんモリブテン酸アルミニ
ウム)、フィチン酸、フィチン酸塩を1種以上添加して
もよい。
【0069】これらのシリカ以外の腐食抑制剤の配合量
は基体樹脂100重量部に対し合計では100重量部、
好ましくは5〜80重量部が適当であり、シリカと上記
のシリカ以外の腐食抑制剤を併用する場合には上記配合
量はさらにシリカを加えた合計量である。
【0070】上層の皮膜を有機複合シリケート皮膜とす
る場合には、さらにシラン化合物を配合し、有機樹脂と
シリカを反応結合させる。
【0071】シラン化合物としては、例えば、ジ−ビニ
ルトリメトキシシラン、ジ−ビニルトリエトキシシラ
ン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロ
ロプロピルメチルジクロロシラン、γ−クロロプロピル
メチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルト
リメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジ
メトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメト
キシシラン、γ−アミノプピルトリエトキシシラン、γ
−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−(β−
アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラ
ン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメ
チルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメ
チルジメトキシシラン、などを用いることができる。
【0072】これらのシラン化合物の添加量は有機樹脂
とシリカの固形分総重量に対し0.1〜10wt%程
度、好ましくは0.5〜5wt%程度、より好ましくは
1〜3wt%程度が適当である。
【0073】さらに、皮膜の加工性を向上させる目的
で、必要に応じて固形潤滑剤を配合することができる。
本発明に適用できる固形潤滑剤としては、以下のような
ものがあげられる。
【0074】(1) ポリオレフィンワックス等の炭化水
素系化合物:例えば、ポリエチレンワックス、合成パラ
フィン、天然パラフィン、マイクロワックス、塩素化炭
化水素等。 (2) フッ素樹脂系化合物:例えば、ポリフルオロエチ
レン樹脂(ポリ4フッ化エチレン樹脂等)、ポリフッ化
ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂等 (3) 脂肪酸アミド系化合物:例えば、ステアリン酸ア
ミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミ
ド、エチレンビスステアロアミド、オレイン酸アミド、
エシル酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド等。 (4) 金属石けん類:例えば、ステアリン酸カルシウ
ム、ステアリン酸鉛、ラウリン酸カルシウム、パルミチ
ン酸カルシウム等。 (5) 金属硫化物:二硫化モリブデン、二硫化タングス
テン。 (6) その他:例えば、グラファイト、フッ化黒鉛、窒
化ホウ素、ポリアルキレングリコール、アルカリ金属硫
酸塩等。
【0075】以上の固形潤滑剤の中でも、ポリエチレン
ワックス、フッ素樹脂系化合物(中でもポリ4フッ化エ
チレン樹脂微粒子)が好適である。ポリエチレンワック
スとしては、ヘキスト製セリダスト9615A、371
5、3620、3910、三洋化成製サンワックス13
1−P、161−P、三井石油化学(株)製ケミパールW
−100、W−200、W−500、W−800、W−
950などを用いることができる。
【0076】フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチ
レン微粒子が好適で、ダイキン工業株製 ルブロンL−
2、L−5、三井・デュポン製 MP1100、120
0、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製 フルオン
ディスパージョンAD1、AD2、フルオンL140
J、L150J、L155Jなどを用いることができ
る。ポリオレフィンワックスとテトラフルオロエチレン
の併用により優れた潤滑効果を発揮できる。
【0077】これらの潤滑剤の配合量は、基体樹脂10
0重量部に対して、1〜80重量部が適当である。1重
量部未満では潤滑効果が乏しく、また、80重量部超で
は塗装性が低下する。好ましくは3〜40重量部であ
る。
【0078】さらに、その他の添加剤として、着色染料
(例えば、有機溶剤可溶性アゾ系染料、水溶性アゾ系金
属染料等)、有機着色顔料(例えば、縮合多環系有機顔
料、フタロシアニン系有機顔料等)、無機顔料(酸化チ
タン)、キレート剤(チオール等)、導電性顔料(例え
ば、亜鉛、アルミニウム、ニッケルなどの金属粉末、リ
ン化鉄、アンチモンドープ型酸化錫など)、カップリン
グ剤(例えば、チタンカップリング剤など)、メラミン
・シアヌル酸付加物等を添加することができる。
【0079】上述したような有機樹脂皮膜および有機複
合シリケート皮膜の乾燥後の膜厚は、任意の膜厚で良い
が、望ましくは、0.1〜3μmである。0.1μm未
満では、耐食性向上効果、塗装性向上効果が不十分であ
り、一方、溶接性を要求する用途では、3μmを越える
と溶接性が低下する。より好ましくは0.2〜2μm、
さらに好ましくは0.5〜1.5μmである。
【0080】上記の有機樹脂皮膜あるいは有機複合シリ
ケート皮膜を塗料組成物を形成する方法としては、塗
布、浸漬、スプレーいずれでも良い。塗布処理方法とし
ては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式
等)、スクイズコーター、ダイコーターなどいずれの方
法でもよい。また、スクイズコーター等による塗布処
理、あるいは浸漬処理、スプレー処理の後に、エアナイ
フ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一
化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
【0081】加熱乾燥処理方法としては、ドライヤー、
熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等を用いることが
できる。加熱処理は、到達板温で50〜300℃、好ま
しくは80〜250℃の範囲で行うことが望ましい。こ
の加熱温度が50℃未満では皮膜中の水分が多量に残
り、耐食性が不十分となる。また、300℃を越えると
非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じ耐食性
が低下する。
【0082】本発明は、以上述べたような高分子キレー
ト化剤皮膜と有機樹脂皮膜からてる有機複合皮膜を両面
または片面に有する鋼板を含むものである。本発明鋼板
の形態としては、例えば、以下のようなものがある。
【0083】(1) 片面:めっき皮膜−高分子キレート
化剤皮膜−有機樹脂皮膜、片面:めっき皮膜 (2) 片面:めっき皮膜−高分子キレート化剤皮膜−有
機樹脂皮膜、片面:高分子キレート化剤皮膜 (3) 両面:めっき皮膜−高分子キレート化剤皮膜−有
機樹脂皮膜 (4) 方面:めっき皮膜−高分子キレート化剤皮膜−有
機樹脂皮膜、片面:公知のりん酸塩皮膜等
【0084】
【実施例】家電、建材、自動車部品用の表面処理鋼板と
して、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼
板(表1)の表面をアルカリ脱脂処理後、水洗乾燥し
て、次いで、各種マトリックス種類・マトリックス分子
量、各種キレート形成基からなる高分子キレート化剤
(表2)、必要に応じてシリカ(表3)、シリカ以外の
防錆添加剤(表4)からなる塗料組成物をロールコータ
ーにより塗布し、各種温度で加熱乾燥した。さらに、そ
の表面に表5〜8からなる有機樹脂皮膜または有機複合
シリケート皮膜を、所定の膜厚と乾燥温度で形成した。
【0085】高分子キレート化剤としては、例えば表2
実施例1に示したようにミヨシ油脂(株)製エポフロッ
クL−1(分子量:8万〜12万、キレート形成基:ジ
チオカルバミン酸Na塩基とチオールNa塩基)を用い
た。また、例えば表17に示したように各種マトリック
スとキレート形成基を組み合わせたものを用いた。
【0086】また、高分子キレート化剤皮膜および有機
樹脂皮膜の膜厚は、塗料組成物の固形分濃度(加熱残
分)、または塗布条件(ロールの圧下力、回転速度等)
により調整した。得られた表面処理鋼板について、耐食
性、塗料密着性、加工性の各試験を行った結果を表8〜
16に示す。尚、本実施例の製造条件、品質性能の評価
方法は、以下の通りである。
【0087】(1) めっき鋼板 板厚0.8mm、表面厚さ(Ra)1.0mmの冷延鋼
板に各種亜鉛系めっきまたはアルミニウム系めっきを施
し、処理原板として用いた(表1参照)。
【0088】(2) 高分子キレート化剤を主成分とする
塗料組成物 以下の高分子キレート化剤水溶液を主体とし、必要に応
じて、防錆添加剤、固形潤滑剤を塗料養分酸機(サンド
グラインダー)を用いて必要時間分散させ、塗料用組成
物を得た。
【0089】(2−1) 高分子キレート化剤 表2に示す有機高分子マトリックスとキレート形成基か
らなる高分子キレート化剤水溶液を用いた。また、比較
例として、従来から防錆剤として知られているタンニン
酸水溶液、及び、低分子量のキレート化剤であるEDT
A(エチレンジアミンテトラ酢酸)水溶液を用いた。 (2−2) 防錆添加剤 表3に示すシリカ、表4に示すポリりん酸塩、りん酸
塩、モリブデン酸塩、フィチン酸、フィチン酸塩、ホス
ホン酸、ホスホン酸塩を使用した。
【0090】(3) 有機樹脂皮膜 有機樹脂を主体として必要に応じて、防錆添加剤、固形
潤滑剤を塗料用分散機(サンドグライダー)を用いて必
要時間分散させ、塗料組成物を得た。
【0091】(3−1) 有機樹脂 表6に示す有機樹脂を用いた。 (3−2) 防錆添加剤 表6に示すシリカを使用した。 (3−3) 固形潤滑剤 表7に示す固形潤滑剤を使用した。
【0092】[品質性能の評価方法] (1) 皮膜外観 各サンプルについて、皮膜外観の均一性(ムラの有り無
し)を目視で評価した。評価基準は、以下の通りであ
る。 ○:ムラが全く無い均一な外観 △:ムラが若干目立つ外観 ×:ムラが目立つ外観
【0093】(2) 耐白錆性 各サンプルについて、塩水噴霧試験(JIS−Z−23
71)を施し、所定時間後の白錆面積率で評価した。
尚、シリカを含まない皮膜については96時間後の耐白
錆性で評価し、防錆添加剤(シリカ、シリカ以外の防錆
添加剤)を含む皮膜については96時間で優位差が現れ
ないため、より厳しく120時間後で評価した。判定方
法は、以下の通りである。 ◎ :白錆発生なし ○+:白錆面積率5%未満 ○ :白錆面積率5%以上、10%未満 ○−:白錆面積率10%以上、25%未満 △ :白錆面積率25%以上、50%未満 × :白錆面積率50%以上、100%以下
【0094】(3) 塗料密着性 各サンプルについて、メラミン系の焼き付け塗料(膜厚
30μm)を塗布した後、沸水中に2時間浸漬し、直ち
に、碁盤目(10×10、1mm間隔)のカットを入れ
てセロテープによる剥離を行った。判定基準は以下の通
り。 ◎:剥離なし ○:剥離面積率5%未満 △:剥離面積率5%以上、20%未満 ×:剥離面積率20%以上
【0095】(4) 加工性 ブランク径φ120mm、ダイス径φ50mmで深絞り
成形(無塗油条件)を行い、割れが生ずるまでの成形高
さで評価した。評価基準は以下の通り。 ◎:絞り抜け ○:成形高さ30mm以上 △:成形高さ20mm以上、30mm未満 ×:成形高さ20mm未満
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【0102】
【表7】
【0103】
【表8】
【0104】
【表9】
【0105】
【表10】
【0106】
【表11】
【0107】
【表12】
【0108】
【表13】
【0109】
【表14】
【0110】
【表15】
【0111】
【表16】
【0112】
【表17】
【0113】
【表18】
【0114】
【発明の効果】本発明により、クロムを使用することな
く耐食性にすぐれた表面処理鋼板を提供することができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鷺山 勝 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系
    めっき鋼板の表面に、高分子マトリックスにキレート形
    成基を有している高分子キレート化剤皮膜が形成され、
    さらにその上層に有機樹脂皮膜または有機複合シリケー
    ト皮膜が形成されていることを特徴とする、耐食性に優
    れた有機被覆鋼板
  2. 【請求項2】 高分子キレート化剤が数平均分子量30
    0以上の高分子マトリックスにキレート形成基を有して
    いるものであってその皮膜が乾燥後の膜厚で0.01〜
    5μmであり、有機樹脂皮膜または有機複合シリケート
    皮膜の膜厚が0.1〜3μmであることを特徴とする、
    請求項1に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板
  3. 【請求項3】 キレート形成基が、アミノ酸基、カルボ
    キシル基、シチオカルバンミン酸基、ポリアミノ基、チ
    オール基、ザンセート基、チオウレイド基、ジチオ酸
    基、β−ジケトン基、ヒドロキサムオキシン基およびこ
    れらの塩の中から選ばれた少なくとも1種であることを
    特徴とする請求項1または2に記載の耐食性に優れた有
    機被覆鋼板
  4. 【請求項4】 高分子マトリックスが、ポリエチレン、
    ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールポリエ
    チレンイミン、ポリアミノ化合物、ポリ塩化ビニル、ポ
    リアクリル酸、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、スチレ
    ン−ジビニルベンゼン樹脂、アクリル樹脂、デンプンの
    中から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする
    請求項1、2または3に記載の耐食性に優れた有機被覆
    鋼板
  5. 【請求項5】 有機樹脂皮膜および有機複合シリケート
    皮膜が有機樹脂100重量部に対しシリカを1〜100
    重量部含有することを特徴とする請求項1、2、3また
    は4項に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板
  6. 【請求項6】 有機樹脂皮膜および有機複合シリケート
    皮膜が有機樹脂100重量部に対しポリオレフィンワッ
    クス等の炭化水素系化合物、フッ素樹脂系化合物、脂肪
    酸アミド系化合物、二硫化モリブデン、金属石けん、フ
    ッ化黒鉛、窒化ホウ素およびポリアルキレングリコール
    の中から選ばれた少なくとも1種の固形滑剤を1〜80
    重量部含有することを特徴とする請求項1、2、3、4
    または5項に記載の耐食性に優れた有機被覆鋼板
JP20191397A 1997-04-23 1997-07-28 耐食性に優れた有機被覆鋼板 Pending JPH115062A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP20191397A JPH115062A (ja) 1997-04-23 1997-07-28 耐食性に優れた有機被覆鋼板

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9-106299 1997-04-23
JP10629997 1997-04-23
JP20191397A JPH115062A (ja) 1997-04-23 1997-07-28 耐食性に優れた有機被覆鋼板

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH115062A true JPH115062A (ja) 1999-01-12

Family

ID=26446423

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP20191397A Pending JPH115062A (ja) 1997-04-23 1997-07-28 耐食性に優れた有機被覆鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH115062A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005035830A1 (ja) * 2003-10-08 2005-04-21 National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology 光線処理による自己組織化結合型皮膜
JP2006283082A (ja) * 2005-03-31 2006-10-19 Jfe Steel Kk 表面処理亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法ならびに表面処理液
JP2007217481A (ja) * 2006-02-15 2007-08-30 Tokuyama Corp 防錆材
JP2007217482A (ja) * 2006-02-15 2007-08-30 Tokuyama Corp 重合体被覆無機粒子
JP2007216107A (ja) * 2006-02-15 2007-08-30 Jfe Steel Kk 表面処理鋼板
JP2008010591A (ja) * 2006-06-28 2008-01-17 Nichia Chem Ind Ltd 発光装置およびその製造方法、パッケージ、発光素子実装用の基板

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005035830A1 (ja) * 2003-10-08 2005-04-21 National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology 光線処理による自己組織化結合型皮膜
JP2006283082A (ja) * 2005-03-31 2006-10-19 Jfe Steel Kk 表面処理亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法ならびに表面処理液
JP2007217481A (ja) * 2006-02-15 2007-08-30 Tokuyama Corp 防錆材
JP2007217482A (ja) * 2006-02-15 2007-08-30 Tokuyama Corp 重合体被覆無機粒子
JP2007216107A (ja) * 2006-02-15 2007-08-30 Jfe Steel Kk 表面処理鋼板
JP2008010591A (ja) * 2006-06-28 2008-01-17 Nichia Chem Ind Ltd 発光装置およびその製造方法、パッケージ、発光素子実装用の基板

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3911965B2 (ja) 耐食性に優れた有機被覆鋼板
JP2003105555A (ja) 耐白錆性に優れた表面処理鋼板及びその製造方法
JP3903740B2 (ja) 耐食性に優れた有機被覆鋼板
EP1650327A1 (en) Surface-treated steel sheet and method for producing same
JP2007186767A (ja) 高耐食性表面処理鋼板およびその製造方法
JP3480396B2 (ja) 耐食性に優れた有機被覆鋼板およびその製造方法
EP1482074A1 (en) Surface treated steel sheet and method for production thereof
JP2002363766A (ja) 耐食性と導電性に優れた有機被覆鋼板
JP2000000519A (ja) 耐白錆性に優れた表面処理鋼板
JPH115062A (ja) 耐食性に優れた有機被覆鋼板
JP3412540B2 (ja) 耐食性に優れた有機被覆鋼板
JP3412537B2 (ja) 耐食性に優れた有機被覆鋼板
JP4123702B2 (ja) 耐食性に優れた有機被覆鋼板
JP3277870B2 (ja) 耐食性および耐アルカリ性に優れた有機被覆鋼板
JP4517737B2 (ja) 耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板
JP2002363768A (ja) 高温多湿環境下での耐食性に優れた有機被覆鋼板
JPH11166151A (ja) 耐食性に優れた表面処理鋼板
JP3911966B2 (ja) 耐食性に優れた有機被覆鋼板
JP6323424B2 (ja) 耐食性に優れた表面処理溶融亜鉛めっき鋼板
JP4419533B2 (ja) 耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板
JP3412541B2 (ja) 耐食性に優れた有機被覆鋼板
JP3271241B2 (ja) 耐食性に優れた有機被覆鋼板
JP3867202B2 (ja) 耐白錆性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法
JPH11131253A (ja) 耐食性に優れた有機被覆鋼板
JPH11269659A (ja) 耐クロム溶出性及び耐食性に優れた表面処理鋼板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Effective date: 20040531

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060316

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20070726