JPH11503916A - 高力価組換えレトロウイルス調製物による細胞の高効率エクスビボ形質導入 - Google Patents

高力価組換えレトロウイルス調製物による細胞の高効率エクスビボ形質導入

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JPH11503916A JP8531997A JP53199796A JPH11503916A JP H11503916 A JPH11503916 A JP H11503916A JP 8531997 A JP8531997 A JP 8531997A JP 53199796 A JP53199796 A JP 53199796A JP H11503916 A JPH11503916 A JP H11503916A
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Abstract

(57)【要約】 T細胞、分裂中でない細胞、および高力価組換えレトロウイルス調製物に媒介される標準的な形質導入技術に耐性の細胞への、核酸の有効なエクスビボの導入のための組成物および方法を記載する。組換えレトロウイルス粒子が有する組換えベクター構築物は、1つ以上の対応する目的の遺伝子由来の、1つ以上の所望の遺伝子産物(その遺伝子産物のうち少なくとも1つは治療的適用を有する)の産生をコードする。患者への再導入の際に、形質導入された細胞は、特定の疾患状態を処置するに十分な量の所望の遺伝子産物を産生する。

Description

【発明の詳細な説明】 高力価組換えレトロウイルス調製物による細胞の高効率エクスビボ形質導入技術分野 本発明は、一般に、組換えレトロウイルスおよび遺伝子治療に関し、そしてよ り詳細には、種々の遺伝子治療の適用に適切な高力価組換えレトロウイルス粒子 調製物に関する。発明の背景 1940年代のDNAの発見からつい最近まで続いてきた組換えDNA技術により、疾患 の経過が、生存する生物の核酸との相互作用により影響され得る可能性を認識す るために実質的な調査が行われてきた。最も最近では、体細胞組織の遺伝子(例 えば、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイル ス、およびアデノ随伴ウイルスに由来するウイルスベクターを含む(Jolly,Canc er Gene Therapy 1(1): 51-64,1994を参照のこと))の改変またはこれらに影 響を及ぼすこと(時々「体細胞遺伝子治療」といわれるプロセス)、ならびに直 接移入技術(例えば、リポフェクション(Felgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84: 7413-7417,1989)、直接DNA注入(Acsadiら,Nature 352: 815-818,1991)、 マイクロプロジェクタイルボンバードメント(Williamsら,PNAS 88: 2726-2730 , 1991)、数種の型のリポソーム(例えば、Wangら,PNAS 84: 7851-7855,1987 を参照のこと)および核酸単独の投与(WO 90/11092))について、多種多様な 方法が記載されている。 これらの技術の内、組換えレトロウイルス遺伝子送達方法は、最も広く利用さ れている。これは、一部には:(1)複製している細胞への遺伝物質(ベクターゲ ノム)の効率的な侵入;(2)標的細胞核への活性で効率的な侵入プロセス;(3)比 較的高レベルの遺伝子発現;(4)ベクター−標的細胞結合の制御および遺伝子発 現の組織特異的制御を介して特定の細胞サブタイプを標的化する可能性;(5)予 め存在する宿主免疫の一般的な欠如;および(6)このようなベクターを用いて 得られた実質的な知識および臨床経験に起因する。 簡略には、レトロウイルスは、組み込まれたDNA中間体を介して複製する2倍 体のポジティブ鎖RNAウイルスである。詳細には、RNAウイルスによる感染に際し 、レトロウイルスゲノムは、ウイルスにコードされる逆転写酵素(これは、それ ぞれのレトロウイルス中にタンパク質として運ばれる)によりDNAに逆転写され る。次いで、ウイルスDNAは、感染細胞の宿主細胞ゲノム中に偽似乱数的に組み 込まれ、娘細胞に遺伝する「プロウイルス」を形成する。 野生型レトロウイルスゲノム(およびそれらのプロウイルスコピー)は、3つ の遺伝子(gag、pol、およびenv遺伝子)を含む。これらに先行してパッケージ ングシグナル(Ψ)および両方の末端が隣接する2つの長末端反復(LTR)配列 がある。簡略には、gag遺伝子は、内部構造(ヌクレオカプシド)タンパク質を コードする。pol遺伝子は、RNAゲノムを逆転写するRNA依存性DNAポリメラーゼを コードし、そしてenv遺伝子は、レトロウイルスエンベロープ糖タンパク質をコ ードする。5'および3'LTRは、レトロウイルスRNAの転写およびポリアデニル化を 促進するのに必要なシス作用性エレメントを含む。 5'LTRに隣接して、ゲノムの逆転写に必要な配列(tRNAプライマー結合部位) および粒子へのレトロウイルスRNAの効率的なカプシド化に必要な配列(y配列 )がある。パッケージングシグナルの除去は、ゲノムRNAのカプシド化(感染性 ビリオンへのレトロウイルスRNAのパッケージング)を防ぐが、それにもかかわ らず、得られた変異体は、なおウイルスゲノムにコードされる全てのタンパク質 の合成を指向し得る。 組換えレトロウイルスおよびそれらの種々の使用は、例えば、Mannら(Cell 3 3: 153,1983)、CaneおよびMulligan(Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 81: 6349,198 4)、Millerら,Human Gene Therapy 1: 5-14,1990,米国特許第4,405,712号; 同第4,861,719号;同第4,980,289号、およびPCT出願WO 89/02,468、同WO 89/05, 349、および同WO 90/02,806を含む多くの参考文献に記載されてきた。簡略には 、目的の外来遺伝子が、正常なレトロウイルスRNAの一部のかわりにレトロウイ ルス内に取り込まれ得る。レトロウイルスがそのRNAを細胞中に注入する場合、 外来遺伝子もまた細胞中に導入され、次いでまるでそれがレトロウイルス自身で あ るかのように宿主の細胞DNA中に組み込まれ得る。宿主内でのこの外来遺伝子の 発現は、宿主細胞による外来タンパク質の発現をもたらす。 しかし、組換えレトロウイルスの1つの欠点は、これらが、主として複製中の 細胞にしか感染せず、そのため効率的な直接遺伝子移入が難しいか、または大部 分複製中でないと特徴づけられる細胞では不可能なことである。さらに、T細胞 、B細胞、単核球、および樹状細胞を含むいくつかの他の型の細胞は、従来、複 製を刺激した場合でさえ、レトロウイルスベクターによる形質導入に困難であっ た。これは、特に一次細胞について典型的であった。実際、何人かの科学者は、 このような細胞に核酸分子を導入するための、利用されるべき、他のより効率的 な遺伝子移入法(例えば、純粋なプラスミドDNAの直接投与)を示唆してきた(D avisら,Human Gene Therapy 4: 733-740,1993)。 組換えレトロウイルスの効力を増大させるために、示唆されてきた方法は、主 として所望の標的細胞に複製、またはより効率的な複製を誘導し、それによりレ トロウイルスを細胞に感染させることを目指してきた。このような方法には、例 えば、鉱油中で10%四塩化炭素を用いる化学処理(Kalekoら,Human Gene Thera py 2: 27-32,1991)が含まれてきた。しかし、このような技術は動物細胞に治 療的遺伝子産物をコードする核酸分子を導入するために設計されたエクスビボ技 術における使用に好ましくない。T細胞に関して、インビトロの非特異的刺激の 種々の方法(例えば、IL-2、アメリカヤマゴボウ有糸分裂促進物質、および抗CD 3抗体)が複製誘導に極めて効率的であり得る。しかし、臨床的および商業的用 途に両立可能な方法を用いた効率的な形質導入を得ることの困難が残っている。 動物のT細胞および複製中でない細胞への効率的な遺伝子移入は、種々の要因 によって困難であることが判明している。このような細胞へのレトロウイルス形 質導入の現在使用されている方法は、多くの実施制限を有する。このような制限 は、ほとんどのレトロウイルスベクターで一般的に得られる比較的低い力価(代 表的には1mlあたり105〜106の感染性ビリオンの範囲)によって大きくなる。 レトロウイルスまたはレトロウイルスベクターによって感染され得る宿主細胞 の範囲は、部分的にウイルスエンベロープタンパク質によって決定される。従っ て、所定のエンベロープタンパク質のためのレセプターの欠失または欠損は、形 質導入の効率を制限する。さらに、ウイルス結合、浸透、レトロウイルスベクタ ーの脱皮、ウイルス複製、または組み込みに関与する、必要な細胞因子の欠失は 、形質導入効率を制限する。さらに、低力価の利用可能なベクターが、ベクター 産生細胞との同時培養を用いる方法に必要としている。あるいは、有用な形質導 入頻度を達成するために、形質導入されるべき細胞を含む培養培地に、大容量の ベクター調製物を添加する事が必要である。このことは、標的細胞の培養条件の 妨害をもたらす。これらまたは他の問題が、本発明によって扱われる。 本発明の目的は、T細胞、複製中でない細胞、および標準的な形質導入技術に 抵抗性の細胞に、目的の遺伝子をコードするベクター構築物を送達するための、 高力価組換えレトロウイルス粒子の組成物を用いるための効率的なエクスビボの 方法を提供することである。次いで、形質導入された細胞は、標準的な技術(例 えば、所望の治療的利益を達成するための静脈内注入)によって患者に再投与さ れ得る。発明の要旨 本発明は、T細胞、分裂中でない細胞、または標準的な形質導入技術に抵抗性 の細胞を形質導入するための組成物および方法を提供する。この方法は、高力価 組換えレトロウイルス粒子の調製物を含み、実質的に、複製可能なレトロウイル スの汚染のない、T細胞、分裂中でない細胞、または標準的な形質導入技術に抵 抗性の細胞の集団を得る工程を包含し、ここで、この組換えレトロウイルス粒子 は目的の遺伝子をコードするベクター構築物を保有する。 本発明の別の局面は、遺伝子にコードされる治療的有効量の遺伝子産物を発現 する、移植可能なT細胞、分裂中でない細胞、または標準的な形質導入技術に抵 抗性の細胞を含有するインビボの送達ビヒクルを提供する。ここで、この遺伝子 は、T細胞、分裂中でない細胞、または標準的な形質導入技術に抵抗性の細胞内 に存在しないか、またはこの遺伝子は、T細胞、分裂中でない細胞、または標準 的な形質導入技術に抵抗性の細胞に存在するが、生物学的に有意なレベルでこれ らの細胞中で発現されないか、あるいはこの遺伝子は、T細胞、分裂中でない細 胞、または標準的な形質導入技術に抵抗性の細胞に存在し、かつT細胞、分裂中 でない細胞、または標準的な形質導入技術に抵抗性の細胞中で発現するように改 変されているか、あるいはこの遺伝子は、T細胞、分裂中でない細胞、または標 準的な形質導入技術に抵抗性の細胞中で発現されるように改変され得る。 本発明の別の実施態様において、ベクター構築物は、タンパク質、タンパク質 の活性部分、および内因性の生物学的活性を有するRNA分子からなる群より選択 される分子をコードする。このタンパク質またはタンパク質の活性部分は、サイ トカイン、コロニー刺激因子、凝固因子、およびホルモンからなる群より選択さ れる。 なお別の実施態様において、T細胞、分裂中でない細胞、または標準的な形質 導入技術に抵抗性の細胞の集団は、動物から得られる。別の実施態様において、 この動物は、遺伝的疾患、癌、感染性疾患、変性性疾患、炎症性疾患、心血管疾 患、および自己免疫疾患からなる群から選択される疾患として特徴づけられる疾 患に罹患したヒトである。 なお別の実施態様において、治療的有効量の形質導入されたT細胞、分裂中で ない細胞、または標準的な形質導入技術に抵抗性の細胞の集団の組成物を患者に 投与すること、またはこのような集団を再導入することによって、疾患(例えば 、遺伝的疾患、癌、感染性疾患、変性性疾患、炎症性疾患、心血管疾患、または 自己免疫疾患)を処置するための方法を提供する。別の別の実施態様において、 T細胞、分裂中でない細胞、または標準的な形質導入技術に抵抗性の細胞を、患 者へのこれらの細胞の再導入の前にインビトロで拡大する。 本発明の他の局面において、目的の遺伝子をコードする、形質導入されたT細 胞、分裂中でない細胞、または標準的な形質導入技術に抵抗性の細胞、および形 質導入されたT細胞、分裂中でない細胞、または標準的な形質導入技術に抵抗性 の細胞の組成物が提供される。高力価組換えレトロウイルス粒子のエンベロープ タンパク質は、レトロウイルスアンフォトロピックエンベロープタンパク質、レ トロウイルスエコトロピックエンベロープタンパク質、レトロウイルスポリトロ ピックエンベロープタンパク質、レトロウイルスキセノトロピックエンベロープ タンパク質、テナガザル(gibbon ape)白血病ウイルスエンベロープタンパク質 、およびVSV-gタンパク質からなる群より選択されるエンベロープタンパク質で あ る。当業者に公知の他のレトロウイルスエンベロープタンパク質もまた用いられ 得る。用語の定義 以下の用語が本明細書を通じて用いられる。他に示されない限り、これらの用 語は以下のように定義される: 「事象特異的プロモーター」は、転写プロモーター/エンハンサー、または遺 伝子座規定エレメント(locus defining element)、または上記のような遺伝子 発現を制御する他のエレメントをいう。その転写活性は、細胞性刺激に応答して 変化される。このような事象特異的プロモーターの代表的な例として、チミジン キナーゼプロモーターまたはチミジレートシンターゼプロモーター、aまたはb インターフェロンプロモーター、およびホルモンの存在に応答するプロモーター (天然、合成、または他の非宿主生物由来のいずれか)が挙げられる。 「組織特異的プロモーター」は、転写プロモーター/エンハンサー、または遺 伝子座規定エレメント(例えば、遺伝子座制御エレメント)、または上記のよう な遺伝子発現を制御する他のエレメントをいう。これは、制限された数の造血組 織型で選択的に活性である。このような造血組織特異的プロモーターの代表的な 例には、IgGプロモーター、αまたはβグロビンプロモーター、およびT細胞レ セプタープロモーターが挙げられるが、これらに制限されない。 「形質導入」は、複製欠損の、組換えレトロウイルス粒子の細胞レセプターと の会合、その後のこの粒子が保有する核酸の細胞への導入を包含する。「トラン スフェクション」は、レトロウイルス粒子が使用されない物理的な遺伝子移入の 方法をいう。 「ベクター構築物」、「レトロウイルスベクター」、「組換えベクター」、お よび「組換えレトロウイルスベクター」は、目的の遺伝子の発現を指向し得る核 酸構築物をいう。レトロウイルスベクターは、少なくとも1つの転写プロモータ ー/エンハンサーまたは遺伝子座規定エレメント、あるいは他の手段(例えば、 別のスプライシング、核RNAの輸送、メッセンジャーの翻訳後修飾、またはタン パク質の転写後修飾)により遺伝子発現を制御する他のエレメントを含まなけれ ばならない。さらに、レトロウイルスベクターは、転写された場合に、目的の遺 伝子に作動可能に連結され、そして翻訳開始配列として作用する核酸分子を含ま なければならない。このようなベクター構築物はまた、パッケージングシグナル 、長末端反復(LTR)、またはそれらの部分、ならびに用いられるレトロウイル スに適切なポジティブ鎖およびネガティブ鎖プライマー結合部位(レトロウイル スベクター中に既に存在しない場合)を含まなければならない。随意に、ベクタ ー構築物はまた、ポリアデニル化を指向するシグナル、ならびに1つ以上の制限 部位および翻訳終結配列を含み得る。例としては、このようなベクターは、代表 的には、5'LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2鎖DNA合成の起点 、および3'LTRまたはそれらの部分を含む。このようなベクターから所望の遺伝 子産物を発現するために、所望の遺伝子産物をコードする目的の遺伝子もまた含 まれる。 「内因性の生物学的活性を有するRNA分子」は、アンチセンスRNA分子、および リボザイム、ならびにタンパク質に結合するRNA分子を包含する。 本明細書中で用いられる「標準的な形質導入技術に抵抗性の細胞」は、標準的 な力価決定細胞株(例えば、HT1080)において測定した場合に約106cfu/mlの力 価を有する本発明の組換えレトロウイルス粒子の存在下で、約5%より少ない細 胞を形質導入する細胞である。このような細胞には、正常細胞、ならびに疾患細 胞(例えば、特に、腫瘍細胞および感染細胞)が含まれ得る。 高力価組換えレトロウイルス粒子の「調製物」は、このような粒子を含む液体 または凍結乾燥の組成物をいう。好ましくは、この調製物は、その成分に関して 薬学的組成物と等価であるが、当業者に認識されるように、後にヒトへの投与以 外の細胞への投与の場合、このような調製物は薬学的品質である必要はなく、そ して実際、本明細書中に記載の方法で産生された粗製の高力価レトロウイルスベ クター上清のみを含有し得る。 用語「T細胞、分裂中でない細胞、または標準的な形質導入技術に抵抗性の細 胞」としては、T細胞、、B細胞、単核球、樹状細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、 腸幹細胞、骨幹細胞、腎幹細胞、皮膚幹細胞、毛髪幹細胞、分裂中でない幹細胞 、分裂中でない脾臓細胞、分裂中でない腎細胞、生殖細胞、および標準的な形質 導 入技術に抵抗性の他の細胞が挙げられる。上記の細胞型の子孫細胞および前駆体 細胞(T細胞前駆体およびB細胞前駆体を含む)もまた、この用語に包含される 。本明細書中で用いられる用語、「T細胞前駆体」および「B細胞前駆体」は、 それぞれT細胞分化経路またはB細胞分化経路に関わるが、造血幹細胞のような 関連しない細胞を除く、すべての前駆体細胞をいう。 本発明の多くの局面および利点が、以下の詳細な説明(これは、本発明の実施 の解明を提供する)を考慮して、当業者に明らかである。発明の詳細な説明 本発明は、1つ以上の目的の遺伝子を含むベクター構築物を保有する高力価の 組換えレトロウイルス粒子が、T細胞、分裂中でない細胞、または標準的な形質 導入技術に抵抗性の細胞をエクスビボで用いて、効率的に形質導入し得るという 予期せぬ発見に基づく。結果として、本発明の組換えレトロウイルス粒子は、遺 伝子治療の目的で、かつ以前レトロウイルスで形質導入する事が困難または不可 能であると考えられていた細胞を形質導入するために用いられ得る。このような 組換えレトロウイルス粒子、その産生およびパッケージング、およびその用途の より完全な記載を、以下に提供する。組換えレトロウイルスベクターの生成 上記のように、本発明は、エクスビボの体細胞遺伝子治療における使用のため の組換えレトロウイルス粒子を含む組成物および方法を提供する。組換えレトロ ウイルスベクターおよび粒子の構築は、「組換えレトロウイルス」と題する出願 (米国特許出願第07/586,603号、1990年9月21日出願、これは、その全体が本明 細書中に参考として援用される)においてより詳細に記載される。形質導入可能 な組換えレトロウイルス粒子の産生は、米国特許出願第07/800,921号および米国 特許出願第07/800,921号(これらは、その全体が本明細書中に参考として援用さ れる)に記載される。一般に、本明細書中に記載される組換えベクター構築物は 、強力なプロモーター、およびこのプロモーターの下流に目的のDNA配列の挿入 のための適切な制限部位を有するプラスミドを選択することによって調製される 。 本発明によれば、組換えベクター構築物は、組換えレトロウイルスによって送 達される。レトロウイルスは、ポジティブの1本鎖ゲノムを有し、一般に非溶解 性であるRNAウイルスである。感染の際、レトロウイルスは、そのRNAをDNAに逆 転写し、宿主細胞ゲノムに挿入されるプロウイルスを形成する。レトロウイルス ゲノムは、概念上、2つの部分に分けられる。「トランス作用性」部分は、ウイ ルス構造タンパク質をコードする領域からなる。これは、コア外殻タンパク質の 合成のための特定の抗原(gag)遺伝子;逆転写酵素およびインテグラーゼ酵素 の合成のためのpol遺伝子;およびエンベロープ糖タンパク質の合成のためのエ ンベロープ(env)遺伝子;を含む。「シス作用性」部分は、最終的にウイルス 粒子中にパッケージングされるゲノム領域からなる。これらの領域には、パッケ ージングシグナル、プロモーターおよびポリアデニル化部位を有する長末端反復 (LTR)、ならびにDNA複製のための2つの開始部位が含まれる。クローン化され たプロウイルスの内部または「トランス作用性」部分を、目的の遺伝子で置換し て、「ベクター構築物」を作製する。ウイルスパッケージングタンパク質が存在 する細胞(米国特許出願第07/800,921号を参照のこと)内にベクター構築物が配 置される場合、転写されたRNAは、ウイルス粒子としてパッケージされ、次いで 、細胞から出芽する。これらの粒子を用いて組織細胞を形質導入し、細胞ゲノム 中にベクター構築物を組み込ませる。ベクター構築物はその遺伝子産物を発現す るが、これを保有するウイルスは、複製欠損である。なぜなら、ウイルスゲノム のトランス作用性部分がないからである。任意の複製可能な感染性レトロウイル スの存在を検出するために、種々のアッセイが利用され得る。1つの好ましいア ッセイは、以下に記載の拡大S+L-アッセイである。 最も広範な意味において、本発明のレトロウイルスベクターは、転写プロモー ター/エンハンサーまたは遺伝子座規定エレメント、あるいは他の手段(別のス プライシング、核RNAの輸送、メッセンジャーの翻訳後修飾、またはタンパク質 の転写後修飾)により遺伝子発現を制御する他のエレメントを含む。さらに、レ トロウイルスベクターは、目的の遺伝子内で転写される場合に、目的の遺伝子に 作動可能に連結され、そして翻訳開始配列として作用する核酸分子を含まなけれ ばならない。このようなベクター構築物はまた、パッケージングシグナル、長末 端反復(LTR)、またはそれらの部分、ならびに用いられるレトロウイルスに適 切なポジティブ鎖およびネガティブ鎖プライマー結合部位(レトロウイルスベク ター中に既に存在しない場合)を含まなければならない。随意に、ベクター構築 物はまた、ポリアデニル化を指向するシグナル、および1つ以上の制限部位およ び翻訳終結配列を含み得る。例としては、このようなベクターは、代表的には、 5'LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2鎖DNA合成の起点、および 3'LTRまたはそれらの部分を含む。このようなベクターは、1つ以上の完全なgag 、pol、またはenv遺伝子を含まず、それにより、それらは複製が不可能である。 さらに、選択マーカーをコードする核酸分子は必要とされず、そして好ましくも ない。 好ましいレトロウイルスベクターは、gagコード配列を含み、好ましくは、ス プライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を含む部分である。この スプライスアクセプター部位は、目的の遺伝子に近接し、かつその上流に位置す るように配置されている。特に好ましい実施態様において、gag転写プロモータ ーは、そこから開始されるRNA転写物が5'gag UTRおよび目的の遺伝子を含むよう に配置されている。目的の遺伝子の発現を制御するgagプロモーターの代替とし て、他の適切なプロモーター(そのうちのいくつかは以下に記載される)を使用 し得る。さらに、目的の遺伝子の発現レベルを増加させるために、別のエンハン サーを使用し得る。 本発明の好ましい実施態様において、レトロウイルスベクター(特に、モロニ ーマウス白血病ウイルス(MoMLV)を基礎としたレトロウイルスベクター)が使 用される。MoMLVは、マウス細胞以外では感染性の低いマウスレトロウイルスで ある。関連のアンフォトロピックN2レトロウイルスは、ヒト、マウス、および他 の生物由来の細胞に感染する。本発明の実施に用いられ得る他の好ましいレトロ ウイルスとしては、テナガザル白血病ウイルス(GALV)(Todaroら、Virology, 67:335,1975; Wilsonら、J.Vir.,63:2374,1989)、ネコ免疫不全ウイルス( FIV)(Talbattら、Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA,86:5743,1984)、およびネ コ白血病ウイルス(FeLV)(Leprevettら、J.Vir.,50:884,1984; Elderら、J .Vir.,46:871,1983; Stewardら、J.Vir.,58:825,1986; Riedelら、J.Vi r.,60:242,1986)が挙げられるが、他のC型またはD型レトロウイルスあるい はレンチウイルスあるいはスプマウイルス(Weiss,RNA Tumor Viruses、第I巻 および第II巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press,N.Y.)由来の本発明の レトロウイルスベクターもまた作製され得る。 種々のプロモーターが、本発明のベクター構築物において使用され得る。これ らには、サイトメガロウイルス主要即時初期プロモーター(CMV MIE)、初期お よび後期SV40プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、チミジンキ ナーゼまたはチミジレートシンターゼプローモーター、aまたはbインターフェ ロンプロモーター、事象特異的プロモーターまたは組織特異的プロモーターなど が挙げられるが、これらに限定されない。プロモーターは、高レベルの発現を強 力に駆動するか、または比較的弱い発現をもたらすように、所望のように選択さ れ得る。当業者が認識するように、多くのRNAポリメラーIIおよびRNAポリメラー ゼIII依存性プロモーターが、本発明の実施において使用され得る。 1つの実施態様において、目的の遺伝子を含む組換えレトロウイルスベクター は、事象特異的プロモーターの転写制御下にあり、その結果、事象特異的プロモ ーターの活性化の際、この遺伝子が発現される。多くの事象特異的プロモーター が、本発明の文脈内で使用され得る。このようなプロモーターとして、例えば、 細胞増殖によって活性化される(またはそうでなければ細胞周期依存性の)プロ モーター(例えば、チミジンキナーゼまたはチミジレートシンターゼプロモータ ー(Merrill,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:4987,1989; Dengら、Mol.Cel l.Biol.,9:4079,1989));またはトランスフェリンレセプタープロモーター (これは、目的の遺伝子から遺伝子産物を選択的に発現するこれらのプロモータ ーからの転写を活性化し得る因子を含む、急速に増殖する細胞(例えば、造血細 胞)において主に転写的に活性である);細胞がウイルスに感染した場合に活性 化されるaまたはbインターフェロンプロモーター(FanおよびManiatis,EMBOJ .,8:101,1989; Goodbournら、Cell,45:601,1986)のようなプロモーター; およびホルモンの存在によって活性化されるプロモーター(例えば、エストロゲ ン応答性プロモーター)(Tooheyら、Mol.Cell.Biol.,6:4526,1986を参照の こと)が挙げられる。 別の実施態様において、組織特異的プロモーターの転写制御下で目的の遺伝子 を含み、その結果組織特異的プロモーターの活性化の際、この遺伝子を発現する 組換えレトロウイルスベクターが提供される。広範な種々の組織特異的プロモー ターが本発明の文脈内で利用され得る。このようなプロモーターの代表的な例と しては、以下のものが挙げられる:B細胞特異的プロモーター(例えば、IgGプ ロモーター);T細胞特異的プロモーター(例えば、T細胞レセプタープロモー ター(Andersonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:3551,1988; Winotoおよ びBaltimore,EMBO J.,8:29,1989));骨特異的プロモーター(例えば、オス テオカルシンプロモーター(Markoseら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:1701 , 1990; McDonnellら、Mol.Cell.Biol.,9:3517,1989; Kernerら、Proc.Nat l. Acad.Sci.USA,86:4455,1989))、IL-2プロモーター、IL-2レセプタープ ロモーター、およびMHCクラスIIプロモーター、ならびに造血組織特異的プロモ ーター(例えば、赤血球で活性な赤血球特異的転写プロモーター(例えば、ポル ホビリノーゲンデアミナーゼプロモーター(Mignotteら、Proc.Natl.Acad.Sc i. USA,86:6458,1990)))、aまたはbグロビン特異的プロモーター(van A ssendelftら、Cell,56:969,1989,Forresterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA ,86:5439,1989)、内皮細胞特異的プロモーター(例えば、vWfプロモーター) 、骨髄巨核球(magakaryocyte)特異的プロモーター(例えば、b-トロンボグロ ブリン)、ならびに多くの他の組織特異的プロモーター。 本発明のレトロウイルスベクターはまた、非LTRエンハンサーまたはプロモー ターを含み得る(例えば、目的の遺伝子の発現を制御するのに用いられる他のエ レメントに作動可能に結合されたCMVまたはSV40エンハンサー)。さらに、3'LTR エンハンサーが欠失し、それにより、宿主細胞ゲノム中への組み込みの際に5'LT Rが不活性化されたレトロウイルスベクターもまた、本発明に意図される。遺伝 子発現を制御する種々の他のエレメントもまた、本発明の範囲内で利用され得る 。このようなエレメントとしては、例えば、遺伝子座制御領域を含む遺伝子座規 定エレメント(例えば、b-グロビン遺伝子、およびT細胞マーカーであるCD2由 来のもの)が挙げられる。さらに、スプライシング、核輸送、および/または翻 訳のレベルで発現を制御するエレメントもまたこのレトロウイルスベクターに含 ま れ得る。代表的な例としては、b-グロビンイントロン配列、HIV-1由来のrevおよ びrreエレメント、マソン-ファイザーサルウイルス(MPMV)由来の構成的輸送エ レメント(CTE)、revネガティブHIVプロウイルスクローンのrev非依存的複製を 可能にする219ヌクレオチドの配列、およびコザック配列が挙げられる。revタン パク質は、スプライスされていないかまたは別々にスプライスされたHIV RNA分 子の核輸送を可能にするように機能する。MPMVエレメントは、イントロンを含有 するmRNAの核輸送を可能にする。CTEエレメントは、MPMVのヌクレオチド8022〜8 240aにマッピングされる(Brayら、Biochemistry,91:1256,1994)。 別の好ましい実施態様において、レトロウイルスベクターは、スプライスドナ ー(SD)部位およびスプライスアクセプター(SA)部位を含む。ここで、SAは目 的の遺伝子が、組換えレトロウイルスベクター中に挿入される部位の上流に位置 する。好ましい実施態様において、SDおよびSA部位は、短い(すなわち、400ヌ クレオチド未満)のイントロン配列によって分けられる。このような配列は、RN A転写物の安定化に役立ち得る。このような安定化配列は、代表的に、目的の遺 伝子の5'に位置するSD-イントロン-SAの配置を含む。 本発明の組換えレトロウイルスベクターはまた、好ましくは、目的の遺伝子を 含む得られる転写物が、目的の遺伝子の上流にさらに5'gag UTR(非翻訳領域) を含むように作動可能に配置された、gag領域由来の転写プロモーターを含む。 本発明はまた、多効果のベクター構築物を提供する。この構築物は、2つのタ ンパク質が発現される場合、2つのプロモーターを必要とし得る。なぜなら、1 つのプロモーターは、2番目の遺伝子の適切なレベルの遺伝子発現を確実にし得 ないからである。詳細には、ベクター構築物がアンチセンスメッセンジャーまた はリボザイムを発現する場合、2番目のプロモーターは必要ではないかもしれな い。特定の実施態様において、内部リボゾーム結合部位(IRBS)または単純ヘル ペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVTK)プロモーターが、2番目の遺伝子の遺 伝子発現のレベルをブーストするために、2番目の目的の遺伝子とともに配置さ れる。簡略には、IRBSに関して、免疫グロブリン重鎖結合タンパク質の上流非翻 訳領域が、2シストロン性メッセージの内部連動を支持することが示されている (Jacejakら、Nature 353:90,1991)。この配列は小さく(約300塩基対)、そ してシストロンがこの配列で始まる多シストロン性メッセージからの多数の遺伝 子を発現するために、ベクター中に容易に組み込まれ得る。 本発明のレトロウイルスベクター構築物はしばしば、プラスミド(宿主細胞へ の導入の際、増殖、分離、および染色体外維持の可能な核酸分子)上にコードさ れる。当業者が理解するように、広範な既存のまたは新規のプラスミドのいずれ もが本発明の実施において使用され得る。このようなプラスミドは複製起点を含 み、そして代表的には、組換えの使用を容易にするための1つ以上のマルチクロ ーニング部位を含むように改変されている。好ましくは、本発明に従って使用さ れるプラスミドは真核生物および原核生物の両方の宿主細胞において増殖可能で ある。パッケージング細胞の生成 本発明の別の局面は、本明細書中に記載されたレトロウイルスベクターを組み 込む、組換えキセノトロピックレトロウイルス粒子を産生する方法に関連する。 1つの実施様態において、ベクターはパッケージング細胞を用いることによって 、感染性ビリオンの中へパッケージングされる。簡単に述べれば、パッケージン グ細胞は、レトロウイルスゲノム(それが組換え(すなわち、レトロウイルスベ クター)であってもなくても)を、パッケージングするのに必要な、レトロウイ ルス構造ポリペプチドをコードするさらなる核酸を、その本来の遺伝子補体に加 えて、含有する細胞である。レトロウイルス粒子は、パッケージング細胞中で、 レトロウイルスゲノムとカプシドおよびエンベロープとを合わせることによって 作製され、その結果、形質導入に適した、好ましくは、複製欠損ビリオンを作製 する。簡単に述べれば、これらおよび他のパッケージング細胞は、1つ、好まし くは、2つ以上の核酸分子を含む。これらの核酸分子は、レトロウイルスベクタ ーを感染性ビリオンの中へパッケージングするのに必要な種々のポリペプチド、 例えば、gag、pol、およびenvをコードする。レトロウイルスベクターをコード する核酸分子を導入する際、パッケージング細胞は感染性レトロウイルス粒子を 産生する。本発明の、レトロウイルスベクターでトランスフェクトされたパッケ ージング細胞株(これは感染性ビリオンを産生する)は、「プロデューサー」細 胞 株と呼ばれる。 非常に種々の動物細胞が、本発明のパッケージング細胞を調製するために利用 され得る。それらには、制限なく以下のものが含まれる。上皮細胞、線維芽細胞 、肝細胞、内皮細胞、筋芽細胞、星状膠細胞、リンパ球など。レトロウイルスベ クター構築物、gag/pol発現カセットおよびenv発現カセットに相同であるゲノム 配列を欠損する細胞株が、優先的に選択され、利用される。相同性を決定する方 法は、例えば、ハイブリダイゼーション分析(Martinら、Proc.Natl.Acad.Sc i.、USA、vol.78:4892-96、1981;および米国特許出願第07/800,921号、前出) によって容易に達成され得る。 MoMLVベクター系(psi2、PA12、PA317)に用いられる最も一般的なパッケージ ング細胞株(PCL)は、マウスの細胞株に由来する。しかし、マウスの細胞株は 、ヒトへの治療用途を意図したレトロウイルスベクターを産生するには特に好ま しい選択ではない。なぜなら、そのような細胞株は以下の事が知られているから である:内在性のレトロウイルス(そのうちのいくつかは、配列およびレトロウ イルス型において、MLVベクター系(これは、本発明の実施に用いるのに好まし い)に密接に関係している)を含むこと;効率良くパッケージングすることが知 られている、非レトロウイルスまたは欠損レトロウイルス配列を含むこと;およ びマウス細胞膜成分の存在に起因する有害な影響を生ずること。 本発明において有用なパッケージング細胞株の開発において考慮すべき重要な ことは、複製欠損ビリオンをその細胞株から産生すること、または複製可能レト ロウイルス(RCR)産生を回避することである(Munchauら、Virology,vol.176: 262-65、1991)。これは、本発明の組換えレトロウイルスベクターを有する感染 性レトロウイルス粒子が、インビトロ、インビボにかかわらず、標的細胞中で独 立複製が不能であることを確実にする。独立複製が、もし起これば、野生型のウ イルスの産生をもたらし得る。それは続いて、患者の細胞の染色体へ多重組み込 み(multiple integration)をもたらし得、それによって挿入変異誘発およびそ れに関連する問題の生ずる可能性を増大する。RCR産生は少なくとも2通りの方 法で起こり得る。(1)治療用プロウイルスDNAとパッケージング細胞株に存在 するレトロウイルス構造遺伝子(「gag/pol」および「env」)をコードするDNA との間の相同組換え;および(2)プロウイルスDNAと、マウスパッケージング 細胞株において見出される非常に多数の内因性欠損プロウイルスとの相同組換え による、複製可能なウイルスの産生。 本発明の実施において好ましいように、マウスベースの組換えレトロウイルス の使用に付随する生来の安全性問題を避けるために、パッケージング細胞株は、 種々の非マウス株に由来してもよい。これらには、種々の哺乳動物(例えば、ヒ ト、イヌ、サル、ミンク、ハムスター、およびラット)由来の細胞株が含まれる 。当業者が認識するとおり、多数のパッケージング細胞株は、当該分野で公知の 技術(例えば、米国特許出願第08/156,789号および米国特許出願第08/136,739号 参照のこと)を用いて産生され得る。好ましい実施様態において、細胞株は、イ ヌまたはヒト細胞株に由来する。それらは、MoMLVのゲノム配列と相同なゲノム 配列を欠損することが、ハイブリダイゼーション分析(Martinら、前出)によっ て知られている。特に好ましい親イヌ細胞株は、D17(A.T.C.C.受託番号CRL 8543 )である。HT-1080(A.T.C.C.受託番号CCL 121; Grahamら、Vir.、vol.52:456、1 973)および293細胞(Felgnerら、Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 84:7413、1987 )は特に好ましい親ヒト細胞株を示す。MoMLVベースの組換えレトロウイルスベ クターとともに使用するための、これらの細胞株由来のパッケージング細胞株の 構築は、米国特許出願番号第08/156,789号、前出に詳しく記載されている。 従って、遺伝子治療におけるレトロウイルス使用のための望ましい必要条件は 、複製可能、すなわち「野生型」ウイルスを産生することが不能なレトロウイル スパッケージング細胞株の利用可能性である。パッケージング細胞株は1つ以上 の核酸分子(これらは、レトロウイルスベクターを感染性レトロウイルス粒子中 に組込むのに必要な構造タンパク質をコードする)を含むので、これらの種々の 構築物間の組換え事象は、複製可能なウイルス、すなわち、すべての構造遺伝子 および制御エレメント(独立複製に必要なパッケージングシグナルを含む)をコ ードするゲノムを含む感染性レトロウイルス粒子を産生し得る。過去数年間、数 多くの異なる構築物が、この危惧をなくすために開発されてきた。そのような構 築物として以下のものが挙げられる:3'LTRおよび5'LTRの部分での欠失(Miller およびButtimore、Mol.Cell.Biol.、vol.6:2895-2902、1986)(ここでは、 2 つの組換え事象がRCRを形成するために必要である);ヘルパーウイルス(2つ の別々のプラスミド間で分配され、一方はgagおよびpolを含み、他方はenvを含 む)の相補性部分の使用(Markowitzら、J.Virol.、vol.62:1120-124;および Markowitzら、Virology,vol 167:600-606、1988)(ここでは、3つの組換え事 象がRCRを産生するために必要である)。 gag/pol機能およびenv機能を別々に発現する能力は、これらの機能を独立に操 作することを可能にする。多くの量のgag/polを発現する細胞株は、例えば、env に関する力価の問題を提起するために使用され得る。低力価が測定される要因の 1つは、標的細胞または組織上の適切なレセプター分子の密度である。第2要因 は、レトロウイルスキセノトロピックエンベロープタンパク質のためのレセプタ ーの親和力である。ある報告は、キセノトロピックベクターが、複製可能なキセ ノトロピックウイルスの存在下で、ヒト造血始原細胞をより効果的に感染し得る ことを示唆している(Eglitisら、Biochem .Biophys.Res.Comm. 151:201-206 、1988)。キセノトロピックベクターを含有する粒子はまた、複製可能なキセノ トロピックウイルスの存在下で、アンフォトロピックウイルスにより容易に感染 されない他の種由来の細胞(例えば、ウシ細胞、ブタ細胞、およびウマ細胞)を 感染する(Delouisら、Biochem .Biophys.Res.Comm. 169:80-14、1990)。本 発明の好ましい実施様態において、キセノトロピックenv遺伝子を発現するパッ ケージング細胞株が提供される。詳細には、そのようなパッケージング細胞株か ら産生された組換えレトロウイルス粒子は、実質的に、複製可能なレトロウイル ス(「RCR」)との結合からは自由である。 より最近では、複製不能レトロウイルスの産生を阻害するための、さらに改善 された方法および組成物が開発されている。1994年9月7日に出願された共同所 有の米国特許出願第09/028,126号を参照のこと。簡単に述べれば、組換えレトロ ウイルスベクターと、レトロウイルス構造タンパク質をコードする、1つ以上の 核酸構築物との間の組換え事象により産生された、複製可能なレトロウイルスの 拡散は、以下のようなベクター:生物学的に不活性な阻害性分子をコードするが 、そのような組換え事象において生物学的に活性な阻害性分子をコードする核酸 分子を産生するベクター、を提供することによって回避され得る。阻害性分子の 発 現は、その事象が生じるプロデューサー細胞を傷害することによって、またはそ の中のレトロウイルスベクターの産生を抑制することによってのいずれかで、RC Rの産生を妨げる。種々の阻害分子が使用され得、リボザイム(これは、複製可 能なウイルスのRNAの転写産物を切断する)、またはリシンAのような毒素、破 傷風毒素、またはジフテリア毒素、ヘルペスチミジンキナーゼなどが挙げられる 。当業者に認識されるように、本明細書中の教示は、すぐに本発明に適合され得 る。 安全性の問題に加えて、パッケージング細胞株のための宿主細胞株の選択は重 要である。なぜなら、レトロウイルス粒子の多くの生物学的特性(例えば、力価 )および物理的特性(例えば、安定性)は、宿主細胞の特性によって決定される (dictate)からである。例えば、宿主細胞は、ベクターRNAゲノムを効率良く発 現(転写)しなければばらず、第一鎖の合成のために細胞tRNAでベクターを感作 しなければならず、MLV構造タンパク質を耐性化および共有結合的に修飾(タン パク質分解、糖鎖形成、ミリスチル酸付加(myristylation)、およびリン酸化 )しなければならず、そして細胞膜からのビリオン出芽を可能にしなければなら ない。例えば、マウスパッケージング株PA317から作製されたベクターは、0.3ミ クロンフィルターに保持されるのに対し、CA株から作製されたベクターは透過す ることが見出されている。さらに、霊長類(ヒトを含む)由来の血清は、非常に 種々の下等哺乳動物または鳥類由来の血清とは異なり、抗体独立補体溶解法によ ってレトロウイルスを不活性化することが知られている。このような活性は、種 々の遠縁のレトロウイルスに対して非選択的である。鳥類、マウス(MoMLVを含む )、ネコ、およびサル起源のレトロウイルスは、正常ヒト血清によって不活性化 され、そして溶解される。Welshら、(1975)Nature,vol.257:612-614; Welshら 、(1976)Virology、vol.74:432-440; Banapourら、(1986)Virology、vol.152: 268-271;およびCooperら、(1986)Immunology of the Complement System,Pub. American Press、Inc.、139-162頁を参照のこと。さらに、霊長類にインビボで 静脈注射された複製可能なマウスアンフォトロピックレトロウイルスは、全過程 または一部を霊長類補体によって媒介された工程によって、15分以内に排除(cl ear)される(Cornettaら、(1990)、Human Gene Therapy、vol.1:15-30; Corne ttaら、(1991)、Human Gene Therapy、vol.2:5-14)。しかし、最近、ヒ ト血清による補体不活性化に対するレトロウイルスの抵抗性は、少なくともいく つかの場合には、レトロウイルス粒子が産生されるパッケージング細胞株によっ て媒介されることが発見された。種々のヒトパッケージング細胞株から産生され たレトロウイルスは、ヒト血清の構成成分(おそらく補体)による不活性化に対 し耐性であったが、ヒヒおよびマカク(macques)由来の血清に対しては感受性 であった。1994年12月30日に出願された、共同所有の米国特許出願第08/367,071 号を参照のこと。従って、本発明の好ましい実施様態において、全長の第VIII因 子をコードする組換えレトロウイルス粒子は、ヒトパッケージング細胞株中で産 生され、HT1080細胞および293細胞由来のパッケージング細胞株が、特に好まし い。 上記のような感染性の、複製欠損組換えレトロウイルスの産生に加えて、少な くとも2つの他の別のシステムが、ベクター構築物を有する組換えレトロウイル スを産生するために使用され得る。そのようなシステムの1方(Webbら、BBRC、 190:536、1993)は、昆虫ウイルス、バキュロウイルスを用いるが、他方は、哺 乳動物ウイルスであるワシニアおよびアデノウイルスの利点を利用する(Pavira niら、BBRC、145:234、1987)。これらの系の各々は、遺伝子がクローン化され た任意の所与のタンパク質を、多量に作製し得る。例えば、Smithら(Mol.Cell. Biol.、3:12、1983); Picciniら(Meth.Emzymology、153:545、1987);およびMa nsourら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:1359,1985)参照のこと。これらのウ イルスベクターは、適切な遺伝子を挿入することによって、組織培養細胞中でタ ンパク質を産生するために用いられ得、従って、組織培養由来のレトロウイルス ベクター粒子を作製するために適応され得る。アデノウイルス系においては、遺 伝子はベクター中に挿入され得、そして哺乳動物細胞中で、インビトロ構築(Ba llayら、4:3861、1985)または細胞中での組換え(Thummelら、J.Mol.Appl.Ge netics、1:435、1982)のいずれかによって、タンパク質を発現するために使用 し得る。 別のアプローチは、無細胞パッケージング系を包含する。例えば、レトロウイ ルス構造タンパク質は、バキュロウイルス系(または他のタンパク質産生系、例 えば、イーストまたはE.coli)中で、Smithら(前出)に記載と同様な様式で作製 され得る。組換えレトロウイルスゲノムは、インビトロRNA合成によって作製さ れる(例えば、FlamantおよびSorge、J.Virol.、62:1827、1988を参照のこと) 。次いで、構造タンパク質およびRNAゲノムがtRNAと混合され、次いでリポソー ムが、包埋envタンパク質および細胞抽出物(代表的に、マウス細胞由来)、ま たは精製成分(これは、envおよび他の必要なプロセシング、ならびに任意のま たは他の必要な細胞由来の機能を提供する)とともに添加される。次いで、その 混合物は(例えば、超音波処理、温度操作、または回転式透析によって)処理さ れ、発生期のレトロウイルス粒子のカプシド化が可能になる。この手順により、 高力価の、複製不能組換えレトロウイルスの産生が、病原性レトロウイルスまた は複製可能なレトロウイルスの混入を伴うことなく可能になる。 パッケージング細胞株の選択において考慮すべき別の重要な要素は、レトロウ イルスベクターが産生される核酸分子の導入後の、そこから産生されたウイルス の力価である。多くの要素がウイルス力価を制限し得る。最も有意な制限要素の 1つは、パッケージングタンパク質gag、pol、およびenvの発現レベルである。 レトロウイルス粒子の場合、プロウイルスからのレトロウイルスベクターRNAの 発現もまた、力価を有意に制限し得る。パッケージング細胞および得られる、高 レベルの必要な産物を発現するプロデューサー細胞を選択するために、適切な力 価アッセイが必要である。以下により詳しく記載するように、適切なPCRベース の力価アッセイが利用され得る。 パッケージング細胞株およびパッケージングのためのタンパク質(これはウイ ルスベクターの骨格、例えばレトロウイルスベクターのパッケージングのための レトロウイルスgag,pol、およびenvタンパク質と相同である)を供給するプロ デューサー細胞株を調製するのに加えて、キメラウイルス粒子、例えば、DNAウ イルスカプシド中にパッケージングされたMoMLVベースのレトロウイルスベクタ ーを生じるパッケージング系およびプロデューサー系もまた利用され得る。他の 多くのウイルスベースのパッケージング系およびプロデューサー系はまた、ウイ ルスベクター系とは無関係に、当業者が認識するように、利用され得る。組換えレトロウイルス粒子の宿主域の変更 本発明の別の局面は、アンフォトロピックエンベロープタンパク質を含むレト ロウイルス粒子と比較して、変化された宿主域を有する、組換えキセノトロピッ クレトロウイルス粒子に関する。レトロウイルスの宿主細胞域の特異性は、脂質 エンベロープに存在するenv遺伝子産物によってある程度決定される。興味深い ことに、1つのレトロウイルスからのエンベロープタンパク質は、しばしば、程 度は変わるが、別のレトロウイルスのエンベロープタンパク質を代用し得、それ によって、得られるベクターの宿主域を変化させる。従って、パッケージング細 胞株(PCL)は、アンフォトロピック、エコトロピック、キセノトロピック、ポリ トロピック、または他のエンベロープ親和性のいずれかを発現するために産生さ れてきた。さらに、「ハイブリッド」または「キメラ」キセノトロピックエンベ ロープタンパク質を含む本発明のレトロウイルスは、同様に産生され得る。これ らの任意のパッケージング細胞株から産生されたレトロウイルス粒子は、対応の 異なるレセプターを含む任意の細胞を感染するために使用され得る(Reinおよび Schultz,Virology、136:144、1984)。 レトロウイルスのアセンブリは、レトロウイルスゲノムおよび補助タンパク質 の、出芽レトロウイルス粒子への選択的封入によって特徴付けされる。興味深い ことに、非マウスレトロウイルス供給源由来のエンベロープタンパク質は、その 宿主域を変更するために、ベクターを偽型化(pseudotyping)する(すなわち、 1つの種由来のウイルスRNAを、別の種のウイルスタンパク質によってカプシド 化する)ために用いられ得る。細胞膜の1部は、レトロウイルスエンベロープを 形成するために分離するために、通常膜中にある分子が、ウイルスエンベロープ とともに運ばれ得る。従って、ベクターが産生されるパッケージング細胞株を操 作することによって、または種々のタイプの細胞株を特定の表面マーカーを用い て選択することによって、多くの異なる潜在性リガンドをレトロウイルス粒子の 表面に結合させ得る。 簡単に述べれば、この局面において、本発明は、以下のものを含む、包膜され た(envelope)レトロウイルス粒子を提供する:ヌクレオカプシド(レトロウイ ルスである最初のウイルス由来の起源を有するヌクレオカプシドタンパク質を含 む);ヌクレオカプシドと結合した目的の遺伝子をコードするパッケージング可 能な核酸分子;および、宿主域を決める膜結合キセノトロピックタンパク質。 本発明の別の好ましい形態において、ベクター粒子の膜結合エンベロープタン パク質は、以下のものを含むキメラまたはハイブリッドタンパク質である:キセ ノトロピックエンベロープタンパク質由来の外部レセプター結合ドメインおよび 膜結合ドメイン。この外部レセプター結合ドメインの少なくとも一部が、膜結合 ドメインの少なくとも一部とは異なる起源に由来する。そのキメラタンパク質は 、好ましくは、2つの起源に由来し、ここで、2つの起源のうちの1つ以下がレ トロウイルスである。 本発明のこの局面の別の実施態様は、上記のベクター粒子を産生する細胞株に 関する。好ましくは、このような細胞株は、膜結合タンパク質をコードする核酸 分子で安定的にトランスフェクトされる。この膜結合タンパク質の発現は、誘導 性プロモーターによって駆動される。 本発明のレトロウイルス粒子は、レトロウイルス粒子内に、細胞型に特異的な 細胞表面レセプターに結合する成分(非常に頻繁にポリペプチドまたは炭水化物 )を含むことによって特定の細胞型に標的化され得る。このような標的化は、細 胞特異的結合ドメインとともにウイルス粒子アセンブリに必要なenvタンパク質 部分を含むキメラのenvタンパク質を発現するパッケージング細胞株を調製する ことによって達成され得る。別の実施態様において、1つより多くのウイルス型 由来のenvタンパク質が用いられ得、その結果、得られるウイルス粒子は1つよ り多くのenvタンパク質種(species)を含む。さらに別の実施態様は、レトロウ イルスカプシドまたはエンベロープへの細胞特異的なリガンドの封入を含み、標 的特異性を提供する。本発明のこの局面の好ましい実施態様において、用いられ るenv遺伝子は、標的化されるべき細胞型(例えば、T細胞)に制限された組織 分布を有する細胞表面レセプターと相互作用することが知られているポリペプチ ドリガンドのレセプター結合ドメインとともに、レトロウイルスアセンブリに必 要なenvタンパク質のすべてまたは一部をコードする。この点に関して、標的細 胞表面上で高レベルで発現されるレセプターに結合するレセプター結合ドメイン を利用することが好ましいかもしれない。 患者のゲノムへの特異的な組み込み部位を制御するために(例えば、レトロウ イルス感染の場合に生じるように、使用されるベクター構築物が、レシピエント 細胞の染色体中にウイルスゲノムの組み込みをもたらす場合)、相同組換えまた は特定部位への挿入を指示する改変されたインテグラーゼ酵素の使用が利用され 得る。部位特異的組み込みを指示するインテグラーゼタンパク質の使用に関する アプローチは、「標的細胞にベクター構築物を送達する組換えレトロウイルス」 と題するWO 91/02805、および共同所有の米国特許出願第445,466号(1995年、5 月22日出願)に記載される(これらの両方が、参考として本明細書中に援用され る)。目的の遺伝子を保有するベクターのこのような部位特異的挿入は、遺伝子 置換治療を提供し得、挿入変異誘発の機会を減少し得、患者のDNA中に存在する 他の配列からの妨害を最小化し得、そして、特異的標的部位での挿入を可能にし て、患者のDNA内の所望でない遺伝子(例えば、ウイルス性遺伝子または腫瘍形 成性遺伝子)の発現を減少または排除し得る。 非ウイルス性膜結合タンパク質はまた、組換えレトロウイルス粒子(キセノト ロピックレトロウイルス粒子を含む)のT細胞への標的化を促進するために使用 され得る。代表的な例としては、T細胞表面レセプターに対するリガンドとして 作用するポリペプチドが挙げられる。問題のタンパク質に対するレセプターの組 織分布に依存して、組換えキセノトロピックレトロウイルス粒子は、異なるT細 胞サブセットに標的化され得る。 エンベロープ内に含有されるべきリガンドが天然に存在する膜結合タンパク質 でない場合、好ましくは、「ハイブリッド」または「キメラ」エンベロープタン パク質を作製することによって、そのリガンドを膜に会合させる必要がある。こ のようなハイブリッドエンベロープタンパク質が他のウイルスタンパク質または レトロウイルスenvタンパク質以外のタンパク質由来の細胞外ドメインを含み得 ることを理解することが重要である。これを達成するために、リガンドをコード する遺伝子は、envタンパク質の膜結合ドメインをコードする配列に機能的に結 合され得る。「天然に存在する膜結合タンパク質」は、その本来の状態において インビボで脂質膜と結合して存在し、その結果、細胞膜またはウイルスエンベロ ープと結合していることが判明しているタンパク質を意味する。envタンパク質 の細胞外成分は特異的レセプター結合を担うので、このように、ハイブリッドエ ンベロープを用いて、本発明のレトロウイルスベクターの向性を調整し得る(そ して力価を効果的に増加させ得る)。一方、これらのタンパク質の細胞質ドメイ ンは、ビリオン形成において役割を果たす。本発明は、多数のハイブリッドenv 遺伝子産物(すなわち、詳細には、細胞質領域および細胞外結合領域(これらは 天然には一緒に存在しない)を有するレトロウイルスenvタンパク質)が、作製 され得、そして宿主範囲の特異性を変化させ得る。 好ましい実施態様において、これは、所定のカプシドタンパク質と安定に会合 するエンベロープタンパク質の膜結合ドメインのすぐ近くの、リガンド(または レセプター結合活性を付与するその部分)をコードする遺伝子を組み換えること によって達成される。得られる構築物は、細胞標的化およびレトロウイルス脂質 エンベロープ内への封入を促進し得る、2機能性のキメラタンパク質をコードす る。 本明細書中に記載の天然でない膜結合リガンドを有するベクター粒子は、好都 合なことに、膜結合タンパク質のリガンド-レセプター相互作用によって決定さ れる宿主範囲を有する。従って、T細胞に対する標的化送達のために、変化した 宿主範囲を有するベクター粒子が、本発明の方法を用いて産生され得る。このリ ガンドは、T細胞を含む宿主範囲を提供するために選択される。多数の異なる標 的化ストラテジーが、本発明のこの局面とともに使用され得る。 選択された細胞型を標的化するために、抗体もまた利用され得る(例えば、CD 4+ T細胞を標的化するための抗CD4抗体、ならびにCD8+細胞を標的化するための 抗CD8抗体(一般的に、Wilchekら、Anal.Biochem.,171:1,1988を参照のこと ))。 Tリンパ球またはT細胞は、非抗体産生リンパ球であり、これは、免疫系の細 胞媒介性部門の一部を構成する。T細胞は骨髄から胸腺に移動する未成熟なリン パ球から生じる。胸腺で、T細胞は胸腺ホルモンの指示下で成熟プロセスを受け る。ここで、未成熟なリンパ球は急速に分裂して、莫大な数に増加する。成熟し ているT細胞は、特定の抗原を認識し、そして結合する能力を有することによっ て免疫適格性になる。免疫適格性T細胞の活性化は、リンパ球の表面レセプター への抗原結合によって誘発される。 T細胞は当業者に既知の種々の手順により単離され得る。例えば、T細胞粗懸 濁液を、ナイロンウールカラムにホモジネートを通すことにより、脾臓およびリ ンパ節から調製し得る(Current Protocols in Immunology,Coliganら(1992)Gre en Publishing Associates and Wiley-Interscience,New York)。この手順は、 アクセサリー細胞およびB細胞の除去によりT細胞集団を富化する簡便な手段を 提供する。マウス脾臓およびリンパ節由来のT細胞は、MHCクラスII遺伝子によ りコードされる細胞表面糖タンパク質を発現しないが、ほとんどの非T細胞を発 現する。それゆえ、T細胞富化は、抗MHCクラスIIモノクローナル抗体を用いる 非T細胞の排除により達成され得る。同様に、他の抗体をまた非T細胞の特定の 集団を涸渇させるために用い得る。例えば、B細胞に対するa-Igおよびマクロフ ァージに対するa-MacI。 T細胞は当業者に既知の技術により多くの異なる亜集団にさらに分画され得る 。2つの主要な亜集団は細胞表面マーカーCD4およびCD8のそれらの異なる発現に 基づいて単離され得る。例えば、上記のようなT細胞の富化に続いて、CD4+細胞 はCD8に特異的な抗体を使用することにより富化され得る(Current Protocols i n Immunology、上述)。あるいは、CD4+細胞は、磁気ビーズのような固体支持体 に結合するCD4に対して特異的な抗体を使用することにより富化され得る。逆に 、CD8+細胞は、CD4に対して特異的な抗体を使用することにより富化され得るか 、または固体支持体に結合するCD8抗体を使用することにより単離され得る。Wil sonら(J.Infect Dis 172:88,1995)により記載されるように、HIV-l感染患者由来 のCD4リンパ球は、形質導入の前または後にエクスビボで拡大され得る。 T細胞の精製後、当業者に既知の種々の形質導入法を行い得る。例えば、この ようなアプローチの1つは、ベクター産生細胞由来の培養物上清を含有するベク ターでの精製T細胞集団の形質導入を包含する。第2のアプローチは、精製T細 胞と照射された単層のベクター産生細胞との同時培養を包含する。第3のアプロ ーチは、同様の同時培養アプローチを包含するが、精製T細胞を、照射されたベ クター産生細胞との同時培養の48時間前に、種々のサイトカインで予備刺激し、 そして培養する。形質導入の前の予備刺激は効率のよい遺伝子移入を増加させる (Noltaら、Exp.Hematol.20:1065;1992)。理論により締られることを望まないが 、 形質導入の増加したレベルは、効率の良いレトロウイルス形質導入のために必要 なT細胞の増殖の増加に帰する。これらの培養物を増殖するための刺激はまた、 患者への再注入のための細胞集団の増加を提供する。 同時培養に続いて、T細胞をベクター産生細胞の単層から回収し、拡大し、そ して液体窒素中で凍結する。形質導入された細胞におけるベクターの発現は、当 業者に既知の多くのアッセイにより評価され得る。例えば、ウェスタンブロット 分析またはノザン分析は、目的の挿入された遺伝子の性質に依存して使用され得 る。一旦発現が確立し、そして形質転換されたT細胞を二次的な因子の存在につ いて試験したら、これらを末梢血管流を介して患者に注入して戻す。 当業者はまた、外来的にリガンド分子をレトロウイルス粒子にも添加し得るこ とを認識する。このレトロウイルス粒子は、脂質エンベロープに組み込まれるか 、または脂質あるいはタンパク質構成成分自身に化学的に結合し得るかのいずれ かである。さらに、広範に多様な高親和性結合対を標的化エレメントとして使用 し得る。代表的な例としては、10-15Mの親和性(KD)を有するビオチン/アビジン (Richards,Meth.Enz.,184:3,1990;Green,Adv.Protein Chem.,29:85,1985)およ び10-14Mの親和性を有するシスタチン/パパイン(Bjorkら、Biochemistry,29:17 70,1990)が挙げられる。広範に多様な他の高親和性結合対はまた、例えば、選択 されたT細胞抗原を高親和性で認識する抗体の調製および選択により、開発され 得る(一般に、米国特許第RE32,011号、第4,902,614号、第4,543,439号、および 第4,411,993号を参照のこと;またMonoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Di mension in Biological Analyses,Plenum Press,Kennett,McKearn,およびBechto l編、1980、およびAntibodies:A Laboratory Manual,HarlowおよびLane編、Col d Spring Harbor Laboratory Press,1988を参照のこと)。このような抗体に対 する結合対(代表的には他の抗体または抗体フラグメント)は、組換え技術によ り産生され得る(Huseら、Science,246:1275,1989を参照のこと;また、Sastry ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:5728,1989;およびMichelle Alting-Meesら、St rategies,Molecular Biology,3:1,1990を参照のこと)。 本明細書中に提供された開示が与えられれば、当業者に明らかなように、両方 のメンバー(または分子)の親和性結合対がレトロウイルス粒子に結合され得る 。 それにもかかわらず、本発明の好ましい実施態様において、2つの親和性結合対 のうちの大きい方(例えば、アビジン/ビオチン対のアビジン)が、レトロウイ ルス粒子に結合する。標的化の情況内で利用される場合、用語「結合した」は、 一般には共有結合が好ましいが、非共有結合または共有結合相互作用のいずれを 言及しても良い。多数のカップリング方法が利用され得、例えば、N-スクインイ ミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(「SPDP」Carlsonら、J.Biochem., 173:723,1978)のような架橋剤、および当該分野で既知の他のこのような化合物 の使用が挙げられる。 本発明の特に好ましい実施態様において、高親和性結合対の1つのメンバーは 、レトロウイルス粒子上で発現されるか、または必要不可欠な部分として、例え ば、レトロウイルス脂質エンベロープ中に含まれる。例えば、高親和性結合対の 1つのメンバーは、ハイブリッドタンパク質としてエンベロープタンパク質と同 時発現され得るか、または正確な方向で、細胞膜に対して高親和性結合対のメン バーを標的化する適切なベクターから発現され得る。組換えレトロウイルス粒子の使用 1つの局面において、本発明は、エクスビボで少なくとも1つの抗腫瘍剤の発 現を指向するベクター構築物でT細胞を形質導入する工程を含む、ヒトにおける 選択された腫瘍(「ガン」)の増殖を阻害するための方法を提供する。本発明の関 係において、「選択された腫瘍の増殖を阻害する」は、(1)腫瘍細胞分裂の直接 的な阻害、または(2)免疫細胞媒介性腫瘍細胞溶解のいずれか、または両方をい い、これは腫瘍細胞の正味の広がりの抑制を導く。これらの2つの機構のいずれ かによる腫瘍増殖の阻害は、多くの周知の方法に基づき、例えば、経時的に腫瘍 サイズを測定することにより(例えば、放射線医学的画像化法(例えば、シングル フォトンおよびポジトロンエミッションCT;一般に、「Nuclear Medicine in Cl inical Oncology」Winkler,C.(編)Springer-Verlag,New York,1986を参照 のこと)によるか、あるいは、例えば、従来の画像化剤(例えば、クエン酸ガリウ ム67)または代謝産物画像化、レセプター画像化、または免疫学的画像化のため の特殊化された試薬を含む種々の画像化剤による)により当業者に容易に決定さ れ得る。さらに、超音波などの非放射活性法(「Ultrasonic Differential Diagn osis of Tumors」、KossoffおよびFukuda、(編)、Igaku-Shoin、New York,1984 を参照のこと)もまた、腫瘍サイズの評価のために利用され得る。あるいは、他 のガンの形態については、腫瘍増殖の阻害は、腫瘍マーカー(例えば、前立腺ガ ンの検出のための前立腺特異抗原(「PSA」)(米国特許再発行第33,405号を参照の こと)、ならびに結腸直腸ガンおよび特定の乳ガンの検出のためのガン胎児抗原( 「CEA」))の存在下での変化に基づき決定され得る。白血病のようなさらに別の タイプのガンについては、腫瘍増殖の阻害は、代表的な血液細胞計数における白 血病細胞の減少した数に基づき決定され得る。 本発明に関連して、「抗腫瘍剤」は、腫瘍増殖を阻害する化合物または分子を いう。抗腫瘍剤の代表例は、免疫アクチベーターおよび腫瘍増殖インヒビターを 含む。簡潔に記載すると、免疫アクチベーターは、腫瘍特異的抗原の免疫認識を 改善することによって機能し、その結果、免疫系が「プライム」されるようにな る。プライミングは、リンパ球の増殖、分化、またはより高い親和性の相互作用 への進化からなり得る。このようにプライムされた免疫系はより有効に腫瘍細胞 を阻害または傷害する。免疫活性化は、免疫モジュレーター(リンパ球と腫瘍細 胞との間の相互作用に影響する分子)、および免疫エフェクター細胞を増殖、活 性化、または分化するように作用するリンフォカインに細分類され得る。免疫モ ジュレーターの代表例として、CD3、ICAM-1、ICAM-2、LFA-1、LFA-3、b-2-ミク ログロブリン、シャペロン、αインターフェロン、γインターフェロン、B7/BB1 および主要組織適合遺伝子複合体(MHC)、ならびにT細胞レセプタータンパク質 または改変された認識部位を有するT細胞レセプターのような合成等価物が挙げ られる。リンフォカインの代表例として、γインターフェロン、腫瘍壊死因子、 IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL -11、GM-CSF、CSF-1、およびG-CSFが挙げられる。さらに、内因性の生物学的活 性を有するRNA分子が、抗腫瘍剤として使用され得る。 抗腫瘍剤をコードする配列は、種々の供給源から得られ得る。例えば、抗腫瘍 剤をコードする配列を含むプラスミドは、アメリカンタイプカルチャーコレクシ ョン(ATCC,Rockville,Maryland)のような寄託機関から、またはBritish Bio-Te chnology Limited(Cowley,Oxford England)のような市販の供給源から得られ得 る。あるいは、抗腫瘍剤をコードする公知のcDNA配列は、この配列を発現するか または含む細胞から得られ得る。さらに、特定の細胞供給源由来のcDNAまたはmR NAライブラリーは、そこから所望の配列が従来の技術(例えば、PCR増幅)によっ て容易にクローン化され得る市販の供給源から購入され得る。抗腫瘍剤をコード する配列はまた、例えば、Applied Biosystems Inc.DNAシンセサイザー(例えば 、ABI DNAシンセサイザーモデル392、Foster City,California)で合成され得る 。 上記の抗腫瘍剤に加えて、本発明はまた、例えば、2つ以上のサイトカイン、 免疫モジュレーター、毒素、または分化因子の融合タンパク質を含む抗腫瘍剤を 提供する。この点で好ましい抗腫瘍剤としては、αインターフェロン-インター ロイキン-2、GM-CSF-IL-4、GM-CSF-IL-2、GM-CSF-IL-3(米国特許第5,082,927号 および同第5,108,910号を参照のこと)、GM-CSF-γインターフェロン、およびγ インターフェロン-IL-4が挙げられ、γインターフェロン-インターロイキン-2 が特に好ましい。 別の実施態様において、抗腫瘍剤はさらに膜アンカーを含み得る。膜アンカー は、例えば、周知のタンパク質の膜貫通ドメインを含む種々の配列から選択され 得る。一般に、膜アンカー配列は、タンパク質を膜に固定する(anchor)タンパク 質の領域である。慣例上、細胞膜の外表面にタンパク質を結合するアンカー配列 には2つのタイプが存在する:(1)細胞膜の脂質二重層に広がる膜貫通領域(こ のような領域を含むタンパク質は内在性膜タンパク質といわれる);および(2) 内在性膜タンパク質または膜の極性表面と相互作用するドメイン(このようなタ ンパク質は周辺、または外因性タンパク質といわれる)。 内在性膜タンパク質由来の膜アンカーが好ましい。膜に広がる領域は、代表的 には、膜内部に位置するほぼ全体に疎水性残基からなる20〜25アミノ酸残基を伴 う類似した構造を有する(Eisenbergら、Ann.Rev.Biochem.53:595-623,1984 を参照のこと)。膜に広がる領域は、代表的にはαヘリック構造を有する(Eisenb ergら、前出;HeijneおよびManoil、前出を参照のこと)。好ましい実施態様にお いて、膜アンカーはγインターフェロン融合タンパク質のC-末端に融合され、こ こで、膜アンカーはFcレセプターのγ鎖を含む。 抗腫瘍剤の腫瘍形成性を、種々のアッセイにより評価し得る。代表的なアッセ イとして、ヌードマウスまたはラットにおける腫瘍形成、軟寒天におけるコロニ ー形成、およびトランスジェニックマウスのようなトランスジェニック動物の調 製が挙げられる。腫瘍形成性の研究に加えて、一般に、抗腫瘍剤の毒性を決定す ることが好ましい。当業者に周知の種々の方法を、このような毒性の測定のため に利用し得る。これは例えば、種々のタンパク質および酵素の全身レベル、なら びに血液細胞の容量および数を測定する臨床的化学アッセイを含む。一旦抗腫瘍 剤が選択されると、これを本発明に従うベクター構築物内に配置する。 次いで、このようなベクター構築物を組換えレトロウイルス内にパッケージン グし得、そしてエクスビボでのT細胞の形質導入に使用し得、これは次いで患者 に再導入される。本発明に関連して、取り出された細胞は、同一の患者に戻され るだけでなく、別の同種異系のヒトにおける選択された腫瘍細胞の増殖を「害す るためにも利用され得ることが理解される。 1つの実施態様において、組換えベクター構築物は、新しく合成されたMHCク ラスI分子に細胞内で結合するタンパク質またはタンパク質の活性部分の発現を 指向する。この結合は、小胞体からのMHCクラスI分子の移動を妨げ、その結果 、末端のグリコシル化を阻害する。これは、これらの分子の細胞表面への輸送を ブロックし、そしてCTLによる細胞認識および溶解を妨げる。例えば、E3遺伝子 の産物の1つは、MHCクラスI分子の形質転換された細胞の表面への輸送を阻害 するために使用され得る。より詳細には、E3は、アデノウイルス2ゲノムのE3領 域から転写される、19kDの膜貫通糖タンパク質である、E3/19Kをコードする。本 発明に関連して、多効果の組換えウイルスベクター構築物は、直接的または間接 的に投与され、そして発現の際に、治療的タンパク質およびE3/19Kタンパク質を 産生する、治療的タンパク質およびE3/19K配列をコードする遺伝子を含む。E3/1 9Kタンパク質は、治療的タンパク質のペプチドを結合したこれらのMHC分子を含 む、MHCクラスI表面分子の表面発現を阻害する。その結果として、ベクターに よって形質転換された細胞は、これらが産生する治療的タンパク質に対する免疫 応答を回避する。 本発明の別の実施態様において、多効果の組換えベクター構築物は、治療的タ ンパク質、およびβ2-ミクログロブリンを結合し得るタンパク質のタンパク質ま たはタンパク質の活性部分の発現を指向する。抗原提示のためのMHCクラスI分 子の細胞表面への輸送は、β2-ミクログロブリンとの会合を必要とする。従って 、β2-ミクログロブリンを結合し、そしてMHCクラスIとのその会合を阻害する タンパク質は、MHCクラスI抗原提示を間接的に阻害する。適切なタンパク質は 、H301遺伝子産物を含む。簡潔に記載すると、ヒトサイトメガロウイルス(CMV) から得られたのH301遺伝子は、MHCクラスI分子のH鎖上のβ2-ミクログロブリ ン結合部位と相同的な配列を有する糖タンパク質をコードする(Browneら、Natur e 347:770,1990)。H301は、β2-ミクログロブリンに結合し、それにより、MHC クラスI分子の成熟を妨げ、そして形質転換された細胞が細胞傷害性T細胞によ って認識されないようにし、従ってMHCクラスI拘束性免疫監視を回避する。 コードされる特定の外来タンパク質について、一般的または特異的のいずれか に、MHCクラスI抗原提示を阻害するかまたはダウンレギュレートするように機 能する上記で議論されなかった他のタンパク質もまた、本発明に関連して同定さ れ、そして利用され得る。このようなタンパク質を同定するために(特に、哺乳 動物病原体由来のタンパク質(および、次いで、EBVウイルス由来のEBNA-1 gly-a la反復のようなその活性タンパク質))タンパク質またはその活性部分(分離した 物質としてまたはMHCクラスI抗原提示を阻害し得ると推測される活性タンパク 質に融合されてのいずれかで)を発現する組換えベクター構築物を、マウス細胞 株BC10MEのような試験細胞株に形質転換する(WO91/02805、「細胞を標的化する ための組換えレトロウイルス送達ベクター構築物」を参照のこと)。候補タンパ ク質をコードする配列を有するおよび有さない試験細胞株を、CTLアッセイにお いて、刺激細胞(stimulator)および/または標的と比較する。形質転換された試 験細胞に対応する細胞溶解の減少により、候補タンパク質がMHC提示を阻害し得 ることが示される。 MHCクラスI表面発現のダウンレギュレーションを決定ための別の方法は、FAC S分析による。より詳細には、細胞株を候補タンパク質をコードする組換えベク ター構築物で形質転換する。薬物選択および拡大の後、細胞をMHCクラスI発現 についてFACSによって分析し、そして非形質転換細胞のMHCクラスI発現と比較 する。MHCクラスIの細胞表面発現の減少は、候補タンパク質がMHC提示を阻害し 得ることを示す。 上記の遺伝子送達ビヒクルのいずれもが、1つ以上の異種配列を包含、含有( および/または発現)し得る。種々の異種配列(例えば、細胞傷害性遺伝子、疾患 関連抗原、アンチセンス配列、細胞傷害性をほとんどまたは全く有しない化合物 (すなわち「プロドラッグ」)を毒性産物に活性化する遺伝子産物をコードする配 列、疾患関連抗原の免疫原性部分をコードする配列、および免疫アクセサリー分 子をコードする配列)を本発明に関連して使用し得る。 細胞傷害性遺伝子の代表例として、以下のようなタンパク質をコードする遺伝 子が挙げられる:リシン(Lambら、Eur.J.Biochem.148:265-270,1985)、アブ リン(Woodら、Eur.J.Biochem.198:723-732,1991; Evensenら、J.of Biol. Chem.266:6848-6852,1991: Collinsら、J.of Biol.Chem.265:8665-8669,19 90; Chenら、Fed.of Eur.Biochem Soc.309:115-118,1992)、ジフテリア毒素( Twetenら、J.Biol.Chem.260:10392-10394,1985)、コレラ毒素(Mekalanosら、 Nature 306:551-557,1983; SanchezおよびHolmgren、PNAS 86:481-485,1989)、 ゲロニン(Stirpeら、J.Biol.Chem.255:6947-6953,1980)、ポークウィード(Ir vin,Pharmac.Ther.21:371-387,1983)、抗ウイルスタンパク質(Barbieriら、B iochem.J.203:55-59,1982; Irvinら、Arch.Biochem.& Biophys.200:418-42 5,1980; Irvin,Arch.Biochem.& Biophys.169:522-528,1975)、トリチン、Sh igella毒素(Calderwoodら、PNAS 84:4364-4368,1987; Jacksonら、Microb.Path . 2:147-153,1987)、およびPseudomonas外毒素A(CarrollおよびCollier,J.Bi ol.Chem.262:8707-8711,1987)。 本発明のさらなる実施態様において、アンチセンスRNAを、強力なクラスI拘 束性反応を誘導するために細胞傷害性遺伝子として利用し得る。簡潔に記載する と、RNAを結合し、それにより特異的mRNAの翻訳を妨げることに加えて、高レベ ルの特異的アンチセンス配列を利用して、大量の二本鎖RNAの形成により、イン ターフェロン(γインターフェロンを含む)の発現の増加を誘導し得る。γインタ ーフェロン(γ−IFN)の発現の増加は、次に、MHCクラスI抗原の発現を増大させ る。この点での使用のために好ましいアンチセンス配列として、アクチンRNA、 ミオシンRNA、およびヒストンRNAが挙げられる。アクチンRNAとのミスマッチを 形成するアンチセンスRNAが、特に好ましい。 本発明の他の実施態様において、細胞増殖に必要な不可欠なタンパク質の細胞 性合成を妨げることによって、例えば、腫瘍細胞増殖、ウイルス複製、または遺 伝的疾患を阻害するアンチセンス配列が提供される。このようなアンチセンス配 列の例として、アンチセンスチミジンキナーゼ、アンチセンスジヒドロ葉酸レダ クターゼ(MaherおよびDolnick,Arch.Biochem.& Biophys.253:214-220,1987; Bzikら、PNAS 84:8360-8364,1987)、アンチセンスHER2(Coussensら、Science 230:1132-1139,1985)、アンチセンスABL(Fainsteinら、Oncogene 4:1477-1481,1 989)、アンチセンスMyc(Stantonら、Nature 310:423-425,1984)およびアンチセ ンスras、ならびにヌクレオチド生合成経路における任意の酵素をブロックする アンチセンス配列が挙げられる。 本発明の他の局面において、細胞傷害性をほとんどまたは全く有さない化合物 (すなわち、「プロドラッグ」)を毒性産物に活性化する遺伝子産物の発現を指向 する遺伝子送達ビヒクルが提供される。このような遺伝子産物の代表例として、 水痘帯状疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(VZVTK)、単純ヘルペスウイルスチミジ ンキナーゼ(HSVTK)(Fieldら、J.Gen.Virol.49:115-124,1980)、およびE.col iグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(米国特許出願第08/155,944号、「 条件的致死遺伝子の利用のための組成物および方法」、1993年11月18日出願を参 照のこと;WO 93/10218、「外来遺伝子およびネガティブ選択マーカーを含むベ クター」、WO 93/01281、「遺伝子移入技術および治療のためのシトシンデアミ ナーゼネガティブ選択システム」、WO 93/08843、「トラップされた細胞および 薬物としてのそれらの使用」、WO 93/08844、「ウイルス、特に病原性レトロウ イルスにより引き起こされる疾患の予防または処置のための形質転換細胞」、お よびWO 90/07936、「感染および過剰増殖異常のための組換え療法」もまた参照 のこと)が挙げられる。本発明の好ましい実施態様において、遺伝子送達ビヒク ルは、病原性因子の存在下で、細胞傷害性をほとんどまたは全く有さない化合物 を毒性産物に活性化する遺伝子産物の発現を指向し、それにより病原性因子に対 する局在化された療法をもたらす(米国特許出願第08/155,944号を参照のこと)。 本発明の1つの実施態様において、HIVプロモーター(HIVtatタンパク質によっ て活性化される場合以外は転写的にサイレントであるとして知られている)の下 流、かつ転写制御下にあるHSVTK遺伝子の発現を指向する遺伝子送達ビヒクルが 提供される。簡潔に記載すると、HIVで感染されそして遺伝子送達ビヒクルを有 するヒト細胞におけるtat遺伝子産物の発現は、HSVTKの産生の増加を引き起こす 。次いで、細胞を(インビトロまたはインビボのいずれかで)、ガンシクロビル、 アシクロビル、またはそれらのアナログ(FIAU、FIAC、DHPG)のような薬物に曝露 する。このような薬物は、HSVTKによって(しかし細胞性チミジンキナーゼによっ てではない)それらの対応する活性ヌクレオチド3リン酸形態にリン酸化される ことが知られている。アシクロビルおよびFIAU3リン酸は一般に細胞性ポリメラ ーゼを阻害し、これはトランスジェニックマウスにおいてHSVTKを発現する細胞 の特異的な破壊を導く(Borrelliら、Proc Natl.Acad.Sci.USA 85:7572,1988 を参照のこと)。遺伝子送達ビヒクルを含み、そしてHIV tatタンパク質を発現す るこれらの細胞は、特定の用量のこれらの薬物の存在により選択的に傷害される 。 本発明のさらなる局面において、本発明の遺伝子送達ビヒクルは、疾患関連抗 原の免疫原性部分をコードする1つ以上の配列の発現も指向し得る。本発明に関 連して利用されるように、細胞(または器官)を病的にすることに関連する場合、 または一般に疾患状態に関連するが、細胞を病的にすることに必要でも不可欠で もない場合のいずれかの場合、抗原は、「疾患関連」であると考えられる。さら に、抗原が適切な条件下で免疫応答(細胞媒介性または体液性のいずれか)を引き 起こし得る場合、抗原は「免疫原性」であると考えられる。免疫原性「部分」は 、種々のサイズであり得るが、好ましくは少なくとも9アミノ酸長であり、そし て抗原全体を含み得る。 例えば、通常は腫瘍細胞に関連する変化された細胞性成分の免疫原性、非腫瘍 形成性形態を含む、広範な種々の「疾患関連」抗原が、本発明の範囲内であると 意図される(米国特許出願第08/104,424号を参照のこと)。通常腫瘍細胞に関連す る変化された細胞性成分の代表例として、ras*(ここで、「*」は、非腫瘍形成性 の変化された抗原をいうと理解される)、p53*、Rb*、Wilms腫瘍遺伝子によりコ ードされる変化されたタンパク質、ユビキチン*、ムチン、DCC,APC、および MCC遺伝子によりコードされるタンパク質ならびにneuのようなレセプターまたは レセプター様構造、胸腺ホルモンレセプター、血小板由来増殖因子(「PDGF」)レ セプター、インスリンレセプター、表皮増殖因子(「EGF」)レセプター、および コロニー刺激因子(「CSF」)レセプターが挙げられる。 「疾患関連」抗原はまた、種々の真核生物(例えば、寄生虫を含む)、原核生物 (例えば、細菌)、またはウイルス病原体の全てまたは一部を含むと理解されるべ きである。ウイルス病原体の代表例として、以下が挙げられる。B型肝炎ウイル ス(「HBV」)およびC型肝炎ウイルス(「HCV」、米国特許出願第08/102/132号を 参照のこと)、ヒト乳頭腫ウイルス(「HPV」、WO 92/05248; WO 90/10459; EPO 1 33,123を参照のこと)、エプスタイン-バーウイルス(「EBV」、EPO 173,254; JP1 ,128,788; および米国特許第4,939,088号および同第5,173,414号を参照のこと) 、ネコ白血病ウイルス(「FeLV」、米国特許出願第07/948,358号;EPO 377,842; WO 90/08832; WO 93/09238を参照のこと)、ネコ免疫不全ウイルス(「FIV」、米 国特許第5,037,753号;WO 92/15684; WO 90/13573; およびJP 4,126,085)、HTLV IおよびII、およびヒト免疫不全ウイルス(「HIV」、米国特許出願第07/965,084 号を参照のこと)。 本発明の他の局面において、上記の遺伝子送達ビヒクルはまた、1つ以上の免 疫アクセサリー分子の発現を指向する。本明細書中で利用される用語「免疫アク セサリー分子」は、免疫応答(細胞媒介性または体液性のいずれか)の認識、提示 、または活性化の増加または減少のいずれかをさせ得る分子をいう。免疫アクセ サリー分子の代表例として、以下が挙げられる。IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、 IL-5、IL-6、IL-7(米国特許第4,965,195号)、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、 IL-12、IL-13、IL-14、およびIL-15(Wolfら、J.Immun.46:3074,1991; Gubler ら、PNAS 88:4143,1991; WO 90/05147; EPO 433,827)、IL-13(WO 94/04680)、GM -CSF、M-CSF-1、G-CSF,CD3(Krissanenら、Immunogenetics 26:258-266,1987)、 CD8、ICAM-1(Simmonsら、Nature 331:624-627,1988)、ICAM-2(Singer,Science 255:1671,1992)、b2-ミクログロブリン(Parnesら、PNAS 78:2253-2257,1981)、 LFA-1(Altmannら、Nature 338:521,1989)、LFA-3(Wallnerら、J.Exp.Med.166 (4):923-932,1987)、HLAクラスI、HLAクラスII分子B7(Freemanら、J.Immun.14 3:271 4,1989)、およびB7-2。好ましい実施態様において、異種遺伝子はg-IFNをコード する。 本発明の好ましい局面において、本明細書中に記載される遺伝子送達ビヒクル は、1つより多い異種遺伝子配列の発現を指向し得る。このような複数の配列は 、単一のプロモーターによって、または好ましくはさらなる二次的なプロモータ ー(例えば、内部リボソーム結合部位または「IRBS」)によって制御され得る。本 発明の好ましい実施態様において、遺伝子送達ビヒクルは、相乗的に作用する異 種遺伝子の発現を指向する。例えば、1つの実施熊様において、IL-12、IL-2、 γ-IFNのような分子、またはTH1経路において、細胞媒介性提示を増加させるよ うに作用する他の分子の、疾患関連抗原の免疫原性部分と一緒の発現を指向する 、レトロベクター構築物が提供される。このような実施態様において、免疫提示 および疾患関連抗原のプロセシングは、免疫アクセサリー分子の存在に起因して 増加する。 本発明の別の局面において、「置換」遺伝子をコードする1つ以上の異種配列 の発現を指向する遺伝子送達ビヒクルが提供される。本明細書で利用されるよう に、用語「置換遺伝子」は、遺伝性のまたは非遺伝性の遺伝的欠陥を防止、阻害 、安定化、または、逆転させ得る治療的タンパク質をコードする核酸分子をいう ことが理解されるべきである。このような遺伝的欠陥の代表例として、代謝異常 、免疫調節異常、ホルモン調節異常、および酵素的または膜関連構造的機能の異 常が挙げられる。このような欠陥によって引き起こされる疾患の代表例として、 嚢胞性線維症(嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質(「CFTCR」)の欠失による、Do rinら、Nature 326:614を参照のこと)、パーキンソン病、アデノシンデアミナー ゼ欠損(「ADA」、Hahmaら、J.Bact.173:3663-3672,1991)、β-グロビン異常、 血友病AおよびB(VIII因子欠損;Woodら、Nature 312:330,1984を参照のこと) 、ゴーシェ病、糖尿病、痛風性関節炎、およびレッシュ-ハイナン病(Lesch-Nyla ndisease)(「HPRT」欠損に起因する;Jollyら、PNAS 80:477-481,1983)の形態、 デュシェーヌ筋ジストロフィーおよび家族性高コレステロール血症(LDLレセプタ ー変異;Yamamootoら;Cell 39:27-38,1984を参照のこと)が挙げられる。 本明細書で記載されるように、種々の異なるタンパク質を発現するレトロウイ ルスベクターでエクスビボで形質導入されたT細胞集団が、種々の異なる異常を 処置するために患者に再導入され得る。例えば、HIVおよび他のウイルスのT細 胞の感染は、この方法によって処置され得、そしてHIV感染を含むT細胞のウイ ルス感染の処置において使用され得る。特にHIV感染に関して、多くの異なる治 療アプローチを使用し得る。例えば、T細胞をHIV複製を干渉する核酸またはタ ンパク質を発現するレトロウイルスベクターの高力価調製物でエクスビボで形質 導入し得る(Baltimore,D.Nature 335:395,1988)。特に、HIV感染および複製を 干渉し得る変異体HIV核酸配列、リボザイム、アンチセンス分子、およびタンパ ク質を発現するレトロウイルスベクターを、WO 91/02805、「細胞を標的化する ための組換えレトロウイルス送達ベクター構築物」、およびWO 92/05266、「パ ッケージング細胞」(これら両方の刊行物は本明細書中に参考として援用される) に記載のように生成し得る。 種々の異常を有する患者から得たT細胞集団を、血流中に存在する場合に異常 の処置に有効であるタンパク質を発現するレトロウイルスベクターの高力価調製 物でエクスビボで形質導入し得る。組換えベクター構築物は、第VIII因子、第IX 因子、ヘモグロビン、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、アデノシンデアミナ ーゼ、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、al-抗トリ プシン、膜貫通調節タンパク質、およびグルコセレブロシダーゼからなる群より 選択される、少なくとも1つの治療的タンパク質を発現し得る。次いで、形質導 入されたT細胞を患者に再導入し得、ここで、T細胞は患者の血液中に有益なタ ンパク質を分泌するか、またはこのタンパク質の活性が、疾患の原因となる因子 (例えば、ADA欠損におけるアデノシン、またはゴーシェ症候群におけるグルコセ レブロシド)を解毒する。このアプローチを、例えば、上記に列挙した異常を含 む種々の遺伝的異常の処置において使用し得る。例えば、T細胞を血友病患者か ら得、そして第VIII因子を発現するレトロウイルスベクターでエクスビボで形質 導入し得る。多くの異なる第VIII因子核酸構築物を使用し得る。例えば、全長の 第VIII因子またはBドメインを欠く機能的第VIII因子タンパク質を発現するレト ロウイルスベクターを、本明細書中の実施例2に記載したように生成し得る。さ らに、全長の第VIII因子タンパク質を発現する種々のの異なるレトロウイルスベ クター構築物を、同時係属中の米国特許出願第08/366,851号(本明細書中に参考 として援用される)に記載されるように生成し得る。 本明細書中で記載されるように、T細胞、分裂中でない細胞、およびレトロウ イルスベクターでの形質導入に従来的に耐性である他の細胞を、レトロウイルス ベクターの高力価調製物でエクスビボでうまく形質導入し得る。特に、プロドラ ッグを毒性分子に変換するタンパク質を発現するレトロウイルスベクターを、単 独または治療的タンパク質に加えて使用し得る。上記のように、このようなベク ターで形質導入した細胞の再導入は、種々の異常の処置に有用である。さらに、 このアプローチを、インビボでのプロドラッグの導入によって、患者に導入され た場合に、形質導入されたT細胞または他の形質導入された細胞の活性を調節す るために使用し得る。 本明細書中で使用される用語「活性を調節する」は、プロドラッグ投与による 細胞性機能の阻害を含む。この活性の調節は、例えば、活性化されたプロドラッ グによって形質導入された細胞を傷害することにより達成され得る。例えば、同 種異系骨髄移植物を、白血病のようなガンの処置に使用する。さらに、ドナー由 来のT細胞を、移植を補助するためおよび抗腫瘍免疫応答を増加させるために注 入する。しかし、一定の比率のこの同種異系移植で処置された患者は、対宿主性 移植片病を発達させる。プロドラッグを活性化し得るタンパク質をコードするレ トロウイルスベクターで形質導入したレトロウイルスベクターでの、エクスビボ でのT細胞の形質導入は、T細胞が患者に導入された後にT細胞の活性を調節す る機構を提供する。特に、生じる対宿主性移植片病は、患者へのプロドラッグの 投与によって減少され得るかまたは排除され得る。ヘルペスチミジンキナーゼ( プロドラッグを毒性分子に変換し得る)のような種々の異なるタンパク質を使用 し得る。このような遺伝子産物の代表例として、以下が挙げられる。水痘帯状疱 疹チミジンキナーゼ(VZVTK)、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVTK)(F ieldら、J.Gen.Virol,49:115-124,1980)およびE.coliグアニンホスホリボシ ルトランスフェラーゼ(米国特許出願第08/155,944号、「条件的致死遺伝子の利 用のための組成物および方法」、1993年11月18日出願、本明細書中に参考として 援用される;また、WO 93/10218、「外来遺伝子およびネガティブ選択マーカー を含むベクター、WO 93/01281、「遺伝子転入技術および治療のためのシトシン デアミナーゼネガティブ選択システム」、WO 93/08843、「トラップされた細胞 および薬物としてのそれらの使用」、WO 93/08844、「ウイルス、特に病原性レ トロウイルスにより引き起こされる疾患の予防または処置のための形質転換細胞 」、およびWO 90/07936、「感染および過剰増殖異常のための組換え療法」を参 照のこと)。 上記の異種遺伝子をコードする配列は、種々の供給源から容易に得られ得る。 例えば、免疫アクセサリー分子をコードする配列を含むプラスミドは、アメリカ ンタイプカルチャーコレクション(ATCC,Rockville,MD)の様な寄託機関から、 またはBritish Bio-Technology Limited(Cowley,Oxford,England)のような市 販供給源から得られ得る。上記の免疫アクセサリー分子をコードする配列の代表 的な供給源として、以下が挙げられる。BBG 12(127アミノ酸の成熟タンパク質を コードするGM-CSF遺伝子を含む)、BBG 6(γ-IFNをコードする配列を含む)、ATCC 番号39656(TNFをコードする配列を含む)、ATCC番号20663(a-IFNをコードする配 列を含む)、ATCC番号31902、31902および39517(b-IFNをコードする配列を含む) 、ATCC番号67024(IL-1をコードする配列を含む)、ATCC番号39405、39452、39452 、39516、39626、および39673(IL-2をコードする配列を含む)、ATCC番号59399、 59398、および67326(IL-3をコードする配列を含む)、ATCC番号57592(IL-4をコー ドする配列を含む)、ATCC番号59394および59395(IL-5をコードする配列を含む) 、およびATCC番号67153(IL-6をコードする配列を含む)。タンパク質の配列全体 、またはタンパク質の生物学的に活性な部分をコードするそれらの適切な部分の いずれかを利用し得ることは、当業者に明らかである。 あるいは、異種遺伝子をコードする公知のcDNA配列は、このような配列を発現 するかまたは含む細胞から得られ得る。簡潔に記載すると、1つの実施態様にお いて、目的の遺伝子を発現する細胞由来のmRNAは、オリゴdTまたはランダムプラ イマーを使用して、逆転写酵素で、逆転写される。次いで、一本鎖cDNAを、所望 の配列の両側の配列に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを利用して、PCR( 米国特許第4,683,202号、同第4,683,195号、および同第4,800,159号を参照のこ と。また、PCR Technology: Principles and Application for DNA Amplificati on、Erlich(編)、Stockton Press,1989、これらは全てその全体が本明細書中に 参考として援用される)によって増幅され得る。特に、二本鎖DNAを、熱安定性Ta qポリメラーゼ、配列特異的DNAプライマー、ATP、CTP、GTP、およびTTPの存在下 で、加熱によって変性させる。合成が完了すると、二本鎖が生成される。このサ イクルは多数回繰り返され得、所望のDNAの階乗の増幅を生じる。 上記の遺伝子をコードする配列はまた、例えば、Applied Biosystems Inc.DN Aシンセサイザー(例えば、ABI DNA シンセサイザーモデル392(Foster City,CA) )で合成され得る。組換えレトロウイルス粒子の調製および精製 本発明の別の局面は、組換えレトロウイルス粒子の調製に関する。本発明によ る組換えレトロウイルス粒子を、当業者が認識しているような種々の方法で生成 し得る。例えば、プロデューサー細胞、すなわち、レトロウイルスベクターパッ ケージングに必要な全ての成分(レトロウイルスベクターをコードする核酸分子 を包含する)を含有する細胞を、ローラーボトル、バイオリアクター、中空ファ イバー器具、および細胞ホテルで増殖し得る。細胞を、液体培地中の固体支持体 上で維持するか、または懸濁液として増殖し得る。広範な種々のバイオリアクタ ーの構成およびサイズが、本発明の実施に使用され得る。 細胞ファクトリー(「細胞ホテル」とも呼ばれる)は、典型的に2、10、また は40個のトレイを含み、そして未使用のポリスチレンから成型され、Nuclon D 表面を提供するように処理され、そしてお互いを超音波接着することにより組み 立てられる。一般に、これらのファクトリーは、試薬の添加または培養液の取り 出しのためのチャンバーに接続可能な2つのポートチューブを有する。10層のフ ァクトリーは、増殖細胞のための6000cm2の表面領域を提供し、これは27個のT-2 25フラスコにほぼ等しい。細胞ファクトリーは、種々の製造業者(例えば、Nunc を含む)から入手可能である。大部分の細胞型は、3〜6日間、高力価のベクタ ーを産生し得、複数回の採取を可能にする。各細胞型を、播種後の最適採取時期 、および最適採取日数を決定するために試験する。細胞を、典型的には、細胞フ ァクトリーに播種するために必要な細胞数が得られるまで、ローラーボトルにお い て2〜20%のFBSを補充したDMEM中で最初に増殖させる。次いで、細胞をファク トリーに播種し、そしてベクターを含む2リットルの培養物上清を、その後、適 切な時期に採取する。新鮮な培地を用いて、培養物を再補充する。 中空ファイバー培養法もまた使用され得る。簡単に述べれば、中空ファイバー 培養を用いる高力価のレトロウイルス産生は、減少した容量の培地中で高密度ま で細胞が培養されるように、ウイルス濃度の増加に基づく。細胞は栄養物を与え られ、そして老廃物は多数の毛細ファイバー管腔を通って循環する大容量の新鮮 な培地を用いて希釈される。細胞を、細胞老廃物が毛細ファイバー中の30kD孔を 通る拡散により栄養物に交換されるバイオリアクターチャンバー中の毛細ファイ バーの外側の空間で培養する。細胞株から産生されるレトロウイルスは、非常に 大きいのでこの孔の膜を通過できない。従って、このレトロウイルスは中空ファ イバーバイオリアクター中の細胞側で濃縮される。細胞側で培養される培地の容 量は、組織培養ディッシュまたはフラスコにおいて培養される細胞密度と等価で あるために必要とされる容量よりも約10〜100倍少ない。中空ファイバーのレト ロウイルス力価を組織培養ディッシュまたはフラスコでの力価と比較する場合、 この容量の倍数減少は力価の倍数誘導と逆に相関する。個々のレトロウイルスプ ロデューサー細胞株が中空ファイバー増殖条件に適する場合、力価で10〜100倍 の誘導が見られる。最大細胞密度を達成するために、個々の細胞株は非常に密接 に近接し、そして互いに接するように増殖し得なければならない。多くの細胞株 は、この様式で増殖せず、そしてこれらのタイプの細胞株に基づくレトロウイル スパッケージング細胞株は、力価において10倍の増加を達成しないかもしれない 。非常に良好に増殖する細胞株は、非接着性の細胞株であり、そして非接着性の 細胞株に基づくレトロウイルスプロデューサー株は、組織培養ディッシュおよび フラスコと比較して、力価において100倍の増加を達成し得る。 レトロウイルス粒子および産生方法に関係なく、高力価(約107〜1011cfu/mL )ストックが調製され得、これは適切な細胞へ導入されると所望の産物の高レベ ルの発現をもたらす。レトロウイルス粒子アセンブリに必要とされる全ての成分 が存在するときに高レベル発現が生じ、その結果、高力価ストックを産生する。 そして高力価ストックが好ましいが、約103〜106cfu/mLの範囲の力価を有するレ ト ロウイルス調製物もまた利用され得る。しかし、レトロウイルス力価は、下記の 種々の精製方法により増大され得る。 適切な手段による産生後、感染性組換えキセノトロピックレトロウイルス粒子 が粗形態または精製形態で保存され得る。粗レトロウイルス粒子は、培養感染細 胞により産生され、ここでレトロウイルス粒子は細胞から培養培地中に放出され る。ウイルスは、十分な量の処方緩衝液を、組換えウイルスを含む培養培地へ最 初に添加して水性懸濁液を形成することにより粗形態で保存され得る。 組換えレトロウイルス粒子はまた、精製形態で保存し得る。より詳細には、処 方緩衝液の添加前に、上記の粗レトロウイルス調製物を、クロスフロー濃縮シス テム(Filtron Technology Corp.,Nortborough,MA)によるように、フィルタ ーを通過させることにより澄明化し、次いで濃縮する。1つの実施態様において DNaseを濃縮物に添加して外来性DNAを消化する。次いで、消化物をダイアフィル トレートして過剰の培地成分を除去し、そしてより望ましい緩衝化溶液中で組換 えレトロウイルスを確立する。次いで、ダイアフィルトレート物を、Sephadex S -500ゲルカラムのようなゲル濾過カラムに通過させ、そして精製組換えウイルス を溶出する。 粗組換えキセノトロピックレトロウイルス調製物はまた、米国特許出願第08/0 93,436号により詳細に記載されるようにイオン交換カラムクロマトグラフィーに より精製され得る。一般に、粗調製物をフィルターを通過させることにより澄明 化し、そして濾過物を高度にスルホン化されたセルロースマトリックスを含むカ ラム上にロードする。1グラムのセルロース当たりの硫酸の量は約6〜15μgの 範囲で変化する。組換えレトロウイルスを、高塩緩衝液を用いることによりカラ ムから精製形態で溶出する。次いで、溶出物を分子排除カラムを通過させること により、高塩緩衝液をより好ましい緩衝液に交換する。次いで、精製調製物を処 方し得るか、または好ましくは-70℃で保存し得る。 さらに、本発明による組換えレトロウイルスを含む調製物を、組換えレトロウ イルスの力価を増大するために、精製の間に濃縮し得る。広範な種々の方法(例 えば、硫酸アンモニウムを用いる組換えレトロウイルスの沈澱、ポリエチングリ コール(「PEG」)濃縮、PERCOLLのような勾配またはショ糖のような「緩衝物」 の存在または非存在のいずれかでの遠心分離による濃縮、濃縮フィルターの使用 (例えば、Amicon濾過)、および2相分離)が、レトロウイルス濃度を増大するた めに利用され得る。 簡単に述べると、硫酸アンモニウムを用いる組換えレトロウイルスの沈澱によ る濃縮を達成するために、硫酸アンモニウムを、ゆっくりと適切な濃度まで添加 し、その後、遠心分離を行い、そして透析または疎水性カラムでの分離のいずれ かによって硫酸アンモニウムを除く。 あるいは、組換えレトロウイルスは、PEGを用いて培養培地から濃縮され得る( Greenら、PNAS 67:385-393,1970;Syrewiczら、Appl.Micro.24:488-494,1972)。 このような方法は、迅速で、簡単で、そして費用がかからない。しかし、硫酸ア ンモニウム沈澱と同様に、PEGの使用はまた、溶液から他のタンパク質を濃縮す る。 他の実施態様において、組換えレトロウイルスは、遠心分離、さらに詳細には 低速遠心分離により濃縮され得る。低速遠心分離は、高速遠心分離に伴うペレッ ト化に関連する困難さを回避する(例えば、ウイルスの破壊または不活性化)。 本発明による組換えレトロウイルスはまた、水性2相分離法により濃縮され得 る。簡単に述べると、ポリマーの水性2相系は、水に2つの異なる非混和性ポリ マーを溶解することにより調製され得る。多くの水溶性ポリマー対が、このよう な2相系の構築(例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)またはメチルセル ロース、およびデキストランまたはデキストラン硫酸を含む)に利用され得る(W alterおよびJohansson,Anal.Biochem.155:215-242,1986;Albertsson,「Partitio n of Cell Particles and Macromolecules」Wiley,New York,1960を参照のこと) 。以下の実施例7においてさらに詳細に記載されるように、PEGは5%〜8%( 好ましくは、6.5%)の濃度の範囲で、そしてデキストラン硫酸は0.4%〜1%( 好ましくは、0.4%)の濃度の範囲で利用して、組換えレトロウイルスの精製に 適した水性2相系が確立され得る。このような手順を利用して、約100倍の濃縮 が、総出発レトロウイルスの約50%以上の収率とともに達成され得る。 例示の目的のために、いくつかの濃縮工程を組み合わせる代表的な濃縮プロセ スを以下に示す。簡単に述べると、組換えレトロウイルスは、濃縮の前に、ロー ラーボトル、細胞ファクトリー、またはバイオリアクターのいずれかから調製さ れ得る。組換えレトロウイルスを含む取り出された培地は、-70℃で凍結され得 るかまたは、さらに好ましくは、処理の前に大量にプールされたバッチにおいて 2℃〜8℃で保存され得る。 バイオリアクターから得られた物質については、組換えレトロウイルスプール が、最初に、0.65μmフィルターと直列に連結した0.8μmフィルター(1.2μmガラ スファイバープレフィルター、0.8μmセルロースアセテート)を通して澄明化さ れる。このフィルター配列は、約2平方フィートのフィルターを提供し、そして 詰まる前に、約15〜20リットルのプールされた物質を処理し得る。ローラーボト ルまたは細胞ファクトリーから得られた物質については、1個の0.65μmカート リッジ(2平方フィート)は、通常、40リットルまでの容量に十分である。80リッ トルの細胞ファクトリープロセスについては、5平方フィートフィルターが必要 とされ得る。 好ましくは、澄明化後、フィルターを緩衝液(例えば、150mM NaCl,25mM Tris (pH7.2〜7.5))でリンスする。澄明化後、組換えレトロウイルスを、300,000mwカ ットオフのカセットを利用して、タンジェンシャルフロー限外濾過により濃縮す る。バイオリアクター物質(12%〜16%FBSを含む)については、4〜5Lの物質 がカセットあたりで濃縮され得る。12〜16%FBSでのローラーボトルまたは細胞 ファクトリーについては、5〜6Lの物質がカセットあたりで濃縮され得る。最 終的に、10%FBSを含有する細胞ファクトリーについては、8〜9Lの物質がカセ ットあたりで濃縮され得る。このような手順を濾液と残留液との間の適切な圧力 差で利用することにより、80リットルまでの物質が、2時間かからずに500mL未 満の容量まで濃縮され得る。このプロセスはまた、約80%の収率を提供する。 限外濾過工程に続いて、DNAseを50U/mLの濃度に添加し、そして30分間閉じら れた濾過ラインを用いて、より低いポンプスピードで再循環し得る。次いで、不 連続ダイアフィルトレーションは、さらなる緩衝液を添加し、そして上記の同じ 交差差圧を利用することにより達成される。一般に、この工程後の回収は、約70 %である。 次いで、濃縮された物質を、最少の塩およびイオン強度の濃度として、50mM N aClおよび25mM Tris(pH7.2〜7.5)を利用して、Phamacia S-500 HGサイズ排除ゲ ルによるカラムクロマトグラフィーに供する。一般に、組換えキセノトロピック レトロウイルスは、最初のピークにおいて溶出する。 タンジェンシャルフロー濾過を、もう1度、調製物の容量をさらに減少するた めに利用し得る。その後、濃縮された物質は、0.2μm Milliporeフィルターを通 す濾過により滅菌される。 インビボ産生の別法として、レトロウイルスパッケージングタンパク質を、適 切な細胞から、一緒にまたは別々に、産生し得る。しかし、ウイルスベクターを 産生し得る核酸分子の導入のかわりに、gag、pol、およびenvタンパク質、レト ロウイルスベクター、tRNA、ならびに他の必要な成分を含むインビトロパッケー ジング反応を行う。次いで、得られたレトロウイルス粒子を精製し、所望であれ ば、濃縮し得る。薬学的組成物の処方 本発明の別の局面は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせ て上記のレトロウイルスベクターを含む薬学的組成物に関する。一方、別の局面 は、組換えレトロウイルスが再構成の際に哺乳動物細胞に感染し得るように、感 染性組換えレトロウイルスを後の再構成のために保存する方法に関する。記載の 方法を、テナガザル白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ならびにキセノ、ポ リ、およびアンフォトロピックマウス白血病ウイルスのようなC型組換えレトロ ウイルスを含む種々の異なるウイルスの保存のために使用し得る(Weissら、RNA Tumor Viruses 、第2版、1985)。米国特許出願第08/153,342号を参照のこと。 薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤は、用いられる投与量および濃度に おいてレシピエントに対して非毒性である。注入し得る溶液のためのキャリアま たは希釈剤の代表的な例は、水、好ましくは生理学的pHに緩衝化された等張生理 食塩水溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水またはトリス緩衝化生理食塩水) 、マンニトール、デキストロース、グリセロール、およびエタノール、ならびに ポリペプチドまたはタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA))を包含 する。薬学的に好ましい組成物は、10mg/mLマンニトール、1mg/mL HSA、20mM T ri s(pH7.2)、および150mM NaCl中の組換えキセノトロピックレトロウイルスを含む 。この場合、組換えキセノトロピックレトロウイルス粒子は約1μgの物質に相 当し、それは高分子量物質の1%未満、そして全物質(水を含む)の1/100,000 未満であり得る。この組成物は、-70℃で少なくとも6ヶ月間安定である。 本発明の薬学的組成物はまた、T細胞分裂を刺激する因子をさらに包含し得、 それにより本発明によるベクター構築物を取り込みそして組み込む。 組換えレトロウイルスの保存のために特に好ましい方法および組成物が、1993 年10月12日に出願された米国特許出願第08/135,938号および1993年11月15日に出 願された米国特許出願第8/153,342号に記載される。 患者を処置するのに有用なT細胞に形質導入するための組換えレトロウイルス の使用は、組換えレトロウイルスの感染性および生存性が維持されるように、産 物が移送され、そして長期間、所望の温度で保存され得ることを必要とする。低 温度での保存および移送を欠く組換えレトロウイルスの保存の困難性は、第3世 界の国々における問題を示す。これらの国々では十分な冷却能がしばしば欠如す る。 抗毒素、抗原、および細菌の保存のための乾燥形態での物質の最初の安定化が 記載された(Flosodortら、J.Immunol.,29:389,1935)。しかし、このプロセ スにおける制限は、周囲温度で水性状態から乾燥した場合、タンパク質の部分変 性を包含した。凍結状態からの乾燥はこの変性を減少するのに役立ち、そして他 の生物学的物質(細菌およびウイルスを含む)の効率的な保存をもたらした(St ampら、J.Gen.Microbiol.,1:251,1947;Roweら、Virology,42:136,1970;お よびRoweら、Cryobiology,8:153,1971)。より近年において、スクロース、ラ フィノース、グルコース、およびトレハロースのような糖が、ウイルスの凍結乾 燥前に、種々の組み合わせで安定剤として添加された。糖の使用は、いくらかの ウイルスの生存のみを後の増殖のために必要とする調査目的のための生存ウイル スの回収を増大した。 本発明による組換えレトロウイルスは液体で保存され得るか、または好ましく は、凍結乾燥形態で保存され得る。安定性に影響する因子は処方(液体、凍結乾 燥、その成分など)および保存条件(温度、保存容器、光への曝露などを含む) を包含する。あるいは、本発明によるレトロウイルス粒子は低温で液体として保 存され得る。好ましい実施態様において、本発明の組換えレトロウイルスが、上 昇した温度で凍結乾燥形態で感染性を保存するために、そして再構成後の患者へ の注入に適切なこの形態に処方される。 本発明によるレトロウイルスベクター構築物を含む組換えレトロウイルス粒子 は、粗形態で、または好ましくは精製形態で処方され得る。粗レトロウイルス調 製物は、種々の細胞培養方法により産生され得、ここでレトロウイルス粒子は細 胞から培養培地中へ放出される。組換えレトロウイルス粒子は、粗製形態で十分 な量の処方緩衝液の添加によって保存され得る。代表的には、処方緩衝液は、1 つ以上のサッカライド、高分子量構造添加剤、緩衝成分、および/またはアミノ 酸のような種々の成分を含む水溶液である。 本明細書中に記載の組換えレトロウイルスはまた、精製された形態で保存され 得る。例えば、処方緩衝液の添加の前に、上記の粗調製物は、濾過により澄明化 され、次いで、例えば、交差フロー濃縮システム(Filtron Technology Corp.,No rtborough,MA)により濃縮され得る。DNaseが外来性DNAを消化するために濃縮物 に添加され、その後、過剰な培地成分を取り除き、そしてさらに望ましい緩衝化 溶液で置換するためにダイアフィルトレートされる。次いで、ダイアフィルトレ ートがSephadexTM S-500ゲルカラムのようなゲル濾過カラムに通され、そして保 持されたキセノトロピックレトロウイルス粒子が溶出され得る。次いで、十分な 量の処方緩衝液がこの溶出物に添加され、所望の最終濃度の構成成分に達し、そ してレトロウイルス調製物を最小限に希釈し得る。次いで、水性懸濁液は保存さ れ得る(好ましくは-70℃)かまたはすぐに処方され得る。 別の手順において、粗調製物は、イオン交換カラムクロマトグラフィーによっ て精製され得る。簡単に述べれば、粗組換えレトロウイルスは、濾過により澄明 化され、次いで、高度にスルホン化されたセルロースマトリックスを含むカラム にロードされる。高度に精製された組換えキセノトロピックレトロウイルスは、 高塩緩衝液を用いることによりカラムから溶出される。次いで、高塩緩衝液は、 分子排除カラムに溶出物を通過することによりさらに所望の緩衝液に交換される 。回収後、上記のように、次いで、処方緩衝液が最終濃度を調整するために添加 さ れ得、その後低い温度で保存(好ましくは-70℃)されるか、またはすぐに処方 される。 乾燥処方物が望まれる場合、粗製または精製レトロウイルス調製物を含む水性 調製物が、凍結乾燥または蒸発により調製され得る。凍結乾燥は、ガラス転移温 度未満または溶液の共融点温度未満で水性調製物を冷却する工程、および昇華に より水を取り除く工程を含む。例えば、Phillipsら(Cryobiology,第18巻;414,1 981)に記載の多段階凍結乾燥手順を用いて、好ましくは-40℃〜-45℃の温度で、 処方された組換えウイルスを凍結乾燥し得る。得られる組成物は、10重量%より 少ない水を含むはずである。一旦凍結乾燥されると、このような調製物は、安定 であり、そして-20℃〜25℃で保存され得る。 蒸発方法において、水は、蒸発により周囲温度でレトロウイルス調製物水性懸 濁液から除去される。蒸発は種々の技術により達成され得、この技術は、スプレ ー乾燥(EP 520,748を参照のこと)を包含する。スプレー乾燥手順において、調製 物は、予熱されたガス(たいていは空気)の流れに送られ、ここで水は急速に懸 濁液の飛沫から蒸発する。スプレー乾燥装置は、多くの製造者から入手可能であ る(例えば、Drytec,Ltd.,Tonbridge,England;Lab-Plant,Ltd.,Huddersfield,Eng land)。一旦脱水されると、組換えレトロウイルス調製物は安定であり、そして- 20℃〜25℃で保存され得る。乾燥または凍結乾燥された調製物の得られる水分含 有量は、Karl-Fischer装置(EM Science Aquastar VIB容積測定タイトレーター、 Cherry Hill,NJ)の使用、または重力測定法により測定され得る。一旦脱水され ると、組換えキセノトロピックレトロウイルスは安定であり、そして-20℃〜25 ℃で保存され得る。 以前に記載のように、処方に用いられる本発明によるキセノトロピックレトロ ウイルスを含む水性調製物は、代表的には、1つ以上のサッカライド、高分子量 構造添加剤、緩衝成分、および水からなり、1つ以上のアミノ酸も含み得る。こ れらの成分の組合せは、凍結および凍結乾燥、または蒸発による乾燥の際の組換 えレトロウイルスの活性を保つように作用することが見出された。1993年11月15 日に出願された共同所有の米国特許出願第08/153,342号を参照のこと。種々のサ ッカライドが単独でまたは組み合わせで使用され得、サッカライドはスクロース 、 マンニトール、グルコース、トレハロース、イノシトール、フルクトース、マル トースおよびガラクトースを包含し、特にラクトースが好ましい。サッカライド の濃度は、0.1重量%〜30重量%で変化し得、好ましくは、約1重量%〜12重量 %で変化する。特に好ましいラクトースの濃度は、3重量%〜4重量%である。 さらに、サッカライドの組み合わせもまた使用し得、ラクトースおよびマンニト ール、またはスクロースおよびマンニトールを包含する。凍結乾燥処方物を室温 で保存することを意図する場合、水溶液中で特定のサッカライドを使用すること が好ましくあり得ることはまた当業者に明らかである。詳細には、ラクトースま たはトレハロースのようなジサッカライドが、このような処方物に好ましい。 1つ以上の高分子量構造添加剤は、凍結の間のレトロウイルス凝集の防止を促 進するために使用され得る。そして凍結乾燥または乾燥状態の構造支持を提供す る。本発明の文脈において、構造添加剤は、5000ダルトンより大きな場合、「高 分子量」であるとみなされる。好ましい高分子量構造添加剤は、ヒト血清アルブ ミン(HSA)である。しかし、他の物質(例えば、ヒドロキシエチルセルロース 、ヒドロキシメチルセルロース、デキストラン、セルロース、ゼラチン、ポビド ンなど)もまた使用され得る。好ましくは、高分子量構造添加剤の濃度は0.05重 量%〜20重量%で変化し得、好ましくは0.1重量%〜10重量%であり、そして特 に好ましいHSAの濃度は0.1重量%である。 アミノ酸は、存在する場合、さらにレトロウイルス感染性を保存する傾向があ る。さらに、アミノ酸は、冷却された水性懸濁液の昇華の間、および凍結乾燥状 態の間、レトロウイルス感染性をさらに保つために機能する。好ましいアミノ酸 は、アルギニンであるが、他のアミノ酸(例えば、リシン、オルニチン、セリン 、グリシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸 )もまた使用され得る。好ましくは、アミノ酸濃度は、0.1重量%〜10重量%で 変化する。特に好ましいアルギニン濃度は、0.1重量%である。 種々の緩衝成分は、比較的一定のpHを維持するために使用され得る。種々の緩 衝液は、所望のpH範囲に依存して使用され得、pH範囲は好ましくは7.0と7.8との 間である。適切な緩衝液は、リン酸緩衝液およびクエン酸緩衝液を含む。特に好 ましい処方物のpHは、7.4であり、そして好ましい緩衝液はトロメタミンである 。 さらに、最終的な等張塩濃度に調節するための中性塩を処方物中に含むことが 好ましくあり得る。適切な中性塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩 化マグネシウムを含む。好ましい塩は、塩化ナトリウムである。 後の再構成のための凍結乾燥状態における組換えレトロウイルスの特に好まし い保存方法は、以下の工程を包含する:(a)水性組換えキセノトロピック調製物 を調製する工程。この調製物は、組換えキセノトロピックレトロウイルスに加え 、約(i)4重量%ラクトース、(ii)0.1重量%ヒト血清アルブミン、(iii)0.03重 量%以下のNaCl、(iv)0.1重量%アルギニン、および約7.4のpHを提供するのに十 分な量のトロメタミンを含む;(b)約-40℃〜-45℃の温度に調製物を冷却し、凍 結調製物を形成する工程;および(c)昇華により凍結調製物から水を除去し、2 重量%より少ない水を有する凍結乾燥組成物を形成する工程。組換えキセノトロ ピックレトロウイルスは複製欠損であり、そして再構成の際にヒト細胞への投与 に適することが好ましい。 本発明の凍結乾燥または脱水レトロウイルスは、種々の物質を用いて再構成さ れ得るが、水を用いて再構成されることが好ましい。ある例において、最終処方 物に等張性をもたらす希釈塩溶液がまた使用され得る。さらに、再構成されたウ イルスの活性を増大することが知られている成分を含む水溶液を使用することは 有利であり得る。このような成分は、サイトカイン(例えば、IL-2)、ポリカチオ ン(例えば、プロタミン硫酸)、または再構成ウイルスの形質導入効率を増大す る他の成分を含む。凍結乾燥または脱水組換えウイルスは、任意の適切な容量の 水、または実質的かつ好適に凍結乾燥または脱水サンプルを総可溶化し得る上記 の再構成剤を用いて再構成され得る。組換えレトロウイルス粒子の投与 本発明の別の局面において、種々の疾患を罹患するヒト患者の処置方法が提供 される。種々の疾患は、遺伝性疾患、ガン、感染性疾患、自己免疫疾患、ならび に炎症性疾患、心血管疾患、および変性性疾患を包含する。これらの方法のそれ ぞれは、治療有効量の、ベクター構築物が保有する目的の遺伝子によりコードさ れる所望の遺伝子産物(単数または複数)が産生されるように、上記の組換えレ トロウイルス粒子調製物をヒトに投与する工程を包含する。本明細書中で使用さ れる、本発明によるベクター構築物から発現される遺伝子産物の「治療有効量」 は、患者が遺伝子産物で処置されなかった場合に観察される治療効果を超える程 度で患者に所望の治療効果を達成する量である。例えば、遺伝子産物が第VIII因 子である場合、「治療有効量」は治療有効的凝固を生じるために必要とされる第 VIII因子の量をいい、従って、一般に、各患者の担当医により決定される量であ る。しかし、約0.2ng/mL(「通常」レベルの約0.1%)以上の血清レベルが、治 療的に有効である。遺伝子産物が固有の生物学的活性を有するRNA分子(例えば 、アンチセンスRNAまたはリボザイム)である場合、「治療有効量」は、有害な 遺伝子産物(たいてい、タンパク質)の発現を減少させることにより、患者の状 態に臨床的に関連する変化を達成するに十分な量である。好ましい実施態様にお いて、固有の生物学的活性を有するRNA分子は、形質導入T細胞中で、標的化RNA 分子に対してモル過剰で発現される。異種および標的化RNAの発現レベルは、種 々のアッセイ(例えば、PCR分析)により測定され得る。 T細胞のエクスビボでの処理のための代表的な投与量は、一般に、約105〜101 2 感染性組換えレトロウイルス粒子で変化し、好ましくは、投与量は107〜1010感 染性粒子である。正確な投与量は、特定の臨床的指標に必要とされるT細胞数、 ならびに形質導入されかつ選択されたT細胞のさらなる拡大が必要であるか否か に依存する。従って、特定の状態についての正確な投与量は、容易に実験的に測 定され得る。 高力価のレトロウイルス調製物が送達される容量は、細胞培養物の培養培地容 量の10%を超えないことが好ましい。より好ましくは、高力価のレトロウイルス 調製物の容量は、全細胞培養物容量の、1%未満であり、なおさらに好ましくは 、0.1%未満であり、そしてなおさらに好ましくは0.01%未満である。さらに、 レトロウイルスは、培養において形質導入細胞を阻害するか、またはこの細胞に 毒性である物質を含まない培地(例えば、細胞培養培地の物質に類似する組成を 有する水溶液)に送達される。T細胞および分裂中でない細胞 本発明に従って、T細胞および分裂中でない(または「複製中でない」)細胞 、または通常の形質導入方法に耐性である他の細胞が、エクスビボ手順で組換え レトロウイルス粒子を用いて高い効率で形質導入される。このような細胞は、好 ましくは、動物細胞であり、特にヒト細胞である。患者に導入する際に、レトロ ウイルス粒子によって保有されるベクター構築物によりコードされる所望の遺伝 子産物(単数または複数)が、治療効果を達成する。患者に投与される形質導入 細胞は、好ましくは、同種細胞であり、特に好ましくは自己細胞である。 種々の技術が、最初に特定された系統の細胞(「系統が決定づけられている」 細胞)を除去することによって細胞を分離するために用いられ得る。モノクロー ナル抗体およびモノクローナル抗体フラグメントが、特定の細胞系統および/ま たは分化段階に関連するマーカーを同定するために特に有用である。抗体(また は抗体フラグメント)は固体支持体に結合されて粗分離を可能にし得る。用いら れるこの分離技術は、回収される画分の生存能を最大にするべきである。 実施例 以下の実施例は本発明をより完全に例示するために挙げられる。さらに、これ らの実施例は本発明の好ましい実施態様を提供するものであり、そして本発明の 範囲を制限することを意図しない。以下の実施例に記載される多くの手順または 適切な他の手順に関する標準的方法は、例えば、「Molecular Cloning」第2版 (Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1987)および「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubelら編、Greene Associates/Wiley In terscience,NY,1990)のような、広く再編成されている分子生物学のマニュアル 中に提供される。 実施例1 形質導入のためのT細胞の調製 ヒト白血球細胞株を20%ウシ胎児血清;ペニシリン/ストレプトマイシン;NE AAおよびL-gluを補充したRPMI培地中で増殖した。細胞を約5×105細胞/mlの密 度まで増殖し、そして1×105/mlに希釈した。細胞を、8μg/mlのポリブレンお よび示された感染多重度で添加されたベクターを含有する2ml容量で形質導入し た。4〜5日後、細胞をペレット化し、そしてPBS中で洗浄した。ルシフェラー ゼアッセイのために、細胞を溶解し、そして製造者(Tropix Inc.,Bedford,MA)の 説明書に従ってアッセイした。β-galベクター形質導入細胞をX-galアッセイ(No lanら、19XX)を用いて解析した。 A.高力価レトロウイルスベクターによるヒト白血球の形質導入 種々の白血球細胞株を異なる親和性のレトロウイルスベクターで機能的な形質 導入(すなわち、遺伝子発現)について試験した。試験したベクターは、イヌ(D A;DX;CFA)およびヒト起源(2X)の2つの異なるアンフォトロピックおよびキセノ トロピックプロデューサー細胞株由来のβ-galベクター(それぞれ[DA/CBβ gal (V);CFA/ND7(V);DX/ND7(V);2X/CBβ gal(V)])、ならびにヒト293 2-3細胞から 生成されたG-偽型CBβ-gal(V)(G-βgal)であった。アンフォおよびキセノベクタ ーを同力価(すべて1×108bfu/mlに希釈;moi=10)で試験し、一方でG-ベクター を10倍希釈より低い濃度(107bfu/ml;moi=1)(bfu=青色細胞形成単位およびmoi=感 染多重度)で使用した。各形質導入培養物中の青色細胞の頻度を以下に要約する 。 異なる親和性のベクターでの白血球細胞株のインビトロ形質導入 細胞株をまたDA/luci(V)(細菌性ルシフェラーゼ遺伝子をコードするベクター 調製物)で関連する遺伝子発現について試験した。この実験において、並行培養 物をMAウイルスでスパイクしてルシフェラーゼ発現の欠失がレセプター親和性の レベル(すなわち、ヘルパーウイルスが細胞に感染し、ルシフェラーゼの非常に 増加した発現を導くluci(V)の拡張が生じる)であるかどうかを確認した。培養 物をluci(V)(moi=5)およびMAヘルパーウイルス(moi=1)で形質導入した。培養物 へのヘルパーウイルスの添加は、大部分のタンパク質発現のレベルまたは細胞親 和性の増加のレベルのどちらにおいてもルシフェラーゼ発現プロフィールを変化 しなかった。 B.高力価レトロウイルスベクターを用いる初代細胞の形質導入 初代のマウス樹状細胞をluci(V)を用いて形質導入した。樹状細胞およびマク ロファージからなる脾臓「樹状細胞」画分をGM-CSFを用いて刺激し、そしてマウ ス脾臓B+Tリンパ球をcon Aを用いて刺激した。24時間後、β-gal(V)およびluci( V)のいずれかをmoi=10で添加した。結果を相対的な光の単位を用いて以下に示す 。 これらの結果は脾臓画分が高力価のアンフォトロピックレトロウイルスベクター により形質導入されたことを示す。 実施例2 レトロウイルスベクター骨格の調製 以下の実施例は、KT-1、KT-3B、KT-3Cと称される3つのレトロウイルスベクタ ー骨格の産生を記載する。ベクターKT-1は、KT-3Bにおいてはネオマイシン耐性 であり、一方KT-3Cはフレオマイシン耐性を付与する選択マーカーを欠損するこ とにおいて、KT-3BおよびKT-3Cと異なる。 Moloneyマウス白血病ウイルス(MoMLV)5'長末端反復(LTR)EcoRI-EcoRIフラグメ ント(N2ベクター由来のgag配列を包含する(Armentanoら、J.Vir.61:1647,1987; Eglitasら、Science 230:1395,1985)をプラスミドSK+(Stratagene,La Jolla,CA) に連結する。生じた構築物をN2R5と称する。N2R5構築物を部位特異的インビトロ 変異誘発により変異し、ATG開始コドンをgag発現を抑制するATTに変化させる。 この変異誘発されたフラグメントは200塩基対(bp)の長さであり、そしてPstI制 限部位により平滑化されている。PstI-PstI変異フラグメントをSK+プラスミドか ら精製し、プラスミドpUC31中のN2 MoMLV 5'LTRのPstI部位に挿入して非変異200 bpフラグメントと置き換える。プラスミドpUC31は、ポリリンカーのEcoRIとSacI 部位との間に挿入されたさらなる制限部位XhoI、BgIII、BssHIIおよびNcoIが存 在するpUC19(Stratagene,La Jolla,CA)由来である。この構築物をpUC31/N2R5gM と称する。 N2由来の1.0キロ塩基(Kb)MoMLV3'LTR EcoRI-EcoRIフラグメントをN2R3-と称さ れる構築物中に生じるプラスミドSK+へクローン化する。1.0Kb ClaI-Hindlllフ ラグメントをこの構築物から精製する。 ネオマイシン(neo)ホスホトランスフェラーゼ遺伝子の発現を駆動するSV40初 期プロモーターを含む、pAFVXMレトロウイルスベクター(Krieglerら、Cell 38:4 83,1984;St.Louisら、PNAS 85:3150,1988)由来のClaI-ClaI優性選択マーカー遺 伝子フラグメントを、SK+プラスミドへクローン化する。この構築物をSK+SV2-ne oと称する。1.3Kb ClaI-BstBI遺伝子フラグメントをSK+SV2-neoプラスミドから 精製する。 KT-3BまたはKT-1ベクターを目的の遺伝子を含むXhoI-ClaIフラグメント中の3 つの部分の連結により構築し、そして1.0Kb MoMLV3'LTR ClaI-HindIIIフラグメ ントをpUC31/N2R5gMプラスミドのXhoI-HindIII部位へ挿入する。これにより、KT -1骨格を有するように示されるベクターが得られる。次いで、pAFVXMレトロウイ ルスベクター由来の1.3Kb ClaI-BstBI neo遺伝子フラグメントをこのプラスミド のClaI部位へセンス方向で挿入してKT-3B骨格を有するように示されるベクター を産生する。 別の選択マーカー、フレオマイシン耐性(Mulsantら、Som.Cell and Mol.Gen., 14:243,1988,Cayla,Cedex,FRで市販されている)を用いてレトロウイルス骨格KT- 3Cを以下のように作製した。プラスミドpUT507(Mulsantら、上述)をNdeIで消化 し、そして末端をクレノウポリメラーゼIで平滑化した。次いで、サンプルを、H paIでさらに消化し、フラグメントの混合物にClaIリンカーを連結し、次いでCla Iで消化して過剰のClaIリンカーを除去する。RSV LTRおよびフレオマイシン耐性 遺伝子を保有する1.2Kb ClaIフラグメントを、アガロースゲル電気泳動により単 離し、続いてGene Clean(Bio101,San Diego,CA)を用いて精製する。このフラグ メントを1.3Kb ClaI-BstBIネオマイシン耐性フラグメントの代わりに用いてKT-3 C骨格を作製する。 実施例3 タンパク質をコードするレトロウイルスベクター構築物の調製 以下の実施例は、目的の、異なるヒト遺伝子をコードする種々のレトロウイル スベクター構築物の調製を記載する。より詳細には、(A)部ではE.coli由来のマ ーカー遺伝子βガラクトシダーゼをコードするベクター構築物の産生、(B)部で はヒトインターフェロン(hIFN)、(C)部ではヒトインターロイキン-2(hIL-2)をコ ードするレトロウイルスベクター構築物、および(D)部ではヒト第VIII因子をコ ードする2つのレトロウイルスベクター構築物の産生について記載する。第1の 第VIII因子構築物はタンパク質のBドメイン欠失形態をコードするが、第2の横 築物は全長第VIII因子をコードする。 A.β-galベクターの調製 pCBβ-galをIrusinら(1994)J.Virolに記載のように調製する。pND7を、第VIII 因子遺伝子の切り出し後にE.coliβ-galをpND5(下記参照)ベクターへ挿入する ことにより得る。 B.KT-rh γ-IFNの調製 ヒトγ-IFN遺伝子を得るために、マウスホモログをまず以下のようにクローン 化する:mγ-IFN cDNAを以下に本質的に記載するようにpUC1813のEcoRI部位にク ローン化する。簡潔に言えば、pUC1813(γ-IFNをコードする配列を含有する) をKayら(Nucleic Acids Research 15:2778,1987;およびGrayら、PNAS 80:5842,1 983)により本質的に記載されるように調製する。mγ-IFN cDNAをpUC1813のEcoRI 消化により回収し、そして単離したフラグメントをホスファターゼ処理したpSP7 3(Promega,Madison,WI)のEcoRI部位へクローン化する。この構築物をSP mγ-IFN と称する。cDNAの方向を適切な制限酵素消化およびDNA配列決定により確かめる 。センス方向において、cDNAの5'末端はpSP73ポリリンカーのXhoI部位に隣接し 、そして3'末端はClaI部位に隣接する。センス方向またはアンチセンス方向の いずれかにおいてmγ-IFN cDNAを含有するXhoI-ClaIフラグメントを、SP mγ-IF N構築物から回収し、そしてKT-3レトロウイルス骨格のXhoI-ClaI部位へクローン 化する。この構築物をKT mγ-IFNと称する。 1.PCRを用いるhγ-IFNをコードする配列の調製 (a)Jurkat細胞のPHA刺激 Jurkat細胞(T細胞株ATCC No.CRL8163)を、158.0mlの最終容量になるように、 5%ウシ胎児血清(FBS)を含有するRPMI増殖培地(Irvine Scientific,Santa Ana, CA)に、1×106細胞/mlの濃度で再懸濁する。フィトヘモアグルチニン(「PHA」 )(Curtis Mathes Scientific,Houston,TX)を最終濃度1%になるように懸濁液に 添加する。懸濁液を37℃で5%CO2中で一晩インキュベートする。細胞を翌日回 収し、そして3本の50.0mlの遠心管にアリコートする。3つのペレットを50mlの 1×リン酸緩衝化生理食塩水(PBS、145mM、pH7.0)と合わせ、そして1000 rpmで 5分間遠心分離する。上清をデカントし、そして細胞を50.0mlのPBSで洗浄する 。細胞をRNA単離のために回収する。 (b)RNA単離 PHA刺激されたJurkat細胞を22.0mlのグアニジン溶液(4M グアニジンチオシア ネート;20mM 酢酸ナトリウム(pH 5.2);0.1M ジチオスレイトール、0.5%サル コシル)中に再懸濁する。次いで、この細胞-グアニジン懸濁液を細胞膜を粉砕 するために、20ゲージ針に6回通過させる。次いで、CsCl溶液(5.7M CsCl、0.1M EDTA)を11.0mLの粉砕した細胞-グアニジン溶液で重層する。溶液を20℃で、SW2 8.1ローター(Beckman,Fullerton,CA)中で24時間28,000 rpmで遠心分離する。遠 心分離後、上清を慎重に吸引し、そして管をブロットして乾燥する。ペレットを グアニジン-HCl溶液(7.4M グアニジン-HCl;25mM Tris-HCl(pH7.5);5mM ジチオ スレイトール)中に再懸濁し、最終容量を500.0μlにする。この溶液を微量遠心 分離管に移す。12.5μlの濃縮氷酢酸(HAc)および250μlの100%エタノールを微 量遠心分離管に添加する。溶液を混合し、そして−20℃で数日間保存してRNAを 沈殿する。 保存後、溶液を14,000 rpm、4℃で20分間遠心分離する。次いでペレットを75 %エタノール中に再懸濁し、微量遠心分離機中で14,000 rpm、4℃で、10分間遠 心分離する。ペレットを真空下の遠心分離により乾燥し、そして300Lの脱イオン (DI)H2O中に再懸濁する。RNAの濃度および純度を260および280nmの光学密度を 測定することにより決定する。 (c)逆転写反応 使用直前に、5.01(3.4mg/mL)の精製Jurkat RNAを90℃で5分間熱処理し、次い で氷上に置く。10.0μlの10×PCR緩衝液(500mM KCl;200mM Tris-HCl(pH8.4);25m M MgCl2;1mg/mlウシ血清アルブミン(BSA));10μlの10.0mM dATP、10μlの10.0m M dGTP、10μlの10.0mM dCTP、10μlの10.0mM dTTP、2.5μlのRNasin(40,000 U/ ml,Promega;Madison,WI)および33.0μlのDI H2Oの溶液を熱処理したJurkat細胞R NAに添加する。この溶液に5.0μl(108nmol/mL)の(配列番号1)、および5.0μl (200,000 U/ml)MoMLV逆転写酵素(Bethesda Research Laboratories,EC 3.1.27.5 ,MD)を、微量遠心分離管中で混合し、そして室温で10分間インキュベートする。 室温でのインキュベーションに続いて、反応混合物を37℃で1時間インキュベー トし、次いで、95℃で5分間インキュベートする。次いで逆転写反応混合物をPC Rのための調製に備えて氷上に置く。 (d)PCR増幅 PCR反応混合物は100.0μlの逆転写反応物;356.01 DI H2O;40.0μl 10×PCR緩 衝液;1.0μl(137nmol/mL)V-OLI#5(配列番号2);0.5μl(320nmol/mL)V-OLI#6 (配列番号3)および2.5μl、5,000 U/ml、Taqポリメラーゼ(EC 2.7.7.7、Perk in-Elmer Cetus、CA)を含有する。100μlのこの混合物を5本の管それぞれにア リコートする。 このプライマーは停止コドンの下流のmγ-IFN cDNA 30塩基対の配列に相補的 である。 このプライマーはATG開始コドンで始まるmγ-IFN遺伝子の5'コード領域に相 補的である。このプライマーの5'末端はXhoI制限部位を含有する。 このプライマーはTAA停止コドンで終わるmγ-IFN遺伝子の3’コード領域に相 補的である。このプライマーの5'末端はClaI制限部位を含有する。 各チューブに100.0μlのミネラルオイルを重層し、そしてPCR機(Ericomp Twi n Block System,Ericomp,CA)内に置く。PCRプログラムは反応容器の温度を、ま ず95℃で1分間、次に67℃で2分間、そして最後に72℃で2分間に調節する。こ のサイクルを40回繰り返す。最後のサイクルは反応容器の温度をまず95℃で1分 間、次に67℃で2分間、そして最後に72℃で7分間に調節する。完了したPCR増 幅反応物を、PCR DNA単離に備えて4℃で1カ月間保存する。 (e)PCR DNAの単離 PCR増幅反応物から水相を1本の微量遠心分離管に移す。50μlの3M 酢酸ナト リウムおよび500.0μlのクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)を溶液に添 加する。この溶液をボルテックスし、次いで、14,000 rpmで室温で5分間遠心分 離する。上部の水相を新しい微量遠心分離管に移し、そして1.0mLの100%エタノ ールを添加する。この溶液を4.5時間、−20℃でインキュベートし、次いで、14, 000 rpmで20分間遠心分離する。上清をデカントし、そしてペレットを500.0μl の70%エタノールでリンスする。このペレットを真空下の遠心分離により乾燥す る。単離したhγ-IFN PCR DNAを10.0μlのDI H2O中に再懸濁する。 2.h-IFNレトロウイルスベクターの構築 (a)平滑末端hγ-IFN PCR DNAフラグメントの作製および単離 hγ-IFN PCR DNAをT4 DNAポリメラーゼを用いて平滑末端化する。詳細には、1 0.0μlのPCR増幅DNA;2.0μlの10×T4 DNAポリメラーゼ緩衝液(0.33M Tris-アセ テート(pH7.9)、0.66M 酢酸カリウム、0.10M 酢酸マグネシウム、5mM ジチオ スレイトール、1mg/mL ウシ血清アルブミン(BSA));1.0μlの2.5mM dNTP(等モル 濃度のdATP、dGTP、dTTPおよびdCTPを含有する混合物);7.0μlのDI H2O;1.0μl 、5000 U/mLのクレノウフラグメント(EC 2.7.7.7、New England Biolabs,MA);お よび1.0μl、3000 U/mlのT4 DNAポリメラーゼ(EC 2.7.7,New England Biolabs,M A)をともに混合し、そして37℃で15分間インキュベートする。次いで、反応混合 物を室温で40分間インキュベートし、そして続いて68℃で15分間インキュベート する。 平滑末端化hγ-IFNをアガロースゲル電気泳動により単離する。詳細には、2.0 μlのローディング色素(0.25%ブロモフェノールブルー;0.25%キシレンシアノ ール;および50%グリセロール)を反応混合物に添加し、そして4.0μlをエチジ ウムブロマイドを含有する1%アガロース/Tris-ホウ酸-EDTA(TBE)ゲルの各5 レーンにロードする。ゲルの電気泳動を100ボルトで1時間行う。hγ-IFNを含む 所望のDNAバンド(約500塩基対の長さ)を紫外線下で可視化する。 バンドをNA 45紙(Schleicher and Schuell,Keene,NH)上への電気泳動転移によ りゲルから取り除く。紙を68℃で40分間、400μlの高塩NET緩衝液(1M NaCl;0.1m M EDTA;および20mM Tris(pH8.0))中でインキュベートしてDNAを溶出する。NA 45 紙を溶液から取り出し、そして400.0μlのフェノール:クロロホルム:イソアミ ルアルコール(25:24:1)を添加する。溶液をボルテックスし、そして14,000rpmで 5分間遠心分離する。上部の水相を新しいチューブに移し、そして400.0μlのク ロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)を添加する。混合物をボルテックスし 、そして5分間遠心分離する。上部の水層を新しいチューブに移し(2回目)、 そして700.0μlの100%エタノールを添加する。チューブを−20℃で3日間イン キュベートする。インキュベーションの後、DNAを14,000 rpmで20分間遠心分離 することによりチューブから沈殿させる。上清をデカントし、そしてペレットを 500.0μlの70%エタノールでリンスする。平滑末端化hγ-IFN DNAを含有するこ のペレットを真空下の遠心分離により乾燥し、そして50.0μlのDI H2O中に再懸 濁する。 この単離した平滑末端化hγ-IFNDNAをポリヌクレオチドキナーゼを用いてリン 酸化する。詳細には、25.0μlの平滑末端化hγ-IFN DNA、3.0μlの10×キナー ゼ緩衝液(0.5M Tris-HCl(pH 7.6);0.1M MgCl2;50mM ジチオスレチイトール;1mM スペルミジン;1m MEDTA)、3.0μlの10mM ATP、および1.0μlのT4ポリヌクレオチ ドキナーゼ(10,000 U/ml,EC 2.7.1.78,New England Biolabs,MD)を混合し、そし て37℃で1時間45分インキュベートする。次いで、酵素を、68℃で30分間インキ ュベートすることにより熱失活させる。 (b)SK+ベクター中へのhγ-IFN PCR DNAの連結 SK+プラスミドをHincII制限エンドヌクレアーゼで消化し、そして下記のよう にアガロースゲル電気泳動により精製する。詳細には、5.9μl(1.7 mg/mL)SK+プ ラスミドDNA(Stratagene;San Diego,CA);4.0μl 10×ユニバーサル緩衝液(Strat agene,San Diego,CA);30.1μlのDI H2O、および4.0μl HincII,10,000 U/mL、 をチューブ内で混合し、そして37℃で7時間インキュベートする。インキュベー ション後、4.0μlのローディング色素を反応混合物に添加し、そして4.0μlのこ の溶液をエチジウムブロマイドを含有する1%アガロース/TBEゲルの各5レー ンに添加する。ゲルの電気泳動を105ボルトで2時間行う。HincII切断SK+プラス ミド(2958塩基対の長さ)を紫外線下で可視化する。消化したSK+プラスミドをゲ ル電気泳動により単離する。 プラスミドのHincII切断部位の脱リン酸化を仔ウシ腸アルカリホスファターゼ を用いて行う。詳細には、50.0μlの消化SK+プラスミド;5.0μlの1M Tris(pH 8. 0);2.0μlの5mM EDTA(pH 8.0);43.0μlのH2Oおよび2.0μlの1,000 U/mL,仔ウシ 腸ホスファターゼ(「CIP」)(Boehringer Mannheim,Indianapolis,IN)をチューブ 中で混合し、そして37℃で15分間インキュベートする。インキュベーション後、 2.0μlのCIPを添加する。そして、溶液を55℃で90分間インキュベートする。イ ンキュベート後、2.5μlの20%ドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」)、1.0μlの0.5 M EDTA(pH 8.0)、および0.5μl、20mg/mL、プロテイナーゼK(EC 3.4.21.14,Boe hringer Mannheim,Indianapolis,IN)を添加し、そしてこの溶液を55℃で2時間 インキュベートする。この溶液を室温に冷却し、そして110.0μlのフェノール: クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)を添加する。この混合物をボル テックスし、そして14,000 rpmで5分間遠心分離する。上部の水相を新しいチュ ーブに移し、そして200.0μlの100%エタノールを添加する。この混合物を70℃ で15分間インキュベートする。チューブを遠心分離し、そしてペレットを500.0 μlの70%エタノールでリンスする。次いで、ペレットを真空下の遠心分離で乾 燥した。脱リン酸化されたSK+プラスミドを40μlのDI H2O中に再懸濁する。 hγ-IFN PCR DNAをT4 DNAリガーゼを用いてSK+プラスミド中へ連結する。詳細 には、30.0μlの平滑末端化、リン酸化、hγ-IFN PCR DNA反応混合物、2.0μlの 脱リン酸化SK+プラスミドおよび1.0μlのT4 DNAリガーゼをチューブ内で合わせ 、そして16℃で一晩インキュベートする。DNAをミニプレップ手順を用いて単離 した。より詳細には、DH5a細菌株(Gibco BRL,Gaithersburg,MD)を15.0μlの連結 反応混合物で形質転換し、アンピシリンおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル -β-D-ガラクトシド(X-gal,Gold Biotechnology;St.Louis,MO)を含有するLuria- Bertaniアガープレート(LBプレート)上にプレートし、そして37℃で一晩インキ ュベートする。Sambrookら(Molecular Cloning,Cold Springs Harbor Press,198 9)により記載された手順を用いてDNAを白色細菌コロニーから単離する。hγ-IFN 遺伝子の存在をXhoI、ClaI、AvaII、DraI、およびSspIでの制限エンドヌクレア ーゼ切断により決定する。hγ-IFN遺伝子を含むプラスミドの予想されるエンド ヌクレアーゼ制限切断フラグメントサイズを表2に表す。単離したDNAプラスミ ドをSK hγ-IFNと称し、そしてレトロウイルスベクターの構築に用いる。 (c)レトロウイルスベクター中へのhγ-IFN遺伝子の連結 インターフェロン遺伝子を、XhoIおよびClaI制限エンドヌクレアーゼでの消化 によりSK hγ-IFNベクターから取り除く。hγ-IFN遺伝子を含有する生じたフラ グメントは約500bpの長さであり、そしてこれを1%アガロース/TBEゲル電気泳 動で単離する。次いで、XhoI-ClaI hγ-IFNフラグメントをKT-3レトロウイルス 骨格中へ連結する。この構築物をKT hγ-IFNと称する。hγ-IFNの構造および発 現の有無をKT hγ-IFN構築物でDH5a細菌株を形質転換することにより決定する。 詳細には、細菌を15.0μlの連結混合物で形質転換する。形質転換された細菌細 胞をアンピシリンを含有するLBプレート上にプレートする。このプレートを37℃ で一晩インキュベートし、そして細菌コロニーを選択する。DNAを上記(b)のよう に単離し、そしてXhoI、ClaI,DraI,NdeI、およびSspIで消化する。hγ-IFN遺 伝子を含有するプラスミドの予想されるエンドヌクレアーゼ制限切断フラグメン トサイズを表3に表す。 続くKT hγ-IFN(レトロウイルスベクター)の配列決定により、hγ-IFN遺伝 子内の1塩基対の欠失の存在が示された。この欠失を、多工程PCR手順を用いて 逆転させた。 i.配列選択 配列を、IBI Pustell配列解析プログラム(Int.Biotech,Inc.,New Haven, CT)から得る。 以下のhγ-IFNプライマー配列を使用する: このプライマーは、hγ-IFN遺伝子の上流7コドンに伸長する開始コドンATG領域 に相補的なセンス配列であり、そしてhγ-IFN 1bと称する。 このプライマーは、hγ-IFN遺伝子のコドン106〜120に相補的なアンチセンス配 列であり、そしてhγ-IFN Rep Bと称する。 このプライマーは、hγ-IFN遺伝子のコドン106〜120に相補的なセンス配列であ り、そしてhγ-IFN Rep Aと称する。 このプライマーは、終止コドンATT領域に相補的かつhγ-IFN遺伝子の上流7コド ンに伸長するアンチセンス配列であり、そしてhγ-IFN 3bと称する。 ii.最初のPCR 398.0μlのDI H2O中の1×106 KT hγ-IFNプラスミド分子;50μlの10×PCR緩 衝液(500 mM KClおよび200 mM Tris-HCl(pH8.4);25 mM MgCl2; 1.0 mg/mlBS A);5.0μlの2.5 mM dATP;5.0μlの2.5 mM dGTP;5.0μlの2.5 mM dCTP;5.0μ lの2.5 mM dTTP;12.0μlの18.6 nmol/mlのオリゴヌクレオチドhγ-IFN 1b;15. 0μlの24.6 nmol/mlのオリゴヌクレオチドhγ-IFN RepB;および2.5μlのTaqポ リメラーゼの溶液をマイクロ遠心チューブ中で混合し、そして50μlを10本のチ ューブにアリコートする。同様に、395.0μlのDI H2O中の1×106 KT hγ-IFNプ ラスミド分子;50.0μlの10×PCR緩衝液(500 mM KCl;200 mM Tris-HCl(pH8.4 );25 mM MgCl2; 1mg/ml BSA);5.0μlの2.5 mM dATP;5.0μlの2.5 mM dGTP ;5.0μlの2.5 mM dCTP;5.0μlの2.5 mM dTTP;13μlの23.4 nmol/mlのオリゴ ヌクレオチドhγ-IFN RepA;17.0μlの18.0 nmol/mlのオリゴヌクレオチドhγ-I FN 3b;および2.5μlのTaqポリメラーゼの溶液をマイクロ遠心チューブ中で混合 し、そして50.0μlを10本のチューブにアリコートする。この20本のチューブ をPCR機(Model 9600,Perkin Elmer Cetus; Los Angeles,CA)中に入れる。PC Rプログラムは、94℃で2分間の第1のサイクルにおいて、反応容器の温度を調 節する。次の35サイクルを、94℃で0.5分間、次いで55℃で0.5分間、そして最後 に72℃で1分間に調節する。最後のサイクルを72℃で10分間に調節する。このサ イクルプログラムをProgram 10と称する。 PCR増幅後、225.0μlの各反応チューブを25.0μlのローディング色素(0.25% ブロモフェノールブルー、0.25%キシレンシアノールおよび50%グリセロール、 アガロースゲルローディング色素)と混合し、そしてエチジウムブロミドを含有 する2%アガロースゲルのウェルにロードする。このゲルを約90 Vで1時間電気 泳動する。紫外光を使用して、DNAバンド分離を可視化する。2つのバンド(サ イズ250 bpの一方のフラグメントおよびサイズ150 bpの他方のフラグメント)を 、NA 45ペーパーへの電気泳動転移により単離する。沈澱後、2つのDNAペレット の各々を20.0 1のDI H2O中に再懸濁し、そしてさらなるPCR増幅のために調製す る。 iii.アニーリングおよび第2回目のPCR 20.0μlの150 bp PCR DNA;20.0μlの350 bp PCR DNA;161.5μlのDI H2O;25 .0μlの10×PCR緩衝液(500 mM KCl;200 mM Tris-HCl(pH 8.4);25 mM MgCl2 ; および1mg/ml BSA);2.5μlの2.5 mM dATP;2.5μlの2.5 mM dGTP;2.5μl の2.5 mM dCTP;2.5μlの2.5 mM dTTP;および1.25μlのTaqポリメラーゼの溶液 をマイクロ遠心チューブ中で混合し、そして47.3μlを5本のチューブにアリコ ートする。各々のチューブをPCR機(Model 9600,Perkin-Elmer-Cetus,CA)中 に入れる。PCRプログラムは、94℃で0.5分間の5サイクルの間に、反応容器の温 度を調節する。次サイクルを、55℃で1分間調節する。このサイクルの後、1.2 μlのhγ-IFN 1bおよび1.5μlのhγ-IFN 3bを反応混合物に添加する。次いで、 このチューブを、プログラム10を使用してPCR増幅する。この産物をrhγ-IFNと 称する。 iv.平滑末端化rhg-IFN PCR DNAフラグメントの作製および単離 PCR増幅したhγ-IFN DNAを、T4ポリメラーゼを使用して平滑末端化する。詳細 には、120.0μlのrhγ-IFN PCR溶液を、1.25μlの2.5mM dATP;1.25μlの2.5mMd GTP;1.25μlの2.5mM dCTP;1.25lの2.5mM dTTP;1lのT4 DNAポリメラーゼ;お よび1.0μlのクレノウフラグメントと混合する。この混合物を、室温で10分間イ ンキュベートする。インキュベーション後、13.0μlのアガロースゲルローディ ング色素を混合物に添加し、そしてこの溶液を1%アガロースゲル中にロードす る。このゲルを約90 Vで1時間電気泳動する。紫外光を使用して、DNAバンド化 を可視化する。上記のように、500 bpのバンドを、NA 45ペーパーへの電気泳動 転移により単離する。沈澱後、DNAペレットを12.0 lのDI H2O中に再懸濁する。 単離した500bpのフラグメントを、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて平滑 末端化する。詳細には、1.0 mgのこのフラグメントを、1.5μlの10×キナーゼ緩 衝液(0.5 mM Tris-HCl(pH7.6);0.1 mM MgCl2;50 mMジチオスレオトール; 1mMスペルミジン;1mM EDTA);1.5μlの10 mM ATP;および1.0μlのT4ポリヌ クレオチドキナーゼと混合し、そして37℃で30分間インキュベートする。 v.rh γ-IFN PCR DNAのSK+ベクター中への連結 rhγ-IFN PCR DNAを、SK+ベクター中に連結する。2.0μlのhγ-IFN PCR DNA- キナーゼ反応混合物;2.0μlのCIP処理したSK+ベクター;および1.0μlのT4 DNA リガーゼの溶液を、16℃で4時間インキュベートする。DH5a細菌を上記のように 形質転換する。 vi.h γ-IFN遺伝子のレトロウイルスベクター中への連結 hγ-IFN遺伝子のレトロウイルスベクター中への連結を、上記のように行う。 新たなベクターはKT hγ-IFNと称する。 C.KT-hIL-2 の調製 hIL-2のKT-3レトロウイルスベクター中へのクローン化のための方法は、hg-IF NのKT-3中へのクローン化のための手順と、異なるプライマーがhIL-2 DNA配列の 増幅のために必要とされる以外、本質的に同一である。以下のhIL-2 PCRプライ マー配列を使用する: このプライマーは、終止コドンの下流のhIL-2 cDNAの配列に相補的である。 このプライマーは、ATG開始コドンで開始する5'コード領域に相補的なhIL-2遺 伝子のセンス配列である。このプライマーの5'末端は、Xho I制限部位を含む。 このプライマーは、TAA終止コドンで終結する3'コード領域に相補的なhIL-2遺 伝子のアンチセンス配列である。このプライマーの5'末端は、Cla I制限部位を 含む。 D.第VIII因子ベクターの調製 以下は、第VIII因子をコードするいくつかのレトロウイルスベクターの構築の 記載である。完全長第VIII遺伝子のサイズ(7,056 bp)、レトロウイルスベクタ ーのパッケージングの拘束に起因して、そして形質導入された細胞についての選 択はエクスビボ造血幹細胞療法についての必要条件ではないので、選択マーカー 遺伝子を欠くレトロウイルス(例えば、KT-1)を用いる。 完全長第VIII因子をコードする遺伝子は、種々の供給源から得られ得る。1つ のこのような供給源は、プラスミドpCIS-F8(EP 0 260 148 A2、1993年3月3日 公開)である。これは、その発現がCMV主要即時初期(CMV MIE)プロモーターお よびエンハンサーの制御下にある完全長第VIII因子cDNAを含む。この第VIII因子 cDNAは、第VIII因子遺伝子由来の約80 bpの5'非翻訳配列および約500 bpの3'非 翻訳領域を含む。さらに、CMVプロモーターと第VIII因子配列との間に、CMVイン トロン配列、または「シス」エレメントが位置する。このシスエレメント(約28 0 bpにわたる)は、Ig可変領域イントロンにより供給される介在領域とともに、 免疫グロブリン遺伝子由来のスプライスアクセプターの約140 bp上流に、CMV主 要即時初期プロモーター由来のスプライスドナー部位を含む。 i.レトロウイルスベクターJW-2をコードするプラスミドの構築 完全長第VIII因子の発現のためのレトロウイルスベクターをコードするプラス ミドpJW-2を、pKT-1由来のKT-1骨格を用いて構築する。第VIII因子cDNAのpKT-1 中への方向性クローン化を容易にするために、唯一のXho I部位を、部位特異的 変異誘発によりNot I部位に変換する。次いで、得られたプラスミドベクターをN ot IおよびCla Iを用いて開裂する。pCIS-F8をCla IおよびEag I(これについて は、2つの部位が存在する)で完全に消化して、完全長第VIII因子をコードする フラグメントを放出させる。次いで、このフラグメントをNot I/Cla I制限した ベクター中に連結して、pJW-2と称するプラスミドを生成させる。 ii.レトロウイルスベクターND-5をコードするプラスミドの構築 第VIII因子cDNAの3'非翻訳領域の約80%(約370 bp)の短縮をコードするプラ スミドベクター(pND-5と称する)を、以下のようにpKT-1ベクター中に構築する :pJW-2について記載したように、用いるpKT-1ベクターは、Not Iの制限部位に より置換されたそのXho I制限部位を有する。第VIII因子インサートを、pCIS-F8 をCla IおよびXba I(後者の酵素は、第VIII因子の終止コドンの5'を切断する) で消化することにより生じさせる。次いで、第VIII因子遺伝子の3'コード領域以 外の全てを含む約7kbのフラグメントを精製する。pCIS-F8をまた、Xba Iおよび Pst Iで消化して、この遺伝子の終止コドンを含む121 bpのフラグメントを放出 させる。このフラグメントも精製し、次いで第VIII因子遺伝子の残りをコー スミド(Stratagene,San Diego,CA)と三叉路連結(three way ligation)し て、pND-2と称するプラスミドを生じさせる。 次いで、pND-2中の唯一のSma I部位を、希釈された条件下でCla Iリンカー(N ew England Biolabs,Beverly,MA)をSma I消化により作製された平滑末端に連 結することにより、Cla I部位に変化させる。再環状化および連結の後、2つのC la I部位を含むプラスミドを同定し、そしてこれをpND-3と称する。 pND-3中の第VIII因子配列(Cla I部位により境界付けられ、そして3'非翻訳領 域の多くの短縮を有する完全長遺伝子を含む)を、以下のように、pJW-1[Xho I 部位での切断、クレノウでの平滑化、およびNot Iリンカー(New England Biola bs)の挿入によるpKT-1誘導体](これは、5.2 kb Not I/Cla Iフラグメントを生 じる)のNot I/Cla I消化物に由来するプラスミド骨格中にクローン化する。pCI S-F8をEag IおよびEco RVで切断し、そして得られる約4.2 kbのフラグメント( 完全長第VIII因子遺伝子の5'部分をコードする)を単離する。pND-3をEco RVお よびCla Iで消化し、そして3.1 kbのフラグメントを単離する。次いで、第VIII 遺伝子の部分を含む2つのフラグメントをNot I/Cla I消化したベクター骨格中 に連結して、pND-5と称するプラスミドを生じさせる。 iii.Bドメイン欠失第VIII因子ベクターの構築 B欠失FVIIIのための前駆体DNAを、Miles Laboratoryから得る。この発現ベク ターをp25Dと称し、そして上記のpCISF8と正確に同一の骨格を有する。p25D中の FVIII8 cDNAの3'におけるHpa I部位を、オリゴリンカーによりCla Iに改変する 。Acc I〜Cla Iフラグメントを改変p25Dプラスミドから切り出す。このフラグメ ントは、Bドメイン欠失にわたり、そしてcDNAの3'側の2/3全体を含む。Acc I〜 Cla Iフラグメントを上記のpJW-2から除去し、そして直前で記載した改変Bドメ イン欠失フラグメントで置換する。この構築物をB-del-1と称する。 当業者が理解するように、レトロウイルスベクターをコードするプラスミド( 例えば、上記したプラスミド)の構築後、次いで、このようなプラスミドを種々 の細胞株(それから感染性組換えレトロウイルスが産生され得る)の生成におい て使用し得る。 実施例4 パッケージング細胞産生 A.MLV 構造遺伝子発現ベクター MLVプロウイルスベクターDNAとパッケージング細胞株(「PCL」)の構造遺伝 子との間の遺伝的相互作用により生成される複製可能ウイルスの可能性を減少さ せるために、別々の発現ベクター(各々がウイルスLTRを欠失している)を生成 して、gag/pol遺伝子およびenv遺伝子を独立して発現させた。MLVベクターとの 相同組換えおよび生じる複製可能ウイルスの生成の可能性をさらに減少させるた めに、タンパク質コード配列以外の最少の配列を使用した。宿主細胞において高 レベルのMLV構造タンパク質を発現させるために、強力な転写プロモーター(CMV 初期プロモーターおよびAd5主要後期プロモーター)を利用した。MoMLV gag/pol 発現ベクターpSCV10の構築の例は以下のとおりである: 1.ヒトサイトメガロウイルス(CMV)初期転写プロモーターを含む0.7 Kb Hi nCII/XmaIIIフラグメント(Boshartら、Cell 41:521,1985)を単離した。 2.gag/polコード領域の全体を含むMoMLVプロウイルスプラスミドMLV-K(Mil lerら、Mol.Cell Biol.5:531,1985)由来の5.3 Kb PstI(部分)/ScaIフラグ メントを単離した。 3.SV40後期転写終結シグナルを含むSV40 DNA(残基2717〜2363)由来の0.35 Kb DraIフラグメントを単離した。 4.リンカーおよび他の標準的組換えDNA技術を使用して、CMVプロモーター-M oMLV gag/pol-SV40終結シグナルをbluescriptベクターSK+(Stratagene,San Di ego,CA)中に連結した。 MLVキセノトロピックエンベロープ発現ベクターの構築の例は以下のとおりで ある。 1.クローンNZB9-1(O'Neilら、J.Virol.53:100,1985)から得たキセノト ロピックエンベロープのコード領域を含む2.2 Kb NaeI/NheIフラグメントを単離 した。 2.リンカーおよび他の標準的組換えDNA技術を使用して、gag/pol発現につい て上記したCMV初期プロモーターおよびSV40後期終結シグナル(pSCV10)を、CMV プロモーター-キセノ(xeno)env-終結シグナルの順で連結した。 B.宿主細胞選択 宿主細胞株を、薬剤耐性レトロウイルスベクターAαN2(Armentanoら、J.Vir . 61:1647,1987;およびEglitasら、Science 230:1395,1985)を効率的に(高 力価)レスキューするそれらの能力について、複製可能レトロウイルスを用いて gag/polおよびenv構造遺伝子を産生して(「MA」ウイルス)、スクリーニングし た。力価を、コンフルエントな単層から、培地交換の16時間後に、濾過した上清 (0.45μmフィルター)を6cm組織培養プレート上の5×104 NIH 3T3 TK-細胞に 、4μg/mlのポリブレンの存在下で添加し、次いでG418中で選択することにより 測定した。非マウス細胞株の中で、高力価でMoMLVベースのベクターをパッケー ジングする能力を示したのは、細胞株CF2(イヌ)、D17(イヌ)、293(ヒト) 、およびHT1080(ヒト)であった。これらの細胞株はパッケージングおよびプロ デューサー細胞株の産生のために好ましいが、多くの他の細胞がこのような手段 により試験および選択され得る。 C.パッケージング細胞株の生成 (i) gag/pol中間体の調製 PCL産生のためのgag/pol中間体の生成の例として、D17細胞(ATCC番号CCL-183 )、293細胞(ATCC番号1573)、およびHT1080細胞(ATCC番号CCL 121)を、1μ gのメトトレキセート耐性ベクターpFR400(Grahamおよびvan der Eb、Virology 52:456,1973)、および10μgのMoMLV gag/pol発現ベクターpSCV10(上記)を用 いて、リン酸カルシウム共沈(D17およびHT1080、Grahamおよびvan der Eb、前 出を参照のこと)、またはリポフェクション(293、Felgnerら、Proc.Natl.Ac ad.Sci.USA 84:7413,1987を参照のこと)により、同時トランスフェクトした 。薬剤ジピリミドールおよびメトトレキセートの存在下でのトランスフェクトさ れた細胞についての選択後、個々の薬剤耐性細胞コロニーを拡大し、そして細胞 外逆転写酵素(RT)活性(Goffら、J.Virol.38:239,1981より改変)、および 抗p30抗体(ヤギ抗血清#77S000087、National Cancer Instisuteから)を用いる ウエスタンブロットによる細胞内p30gagにより、MoMLV gag/pol発現について分 析した。この方法により、表4に示すように、パッケージング細胞株PA317のレ ベルに比較して10〜50倍高いレベルの両方のタンパク質を発現する、各細胞タイ プの個々の細胞クローンが同定された。 これらのタンパク質の生物学的活性を、アンフォトロピックエンベープおよび 薬剤G418に対する耐性を与えるNeo+マーカーの両方を発現するレトロウイルスベ クターLARNLを導入することにより試験した。全ての場合において、細胞株中に おけるgag/polとベクターからのenvとの同時発現は、G418耐性の3T3細胞への無 細胞移入(力価)により測定したところ、ベクターの効率的なパッケージングを 可能にした。力価を、コンフルエントな単層から、培地交換の16時間後に、濾過 した上清(0.45μmフィルター)を6cm組織培養プレート上の5×104 NIH353 TK+ 細胞に、4μg/mlのポリブレンの存在下で添加し、次いでG418中で選択するこ とにより測定した。重要なことに、細胞株由来のベクター力価は、p30gagのレベ ルと相関した(表4)。envのレベルは各クローンにおいて同一であるはずであ り、そしてPA317において見出されるレベルに匹敵するので(データは示さず) 、 このことは力価がこれらの細胞(PA317を含む)中におけるより低いレベルのgag /polにより制限されたことを示す。力価は、RTのレベルよりもp30gagのレベルに より密接に相関した。 (ii) gag/pol株のキセノトロピックパッケージング細胞株への変換 キセノトロピックPCLの生成の例として、D17(4-15)およびHT1080(SCV21) についてのgag/pol過剰発現体(over-expressor)を、1μgのフレオマイシン耐 性ベクターpUT507(SCV21について)、またはハイグロマイシンB耐性マーカーp Y3(4-15について、BlochlingerおよびDiggelmann,Mol.Cell Biol.4:2929,1 984)のいずれか、および10μgのキセノトロピックエンベロープ発現ベクターpC MVxeno(上記)を使用した以外は、上記したと同一の技術により同時トランスフ ェクトした。それぞれフレオマイシンまたはハイグロマイシンの存在下でのトラ ンスフェクトされた細胞についての選択後、個々の薬剤耐性細胞コロニーを拡大 し、そして特異的抗血清を用いるウエスタンブロットによりMLV p30gagおよびgp 75envタンパク質の細胞内発現について分析した。比較的高いレベルのgag/polお よびキセノ(xeno)envの両方を発現するクローンを同定した。 多数のこれらのキセノトロピックパッケージング細胞株を、レトロウイルスベ クターをパッケージングするそれらの能力について、レトロウイルスベクターの 導入後の力価を測定することにより、試験した。結果を以下の表5に示す。 トランスフェクションと対照して、感染により、レトロウイルスベクターをパ ッケージング細胞株中に導入した場合に、最高の力価が得られる(Millerら、So mat.Cell Mol.Genet.,12:175,1986)。しかし、本明細書中に記載のキセノ トロピックパッケージング細胞株は、組換えキセノトロピックレトロウイルス粒 子により感染についてブロックされる。なぜなら、この細胞は、キセノトロピッ クenvタンパク質を発現するからである(すなわち、「ウイルス干渉」)。「ウ イルス干渉」(それにより、キセノトロピックエンベロープタンパク質を発現す る細胞株が、そうでなければそれらの細胞タイプに感染し得るキセノトロピック MLVベクターによる後の感染をブロックする)の問題を克服するために、他のウ イルスエンベロープ(例えば、キセノトロピックレセプター以外の細胞レセプタ ーに結合するVSV-gタンパク質(Florikiewiczら、J.Cell Bio.97:1381,1983 ;およびRomanら、Exp.Cell Res.175:376,1988))を含有するベクター粒子 が、以下の方法で生成され得る。パッケージングされるべきレトロウイルスベク ター構築物をコードするプラスミドDNA 10μgを、それからVSV-gタンパク質が発 現されるDNA 10μgと、高レベルのgag/polを発現する細胞株中に同時トランスフ ェクトする。得られるベクター(VSV-gタンパク質を含む)を、同時トランスフ ェクトされた細胞において一時的に産生させる。トランスフェクションの2日後 、無細胞上清を期待されるキセノトロピックパッケージング細胞株(gag、pol、 およびenvを発現する)に添加する。次いで、無細胞上清をコンフルエントな単 層から採集し、そしてPCRにより力価測定する。最高の力価を産生する細胞クロ ーンを、パッケージング細胞株として選択する。この手順は、時々「Gホッピン グ(G-hopping)」と呼ばれる。 VII.別のウイルスベクターパッケージング技術 いくつかのさらなる別の系を使用して、本発明によるベクター構築物を有する 組換えレトロウイルス粒子を産生し得る。これらの系のいくつかは、昆虫ウイル スであるバキュロウイルス、および哺乳動物ウイルスであるワクシニアおよびア デノウイルスが、それに対応する遺伝子がクローン化されている任意の所定のタ ンパク質を大量に作製するように適合されているという事実を利用する。例えば 、Smithら(Mol.Cell.Biol.3:12,1983);Picciniら(Meth.Enzymology,1 53:545,1987);およびMansourら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:1359,198 5)を参照のこと。適切な遺伝子の挿入により、これらおよび類似のウイルスベ クターを用いて、組織培養細胞においてタンパク質を産生し得、従って、レトロ ウイルスベクター粒子を作製するように適合させ得る。 アデノウイルスベクターは核の複製中のウイルスに由来し、そして欠損性であ り得る。インビトロ構築(Ballayら、EMBO J.4:3861,1985)または細胞中組換 え(Thummelら、J.Mol.Appl.Genetics 1:435,1982)のいずれかにより、遺 伝子をベクター中に挿入し、そしてこれを用いて哺乳動物細胞においてタンパク 質を発現させ得る。 1つの好ましい方法は、(1)gag/pol、(2)env、(3)改変ウイルスベクター構築 物を駆動するアデノウイルス主要後期プロモーター(MLP)を使用してプラスミ ドを構築することである。5'LTRのU3領域(これはウイルスベクタープロモータ ーを含む)を、他のプロモーター配列で置換し得るので(例えば、Hartman,Nuc l.Acids Res.16:9345,1988を参照のこと)、改変ウイルスベクター構築物が 可能である。この部分は、3'LTRからU3での1回の逆転写の後に置換される。 次いで、これらのプラスミドを使用して、アデノウイルスゲノムをインビトロ で作製し得る(Ballyら、前出)。次いで、これを293細胞(アデノウイルスE1A タンパク質を作製するヒト細胞株)(このためにアデノウイルスベクターは欠損 性である)中にトランスフェクトして、欠損アデノウイルスベクター中に別々に 有されるgag/pol、envおよびレトロウイルスベクターの純粋なストックを得る。 このようなベクターの力価は代表的には107〜1011/mlであるので、これらのスト ックを使用して、組織培養細胞を同時に高多重度で感染し得る。次いで、この細 胞を、レトロウイルスタンパク質およびレトロウイルスベクターゲノムを高レベ ルで産生するようにプログラムする。アデノウイルスベクターは欠損性であるの で、大量の直接的細胞溶解は生じず、そしてレトロウイルスベクターは細胞上清 から回収され得る。 無関係のレトロウイルスベクター(例えば、RSV、MMTVまたはHIV)由来のウイ ルスベクターのような他のウイルスベクターを同一の方法で使用して、初代細胞 からベクターを生成させ得る。1つの実施態様において、これらのアデノウイル スベクターを初代細胞とともに使用して、初代細胞からレトロウイルスベクター 調製物を生じさせる。 組換えキセノトロピックレトロウイルス粒子を作製するための別の代替は、イ ンビトロパッケージング系である。例えば、このような系は、以下の成分を用い 得る: 1.Smithら、前出に記載の方法と同じ方法でバキュロウイルス系において、 または他のタンパク質産生系(例えば、酵母またはE.coli)において作製され たgag/polおよびenvタンパク質; 2.T7またはSP6転写系あるいは他の適切なインビトロRNA生成系(例えば、Fl amantおよびSorge,J.Virol.62:1827,1988)を使用して作製されたベクター 構築物; 3.(2)におけるように作製された、または酵母または哺乳動物細胞から精製 されたtRNA; 4.リポソーム(好ましくは、包埋されたenvタンパク質を有する);および 5.envプロセッシング、および任意のまたは他の必要な細胞由来機能を提供 するための、細胞抽出物または精製された成分(代表的には、マウス細胞由来) 。 この手順において、(1)、(2)、および(3)の成分を混合する。次いで、envタン パク質、細胞抽出物およびプレリポソーム混合物(適切な溶媒中の)を添加する 。好ましい実施態様において、得られるリポソーム包埋envを(1)、(2)、および( 3)の混合物に添加する前に、envタンパク質をリポソーム中に包埋する。この混 合物を処理して(例えば、超音波処理、温度操作、またはロータリー透析により )、Gould-Fogeriteら、Anal.Biochem.148:15,1985に記載のような、薬品の リポソーム包膜のための方法に類似の方法で、新生(nascent)ウイルス粒子を 脂質+包埋されたenvタンパク質で包膜させる。この手順は、病原性レトロウイ ルスまたは複製可能レトロウイルスでの汚染なしの、高力価の複製不能組換えレ トロウイルスの産生を可能にする。 D.複製可能レトロウイルス(RCR)の検出 複製可能レトロウイルスを生成するための上記のパッケージング細胞の性質は 、種々の方法によって厳密に試験され得る。その内の2つを以下に記載する。 i.拡大S+L-アッセイ 拡大S+L-アッセイは、複製可能な感染性ウイルスが目的の細胞株の上清中に存 在するかどうかを決定する。このアッセイは、感染性レトロウイルスが指示細胞 株MiCl1(ATCC受託番号第CCL 64.1号)上にフォーカスを生成するという経験的 観察に基づいている。MiCl1細胞株はマウス肉腫ウイルス(MSV)を用いる形質導 入によってMv1Luミンク細胞株(ATCC受託番号第CCL 64号)から誘導される。こ れは、複製欠損マウス肉腫プロウイルスを含有する(S+)が、複製可能マウス白 血病プロウイルスを含有しない(L-)非プロデューサー非形質転換復帰変異クロ ーンである。複製可能レトロウイルスによるMiCl1細胞の感染は、MSVゲノムを「 活性化」してフォーカス形成をもたらす「形質転換」を誘発する。 複製可能レトロウイルスの存在について試験すべき細胞株から上清を取り出し 、そして0.45μmフィルターに通してすべての細胞を除去する。1日目に、Mv1Lu 細胞を、2mlのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、10%FBS、および8μg/m L ポリブレン中で1.0×105細胞/ウェル(試験されるべき1サンプルあたり1ウェ ル)で6ウェルプレートに播種する。ポジティブおよびネガティブコントロール のために、Mv1Lu細胞を同じ方法で別の6ウェルプレートにプレーティングする 。細胞を37℃、10%CO2で一晩インキュベートする。2日目に、1.0mLの試験上清 をMv1Lu細胞に加える。ネガティブコントロールプレートを、1.0mLの培地ととも にインキュベートする。ポジティブコントロールは、MAウイルス(Millerら,Mo lec.and Cell Biol.5:431,1985)の3種類の希釈(それぞれ1.0mL培地中200フ ォーカス形成単位(ffu)、20ffu、および2ffu)からなり、これをポジティブコ ントロールウェル中の細胞に加える。細胞を一晩インキュベートする。3日目に 、培地を吸引し、そして3.0mLの新鮮なDMEMおよび10%FBSを細胞に加える。細胞 をコンフルエントまで増殖させ、そして6日目および10日目に1:10に分割して 、いずれの複製可能レトロウイルスをも増幅する。13日目に、Mv1Lu細胞上の培 地を吸引し、そして2.0mLのDMEMおよび10%FBSを細胞に加える。さらに、MiCl1 細胞を2.0mLのDMEM、10%FBS、および8μg/mLポリブレン中で1.0×105細胞/ウ ェルで播種する。14日目に、Mv1Lu細胞由来の上清をMiCl1細胞の対応するウェル に移し、そして37℃、10%CO2で一晩インキュベートする。15日目に、培地を吸 引し、そして3.0mLの新鮮なDMEMおよび10%FBSを細胞に加える。21日目に、細胞 の単層上のフォーカス形成(単層を覆い、かつ付着したままの密集した屈折性細 胞として現れる)について細胞を調べる。フォーカスがMiCl1細胞上に現れれば 、その試験物は複製可能レトロウイルスで汚染されていると決定される。 ii.プロデューサー株の同時培養およびMdHマーカーレスキューアッセイ レトロウイルス粒子を産生する細胞株におけるRCRの存在を試験するための別 の方法として、プロデューサー細胞を同数のMus dunni細胞(NIH NIAID Bethesd a,MD)とともに同時培養する。0日目に、5.0×105のMus dunni細胞を5.0×105 のプロデューサー細胞と混合し、そしてその混合物を10cmプレート(10mLの標準 培養培地/プレート、4μg/mLポリブレン)中に播種することによって、小規模 の同時培養を行なう。プロデューサー細胞株を効果的に希釈除去(dilute out)し 、そしてRCRの最大増幅を提供するために、3〜4日毎に培養物を1:10の比率で 分 割し、そして5.0×105のMus dunni細胞を各培養プレートに加える。14日目に、 培養上清を収集し、0.45μmのセルロース-アセテートフィルターに通し、そして MdHマーカーレスキューアッセイで試験する。1.0×108のMus dunni細胞と1.0×1 08のプロデューサー細胞との混合物を合計20のT-150フラスコ(30mLの標準培養 培地/フラスコ、4μg/mLポリブレン)に播種することによって、大規模の同時培 養を行なう。培養物を、3、6、および13日目に1:10の比率で、そして9日目 に1:20の比率で分割する。15日目に、最終上清を収集し、濾過し、そしてそれ ぞれの一部をMdHマーカーレスキューアッセイで試験する。 MdHマーカーレスキュー細胞株を、LHL(ハイグロマイシンB耐性遺伝子をコー ドするレトロウイルスベクター)(Palmerら,Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA,8 4:1055,1987)で形質導入されたMus dunni細胞のプールからクローン化する。こ のレトロウイルスベクターを、RCRによる細胞の感染時に、MdH細胞からレスキュ ーし得る。4μg/mLポリブレンを含む標準培養培地(10%FBS、1% 200mM L-グ ルタミン、1%非必須アミノ酸を含むDMEM)2mL中に1×105のMdH細胞を含む6 ウェルプレートのウェルに1mLの試験サンプルを加える。24時間後に、培地をポ リブレンを含まない標準培養培地で置換する。2日後、MdH培養上清の全容量を0 .45μmのセルロース-アセテートフィルターに通し、そしてポリブレンを含む標 準培養培地2mL中の5.0×104のMus dunni標的細胞を含む6ウェルプレートのウェ ルに移す。24時間後、上清を250μg/mLのハイグロマイシンBを含む標準培養培 地で置換し、そしてその後2日目および5日目に、200μg/mLのハイグロマイシ ンBを含む培地で置換する。ハイグロマイシンBに耐性なコロニーが現れ、そし て選択後9日目に、0.2%クーマシーブルーで染色することによってそれらを可 視化する。 実施例5 組換えレトロウイルス粒子の産生 上記実施例 に記載の代表的な例である、ヒトキセノトロピックおよびイヌ アンフォトロピックパッケージング細胞株HXおよびDAにそれぞれ由来の本発明の ベクター構築物を保有する組換えレトロウイルス粒子の産生を以下に記載する。 A.パッケージング細胞株HXおよびDAの一過性プラスミドDNAトランスフェクシ ョン 1日目に、パッケージング細胞株HXまたはDAを、DMEMおよび10%ウシ胎児血清 (FBS)を有する10cm組織培養ディッシュに5.0×105細胞で播種する。2日目に 、トランスフェクションの4時間前に、培地を5.0mLの新鮮な培地に置換する。4 0.0μlの2.5M CaCl2、パッケージングされるべきベクターをコードする10μgの プラスミド、および脱イオンH2Oを混合して総容量を400μlにすることによって 、標準的なリン酸カルシウム-DNA共沈を行なう。次いで、DNA-CaCl2溶液を、一 定に攪拌しながら400μlの沈澱緩衝液(50mM HEPES-NaOH,pH7.1; 0.25M NaCl, および 1.5mM Na2HPO4-NaH2PO4)に滴下する。これらの混合物を室温で10分間イ ンキュベートする。得られた細かい沈殿物を細胞の異なる培養ディッシュに加え る。細胞をDNA沈澱物とともに37℃で一晩インキュベートする。3日目に、培地 を吸引し、そして新鮮な培地を加える。4日目に上清を取り出し、0.45μmのフ ィルターに通し、そして−80℃で保存する。 B.パッケージング細胞株形質導入 1日目に、DAパッケージング細胞を、2mLのDMEMおよび10%FBS、4μg/mLポ リブレン(Sigma,St.Louis,MO)中に1.0×105細胞/3cm組織培養ディッシュ で播種する。2日目に、3.0mL、1.0mL、および0.2mLの所望のベクターを保有す るVSV-g偽型レトロウイルス粒子を含有する新たに採集した上清をそれぞれHX細 胞に加える。細胞を37℃で一晩インキュベートする。3日目に、細胞をプレート から取り出し、その細胞懸濁液を計数し、その細胞懸濁液を10細胞/mLに希釈し 、そして96ウェルプレート(Corning,Corning,NY)の各ウェルに0.1mL(1細胞 /ウェル)を加えることによる限界希釈によって、細胞のプールをクローン化す る。細胞を37℃、10%CO2で14日間インキュベートする。所望の組換えキセノト ロピックレトロウイルスを産生するいくつかのクローンを選択し、そして24ウェ ルプレート、6ウェルプレート、そして最終的に10cmプレートまで拡大し、この 時点 で、それらのクローンを適切なレトロウイルスベクターの発現についてアッセイ し、そして上清を集め、そしてレトロウイルス力価についてアッセイする。 パッケージング細胞株DAは、Gホッピングで作製した組換えレトロウイルスベ クターを用いて同様に形質導入され得る。 上記の手順を用いて、培養物中に1×106cfu/mL以上の力価を有する組換えレ トロウイルスベクターを産生するDAおよびHX細胞株を誘導し得る。C.力価アッセイ ベクター調製物の適切な希釈物を用いて、通常のベクター力価を、HD1080のよ うな標的細胞の形質導入、続く抗生物質選択、および生存コロニーの計数(WO 9 1/02805)によって、決定した。しかし、所望のベクター構築物を保有する組換 えキセノトロピックレトロウイルスベクターは、選択マーカーをコードする遺伝 子を含まない場合がある(ベクター構築物が、目的の大きな遺伝子(例えば、全 長第VIII因子)をコードする場合、薬物耐性コロニーの選択に基づく力価アッセ イ以外の力価アッセイを必要とする場合のように)。このために、抗体アッセイ およびPCRアッセイ(後者は、以下に記載される)を使用し、レトロウイルスベ クター力価(つまり、本発明のレトロウイルスベクターを含む感染性粒子の数) を決定し得る。選択マーカーを欠くベクターの文脈において、このようなPCRア ッセイを必要とし得るが、このようなアッセイは、所定の任意のベクターについ て使用され得ることを理解する。 本発明のレトロウイルスベクターに独特な配列を増幅するためのPCRの使用の ために、種々のプライマーを必要とする。このようなプライマーは、当業者によ り容易に設計され得、そして使用されるレトロウイルスベクター骨格およびその 成分、増幅されることが望ましい設計された特定の領域(単数または複数)など に依存する。特定のプライマー対の代表的な例は、LTR配列、パッケージングシ グナル配列、またはレトロウイルス骨格の他の領域に特異的なプライマー対を包 含し、そしてベクター中の目的の遺伝子に特異的なプライマーもまた包含する。 このようなPCR力価測定アッセイの使用におけるさらなる利点は、ゲノム再配列 などをアッセイする能力を包含する。 本発明の実施において、PCR力価測定アッセイを、回収前の少なくとも16時間 の6ウエルプレートにおける、目的の遺伝子の発現を指向し得るレトロウイルス ベクターを形質導入した既知の数(代表的には、1×105個の細胞)のHT1080細 胞の増殖により実施する。これらの形質導入に用いたレトロウイルスベクターは 、好ましくは、細胞培養上清から得られる。プレートにつき1つのウェルを細胞 計数のために指定する。他のウェル由来の細胞を、溶解し、そしてそれらの内容 物を単離する。血液用のQIAmp Blood Kitおよび細胞培養PCR(QIAGEN,Inc.,Chat sworth,CA)を用いてDNAを調製する。DNAを、5×106細胞等価物/mLに再懸濁す る。ここで、1つの細胞等価物は、1つの細胞のDNA含有量に等しい。 力価を算出するために、形質導入していないHT1080細胞(ネガティブコントロ ール)から単離されたDNA、および公知のベクターを用いて形質導入し、そして 細胞ゲノム当たりそのベクターの1つのコピーを有するHT1080細胞(ポジティブ コントロール)(例えば、選択マーカー(例えば、ネオマイシン耐性)をコード するレトロウイルスベクターを用いて形質導入されたパッケージング細胞株から 調製され得る)を用いて、標準曲線を作成する。ポジティブコントロールおよび ネガティブコントロールの両方のために、DNAを、5×106細胞等価物/mLに再懸 濁する。DNAの全量を一定に保ちながら、異なる量のポジティブおよびネガティ ブコントロールDNAを組み合わせることにより、標準曲線を作成し、そしてレト ロウイルスベクターの特定の領域に特異的なプライマーを用いるPCRによってそ れらから特定の配列を増幅する。標準曲線を作成するための混合物の代表的な群 は: である。各チューブからの5.0μLを、8個の反応チューブの1つに入れ(2連を また調製する)、残りを-20℃で保存する。各サンプルDNA調製物からの5.0μLを 、それら自身の反応チューブに2連で入れる。次いで、PCR反応(全量50μL)を 、チューブあたり試験されるべき以下の成分を含む45.0μLの反応混合物を添加 することにより開始する:24.5μLの水、5μLの10×反応PCR緩衝液、4μLの25 mM MgCl2、4μLのdNTP(各2.5mMのdATP、dGTP、dCTP、およびdTTPを含有する) 、5μLのプライマー混合物(100ngまたは各プライマー)、0.25μLのTaqStart モノクローナル抗体(Clontech Laboratories,Inc.,Palo Alto,CA)、1.00μLの TaqStart緩衝液(Clontech Labs,Inc.)、および0.25μLのAmpliTaq DNAポリメ ラーゼ(Perkin-Elmer,Inc.,Norwalk,CN)。反応混合物を反応チューブに等分す る直前に、1μLのa-32P dCTP(250μCi;3000 C/mmol、10mCi/mL、Amersham Co rp.,Arlington Heights,IL)を反応混合物中に添加する。45.0μLの反応混合物 を各反応チューブに等分した後に、チューブに栓をし、そしてサーモサイクラー 中に配置する。特定の変性、アニーリング、伸長の時間、および温度、ならびに サーモサイクルの数は、使用するプライマー対のサイズおよびヌクレオチド組成 に依存して変化する。次いで、20〜25増幅サーモサイクルを実施する。次いで、 5μLの各反応物をDE81イオン交換クロマトグラフィーペーパー(Whatman,Maids tone,England)上に滴下し、そして10分間風乾する。次いで、50mM Na2PO4(pH 7)、200mM NaCl 中で1回の洗浄につき100mLでフィルターを5回洗浄し、その 後、風乾し、次いで、Saran Wrapに挟む。定量をPhosphoImager SI(Molecular Dynamics,Sunnyvale,CA)上で行う。代表的には、フィルターをリン光体スクリ ーンに曝露する。これは電離放射線からのエネルギーを適切な時間(代表的には 約120分)蓄積する。曝露後、リン光体スクリーンをスキャンし、それにより元 のフィルター上の放射能に比例して光線が発せられる。次いで、スキャニングの 結果を、ダウンロードし、そしてcpm(縦座標)対ポジティブコントロールDNAパ ーセント(横座標)として対数スケール上にプロットする。各サンプルの力価( 感染単位/mL)を、検出された放射能に基づいて標準曲線から決定された比率(十 進法形式に換算された)に、DNAを単離した細胞数を掛け、細胞を形質導入する のに用いたレトロウイルスベクターの容積で割ることにより算出する。当業 者で評価されるように、増幅した産物を標識するために、検出の他の方法(例え ば、比色分析法)を使用し得る。 実施例6 組換えキセノトロピックレトロウイルスの大規模産生 本発明の組換えキセノトロピックレトロウイルスを、種々の様式(例えば、回 分様式または連続様式)で培養し得る。さらに、種々の細胞培養技術を使用して 、商業的規模の量の本発明の組換えキセノトロピックレトロウイルスを産生し得 る。当業者に公知の他の技術も同様に使用され得るが、いくつかのこのような技 術を、以下に記載する。 A.中空ファイバー培養物からの組換えレトロウイルスの産生 i.培養の開始 中空ファイバー培養を始めるために、播種の48時間前に、100〜200mLの完全な 増殖培地を用いた37℃での運転条件で模擬試験することにより、中空ファイバー バイオリアクター(例えば、HFB;Cellco,Inc.,Germantown,MD)を初期条件設定を した。増殖培地は、好ましくは、この細胞株が適応していたものである。HFB中 の初めに送られた全ての液体を、吸引し、そして完全な増殖培地で置換すべきで ある。バイオリアクターに播種する場合、この細胞を、48時間より早く分けるべ きでなく、そしてこの細胞は、HFBの播種のための回収時に、対数増殖期である べきである。代表的には、この細胞を、トリプシン処理により回収し、そして遠 心分離によりペレット化する。次いで、この細胞ペレットを、25%の馴化前培地 4mL中に再懸濁し、そしてHFB上に見いだされる側面のシリンジ口を用いてシリ ンジにより毛管外空間(extra-capillary space)へ送達する。HFBの播種後、循環 ポンプを始動させる前に、20〜30分間細胞を付着させる。この時間中、HFBの馴 化に用いた培地を、100〜200mLの25%の馴化前培地で置換する。循環送液ポンプ を、25mL/分にセットした開始流速で開始する(2本の長いポンプの針で5にセ ットする)。ポンプのスイッチを入れた時点から1時間後、培地のサンプル1mL を、乳酸塩およびアンモニアの初期レベルを記録するために採取する。毎日の計 画として、24時間毎に1mlのサンプルを採取し、毎日の乳酸塩およびアンモニア の生産をアッセイする。乳酸塩のレベルが2.0g/L(または、22mM/Lに等価)に達 し始めたとき、最初の培地100〜200mLを、新鮮な培地と交換する。培養物が20mm ol/Lの毎日のレベルに達するまで、同じ容量の培地を置換する。毎日の乳酸塩レ ベルが20mmol/Lに達したとき、貯蔵ボトルサイズを500mLの新鮮な培地を含む500 mLボトルに増大する。次いで、培養物が、2.2mmol/日の乳酸塩を生産し始めたと き、送液流速を50mL/分に増加させる。500mLの容量が毎日20mmol/Lの乳酸塩に達 したとき、元のCellcoに供給された貯蔵送液キャップを、チューブおよび錠の取 り付け部品(male luer lock fitting)を付加することでCellcoシステムに適応さ せた、さらに大きな貯蔵キャップ(Unisyn-vender part #240820)に交換する。こ の貯蔵キャップは、2リットルのCorningボトルに適応する(培養運転中、貯蔵 キャップの交換を避けるため、さらに小さなボトルサイズもまた支持し得る大き な貯蔵キャップで運転を開始する)。毎日の乳酸塩の読み取りをアッセイし、そ して記録する場合、培養物が最大の細胞密度に達する時(すなわち、乳酸塩の割 合が減少し、そしてレベルが消失した時)を決定するために、培養物の毎日の乳 酸塩の生産レベルを使用し得る。 ii.2X- β-galに対する播種密度 特定の播種必要条件を確立するために、2つの中空ファイバー運転を行う。1 つの運転は、少数の細胞を播種し、そしてもう1つは、多数の細胞を播種する。 各培養の進行を、毎日のグルコース消費および乳酸塩生産レベルを分析すること により追跡する。 この実験において、1方のHFBには、1.3×107細胞を播種し(低播種培養物を 表わす)、他方のHFBには1.6×108細胞を播種した。ここでは、細胞株2x-β-GAL17-14 は、両方の播種条件下で良好な中空ファイバー運転を開始し得た。より少 数の細胞を用いて運転を開始することは、培養を開始するために必要な細胞の数 を生成するのに必要な労力を軽減するために主に便利である。しかし、より少数 の細胞は、通常最も高い力価を生じる最適の細胞密度に到達するために要する時 間 を最初に延長する。2x-β-GAL17-14は、毒性レベルの乳酸塩の蓄積を回避するた めに、最終的に500mLの培地交換を毎日必要とする中空ファイバー培養によく適 応した。毎日の乳酸塩生産が安定水準に達し、そしてピークの力価産生の低下は 、最大細胞密度および相対的な培地の健康状態に相関した。 iii.最適力価濃度、回収の頻度、および全回収量 上記実験についてのβ-gal力価を、形質導入の48時間または72時間後にアッセ イされた293細胞における凍結したサンプルから決定した。形質導入した細胞を 、β-gal活性について染色し、そして血球計で計数し、青色細胞の数/mL(BCT/mL )に基づいて力価を得た。最適力価は、一般に、293細胞において、高播種培養物 の7日目に、72時間青色細胞力価から1.8×108BCT/mLで得られた。最初に10倍低 い播種密度で播種した2連の培養物は、48時間青色細胞力価から5.2×107BCT/mL でピークに達した。HT1080細胞(約5×106BCT/mLであると計算されている)に ついて48時間青色細胞力価を用いて力価決定された平面ストック培養(組織培養 ディッシュまたはフラスコ由来)と比較して、中空ファイバー系を用いることに よる力価の増加は、約10倍高い。観察されたこれらの最大力価には、次の週に生 産される力価を減少させるようである20mmol/Lの乳酸塩レベルに達する前に到達 した。 粗製上清を、力価のいかなる損失をも伴わずに9時間毎に回収し得、そして1 日あたり3回の回収が、最少の力価の損失で可能であるべきである。さらに、継 続的な中空ファイバー培養物を、数週間維持し得る。力価を低播種培養物と高播 種培養物との間で比較した場合、2つの播種培養物の間で、11日目までにほとん ど差はなく、両方の平均は4×107BCT/mLであった。 実施例7 組換えレトロウイルスの2相精製 A.DA/ND-7 組換え粒子の濃縮 1.25×106cfu/mlの力価で、DX/ND-7ベクターを含む1400mlの培地(5%のウシ 胎児血清を含むDMEM)を開始材料として使用する。300mlの2相分配成分(PEG-8 000(オートクレーブした)、硫酸デキストラン、およびNaCl)を、最終濃度が6.5 %のPEG、0.4%の硫酸デキストラン、および0.3M NaClになるように添加する。 得られた溶液を、2リットルの分液ロート中に入れ、そして24時間コールドルー ムで放置する(約6〜16時間の間隔で2回の混合工程を含む)。 24時間後、下層(約20mL)を慎重に抜き取り、そしてこの中間相(約1mL)を 15mLのコニカルFALCONチューブに回収する。ベクターを含む中間相を、PBSを添 加することにより10mLに希釈し、そしてこの溶液を室温に戻すために37℃でイン キュベートし、そしてミセルを不安定化する。 希釈した中間相の半分に対して、KClを最終濃度が0.4Mになるまで添加し、そ して、良く混合する。次いで、このチューブを氷上に10分間置き、そして卓上遠 心分離機で2,000rpmで2分間スピンする。この上清を取り出し、そして0.45μm のシリンジフィルターにて濾過する。ベクターを含む中間相の他方の半分を、1 × PBSにおけるS-500 Sephadexクロマトグラフィーにより分離する。BCFUアッセ イにおいて決定されたように、これらの濃縮プロセスの結果を以下の表6に示す : 要約すると、KCl分離を最終工程として利用する場合、組換えレトロウイルス 粒子を含む1.4リットルの粗製の研究グレードの上清を、10mLの容量まで減少し 得、約50%(+/-20%)が回収される。S-500クロマトグラフィーを最終工程として 利用する場合、最初の組換えレトロウイルス粒子のうちの約10%のみが14mLの中 に回収される。 レトロウイルスベクター粒子の濃縮を完全にするために、MYメンブレンAmicon フィルターを利用して、ベクター含有溶液をさらに濃縮に供し得、これにより、 容量10〜14mLを1mL未満に減少させ得る。 実施例8 細胞ファクトリーを利用するDX/ND7B-GALクローン87由来のベクターの産生 DX/ND7bGALクローン87(発現ベクター)を、細胞ファクトリーで増殖させた。 20の10層細胞ファクトリー(NUNC)に1:3希釈で播種するために十分な細胞を得 るまで、細胞をローラーボトル中でウシ胎児血清を補充したDMEMで増殖させた。 各々の10層細胞ファクトリーを、約0.8リットルの細胞培地で播種する。 懸濁液が均等に10層に満たされるように、ファクトリー内に細胞を含む培地を 注入することにより、細胞ファクトリー内に細胞を播種した。次いで、このファ クトリーを、懸濁液が共通のチューブ中に再分配するのを防ぐために、出入口側 から離して慎重に傾斜させる。最後に、この細胞ファクトリーを、その最終的な 直立位置で循環させる。hepaventフィルターを各々の出入口に取り付ける。次い で、このファクトリーをCO2インキュベーター内に置いた。 3日目および続く3日間それぞれに、ベクターを含む上清を回収した。細胞フ ァクトリーを、組織培養フード内に置く。1つのフィルターを取り出し、そして 滅菌した輸送チューブを開口部に接続する。チューブ内に上清を排出するために このファクトリーを持ち上げる。約2リットルの上清を各々のファクトリーから 回収する。新鮮なDMEM/FBSを用いて失われた培地を再補充する。輸送チューブを 取り除き、そしてこのファクトリーをインキュベーター内に再び置く。20の細胞 ファクトリーから約90リットルのベクター含有粗製上清を得た。 ベクターの確認を、HT1080細胞の形質導入により実施した。これらの細胞を2 日後に回収し、そしてb-galタンパク質について染色した。この上清の力価を2 ×107/mlであると決定した。 実施例9 低速遠心分離による組換えレトロウイルスの濃縮 A.レトロベクター上清の調製 プロデューサー細胞株DA/βgalおよびHX/DN-7を、10%ウシ胎児血清と1mM L- グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、および抗生物質を補充し たダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を含む培養フラスコおよびローラーボトル でそれぞれ培養した。ウイルスの上清を、フラスコおよびローラーボトルから回 収し、そして0.45μmシリンジフィルターを通して濾過した。この濾過した上清 を、4℃(HX/ND7)または-70℃(DAβ-gal)での凍結のいずれかで保存を行った 。 B. ウイルスの濃縮 ウイルスの上清を、50mlの滅菌したOAKRIDGEスクリューキャップチューブに等 分し、そしてSorvall遠心分離機内での使用のためのSS34ローター内に設置した 。このチューブを16,000rpm(25,000g力)で1時間4℃でスピンした。スピンが完 了した際、このチューブを取り出し、上清をデカントし、そして小さな不透明な ペレットを上記のDMEM培地に再懸濁した。 C.ウイルス力価決定 濃縮したウイルスを、6ウェルプレートにウェルあたり2×105細胞の細胞密 度および4μg/mlポリブレンで、24時間前にプレーティングされたHT1080細胞に おいて力価決定した。簡単に述べれば、ウイルス調製物を、1/10〜1/10,000に希 釈し、そして50μlの各希釈物を用いて6ウェルプレート中の1ウェルに感染さ せた。プレートを、37℃で一晩インキュベートした。48時間後、細胞を固定し、 そしてX-galで染色した。その結果を以下の表7に示す。 表7から明らかなように、ウイルスの回収率は、30%〜99%の範囲であり、最 も高い回収率は、ヒトプロデューサー細胞から得られた(HX/ND7;回収率は、91 %〜99%の範囲であった)。 実施例10 限外濾過による組換えレトロウイルスの濃縮 組換えレトロウイルスDX/CB-bgalを発現するβ-galを含むS-500で精製した上 清、および同一のウイルスを含む部分的に濃縮した上清を、各々0.45μmのフィ ルターで濾過し、そしてCENTRIPREP-100フィルター(製品 #4308,Amicon,MA)にロ ードした。この上清を、遠心分離の間を含むこの手順の間中4℃の温度に保った 。CENTRIPREPフィルターを500×Gで3回、それぞれ45分間〜60分間スピンした。 各々のスピンの間に濾過物をデカントした。このように、保持物を連続的に減少 させ、その結果、最初の15mL(または10mL)の容量を、単位あたり約0.6mLに減 少した。 結果として生じた力価を、ウイルスサンプルの形質導入の24時間前に1ウェル あたり1×105細胞の濃度に設定したHT1080標的細胞をアッセイすることにより 決定した。細胞を、1ウェルあたり8μg/mlのポリブレンおよび2mLの増殖培地 (DMEM+10%FBS)の存在下で、形質導入した。以下の表8に示すように、この手順 を利用して、約100%のウイルスを回収した(力価はBCFU/mlであることに注意す ること)。 実施例11 バイオリアクターにおける組換えレトロウイルスの調製 A.凍結プロトコル 1×107細胞/ml/バイアルの濃度で、プロデューサー細胞を、10%〜20%のFBS 、および5%〜15%のDMSOを含むDMEM培地中で凍結した。細胞を速度制御フリー ザー(Series PC,Controlled Rate Freezing System,Custom Biogenic Systems, Warren MI)で1分間あたり1℃〜10℃の速度で凍結する。凍結細胞を液体窒素 中で保存する。 B.バイオリアクタープロトコル 細胞を凍結バイアルから37℃で融解し、DMSOを除去するために培地で1度洗浄 し、そして850cm2「FALCON」ローラーボトル(Corning,Corning,NY)中で拡大す る。拡大した細胞培養物を用いて、「CELLIGEN PLUS」バイオリアクター(5リッ トル作動容量;New Brunswick,Edison,NJ)に接種する。この細胞を、3〜15g/Lマ イクロキャリアの濃度でマイクロキャリア(すなわち、Cytodex 1またはCytodex 2;Pharmacia,Piscataway,N.J.)上で増殖させる。最初の接種密度は、2〜24時 間について半分から全容量において4〜9細胞/ビーズである。ウイルス産物の ためのこの培地構成成分は、FBS(10%〜20%)、グルタミン(8〜15mM)、グルコー ス(4.5〜6.5g/L)、非必須アミノ酸(1×)、RPMI 1640アミノ酸(0.2〜9.6×)、10m M HEPES、RPMI 1640ビタミン(0.2〜5×)を補充したDMEM高グルコース基礎培地( Irvine Scientific,Santa Ana,CA.)である。 培養の間、pH(6.9〜7.6)および溶存酸素(「DO」5〜90%)を、空気、酸素 、窒素、および二酸化炭素を含む4つのガスシステムの使用により制御する。次 いで、回分増殖の数日後、0.5〜2.5容量/日の灌流速度を段階的に増加させて、 培養物を同時の連続回収により新鮮な培地で継続的に灌流する。細胞の保持は、 デカントしたカラム中の細胞で覆われたビーズの差別的な沈降の結果である。 操作の間、バイオリアクターを、生存細胞、力価、グルコース、乳酸塩、アン モニアレベル、および汚染がないかについてモニターする。生存細胞および力価 は、1×105細胞/ml〜1×107細胞/mlの範囲である。グルコースは、6〜0.25g/ Lの範囲であり、乳酸塩は1〜25mMの範囲であり、そしてアンモニアは、0.5〜30 mMの範囲である。細胞を、バイオリアクター中で5〜25日間インキュベートする 。 *** 本発明を、一般的に、および好ましい実施態様に関しての両方で記載したが、 その変化および改変が、上記説明に照らして、当業者に考えられることが認識さ れる。従って、添付の請求の範囲が、請求される本発明の範囲内にあるこのよう な全ての変化を包含することが意図される。 さらに、本発明の背景を明らかにするため、特に、詳細な説明および実施例に おいて記載されるように、その実施に関するさらなる詳細を提供するために引用 される刊行物および他の資料は、本明細書中において、その全体が参考として援 用される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A61K 48/00 ABN A61K 48/00 ABN ADU ADU ADY ADY ADZ ADZ C12N 5/10 C12N 5/00 B //(C12N 5/10 C12R 1:91) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD ,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CZ, DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,HU,I S,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK,LR ,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN, MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,S D,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TR,TT ,UA,UG,UZ,VN

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.形質導入された哺乳動物T細胞または分裂中でない細胞を生成するための方 法であって、該方法は以下の工程: (a)患者から、T細胞または分裂中でない細胞の集団を得る工程;および (b)複製可能なレトロウイルスが実質的に混入していない高力価組換えレトロ ウイルス粒子の調製物で該T細胞または分裂中でない細胞の集団をエクスビボで 形質導入する工程であって、ここで該組換えレトロウイルス粒子は、目的の遺伝 子をコードするベクター構築物を有する工程、 を包含する、方法。 2.前記T細胞が単離されたCD4+T細胞である、請求項1に記載の方法。 3.前記T細胞が単離されたCD8+T細胞である、請求項1に記載の方法。 4.前記目的の遺伝子が、サイトカイン、コロニー刺激因子、凝固因子、および ホルモンからなる群より選択されるタンパク質またはタンパク質の活性部分をコ ードする、請求項1に記載の方法。 5.前記凝固因子が、第VIII因子である、請求項4に記載の方法。 6.前記患者が、遺伝的疾患、ガン、感染性疾患、自己免疫疾患、心血管疾患、 変性性疾患、および炎症性疾患からなる群より選択される疾患に罹患しているヒ トである、請求項1に記載の方法。 7.複製可能なレトロウイルスが実質的に混入していない高力価組換えレトロウ イルス粒子の調製物でエクスビボで形質導入された、哺乳動物T細胞または分裂 中でない細胞の単離された集団を含有する組成物であって、該組換え粒子が目的 の遺伝子をコードするベクター構築物を有する、組成物。 8.前記T細胞が単離されたCD4+T細胞である、請求項7に記載の組成物。 9.前記T細胞が単離されたCD8+T細胞である、請求項7に記載の組成物。 10.前記目的の遺伝子が、サイトカイン、コロニー刺激因子、凝固因子、およ びホルモンからなる群より選択されるタンパク質またはタンパク質の活性部分を コードする、請求項7に記載の組成物。 11.前記凝固因子が第VIII因子である、請求項10に記載の組成物。 12.前記哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項7に記載の組成物。 13.複製可能なレトロウイルスが実質的に混入していない高力価組換えレトロ ウイルス粒子の調製物でエクスビボで形質導入された、哺乳動物T細胞または分 裂中でない細胞であって、該組換えレトロウイルス粒子が目的の遺伝子をコード するベクター構築物を有する、T細胞または分裂中でない細胞。 14.前記T細胞が単離されたCD4+T細胞の集団である、請求項13に記載のT 細胞。 15.前記T細胞が単離されたCD8+T細胞の集団である、請求項13に記載のT 細胞。 16.前記目的の遺伝子が、サイトカイン、コロニー刺激因子、凝固因子、およ びホルモンからなる群より選択されるタンパク質またはタンパク質の活性部分を コードする、請求項13に記載のT細胞または分裂中でない細胞。 17.前記凝固因子が第VIII因子である、請求項16に記載のT細胞または分裂 中でない細胞。 18.遺伝的疾患を有する患者を処置する方法であって、該方法は以下の工程: (a)該患者から、T細胞または分裂中でない細胞の集団を得る工程; (b)複製可能なレトロウイルスが実質的に混入していない高力価組換えレトロ ウイルス粒子の調製物で該T細胞または分裂中でない細胞の集団をエクスビボで 形質導入する工程であって、ここで該組換えレトロウイルス粒子は、該遺伝的疾 患を処置するのに有用な目的の遺伝子をコードするベクター構築物を有する工程 ;および (c)形質導入された該T細胞または分裂中でない細胞の集団の治療有効量を該 患者に再導入する工程、 を包含する、方法。 19.前記細胞集団が、T細胞集団である、請求項18に記載の方法であって、 ここで、前記疾患がADA欠損症であり、そして前記目的の遺伝子がADAである、方 法。 20.前記患者への前記形質導入されたT細胞、分裂中でない細胞の再導入の前 に、該細胞の集団を拡大する工程をさらに包含する、請求項18に記載の方法。 21.ガンを有する患者を処置する方法であって、該方法は以下の工程: (a)該患者から、T細胞または分裂中でない細胞の集団を得る工程; (b)複製可能なレトロウイルスが実質的に混入していない高力価組換えレトロ ウイルス粒子の調製物で該T細胞または分裂中でない細胞の集団をエクスビボで 形質導入する工程であって、ここで該組換えレトロウイルス粒子は、ガンを処置 するのに有用な目的の遺伝子をコードするベクター構築物を有する工程;および (c)形質導入された該T細胞または分裂中でない細胞の集団の治療有効量を該 患者に再導入する工程、 を包含する、方法。 22.感染性疾患を有する患者を処置する方法であって、該方法は以下の工程: (a)該患者から、T細胞または分裂中でない細胞の集団を得る工程; (b)複製可能なレトロウイルスが実質的に混入していない高力価組換えレトロ ウイルス粒子の調製物で該T細胞または分裂中でない細胞の集団をエクスビボで 形質導入する工程であって、ここで該組換えレトロウイルス粒子は、該感染性疾 患を処置するのに有用な目的の遺伝子をコードするベクター構築物を有する工程 ;および (c)形質導入された該T細胞または分裂中でない細胞の集団の治療有効量を該 患者に再導入する工程、 を包含する、方法。 23.前記細胞集団がT細胞集団である、請求項22に記載の方法であって、こ こで、前記感染性疾患がAIDSであり、そして前記目的の遺伝子が変異体HIVタン パク質をコードする、方法。 24.前記細胞集団がT細胞集団である、請求項22に記載の方法であって、こ こで、前記感染性疾患がAIDSであり、そして前記目的の遺伝子がリボザイムをコ ードする、方法。 25.前記細胞集団がT細胞集団である、請求項22に記載の方法であって、こ こで、前記感染性疾患がAIDSであり、そして前記目的の遺伝子が合成または天然 に存在するT細胞レセプターをコードする、方法。 26.炎症性疾患を有する患者を処置する方法であって、該方法は以下の工程: (a)該患者から、T細胞または分裂中でない細胞の集団を得る工程; (b)複製可能なレトロウイルスが実質的に混入していない高力価組換えレトロ ウイルス粒子の調製物で該T細胞または分裂中でない細胞の集団をエクスビボで 形質導入する工程であって、ここで該組換えレトロウイルス粒子は、該炎症性疾 患を処置するのに有用な目的の遺伝子をコードするベクター構築物を有する工程 ;および (c)形質導入された該T細胞または分裂中でない細胞の集団の治療有効量を該 患者に再導入する工程、 を包含する、方法。 27.変性性疾患を有する患者を処置する方法であって、該方法は以下の工程: (a)該患者から、T細胞または分裂中でない細胞の集団を得る工程; (b)複製可能なレトロウイルスが実質的に混入していない高力価組換えレトロ ウイルス粒子の調製物で該T細胞または分裂中でない細胞の集団をエクスビボで 形質導入する工程であって、ここで該組換えレトロウイルス粒子は、変性性疾患 を処置するのに有用な目的の遺伝子をコードするベクター構築物を有する工程; および (c)形質導入された該T細胞または分裂中でない細胞の集団の治療有効量を該 患者に再導入する工程、 を包含する、方法。 28.心血管疾患を有する患者を処置する方法であって、該方法は以下の工程: (a)該患者から、T細胞または分裂中でない細胞の集団を得る工程; (b)複製可能なレトロウイルスが実質的に混入していない高力価組換えレトロ ウイルス粒子の調製物で該T細胞または分裂中でない細胞の集団をエクスビボで 形質導入する工程であって、ここで該組換えレトロウイルス粒子は、心血管疾患 を処置するのに有用な目的の遺伝子をコードするベクター構築物を有する工程; および (c)形質導入された該T細胞または分裂中でない細胞の集団の治療有効量を該 患者に再導入する工程、 を包含する、方法。 29.前記細胞集団がT細胞集団である、請求項26に記載の方法であって、こ こで、前記心血管疾患が高脂血症であり、そして前記目的の遺伝子がアポリポタ ンパク質Eをコードする、方法。 30.自己免疫性疾患を有する患者を処置する方法であって、該方法は以下の工 程: (a)該患者から、T細胞または分裂中でない細胞の集団を得る工程; (b)複製可能なレトロウイルスが実質的に混入していない高力価組換えレトロ ウイルス粒子の調製物で該T細胞または分裂中でない細胞の集団をエクスビボで 形質導入する工程であって、ここで該組換えレトロウイルス粒子は、該自己免疫 性疾患を処置するのに有用な目的の遺伝子をコードするベクター構築物を有する 工程;および (c)形質導入された該T細胞または分裂中でない細胞の集団の治療有効量を該 患者に再導入する工程、 を包含する、方法。 31.患者中のT細胞または分裂中でない細胞の集団の活性を調整する方法であ って、該方法は以下の工程: (a)該患者から、T細胞または分裂中でない細胞の集団を得る工程; (b)複製可能なレトロウイルスが実質的に混入していない高力価組換えレトロ ウイルス粒子の調製物で該細胞の集団をエクスビボで形質導入する工程であって 、ここで該組換えレトロウイルス粒子は、プロドラッグを活性化し得るタンパク 質をコードするベクター構築物を有する工程; (c)該細胞の集団を該患者に再導入する工程;および (d)該患者に該プロドラッグを投与する工程、 を包含する、方法。 32.前記タンパク質がチミジンキナーゼである、請求項31に記載の方法。 33.前記高力価組換えレトロウイルス粒子のエンベロープタンパク質が、C型 レトロウイルスまたはD型レトロウイルス由来のエンベロープタンパク質である 、請求項1に記載の方法。 34.前記高力価組換えレトロウイルス粒子のエンベロープタンパク質が、レト ロウイルスアンフォトロピックエンベロープタンパク質、レトロウイルスエコト ロピックエンベロープタンパク質、レトロウイルスポリトロピックエンベロープ タンパク質、レトロウイルスキセノトロピックエンベロープタンパク質、テナガ ザル白血病ウイルスエンベロープタンパク質、およびVSV-gタンパク質からなる 群より選択されるエンベロープタンパク質である、請求項1に記載の方法。
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