【発明の詳細な説明】
組み合わせ遺伝子送達ビヒクル発明の分野
本発明の分野は、植物または動物に所望の特性を有する核酸分子を導入するた
めに適切な組換え核酸ベクターおよび他のビヒクル(ビヒクルは、例えば、所望
の物質を発現し得るか、または特定の核酸分子を受け入れ得る)、ならびにその
ビヒクルの組み合わせおよび投与方法である。発明の背景
所望の核酸分子の操作を含む、生物工学の分野における近年の進歩は、ガン、
遺伝子疾患、関節炎およびAIDSのような疾患の処置に著しい進歩をもたらした。
これらの進歩の多くは被験体、特にヒト被験体のような動物被験体への所望の核
酸分子の投与を含む。1より多くの(すなわち複数の)このような核酸分子を1
度に投与することは、複数の核酸分子が単一の組織または関節に補足物質または
活性を提供し得るので、有意な利点を提供する。このように、例えば、細胞傷害
物をコードする核酸分子は、細胞傷害物に対する標的細胞の感受性を増強する核
酸分子ともに投与され得る。
1度にかつ2つ以上の核酸分子による複数の補足物質および/または活性の投
与は、単一の核酸分子によるこのような物質および/または活性の投与以上の有
意な利点を提供する。複数の核酸分子を操作するための難度、費用、および時間
は、単一の分子を操作する場合より少ない。例えば、各物質がそれ自身の発現系
の制御下にあるときは、単一系からの複数の物質または活性の発現より、1つの
分子による単一物質または活性の発現が容易である。さらに、複数の分子を用い
ると、1つの物質または活性が別の物質または活性を立体的に障害するか、また
はそうでなければ、妨害する機会は少ない。複数の分子はまた、異なる活性化事
象を示す発現系からの異なる物質または活性の発現を可能にし、それにより異な
る物質または活性の異なる発現をよりよく制御し得る。
しかし、複数の核酸分子の投与は、このような投与が、分子とその宿主ゲノム
との間の無作為で潜在的に有害な組換え事象の見込みを増強するという関係が認
められてきたので、過去に失敗に終わっている。
さらに、ある程度の共同作用を有する物質を発現する独立した複数の核酸分子
の投与は所望でないことが認められた。なぜなら、2つの活性な核酸配列が物理
的に結合していない場合、この共同作用は生じないからである。
このように、複数の有用な物質または活性を有する複数の核酸分子の投与の必
要は不適切であった。本発明は、所望の核酸分子のこのような投与、このような
所望の核酸分子を含有する組成物、および他の関連した利点を提供する。発明の要旨
1つの局面において、本発明は、動物または患者に核酸分子を導入する方法で
あって、2つ以上の遺伝子送達ビヒクルを含有する組成物を、薬学的に受容可能
なキャリアまたは希釈物と組み合わせて動物に投与することを包含する方法に関
する。その各遺伝子送達ビヒクルは、対応する遺伝子送達ビヒクル内に天然には
含まれない核酸分子を含有している。
別の局面において、本発明は、動物または患者に核酸分子を導入する方法であ
って、2つ以上の遺伝子送達ビヒクルを含有する組成物を薬学的に受容可能なキ
ャリアまたは希釈物と組み合わせて、動物または患者へ投与することを包含する
方法に関する。その各遺伝子送達ビヒクルは、遺伝子送達ビヒクルを含有する宿
主細胞内での少なくとも1つの物質の発現を指向する。その物質は、対応する遺
伝子送達ビヒクルによって天然には発現されない。その遺伝子送達ビヒクルは、
a)少なくとも2つの異なる物質の発現を集合的に指向するか、またはb)1つ以上
の生物学的機能が異なる遺伝子送達ビヒクルにおいて少なくとも1つの物質の発
現を指向する。
さらなる局面において、本発明は、動物に核酸分子を導入する方法であって、
動物へ2つ以上の遺伝子送達ビヒクルを含有する組成物を薬学的に受容可能なキ
ャリアまたは希釈物と組み合わせて投与することを包含する方法に関する。その
各遺伝子送達ビヒクルは、少なくとも1つの生物学的に活性な核酸分子を含有す
る(このような生物学的活性は各遺伝子送達ビヒクル内に天然には存在しない)
。この遺伝子送達ビヒクルは、a)少なくとも2つの異なる生物学的に活性な核酸
配列を集合的に含む、またはb)1つ以上の生物学的機能が異なる遺伝子送達ビヒ
クル内に少なくとも1つの生物学的に活性な核酸配列を含む。
なおさらなる局面において、本発明は、動物に核酸分子を導入する方法であっ
て、動物へ2つ以上の遺伝子送達ビヒクルを含有する組成物を薬学的に受容可能
なキャリアまたは希釈物と組み合わせて投与することを包含する方法に関する。
少なくとも1つの遺伝子送達ビヒクルは、対応する遺伝子送達ビヒクルにより天
然に発現されない少なくとも一つの物質の発現を指向する。そして、少なくとも
1つの遺伝子送達ビヒクルは、その対応する遺伝子送達ビヒクルにより天然に含
まれない少なくとも1つの生物学的に活性な核酸配列を含む。
なおさらなる局面において、本発明は、動物に核酸分子を導入する方法であっ
て、2つ以上の遺伝子送達ビヒクルを、同時に、同じ部位に、単一投与デバイス
により動物へ薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈物と組み合わせて投与する
ことを包含する方法に関する。その各遺伝子送達ビヒクルは、遺伝子送達ビヒク
ルを含有する宿主細胞において少なくとも1つの物質の発現を指向する。その物
質は、その対応する遺伝子送達ビヒクルにより天然には発現されない。遺伝子送
達ビヒクルは、a)少なくとも2つの異なる物質の発現を集合的に指向するか、ま
たはb)1つ以上の生物学的機能が異なる遺伝子送達ビヒクルにおいて少なくとも
1つの物質の発現を指向する。
なおさらなる局面において、本発明は、動物に核酸分子を導入する方法であっ
て、動物に2つ以上の遺伝子送達ビヒクルを含有する組成物を投与することを包
含し、以下の工程を包含するに方法に関する:a)第1の遺伝子送達ビヒクルおよ
び第2の遺伝子送達ビヒクルを別々に調製する工程。その各遺伝子送達ビヒクル
は、遺伝子送達ビヒクルを含有する宿主細胞において少なくとも1つの物質の発
現を指向する。その物質はその対応する遺伝子送達ビヒクルにより天然には発現
されない。遺伝子送達ビヒクルは、i)少なくとも2つの異なる物質の発現を集合
的に指向するか、またはii)1つ以上の生物学的機能が異なる遺伝子送達ビヒク
ルにおいて少なくとも1つの物質の発現を指向する。b)第1の遺伝子送達ビヒク
ルおよび第2の遺伝子送達ビヒクルを、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈
物とともに混合して組成物を提供する工程。;およびc)その組成物を動物に投与
する工程。
好ましい実施態様において、本発明は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希
釈物がこの遺伝子送達ビヒクルの投与を増大する、上記に示す方法に関する。
他の好ましい実施態様において、本発明は、その物質またはその生物学的活性
が投与の前に動物において示されない、上記に示す方法に関する。さらなる他の
好ましい実施態様において、本発明は、その生物学的活性が投与の前に宿主細胞
において示されない、このような方法に関する。
他の好ましい実施態様において、本発明は、投与の前に、生物学的活性が宿主
細胞における生物学的活性を補足するか、活性化するか、置換するか、または抑
制する、上記に示す方法に関する。
なお他の好ましい実施態様において、本発明の方法においては、その組成物は
、抗原刺激因子の発現を指向する第1の遺伝子送達ビヒクル、およびサイトカイ
ンまたは免疫活性化タンパク質の発現を指向する第2の遺伝子送達ビヒクルを包
含する;ここで、第1の遺伝子送達ビヒクルは、条件的致死遺伝子産物を活性化
し得る酵素の発現を指向し、そして第2の遺伝子送達ビヒクルはサイトカインの
発現を指向する;そして、この遺伝子送達ビヒクルは、2つ以上の抗原の発現を
指向する。
他の好ましい実施態様において、本発明の方法においては、少なくとも1つの
遺伝子送達ビヒクルは、全身に分布する遺伝子産物または局所的に分布する遺伝
子産物の発現を指向し;好ましくは、この遺伝子産物はタンパク質、およびさら
に好ましくは免疫抑制タンパク質である。
本発明のこれらおよび他の局面は、続く詳細な説明を参照することで明らかに
なる。さらに、特定の手法または組成物をさらに詳細に記載する種々の文献を本
明細書中に示す。このような文献はそのすべてが参考として援用される。図面の簡単な説明
図1は、ATCC 45020由来のB型肝炎e配列の採収を示す概略図である。
図2は、HBV(adw)プレコア/コアの核酸配列(配列番号23)およびpAM6(ATCC
95020)クローン由来の不正確な配列(配列番号24)の領域の図の表示である。
図3は、pAM6(ATCC 45020)由来のHBプレコア/コア配列における変異を修正す
るために利用したプロトコルの概略図の表示である。
図4は、SK+HBe-cからの正しい核酸配列を示すDNA配列決定ゲルである。
図5は、以下のレトロウイルスで形質導入されたマウス細胞株BC10ME、Bl/6、
L-M(TK-)、EA2Kb、およびレトロウイルスで形質導入されたヒトT細胞株JA2/Kb
の、ELISAにより決定された、HBVeタンパク質およびHBVコアタンパク質の発現レ
ベルを示す表である。
図6は、レトロウイルスで形質導入されたBC10MEおよびBl/6細胞により分泌さ
れたp17 kD HBV eタンパク質およびp23 kDプレコア中間体タンパク質の免疫沈降
/発現を示すウェスタンブロットである。このブロットはまた、レトロウイルス
で形質導入されたBC10ME細胞からの細胞溶解物におけるp21 HBVコアタンパク質
の発現を示す。
図7Aは、抗原を発現する同系細胞を注入したBalb/CおよびC57B1/6マウスにお
ける、または、HBVe抗原をコードするレトロウイルスベクターを直接注入するこ
とによる、HBVe抗原に対する抗体応答の誘導を示す2つのグラフである。
図7Bは、HBVコア抗原を発現する共同細胞を注入したBalb/C(BC)およびC57B1/
6(B16)マウスにおけるHB/コア抗原に対する抗体応答の誘導を示す2つのグラフ
である。
図8は、複製不全レトロウイルスへのマウスγインターフェロンのクローニン
グを例示する概略図である。
図9は、L33およびB16F10細胞株におけるMHCクラスIタンパク質の発現を示す
ウェスタンブロットである。
図10は、TK1(SV-Neoマイナス)およびTK3(SV-Neoプラス)ベクターを有するプ
ラスミドの構築を例示する。
図11は、HSVTK遺伝子を含有するTK-3ウイルスの注入によりインビボ形質導入
されたCT26細胞のガンシクロビル効果を例示するグラフである。
図12は、マンニトール含有処方緩衝液中で凍結乾燥された代表的な組換えレト
ロウイルスの再構築におけるウイルス活性の保持を示すグラフである。
図13は、ラクトース含有処方緩衝液中で凍結乾燥された代表的な組換えレトロ
ウイルスの再構築におけるウイルス活性の保持を示すグラフである。
図14は、トレハロース含有処方緩衝液中で凍結乾燥された代表的な組換えレト
ロウイルスの再構築におけるウイルス活性の保持を示すグラフである。
図15A〜15Dは、種々の多糖を用いて、−80℃で保存された液体非凍結乾燥化組
換えレトロウイルスと−20℃で保存された凍結乾燥処方化組換えレトロウイルス
との安定性についての比較を表したグラフである。比較を容易にするために、力
価が標準化されている。
図16は、HBVコア処方されたHB Fcore/neoRベクターのi.m.投与後のC3H/Heマウ
スにおけるHBVコア抗原およびHBV e抗原に対するCTL応答の誘導を示すグラフで
ある。
図17は、MHCクラスI拘束性C3H/He CRマウスにおけるHBVコア抗原に対するCTL
応答を示すグラフである。
図18(パネルAおよびB)は、C3H/He CRマウスにおけるHBVコア抗原に対する
CTL応答がCD4-CD8+細胞であることを示す1対のグラフである。
図19は、処方されたHB Fcore/neoRベクターを注入されたCH3/He CRマウスにお
けるHBVコア抗原に対する抗体応答の誘導を示す表である。
図20は、処方されたHB Fcore/neoRベクターを注入されたCH3/He CRマウスにお
けるHBVコア抗原およびHBV e抗原に対する抗体応答のイソタイプを示す表である
。
図21は、処方されたHB Fcore/neoRベクターを注入されたCH3/He CRマウスにお
けるHBVコア抗原およびHBV e抗原に対するCTL応答の誘導を示すグラフである。
図22は、(パネルAおよびB)は、アカゲザルにおけるHBVコア抗原に対するC
TL応答がCD4-CD8+細胞であることを示す1対のグラフである。発明の詳細な説明
本発明は、薬学的に受容可能な組成物を提供するために、複数すなわち2以上
の遺伝子送達ビヒクル(「GDV」)と薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と
の組み合わせ、およびこのような組成物の動物への投与に対して指向される。複
数のGDVを単一の組成物で投与すること、すなわち単一の投与デバイスを用いて
同時に同一部位に投与することは、疾患またはその他の病原体の従来の処置方法
(GDVの使用に含まれる)に勝る多数の利点を提供する。複数のGDVの投与は、異
なるGDVに保有される遺伝子からの発現レベルがGDV毎に異なるか、誘導応答が1
つのGDVから得られる遺伝子産物に対して支配的であることが好ましいか、また
は、即時応答が1つのGDV遺伝子産物を必要とし、そして遅延または感作応答が
その他のGDV遺伝子産物を必要とする場合に望ましい。
I.遺伝子送達ビヒクル
遺伝子送達ビヒクルは、ウイルスベクター、核酸ベクター(例えば、プラスミ
ドなど)のような組換え体ビヒクル、遺伝子、核酸分子上の負の荷電を中和し核
酸分子をコンパクトな分子に凝集し得るポリカチオン性分子と複合体化した核酸
分子、細菌のリポソームに結合する遺伝子のような裸の核酸分子、および生物に
おいて1つ以上の所望の特性を有する核酸分子を宿主細胞に送達し得るプロデユ
ーサー細胞のような特定の真核生物細胞である。以下においてさらに説明するよ
うに、所望の特性としては、タンパク質、酵素または抗体などの所望の物質を発
現する能力および/または生物学的活性を提供する能力が挙げられる。この生物
学的活性とは、GDVに保有される核酸分子が所望の物質の発現を必要とせずにそ
れ自体、活性剤であることである。このような生物学的活性の一例は、送達され
た核酸分子を特定の遺伝子に組み込むことで、この遺伝子を不活性化し、そして
遺伝子が生成している産物を「停止(turn off)」する遺伝子療法である。
代表的に、GDVは核酸分子(または配列)を保有する集合体であり、このよう
な分子は、しばしば、目的の配列または遺伝子を発現し得る。タンパク質発現と
関連して、GDVは、例えば、RNAポリメラーゼIIまたはRNAレプリカーゼのための
プロモーターエレメントを含んでいなければならず、そしてポリアデニル化を指
向するシグナルを含み得る。さらに、GDVは、転写された場合、好ましくは、目
的の分子または遺伝子に作動可能に連結され、そして翻訳開始配列として機能す
る。GDVは、ネオマイシン、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシン、フレオマイ
シン、ヒスチジノールまたはジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)のような選択マ
ーカー、ならびに1つ以上の制限部位および翻訳終結配列を含み得る。さらに、
GDVを使用してレトロウイルス粒子を産生する場合、GDVは、レトロウイルスパッ
ケージングシグナルおよび使用するレトロウイルスに適したLTRが存在していな
ければ、これらを含まなければならない。GDVはまた、その他のウイルスベクタ
ーと組み合わせて使用されるか、または後述するように細胞または組織に物理的
に挿入され得る。GDVは、タンパク質もしくはタンパク質の活性部分、アンチセ
ンスまたはリボザイムをコードする配列を含有し得る。このような配列は、細胞
傷害性Tリンパ球の移植組織に対する免疫応答を抑制するために、MHC抗原提示
を阻害するように設計され得る。
本発明のにおいて、GDVとして使用するのに特に好ましいウイルスベクターと
しては、組換えレトロウイルスベクターおよび組換えアデノウイルスベクターが
挙げられる。組換えレトロウイルスベクターの構築については、「組換えレトロ
ウイルス」という名称の出願(1990年9月21日出願の米国特許出願第07/586,603
号)(本願で引用される当該引例およびすべての他の引例は、全体が本明細書中
において援用される)により詳細に説明されている。これらの組換えレトロウイ
ルスベクターを使用し、これを適切なパッケージング細胞株に導入することによ
って形質導入可能なレトロウイルスベクター粒子を生成し得る(1991年11月29日
出願の米国特許出願第07/800,921号を参照のこと)。同様に、アデノウイルスベ
クターも容易に調製し利用し得、本明細書中においてその開示を挙げておく(Be
rkner,Biotechniques 6:616-627,1988およびRosenfeldら,Science 252:431-4
34,1991,WO 93/07283、WO 93/06223およびWO 93/07282を参照のこと)。
別の好ましい実施態様では、GDVの一方または両方は、順に、シンドビスウイ
ルスの転写を開始し得る5配列、シンドビス非構造タンパク質をコードするヌク
レオチド配列、ウイルス接合領域、異種配列、シンドビスRNAポリメラーゼ認識
配列、25個の連続ポリアデニル酸残基のストレッチを含むシンドビスRNA発現ベ
クターである。種々の異種配列がGDVに含まれ得る。本発明の種々の実施態様に
おいて、GDVは2つ以上の異種配列を含有し得る(および特定の実施態様の範囲
内で発現させ得る)。
本発明で使用するに適切なその他のウイルスベクターとしては、ポリオウイル
ス(Evansら,Nature 339:385-388,1989およびSabin,J.of Biol.Standardiz
ation 1:115-118,1973);ライノウイルス(Arnold,J.Cell.Biochem.L401
-405,1990);カナリアポックスウイルスまたはワクシニアウイルスなどのポッ
クスウイルス(Fisher-Hochら,PNAS 86:317-321,1989; Flexnerら,Ann.N.Y
.Acad.Sci.569:86-103,1989; Flexnerら,Vaccine 8:17-21,1990; 米国特
許第4,603,112号および同第4,769,330号;WO 89/01973)、SV40(Mulliganら,Na
ture 277:108-114,1979);インフルエンザウイルス(Luytjesら,Cell 59:110
7-1113,1989; McMichealら,The New England Journal of Medicine 309:13-17
,1983; およびYapら,Nature 273:238-239,1978);アデノ関連ウイルスなど
のパボウイルス(Samulskiら,Journal of Virology 63:3822-3828,1989,およ
びMendelsonら,Virology 166:154-165,1988);ヘルペス(Kit,Adv.Exp.Me
d.Biol.215:219-236,1989);HIV;麻疹(EP 0 440,219);麻疹(EP 0 440,
219);アストロウイルス(Munroe,S.S.ら,J.Vir.67:3611-3614,1993);
セムリキ森林熱ウイルスおよびコロナウイルスならびにその他のウイルス系(例
えば、EP 0,440,219; WO 92/06693; 米国特許第5,166,057号)が挙げられる。さ
らに、ウイルスキャリアは、同種で非病原性(不完全な)の複製可能ウイルス(
例えば、Overbaughら,Science 239:906-910,1988)であり得る。
GDVがレトロウイルスベクターである好ましい実施態様において、このレトロ
ウイルスベクターに保有されている核酸分子は、生ウイルスの産生を可能にする
のに十分な大きさのものであるべきである。本発明に関して言えば、感受性単層
上で感染性ウイルスの測定可能な任意の力価が生成すれば、「生ウイルスの産生
」が考えられる。好ましい実施態様の範囲内において、レトロウイルスベクター
GDV内の異種配列は、少なくとも100塩基、少なくとも2kb、3.5kbもしくは7kb、
または少なくとも8kbの異種配列を含有する。
ウイルスカプシドまたは細菌細胞膜などの任意の被覆のない核酸分子も本発明
においてGDVとして使用するのに適している。このような「裸の」核酸には、プ
ラスミド、被覆のないウイルスベクター、および任意の制御領域のない裸の遺伝
子も含まれる。GDVはDNAであってもRNAであってもよく、または1つの分子にDNA
とRNAとを両方含むこれら2つの組み合わせであり得る。
別の代わりの他の実施態様において、GDVはリポソームである。リポソームは
、脂質二重層によって囲まれた水性画分からなる小さな脂質ベシクルであり、代
表的には、球状またはわずかに細長い構造を有し、直径数百オングストロームで
ある。リポソームは、いくつかの容易に利用される特徴を示す。適切な条件下で
、リポソームは、標的細胞の細胞膜またはリポソームを内部移行した細胞内のエ
ンドサイトーシスによるベシクルの膜と融合し得、これによってその内容物を細
胞質に排出し得る。しかし、標的細胞の表面との相互作用の前に、リポソーム膜
は、例えば、細胞質中の分解酵素から膜内容物を隔離して保護する比較的不透過
性の障壁として機能する。このため、リポソームは「マイクロピル(micropill
)」とも呼ばれる。さらに、リポソームは合成的な構造を有するため、特別に生
成したリポソームは所望の特徴を有するように設計され得る(Stryer,L.,Bioc
hemistry,236-240頁 1975(W.H.Freeman,San Francisco); Szokaら,Biochim
,Biophys.Acta.600:1-18(1980); Bayerら,Biochim.Biophys.Acta.550:
464(1979); Rivnayら,Meth.Enzymol.149:119(1987); Wangら,PNAS 84:7851
,1987およびPlantら,Anal.Biochem.176:420(1989)。
本発明のにおいて、GDVとして使用するに適した細菌細胞としては、抗腫瘍剤
など細胞傷害性物質を細胞表面で発現するか、または細菌から搬出される細菌が
挙げられる。代表的な例としては、BCG(Stover,Nature 351:456-458,1991)
およびサルモネラ(Newtonら,Science 244:70-72,1989)が挙げられる。本発明
において使用するに適切な真核細胞は、プロデューサー細胞を含む。
本発明のGDVは、同じ核酸骨格を有し得る(例えば、シンドビスまたはワクシ
ニアなどの同じウイルスに由来する)が、その場合には、いくつかの生物学的機
能を異にするウイルスベクターをもたらす異なるプロモーター、その他の調節配
列、核酸配列などを有していなければならない。あるいは、ベクターは、異なる
骨格を有し得る(例えば、一方のベクターがシンドビス由来で他方のベクターが
ワクシニア由来であるような異なるウイルスに由来する)。この例では、ベクタ
ーは、同一または異なる調節配列、所望の核酸配列などを有し得る。骨格は、DN
A、RNAまたはDNAおよびRNAの両方の組み合わせのいずれかであり得る。さらに、
GDVとして使用されるベクターは、例えば、ウイルスベクターのみもしくは細菌
ベクターのみ、または1つのウイルスベクターおよび1つの真核ベクターのみを
有する群、または1つの細菌ベクター、1つのウイルスベクター、1つの真核ベ
クターを有する群のような任意の所望のベクター群を組み合わせ得る。
本発明の1つの実施態様において、GDVは、事象特異的なプロモーターの活性
化により核酸分子が発現されるような、事象特異的なプロモーターの転写制御条
件下の核酸分子を含有する。本発明に関して数多くの事象特異的なプロモーター
を利用し得、例えば、チミジンキナーゼまたはチミジル酸シンテターゼプロモー
ターのような細胞増殖によって活性化される(あるいはそうでなければ、細胞周
期依存性)プロモーター(Merrill,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:4987-91,
1989; Dengら,Mol.Cell.Biol.9:4079-82,1989);細胞がウイルスに感染
した際に活性化されるα-またはβ-インターフェロンプロモーターのようなプロ
モーター(Fan and Maniatis,EMBO J.8(1):101-110,1989; Goodbournら Ce
ll 45:601-610,1986);ホルモンが存在することで活性化されるプロモーター
(例えば、エストロゲン応答プロモーター;Tooheyら,Mol.Cell.Biol.6:452
6-38,1986を参照のこと)が挙げられる。
好ましい実施態様において、組換えウイルスベクター(好ましいが、必須では
ない、組換えMLVレトロウイルス)は、細胞周期依存性プロモーター(例えば、
ヒト細胞チミジンキナーゼまたはトランスフェリンレセプタープロモーター)の
ような事象特異的なプロモーターから発現される遺伝子を保有する。これは、主
に腫瘍などの増殖細胞において転写的に活性なものである。このように、これら
のプロモーターからの転写を活性化し得る因子を含む複製細胞は、GDVによって
産生された物質によって優先的に影響を受ける(例えば破壊される)。
本発明の別の実施態様の範囲内で、GDVは、組織特異的なプロモーターの活性
化により核酸分子が発現されるような、組織特異的プロモーターの転写制御条件
下の核酸分子を含有する。本発明に関して、種々の組織特異的プロモーターが利
用され得る。このようなプロモーターの代表的な例としては、ホスホエノールピ
ルビン酸カルボキシキナーゼ(Hatzogiouら,J.Biol.Chem.263:17798-808,1
988; Benvenistyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1118-22,1989; Vaulont
ら,Mol.Cell.Biol.9:4409-15,1989)、アルブミンプロモーター、αフェ
トプロテインプロモーター(Feuermanら,Mol.Cell.Biol.9:4204-12,1989;
CamperおよびTilghman,Genes Develop.3:537-46,1989)およびアルコール
脱水素酵素プロモーター(Felder,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5903-07,1
989)のような肝臓特異的プロモーター;IgGプロモーターなどのB細胞特異的プ
ロモーター;ガン胎児性抗原プロモーター(CEA)(Schreweら,Mol.and Cell
.Biol.10:2738,1990)のような乳癌腫または肝細胞癌腫特異的プロモーター
;エラスターゼプロモーターのような膵臓腺房細胞特異的プロモーター(Swift
ら,Genes Develop.3:687-96,1989);カゼインプロモーターのような乳上皮
特異的プロモーター(Dopplerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:104-08,198
9);ポルフォビリノーゲンデアミナーゼプロモーターのような、赤血球細胞に
おいて活性な赤血球特異的転写プロモーター(Mignotteら,Proc.Natl.Acad.
Sci.USA 86:6458-52,1990);α-またはβ-グロビン特異的プロモーター(van
Assendelftら,Cell 56:969-77,1989,Forresterら,Proc.Natl.Acad.Sci
.USA 86:5439-43,1989);ミオD結合部位のような、骨格筋を調節するプロモ
ーター(Burden,Nature 341:716,1989; Weintraubら,Proc.Natl.Acad.Sci
.USA 86:5434-38,1989);インスリンプロモーターのような、膵臓のβ細胞に
特異的なプロモーター(Ohlssonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4228-31,
1988; Karlssonら,Mol.Cell.Biol.9:823-27,1989);成長ホルモン因子プ
ロモーターのような、脳下垂体に特異的なプロモーター(Ingrahamら,Cell 55:
519-29,1988; Bodnerら,Cell 55:505-18,1988);チロシンヒドロキシラーゼ
プロモーターのような、メラニン形成細胞に特異的なプロモーター;HER2/neuプ
ロモーターのような乳癌腫特異的プロモーター(Talら,Mol.and Cell.Biol.
7:2597,1987);T細胞レセプタープロモーターのようなT細胞特異的プロモー
ター(Andersonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3551-54,1988; Winotoお
よびBaltimore,EMBO J.8:729-33,1989);オステオカルシンプロモーターの
ような骨芽細胞または骨特異的プロモーター(Markoseら,Proc.Natl.Acad.S
ci.USA 87:1701-1705,1990; McDonnellら,Mol.Cell.Biol.9:3517-23,19
89; Kernerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:4455-59,1989)、IL-2プロモ
ーター、IL-2レセプタープロモーター、乳清(WAP)プロモーターおよびMHCクラ
スIIプロモーターなどが挙げられる。
本発明に関して、例えば、βグロビン遺伝子およびT細胞マーカーCD2のよう
な遺伝子座規定エレメントを含む遺伝子発現を制御する種々の他のエレメントを
利用し得る。さらに、スプライシングおよび核輸送レベルで発現を制御するエレ
メントは、βグロビンイントロン配列、HIV-1のrevおよびrreエレメント、D型
アカゲザルレトロウイルスのCTEエレメントである。
本発明の好ましい実施態様の範囲において、GDVはレトロウイルスベクターで
あり、遺伝子は腫瘍に対する物質を産生する。この遺伝子は、腫瘍由来の組織に
対する特異性を有する組織特異的プロモーターの制御下にある。レトロウイルス
ベクターは複製細胞のゲノムに優先的に組み込まれるので(例えば、正常な肝細
胞は複製していないが、肝細胞癌腫の細胞は複製している)、このような2種類
の特異性レベル(ウイルス組み込み/複製および組織特異的転写調節)によって
、腫瘍細胞が優先的に殺傷される。
本発明のさらに別の関連する実施態様において、GDVは、事象特異的プロモー
ターおよび組織特異的プロモーターの両方の活性化により核酸分子が最大に発現
されるような、事象特異的プロモーターおよび組織特異的プロモーターの両方の
転写制御下の核酸分子を含有する。特に、このようなベクターを使用することで
、核酸分子から発現された物質は、両方の特徴(例えば、上記の例では、組み合
わされたプロモーターエレメントは急速に分裂する肝細胞においてのみ機能する
)を満足する細胞型においてのみ発現される。本発明の好ましい実施態様の範囲
において、細胞型特異性の厳密さを改善するために転写プロモーターエレメント
の数を増し得る。
上記の転写プロモーター/エンハンサーエレメントは、内部プロモーター(例
えばレトロウイルスについてはウイルスLTR間に存在する)として存在する必要
はないが、改変ウイルスLTRから条件特異的(すなわち、事象または組織特異的
)転写発現が直接起こるように、転写制御エレメントを、それ自体が転写プロモ
ーターであるウイルスLTRにおいて添加または置換し得る。この場合、最大発現
させるための条件は、レトロウイルスパッケージング細胞株を模倣しているか(
例えば、増殖条件を変える、必要な発現トランスレギュレータを供給する、ま
たは適切な細胞株をパッケージング株の親として使用する)、または、LTR改変
を3LTR U3領域に限定し、最大の組換えウイルス力価を得る必要がある。後者の
場合、感染/組み込みが1回行われた後に、その時点で3LTR U3が5LTR U3であれ
ば、所望の組織特異的発現が得られる。同様に、その他のウイルスベクターにつ
いても、プロモーターは外因性であるか、または正常なウイルスプロモーターエ
レメントとのハイブリッドであり得る。
また、本発明は真核細胞重層ベクターイニシエーション系も提供する。この系
は、5プロモーター、1つ以上の異種ヌクレオチド配列を発現し得、そして自律
的または1つ以上の因子に応答して細胞を複製し得る構築物、ポリアデニル化配
列、および転写終結配列を含む。簡単に言うと、真核細胞重層ベクターイニシエ
ーション系によって、異種ヌクレオチド配列の発現を制御する二段階すなわち「
層状の」機構が提供される。第1の層は第2の層の転写を開始し、5プロモータ
ー、ポリアデニル化部位、および転写終結部位、ならびに必要であれば、1つ以
上のスプライス部位を含有する。このような目的で用いるに適切なプロモーター
の代表的な例としては、CMV、レトロウイルスLTR、SV40、βアクチン、免疫グロ
ブリンプロモーターのようなウイルスまたは細胞プロモーター、ならびにメタロ
チオネインプロモーターおよびグルココルチコイドプロモーターのような誘導プ
ロモーターが挙げられる。第2の層は、1つ以上の異種ヌクレオチド配列を発現
し得、自律的または1つ以上の因子に応答して細胞を複製し得る構築物を含む。
本発明の1つの実施態様において、この構築物は上記のシンドビスGVDであり得
る。
本発明の真核細胞重層ベクターイニシエーション系における構築物は、アルフ
アウイルスベクター構築物であり得る。他の実施態様において、この構築物は、
ポリオウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、風疹、黄熱病、HCV
、TGEV、IBV、MHV、BCV、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイル
ス、麻疹ウイルス、呼吸シンチウムウイルス、インフルエンザウイルス、RSV、M
oMLV、HIV、HTLV、デルタ型肝炎ウイルス、およびアストロウイルス(Astrovirus
)からなる群より選択されるウイルスに由来し得る。さらに他の実施態様におい
て、cDNAからRNAの5'合成を開始させ得るプロモーターは、MoMLVプロモーター、
メタロ
チオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、SV40プロモーター
、およびCMVプロモーターからなる群より選択される。さらなる実施態様におい
て、真核細胞重層ベクターイニシエーション系は、さらにポリアデニル化配列を
含む。
本発明のさらなる実施態様において、上記の局面のいずれかにおいて、アルフ
ァウイルスベクターcDNA構築物、は、アウラ(Aura)、フォートモーガン(Fort Mo
rgan)、ベネズエラウマ脳脊髄炎、ロス川、セムリキ森林、シンドビス、および
マヤロからなる群より選択されるアルファウイルス由来であり得る。
本発明での使用に適したプロモーターの代表例は、真核細胞性プロモーター(
例えば、RNAポリメラーゼI,II、またはIIIにより認識される)および原核細胞
性プロモーターの両方、ならびに誘導性または非誘導性(すなわち、構成的)プ
ロモーター(例えば、マウス白血病ウイルスプロモーター(例えば、MoMLV)、メ
タロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、Drosophilaア
クチン5C遠位プロモーター、SV40プロモーター、熱ショックタンパク質65プロ
モーター、熱ショックタンパク質70プロモーター、免疫グロブリンプロモーター
、マウスポリオーマウイルスプロモーター(「Py」)、ラウス肉腫ウイルス(「
RSV」)、BKウイルスおよびJCウイルスプロモーター、MMTVプロモーター、アル
ファウイルス接合領域、CMVMIEプロモーター、アデノウイルスVAIRNA、rRNAプロ
モーター、tRNAメチオニンプロモーター、およびlacプロモーター)を含む。第
2の層は1つまたはそれ以上の異種ヌクレオチド配列を発現し得、そして自律的
にまたは1つまたはそれ以上の因子に応答してかのいずれかで、細胞中で複製し
得る構築物を含む。本発明の1つの実施態様において、第2の層の構築物は前述
のアルファウイルスベクター構築物であり得る。
真核細胞重層ベクターイニシエーション系の第1の層として広範なベクター系
が使用され得、以下において分類されるようなDNAウイルスから開発されるウイ
ルス性ベクターの構築物を含む:例えば、カナリアポックスウイルス(canary po
x virus)またはワクシニアウイルスを含むポックスウイルス科(例えば、Fisher
-Hochら、PNAS 86 : 317-321、1989 ; Flexnerら、Ann.N.Y.Acad.Sci.569 : 86
-103、1989;Flexnerら、Vaccine 8 : 17-21,1990 ; 米国特許第4,603,112号、
同第4,769,330号および同第5,017,487号;WO 89/01973);BKV、JCVまたはSV40
の
ようなパポーバウイルス科(Papoviridae)(例えば、Mulliganら、Nature 277 : 1
08-114、1979);アデノウイルスのようなアデノウイルス科(例えば、Berkner
ら、Biotechniques 6 : 616-627、1988 ; Rosenfeldら、Science 252 : 431-434
、1991);アデノ関連ウイルスのようなパルボウイルス科(例えば、Samulskiら
、J.Vir.63 : 3822-3828、1989 ; Mendelsonら、Virol.166 : 154-165、1988
; PA 7/222,684);単純ヘルペスウイルスのようなヘルペスウイルス科(例え
ば、Kit,Adv.Exp.Med.Biol.215 : 219-236、1989);およびヘパドナウイ
ルス科(例えば、HBVウイルス)、ならびにレトロウイルス科のようなDNA中間体
から複製する特定のRNAウイルス(例えば、米国特許第4,777,127号、GB 2,200,6
51、EP 0,345,242、およびWO91/02805を参照のこと);レトロウイルス科は、Mo
MLVのような白血病中のウイルスおよびHIVのような免疫欠損ウイルスを含む、例
えば、Poznansky、J.Virol.65:532-536、1991。
同様に、広範なベクター系は、真核細胞重層ベクターイニシエーション系の第
2の層として利用され得、例えば以下の科由来のウイルス由来のベクター系を含
む:例えば、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、ライノウイルス、
コクサッキーウイルス)、カリシウイルス科、トガウイルス科(例えば、アルフ
アウイルス、風疹ウイルス)、フラビウイルス科(例えば、黄熱病ウイルス)、
コロナウイルス科(例えば、HCV,TGEV、IBV、MHV、BCV)、ラブドウイルス科、
フィロウイルス科、パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイル
ス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、および呼吸性シンシチウムウイル
ス)、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス)、ブニヤウ
イルス科、アレナウイルス科、レトロウイルス科(例えば、RSV、MoMLV,HIV、H
TLV)、デルタ型肝炎ウイルス、およびアストロウイルス。さらに、非哺乳動物R
NAウイルス(ならびにそれら由来の成分)がまた利用され得、例えば、細菌およ
びバクテリオファージレプリカーゼ、ならびにトパモウイルス(Topamovirus)お
よびブロモウイルスのような植物ウイルス由来の成分を含む(Straussら、Micro
.Rev.58:491-562、1994を参照のこと)。真核細胞重層イニシエーション系の
産生は、PCT出願番号WO 95/08404796(これは本明細書中に参考として援用され
る)にさらに記載される。
好ましい実施態様において、本発明は、単一の組成物として投与されたレトロ
ウイルスベクターを包含する多様なGDVを提供する。このレトロウイルスベクタ
ーは、好ましくはクロスレス(clossless)骨格ベクターである、KT-1、KT-3、ま
たは組織特異的または事象特異的な発現を促進するプロモーターを用いるベクタ
ーを含む群から選択される。さらに、レトロウイルスベクターは、好ましくは、
ネオマイシン耐性のようなマーカー遺伝子、および単純ヘルペスウイルスチミジ
ンキナーゼ(HSVTK)遺伝子のような「自殺遺伝子」の1つまたは両方を含む。
次いで、これらのGDVは、適切なパッケージング細胞株に導入され、この細胞
株は、GDVがそれぞれアンフォトロピック、ゼノトロピック、またはポリトロピ
ックな特徴を示すような、特に所望の特徴を選択し得る。他の適切なパッケージ
ング細胞株は、293 2-3 VSV-G系、および好ましい場所へ(例えば地域のリンパ
節または特定の抗原を提示する細胞)ベクターの形質導入の標的化を容易にする
ために改変されたベクター構造タンパク質を示す細胞株を含む。次いでこの細胞
株は所望の組成物を含むことを確認するために試験され得る。
次に、細胞培養物を調製し、レトロウイルスベクターを含む上清液を回収する
。この液体はGDV潜在力について試験され得、典型的には、適切なコロニー形成
単位(CFU)またはプラーク形成単位(PFU)を測定される。好ましいアプローチにお
いて、次いで、このGDVは宿主動物または宿主植物に投与される前に濃縮および
精製される。
II.核酸分子
本発明に従って動物に投与される核酸分子は、これを保有するGDVにおいて天
然に存在せず、および不活性でもなく一般に動物に対して有害でもなく、むしろ
所望の利益、典型的には、疾患またはその他の病原性物質と闘う能力を提供する
。本明細書中において使用する「病原性物質」は、疾患状態を担う細胞をいう。
病原性物質の代表的な例としては、腫瘍細胞、自己反応性免疫細胞、ホルモン分
泌細胞、通常有する機能を欠損している細胞、通常であればその細胞型に生じな
い不適切な遺伝子発現を付加的に有する細胞、およびバクテリア、ウィルス、ま
たはその他の細胞間寄生虫に感染した細胞などが挙げられる。さらに、本明細書
中
において使用する「病原性物質」はまた、レトロウィルスベクター(例えば、誤
った細胞型)を過剰に発現するまたは不適切に発現する細胞、または宿主細胞ゲ
ノムへの不適切な挿入に起因して腫瘍形成性になった細胞をいうこともある。
広範に多様な核酸分子が本発明のGDVによって保有され得る。このような核酸
分子の例としては、物質をコードする遺伝子、およびその他の核酸分子、ならび
に特定の細胞間核酸分子を組み込み、その分子を不活性化する不活性化配列のよ
うな生物学的に活性な核酸分子が挙げられる。核酸分子は、物質の発現を必要と
せずに、分子自体が所望の利点を提供する場合に、生物学的に活性である。例え
ば、生物学的に活性な核酸分子は、特定の細胞間核酸分子を組み込み、そしてそ
の分子を不活性化する不活性化配列であり得るか、または、この分子は、結合能
力を提供する立体配置を有するtRNA,rRNA、またはmRNAであり得る。
物質としては、タンパク質(例えば、単鎖分子を含む抗体)、免疫刺激性分子
(例えば、抗原)、免疫抑制分子、ブロッキング剤、および緩和剤(例えば、ト
キシン、アンチセンスリボ核酸、リボザイム、酵素、および病原性物質の機能を
阻害し得るその他の物質)が挙げられる。物質としてはまた、サイトカインおよ
び種々のポリペプチドまたはペプチドホルモン、およびそのアゴニストまたはア
ンタゴニストが挙げられる。ここで、これらのホルモンは、組織(例えば、下垂
体、視床下部、腎臓、内皮細胞、肝臓、膵臓、骨、造血髄、および副腎)に由来
し得る。このような物質を、増殖の誘導、組織の退行、免疫応答の抑制、アポト
ーシス、遺伝子発現、レセプター-リガンド相互作用のブロック、免疫応答に対
して使用し得、ならびに特定の貧血、糖尿病、感染症、高血圧、異常な血液化学
(例えば、血中コレステロール値の上昇、血液凝固因子の欠如、HDL下降を伴うL
DL上昇)に対する処置として使用し得る。このような物質をまた、アルツハイマ
ー関連アミロイドタンパク質のレベル、骨の浸食/カルシウム沈着、およびステ
ロイドホルモン、プリンおよびピリミジンのような種々の代謝物のレベルを制御
するために使用し得る。
本発明において「機能を阻害し得る」は、緩和剤が、例えば、細胞に存在する
物質を病原性物質の機能を通常は阻害しない物質から阻害する物質へ変換するこ
とにより、機能を直接的または間接的のいずれかで阻害することを意味する。ウ
ィルス疾患に対するこのような機能の例としては、吸着、複製、遺伝子発現、ア
センブリ、感染細胞からのウィルスの排出が挙げられる。ガン性疾患に対するこ
のような機能の例としては、細胞複製、外部シグナルに対する感受性(例えば接
触阻害)、および抗オンコジーンタンパク質の産生の欠損が挙げられる。2つ以
上の物質は、それらが上述の異なる物質群から選択される場合、異なる物質であ
り、そして2つ以上の物質は、所望のタンパク質についての等電点が異なる、ま
たは同一の抗体の2つのバージョン間で親和性が異なるなど、生物学的に異なる
機能を有する物質である限り(この場合、差異により一方の物質とは異なる条件
下で活性化される)、それらが同じ群から選択されても異なる物質である(また
は同じ酵素または同じ抗体のような、同一の根底にある物質でさえあり得る)。
このような区別は、例えば、細胞分裂、転写、または翻訳の間に、ポリメラーゼ
エラーに起因して、実質的に全ての核酸の複製および発現に固有の天然の変異を
含まない。従って、天然の変異体から予測される程度に異なるが、それ以外は同
一であるGDVは、本発明の文脈内の異なるGDVではない。
特定の実施態様において、生物学的に異なる機能は、本発明の2つ以上のGDV
により保有されるそれぞれの核酸配列が、全て生物学的条件下で、同時に発現さ
れずまたは同時にゲノムに組み込まれない(または、そうでなければ、同時に所
望の目的のために使用されない)ことであり;ある生物学的条件下で、一方は「
オン」(すなわち、検出可能な治療効果を有する)であるが、もう一方は「オフ
」(すなわち、検出可能な治療効果を有しない)である。
GDVおよび物質は、好ましくは、上述の異なる群から選択されるか、そうでな
ければ、相乗効果または協同効果を提供するべきである。しかし、組成物中のGD
Vまたは物質は、協同効果をほとんどまたは全く示さなくてもよい。
本発明の1つの実施態様において、DNA分子として緩和剤の発現を指向する真
核ウィルスcDNA発現ベクターのような種々のGDVを投与するための方法が提供さ
れる。本発明の別の実施態様において、RNA分子として緩和剤の発現を指向する
種々のGDVを投与するための方法を提供する。
細胞増殖の阻害に直接的に作用する緩和剤の代表的な例としては、以下のよう
なトキシンが挙げられる:リシン(Lambら,Eur.J.Biochem.148:265-270,19
85)、アブリン(Woodら,Eur.J.Biochem.198:723-732,1991; Evensenら,J
.of Biol.Chem.266:6848-6852,1991; Collinsら,J.of Biol.Chem.265:8
665-8669,1990; Chenら,Fed.of Eur.Biochem Soc.309:115-118,1992)、
ジフテリアトキシン(Twetenら,J.Biol.Chem.260:10392-10394,1985)、コ
レラトキシン(Mekalanosら,Nature 306:551-557,1983; Sanchez & Holmgren
,PNAS 86:481-485,1989)、ゲロニン(gelonin)(Stirpeら,J.Biol.Chem.2
55:6947-6953,1980)、アメリカヤマイモゴボウ(Irvin,Pharmac.Ther.21:3
71-387,1983)、抗ウィルスタンパク質(Barbieriら,Biochem.J.203:55-59,
1982; Irvinら,Arch.Biochem.& Biophys.200:418-425,1980; Irvin,Arch
.Biochem.& Biophys.169:522-528,1975)、トリチン(tritin)、赤痢トキシン
(Calderwoodら,PNAS 84:4364-4368,1987; Jacksonら,Microb.Path.2:147-
153,1987)、およびシュードモナスエクソトキシンA(CarrollおよびCollier
,J.Biol.Chem.262:8707-8711,1987)。
本発明の他の局面において、GDVは、それ自体有毒ではないが、ウィルスまた
はその他の病原体に特異的なプロテアーゼのようなタンパク質によって処理また
は修飾される場合、有毒な形態に変換される産物を特定する遺伝子を保有する。
例えば、組換えレトロウィルスGDVは、プロタンパク質鎖をコードする遺伝子を
保有し得るが、これはHIVプロテアーゼによって処理される際に毒性になる。よ
り具体的には、HIVウィルスにコードされるプロテアーゼに対してアレンジして
適当な「プロ」エレメントを認識して切断することによって、有毒なリシンまた
はジフテリアA鎖の不活性な合成プロタンパク質形態を切断して活性な形態にし
得る。
本発明のさらに別の局面において、組換えウィルスベクターが提供され、この
ベクターは、不活性な前駆物質を活性化して、病原性物質の活性インヒビターま
たは条件的な毒性緩和剤(これは、病原状態を発現する細胞に対して毒性である
緩和剤である)に活性化し得る物質の発現を指向する構築物を保有する。本願明
細書中に提供された開示から当業者には明らかなように、広範に多様な不活性前
駆物質を病原性物質の活性インヒビターに変換し得る。例えば、レトロウィルス
逆転写酵素(従って、ウィルス複製)を特異的に阻害するために、細胞機構によ
って、抗ウィルスヌクレオシドアナログ(例えば、AZTまたはddC)は、ヌクレオ
チド三リン酸形態に代謝される(Furmamら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:83
33-8337,1986)。抗ウィルスヌクレオシドアナログのそれらの活性形態への代
謝を補助する単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSVTK)または水痘帯状
疱疹ウィルスチミジンキナーゼのような遺伝子産物(例えば、タンパタ質)の発
現を指向する組換えウィルスベクターは、それゆえ、ヌクレオシドアナログ前駆
物質(例えばAZTまたはddC)をその活性形態に活性化するのに有用である。これ
によって、AZT治療またはddC治療は、より効果的であり、低用量、およびほとん
どない全身性毒性、および生産的感染に対するより高い作用強度を可能にする。
ヌクレオチド三リン酸形態がレトロウィルス逆転写酵素に対する選択性を示すが
、細胞ヌクレオシドおよびヌクレオシドキナーゼの基質特異性の結果、リン酸化
はされない別のヌクレオシドアナログが、より効果を生じる。
本発明の一実施態様において、HSVTK遺伝子を、構成的なマクロファージまた
はT細胞特異的プロモータの制御下で発現させ得、およびマクロファージまたは
T細胞に導入し得る。HSVTKの構成的な発現によって、AZTまたはddCのようなヌ
クレオチドアナログの、生物学的に活性なヌクレオチド三リン酸形態へのより効
果的な代謝発現を生じ、これによってより優れた効力、より低用量の送達、ほと
んどない全身性毒性、および生産的感染に対するより高い作用強度を提供する。
ヌクレオチド三リン酸形態がレトロウィルス逆転写酵素に対して選択性を示すが
、細胞ヌクレオシドおよびヌクレオチドキナーゼの基質特異性の結果としてリン
酸化はされない別のヌクレオシドアナログはまた、本発明の文脈内で利用され得
る。
本発明の関連した局面において、GDVは、病原性物質の存在下で細胞傷害性を
ほとんどまたは全く有しない別の化合物を毒性産物へ活性化する物質の発現を指
向し、それにより病原性物質に対して局所的な治療を達成する。この場合、GDV
由来の遺伝子産物の発現は、病原状態を同定する細胞間シグナルのような病原性
物質に関連した実体が存在し、それにより非病原細胞の破壊を防止する状況に限
定される。病原条件を有するかまたはこれに感受性である細胞に対するベクター
を保有するGDVを標的化することによって、この細胞型特異性はまた、感染レベ
ルで付与され得る。
本発明の関連した局面において、GDVは、細胞傷害性をほとんどまたは全く有
しない化合物を毒性産物へ活性化する遺伝子産物の発現を指向する。簡単に言う
と、細胞傷害性をほとんどまたは全く有しない化合物を直接的または間接的に毒
性産物へ活性化する広範に多様な遺伝子産物を、本発明の文脈内において利用し
得る。このような遺伝子産物の代表的な例としては、特定のプリンアラビノシド
および置換ピリミジン化合物を選択的に一リン酸化して、これらの化合物を細胞
傷害性代謝物または細胞増殖抑制性代謝物に変換するHSVTKおよびVZVTKが挙げら
れる。より具体的には、ガンシクロビル、アシクロビル、またはそれらの全ての
アナログ(例えば、FLAC、DHPG)のような薬物のHSVTKへの曝露は、この薬物を
対応する活性ヌクレオチド三リン酸形態へリン酸化する。
例えば、本発明の1つの実施態様において、GDVは、HIVプロモータ(HIV tat
タンパク質によって活性化される場合を除いて転写的にサイレントであるとして
知られている(米国特許出願第07/586,603号を参照のこと))の転写制御下で、
単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(「HSVTK」)遺伝子下流の発現を指向
する。簡単に言えば、HIVに感染してGDVを保有しているヒト細胞におけるtat遺
伝子産物の発現は、HSVTKの産生量の増加を引き起こす。次いで、(インビトロ
またはインビボのいずれかで)細胞を、ガンシクロビル、アシクロビル、または
そのアナログ(FLAC,DHPG)のような薬物に曝露する。上述のように、これらの
薬物はHSVTKによってリン酸化され(しかし、細胞チミジンキナーゼによってリ
ン酸化されない)、対応する活性ヌクレオチド三リン酸形態になることが知られ
ている。アシクロビル三リン酸は、一般に細胞ポリメラーゼを阻害し、トランス
ジェニックマウスにおいてHSVTKを発現している細胞の特異的な破壊に導く(Bor
relliら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:7572,1988を参照のこと)。組換え
ベクターを含有し、およびHIV tatタンパク質を発現しているそれらの細胞は、
特定の用量のこれらの薬物の存在により選択的に殺傷される。
本発明の1つの実施態様において、cis-作用性成分(「CRS/CAR」)を転写産
物中に含むことによって、HSVTK条件的致死遺伝子の発現を、より一層HIV特異的
にし得、最適な活性のために、別のHIV遺伝子産物(米国特許出願第07/586,603
号を参照のこと)すなわちrevを必要とする(Rosenら,Proc.Natl.Acad.Sci
.
USA 85:2071,1988)。より一般的には、mRNAに存在するcisエレメントはmRNA安
定性または翻訳可能性を調節するためにいくつかの場合において示されている。
この型の配列(すなわち、遺伝子発現の翻訳後調節)は、ベクター遺伝子発現の
事象特異的調節または組織特異的調節に使用され得る。さらに、これらの配列(
すなわち、HIVに対するrev-応答性「CRS/CAR」エレメントまたはtat-応答性「TA
R」エレメント)の多量体化は、さらに優れた特異性を生じるために利用し得る
。
上述の実施態様の場合に類似の様式で、プリンまたはピリミジンベースの薬物
のリン酸化、ホスホリボシル化、リボシル化、またはその他の代謝についての遺
伝子を保有するGDVを生成し得る。このような遺伝子は、哺乳類の細胞における
等価物を有さず、ウィルス、細菌、真菌、または原生動物のような生物に由来し
得る。代表的な例としては、チオキサンチンをチオキサンチン一リン酸に変換す
るE.coliグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(「gpt)遺伝子産物(Be
snardら,Mol.Cell.Biol.7:4139-4141,1987を参照のこと);ミトマイシン
ホスフェートおよびドキソルビシンホスフェートのような不活性なリン酸化合物
を毒性の脱リン酸化化合物に変換するアルカリホスファターゼ;5-フルオロシト
シンを毒性化合物である5-フルオロウラシルに変換する真菌(例えばFusarium o
xysporum)または細菌のシトシンデアミナーゼ(Mullen,PNAS 89:33,1992)、
para-N-ビス(2-クロロエチル)アミノベンゾイルグルタミン酸からグルタミン酸
を切断し、それによって毒性安息香酸マスタード(mustard)を生成するカルボキ
シペプチダーゼG2;およびドキソルビシンおよびメルファランのフェノキシアセ
タビド(phenoxyacetabide)誘導体を毒性化合物に変換するペニシリンVアミダー
ゼなどが挙げられる。この型の条件的致死遺伝子産物は、現在知られているプリ
ンまたはピリミジンベースの多くの抗ガン剤に適用されており、効果的な細胞傷
害性剤となるために、細胞間リボシル化またはホスホリボシル化をしばしば必要
とする。条件的致死遺伝子産物はまた、プリンまたはピリミジンアナログではな
い非毒性薬物を代謝して細胞傷害性の形態にし得る(Searleら,Brit.J.Cance
r 53:377-384,1986を参照のこと)。
アデノ関連ウィルスベクターおよびより短い期間の効果を有するベクター(例
えば、アデノウィルスベクターおよび後述するその他のベクター)を含むウィル
スベクターのようなGDVを用いて、不活性な前駆物質を細胞において活性な産物
へのいくつかの種の条件的活性化が達成され得る。このようなベクターは、効果
的に細胞に入り込み、2、3日〜1か月程度の期間にわたって、ベクターによっ
てコードされるタンパク質を発現させ得る。この期間は病原細胞を殺傷するのに
十分な期間でなければならない。さらに、物理的な遺伝子移行法も、同様に利用
され得る。
さらに、標的病原が哺乳動物ウィルスである場合、哺乳動物ウィルスが、一般
に、他のウィルスプロモータエレメントのその後の転写活性化に必要である「即
時初期」遺伝子を有する傾向がある事実を利用してGDVを構築し得る。この性質
の遺伝子産物は、ウィルス感染の細胞間シグナル(または「同定物質」)につい
ての優れた候補である。従って、このような「即時初期」ウィルス遺伝子産物に
応答性である転写プロモータエレメントから転写された条件的致死遺伝子は、任
意の特定のウィルスで感染した細胞を、特異的に殺傷し得る。さらに、ヒトαお
よびβインターフェロンプロモータエレメントは、広範に多様な非関連ウィルス
による感染に応答して転写的に活性化されるので、これらのウィルス応答性エレ
メント(VRE)から、例えば、HSVTKなどの条件的致死遺伝子産物を発現するベク
ターの導入により、多様な異なるウィルスで感染した細胞の破壊が生じ得る。
本発明の別の実施態様において、ウィルスアセンブリを阻害する不完全な妨害
ウィルス構造タンパク質の送達および発現に関与するインヒビター緩和剤のよう
な物質を産生するための方法が提供される。この情況において、GDVは、ウィル
ス粒子のアセンブリを優先的な様式で阻害する不完全なgag、pol、env、または
その他のウィルス粒子タンパク質またはペプチドをコードする。このような阻害
は、ウィルス粒子の正常なサブユニットの相互作用が、不完全なサブユニットと
の相互作用によって破壊されるので生じる。
阻害性緩和剤の効率を増加させる方法の1つは、問題のウィルスによる耐性細
胞の感染の確率を増加させる遺伝子の発現と共に、ウィルス阻害性遺伝子のよう
な阻害性遺伝子を発現させることである。結果は、産生性感染事象について拮抗
する非産生性「行き止まり」事象である。HIVの特定の場合において、(上述の
ようにアンチセンスtatなどを発現することによって)HIV複製を阻害するGDVが
投与され得、また、CD4のような感染に必要なタンパク質を過剰に発現させ得る
。この方法において、比較的少数のベクター感染HIV耐性細胞が、フリーウィル
スまたはウィルス感染細胞を有する複数の非産生性融合事象に対する「シンク」
または「マグネット」として作用する。
本発明の別の実施態様において、ウィルスプロテアーゼに特異な阻害ペプチド
またはタンパク質のような物質を発現させるための方法が提供される。ウィルス
プロテアーゼはウィルスgagおよびgag/polタンパク質を、多数の小さなペプチド
に切断する。全ての場合においてこの切断の失敗は、感染性レトロウィルス粒子
の産生の完全な阻害に導く。HIVプロテアーゼはアスパルチルプロテアーゼとし
て知られており、そしてタンパク質またはアナログ由来のアミノ酸から作製され
るペプチドによって阻害されることが知られている。HIVを阻害するGDVは、この
ようなペプチドインヒビターの1つまたは複数の融合コピーを発現する。
上述のアプローチは、多くのウィルス関連疾患、ガン、またはその他の病原性
物質に対して効果的であるべきである。
本発明のさらに他の実施態様において、緩和剤を発現するGDVが提供される。
ここで、緩和剤は膜アンカーを有し、抗腫瘍剤として作用する。このような緩和
剤は、例えば、抗腫瘍剤-膜アンカー融合タンパク質として構築され得る。簡単
に言えば、融合タンパク質の膜アンカーの局面は、例えば、周知の分子の膜貫通
ドメインを含む多様な配列から選択され得る。一般に、膜アンカー配列は、タン
パク質を膜に結合するタンパク質の領域である。通例、タンパク質を細胞膜の外
面に付着させるアンカー配列の2つの型が存在する:(1)細胞膜の脂質二重層
を通過し、そして疎水性中心領域と相互作用する膜貫通領域(このような領域を
含有するタンパク質は、内在性膜タンパク質と呼ばれる)および、(2)膜の内
在性膜タンパク質または極性表面と相互作用するドメイン(このようなタンパク
質は、末梢タンパク質または外因性タンパク質と呼ばれる)である。
本発明において用いられる膜アンカーは、膜を1回以上通過する膜貫通ドメイ
ンを含み得る。例えば、グリコホリンおよびグアニリルシクラーゼにおいて、膜
結合領域は、膜を1回通過するのに対し、ロドプシンの膜貫通ドメインは、膜を
7回通過し、ロドシュードモナスウィルスの光合成反応中心の膜貫通ドメインは
膜を11回通過する(Rossら,J.Biol.Chem.257:4152,1982; Garbers,Pharma
c.Ther.50:337-345,1991; Engelmanら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:202
3,1980; HeijneおよびManoil,Prot.Eng.4:109-112,1990を参照のこと)。
タンパク質が膜を通過する回数には関係なく、膜通過領域は、一般に、類似の構
造を有する。より具体的には、膜の内側に位置するドメインの20〜25個のアミノ
酸残基部分は、一般に、ほとんど完全に疎水性残基からなる(Eisenbergら,Ann
.Rev.Biochem.53:595-623,1984を参照のこと)。例えば、グリコホリンの膜
通過領域における28〜34個の残基は、疎水性である(Rossら;Tomitaら,Bioche
mistry 17:4756-4770,1978を参照のこと)。さらに、βシートおよびβバレル
のような構造が生じるが、X線回折、結晶構造解析、および架橋研究によって決
定されるように、膜通過領域は、一般に、αらせん構造を有する(Eisenbergら2
0; HeijneおよびManoil 109を参照のこと)。所定の配列内におけるこれらの膜
貫通らせんの位置は、疎水性プロットに基づいてしばしば予測され得る。Stryer
ら,Biochemistry,第3版 304,1988。本発明において使用するために特に好ま
しい膜アンカーとしては、膜シグナルアンカーとして機能することが示されてい
る天然に存在する細胞タンパク質(これは、非免疫原性である)(例えば、グリ
コホリン)が挙げられる。
本発明の好ましい実施態様において、膜アンカーγインターフェロン融合タン
パク質をコードするDNA配列が提供される。1つの実施態様において、Fcレセプ
ターのγ鎖の膜アンカーをコードする配列を、γインターフェロンをコードする
配列に遺伝子融合することによって、この融合タンパク質は、構築され得る。
さらに別の局面において、病原機能に対応するRNA分子を切断し、それゆえ不
活性化する1つ以上のリボザイム(RNA酵素)(HaseloffおよびGerlach,Nature
334:585,1989)をコードすることによって、GDVは治療効果を提供する。リボ
ザイムは、標的RNAにおける特異的な配列を認識することによって機能し、およ
びこの配列は、通常、12〜17bpであるので、これにより病原状態に対応する特定
のRNA配列(例えば、HIV tat)の特異的な認識が可能となり、および毒性はこの
ような病原状態に対して特異的である。さらなる特異性が、いくつかの場合にお
いて、リボザイムを上述のような条件的毒性緩和剤にすることにより達成され得
る。
さらに別の局面において、GDVはアンチセンス配列である生物学的に活性な核
酸分子を含む(アンチセンス配列はまた、核酸配列によってコードされ、次いで
転写によって宿主細胞内で産生され得る)。好ましい実施態様において、アンチ
センス配列は、インフルエンザウィルス、HIV、HSV、HPV、CMV、およびHBVをコ
ードする配列からなる群から選択される。このアンチセンス配列はまた、病原性
に必要なRNA配列に対して相補的なアンチセンスRNAであり得る。あるいは、生物
学的に活性な核酸分子は、病原性に必要なRNA配列に相補的なセンスRNA(または
DNA)であり得る。
より特定すると、生物学的に活性な核酸分子はアンチセンス配列であり得る。
簡単に言えば、アンチセンス配列は、RNA転写物に結合するよう設計され、それ
により、特定のタンパク質の細胞合成を妨げるか、または細胞によるそのRNA配
列の使用を妨げる。このような配列の代表的な例としては、アンチセンスチミジ
ンキナーゼ、アンチセンスジヒドロ葉酸レダクターゼ(MaherおよびDolnick,Ar
ch.Biochem.& Biophys.253:214-220,1987; Bzikら,PNAS 84:8360-8364,19
87)、アンチセンスHER2(Coussensら,Science 230:1132-1139,1985)、アン
チセンスABL(Fainsteinら,Oncogene 4:1477-1481,1989)、アンチセンスMyc
(Stantonら,Nature 310:423-425,1984)、およびアンチセンスras、ならびに
ヌクレオチド生合成経路における任意の酵素をブロックするアンチセンス配列が
挙げられる。
さらに、本発明のさらなる実施態様において、強力なクラスI拘束性応答を誘
導するために、抗腫瘍剤としてアンチセンスRNAを利用し得る。簡単に言えば、R
NAを結合し、およびそれにより特定のmRNAの翻訳を防止することに加え、高いレ
ベルの特定のアンチセンス配列は、大量の二本鎖RNAの形成により、インターフ
ェロンの増加した発現を誘導すると考えられている。γインターフェロンの増加
した発現は、次にMHCクラスI抗原の発現を高める。これに関して用いられる好ま
しいアンチセンス配列としては、アクチンRNA、ミオシンRNA、およびヒストンRN
Aが挙げられる。アクチンRNAとのミスマッチを形成するアンチセンスRNAは、特
に好ましい。
別の実施態様において、本発明の物質は、それ自体が治療的に有益である表面
タンパク質を含む。例えば、特にHIVの場合において、特にHIV感染細胞における
ヒトCD4タンパク質の発現は、2つの方法において有益であり得る。
1. CD4のHIV envへの細胞内結合は、可溶性CD4がフリーウィルスについて生
ウィルス粒子形成を阻害し得るが、全身的なクリアランスおよび潜在的な免疫原
性の問題を伴わないことが示されている。なぜなら、タンパク質は膜に結合した
ままであり、および構造的に内因性CD4(患者はこれに対して免疫学的に耐性で
あるべきである)と同一であるからである。
2. CD4/HIV env複合体は、細胞死の原因として関連するので、(HIV感染細
胞における過剰なHIV-envの存在下での)CD4のさらなる発現は、より迅速な細胞
死に導き、従って、ウィルス播種を阻害する。特に、これはHIVで誘導される細
胞傷害(この細胞傷害は、次いで、細胞表面上のCD4の相対的欠損に明らかに起
因する)に対するそれらの相対的屈折(relative refractility)の結果としてウ
ィルス産生用のリザーバーとして作用する単球およびマクロファージに特に適用
可能である。
本発明のなおさらなる局面は、免疫刺激を行い得るGDVの投与に関する。外来
性病原体を認識し、そしてこの病原体に対して防御する能力は、免疫系の機能に
必須である。特に、免疫系は「自己」と「非自己」(すなわち外来性)とを区別
して、宿主の防御機構が宿主組織に対するのではなく侵入してくる実体に対して
指向し得なくてはならない。細胞溶解性Tリンパ球(CTL)は、典型的に、MHCク
ラスIまたはクラスII細胞表面タンパク質と共に結合して、細胞表面認識構造(
例えば、プロセスされた病原特異的ペプチド)の提示により誘導されるか、また
は刺激される。
治療に適した疾患としては、ウィルス感染(例えば、HIV、HBVおよびHPV)、
ガン(例えば、黒色腫、腎癌腫、乳ガン、卵巣ガン、およびその他のガン)、な
らびに心臓疾患が挙げられる。
1つの実施態様において、本発明は、感受性標的細胞において抗原またはその
改変形態の発現を指向するGDVを用いることにより、特異的な免疫応答を刺激し
、
そしてウィルス拡散を阻害するための方法を提供する。ここで、抗原は、(1)
ウィルス抗原に対する免疫応答を開始し得るか、または(2)ウィルス相互作用
に必要な細胞レセプターを占領することによってウィルス拡散を防止し得るかの
いずれかである。タンパク質の発現は、一過性または経時的に安定であり得る。
免疫応答が病原性抗原に対して刺激される場合、組換えウィルスベクターは、抗
原の修飾形態(この抗原は免疫応答を刺激し、および天然の抗原に比べて病原性
が軽減される)を発現するように、好ましくは設計される。この免疫応答は、細
胞が、正しい様式(すなわち、CD3、ICAM-1、ICAM-2、LFA-1、またはこれらのア
ナログ(例えば、Altmannら,Nature 338:512,1989)のようなアクセサリー分
子を伴う、MHCクラスIおよび/またはII分子の情況)において抗原を提示する場
合に達成される。好ましい実施態様によれば、シンドビスウィルスベクターで感
染した細胞は、これを効率よく行うことが予測される。なぜなら、これらの細胞
は、真のウィルス感染を極めてよく模倣し、そして(a)非複製細胞に感染し得
;(b)宿主細胞ゲノム中へ組み込めず;ならびに(c)生命を脅かす疾患に関
連しないからである。
本発明のこの実施態様は、同様の様式において機能することが予測され得た他
の系よりも、提示細胞が完全に生存可能かつ健康であり、およびその他のウィル
ス抗原(これは、十分に免疫優勢であり得る)が発現されないという点で、さら
に利点を有する。これは明瞭な利点である。なぜなら、抗原に対する遺伝子のサ
ブフラグメントを、組換えシンドビスウィルスに選択的にクローニングすること
によって、発現される抗原性エピトープを変化させ得、そうでなければ免疫優勢
エピトープによって隠され得る免疫原性エピトープに対する応答に導くからであ
る。このようなアプローチは、1つ以上のエピトープが異なるタンパク質に由来
する、複数のエピトープを有するペプチドの発現に延長し得る。さらに、本発明
のこの局面は、ペプチドフラグメントの細胞間合成およびそのMHCクラスI分子と
の会合によって、抗原エピトープおよび遺伝子のサブフラグメントでコードされ
る抗原のペプチドフラグメントに対して指向された細胞傷害性Tリンパ球(CTL
)の効率的な刺激を可能にする。このアプローチは、CTL誘導に対する主要な免
疫優勢エピトープをマップするために利用され得る。
免疫応答はまた、(a)(必要であれば、適切なMHC分子の情況において)問
題の抗原を認識する特定のT細胞レセプターの遺伝子、(b)問題の抗原を認識
する免疫グロブリンの遺伝子、または(c)MHC情況の非存在においてCTL応答を
提供する2つの遺伝子のハイブリッドの遺伝子を、適切な免疫細胞(例えば、T
リンパ球)に移入することによって、達成され得る。従って、GDVは、免疫刺激
剤、免疫調節剤、またはワクチンなどとして使用され得る。
HIVに感染により生じた特定の疾患事例において、免疫刺激が望ましい場合、
組換えレトロウィルスゲノムから生成された抗原は、HLAクラスIまたはクラスII
拘束性免疫応答のいずれか一方または両方を引き出す形態である。例えば、HIV
エンベロープ抗原の場合、抗原は、その病原性を減少するように改変されたgp16
0、gp120、およびgp41から好ましくは選択される。特に、選択された抗原は、シ
ンシチウムの可能性が減少され、免疫応答を増強する疾患に導くエピトープの発
現を回避し、免疫優勢エピトープであるが、系統特異的エピトープを除去する(
または、いくつかの系統特異的エピトープを提示する)ように改変され、HIVの
ほとんどまたは全ての系統で感染した細胞を排除し得る応答を可能にする。この
系統特異的エピトープをさらに選択し、HIVのその他の系統に対して交差反応す
る動物において免疫応答の刺激を促進し得る。その他のHIV遺伝子または遺伝子
の組み合わせ(例えば、gag、pol、rev、vif、nef、prot、gag/pol、gag protな
ど)はまた、特定の事例において防御を提供し得る。
HIVは一例にすぎない。このアプローチは、特有の抗原(膜タンパク質である
必要はない)が発現される、多くのウィルス関連性疾患およびガン(例えば、HP
Vおよび子宮頸椎癌腫、HTLV-I誘導性白血病、前立腺特異抗原(PSA)および前立
腺ガン、変異p53および結腸癌腫および黒色腫、黒色腫特異抗原(例えば、MAGE
)、および黒色腫、ムチン、ならびに乳ガン)に対して効果的であるべきである
。
本発明の免疫刺激の局面によれば、本発明の物質はまた「免疫調節因子」(多
くが上述されている)を含むこともできる。免疫調節因子は、免疫応答に関与す
る1つ以上の細胞により製造される場合、または細胞に対して外因的に添加され
る場合に、この因子の非存在において生じる免疫応答とは、質および作用強度が
異なる免疫応答を生じる因子をいう。非GDV由来遺伝子から因子はまた発現され
得るが、発現はGDVによって駆動または制御される。応答の質または強度は、例
えば、細胞増殖を測定するインビトロアッセイ(例えば、3Hチミジン取り込み)
、およびインビトロでの細胞傷害アッセイ(例えば、51Cr放出測定)を含む、当
業者に周知の多様なアッセイによって測定され得る(Warnerら,AIDS Res.およ
びHuman Retroviruses 7:645-655,1991を参照のこと)。免疫調節因子は、イン
ビボおよびエクソビボの両方で活性であり得る。
このような因子の代表的な例としては、IL-1、IL-2(Karupiahら,J.Immunol
ogy 144:290-298,1990; Weberら,J.Exp.Med.166:1716-1733,1987,Gansba
cherら,J.Exp.Med.172:1217-1224,1990; 米国特許第4,738,927号)、IL-3
、IL-4(Tepperら,Cell 57:503-512,1989; Golumbekら,Science 254:713-716
,1991; 米国特許第5,017,691号)、IL-5、IL-6(Brakenhofら,J.Immunol.13
9:4116-4121,1987; 国際公開第90/06370号)、IL-7(米国特許第4,965,195号)
、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、特にIL-2、IL-4、IL-6、およびIL-12、α
インターフェロン(Finterら,Drugs 42(5):749-765,1991; 米国特許第4,892,7
43号; 米国特許第4,966,843号; 国際公開第85/02862号; Nagataら,Nature 284:
316-320,1980; Famillettiら,Methods in Enz.78:387-394,1981; Twuら,Pr
oc. Natl.Acad.Sci.USA 86:2046-2050,1989; Faktorら,Oncogene 5:867-87
2,1990)、βインターフェロン(Seifら,J.Virol.65:664-671,1991)、γ
インターフェロン(Radfordら,The American Society of Hepatology 20082015
,1991; Watanabeら,PNAS 86:9456-9460,1989; Gansbacherら,Cancer Resear
ch 50:7820-7825,1990; Maloら,Can.Immunol.Immunother.30:34-42,1989;
米国特許第4,762,791号; 米国特許第4,727,138号)、G-CSF(米国特許第4,999,
291号および同第4,810,643号)、GM-CSF(国際公開第85/04188号)、腫瘍壊死因
子(TNF)(Jayaramanら,J.Immunology 144:942-951,1990)、CD3(Krissane
nら,Immunogenetics 26:258-266,1987)、ICAM-1(Altmanら,Nature 338:512
-514,1989; Simmonsら,Nature 331:624-627,1988)、ICAM-2、LFA-1、LFA-3
(Wallnerら,J.Exp.Med.166(4):923-932,1987)、MHCクラスI分子、MHCク
ラスII分子、B7.1-.3。β2ミクログロブリン(Parnesら,PNAS 78:2253-2257,1
981)、シャペロン、MHC結合輸送体タンパク質またはそのアナログ(Powlsら,N
ature 354:528-531,1991)のようなサイトカインが挙げられる。1つの好まし
い実施態様において、遺伝子はγインターフェロンをコードする。
上記で引用した免疫調節因子の一例はB7ファミリー分子(例えば、B7.1-.3同
時刺激因子)の一員である。簡単には、T細胞の完全な機能活性の活性化は2つ
のシグナルを必要とする。1つのシグナルは、抗原特異的T細胞レセプターと主
要組織適合性複合体(MHC)分子に結合されるペプチドとの相互作用により提供さ
れ、そして同時刺激と呼ばれる第2のシグナルは、抗原提示細胞によってT細胞
に送達される。第2のシグナルは、T細胞によるインターロイキン-2(IL-2)の
産生に必要とされ、そして抗原提示細胞上のB7.1-.3分子とTリンパ球のCD28お
よびCTLA-4レセプターとの相互作用を含むようである(Linsleyら、J.Exp.Med.,1
73:721-730,1991aおよびJ.Exp.Med.,174:561-570.1991)。本発明の1つの実施態
様では、B7.1-.3は、CD8+T細胞が拡大し、そして完全に活性化されるに十分なIL
-2を産生するように、CD8+T細胞の同時刺激を引き起こすために腫瘍細胞に導入
され得る。同時刺激がもはやさらなるCTL機能には必要ではないので、これらのC
D8+T細胞は、B7を発現していない腫瘍細胞を死滅させ得る。同時刺激B7.1-.3因
子および例えば、免疫原性HBVコアタンパク質の両方を発現するベクターは、本
明細書中に記載の方法を利用して作製され得る。これらのベクターを形質導入さ
れた細胞は、より効果的な抗原提示細胞である。HBVコア特異的CTL応答は、同時
刺激リガンドB7.1-.3により完全に活性化されたCD8+T細胞から増加される。
GDV中にどの免疫調節因子を含めるかの選択は、因子の既知の治療効果に基づ
き得るか、または実験的に決定され得る。例えば、慢性B型肝炎感染における既
知の治療エフェクターは、アルファインターフェロンである。これは、患者の免
疫不全を補い、そしてそれによって、疾患からの回復を助けるのに有効であるこ
とが見出されている。あるいは、適切な免疫調節因子を実験的に決定し得る。簡
単に説明すると、肝疾患の患者からまず血液サンプルを採取する。自己細胞また
は肝炎抗原の免疫原性部分および免疫調節因子の発現を指向するGDVを形質導入
したHLA適合細胞(例えば、EBV形質転換細胞)でインビトロで抹消血リンパ球(P
BL)を再刺激する。次いで、HLA適合形質導入細胞を標的として用いるCTLアッセ
イのエフェクターとしてこれらのPBLを使用する。HLA適合刺激物質および抗原の
みをコードするベクターで形質導入した標的細胞を用いて行った同じアッセイで
見られるCTL応答の増加は、有用な免疫調節因子であることを示す。本発明の1
つの実施態様では、免疫調節因子であるガンマインターフェロンが特に好ましい
。
本発明はまた所望の抗原の免疫原性部分も包含する。例えば、本明細書中に記
載のGDVの1つにより投与されたときに免疫応答を示すように、HBV S抗原の種々
の免疫原性部分を組合せ得る。さらに、HBVのSオープンリーディングフレーム
の異なる地域に見出す大きな免疫学的多様性のために、特定の地域では投与のた
めに抗原の特定の組合せが好適であり得る。簡単に説明すると、全てのヒトB型
肝炎ウイルスSサンプル中に見いだされるエピトープは、抗原決定基「a」と定
義される。しかし互いに排他的なサブタイプ抗原決定基がまた、二次元二重免疫
拡散(Ouchterlony,Progr.Allergy 5 : 1,1958)により同定されている。これ
らの抗原決定基は「d」または「y」、および「w」または「r」と命名されて
いる(LeBouvier,J.Infect.123 : 671,1971 ; Bancroftら、J.Immunol.10
9 : 842,1972 ; およびCourouceら、Bibl.Haematol.42 : 1-158,1976)。こ
の免疫学的多様性はB型肝炎ウイルスSオープンリーディングフレームの2つの
領域の単一のヌクレオチド置換に起因し、以下のアミノ酸変化を引き起こす:
(1)B型肝炎ウイルスSオープンリーディングフレーム中のリジン−122のア
ルギニンへの変換は、サブタイプをdからyにシフトさせる、そして(2)アル
ギニン−160のリジンへの変換は、サブタイプをrからwにシフトさせる。アフ
リカ黒人の間ではサブタイプaywが優性であり、一方米国および北ヨーロッパで
はサブタイプadw2がより優性である(Molecular Biology of the Hepatitis B Vi
rus,McLachlan 編、CRC Press,1991)。当業者には明らかなように、投与の地
域において流行している特定のB型肝炎ウイルスサブタイプに適切な投与用のベ
クターを構築することが一般に好ましい。特定の地域のサブタイプは、二次元二
重免疫拡散により決定されるか、好ましくは、その地域の個体から単離されたHB
VウイルスのSオープンリーディングフレームを配列決定することにより決定さ
れ得る。
HBVにより示されるものはまた、pol(「HBV pol」)、ORF5、およびORF6抗原
がある。簡単に説明すると、HBVのポリメラーゼオープンリーディングフレーム
は、感染した肝臓のビリオンおよびコア様粒子に見いだされる逆転写酵素活性を
コードする。ポリメラーゼタンパク質は少なくとも2つのドメインからなる:逆
転写を開始するタンパク質をコードするアミノ末端ドメイン、ならびに逆転写酵
素およびRNase H活性をコードするカルボキシル末端ドメイン。HBV polの免疫
原性部分は、動物(好ましくは温血動物)内で免疫応答を産生するために投与さ
れるGDVを利用する方法を用いて決定され得る。同様に、ORF5およびORF6(Mille
rら、Hepatology 9 : 322-327,1989)のような他のHBV抗原が、本明細書に記載
のGDVを用いて発現され得る。
前述のように、B型肝炎抗原の少なくとも1つの免疫原性部分が、GDV中に取
り込まれ得る。GDVに取り込まれる免疫原性部分は種々の長さであり得るが、一
般的には少なくとも9アミノ酸の長さであることが好ましく、そして全抗原を含
有し得る。特定の配列の免疫原性を予測することはしばしば困難であるが、T細
胞のエピトープは、Falkら(Nature 351:290,1991)に記載されているHLA A2.1モ
チーフを用いて予測され得る。この解析から、ペプチドが合成され、そしてイン
ビトロの細胞傷害性アッセイで標的として使用され得る。しかし、他のアッセイ
もまた利用され得、例えば、新規に導入したベクターに対する抗体の存在を検出
するELISA、ならびにγインターフェロンアッセイ、IL−2産生アッセイ、およ
び増殖アッセイのようなTヘルパー細胞を試験するアッセイが挙げられる。本発
明の一つの実施態様では、C型肝炎抗原の少なくとも1つの免疫原性部分はGDV
に取り込まれ得る。例えば、C型肝炎の免疫原性部分はCおよびNS3-NS4領域に
おいて見出され得る。なぜなら、これはこれらの領域がC型肝炎ウイルスの種々
の型の間で最も保存されているからである(Houghtonら、Hepatology 14:381-388
,1991)。
E1ポリペプチドおよびE2ポリペプチドと称される切断されたC型肝炎ウイルス
ポリペプチドが特に好ましい。「E1ポリペプチド」は、HCV E1領域からの分子を
意味する。このような分子は、周知の配列に基づいて、この領域から物理的にも
たらされるか、または組換え的または合成によって産生され得る。HCV1の成熟E1
領域は、ポリタンパク質のおよそアミノ酸192から開始され、およそアミノ酸383
まで続く(第1図および第2図を参照のこと)。173付近からおよそ191までのア
ミノ酸は、E1に対するシグナル配列として機能する。このように、「E1ポリペプ
チド」は、シグナル配列を含む前駆体E1タンパク質、またはこの配列を欠失した
成熟E1ポリペプチド、または異種シグナル配列を有するE1ポリペプチドさえも意
味する。さらに、本明細書中において説明されているように、E1ポリペプチドは
、およそアミノ酸位置360〜383に存在するC末端膜アンカー配列を含む。HCV1ア
ミノ酸配列を規準にして約アミノ酸360から開始されるC末端領域を欠失したC
型肝炎E1ポリペプチドが特に好ましい。
「E2ポリペプチド」は、HCV E2領域からの分子を意味する。このような分子は
、周知の配列に基づいて、この領域から物理的にもたらされるか、または組換え
的または合成によって産生され得る。HCV1の成熟E2領域は、およそアミノ酸384
〜385で開始されると考えられている(第3図および第4A〜4C図を参照のこと)
。シグナルペプチドは、ポリタンパク質のおよそアミノ酸364で開始される。こ
のように、「E2ポリペプチド」は、シグナル配列を含む前駆体E2タンパク質、ま
たはこの配列を欠失した成熟E2ポリペプチド、または異種シグナル配列を有する
E1ポリペプチドさえも意味する。さらに、本明細書中において説明されているよ
うに、E2ポリペプチドは、およそアミノ酸位置715〜730に存在するC末端膜アン
カー配列を含み、およそアミノ酸残基746まで伸長し得る(Linら,J.Virol.(1
994)68:5063-5073を参照のこと)。HCV E2アミノ酸配列を規準にして約アミノ酸
715から開始されるC末端配列を欠失したC型肝炎E2ポリペプチドが特に好まし
い。
当業者に公知の様々な方法によってC型肝炎抗原の免疫原性部分を決定し得る
。例えば、B型肝炎ウイルスに関して上述したように、ポリタンパク質の免疫原
性部分の同定は、アミノ酸配列に基づいて予測し得る。簡単に説明すると、当業
者に公知の様々なコンピュータプログラムを利用して、CTLエピトープを予測し
得る。例えば、Falkらによって記載されている(Nature 351:290,1991)HLA A2
.1モチーフを利用して、HLA A2.1ハプロタイプに対するCTLエピトープを予測し
得る。この分析から、ペプチドを合成してインビトロ細胞傷害性アッセイにおけ
る標的として利用する。
本発明の別の局面では、B型肝炎癌腫細胞を破壊するための方法が提供される
。
この方法は、免疫応答が生成されるように抗原Xの免疫原性部分の発現を指向す
るGDVを温血動物に投与する工程を含む。本明細書中に開示の内容から、当業者
によってHBxAgをコードする配列は容易に入手され得る。簡単に説明すると、本
発明の1つの実施態様では、ATCC 45020から642bpのNcoI-Taq Iを回収し、他の
B型肝炎抗原について上述したようにGDVに挿入する。
しかし、X抗原は、他の潜在的なオンコジーン(例えば、E1A)と類似した様
式で機能し得る既知のトランスアクチベーターである。このように、一般には最
初に遺伝子産物が非腫瘍形成性になるようにX抗原を変化させた後、これをGDV
に挿入するのが好ましい。例えば、切断、点変異、成熟前終結コドンの追加、ま
たはリン酸化部位改変など、種々の方法を利用してX抗原を非腫瘍形成性にし得
る。1つの実施態様の範囲において、X抗原をコードする、対象となる配列また
は遺伝子を切断する。切断によって、種々のフラグメントを産生し得るが、一般
にはコード化遺伝子配列の50%以上を保持しておくことが好ましい。さらに、い
かなる切断の後も遺伝子産物の免疫原性配列の一部を完全なまま保持しておくこ
とが必要である。あるいは、本発明の他の実施態様では、複数の翻訳終結コドン
を遺伝子に導入し得る。終結コドンの挿入は、タンパク質の発現を成熟前に停止
させるため、タンパク質の形質転換部分の発現は防止される。
X遺伝子またはその改変バージョンの腫瘍形成性を種々の方法で試験し得る。
代表的なアッセイとしては、ヌードマウスにおける腫瘍形成、軟寒天におけるコ
ロニー形成、トランスジェニックマウスのようなトランスジェニック動物の調製
が挙げられる。
本発明の別の局面では、C型肝炎抗原の免疫原性部分の発現を指向するGDVを
温血動物に投与する工程を含む、C型肝炎癌腫細胞を破壊するための方法が提供
される。C型肝炎抗原の好ましい免疫原性部分は、コア抗原およびNS1〜NS5領域
を含有するポリタンパク質において見出され得る(Chooら,Proc.Natl.Acad.
Sci.USA 88:2451-2455,1991)。特に好ましい免疫原性部分は種々の方法によ
って決定され得る。例えば、上述したように、アミノ酸配列に基づいて好ましい
免疫原性部分を予測し得る。簡単に説明すると、当業者らに公知の様々なコンピ
ュータプログラムを利用して、CTLエピトープを予測し得る。例えば、Falkらに
よって説明されている(Nature 351:290,1991)HLA A2.1モチーフを利用して、
HLA A2.1ハプロタイプに対するCTLエピトープを予測し得る。免疫原性部分を予
測するのにも利用し得る別の方法は、レトロウイルスベクターを利用してどの部
分がCTL誘導特性を有しているかをマウスにおいて決定することである(Warner
ら,AIDS Res.and Human Retroviruses 7:645-655,1991を参照のこと)。Warn
erらに記載されているように、マウスにおけるCTL誘導を利用してヒトにおける
細胞免疫原性を予測し得る。ポリタンパク質抗原またはペプチドのどのフラグメ
ントが、対応する遺伝子のベクター形質導入後にフラグメントを発現する標的細
胞の自己患者リンパ球(例えば、自己EBV-形質転換リンパ球)による溶解を誘導
し得るかを決定することにより、好ましい免疫原性部分を推定し得る。
好ましい免疫原性部分はまた、以下のようにして選択され得る。簡単に説明す
ると、どの抗原フラグメントが患者の血清中に存在するかを判断するために、HC
Vのような標的疾患に羅患した患者から採取した血液サンプルを個々のHCVポリタ
ンパク質領域(例えば、HCVコア、E1、E2/SN1およびNS2〜NS5領域)に対する抗
体で分析する。一過性の緩解を得るためにαインターフェロンで処置された患者
では、いくつかの抗原決定基が消失し、その抗原に対する内因性抗体に代わる。
このような抗原は、本発明に関しては免疫原性部分として有用である(Hayataら
,Hepatology 13:1022-1028,1991; Davisら,N.Eng.J.Med.321:1501-1506
,1989)。
コード配列を切断することによって、B型肝炎またはC型ウイルス由来のよう
な、選択した抗原の別の免疫原性部分を入手し得る。例えば、HBVを用いると以
下の部位すなわちBst UI、Ssp I、Ppu M1およびMsp Iを切断し得る(Valenzuela
ら,Nature 280:815-19,1979; Valenzuelaら,Animal Virus Genetics: ICN/UC
LA Symp.Mol.Cell Biol.,1980,B.N.FieldsおよびR.Jaenisch(編),57-7
0頁,New York: Academic)。適切な免疫原性部分および方法を決定するための
別の方法についてはまた、C型肝炎を例に挙げて後述する。
HBVの治療に関して、GDVに取り込ませるのに特に好ましい免疫原性部分として
は、HBeAg、HBcAg、およびHBsAgsが挙げられる。さらに、2以上の免疫原性部分
(ならびに必要であれば免疫調節因子)をGDVに取り込ませ得る。例えば、1つ
の実施態様では、B型肝炎抗原の免疫原性部分およびC型肝炎ポリタンパク質の
免疫原性部分の両方の同時発現を指向するGDVを調製し得る。このような構築物
は、B型肝炎またはC型肝炎のいずれかの急性感染または慢性感染を予防または
処置するために投与され得る。同様に、他の実施態様では、B型肝炎X抗原の免
疫原性部分およびC型肝炎ポリタンパク質の免疫原性部分の両方の同時発現を指
向するGDVを調製し得る。このような構築物についても、同様にB型肝炎または
C型肝炎のいずれかに関連した肝細胞癌腫を処置するために投与され得る。さら
に、B型肝炎またはC型肝炎を慢性的に感染した個体は、肝細胞癌腫が発達する
リスクが高いため、このようなベクターはまた、この疾患に対する予防的処置と
して利用され得る。
免疫原性部分はまた、他の方法によって選択され得る。例えば、HLA A2.1/Kb
トランスジェニックマウスは、ウイルス抗原のヒトT細胞認識のモデルとして有
用であることが示されている。簡単に説明すると、インフルエンザおよびB型肝
炎ウイルス系において、マウスT細胞レセプターレパートリーは、ヒトT細胞に
よって認識されるものと同一の抗原決定基を認識する。両方の系において、HLAA
2.1/Kbトランスジェニックマウスにおいて生成されたCTL応答を、HLA A2.1ハプ
ロタイプのヒトCTLによって認識されるものと実質的に同一のエピトープに指向
させ得る(Vitielloら,J.Exp.Med.173:1007-1015,1991; Vitielloら,Abst
ract of Molecular Biology of Hepatitis B Virus Symposia,1992)。
本発明の免疫原性タンパク質は、これらをより免疫原性の高いものにするため
に当該分野において公知の種々の方法によって操作され得る。このような方法の
代表的な例としては、Tヘルパーエピトープに対応するアミノ酸配列を追加する
こと;疎水性残基を添加することによって細胞取り込みを促進すること;または
粒子構造を形成することによって細胞取り込みを促進すること;またはこれらの
任意の組み合わせが挙げられる(一般的に、Hart,op.cit.,Milichら,Proc.
Natl.Acad.Sci.USA 85:1610-1614,1988; Willis,Nature 340:323-324,198
9; Griffithsら,J.Virol.65:450-456,1991を参照のこと)。
さらに他の例は、非腫瘍形成性の腫瘍関連抗原(例えば、改変ras(ras*)遺
伝子(U.S.S.N.07/800,328を参照のこと))の発現を指向するGDVを包含する。簡
単に説明すると、ras*遺伝子は、新生物表現型に因果的に結びつけられるため魅
力的な標的であり、確かに広範な明確なガン(例えば膵臓癌腫、大腸癌腫、およ
び肺腺癌腫)の腫瘍形成の誘導および維持に必要であり得る。さらに、ras*遺伝
子は前新生物腫瘍において見いだされ、従って免疫介在療法が、悪性腫瘍の検出
の前に行われ得る。
正常ras遺伝子は非腫瘍形成性であり、すべての哺乳動物に遍在する。これは
進化の過程で高度に保存されており、細胞周期および正常な増殖特性の維持に重
要な役割を果たすようである。正常rasタンパク質は、GTPに結合しGTPase活性を
有するG−タンパク質であり、そして外部環境から細胞内部へシグナルを伝達す
るのに関与しており、それにより細胞が環境に応答することを可能にする。一方
ras*遺伝子は、細胞の挙動を環境から切り離すことにより新生物細胞の正常な増
殖調節を変化させ、それにより新生物細胞の制御されない増殖を導く。ras遺伝
子の変異は癌腫形成の初期の事象であると考えられ(Kumarら、「Activation of r
as Oncogenes Preceding the Onset of Neoplasia」 Science 248 : 110-1104,
1990)、これは早期に処置されれば腫瘍形成を防止し得る。
ras*遺伝子は広範なガン(例えば、膵臓癌腫、大腸癌腫、および肺腺癌腫を含
む)に存在する。しかし、種々のガンで見られるras*遺伝子に発生する変異の範
囲は極めて限定されている。これらの変異は、正常なオン/オフスイッチを構成
性のオンの位置に切り換えることにより、rasタンパク質のGTPase活性を変化さ
せる。ras*の腫瘍形成性変異は、(インビボでは)主に3つのコドン:12、13、
および61にのみ起きる。ヒトおよび動物の腫瘍の両方において、コドン12の変異
が最も多い。
本発明の別の実施態様において、改変p53(p53*)遺伝子の発現を指向するGDVが
提供される。簡単に説明すると、p53は当初形質転換した細胞の抽出物中に発見
された核リンタンパク質であり、従って最初はオンコジーンとして分類された(
LinzerおよびLevine,Cell 17 : 43-52,1979 ; LaneおよびCrawford,Nature 2
78 : 261-263,1979)。後に、元のp53 cDNAクローンはp53の変異体形態である
ことが発見された(Hindsら、J.Virol.63 : 739-746,1989)。今では、p53は細
胞周期を負に制御する腫瘍抑制遺伝子であり、そしてこの遺伝子の変異が腫
瘍形成を導き得るようである。研究された大腸癌腫のうち75%〜80%はp53の両
方の対立遺伝子の欠損を示す(一方は欠失により、他方は点変異による)。肺癌
腫ならびに脳腫瘍および乳腫瘍ガンでも同様の変異が見られる。
p53変異の多く(例えば、p53*1、p53*2など)は、アミノ酸残基130〜290の間
に集中している(Levineら、Nature 351 : 453-456,1991を参照のこと;および
特異的変異をさらに詳細に説明する以下の文献も参照のこと:Bakerら、Science
244 : 217-221,1989 ; Nigroら、Nature 342 : 705-708,1989(p53変異は4
つの高度に保存された遺伝子領域に適合する4つの「ホットスポット」に集中し
、そしてこれらの変異はヒトの脳腫瘍、乳腫瘍、肺腫瘍、および大腸腫瘍で観察
される);Vogelstein,Nature 348 : 681-682,1990 ; Takahashiら、Science
246 : 491-494,1989 ; Iggoら、Lancet 335 : 675-679,1990 ; Jamesら、Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 86 : 2858-2862,1989 ; Mackayら、Lancet 11 : 1384
-1385,1988 ; Kelmanら、Blood 74 : 2318-2324,1989 ; Malkinら、Science 2
50 : 1233-1238,1990 ; Bakerら、Cancer Res.50 : 7717-7722,1991 ; Chiba
ら、Oncogene 5 : 1603-1610,1990(初期の非小細胞肺ガンの病因は、コドン13
2〜283の間のp53遺伝子の体細胞性変異が関係している);Prosserら、Oncogene
5 : 1573-1579,1990(アミノ酸126〜224をコードするp53遺伝子の変異が初期
乳ガンで同定された);ChengおよびHass、Mol.Cell.Biol.10 : 5502-5509,
1990 ; Bartekら、Oncogene 5 : 893-899,1990 ; Rodriguesら、Proc.Natl.A
cad.Sci.USA 87 : 7555-7559,1990 ; Menonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
87 : 5435-5439,1990 ; Mulliganら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87 : 5863
-5867,1990 ; およびRomanoら、Oncogene 4 : 1483-1488,1990(ヒトの骨肉腫
由来細胞株HOS-SLのコドン156のp53変異の同定)。
p53遺伝子の特定の変化は、特定の特異的トキシンが原因であり得る。例えば
、Bressacら(Nature 350 : 429-431,1991)は、肝細胞癌腫を罹患した患者の
コドン249の特異的なGからTへの変異を記載している。この変異の1つの示唆
されている原因物質は、アフリカで食物汚染物質として知られている肝臓発ガン
物質であるアフラトキシンB1である。
特に影響を受ける遺伝子の4つの領域は、残基132〜145、171〜179、239〜248
、
および272〜286に存在する。特に興味深い3つの「ホットスポット」は、残基17
5、248、および273に存在する(Levineら、Nature 351 : 453-456,1991)。これ
らの変化ならびに上述の他の変化により、新規のコード配列を含有するタンパク
質が生成される。これらの配列によってコードされる新規タンパク質は腫瘍形成
性細胞のマーカーとして使用され得、そしてこれらの新規コード領域に対して指
向された免疫応答は、改変配列(p53*)を含有する腫瘍形成性細胞を破壊するのに
使用され得る。
本発明の別の実施態様において、改変Rb(Rb*)遺伝子の発現を指向するGDVが提
供される。簡単に説明すると、網膜芽細胞腫は、染色体帯13q14に位置するRbと
称される遺伝子座の欠損に関連している子供の眼のガンである。この領域由来の
遺伝子がクローニングされており、これは、約110kdの核リンタンパク質を産生
する(Friendら,Nature 323:643,1986; Leeら,Science 235:1394,1987;およ
びFungら,Science 236:1657,1987)。
Rbは細胞増殖の負の制御因子であると考えられており、そして転写制御および
細胞周期調節において役割を有する。Rbは、核において見いだされる少なくとも
7個のタンパク質と結合し、特にE2F(Bagchiら,Cell 62:659-669,1990)およ
びDRTF(ShivjiおよびLa Thangue,Mol.Cell.Biol.11:1686-1695,1991)と
称される細胞転写因子と関与しているようである。Rbは、細胞増殖に関与してい
る様々な核タンパク質を隔絶することによって細胞成長を制限すると考えられて
いる。
Rb遺伝子内の欠失が検出されている。これは、Rb遺伝子が腫瘍形成性を担い得
ることを実証する。これらの欠失には、例えば、前立腺ガンおよび膀胱ガン細胞
株のエキソン21における欠失(Booksteinら,Science 247:712-715,1990; Horo
witzら,Science 243:937,1989)、肺の小細胞ガンのエキソン16の欠失(Shew
ら,Cell Growth and Diff.1:17,1990)、およびエキソン21と27との間の欠失
(Shewら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:6,1990)が含まれる。これらのエ
キソンが欠失することで、欠失したエキソンの接合部に新規なコード配列を含有
するタンパク質が生成される。この新規なタンパク質コード配列は腫瘍形成性細
胞のマーカーとして利用され得、そしてこの新規なコード領域に対して指向され
た免疫応答は、Rbエキソン欠失のある腫瘍形成性細胞を排除し得る。
本発明の別の実施態様において、ウィルムス腫瘍の原因となる改変遺伝子の発
現を指向するGDVが提供される。簡単に説明すると、ウィルムス腫瘍は代表的に
は16歳未満の子供に見られる。10,000人に一人の子供がこの腫瘍を発達させるが
、これは子供のガンの約5%を占めている。この腫瘍は、通常、線維状の疑似嚢
に囲まれた大きな腹部塊としてそれ自体を提示する。腫瘍の約7%は一方の腎臓
において多巣性であり、そして5.4%は両方の腎臓と関与している。ウィルムス
腫瘍遺伝子は染色体11p13に局在し、そして腫瘍抑制遺伝子に特徴的なcDNAクロ
ーン(wt1)が単離されている(Callら,Cell 60:509,1990; Gesslerら,Nature
343:744,1990; Roseら,Cell 60:495,1990; およびHaberら,Cell 61:1257,1
990)。wt1遺伝子は、4個の亜鉛フィンガーと、グルタミンおよびプロリンリッ
チのアミノ末端とを有するタンパク質をコードする。
ウィルムス腫瘍遺伝子の変異には、第3亜鉛フィンガーと第4亜鉛フィンガー
との間へのリジン、トレオニン、およびセリンの挿入が含まれる。このような挿
入物を含有しているwt1タンパク質は、EGR-1部位とは結合しない。第2の別の変
異が起こると、約17個のアミノ酸が亜鉛フィンガードメインのすぐNH2末端側の
領域に挿入される(Maddenら,Science 253:1550-1553,1991; Callら,Cell 60
:509,1990; Gesslerら,Nature 343:744,1990; Roseら,Cell 60:495,1990;
Haberら,Cell 61:1257,1990;およびBucklerら,Mol.Cell.Biol.11:1707,1
991)。
本発明の別の実施態様において、改変ムチンの発現を指向するGDVが提供され
る。ムチンは、約50%の炭水化物を含有する高分子量糖タンパク質である。多形
性上皮ムチン(PEM)は、ガン患者の血清中に見いだされる腫瘍関連ムチン(Gir
lingら,Int.J.Cancer 43:1072-1076,1989)である。全長cDNA配列が同定さ
れている(Gendlerら,J.Biol.Chem.265(25):15286-15293,1990; Lanら,J
.Biol.Chem.265(25):15294-15299,1990;およびLigtenbergら,J.Biol.Che
m.265:5573-5578,1990)。乳腫瘍および膵臓腫瘍はいずれも、20アミノ酸のタ
ンデム反復(Jeromeら,Cancer Res.51:2908-2916,1991)を有する同一のコア
配列を伴うムチンを発現する。乳腫瘍に発達し、膵臓腫瘍標的と交差反応するCT
L
株は、さらに特定の20アミノ酸のタンデム反復(上述のJeromeら)を特異的に認
識するようである。20アミノ酸のタンデム反復のうちの1個以上をコードする配
列が、この配列を有する腫瘍細胞に対する免疫応答を発達させるために、本発明
のGDVによって発現され得る。
本発明の他の実施態様において、改変DCC(結腸直腸癌腫において欠失)遺伝
子の発現を指向するGDVが提供される。簡単に説明すると、結腸直腸腫瘍におけ
る対立遺伝子欠損の極めて一般的な領域は染色体18qであり、これはガンの70%
より多くで、および後期肉腫のほぼ50%で欠損している。この領域由来の推定的
な腫瘍抑制遺伝子(DCC)が同定されている(Fearonら,1990)。これは、神経
細胞接着分子(NCAM)およびコンタクチン(contactin)などの細胞表面接着分子
に対し有意な相同性のあるタンパク質をコードする(Edelman,Biochem 27:3533
-3543,1988によって概説される)。このタンパク質は、おそらく正常な細胞-細
胞および/または細胞-細胞外マトリックス相互作用における変化によって、結
腸直腸腫瘍の発達に何らかの役割を果たしていると考えられる。
DCC遺伝子は、正常な結腸粘膜において発現するが、その発現は結腸直胴癌腫
の大部分では減少されるか、または存在しない(Solomon,Nature 343:412-414
,1990)。このような発現損失は、DCC遺伝子の体細胞性変異と関連している場
合がある。370kbを有するDNAの連続ストレッチがクローニングされている。これ
は、およそ750アミノ酸のタンパク質をコードする(Fearonら,「Identificatio
n of a Chromosome 18q Gene That Is Altered in Colorectal Cancers」Scienc
e 247:49-56,1990)。
本発明の他の実施態様において、MCCまたはAPCの発現を指向するGDVが提供さ
れる。MCC(結腸直腸ガンにおいて変異)およびAPCはいずれも腫瘍抑制遺伝子と
して同定されている(Kinzlerら,Science 251:1366-1370,1991)。これは、家
族性肉腫ポリープ症(FAP)において変異するものである。FAPは、ガンを引き起
こす最も一般的な常染色体優性疾患であると考えられており、そして米国では5,
000個体に少なくとも一人の割合で罹患している(Nishihoら,Science 253:665-
669,1991)。罹患個体では通常、結腸および直腸において数百から数千個の肉
腫ポリープが形成され、これが進行してガンになり得る。ガードナー症候群
(「GS」、FAPの変異体)は、結腸および直腸の多発性肉腫と一緒に、類腱腫、
骨腫、その他の新生物を提示する。この増殖は、染色体5qにおいて見いだされる
家族性肉腫ポリープ症遺伝子(特に、MCCおよびAPC)の欠損または不活性化によ
って誘導されると考えられる。
例えば、Nishihoら(前出)において、FAPおよびGS患者において以下のAPC遺
伝子の生殖系列変異が認められた:(1)コドン280、セリンから停止への変異
(下顎骨腫のある患者)、(2)コドン302、2例の別々の患者(一方は類腱腫
を伴う)におけるアルギニンから停止への変異、(3)コドン414、下顎骨腫の
ある患者におけるアルギニンからシステインへの変異、(5)コドン713、下顎
骨腫のある別の患者におけるセリンから停止への変異(Nishihoら,Science 253
:665-669,1991)。さらに、6つの点変異がMCCコドン番号12、145、267、490、
506、および698において同定され、そして、さらに4つの体細胞性変異がAPCに
おいて同定された(コドン番号 289、332、438、および1338)。
本発明の他の実施態様において、「オン」または「オフ」モードで機能的にロ
ックまたはスタックされた改変レセプターの発現を指向するGDCが提供される。
簡単に説明すると、多くの細胞レセプターが、外部環境をモニタリングし、細胞
に適宜応答するようシグナルを送ることによって、細胞成長に関与している。モ
ニタリングまたはシグナル送信機構のいずれか一方でも欠如すると、この細胞は
外部環境にもはや応答しなくなり、そして制御されない成長を示し得る。多くの
異なるレセプターまたはレセプター様構造が改変細胞成分として機能し得る。こ
れには、例えば、neuおよび変異型、または改変型の甲状腺ホルモンレセプター
、PDGFレセプター、インシュリンレセプター、インターロイキンレセプター(例
えばIL-1、-2、-3などのレセプター)あるいはG-CSF、GM-CSF、またはM-CSFレセ
プターなどのCSFレセプターが含まれる。
例えば、neu(ヒト表皮成長因子レセプター「HER」または表皮成長因子「EGF
」レセプターとも呼ばれる)は、乳ガン罹患した女性の少なくとも28%に見られ
る改変レセプターである。このタンパク質をコードするcDNAクローンが単離され
ている(Slamonら,Science 244:707-712,1989; Slamonら,Cancer Cells 7:37
1-380,1989; Shihら,Nature 290:261,1981)。このクローンは、細胞外ド
メイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを有するタンパク質をコードす
る(Schechter,Nature 312:513,1984; Coussensら,Science 230:1132,1985
)ため、neuレセプターをコードすると考えられる。
化学的に誘導した神経膠芽腫細胞から単離したラットneu遺伝子の研究は、そ
の遺伝子が664位でバリンからグルタミン酸への単一の変異を含むことを示す(B
argmannら,EMBO J.7:2043,1988)。他の研究では、N-エチル-N-ニトロソウレ
アで処置したベビーラットは神経系に悪性腫瘍を発生させた。発生した47個の三
叉神経鞘腫および12個の神経鞘腫はいずれもneu遺伝子の664位でTからAへの塩
基転換を保有していた(Nikitinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:9939-9943
,1991)。
その他の改変レセプターもまた、選択された腫瘍細胞を破壊するために、GDV
によって発現され得る。例えば、染色体3p21〜p25における欠失は、小細胞肺ガ
ンと関連している(Leducら,Am.J.Hum.Genet.44:282-287,1989)。欠失は
、これが生じなければDNA結合甲状腺ホルモンレセプター(THR)をコードするER
BAb遺伝子において生じると考えられる。
上述のようなレセプターの改変により、新規なコード配列を含むタンパク質(
またはレセプター)が生成される。これらの配列によってコードされる新規なタ
ンパク質は腫瘍形成性細胞のマーカーとして使用され得、そしてこれらの新規な
コード領域に対して指向された免疫応答は、改変配列または遺伝子を含有する腫
瘍形成性細胞を破壊するのに用いられ得る。
変化した細胞成分が細胞を腫瘍形成性にすることに関係しているならば、変化
した細胞成分を非腫瘍形成性にすることが必要である。例えば、1つの実施態様
において、変化した細胞成分をコードする目的の配列または遺伝子は、遺伝子産
物を非腫瘍形成性にするために切断される。変化した細胞成分をコードする遺伝
子は種々のサイズに切断され得るが、変化した細胞成分をできるだけ保持するこ
とが好ましい。さらに、切断されても、変化した細胞成分の免疫原性配列の少な
くともいくつかは無傷であることが必要である。あるいは、複数の翻訳終結コド
ンを、変化した細胞成分をコードする遺伝子内の免疫原性領域の下流に導入し得
る。終結コドンの挿入は、早期にタンパク質発現を終結させ、従ってタンパク質
の形質転換部分の発現を防止する。
1つの実施態様において、ras*遺伝子はras*タンパク質を非腫瘍形成性にする
ために切断される。簡単に説明すると、ras*のカルボキシ末端のアミノ酸は、機
能的にタンパク質を細胞膜に結合させる。これらの配列の切断は、変化した細胞
成分を非腫瘍形成性にする。好ましくは、ras*遺伝子はプリン環形成において、
例えば、アミノ酸番号110をコードする配列の近辺で切断される。約20アミノ酸
(変化したアミノ酸を含む)程度がGDVによりコードされるように、ras*遺伝子
配列を切断し得るが、好ましくはできるだけ多くのアミノ酸が(非腫瘍形成性を
維持しながら)発現されるべきである。
別の実施態様において、細胞成分を非腫瘍形成性にするためにp53*タンパク質
を切断により改変する。前述のように、必ずしもすべてのp53タンパク質の変異
が腫瘍形成性ではなく、従って必ずしもすべての変異を切断する必要はない。そ
れにも関わらず、好適な実施態様では、p53*はアミノ酸100〜300をコードし、そ
れによって4つすべての主要な「ホットスポット」を含む配列に切断される。
腫瘍形成性である他の変化した細胞成分もまた、それらを非腫瘍形成性にする
ために、切断され得る。例えば、neuおよびbcr/ablの両方を、これらを非腫瘍形
成性にするために切断し得る。非腫瘍形成性は、前述のように切断された変化し
た細胞成分をアッセイすることにより確認され得る。
しかし、変化した細胞成分が一般に非腫瘍形成性細胞に関連するのみで、そし
て細胞を腫瘍形成性にするのに必要でないか、または必須でない場合は、細胞成
分を非腫瘍形成性にする必要がないことに注目すべきである。腫瘍形成性でない
このような変化した細胞成分の代表例は、Rb*、ユビキチン*、およびムチン*を
含む。
前述のように、適切な免疫応答を生じさせるために、変化した細胞成分はまた
免疫原性でなければならない。T細胞のエピトープはしばしば免疫原性で両親媒
性のαらせん成分を有するが、多くの場合、特定の配列の免疫原性は予測するこ
とが難しい。しかし、一般に、アッセイにおいて免疫原性を決めることが好まし
い。代表的なアッセイには、新規に導入したベクターに対する抗体の存在を検出
するELISA、ならびにγインターフェロンアッセイ、IL−2産生アッセイ、およ
び増殖アッセイのようにTヘルパー細胞を試験するアッセイが含まれる。免疫原
性を決定するための特に好ましい方法はCTLアッセイである。
少なくとも1つの抗腫瘍剤をコードする配列がいったん得られたら、この配列
が非腫瘍形成性タンパク質をコードすることを確認することが好ましい。特定の
細胞成分の腫瘍形成性を評価する種々のアッセイが公知であり、そして容易に達
成され得る。代表的アッセイには、ヌードマウスまたはラットにおける腫瘍形成
、軟寒天中のコロニー形成、およびトランスジェニック動物(例えばトランスジ
ェニックマウス)の調製などが含まれる。
本発明のこの局面および多くの他の局面のために、ヌードマウスまたはラット
における腫瘍形成は、抗腫瘍剤の腫瘍形成性を決定するのに特に重要でかつ高感
度な方法である。ヌードマウスは機能的な細胞免疫系が欠如しており(すなわち
、CTLを有さない)、従って細胞の腫瘍形成性の可能性を試験するのに有用なイ
ンビボのモデルを提供する。正常な非腫瘍形成性細胞は、ヌードマウス中で注入
されても、制御されない増殖性質を示さない。しかし、形質転換細胞は、ヌード
マウス中で急速に増殖し、そして腫瘍を発生させる。簡単に説明すると、1つの
実施態様において、GDVは同系のマウスの細胞に送達され、次にヌードマウスに
注入される。腫瘍の増殖を決定するために注入後2〜8週間、マウスを肉眼で観
察する。また腫瘍が存在するか否かを決定するために、マウスを屠殺し検屍し得
る(Giovanellaら、J.Natl.Cancer Inst.48 : 1531-1533,1972 ; Fureszら
、「Tumorigenicity testing of cell lines considered for production of bi
ological drugs」Abnormal Cells,New Products and Risk,Hopps and Petricc
iani編、Tissue Culture Association,1985;およびLevenbookら、J.Biol.St
d.13 : 135-141,1985)。腫瘍形成性はまた、軟寒天中のコロニー形成を可視
化することによっても評価され得る(MacPhersonおよびMontagnier,Vir.23 : 2
91-294,1964)。簡単に説明すると、正常な非腫瘍形成性細胞の1つの性質は、
「接触阻害」(すなわち、細胞は隣接する細胞に接触すると増殖を止める)であ
る。細胞を半固体寒天支持培地中にプレートすると、正常な細胞は迅速に接触阻
害されて増殖を止めるが、腫瘍形成性細胞は増殖し続けて軟寒天中でコロニーを
形成する。
トランスジェニックマウスのようなトランスジェニック動物はまた、抗腫瘍剤
の腫瘍形成性を検定するために利用され得る(例えば、Stewartら,Cell 38:627
-637,1984; Quaifeら,Cell 48:1023-1034,1987;およびKoikeら,Proc.Natl
.Acad.Sci.USA 86:5615-5619,1989)。トランスジェニック動物において、
目的の遺伝子を動物の全ての組織において発現させることができる。このような
導入遺伝子の未調節発現は、新たに導入した遺伝子の腫瘍形成性についてのモデ
ルとして役立ち得る。
腫瘍形成性に関する研究に加えて、一般に投与前に抗腫瘍剤のような有毒な緩
和剤の毒性を決定することが好ましい。当業者間で周知の様々な方法を利用して
、このような毒性を測定され得る。その一例として、例えば、種々のタンパク質
および酵素の全身レベルならびに血液細胞の容量および数を測定する臨床化学ア
ッセイが挙げられる。アッセイに適した用量は、(そのGDVが薬物選択マーカー
によってアッセイ可能な場合)105、106、107、108、109、1010および1011コロ
ニー形成単位またはプラーク形成によってアッセイ可能なベクター(例えばアデ
ノウイルスベクター)であれば同一範囲のプラーク形成単位、または別様にアッ
セイされる必要があるGDVであれば選択単位から同一範囲である。
細胞媒介性および体液性応答が上記の免疫原性部分を投与することによって、
病原体、特にウイルス疾患および細菌疾患に対して誘導され得る。簡潔に記載す
ると、相当するエピトープを有する免疫原性部分は、化学合成(Bergotら,Appl
ied Biosystems Peptide Synthesizer User Bulletin No.16,1986,Applied B
iosystems,Foster City,California)、昆虫由来のバキュロウイルス系(Doer
fler,Current Topics in Immunology 131:51-68,1986)、哺乳動物由来の系(
例えばCHO細胞)(Bermanら,J.Virol.63:3489-3498,1989)、酵母由来の系
(McAleerら,Nature 307:178-180)、および原核生物系(Burrelら,Nature 27
9:43-47,1979)のような組換え系におけるDNA発現を含む多数の公知の方法によ
って、産生され得る(EllisおよびGerety,J.Med.Virol.31:54-58,1990)。
また、本発明は、免疫ダウンレギュレーション可能なGDVも提供する。不適切
または不要な免疫応答の特異的なダウンレギュレーションが自己免疫疾患、また
は疑似自己免疫疾患(例えば、慢性肝炎、糖尿病、慢性関節リウマチ、移植片対
宿主疾患、およびアルツハイマー)、または骨髄のような異種組織の移植おいて
、移植(MHC)抗原の表面発現を抑制する免疫抑制ウイルス遺伝子産物、または
その活性部分を用いて、操作され得る。本発明において、遺伝子産物の「活性部
分」は、生物学的活性のために保持されていなければならない遺伝子産物のフラ
グメントである。このようなフラグメントまたは活性ドメインは、ヌクレオチド
配列をそのタンパク質配列から系統的に除去し、得られる組換えGDVで標的細胞
を形質転換し、FACS分析またはその他の免疫学的アッセイ(例えば、CTLアッセ
イ)を用いて、細胞表面上のMHCクラスI提示を測定することによって容易に同定
され得る。これらのフラグメントは、タンパク質全体をコードする配列の大きさ
がウイルスキャリアのキャパシティを超える場合に特に有用である。あるいは、
MHC抗原提示インヒビタータンパク質の活性ドメインは酵素的に消化され得、そ
して活性部分が生化学的な方法によって精製され得る。例えば、このタンパク質
の活性部分をブロックするモノクローナル抗体が、切断されたタンパク質の活性
部分を単離および精製するために用いられ得る(Harlowら,Antibodies: A Labo
ratory Manual,Cold Springs Harbor,1988)。
1つの実施態様において、その抑制は、アクセサリー分子(例えば、CD8、細
胞内接着分子-1(ICAM-1)、ICAM-2、ICAM-3、白血球機能抗原-1(LFA-1)(Altmann
ら,Nature 338:521,1989)、B7.1-.3分子(Freemanら,J.Immunol.143:2714
,1989)、LFA-3(Singer,Science 255:1671,1992; Rao,Crit.Rev.Immunol
.10:495,1991)またはその他の細胞接着分子)と一緒に自己MHC分子に会合し
て処理済ペプチドを提示することにより、CTLの活性化を特異的に阻害すること
によって遂げられる。MHCクラスI分子に関連した抗原ペプチド提示は、CTL活性
化を導く。生成物を発現可能な特定の配列の移行および安定的な組み込みは、MH
C抗原提示を阻害し、CD8+CTLのようなT細胞の活性化をブロックし、それにより
移植片拒絶を抑制することが予期される。標準的なCTLアッセイが、この応答を
検出するために用いられる。抗原提示経路の成分として、45Kd MHCクラスI重鎖
、β2-ミクログロブリン、プロテアーゼのようなプロセシング酵素、アクセサリ
ー分子、シャペロン、およびPSF1のような輸送体タンパク質が挙げられる。
他の例において、組換えGDVは、β2-ミクログロブリンに結合し得る遺伝子産
物または遺伝子産物の活性部分の発現を指向する。抗原提示のためのMHCクラスI
分子の細胞表面への移動には、β2-ミクログロブリンとの会合が必要である。こ
のように、β2-ミクログロブリンと結合しそして、これがMHCクラスIとの会合を
阻害するタンパク質は、間接的にMHCクラスI抗原提示を阻害する。適したタンパ
ク質としては、H301遺伝子産物が挙げられる。簡潔に記載すると、ヒトサイトメ
ガロウイルス(CMV)から得られたH301遺伝子は、MHCクラスI分子の重鎖上のβ2
-ミクログロブリン結合部位と配列相同性のある糖タンパク質をコードする(Bro
wneら,Nature 347:770,1990)。H301はβ2-ミクログロブリンと結合し、それ
によりMHCクラスI分子の成熟が妨げられ、形質転換細胞を細胞傷害性T細胞によ
って認識できないようにし、MHCクラスI拘束性免疫監視を逃れる。
別の実施態様において、組換えGDVは、新たに合成されたMHCクラスI分子と細
胞内で結合するタンパク質またはタンパク質の活性部分の発現を指向する。この
結合は、MHCクラスI分子の小胞体からの移行を妨げ、その結果末端グリコシル化
の阻害が生じる。これは、これらの分子の細胞表面への移動をブロックし、CTL
による細胞認識および溶解が防止する。例えば、E3遺伝子の生成物の1つが、MH
CクラスI分子の形質転換細胞表面への移動を阻害のために使用され得る。より具
体的には、E3は、アデノウイルス2ゲノムのE3領域から転写された19kD膜貫通糖
プロテインであるE3/19Kをコードする。本発明に関して、組織細胞は、発現時に
E3/19Kタンパク質を産生するE3/19K配列を含む組換えGDVで形質転換される。E3/
19Kタンパク質は、MHCクラスI表面分子の表面発現を阻害し、GDVにより形質転換
された細胞は免疫応答を逃れることになる。その結果、ドナー細胞は、移植片拒
絶のリスクを引き下げつつ移植され得、移植患者においても最小限の免疫抑制措
置が要求されるのみである。これは、複雑さを緩和して受容可能なドナー・レシ
ピエントキメラ状態が、より少ない合併症で存在することを可能とする。同様の
処置が、紅斑性狼蒼、多発性硬化症、慢性関節リウマチまたは慢性B型肝炎感染
を含むいわゆる自己免疫疾患を処置するために使用され得る。
別の免疫抑制法として、アンチセンスメッセージ、リボソーム現存している自
己反応性のT細胞クローンに特異的な他の遺伝子発現インヒビターを使用が挙げ
られる。これらは、自己免疫応答を担う特定の不要なタローンのT細胞レセプタ
ーの発現がブロックする。アンチセンス、リボザイム、またはその他の遺伝子が
、ウイルスベクター送達系を用いて導入され得る。
上述したものとは異なるその他のタンパク質のうち、MHCクラスI抗原提示を阻
害、抑制、あるいはダウンレギュレーションする機能を有するタンパク質がまた
、同定され、そして本発明の文脈内で利用され得る。このようなタンパク質、特
に哺乳動物の病原体由来のタンパク質(および、代わりに、その活性部分)を同
定するために、MHCクラスI抗原提示を阻害し得るタンパク質またはその活性部分
を発現する、組換えGDVが、BCのようなテスター細胞株に形質転換される。この
テスター細胞系を、その候補のタンパク質をコードする配列を有するおよび有さ
ないテスター細胞株が、CTLアッセイにおけるスティミュレータおよび/または
標的と比較される。形質転換したテスター細胞に対応する細胞溶解の減少は、候
補のタンパク質がMHC提示を阻害し得ることを示す。
MHCクラスI表面発現のダウンレギュレーションを測定するための別の方法は、
FACS分析によるものである。より具体的には、細胞株が候補のタンパク質をコー
ドする組換えGDVで形質転換する。薬物による選択そして拡大の後、その細胞がF
ACSによってMHCクラスI発現について分析され、そして非形質転換細胞の場合と
比較される。MHCクラスIの細胞表面発現の減少は、候補のタンパク質がMHC提示
を阻害し得ることを示す。本発明のこの局面については、米国特許出願第08/116
7,827号においてさらに考察される。
多くの感染性疾患、ガン、自己免疫疾患、および他の疾患には、ウイルス粒子
と細胞、細胞と細胞、または細胞と因子との相互作用を含む。ウイルス感染にお
いて、ウイルスは通常は感受性のある細胞表面のレセプターを介して細胞に入る
。ガンにおいて、細胞は他の細胞または因子由来のシグナルに不適切に応答し得
るかまたはまつたく応答しない。自己免疫疾患において、「自己」マーカーの不
適切な認識が存在する。本発明において、そのような相互作用は、相互作用にお
けるパートナーのいずれかに対するアナログをインビボで産生するGDVを利用す
ることによりブロックされ得る。
このブロッキング作用は細胞内、細胞膜上、または細胞外で起こり得る。ブロ
ッキング剤のための遺伝子を保有するウイルスGDV(特にレトロウイルスGDV)の
ブロッキング作用は、感受性細胞の内部から、または病原性相互作用を局所的に
ブロックするブロッキングタンパク質の一種を分泌することにより媒介され得る
。
例えば、HIVの場合、相互作用の2つの作用物質はgp120/gp41エンベロープタ
ンパク質およびCD4レセプター分子である。従って適切なブロッカーは、病原作
用を引き起こさずHIVの侵入をブロックするHIV envアナログ、またはCD4レセプ
ターアナログのいずれかを発現するGDVである。CD4アナログは、隣接する細胞を
保護するように分泌され、そして機能し、一方gp120/gp41はベクター含有細胞の
みを保護するように、分泌されるかまたは細胞内でのみ産生される。安定性また
は補体溶解性を強化するために、CD4にヒト免疫グロブリン重鎖かまたは他の成
分を添加することが有利であり得る。そのようなハイブリッド可溶性CD4をコー
ドするレトロウイルスベクターの宿主への送達は、安定なハイブリッド分子の連
続的な供給をもたらす。
HIV envの発現を導くベクター粒子がまた構築され得る。どの部分が明白な病
原性の副作用なしにウイルス吸着を阻止することができるかは当業者に明らかで
ある(Willeyら、J.Virol.62:139,1988;Fisherら、Science 233:655,1986)。
本発明の別の局面では、細胞型の中で欠失、変異、または発現されない場合に
、その細胞型の中で腫瘍形成を導く、抑制遺伝子の送達に関する。ウイルスベク
ターによる欠失した遺伝子の再導入は、これらの細胞における腫瘍の表現型の退
縮を導く。悪性腫瘍は、細胞増殖に比較した細胞の末端分化の阻害と考えられ得
るので、その送達、および腫瘍の分化を導く遺伝子産物の発現はまた、一般的に
は退縮を導くはずである。
別の実施態様において、GDVはカチオンリポソーム(Wangら、PNAS 84:7851,19
87を参照のこと)の使用を介して投与される。これらは荷電したポリマーであり
、例えば、インビボまたはエクソビボで細胞により容易に得られる複合体を与え
るために水溶液中で核酸との自然に複合体化するDOTMAおよびリポフェクタミン
である。
前記の変化した細胞成分をコードする配列は、種々の供給源から得られ得る。
例えば、改変した細胞産物をコードする配列を含むプラスミドは、American Typ
e Culture Collection(ATCC、Rockville、Maryland)のような寄託機関、また
はAdvanced Biotechnologies(Columbia、Maryland)のような市販の供給源から
得られ得る。前記の配列のいくつかを含むプラスミドの代表例として、ATCC No.
41000(rasの12番目のコドンにGからTへの変異を含む)、およびATCC No.4104
9(12番目のコドンにGからAへの変異を含む)を含む。
あるいは正常な細胞成分をコードするプラスミドはまた、ATCCのような寄託機
関から得られ得(例えば、ATCC No.41001、正常なrasタンパク質をコードする配
列を含む;ATCC No.57103,ablをコードする;およびATCC No.59120またはNo.59
121,bcr座をコードする)、そして改変した細胞成分を形成するために変異させ
る。特定の部位を変異させる方法は、当該分野で公知の方法(例えば、Sambrook
ら、前述、15.3以下を参照のこと)を用いて容易に実施され得る。特にrasのよ
うな正常な細胞成分の点変異は、特定のコドン(例えば、コドン12、13、または
61)の部位特異的変異誘発により容易に実施され得る。
上記の物質をコードする他の核酸分子、ならびに本発明において使用するため
に有利な他の核酸分子は、種々の供給源、例えばAmerican Type Culture Collec
tion(ATCC、Rockville、Maryland)、またはBritish Bio-Technology Limited
(Cowley、Oxford、England)のような市販の供給源から容易に得られる。代表
例として、BBG12(127アミノ酸の成熟タンパク質をコードするGM−CSF遺伝子を
含有する);BBG6(γインターフェロンをコードする配列を含有する);ATCC No.
39656(TNFをコードする配列を含む);ATCC No.20663(αインターフェロンをコ
ードする配列を含む);ATCC No.31902およびNo.39517(βインターフェロンをコ
ードする配列を含む);ATCC No.67024(インターロイキン-1bをコードする配列を
含む);ATCC No.39405,No.39452、No.39516、No.39626、およびNo.39673(イン
ターロイキン-2をコードする配列を含む);ATCC No.59399、No.59398、および
No.67326(インターロイキン−3をコードする配列を含む);ATCC No.57592(イン
ターロイキン-4をコードする配列を含む);ATCC No.59394およびNo.59395(イン
ターロイキン-5をコードする配列を含む);そしてATCC No.67153(インターロイ
キン-6をコードする配列を含む)が挙げられる。
B型肝炎ウイルスをコードする分子をクローニングされたゲノムは、種々の供
給源、例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC,Rockville,Maryland)か
ら入手され得る。例えばATCC No.45020は、pBR322(Moriartyら、Proc.Natl.A
cad.Sci.USA 78 : 2606-2610,1981)のBamHI部位にB型肝炎の全ゲノムDNA(精
製したDane粒子から抽出された)(Blumら、TIG 5(5): 154-158,1989の図3を参
照のこと)を含む。(ATCC No.45020の配列に生じる修正可能な間違いに注意のこ
と)。
あるいは本発明の使用のためのcDNA配列は、その配列を発現するかまたは含む
細胞から得られ得る。簡潔に記載すると、1つの実施態様において、目的の遺伝
子を発現する細胞由来のmRNAは、オリゴdTまたはランダムプライマーを用いて逆
転写酵素により逆転写される。次いでその1本鎖cDNAが、所望の配列のいずれか
の側の配列に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCR(米国特許第4
,683,202号;同第4,683,195号および同第4,800,159号を参照のこと。またPCR Te
chnology : Principles and Appli Cations for DNA Amplification,Erlich編
、Stockton Press,1989も参照)により増幅し得る。特に2本鎖DNAは、熱安定
性Taqポリメラーゼ、配列特異的DNAプライマー、ATP、CTP、GTPおよびTTPの存在
下で、加熱により変性される。合成が完了すると2本鎖DNAが産生される。この
サイクルは何回も繰り返され得、所望のDNAが何乗倍も増幅される。
本発明での使用に適切な核酸分子は、例えば、Applied Biosystems Inc.のDNA
合成機(例えば、APB DNA合成機モデル392(Foster City、California))で合成
され得る。
III.遺伝子療法
本発明の1つのさらなる局面は、治療効果を達成するため、または治療効果を
増強するために、上述のようなベクターおよび核酸配列を組み合わせて使用する
ことである。
好ましい実施態様において、GDVは、好ましくはレトロウイルスベクターであ
り、以下の産物および/または効果の組み合わせを提供するために選択される。
あるGDVはHIVエンベロープ抗原をコードし、そして別のGDVはHBVコア抗原をコー
ドするように、各GDVが1つ以上の抗原を基とする産物をコードし得る。この組
み合わせは、例えば、1つのGDVを含むHIV IIIB株のenv/rev遺伝子、および1つ
のGDVを含むHBV adr株コア遺伝子を構築することにより産生され得る。あるいは
、1つのGDVは、HIV env遺伝子が1つのGDV中、そしてIL-2、IFN、またはIL-12
が別のGDV中に存在するような第2のGDVで免疫増強遺伝子を基とするベクターで
、抗原を基とするベクターであり得る。さらに、あるGDVはプロドラッグベクタ
ー(すなわち、所望の時間または場所で活性化される条件付き致死遺伝子産物を
提供する)であり得、そしてその他は、TK(チミジンキナーゼ)遺伝子があるGDV
中にありおよびIFN遺伝子が別のものの中にあるような、免疫増強遺伝子を基と
するベクターである。あるいは、両方のGDVは、あるGDVがHIVのrevに対するアン
チセンスを提供し、その他のGDVがHIVのRTに対するアンチセンスを供給するよう
な、異なるウイルスタンパク質の翻訳をブロックするアンチセンス遺伝子を送達
し得る;この組み合わせは、両方のアンチセンス分子を逃がすために可能性の低
い単一標的ウイルス変異が存在するさらなる利点を提供する。
本発明の実施例のように、GDVはゴシェ病の治療に用いられ得る。ゴシェ病は
酵素グリコセレブロシダーゼの欠損を特徴とする遺伝子障害である。この型の治
療は、欠損細胞酵素を提供することによる単一の遺伝子置換療法の1例である。
この酵素の欠損は、体内のすべての細胞のリソゾーム中のグルコセレブロシドの
蓄積を導く。しかし疾患の表現型は、この疾患の非常にまれな神経障害の形態を
除いて、マクロファージにのみ現れる。この疾患は通常肝臓および脾臓そして骨
の傷害の拡大を導く(総説については、Science 256 : 794,1992およびThe Met
abolic Basis of Inherited Disease、第6版、Scriverら、第2巻、1677頁を参
照のこと)。処置のための種々のアプローチには、免疫グロブリンでコートされ
た赤血球の再封およびリポソーム技術を含む種々のマクロファージ標的化技術を
用いてヒト胎盤から精製された外因性の酵素の供給が挙げられるが、患者におけ
る臨床進歩は最小であった。ヒトグリコセレブロシダーゼが工業的な規模で精製
され、マクロファージ標的化のための改変(agluceraseTMとして商業的に公知で
ある)は、重要な臨床的進歩が観察された。しかし、この処置には1患者あたり
1年に平均$765,000の費用がかかり得る(Science 256:794,1992の総説を参照
のこと)。
本発明の状況において、患者が発現する能力がないタンパク質に対する遺伝子
で処置されるとき、そのタンパク質に応答する抗体のみではなく、そのタンパク
質を作る細胞に対する細胞免疫応答も生じ得る。これは、アデノウイルスE3タン
パク質のような免疫抑制遺伝子をコードするGDVと組み合わせて、グリコセレブ
ロシダーゼをコードするGDVを投与することにより未然に防ぎ得、または最小化
し得る。
IV.薬学的に受容可能なキャリアおよび希釈物
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈物は、使用される投与量および濃度で
は、患者に対して非毒性である。注入可能な溶液中のキャリアおよび希釈物の代
表例として、水、好ましくは生理学的なpHに緩衝化される(例えばリン酸緩衝化
生理食塩水またはTris緩衝化生理食塩水)等張生理食塩水溶液、マンニトール、
デキストロース、グリセロール、およびエタノール、ならびにヒト血清アルブミ
ンのようなポリペプチドまたはタンパク質が挙げられる。好ましい組成物は、10
mg/mlマンニトール、1mg/ml HSA、20mM Tris(pH7.2)、および150mM NaCl中のベ
クターまたは組換えウイルスを包む。この場合、組換えベクターは約1μgの物
質であるので、高分子量物質の1%未満であり得、そして総物質(水を含む)の
1/100,000未満であり得る。この組成物は−70℃で少なくとも6カ月は安定であ
る。
薬学的に受容可能なキャリアおよび希釈物は、液体溶液として、または投与前
に溶液に再懸濁され得る固体の形体(例えば、凍結乾燥された)のいずれかとし
ての組成物を提供するためにGDVと組み合わせられ得る。2つ以上のGDVが代表的
には、頬/舌下、直腸、経口、鼻腔、局所的(例えば経皮および眼)、膣、肺、
動脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、眼内、鼻腔内または静脈内のような在来の直接
経路を介して、あるいは間接的に投与される。非経口の経路は、本明細書中に同
時に出願された、同時係属中の米国特許出願第 号、代理人生理番号930049
.429中でさらに考察されている。
1つの実施態様において、GDVは、ポリカチオン補助投与を提供するためのポ
リカチオン分子を含む。遺伝子転移のこのような方法は、遺伝子転移の効果およ
び特異性を増大する複数の成分を含む、物理的な微粒子による仲介を介した遺伝
子の送達を容易にする。特に、ポリカチオン分子(例えばポリリジンおよびヒス
トン)は、核酸分子上の負の電荷を中和し、そしてコンパクトな形態に分子を圧
縮することが観察されてきた。この形態の分子は、明らかに内分泌経路を通じて
、細胞内に高い効率で移行される。宿主細胞中の核酸分子の発現における取り込
みは、以下のような一連の工程の後に生じる:(1)細胞表面への付着;(2)エンド
サイトーシス、または他の機構による細胞への侵入;(3)細胞質画分のエントリ
ー、それに続くエンドソーム放出;(4)核輸送;および(5)GDVにより行われる核
酸分子の発現。さらなる好ましい実施態様において、多層(multi-layer)技術
がこれらの工程の1つ以上の完了を容易にするために、ポリカチオン核酸分子複
合体に適用される。例えば、アシアロ糖タンパク質、トランスフェリン、および
免疫グロブリンのようなリガンドが、細胞表面に対する細胞複合体の結合を容易
にするために複合体に添加され得、エンドソーム破壊成分(例えば、ウイルスタ
ンパク質、インフルエンザウイルスヘマグルチニンのN-末端のような融合(fusog
enic)ペプチド、または不活性化ウイルス)は、エンドソームからのDNAの放出を
容易にするために添加され、あるいは核タンパク質(または核局在化シグナルを
含むペプチド)が、核内へのDNAの輸送を容易にするために添加される。さらに
好ましい実施態様において、その複合体を包含する組成物は、不活性化アデノウ
イルス粒子を含む(Harris,C.E.,1993; Curiel,D.T.,1993; Christiano,R.J
.,1993a; Christiano,R.J.,1993b; Cotten,M.,1993; Michael,S.I.,1993
; Curiel,D.T.,1992)。多層複合体を含む分類された成分は、所望のように変
わり得、従って、所定の組織に対する複合体、またはGDVより発現される遺伝子
の特異性は、特定の疾患または状態に対してより適切に変わり得る。
本発明のこの実施態様の特徴は、その複合体が、平均のサイズが100〜200nmの
エンドソーム小胞への出入りを容易にする80〜100nmのサイズの範囲である傾向
があり(Wagner,E.,1991)、そして圧縮された分子サイズは、より小さいサイ
ズのDNA構築物と同じ効率で標的細胞に移行された48kbのDNA分子とともに核酸分
子の分子量には依存しないことである(Cotten,M.,1992)。
別の実施態様において、GDVが、DNA銃(gun)技術の使用を介して投与される
。この技術は、被験者の皮膚層を通して爆発装置を介し裸の核酸分子を含む、GD
V
でコートしたマイクロプロジェクタイル(microprojectile)ビーズの推進力を
含む。代表的には、この技術は、最初にCaPO4、スペルミジン、またはエタノー
ルを用いて核酸分子をビーズ上(代表的には、金またはタングステンのような不
活性な金属上)へ沈澱する工程、そして次に、そのコートされたビーズを直接細
胞内に加速する工程を包含する。この投与方法は、強力な免疫治療効果を提供す
るので、本発明の免疫調節実施態様のために特に好ましく、そして比較的不活性
かつ非免疫原性ビーズは、多数のGDVの繰り返し投与を容易にする。
別の実施態様において、GDVはリポソームの使用を介して投与される。リポソ
ームは脂質二重層に囲まれた水性区画から構成される小さな脂質小包であり、代
表的には球形またはわずかに伸長した構造であり、そして直径は数百オングスト
ロームである。リポソームの特性の多くは、それらを形成するために用いられる
脂質の組成、ならびにイオン強度、極性(界面活性剤の存在により影響され得る
)、pH、および温度のような溶媒の状態に依存する。
GDVの送達のために、リポソームはいくつかの容易に活用される特性を提供す
る。適切な条件下で、リポソームは、標的細胞の原形質膜に、またはリポソーム
を内在化した細胞のエンドサイトーシス小胞の膜に融合し得、それにより、細胞
質にその内容物が吐き出される。しかし、標的細胞の表面との相互作用前に、リ
ポソーム膜は、その内容物を、例えば原形質内の分解酵素から隔離および保護す
る比較的に透過性の障壁として作用する。リポソームはまたこの理由から、「マ
イクロピル」と呼ばれている。さらに、リポソームは合成的な構造であるために
、特別に処方された所望の特徴を組み込まれたリポソームが設計され得る。例え
ばリポソームは、標的化のために表面の免疫グロブリンがそれの膜二重層に組み
込まれて形成されている。従って、そのリポソームは、小胞が保有するグロブリ
ン(例えば、モノクローナル抗体)が特異性を有する外部に配置された抗原を保
有する細胞に、優先的に結合する。別の実施例は、リポソーム膜と標的細胞膜と
の融合を容易にする膜タンパク質の添加、または流動性/剛性の指標であるリポ
ソームの相転移温度に影響を与えるためのリポソーム脂質組成(例えば、コレス
テロールの添加)の改変を包含する。
代表的には、リポソームの調製は、有機溶媒中で1つ以上の精製されたリン脂
質およびコレステロールの溶液を混合する工程、および乾燥させるために溶媒を
蒸発させる工程を包含する。次いで、GDVを含有する水性緩衝液が、脂質薄層に
添加され、そして混合物が、リポソームのかなり均質な分散を作るために超音波
処理される。次いで特定の実施態様において、次いで、透析、ゲル濾過、または
超遠心が、完全なリポソームから取り込まれていない成分を分離するために用い
られる(Stryer,L.,Biochemistry,236-240頁 1975(W.H.Freeman,San Franci
sco); Szokaら、Biochem.Biophys.Acta 600: 1-18(1980); Bayerら、Biochim
.Biophys.Acta.550:464(1979); Rivnayら、Meth.Enzymol.149: 119(1987);
Wangら、PNAS 84: 7851,1987; およびPlantら、Anal.Biochem.176: 420(198
9))。
本発明の別の実施態様において、非改変抗原であるが、しかし腫瘍と関連のあ
る抗原の一部または全部をコードするGDVが提供される。例として、MAGE1、MAGE
3、チロシナーゼヒドロキシラーゼ遺伝子(Brichard,V.,J.Exp.Med.,178:
489,1993)、MART1(Kawakami,Y.,PNAS 91:3515,1994)、ならびに色素細胞
腫および他のガンに関するものが挙げられる。いくつかの特異的なタイプの腫瘍
に対する抗腫瘍応答と関連するものとして同定された任意のこのような抗原が使
用され得る。
あるいは、GDVはまた、エクスビボ手順の使用を通じて投与され得る。このよ
うなエクスビボ手順として、例えばカルシウムリン酸沈澱法(Dubenskyら、PNAS
81:7529-7533,1984)、完全な標的細胞へのDNAの直接マイクロインジェクショ
ン法(Acsadiら、Nature 352: 815-818,1991)、および伝導性の溶媒中に懸濁
した細胞が一時的に膜を分極化し、巨大分子のエントリーを可能とするために、
強度の電場に供されるエレクトロポレーションのような方法を介する、GDVの宿
主細胞への物理的および化学的取り込み方法が挙げられる。次いで、これらの細
胞が本発明のGDVとなり得る。他の手順として、リガンドに結合したDNA、不活性
化アデノウイルスに連結したDNA(Cottonら、PNAS 89: 6094,1990)、リポフェ
クチン(Felgnerら、Proc. Natl. Acad.Sci. USA 84: 7413-7417,1989)、マ
イクロプロジェクタイルボンバードメント(microprojectile bombardment)(W
1ll1amsら、PNAS 88:2726-2730,1989)、ポリリジンのようなポリカチオン化合
物、レセプター特異的リガンド、組換えGDVを包接するリポソーム、GDV構築物含
有E.coliがそれらの外側の細胞壁を除去され、そしてポリエチレングリコール
およびウイルス形質導入を用いて動物細胞に融合されるスフェロプラスト融合(
Clineら、Pharmac.Ther.29: 69,1985; およびFriedmannら、Science 244: 12
75,1989)、およびDNAリガンド(Wuら、J.of Biol.Chem.264: 16985-16987
,1989)、ならびにセンダイウイルスまたはアデノウイルスのようなソラレン不
活性化ウイルスの使用が挙げられる。
エクスビボの状態において、形質転換した細胞が動物に移植され、そして遺伝
子の発現がモニターされる。プロトコルは、選択される組織細胞に依存して変わ
る。簡潔に記載すると、その発現がMHCクラスI提示を阻害する配列を保有する組
換えGVDが組織細胞に形質転換される。好ましい105から109の組織細胞が形質転
換される。その細胞が培養され、そして形質転換細胞が抗生物質耐性により選択
され得る。細胞の遺伝子発現が、ウェスタンブロットおよびFACS解析、または別
の方法によりアッセイされる。例えば、以下により詳細に記載したように、形質
転換された骨髄細胞が、2〜3×107細胞の静脈投与により動物に移植される(WO9
3/00051を参照のこと)。
形質転換され得る細胞として、線維芽細胞、骨髄細胞、内皮細胞、角化細胞、
肝細胞、および甲状腺濾胞細胞が挙げられるが、これらに限定されない。形質転
換された細胞は、患者に筋肉内、皮内、皮下、静脈内により、または体腔への直
接的なカテーテル注入により、あるいは本明細書中で考察する別の方法により直
接投与され得る。形質導入された骨髄細胞のインビボでの遺伝子発現は、ヘマト
クリットおよびリンパ球産生の関数として造血機能をモニターすることにより検
出される。
前記のように、GDVは、ワクシニアウイルス、シンドビスウイルス、またはコ
ロナウイルスのようなウイルスに由来し得る。レトロウイルスベタターを包むGD
Vを投与するためのさらなる方法は、「組換えレトロウイルス」と題された出願
中により詳細に記載される(米国特許出願番号第07/586,603号)。
代表的にはGDVは、処方前に0.25%から25%に、そして好ましくは約5%から2
0%の範囲のレベルに精製される。次いで、GDVが組換えウイルスである組成物の
調製後、組換えウイルスは、約10倍の物質量が存在する同時精製された混合物と
ともに、1投与量あたり物質約10ngから1μgの物質を構成する。好ましくは、
その組成物は、下記の様に処方された水性の溶液の0.1〜1.0ml中に調製される。
次いで、その組成物は、適切な経路を介して宿主に投与される。
好ましくは、その組成物、またはその組成物の代表的なサンプルは、所望の経
路を介してまず動物に投与され、そして、その動物は、生物学的応答について試
験される。そのような試験として、HIV遺伝子産物およびHBV遺伝子産物に対する
免疫応答の証拠のための免疫学的スクリーニングアッセイ(例えばCLTアッセイ
、抗体アッセイ)が挙げられ得る。このような試験に基づいて、GDVの力価が、
所望の効果をさらに強化するために調整され得る。次に、その組成物は適切な経
路を通じてヒトに投与され、引き続いてその組成物の効果を測定するためにスク
リーニングアッセイおよび他の試験が行われる。
本発明のさらなる実施態様において、形質導入した細胞より輸送されるタンパ
ク質を発現し、そして局所的または全身的な効果を提供するGDVが提供される。
このようなタンパク質として、前記のようなサイトカイン、第VIII因子、Bドメ
インを欠失した第VIII因子、種々のサイトカインまたはサイトカインレセプター
アンタゴニスト(例えば天然に存在するIL-1レセプターアンタゴニスト)、第IX
因子、エリスロポエチン、成長ホルモン、種々の脳および下垂体由来のペプチド
ホルモン、アンジオテンシン転換酵素(ACE)インヒビター、および他の血管拡
張剤または血管収縮剤、フリーラジカルのレベルを下げる薬剤、(例えば、スー
パーオキシドジスムターゼ(SOD))ならびに痛みの認識レベルを下げる薬剤が
挙げられる。
GDVの1つ以上、および好ましくは全てのGDVが、レトロウイルスベクターであ
る、実施態様においては、粗雑なまたは精製された形態のGDVを含む水溶性懸濁
物が、室温において凍結乾燥または蒸発により乾燥させられ得る。具体的には、
凍結乾燥は、水溶性の懸濁物を、ガラス転移温度以下に、または水性懸濁物の共
融点温度以下に冷却する工程、および冷却した懸濁物から凍結乾燥したウイルス
を形成するために、昇華により水分を除去する工程を包含する。簡潔に記載する
と、処方された組換えウイルスのアリコートが凍結乾燥機(Supermodulyo 12K)
に取り付けたEdwards Refrierated Chamber(3 shelf RC3S unit)に置かれる。Ph
illipsら(Cryobiology,18:414,1981)に記載されたような多段階凍結乾燥手順
が、処方された組換えウイルスを、好ましくは−40℃〜−45℃の温度で凍結乾燥
するために用いられる。得られる組成物は、凍結乾燥ウイルスの10重量%未満の
水を含む。以下に詳述されるように、いったん凍結乾燥されると、その組換えウ
イルスは安定であり、そして−20℃〜25℃で保存され得る。
蒸発法では、水分は室温で蒸発により水性懸濁物から除去される。1つの実施
態様において、水分は噴霧乾燥により除去される(欧州特許第 520,748号)。噴
霧乾燥プロセスにおいて、水性懸濁物は予め加熱された気体流(通常は空気流)
の中に送達され、この際懸濁液の液滴から水分は急速に蒸発する。噴霧乾燥装置
は、多くの製造業者から入手可能である(例えば、Drytec Ltd.,Tonbridge,Eng
land;Lab-Plant,Ltd.,Huddersield、England)。一旦脱水されると、組換え
ウイルスは安定であり、そして、−20℃〜25℃で保存され得る。本明細書に記載
した方法において、得られる乾燥または凍結乾燥ウイルスの水分含量は、カール
−フィッシャー装置(EM Science AquastarTM VIB容積滴定機、Cherry Hill、NJ
)の使用により、または重量法により測定され得る。
1つの実施例としては、GDVはレトロウイルスベクターである場合には、ベク
ターの注入は高度に局在化した作用をもたらし、ここでは少数の細胞(PCRデー
タから1つの注入部位あたり約1×105と見積もられる)が、レトロウイルスベク
ターにより形質導入される。従って、2つ以上のレトロウイルスベクターを含有
する単一の組成物が、同じ部位に注入される場合、その組成物が、実質的に全て
の天然の形質導入可能な細胞が両方のGDVで形質導入されるように、またはこの
細胞が1つのGDVにより形質導入されるそして1つの部分集合のみが第2のGDVで
形質導入されるように処方され得る。
さらに、本発明の薬学的に受容可能な組成物はまた、細胞分裂を刺激する因子
を含み得、そしてそれゆえ、組換えレトロウイルスベクターのようなGDVの取り
込みおよび組み込みを刺激する。代表的な実施例として、メラノサイトに対する
メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、乳ガンまたは上皮のガンに対する上皮成長
因子(EGF)、および筋肉注射用の麻酔ビプボカイン(bipuvocaine)(または関
連化合物)が挙げられる。組換えウイルスを保存するための特に好ましい方法、
および組成物は、「組換えウイルスを保存するための方法」と題された米国特許
出願に記載される(1993年10月12日に出願された米国特許出願番号08/135,938、
および1993年11月15日に出願された米国特許出願番号08/122,791)。
前記のように、GDVは、肝炎抗原の少なくとも1つの免疫原部分に加えて、免
疫調節補因子の発現を指向し得る。しかし、サイトカインである免疫調節補因子
を発現しない場合、このサイトカインは前記の組成物に含有され得るか、または
前記組成物と分けて(同時にまたは続いて)投与され得る。簡潔に記載すると、
このような実施態様においては、免疫調節補因子は、好ましくはThe Physician'
s Desk Referenceに規定されたような標準的なプロトコルおよび投与量に従って
投与される。例えば、αインターフェロンは、1日あたり100万から500万ユニッ
トの投与量で、2〜4ヶ月間、そしてIL-2は、体重1kgあたり10,000〜100,000
ユニットの投与量で1日あたり1〜3回で、2〜12週間投与され得る。γインタ
ーフェロンは、150,000〜1,500,000ユニットの投与量で1週間に2〜3回で、2
〜12週間投与され得る。
複数のGDVが、動物または植物に投与され得る。好ましい実施態様において、
動物は温血動物であり、さらに好ましくは、マウス、ニワトリ、ウシ、ブタ、例
えばネコおよびイヌのようなペット、ウマ、およびヒトからなる群から選択され
る。あるいは、その動物は冷血動物で、好ましくは、魚類、水棲の脊椎動物、お
よび貝類からなる群から選択される。宿主生物が植物である場合、代表的にはGD
Vは根により取り込まれる溶液により、または葉に噴霧される溶液を介して投与
一方、昆虫耐性遺伝子が第2のGDVを提供される。
本発明の好ましい実施態様において、転移していない患者が別な方法では処置
不可能な、神経膠芽腫、神経膠状細胞腫、または他の脳腫瘍のような腫瘍を患う
患者が精製濃縮されたHSVTKベクターをその腫瘍に直接注入することにより処置
され得る。そのベクターは、増殖細胞のみがレトロウイルスベクターにより形質
導入可能であるため、腫瘍細胞において優先的に組み込まれ発現される。そのベ
クターは、未制御の様式でHSVTKを発現し得るか、あるいは、腫瘍の特異性の増
大を促進するために、腫瘍中で優先的に発現される組織特異的または事象特異的
プロモーター由来のHSVTKを発現し得る。例えば、CEAプロモーター由来のHSVTK
を発現するベクターは、乳癌腫または肝臓癌腫を処置するために利用され得る。
ベクター(1×107〜1×1011cfuの力価の約1ml)の複数回の注入(10回より多
い)が、精製されたベクターがタンパク質の皮免疫原性の量(1×107cfuあたり
1μgタンパク質未満)は含んでいないため、長い期間にわたって(3ヶ月より
長い)送達され得る。従って、注入は、腫瘍細胞の大きな画分(1%より多い)
が形質導入されるまで継続され得る。ベクターはデバルキング手術または化学療
法の前あるいは後に、ステレオタクティックに(stereotactically)送達され得る
。インビボの形質導入が起こった後、形質導入された腫瘍細胞は、例えばアシク
ロビルまたはガンシクロビルのようなHSVTKにより活性化されるプロドラッグで
患者を処置することにより殺傷され得る。
本発明の別の実施態様において、ここで前記GDVはベクター産生細胞(「VCL」
または「産生細胞」とも呼ばれる)を含み、病原菌を破壊するために動物に投与
する工程を包含する、動物中の病原菌を破壊するための方法が提供される。好ま
しい実施熊様において、VCLは腫瘍に直接注入され得、それにより、インビボに
おけるレトロウイルスベクターの継続的な産生、および形質導入効率の増大が可
能となる。
しかし、VCLの直接注入の1つの難点は、特定の例において非常に強い免疫応
答が起こり得、従って、このような治療を非常に短期間(2週間未満)のみで実
施可能とさせることである。従って、本発明の好ましい実施態様において、VCL
に対する免疫応答は、自己またはHLA-適合ヒト細胞から作られたパッケージング
細胞株を選択することにより最小化され得る。さらに、VCLにより発現されるウ
イルス構造タンパク質に対する免疫応答をさらに限定するために、細胞は、腫瘍
内へのベクター粒子の拡散は許容するが、宿主免疫細胞の膜透過およびそれによ
り免疫応答を生じることを妨げる半透膜を有する、ビーズまたは袋のような構造
内に封入され得る。免疫応答を減少する方法は、インビボの形質導入を起こすた
めのさらなる時間を許容し、従って治療を改善する。特別の実施態様において、
条件活性化GDVをコードするVCLは、好ましくは条件活性化GDV(例えば、アシク
ロビルまたはガンシクロビル)を用いた処置により、インビボにおける細胞の形
質導入におけるその役割を達成した後に破壊される。
本発明の別の実施態様において、卵巣ガン、神経芽腫、および子宮頚ガン(転
移性であるが、代表的には腹膜腔に局在化したまま残る)のような転移性である
が、高度に局在化したガンが、本発明の方法に従って処置され得る。この実施態
様において、ベクターまたはVCLが腹腔に直接注入され得る。特に好ましいアプ
ローチにおいて、急速に増殖する腫瘍は、優先的にHSVTK GDVおよびGDVをコード
するサイトカイン(例えばγ-インターフェロンまたはGMCSF)によりインビボで
形質導入され、そして続いてアシクロビルまたはガンシクロビルの患者への投与
により破壊され得る。この薬物により破壊された細胞は、サイトカインの局在的
な産生がある場合に大いに増強された免疫応答を誘発する。
本発明のなお別の実施態様において、ウイルスベクターまたはVCLは、肺癌腫
、乳癌腫、大腸癌腫によって生じる胸膜の癌腫症を治療するために胸膜の空洞に
注入され得る、または硬膜血腫癌腫症の処置のために髄腔内注射により注入され
得る。
本発明の別の実施態様において、転移性の、播種性のガンを有する患者がまた
、本発明の方法に従って処置され得る。例えば、肝臓に転移した初期の膵臓癌腫
、または結直腸癌腫などの場合には、本発明のウイルスベクターまたはVCLが、
体壁を通しての、シリンジの挿入により、あるいは、ステレオタクシス(stereot
axis)により標的化されることにより直接注入され得る。肺または大腸の腫瘍は
、気管支鏡検査またはS状結腸検査によりそれぞれ同様に調べられ得る。従って
例えば、HSVTKを発現するベクターによりインビボで形質導入された腫瘍細胞は
、患者へのアシクロビルまたはガンシクロビルの投与により破壊され得、第2の
GDVのために組み合わせで存在し得るサイトカインの存在下で、増大された抗腫
瘍応答を生じ得る。
本発明の好ましい実施態様において、前記の細胞傷害性遺伝子または遺伝子産
物(例えばHSVTK)の投与に加え、種々の付加的な治療的組成物が、病原体を阻害
または破壊するために、温血動物に同時投与、または続いて投与され得る。この
ような治療的組成物は、直接投与され得るか、または別の実施態様によれば、独
立のGDVから発現され得る。あるいは、細胞傷害性遺伝子または遺伝子産物、お
よび治療的組成物をコードする遺伝子(例えば、前記のような非ベクター由来の
遺伝子)の両方の発現を指向するGDVが、病原体を阻害または破壊するために、
温血動物に投与され得る。特に好ましい実施態様において、HSVTK遺伝子および
ヒトγ-IFNのような免疫アクセサリー分子をコードする遺伝子の両方を送達およ
び発現するベクターまたはベクターVCLが、別の治療的ベクター(例えばIL-2の
ような第2のサイトカインをコードする)に引き続いて、または共に患者に投与
され得る。このような構築物において、1つの遺伝子はベクターLTRから発現さ
れ得、そしてその他のものは、LTR間に見出される付加的な転写プロモーターを
利用し得るか、または内部のリボソーム結合部位を利用して、ポリシストロンmR
NAとして発現され得る。インビボの遺伝子転移の後、患者の免疫系はα-IFNおよ
び/またはIL-2の発現のために、活性化される。これが起こった後に、全体の腫
瘍の負荷それ自体は、より効果的な腫瘍の免疫攻撃を可能とするアシクロビルま
たはガンシクロビルを用いて患者を処置することにより減少され得る。引き続い
て、炎症性細胞での死腫瘍の侵潤は、免疫提示を増大させ、そしてさらに腫瘍に
対する患者の免疫応答を改善する。
従って、いくつかの実施態様において、GDVは、GDVが、(a)正常の健康な細
胞を形質導入し、そしてその細胞を全身に分泌される治療的タンパク質または他
の物質の産生するように形質転換するか、あるいは(b)異常または欠陥細胞を
形質転換し、その細胞を正常な機能の表現型に形質転換するか、そのいずれかで
あり得るように、そのような様式で投与され得る。さらに、代表的には多数のGD
Vが、同じ組成物中で投与されるが、例えば、二つの円筒のシリンジの使用を介
して、または結合させた処方(joint formulation)によるように、同じ時間に
および同じ部位に同時に投与され得る。1つ以上のGDVを含有する組成物はまた
、本発明と同時に出願された同時継続出願中の米国特許出願番号 、代理人
証明書番号930049.427において開示されるように、異なる部位に投与され得る。
組成物はまた、GDVがウイルスである場合、本発明と同時に出願された同時継続
出願中の米国特許出願番号 、代理人証明書番号930049.441において開示さ
れるように、高い力価のウイルスを含有し得る。
多数のGDVが、例えば根による取り込み用に適した溶液を介する、または葉に
噴霧される溶液を介するような伝統的な方法を用いて植物に投与され得る。
実施例
実施例1
レトロウイルスベクター骨格の調製
A.レトロウイルス骨格KT-1およびKT-3Bの調製
N2ベクター(Armentanoら,J.Vir.61:1647-1650,1987;Eglitasら,Science
230:1395-1398,1985)由来のモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)5'長末端
反復(LTR)EcoRI-EcoRIフラグメント(gag配列を含む)をプラスミドSK+(Stra
tagene,La Jolla,CA)に連結する。得られた構築物をN2R5と名づける。このN2
R5構築物を、ATG開始コドンをATTに変える部位特異的インビトロ変異によって変
異させ、gag発現を防止する。変異させたこのフラグメントは200塩基対(bp)長
であり、PstI制限部位が隣接している。PstI-PstI変異フラグメントをSK+プラス
ミドから精製し、それをプラスミドpUC31中のN2 MoMLV5’LTRのPstI部位に挿入
することによって、非変異200bpフラグメントを置換する。プラスミドpUC31はpU
C19(Stratagene,La Jolla,CA)に由来し、追加の制限部位XhoI、BglII、BssH
IIおよびNcoIがポリリンカーのEcoRI部位とSacI部位との間に挿入されている。
この構築物をpUC31/N2R5gMと名づける。
N2由来の1.0キロベース(Kb)のMoMLV3’LTR EcoRI-EcoRIフラグメントをプラ
スミドSK+中にクローニングして、N2R3-と称する構築物を得る。1.0KbのClaI-Hi
ndIIIフラグメントをこの構築物から精製する。
ネオマイシン(neo)ホスホトランスフェラーゼ遺伝子の発現を駆動するSV40
初期プロモーターを含む、pAFVXMレトロウイルスベクター(Krieglerら,Cell 3
8: 483,1984; St.Louisら,PNAS 85:3150-3154,1988)由来のClaI-ClaI優性選
択マーカー遺伝子フラグメントを、SK+プラスミド中にクローニングする。この
構築物をSK+SV2-neoと名づける。1.3KbのClaI-BstBI遺伝子フラグメントをSK+SV2
-neoプラスミドから精製する。
目的の遺伝子を含むXhoI-ClaIフラグメントと1.0KbのMoMLV3’LTR ClaI-HindI
IIフラグメントとをpUC31/N2R5gMプラスミドのXhoI-HindIII部位に挿入する3部
分連結によって、KT-3BまたはKT-1ベクターを構築する。これは、KT-1骨格を有
すると称されるベクターを与える。次に、pAFVXMレトロウイルスベクター由来の
1.3KbのClaI-BstBI neo遺伝子フラグメントをこのプラスミドのClaI部位にセン
ス方向に挿入して、KT-3B骨格を有すると称されるベクターを得る。
B.レトロウイルス骨格KT-3BCの調製
既にネオマイシン耐性である細胞に遺伝子を形質転換する際に使用するため、
別の選択可能マーカーであるフレオマイシン耐性(Mulsantら,Som.Cell and M
ol.Gen.14:243,1988,Cayla,C6dex,FRから入手可能)を用いてレトロウイ
ルス骨格KT-3BCを作製し得る。プラスミドpUT507(Mulsantら,Som.Cell and M
ol.Gen.14:243,1988)をNdeIで消化し、そしてクレノウポリメラーゼIでその
末端を平滑化する。次に、このサンプルをHpaIで消化し、そしてClaIリンカーを
フラグメントの混合物に連結する。次に、このサンプルをClaIでさらに消化する
。過剰のClaIリンカーをClaIでの消化によって除去し、そしてRSV LTRおよびフ
レオマイシン耐性遺伝子を有する1.2Kb ClaIフラグメントをアガロースゲル電気
泳動およびそれに続くGeneCleanII(Bio101,San Diego,CA)を用いる精製によ
って単離する。このフラグメントを1.3KbのClaI-BstBIネオマイシン耐性フラグ
メントの代わりに用いて、骨格KT-3BCを得る。
実施例2
B7免疫エンハンサー発現ベクターおよびHBV抗原発現ベクターの投与
A.B7 免疫エンハンサー発現ベクター
i.免疫調節補因子B7-1の遺伝子配列の増幅
B7-1補因子遺伝子を含有するRaji細胞(ATCC♯ CCL 86)を、5つのT75フラス
コ内の総容量158ml中に1.0×106細胞/mlの密度で懸濁し、37℃、5% CO2で一晩
培養する。翌日、3つの50ml遠心管で細胞を収集する。細胞ペレットを50mlのPBS
中で混合し、2,000rpmで10分間遠心分離し、上清を捨てる。この手順を繰り返す
。Micro-Fast Track mRNA Isolation Kit,バージョン1.2(Invitrogen,San Die
go,CA)を用いてポリA+mRNAを単離する。単離した無傷のmRNAを鋳型として使用
し、cDNA CYCLE Kit(Invitrogen,San Diego,CA)を用いて全長第一本鎖cDNA
を生成した後、2回の異なるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応を行なう。
ヌクレオチド番号決定系は、Freemanら(J.Immunol.143:2714-2722,1989)か
ら得る。
第1のPCR増幅を2つのプライマーを用いて行なう。センスプライマーはB7-1
のヌクレオチド配列315〜353に対応する。このプライマーは、ATG開始コドンを
含むB7-1オープンリーディングフレームの5'領域を含有し、そしてその5'末端に
2つのHindIII制限部位を有する。
第2のプライマーは、B7-1のアンチセンスヌクレオチド配列1,187〜1,149に対
応する。このプライマーは、TAA終結コドンで終わるB7-1オープンリーディング
フレームの3'領域に相補的であり、そしてその5'末端に2つのXhoI制限部位を含
有する。
第1のPCR反応で得た868bpPCR産物をpCRIIプラスミド(Invitrogen,San Dieg
o,CA)に連結し、DNA配列決定によって確認し、凍結コンピテントE.coli細胞
に形質転換する。このベクター構築物をpCRII H-Xh-B7-1と命名し、DNA配列決定
によって確認する。
第2のPCR増幅を2つのプライマーで行なう。センスプライマーはB7-1のヌク
レオチド配列315〜353に対応する。このプライマーは、ATG開始コドンを含むB7-
1オープンリーディングフレームの5'領域を含有し、2つのXhoI部位をその5'末端
に有する。
第2のプライマーはB7-1のアンチセンスヌクレオチド配列1,187から1,149に対
応する。このプライマーはTAA終結コドンで終わるB7-1オープンリーディングフ
レームの3'領域に相補的であり、その5'末端に2つのApaI制限部位を含む。
第2のPCR反応で得た868bpPCR産物をpCRIIプラスミドに連結し、DNA配列決定
によって確認し、凍結コンピテントE.coli細胞に形質転換する。このベクター
構築物をpCRII Xh-A-B7-1と命名し、DNA配列決定によって確認する。
ii.IRBS を含有するB7-1レトロウイルスベクターの構築
pGEM 5Z+BIP 5'(Peter Sarnow,University of Colorado,Health Sciences
Center,Denver,CO,ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質)をSacIおよびSph
Iで消化する。250bpBIPフラグメントを1.5%アガロースゲル電気泳動によって単
離し、pSP72のそれぞれの部位にサブクローニングする。このベクター構築物をp
SP72 BIPと称する。
HindIII-XhoI B7-1配列を実施例2AiのpCRII H-Xh B7-1から切り出し、pSP72
BIPのHindIII-XhoI部位にサブクローニングする。この構築物をpSP72 H-Xh BIP-
B7-1と称する。
構築物pSP72 H-Xh BIP-B7-1をそのXhoI部位で切断した後、ClaIで切断する。
次に、この構築物を既述のようにKT-3BのXhoI-ClaI部位に挿入し、それをKT-B7-
1レトロウイルスベクター構築物と称する。
これらの構築物を用いて、実施例2Bva-2Bvcに記載の感染性ベクター粒子を作
製する。
iii.一過性パッケージングによるB7-1ベクター発現およびマウス細胞の形質導 入の有用性のアッセイ
KT-B7-1ベクターで形質導入され、アンフォトロピックまたはVSVGエンベロー
プタンパク質を保持する、L33細胞株(Dennert,USC Comprehensive Cancer Cen
ter,Los Angeles,CA,Patekら,Int.J.of Cancer 24:624-628,1979)、BC10
ME細胞株(Patekら,Cell Immuno 72:113,1982,ATCC♯TTB85)、L33envおよびB
Cenv細胞株(L33envとBCenvはHIV-1 IIIBenvを発現する,Warnerら,AIDSRes.an
d Human Retrovirus 7:645,1991)を、フローサイトメトリー分析によって細胞
表面発現について試験する。非形質導入細胞も表面発現について分析し、B7-1形
質導入細胞と比較することによって、細胞表面発現における形質導入の効果を決
定する。
マウス細胞株L33-B7-1、L33env-B7-1、L33env、L33、BC10ME、BC10ME-B7-1、B
CenvおよびBCenv-B7-1を、その細胞表面上でのB7-1分子の発現について試験する
。ややコンフルエントな密度で増殖した細胞をVersene(Irvine Scientific,Ir
vine,CA)で処理することによって培養ディッシュから取り出し、1%ウシ血清
アルブミン(BSA)および0.02%アジ化ナトリウムを加えた冷(4℃)リン酸緩衝
化生理食塩水(PBS)(洗浄緩衝液)を用いて、200×gの遠心分離によって2回
洗浄する。約2.0×106細胞を微小遠沈管に入れ、200×gの遠心分離によってペレ
ット化する。上清を除去した後、細胞ペレットをモノクローナル抗体(Mab)BBI
(Becton Dickinson,Los Angeles,CA)(1μg/106細胞)とともに再懸濁し、
時折混合しながら4℃で30分間インキュベートする。抗体で標識された細胞を1m
lの洗浄緩衝液(4℃)で2回洗浄し、遠心分離し、上清を捨てる。細胞をヤギ
抗マウスIgG FITC接合抗体(Fisher Scientific,Tustin,CA)(50μg/106細胞
)とともに再懸濁し、4℃で30分間インキュベートする。細胞を洗浄し、1mlの洗
浄緩衝液に再懸濁し、FACSort Analyzer(Becton Dickinson,Los Angeles,CA
)で分析する前に氷上に保持する。形質導入細胞の平均蛍光強度を非形質導入細
胞のそれと比較して、B7-1タンパク質が表面発現において有する効果を決定す
る。さらに、陽性染色細胞率と陰性染色細胞率とを比較し得る。
iv.一過性パッケージングおよびヒト細胞の形質導入によるB7-1ベクター発現の 有用性のアッセイ
KT-B7-1で形質導入した細胞株をフローサイトメトリー分析によって表面発現
について試験する。非形質導入細胞を分析してKT-B7-1形質導入細胞と比較し、
形質導入が表面発現において有する効果を決定する。
2つのヒト細胞株JY-B7-1およびJYを、その細胞表面上でのB7-1分子の発現に
ついて試験する。106細胞/mlに増殖した懸濁細胞を培養フラスコからピペットで
取り出し、1%BSAおよび0.02%アジ化ナトリウムを加えた冷(4℃)PBS(洗浄
緩衝液)を用いて、200×gの遠心分離によって2回洗浄する。約2×106細胞を
微小遠沈管に入れ、200×gでペレット化し、上清を捨てる。細胞ペレットをMab
BB1(Becton Dickinson,Los Angeles,CA)(1μg/106細胞)とともに再懸濁
し、時折混合しながら4℃で30分間インキュベートする。抗体で標識された細胞
を1mlの洗浄緩衝液(4℃)で2回洗浄する。上清を取り除く前に、細胞をヤギ
抗マウスIgG FITC接合抗体(50μg/106細胞)とともに再懸濁し、4℃で30分間
インキュベートする。細胞を洗浄し、1mlの洗浄緩衝液に再懸濁し、FACSort Ana
lyzerで分析するまで氷上に保持する。形質導入細胞の平均蛍光強度を非形質導
入細胞のそれと比較することにより、B7-1タンパク質が表面発現において有する
効果を決定する。さらに、陽性染色細胞率と陰性染色細胞率とを比較し得る。
B.HBV 抗原発現ベクター
i.HBV e/ コア配列の単離
B型肝炎ウイルスの全プレコア/コアコード領域を含む1.8Kb BamHIフラグメン
トをプラスミドpAM6(ATCC寄託番号45020)から得、そしてKS II+(Stratagene
,La Jolla,CA)のBamHI部位に連結する。このプラスミドをKS II+HBpc/cと称
する。XhoIリンカーをKS II+HBpc/c中のプレコア/コアのStuI部位(ヌクレオチ
ド配列1,704)に加えた後、HincII(ヌクレオチド配列2,592)で切断する。得ら
れた877bpのXhoI-HincIIプレコア/コアフラグメントをSK II+のXhoI/HincII部
位にクローニングする。このプラスミドをSK+HBeと称する(図1)。
ii.PCR によるHBV e/コア配列の部位特異的変異
プラスミドKS II+HB pc/c中のプレコア/コア遺伝子を配列決定して、プレコア
/コアコード領域が正しいかどうかを決定する。この配列は1塩基対欠失を有し
、それがコドン79のフレームシフトを引き起こすため、2つの連続する印フレー
ムのTAG終結コドンがコドン84および85に生じることが見出された(図2)。こ
の欠失をプラスミドSK+HBe中のプレコア/コアコード領域のPCR重複伸長(Hoら,
Gene 77:51-59,1989)によって修正する。この欠失を修正するために行なう3回
のPCR反応に4つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用する。
第1の反応は2つのプライマーを使用する。センスプライマー配列はadw株の
ヌクレオチド配列1,855〜1827に対応し、その5'末端に2つのXhoI制限部位を含有
する。ヌクレオチド配列番号はGenbank(Intelligenics,Inc.,Mountain View
,CA)から得る。
第2のプライマーの配列はB型肝炎ウイルスadw株のアンチセンスヌクレオチ
ド配列2,158〜2,130に対応し、コドン79、84および85を含む。
第2の反応はまた、2つのプライマーを使用する。センスプライマーはadw株
のヌクレオチド配列2,130〜2,158に対応し、コドン79、84および85を含む。
第2のプライマーはSK+プラスミドポリリンカー由来のアンチセンスヌクレオ
チド配列に対応し、HBVプレコア/コアコード領域の終結コドンの135bp下流のCla
I部位を含有する。
第3の反応も2つのプライマーを使用する。センスプライマーはadw株のヌク
レオチド配列5〜27に対応し、その5'末端に2つのXhoI制限部位を含有する。
第2のプライマーの配列はSK+プラスミドポリリンカー由来のアンチセンスヌ
クレオチド配列に対応し、HBVプレコア/コアコード領域の終結コドンの135bp下
流のClaI部位を含む。
第1のPCR反応はアンチセンス鎖内の欠失を修正し、第2の反応はセンス鎖内
の欠失を修正する。PCR反応1および2はコドン79に生じる変異をCCからCCAに修
正し、コドン81の塩基対置換をTCAからTCTに修正する(図2)。プライマー1はH
BV eコード領域のATGコドンの10bp上流の2つの連続するXhoI位を含有し、プラ
イマーはHBVプレコア/コアコード領域の終結コドンの135bp下流にClaI部位を含
有する。第1および第2のPCR反応の産物を第3PCR反応で伸長して、正しい配列
を有する1つの完全なHBVプレコア/コアコード領域を生成する(図3)。
これらのPCR反応は次の循環条件を用いて行なう。まずサンプルを94℃に2分
間加熱する。融解工程と呼ばれるこの工程は二本鎖DNAを合成用一本鎖に分離す
る。次に、サンプルを56℃に30秒間加熱する。アニーリング工程と呼ばれるこの
工程は、第1工程で生成した一本鎖DNAにプライマーをアニールさせる。次に、
サンプルを72℃に30秒間加熱する。伸長工程と呼ばれるこの工程は、第1の工程
で生成した一本鎖DNAの相補鎖を合成する。第2の融解工程を94℃で30秒間行な
った後、56℃で30秒間のアニーリング工程を行い、次に72℃で30秒間の伸長工程
を行なう。次に、この手順を35サイク繰り返すと、所望のDNA産物が増幅される
。
PCR反応産物をゲル電気泳動によって精製し、NA45紙(Schleiher and chuell
,Keene,NH)上に転移する。400μlの高塩類緩衝液(1.5M NaCl,20mM Tris,p
H8.0,0.1mM EDTA)中65℃で30分間インキュベートすることによって、所望の78
7bpのDNAフラグメントをそのNA45紙から溶出させる。溶出後、500μlのフェノ
ール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)をその溶液に加える。
その混合物を攪拌し、次いでBrinkmann Eppendorf遠心分離器(5415L)を用いて
14,000rpmで5分間遠心分離する。所望のDNAフラグメントを含有する水層を新し
い1.5ml微小遠沈管に移し、1.0mlの100%EtOHを加える。この溶液をドライアイ
ス上で5分間インキュベートした後、10,000rpmで20分間遠心分離する。上清を
捨て、ペレットを500μlの70%EtOHでリンスする。Savant Speed-Vac濃縮器内で
ペレットを減圧下10,000rpmで遠心分離することによって乾燥し、次いで10μlの
脱イオン化H2Oに再懸濁する。1μlのPCR産物を1.5%アガロースゲル電気泳動で
分析する。787XhoI-ClaIプレコア/コアPCR増幅フラグメントをSK+プラスミドのX
hoI-ClaI部位にクローニングする。このプラスミドをSK+HBe-cと称する。E.col
i(DH5アルファ,Bethesda Research Labs,Gaithersburg,MD)をSK+HBe-cプラ
スミドで形質転換し、増殖させてプラスミドDNAを生成する。次いで、基本的にB
irnboimら(Nuc.Acid Res.7:1513,1979)およびSambrookら(Molecular Cloni
ng: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,1989)の記載に従って、
プラスミドを単離、精製する。SK+HBe-cプラスミドを分析してプレコア/コア遺
伝子の配列を確認する(図4)。
iii.HBV コア配列の単離
プラスミドSK+HBe中の1塩基対欠失を実施例2Biiに記載のPCR重複伸長法によっ
て修正する。この変異を修正するために行なう4回のPCR反応には、以下のヌク
レオチドプライマーを使用する。
第1の反応は2つのプライマーを使用する。センスプライマーはSK+HBeプラス
ミドのT-7プロモーターのヌクレオチド配列に対応する。
第2のプライマーはadw株のアンチセンス配列2,158〜2,130に対応し、コドン7
9、84および85を含む。
第2の反応は2つのプライマーを使用する。アンチセンスプライマーはSK+HBe
プラスミド中に存在するT-3プロモーターのヌクレオチド配列に対応する。
第2のプライマーはadw株のセンスヌクレオチド配列2,130〜2,158に対応し、
コドン79、84および85を含む。
第3の反応は2つのプライマーを使用する。アンチセンスプライマーはSK+HBe
プラスミド中に存在するT-3プロモーターのヌクレオチド配列に対応する。
第2のプライマーはSK+HBeプラスミド中に存在するT-7プロモーターのセンス
配列に対応する。
第3の反応のPCR産物はHBVプレコア/コアコード領域の正しい配列を生じる。
HBVコアコード領域を単離するために、コアコード領域のATG開始コドンの上流
のXhoI制限部位を導入し、HBVプレコアコード領域の29アミノ酸リーダー配列を
除去するようにプライマーを設計する。第4の反応では、第3の反応で得たPCR
産物および以下の2つのプライマーを用いてHBVコアコード領域を産生する。
センスプライマーはadw株のヌクレオチド配列1,885〜1,905に対応し、その5'
末端に2つのXhoI部位を含有する。
第2のプライマーはSK+HBeプラスミド中に存在するT-3プロモーターのアンチ
センスヌクレオチド配列に対応する。第4のPCR反応から得られる約600bpのPCR
産物はHBVコアコード領域を含み、その5'末端には新規XhoI制限部位を、その3'
末端にはSK+HBeプラスミドのマルチクローニング部位に存在したClaI制限部位
を含む。
第4のPCR反応の後、溶液を新しい1.5ml微小遠沈管に移す。50μlの3M酢酸ナ
トリウムをこの溶液に加えた後、500μlのクロロホルム:イソアミルアルコール
(24:1)を加える。その混合物を攪拌し、次いで14,000rpmで5分間遠心分離す
る。水層を新しい微小遠沈管に移し、1.0mlの100%EtOHを加える。この溶液を−
20℃で4.5時間インキュベートし、次いで10,000rpmで20分間遠心分離する。上清
を捨て、ペレットを500μlの70%EtOHでリンスする。減圧下10,000rpmで遠心分
離することによってペレットを乾燥し、次いで10μlの脱イオン化H2Oに再懸濁す
る。1μlのPCR産物を1.5%アガロースゲル電気泳動によって分析する。
iv.HBV コアレトロウイルスベクターの構築
実施例2BiiiのPCR産物(約600bp長)をXhoIおよびClaI制限エンドヌクレアー
ゼで消化し、1.5%アガロースゲルで電気泳動し、Geneclean IIによってDNAをゲ
ル切片から精製する。このXhoI-ClaI HBVコアPCR産物をKT-3Bレトロウイルスベ
クターのXhoIおよびClaI部位に挿入する。この構築物をKT-HBcと称する。
KT-HBc由来のHBVコアフラグメント(XhoI-ClaI)をpBluescript KS+IIのそれ
ぞれの部位に挿入する。この構築物をKS+II HBcと称し、DNA配列決定によって確
認する。
v.ベクター構築物KT-B7-1およびKT-HBcによるパッケージング細胞株HXおよびD Aの一過性トランスフェクションおよび形質導入
a.プラスミドDNAトランスフェクション
1日目に、パッケージング細胞株HX(WO92/05266)をダルベッコ改変イーグル
培地(DMEM)および10%ウシ胎児血清(FBS)とともに10cm組織培養ディッシュ
に5.0×105細胞でプレートする。2日目に、トランスフェクションの4時間前に
、培地を5.0mlの新鮮な培地に置換する。40.0μlの2.5M CaCl2、10μgのプラス
ミドDNAおよび脱イオンH2Oを混合して総容積を400μlにすることによって、標準
的
なリン酸カルシウム-DNA共沈を行なう。400μlのDNA-CaCl2溶液を、一定に攪拌
しながら400μlの沈澱緩衝液(50mM HEPES-NaOH,pH7.1; 0.25M NaCl,および1.5
mM Na2HPO4-NaH2PO4)に滴下する。この混合物を室温で10分間インキュベートす
る。得られた細かい沈降物を細胞の培養ディッシュに加える。細胞をDNA沈澱物
とともに37℃で一晩インキュベートする。3日目に、培地を吸引し、そして新鮮
な培地を加える。上清を4日目に取り出し、0.45μlのフィルターに通し、そし
て−80℃で保存する。
あるいは、293-2-3細胞(WO92/05266,これはgagおよびpolを発現する293細胞
である)をベクターDNAおよびプラスミドpMLP-VSVG(または他のVSVGをコードす
るプラスミド)でトランスフェクトして、VSVG偽型(pseudotyped)ベクター粒
子を得て、それを上記のように収集し、保存する。
b.パッケージング細胞株形質導入
1日目に、DA(D17細胞ATCC寄託番号183由来の両種性細胞株,WO92/05266)細
胞を、10ml DMEMおよび10%FBS、4μg/mlポリブレン(Sigma,St,Louis,MO)
中に5.0×105細胞/10cm組織培養ディッシュで播種する。2日目に、3.0ml、1.0m
lおよび0.2mlの新たに採集したウイルス含有HX培地を細胞に加える。細胞をその
ウイルスとともに37℃で一晩インキュベートする。3日目に、培地を除去し、そ
して800μg/mlのG418を含む1.0mlのDMEM、10%FBSをそのプレートに加える。ベ
クターで形質導入され、そしてネオマイシン選択マーカーを含む細胞だけが生き
残る。G418耐性プールを1週間かけて生じさせる。細胞をプレートから取り出し
、その細胞懸濁液を計数し、その細胞懸濁液を10細胞/mlまで希釈し、そして96
ウェルプレート(Corning,Corning,NY)の各ウェルに0.1ml(1細胞/ウェル)
を加えることによって、この細胞のプールを希釈クローニングする。細胞を37℃
、10%CO2で14日間インキュベートする。24クローンを選択し、そして24ウェル
プレート、6ウェルプレート、次いで10cmプレートまで拡大し、この時点で、そ
れらのクローンを発現についてアッセイし、上清を集め、ウイルス力価について
アッセイする。
個々のクローンの力価を、HT1080細胞(ATCC寄託番号CCL 121)の感染によっ
て決定する。1日目に、5.0×105のHT1080細胞を、3.0mlのDMEM、10%FBSおよび
4μg/mlポリブレン中で、6ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルにプレ
ーティングする。2日目に、各クローン由来の上清を10倍に連続希釈し、そして
これを用いて1.0mlアリコートでHT1080細胞を感染させる。培地を新鮮なDMEM、1
0%FBS培地に置換し、そして細胞をベクターとともに37℃、10%CO2で一晩イン
キュベートする。3日目に、培地を800μg/ml G418を含む新鮮なDMEM、10%FBS
培地で置換することによって、形質導入細胞の選択を行なう。細胞を37℃、10%
CO2で14日間インキュベートし、この時点で、各希釈におけるG418耐性コロニー
を評価し、各クローンのウイルス力価をコロニー形成単位(cfu)/mlとして決定
する。
これらの手順を用いて、培養物中に106cfu/ml以上を産生する細胞株を誘導す
る。
HX上清によるDA細胞の形質導入について記載したのと同じ方法で、DAベクター
プロデューサー細胞株から生成したベクターを用いて、パッケージング細胞株HX
を形質導入する。
neo選択マーカーを欠くベクターによるDAまたはHX細胞の形質導入(実施例1
)を、上記のように行なった。しかし、3日目にG418を細胞に加える代わりに、
細胞を限界希釈によってクローニングする。力価を上記のように分析する。
c.1 パッケージング細胞株を介するプロデューサー細胞株の生成
ある状況では、プロデューサー株の生成プロセスにおいて、1より多い細胞株
の使用を避けることが所望され得る。この場合は、1日目に、DA細胞を、DMEMお
よび10%照射(最低2.5メガラド)FBSとともに、10cm組織培養ディッシュに5.0
×105細胞で播種する。2日目に、トランスフェクションの4時間前に、培地を5
.0mlの新鮮な培地に置換する。60μlの2.0M CaCl2、10μgのMLP-Gプラスミド、1
0μgのKT-HBe-cまたはKT-HBcレトロウイルスベクタープラスミドを混合し、脱イ
オン化H2Oで容積を400μlにすることによって、標準的なリン酸カルシウム-DNA
共沈を行なう。400μlのDNA-CaCl2溶液を一定に攪拌しながら400μlの2×沈澱
緩衝液(50mM HEPES-NaOH,pH7.1,0.25M NaClおよび1.5mM Na2HPO4-NaH2PO4)に
滴
下する。この混合物を室温で10分間インキュベートする。得られた細かい沈澱物
を、前日にプレーティングしたDA細胞の培養ディッシュに加える。細胞をDNA沈
澱物とともに37℃で一晩培養する。3日目に、培地を除去し、新鮮な培地を加え
る。G-偽型ウイルスを含有する上清を4日目に取り出し、0.45μlのフィルター
に通し、そしてDAパッケージング細胞を感染するために用いる。
1日目に、DA細胞を10mlのDMEMおよび10%FBS、4mg/mlポリブレン(Sigma,St
.Louis,MO)中で5.0×105細胞で10cm組織培養ディッシュにプレートする。2
日目に、2.0ml、1.0mlまたは0.5mlの新たに採集し、そしてろ過したG-偽型ウイ
ルス含有上清を細胞に加える。細胞をそのウイルスとともに37℃で一晩インキュ
ベートする。3日目に、培地を除去し、そしてそのプレートに800μg/mlのG418
を含む10mlのDMEM、10%照射FBSを加える。ベクターによって形質導入され、そ
してneo選択マーカーを含有する細胞だけが生き残る。G418耐性プールを1〜2
週間かけて生じさせる。そのプールを発現について試験し、次いで細胞をプレー
トから取り出し、その細胞懸濁液を計数し、その細胞懸濁液を10細胞/mlまで希
釈し、そして96ウェルプレートの各ウェルに0.1ml(1細胞/ウェル)を加えるこ
とによって、希釈クローニングする。細胞を37℃、10%CO2で2週間インキュベ
ートする。そして24クローンを選択し、24ウェルプレート、次いで6ウェルプレ
ート、そして最後に10cmプレートまで拡大し、この時点でクローンを発現につい
てアッセイし、上清を集め、そしてウイルス力価について上記のようにアッセイ
する。
C.複製可能レトロウイルス(RCR)の検出
i.拡大S+L-アッセイ
拡大S+L-アッセイは複製可能感染性ウイルスが目的の細胞株の上清中に存在す
るかどうかを決定する。このアッセイは感染性レトロウイルスが指向細胞株MiCl1
(ATCC寄託番号CCL 64.1)上にフォーカスを生成するという実験的観察に基づ
いている。MiCl1細胞株はマウス肉腫ウイルス(MSV)による形質導入によってMv
lLuミンク細胞株(ATCC寄託番号CCL 64)に由来する。これは複製欠損マウス肉
腫プロウイルスを含有する(S+)が、複製可能マウス白血病プロウイルスを
含有しない(L-)非プロデューサー非形質転換復帰変異クローンである。複製可
能レトロウイルスによるMiCl1細胞の感染は、MSVゲノムを「活性化」してフォー
カス形成をもたらす「形質転換」を誘発する。
複製可能レトロウイルスの存在について試験すべき細胞株から上清を取り出し
、そして0.45μフィルターに通してすべての細胞を除去する。1日目に、Mv1Lu
細胞を2mlのDMEM、10%FBSおよび8μg/mlポリブレン中で1.0×105細胞/ウェル
(試験されるべき1サンプルあたり1ウェル)で6ウェルプレートに播種する。
陽性および陰性コントロールのために、Mv1Lu細胞を同じ方法で別の6ウェルプレ
ートにプレーティングする。細胞を37℃、10%CO2で一晩インキュベートする。
2日目に、1.0mlの試験上清をMv1Lu細胞に加える。陰性コントロールプレートを
、1.0mlの培地とともにインキュベートする。陽性コントロールは、MAウイルス
(Millerら,Molec.and Cell Biol.5:431,1985においてpAmと呼ばれている)
の3種類の希釈(それぞれ1.0ml培地中200フォーカス形成単位(ffu)、20ffuお
よび2ffu)からなり、これを陽性コントロールウェル中の細胞に加える。細胞を
一晩インキュベートする。3日目に、培地を吸引し、そして3.0mlの新鮮なDMEM
および10%FBSを細胞に加える。細胞をコンフルエントまで増殖させ、そして6
日目および10日目に1:10に分割して、すべての複製可能レトロウイルスを増幅
する。13日目に、Mv1Lu細胞上の培地を吸引し、そして2.0mlのDMEMおよび10%FB
Sを細胞に加える。さらに、MiCl1細胞を2.0mlのDMEM、10%FBSおよび8μg/mlポ
リブレン中で1.0×105細胞/ウェルでプレートする。14日目に、Mv1Lu細胞由来の
上清をMiCl1細胞の対応するウェルに移し、そして37℃、10%CO2で一晩インキュ
ベートする。15日目に、培地を吸引し、そして3.0mlの新鮮なDMEMおよび10%FBS
を細胞に加える。21日目に、細胞を細胞の単層上のフォーカス形成(単層を覆い
かつ付着したままの密集屈折性細胞として現れる)について調べる。フォーカス
がMiCl1細胞上に現れれば、その試験物は複製可能レトロウイルスで汚染されて
いると決定される。これらの手順を用いて、HBVコアプロデューサー細胞株が複
製可能レトロウイルスで汚染されていないことを示し得る。
ii.プロデューサー細胞株の同時培養およびMdHマーカーレスキューアッセイ
ベクタープロデューサー細胞株におけるRCRの存在を試験するための別の方法
として、プロデューサー細胞を同数のMus dunni(NIH NIAID,Bethesda,MD)細
胞とともに同時培養する。0日目に、5.0×105のMus dunni細胞を5.0×105のプ
ロデューサー細胞と混合し、そしてその混合物を10cmプレート(10mlの標準培養
培地/プレート、4μg/mlポリブレン)中に播種することによって、小規模同時
培養を行なう。プロデューサー細胞株を効果的に希釈除去(dilute out)し、そし
てRCRの最大増幅を提供するために、3〜4日毎に培養物を1:10の比率で分割し
、そして5.0×105Mus dunni細胞を各培養プレートに加える。14日目に、培養上
清を収集し、0.45μのセルロース-アセテートフィルターに通し、そしてMdHマー
カーレスキューアッセイで試験する。1.0×108のMus dunni細胞と1.0×108のプ
ロデューサー細胞との混合物を合計20のT-150フラスコ(30mlの標準培養培地/フ
ラスコ、4μg/mlポリブレン)に播種することによって、大規模同時培養を行な
う。培養物を3、6および13日目に1:10の比率で分割し、そして9日目に1:2
0の比率で分割する。15日目に、最終上清を収集し、ろ過し、そしてそれぞれの
一部をMdHマーカーレスキューアッセイで試験する。
MdHマーカーレスキュー細胞株を、LHL(ハイグロマイシンB耐性遺伝子をコー
ドするレトロウイルスベクター(Palmerら,PNAS 84:1055-1059,1987)で形質導
入されたMus dunni細胞のプールからクローニングする。このレトロウイルスベ
クターを、RCRによる細胞の感染時に、MdH細胞からレスキューし得る。4μg/ml
ポリブレンを含む標準培養培地(10%FBS、1% 200mM L-グルタミン、1%非必
須アミノ酸を含むDMEM)2ml中に105のMdH細胞を含む6ウェルプレートのウェル
に1mlの試験サンプルを加える。24時間後に、培地をポリブレンを含まない標準
培養培地で置換する。2日後、MdH培養上清の全量を0.45μのセルロース-アセテ
ートフィルターに通し、そしてポリブレンを含む標準培養培地2ml中の5.0×104
のMus dunni標的細胞を含む6ウェルプレートのウェルに移す。24時間後、上清
を250μg/mlのハイグロマイシンBを含む標準培養培地で置換し、その後2日目
および5日目に、200μg/mlのハイグロマイシンBを含む培地で置換する。選択
後9日目に、ハイグロマイシンBに耐性なコロニーが現れ、そしてそれらは0.2
%クーマシーブルーで染色することによって可視化される。
D.ベクター構築物粒子によるマウス細胞の形質導入
マウス線維芽細胞株BC10ME、B16およびL-M(TK-)(ATCC寄託番号CCL1.3)を4
,500mg/Lグルコース、584mg/L L-グルタミン(Irvine Scientific,Santa Ana,
CA)および10%FBS(Gemini,Calabasas,CA)を含有するDMEM中で増殖させる。
BC10ME、B16およびL-M(TK-)線維芽細胞株をそれぞれ10cm培養ディッシュにD
MEM、10%FBSコンプリートおよび4μg/mlポリブレン中1.0×105細胞の密度でプ
レートする。それぞれを約105cfu/mlのベクター力価を持つレトロウイルスベク
ター1.0mlで形質導入する。クローンをDMEM、10%FBSおよび800μg/ml G418中で
実施例2Bvbに記載のように選択する。
EL4(ATCC寄託番号TIB39)細胞とEL4/A2/Kb細胞(Sherman,L.Scripps Insti
tute,San Diego,CA)をDAプロデューサー細胞との同時培養によって形質導入
する。具体的に述べると、1日目に、1.0×106EL4細胞または1.0×106EL4/A2/Kb
を、RPMI 1640(Irvine Scientific,Santa Ana,CA)、10%FBSおよび4μg/ml
ポリブレン中の1.0×106照射(10,000ラド)DA(ベクター力価は約105〜106)プ
ロデューサー細胞に加える。2日目に、1.0×106照射(10,000ラド)DAプロデュ
ーサー細胞をその同時培養物に加える。5日目に、形質導入されたEL4またはEL4
/A2/KB細胞の選択を800μg/ml G418で開始する。細胞群を実施例2Bvbに記載の
ように希釈クローニングする。
選択可能マーカーを有しないベクターで形質導入されたBC10ME、B16、L-M(TK-
)およびEL-4細胞はG418中では選択されないが、限界希釈によってクローニン
グされ、そして前記のように発現についてアッセイされる。
E.KT-HBc HBV コア抗原またはKT-B7-1ベクター構築物粒子によるヒト細胞の形 質導入
リンパ芽球様細胞株(LCL)は、EBV形質転換マルモセット白血球B95-8(ATCC
寄託番号CRL1612)の3週齢培養物の上清から採取した新鮮なエプスタイン-バー
ウイルス(EBV)で各患者のB細胞を感染させる(形質転換する)ことによって樹
立される。EBV形質転換の3週間後に、KT-HBc HBVコア抗原またはKT-B7-1を発現
するレトロウイルスベクターでLCLを形質導入する。LCLの形質導入は、4.0mlの
培地と4.0μg/mlポリブレンを含む6cmプレート中で1.0×106 LCL細胞を1.0×106
照射(10,000ラド)HXプロデューサー細胞と同時培養することによって達成さ
れる。培養培地はRPMI1640、20%熱不活化FBS(Hyclone,Logan,UT)、5.0mMピ
ルビン酸ナトリウムおよび5.0mM非必須アミノ酸からなる。37℃および5%CO2で
一晩同時培養した後、LCL懸濁細胞を取り出し、1.0×106照射(10,000ラド)HX
プロデューサー細胞を含む新しいプレート中で1.0×106細胞をさらに6〜18時間
再度同時培養する。800μg/ml G418を添加することによって形質導入LCL細胞を
選択し、高発現クローンを得るためにクローニングする。ジャーカットA2/Kb細
胞(Sherman,L.Scripps Institute,San Diego,CA)を、基本的にLCL細胞の
形質導入に関する記載と同様に形質導入する。ベクターで形質導入したLCLはG41
8中では選択されない。これらを実施例2Bvbのように限界希釈によってクローニ
ングし、実施例2Fのように発現についてアッセイする。これらの細胞はCTLアッ
セイにおいて、標的またはインビトロ刺激物質として使用できる。
F.形質導入遺伝子の発現
i.ELISA
1.0×107培養細胞をPBSで洗浄し、この細胞をPBSで合計容量600μlに再懸濁し
、Branson超音波処理装置モデル350(Fisher,Pittsburgh,PA)を30に設定して
5秒間づつ2回超音波処理するか、凍結融解を3回行なうことによって、KT-HBc
で形質導入された細胞由来の細胞溶解物を調製する。10,000rpmで5分間の遠心
分離によって溶解物を清浄化する。
細胞溶解物中のコア抗原とプレコア抗原および培養上清中の分泌e抗原を、Abb
ott HBe,rDNA EIAキットを用いてアッセイする。細胞溶解物中のプレコア抗原
と培養上清中の分泌e抗原に関するもう1つの高感度なEIAアッセイは、Incstar E
TI-EBキット(Incstar Corporation,Stillwater,MN)を用いて行われる。Biog
en(Cambridge,MA)より入手した組換えB型肝炎コアおよびe抗原の希釈液から
標準曲線を作成する。
これらの手順を用いると、約10ng/mg HBV e抗原が形質導入細胞株から発現さ
れる(図5)。
ii.SDS PAGE/ ウェスタンブロット分析
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて、
タンパク質をその分子量(MW)に従って分離する。次に、タンパク質をそのゲル
からIPVH Immobilon-P膜(Millipore Corp.,Bedford,MA)に移す。Hoefer HSI
TTE転移装置(Hoefer Scientific Instruments,CA)を用いてタンパク質をゲ
ルから膜に移す。次に、発現したタンパク質と特異的に反応する患者血清から得
たポリクローナル抗体でその膜をプローブする。125I-標識プロテインA(これ
はオートラジオグラフィーによって形質導入タンパク質の可視化を可能にする)
を用いて、結合した抗体を検出する。
iii.免疫沈降/ウェスタンブロット分析
形質導入細胞によって発現されるコア抗原の特徴づけを免疫沈降とそれに続く
ウェスタンブロット分析によって行なう。具体的に述べると、PBSまたは培養上
清中の細胞溶解物0.5〜1.0mlを、G-セファロース(Pharmacia LKB,Upsala,Sw
eden)に結合したポリクローナルウサギ抗B型肝炎コア抗原(DAKO Corporation
,Carpinteria,CA)と混合し、4℃で一晩インキュベートする。サンプルを20m
M Tris-HCl,pH8.0、100mM NaCl、10mM EDTA中で2回洗浄し、0.5%β-2-メルカ
プトエタノールを含むサンプル充填緩衝液中で煮沸する。タンパク質をまずSDS
ポリアタリルアミドゲル電気泳動によって分離した後、Immobilon(Millipore C
orp.,Bedford,ME)に移し、DAKOポリクローナルウサギ抗肝炎コア抗原でプロ
ーブし、次いで125I-プロテインAでプローブする。
これらの手順を用いると、HBVコア抗原が形質導入マウス細胞中で発現される
ことを明らかにできる(図6)。
G.ベクター構築物KT-B7-1およびKT-HBcの投与
i.マウス投与プロトコル
6週齢〜8週齢の雌BALB/c、C57BL/6、C3H/He(Harlan Sprague-Dawley,Indi
anapolis,IN)、HLA A2.1(Engelhard,V.,Charlottesville,VA)、HLA A2.1
/Kb(Sherman,L.,Scripps Institute,San Diego,CA)マウスまたはHLA A2.1
ヒトCD8+マウスに、B7-1およびHBVcプロデューサー細胞株から得た混合培地1ml
を腹腔内(I.P.)注射するか、または混合調剤KT-B7-1およびKT-HBcレトロウイ
ルスベクター0.1mlを筋肉内(I.M.)、皮内(I.D.)または皮下(S.C.)注射す
る。これらのベクターは注射に先立って好ましくは1:1の比率で混合される。
1週間間隔で6回までの注射を与える。各注射の後、血清を眼窩後出血によって
採取し、実施例21に記載する抗体誘導の検出に用いる。最後の注射の7日後に、
動物を屠殺する。次に、51Cr放出CTLアッセイを基本的に実施例2Hの記載に基づ
いて行なう。
ii.非ヒト霊長類およびヒト投与プロトコル
実施例2Hからのマウス系で作成したデータを用いて、B型肝炎ウイルスに慢性
的に感染しているマカクザルまたはチンパンジーにおけるベクターの投与プロト
コルを決定する。マウスにおけるHBV特異的CTLの誘導に基づいて、サルまたはチ
ンパンジー試験の対象を、投与量が次第に高くなる2群に分けて、これにコア抗
原およびB7-1をコードするベクターを28日間隔で3回投与する。コントロール対
象にはHBV-IT(V)配合培地(乳糖(40mg/ml)、ヒト血清アルブミン(1mg/ml)
およびTris(1mM)pH7.2〜7.5からなる)からなる偽薬を与える。105、106、107
、108、または109HBV-IT(V)+B7-1(V)cfuの複合投与量を各注射日に4回の0
.5ml I.M.注射として与える。あるいは、S.C.、I.D.、I.P.または他の任意の一
般的ワクチン接種経路で注射してもよい。血清アラニンアミノトランスフェラー
ゼ(ALT)レベル、HBV e抗原の存在、HBV e抗原に対する抗体の存在を測定し、
そしてこの処置の安全性と許容性を評価するため、4日、12日、24日、36日、52
日、70日および84日目と6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月、30ヵ月、および36ヵ
月時に血液サンプルを採取する。HBV e抗原とHBV e抗原に対する抗体はAbbott H
B erDNA EIAキットによって実施例2Fに記載のように検出される。HBVコア抗原に
対するCTL誘導の効力は、実施例2Hivのように決定できる。サルおよびチンパン
ジー試験から得られる安全性と効力の結果に基づいて、ヒト試験の対象に対する
ベ
クター投与に関して投与量と接種計画を決定する。これらは非ヒト霊長類投与と
同じか、それより10〜100倍高い。これらの対象を、基本的に前記のように、血
清ALTレベル、HBV e抗原の存在、およびHBV e抗原に対する抗体の存在について
監視する。HBVコア抗原に対するヒトCTLの誘導を実施例2Hivのように決定する。
霊長類CTL応答を実施例2Hiiiに記載の類似の方法で測定する。
H.細胞傷害性アッセイ
i.近交系マウス
6〜8週齢の雌Balb/C、C57B1/6およびC3Hマウスに実施例2Giのように注射す
る。ベクターまたは形質導入した同系細胞の投与後、動物を犠牲にする。脾細胞
(3×106/ml)を収集し、それぞれの照射された形質導入細胞(6×104/ml)とと
もにT-25フラスコ中でインビトロ培養する。培養培地はRPMI 1640、5%熱不活
化ウシ胎児血清、1mMピルビン酸ナトリウム、50μg/mlゲンタマイシンおよび10- 5
Mβ-2-メルカプトエタノールからなる。4〜7日後にエフェクター細胞を収集
し、96ウェルマイクロタイタープレート中で種々のエフェクター:標的細胞比を
用いて標準的なクロム放出アッセイで試験する。標的はHBVコア形質導入L-M(TK-
)細胞であり、これに対して非形質導入L-M(TK-)細胞株をバックグラウンド
溶解のコントロールとして使用する。具体的に述べると、Na2 51CrO4で標識した
(Amersham,Arlington Heights,IL)(100μCi、37℃で1時間)標的細胞(1×
104細胞/ウェル)を、200μlの最終容積で、種々のエフェクター対標的細胞比で
エフェクター細胞と混合する。インキュベーション後、100μlの培養培地を取り
出し、Beckmanガンマ分光計(Beckman,Dallas,TX)で分析する。自発的放出(
SR)を標的+培地から得られるCPMとし、最大放出(MR)を標的+1M HClで得ら
れるCPMとして決定する。標的細胞溶解率を[(エフェクター細胞+標的CPM)−
(SR)/(MR)−(SR)]×100として計算する。標的の自発的放出値は代表的
にはMRの10%〜20%である。
特定の種のCTLアッセイについては、エフェクターを、例えば第1のインビト
ロ刺激後の8〜12日に、インビトロで複数回刺激してもよい。より具体的に述べ
ると、10mlの「完全」RPMI培地(5%熱不活化FBS、2mM L-グルタミン、1mMピ
ルビン酸ナトリウム、1×非必須アミノ酸、および5.0×105Mβ-2-メルカプトエ
タノールを含むRPMI)中で、107エフェクター細胞を6.0×105照射(10,000ラド
)刺激細胞、および2.0×107照射(3,000ラド)「フィラー(filler)」細胞(後
述のように調製する)と混合する。「フィラー」細胞は、自然のままの同系マウ
スの脾臓細胞をRPMIに再懸濁し、室温で3,000ラドで照射したものから調製する
。脾細胞をRPMIで洗浄し、3,000rpmで室温で5分間遠心分離し、そのペレットを
RPMIに再懸濁する。再懸濁した細胞を1.0mlのTris-塩化アンモニウム(0.17M Tr
is塩基100ml(pH7.65)+0.155M NH4Cl 900ml;最終溶液をpH7.2に調節する)で37
℃で3〜5分間処理する。次に、CTLアッセイで試験する前に、第2のインビト
ロ再刺激を5〜7日間培養する。以降の再刺激はいずれも、2〜10Uの組換えヒト
IL-2(200U/ml,カタログ♯799068,Boehringer Mannheim,W.Germany)を添加
して前記のように培養する。
これらの手順を用いると、個別に投与されたHBVコア抗原またはB7-1、あるい
は一緒に投与されたHBVおよびB7-1に対するCTLが誘導されることを明らかにでき
る。比較すると、一緒に投与されたベクターは個別に注射された場合より大きい
応答を与えるか、またはHBVコア抗原ベクター単独より低い投与量の複合ベクタ
ーを用いて等価な応答を誘発する。場合によっては、所定の比率で未標識の非形
質導入標的またはβ-gal/neo形質導入標的を標識標的に加える必要があり得る。
これは陰性コントロール細胞のバックグラウンド溶解を減少させる。
β-gal/neo形質導入標的は次のように作成する。細菌性β-gal遺伝子を含有す
るプラスミドpSP65(Promega,Madison,WI)を入手して、その3.1Kbβ-gal遺伝
子をXbaI-SmaIフラグメントとして単離し、そしてXbaI-SmaIで消化したpC15CAT
(Anyaら,Science 229:69-73,1985)に挿入する。β-gal遺伝子を3.1Kb SalI-S
malフラグメントとして切り出し、KT-1レトロウイルスベクター骨格のXhoI部位
と平滑化ClaI部位に挿入する。PAFVXM由来のSV2neoカセットを含有するClaI-Cla
Iフラグメントは、得られるプラスミドによって、そのClaI部位にそのベクター
と同じ転写方向で挿入される。このプラスミドをCB-β-galと名づける。
実施例2Bvbに記載したように、CB-β-galプラスミドのトランスフェクション
によって安定なプロデューサー細胞株を作成することにより、感染性レトロウイ
ルス粒子が産生される。この研究で使用される安定なプロデューサー細胞はDA細
胞株から誘導され、DA-β-galと呼ばれる。次にDA-β-galを用いて、β-gal/neo
を発現するレトロウイルスベクターを作成する。実施例2Dに記載したように、
β-gal/neoベクターでC3H(H-2k)細胞株L-M(TK-)を形質導入する。クローン
をβ-gal発現についてスクリーニングし、CTLアッセイで陰性「neo」コントロー
ルとして使用するため、最も高く発現するクローンを選択する。
ii.HLA A2.1 、HLA A2.1/Kbトランスジェニックマウス、HLA A2.1/ヒトCD8+、ま たはHLA A2.1/kb/ヒトCD8+二重トランスジェニックマウス
個々のベクターまたはその組み合わせを実施例2Giのように注射する。動物を
屠殺し、脾細胞(3×106/ml)を照射(10,000ラド)形質導入ジャーカットA2/Kb
細胞またはペプチド被覆(実施例2K)ジャーカットA2/Kb細胞(6×104/ml)とと
もにフラスコ(T-25)中でインビトロ培養する。実施例2Hに記載のように、クロ
ム放出アッセイの残りを行ない、その標的は形質導入または非形質導入EL4 A2/Kb
およびジャーカットA2/Kb細胞である。非形質導入細胞株を陰性コントロールと
して用いる。標的はまた、実施例2Kに記載のペプチド被覆EL4 A2/Kb細胞であり
得る。
iii.マカクザル
各注射の14日後、ヘパリン化された試験管に血液サンプルを集める。次に、室
温で2,000rpmで30分間のフィコール-ハイパック(Sigma,St,Louis,MO)勾配
を用いて、末梢血単核細胞(PBMC)を血液から分離する。PBMCを、刺激物質:エ
フェクター比が10:1の自己H.papiovirus LCL(ATCC寄託番号CRL1855)形質転換
組換えレトロウイルス形質導入細胞で7〜10日間、インビトロ刺激する。培養培
地は、5%熱不活化FBS、1mMピルビン酸ナトリウム、10mM HEPES、2mM L-グル
タミンおよび50μg/mlゲンタマイシンを含むRPMI 1640からなる。得られた刺激
化CTLエフェクターを、形質導入および非形質導入自己LCLに対するCTL活性につ
いて、標準的クロム放出アッセイで試験する。
IV.チンパンジーおよびヒト
ヒトまたはチンパンジーのPBMCをフィコール-ハイパック勾配遠心分離によっ
て分離する。具体的に述べると、細胞を室温で3,000rpmで5分間遠心分離する。
PBMCを、刺激物質:エフェクター比が10:1の自己形質導入LCLで10日間、再度イ
ンビトロ刺激する。培養培地は、5%熱不活化FBS、1mMピルビン酸ナトリウム
および50μg/mlゲンタマイシンのプレスクリーンロットを含むRPMI 1640からな
る。得られた刺激化CTLエフェクターを、前記のように、形質導入自己LCLまたは
HLAマッチした細胞を標的とする標準的クロム放出アッセイで、CTL活性について
試験する。ほとんどの患者はEBVに対する免疫を持つので、陰性コントロールと
して使用する非形質導入EBV形質転換B-細胞(LCL)はまた、形質導入LCLととも
にEBV特異的CTLによって標的として認識される。EBV特異的CTLによる標識標的細
胞の死滅に起因する高いバックグラウンドを減少させるため、未標識の非形質導
入LCLを標識標的細胞に50:1の比率で加える必要がある。これらの手順を用いる
と、KT-HBcベクターとB7.1ベクターの組み合わせが等価な投与量のKT-HBc単独よ
りよい応答を与えること、あるいはこの組み合わせにおいてKT-HBcベクターのみ
の場合より低い投与量を用いても等価な応答が認められることが明らかになる。
I.体液性免疫応答の検出
HBVコア抗原に特異的なマウスの体液性免疫応答をELISAで検出する。このELIS
Aプロトコルでは、96ウェルプレートをコーティングするのに100μg/ウェルの組
換えHBVコアおよび抗原(Biogen,Geneva,Switzerland)を使用する。次に、細
胞、あるいはHBVコアまたは抗原を発現する直接ベクター単独で、もしくはKT-B7
-1ベクターと組み合わせて免疫感作したマウス由来の血清を抗原被覆ウェル中で
連続希釈し、室温で1〜2時間インキュベートする。インキュベーション後、等価
な力価を持つウサギ抗マウスIgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3をウェルに加える
。西洋ワサビペルオキシダーゼ(「HRP」)結合ヤギ抗ウサギ抗血清(Boehringe
r Mannheim,Indianapolis,IN)を各ウェルに加え、サンプルを室温で1〜2時間
インキュベートする。インキュベーション後、適切な基質の添加によって反応性
を可視化する。呈色はHBVコア抗原に特異的なIgG抗体を含むウェルで起こる。
これらの手順を用いると、HBVコア抗原に対するIgG抗体をマウス中で誘導でき
ることを明らかにできる(図7Aおよび7B)。
J.T細胞増殖
HBVコア抗原を発現する直接ベクター調製物の2回または3回の注射がもたら
す抗原誘発性Tヘルパー活性をインビトロで測定する。具体的に述べると、免疫
感作化マウスの脾細胞を、HBVコアまたはe抗原を発現する細胞あるいはHBVコア
またはe抗原を発現しない細胞(陰性コントロール)を用いて、所定の比率でイ
ンビトロで再刺激する。5%FBS、1.0mMピルビン酸ナトリウムおよび10-5β-2-
メルカプトエタノールを含むRPMI 1640培養培地中37℃、5%CO2で5日間の後、
上清をIL-2活性について試験する。IL-2はHBVコアまたはe抗原で刺激されたTヘ
ルパー細胞によって特異的に分泌され、その活性はCTLクローンCTLL-2(ATCC寄
託番号TIB214)を用いて測定される。簡単に述べると、CTLL-2クローンの増殖は
IL-2に依存し、IL-2の非存在下では増殖しない。CTLL-2細胞を96ウェルプレート
中の上清試験サンプルの連続希釈液に加え、37℃、5%CO2で3日間インキュベ
ートする。次に、0.5μCiの3H-チミジンをそのCTLL-2に加える。3H-チミジンはC
TLL-2細胞が増殖する場合にのみ取り込まれる。一晩培養の後、PHD細胞収集器(
Cambridge Technology Inc.,Watertown,MA)を用いて細胞を収集し、Beckman
ベータ計数器で計数する。Boehringer Mannheim(Indianapolis,IN)から入手
した組換えIL-2標品で作成した標準曲線からサンプル中のIL-2の量を決定する。
K.HBV プレコア/コアの免疫原性ドメインの同定
細胞傷害性Tリンパ球エピトープは、Falkら(Nature 351:290,1991)が記載し
たHLA A2.1モチーフを用いて予測することができる。この分析から、ペプチドを
合成し、それをCTLエピトープの同定に使用する。これらのペプチドを、急性B
型肝炎感染症を持つ個体またはHLA A2.1またはHLA A2.1/Kbトランスジェニック
マウスに対して試験する。急性B型肝炎感染症を持つ個体から得たエフェクター
細胞を形質導入自己(実施例2E)LCLでインビトロ刺激し、ペプチドで被覆した
自己LCLに対して試験する。クロム放出アッセイを実施例2Hivに記載したように
行なうが、ただし最終濃度1〜100μg/mlのペプチドをエフェクター細胞ととも
に非形質導入Na2 51CrO4標識LCLに加える。反応液を4〜6時間インキュベートし
、標準的クロム放出アッセイを前記のように行なう。
HLA A2.1またはHLA A2.1/Kbトランスジェニックマウス由来のエフェクター細
胞を収集し、CTLアッセイを前記のように行なう。非形質導入Na2 51CrO4被標識EL
A A2/Kb細胞に1〜10μg/mlの最終濃度でペプチドを加える。これらのペプチド
被覆細胞をCTLアッセイにおける標的として使用する。
実施例3
HIV抗原発現ベクターおよびHBV抗原シンドビス発現ベクターの投与
A.HIVenv 発現ベクターの構築
2.7Kb KpnI-XhoI DNAフラグメントを、HIVプロウイルスクローンBH10-R3から
単離し(配列についてはRatherら,Nature 313:277,1985を参照のこと)、そし
てIIIexE7deltaenv(ヌクレオチド5,496までBal31欠失)由来の400bp SalI/KpnI
DNAフラグメントをプラスミドSK+中のSalI部位に連結した。このクローンから
、env発現に必須のrevをもコードする3.1Kb env DNAフラグメント(XhoI-ClaI)
を精製し、pAFVXMと呼ばれるレトロウイルスベクターに連結した。HIV envコー
ドDNAフラグメントのクローニングを容易にするため、このベクターをリンカー
挿入によってそのBglII部位がXhoI部位に変化するよう改変した。
目的の遺伝子を含むXhoI-ClaIフラグメントと、1.0Kb MoMLV 3'LTR ClaI-Hind
IIIフラグメントとをpUC31/N2R5gMプラスミドのXhoI-HindIII部位に挿入する三
部分連結によって発現ベクターを構築する。次に、pAFVXMレトロウイルスベクタ
ー由来のClaI-ClaIneo遺伝子フラグメントをこのプラスミドのClaI部位にセンス
配向で挿入する。
この優性の選択マーカー遺伝子は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺
伝子の発現を駆動するSV40初期プロモーターを含む(プラスミドpAFVXM由来のCl
aIフラグメント)。これは(KT-1骨格に対して)レトロウイルスベクタープラス
ミドKT-1を与える。
B.HBVe-c およびHBVコアを発現するシンドビスベクターの構築
プラスミドSK+HBe-cを上記実施例2Biiに記載したように構築する。プラスミド
SK+HBe-cをXhoIおよびClaI制限酵素部位で消化してHBe-c配列をコードするcDNA
フラグメントを放出させることにより、HBVe-c配列を発現するシンドビスベクタ
ーの構築を行なう。次に、このフラグメントを電気泳動によってアガロースゲル
精製し、GenecleanII処理し、それをXhoIおよびClaIによる消化とウシ腸アルカ
リ性ホスファターゼ(CIAP)による処理で調製した所望のシンドビスベクター骨
格に挿入する。米国特許出願第08/122,791号にその詳細な構築が記載されている
いくつかの考え得るシンドビスベクターがHBV抗原配列の挿入に適している。そ
のようなシンドビスベクターにはpSKSINBV、pSKSINd1JRsjrc、pSKSINd1JRsjrPC
、pSKSINd1JRsjrNP(7582-7601)およびpSKSINd1JRsexjrまたは関連する誘導体
が挙げられる。
HBVコア配列を発現するシンドビスベクターの構築は、そのPCR増幅段階を詳述
した上記のPCR産物のGenecleanII処理によって達成される。次に、この増幅産物
をXhoIおよびClaI制限酵素部位で消化し、アガロースゲル精製し、GenecleanII
処理した後、XhoIおよびClaI酵素で予備処理した上記の同じシンドビスベクター
に連結する。
C.HBV 特異的抗原を発現するプロデューサー細胞株の作成
上記のベクター由来のHBVコア抗原発現ベクターを産生する細胞株を作成する
ため、細胞質にあるトランスフェクトされたインビトロ転写RNA転写物は、シン
ドビスパッケージング細胞株(実施例3D)中でトランスに供給されるシンドビス
ウイルス構造タンパク質で包膜される。詳細には、まずHIV特異的配列をコード
するcDNAシンドビスベクタークローンからの転写に使われたT7インビトロ転写RN
Aポリメラーゼ系を使用することによって、シンドビス RNAベクター分子を産生
する。次に、シンドビスパッケージングまたはホッピング細胞株に、そのベクタ
ー(インビトロで生成したRNA産物)をトランスフェクトし、24時間以内に一時
的感染性ベクター粒子の産生をもたらす。次いで、これらのベクター粒子を細胞
株培養の上清中に集めた後、0.45μフィルターでろ過して細胞の混入を避ける。
次に、ろ過した上清を用いてシンドビスパッケージング細胞の新鮮な単層を形質
導入する。形質導入の24時間以内に、シンドビス非構造タンパク質とHIV特異的
配列とをコードするプラス鎖シンドビス組換えRNAを含むシンドビスベクター粒
子が産生される。
選択マーカーを含有するプロモーターで駆動されるcDNAシンドビスベクターを
用いて、構造の異なるシンドビスHBVコア抗原ベクターを開発し得る(実施例3D
)。この構造では、バクテリオファージポリメラーゼ認識配列の代わりに、特異
的HBVコア抗原配列を含む上記のXhoI-ClaIフラグメントを、構成的プロモーター
によって駆動される類似のcDNAシンドビスベクター中に入れる。この構造を用い
て、発現ベクタープラスミドをパッケージング細胞株中にトランスフェクトし、
トランスフェクションの24〜48時間後に薬物耐性遺伝子について選択する。次に
、14日後(使用する選択マーカーによる)に耐性のプールを集め、そして希釈し
てクローニングする。次に、この希釈クローンからいくつかのクローンを増殖さ
せ、そして最も高いベクター力価をアッセイする。次に、力価の最も高いクロー
ンを増殖し、そして凍結し、HIV特異的タンパク質産生と免疫応答誘導について
試験する。
D.代替のウイルスベクターパッケージング技術
シンドビスパッケージング細胞株を米国特許出願第08/198,450号に記載されて
いるように構築する。種々の代替系を用いて、ベクター構築物を保持する組換え
シンドビスウイルスを産生し得る。これらの系の各々は、バキュロウイルスと哺
乳類ウイルス(ワクシニアウイルスとアデノウイルス)が、遺伝子が既にクロー
ニングされている任意の所定のタンパク質を大量に製造するように最近改良され
たという事実を利用する。例えばSmithら(Mol.Cell Biol.3:12,1983);Picc
iniら(Meth.Enzymology 153:545,1987)およびMansourら(Proc.Natl.Acad
.Sci.USA 82:1359,1985)。
これらのウイルスベクターを、適切な遺伝子をウイルスベクターに挿入するこ
とによって組織培養細胞中でタンパク質を産生するために使用し得、そしてそれ
故、シンドビスベクター粒子を作成するために適合させ得た。
アデノウイルスベクターは核複製ウイルスから誘導され、そして欠損ウイルス
であり得る。ベクターに遺伝子を挿入し、インビトロ構築(Ballayら,EMBO J.
4:3861,1985)により、または細胞内での組換え(Thummelら,J.Mol.Appl.G
enetics 1:435,1982)により、哺乳類細胞中でタンパク質を発現するために使用
し得る。
好ましい方法の一つは、アデノウイルス主要後期プロモーター(MLP)が駆動
する(1)シンドビス非構造タンパク質、および(2)改変されたシンドビスベク
ター構築物を用いてプラスミドを構築することである。この構造における改変さ
れたシンドビスベクターは、転写されたRNAベクターを自然環境にある場合と同
じく自己複製性にする改変された接合領域を含む。
次に、これらのプラスミドを用いてアデノウイルスゲノムをインビトロで作成
し得(Ballayら,前掲)、そしてこれらを293細胞(アデノウイルスE1Aタンパク
質を産生するヒト細胞株,ATCC寄託番号CRL 1573)(アデノウイルスベクターは
これに関して欠損性である)にトランスフェクトして、欠損アデノウイルスベク
ター中に別々に保持されたシンドビス構造タンパク質とシンドビスベクターの純
粋なストックを得る。このようなベクターの力価は代表的には107〜1011/mlなの
で、これらのストックを用いて組織培養細胞を同時に高い多重度で感染させ得る
。次いで、細胞はシンドビスタンパク質とシンドビスベクターゲノムとを高レベ
ルで産生するようにプログラムされる。このアデノウイルスベクターは欠損性な
ので、大量の直接細胞溶解は起こらず、そしてシンドビスベクターを細胞上清か
ら収集し得る。
一次細胞からベクターを生成するために、シンドビスに関連しないベクター(
例えばRSV、MMTVまたはHIV)由来の他のウイルスベクターもまた同様に使用し得
る。一つの実施態様では、これらのアデノウイルスを一次細胞と組み合わせて使
用し、シンドビスベクター調製物を生じる。
最近、代替の発現系が記載されているが、そこではキメラHIV/ポリオウイルス
ゲノムが、融合タンパク質を発現し得るキメラミニレプリコン(J.Virol.65:2
875,1991)の生成をもたらす。これらのキメラポリオウイルスミニレプリコンは
、後に、置換されたポリオウイルスカプシド前駆体P1タンパク質(これはキメラ
ミニレプリコンが欠損している)を発現する組換えワクシニアウイルス(VV-P1
)を用いることによって包膜され、感染性粒子を産生することが立証された(J
.Virol.67.3712,1993)。この研究では、ポリオウイルスのP1カプシドのVP2お
よびVP3カプシド遺伝子がHIV-1 gag-pol配列に置換された。同様に、シンドビス
ベクターゲノムでP1カプシド配列を置換し得、そしてこの系において細胞株にイ
ンビトロ転写シンドビスRNA転写物をトランスフェクトした後、ポリオ偽型シン
ドビスベクターを提供する手段として使用し得る。逆に、シンドビス構造タンパ
ク質はまた、VP2およびVP3配列を置換し得、次いで、シンドビスに基づくベクタ
ー用の代替パッケージング細胞株系を提供する。
代替系(より真に細胞外的である)では、次の成分が使用される:
1.Smithら(前掲)の記載と同様にバキュロウイルス系(または酵母やE.co
liなどの他のタンパク質産生系)で作成されるシンドビス構造タンパク質;
2.既知のT7またはSP6あるいは他のインビトロRNA生成系で作成されるウイル
スベクターRNA(例えばFlamantおよびSorge,J.Virol.62:1827,1988を参照の
こと);
3.(2)のように作成されるtRNAまたは酵母または哺乳類組織培養細胞から精
製されるtRNA;
4.リポソーム(envタンパク質が埋め込まれている);および
5.RNAプロセシングと、任意のまたは他の必要な細胞由来機能とを提供する
細胞抽出物または精製された必要成分(同定された場合)(代表的にはマウス細
胞由来)。
この手順では(1)、(2)および(3)を混合した後、env関連シンドビスタン
パク質、細胞抽出物およびプレリポソーム混合物(適切な溶媒中の脂質)を加え
る。しかし、前もってシンドビスenvタンパク質をリポソームに包埋した後、得
られたリポソーム包埋envを(1)、(2)および(3)の混合物に加える必要が
ある。この混合物を(例えば超音波処理、温度操作またはロータリー透析によっ
て)処理することにより、Gould-Fogeriteら(Anal.Biochem.148:15,1985)に
記載されているように、医薬のリポソーム包膜と同様に、脂質と包埋されたシン
ドビスenvタンパク質で未成熟ウイルス粒子を包膜させる。この手順によって、
中間体パッケージング細胞株を確立する必要のない、高力価の複製不能シンドビ
スウイルスベクターの産生が可能になる。
E.シンドビスベクターで感染した細胞の発現
HBVコア抗原の発現を決定するため、ELISAと免疫沈降/ウェスタンブロットと
を実施例2Fに上記したように行なう。
F.マウスにおける直接ベクター投与
マウス系はまた、HBVコアまたはHIV抗原をコードするベクターの直接投与によ
る体液性および細胞媒介性免疫応答の誘導を評価するためにも使用され得る。簡
単に述べると、6〜8週齢の雌のBalb/C、C57B16またはC3H/Heマウスに、0.1ml
の未精製液体または再構成(滅菌脱イオン蒸留水による)凍結乾燥HBVコアシン
ドビスベクターおよび/またはHIV抗原発現レトロウイルスベクターを、I.M.、皮
内(I.D.)または皮下(S.C.)注射する。力価が105〜109cfu/mlのベクター調製
物を個別に注射するか、もしくは混合して一緒に投与した。1週間おいて2回注射
する。2回目の注射の7日後に動物を屠殺する。次に、51Cr放出CTLアッセイを
本質的に実施例2Hiに記載のように行なう。
G.細胞傷害性アッセイ
ベクターで誘導された細胞によって発現される異種タンパク質に対するCTLの
存在を決定するため、細胞傷害性アッセイを上記の実施例2Hに記載のように行な
う。
H.体液性免疫応答の検出
HBVコア抗原に特異的なマウスの体液性免疫応答を上記の実施例21に記載した
ようなELISAによって検出する。
I.T細胞増殖
HBVコア抗原を発現する直接ベクター調製物の2回または3回の注射がもたら
す抗原誘導性Tヘルパー活性を、上記の実施例2Jに記載したようにT細胞増殖ア
ッセイによってインビトロで測定する。
J.ヒトおよび非ヒト霊長類投与プロトコル
ヒトおよび非ヒト霊長類(例えばサルおよび/またはチンパンジー)に対する
ベクター構築物の投与プロトコルを実施例2Gに記載のように行なう。
実施例4
HBV抗原レトロウイルスベクターまたは
HIV抗原レトロウイルス発現ベクターを伴うDNAベクターの投与
A.HBV コア抗原を発現するレトロウイルスベクターによるCTLおよび体液性抗体 応答の誘導 1.マウスCTL応答
HBVコア処法ベクターのi.m.投与によってプライムしたC3H/He CRマウス(H2k
)から得られるエフェクター細胞の細胞溶解活性を、クロム放出アッセイにおい
て、HB cAgレトロベクターで形質導入したLMTK細胞(H-2k)、HBcAgレトロベク
ターで形質導入したBL/6細胞(H-2b)またはHBcAgレトロベクターで形質導入し
たBC10ME細胞(H-2d)を標的として試験した。HBVコアおよびHBV e抗原に対する
CTL応答がC3H/He CRマウスで誘導された(図16を参照)。図17の結果は、HBcAg
レトロベクターによる免疫感作で誘導されるエフェクターが、H-2kとの関連でHB
cAgを提示する標的を殺すが、H-2bまたはH-2dとの関連でHBcAgを提示する標的を
殺さないので、H-2kMHCクラスIに限定的であることを示している。
CTL応答がCD4+細胞によって媒介されるのか、CD8+細胞によって媒介されるの
かを決定するため、刺激されたエフェクター細胞を磁気ビーズに結合した抗CD4
または抗CD8抗体のいずれかで処理することによって、CD4細胞またはCD8細胞の
いずれかを枯渇させた。CD4細胞が枯渇した被刺激エフェクター細胞は、Dynabea
ds(Dynal Inc.,Skoyen,NO)を用いる免疫磁気分離によって、以下のように単
離した:a)再刺激した脾細胞をモノクローナルラット抗L3T4(Collaborative B
iomedical Products,Becton Dickinson Labware Bedford,ME)と4℃で30分間
インキュベートした;b)10%FCSを含むDMEMで細胞を2回洗浄し、培地中1×107
細胞/mlに再懸濁した、c)ヒツジ抗ラットIgG(Dynal Inc.カタログ番号M-450
)でコーティングされたDynabeadsを洗浄した後、約75μl/1×107細胞/mlの割
合で細胞に加え、CD4+細胞を磁気的に回収した。次に、残ったCD4枯渇細胞の細
胞溶解活性を、クロム放出アッセイでLMコア/neorおよびB-gal/neorを標的とし
て用い試験した。
CD8細胞が枯渇した被刺激エフェクター細胞は、Dynabeads(Dynal Inc.,Skoye
n,NO)を用いる免疫磁気分離によって、以下のように単離する:a)再刺激した
脾細胞をモノクローナルラット抗Lyt-2(Collaborative Biomedical Products,
Becton Dickinson Labware,Bedford,ME)と4℃で30分間インキュベートする
;b)10%FCSを含むDMEMで細胞を2回洗浄し、培地中1×107細胞/mlに再懸濁す
る、c)ヒツジ抗ラットIgG(Dynal Inc.カタログ番号M-450)でコーティングさ
れたDynabeadsを洗浄した後、約75μl/1×107細胞/mlの割合で細胞に加え、CD4+
細胞を磁気的に回収した。次に、残ったCD8枯渇細胞の細胞溶解活性を、クロム
放出アッセイでi.m.コア/neorおよびB-gal/neorを標的として用い試験する。こ
れらの結果はCTLエフェクターがCD8+、CD4−であることを示した(図18を参照
のこと)。2.マウス体液性免疫応答:
HBVコアおよびe抗原に特異的なマウスにおける体液性免疫応答をELISAで検出
した。このELISAプロトコルでは、96ウェルプレートをコーティングするために
、100μg/ウェルの組換えHBVコア抗原(Biogen,Geneva,Switzerland)を用い
る。HBVコアを発現するHBF コア/neoRベクターで免疫感作したマウスの血清を抗
原でコートされたウェル中で連続希釈し、室温で1〜2時間インキュベートした
。インキュベーション後、力価の等しいウサギ抗マウスIgG1、IgG2a、IgG2bおよ
びIg
G3の混合物をウェルに加えた。西洋ワサビペルオキシダーゼ(「HRP」)結合ヤ
ギ抗ウサギ抗血清を各ウェルに加え、サンプルを室温で1〜2時間インキュベー
トした。インキュベーション後、適切な基質を添加することによって反応性を可
視化した。HBVコア抗原に特異的なIgG抗体を含むウェルで発色した。図19に示す
ように、HBVコア抗原に対するIgG抗体がマウスで誘導された。(抗体力価は、免
疫感作前血清のCD示数の3倍を与えるのに必要な希釈液の逆数として表す。)
処法HBVレトロベクターで免疫感作したマウスにおける体液性応答のイソタイ
プを上記のELISAアッセイに次の変更を施して検出した:上記のように組換えコ
アまたはeタンパク質のいずれかでコーティングしておいた96ウェル滴定プレー
トのウェル中にマウスの血清を連続希釈した。次のウサギ抗マウス抗血清の一つ
とインキュベートすることにより特異的イソタイプを決定した:IgG1、IgG2a、I
gG2bまたはIgG3。このアッセイを上記のように発色させた。この手順を用いて、
製剤化HBVコアベクター(6A3)と製剤化HBVeベクター(5A2)で免疫感作したC3H
/He(CR)マウスにおいてIgG2a抗体とIgG1抗体の両方が誘導されたことが示され
た(図20を参照のこと)。3.トランスジェニックHBeAgマウスにおけるCTL応答の誘導
トランスジェニックHBeマウスを3世代にわたってC3H/Heマウスに対して連続
的に戻し交配した。HBcAgをコードするレトロウイルスベクターを3匹のマウスの
右および左腓腹筋にi.m.注射した。7日目にマウスに追加投与し、14日目に脾臓
を回収してCTLアッセイで試験した。CTLアッセイの結果は、3匹のマウスすべて
が100:1のエフェクター:標的比でネガティブコントロールより15%大きいCTL
応答を持つことを示した。4.マカクザルにおけるCTL免疫応答
様々な年齢の雄および雌マカクザル(Primate Research Institute,White Sa
nds,New Mexico)の首のえりあしに、0.5mlの製剤化HBF コア/neoRベクターま
たはHBVeレトロウイルスベクターを筋肉内(4部位)または皮内注射した。14日
間隔で4回注射した。各注射の14日後に、クロム放出CTLアッセイ用の血液サン
プルを集めた。
各注射の14日後に、血液サンプルをヘパリン処理した試験管に集めた。次に、
末梢血液単核細胞(PBMC)を、室温で2000rpm、30分間遠心分離してフィコール-
ハイパックカラムに通した。自己形質導入LCLを用い、10:1の刺激物質:エフェ
クター比で、PBMCを7〜10日間インビトロで刺激した。その培養培地は、5%熱
不活化ウシ胎児血清(Hyclone,Logan,Utah)、1mMピルビン酸ナトリウム、10
mM HEPES、2mM L-グルタミンおよび50μgm/mlゲンタマイシンを含むRPMI1640で
あった。得られる刺激CTLエフェクターの、形質導入されたおよび形質導入され
ていない自己LCLに対するCTL活性を標準的なクロム放出アッセイで試験した。HB
Vコアおよびe抗原の両方に対するポジティブなCTL応答があった(図21を参照の
こと)。
CD4またはCD8細胞が枯渇した刺激されたマカクザルのエフェクター細胞を、マ
ウスエフェクター細胞について上記のように、Dynabeadsを用いて調製した。次
に、CD8枯渇細胞とCD4枯渇細胞の細胞溶解活性を、クロム放出アッセイでi.m.コ
ア/neoRおよびB-gal/neoRを標的として用い試験した(図22を参照のこと)。
B.HBV コア抗原を発現するDNAベクターによるCTL応答の誘導 1.ベクター構築:
真核発現ベクターpcDNA3をInvitrogen(San Diego,California,USA)から入
手した。このベクターはヒトサイトメガロウイルス(CMV)主要即時初期プロモ
ーター/エンハンサー領域を含み、すべての挿入遺伝子の発現をこのプロモータ
ーを用いて駆動した。このベクターの他の関連する特徴には、ウシ成長ホルモン
(BGH)ポリA+シグナルとネオマイシン耐性遺伝子とが含まれる。
KT-HBc由来のXhoI-ClaI HBVコアフラグメントを、SK II+(Stratagene,La Jo
lla,California,USA)のXhoI部位とClaI部位に連結した。このプラスミドをSK
II+HBVコアと命名した。このプラスミドから、HBVコア抗原をコードするXhoI-X
baIフラグメントを切り出し、pcDNA3ベクターのXhoI-XbaI部位に挿入した。この
プラスミドをpcDNA3 HBVコアと命名した。2.CTL誘導:
雌のC3H/HeNマウス(Charles River Laboratories,Massachusetts,USA)の
右および左前脛骨筋に、50μlのPBSに溶解した60〜100μgのプラスミドDNAを、2
9G1/2針を取り付けた3/10cc U-100インスリン注射器を用いてi.m.注射した。す
べてのプラスミドDNAを標準的な技法を用い塩化セシウムで2回精製した。プラ
スミドDNAの注射の5日前に、マウスをアベルチンで麻酔した後、PBS中の10μM
カルジオトキシン(Latoxin,Rosans,France)100μlで予備処置した。0日目
にマウスに注射し、4週間後に追加投与し、その脾臓を集めてCTLアッセイで試
験した。
CTLアッセイは本明細書の実施例2に記載のように行なった。CTLアッセイの結
果は、3匹のマウスのうち2匹が、100:1のエフェクター:標的比で、ネガティ
ブコントロールより15%大きいCTL応答を持つことを示した。
C.細胞傷害性アッセイ
i.CTL の存在を決定するための細胞傷害性アッセイ
ベクターで誘導した同系交配マウスの細胞によって発現される異種タンパク質
に対するCTLを上記実施例2Hiに記載のように行なった。
ii.HLA A2.1 トランスジェニックマウス
105〜107 cfuのHIV IIIenvを10〜100μgのCMV KT-HBc発現ベタターDNAと組み
合わせ、さらにI.M.注射すると遺伝子発現を促進するブピバカイン(Danko,I.
ら,Gene Therapy 1:114-121,1994)のような添加物とともに、またはそのよう
な添加物なしで、6〜8週齢の雌のHLA A2.1トランスジェニックマウスに、1週
間間隔で2回、I.M.、I.D.またはS.C.注射する。7日後に動物を屠殺し、脾細胞
(3×106/ml)を放射線照射した(10,000rad)形質導入ジャーカットA2/Kb細胞
またはペプチド被覆ジャーカットA2/Kb細胞(6×104/ml)とともにフラスコ内で
インビトロ培養した。残余物のクロム51放出アッセイを上記の実施例2Hiのよう
に行ない、ここで標的は形質導入されたおよび形質導入されていないEL4 A2/Kb
およびジャーカットA2/Kb細胞である。形質導入されていない細胞株をネガティ
ブコ
ントロールとする。標的はまたペプチド被覆EL4 A2/Kb細胞であり得る。
D.ヒトおよび非ヒト霊長類投与プロトコル
実施例2Hiのマウス系で得たデータを用いて、HBVが慢性的に感染したマカクザ
ルまたはチンパンジーにおけるベクター投与プロトコルを決定する。マウスにお
けるHBV特異的CTLの誘導に基づいて、サルまたはチンパンジー試験の被験体を、
投与量が連続的に増大する2つの群にわけて、CMV HBVコア抗原発現ベクターDNA
とHIV IIIBenvRRVとを28日間隔で3回投与する。コントロールの被験体にはHBV-
IT(V)処法培地からなる偽薬を与える。複合投与量は106、107、108または109H
IV IIIBenvRRV+1、10、100、1000μgのCMV HBVコア抗原発現ベクターDNAであ
り、これを各注射日に4回の0.5ml筋肉内注射として与える。2つの比は100:1、10
:1、1:1、1:10または1:100であり得る。血清ALTレベル、HBV e 抗原の存在
、HBV e抗原に対する抗体の存在を測定し、そして処置の安全性と許容性を評価
するために、4日、12日、24日、36日、52日、70日および84日目と、6ヶ月、12
ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、30ヶ月および36ヶ月目に血液サンプルを採取する。HBV
e抗原とHBV e抗原に対する抗体は、実施例2Fiに記載のようにAbbott HBe rDNA E
IAキットで検出する。HBVコアに対するCTLの誘導の効力は、実施例4Eのように
決定され得る。
サルおよびチンパンジー試験で得た安全性および有効性の結果に基づいて、ヒ
ト試験における被験体へのベクター投与について、投与量および接種スケジュー
ルを決定する。これらの投与量は106〜109 cfuのHIV-IT(V)および1〜1000μg
のCMV HBVコア抗原発現ベクターの範囲にある。これらの被験体を血清ATLレベル
、HBV e抗原の存在およびHBV e抗原に対する抗体の存在について、本質的に上記
のようにモニターする。HBVコア抗原に対するヒトCTLの誘導を実施例4Eのよう
に決定する。
E.ヒトCTLアッセイ
ヒトCTLアッセイを実施例2Hivに記載のように行なう。
F.体液性免疫応答の検出
HBVコア抗原に特異的なマウスにおける体液性免疫応答を、上記の実施例21に
記載したようにELISAで検出する。
G.T細胞増殖
HBVコア抗原を発現する直接ベクター調製物の2または3回の注射がもたらす
抗原誘導性Tヘルパー活性を、上記の実施例2Jに記載のT細胞増殖アッセイによ
ってインビトロで測定する。
実施例5
γ-IFNおよびHIV抗原を発現する組換えレトロウイルスベクターの投与
A.m γ-IFNのクローニングおよびKT-3Bへの挿入
本質的に下記のように、mγ-IFN cDNAをpUC1813のEcoRI部位にクローニングす
る。簡単に述べると、Kayら,Nucleic Acids Research 15:2778,1987;およびGr
ayら,PNAS 80:5842,1983に本質的に記載されているように、pUC1813を調製する
(図8A)。mγ-IFN cDNAをEcoRI消化によって回収し、そして単離フラグメント
をホスファターゼ処理したpSP73(Promega,Madison,WI)のEcoRI部位にクロー
ニングする(図8B)。この構築物をSP mγ-IFNと名づける。cDNAの方向を適切な
制限酵素消化およびDNA配列決定によって確認する。センス方向では、cDNAの5'
末端がpSP73ポリリンカーのXhoI部位に隣接し、そして3'末端がClaI部位に隣接
する。mγ-IFN cDNAをセンスまたはアンチセンスのいずれかの方向で含有するXh
oI-ClaIフラグメントを、SP mγ-IFN構築物から回収し、そしてKT-3Bレトロウイ
ルスのXhoI-ClaI部位にクローニングする。この構築物をKT mγ-IFNと名づける
(図8C)。
B.h γ-IFNのクローニングとKT-3Bへの挿入
i.ジャーカット細胞のPHA刺激
ジャーカット細胞(ATCC寄託番号CRL8163)を、5%FBSを含むRPMI成長培地に
1×106細胞/mlの濃度で再懸濁し、最終容量を158mlとした。懸濁液にフィトヘモ
アグルチニン(PHA)(Curtis Mathes Scientific,Houston,TX)を最終濃度1
%まで加える。懸濁液を5%CO2中37℃で一晩インキュベートする。翌日、細胞
を集め、そして3つの50.0ml遠沈管に分注する。3つのペレットを50.0mlの1×P
BS(145mM,pH7.0)中で合わせ、そして1,000rpmで5分間遠心分離する。上清を
捨て、細胞を50.0mlのPBSで洗浄する。RNA単離のために細胞を集める。
ii.RNA 単離
PHAで刺激したジャーカット細胞を22.0mlのグアニジニウム溶液(4Mグアニジ
ニウムチオシアネート;20mM酢酸ナトリウム,pH5.2;0.1Mジチオスレイトール;
0.5%サルコシル)に再懸濁する。次に、細胞膜を破壊するため、細胞-グアニジ
ニウム懸濁液を20ゲージ針に6回通す。次に、CsCl溶液(5.7M CsCl、0.1M EDTA
)を11.0mlの破壊した細胞-グアニジニウム溶液に重層する。この溶液を、SW28.
1ローター(Beckman,Fullerton,CA)中で20℃にて28,000rpmで24時間遠心分離
する。遠心分離後、上清を注意深く吸引し、そして水分を吸い取り、遠沈管を乾
燥させる。ペレットをグアニジニウム-HCl溶液(7.4Mグアニジニウム-HCl;25mM
Tris-HCl,pH7.5;5mMジチオスレイトール)に再懸濁して、最終容量を500μl
とする。この溶液を微小遠沈管に移す。微小遠沈管に12.5μlの濃氷酢酸および2
50μlの100%EtOHを加える。その溶液を混合し、−20℃で数日間保存する。
保存後、溶液を4℃にて14,000rpmで20分間遠心分離する。次に、ペレットを7
5%EtOHに再懸濁し、4℃にて14,000rpmで10分間遠心分離する。ペレットを減圧
遠心分離によって乾燥させ、そして300μlの脱イオン(DI)H2Oに再懸濁する。R
NAの濃度および純度を、260nmおよび280nmでの光学密度を測定することによって
決定する。
iii.逆転写反応
使用直前に、5μl(3.4mg/ml)の精製ジャーカットRNAを90℃で5分間熱処理
後、次いで氷上に置く。10μlの10×PCR緩衝液(500mM KCl;200mM Tris-HCl,pH
8.4;25mM MgCl2;1mg/mlウシ血清アルブミン(BSA))、10μlの10mM dATP、1
0μlの10mM dGTP、10μlの10mM dCTP、10μlの10mM dTTP、2.5μlのRNasin(40,
000U/ml,Promega,WI)および33μlの脱イオン化H2Oの溶液を熱処理ジャーカッ
ト細胞RNAに加える。微小遠沈管中で、この溶液に5μl(108nmol/ml)の(配列
番号1)および5μl(200,000U/ml)のMoMLV逆転写酵素(EC3.1.27.5,Bethesd
a Research Laboratories,MD)を混合し、そして室温で10分間インキュベートす
る。室温でのインキュベーション後、反応混合物を37℃で1時間インキュベート
し、次いで95℃で5分間インキュベートする。次に、逆転写反応混合物をPCR用
として氷上に置く。
iv.PCR 増幅
PCR反応混合物は、100μlの逆転写反応液、356μlの脱イオン化H2O、40μlの1
0×PCR緩衝液、1μl(137nmol/ml)の(配列番号2)、0.5μl(320nmol/ml)
の(配列番号3)および2.5μl(5,000U/ml)のTaqポリメラーゼ(EC2.7.7.7,P
erkin-Elmer Cetus,CA)を含む。100μlのこの混合物を5本のチューブのそれ
ぞれに分注する。
このプライマーは、終結コドンの30塩基対下流にあるmγ-IFN cDNAの配列に相
補的である。
このプライマーは、ATG開始コドンから始まる、mγ-IFN遺伝子の5'コード領域
に相補的である。このプライマーの5'末端はXhoI制限部位を含む。
このプライマーは、TAA終結コドンで終わる、mγ-IFN遺伝子の3'コード領域に
相補的である。このプライマーの5'末端はClaI制限部位を含む。
各チューブに100.0μlの鉱油を重層し、そしてPCR装置(Ericomp Twin Block
System,Ericomp,CA)中に置いた。PCRプログラムは、反応容器の温度を、まず
1分間95℃に、次に2分間67℃に、そして最後に2分間72℃に調節する。このサ
イクルを40回繰り返す。最終サイクルは、反応容器の温度を、まず1分間95℃に
、次に2分間67℃に、そして最後に7分間72℃に調節する。完了したPCR増幅反
応物をPCR DNA単離用として4℃で1ヶ月間保存する。
v.PCR DNA の単離
PCR増幅反応物の水層を1つの微小遠沈管に移す。溶液に、50μlの3M酢酸ナ
トリウムおよび500μlのクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)を加える
。溶液をボルテックスし、次いで室温にて14,000rpmで5分間遠心分離する。上
の水相を新しい微小遠沈管に移し、そして1.0mlの100%EtOHを加える。この溶液
を−20℃で4.5時間インキュベートし、次いで14,000rpmで20分間遠心分離する。
上清を捨て、そしてペレットを500.0μlの70%EtOHでリンスする。ペレットを減
圧遠心分離によって乾燥させる。単離したhγ-IFN PCRDNAを10μlの脱イオン化H2
Oに再懸濁する。
vi.平滑末端化hγ-IFN PCR DNAフラグメントの作成と単離
T4 DNAポリメラーゼを用いてhγ-IFN PCR DNAを平滑末端化する。具体的に述
べると、10μlのPCR増幅DNA、2μlの10×T4 DNAポリメラーゼ緩衝液(0.33M Tr
is-酢酸,pH7.9、0.66M酢酸カリウム、0.10M酢酸マグネシウム、5mMジチオスレイ
トール、1mg/ml BSA)、1μlの2.5mM dNTP(等モル濃度のdATP、dGTP、dTTPお
よびdCTPを含む混合物)、7μlの脱イオン化H2O、1μlの5,000U/mlのクレノウ
フラグメント(EC2.7.7.7,New England Biolabs,MA)および1μlの3,000U/ml
T4 DNAポリメラーゼ(EC2.7.7.7,New England Biolabs,MA)をともに混合し
、そして37℃で15分間インキュベートする。次に、反応混合物を室温で40分間イ
ンキュベートし、続いて68℃で15分間インキュベートする。
平滑末端化したhγ-IFNを、アガロースゲル電気泳動によって単離する。具体
的に述べると、2μlのロード色素(0.25%ブロモフェノールブルー、0.25%キシ
レンシアノールおよび50%グリセロール)を反応混合物に加え、そして4μlを
、
臭化エチジウムを含む1%アガロース/Tris-ホウ酸-EDTA(TBE)ゲルの5つのレ
ーンのそれぞれにロードする。このゲルの電気泳動を100ボルトで1時間行なう。
約500塩基対長のhγ-IFNを含む所望のDNAバンドを、紫外線下で可視化する。
このバンドを、NA45ペーパー(Schleicher and Schuell,Keene,NH)上に電
気泳動的に移すことによってゲルから取り出す。このペーパーを、400μlの高塩
NET緩衝液(1M NaCl、0.1mM EDTA、および20mM Tris,pH8.0)中で68℃にて40分
間インキュベートしてDNAを溶出させる。溶液からNA45ペーパーを取り出し、そ
して400μlのフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)を
加える。溶液をボルテックスし、そして14,000rpmで5分間遠心分離する。上の
水相を新しいチューブに移し、そして400μlのタロロホルム:イソアミルアルコ
ール(24:1)を加える。混合物をボルテックスし、そして5分間遠心分離する
。上の水相を再び新しいチューブに移し、そして700μlの100%エタノールを加
える。チューブを−20℃で3日間インキュベートする。インキュベーション後、1
4,000rpmで20分間の遠心分離によりチューブからDNAを沈殿させる。上清を捨て
、そしてペレットを500μlの70%エチルアルコールでリンスする。平滑末端化h
γ-IFN DNAを含むペレットを、減圧遠心分離によって乾燥させ、そして50μlの
脱イオン化H2O中に再懸濁する。
単離した平滑末端化hγ-IFN DNAを、ポリヌクレオチドキナーゼを用いてリン
酸化する。具体的に述べると、25μlの平滑末端化hγ-IFN DNA、3μlの10×キナ
ーゼ緩衝液(0.5M Tris-HCl,pH7.6、0.1M MgCl2、50mMジチオスレイトール、1m
Mスペルミジン、1mM EDTA)、3μlの10mM ATPおよび1μlのT4ポリヌクレオチ
ドキナーゼ(10,000U/ml、EC2.7.1.78,New England Biolabs,MD)を混合し、
そして37℃で1時間45分インキュベートする。次に、68℃で30分間インキュベー
トすることによって酵素を熱不活化する。
vii.h γ-IFN PCR DNAのSK+ベクターへの連結
SK+プラスミドをHincII制限エンドヌクレアーゼで消化し、そしてアガロース
ゲル電気泳動によって前記のように精製する。具体的に述べると、5.9μl(1.7m
g/ml)のSK+プラスミドDNA、4μlの10×Universal緩衝液(Stratagene,San D
iego,CA)、30.1μlの脱イオン化H2Oおよび4μlのHincII(10,000U/ml)をチ
ューブ中で混合し、そして37℃で7時間インキュベートする。インキュベーショ
ン後、4μlのロード色素を反応混合物に加え、そして4μlのこの溶液を、臭化
エチジウムを含む1%アガロース/TBEゲルの5つのレーンのそれぞれに加える。
このゲルの電気泳動を105ボルトで2時間行なう。2,958塩基対長のHincII切断SK+
プラスミドを、紫外線下で可視化する。消化したSK+プラスミドを、実施例1Bに
記載の方法を使用してゲルから単離する。
このプラスミドのHincII切断部位の脱リン酸化を、CIAPを用いて行なう。具体
的に述べると、50μlの消化SK+プラスミド、5μlの1M Tris,pH8.0、2.0μlの1
5mM EDTA,pH8.0、43μlのH2Oおよび2μlの1,000U/ml CIAP(Boehringer Mannhei
m,Indianapolis,IN)をチューブ中で混合し、そして37℃で15分間インキュベ
ートする。インキュベーション後、2μlのCIAPを添加し、そして溶液を55℃で9
0分間インキュベートする。このインキュベーション後、2.5μlの20%SDS、1μ
lの0.5M EDTA,pH8.0および0.5μlの20mg/mlプロティナーゼK(EC3.4.21.14,Bo
ehringer Mannheim,Indianapolis,IN)を加え、そして溶液を55℃で2時間イ
ンキュベートする。この溶液を室温まで冷却し、そして110μlのフェノール:ク
ロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)を加える。混合物をボルテック
スし、そして14,000rpmで5分間遠心分離する。上の水層を新しいチューブに移
し、そして200μlの100%EtOHを加える。混合物を70℃で15分間インキュベート
する。チューブを遠心分離し、そしてペレットを500μlの70%EtOHでリンスする
。次に、ペレットを減圧遠心分離によって乾燥させた。脱リン酸化したSK+プラ
スミドを40μlの脱イオン化H2Oに再懸濁する。
T4 DNAリガーゼを用いて、hγ-IFN PCR DNAをSK+プラスミドに連結する。具体
的に述べると、30μlの平滑末端化リン酸化hγ-IFN PCR DNA反応混合物、2μl
の脱リン酸化SK+プラスミドおよび1μlのT4 DNAリガーゼをチューブ中で混合し
、16℃で一晩インキュベートする。ミニプレップ手順を用いてDNAを単離した。
より具体的に述べると、細菌E.coli DH5α株を15μlの連結反応混合物で形質転
換し、アンピシリンおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトシド
(X-gal,Gold Biotechnology,St.Louis,MO)を含むLuria-Bertaniアガー
プレート(LBプレート)に接種し、そして37℃で一晩インキュベートする。Samb
rookら(上記)に記載の手順を用いて、白い細菌コロニーからDNAを単離する。h
γ-IFN遺伝子の存在を、XhoI、ClaI、AvaII、DraIおよびSspIによる制限エンド
ヌクレアーゼ切断によって決定する。hγ-IFN遺伝子を含有するプラスミドにつ
いて予想されるエンドヌクレアーゼ制限切断フラグメントサイズを表1に示す。
単離したDNAプラスミドをSK hγ-IFNと名づけ、そしてレトロウイルスベクター
の構築に使用する。
viii.h γ-IFN遺伝子のレトロウイルスベクターへの連結
SK hγ-IFNベクターからXhoIおよびClaI制限エンドヌクレアーゼでの消化によ
ってインターフェロン遺伝子を取り出す。hγ-INF遺伝子を含む得られたフラグ
メントは約500bp長である。このフラグメントを、実施例5Ciiに記載されるよう
に、1%アガロース/TBEゲル電気泳動で単離する。次に、XhoI-ClaI hγ-IFNフ
ラグメントをKT-3Bレトロウイルスに連結する。この構築物をKT hγ-IFNと名づ
ける。KT hγ-IFN構築物でDH5α細菌株を形質転換することにより、hγ-IFNの発
現を測定する。具体的に述べると、細菌を15μlの連結反応混合物で形質転換す
る。形質転換した細菌細胞を、アンピシリンを含むLBプレートに接種する。プレ
ートを37℃で一晩インキュベートし、そして細菌コロニーを選択する。DNAをXho
I、ClaI、DraI、NdeIおよびSspIで消化する。hγ-IFN遺伝子を含有するプラスミ
ドについて予想されるエンドヌクレアーゼ制限切断フラグメントサイズを表2に
示す。
C.m γ-IFNレトロウイルスベクターによるパッケージング細胞株DAおよびマウ ス腫瘍細胞株(B16F10およびL33)の形質導入
i.プラスミドDNAトランスフェクション
5.0×105個の293 2-3細胞(293細胞ATCC寄託番号CRL1573から誘導された細胞
株,WO92/05266)を、6cm組織培養ディッシュ上に約50%のコンフルエンスでプ
レートする。翌日、トランスフェクションの4時間前に、培地を4mlの新鮮な培
地と交換する。10.0μgのKT mγ-IFNプラスミドおよび10.0μgのMLP Gプラスミ
ドを2M CaCl溶液と混合し、1×HEPES緩衝化生理食塩水溶液(pH6.9)を加え、そ
して室温で15分間インキュベートすることによって、標準的なリン酸カルシウム
-DNA共沈を行なう。リン酸カルシウム-DNA共沈物を293 2-3細胞に移し、次いで
これを5%CO2、37℃で一晩インキュベートする。翌朝、細胞を1×PBS(pH7.0
)で3回リンスする。新鮮な培地を細胞に加え、続いて10%CO2、37℃で一晩イ
ンキュベートする。翌日、培地を細胞から集め、そして0.45μフィルターに通す
。この上清を用いてパッケージング細胞株および腫瘍細胞株を形質導入する。
DA細胞を5.0×105細胞/10cmディッシュで播種する。0.5mlの−70℃で保存した
293 2-3上清をDA細胞に加える。翌日、G418をこれらの細胞に加え、そして薬物
耐性プールを1週間にわたって作成する。ベクター産生用にDAクローンを選択す
る。
ii.L33 細胞株形質導入
L33細胞を1.0×105細胞/6cmディッシュで播種する。1.0mlの−70℃で保存し
た293 2-3細胞上清をL33細胞に加える。翌日、G418をこれらの細胞に加え、そし
て薬物耐性プールを1週間に亘って作成する。この細胞プールを96ウェルプレー
トの各ウェルに1細胞づつ加えることによって希釈クローニングし、この時点で
細胞溶解物を調製して主要組織適合性複合体(MHC)発現の分析を行なう。MHC発
現のレベルが顕著に増大したクローンL33/mγ-IFN#15を以後のマウス研究に使
用する。
iii.B16F10 細胞株形質導入
B16F10細胞(Dennert,USC Comprehensive Cancer Center,Los Angeles,CA;
Warnerら,Nature 300:113-121,1982)を、4μg/mlのポリブレンとともに、2.0
×105細胞/10cmディッシュで播種する。DA mγ-IFNプール0.1mlの上清を細胞に
加え、そして10%CO2、37℃で6時間インキュベートする。インキュベーション
後、G418を加え、そして薬物耐性プールを作製する。このプールを、96ウェルプ
レートの各ウェルに1.0細胞づつ加えることによって希釈クローニングする。24
クローンを24ウェルプレートに拡大し、次いで6ウェルプレートに拡大し、この
時点で細胞溶解物を作成してMHC発現を分析する。MHC発現のレベルが顕著に増大
したクローンB16F10/mγ-IFN#4を以後のマウス研究に用いる。
iv.CT26 およびルイス肺腫瘍細胞株形質導入
結腸腫瘍26(CT26)細胞(Brattain,Baylor College of Medicine,Houston
,TX)およびルイス肺腫瘍(LLT)細胞(Waude,Southern Research Institute
,Birmingham,AL,ATCC寄託番号CRL1642)を、10%FBSおよび4μg/mlポリブレ
ンを含むDMEM中に、各細胞株について1.0×105細胞/6cmプレートで播種し、そ
して10%CO2、37℃で24時間インキュベートする。インキュベーション後、1.0ml
のKT mγ-IFNレトロウイルスベクター(9.0×106cfu/ml)を各個の細胞株に加え
、そして10%CO2、37℃で24時間インキュベートする。インキュベーション後、
培地を、10%FBSおよび400μg/ml G418を含むDMEMと交換する。これらの細胞株
を約2週間、G418選択下に維持する。選択されたCT26およびLLT耐性プールを、9
6ウェルプレートの各ウェルに1細胞づつ加えることによって希釈クローニング
する。2つの96ウェルプレートに各G418選択プールをプレートする。CT26および
LL
T mγ-IFN発現クローンを24ウェルプレートに拡大し、次いで6ウェルプレート
に拡大する。各クローンの溶解物を調製し、そしてウェスタンブロット分析によ
って、アップレギュレートされたMHCタンパク質発現について分析する。MHCタン
パク質発現がアップレギュレートされたクローンCT26/ mγ-IFNを選択する。LLT
研究はすべて、mγ-IFN発現LLT細胞の非クローンプールを用いて行なう。
D.h γ-IFNレトロウイルスベクターによるパッケージング細胞株およびヒト細 胞株の形質導入
i.プラスミドDNAトランスフェクション
約5.0×105個の293 2-3細胞を、6cm組織培養ディッシュに約50%のコンフル
エンスで播種する。翌日、トランスフェクションの4時間前に、培地を3mlの新
鮮な培地と交換する。トランスフェクション時に、0.1×Tris-EDTA(pH7.4)中
で5μlのKT hγ-IFNプラスミドを2.0μgのMLP Gプラスミドと混合する。DNAをC
aCl溶液と混合し、1×HEPES緩衝化生理食塩水溶液(2M,pH6.9)を加え、そして
室温で15分間インキュベートして、標準的なリン酸カルシウム-DNA共沈を行なう
。リン酸カルシウム-DNA共沈物を293 2-3細胞に移し、次いで、これを5%CO2、
37℃で一晩インキュベートする。翌朝、細胞を1×PBS(pH7.0)で3回リンスす
る。新鮮な培地を細胞に加え、続いて10%CO2中で37℃にて一晩インキュベート
する。翌日、培地を細胞から集め、そして0.45μフィルターに通す。ろ過した上
清を−70℃で保存し、パッケージング細胞形質導入に使用する。
ii.DA トランスフェクション
約5.0×105個のHX細胞を、6cm組織培養ディッシュに約50%コンフルエンスで
播種する。翌日、トランスフェクションの4時間前に、培地を4mlの新鮮な培地
と交換する。2μl(6.0μg)のKT hγ-IFNプラスミドを120mlの2M CaCl溶液と
混合し、240mlの1×HEPES緩衝化生理食塩水溶液(pH6.9)を加え、そして室温
で15分間インキュベートすることによって、標準的なリン酸カルシウム-DNA共沈
を行なう。リン酸カルシウム-DNA共沈物をHX細胞に移し、次いでこれを5%CO2
、37℃で一晩インキュベートする。翌朝、細胞を1×PBS(pH7.0)で3回リンス
す
る。新鮮な培地を細胞に加え、続いて10%CO2、37℃で一晩インキュベートする
。翌日、培地を細胞から集め、そして0.45μフィルターに通す。
その前日、DA細胞を1.0×105細胞/6cmディッシュで播種する。新たに集めた1
.0mlのHX上清をDA細胞に加える。翌日、G418をこれらの細胞に加え、そして薬物
耐性プールを2週間にわたって作製する。細胞プールを、96ウェルプレートの各
ウェルに1.0細胞づつ加えることによって希釈クローニングする。24クローンを2
4ウェルプレートに拡大し、次いで6ウェルプレートに拡大する。滴定のために
細胞上清を集め、そして少なくとも5.0×105cfu/mlの力価を有するクローンを選
択する。1つのDAクローンを選択し、そしてDA/ hγ-IFNと名づける。
iii.ヒト細胞株形質導入
以下の付着性ヒト細胞株を、4μg/mlポリブレンとともに5×105細胞/10cmデ
ィッシュで播種する:HT1080(ATCC寄託番号CCL121);Hela(ATCC寄託番号CCL2
);143B(ATCC寄託番号CRL8303);Caski(ATCC寄託番号CRL1550)。以下のヒ
ト細胞株の懸濁液を、4.0μg/mlポリブレンとともに5×105細胞/6ml培地で播
種する:HL60(ATCC寄託番号CCL240);U937(ATCC寄託番号CRL1593);CEM(AT
CC寄託番号CCL119);Hut78(ATCC寄託番号TIB161);Duadi(ATCC寄託番号CCL2
13);K562(ATCC寄託番号CCL243)。翌日、DA hγ-IFNプール由来の1.0mlのろ
過上清を、これら10細胞培養物のそれぞれに加える。翌日、10細胞培養物すべて
の培地に800μg/mlのG418を加える。選択が完了し、そして十分な細胞数が生じ
るまで培養物を維持する。放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)溶解物を選択した培
養物から作成してhγ-IFN発現を分析する。具体的に述べると、RIPA溶解物を9
%アクリルアミドゲル上で電気泳動し、次いでImmobilonメンブレン(Millipore
,Philadelphia,PA)に移す。メンブレンをヒトMHCに対する抗体W6/32(Accura
te Chemicals,Westburg,NY)でプローブし、そしてオートラジオグラムを行な
う。MHCのアップレギュレーションは、Daudi、HL60、HeLaおよびCaski細胞株に
おいて認められる。分析後、これらの細胞をhγ-IFN発現用として−70℃で凍結
する。
iv.ヒト黒色腫形質導入
黒色腫細胞株DM6、DM92、DM252、DM265、DM262およびDM259(ヒト腫瘍生検よ
り樹立された細胞株,Seigler,Duke University,NC)をヒト腫瘍生検から樹立
する。各細胞株を、4μg/mlポリブレンとともに106細胞/10cmディッシュで播種
する。翌日、DA hγ-IFNプール由来の5〜10mlのろ過上清を各細胞培養物に加え
る。これは5〜10の感染多重度(MOI)に相当する。翌日、細胞を、800μg/mlの
G418を用いて選択する。すべての形質導入された細胞株の上清サンプルを集める
。上清を0.45μフィルターに通し、そしてhγ-IFN発現の分析用として−70℃で
保存する。
E.MHC クラスI発現
i.ウェスタンブロット分析によるマウスMHCクラスI発現の測定
RIPA溶解物を細胞のコンフルエントプレートから調製する。具体的に述べると
、まず培地を細胞から吸引除去する。細胞を含む培養プレートのサイズに応じて
、容量100〜500μlの氷冷RIPA溶解緩衝液(10mM Tris,pH7.4、1%Nonidet P40
(Calbiochem,San Diego,CA)、0.1%SDS、150mM NaCl)を細胞に加える。マ
イクロピペットを用いて細胞をプレートから掻き落とし、そして混合物を微小遠
沈管に移す。遠沈管を5分間遠心分離して細胞残渣を沈殿させ、そして溶解上清
を別の遠沈管に移す。溶解物を10%SDS-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動し
、そしてCAPS緩衝液(10mM CAPS,pH11.0,10%メタノール)中、10〜60ボルトで
2〜18時間かけて、タンパク質バンドをImmobilonメンブレンに移す。メンブレ
ンをCAPS緩衝液から5%Blotto(5%脱脂粉乳、50mM Tris,pH7.4、150mM NaCl
、0.02%アジ化Naおよび0.05%Tween 20)に移し、そしてラットIgM抗体72.14S
(Richard Dutton,UCSD,San Diego,CA)でプローブする。この抗体プローブ
は、マウスMHCクラスI分子の細胞内保存領域を指向する。メンブレンへの抗体
結合を125I-ProteinAを使用して検出する。
ii.m γ-IFNレトロウイルスベクターを有するマウス腫瘍細胞株およびmr-IFNレ トロウイルスベクターを有さないマウス腫瘍細胞株におけるMHC発現の分析
MHC発現を、ウェスタンブロットおよびフローサイトメトリー分析によって確
認する。具体的に述べると、L33、CT26およびLLT親細胞株は、比較的正常なレベ
ルのMHCクラスIタンパク質を発現し、そしてB16F10親細胞株は、MHCクラスIタ
ンパク質のレベルをダウンレギュレートされている。これらの細胞株のmγ-IFN
で形質導入されたプールおよびクローンは、対応する親細胞株より高いレベルの
MHCクラスIを発現する。このことは、ウェスタンブロットおよびフローサイト
メトリー分析によって立証される。種々のCT26 mγ-IFN,LLT mγ-IFNサブクロ
ーンならびに親CT26およびLLT細胞株の溶解物のウェスタンブロットは、アップ
レギュレートされたMHCクラスI発現を示す。2つのL33 mγ-IFNサブクローン、
2つのB16F10 mγ-IFNサブクローン、親L33細胞株および親B16F10細胞株のウェ
スタンブロット分析は、親細胞と比べてアップレギュレートされたこれらのmγ-
IFNクローンのMHCクラスI発現を例証する(図9)。L33および2つのL33 mγ-I
FNサブクローンのフローサイトメトリー分析は、これらのサブクローンがその表
面上に、親細胞と比べてかなり多くのMHCクラスIを発現させることを例証する
。フローサイトメトリー分析を収集した細胞に対して行なう。具体的に述べると
、細胞を、MHCクラスI特異的抗体34.4抗Dd抗体(Richard Dutton,UCSD,CA)
とともにインキュベートする。34.4抗Dd結合細胞を蛍光結合ウサギ抗マウスIgG
抗体(Capell,Durham,NC)とともにインキュベートすることにより、この結合
抗体を検出する。細胞に結合した抗体-蛍光結合体からの蛍光放射をフローサイ
トメトリー分析によって検出および定量する。
F.形質導入したヒト黒色腫におけるHLAクラスIおよびhγ-IFNの発現
i.ウェスタンブロット分析によるヒトMHC(HLA)クラス1発現の測定
HLAクラスI特異的抗体W6/32を使用することを除いて、本質的にマウスMHCに
ついて実施例5Eに記載したように、HLA発現を測定する。
ii.h γ-IFNレトロウイルスベクターを有するヒト黒色腫およびhγ-IFNレトロウ イルスベクターを有さないヒト黒色腫におけるHLA発現の分析
DM92、DM252またはDM265を、hγ-IFNベクターまたはベクター形質導入につい
てのコントロールとしてのhIL-2で処理する。図10のデータは、hγ-IFNベクター
が、形質導入されていない細胞と比べて、HLAのレベルを増大させ、一方、IL-2
で形質導入された細胞は、HLAのレベルを増大させなかったことを示す。DM265の
形質導入は、hγ-IFNが培地中にほとんど分泌されないか、または全く分泌され
ない場合でさえ、HLAの増大を生じる。
ヒト細胞株A549(ATCC寄託番号CCL185)に対する脳心筋炎(encephalomyocardi
tis)ウイルスのウイルス阻害によってhγ-IFNを定量する。γ-IFNの活性を、脳
心筋炎(EMC)ウイルスによる細胞致死性感染に対する保護効果を測定すること
によって定量する。ろ過上清をA549細胞に異なる濃度で加え、次いで細胞にEMC
ウイルスを投与(challenge)する。hγ-IFNサンプルを適切なNIH参照試薬と同時
アッセイし、そして結果をNIH参照単位(U/ml)に規格化する(Brennanら,Biot
echniques 1:78,1983)。
黒色腫細胞株については、真正(authentic)NIH参照試薬との比較によって活性
を決定し、そしてNIH参照単位(U/mL)に規格化する(Brennanら,上記)。hγ-I
FNレトロウイルスベクターで形質導入されたヒト黒色腫は、容易に検出可能なレ
ベルの生物学的に活性なhγ-IFNを発現する。この発現は、しばしば時間的に安
定であるが、時には培養中に時間の経過とともに減少する。hγ-IFNのこの時間
依存的減少は、この遺伝子の発現がいくらか毒性であり、従って低レベルのhγ-
IFNを発現する細胞についての選択に利点を生じることを示し得る。
G.m γ-IFN活性の測定
脳心筋炎(EMC)ウイルスによる細胞致死性感染に対する保護効果を測定する
ことによって、mγ-IFNの活性を定量する。マウス細胞株3T3TK-(NIAID Researc
h Reference Reagent Note #28,1983年11月版)を使用してmγ-IFNについてアッ
セイする。3T3TK-細胞を、96ウェルマイクロタイター組織培養プレートのウェル
に加える。細胞がコンフルエンシーに達した時、インターフェロンの存在につい
て評価しようとする細胞培養上清(試験サンプル)の系列希釈物を細胞に適用す
る。インキュベーション期間の後、細胞にEMCウイルスを投与する。mγ-IFNサン
プルを適切なNIH参照試薬と同時アッセイし、そして結果をNIH参照単位(U/
ml)に規格化する(Brennanら,上記)。細胞タイプCT26(Brittainら,Cancer 3
6:2441,1975)、BC10ME、LLTおよびB16F10について記録した活性を表1および2
に示す。
H.レトロウイルスベクターの直接注射によるマウスにおける免疫応答の刺激
組換えレトロウイルスベクターが、マウスに直接注射後HIV envタンパク質の
発現を誘導する能力を評価する実験を行なう。HIV III B envをコードするベク
ターを有する組換えレトロウイルスとhγ-IFNをコードするベクターを有する組
換えレトロウイルスとの約104〜107cfuの組み合わせを、3週間間隔で2回、I.P
.またはI.M.経路により注射する。別のセットのマウスに、105〜108cfuのHIV II
I B envベクターのみを注射する。2回目のベクター注射の約7〜14日後、CTL用
の脾臓細胞を調製し、そして照射BC env刺激細胞を用いて前記(実施例2J)のよ
うに、CTLをインビトロで再び刺激する。結果は、HIV III B envベクターおよび
組み合わせの直接ベクター注射が、BC env標的細胞を殺傷するが、コントロール
のBC細胞は殺傷しないCTLの発達を刺激することを示した。しかし、組み合わせ
ベクターは、より低い用量のHIV III B envベクターでCTL応答を刺激する。した
がって、104〜105単位のレトロウイルス(通常は免疫応答を刺激しないベクター
量)の注射によって、宿主において局所的なmγ-IFN産生とともにHIVエンベロー
プの発現が誘発され、これにより特異的なCTL免疫応答の誘導が導かれ得る。
同じ手順をヒトにおいて用いて、106、107、108、109、1010または1011cfuのH
IV組換えレトロウイルスベクター、あるいは106、107、108、109、1010または1011
cfuのhγ-IFN組換えレトロウイルスベクターの組合せ投与による、HIV抗原に
対する応答を増強し得る。
I.ヒトおよび非ヒト霊長類投与プロトコル
ヒトおよび非ヒト霊長類(例えば、サルおよびチンパンジー)のためのベクタ
ー構築物投与プロトコルを実施例2Gに記載のように行なう。
実施例6
GMCSFおよびTKを発現するレトロウイルスベクターの投与
A.GMCSF レトロウイルスベクター構築
ヒトGMCSFのcDNAを含むベクターp91023(B)(ATCC受託番号第39754号)を、PCRの
テンプレートとして使用する。2つのオリゴヌクレオチドをBio-Synthesis In
c.(Lewisville,TX)により合成する。第1のオリゴヌクレオチドは、5'末端に2
つのXhoI部位を有するGMCSFの塩基29〜54に対応するセンス配列である。
第2のオリゴヌクレオチドは、5'末端に2つのClaI部位を有するGMCSFの塩基52
0〜493に対応するアンチセンス配列である。
10ngのテンプレートDNAを、Ventポリメラーゼ(New England Biolabs,Beverly
MA)およびプライマーとしての2つのオリゴヌクレオチド番号47および36ととも
にPCR反応において使用する。PCR産物をXhoIおよびClaI制限酵素で消化し、そし
てXhoI-ClaI消化KT3ベクターに連結する。この構築物をpKT3-GMCSFと呼ぶ。
このベクターからのタンパク質産物を、ELISA(Biosource International,Cama
rillo,CA)により確認する。このベクター産物の生物学的活性を、KG-1細胞(ATCC
CCL 246)を用いるKoefflerおよびGouldのコロニー形成アッセイ(Science 200:1
153,1978)により確認する。10μlのサンプルを、140μlのIscoves培地(0.3%寒
天、20%ウシ胎児血清、および10-4Mαチオグリセロールを含む)中に400個のK
G-1細胞を含むマイクロタイターウェルに添加する。このアッセイを37℃で14日
間インキュベートし、そしてバックグラウンドを超えるコロニーの数の得点を付
ける。
B.TK-1 およびTK-3レトロウイルスベクターの構築ならびにベクター粒子の産生
ベクターTK-1を以下のフラグメントから構築する:
1.5Kb XhoI/HindIII 5'LTRおよびプラスミド配列を、p31N2R5(+)から単離
する、
2.転写終結配列を欠くHSVTKコード配列を、pTKΔAから1.2KbのXhoI/BamHIフ
ラグメントとして単離する、
3.3’LTR配列を、pN2R3(-)から1.0KbのBamHI/HindIIIフラグメントとして単
離する。
これらのフラグメントを混合し、連結し、細菌に形質転換し、そして個々のク
ローンを制限酵素分析により同定した。このベクター構築物をTK-1(図10)と呼
ぶ。
TK-3を、BamHIでTK-1を線状化し、5'突出部を充填し、そして細菌性lac UV5プ
ロモーター、SV40初期プロモーター、およびTn5 Neor遺伝子を含む5'充填ClaIフ
ラグメントを平滑末端で連結することにより構築した(図10)。カナマイシン耐
性クローンを単離し、そして個々のクローンを制限酵素分析により適切な方向に
ついてスクリーニングした。
これらの構築物を用いて、上記のDAのようなパッケージング細胞株とともに感
染性組換えベクター粒子を作成した。
C.CT26 およびCT26TK、CT26GMCSF、ならびにCT26TKとCT26GMCSFとの組合せに対 する腫瘍増殖細胞傷害性アッセイ
i.インビボでの腫瘍増殖
ガンシクロビルが、インビボでの非改変CT26腫瘍細胞(大腸腫瘍26,Brattain,B
aylor College of Medicine,Houston,TX)の増殖に対して効果を有するかどうか
を決定するために、2群の7匹のマウスに2.0×105の非改変CT26細胞をS.C.注入
し、そして2群の7匹のマウスに2.0×105のCT26TK neo細胞をS.C.注入する。腫
瘍移植の7日後、1群のCT26注入マウスおよび1群のCT26TK neo注入マウスを、
1日に2回(AMおよびPM)、62.5mg/KgでI.P.ガンシクロビルのレジメンに置く。
これらのマウスを、12日間、またはCT26TK neo注入動物が検出可能な腫瘍負荷を
有さなくなるまで処置する。腫瘍の増殖を、3週間の期間にわたってモニターす
る。CT26を注入し、かつガンシクロビルで処置したマウスは、未処置のCT26注入
マウスよりも多少小さな腫瘍を有した。これは腫瘍増殖の小さなHSVTK非依存性
阻害を示す(図11)。しかし、腫瘍負荷における劇的な減少は、CT26TK neo含有マ
ウスをガンシクロビルで処置した場合、およびその場合にのみ、観察された(図1
1)。同様に、GMCSFならびに/またはGMCSFおよびTK(組み合わせて導入した)を
有するCT26細胞の増殖は、正常な腫瘍と比較され得る。
ii TK-3 およびGMCSFによるCT26腫瘍細胞のインビボ形質導入
この実験を、TK-3ベクターおよびGMCSFベクターが、インビボで細胞を標的化
するためにHSVTKおよびGMCSF遺伝子を送達し得、そしてガンシクロビルの存在下
で腫瘍増殖を抑制し得ることを実証するために設計する。最初に、TK-3単独の効
果を調べた。6群の10匹のマウスに1.0×105個のCT26腫瘍細胞を用いてS.C.注入
する。さらに、1群の10匹のマウスにコントロールとして1.0×105個のCT26TK n
eo細胞を用いてS.C.注入する。S.C.注入の領域を、耐水性マーカーを用いて円を
かく。腫瘍移植24時間後、ポリブレン(polybrene)(4μg/ml)を用いて処方された
TK-3、GMCSF、またはβ-galウイルス上清(計0.2ml)を、耐水性マーカーにより
印がつけられた領域内に注入する。ベクター投与を、1日あたり1投与量のベク
ターで、4日間続ける。各ベクター投与量は、2.0×105cfu/mlを含む。結果を図
11に示す。このデータは、動物にTK-3およびガンシクロビルの両方を注入した場
合にのみ、CT26増殖の実質的な低下が起こったことを示す。阻害のレベルは、イ
ンビトロで形質導入され、そしておそらく、決して100%でないインビボの形質
導入に帰因して選択されたCT26TK neoで観察された阻害のレベルほど実質的では
ない。驚くべきことに、コントロールベクターCB-β-galおよびガンシクロビル
で処置された場合、腫瘍増殖における減少もまた存在した。これは、ガンシクロ
ビル単独によって引き起こされ、以前に観察された小さな減少に加えて、ベクタ
ー細胞非含有上清自身に帰因する腫瘍増殖の何らかの阻害を示し得る(図11)。
この観察にかかわらず、TK-3/ガンシクロビル処置動物の平均的な腫瘍のサイズ
は、CB-β-gal/ガンシクロビル処置動物のものより有意に小さい(14日目および
21日目の時点で、それぞれ7倍および10倍ならびに75倍小さい)。従って、HSVT
K発現レトロウイルスベクターの直接注入によるインビボ形質導入は、ガンシク
ロビル投与との組み合わせにおいて腫瘍増殖の阻害をもたらえし得るようである
。
同じ実験を繰返す。この場合にのみ、直接投与されるベクターは、ほぼ等しい
比率のGMCSFおよびTKベクターの組合せである。この場合において、TK単独、GMC
SF単独、および他のコントロールを用いた腫瘍の退縮が含まれる。TKおよびGMCS
Fベクターの組合せは、他のいずれのコントロール処置より大きく退縮させる。T
KおよびGMCSFベクターの比率および力価は、処置のタイミング、腫瘍負荷、およ
び腫瘍モデルの型に依存してより効率的な腫瘍退縮を提供するように、1:10〜10
:1に変え得、そして104、105、106、107、108、109、1010、または1011cfu/mlで
あり得る。
GMCSFベクターの好ましい調製物は、3:1である。あるいは、TKおよびGMCSFベ
クターを1日おきに投与し得る。最後のベクター処置の24時間後、これらのマウ
スに1日に2回(AMおよびPM)、8日間62.5mg/KgでガンシクロビルをI.P.注入す
る。最終的に、マウスは、実験が終わるまで単回日用量のガンシクロビルを62.5
mg/Kgで受ける。腫瘍増殖を4週間の期間にわたって測定する(図11)。実験を
、予言される概要とともに以下の表3に要約する。同じ手順を、プロドラッグベ
クター(例えば、KT-3)およびサイトカインベクター(例えば、GMCSF、インター
フェロン、IL2などをコードするベクター)の組合せを用いてヒト腫瘍の処置に
使用し得る。ベクターを、実施例2Giiにおいて投与する。
ベクターの直接注入を用いて、インビボで目的の遺伝子を送達することに加え
て、DAのようなPCLに由来するベクタープロデュサー細胞株を腫瘍の中または周
辺に、あるいは両方に注入することによりマウスを処置する。様々な数の照射ま
たは非照射ベクタープロデュサー細胞を、形質導入効率を改善するためのポリカ
チオン試薬を用いておよび用いずに注入する。コントロールマウスに、TK-3およ
びCB-β-galベクタープロデュサー細胞株(VCL)を用いて形質導入された希釈D17(
ATCC受託番号第CCL183号)を注入し得る。インビボ形質導入に十分な時間(約2
週間)の後、ガンシクロビル注入を開始し、そして効力を腫瘍測定および/また
は全生存により決定する。
実施例7
IL-2およびγ-IFNを発現する組換えレトロウイルスベクターの投与
A.KT-3B へのhIL-2のクローニング
KT-3BレトロウイルスベクターへのhIL-2のクローニング方法は、hIL-2 DNA配
列の増幅に異なるプライマーが必要とされることを除いて、KT-3Bへのhγ-IFNの
クローニングの手順(実施例5B)と本質的に同一である。以下のhIL-2 PCRプラ
イマー配列を用いる:
このプライマーは、終結コドン下流のhIL-2 cDNAの配列と相補的である。
このプライマーは、ATG開始コドンで始まる5'コード領域に相補的なhIL-2遺伝
子のセンス配列である。プライマーの5'末端は、XhoI制限部位を含む。
このプライマーは、TAA終結コドンで終わる3'コード領域に相補的なhIL-2遺伝
子のアンチセンス配列である。プライマーの5'末端は、ClaI制限部位を含む。
B.m γ-IFNおよびhIL-2レトロウイルスベクターを用いたパッケージング細胞株 DAおよびマウス腫瘍細胞株B16F10の形質導入
mγ-IFNおよびhIL-2レトロウイルスベクターを用いたパッケージング細胞株DA
およびマウス腫瘍細胞株B16F10の形質導入を、実施例5Cに記載のように行った。
C.B16F10 およびB16F10/mγ-IFN#4細胞の腫瘍形成性
親B16F10、選択されたクローンB16F10/mγ-IFN#4、およびB16F10/hIL-2細胞
を回収し、計数し、そしてHanks緩衝化塩溶液(HBSS,Irvine Scientific,CA)中に
8.0×105細胞/mlの濃度に再懸濁する。2匹のBlack6マウスに、0.5mlのB16F10
細胞懸濁物(3.0×105細胞)をI.V.注入する。5匹のBlack6マウスに、0.5mlの
B16F10/mγ-IFN#4細胞懸濁物をI.V.注入し、そして5匹のBlack6マウスを、0.
5mlのB16F10/hIL-2細胞懸濁物でI.V.注入する。注入14日後、肺をマウスから取
り出し、染色し、そしてBouin溶液(Sigma,St.Louis,MO)中で保存する。4つの肺
葉を分離し、倍率10×下で調べ、そしてそれぞれに存在する黒色の腫瘍の数を決
定する。
各群の肺あたりの腫瘍の平均数および標準偏差を、γ-IFNベクター、IL-2ベク
ター、およびベクターの濃度の効果を示すために測定する。
D.腫瘍を有する動物へのベクターの直接投与
i.マウスへのベクターの直接投与
マウス腫瘍系を、細胞媒介免疫応答が少なくとも1つの抗腫瘍剤を発現するベ
クター構築物の直接投与により増大され得ることを示すために利用し得る。例え
ば、6週〜8週齢の雌のBalb/CマウスまたはC57B1/6マウスに、1×105〜2×105
個の腫瘍細胞を皮下注入し、これをマウス中で1週間〜2週間の間増殖させる。
得られた腫瘍は、移植片が感染または潰瘍化のいずれかにより傷つけられない限
りは、種々のサイズ(通常1〜4mm3の容量)であり得る。次いで、γ-IFNのよう
な抗腫瘍剤を発現するベクター構築物、IL-2を発現するベクター構築物、または
両方のベクターの組合せ(最少力価106cfu/ml)の1mlの1/10〜2/10を、腫瘍内に
注入する(形質導入の効率を増大させるためにポリブレンまたはプロマチン硫酸
を有してまたは有さないで)。ベクターの多回注入を、2〜3日ごとに腫瘍に与
える。
特定の実験のパラメーターに依存して、その上、ベクター調製物の性質も可変
性であり得る。ベクターは、VCLからの濾過または未濾過上清由来のものであり
得、あるいは、濾過、濃縮、または透析、および処方によりさらに処理され得る
。他の標準的な精製技術(例えば、ゲル濾過およびイオン交換クロマトグラフィ
ー)もまた、ベクターを精製するために利用され得る。例えば、透析を、VCL自
体より産生されたγ-IFN(そしてこれは、投与された場合、腫瘍増殖に作用し得
る)を除去するために使用し得る。透析をまた、あり得る形質導入のインヒビタ
ーを除去するために使用し得る。別の選択は、γ-IFNおよびIL-2 VCL、またはさ
らに広くベクターを導入するためのVCLの組合せの腫瘍内注入を行うことである
。簡単にいうと、細胞を、培養液からスピンダウンし、そして薬学的に受容可能
な媒質(例えば、1mg/mlヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBS)に再懸濁し
た後、注入する。本発明のこの局面では、105個程度の細胞を使用し得る。
ベクター構築物の効力を、一次腫瘍増殖における低下、腫瘍負荷における低下
(減少した腫瘍容積により決定される)を測定することにより、または腫瘍標的
細胞に対して増大したT細胞活性の誘導(これらの腫瘍を有する細胞の脾臓から
単離されたリンパ球を用いるインビトロアッセイ系において測定される)により
決定し得る。転移性マウス腫瘍モデルにおいて、効力をまた、最初に転移性であ
る腫瘍細胞を注入し、そして腫瘍が1〜4mm3の容積となったら、その腫瘍中に
ベクターを数回注入することにより決定し得る。次いで、一次腫瘍移植片を、2
〜3週間後に外科的に取り出し得、そして確立された標的器官(肺、腎臓、肝臓
など)への転移における低下を計数する。標的器官における転移の変化を測定す
るために、器官を取り出し、計量し、そして腫瘍を有さない器官と比較し得る。
さらに、標的器官における転移量を、低倍率解剖顕微鏡を用いて、目に見える転
移性小節の数を計数することにより測定し得る。
ii.ヒトへのベクターの直接投与
ヒトについて、ベクター構築物の直接投与のための好ましい位置は、腫瘍また
は腫瘍群の位置に依存する。hγ-IFN(実施例5C)、IL-2遺伝子、または抗腫瘍剤
をコードする他の配列、あるいはこれらの物質の組合せを、ベクター投与により
固形腫瘍に直接導入し得る。これらをまた、白血病、リンパ腫、または腹水腫瘍
に送達し得る。メラノーマのような皮膚病変については、ベクターを病変内また
はその周辺に直接注入し得る。少なくとも105cfu/ベクターのベクター粒子を、
好ましくは薬学的に受容可能な処方物(例えば、10mg/mlラクトース、1mg/ml HSA
、25mM Tris(pH7.2)、および105mM NaCl)中の106cfuより多くのベクターと投与
すべきである。内部の腫瘍病変については、もたらされた腫瘍を、X線、CTス
キャン、抗体画像化、または当業者に公知の他の腫瘍位置付け方法により位置付
けし得る。ベクター注入は、皮膚を通して内部病変内へか、あるいは気管支鏡検
査法(肺用)、S字結腸鏡検査法(直腸結腸腫瘍、または食道腫瘍用)、または
動脈内もしくは血管内カテーテル(多くのタイプの血管化固形腫瘍用)によるも
のであり得る。この注入は腫瘍病変内またはその周囲であり得る。生物学的応答
の誘導効率を、CTLアッセイによるか、または腫瘍に対する遅延型過敏性(DTH)反
応により測定し得る。効力および臨床応答を、X線、CTスキャン、抗体画像化
、または当業者に公知の他の腫瘍位置付け方法を用いて腫瘍負荷を測定すること
により決定し得る。
実施例8
グルコセレブロシダーゼおよびE3/19Kを発現するレトロウイルスベクターの投与
A.KT-3B-GC の構築
cDNAコード配列の5'側のXhoI制限酵素部位およびcDNAコード配列の3'側のClaI
制限酵素部位を含有するグルコセレブロシダーゼ(GC)cDNAクローンを、最初に作
製する。このクローンを、pMFG-GC(Ohashiら、PNAS 89:11332,1992,Noltaら、Bl
ood,75:787,1991)をNcoI(New England Biolabs,Beverly,MA)を用いて消化し、Ve
nt DNAポリメラーゼを用いて平滑化し、次いでXhoIリンカーと連結することによ
り作製する。次いで、このプラスミドを、BamHIを用いて消化し、Vent DNAポリ
メラーゼを用いて平滑化し、その後ClaIリンカーに連結する。次いで、このフラ
グメントを、XhoIおよびClaIを用いて消化し、そしてXhoI-ClaI GCフラグメント
および1.0Kb MoMLV 3'LTR ClaI-HindIIIフラグメントがpUC31/N2R5gMプラスミド
(実施例1)のXhoI-HindIII部位に挿入される、3部の連結で連結する。この構
築物を、KT-3B-GCと呼ぶ。
B.KT-3B へのE3/19K遺伝子のクローニング
i.アデノウイルスの単離および精製
アデノウイルスの単離および精製は、Greenら(Methods in Enzymology 58:425
,1979)により記載される。詳細には、5リットルのHela細胞(3〜6.0×105細胞/
ml)を、1mlあたり100〜500プラーク形成単位(pfu)のアデノウイルス2型(Ad2)
ビリオン(ATCC受託番号VR-846)を用いて感染させる。37℃で30〜40時間のインキ
ュベーション後、細胞を氷上に置き、4℃で20分間、230×gの遠心分離により回
収し、そしてTris-HCl緩衝液(pH8.1)に再懸濁する。ペレットを、超音波により
機械的に破砕し、そして、1,000×gで10分間の遠心分離の前にトリクロロトリフ
ルオロエタン中にホモジナイズする。上部の水相を取り出し、そして10mlのCsCl
(1.43g/cm3)の上に重層し、そしてSW27ローターにおいて20,000rpmで1時間遠心
分離する。乳白色のウイルスバンドを取り出し、そしてCsClで1.34g/cm3に調節
し、そしてさらにTiローターにおいて30,000rpmで16〜20時間遠心分離する。グ
ラジエントの中間におけるこの可視ウイルスバンドを取り出し、そしてアデノウ
イルスDNAの精製まで4℃で貯蔵する。
ii.アデノウイルスDNAの単離および精製
アデノウイルスバンドを、37℃で1時間プロテアーゼとともにインキュベート
し、タンパク質を消化する。7,800×gで4℃にて10分間遠心分離した後、粒子を
室温で30分間5%SDS中に可溶化し、その後等容量のフェノールを用いて抽出す
る。上部の水相を取り出し、フェノールを用いて再抽出し、エーテルを用いて3
回抽出し、そしてTris緩衝液で24時間透析する。ウイルスAd2 DNAをエタノール
中で沈澱させ、エタノール中で洗浄し、そしてTris-EDTA緩衝液(pH8.1)に再懸濁
する。約0.5mgのウイルスAd2 DNAを、1.0Lの細胞で産生されたウイルスから単
離する。
iii.E3/19K 遺伝子の単離
ウイルスAd2 DNAを、EcoRIを用いて消化し、そして1%アガロースゲルで電気
泳動により分離する。E3/19K遺伝子(Herisseら、Nucleic Acids Rsearch 8:2173
,1980,Cladarasら、Virology 140:28,1985)を含み、Ad2座標領域75.9〜83.4に位
置する、得られた2.7Kb Ad2 EcoRI Dフラグメントを、電気泳動により溶出させ
、フェノール抽出し、エタノール沈澱し、そしてTris-EDTA(pH8.1)中に溶解させ
る。
iv.KT-3B へのE3/19K遺伝子のクローニング
E3/19K遺伝子を、PUC1813のEcoRI部位にクローニングする。PUC1813を、本質
的にKayら(Nucleic Acids Research 15:2778,1987)およびGrayら(PNAS 80:5842,
1983)により記載されたように調製する。E3/19KをEcoRI消化により回収し、そし
て単離されたフラグメントをホスファターゼ処理したpSP73プラスミドのEcoRI部
位にクローニングする。この構築物をSP-E3/19Kを呼ぶ。SP-E3/19K cDNAの方向
を、適切な制限酵素消化およびDNA配列決定を用いて確認する。センス方向にお
いて、cDNAの5’末端はpSP73ポリリンカーのXhoI部位に隣接し、そして3’末
端はClaI部位に隣接する。センス方向またはアンチセンス方向のいずれかにおい
てE3/19K cDNAを含有するXhoI-ClaIフラグメントを、SP-E3/19K構築物から回収
し、そしてKT-3BレトロウイルスのXhoI-ClaI部位にクローニングする。この構築
物をKT-3B/E3/19Kと呼ぶ。
C.PCR 増幅されたE3/19K遺伝子のKT-3Bへのクローニング
i.E3/19K 遺伝子のPCR増幅
Ad2 DNA E3/19K遺伝子(アミノ末端シグナル配列と、その後に、E3 19Kタンパ
ク質自身を小胞体(ER)内に埋め込ませる管腔内(intraluminal)ドメインおよび
カルボキシ末端細胞質テールを含有する)は、ウイルスヌクレオチド28,812と29
,288との間に位置する。ウイルスゲノムDNAからのAd2 E3 19K遺伝子の単離は、
以下に示されるプライマー対を用いてPCR増幅により達成される:
Ad2ヌタレオチド配列28,812〜28,835に対する正方向プライマー
Ad2ヌクレオチド29,241〜29,213に対する逆方向プライマー
Ad2の相補的配列に加えて、両方のプライマーは、PCRアンプリコン産物の効率
的な酵素消化のための5ヌクレオチドの「緩衝配列」をその5’末端に含有する
。正方向プライマーにおけるこの配列の後にはXhoI認識部位が続き、そして逆方
向プライマーではClaI認識部位が続く。従って、5’から3’の方向で、E3/19K
遺伝子はXhoIおよびClaI認識部位が隣接している。Ad2 DNAからのE3/19K遺伝子
の増幅は、以下のPCRサイクルプロトコルを用いて達成される:
ii.PCR 増幅されたE3/19K遺伝子のKT-3Bへの連結
SP-E3/19K構築物由来のE3/19K遺伝子(約780bpの長さ)を取り出し、そして1
%アガロース/TBEゲル電気泳動により単離する。次いで、XhoI-ClaIのE3/19K
フラグメントをKT-3Bレトロウイルス骨格に連結する。この構築物をKT-3B/E3/19
Kと称する。KT-3B/E3/19K構築物を、E.coli、DH5α細菌株(Bethesda Research L
abs,Gaithersburg,MD)に形質転換することにより増幅する。詳細には、細菌を1
〜100ngの連結反応混合物DNAで形質転換する。形質転換された細菌をアンピシリ
ンを含むLBプレート上で平板培養する。プレートを37℃で一晩インキュベートし
、細菌コロニーを選択し、それらからDNAを調整する。このDNAをXhoIおよびClaI
で消化する。E3/19K遺伝子を含むプラスミドの予想されるエンドヌクレアーゼ制
限切断フラグメントのサイズは780bpおよび1,300bpである。
D.パッケージング細胞株DAの組換えレトロウイルスベクターKT-3B/E3/19Kによ る形質導入
i.プラスミドDNAトランスフェクション
293 2-3細胞(293細胞由来の細胞株、ATCC番号CRL 1573,(WO 92/05266))の5.
0×105個の細胞を約50%のコンフルエントで6cm組織培養ディッシュ上に播種す
る。翌日、トランスフェクションの4時間前に、培地を4mlの新鮮な培地に取り
替える。標準的なリン酸カルシウム-DNA共沈を10.0μgのKT-3B/E3/19Kプラスミ
ドおよび10.0μg MLP Gプラスミドを2M CaCl2溶液と混合することにより行い、
1×HEPES緩衝化生理食塩水溶液(pH6.9)を添加し、室温で15分間インキュベート
する。リン酸カルシウム-DNA共沈物を293 2-3細胞に移し、次いで、37℃、5%C
O2で一晩インキュベートする。翌朝、細胞を1×PBS(pH7.0)中で3回洗浄する。
新鮮な培地を細胞に加え、その後、37℃、10%CO2で一晩インキュベーションす
る。翌日、培地から細胞を回収し、0.45μフィルターを通す。この上清をパッケ
ージング細胞および腫瘍細胞株の形質導入に使用する。他のベクターのための一
過性のベクター上清を同様にして作成する。
ii.パッケージング細胞株の形質導入
パッケージング細胞株の形質導入は実施例2Bvに記載のように行った。
iii.複製可能レトロウイルスの検出
複製可能レトロウイルスの検出は実施例2Cに記載のように行った。
E.組換えレトロウイルスベクターKT-3B/E3/19Kによる細胞株の形質導入
以下の付着性のヒトおよびマウス細胞株を、5×105細胞/10cmディッシュで
、4μg/mlのポリブレンとともに播種した:HT 1080、Hela、およびBC10ME。翌
日、DA E3/19Kプール由来のフィルターを通した上清の1.0mlを各細胞培養プレー
トに添加する。翌日、800μg/mlのG418をすべての細胞培養の培地に添加する。
この培養物を選択が完成するまで維持し、そして十分な細胞数を遺伝子発現につ
いて試験するために生成させる。形質導入された細胞株を、それぞれHT 1080-E3
/19K、Hela-E3/19KおよびBC10ME-E3/19Kと称する。
EBV形質転換細胞株(BLCL)、および他の懸濁細胞株を、DA-E3/19Kのような照射
した産生細胞株で同時培養することにより形質導入する。詳細には、照射(10,00
0 rad)産生細胞株を、4μg/mlのポリブレンを含む増殖培地中で5.0×105個細
胞/6cmディッシュにプレートする。細胞を2〜24時間付着させた後、1.0×106
個の懸濁細胞を添加する。2〜3日後、懸濁細胞を取り除き、遠心分離によりペ
レット化し、1mg/mlのG418を含む増殖培地中に再懸濁し、そして丸底96ウェル
プレートの10ウェルにプレートする。この培養物を24ウェルプレートに、次いで
T-25フラスコに拡大する。
F.組換えレトロウイルスベクター構築物KT3B-E3/19KにおけるE3/19Kの発現
i.ウェスタンブロット分析
RIPA溶解物を、E3/19K発現の解析のために選択されたコンフルエントな細胞培
養物から作製する。詳細には、培地をまず細胞から吸い取る。細胞を含む培養プ
レートのサイズに依存し、100〜500μl容量の氷冷RIPA溶解緩衝液(10mM Tris,pH
7.4;1% Nonidet P40;0.1% SDS,150mM NaCl)を細胞に添加する。細胞をプレート
から取り除き、混合物を微量遠心チューブに移す。このチューブを5分間遠心分
離して細胞破片を沈殿させ、そして上清を別のチューブへ移す。この上清を10%
SDSポリアクリルアミドゲルで電気泳動する。そしてタンパク質のバンドをCA
PS緩衝液(10mM CAPS,pH11.0;10%メタノール)中のImmobilon膜に、2〜18時間
で、10〜60ボルトで移す。この膜を、CAPS緩衝液から5%Blotto(5%脱脂粉乳
;50mM Tris,pH7.4;150mM NaCl;0.02%アジ化ナトリウム,および0.05%Tween 20)
に移し、E3/19Kに対するマウスモノクローナル抗体でプローブする(Severinsson
ら、J.Cell.Biol.101:540-547,1985)。膜への抗体の結合を125I-Protein Aによ
り検出する。
G.動物モデルにおけるKT3B-GCおよびKT3B-E3/19K組換えレトロウイルスベクタ ー構築物の発現
i.マウスCTLアッセイ
KT3B-GCおよびKT3B-E3/19Kベクターを個々に注入するか、または一緒に混合し
、CTL応答を比較する。GCに対するこのE3/19K CTL応答は取るに足らないが、一
方GCとE3/19Kの混合物の応答はGCベクター単独の投与より小さい。
Balb/cマウスに、1.0×105 cfu〜5.0×107 cfuの、単一ベクターまたは組み合
わせベクターを注入する。7日後、脾臓を採取し、単一細胞懸濁液中に分散させ
、そして3.0×106脾臓細胞/mlを、6.0×104細胞/mlの照射されたBC-GCまたはB
C-GC-E3/19K細胞とともに、7日間、37℃で、T-25フラスコでインビトロで培養
する。BC-GC細胞は、KT3B-GCベクターで形質導入したBC10ME細胞である。BC-GC-
E3/19Kは、KT3B-GCベクターおよびKT3B-E3/19Kベクターで形質導入したBC10MEマ
ウス繊維芽細胞である。培養培地は、RPMI 1640;5% FBS;1mMピルベート;50μ
g/mlゲンタマイシンおよび10-5Mβ-2-メルカプトエタノールからなる。エフェク
ター細胞を7日後採取し、標準的な4〜6時間アッセイにおいて、96ウェルマイク
ロタイタープレート中で種々のエフェクター:標的細胞比を用いて試験する。こ
のアッセイには、Na2 51CrO4標識化した100μ Ciを、37℃で1時間、1ウェルあ
たり最終総容量を200μlとする1.0×104細胞/ウェルの標的細胞BC、BCenv(Warn
erら、AIDS Res.and Human Retroviruses 7:645,1991)、またはBCenvE3/19Kとと
もに使用する。インキュベーションの後、100μlの培養培地を取り出し、WALLAC
ガンマ分光計(Gaithersburg,MD)において分析する。自発的放出(SR)を標的+培
地から1分あたりのカウント(CPM)として決定し、そして最大放出(MR)を標的+
1M HClから決定する。標的細胞溶解の割合を[(エフェクター細胞+標的CPM)−(S
R)]/[(MR)-(SR)]×100として計算する。標的の自発的放出値は、典型的にはMRの
10%〜30%である。GCまたはGC+E3/19Kを発現する細胞は、このアッセイにおい
て刺激細胞および/または標的細胞として、GC特異的CTL誘導の減少、および陽
性コントロールであるGC発現株と比較してE3/19K発現細胞を用いる検出を実証す
るために用いられる。
H.Balb/C マウスによるL33GC細胞の腫瘍拒絶はクラスI分子表面発現がE3/19Kベ クター形質導入により減少するときに排除される
L33GC細胞は、遺伝子治療処置形質転換細胞に対するモデルとして使用されて
いる。遺伝子治療処置細胞は、これらをCTLによるクリアランスのための可能な
標的とする外来タンパク質を産生する。生L33腫瘍細胞を注射されたBalb/cマウ
スは、曝露後3週間以内にカリパス計測により同定し得る固形腫瘍を発達させる
ことが実証されている。しかし、生L33GC形質転換腫瘍細胞(KT3B-GCベクターで
形質転換し、そしてGCタンパク質について選択したL33細胞)を注射したBalb/c
マウスは、MHCクラスIと関連してGCタンパク質を認識し、そして腫瘍細胞を拒絶
し、15週間後まで見かけ上腫瘍を有さない。E3/19KベクターでのL33GC細胞の形
質転換は、MHCクラスI分子の細胞表面発現を減少させ、これらの細胞に免疫監視
を逃れさせ、そしてそれにより腫瘍を確立させることを許容する。L33GC-E3/19K
腫瘍の発達は、MHCクラスI分子の細胞表面発現がE3/19K遺伝子で細胞を同時形質
導入することにより減少されたことを示す。これは最良の免疫系クリアランス機
構を妨害する。
3つの腫瘍細胞株L33、L33GC、およびL33GC-E3/19Kは、10%FBSを含むDMEM中
で増殖する。この腫瘍細胞を冷(4℃)PBSで穏やかにリンスし、これらをプレ
ートから除去するためにVerseneで処理する。プレートから細胞を吸入した後、
単一細胞懸濁物を滅菌したプラスチックチューブに加える。細胞懸濁液を滅菌PB
S(4℃)で2回洗浄し、計測し、そしてPBS中に1.0×107細胞/mlになるように
再懸濁する。4〜6週齢のBalb/cマウスに、1.0×106細胞の生腫瘍細胞(0.1ml)
を皮下注射し、腫瘍形成および腫瘍クリアランスについて評価する。異なるマウ
スに異なる腫瘍細胞株を注射する。L33細胞を注射されたマウスは、腫瘍形成に
ついて陽性コントロール動物であり、一方L33GCを注射されたマウスは陰性コン
トロールであり、従ってenv特異的CTL応答のため腫瘍細胞を拒絶するはずである
。E3/19K-形質転換L33GC細胞を注射したマウスの群を、L33env細胞におけるE3/1
9K発現がこれらの腫瘍細胞に対するマウス免疫応答において有する効果を示すた
めにモニターする。
I.グルコセレブロシダーゼレトロウイルスベクターのエクソビボ投与
公知の技術によって行われる注射器吸引により、患者の骨髄から多能性造血幹
細胞であるCD34+を収集する。あるいは、CD34+細胞はまた、乳児の臍帯血から得
られ得る。一般に局部または全身麻酔下で大髄骨幹を穿刺することによってまた
は後腸骨稜から、20の骨髄吸引物が得られる。次いで、骨髄吸引物をプールし、
100U/mlのヘパリン硫酸塩と100μg/mlのデオキシリボヌクレアーゼIを含むH
EPES緩衝化ハンクス平衡塩溶液中に懸濁し、次にFicoll勾配分離に供する。次い
で、バフィーコート化骨髄細胞を収集し、CEPRATE LC(CD34)分離システム(Cellp
ro,Bothell,WA)に従って洗浄する。次いで、洗浄済みのバフィコート化細胞を
、順次抗CD34モノクローナル抗体で染色し、洗浄し、次いでCEPRATEシステムで
供給されるビオチン化二次抗体で染色する。次いで、この細胞混合物をCEPRATE
アビジンカラム上にロードする。ビオチン標識細胞はカラム上に吸着されるが、
一方標識されていない細胞は通過する。カラムをCEPRATEシステムの指針に従っ
てリンスし、そしてゲルベッドを手動で圧搾することによるカラムの撹拌により
CD34+細胞を溶出させる。CD34+細胞がひとたび精製されると、幹細胞を計数し、
そして20%のプールされ熱不活性化されていないヒトAB血清(hAB)を含むIscov
eの改変Dulbecco培地(IMDM ; Irvine Scientific,Santa Ana,CA)中で1.0×105
細胞/mlの濃度でプレートする。
精製後、CD34+細胞を形質転換するいくつかの方法が実施され得る。1つのア
プローチは、ベクター産生細胞に由来するベクター含有上清培養物での精製幹細
胞集団の形質導入を含む。第2のアプローチは、非接着CD34+細胞の精製された
集団との、ベクター産生細胞の照射済み単層の同時培養を含む。第3のそして好
ましいアプローチは、精製CD34+細胞との同時培養を含むが、この精製CD34+細胞
はさまざまなサイトカインで予め刺激され、照射済みのベクター産生細胞との同
時培養前に48時間培養される。形質導入の前の予備刺激は、効果的な遺伝子移行
を増加させる(Noltaら、Exp.Hematol.20 : 1065,1992)。形質導入レベルの上
昇は、効率の良いレトロウイルス形質導入に必要な幹細胞の増殖の増大に起因す
る。増殖をひき起こすこれらの培養物の刺激はまた、患者への再注入のために増
大した細胞集団を提供する。
CD34+細胞の予備刺激は、IL−1,IL−3,IL−6およびマスト細胞増殖因子(
MGF)を含むサイトカインおよび成長因子の組み合わせとともに細胞をインキュベ
ートすることによって行われる。予備刺激は、48時間、骨髄刺激培地を含むT25
組織培養フラスコ内で1.0×105〜2.0×105のCD34+細胞/培地1mlを培養するこ
とにより行われる。骨髄刺激培地は、30%の熱不活性化されていないhAB血清、
2mMのL−グルタミン、0.1mMの2−メルカプトエタノール、1μMのヒドロコ
ルチゾン、および1%の脱イオンウシ血清アルブミンを含むIMDMから成る。骨髄
培養において用いられる全ての試薬は、正常骨髄由来の顆粒球赤血球マクロファ
ージ巨核球コロニー形成単位の最大数を支持するその能力についてスクリーニン
グされる。予備刺激のための精製された組換えヒトサイトカインおよび成長因子
(Immunex Corp.,Seattle,WA)は、以下の濃度で使用されるべきである:E.co
li由来のIL−1α(100U/ml)、酵母由来のIL−3(5ng/ml)、IL−6(50U
/ml)およびMGF(50ng/ml)(Andersonら、Cell Growth Differ.2 : 373,1991
)。
CD34+細胞の予備刺激の後、これらの細胞を、刺激培地の連続的存在下で、組
み合わせられた照射済みのDAに基づくプロデューサー細胞株における同時培養に
より形質導入させる。照射済みのDAに基づくプロデューサー細胞株は以下を発現
する;(1)KT3B-GC治療用ベクター;(2)KT3B-E3/19Kベクター。DAベクター
産生細胞株をまずトリプシン処理し、10,000ラドで照射し、そして1.0×105〜2.
0×105細胞/骨髄刺激培地1mlで再プレートする。翌日、1.0×105〜2.0×105の
予備刺激CD34+細胞/mlをDAベクター産生細胞株単層上に添加し、次いでポリブ
レンを最終濃度4μg/mlまで添加する。細胞の同時培養を、48時間行なう。同時
培養の後、培地で激しく洗い流すことによって接着性DAベクター産生細胞単層か
らCD34+細胞を収集し、いずれの移動したベクター産生細胞をも接着させるよう
に2時間プレートする。次いでこの細胞を収集し、さらに72時間拡大させる。こ
の細胞を収集し、1本のバイアルあたり1.0×107細胞のアリコートで凍結保護物
質を用いて液体窒素中で凍結させる。形質転換CD34+細胞を偶発物質の存在につ
いてひとたびテストしたならば、凍結した形質転換CD34+細胞を解凍し、1.0×105
細胞/mlの濃度でプレートし、そして骨髄刺激培地中でさらに48時間培養し得
る。次いで、形質転換細胞を収集し、2回洗浄し、そして通常生理食塩水中に再
懸濁する。注入によって患者に注入し戻すのに用いられる形質転換細胞の数は、
注射1回あたり患者一人あたり最低1.0×107〜1.0×108細胞で計画される。注入
部位は、患者の骨髄の中に直接であるかまたは末梢血流内であり得る。自己形質
導入骨髄細胞を受けた患者は、既存の骨髄集団を涸渇させるよう、部分的にまた
は全身的のいずれかで照射を受け得る。処置の評価は、注入後、さまざまな時点
で、分化した細胞型において、および発現の長さについて、グルコセレブロシダ
ーゼ活性をモニターすることにより行われる。発現が減少しているかまたは存在
していない時点で、形質転換された自己細胞を患者に再注射し得る。
J.同種異系骨髄移植
i.C3H(H-2k) およびBalb/C(H-2d)由来の骨髄の摘出
マウスの大腿骨を切開し、曝露する。この骨髄プラグを23番ゲージ針およびシ
リンジを用いて摘出する。骨髄を回収し、ハンクス平衡化塩溶液中に再懸濁する
(Mauchら、PNAS 77:2927,1980)。
ii.KT3B-E3/19K およびKT3B-GCレトロウイルスベクターでの骨髄細胞の形質導入
骨髄細胞を遠心分離により調製し、KT3B-E3/19KおよびKT3B-GCベクターを含む
1.0ml DMEMおよび10%FBS中に再懸濁する。骨髄細胞ならびにKT3B-E3/19Kおよび
KT3B-GCレトロウイルスベクターを、33℃で4時間、25%ドナーウマ血清および0
.1mMヒドロコルチゾンコハク酸ナトリウムを補充した9mlのFischer's培地中で
イ
ンキュベートする。24時間後、骨髄細胞を洗浄し、そして注射のために、2.0×1
06細胞/mlでHBSS中に再懸濁する。
iii.骨髄細胞のマウスへの注射
C57BL/6(B6,H-2b)マウスを、注射直前に700ラドのガンマ線照射で照射する。B
6マウスの2つのグループに、0.5mlのC3H骨髄細胞を静脈注射する。5日後、マ
ウスを再び700ラドで照射し、0.5mlのベクター形質導入C3H骨髄細胞または未処
理C3H骨髄細胞をI.V.注射する。致死量を照射された生来のB6マウスに、陽性コ
ントロールのために、0.5ml(1.0×106)のC3H骨髄細胞をI.V.注射し、および陰性
コントロールのために、0.5ml(1.0×106)のBalb/c骨髄細胞をI.V.注射する。こ
のような実験から得られる結果を以下に示す。
iv.移植拒絶の評価
骨髄移植拒絶を2つの方法のどちらかにより、注射後5日間評価する:
a. マウスを屠殺した後脾臓を取り出し、そして10%ホルマリン中に置く。脾
臓コロニーを計測し、記録する。
b. マウスにFUdR(Sigma,St.Louis,MO)を注射し、そして30分後に125I-IUdR(A
mersham,Arlington Height,IL)を注射する。18時間後、脾臓コロニーにおいて12 5
I-IUdRの取り込みを決定する。同系間増殖コントロールにおいて決定された取
り込まれた放射能値を100Uに任意に設定し、そして実験群のすべての値をこのコ
ントロールに対して規格化する。10Uの動物は目に見える脾臓コロニーを示さな
いが、一方50〜100Uの動物は、200より多い脾臓コロニーを有する。10U未満を示
す
動物は、強い拒絶を示していると考えられる。10〜30Uの動物は、弱い拒絶を示
すが、一方30Uより大きい動物は有意な拒絶を示さない。
K.骨髄細胞の骨への直接注射
あるいは、ベクターは、Hamiltonシリンジのようなデバイスを用いて、マウス
の骨髄へ直接送達され得る。用量は実施例2Giiで用いられるのと同等であり得る
。ヒトにおいて、骨髄は、First-MedTM骨自動注入器(osseous autoinjector)(Li
fe Quest Medical,San Antonio,TX)のような市販のデバイスを用いて直接注射さ
れ得る。用量は、適切な賦形剤(例えばラクトース(40mg/ml)、ヒト血清アルブミ
ン(1mg/ml)およびTris(1mM)pH7.2〜7.5)中の105〜109cfu/mlの0.1〜5.0mlの物
質であり得る。
L.GC 遺伝子発現の評価
ヒトGCに対するマウスの応答は、上述のCTLアッセイにより評価され得る。ヒ
トGC発現自体は、Krallら、(Blood 83:2737,1994)に記載のように凍結切片およ
びGCに対するヒトモノクローナル抗体を用いて、免疫組織化学法によりモニター
され得る。
実施例9
アデノウイルスベクター発現HBVコア抗原および
レトロウイルスベクター発現HIVの投与
A.組換えアデノウイルスベクターの生成
Cla Iで線状化した約1.0μgのpAdM1-HBeを、1.0μgのCla Iで切断されたAd5de
lta el delta E3ウイルスDNA(Gluzmanら、Eucaryotic Viral Vectors,187〜192
頁、Cold Spring Harbor,1982)と混合する。このDNA混合物を、直径60mmディッ
シュで5〜6×105の293細胞に、0.8mlのOpti-MEMTMI還元血清培地(BRL,Gaithe
rsburg,MD)中の7μlのリポフェクタミン(BRL,Gaithersburg,MD)を用いてトラン
スフェクトする。20%FBSを含む1ミリリットルのDMEM培地を5時間後に添加し
、そして翌日、10%FBSを含むDMEM培地を補給する。細胞変性効果(CPE)の出現後
、約8〜10日、培養物を採取し、そしてウイルス溶解物を2回のプラーク精製に
供する。個々のウイルスプラークを選択し、そして1ウェルあたり1×105細胞
の細胞密度で、6ウェルプレート内で293細胞感染により増幅する。組換え体を
、Hirt手順(Hirt,B.J.Mol Biol.,26:365-69,1967)により感染した細胞から抽出
したウイルスDNAのサザン分析により同定する。陽性の同定後、組換えウイルス
をさらなる2回のプラーク精製に供する。力価を、Grahamら(J.Gen.Virol.36:59
-72,1977)に記載のように、プラークアッセイにより決定する。ウイルスストッ
クを、20pfu/細胞の多重度で、直径60mmディッシュにおいて2×106のコンフル
エント293細胞に感染させることにより調製する。すべてのウイルス調製物をCsC
l密度遠心分離(GrahamおよびVan der Elb,Virol,52:456-457,1973)により精製し
、透析し、そしてすぐに使用するために10mM Tris-HCl(pH7.4),1mM MgCl2中で4
℃で保存するか、または10%グリセロールを添加して−70℃で保存する。
B.組換えアデノウイルスベクターでの感染
35mmディッシュにおいて増殖しているL-M(TK-)細胞のコンフルエント以下(sub
confluent)の単層(約106細胞)を100pfu/細胞の多重度で、上記実施例9A由来
の組換えHBVコアアデノウイルスベクターで感染させる。37℃での吸着の1時間
後、ウイルス接種物を取り除き、そして2%FBSを補充したDMEMを添加する。感
染の30〜40時間後、目立ったCPEが観察されたとき、細胞抽出物を採取し、そし
て発現についてアッセイする。
C.マウス、ヒト、および非ヒト霊長類への投与
i.直接のベクター投与およびマウスCTLアッセイ
マウスの系はまた、HBVコア抗原またはHIV抗原をコードするベクターを直接投
与することで、体液性免疫応答および細胞媒介性免疫応答の誘導を評価するため
に用いられ得る。簡潔には、6〜8週齢の雌Balb/C、C57B16、またはC3Hマウス
に、0.1mlの未精製液体または再構成された104〜1011pfuの凍結乾燥HBVコアアデ
ノウイルスベクターおよび/または105〜109cfuのHIV抗原発現レトロウイルスベ
クター(実施例3)を、I.M.、I.D.、またはS.C.で注射する。これらベクターは
個々に注射するか、または混合して一緒に投与する。2回の注射を1週間おきに
行う。2回目の注射の7日後、動物を屠殺する。次いで、クロム放出CTLアッセ
イを実施例2Hiに記載のように行う。
ii.免疫応答の測定
マウス、ヒト、非ヒト霊長類における体液性応答および細胞性応答を実施例21
に記載のように測定する。
iii.ヒトおよび非ヒト霊長類投与プロトコル
ヒトおよび非ヒト霊長類のためのベクター構築物投与プロトコルを本質的に実
施例2Gに記載のように行う。
iv.ヒトおよびチンパンジー投与プロトコル
上記のマウスの系で生成されたデータを、HBVおよび/またはHIV-1に慢性的に
感染したヒトまたはチンパンジーにおけるベクターの投与のプロトコルを決定す
るために用いる。マウスにおけるHBV特異的CTLの誘導に基づいて、ヒトまたはチ
ンパンジーの試みにおける被験体は、2つの系列的に上昇させた投与量群におい
て、28日間隔で、コア抗原をコードするベクターの3つの用量を受容する。コン
トロール被験体は、HBVコアアデノウイルスベクター処方培地で構成される偽薬
を受容する。組み合わせられた投与量は、105、106、107、108、109、1010、101 1
cfuのHBVコアアデノウイルスベクターのいずれかと106、107、108、または109c
fuのHIVベクターとであり、各注射日にそれぞれ4回、0.5mlのI.M.注射を行う。
注射は2〜4週間おきに投与する。血清ALTレベル、HBVコア抗原の存在、HBVコ
ア抗原に対する抗体の存在を測定するために、ならびに処置の安全性および許容
性を評価するために、血液サンプルを、4、12、24、36、52、70、および84日目
、ならびに6、12、18、24、30、および36月目に採取する。HBVコアに対するCTL
の誘導の効力を実施例12Aiiiに記載のように決定し得る。
実施例10
組換えレトロウイルスの保存
A.組換えレトロウイルスのラクトース処方
粗製の組換えレトロウイルスを、バイオリアクターマトリックスのビーズに結
合された、組換えレトロウイルスで形質導入されたDA細胞を含有するCelliganバ
イオリアクター(New Brunswick、New Brunswick、NJ)から得る。細胞は、連続
的流れプロセス(continuous flow process)において細胞を横切る増殖培地の中
に、組換えレトロウイルスを放出する。バイオリアクターを出る培地を集め、そ
して最初に0.8ミクロンフィルター、次いで0.65ミクロンフィルターに通過させ
て、粗製の組換えレトロウイルスを澄明化する。交差流濃縮システム(Filtron
、Boston,MA)を利用して、濾液を濃縮する。濃縮物の1mlあたり約50単位のDNa
se(Intergen,New York,NY)を添加して、外因性DNAを消化する。消化物を、同
一の交差流システムを用いて、150mMのNaCl,25mMのトロメタミン、pH7.2に対し
てダイアフィルトレートする。50mMのNaCl,25mMのトロメタミン、pH7.4中で平
衡化した、Sephadex S−500ゲルカラム(Pharmacia、Piscataway,NJ)上にダイ
アフィルトレート物をロードする。精製組換えレトロウイルスを、50mMのNaCl,
25mMのトロメタミン、pH7.4中でSephadex S−500ゲルカラムから溶出する。
ラクトースを含有する処方物緩衝液を、2×濃縮ストック溶液として調製した
。この処方物緩衝液は、25mMのトロメタミン、70mMのNaCl,2mg/mlのアルギニ
ン、10mg/mlのHSA、および100mg/mlのラクトースを100mlの最終容積で、pH7.4に
おいて含有する。
1部のS−500精製組換えレトロウイルスに1部の2×ラクトース処方物緩衝
液を添加することによって、精製組換えレトロウイルスを処方する。処方した組
換えレトロウイルスを、−70℃〜−80℃において保存するか、または乾燥するこ
とができる。
Supermodulyo 12K凍結乾燥器(Edwards High Vacuum、Tonawanda,NY)に取り
付けられたEdwards Refrigerated Chamber(3 Shelf RC3Sユニット)中で、処方し
たレトロウイルスを凍結乾燥する。凍結乾燥サイクルが完結したとき、わずかな
窒素ガスの放出後、真空下でバイアルに栓をする。取り出す際に、バイアルをア
ルミニウムのシールでクリンプする。
所定のラクトース研究において、処方された液体産物を−80℃および−20℃の
循環フリーザーの両方で保存した。図12において、これらのサンプルのウイルス
伝染力を、凍結乾燥サンプルのウイルス伝染力と比較した。凍結乾燥サンプルを
、−20℃、冷蔵温度、および室温で保存した。再構成の際のサンプル活性を、力
価アッセイにより決定する。
凍結乾燥された組換えレトロウイルスを1.0mlの水で再構成する。再構成した
組換えレトロウイルスの伝染力を力価活性アッセイにより決定する。アッセイを
、HT 1080繊維芽細胞または3T3マウス繊維芽細胞株(ATCC番号CCL 163)において
行った。詳細には、1×105個の細胞を6cmプレート上にプレーティングし、そ
して37℃、10%CO2にて一晩インキュベートする。再構成された組換えレトロウ
イルスの連続希釈物10マイクロリットルを、4μg/mlのポリブレン(Sigma,St.Lo
uis,MO)の存在下で細胞に添加し、そして37℃、10%CO2にて一晩インキュベート
する。インキュベーションに続いて、細胞をG418を含む培地中でネオマイシン耐
性について選択し、そして37℃、10%CO2にて5日間インキュベートする。最初
の選択に続いて、これらの細胞をG418を含む新鮮な培地で再び栄養補給し、そし
て5〜6日間インキュベートする。最後の選択の後、コロニー検出のために、細
胞をクーマシーブルーで染色する。サンプルの力価を、コロニーの数、使用した
希釈物、および容量から決定する。
図12は、−20℃から冷蔵温度での凍結乾燥形態における保存が、−80℃から−
20℃において溶液中で保存された組換えレトロウイルスと類似のウイルス活性を
保持し、保存の間、よりストリンジェントでない温度コントロールを許容するこ
とを示す。
B.組換えレトロウイルスのマンニトール処方
本実施例で利用した組換えレトロウイルスを、実施例10Aに記載のように精製
した。
マンニトールを含有する処方物緩衝液を、2×濃縮ストック溶液として調製し
た。この処方物緩衝液は、25mMのトロメタミン、35mMのNaCl,2mg/mlのアルギ
ニン、10mg/mlのHSA、および80mg/mlのマンニトールを、100mlの最終容積で、pH
7.4において含有する。
1部のS−500精製組換えレトロウイルスに、1部のマンニトール処方物緩衝
液を添加することによって、精製組換えレトロウイルスを処方する。処方した組
換えレトロウイルスを、この段階で、−70℃〜−80℃において保存するか、また
は乾燥することができる。
Supermodulyo 12K凍結乾燥器に取り付けられたEdwards Refrigerated Chambe
r(3 Shelf RC3Sユニット)中で、処方したレトロウイルスを乾燥する。凍結乾燥
サイクルが完結したとき、窒素ガスの700mbarへの放出後、真空下でバイアルに
栓をする。取り出す際に、バイアルをアルミニウムのシールでクリンプする。
所定のマンニトールの研究において、処方された液体産物を−80℃および−20
℃の循環フリーザーの両方で保存した。図13において、これらのサンプルのウイ
ルス伝染力を凍結乾燥サンプルのウイルス伝染力と比較した。凍結乾燥サンプル
を、−20℃、冷蔵温度、および室温で保存した。再構成の際のサンプルの活性を
、実施例10Aに記載の力価アッセイを用いて決定する。
図13は、−20℃から冷蔵温度での凍結乾燥形態における保存が、−80℃または
−20℃において溶液中で保存された組換えレトロウイルスに匹敵して、顕著なウ
イルス活性を保持し、保存の間、よりストリンジェントでない温度コントロール
を許容することを示す。
C.組換えレトロウイルスのトレハロース処方
この実施例において利用した組換えレトロウイルスを、実施例10Aに記載のよ
うに精製した。
トレハロースを含有する処方物緩衝液を、2×濃縮ストック溶液として調製し
た。この処方物緩衝液は、25mMのトロメタミン、70mMのNaCl,2.0mg/mlのアルギ
ニン、10.0mg/mlのHSA、および100mg/mlのトレハロースを、100mlの最終容積で
、pH7.2において含有する。
1部のS−500精製組換えレトロウイルスに1部のトレハロース処方物緩衝液
を添加することによって、精製組換えレトロウイルスを処方する。処方した組換
えレトロウイルスを、この段階で、−70℃〜−80℃において保存するか、または
乾燥することができる。
Supermodulyo 12K凍結乾燥器に取り付けられたEdwards Refrigerated Chambe
r(3 Shelf RC3Sユニット)中で、処方したレトロウイルスを乾燥する。凍結乾燥
サイクルが完結したとき、窒素ガスの700mbarへの放出後、真空下でバイアルに
栓をする。取り出す際に、バイアルをアルミニウムのシールでクリンプする。
所定のトレハロースの研究において、処方された液体産物を−80℃および-20
℃の循環フリーザーの両方で保存した。図14において、これらのサンプルのウイ
ルス伝染力を、凍結乾燥サンプルのウイルス伝染力と比較した。凍結乾燥サンプ
ルを、−20℃、冷蔵温度、および室温で保存した。再構成の際のサンプル活性を
、実施例10Aに記載の力価アッセイを用いて決定する。
図14は、−20℃の冷蔵温度での凍結乾燥形態における保存が、−80℃から−20
℃において溶液中で保存された組換えレトロウイルスと比較して類似のウイルス
活性を保持し、保存の間、よりストリンジェントでない温度コントロールを許容
することを示す。
−80℃で保存された溶液処方された組換えレトロウイルスサンプルのウイルス
伝染力を、−20℃で保存された凍結乾燥処方された組換えレトロウイルスのウイ
ルス伝染性と比較した。最初に、大量の組換えレトロウイルスを得、以下に示す
ような4つの異なる方法で処方した。次いで、処方された組換えレトロウイルス
を、大量に1.5ヶ月間凍結し、その後急速に解凍し、そして凍結乾燥する。陽性
コントロールを−80℃で保存し、凍結乾燥後に−20℃で保存した凍結乾燥サンプ
ルと比較する。処方を以下に列挙する:
図15のグラフにおいて、4つのグラフ(A,B,C,D)それぞれにおけるY軸は、標
準化した力価を表す。凍結乾燥後の開始時間点(t=0)において力価の値を、−
80℃の液体サンプルおよび−20℃の凍結乾燥サンプルの両方について確立した。
安定性の研究の各時間点において、得られた力価を、ゼロ時間点の力価の値で割
り、そしてオリジナルのパーセントをグラフ上に記入した。
このデータは、凍結乾燥後の活性が、液体サンプル(−80℃で保存)と匹敵し
て凍結乾燥サンプル(−20℃で保存)において維持されていることを実証する。
この処方された凍結乾燥組換えレトロウイルスは、−20℃フリーザー(霜のない
循環フリーザー)で保存された。−80℃で保存された処方された液体組換えレト
ロウイルスと匹敵して、凍結乾燥形態は、保存条件のよりストリンジェントでな
いコントロールを許容する。
前述のことから、本発明の特定の実施態様を例示の目的のために本明細書中に
記載したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の改変がなされ
得ることが認識される。従って、本発明は添付の請求の範囲によることを除き限
定されない。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),AM,AT,AU,BB,B
G,BR,BY,CA,CH,CN,CZ,DE,DK
,EE,ES,FI,GB,GE,HU,IS,JP,
KE,KR,KZ,LK,LR,LT,LU,LV,M
D,MG,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT
,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,
TM,TT,UA,UG,UZ,VN