JPH11504802A - 組換えアルファウイルスベクター - Google Patents

組換えアルファウイルスベクター

Info

Publication number
JPH11504802A
JPH11504802A JP8519023A JP51902395A JPH11504802A JP H11504802 A JPH11504802 A JP H11504802A JP 8519023 A JP8519023 A JP 8519023A JP 51902395 A JP51902395 A JP 51902395A JP H11504802 A JPH11504802 A JP H11504802A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
alphavirus
vector
sequence
virus
cells
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP8519023A
Other languages
English (en)
Inventor
ダブリュー.,ジュニア デュベンスキー,トーマス
エム. ポロ,ジョン
イー. イバネス,カルロス
エム.ダブリュー. チャン,スティーブン
ジェイ. ジョリー,ダグラス
エイ. ドライバー,デイビッド
エイ. ベリ,バーバラ
Original Assignee
カイロン コーポレイション
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by カイロン コーポレイション filed Critical カイロン コーポレイション
Priority claimed from PCT/US1995/015490 external-priority patent/WO1996017072A2/en
Publication of JPH11504802A publication Critical patent/JPH11504802A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 本発明は、組換えアルファウイルスベクターを利用するための組成物および方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】 組換えアルファウイルスベクター技術分野 本発明は、一般的にはベクターとしての組換えウイルスの使用、より詳しくは 、標的細胞中で異種配列(heterologous sequence)を発現し得る組換えアルファ ウイルスに関する。発明の背景 アルファウイルスは、トガウイルス科の一群の血清学的に関連した、節足動物 に運搬されるウイルスよりなる。簡単に説明すると、アルファウイルスは全世界 に分布しており、そして自然界では蚊から脊椎動物へのサイクルを介して生き残 る。鳥、齧歯類、馬、霊長類およびヒトは、アルファウイルス脊椎動物病原性物 質保有者(reservoir)/宿主として指定されているものの仲間である。 赤血球凝集阻害(HI)アッセイを用いて、アルファウイルス属内で、26の公知 のウイルスおよびウイルスサブタイプが分類されている。簡単に説明すると、HI 試験は26のアルファウイルスを3つの大きな複合種(complex)に分ける:ベネズ エラ脳炎(Venezuelan encephalitis)(VE)複合種、セムリキ森林(Semliki For est)(SF)複合種、そして西部脳炎(western encephalitis)(WE)複合種。さら に、HI血清学的アッセイに基づき、4つのさらなるウイルス、東部脳炎(eastern encephalitis)(EE)、バーマー森林(Barmah Forest)、ミデルバーグ(Middelb urg)、およびヌヅム(Ndumu)が、個々に分類されている。 アルファウイルス属のメンバーはまた、ヒトにおける相対的な臨床的特徴に基 づき分類される:主に脳炎に関連するアルファウイルス、そして主に発熱、発疹 そして多発性関節炎に関連するアルファウイルス。前者の群に含まれるのは、VE およびWE複合種、ならびにEEである。一般的にこの群による感染は、永続的な後 遺症(行動変化および学習障害を含む)、または死に至り得る。後者の群はSF複 合種であり、個々のアルファウイルスであるチクングニヤ(Chikungunya)、オニ ョン・ニョン(O'nyong-nyong)、シンドビス、ロス川、およびマヤロ(Mayaro) よりなる。この群に関しては、重大な流行が報告されているが、感染は一般に決 まった時期に決まった経過をとり、永続的な後遺症はない。 シンドビスウイルスは、トガウイルス科のアルファウイルス属の原型のメンバ ーである。シンドビスウイルス感染の臨床徴候は通常は明確ではないが、発熱、 関節炎そして発疹を含む。シンドビスウイルスは、ヨーロッパ、アフリカ、アジ アそしてオーストラリアに分布しており、流行病学的データの最も多くは南アフ リカから得られ、ここでは人口の20%は血清反応陽性(seropositive)である。( 総説については、PetersおよびDalrymple,Fields Virology(第2版)、Fieldsら 編、B.N.Raven Press、New York、NY、第26章、713-762頁を参照のこと)。伝 染性シンドビスウイルスは、ウガンダでの発生中、および中央アフリカの1つの 症例においてのみ、ヒトの血清から単離されている。 アルファウイルス属の形態と形態発生は、一般に非常に均一である。特に、エ ンベロープのある60〜65nmの粒子は、ほとんどの脊椎動物細胞に感染し、ウイル ス産生性感染は細胞変性作用がある。一方、無脊椎動物細胞(例えば、蚊由来の 細胞)の感染では、明白な細胞病理を生じない。典型的には、アルファウイルス はBHK-21細胞またはvero細胞中で増殖し、増殖は急速であり、感染後24時間以内 に最大の産生量に達する。フィールド株は、通常発生初期の鳥類の胚(例えばヒ ヨコ)線維芽細胞の培養物において単離される。 アルファウイルスのゲノムRNA(49S RNA)は、分割されてはおらず、正の極性 を有し、長さは約11〜12kbであり、そして5’キャップおよび3’ポリアデニル 化テールを有する。感染性のエンベロープで覆われたウイルスは、細胞質中での ウイルスゲノムRNA 上のウイルスのヌクレオカプシドタンパク質のアセンブリ、 およびウイルスにコードされる糖タンパク質が埋め込まれた細胞膜から出芽する ことにより産生される。細胞内へのウイルスの侵入は、クラスリン(clatherin )で被覆されたくぼみを介したエンドサイトーシス、ウイルス膜とエンドソーム との融合、ヌクレオカプシドの放出、そしてウイルスゲノムの脱外殻により起き る。ウイルスの複製の間、ゲノム49S RNA は、相補的な負の鎖の合成の鋳型とし て働く。この負の鎖は次に、ゲノムRNA の鋳型、そして内部的にイニシエート (initiate)される26S サブゲノムRNA の鋳型として働く。非構造タンパク質は ゲノムRNA から翻訳される。アルファウイルス構造タンパク質は、サブゲノム26 S RNA から翻訳される。すべてのウイルス遺伝子は、ポリタンパク質として発現 され、そして翻訳後のタンパク質加水分解切断により個々のタンパク質にプロセ シングされる。 個体を処置するために組換えアルファウイルスベクターを使用するには、組換 えウイルスの感染性と生存性(viability)が保持されるように、それらを所望の 温度で長期間運搬し、そして保存し得る必要がある。組換えウイルスの現在の保 存方法は、一般に液体としての、かつ低温での保存を含む。このような方法は、 一般に十分な冷蔵能力を有さない第3世界の国々では問題を提起する。例えば、 アフリカでは毎年、何百万人もの子供が麻疹のような伝染性疾患により死んでい る。これらの国の大部分に、これらの疾患の防止に必要なワクチンを分配するこ とができない。なぜなら、冷房手段が容易に利用できないからである。 液体としての、かつ低温での保存に加えて、現在のウイルス処方物はしばしば 、患者への注射には望ましくない培地成分を含有する。従って、当該分野には、 精製された組換えウイルスベクター(特に、アルファウイルスベクター)を凍結 乾燥の形態で高温で保存する方法、およびこの形態が患者への注射に適した形態 であることに対する必要性がある。 本発明は、種々の適用(例えば、遺伝子治療)での使用に適し、かつ他の関連 する利点を提供する組換えアルファウイルスベクターを開示する。発明の要旨 簡単に述べると、本発明はアルファウイルスベクターおよびアルファウイルス 粒子、ならびにこれらの作成方法および利用方法を提供する。本発明の1つの局 面において、インビトロでcDNAからウイルスRNA の合成を開始させ得る5’プロ モーター、アルファウイルスの転写を開始させ得る5’配列、アルファウイルス の非構造タンパク質をコードするヌクレオチド配列、サブゲノムフラグメントの ウイルス転写を防止するように不活性化されたウイルス接合領域、およびアルフ ァウイルスRNA ポリメラーゼ認識配列を含む、アルファウイルスベクター構築物 が提供される。本発明の別の局面において、このウイルス接合領域は、サブゲノ ムフラグメントのウイルス転写が減少されるように改変されている。 本発明のさらに別の局面において、インビトロでcDNAからウイルスRNA の合成 を開始させ得る5’プロモーター、アルファウイルスの転写を開始させ得るcDNA 5’配列からインビトロでウイルスRNA の合成を開始させ得る5’プロモーター 、アルファウイルスの非構造タンパク質をコードするヌクレオチド配列、サブゲ ノムフラグメントのウイルス転写を防止するように不活性化された第1のウイル ス接合領域、サブゲノムフラグメントのウイルス転写が減少されるように改変さ れた第2のウイルス接合領域、およびアルファウイルスRNA ポリメラーゼ認識配 列を含む、アルファウイルスベクター構築物が提供される。 本発明のなお別の局面において、インビトロでcDNAからウイルスRNA の合成を 開始させ得る5’プロモーター、その後に続くアルファウイルスの転写を開始さ せ得る5’配列、アルファウイルスの非構造タンパク質をコードするヌクレオチ ド配列、サブゲノムフラグメントのウイルス転写を防止するように不活性化され たウイルス接合領域、アルファウイルスRNA ポリメラーゼ認識配列、および転写 終結を制御する3’配列を含む、アルファウイルスcDNAベクター構築物が提供さ れる。 本発明の別の局面において、cDNAからウイルスRNA の合成を開始させ得るプロ モーター、その後に続くアルファウイルスの転写を開始させ得る5’配列、アル ファウイルスの非構造タンパク質をコードするヌクレオチド配列、サブゲノムフ ラグメントのウイルス転写が減少されるように改変されたウイルス接合領域、ア ルファウイルスRNA ポリメラーゼ認識配列、および転写終結を制御する3’配列 を含む、アルファウイルスcDNAベクター構築物が提供される。 本発明の別の局面において、cDNAからウイルスRNA の合成を開始させ得る5’ プロモーター、その後に続くアルファウイルスの転写を開始させ得る5’配列、 アルファウイルスの非構造タンパク質をコードするヌクレオチド配列、サブゲノ ムフラグメントのウイルス転写を防止するように不活性化された第1のウイルス 接合領域、その後に続くサブゲノムフラグメントのウイルス転写が減少されるよ うに改変された第2のウイルス接合領域、アルファウイルスRNA ポリメラーゼ認 識配列、および転写終結を制御する3’配列を含む、アルファウイルスcDNAベク ター構築物が提供される。 本発明の別の局面において、cDNAからRNAの5’合成を開始させ得るプロモー ター、および転写終結を制御する3’配列を含む、真核細胞重層ベクターイニシ エーション系が提供され、この構築物は、細胞内で自律的複製が可能であり、異 種核酸配列を発現し得る。関連した局面に置いて、cDNAからRNAの5’合成を開 始させ得るDNAプロモーター、および転写終結を制御する3’DNA配列を含む、真 核細胞重層ベクターイニシエーション系が提供され、この構築物は、細胞内で自 律的複製が可能であり、異種核酸配列を発現し得る。1つの実施態様において、 本発明の真核細胞重層ベクターイニシエーション系における構築物は、アルファ ウイルスベクター構築物である。他の実施態様において、この構築物は、ポリオ ウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、風疹、黄熱病、HCV、TGEV 、IBV、MHV、BCV、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻 疹ウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルス、RSV、MoMLV、HIV、HTLV、 デルタ型肝炎ウイルス、およびアストロウイルス(Astrovirus)からなる群より選 択されるウイルスに由来する。さらに他の実施態様において、cDNAからRNAの5' 合成を開始させ得るプロモーターは、MoMLVプロモーター、メタロチオネインプ ロモーター、グルココルチコイドプロモーター、SV40プロモーター、およびCMV プロモーターからなる群より選択される。さらなる実施態様において、真核細胞 重層ベクターイニシエーション系は、さらにポリアデニル化配列を含む。 本発明のさらなる実施態様において、上記の局面のいずれかにおいて、このベ クター(例えば、アルファウイルスベクター構築物、アルファウイルスcDNAベク ター構築物、または真核細胞重層ベクターイニシエーション系)は、アウラ(Aur a)、フォートモーガン(Fort Morgan)、ベネズエラウマ脳脊髄炎、ロス川、セム リキ森林、シンドビス、およびマヤロからなる群より選択されるアルファウイル ス由来であり得る。 他の実施態様において、上記のベクターは異種配列を含有する。典型的にはそ のようなベクターは、100塩基より大きい異種ヌクレオチド配列を含有し、一般 的にはこの異種ヌクレオチド配列は3kbより大きく、そして時に5kbより大きく 、 または8kbより大きい。種々の実施態様において、異種配列は、IL−1,IL−2 ,IL−3,IL−4,IL−5,IL−6,IL−7,IL−8,IL−9,IL−10,IL−11 ,IL−12,IL−13,IL−14,IL−15,およびγ−IFN,G−CSF、およびGM−CSF よりなる群から選択されるタンパク質をコードする配列である。本発明の他の実 施態様において、異種配列はリンホカインレセプターをコードし得る。このよう なレセプターの代表的な例は、上記に示す任意のリンホカインに対するレセプタ ーを含む。 さらに別の実施態様において、上記のベクターは、インフルエンザウイルス、 HPV,HBV,HCV,EBV,HIV,HSV,FeLV,FIV、ハンタウイルス、HTLVI,HTLV II そしてCMV よりなる群から選択されるウイルスから得られ得る、選択された異種 配列を含む。1つの好適な実施態様において、HPV から得られる異種配列は、E5 ,E6,E7およびL1よりなる群から選択されるタンパク質をコードする。 さらに別の実施態様において、上記のベクターは、HIV gp120 およびgag より なる群から選択されるHIV タンパク質をコードする、選択された異種配列を含む 。 上記の選択された異種配列はまた、アンチセンス配列、非コードセンス配列、 またはリボザイム配列であり得る。好適な実施態様において、アンチセンスまた は非コードセンス配列は、インフルエンザウイルス、HPV,HBV,HCV,EBV,HIV, HSV,FeLV,FIV、ハンタウイルス、HTLVI,HTLV II、およびCMV配列に相補的 な配列よりなる群から選択される。 別の実施態様において、上記のベクターはアルファウイルス構造タンパク質遺 伝子を含有しない。別の実施態様において、選択された異種配列はウイルス接合 領域の下流に位置する。第2のウイルス接合を有する上記のベクターでは、選択 された異種配列は、一定の実施態様において、第2のウイルス接合領域の下流に 位置し得る。異種配列がウイルス接合領域の下流に位置する場合、ベクター構築 物は、さらにウイルス接合領域に続いて位置するポリリンカーを含有し得る。好 適な実施態様において、このようなポリリンカーは野生型アルファウイルスの制 限エンドヌクレアーゼ認識配列を含有しない。 さらに別の実施態様において、上記のベクター中で、選択された異種配列はア ルファウイルス非構造タンパク質をコードするヌクレオチド配列内に位置し得る 。 具体的な実施態様において、上記ベクターは、図3に示すヌクレオチド番号75 79からヌクレオチド番号7597までのヌクレオチド配列(配列番号1)よりなるウ イルス接合領域を含む。ベクターが第2のウイルス接合を含む別の実施態様にお いて、第2のウイルス接合領域の下流にE3アデノウイルス遺伝子が位置し得る。 本発明のベクターはまた、さらに第1のウイルス接合領域と第2のウイルス接合 領域の間に位置するレトロウイルスパッケージング配列を含み得る。 さらなる局面において、本発明は、機能的ウイルス接合領域を含まず、そして 好適な実施態様ではサブゲノムフラグメントのウイルス転写の減少を生じる単離 された組換えアルファウイルスベクターを提供する。 なおさらなる別の局面において、本発明は、プロモーターおよび1つ以上のア ルファウイルス構造タンパク質遺伝子(このプロモーターは、アルファウイルス 構造タンパク質の発現を指示し得る)を含むアルファウイルス構造タンパク質発 現カセットを提供する。 種々の実施態様において、発現カセットは、アルファウイルス構造タンパク質 (例えば、C、6K、E3、E2、およびE1よりなる群から選択されるアルファウイル ス構造タンパク質)を発現し得る。 さらに別の局面において、本発明は、プロモーター、1つ以上のアルファウイ ルス構造タンパク質、および異種リガンド配列(このプロモーターは、アルファ ウイルス構造タンパク質および異種配列の発現を指示し得る)を含むアルファウ イルス構造タンパク質発現カセットを提供する。種々の実施態様において、異種 リガンド配列は、VSVG,HIV gp120、抗体、インスリン、およびCD4 よりなる群 から選択される。 一定の実施態様において、上記の発現カセットは、メタロチオネイン、Drosop hilaアクチン5C遠位、SV40、熱ショックタンパク質65、熱ショックタンパク質70 、Py、RSV、BK、JC、MuLV,MMTV、アルファウイルス接合領域、CMV、およびVA1R NAよりなる群から選択されるプロモーターを含む。他の実施態様において、アル ファウイルス構造タンパク質は、アウラ、フォートモーガン、ベネズエラウマ脳 脊髄炎、ロス川、セムリキ森林、シンドビス、およびマヤロウイルスよりなる群 から選択されるアルファウイルス由来である。 なおさらに別の局面において、本発明は、BHK細胞への導入の際、感染後少な くとも24時間、そして48、72、96時間、または1週間ほど生存可能な感染細胞を 産生するアルファウイルス粒子を提供する。またこのようなアルファウイルス粒 子を含む哺乳動物細胞が提供される。 別の局面において、本発明は、BHK細胞への導入の際、感染後少なくとも24時 間生存可能な感染細胞を産生する組換えアルファウイルス粒子を提供する。ここ で、この粒子はまた、アルファウイルス粒子が感染した標的細胞において、少な くとも1つの抗原またはその改変された形態の発現を指示するベクター構築物を 含有し、その抗原またはその改変された形態は動物内で免疫応答を刺激し得る。 種々の実施態様において、発現された抗原またはその改変された形態は、細胞媒 介性免疫応答、好ましくはHLAクラスI拘束性免疫応答を誘発する。 さらに別の局面において、本発明は、アルファウイルス粒子で感染した細胞に おいて緩和剤(palliative)の発現を指示し得るベクターを含有する組換えアル ファウイルス粒子を提供する。ここで、この緩和剤は、病原性に必要な病原性物 質の機能を阻害し得る。種々の実施態様において、病原性物質はウイルス、菌類 、原生動物、または細菌であり、そして阻害される機能は吸収、複製、遺伝子発 現、アセンブリ、および感染細胞からの病原性物質の排出よりなる群から選択さ れる。他の実施態様において、病原性物質はガン細胞、ガン促進成長因子、自己 免疫疾患、心血管系疾患(例えば再狭窄)、骨粗鬆症および男性型禿頭であり、 そして阻害される機能は、細胞の生存性および細胞複製よりなる群から選択され る。さらなる実施態様において、ベクターは、感染した標的細胞中の病原性物質 に関連した物質の存在に応答して、そのような細胞中で毒性緩和剤の発現を指示 する。緩和剤は、好ましくは病原性遺伝子の発現を選択的に阻害し得るか、また は病原性物質により産生されるタンパク質の活性を阻害し得る。なおさらなる実 施態様において、緩和剤は、ウイルスプロテアーゼに特異的な阻害性ペプチド、 病原性に必要なRNA配列に相補的なアンチセンスRNA、病原性に必要なRNA配列に 相補的なセンスRNA、または病原性物質の欠損構造タンパク質(このようなタン パク質は、病原性物質のアセンブリを阻害し得る)を包含する。 なおさらなる実施態様において、緩和剤の発現を指示する上記のアルファウイ ルス粒子は、より詳しくは、そうでなければ不活性な前駆体を、病原性物質の活 性なインヒビターに活性化し得る遺伝子産物(例えば、ヘルペスチミジンキナー ゼ遺伝子産物、ガン抑制遺伝子、あるいはほとんどまたは全く細胞傷害性のない 化合物を病原性物質の存在下で毒性産物に活性化し、それにより病原性物質に対 して局部的治療をもたらすタンパク質)の発現を指示する。あるいは、アルファ ウイルス粒子は、病原性物質由来のタンパク質によるプロセシングまたは改変の 際に毒性であるタンパク質、アルファウイルスで感染し、そして病原性物質を有 する標的細胞の表面のレポーティング産物、または病原体に必要とされる病原性 RNA分子に特異的なアンチセンスまたはリボザイムとして機能するRNA分子の発現 を指示する。 一定の実施態様では、上記のアルファウイルス粒子において、タンパク質はヘ ルペスチミジンキナーゼまたはCD4である。 なおさらなる局面において、本発明は、アルファウイルスが感染した標的細胞 中で免疫系の1つ以上のエレメントを抑制し得る遺伝子の発現を指示するアルフ ァウイルス粒子、およびアルファウイルスが感染した細胞中でブロッキングエレ メントの発現を指示するアルファウイルス粒子を提供する。ここでブロッキング エレメントは、レセプターまたは物質のいずれかに結合し得、レセプター/物質 相互作用をブロックする。 さらなる局面において、予防上または治療上の効果のために、任意の上記アル ファウイルス粒子またはベクターを投与するための方法を提供する。例えば、1 つの局面において、本発明は、抗原に対する免疫応答を刺激する方法を提供する 。この方法は、アルファウイルスが感染した標的細胞中で少なくとも1つの抗原 またはその改変された形態の発現を指示するアルファウイルス粒子で感受性標的 細胞を感染させる工程を包含し、ここでこの抗原またはその改変された形態は、 動物中で免疫応答を刺激し得る。1つの実施態様においては、標的細胞を、イン ビボで感染するが、他の実施態様においては、標的細胞を取り出し、エクスビボ で感染し、そして動物に戻す。 本発明のなおさらなる局面において、アルファウイルスが感染した標的細胞中 で病原性抗原の改変された形態の発現を指示するアルファウイルス粒子で、感受 性標的細胞を感染させる工程を含む、病原性抗原に対する免疫応答を刺激する方 法が提供される。ここで、この改変された抗原は、動物内の免疫応答を刺激し得 るが、病原性抗原に比較して病原性は低下している。 本発明のなおさらなる局面において、複数のエピトープ(1つ以上のエピトー プは異なるタンパク質に由来する)を有するペプチドの発現を指示するアルファ ウイルス粒子で、感受性標的細胞を感染させる工程を含む、抗原に対する免疫応 答を刺激する方法が提供される。 本発明のなお別の局面において、個体のクラスIまたはクラスII MHC タンパ ク質のいずれか、あるいはこれらの組合せをコードする核酸配列で、温血動物に 関連した感受性標的細胞を感染させる工程、そしてアルファウイルス粒子で感染 した標的細胞中で少なくとも1つの抗原またはその改変された形態の発現を指示 するアルファウイルス粒子で、この細胞を感染させる工程を含む、温血動物内の 免疫応答を刺激する方法が提供される。ここでこの抗原またはその改変された形 態は動物内の免疫応答を刺激し得る。 本発明の別の局面において、アルファウイルス粒子で感染した細胞中で緩和剤 の発現を指示するアルファウイルス粒子で感受性標的細胞を感染させる工程を含 む、病原性物質を阻害する方法が提供される。ここでこの緩和剤は病原性に必要 な病原性物質の機能を阻害し得る。 本発明の文脈で利用されるように、目的の異種配列の発現を指示するベクター またはベクター構築物は、実際に目的の異種配列の発現を指示する転写されたベ クターRNAをいう。さらに、一般的に「動物」といわれるが、本発明は、例えば 、ヒト、チンパンジー、マカーク、ウシ、ウマ、ヒツジ、イヌ、トリ、ネコ、魚 類、ラット、およびマウスを含む広範な種々の動物(哺乳類および非哺乳類の両 方)に容易に適用され得ることが理解されるべきである。さらに、シンドビスの ようなアルファウイルスが、具体的に本明細書中で記載され得るが、広範な種々 の他のアルファウイルス(例えば、アウラ、ベネズエラウマ脳脊髄炎、フォート モーガン、ロス川、セムリキ森林、およびマヤロを含む)もまた利用され得るこ とを理解すべきである。 本発明の他の局面において、温血動物に上記の真核細胞重層ベクターイニシエ ーション系を投与する行程を含む、動物に異種核酸配列を送達するための方法を 提供する。一定の実施態様において、真核細胞重層ベクターイニシエーション系 は、物理的手段によるDNA分子として、種々のリポソーム処方物を伴う複合体と して、またはベクター分子を含むDNAリガンド複合体として直接的に標的細胞に 導入され得る(例えば、ポリリジンのようなポリカチオン化合物、レセプター特 異的リガンド、あるいはセンダイまたはアデノウイルスのようなソラレン不活性 化ウイルスとともに)。 本発明はまた、組換えアルファウイルス粒子の産生に適したパッケージング細 胞株およびプロデューサー細胞株を提供する。このようなパッケージング細胞株 またはプロデューサー細胞株は、哺乳動物または非哺乳動物(例えば、蚊の細胞 のような昆虫細胞)のいずれかであり得る。1つの実施態様において、ベクター 構築物の導入の際、ヒト細胞を感染し得るアルファウイルス粒子を産生するパッ ケージング細胞株が提供される。他の実施態様において、パッケージング細胞株 は、1つ以上の因子に応答して、アルファウイルス粒子を産生する。複数の実施 態様において、アルファウイルス阻害性タンパク質は、パッケージング細胞株内 で産生されない。 他の局面において、アルファウイルスベクターのパッケージングおよび産生に 適切なレトロウイルス由来のパッケージング細胞株が提供される。1つの実施態 様において、アルファウイルスベクターのパッケージングおよび産生に適切なレ トロウイルス由来のプロデューサー細胞株が提供され、それは、gag/polの発現 を指示する発現カセット、envの発現を指示する発現カセット、およびレトロウ イルスパッケージング配列を含むアルファウイルスcDNAベクター構築物を含む。 別の局面において、VSV-Gは、VSV-Gの発現を指示する安定に組み込まれた発現 カセットを含む、アルファウイルスベクターのパッケージングおよび産生に適切 なパッケージング細胞に由来する。さらなる実施態様において、このようなパッ ケージング細胞株は、1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質の発現を指示 する安定に組み込まれた発現カセットを含む。さらに他の局面において、上記の パッケージング細胞株に基づくプロデューサー細胞株が提供される。1つの実施 態様において、このようなプロデューサー細胞は、プロデューサー細胞株の分化 状態に応答してアルファウイルス粒子を産生する。本発明の文脈で利用されるよ うに、アルファウイルスプロデューサー細胞株は、組換えアルファウイルス粒子 を産生し得る細胞株をいう。プロデューサー細胞株は、アルファウイルス構造タ ンパク質、およびさらにアルファウイルスベクター構築物の発現を指示し得る組 み込まれたアルファウイルス構造タンパク質発現カセットを含むべきである。好 ましくは、アルファウイルスベクター構築物は、cDNAベクター構築物である。よ り好ましくは、アルファウイルスベクター構築物は、組み込まれたcDNAベクター 構築物である。アルファウイルスベクター構築物が、組みこまれたcDNAベクター 構築物である場合、いくつかの例において、これは1つ以上の因子またはアルフ ァウイルスプロデューサー細胞株の分化状態に応答してのみ機能し得る。 本発明のさらに他の局面において、上記の任意の組換えアルファウイルスで感 染されたエクスビボ細胞を提供する。さらに他の局面において、血清中で不活性 化に対して耐性である組換えアルファウイルス粒子を提供する。本明細書中で利 用されるように、組換えアルファウイルス粒子は、補体不活性化アッセイ(compl ement inactivation assay)におけるインプット/開始粒子に対する粒子の生存 率が、BHK細胞で産生された参考サンプルと比較して、好ましくは、少なくとも 5倍、そして10倍から20倍程度、統計学的に有意な様式で高い場合、血清中で不 活性化に対して耐性であると考えられる。さらなる局面において、生理学的に受 容可能なキャリアーまたは希釈物と組み合わせた上記の任意のベクター、または 組換えアルファウイルス粒子を含有する薬学的組成物を提供する。 本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照 することにより明らかになるであろう。さらに、一定の手順や組成物(例えば、 プラスミドなど)をより詳細に記載している種々の文献を以下に示す。これらの 文献は参考のためその全体が本明細書中に援用されている。図面の簡単な説明 図1は、シンドビスウイルスゲノム構成の概略図である。 図2は、RT-PCRによるシンドビスRNAゲノムの増幅法を示す図である。 図3A-Hは、シンドビス由来の代表的な真核細胞重層ベクターイニシエーション 系の配列(配列番号89も参照のこと)を示す。 図4は、シンドビスベーシックベクター(Sindbis Basic Vector)およびシン ドビス−ルシフェラーゼベクターの概略図である。 図5は、シンドビスヘルパーベクター構築物の図である。 図6は、シンドビス−ルシフェラーゼベクターの発現およびレスキュー(resc ue)を示すグラフである。 図7は、シンドビス接合領域を改変するための1つの方法の図である。 図8は、真核細胞重層ベクターイニシエーション系の代表的な実施態様の概略 図である。 図9は、ELVIS-LUCおよびSINBV-LUCベクター由来のルシフェラーゼ発現の経時 変化を示すグラフである。 図10は、数種の異なるベクター構築物についてのベクターレポーター遺伝子発 現のレベルを示す棒グラフである。 図11は、シンドビスパッケージング発現カセットの概略図である。 図12は、代表的なパッケージング細胞株によるSIN-lucベクターパッケージン グを示す棒グラフである。 図13は、時間にわたるPCLクローン#18によるSIN-lucベクターパッケージング を示す棒グラフである。 図14は、BHK細胞および分化していないF9細胞おける数種の異なるルシフェラ ーゼベクターによる発現のレベルを示す棒グラフである。 図15は、シンドビス構造タンパク質を発現するためにアストロウイルスまたは 他の異種ウイルスを使用し得る方法を示す概略図である。 図16Aは、BHK細胞(溶解物)におけるシンドビスBV-HBe発現およびパッケージ ングを示す棒グラフである。図16Bは、BHK細胞(上清)におけるシンドビスBV-H Be発現およびパッケージングを示す棒グラフである。 図17は、BHK細胞におけるシンドビスBV-HBコア発現およびパッケージングを示 す棒グラフである。 図18は、シンドビスおよびRETROVECTORSTMより発現されたHBコアの比較を示す 棒グラフである。 図19は、BHK細胞におけるELVIS-HBeベクター発現を示す棒グラフである。 図20A-Dは、「RNA ループアウト(RNA loop-out)」により無能力化されたウ イルス接合領域を活性化するためのいくつかの代表的な機構の概略図である。発明の詳細な説明 本発明を説明をする前に、以後使用される一定の用語の定義をまず記載するこ とが本発明の理解に有用であり得る。 「アルファウイルスベクター構築物」とは、目的の配列または遺伝子の発現を 指示し得るアセンブリをいう。このベクター構築物は、アルファウイルスの転写 を開始させ得る5’配列、および発現された場合、生物学的に活性なアルファウ イルス非構造タンパク質(例えば、NSP1,NSP2,NSP3、およびNSP4)をコードす る配列、ならびにアルファウイルスRNAポリメラーゼ認識配列を含むべきである 。さらにこのベクター構築物は、一定の実施態様において、サブゲノムフラグメ ントのウイルス転写を防止、増加または減少するために改変され得るウイルス接 合領域、およびアルファウイルスRNA ポリメラーゼ認識配列を含有するべきであ る。このベクターはまた、生存可能なウイルスの産生を可能にするのに十分なサ イズの核酸分子、インビトロでcDNAからウイルスRNA の合成を開始させ得る5’ プロモーター、および1つ以上の制限部位、ならびにポリアデニル化配列も含有 し得る。 「アルファウイルスcDNAベクター構築物」は、目的の配列または遺伝子の発現 を指示し得るアセンブリをいう。このベクター構築物は、アルファウイルスの転 写を開始させ得る5’配列、および発現された場合、生物学的に活性なアルファ ウイルス非構造タンパク質(例えば、NSP1,NSP2、NSP3、およびNSP4)をコード する配列、およびアルファウイルスRNAポリメラーゼ認識配列を含むべきである 。さらに、ベクター構築物は、cDNA由来のウイルスRNAの合成を開始させ得る5 ’プロモーター、一定の実施態様において、サブゲノムフラグメントのウイルス 転写を防止、増加、または減少させるために改変され得るウイルス接合領域、ア ルファウイルスRNAポリメラーゼ認識配列、および転写終結を制御する3’配列 を含むべきである。このベクターはまた、生存可能なウイルスの産生を可能にす る のに十分なサイズの核酸分子、スプライス認識配列、触媒リボザイムプロセシン グ配列、およびポリアデニル化配列を含み得る。 「発現カセット」は、アルファウイルス構造タンパク質を発現し得る、組換え 的に産生される分子をいう。発現カセットは、プロモーターおよびアルファウイ ルス構造タンパク質をコードする配列を含有しなければならない。必要に応じて 、発現カセットは、転写終結、スプライス認識、およびポリアデニル化の付加部 位を含有し得る。好適なプロモーターには、CMV およびアデノウイルスVA1RNAプ ロモーターがある。さらに発現カセットは、Neo、SV2 Neo、ハイグロマイシン、 フレオマイシン(phleomycin)、ヒスチジノール(histidinol)、およびDHFRの ような選択可能なマーカーを含有し得る。 「組換えアルファウイルス粒子」は、アルファウイルスベクター構築物を含む カプシドをいう。好ましくは、アルファウイルスカプシドは、細胞膜のような脂 質二重層中に含まれ、その中には、ウイルスにコードされたタンパク質が埋め込 まれている。本発明のアルファウイルスベクター構築物を含む、種々のベクター が、アルファウイルス粒子の中に含有され得る。A.アルファウイルスの供給源 上記のように、本発明は、アルファウイルスベクター構築物、このような構築 物を含有するアルファウイルス粒子、およびこのようなベクター構築物および粒 子の利用方法を提供する。簡単に説明すると、上記のベクター構築物および粒子 の調製に使用するのに適した野生型アルファウイルスをコードする配列は、本明 細書で提供される開示によれば、天然に存在する供給源、または保管機関(例え ば、American Type Culture Collection、Rockville、Maryland)から容易に得 られ得る。 適切なアルファウイルスの代表的な例としては、アウラ(ATCC VR-368)、ベバ ル(Bebaru)ウイルス(ATCC VR-600,ATCC VR-1240)、カバソウ(Cabassou)(AT CC VR-922)、チクングニヤウイルス(ATCC VR-64,ATCC VR-1241)、東部ウマ脳脊 髄炎ウイルス(ATCC VR-65,ATCC VR-1242)、フォートモーガン(ATCC VR-924) 、ゲター(Getah)ウイルス(ATCC VR-369,ATCC VR-1243)、キジラガッハ(Kyzylag ach)(ATCC VR-927)、マヤロ(ATCC VR-66)、マヤロウイルス(ATCC V R-1277)、ミドルバーグ(Middleburg)(ATCC VR-370)、ムカンボ(Mucambo)ウイ ルス(ATCC VR-580,ATCC VR-1244)、ヌズム(ATCC VR-371)、ピクスナ(Pixuna) ウイルス(ATCC VR-372,ATCC VR-1245)、ロス川ウイルス(ATCC VR-373,ATCC VR -1246)、セムリキ森林(ATCC VR-67,ATCC VR-1247)、シンドビスウイルス(AT CC VR-68,ATCC VR-1248)、トナテ(Tonate)(ATCC VR-925)、トリニチ(Trini ti)(ATCC VR-469)、ウナ(Una)(ATCC VR-374)、ベネズエラウマ脳脊髄炎(ATC C VR-69)、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス(ATCC VR-923,ATCC VR-1250,AT CC VR-1249,ATCC VR-532)、西部ウマ脳脊髄炎(ATCC VR-70,ATCC VR-1251,AT CC VR-622,ATCC VR-1252)、ワタロア(Whataroa)(ATCC VR-926)、およびY-62- 33(ATCC VR-375)がある。B.野生型シンドビスウイルスをコードする配列 本発明の1つの特に好適な局面において、野生型アルファウイルスをコードす る配列はシンドビスウイルスから得られ得る。詳細には、本発明の1つの実施態 様において(および下記の実施例1により詳述されているように)、シンドビス cDNAクローンは、シンドビスウイルスcDNAクローンの5’末端を、バクテリオフ ァージRNA ポリメラーゼプロモーターに連結させ、そしてcDNAクローンの3’末 端を、少なくとも25ヌクレオチドのポリ−アデノシン(ポリA)トラクトに連結 させることにより得られ得る。詳細には、ウイルスRNA テンプレートからの第1 のcDNA鎖の合成は、酵素認識配列、25のデオキシチミジンヌクレオチドの配列、 およびウイルスの3’末端に相補的な一続きの約18ヌクレオチドを含む連続的配 列を有する3’オリゴヌクレオチドプライマー、ならびに緩衝ヌクレオチド、酵 素認識配列、バクテリオファージプロモーター、およびウイルスの5’末端に相 補的な配列を含む5’プロモーターを用いて、達成され得る。これらのプライマ ーのそれぞれに存在する酵素認識部位は、互いに異なり、そしてシンドビスウイ ルス中には見いだされるべきではない。さらに、バクテリオファージRNA ポリメ ラーゼプロモーターの3’末端に連結される第1のヌクレオチドは、RNA ウイル スの真正の第1のヌクレオチドであり得るか、または1つ以上のさらなる非ウイ ルスヌクレオチドを含み得る。上記の構築物を有し、そして唯一のdT:dA3’末 端の制限酵素での消化により線状化された、ウイルスcDNAクローンからインビト ロで転写されるRNA は、適切な真核細胞への導入の後、cDNAがクローン化された 野生型のウイルスによる感染に特徴的な同じ感染サイクルを開始する。インビト ロ転写の後に感染を開始させ得るRNA を産する、このウイルスcDNAクローンを、 以下「感染性cDNAクローン」と呼ぶ。 C.不活性化ウイルス接合領域を用いる組換えアルファウイルスベクター構築物 の産生 上記のように(または、他の供給源から得られるアルファウイルスをコードす る配列を用いて)調製された感染性cDNAクローンは、本発明のアルファウイルス ベクター構築物を調製するのに容易に利用され得る。簡単に説明すると、本発明 の1つの局面において、アルファウイルスの転写を開始させ得る5’配列、アル ファウイルス非構造タンパク質をコードするヌクレオチド配列、サブゲノムフラ グメントのウイルス転写が防止されるように不活性化されたウイルス接合領域、 およびアルファウイルスRNA ポリメラーゼ認識配列を含む、組換えアルファウイ ルスベクター構築物が提供される。以下に非常に詳しく考察されるように、不活 性化されたウイルス接合領域を有するアルファウイルスベクター構築物は、サブ ゲノムフラグメントを転写しないため、広範な種々の適用に適している。 1.RNA ポリメラーゼプロモーター 上記のように、本発明の一定の実施態様において、インビトロでcDNAからウイ ルスRNA の合成を開始させ得る5’プロモーターを含有するアルファウイルスベ クター構築物が提供される。詳細には、好適な5’プロモーターには、原核生物 プロモータおよび真核生物プロモーターの両方(例えば、β-ガラクトシダーゼ プロモーター、trpEプロモーター、lacZプロモーター、T7プロモーター、T3プロ モーター、SP6プロモーター、SV40プロモーター、CMVプロモーター、およびMoML V LTR)が含まれる。 2.転写を開始する配列 上記のように、好適な実施態様において、本発明のアルファウイルスベクター 構築物は、アルファウイルスの転写を開始させ得る5’配列を含有する。そのよ うな配列の代表例としては、野生型シンドビスウイルスのヌクレオチド1〜60( 図3を参照のこと)、tRNAアスパラギンのヌクレオチド10〜75(Schlesinger ら、米国特許第 5,091,309号)、および転写を開始する他のトガウイルス由来の 5’配列がある。 3.アルファウイルス非構造タンパク質 本発明のアルファウイルスベクター構築物はまた、アルファウイルス非構造タ ンパク質(NSP)をコードする配列を含有する。例として、シンドビスウイルスに ついては4つのシンドビス非構造タンパク質(NSP1,NSP2,NSP3およびNSP4)が あり、これらはウイルスの自己複製を可能にするタンパク質をコードする。本発 明の1つの実施態様において、非構造タンパク質1から3(NSP1〜NSP3)は、野 生型シンドビスウイルスのヌクレオチド60〜5750によりコードされる(図3を参 照のこと)。これらのタンパク質はポリタンパク質として産生され、そして後に 非構造タンパク質NSP1,NSP2、およびNSP3に切断される。1つの実施態様におい て、NSP4は、ヌクレオチド5928〜7579によりコードされる(図3を参照のこと) 。 上記の配列に加えて、アルファウイルス非構造タンパク質をコードする広範な 種々の配列が本発明において利用され得ることは、当業者には明白であり、従っ て、これらは用語「アルファウイルス非構造タンパク質」の範囲内にあると考え られる。例えば、本発明の1つの実施態様において、遺伝子コードの縮重のため に、2つ以上のコドンが所定のアミノ酸をコードし得る。従って、アルファウイ ルス非構造タンパク質をコードする広範な種々の核酸配列が産生され得る。本発 明の他の実施態様において、種々の他の非構造タンパク質誘導体(例えば、種々 の置換、挿入または欠失が含まれる)が作製され得、ここでこれらは最終的にア ルファウイルス非構造タンパク質の生物学的活性を変化させない。本発明の文脈 において、アルファウイルス非構造タンパク質がベクター構築物の自己複製を促 進する場合、アルファウイルス非構造タンパク質は全体として「生物学的活性が ある」と考えられる。自己複製(これは、ウイルス核酸の複製をいい、伝染性ウ イルスの産生をいうのではない)は、ある時間をかけて行われるRNase保護アッ セイにより容易に測定され得る。そのような誘導体の作製法は、本明細書中に提 供される開示によれば、当業者に容易に実施され得る(Molecular Cloning : A Laboratory Manual(第2版)、Cold Spring Harbor Laboratory Pressも参照のこ と)。 4.ウイルス接合領域 本発明のこの局面において、アルファウイルスベクター構築物はまた、サブゲ ノムフラグメントのウイルス転写が防止されるように、不活性化されたウイルス 接合領域を含有する。簡単に説明すると、アルファウイルスのウイルス接合領域 は、通常サブゲノムフラグメントの転写開始を制御する。シンドビスウイルスの 場合、正常なウイルス接合領域は典型的には、ヌクレオチド番号約7579で始まり 、そして少なくともヌクレオチド番号7612(そしておそらくはそれ以上)まで続 く。最小でも、ヌクレオチド7579〜7602(5'-ATC TCT ACG GTG GTC CTA AAT AGT − 配列番号2)は、サブゲノムフラグメントの転写に必要であると考えられ ている。この領域(ヌクレオチド7579〜7602)を、以後「最小接合領域コア」と 呼ぶ。 本発明の好適な実施態様において(そして、以下により詳しく説明されるよう に)、サブゲノムフラグメントのウイルス転写を防止するために、ウイルス接合 領域は不活性化される。本発明の文脈において利用されるように、「不活性化」 は、RNase 保護アッセイによる測定ではサブゲノムフラグメントの開始点に対応 するフラグメントは検出されないことを意味する(代表的なアッセイは、Melton ら、Nuc.Acids Res.12 : 7035-7056,1984 ; Calzon ら、Methods in Enz.15 2 : 611-632,1987 ; およびKekuleら、Nature 343 : 457-461,1990により記載 される)。 本発明の1つの実施態様において、ウイルス接合領域はヌクレオチド7597でウ イルス接合領域の端を切断する(truncate)ことにより、不活性化される(すな わち、このウイルス接合領域は、この時図3に示すようにヌクレオチド7579〜ヌ クレオチド7597の配列よりなる)。この端の切断(truncation)は、サブゲノム フラグメントの転写を防止し、そしてさらに、完全なNSP4領域(ヌクレオチド59 28〜7579によりコードされる)の合成を可能にする。 本明細書中に提供される開示によれば、当業者には明らかなように、ウイルス 接合領域を不活性化するために広範な種々の他の欠失、置換または挿入もまた行 われ得る。例えば、本発明の他の実施態様において、ウイルス接合領域はさらに NSP4をコードする領域中まで端を切断され得、これによりNSP4の生物学的活性を 維持しながらサブゲノムフラグメントからのウイルス転写を防止する。あるいは 、 他の実施態様において、遺伝子コードの重複のために、NSP4をコードする配列の ヌクレオチド置換が作成され得、この最終的な効果は、NSP4の生物学的活性を変 化させず、それにもかかわらずサブゲノムフラグメントの転写を防止する。 5.アルファウイルスRNA ポリメラーゼ認識配列およびポリ−Aテール 上記のように、本発明のアルファウイルスベクター構築物はまた、アルファウ イルスRNA ポリメラーゼ認識配列(「アルファウイルスレプリカーゼ認識配列」 とも呼ばれる)を含むべきである。簡単に説明すると、アルファウイルスRNA ポ リメラーゼ認識配列は、このウイルスが負の鎖の合成によって複製を始める認識 部位を提供する。アルファウイルスRNA ポリメラーゼ認識配列として、広範な種 々の配列が利用され得る。例えば、1つの実施態様において、本発明のシンドビ スベクター構築物は、ヌクレオチド11,647〜11,703(図3を参照のこと)にコー ドされるシンドビスポリメラーゼ認識配列を含む。他の実施態様において、シン ドビスポリメラーゼ認識は、認識配列としてなお機能し得る最小の領域まで端が 切断される(例えば、図3のヌクレオチド11,684〜11,703)。 本発明の好適な実施態様において、ベクター構築物はさらにポリ−Aテールを 含有し得る。簡単に説明すると、ポリ−Aテールは細胞質中の安定性を促進する のに十分な任意のサイズであり得、それにより、ウイルスの生活環の開始効率を 上昇させる。本発明の種々の実施態様において、ポリ−Aテールは少なくとも10 アデノシンヌクレオチド、そして最も好ましくは、少なくとも25アデノシンヌク レオチドを含む。 D.他のアルファウイルスベクター構築物 一般的に上述されたベクター構築物に加えて、本明細書中に提供される開示を 用いて広範な種々の他のアルファウイルスベクター構築物が調製され得る。 1.改変されたウイルス接合領域 上記のように、本発明は、野生型の配列から改変されたウイルス接合領域を提 供する。本発明の文脈において、改変されたウイルス接合領域は、野生型の活性 を有するが、野生型の配列を有さない接合領域、および活性が増加、減少、また は全くない接合領域を含むことが理解されるべきである。例えば、本発明の1つ の局面において、サブゲノムフラグメントのウイルス転写が減少されるように、 ウイルス接合領域が改変されたアルファウイルスベクター構築物が提供される。 簡単に説明すると、野生型アルファウイルスで細胞を感染すると、通常ウイルス 接合領域から開始するサブゲノムフラグメントの豊富なウイルス転写の結果とし て細胞が死滅する。この非常に豊富なRNA分子は、感染細胞の転写機構を壊滅し 得、最終的に細胞を死に至らせ得る。標的細胞の感染が細胞の死ではなく治療効 果(例えば、標的核酸の鎖の切断、または異種タンパク質の発現の延長)をもた らすべきことが望まれる適用では、サブゲノムフラグメントのウイルス転写のレ ベルを減少させ、これによりベクター感染標的細胞の寿命を延長させるために、 アルファウイルスベクター構築物にいくつかの改変(上記のベクター構築物の不 活性化に加えて)がなされ得る。本発明の文脈においては、RNase保護アッセイ により測定されるように、サブゲノムフラグメントのウイルス転写が標準の野生 型アルファウイルス(例えば、シンドビスウイルスATCC番号VR-1248)より少ない サブゲノムフラグメントを産生する場合、そのサブゲノムフラグメントのウイル ス転写は「減少されている」とみなされる。 サブゲノムフラグメントのウイルス転写のレベルを減少させるために、ウイル ス接合領域は種々の方法により改変され得る。例えば、本発明の1つの実施態様 において、遺伝子コードの重複のために、最終的な効果がアミノ酸配列NSP4(ま たは、他の実施態様においてはNSP4の生物学的活性)に変化を及ぼさず、そして さらにサブゲノムフラグメントのウイルス転写のレベルを減少させる、ウイルス 接合領域7579〜7597内のヌクレオチド置換が行われ得る。改変されたベクター構 築物がヌクレオチド7597を越えて含有する場合(例えば、7602または7612まで) 、同様のさらなるヌクレオチドの置換が行われ得るが、NSP4は7597で終結するた め、そのような置換は遺伝的重複に基づく必要はない。改変されたウイルス接合 領域の代表例は、以下の実施例3により詳細に記載される。 2.縦列(tandem)ウイルス接合領域 本発明の別の局面において、アルファウイルスの転写を開始させ得る5’配列 、アルファウイルスの非構造タンパク質をコードするヌクレオチド配列、サブゲ ノムフラグメントのウイルス転写を防止するように不活性化された第1のウイル ス接合領域、サブゲノムフラグメントのウイルス転写が減少されるように改変さ れ た第2のウイルス接合領域、およびアルファウイルスRNAポリメラーゼ認識配列 を含む、アルファウイルスベクター構築物が提供される。このようなベクター構 築物は、第1の不活性化(または「無能力化」)ウイルス接合領域、および第2 の改変された(または「合成的」)ウイルス接合領域を含むため、「縦列」ベク ター構築物と呼ばれる。本発明の好適な実施態様において、不活性化されたウイ ルス接合領域の後に、直ちに第2の改変されたウイルス接合領域が続く。 低レベルのサブゲノム転写が必要とされる適用では、最小接合領域コアは不活 性化された接合領域の下流に縦列で挿入され得る。望ましい効果のためのサブゲ ノム転写のレベルを徐々に上昇させるために、全接合領域に対応する配列を、縦 列の接合領域内に増やして追加し得る。 3.アデノウイルスE3遺伝子 本発明の別の局面において、アルファウイルス感染細胞内のHLA発現をダウン レギュレートするために、第2のウイルス接合領域に続いて縦列のベクター構築 物内にアデノウイルスE3遺伝子が挿入される。簡単に説明すると、本発明の種々 の実施態様において、同一個体への遺伝子治療物の反復接種が望ましい。しかし 、シンドビスウイルスのようなアルファウイルスの反復接種は、シンドビスウイ ルスの非構造タンパク質(NSP)に対する特異的抗体または細胞媒介性免疫応答の 発現を導き得る。従って、同一個体に反復用量を投与するために、ベクター特異 的タンパク質に対して標的化された宿主の免疫応答を軽減する必要があり得る。 従って、本発明の1つの実施態様において、感染細胞の表面に発現される完全 な組織適合性抗原の発現をダウンレギュレートするために、アデノウイルス2型 初期領域遺伝子3の産物が利用される。簡単に説明すると、E3 19,000ダルトン( E3/19K)タンパク質は、小胞体中のクラスIH-2/HLA 抗原に結合し、そしてそ れと分子複合体を形成し、クラスIH-2/HLA 抗原の完全な成熟およびそれに続 く細胞膜への輸送に必要な末端グリコシル化経路を妨害する。Ad 2 E3タンパク 質をコードするアルファウイルスベクターで感染された標的細胞中では、クラス I抗原の状況において、ウイルス非構造タンパク質の同時発現は起きない。従っ て、Ad 2 E3 タンパク質を発現するアルファウイルスベクターを、治療用緩和剤 の成分として同一個体に反復用量を投与させ得る。アデノウイルスE3遺伝子の 使用の代表例は、以下の実施例4Aにより詳しく記載される。 4.CMV H301 遺伝子 ウイルスNSPに対する宿主の免疫応答を軽減するために、他の方法を使用し得 る。例えば、本発明の別の局面において、ベクターで感染した細胞内で発現され るウイルス特異的タンパク質に対して向けられた宿主のCTL応答を阻害するため に、好ましくは縦列ベクター中の第2のウイルス接合領域のすぐ後に、ヒトサイ トメガロウイルス(「HCMV」)H301遺伝子をアルファウイルスベクター構築物内 にクローン化する。 簡単に説明すると、2−ミクログロブリン(2m)タンパク質は、高等真核生 物のクラスI主要組織適合性分子のα鎖の1,2および3のドメインに結合する 。2mとMHCクラスI産物との間の相互作用を妨害すると、感染細胞は細胞傷害 性T細胞により認識されなくなる。従って、以下の実施例4Bにより詳述されるよ うに、治療用緩和剤の成分としてのHCMV H301遺伝子産物の発現は、ウイルスNSP に対する宿主の免疫応答を軽減するために利用され得る。 5.レトロウイルスパッケージング配列 本発明の別の局面において、レトロウイルスパッケージング配列が縦列ベクタ ー中に挿入され、そして第1の(不活性化された)ウイルス接合領域と第2の改 変されたウイルス接合領域との間に配置される。簡単に説明すると、レトロウイ ルスパッケージング配列は、レトロウイルス粒子へのRNAゲノムのパッケージン グの信号を送る。以下により詳述されるように、レトロウイルスパッケージング 配列は、レトロウイルスパッケージング細胞株を用いてレトロウイルス粒子にア ルファウイルスベクターをパッケージングするために利用され得る。これは、ア ルファウイルスパッケージング細胞株へのアルファウイルスベクターの移動効率 を増加するために行われる。 6.複数の異種遺伝子の発現 野生型アルファウイルスが感染した細胞内で転写されたmRNAのゲノムの長さお よびサブゲノムの長さは、ポリシストロン性であり、それぞれウイルスの4つの 非構造タンパク質(NSP)および4つの構造タンパク質(SP)をコードする。ゲノ ムmRNAおよびサブゲノムmRNAはポリタンパク質として翻訳され、そして個々の非 構造タンパク質および構造タンパク質へのプロセシングは、ウイルスにコードさ れたNSP-およびSP−特異的プロテアーゼに触媒される、翻訳後のタンパク質加水 分解切断により行われる。 本明細書中に記載したアルファウイルスベクターの一定の適用では、2つ以上 の異種遺伝子の発現が望ましい。例えば、ゴシェ症候群(Gaucher's syndrome) のような代謝性疾患の処置には、治療用緩和剤の持続期間が限定され得るため、 アルファウイルスベクターまたは粒子の複数回投与が必要であり得る。従って、 本発明の一定の実施態様においては、グルコセレブロシダーゼ遺伝子(実施例17 を参照のこと)のような治療用緩和剤とともに、標的細胞においてAd 2 E3 遺伝 子(実施例4を参照のこと)を同時発現することが所望され得る。しかし野生型 ウイルスでは、構造タンパク質(「SP」)ポリシストロン性メッセージは単一の ポリタンパク質に翻訳され、これは次にSPにコードされたプロテアーゼにより切 断されて個々のタンパク質にプロセシングされる。従って、SPプロテアーゼ遺伝 子、または切断のために認識されるペプチドは、アルファウイルスベクターの置 換領域内に存在しないため、ポリシストロン性メッセージからの複数の異種遺伝 子の発現は、野生型ウイルスとは異なる機構を必要とする。 従って、本発明の1つの実施態様において、適切なシグナル(リボゾームの読 み通し(readthrough)またはシストロンの間への内部リボゾーム侵入のいずれか )を配置することにより、アルファウイルスベクターが構築され得る。複数の異 種遺伝子を発現する代表的な方法の1つは、以下の実施例5に記載され得る。 本発明のさらに別の実施態様において、無能力化された接合領域ベクターpKSS INBVd1JRのすぐ下流へのリボゾームの読み通しまたは内部リボゾーム侵入のいず れかを促進するシグナルの配置が記載される(実施例3および5を参照のこと) 。このベクターの構造では、サブゲノムのメッセージの合成は起こり得ない。し かし、異種タンパク質はリボゾームの読み通し(スキャニング)または内部リボ ゾーム侵入のいずれかにより、ゲノム長のmRNAから発現される。野生型に関して 、このアルファウイルスベクターによる低レベルのウイルス転写は、感染した標 的細胞の寿命を延ばす。 本発明のさらに別の実施態様において、pKSSINBVd1JRsjrまたはpKSSINBVベク ターのすぐ下流へのリボゾームの読み通しまたは内部リボゾーム侵入のいずれか を促進するシグナルの配置が記載される。簡単に説明すると、サブゲノムmRNAの 合成はpKSSINBVd1JRsjr およびpKSSINBVベクターが感染した細胞内で起きるため 、2つの異種遺伝子の間へのリボゾームの読み通し配列または内部リボゾーム侵 入配列のいずれかの配置は、サブゲノムmRNAポリシストロン性メッセージにより コードされる両タンパク質の翻訳を可能にする。さらにAUG翻訳開始コドンの5 ’末端に適切な翻訳開始シグナルが存在すれば、さらなる異種遺伝子がサブゲノ ムmRNA領域中に配置され得る。サブゲノムmRNA領域中に挿入され得る異種遺伝子 の数は、本明細書中に記載するように、ベクターのパッケージングの制約によっ てのみ限定される。 リボゾーム読み通し、capに無関係の翻訳、または内部リボゾーム侵入のいず れかを可能にする種々の配列が、上記の構造のシンドビスウイルスベクターpKSS INBVd1JR,pKSSINBV、またはpKSSINBVd1JRsjrc中に配置され得る。これらの翻訳 制御配列の供給源は、ピコルナウイルスポリオおよびEMCV、ヒト免疫グロブリン の重鎖結合タンパク質の5’非コード領域、および効率的な翻訳開始のためのコ ザック(Kozak)コンセンサス配列に一部対応する少なくとも15塩基対の合成配列 である。本明細書中には詳述されないが、翻訳開始に影響するこれらのシグナル はまた、接合領域の下流、および実施例3に記載の全ての改変された接合領域ベ クター中の異種遺伝子の間に配置され得る。 上記のように、アルファウイルスcDNAベクター構築物はまた、転写終結を制御 する3’配列を含む。このような配列の代表的な例は、以下の実施例2および実 施例3に、より詳細に示される。 7.組織特異的発現 本発明の別の局面において、選択された組織内でのみ所望の異種配列を発現し 得るアルファウイルスベクター構築物が提供される。このような代表例の1つを 図20に示す。簡単に説明すると図20Aに示されるように、標的細胞にベクター( 図20A)が導入され、転写制御領域(例えば、修飾接合領域)に隣接する内在逆 位反復配列がループ構造から出て(図20Bを参照)、それにより合成接合領域か らのサブゲノム配列(「G.O.I.」)のウイルス転写を防ぐように、組換 えアルファウイルスベクターが構築される。 一方、もし逆位反復配列が、選択された組織または細胞型に特徴的な特異的細 胞性RNA配列にもハイブリダイズするように設計されているならば、ベクターの 活性化が達成され得る。このような細胞性RNAは無能力化ステムループ構造を破 壊し、こうしてさらに安定な第2のステムループ構造を形成させる(図20Cと20 D)。この第2のステムループ構造は、接合領域を正しい位置構造に戻すことに よりサブゲノムメッセージの転写を可能にする。 コピー選択と呼ばれる鎖ジャンプ(strand hopping)機構を用いて負の鎖の合 成中にテンプレートを交換するウイルスポリメラーゼの能力を利用して、第2の ステムループ構造を使用して全長アルファウイルスベクターはまた転写され得る (King,RNA genetics II,CRC Press,Inc.,Boca Raton Fla.,Domingoら(編 )、pp.150-185,1988)。ポリメラーゼコピー選択事象の結果として逆位反復配 列は欠失されるため、いったん転写が1回うまく起きれば、得られるRNA転写物 は逆位反復配列を含有しない。この新たに合成されたRNA分子は、前述の任意の 他の非無能力化ゲノムアルファウイルスベクターのように転写し発現する一次RN Aベクター転写物として機能する。このRNAベクター構造では、標的化細胞または 組織型にのみ存在する特異的RNA配列が、逆位反復物の設計に使用されるなら、 無能力化したシンドビスベクターの組織または細胞特異的な活性化が達成され得 る。この方法でシンドビスのようなアルファウイルスは、前述の類似の逆位配列 を用いて、組織特異的発現ベクターとして操作され得る。 組織特異的発現を達成するためにこのベクター系を用いると、治療的アルファ ウイルスベクターまたは粒子を患者に全身的に送達し得る。もしベクターが適切 なRNA種を発現しない細胞を感染させた場合は、ベクターは非構造タンパク質を 発現し得るのみであり、目的の遺伝子は発現し得ない。最終的にベクターは無害 に分解される。 上記のベクターを使用すると、種々の治療的適用(例えば、種々のタイプのガ ンの処置のためにベクターを標的とすることを含む)が可能な事実上の組織特異 的発現が可能になる。この理論は、胎児性腫瘍性特異的抗原(CEA)およびアルフ ァフェトプロテイン腫瘍マーカーのような腫瘍特異的マーカーの特異的発現に依 存する。簡単に説明すると、特異的な腫瘍を標的とするのにこのような腫瘍特異 的RNAを使用することは、後述の毒性分子、リンホカインまたはプロドラッグの 腫瘍特異的発現を可能にする。このような方法は、大腸直腸ガン、肺ガン、乳ガ ン、卵巣ガン、膀胱ガン、前立腺ガンなどの広範な腫瘍のすべてがCEAを発現す るため、これらの腫瘍に利用され得る。本発明のこの局面においての使用に適し たベクターの1つの代表例は、以下の実施例16に詳述されている。 簡単に説明すると、CEAはアルファフェトプロテイン腫瘍マーカーとともに、 最初に記載された腫瘍特異的マーカーの1つであった。CEAは、胎児成長の最初 の2回の3ケ月間に消化管、膵臓および肝臓の胎児組織に見いだされる正常な糖 タンパク質である(Pathologic Basis of Disease、第3版、1984,Robbinsら、 (編))。以前はCEAは大腸の腺ガンに特異的であると考えられていたが、後によ り高感度のラジオイムノアッセイが開発されたため、CEAは多くの内胚葉由来の ガン(特に膵臓ガン、胃ガンおよび食道ガン)の血漿中に存在することが明らか になった。 本発明の関連する局面において、アルファウイルス細胞特異的発現ベクターは 、ウイルス感染細胞型の標的化処置のために、ウイルス抗原、リボザイム、アン チセンス配列、またはガンマ−インターフェロン(γ−IFN)、IL-2またはIL−5の ような免疫刺激性因子を発現するように構築され得る。特に、特異的外来生物ま たは病原性物質感染細胞にアルファウイルスベクターを標的とするために、アル ファウイルスベクターの逆位反復物は、任意の病原性物質特異的RNAにハイブリ ダイズするように選択され得る(例えば、HIV,CMV,HBV,HPV、およびHSVのよ うな病原性物質に感染された標的細胞)。 本発明のさらに別の局面において、遺伝子置換療法を用いて組織特異的代謝性 疾患の処置のために、特定の臓器組織が標的とされ得る。例えば、肝臓は体の多 くの代謝機能を担い、多くの代謝性遺伝性疾患に関連しているため、重要な標的 組織である。そのような疾患には、多くのグリコーゲン保存疾患、フェニルケト ン尿症、ゴシェ病および家族性高コレステロール血症などがある。現在多くの肝 臓特異的酵素およびマーカーがある(これらは配列が決定されており、アルファ ウイルスベクターの適切な逆位反復物を操作するのに使用され得る)。そのよう な肝臓特異的cDNAは、S−アデノシルメチオニンシンテターゼ(Horikawaら、Bio chem.Int.25 : 81,1991);レシチン;コレステロールアシルトランスフェラ ーゼ(Rogne ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.148 : 161,1987);ならび に他の肝臓特異的cDNA(Chinら、Ann.N.Y.Acad.Sci.478 : 120,1986)をコ ードする配列を含む。このような肝臓特異的アルファウイルスベクターは、家族 性高コレステロール血症(Wilsonら、Mol.Biol.Med.7 : 223,1990)の処置の ために肝細胞に低密度リポタンパク質レセプター(Yamamotoら、Cell 39 : 27, 1984)を送達するのに使用し得る。 E.異種配列 前述のように、本発明のアルファウイルスベクター構築物により、広範なヌク レオチド配列が担持され得る。好ましくはヌクレオチド配列は、生存可能な(vi able)ウイルスの産生を可能にするのに十分なサイズであるべきである。本発明 において、測定可能な力価(例えば、プラークアッセイ、ルシフェラーゼアッセ イ、またはβ-ガラクトシダーゼアッセイによる)の感染性ウイルスの適切な感 受性単層での産生は、「生存可能なウイルスの産生」と考えられる。これは最小 の場合、追加の異種配列を含有しないアルファウイルスベクター構築物であり得 る。しかし他の実施態様において、ベクター構築物は追加の異種配列または外来 配列を含有し得る。好適な実施態様において異種配列は、少なくとも約100塩基 、2kb、3.5kb、5kb、7kbの異種配列であるか、または少なくとも約8kbの異 種配列さえも包含する。 本明細書中の開示内容から当業者には明らかなように、パッケージングの効率 、従ってウイルス力価は、ある程度パッケージングされる配列のサイズに依存す る。従ってパッケージングの効率および生存可能なウイルスの産生を増大させる には、追加の非コード配列をベクター構築物に付け加え得る。さらに本発明の特 定の実施態様において、ウイルスの力価を増大または低減させることが所望され 得る。この増大または低減は異種配列のサイズ、従ってパッケージングの効率を 増大または低減させることにより達成され得る。 ベクター構築物には、例えばリンホカイン、トキシン、プロドラッグ、免疫応 答を刺激する抗原、リボザイム、および免疫応答を補助または阻害するタンパク 質、ならびにアンチセンス配列(または「アンチセンス適用」のためのセンス配 列)のような緩和剤をコードする配列などの広範な異種配列が含まれ得る。前述 のように本発明の種々の実施態様において、本明細書中に提供されるアルファウ イルスベクター構築物は2つまたはそれ以上の異種配列を含有(そして、特定の 実施態様においては発現)し得る。 1.リンホカイン 本発明の1つの実施態様において、異種配列はリンホカインをコードする。簡 単に説明すると、リンホカインは、免疫エフェクター細胞を増殖、活性化または 分化するように作用する。リンホカインの代表例としては、ガンマインターフェ ロン、腫瘍壊死因子、IL−1,IL−2,IL−3,IL−4,IL−5,IL−6,IL− 7,IL−8,IL−9,IL−10,IL−11,IL−12,IL−13,IL−14,IL−15,GM− CSF,CSF−1、およびG−CSF が挙げられる。 本発明の関連する実施態様において、異種配列は免疫制御性補助因子をコード する。簡単に説明すると、本発明に関連して使用される「免疫制御性補助因子」 は、免疫応答に関与して1つまたはそれ以上の細胞により産生される時、または 細胞に外から加えられる時、質または強さにおいて異なる免疫応答をその補助因 子が存在しない時に発生したことにより引き起こす因子をいう。応答の質または 強さは、当業者に公知の種々のアッセイにより測定し得、例えば細胞の増殖を測 定するインビトロアッセイ(例えば、3Hチミジンの取り込み)、およびインビ トロ細胞傷害性アッセイ(例えば、51Cr放出を測定するもの)(Warnerら、AIDS Res.and Human Retroviruses 7 : 645-655,1991)がある。 免疫制御性補助因子の代表例は、アルファインターフェロン(Finterら、Drug s 42(5): 749-765,1991;米国特許第4,892,743号;米国特許第4,966,843号; WO 85/02862 ; Nagataら、Nature 284 : 316-320,1980 ; Famillettiら、Metho ds in Enz.78 : 387-394,1981 ; Twuら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86 : 2 046-2050,1989 ; Faktorら、Oncogene 5 : 867-872,1990)、ベータインター フェロン(Seifら、J.Virol.65 : 664-671,1991)、ガンマインターフェロン (Radfordら、American Society of Hapatology : 2008-2015,1991 ; Watanabe ら、PNAS 86 : 9456-9460,1989 ; Gansbacherら、Cancer Research 50 : 7820- 7825,1990 ; Maioら、Can.Immunol.Immunother,30 : 34-42,1989 ; 米国特 許第4,762,791号および同第4,727,138号)、G−CSF(米国特許第4,999,291号お よび同第4,810,643号)、GM−CSF(WO 85/04188)、TNF(Jayaramanら、J.Immuno logy 144 : 942-951,1990)、インターロイキン−2(IL−2)(Karupiahら、J .Immunology 144 : 290-298,1990 ; Weberら、J.Exp.Med.166 : 1716-1733 ,1987 ; Gansbacherら、J.Exp.Med.172 : 1217-1224,1990;米国特許第4,7 38,927号)、IL−4(Tepperら、Cell 57 : 503-512,1989 ; Golumbekら、Scie nce 254 : 713-716,1991 ; 米国特許第5,017,691号)、IL−6(Brakenhofら、 J.Immunmol.139 : 4116-4121,1987 ; WO 90/06370)、IL−12、IL−15(Grab steinら、Science 264:965-968,1994;Genbank-EMBL 登録番号VO3099)、ICAM −1(Altmanら、Nature 338 : 512-514,1989)、ICAM−2、LFA-1、LFA-3、 MHCクラスI分子、MHCクラスII分子、β2−ミクログロブリン、シャペロン、CD3 、B7/BB1、MHC結合トランスポータータンパク質またはこれらのアナログがある 。 アルファウイルスベクター構築物中にどの免疫制御性補助因子を含めるかの選 択は、補助因子の公知の治療効果に基づき得るか、または実験的に決定され得る 。例えば、慢性B型肝炎感染では、患者の免疫不全を補い、そしてそれゆえ、疾 患からの回復を助けるのに、アルファインターフェロンが有効であることが見出 されている。あるいは適切な免疫制御性補助因子を実験的に決定し得る。簡単に 説明すると、肝疾患の患者からまず血液サンプルを採取する。自己細胞またはHL A一致細胞(例えば、EBV形質転換細胞)でインビトロで抹消血リンパ球(PBL)を 再刺激し、肝炎抗原の免疫原性部分および免疫制御性補助因子の発現を指向する アルファウイルスベクター構築物で形質導入する。HLA一致形質導入細胞を標的 として用いて、刺激したPBLをCTLアッセイのエフェクターとして使用する。HLA 一致刺激物質および抗原のみをコードするベクターで形質導入した標的細胞を用 いて行った同じアッセイで見られるCTL応答の増加は、有用な免疫制御性補助因 子であることを示す。本発明の1つの実施態様において、免疫制御性補助因子で あるガンマインターフェロンが特に好ましい。 免疫制御性補助因子の別の例は、B7/BB1補助刺激因子である。簡単に説明する と、T細胞の完全な機能活性の活性化には2つのシグナルが必要である。第1の シグナルは抗原特異的T細胞レセプターと主要組織適合性複合体(MHC)分子に結 合したペプチドとの相互作用により提供され、そして第2のシグナル(補助刺激 と呼ぶ)は抗原提示細胞によりT細胞に送達される。簡単に説明すると、第2の シグナルはT細胞によるインターロイキン−2(IL−2)産生に必要であり、抗 原提示細胞上のB7/BB1分子と、Tリンパ球上のCD28およびCTLA−4レセプターと の相互作用が関与しているようである(Linsleyら、J.Exp.Med.,173 : 721-73 0,1991a、およびJ.Exp.Med.,174 : 561-570,1991)。本発明の1つの実施態 様において、B7/BB1は CD8+T細胞の補助刺激を起こすために腫瘍細胞に導入さ れ得、そしてCD8+T細胞は拡張し十分活性化するために十分なIL−2を産生する 。これらのCD8+T細胞は、さらなるCTL機能のために補助刺激がもはや必要では ないため、B7を発現していない腫瘍細胞を殺傷し得る。補助刺激性B7/BB1因子お よび例えば免疫原性HBVコアタンパク質の両方を発現するベクターは、本明細書 に記載した方法を使用して作製し得る。これらのベクターで形質導入された細胞 は、より有効な抗原提示細胞となる。HBVコア特異的CTL応答は、補助刺激性リガ ンドB7/BB1を介して、十分に活性化されたCD8+T細胞により増強される。 2.トキシン 本発明の別の実施態様において、異種配列はトキシンをコードする。簡単に説 明すると、トキシンは細胞の増殖を直接阻害するように作用する。トキシンの代 表例には、リシン(Lambら、Eur.J.Biochem.148 : 265-270,1985)、アブリ ン(abrin)(Woodら、Eur.J.Biochem.198 : 723-732,1991 ; Evensenら、J. of Biol.Chem.266 : 6848-6852,1991 ; Collinsら、J.of Biol.Chem.265 : 8665-8669,1990 ; Chenら、Fed.of Eur.Biochem Soc.309 : 115-118,19 92)、ジフテリアトキシン(Twetenら、J.Biol.Chem.260 : 10392-10394,198 5)、コレラトキシン(Mekalanosら、Nature 306 : 551-557,1983 ; Sanchezお よびHolmgren,PNAS 86 : 481-485,1989)ゲロニン(gelonin)(Stirpeら、J. B iol.Chem.255 : 6947-6953,1980)、ポークウィード(Irvin,Pharmac.Ther .21 : 371-387,1983)、抗ウイルスタンパク質(Barbieriら、Biochem.J.20 3 : 55-59,1982 ; Irvinら、Arch.Biochem.& Biophys.200 : 418-425,19 80 ; Irvin,Arch.Biochem.& Biophys.169 : 522-528,1975)、トリチン(t ritin)、赤痢菌毒素(Calderwoodら、PNAS 84 : 4364-4368,1987 ; Jacksonら 、Microb.Path.2 : 147-153,1987)、シュードモナス外毒素A(Carroll およ び Collier,J.Biol.Chem.262 : 8707-8711,1987)、単純ヘルペスウイルス チミジンキナーゼ(HSVTK)(Fieldら、J.Gen.Virol.49 : 115-124,1980)、 およびE.coi.グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼがある。 3.プロドラッグ 本発明の他の実施態様において、異種配列は「プロドラッグ」をコードする。 簡単に説明すると、本発明に関連して使用される「プロドラッグ」とは、ほとん どまたは全く細胞傷害性のない化合物を毒性産物に活性化する遺伝子産物を意味 する。このような遺伝子産物の代表例には、HSVTKおよびVZVTK(ならびにそれら のアナログおよび誘導体)があり、これらは特定のプリンアラビノシドおよび置 換ピリミジン化合物を選択的にモノリン酸化して、これらを細胞傷害性または細 胞増殖抑制代謝物に転換する。さらに詳しくは、ガンシクロビル、アシクロビル のような薬剤または他の任意のアナログ(例えば、FIAU、FIAC、DHPG)のHSVTK への曝露は、薬剤を対応する活性ヌクレオチド三リン酸形態にリン酸化する。 本発明に関連して使用され得る他のプロドラッグの代表例には:E.coliグアニ ンホスホリボシルトランスフェラーゼ(これはチオキサンチンを毒性のあるチオ キサンチン一リン酸に転換する)(Besnardら、Mol.Cell.Biol.7 : 4139-414 1,1987);アルカリホスファターゼ(これは不活性のリン酸化化合物(例えば 、マイトマイシンリン酸およびドコソルビシンリン酸)を毒性の脱リン酸化化合 物に転換する);真菌性(例えば、Fusarium oxysporum)または細菌性シトシンデ アミナーゼ(これは5−フルオロシトシンを毒性の化合物5−フルオロウラシル に転換する)(Mullen,PNAS 89 : 33,1992); カルボキシペプチダーゼG2(こ れはパラ−N−ビス(2−クロロエチル)アミノベンゾイルグルタミン酸からグ ルタミン酸を切断して、それにより毒性の安息香酸マスタードをつくり出す); そしてペニシリン−Vアミダーゼ(これはドコソルビシンおよびメルファランの フェノキシアセトアビド誘導体を毒性化合物に転換する)(一般的には、Vrudhul aら、J.of Med.Chem.36(7): 919-923,1993 ; Kernら、Canc.Immun.Imm unother.31(4): 202-206,1990を参照のこと)がある。 4.アンチセンス配列 本発明の別の実施態様において、異種配列はアンチセンス配列である。簡単に 説明すると、アンチセンス配列はRNA転写物に結合するように設計され、これに より特定のタンパク質の細胞性合成を防止するか、または細胞によるRNA配列の 使用を防止する。このような配列の代表例には、アンチセンスチミジンキナーゼ 、アンチセンスジヒドロ葉酸レダクターゼ(MaherおよびDolnick、Arch.Biochem . & Biophys.253 : 214-220,1987 ; Bzikら、PNAS 84 : 8360-8364,1987)、 アンチセンスHER2(Coussensら、Science 230 : 1132-1139,1985)、アンチセン スABL(Fainsteinら、Oncogene 4 : 1477-1481,1989)、アンチセンスMyc(Sta ntonら、Nature 310 : 423-425,1984)およびアンチセンスras、ならびにヌク レオチド生合成経路の任意の酵素をブロックするアンチセンス配列がある。さら に本発明の別の実施態様において、インターフェロンおよび2ミクログロブリン に対するアンチセンス配列は、免疫応答を低減させるために使用され得る。 さらに本発明のさらなる実施態様において、アンチセンスRNAは強力なクラス I制限応答を誘導するために抗腫瘍剤として使用され得る。簡単に説明すると、 RNAへの結合およびこれによる特異的mRNAの翻訳を防止することに加え、高レベ ルの特異的アンチセンス配列が多量の2本鎖RNAの形成によりインターフェロン (ガンマ−インターフェロンを含む)の発現の増加を誘導すると考えられる。ガ ンマ−インターフェロンの発現の増加は、次いでMHCクラスI抗原の発現を増強 する。この目的での使用に好適なアンチセンス配列は、アクチンRNA、ミオシンR NA、およびヒストンRNAを含む。アクチンRNAとミスマッチを形成するアンチセン スRNAは特に好ましい。 5.リボザイム 本発明の1つの局面において、宿主細胞の感染によりリボザイムを産生するア ルファウイルスベクターが提供される。簡単に説明すると、特異的RNAを切断す るのにリボザイムが使用され、1つの特異的RNA配列のみに作用するように設計 される。一般的には、リボザイムの基質結合配列は10〜20ヌクレオチドの長さで ある。この配列の長さは、標的RNAとハイブリダイズし、切断されたRNAからリボ ザイムを解離するのに十分である。リボザイムの作製の代表例には、米国特許第 5,116,742号;同第5,225,337号;そして同第5,246,921号に記載のものがある。 本発明における使用に特に好適なリボザイムには、以下の実施例(例えば実施例 18および19)に詳述されるものがある。 6.タンパク質および他の細胞成分 本発明の別の局面において、広範なタンパク質または他の細胞成分がアルファ ウイルスベクター構築物に担持され得る。そのようなタンパク質の代表例は、例 えばウイルス、細菌、寄生体、または真菌中に見いだされる天然または変化した 細胞成分、ならびに外来タンパク質または細胞成分を含む。 (a)変化した細胞成分 1つの実施態様において、免疫原性で非ガン原性の、変化した細胞成分の発現 を指向するアルファウイルスベクター構築物が提供される。本明細書において、 用語「免疫原性」とは適切な条件下で免疫応答を引き起こし得る変性した細胞成 分を意味する。この応答は細胞媒介性でなければならず、そして体液性応答もま た含み得る。用語「非ガン原性」とは、ヌードマウスにおいて細胞形質転換また はガン形成を誘導しない、変化した細胞成分を意味する。用語「変化した細胞成 分」とは細胞ガン原性に関連するか、またはガン原性細胞に一般に関連するが細 胞ガン原性に必要でも必須でもないタンパク質および他の細胞成分を意味する。 変化の前に、正常な細胞の増殖および制御に細胞成分が必須であり得、そして 、例えば、細胞内タンパク質分解、転写調節、細胞サイクルの制御、および細胞 −細胞相互作用を調節するタンパク質が含まれる。変化後には細胞成分はもう制 御機能を果たさず、従って細胞は調節し得ない増殖を示し得る。変化した細胞成 分の代表例は、ras*,p53*,Rb*、ウイルムズ腫瘍遺伝子(Wilms’tumor gene)に よりコードされる変化したタンパク質、ユビキチン*、ムチン*、DCC,APCおよび MCC遺伝子によりコードされるタンパク質、乳ガン遺伝子 BRCA1*、ならびにレセ プターまたはレセプター様構造(例えば、neu、甲状腺ホルモンレセプター、血 小板由来増殖因子(PDGF)レセプター、インスリンレセプター、上皮増殖因子(E GF)レセプター、およびコロニー刺激因子(CSF)レセプター)を含む。 本発明の1つの実施態様において、非ガン原性で変化したras(ras*)遺伝子 の発現を指向するアルファウイルスベクター構築物が提供される。簡単に説明す ると、ras*遺伝子は新生物性表現型に若干関連するため魅力的な標的であり、確 かに広範な明確なガン(例えば膵臓ガン、大腸ガンおよび肺腺ガン)のガン原性 の誘導および維持に必要であり得る。さらに、ras*遺伝子は前新生物腫瘍におい て見いだされ、従って悪性腫瘍の検出の前に免疫介在療法が行われ得る。 正常なras遺伝子は非ガン原性であり、すべての哺乳動物に存在する。これは 進化の過程で高度に保存されており、細胞サイクルおよび正常な増殖特性の維持 に重要な役割を果たすようである。正常なrasタンパク質は、GTPに結合しGTPase 活性を有するG−タンパク質であり、外部環境から細胞内部へシグナルを伝達す るのに関与しており、こうして細胞が環境に応答することを可能にする。一方ra s*遺伝子は、細胞の挙動を環境から切り離すことにより新生物細胞の正常な増殖 調節を変化させ、それにより新生物細胞の制御されない増殖を導く。ras遺伝子 の変異は発ガンの初期の事象であり(Kumarら、Science 248 : 1101-1104,1990) 、これは早期に治療されればガン発生を防止し得る。 ras*遺伝子は広範なガン(例えば、膵臓ガン、大腸ガンおよび肺腺ガンを含む )に存在する。 種々のガンで見られるras*遺伝子に発生する変異の範囲は極めて限定されてい る。これらの変異は、正常なオン/オフスイッチを構成性のオンの位置に切り換 えることにより、rasタンパク質のGTPase活性を変化させる。ras*のガン原性変 異は、(インビボでは)主に3つのコドンにのみ起きる:12、13および61。ヒト および動物の腫瘍両方において、コドン12の変異が最も多い。 以下の表1はヒトのrasを活性化する公知のインビボの変異(コドン12、13お よび61)、ならびにインビトロの形質転換活性を有する潜在的な変異を要約する 。インビトロの形質転換活性を有する潜在的な変異は、正常コドンのアミノ酸の 全体的な置換(例えば、12位の正常なグリシンの代わりに他のアミノ酸が置換さ れた)により産生された。インビトロの変異は、現時点ではヒトまたは動物で発 生することは知られていないが、最終的にインビボで発生することが見いだされ れば、抗ガン性免疫療法の基礎となり得る。 上記の変化により、新規なコード配列を含有するタンパク質が産生される。こ れらの配列にコードされる新規タンパク質はガン原性細胞のマーカーとして使用 され得、そしてこれらの新規コード領域に対して向けられた免疫応答は、変化し た配列(ras*)を含有するガン原性細胞を破壊するのに使用され得る。 本発明の別の実施態様において、変化したp53(p53*)遺伝子の発現を指向する アルファウイルスベクター構築物が提供される。簡単に説明すると、p53は当初 形質転換した細胞の抽出物中に発見された核リンタンパク質であり、従って最初 はオンコジーンとして分類された(LinzerおよびLevine,Cell 17 : 43-52,197 9 ; LaneおよびCrawford,Nature 278 : 261-263,1979)。後に、元のp53 cDNA クローンはp53の変異形態であることが発見された(Hindsら、J.Virol.63 : 73 9-746,1989)。今やp53は細胞サイクルを負に制御する腫瘍抑制遺伝子であり、 この遺伝子の変異が腫瘍形成を導き得るようである。研究された大腸ガンのうち 75%〜80%はp53の両方の対立遺伝子の欠損を示す(一方は欠失により、他方は 点変異による)。肺ガンならびに脳腫瘍および乳ガンでも同様の変異が見られる 。 p53変異の多く(例えば、p53*1、p53*2など)は、アミノ酸残基130〜290の間 に集中している(Levineら、Nature 351 : 453-456,1991を参照のこと;および 特異的変異をさらに詳細に説明する以下の文献も参照のこと:Bakerら、Science 244 : 217-221,1989 ; Nigroら、Nature 342 : 705-708,1989(p53変異は4 つの高度に保存された遺伝子領域に一致する4つの「ホットスポット」に集中し 、これらの変異はヒトの脳腫瘍、乳ガン、肺ガンおよび大腸ガンで観察される) ;Vogelstein,Nature 348 : 681-682,1990 ; Takahashiら、Science 246 : 49 1-494,1989 ; Iggoら、Lancet 335 : 675-679,1990 ; Jamesら、Proc.Natl. Acad.Sci.USA 86 : 2858-2862,1989 ; Mackayら、Lancet 11 : 1384-1385,1 988 ; Kelmanら、Blood 74 : 2318-2324,1989 ; Malkinら、Science 250 : 123 3-1238,1990 ; Bakerら、Cancer Res.50 : 7717-7722,1991 ; Chibaら、Onco gene 5 : 1603-1610,1990(初期の非小細胞肺ガンの病因は、コドン132〜283の 間のp53遺伝子の体細胞性変異が関係している);Prosserら、Oncogene 5 : 157 3-1579,1990(アミノ酸126〜224をコードするp53遺伝子の変異が初期乳ガンで 同定された);ChengおよびHass、Mol.Cell.Biol.10 : 5502-5509,1990 ; B artekら、Oncogene 5 : 893-899,1990 ; Rodriguesら、Proc.Natl.Acad.Sci .USA 87 : 7555-7559,1990 ; Menonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87 : 54 35 -5439,1990 ; Mulliganら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87 : 5863-5867,199 0 ; およびRomanoら、Oncogene 4 : 1483-1488,1990(ヒトの骨肉腫由来細胞株 HOS-SLのコドン156のp53変異の同定)。 p53遺伝子の特定の変化は、特定の特異的トキシンが原因であり得る。例えば 、Bressacら(Nature 350 : 429-431,1991)は、肝細胞ガン患者のコドン249の 特異的なGからTへの変異を記載している。この変異の示唆されている原因物質 は、アフリカで食物汚染物質として知られている肝臓ガンのガン原性物質である アフラトキシンB1である。 特に影響を受ける遺伝子の4つの領域は、残基132〜145、171〜179、239〜248 、そして272〜286である。特に興味深いこれらの領域に見いだされる3つの「ホ ットスポット」は、残基175、248および273(Levineら、Nature 351 : 453-456 ,1991)に存在する。これらの変化ならびに前述の他の変化により、新規のコー ド配列を含有するタンパク質が産生される。これらの配列にコードされる新規タ ンパク質はガン原性細胞のマーカーとして使用され得、これらの新規コード領域 に対して指向された免疫応答は、変化した配列(p53*)を含有するガン原性細胞を 破壊するのに使用され得る。 変化した細胞成分をコードする配列がいったん得られたら、この配列が非ガン 原性タンパク質をコードすることを確認することが必要である。種々のアッセイ が公知であり、特定の細胞成分のガン原性を評価するアッセイが容易に実施され 得る。代表的アッセイには、ラット線維芽細胞アッセイ、ヌードマウスまたはラ ットにおける腫瘍形成、軟寒天中のコロニー形成、およびトランスジェニック動 物(例えばトランスジェニックマウス)の調製などが含まれる。 ヌードマウスまたはラットにおける腫瘍形成は、特定の細胞成分のガン原性を 測定するのに特に重要でかつ高感度な方法である。ヌードマウスは機能的な細胞 免疫系が欠如しており(すなわち、CTLを有さない)、従って細胞のガン原性の 可能性を調べるのに有用なインビボのモデルを提供する。正常な非ガン原性細胞 は、ヌードマウス中で感染させても制御されない増殖性質を示さない。しかし形 質転換した細胞はヌードマウス中で急速に増殖し、そして腫瘍を発生させる。簡 単に説明すると、1つの実施態様において、アルファウイルスベクター構築物は 同系のマウスの細胞に投与され、次にヌードマウスに注射される。腫瘍の増殖を 測定するために注射後2〜8週間マウスを肉眼で観察する。また腫瘍の存在を決 定するために、マウスを屠殺し解剖し得る(Giovanellaら、J.Natl.Cancer In st.48 : 1531-1533,1972 ; Fureszら、Abnormal Cells,New Products and Ri sk,Hopps and Petricciani編、Tissue Culture Association,1985;およびLev enbookら、J.Biol.Std.13 : 135-141,1985)。 ガン原性はまた軟寒天中のコロニー形成を目視することによっても評価され得 る(MacphersonおよびMontagnier,Vir.23 : 291-294,1964)。簡単に説明する と、正常な非ガン原性細胞の1つの性質は「接触阻害」である(すなわち、細胞 は隣接する細胞に接触すると増殖を止める)。細胞を半固体寒天支持培地中にプ レーティングすると、正常な細胞はすぐ接触阻害を受けて増殖を止めるが、ガン 原性細胞は増殖し続け軟寒天中でコロニーを形成する。 変化した細胞成分のガン原性を評価するのにトランスジェニック動物(例えば トランスジェニックマウス)もまた使用され得る。(Stewartら、Cell 38 : 627- 637,1984 ; Quaifeら、Cell 48 : 1023-1034,1987 ; およびKoikeら、Proc.N atl.Acad.Sci.USA 86 : 5615-5619,1989)。トランスジェニック動物では目 的の遺伝子は、動物のすべての組織中で発現され得る。このトランスジーンの無 制御な発現は、新たに導入された遺伝子のガン原性の可能性のためのモデルを提 供し得る。 変化した細胞成分が細胞をガン原性にすることに関係しているならば、変化し た細胞成分を非ガン原性にすることが必要である。例えば1つの実施態様におい て、変化した細胞成分をコードする目的の配列または遺伝子は、遺伝子産物を非 ガン原性にするために端が切り取られる。変化した細胞成分をコードする遺伝子 は種々のサイズに切り取られ得るが、変化した細胞成分をできるだけ保持するこ とが好ましい。さらに切り取りが行われても、変化した細胞成分の免疫原性配列 の少なくともいくつかは無傷であることが必要である。あるいは複数の翻訳終結 コドンを免疫原性領域の下流に導入し得る。終結コドンの挿入によりタンパク質 発現が早期に終結され、こうしてタンパク質の形質転換部分の発現を防止する。 1つの実施態様において、ras*遺伝子はras*タンパク質を非ガン原性にする ために端が切り取られる。簡単に説明すると、ras*のカルボキシル末端アミノ酸 は、機能的にタンパク質を細胞膜に結合させる。これらの配列の端の切り取りは 、変化した細胞成分を非ガン原性にする。好ましくは、ras*遺伝子はプリン環結 合部位(例えば、アミノ酸番号110をコードする配列の近辺)で切り取られる。 約20アミノ酸(変化したアミノ酸を含む)程度がアルファウイルスベクター構築 物によりコードされるようにras*遺伝子配列の端を切り取り得るが、好ましくは できるだけ多くのアミノ酸が発現される(非ガン原性を維持しながら)べきであ る。 別の実施態様において、細胞成分を非ガン原性にするためにp53*タンパク質は 端の切り取りにより改変される。前述のように、必ずしもすべてのp53タンパク 質の変異がガン原性ではなく、従って必ずしもすべての変異の端を切り取る必要 はない。しかしながら好適な実施態様では、p53*はアミノ酸100〜300をコードし 、そして4つすべての主要な「ホットスポット」を含む配列まで端を切り取られ ている。 発ガン性である他の変化した細胞成分もまた、それらを非ガン原性にするため に、その端を切り取られ得る。例えば、neuおよびbcr/ablの両方がこれらを非ガ ン原性にするために端を切り取られ得る。非ガン原性は、前述のように端が切り 取られた変化した細胞成分をアッセイすることにより確認され得る。 しかし、変化した細胞成分が一般に非ガン原性細胞のみ関連し、細胞をガン原 性にするのに必要または必須でない場合は、細胞成分を非ガン原性にする必要が ないことに注目すべきである。ガン原性でないそのような変化した細胞成分の代 表例は、Rb*、ユビキチン*およびムチン*を含む。 前述のように、適切な免疫応答を発生させるために、変化した細胞成分はまた 免疫原性でなければならない。T細胞のエピトープはしばしば免疫原性で両親媒 性のアルファらせん成分を有するが、特定の配列の免疫原性はしばしば予測する ことが難しい。しかし、一般に、免疫原性はアッセイにより決めることが好まし い。代表的なアッセイには、新規に導入したベクターに対する抗体の存在を検出 するELISA、ならびにガンマインターフェロンアッセイ、IL−2産生アッセイ、 および増殖アッセイのようにTヘルパー細胞を試験するアッセイがある。 前述のように、本発明の別の局面において、一般的な抗ガン治療物を作製する ために、いくつかの異なる変化した細胞成分を同時発現し得る。一般に、種々の 組合せが可能であることは当業者には明らかである。好適な実施態様では、この 治療物は特定のタイプのガンを標的とし得る。例えば、ほとんどすべての大腸ガ ンは、ras、p53、DCC、APCまたはMCC遺伝子に変異を有する。これらの多数の変 化した細胞成分を同時発現するアルファウイルスベクター構築物が、すべての可 能な変異を処置するために大腸ガン患者に投与され得る。この方法はまた、他の ガンの処置にも使用され得る。すなわち、ムチン*、ras*、neu、BRCA1*、および p53*を同時発現するアルファウイルスベクター構築物は、乳ガンの処置に使用さ れ得る。 (b)外来生物または他の病原性物質の抗原 本発明の他の局面において、外来生物または他の病原性物質からの抗原の免疫 原性部分の発現を指向するアルファウイルスベクターが提供される。このような 抗原の代表例は、細菌性抗原(例えば、E.coli、ストレプトコッカス、スタフィ ロコッカス、マイコバクテリウムなど)、真菌性抗原、寄生体抗原、およびウイ ルス抗原(例えば、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス(「HIV 」)、A型、B型、およびC型肝炎ウイルス(それぞれ、「HAB」、「HBV」、お よび「HCV」)、ヒトパピローマウイルス(「HPV」)、エプスタインバーウイル ス(「EBV」)、単純ヘルペスウイルス(「HSV」)、ハンタウイルス、TTLVI, HTLV IIおよびサイトメガロウイルス(「CMV」)がある。本明細書中で関連して 使用される「免疫原性部分」とは、適切な条件下で免疫応答(すなわち、細胞性 または体液性)を引き起こし得る各抗原の部分を意味する。「部分」とは種々の サイズであり得るが、好ましくは少なくとも9アミノ酸の長さであり、完全な抗 原を含有し得る。細胞媒介性免疫応答は主要組織適合性抗原複合体(「MHC」) クラスI,MHCクラスII、またはその両方を介し得る。 本発明の1つの局面において、B型肝炎抗原の免疫原性部分の発現を指向する アルファウイルスベクターが提供される。簡単に説明するとB型肝炎のゲノムは 、約 3.2キロダルトンの長さの環状DNAよりなり、よく特徴付けられている(Tio llaisら、Science 213 : 406-411,1981 ; Tiollaisら、Nature 317 : 489-495 ,1985;およびGanem and Varmus、Ann.Rev.Biochem.56 : 651-693,1987 ; EP 0 278,940、EP 0 241,021、WO 88/10301、ならびに米国特許第4,696,898号およ び同第5,024,938号も参照、これらは参考として本明細書中に援用される)。B 型肝炎ウイルスは数個の異なる抗原を示し、これらは他の3つのHB「S」抗原( HBsAgs)、HBc抗原(HBcAg)、HBe抗原(HBeAg)、およびHBx抗原(HBxAg)を含む(Bl umら、TIG 5(5): 154-158,1989 を参照)。簡単に説明すると、HBeAgはP22プ レコア中間体のタンパク質分解切断により得られ、細胞から分泌される。HBeAg は血清中に17kDタンパク質として存在する。HBcAgは183アミノ酸のタンパク質で あり、HBxAgはサブタイプにより異なり、145〜154アミノ酸のタンパク質である 。 HBsAgs(「大」、「中」、および「小」と呼ぶ)はB型肝炎ウイルスゲノムの 3つの領域によりコードされる:S、プレ−S2およびプレ−S1。389〜400アミノ 酸の長さを有する大タンパク質はプレ−S1、プレ−S2およびS領域によりコード され、グリコシル化および非グリコシル化形態で見いだされる。中タンパク質は 281アミノ酸の長さで、プレ−S2とS領域によりコードされる。小タンパク質は2 26アミノ酸の長さであり、S領域によりコードされる。これは2つの形態で存在 する:グリコシル化(GP27S)と非グリコシル化(P24S)。これらのそれぞれの領 域が別々に発現されると、プレ−S1領域は約119 アミノ酸のタンパク質をコード し、プレ−S2領域は約55アミノ酸のタンパク質をコードし、そしてS領域は約22 6アミノ酸のタンパク質をコードする。 当業者には明らかなように、本明細書中に記載のアルファウイルスベクター構 築物の1つにより投与されたとき免疫応答を誘導するように、上記のS抗原の種 々の免疫原性部分を組合せ得る。さらに、HBVのSオープンリーディングフレー ムの異なる地域に見いだされる大きな免疫学的多様性のために、特定の地域では 投与のために抗原の特定の組合せが好適であり得る。簡単に説明すると、ヒトB 型肝炎ウイルスSサンプル中に見いだされるエピトープは、抗原決定基「a」と 定義される。しかし互いに排他的なサブタイプ抗原決定基は、二次元二重免疫拡 散法(Ouchterlony,Progr.Allergy 5 : 1,1958)により同定されている。これ らの抗原決定基は「d」または「y」、および「w」または「r」と命名されて いる(LeBouvier,J.Infect.123 : 671,1971 ; Bancroftら、J.Immunol. 109 : 842,1972 ; およびCourouceら、Bibl.Haematol.42 : 1-158,1976)。 この免疫学的多様性はB型肝炎ウイルスSオープンリーディングフレームの2つ の領域の単一のヌクレオチド置換に起因し、これが以下のアミノ酸変化を引き起 こす:(1)B型肝炎ウイルスSオープンリーディングフレーム中のリジン−12 2からアルギニンへの変化は、サブタイプをdからyに変化させ、そして(2) アルギニン−160からリジンへの変化は、サブタイプをrからwに変化させる。 アフリカ人の間ではサブタイプaywが多く、米国や北ヨーロッパではサブタイプa dw2が多い(Molecular Biology of the Hepatitis B Virus,McLachlan 編、CRC Press,1991)。当業者には明らかなように、投与される地域に多い特定のB型肝 炎ウイルスサブタイプに適切な投与用のベクターを構築することが一般に好まし い。特定の地域のサブタイプは、二次元二重免疫拡散法または、好ましくはその 地域の個人から単離されたHBVウイルスのSオープンリーディングフレームを配 列決定することにより決定され得る。 HBVにより示されるものはまた、pol(「HBV pol」)、ORF5、そしてORF6抗原が ある。簡単に説明すると、HBVのポリメラーゼオープンリーディングフレームは 、感染した肝臓のビリオンおよびコア様粒子に見いだされる逆転写酵素活性をコ ードする。ポリメラーゼタンパク質は少なくとも2つのドメインよりなる:逆転 写を開始するタンパク質をコードするアミノ末端ドメイン、ならびに逆転写酵素 およびRNase H活性をコードするカルボキシル末端ドメイン。HBV polの免疫原 性部分は、本明細書に記載の方法(例えば、以下および実施例12Aiiおよび13) および下記のアルファウイルスベクター構築物を用いて決定され得、そして温血 動物で免疫応答を発生させるために投与され得る。同様にORF5およびORF6(Mill erら、Hepatology 9 : 322-327,1989)のような他のHBV抗原が、本明細書に記 載のアルファウイルスベクター構築物を用いて発現され得る。ORF5およびORF6を 用いるアルファウイルスベクター構築物の代表例は、以下の実施例に記載されて いる。 前述のように、B型肝炎抗原の少なくとも1つの免疫原性部分が、アルファウ イルスベクター構築物中に取り込まれる。アルファウイルスベクター構築物に取 り込まれる免疫原性部分は種々の長さであり得るが、一般的には少なくとも9ア ミノ酸の長さであることが好ましく全抗原を含有し得る。特定の配列の免疫原性 を予測することはしばしば困難であるが、T細胞のエピトープは、潜在的なTヘ ルパー部位およびCTL部位のコード領域をスキャンするために、TSITES(MedImmu ne、Maryland)のようなコンピューターアルゴリズムを用いて予測され得る。こ の解析から、ペプチドが合成され、インビトロの細胞傷害性アッセイで標的とし て使用される。しかし、他のアッセイもまた利用され得、例えば、新規に導入し たベクターに対する抗体の存在を検出するELISA、ならびにガンマインターフェ ロンアッセイ、IL−2産生アッセイ、および増殖アッセイのようなTヘルパー細 胞を試験するアッセイを包含する。 免疫原性部分はまた他の方法により選択され得る。例えば、HLA A2.1トランス ジェニックマウスは、ウイルス抗原のヒトT細胞認識のモデルとして有用である ことが証明されている。簡単に説明するとインフルエンザウイルスおよびB型肝 炎ウイルス系では、マウスのT細胞レセプター群がヒトT細胞により認識される 抗原決定基と同じものを認識する。両方の系においてHLA A2.1トランスジェニッ クマウスで産生されるCTL応答は、ヒトCTLのHLA A2.1ハプロタイプにより認識さ れるエピトープと事実上同じエピトープを指向する(Vitielloら、J.Exp.Med. 173 : 1007-1015,1991 ; Vitielloら、Abstract of Molecular Biology of Hep atitis B Virus Symposia,1992)。 アルファウイルスベクター構築物への導入に特に好適な免疫原性部分は、HBeA g、HBcAg、およびHBsAgs(以下の実施例10に詳述される)を含む。 B型肝炎ウイルスのさらなる免疫原性部分は、コード配列を種々の位置(例え ば、Bst UI、Ssp I、PpuM1、および MspI)で切り取ることにより得られ得る (Valenzuelaら、Nature 280 : 815-19,1979 ; Valenzuelaら、Animal Virus G enetics : ICN/UCLA Symp.Mol.Cell Biol.,1980,B.N.Fields and R.Jaen isch編、57〜70頁,New York : Academic)。適切な免疫原性部分および方法を 決定するさらなる方法は、以下のC型肝炎の項で記載される。 前述のように、アルファウイルスベクター構築物には2つ以上の免疫原性部分 が導入され得る。例えばアルファウイルスベクター構築物は、HBcAg、HBeAg、HB sAgs、HBxAgのすべてまたは免疫原性部分、ならびにHCV抗原の免疫原性部分を (別々に、または1つの構築物として)発現する。 7.異種配列の供給源 前述のタンパク質をコードする配列は、種々の供給源、例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC、Rockville、MD)、またはBritish Bio-Technology Limited(Cowley、Oxford、England)から容易に得られる。代表例は、BBG12(12 7アミノ酸の成熟タンパク質をコードするGM−CSF遺伝子を含有する) ;BBG6(ガ ンマインターフェロンをコードする配列を含有する) ;ATCC No.39656(TNFをコ ードする配列を含有する);ATCC No.20663(アルファインターフェロンをコード する配列を含有する) ;ATCC No.31902およびNo.39517(ベータインターフェロン をコードする配列を含有する) ;ATCC No.67024(インターロイキン−1bをコード する配列を含有する) ;ATCC No.39405,No.39452、No.39516、No.39626、および No.39673(インターロイキン−2をコードする配列を含有する) ;ATCC No.59399 、No.59398、およびNo.67326(インターロイキン−3をコードする配列を含有す る) ;ATCC No.57592(インターロイキン−4をコードする配列を含有する) ;AT CC No.59394およびNo.59395(インターロイキン−5をコードする配列を含有する ) ;そしてATCC No.67153(インターロイキン−6をコードする配列を含有する) を含む。 前述の変化した細胞産物をコードする配列は、種々の供給源から容易に得られ 得る。例えば、変化した細胞産物をコードする配列を含有するプラスミドは、Am erican Type Culture Collection(ATCC、Rockville、MD)のような寄託機関、 またはAdvanced Biotechnologies(Columbia、Maryland)のような市販の供給に より得られ得る。前述の配列のいくつかを含有するプラスミドの代表例は、ATCC No.41000(rasの12番目のコドンにGからTへの変異を含む)、およびATCC No. 41049(12番目のコドンにGからAへの変異を含む)を含む。 あるいは正常な細胞成分をコードするプラスミドは、ATCCのような寄託機関か ら得られ得(例えば、ATCC No.41001、正常なrasタンパク質をコードする配列を 含む;ATCC No.57103,ablをコードする;ATCC No.59120またはNo.59121,bcr座 をコードする)、そして変化した細胞成分を形成するために変異される。特定の 部位を変異する方法は、公知の方法(例えば、Sambrookら、前述、15.3以下参 照)を用いて容易に実施され得る。特にrasのような正常な細胞成分の点変異は 、特定のコドン(例えば、コドン12、13、または61)の部位特異的変異誘発によ り容易に実施され得る。 前述のウイルス抗原をコードする配列も同様に種々の供給源から得られ得る。 例えば、B型肝炎ウイルスをコードする分子的にクローン化したゲノムは、Amer ican Type Culture Collection(ATCC、Rockville、MD)のような供給源から得 られ得る。例えばATCC No.45020は、pBR322(Moriartyら、Proc.Natl.Acad.Sc i.USA 78 : 2606-2610,1981)のBamHI部位にB型肝炎の全ゲノムDNA(精製した Dane粒子から抽出された)(Blumら、TIG 5(5):154-158,1989 の図3を参照 )を含有する。 あるいは前述の異種配列をコードするcDNA配列は、配列を発現または含有する 細胞から得られ得る。簡単に説明すると、1つの実施態様において、所望の遺伝 子を発現する細胞由来のmRNAは、オリゴヌクレオチドdTまたはランダムプライマ ーを用いて逆転写酵素により逆転写される。次にこの1本鎖cDNAを、目的の配列 のいずれかの側の配列に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCR( 米国特許第4,683,202号;同第4,683,195号および同第4,800,159号を参照。PCR T echnology : Principles and Applications for DNA Amplification,Erlich編 、Stockton Press,1989も参照)により増幅し得る。特に2本鎖DNA は、熱安定 性Taqポリメラーゼ、配列特異的DNAプライマー、dATP、dCTP、dGTPおよびdTTPの 存在下で、加熱により変性される。合成が完了すると2本鎖DNA が産生される。 このサイクルは何回も繰り返し得、所望のDNAが何乗倍も増幅される。 前述のタンパク質をコードする配列はまた、例えばApplied Biosystems Inc. のDNA 合成機(例えば、APB DNA合成機モデル392(Foster City、CA)で合成され 得る。 F.真核細胞重層ベクターイニシエーション系 全長ゲノムアルファウイルスcDNAクローンのサイズのため、インビトロでの全 長分子の転写は、むしろ効率が悪い。これは、インビトロで転写されたRNAトラ ンスフェクト量に比例する、ウイルスの感染中心に関して低いトランスフェクシ ョン効果をもたらす(プラーク形成により測定される)。このような効率の悪さ はまた、インビトロでのアルファウイルス発現ベクターの転写に関する。感染サ イクルを開始する能力または異種配列の発現を指向する能力について候補cDNAク ローンまたは他のアルファウイルスcDNA発現ベクターを試験することは、cDNAク ローンが、DNA分子として適切な細胞にトランスフェクトされ、次いでインビボ でウイルス性RNAの合成を指向する場合、非常に促進される。 従って、本発明の1つの局面において、インビボでのウイルス性RNAの合成を 指向し得るDNAベクター(「真核細胞重層ベクターイニシエーション系」という )を提供する。特に、cDNA由来のRNAの5’合成を開始し得るプロモーター、細 胞中で自律複製し得る構築物(この構築物はまた、異種核酸配列を発現し得る) 、および転写終結を制御する3’配列を含む真核細胞重層ベクターイニシエーシ ョン系を提供する。簡単に説明すると、このような真核細胞重層ベクターイニシ エーション系は、異種ヌクレオチド配列の発現を制御する2段階または「重層」 機構を提供する。第1の層は第2の層の転写を開始し、そしてcDNA由来のRNAの 5’合成を開始し得るプロモーター(例えば、5’プロモーター)、3’転写終 結部位、ならびに1つまたはそれ以上のスプライス部位および/または必要であ ればポリアデニル化部位を含む。本発明での使用に適したプロモーターの代表例 は、真核細胞性(例えば、polI、II、またはIII)および原核細胞性プロモータ ー、ならびに誘導性または非誘導性(すなわち、構造性)プロモーター(例えば 、マウス白血病ウイルスプロモーター(例えば、MoMLV)、メタロチオネインプロ モーター、グルココルチコイドプロモーター、Drosophilaアクチン5C遠位プロ モーター、SV40プロモーター、熱ショックタンパク質65プロモーター、熱ショッ クタンパク質70プロモーター、免疫グロブリンプロモーター、マウスポリオーマ ウイルスプロモーター(「Py」)、ラウス肉腫ウイルス(「RSV」)、BKウイル スおよびJCウイルスプロモーター、MMTVプロモーター、アルファウイルス接合領 域、CMVプロモーター、アデノウイルスVA1RNA、rRNAプロモーター、tRNAメチオ ニンプロモーター、およびlacプロモーターを含む。第2の層は1つまたはそれ 以上の異種ヌクレオチド配列を発現し得、自律的にまたは1つまたはそれ以上の 因子に応答して細胞中で複製し得る構築物を含む。本発明の1つの実施態様にお いて、第2の層の構築物は前述のアルファウイルスベクター構築物であり得 る。 真核細胞重層ベクターイニシエーション系の第1の層として広範なベクター系 が使用され得、以下のDNAウイルスから開発されるウイルス性ベクター構築物: カナリアポックスウイルスまたはワクシニアウイルスを含むポックスウイルス科 (例えば、Fisher-Hochら、PNAS 86 : 317-321、1989 ; Flexerら、Ann.N.Y.Acad .Sci.569:86-103、1989;Flexnerら、Vaccine 8 : 17-21,1990 ; 米国特許第 4,603,112号、同第4,769,330号および同第5,017,487号;WO 89/01973);BKV、JC VまたはSV40のようなパポーウイルス科(例えば、Mulliganら、Nature 277 : 10 8-114、1979);アデノウイルスのようなアデノウイルス科(例えば、Berknerら 、Biotechniques 6 : 616-627、1988 ; Rosenfeldら、Science 252 : 431-434、 1991);アデノ関連ウイルスのようなパルボウイルス科(例えば、Samulskiら、J. Vir.63 : 3822-3828、1989 ; Mendelsonら、Virol.166 : 154-165、1988 ; P A 7/222,684);単純ヘルペスウイルスのようなヘルペスウイルス科(例えば、Kit ,Adv.Exp.Med.Biol.215 : 219-236、1989);およびヘパドウイルス科(例 えば、HEV)、ならびにレトロウイルス科のようなDNA中間体から複製される特定 のRNAウイルス(例えば、米国特許第4,777,127号、GB 2,200,651、EP 0,345,242 、およびWO91/02805;MoMLVのような白血病中のウイルスおよびHIVのような免疫 欠損ウイルスを含むレトロウイルス科(例えば、Ponzansky、J.Virol.65:532- 536、1991を参照のこと)を含む。 同様に、広範なベクター系は、真核細胞重層ベクターイニシエーション系の第 2の層として利用し得、例えば、:ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイル ス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス)、カルシウイルス科、トガウイル ス科(例えば、アルファウイルス、風疹)、フラビウイルス科(例えば、黄熱病 )、コロナウイルス科(例えば、HCV、TGEV、IBV、MHV、BCV)、ラブドウイルス 科、フィロウイルス科、パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウ イルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、および呼吸性シンシチウムウ イルス)、オルトミクスウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス)、ブン ヤウイルス科、アレナウイルス科、レトロウイルス科(例えば、RSV、MoMLV、HI V、HTLV)、デルタ型肝炎ウイルス、およびアストロウイルスのような科由来 のウイルス由来のベクター系を含む。さらに、非哺乳動物RNAウイルス(ならび にそれら由来の成分)はまた、利用され得、それは、例えば、細菌およびバクテ リオファージレプリカーゼ、ならびにトパモウイルス(Topamovirus)およびブロ モウイルス(Bromovirus)のような植物ウイルス由来の成分を含む(Straussら、M icro.Rev.58:491-562、1994を参照のこと)。 真核細胞重層ベクターイニシエーション系の第2の層に含まれる自己触媒ベク ターの複製能力は、例えば、ダクチノマイシンのような細胞RNA合成のインヒビ ターの存在下で、トランスフェクトされた細胞中でポジティブセンスRNAおよび ネガティブセンスRNAの両方の増加を一定時間測定するリボヌクレアーゼタンパ ク質アッセイ、およびトランスフェクトされた細胞中の異種レポーター遺伝子の 発現を測定するアッセイを含む、当業者に公知の種々のアッセイで測定され得る 。 本発明の特に好適な実施態様において、cDNA由来のウイルス性RNAの合成を開 始し得る5’プロモーター、続いてアルファウイルスの転写を開始し得る5’配 列、アルファウイルス非構造タンパク質をコードするヌクレオチド配列、活性で あるかまたはサブゲノムフラグメントのウイルス転写が妨害されるように不活性 化されたウイルス接合領域、アルファウイルスRNAポリメラーゼ認識領域、およ び転写終結を制御する3’配列を含む真核細胞重層ベクターイニシエーション系 を提供する。種々の実施態様において、ウイルス接合領域は、不活性化され得る というよりむしろサブゲノムフラグメントのウイルス転写がわずかに減少される ように、改変され得る。他の実施態様において、第2のウイルス接合領域は、第 1の不活性化ウイルス接合領域のに続いて挿入され得、その第2のウイルス接合 領域は、サブゲノムフラグメントのウイルス転写が減少するように改変され得る 。 アルファウイルスcDNAベクターの転写に引き続いて、得られるアルファウイル スRNAベクター分子は、アルファウイルスの転写を開始し得る5’配列、アルフ ァウイルス非構造タンパク質をコードするヌクレオチド配列、ウイルス接合領域 、異種ヌクレオチド配列、アルファウイルスRNAポリメラーゼ認識配列およびポ リアデニル酸配列を含む。 アルファウイルスcDNAベクターの種々の局面が上記で議論され、アルファウイ ルスの転写を開始し得る5’配列、アルファウイルス非構造タンパク質をコード するヌクレオチド配列、サブゲノムフラグメントのウイルス転写を妨害するよう に不活性化されたウイルス接合領域、およびアルファウイルスRNAポリメラーゼ 認識配列を含む。さらに、改変された接合領域および縦列接合領域もまた、上記 で議論された。 本発明の特定の局面において、温血動物に上記の真核細胞重層ベクターイニシ エーション系を投与する工程を包含する、温血動物に異種ヌクレオチド配列を送 達する方法が提供される。真核細胞重層ベクターイニシエーション系は温血動物 に、直接(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経口、直腸内、眼内、鼻腔 内)、または以下のような種々の物理的方法;リポフェクション(Felgnerら、Pr oc.Natl.Acad.Sci.USA 84 : 7413-7417、1989)、直接DNA注入(Acsadiら、N ature 352 : 815-818、1991);マイクロプロジェクタイルボンバードメント(m icroprojectile bombardment)(Williamsら、PNAS 88 : 2726-2730、1991);数 種のタイプのリポソーム(例えば、Wangら、PNAS 84 : 7851-7855、1987を参照 ); CaPO4(Dubenskyら、PNAS 81 : 7529-7533、1984);DNAリガンド(Wuら、J.o f Biol.Chem.264 : 16985-16987,1989);核酸単独の投与(WO 90/11092);ま たは死滅したアデノウイルスに結合したDNAの投与(Curielら、Hum.Gene Ther. 3 : 147-154、1992);ポリリジン、レセプター特異的リガンドに用いられる、ポ リリジンのようなポリカチオン化合物;ならびにソラレン不活性化ウイルス(例 えばセンダイウイルスまたはアデノウイルス)により投与される。さらに、真核 細胞重層ベクターイニシエーション系は、直接(すなわち、インビボで)または 、取り出され、そして次いで戻された細胞(エクスビボ)のいずれかで投与され 得る。 真核細胞重層ベクターイニシエーション系は、以下の任意の治療的使用;特異 的免疫応答を刺激するために;物質と宿主細胞レセプターとの相互作用を阻害す るために;毒性緩和剤(例えば、条件的毒性緩和剤)を発現するために;免疫学 的に免疫系を制御するために;マーカーを発現するために、そして置換遺伝子療 法のために、温血動物に投与し得る。これらおよび他の用途はさらに詳細に以下 に記載される。 G.アルファウイルスパッケージング細胞株 本発明のさらなる実施態様において、アルファウイルスパッケージング細胞株 が提供される。特に、本発明の1つの局面において、アルファウイルスパッケー ジング細胞株を提供する。これは1つまたはそれ以上の安定に組み込まれた発現 ベクターからトランスで供給されるウイルス構造タンパクが、細胞質において、 トランスフェクトされ、形質導入され、または細胞内的に生産されたベクターRN A転写物を包み得、そして細胞膜を通して感染性パッケージベクター粒子を放出 することによりアルファウイルスベクター生産細胞株を産生する。パッケージン グ細胞の細胞質で複製し得るアルファウイルスRNAベクター分子は、例えば、目 的の遺伝子およびアルファウイルス非構造タンパク質(上記)をコードするcDNA ベクタークローンをインビトロで転写可能なSP6 RNAポリメラーゼ系を最初に利 用して産生され得る。次いでベクターRNAが高いレベルで複製し、その後、ウイ ルス構造タンパク質によりパッケージされ、感染性のベクター粒子を産生するよ うに、ベクターRNA転写物をアルファウイルスパッケージング細胞株にトランス フェクトする。アルファウイルスcDNA分子の伸長された長さにより、インビトロ での転写プロセスは効率が悪くなる。さらに、単層に含まれる細胞の1つのフラ クションのみが、多くの手順により代表的にトランスフェクトされる。 ベクター産生細胞株の能力および力価を最適化することにおいて、遺伝子転移 の2つの連続的なサイクルを実行し得る。特に、ベクターは、最終産生細胞株に アルファウイルスRNAベクター分子を直接トランスフェクトするよりもむしろ、 一次アルファウイルスパッケージング細胞株に最初にトランスフェクトされる。 トランスフェクトされたパッケージング細胞株は、培養上清に感染性ベクター粒 子を放出し、そしてこれらのベクター含有上清は、その後、アルファウイルスパ ッケージング細胞の新鮮な単層の形質導入に使用される。最終アルファウイルス ベクター産生細胞への形質導入は、細胞へのその高いRNA転移効果のために過剰 なトランスフェクションが好適であり、そして細胞中のベクターの生物学的位置 を最適化する。これは、パッケージされた感染性組換えアルファウイルスベクタ ーのより高い発現およびより高い力価を導く。 本発明の特定の実施態様において、アルファウイルスベクター粒子は、同一の パッケージング細胞株がアルファウイルスベクター粒子の付着のための細胞レセ プターをブロックする細胞外エンベロープタンパク質を産生するために、その細 胞株を形質導入しなくなり得、そして、アルファウイルスパッケージング細胞を 形質導入する能力を維持する、第2のタイプのアルファウイルスベクター粒子を 産生する。この第2のタイプのウイルス粒子は、インビトロで転写されたアルフ ァウイルスRNA転写物を用いてトランスフェクトされた結果得られる一過性のベ クター粒子を産生する「ホッピング(hopping)細胞株」として知られるパッケー ジング細胞により産生される。簡単に言えば、ホッピング細胞株は、偽型化(pse udotyping)と呼ばれるプロセスで、異なる細胞レセプターへアルファウイルスベ クターを再指向する代替ウイルスエンベロープタンパク質を提供することにより 、一過的に生産されたベクター粒子のレセプター属性を再指向するように操作さ れる。2つの代表的な方法が、アルファウイルスベクター粒子偽型化について考 案された。1つ目の方法は、水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV-G)を発現 するアルファウイルスパッケージング細胞株からなる。偽型化されたアルファウ イルスベクター粒子の産生についての2つ目の方法は、レトロウイルスパッケー ジング配列を含むアルファウイルスRNAベクターをパッケージし得る容易に入手 可能なレトロウイルスgag/pol配列およびenv配列を含むレトロウイルスパッケー ジング細胞株を使用することである(例えば、WO 92/05266)。 本発明の他の実施態様において、2つ目の方法はまた、安定に組み込まれたDN A発現ベクターが、1つ目の方法と同様に、自己複製する自己触媒的能力を維持 するアルファウイルスベクターRNA分子を産生するために使用されると考察され た。この方法は、組み込まれたDNAベクター発現系が薬剤選択マーカーにより維 持されるので、延長された培養の期間を超過する、継続したベクター発現を可能 にし、そしてDNA系は、不完全なRNAコピーにより弱められ得ない改変されないRN Aベクターを構造的に発現する。この「プロデューサー細胞株」の構成において 、サイズ制限が形質導入における発現ベクターのウイルスベクター粒子へのパッ ケージングを妨害し得るので、DNAベースのアルファウイルスベクターが、トラ ンスフェクションにより、パッケージング細胞株へ最初に導入される。また、こ の構成のために、以前にインビトロでベクターRNAを転写するために使用した、 プラスミドのSP6 RNAポリメラーゼ認識部位は、用いられた親細胞株により定義 さ れる別の適切なプロモーター配列に置換される。さらに、このプラスミド配列は また、パッケージング細胞株を作製するのに使用された選択マーカーと異なる選 択マーカーを含む。 特定のレベル以上のアルファウイルスタンパク質および/またはベクターRNA は、パッケージング細胞株における細胞傷害性をもたらし得る。従って、本発明 の特定の実施態様において、パッケージング/プロデューサー細胞がある臨界密 度まで増殖された後にのみこれらのエレメントが発現されることを所望し得る。 この目的のために、さらなるパッケージングまたはプロデューサー細胞株の改変 を行い、その結果、パッケージングに必要な構造タンパク質は、RNAベクター自 身またはいくつかの他の刺激による誘導後のみ合成される。また、他の改変は、 別々の誘導可能なエレメントの制御下で、これらのタンパク質をコードする遺伝 子を切り離す発現ベクターを利用することにより、これらのタンパク質の個々の 発現を可能にする。さらに、いくつかの例において、組み込まれたベクター分子 自身の発現は、さらに別の誘導系により制御される。この構成は、誘導後のカス ケード事象をもたらし、最終的にパッケージされたベクター粒子の産生を導く。 H.アルファウイルスベクターの使用法 1.免疫刺激 本発明の他の局面において、感染性、ガン性、自己免疫性、または免疫疾患を 防止、阻害、安定化、または逆転させることができるアルファウイルスベクター 構築物を投与するための組成物および方法が提供される。このような疾患の代表 例として、HIV、HBV、HTLVI、HTLV II、CMV、EBV、およびHPV のような感染症 、メラノーマ、糖尿病、移植片対宿主疾患、アルツハイマー病、および心臓疾患 などが挙げられる。 より具体的には、本発明の1つの局面において、病原性物質が死滅または阻害 されるように、病原性物質に対する免疫応答(体液性または細胞性)を刺激する ための組成物と方法が提供される。病原性物質の代表例として、細菌、真菌、寄 生体、ウイルス、およびガン細胞が挙げられる。 本発明の1つの実施態様において、病原性物質はウイルスであり、(1)ウイ ルス抗原に対する免疫応答を開始させるか、または(2)ウイルスの相互作用に 必要な細胞レセプターを占有することによりウイルスの拡散を防止することのい ずれかが可能である感受性の標的細胞に、抗原またはその改変型の発現を指示す るように設計された組換えアルファウイルス粒子を用いることにより、特異的免 疫応答を刺激し、そしてウイルスの拡散を阻害するための方法が提供される。ベ クターの核酸にコードされたタンパク質の発現は一時的であるか、または時間が 経過しても安定なものであり得る。病原性物質抗原に対して免疫応答が刺激され る場合、その組換えアルファウイルスは好ましくは、免疫応答を刺激しかつ天然 の抗原に比較して病原性が低下している、改変された型の抗原を発現するように 設計される。この免疫応答は、細胞が正しい様式で抗原を提示する場合、すなわ ち、MHC クラスIおよび/またはII分子と、CD3、ICAM-1、ICAM-2、LFA-1、ま たはこれらのアナログのようなアクセサリー分子とともに抗原を提示する場合に 、達成される(例えば、Altmanら、Nature 338 : 512,1989)。アルファウイルス ベクターの感染した細胞は、真のウイルス感染を厳密に模倣し、そしてこれらは 、(a)複製していない細胞に感染することができ、(b)宿主細胞ゲノム内に 取り込まれることがなく、(c)いかなる致死的疾患にも関係がなく、そして( d)高レベルの異種タンパク質を発現するため、前記免疫応答を効率的に行うこ とが予想される。これらの差異のために、アルファウイルスベクターはワクチン 使用のための健常人に対して使用され得る安全なウイルスベクターとして容易に 考えられ得る。 提示細胞が完全に生存しており、健康であり、異種遺伝子に比較して低レベル のウイルス抗原が発現されるという点で、本発明のこの局面は、同じ様式で機能 すると予想される他の系に対してさらなる利点を有する。発現される抗原性エピ トープは、抗原の遺伝子のサブフラグメントの組換えアルファウイルスへの選択 的クローニングにより改変され得るため(これは他の場合には免疫優勢なエピト ープにより隠され得る免疫原性エピトープに対する応答を導く)、これは明確な 利点を有する。このようなアプローチは多数のエピトープ(このエピトープの1 つまたはそれ以上は、異なるタンパク質由来である)を有するペプチドの発現に 拡張し得る。さらに本発明のこの局面は、細胞内合成およびこれらのペプチド断 片とMHC クラスI分子との会合を介する、抗原性エピトープおよび遺伝子のサブ フラグメントによりコードされる抗原のペプチドフラグメントに対する細胞傷害 性Tリンパ球(CTL)の効率的な刺激を可能にする。このアプローチはCTL誘導のた めの主要な免疫優勢エピトープをマッピングするために利用され得る。 免疫応答はまた、目的の抗原を認識する(もしも必要であるなら適切なMHC分子 を用いて)特異的T細胞レセプターの遺伝子、目的の抗原を認識する免疫グロブ リンの遺伝子、またはMHCの非存在下でCTL応答を提供する2つのうちの1つのハ イブリッドの遺伝子を、適切な免疫細胞(例えばTリンパ球)に移入することに よっても、達成することができる。すなわち、組換えアルファウイルス感染細胞 は、免疫刺激剤、免疫調節剤、またはワクチンとして使用され得る。 本発明の別の実施態様において、アルファウイルスベクターが、ウイルスのア センブリを阻害する、欠陥のある妨害性ウイルス構造タンパク質を送達または発 現する、阻害剤緩和剤を産生するための方法が提供される。このようなベクター は、欠陥のあるgag、pol、env、または他のウイルス粒子タンパク質またはペプ チドをコードし得、ウイルス粒子のアセンブリを優勢な様式で阻害する。これは 、ウイルス粒子の正常なサブユニットの相互作用が、欠陥のあるサブユニットと の相互作用により妨害されるために発生する。 本発明の別の実施態様において、ウイルスプロテアーゼに特異的な阻害性ペプ チドまたはタンパク質の発現方法が提供される。簡単に記載すると、ウイルスプ ロテアーゼはウイルスgag、およびgag/polタンパク質を、いくつかのより小さな ペプチドに切断する。この切断がないと、全ての場合に感染性レトロウイルス粒 子の産生が完全に阻害される。例として、HIVプロテアーゼはアスパラギン酸プ ロテアーゼであることが公知であり、これらはタンパク質またはアナログ由来の アミノ酸から作成されるペプチドにより阻害されることが公知である。HIV を阻 害するベクターは、このようなペプチド阻害剤の1つまたは多数の融合したコピ ーを発現する。 別の実施態様は、細胞型の中で欠失、変異、または発現されない場合に、その 細胞型の中でガン原発を導く、抑制遺伝子の送達に関する。ウイルスベクターに よる欠失した遺伝子の再導入は、これらの細胞におけるガンの表現型の退縮を導 く。このようなガンの例は網膜芽細胞腫とWilms ガンである。悪性腫瘍は、細胞 増殖に比較した細胞の末端分化の阻害と考えられ得るので、アルファウイルスベ クターの送達、およびガンの分化を導く遺伝子産物の発現はまた、一般的には退 縮を導くはずである。 さらに別の実施態様において、アルファウイルスベクターは、病原性機能に対 応するRNA 分子を切断し、そしてそれゆえに不活性化するリボザイム(RNA 酵素 )(Haseloff および Gerlach,Nature 334:585,1989)をコードすることによ り治療効果を提供する。リボザイムは標的RNA 中の特異的配列を認識することに より機能し、そしてこの配列は通常12bp〜17bpであるため、これはRNA またはレ トロウイルスゲノムのような特定のRNA種特異的にを認識することを可能とする 。付加的な特異性が、ある場合にはこれを条件的毒性緩和剤とすることにより達 成され得る(以下を参照のこと)。 阻害性緩和剤の効果を増大させる1つの方法は、問題のウイルスにより耐性細 胞の感染の可能性を増大させる遺伝子の発現とともに、ウイルス性阻害性遺伝子 を発現させることである。その結果は、生産的な感染事象に競合する非生産的な 「行き止まり(deadend)」事象である。HIVの具体例では、HIV複製を(前述のよ うに、アンチセンスtatなどを発現することにより)阻害し、そしてCD4 のよう な感染に必要なタンパク質を過剰に発現するベクターが送達され得る。こうして 比較的少数のベクター感染HIV 耐性細胞は、遊離のウイルスまたはウイルスの感 染した細胞を用いる多数の非生産的融合のための「シンク」または「マグネット 」として作用する。 2.ブロッキング剤 多くの感染性疾患、ガン、自己免疫疾患、および他の疾患には、ウイルス粒子 と細胞、細胞と細胞、または細胞と因子の相互作用が関与する。ウイルス感染で は、ウイルスは普通感受性のある細胞表面のレセプターを介して細胞に入る。ガ ンでは、細胞は他の細胞または因子由来のシグナルに不適切に応答し得るかまた はまったく応答しない。自己免疫疾患では、「自己」マーカーが不適切に認識さ れる。本発明においてそのような相互作用は、相互作用におけるパートナーのい ずれかに対するアナログをインビボで産生することによりブロックされ得る。 このブロッキング作用は細胞内、細胞膜上、または細胞外で起こり得る。ブロ ッキング剤に対する遺伝子を有するウイルスベクター(特にアルファウイルスベ クター)のブロッキング作用は、感受性細胞の内部から、または病原性相互作用 を局所的にブロックするブロッキングタンパク質の一種を分泌することにより媒 介され得る。 HIV の場合、相互作用の2つの物質はgp120/gp41エンベロープタンパク質およ びCD4レセプター分子である。従って適切なブロッカーは、病原作用を示さずHIV の侵入をブロックするHIV envアナログか、またはCD4レセプターアナログを発 現するベクター構築物である。CD4 アナログは隣接する細胞を保護するように分 泌され、そして機能し、一方gp120/gp41はベクター含有細胞のみを保護するよう に、分泌されるかまたは細胞内でのみ産生される。安定性または補体溶解性を強 化するために、CD4 にヒト免疫グロブリン重鎖かまたは他の成分を加えることが 有利であり得る。そのようなハイブリッド可溶性CD4 をコードするアルファウイ ルスベクターの宿主への送達は、安定なハイブリッド分子の連続的な供給をもた らす。処置の効果は、抗体レベル、ウイルス抗原産生、感染性HIV レベル、また は非特異的感染のレベルを含む、疾患進行の通常の指標を測定することにより測 定され得る。 3.緩和剤の発現 前述の方法と類似の方法が、病原性物質または遺伝子の機能を阻害し得る物質 (または「緩和剤」)の発現を指令するベクター構築物で、組換えアルファウイ ルスを産生するのに使用され得る。本発明において「機能を阻害し得る」とは、 緩和剤が直接機能を阻害するか、または例えば細胞中に存在する物質を、通常は 病原性物質の機能を阻害しないものから、機能を阻害するものに変換することに より、間接的に阻害することを意味する。ウイルス疾患のためのそのような機能 の例として、吸着、複製、遺伝子発現、アセンブリ、および感染細胞からのウイ ルスの放出が挙げられる。ガン性細胞またはガン促進成長因子に対するそのよう な機能の例として、生存性(viability)、細胞複製、外部シグナルに対する感受 性の変化(例えば、接触阻害)、および産生の欠如または抗ガン遺伝子タンパク 質の変異型の産生が挙げられる。 (a)阻害緩和剤 本発明の1つの局面において、アルファウイルスベクター構築物は、例えばウ イルス疾患または悪性腫瘍疾患における病原性物質の機能を妨害し得る遺伝子の 発現を指令する。そのような発現は、本質的に連続的であるか、または病状また は特定の細胞型(「同定物質」)のいずれかに関連する別の物質の細胞における 存在に応答し得る。さらにベクターの送達は、前述したようにベクターの侵入を 特異的に所望の細胞型(例えば、ウイルス感染細胞または悪性腫瘍細胞)に標的 化することにより制御され得る。 投与の1つの方法は白血球伝達(leukophoresis)であり、ここでは任意の一 時期に個体の約20%のPBL が取り出され、そしてインビトロで操作される。従っ て、約2×109個の細胞が処置され置換され得る。繰り返し処置も行われ得る。 あるいは骨髄が処置され得、前述のように効果を増大することが可能である。さ らにベクターを産生するパッケージング細胞株は被験体に直接注射され得、組換 えビリオンが連続的な産生を可能とする。 1つの実施態様において、重要な病原性遺伝子転写物(例えば、ウイルス遺伝 子生成物または活性化細胞性ガン遺伝子)に対して相補的なRNAを発現するアル ファウイルスベクターが、その転写物のタンパク質への翻訳を阻害(例えば、HI V tat タンパク質の翻訳の阻害)することに使用され得る。このタンパク質の発 現はウイルス複製に必須であるため、ベクターを含有する細胞はHIV 複製に耐性 である。 第2の実施態様において、病原性物質がパッケージングシグナルを有する1本 鎖ウイルスである場合、ウイルスパッケージングシグナル(例えば、緩和剤がHI V に対して指向されるときはHIV パッケージングシグナル)に相補的なRNA が発 現され、その結果これらの分子とウイルスパッケージングシグナルとの会合は、 レトロウイルスの場合は、アルファウイルスRNA ゲノムの正しいカプシド化(enc apsidation)または複製に必要な、ステムループ形成またはtRNAプライマー結合 を阻害する。 第3の実施態様において、病原性遺伝子の発現を選択的に阻害し得る緩和剤、 または病原性物質により産生されるタンパク質の活性を阻害し得る緩和剤を発現 するアルファウイルスベクターが導入され得る。HIV の場合、1つの例は、HIV LTR からの発現をトランス活性化する能力が欠如しており、tat タンパク質が正 常に機能することを(トランスドミナントな様式で)妨害する変異tat タンパク 質である。このような変異体はHTLV II tat タンパク質と同定された(「X II Leu5」突然変異体;Wachsmanら、Science 235 : 674,1987 を参照のこと)。ト ランスリプレッサーtat は、HSV-1において類似の変異体リプレッサーについて 示されたように複製を大いに阻害するはずである(Friedmannら、Nature 335 : 452,1988)。 このような転写リプレッサータンパク質は、その発現がウイルス特異的トラン ス活性化タンパク質(前述)により刺激される、任意のウイルス特異的転写プロ モーターを用いて組織培養において選択され得る。HIV の具体的な場合において 、HIV tat タンパク質を発現する細胞株およびHIV プロモーターにより駆動する HSVTK 遺伝子は、ACV の存在下で死滅する。しかし、もし一連の変異したtat 遺 伝子がこの系に導入されるなら、適切な性質(すなわち、野生型tat の存在下で HIV プロモーターからの転写を抑制する)を有する変異体が増殖し選択される。 次にこの変異遺伝子は、これらの細胞株から再び単離され得る。生存している細 胞クローンはこれらの遺伝子内の内因性変異により引き起こされるのではないこ とを確認するために、条件内の致死ベクター/tat 系の多数のコピーを含有する 細胞株を使用され得る。次に「回収可能な(rescuable)」アルファウイルスベク ター(すなわち、変異tat タンパク質を発現し、細菌内での増殖と選択のために 細菌の複製起点および薬剤耐性マーカーを含有するもの)を用いて、これらの細 胞に一組のランダムに突然変異したtat 遺伝子が導入される。これにより多数の ランダム変異を評価することができ、そして所望の変異細胞株のその後の分子ク ローニングが容易になる。この手順は、抗ウイルス療法の可能性のための種々の ウイルス性転写アクチベータ/ウイルスプロモーター系における変異を同定し利 用するために使用され得る。 4.条件的毒性緩和剤 病原性物質を阻害するための別のアプローチは、病原性条件を発現する細胞に とって毒性である緩和剤を発現することである。この場合、ベクターからの緩和 剤の発現は、非病原性細胞の破壊を避けるために、病原性物質に関連した物質 (例えば、病原性状態を同定する特異的ウイルスRNA 配列)の存在により制限さ れるべきである。 この方法の1つの実施態様において、組換えアルファウイルスベクターは、細 胞特異的応答性ベクターから発現される毒性遺伝子(上で考察されたように)を 含むベクター構築物を含有する。この方法で、細胞特異的応答性ベクターを活性 化し得るRNA配列を含有する、急速に複製している細胞は、アルファウイルスベ クター構築物により産生される細胞傷害性物質により優先的に破壊される。 上記の実施態様と同様の方法で、アルファウイルスベクター構築物は、リン酸 化、ホスホリボシル化、リボシル化、あるいはプリン−またはピリミジン−ベー スの薬物の他の代謝のための遺伝子を有し得る。この遺伝子は哺乳動物細胞に等 価物がない場合があり、そしてウイルス、細菌、真菌、または原性動物のような 生物由来である場合がある。この1つの例は、チオキサンチンの存在下で致死的 である、E.coliのグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子産物であ る(Besnard ら、Mol.Cell.Biol.7 : 4139-4141,1987)。この型の条件的致 死遺伝子産物(上記のように「プロドラッグ」とも呼ぶ)は、多くの現在公知の プリン−またはピリミジン−ベースの抗ガン薬への適用を有し、有効な細胞傷害 性物質となるために、しばしば細胞内リボシル化またはリン酸化を必要とする。 この条件的致死遺伝子産物はまた、プリンまたはピリミジンのアナログではない 非毒性薬物を細胞傷害性形態に代謝し得る(Searleら、Brit.J.Cancer 53 : 3 77-384,1986)。 一般的に哺乳動物ウイルスは、他のウイルスプロモーターエレメントからの以 後の転写活性化に必要な「即時初期(immediate early)」遺伝子を有する傾向 がある。この性質を有するRNA 配列は、ウイルス感染のアルファウイルスベクタ ー細胞内シグナル(または「同定物質」)を活性化するための優れた候補である 。従って、これらのウイルス「即時初期」遺伝子産物に応答するアルファウイル ス細胞特異的ベクターから発現される条件的致死遺伝子は、任意の特定のウイル スに感染された細胞を特異的に死滅させ得る。さらに、ヒトおよびインターフェ ロンプロモーターエレメントは、広範な種々の非関連ウイルスによる感染に応答 して転写的に活性化されるため、例えばインターフェロン産生に応答して、HSVT K のような条件的致死遺伝子産物を発現するベクターの導入により、種々の異なる ウイルスに感染した細胞が破壊され得る。 本発明の別の局面において、組換えアルファウイルスウイルスベクターは、他 の場合には不活性な前駆体を病原性物質の活性なインヒビターに活性化し得る、 遺伝子産物の発現を指示するベクター構築物を有する。例えば、HSVTK 遺伝子産 物は、AZTまたはddCのような潜在的に抗ウイルス性のヌクレオシドアナログをよ り効果的に代謝するために使用され得る。HSVTK 遺伝子は細胞特異的応答性ベク ターの制御下で発現され得、そしてこれらの細胞型の中に導入され得る。AZT(お よび他のヌクレオシド抗ウイルス剤)はレトロウイルス逆転写酵素を特異的に阻 害し、従って、HIV 複製を特異的に阻害するために、細胞性機構によりヌクレオ チド三リン酸の形態に代謝されなければならない(Furmamら、Proc.Natl.Acad. Sci.USA 83 : 8333-8337,1986)。HSVTK(非常に広範な基質特異性を有するヌ クレオシドおよびヌクレオシドキナーゼ)の構成的発現により、これらの薬物は より効果的にその生物学的に活性なヌクレオチド三リン酸の形態に代謝される。 従って、AZTまたはddC治療は、より効果的であり、投与量はより少なく、全身へ の毒性はより低く、そしてウイルス産生性感染に対してより高い有効性を有する 。そのヌクレオチド三リン酸の形態がレトロウイルス逆転写酵素に対して選択性 を示すが、細胞性ヌクレオシドおよびヌクレオチドキナーゼの基質特異性の結果 リン酸化されないさらなるヌクレオシドアナログは、より効果的になる。 これらのアルファウイルスベクターのヒトT細胞およびマクロファージ/単球 細胞株への投与は、レトロウイルスベクター処置のない同じ細胞に比べて、AZT およびddCの存在下で、HIVに対するこれらの耐性を上昇させ得る。AZTによる処 置は毒性の副作用を避けるため通常レベルより低いが、それでもHIV の蔓延を有 効に阻害する。処置の経路はブロッカーについて記載したものと同様である。 1つの実施態様において、組換えアルファウイルスベクターは、それ自身毒性 はないが、ウイルスまたは他の病原体に特異的なプロテアーゼのようなタンパク 質によりプロセシングまたは改変された場合、毒性の形態に変換される産物を特 定する遺伝子を含有する。例えば、組換えアルファウイルスは、リシンA鎖のプ ロタンパク質をコードする遺伝子を含有し得、これはHIVプロテアーゼによるプ ロセシングにより毒性になる。より詳しくは、毒素リシンまたはジフテリアA鎖 の合成の不活性なプロタンパク質の形態は、HIVウイルスによりコードされたプ ロテアーゼが適切な「プロ」エレメントを認識し、そしてそれを切り離すように 配置することにより、活性形態に切断され得る。 別の実施態様において、アルファウイルス構築物は、細胞内の同定物質の存在 (例えば、ウイルス遺伝子の発現)に応答して標的細胞の表面に「レポーティン グ産物」を発現し得る。この表面タンパク質は、レポーティングタンパク質に対 する抗体のような細胞傷害性物質または細胞傷害性T細胞により認識され得る。 同様に、このような系は、同定タンパク質を発現する特定の遺伝子を有するこれ らの細胞を簡単に同定するための検出系(下記を参照のこと)として使用され得 る。 同様に、別の実施態様において、それ自身が治療的に有益である表面タンパク 質が発現され得る。HIV の特定の場合に、HIV 感染細胞において特異的なヒトCD 4タンパク質の発現は、2つの点で有益であり得る: 1.可溶性CD4 が遊離のウイルスに対して阻害することが示されているが、細 胞内でのHIV env へのCD4 の結合は、生存可能なウイルス粒子の形成を阻害し得 る。しかし、このタンパク質は膜に結合したままであり、そして構造的に内因性 CD4(患者はこれに対して免疫学的に寛容(tolerant)であるはずである)と同一 であるため、全身性のクリアランスおよび可能な免疫原性の問題はない。 2.CD4/HIV env複合体は細胞死の原因として含まれているため、(HIV感染細 胞に存在する過剰のHIV-envの存在下での)CD4のさらなる発現は、より急速な細 胞死を引き起こし、従ってウイルス拡散を阻害する。これは特に、HIV誘導性細 胞傷害性に対して比較的抵抗力がある結果(これはまた、明らかに細胞表面上の CD4の相対的な欠乏のためである)、ウイルス産生の病原性物質保有者として働 く単球およびマクロファージに適用可能であり得る。 別の実施態様において、アルファウイルスベクターは、ベクターに感染した細 胞の生存性に必須のRNA 分子を切断し、そして不活性化するリボザイムをコード する。リボザイム産生を病原性の状態(例えば、HIV tat)に対応する特異的なRNA 配列に依存させることにより、毒性は病原性状態に特異的になる。 5.マーカーの発現 特異的なRNA配列に応答して細胞中の緩和剤を発現する上記の技術はまた、同 定タンパク質を発現する細胞中で特定の遺伝子(例えば、特定のウイルスが有す る遺伝子)を検出可能にし、それによりそのウイルスを有する細胞を検出可能に するように改変され得る。さらにこの技術は、ウイルスに関連する同定タンパク 質を有する細胞の臨床サンプル中のウイルス(例えば、HIV)の検出を可能にする 。 感染細胞中における同定タンパク質の存在に応答するアルファウイルスベクタ ー中で、その存在が容易に同定され得る産物(「マーカー産物」)をコードする ゲノムを提供することにより、この改変は実施され得る。例えば、HIVは適切な 細胞に感染すると、tatおよびrevを作る。この指示細胞は、従って、tatおよび /またはrevRNA転写物による活性化によって組換えアルファウイルスにより発現 されるマーカー遺伝子(例えば、アルカリホスファターゼ遺伝子、β−ガラクト シダーゼ遺伝子、またはルシフェラーゼ遺伝子)をコードするゲノム(例えば、 適切な組換えアルファウイルスによる感染によって)を用いて提供され得る。β −ガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼの場合、細胞を基質アナログ に曝すと、サンプルがHIV 陽性の場合は色または蛍光が変化する。ルシフェラー ゼの場合、サンプルをルシフェリンに曝すことにより、サンプルがHIV 陽性の場 合、発光する。β−ガラクトシダーゼのような細胞内酵素の場合、着色細胞また は蛍光細胞を計測するか、または細胞抽出物を作成して適切なアッセイを行うこ とにより、ウイルスの力価を直接測定し得る。また、膜結合型のアルカリホスフ ァターゼの場合、蛍光性基質を用いて細胞表面上で酵素アッセイを行うことによ り、ウイルスの力価を測定し得る。分泌された酵素(例えば、操作された形態の アルカリホスファターゼ)については、少量の培養上清サンプルを活性について アッセイすることにより、単一培養物の経時変化を連続的にモニターできる。従 って、異なる目的に対して異なる形態のこのマーカー系を使用し得る。これらに は、活性のあるウイルスの計測、または培養物中のウイルス蔓延、および種々の 薬物によるこの蔓延の阻害の感度が高くかつ簡単な測定が含まれる。 このウイルスに対する中和抗体の存在下または非存在下のいずれかで、ウイル スの存在を試験することにより、上記の系にさらなる特異性を与え得る。例えば 、 試験する臨床サンプルの一部において、HIVに対する中和抗体が存在し得るが、 別の部分では、中和抗体が全く存在しないこともある。抗体が存在する系におい てこの試験が陰性であり、かつ抗体が存在しない系においてこの試験が陽性の場 合、これはHIV の存在を確認するための助けになる インビトロアッセイの類似の系で、特定の遺伝子(例えば、ウイルス遺伝子) の存在は、細胞サンプルで測定され得る。この場合、サンプルの細胞は、適切な ウイルスRNA転写体の存在下でのみ発現されるレポーター遺伝子を有する適切な アルファウイルスベクターで感染させる。レポーター遺伝子はサンプル細胞に入 った後、宿主細胞が適切なウイルスタンパク質を発現する場合のみ、そのレポー ター産物(例えば、β−ガラクトシダーゼまたはルシフェラーゼ)を発現する。 レポーター遺伝子は存在する同定物質よりもより多くの量のレポーター産物を 発現し得、増幅効果が得られるため、これらのアッセイはより迅速で好感度であ る。 6.免疫ダウンレギュレーション 簡単に前述したように、本発明はまた、アルファウイルスに感染した標的細胞 中の免疫系の1つまたはそれ以上の成分を抑制し得るベクター構築物を有する組 換えアルファウイルスを提供する。 簡単に説明すると、不適切なまたは好ましくない免疫応答(例えば慢性肝炎、 または骨髄のような異種組織の移植)の特異的ダウンレギュレーションは、移植 (MHC)抗原の表面発現を抑制する免疫抑制性ウイルス遺伝子産物を用いて操作で きる。C群アデノウイルスAd2 とAd5 は、ウイルスのE3領域にコードされる19kd 糖タンパク質(gp19)を有する。このgp19分子は細胞の小胞体中のクラスIMHC 分子に結合し、細胞表面に対するクラスIMHC の末端グリコシル化と細胞表面へ の移動を防止する。例えば、骨髄移植の前に、ドナー骨髄細胞はこのgp19の発現 によってMHCクラスI移植抗原の表面発現を阻害するgp19コード化ベクター構築物 に感染され得る。これらのドナー細胞は、低い危険性の移植片拒絶で移植され得 、そして移植患者に必要な免疫抑制療法は最小限でよい。このためほとんど合併 症もなく、ドナー−受容個体の許容されるキメラ状態が存在し得る。いわゆる自 己免疫疾患(例えば、ループスエリテマトーデス(lupus erytheromiatis)、多 発 性硬化症、リウマチ様関節炎または慢性B型肝炎感染)を治療するのに、同様の 治療法が使用できる。 別の方法は、自然界で自己反応性のT細胞クローンに特異的な、アンチセンス メッセージ、リボザイムまたは他の特異的遺伝子発現阻害剤を使用する。これら は、自己免疫応答に関与する特定の好ましくないクローンのT細胞レセプターの 発現をブロックする。このアンチセンス、リボザイムまたは他の遺伝子は、ウイ ルスベクター送達系を用いて導入され得る。 7.置換または増強遺伝子療法 本発明のさらに1つの局面は、治療用タンパク質を発現し得る遺伝子配列を供 給するための、遺伝子移動の運搬体として作用する組換えアルファウイルスベク ターによる、動物細胞の形質転換に関する。本発明の1つの実施態様において、 ウイルスベクター構築物は、代謝、免疫制御、ホルモン制御、酵素的または膜関 連構造機能における、遺伝性または非遺伝性の遺伝子欠陥を防止、阻害、安定化 または逆転写し得る治療用タンパク質を発現するように設計される。この実施態 様はまた、個々の細胞を形質導入し得るウイルスベクターを記載し、これにより 治療用タンパク質が特定の細胞または組織から全身的にまたは局所的に発現され 得、これにより治療用タンパク質は、(a)存在しないかまたは欠陥のある細胞 性タンパク質または酵素の置換、または(b)欠陥のある、発現量の少ない細胞 性タンパク質または酵素の補充産生が可能である。このような疾患には、膵嚢胞 性繊維症、パーキンソン病、高コレステロール血症、アデノシンデアミナーゼ欠 損症、β−グロビン疾患、血友病AおよびB、ゴシェ病、糖尿病および白血病が ある。 本発明の1つの例として、ゴシェ病の治療に組換えアルファウイルスベクター が使用され得る。簡単に説明すると、ゴシェ病は酵素グリコセレブロシダーゼの 欠損を特徴とする遺伝子傷害である。この型の治療は、機能性細胞性酵素を与え ることによる単一の遺伝子置換療法の1つの例である。この酵素の欠損により、 体内のすべての細胞のリソゾームにグルコセレブロシドが蓄積する。しかし疾患 の表現型は、この疾患の非常にまれな神経障害の形態を除いて、マクロファージ にのみ現れる。この疾患では通常肝臓と脾臓そして骨の病変部が拡大する(総説 については、Science 256 : 794,1992 およびThe Metabolic Basis of Inherit ed Disease、第6版、Scriver ら、第2巻、1677頁を参照)。 8.リンホカインおよびリンホカインレセプター 上記のように、本発明は、アルファウイルス粒子を提供し、このアルファウイ ルス粒子は、数種の機能の中で、1またはそれ以上のサイトカインまたはサイト カインレセプターの発現を指示し得る。 簡単に述べれば、ガン治療の役割に加え、サイトカインは、確実な治療条件に 生じるネガティブな効果を有し得る。例えば、ほとんどの休止T細胞、B細胞、 大型顆粒のリンパ球および単核細胞は、IL-2Rαを発現しない。正常な休止細胞 におけるIL-2Rα発現の欠如とは反対に、IL-2Rαは、確実な白血病(ATL、Hairy 細胞、ホジキン病、急性および慢性の顆粒球性白血病)、自己免疫疾患を患う患 者の異常細胞によって発現され、そして同種移植片拒絶に関連される。興味深い ことに、これらの患者のほとんどにおいて、IL-2Rα由来の可溶性形態の血清濃 度が上昇する。従って、本発明の確立された実施態様を用いてサイトカインレセ プターの可溶性形態の血清濃度を増大することによって、治療を実施し得る。例 えば、IL-2Rの場合には、アルファウイルスベクターが、可溶性のIL-2Rαおよび IL-2Rβの両方を生成するために操作され得て、高い親和性の可溶性レセプター を作り出す。この配置において、血清IL-2レベルが低下し、パラクリンループを 阻害する。 同じストラテジーはまた、自己免疫疾患に対しても有効であり得る。特に、い くつかの自己免疫疾患(例えば、リウマチ様関節炎(SLE))がまた、IL-2の異常 発現に関係することから、レセプターの血清レベルを増大することによってIL-2 の作用をブロックすることもまた、このような自己免疫疾患を処置するために利 用され得る。 他の場合においても、IL-1のレベルを阻害することが有益であり得る。簡単に 述べれば、IL-1は、2つのポリペプチドIL-1αおよびIL-1βからなり、これらは いずれも多面発現効果を有する。主としてIL-1は、微生物産物または炎症による 刺激に応答して、単核食細胞により合成される。IL-1Rの天然に生じるアンタゴ ニストが存在し、IL-1レセプターアンタゴニスト(「IL-1Ra」)と呼ばれる。こ のIL-1Rアンタゴニストは、成熟IL-1と同じ分子サイズを有し、そしてそれと構 造的に関係がある。しかし、IL-1RaのIL-1Rへの結合は、任意のレセプターのシ グナル化を全く開始しない。従って、この分子は、可溶性レセプターとは異なる 作用機構を有し、これはサイトカインと複合体化し、それゆえレセプターとの相 互作用を防げる。IL-1は、正常なホメオスタシスにおいて重要な役割を害してい ないようである。動物においては、IL-1レセプターの抗体は、炎症、およびエン ドトキシンと他の炎症誘発剤による食欲不振を弱める。 敗血病ショックの場合において、IL-1は、強力な血管拡張剤である2次化合物 を誘導する。動物においては、外因的に供給されたIL-1は平均動脈圧を降下させ 、そして白血球減少症を誘発する。IL-1の中和抗体は、動物において、エンドト キシン誘発熱を下げる。IL-1Rの3日間連続的な注入治療を受けた、敗血症ショ ック患者の研究において、28日の死亡率は16%であり、これに対してプラシー ボ注入を受けた患者は44%であった。 自己免疫疾患の場合には、IL-1活性の減少が、炎症を減少させる。同様に、組 換えレセプターを用いたIL-1活性のブロックは、おそらく炎症の減少により、動 物における同種移植片の生存性を増大し得る。 これらの疾患は、アルファウイルスベクターを操作して、可溶性レセプター、 またはより特定には、IL-1Ra分子を産生し得るさらなる例を提供する。例えば、 敗血症ショックを患った患者において、ベクター粒子を産生するIL-1Raの単一の 注射が、組換えIL-1Rの連続的注入を必要とする現行のアプローチと置き換え得 る。 サイトカイン応答性、またはより特定には、不正確なサイトカイン応答性はま た、感染性疾患の制御または軽減の失敗に関し得る。おそらく、最も良く研究さ れた例は、強力で、しかし逆効果のTH2優勢応答を有するマウスおよびヒトのリ ーシュマニア症の非回復形態である。同様に、癩腫性癩が、優勢で、しかし不適 切なのTH2応答に伴っている。これらの症状において、アルファウイルスに基づ いた遺伝子治療は、固形腫瘍の治療について推薦される部位特異的アプローチと は反対に、IFNγの循環レベルを増大するために有用であり得る。IFNγは、TH-1 T細胞により産生され、そしてTH-2亜型増殖のネガティブなレギュレーターと して機能する。IFNγはまた、IgEへのイソ型スイッチングを含む、B細胞に対す る多くのIL-4媒介効果を拮抗する。 IgE、肥満細胞、および好酸球は、アレルギー反応の媒介に関与する。IL-4は 、分化中のT細胞に作用してTH-2の発達を刺激する一方、TH-1応答を阻害する。 従って、アルファウイルスに基づいた遺伝子治療はまた、伝統的なアレルギー治 療と共に行われ得る。1つの可能性は、少量の攻撃アレルゲン(すなわち、伝統 的なアレルギー注射)と共にアルファウイルス-IL4Rを送達することである。可 溶性IL-4Rは、IL-4の活性を防げ、そしてそれゆえ、強力なTH-2応答の誘発を防 げる。 9.自殺ベクター 本発明の1つのさらなる局面は、パッケージング/プロデューサー細胞株にお ける野生型アルファウイルスの拡大を制限するための、アルファウイルス自殺ベ クターの発現に関する。簡潔には、1つの実施態様において、アルファウイルス 自殺ベクターは、ベクター接合領域の3’配列、およびパッケージング細胞株発 現ベクターの5’アルファウイルス構造配列との間のRNA組換え事象から生じる 、野生型アルファウイルス配列に特異的な、アンチセンスまたはリボザイム配列 を包含する。アンチセンスまたはリボザイム分子は、特異的組換え配列の存在下 においてのみ、温度安定性であり、そしてアルファウイルスパッケージング/プ ロデューサー細胞株においては、その他の効果を何も有さない。あるいは、毒性 分子(例えば、以下で開示される分子のような)はまた、野生型アルファウイル スの存在下のみで発現するベクターで発現され得る。 10.転移性腫瘍の拡大を妨げるためのアルファウイルスベクター 本発明の1つのさらなる局面は、悪性新生物の侵襲性を阻害または軽減するた めの、アルファウイルスベクターの使用に関する。簡潔には、特に悪性疾患の程 度は、代表的には腫瘍の脈管形成に関係する。腫瘍の脈管形成の1つの原因は、 特定の腫瘍により発現される可溶性腫瘍新脈管形成因子(TAF)(Paweletzら、C rit.Rev.Oncol.Hematol.9:197,1989)の産生である。本発明の1つの局面 において、腫瘍脈管形成は、TAFに特異的なアンチセンスまたはリボザイムRNA分 子を発現するアルファウイルスベクターを用いることによって遅らされ得る。あ るいは、抗新脈管形成因子(Mosesら、Science 248:1408,1990; Shapiroら、PN AS 84:2238,1987)が、単独あるいは上記のリボザイムまたはアンチセンス配列 との組み合わせのいずれかで、腫瘍の脈管形成を遅らせるかまたは阻害する目的 で、発現され得る。あるいは、アルファウイルスベクターはまた、周辺組織上の TAFレセプターに対して特異的な抗体を発現するために用いられ得る。 11.アルファウイルス粒子の投与 本発明の1つの局面において、組換えアルファウイルスベクターまたは粒子の 投与のための方法が提供される。簡潔には、ウイルスベクター投与の最終的な様 式は、通常特定の治療応用、ベクターの効力を上昇させる最良の様式、および最 も便利な投与経路に依存する。一般的に、この実施態様は、例えば(1)血流へ の直接注入、(2)特定の組織または腫瘍への直接注入、(3)経口投与、(4 )鼻内吸入、(5)粘膜組織への直接塗付、(6)動物への形質導入自己細胞の エクスビボ投与により、送達されるように設計され得る組換えアルファウイルス ベクターを含む。従って、治療用アルファウイルスベクターは、ベクターが(a )正常な健常細胞を形質導入し、かつ細胞を形質転換して、全身的または局所的 に分泌される治療用タンパク質または物質のプロデューサーにする、(b)異常 または欠陥のある細胞を形質転換して細胞を正常な機能性表現型に転換する、( c)異常な細胞をそれが破壊されるように形質転換する、および/または(d) 細胞を形質導入して免疫応答を操作する、ことができるような様式で、投与され 得る。 I.転写因子活性の調節 さらに別の実施態様において、アルファウイルスベクターは、感染細胞中の転 写因子の増殖制御活性を調節するために利用され得る。簡潔には、転写因子は、 配列特異的トランス活性化または抑制を介して、遺伝子発現のパターンに直接的 に影響を与える(Karin,New Biologist 21 : 126-131,1990)。すなわち、変異 された転写因子がオンコジーンのファミリーを表すことは驚くべきことではない 。アルファウイルス遺伝子移入療法は、例えば、その調節されない増殖が腫瘍形 成性転写因子により活性化される腫瘍細胞、およびホモ−およびヘテロダイマー のトランス活性化または抑制性転写因子複合体の形成において共同して結合を促 進 または阻害するタンパク質に対する制御を復帰させるために使用され得る。 細胞増殖を逆転させる1つの方法は、c-myc/Maxヘテロダイマー転写因子複合 体のトランス活性化能力を阻害することである。簡潔には、核オンコジーンc-my cは、細胞を増殖させることにより発現され、そしていくつかの顕著な機構(レ トロウイルス挿入、増幅、および染色体転座を含む)により活性化され得る。Ma xタンパク質は静止細胞中で発現され、そしてc-mycとは独立して、単独でまたは 未同定の因子とともにのいずれかで発現され、myc/Maxヘテロダイマーにより活 性化されるものと同じ遺伝子の発現を抑制するように機能する(Cole,Cell 65 : 715-716,1991)。 腫瘍細胞のc-mycまたはc-myc/Max増殖の阻害は、アルファウイルスベクターに より制御される標的細胞中でのMaxの過剰発現により達成され得る。Maxタンパク 質はわずか160アミノ酸(長さ480ヌクレオチドのRNAに相当する)であり、独立 してあるいは細胞の増殖制御を放出する因子に標的化された他の遺伝子および/ またはアンチセンス/リボザイム部分とともにのいずれかで、アルファウイルス ベクターに容易に取り込まれる。 ホモ/ヘテロ複合体会合の調節は、転写因子活性化遺伝子発現を制御するため の別のアプローチである。例えば、トランス活性化転写因子NF−Bの細胞質から 核への移行は、インヒビタータンパク質IBとともにヘテロダイマー複合体中に ある時に防止される。種々の物質(特定のサイトカインを含む)による誘導に際 して、IBはリン酸化され、そしてNF−Bは放出され、そして核に移行され、こ こで配列特異的トランス活性化機能を発揮する(BaeuerleおよびBaltimore,Scie nce 242 : 540-546,1988)。NF−B/IB複合体の解離は、IBのリン酸化部位 を抗体でマスクすることにより防止され得る。このアプローチは、NF−IB転写 因子の核への移行を防止することにより、NF−IB転写因子のトランス活性化活 性を有効に阻害する。標的細胞におけるIBリン酸化部位特異的抗体またはタン パク質の発現は、アルファウイルス遺伝子移入ベクターを用いて達成され得る。 本明細書に記載したアプローチと類似のアプローチは、junタンパク質とfosタン パク質との間の会合を阻害することにより、トランス活性化転写ヘテロダイマー 因子AP−1(TurnerおよびTijan,Science 243 : 1689-1694,1989)の形成を防 止するために使用され得る。 J.薬学的組成物 前述のように、本発明はまた、薬学的に受容可能なキャリアー、希釈剤、また は賦形剤と組み合わせた、組換えシンドビス粒子またはウイルス、あるいはシン ドビスベクター構築物からなる薬学的組成物も提供する。 簡潔には、感染性組換えウイルス(上で粒子ともいう)は、粗製形態または精 製形態のいずれかで保存され得る。粗製形態でウイルスを産生するためには、ウ イルス産生細胞をまずバイオリアクター中で培養し、ここでウイルス粒子を細胞 から培養培地中へ放出させる。次に、まず組換えウイルスを含有する培養培地に 充分量の処方緩衝液を加えて水性懸濁液を形成することにより、ウイルスを粗製 形態で保存し得る。特定の好適な実施態様において、処方緩衝液は、サッカリド 、高分子量構造添加剤、および緩衝化成分を水中に含有する水溶液である。この 水溶液はまた、1つまたはそれ以上のアミノ酸を含有してもよい。 組換えウイルスは、精製形態でも保存され得る。より詳細には、処方緩衝液の 添加前に、上記の粗製組換えウイルスをフィルターに通すことにより澄明化し、 次に向流濃縮システム(Filtron Technology Corp.、Nortborough、MA)などに より濃縮し得る。1つの実施態様において、DNaseを濃縮物に加えて、外来DNAを 消化する。次に、過剰の培地成分を除去し、より所望される緩衝化溶液中の組換 えウイルスを確立するために消化物をダイアフィルトレートする。次にダイアフ ィルトレート物をSephadex S-500ゲルカラムに通して、精製組換えウイルスを溶 出させる。次に所望の最終成分濃度を得て、組換えウイルスの希釈を最小にする ためにこの溶出液に充分量の処方緩衝液を加える。次に、水性懸濁液を、好まし くは−70℃で保存するか、または直ちに乾燥する。上記のように、処方緩衝液は 、サッカリド、高分子量構造添加剤、および緩衝化成分を水中に含有する水溶液 であってもよい。この水溶液はまた、1つまたはそれ以上のアミノ酸を含有して もよい。 粗製組換えウイルスはまた、イオン交換カラムクロマトグラフィーにより精製 され得る。簡潔には、粗製組換えウイルスをまずフィルターに通すことにより澄 明化し得、次に濾液を高度にスルホン化されたセルロースマトリックスを含有す るカラムにのせる。次に、高塩緩衝液を用いることにより、組換えウイルスを精 製形態でカラムから溶出させ、そして溶出液を分子排除カラムに通すことにより 、高塩緩衝液をより所望される緩衝液に交換し得る。次に、前述のように、精製 組換えウイルスに充分量の処方緩衝液を加え、そして水性懸濁液を、直ちに乾燥 させるかまたは好ましくは−70℃で保存するかのいずれかをする。 粗製形態または精製形態の水性懸濁液は、雰囲気温度で凍結乾燥または蒸発に より乾燥され得る。簡潔には、凍結乾燥は、水性懸濁液をガラス転移温度より低 くまたは水性懸濁液の共晶点温度より低くに冷却する工程、昇華により冷却した 懸濁液から水分を除去して凍結乾燥ウイルスを形成する工程を包含する。1つの 実施態様において、処方された組換えウイルスのアリコートを凍結乾燥機(Supe rmodulyo 12K)に取り付けたEdwards Refrigerated Chamber(3 shelf RC3S unit )に入れる。Phillipsら(Cryobiology,18 :414,1981)の記載する多段階凍結 乾燥手順を用いて、処方された組換えウイルスを、好ましくは−40℃〜−45℃の 温度で凍結乾燥する。得られる組成物は、凍結乾燥ウイルスの10重量%未満の水 を含む。以下に詳述されるように、いったん凍結乾燥されると、組換えウイルス は安定であり、そして−20℃〜25℃で保存され得る。 蒸発法において、水分は雰囲気温度で蒸発により水性懸濁液から除去される。 1つの実施態様において、水分は噴霧乾燥により除去される(欧州特許第 520,7 48号)。噴霧乾燥プロセスにおいては、水性懸濁液は予め加熱された気体流(通 常は空気)の中に送達され、この際懸濁液の液滴から水分は急速に蒸発する。噴 霧乾燥装置は、多くの製造業者から入手可能である(例えば、Drytec Ltd.,Tonb ridge、England;Lab-Plant,Ltd.,Huddersfield、England)。一旦脱水される と、組換えウイルスは安定であり、そして、−20℃〜25℃で保存され得る。本明 細書に記載した方法において、乾燥または凍結乾燥ウイルスの得られる水分含量 は、カール−フィッシャー装置(EM,Science Aquastar VIB 容積滴定機、Cherr y Hill、NJ)、または重量法により測定され得る。 前述のように、処方に使用される水溶液は好ましくは、サッカリド、高分子量 構造添加剤、および緩衝化成分および水からなる。この溶液はまた、1つまたは それ以上のアミノ酸を含有してもよい。これらの成分の組合せが、凍結および凍 結乾燥または蒸発による乾燥に際して組換えウイルスの活性を保護するために作 用する。好適なサッカリドはラクトースであるが、他のサッカリド(例えば、ス クロース、マンニトール、グルコース、トレハロース、イノシトール、フルクト ース、マルトースまたはガラクトース)を使用することもできる。さらに、サッ カリドの組合せ(例えば、ラクトースとマンニトール、またはスクロースとマン ニトール)を使用し得る。特に好適なラクトースの濃度は3〜4重量%である。 好ましくは、サッカリドの濃度範囲は、1〜12重量%である。 高分子量構造添加剤は、凍結の間のウイルスの凝集の防止を助け、凍結乾燥ま たは乾燥状態での構造的支持を提供する。本発明において、構造添加剤は、5000 より大きい分子量の場合は「高分子量」であると考えられる。好適な高分子量構 造添加剤は、ヒト血清アルブミンである。しかし、他の物質(例えば、ヒドロキ シエチル−セルロース、ヒドロキシメチル−セルロース、デキストラン、セルロ ース、ゼラチン、またはポビドン)を使用してもよい。ヒト血清アルブミンの特 に好適な濃度は、0.1重量%である。好ましくは、高分子量構造添加剤の濃度は 、0.1〜10重量%の範囲である。 アミノ酸は(存在する場合は)、水性懸濁液の冷却および融解に際して、ウイ ルス感染性をさらに保護するように機能する。さらに、アミノ酸は、冷却された 水性懸濁液の昇華の間および凍結乾燥状態にある間にウイルスの感染性をさらに 保護するように機能する。好適なアミノ酸はアルギニンであるが、他のアミノ酸 (例えば、リジン、オルニチン、セリン、グリシン、グルタミン、アスパラギン 、グルタミン酸またはアスパラギン酸)も使用し得る。特に好適なアルギニン濃 度は、0.1重量%である。好ましくは、アミノ酸濃度は、0.1〜10重量%の範囲で ある。 緩衝化成分は、比較的一定のpHを維持することにより、溶液を緩衝化するよう に作用する。所望のpHの範囲(好ましくは7.0と7.8との間)に応じて種々の緩衝 液が使用され得る。適切な緩衝液には、リン酸緩衝液およびクエン酸緩衝液が含 まれる。組換えウイルス処方物の特に好適なpHは7.4であり、そして好適な緩衝 液はトロメタミンである。 さらに、水溶液が、最終的に処方された組換えアルファウイルスを適切な等浸 透圧塩濃度に調整するために使用される中性の塩を含有することが好ましい。適 切な中性の塩には、塩化ナトリウム、塩化カリウムまたは塩化マグネシウムが含 まれる。好適な塩は塩化ナトリウムである。 上記の、所望の濃度の成分を含有する水溶液は、濃縮されたストック溶液とし て調製され得る。 本明細書中に提供される開示が与えられれば、凍結乾燥ウイルスを室温で保存 することを意図する場合は、水溶液内に特定のサッカリドを利用することが好ま しくあり得ることは当業者には明らかであろう。より詳細には、特に室温での保 存には、二糖(例えば、ラクトースまたはトレハロース)を利用することが好ま しい。 本発明の凍結乾燥または脱水されたウイルスは、種々の物質を用いて再構成さ れ得るが、好ましくは水を使用して再構成される。特定の場合には、最終処方物 を等張にする希塩溶液を使用することもできる。さらに、再構成されたウイルス の活性を増強することが公知の成分を含有する水溶液を使用することが有利であ り得る。このような成分には、サイトカイン(例えば、IL−2)ポリカチオン( 例えば、硫酸プロタミン)または再構成されたウイルスの形質導入効率を増強す る他の成分が含まれる。凍結乾燥または脱水された組換えウイルスは、任意の便 利な容量の水、または上記の凍結乾燥または脱水されたサンプルの実質的な、好 ましくは完全な可溶化を可能にする再構成物質により再構成され得る。 以下の実施例は、例示のためであり、本発明を制限するものではない。 実施例 実施例1 シンドビスゲノム長cDNAのクローニング 陽極性を有するRNA ゲノムを有するウイルスの性質は、許容宿主(permissive host)として働く真核細胞中に導入される場合、精製されたゲノム核酸が機能性 メッセージRNA(mRNA)分子として働くことである。このように、ウイルスから精 製されたこのゲノムRNAは、RNAが精製された元の野生型ウイルスによる感染によ り特徴付けられる感染周期と同一の感染周期を開始し得る。 例えば、蚊(Culexus univittatus)から単離されたシンドビスウイルスAr-339 株(ATCC #VR-1248,Taylor ら、Am.J.Trop.Med.Hyg.4 : 844 1955)を、ベ ビーハムスター腎臓(BHK)細胞に伝播し、低多重度(0.1PFU/細胞)で感染させ 得る。あるいは、シンドビスウイルス株(Lee Biomolecular、San Diego,CA) もまた、同一の方法で使用し、そして伝播させ得る。前述のように、感染の48時 間後、0℃で10%(w/v)のポリエチレングリコール(PEG-8000)を用いて清澄化 した溶解物からシンドビスのビリオンを沈殿させ得る。PEGのペレットに含まれ るこのシンドビスのビリオンを2%SDSで溶解させ得、そして市販のオリゴdTカ ラム(Invitrogen)を使用するクロマトグラフィーによりポリ−アデニル化mRNAを 単離する。 下記の配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、ポリAで選択し たmRNAにおいてcDNA第1鎖の合成を2回行う: 5'-TATATTCTAGA(dT)25-GAAATG-3'(配列番号3) 簡潔には、このプライマーは、5'末端に効率的な制限エンドヌクレアーゼ消化 のための5個のヌクレオチドの「緩衝配列」、続いてXbaI認識配列、25個の連続 したdTヌクレオチド、およびシンドビスの3'最末端に正確に相補的な6個のヌク レオチドを含む。このように、最初の回のcDNA合成に関する選択は、2つのレベ ルで生じる:(1)機能性mRNAに必須の、ポリアデニル化分子、および(2)複 数のmRNA種を含有するプール中の、シンドビスmRNA分子からの選択的プライミン グ。さらに、逆転写を10mMのMeHgOHの存在下で行い、逆転写の間の人為的停止の 頻度を軽減する。 次いで、最初のゲノム長シンドビスcDNAを、6対の重複するプライマーを使用 して6つの別個のセグメントでPCRにより増幅する。簡潔には、ウイルスの相補 配列に加えて、シンドビス5'末端正方向プライマーを、細菌の性SP6 RNA ポリメ ラーゼプロモーターに対応する19個のヌクレオチド配列および5'末端に結合した ApaI制限エンドヌクレアーゼ認識配列を含むように構築する。細菌性SP6ペースR NAポリメラーゼは、インビトロ転写が真正のシンドビス5'末端に対応するAリボ ヌクレオチドに結合した単一の非ウイルス性Gリボヌクレオチドのみを含むよう に保たれる。ApaI認識配列の封入は、プラスミドベクター(pKSII+,Stratagene )ポリリンカー配列へのPCRアンプリコンの挿入を促進する。効率的な消化を可 能にするために5個のヌクレオチドの「緩衝配列」もまた、ApaI認識配列の前に 位置させる。SP6−5'シンドビス正方向プライマーおよび全シンドビスゲノムを 増幅するために必要な全てのプライマー対の配列を以下に示す(以下で用いる「 nt」および「nts」は、それぞれ「ヌクレオチド」および「複数のヌクレオチド 」を意味する)。参照配列(GenBank参照番号SINCG)はStrauss ら、Virology 133 : 92-110 による。 上記6個のプライマーセットによるシンドビスcDNAのPCR増幅を、テルメラー ゼ(Thermalase)熱安定性DNA ポリメラーゼ(Amresco Inc.Solon,OH)および この供給者から提供される1.5mM のMgCl2を含有する緩衝液を使用して、別々の 反応で行う。さらに、この反応は、5% DMSO、および「Hot START WAX」ビーズ (Perkin-Elmer)を含み、下記のPCR増幅プロトコールを使用する: 増幅後、6個の反応産物をまずPCRIIベクター(Invitrogen)に挿入し、次いで前 述の適切な酵素を使用して、段階的にpKSII+(Stratagene)ベクターの ApaIおよ び XbaI部位の間に挿入する。このクローンを、pVGSP6GEN と称する。 シンドビスゲノムcDNAクローンpVGSP6GENを、25個のヌクレオチド長のポリdA :dTストレッチにすぐに隣接した下流の位置でpVGSP6GEN を1回切断する XbaI による消化により線状化する。線状化pVGSP6GEN クローンを「GENE CLEAN」(BI O 101、La Jolla,CA)で精製し、0.5mg/mlの濃度に調整する。線状化pVGSP6GEN クローンの転写を、以下の反応条件によりインビトロで40℃で90分間行う:DNA 2ml/H2O 4.25ml;2.5mM のNTP(UTP,ATP,GTP,CTP)10ml;20mMのMe7G(5') ppp(5')Gキャップアナログ1.25ml;100mM のDTT 1.25ml;5×転写緩衝液(Prom ega)5ml;RNasin(Promega)0.5ml;10mg/ml ウシ血清アルブミン0.25ml;SP6 RNA ポリメラーゼ(Promega)0.5ml。インビトロ転写産物を、DNaseI(Promega )により消化し、一連のフェノール/CHCl3およびエーテル抽出、それに続くエ タノール沈澱により精製し得るか、あるいは、トランスフェクションに直接使用 し得る。インビトロの転写反応産物または精製したRNAを、市販の陽イオン性脂 質化合物(「LIPOFECTIN」、(GIBCO-BRL)、Gaithersburg、MD)と複合体化し、 そして75%のコンフルエントで60mMのペトリディッシュに維持されたベビーハム スター腎臓−21(BHK-21)細胞に適用する。トランスフェクトされた細胞を30℃ でインキュベートする。トランスフェクションの94時間後、広範囲の細胞病理学 的効果(CPE)が観察される。シンドビスcDNAクローンから転写されたRNA を受け 取っていないプレートでは、明白なCPEは観察されない。さらに、トランスフェ クトされた細胞から採取され、BHK-21細胞の新鮮な単層に添加され、そして30℃ または37℃でインキュベートされた上清1mlにより、18時間以内に明白なCPEが 生じる。これは、シンドビスcDNAクローンpVGSP6GENが真に感染性であることを 証明している。 表1に示されるpVGSP6GENの配列分析は、本明細書に記載されたシンドビスゲ ノムクローンとGenbankにより提供されたウイルスのクローン配列(GenBank参照 番号SINCG)との間の複数の配列差異を示す。多くの配列差異は、シンドビスタ ンパク質における非保存性アミノ酸変化の置換をもたらす。どの配列変化が、本 明細書に記載されたクローンに独特であるか、またはクローニング人為産物の結 果であるかという問題を解決するために、前述のようにビリオンRNA をRT-PCRに より増幅し、市販のキット(Promega、Madison、WI)を使用して、RT-PCRアンプ リコン産物の直接配列決定により、問題のヌクレオチドに関する配列を決定し、 そして対応するpVGSP6GEN 配列と比較する。この検討の結果を表2に示す。簡単 に説明すると、クローニング人為産物の結果である3個の非保存性アミノ酸変化 、Gly→Glu,Asp→Gly、およびTyr→Cysが、それぞれウイルスヌクレオチド2245 ,6193、および6730で観察される。非保存性アミノ酸変化を生じさせるこれらの ヌクレオチド変化は全て、ウイルスの非構造タンパク質(NSP)遺伝子(nt2245はN SP2に、そしてnt6193および6730はNSP4に)に位置づけられる。 NSP2およびNSP4遺伝子の修復は、前述のように5回プラーク精製したストック 由来のビリオンRNAを使用して、RT-PCRにより達成される。前述のSP6-1A/1Bプラ イマー対は、nt2245変化を修復するために使用される。RT-PCRアンプリコン産物 を、Eco47IIIおよびBglIIで消化し、882bpフラグメントを1%アガロース/TBE ゲル電気泳動により精製し、そしてEco47IIIおよびBglIIでの消化およびCIAPで の処理により調製されたpVGSP6GENクローンの対応する領域中に交換する。前記 の3A/7349Rプライマー対は、nt6193およびnt6730変化を修復するために使用され る。RT-PCRアンプリコン産物を、EcoRIおよびHpaIで消化し、1,050bpフラグメン トを1%アガロース/TBEゲル電気泳動により精製し、そしてpVGSP6GENクローン の対応する領域中に交換する。このクローンをpVGSP6GENrepと称する。前述のよ うに、XbaIでの消化により線状化されたpVGSP6GENrep DNAからインビトロ転写さ れたRNAによるBHK細胞のトランスフェクションは、トランスフェクションの18時 間後に広範囲のCPE をもたらす。 実施例2 アルファウイルス感染を開始するDNA ベクターの生成真核細胞重層ベクターイニシエーション系 上記のように、本発明は、一般にcDNAからRNAの5'合成を開始し得るプロモー ター、細胞内で自律的にまたは自己触媒的に複製し得る構築物、さらに異種核酸 配列を発現し得る構築物、および転写終結を制御する3'配列を含む、真核細胞重 層ベクター開始システムを提供する。1つの実施態様によれば、このような構築 物は、以下の順序のエレメントにより構築され得る:真正のアルファウイルス5' 末端でウイルスRNA の合成を開始し得る5'真核細胞プロモーター、アルファウイ ルスの転写を開始し得る5'配列、アルファウイルスの非構造タンパク質をコード するヌクレオチド配列、ウイルスの接合領域、異種配列、アルファウイルスRNA ポリメラーゼ認識配列、および3'転写終了配列ポリアデニル化シグナル配列。こ のようなアルファウイルスcDNA発現ベクターはまた、介在配列(イントロン)を 含有し、これは細胞質に輸送される前に核内でプレRNAよりスプライシングされ 、そして細胞質/核DNAテンプレートに輸送される機能的mRNA分子に関して、本 システムの総合的な効果を向上し得る。イントロンスプライシングシグナルは、 例えば、シンドビスと実施例3に記載されるような異種遺伝子領域との間に位置 する。 シンドビスクローンpVGSP6GENrepおよび哺乳動物RNAポリメラーゼIIプロモー ターを利用した真核細胞重層ベクター開始システムの構築は、本質的には以下の ように達成され得る。簡潔には、プラスミドpVGSP6GENrepを、BglIIおよび XbaI で消化し、そして反応産物を 0.8%アガロース/TBE で電気泳動する。得られた 9,438bpフラグメントを切り出し、「GENE CLEAN」(BIO 101,Vista,CA)で精 製し、そしてpCDNA3(Invitrogen,San Diego,CA)の BglII,XbaI、およびCIA Pによる処理から得られる4,475bpベクターフラグメントに連結させる。この構築 物をpCDNASINbgl/xbaと称する。 モロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)由来の末端反復配列(LTR)のU3領域を 、最初の転写ヌクレオチドが単一G残基であり、これがインビボでキャップされ 、シンドビス5'末端が続くように、5'ウイルス末端に位置させる。Mo-MLV LTR とシンドビス5'末端の並列化を、以下に記載されるように重複PCRにより達成す る。BAG ベクター(Price ら、PNAS 84 : 156-160,1987)および下記のプライマ ー対を含有する反応物中で、最初の一次PCR反応でMo-MLV LTRの増幅を達成する : 正方向プライマー:BAGBg12F1(緩衝配列/BglII認識配列/Mo-MLV LTR nts1〜22) : 5'-TATATAGATCTAATGAAAGACCCCACCTGTAGG (配列番号15) 逆方向プライマー:BAGwt441R2(SIN nts5〜1/Mo-MLV LTR nts 441〜406): 5'-TCAATCCCCGAGTGAGGGGTTGTGGGCTCTTTTATTGAGC (配列番号16) 上記のプライマー対によるMo-MLV LTRのPCR増幅を、テルメラーゼ熱安定性DNA ポリメラーゼ(Amresco Inc.,Solon,Ohio)および供給者により提供される1.5 mM のMgCl2を含有する緩衝液を使用して行う。さらに、この反応は、5% DMSO 、および「HOT START WAX」ビーズ(Perkin-Elmer)を含み、下記のPCR増幅プロト コールを使用する: 第2の一次PCR反応におけるシンドビス5'末端の増幅を、pVGSP6GENrepクロー ンおよび下記のプライマー対を含有する反応で達成する: 正方向プライマー:(Mo-MLV LTR nts 421〜441/SIN nts1〜16): 5'-CCACAACCCCTCACTCGGGGATTGACGGCGTAGTAC (配列番号17) 逆方向プライマー:(SIN nts 3182〜3160): 5'-CTGGCAACCGGTAAGTACGATAC (配列番号18) Mo-MLV LTRのPCR増幅を、このプライマー対および上記増幅反応条件で、下記 のPCR増幅プロトコールを使用して達成する: 一次PCR反応からの457bpおよび3202bp生産物を、「GENE CLEAN」で精製し、そ して下記のプライマー対を用いるPCR反応で共に使用する: 正方向プライマー:BAGBg12F1(緩衝配列/BglII認識配列/Mo-MLV LTR ヌクレオチ ド1〜22): 5'-TATATAGATCTAATGAAAGACCCCACCTGTAGG (配列番号15) 逆方向プライマー:(SIN nts 2300〜2278): 5'-GGTAACAAGATCTCGTGCCGTG (配列番号19) 一次PCRアンプリコン産物のPCR増幅を、このプライマー対および上記増幅反応 条件で、下記のPCR増幅プロトコールを使用して達成する: 最初の一次PCRアンプリコン産物の25個の3'末端塩基は、第2の一次PCRアンプ リコン産物の25個の5'末端塩基と重複する;生じた2,752bpの重複する二次PCRア ンプリコン産物を、0.8%アガロース/TBE電気泳動により精製し、BglIIで消化 し、そして2,734bpの産物を BglIIおよびCIAPで処理したpcDNASINbgl/Xba中に結 合する。得られた構築物は、16,656bpであり、pVGELVISと称する。pVGELVISの配 列を、図3に示す(配列番号1)。シンドビスヌクレオチドは、この配列の塩基 1〜11,700に含まれる。 pVGELVISプラスミドDNAを、LIPOFECTAMINE(GIBCO-BRL,Gaithersburg,MD) と供給者により示唆される条件により複合体化し(約5μg DNA/8μg脂質試 薬)、そして約75%コンフルエントでBHK-21細胞を含有する35mmウェルに添加す る。野生型シンドビスウイルス感染に特徴的な細胞病理学的効果(CPE)が、感染 の48時間後に観察される。新鮮BHK-21単層へのトランスフェクト上清1mlの添加 により、16時間以内にCPEが生じる。このデータは、pVGELVIS構築物中でウイル スcDNAとRNA ポリメラーゼII発現カセットシグナルが正しく並列されたことを示 しており、これによりDNA 発現モジュールからRNA ウイルスの新たな開始がもた らされる。 pVGELVISプラスミドDNAのBHK細胞へのトランスフェクション後の野生型シンド ビスウイルスに特徴的な感染を開始する相対的な効率を試験するために、感染性 のセンターアッセイを行う。簡潔には、5μgのpVGELVISプラスミドDNAを、35mm ウェル中のBHK細胞に上記のようにトランスフェクトさせ、そしてトランスフェ クションの1.5時間後に、細胞をトリプシン処理し、そして、5×105の未処理のB HK細胞に10倍から10,000倍に系列希釈する。次いでこのトランスフェクトしたBH K細胞、および未処理のBHK細胞の混合物を35mmウェルに添加する。この細胞をプ レートに付着させ、続いて1.0%のNoble Agarを含有する培地で重層する。トラ ンスフェクションの48時間後、細胞溶解(シンドビスウイルスの複製の結果とし て)によるプラークが、直接、またはNeutral Red Steinを含有する第2の層で 重層することにより可視化され得る。この実験は、BHK細胞へのトランスフェク ション後の野生型シンドビスウイルスの生産におけるpVGLEVISプラスミドの効率 が、約1×103PFU/プラスミドDNAのmgであることを示す。 実施例3 RNA およびDNAアルファウイルスベクターの調製 A.シンドビスベーシックベクターの構築 シンドビスベーシックベクターの構築の最初の工程は、ウイルス5'および3'末 端由来の個々のエレメントを含有する2つのプラスミドサブクローンの産生であ る。次いで、これらのエレメントは、ベーシック遺伝子転移ベクターをアセンブ リするために使用され得る。 簡潔には、最初のプラスミドサブクローンは、ウイルスの3'末端の40個の末端 ヌクレオチドおよび連続したdA:dTヌクレオチドの25塩基ストレッチを含有する 。特に、以下のオリゴヌクレオチド対を最初に合成する。 正方向プライマー:SIN11664F(緩衝配列/NotI部位/SIN nts 11664〜11698): 5'-TATATGCGGCCGCTTTCTTTTATTAATCAACAAAATTTTGTTTTTAA (配列番号20) 逆方向プライマー:SINSac 11700R(緩衝配列/SacI部位dT25/SINヌクレオチド 11 700〜11692): 5'-TATATGAGCTCTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTGAAATGTTAAAA (配列番号21) 次いで、上記オリゴヌクレオチドを、10mMのMgCl2の存在下で等モル濃度で混 合し、100℃に5分間加熱し、そして室温まで緩除に冷却する。次いでこの部分 的に2本鎖の分子をクレノウDNAポリメラーゼおよび50μMのdNTPを使用して2 本鎖にする。次いで得られた89bp分子をNotIおよびSacIで消化し、2%NuSieve /1%アガロースゲルで精製し、NotIとSacIで消化し、そして10:1モル過剰の 挿入物:ベクター比でCIAP処理することにより調製したpKSII+プラスミド(Stra tagene,La Jolla,CA)中に連結する。この構築物を、pKSII3'SINと称する。 第2のプラスミドサブクローンを、シンドビスの最初の5’7,643ヌクレオチド を含有するように構築し、そしてインビトロ転写の後に単一の非ウイルス性ヌク レオチドが真正のウイルス5'末端に付加されるようにバクテリオファージRNAポ リメラーゼプロモーターをウイルスの5'末端に位置させる。簡潔には、このクロ ーンの3'末端は、以下に示される配列を有する逆方向プライマーによる標準的な 3温度PCR増幅に由来する。 逆方向プライマー:SINXho7643R(緩衝配列/XhoI部位/SIN nts 7643〜7621): 5'-TATATCTCGAGGGTGGTGTTGTAGTATTAGTCAG (配列番号22) この逆方向プライマーは、ウイルスヌクレオチド7643〜7621にマップされ、そ して接合コアエレメントの3'末端から41bp下流にある。さらに、ウイルスヌクレ オチド7643は、構造タンパク質遺伝子翻訳開始コドンから4ヌクレオチド上流に ある。このプライマーの最初の5個の5'ヌクレオチドは、PCRアンプリコン産物 の効率的な消化のための「緩衝配列」として作用するように含まれ、そしてXhoI 認識配列を含む6個のヌクレオチドが続く。 この反応における正方向プライマーは、プライマー2A(実施例1に記載)であ り、下記の配列を有する: ATACTAGCCACGGCCGGTATC (配列番号6) テンプレートとしてpVGSP6GENrepプラスミド(実施例1に記載)を使用する上 記のPCR増幅から得られた4510bpアンプリコン産物を、酵素SfiIおよびXhoIで消 化する。得られた2526bpフラグメントは、ゲル精製する。シンドビスcDNAクロー ンpVGSP6GENrepをまた、ApaIおよびSfiIで消化し、そして得られた、5'末端にSP 6 RNAポリメラーゼプロモーターを含有する5144bpフラグメントをゲル精製する 。この5144bpフラグメントを上記の2526bpフラグメントとともに、ApaIおよびXh oI消化しCIAP処理したpKSII+プラスミドに連結する。pKSII+プラスミドベクタ ーに含有される、5'末端にRNA ポリメラーゼプロモーターを含むシンドビスヌク レオチド1〜7643を有するクローンを単離する。この構築物をpKSII5'SIN と称 する。 完全なベーシックベクターのアセンブリを、pKSII5'SINをXhoIおよびSacIで消 化し、CIAPで処理し、そして大きな10,533bpフラグメントをゲル精製することに より達成する。次いで、この10,533bpフラグメントを、pKSII3'SINのXhoIおよび SacIでの消化から得られる168bpの小さいフラグメントとともに連結する。この 得られた構築物をpKSSINBVと称する(図4を参照のこと)。 B.シンドビスルシフェラーゼベクターの構築 シンドビスベクタークローンからインビトロ転写したRNA でトランスフェクト した細胞における異種遺伝子の発現を実証するため、そしてシンドビスベーシッ クベクターの全機能を実証するために、ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子 をシンドビスベーシックベーシックベクターに挿入する。 シンドビスルシフェラーゼベクターの構築を、3つの独立したプラスミド:pK SII5'SIN、pKSII3'SIN、およびpGL2−ベーシックベクターの成分をともにアセン ブリすることにより行う。pGL-2ベーシックベクタープラスミド(Promega,Mad ison,WI)は、完全なホタルルシフェラーゼ遺伝子を含有する。簡潔には、この ルシフェラーゼ遺伝子を、まずpKSII3'SINプラスミド中に挿入する。これは、pG L2をBamHIおよびHindIIIで消化し、そして2689bpを含有するフラグメントをゲル 精製することにより達成される。このフラグメントを、pKSII3'SINのBamHIおよ びHindIIIでの消化およびCIAPでの処理により得られたゲル精製された3008bpの 大きなフラグメントに連結する。得られた構築物を、pKSII3'SIN-lucと称する。 シンドビスルシフェラーゼベクターの最終的なアセンブリを、pKSII5'SINをXh oIおよびSacIで消化し、CIAPで処理し、そして大きな10,533bpフラグメントをゲ ル精製することにより達成する。このpKSII5'SINの10,533bpフラグメントを、pK SII3'SIN-lucのXhoIおよびSacIでの消化により得られる2854bpの小さいフラグメ ントと連結する。この構築物は、完全シンドビス非構造遺伝子コード領域および ゲノム複製に必要な3'ウイルスエレメント、ならびにこれら2つのウイルス5'エ レメントおよび3'エレメントの間に配置されたホタルルシフェラーゼ遺伝子を含 有する。このベクターを、pKSSINBV-lucと称し、そして図4に概略的に示す。 C.トランスフェクトされ、そして感染されたBHK 細胞におけるルシフェラーゼ の発現 シンドビスベーシックベクターの機能を試験するために、実施例1に記載した ように、SacIで線状化したpKSSINBV-lucからインビトロで転写されたRNA でトラ ンスフェクトした細胞におけるルシフェラーゼの発現を試験する。 さらに、非構造遺伝子領域の大部分が欠失した相補的パッケージングベクター を、BspEIでのpVGSP6GENrepの消化、および希釈条件下での再連結により構築す る。この構築物はpVGSP6GENd1Bspと称され、塩基 422〜7,054 の間の非構造遺伝 子配列を欠失している。これを図5に概略的に示す。XbaIで線状化したpVGSP6GE Nd1Bspのインビトロ転写は実施例1に示した通りである。インビトロ転写産物を LIPOFECTIN(Gibco-BRL,Gaithersberurg、MD)と複合体を形成させ、そしてBHK 細胞に適用することにより、トランスフェクションおよび同時トランスフェクシ ョンを行う。トランスフェクトした細胞株におけるルシフェラーゼの発現を、ト ランスフェクションの8時間後に試験する。さらに、1mlのトランスフェクショ ン上清を用いてBHK 細胞のコンフルエントな単層に感染させ、そして感染の24時 間後にルシフェラーゼの発現を試験する。 この実験の結果を図6に示す。この結果は、多量のレポーター遺伝子の発現が pKSSINBV-Lucからインビトロで転写されたRNAでのBHK細胞のトランスフェクショ ンの後に起こり、そして細胞をpVGSP6GENd1Bspからインビトロで転写したRNAで 同時トランスフェクトする場合、発現活性が転移(例えば、パッケージング)す ることを明瞭に示す。 D.改変された接合領域シンドビスベクターの構築 シンドビスウイルスの接合領域を不活化するために、NSP4カルボキシ末端と接 合領域重複の内のヌクレオチドを変化させ、そしてシンドビスに対応するベクタ ーヌクレオチドを、サブゲノム開始点の前のシンドビスnt7598で終結させる。こ の構築物を図7に概略的に示す。 簡単に説明すると、以下の配列を有する逆方向プライマーを用いて非ストリン ジェントな反応サイクル条件下でpKSSINBVクローンからフラグメントをPCR増幅 する: TATATGGGCCCTTAAGACCATCGGAGCGATGCTTTATTTCCCC (配列番号23) 逆方向プライマー中の下線を付した塩基は、コードされるアミノ酸に影響するこ となく接合領域に作成され得るヌクレオチド変化に関する(下記を参照のこと) 。すべてのヌクレオチド変化はトランスバージョンである。 NSP4の3'末端(ウイルス nts 7580〜7597): TCT CTA CGG TGG TCC TAA (配列番号24) ser leu arg trp ser stop(配列番号25) G C A T (逆方向プライマーからヌクレオチド変化を生じる) 逆方向プライマーは、シンドビス nts7597〜7566に相補的であり(接合領域変 化が作成された場合には示されたヌクレオチド以外)そして効率的な酵素消化の ための5'末端TATATテール「緩衝配列」の後に、5'末端に6個のヌクレオチドのA paI認識部位を含有する。 この反応の正方向プライマーは、下記の配列を有するプライマー2A(実施例1 に記載)である: ATACTAGCCACGGCCGGTATC (配列番号6) pKSSINBVテンプレートおよび前述のプライマーを用いるPCR反応から得られる4 ,464bpアンプリコンをSfiIおよびApaIで消化し、そしてゲル精製された2,480bp フラグメントを、pKSSINBVのApaIおよびSfiIでの消化から得られるゲル精製され た5,142bpフラグメントとともに、pKSII+のApaIでの消化およびCIAPによる処理 により得られるゲル精製された2,961bpフラグメントと連結する。シンドビスヌ クレオチド1〜7597からなり、前記の接合領域に変化を含み、そしてシンドビnt 1に付加された細菌性SP6プロモーターを含むこの構築物を、pKS5'SINdlJRと称 する。 不活性接合領域ベクターの最終的な構築を、pKS5'SINdlJRのApaIでの消化によ り得られる7,622bpの大きなシンドビスフラグメントをpKSII3'SINのApaIでの消 化およびCIAPでの処理により得られる3,038bpフラグメントと連結することによ り達成する。3'シンドビスエレメントと比較した5'シンドビスエレメントの明確 な方向を、制限エンドヌクレアーゼ分析により確認する。この構築物をpKSSINBV dlJRと称する。 サブゲノムmRNAの開始および合成は、pKSSINBVdlJRベクターからは生じ得ない 。この仮説を実証するために、pKSSINBVおよびpKSSINBVdlJRベクターを用いて比 較的なRNase 保護アッセイを行う。簡潔には、ウイルスnt7,598にサブゲノムRNA 開始点を含む接合領域に部分的に相補的な32P末端標識RNAプローブを用いて、p KSSINBVおよびpKSSINBVdlJRベクターでのBHK-21細胞のトランスフェクションか ら得られるウイルスRNA とハイブリダイズさせる。RNase 保護アッセイにより、 pKSSINBVでトランスフェクトした細胞はゲノム特異的およびサブゲノム特異的な 2つのフラグメントを有し、一方、pKSSINBVdlJRでトランスフェクトした細胞は ゲノム特異的な1つのフラグメントのみを有することが示される。これらの結果 は、pKSSINBVdlJRベクター中の接合領域が確かに不活性であることを証明する。 サブゲノムRNAメッセージに対応する領域からのゲノムRNAの翻訳を試験するた めに、上記の不活性接合領域pKSSINBVdlJRベクターにルシフェラーゼレポーター 遺伝子を挿入する。この構築を、pKSSINBVdlJRプラスミドをXhoIおよびSacIで消 化し、CIAPで処理し、そして得られる10,197bpフラグメントをゲル精製すること により達成する。pKSSINBVdlJRフラグメントを、pKSII3'SIN-lucのXhoIおよびSa cIの消化から得られる2854bpの小さいフラグメントと連結させる。この構築物は 、シンドビスnt7597の不活性接合領域中で終結する完全なシンドビス非構造遺伝 子コード領域、およびゲノム複製に必要な3'ウイルスエレメントを含有する;ホ タルルシフェラーゼ遺伝子はこれらの2つのウイルス5'と3'エレメントの間に位 置する。このベクターをpKSSINBVdlJR-lucと称する。 pKSSINBVdlJR-luc ベクターからのレポーター遺伝子の発現を、トランスフェ クションしたBHK-21細胞において試験する。機能性ルシフェラーゼタンパク質の 翻訳を、検出のためにルミノメーターを用いてルシフェリン発光アッセイにより 測定する。このアッセイの感度は1×10-20モル(ルシフェラーゼ)である。ル シフェラーゼの分予量が62,000ダルトンであることを考慮すると、この検出限界 は6,020 分子である。すなわち代表的な実験において、60mMペトリディッシュ中 の1×106細胞の 0.6%のみがpKSSINBVdlJR-lucベクターでトランスフェクショ ンされ、かつこれらのトランスフェクトされた細胞がただ1つのルシフェラーゼ の機能性分子を発現する場合、酵素活性は本アッセイにより検出される。pKSSIN BVdlJR-lucベクターの接合領域が不活性であることをこの実験で証明することが 重要である。これは、前述のプローブを用いて、pKSSINBVdlJR-lucおよびpKSSIN BV-lucベクターでトランスフェクションした細胞において合成されるウイルスRN Aを比較するRNase 保護アッセイにより達成される。 シンドビスnt7579〜7602 からなる、最小の−19→+5接合領域コアオリゴヌク レオチド対をインビトロで合成し、下記のApaIおよびXhoI認識配列と隣接させる : オリゴヌクレオチド1: CATCTCTACGGTGGTCCTAAATAGTC(配列番号26) オリゴヌクレオチド2: TCGAGACTATTTAGGACCACCGTAGAGATGGGCC(配列番号27) 上記のオリゴヌクレオチドを10mMのMg2+の存在下で混合し、5分間 100℃に加熱 し、室温まで緩除に冷却する。アニーリングしたオリゴヌクレオチドを、25:1 の挿入物対pKSSINBVdlJRベクターのモル比で連結する。このpKSSINBVdJRベクタ ーを以下のように調製する:XhoIによる完全な消化、次に1分子当たり(可能な 2つの切断のうち)1つのApaI誘導切断をもたらす部分的条件下でのApaIによる 消化、10,655bpフラグメントのゲル精製、およびCIAPによる処理。合成接合領域 コアに付着され、それに続いて複製に必要な3'ウイルスエレメントを含有し、そ してpKSII+プラスミドに含有されている、不活性接合領域コア内で終結する完 全な非構造タンパク質コード領域を含有するこのベクターを、pKSSINdlJRsjrcと 称する。 サブゲノムmRNA合成のレベルを調節するために、プラスミドpKSSINdlJRsjrc中 に縦列に挿入された合成接合領域コアをさらに改変する。接合領域コアのこれら の改変は少なくとも2つのアプローチにより達成され得る:接合領域コア内のヌ クレオチド変化;または真正のウイルス配列による、隣接するシンドビスヌクレ オチドの5'および3'接合領域コア末端での伸長。ウイルスnt7579〜7602 にわた る最小接合領域コアを以下に示す: ATCTCTACGGTGGTCCTAAATAGT(配列番号2) 8つのアルファウイルス間でゲノム配列を比較することにより、接合領域コア 内に配列多様性があることが以前に示されている。以下では特定の接合領域の位 置について、シンドビスヌクレオチドの後に他のアルファウイルスで見い出され た対応するヌクレオチドを示す: シンドビスnts7579,7580,7581,7583,7589,7590,7591,7592での接合領 域の変化は、接合領域内で重複するNSP4のカルボキシ末端のすべての5個のコド ン内に、潜在的なアミノ酸コード変化を生じる。NSP4コードポテンシャルレベル および接合領域シス活性のレベルにおけるアルファウイルス間の接合領域中に観 察されるこれらの変化は、機能に影響しないNSP4および接合領域における許容変 化か、または他方で単に異なるウイルスであることのいずれか、またはその両方 を表し得る。いずれにしても、ここに示した接合領域の変化は、そこからNSPタ ンパク質の合成が起こらない縦列に挿入された接合領域コアに関する。前述のよ うに、完全なNSP領域の翻訳はpKSSINBVdlJR構築物から起きる。シンドビスnts76 00および7602の接合領域の変化は、NSP4終結コドンの下流にあり、そして構造タ ンパク質開始コドンの上流にある。 いくつかのアルファウイルス株間で観察される接合領域コア内のヌクレオチド の差異の位置を、本明細書中では許容変化と称する。いくつかのアルファウイル ス株の間で保存された配列に対応する接合領域コア内のヌクレオチドの位置を、 本明細書中では非許容変化と称する。 合成接合領域コアからのサブゲノムmRNA開始のレベルを低下させるために、許 容変化に対応するヌクレオチド内および非許容変化に対応するヌクレオチド内に 個々に変化を作製する。許容変化に対応する接合領域ヌクレオチドを上記の表に 示す。配列決定した8種類のアルファウイルスの間で変化が観察されない14の接 合領域ヌクレオチド(セムリキ森林ウイルス、ミドルバーグウイルス、ロス川ウ イルス、オニョン・ニョンウイルス、東部ウマ脳脊髄炎ウイルス、西部ウマ脳脊 髄炎ウイルスそしてベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス)を以下に示す。 アルファウイルスの間で観察される接合領域の変化は、特定のアルファウイル スRNA ポリメラーゼとその同族の接合領域との間の特異的相互作用を反映し得る 。すなわち、「許容」ヌクレオチド間の変化は、接合領域の「非許容」ヌクレオ チド間の変化と同様に、サブゲノムmRNA合成レベルを顕著に低下させ得る。一方 でこれらは、実際に接合領域コア内の許容変化の部位であり得る。 接合領域コア内の単一の真正の非許容変化は、サブゲノムmRNA開始点に対応す るシンドビスnt7598であるらしい。プラスミドpKSSINdlJRsjrcの縦列に挿入され た接合領域コアにおけるこのヌクレオチドの変化は、ここでは記載していない。 合成最小−19→+5接合領域コア内の全体の許容ヌクレオチドの置換を、イン ビトロで合成され、ApaIとXhoI認識配列が隣接する以下のオリゴヌクレオチド対 で達成する: オリゴヌクレオチド1: CCCTTGTACGGCTAACCTAAAGGAC (配列番号28) オリゴヌクレオチド2: TCGAGTCCTTTAGGTTAGCCGTACAAGGGGGCC (配列番号29) 上記のオリゴヌクレオチドを10mMのMg2+の存在下で混合し、5分間 100℃に加熱 し、室温まで緩除に冷却する。アニーリングしたオリゴヌクレオチドを、25:1 の挿入物対pKSSINBVdlJRベクターのモル比で連結する。このpKSSINBVdJRベクタ ーを以下のように調製する:XhoIによる完全な消化、次に1分子当たり(可能な 2つの切断のうち)1つのApaI誘導切断をもたらす部分的条件下でのApaIによる 消化、10,655bpフラグメントのゲル精製、およびCIAPによる処理。このベクター をpKSSINdlJRsjrPcと称する。 接合領域コア内の13個の非許容ヌクレオチド(nt7598は変化していない)を、 最も抜本的なトランスバージョン置換を生じる以下の規則を用いて個別に変化さ せる: 例えば、インビトロで合成され、ApaIおよびXhoI認識配列が隣接する以下のオ リゴヌクレオチド対を用いて、nt7582をTからGに変化させる: オリゴヌクレオチド1: CATCGCTACGGTGGTCCTAAATAGTC(配列番号30) オリゴヌクレオチド2: TCGAGACTATTTAGGACCACCGTAGCGATGGGCC(配列番号31) (非許容接合領域部位においてトランスバージョンを起こすヌクレオチド配列を 太字で示す) 上記のオリゴヌクレオチドを10mMのMg2+の存在下で混合し、5分間 100℃に加 熱し、室温まで緩除に冷却する。アニーリングしたオリゴヌクレオチドを、25: 1の挿入物対pKSSINBVdlJRベクターのモル比で連結する。このpKSSINBVdJRベク ターを以下のように調製する:XhoIによる完全な消化、次に1分子当たり(可能 な2つの切断のうち)1つのApaI誘導切断をもたらす部分的条件下でのApaIによ る消化、10,655bpフラグメントのゲル精製、およびCIAPによる処理。このベクタ ーをpKSSINdlJRsjrNP7582と称する。 前述のトランスバージョン変化の規則を用いて、接合領域コアにおける12の残 りの非許容部位の各々の変化を前述のApaIおよびXhoI認識配列が隣接する12個の オリゴヌクレオチド対により作製する。これらのベクターは以下のように称する 。 サブゲノムmRNA合成の相対レベルを試験するために、ルシフェラーゼレポータ ー遺伝子を改変した縦列接合領域ベクターに挿入する。この構築を、縦列に挿入 された合成接合領域コアベクターをXhoIおよびSacIで消化し、CIAP処理し、そし て得られる約10,200bpフラグメントをゲル精製することにより達成する。次いで 処理したベクターフラグメントを、XhoIおよびSacIによる pKSII3'SIN-luc の消 化から得られる2854bpの小さいフラグメントと連結する。これらの構築物は、不 活性化接合領域中のシンドビスnt7597で終結する完全なシンドビス非構造遺伝子 コード領域、縦列に挿入された合成接合領域コア(改変されているかまたは改変 されていない)、ホタルルシフェラーゼ遺伝子、およびゲノム複製に必要な3'ウ イルスエレメントを含有する。これらのベクターの名前は以下の通りである: 直前に示したすべてのルシフェラーゼベクターにおいて翻訳効率が同じである と仮定して、BHK-21細胞のトランスフェクションの16時間後にルシフェラーゼ産 生のレベルを比較することによりサブゲノム合成の相対レベルを測定する。ベク ターpKSSINBV-lucおよびpKSSINdlJRsjrc-lucとによるルシフェラーゼ産生と、前 記の改変された接合領域ルシフェラーゼベクターのすべてと比較することにより サブゲノム転写の相対レベルを測定する。 縦列に挿入された合成接合領域コアを含有するベクター(pKSSINdlJRsjrcおよ びその誘導体)は、pKSSINBV構築物と比較してサブゲノムmRNA発現のレベルがよ り低いはずである。それ故、特定の実施態様では、pKSSINdlJRsjrcベクターから 観察されるサブゲノムmRNA発現のレベルを増大させる必要があり得る。これを、 真正のウイルス配列に従って、5'および3'合成接合領域コア末端を11個の追加の 隣接シンドビスヌクレオチドで伸長させることにより達成し得る。 以下に示す合成オリゴヌクレオチド対はインビトロで合成され、最小接合領域 コアの24nt(太字で示してある)を含む46個のシンドビスntを含有する。シンド ビスntsは、以下に示すようにApaIおよびXhoI認識配列とが隣接している: オリゴヌクレオチド1: CGGAAATAAAGCATCTCTACGGTGGTCCTAAATAGTCAGCATAGT ACC (配列番号32) オリゴヌクレオチド2: TCGAGGTACTATGCTGACTATTTAGGACCACCGTAGAGATGCTTTA TTTC-CGGGCC (配列番号33) 上記のオリゴヌクレオチドを10mMのMg2+の存在下で混合し、5分間 100℃に加熱 し、室温まで緩除に冷却する。アニーリングしたオリゴヌクレオチドを、25:1 の挿入物対pKSSINBVdlJRベクターのモル比で連結する。このpKSSINBVdJRベクタ ーを以下のように調製する:XhoIによる完全な消化、次に1分子当たり(可能な 2つの切断のうち)1つのApaI誘導切断をもたらす部分的条件下でのApaIによる 消化、10,655bpフラグメントのゲル精製、およびCIAPによる処理。伸長した合成 接合領域コアに付着され、それに続いて複製に必要な3'ウイルスエレメントを含 有し、そしてpKSII+プラスミドに含有されている、不活性接合領域コア内で終 結する完全な非構造タンパク質コード領域を含有するこのベクターを、pKSSINdl JRsexjrと称する。 サブゲノムmRNA合成の相対レベルを試験するために、ルシフェラーゼレポータ ー遺伝子を伸長した縦列接合領域pKSSINdlJRsexjrベクターに挿入する。この構 築を、pKSSINDIdlJRsexjrプラスミドをXhoIおよびSacIで消化し、CIAP処理し、 そして得られる約10,200bpフラグメントをゲル精製することにより達成する。次 いで処理したベクターフラグメントを、XhoIおよびSacIによるpKSII3'SIN-lucの 消化から得られる2854bpの小さいフラグメントと連結する。この構築物は、不活 性化接合領域中のシンドビスnt7597で終結する完全なシンドビス非構造遺伝子コ ード領域、縦列に挿入された合成接合領域、ホタルルシフェラーゼ遺伝子、およ びゲノム複製に必要な3'ウイルスエレメントを含有する。このベクターの名前は pKSSINdlJRsexjr-lucである。 サブゲノム転写の相対レベルを、pKSSINdlJRsexjr-lucによるルシフェラーゼ 産生をpKSSINBV-lucおよびpKSSINdlJRsjrc-lucベクターによるルシフェラーゼ産 生と比較することにより測定する。 E.プラスミドDNAアルファウイルス発現ベクターの構築 先の実施例3のA節およびB節に記載のSIN BVおよびSIN-BV-ルシフェラーゼ 構築物を、そのプラスミドDNAを細胞に直接導入した後に、シンドビスベクター 由来の異種遺伝子の発現が起こるように、実施例2に記載のpVGELVISベクター配 列に挿入する。実施例2に記載のように、線状化したテンプレートベクターDNA のインビトロ転写からなる第1の工程なしに、RNAを基にしたアルファウイルス ベクターのトランスフェクションの代表的な異種遺伝子の発現レベルをもたらす 、細胞に直接的にアルファウイルスを基にしたベクタープラスミドDNAをトラン スフェクトする能力は、アルファウイルスを基にした発現ベクター系の特定の実 施態様の有用性および効率を大いに増強する。図8は、プラスミドDNAアルファ ウイルス発現(ELVIS)ベクター由来の異種遺伝子の発現の1つのメカニズムの概 略図である。核内での一次転写および細胞質へのベクターRNAの輸送は、ゲノム およびサブゲノムmRNAの生産のためのテンプレートとして次に作用するアンチゲ ノム中間体を介して、異種遺伝子mRNAの増大を触媒するアルファウイルス非構造 タンパク質の合成を導く。このELVISベクターは、標的細胞に直接的に、DNA分子 として物理的手段により、種々のリポソーム製剤との複合体として、あるいはア ルファウイルスDNAベクター分子、ポリリジンのようなポリカチオン化合物、レ セプター特異的リガンド、および、必要に応じて、センダイウイルスまたはアデ ノウイルスのようなソラレン不活化ウイルスを含むDNAリガンド複合体として導 入し得る。 1つの代表的なプラスミドDNAシンドビス発現ベクターを構築する第1の工程 は、pKSSINBVをSacIで消化する工程、T4ポリメラーゼで平滑化する工程、SfiIで 消化する工程、その2,689bpのフラグメントを単離する工程、およびXbaIでの消 化、T4ポリメラーゼでの平滑化、SfiIでの消化、CIAPでの処理、そして1%アガ ロース/TBEゲル電気泳動により調製した10,053bpのpVGELVISベクターフラグメン トに連結する工程からなる。この構築物は、pVGELVIS-SINBVとして知られている 。 ルシフェラーゼ遺伝子をpVGELVIS-SINBVベクターに挿入するために、ルシフェ ラーゼの3'末端のSV40イントロンおよび転写終結配列を、細胞へのトランスフェ クション後にプラスミドDNAルシフェラーゼベクターから転写されたRNA前駆体が プロセシングされる場合、そのレポーター遺伝子の3'末端がシンドビスベクター 3'末端から分離しないように、除去しなければならない。pVGELVIS-SINBVベクタ ー内に含まれるシンドビス5'および3'末端は、そのベクターの自己複製活性のた めにシスに要求される。シンドビスベクター3'末端は、異種タンパク質またはレ ポータータンパク質をコードするサブゲノムRNAのテンプレートである、アンチ ゲノム鎖の合成の開始に必要である。 ルシフェラーゼ遺伝子の3'末端に位置したSV40 RNAプロセシングシグナルは、 先のB節に記載のSIN-BV-luc構築物から除去される。次いで改変ルシフェラーゼ フラグメントを、唯一の制限酵素切断部位を介して、上記のpVGELVIS-SINBV構築 物中に配置する。ルシフェラーゼ遺伝子の改変は以下のプライマー対を用いて達 成される。正方向プライマー7328F(SIN ヌクレオチド7328〜7349): 5'-GTGGCGGATCCCCTGAAAAGG(配列番号:10)逆方向プライマーLucStop(緩衝配列/NotI、XbaI 認識配列/pGL-2 ヌクレオチド1725〜1703): 5'-TATATGCGGCCGCTCTAGATTACAATTTGGACTTTCCGCCC(配列番号:34) 上記プライマーを、3分間の伸長時間を用い、3温度サイクルプログラムでの PCR反応に使用する。その増幅産物をGENECLEAN(Bio 101,Vista,CA)で精製し、 XhoIおよびXbaIで消化し、GENECLEANで再び精製する。そしてその2,037bpのフラ グメントを、XhoIおよびXbaIでの消化、およびCIAPでの処理によって得られるpV GELVIS-SINBVの13,799bpのフラグメントに連結する。この構築物は、pVGELVIS-S INBV-luc(ELVIS-lucと略する)として知られている。 pVGELVIS-SINBV-luc DNAでトランスフェクトしたBHK細胞中のルシフェラーゼ の発現を、シンドビスフィジカルジーントランスファーベクターが機能的である ことを示すために測定する。簡潔に記載すると、5μgのpVGELVIS-SINBV-luc DN Aあるいは、B節(上記)に記載の線状化したSINBV-lucテンプレート由来の5μg のインビトロ転写RNAを、10μlのリポフェクタミンまたはリポフェクチン(GIBCO -BRL,Gaithersburg,MD)とそれぞれ複合体化させ、そして35mMのペトリディッ シュ中に含まれる5×105BHK細胞にトランスフェクトした。そのルシフェラーゼ 活性を、トランスフェクション後、2、4、8、16、20、28、48、72、96、およ び120時間に各3サンプルから測定する。図9に与えた本研究の結果は、pVGELVI S-SINBV-lucベクター由来のレポーター遺伝子発現の最大レベルが、線状化したS INBV-lucテンプレート由来のインビトロ転写RNAでトランスフェクトした細胞中 で観察された発現レベルに類似することを示している。しかし、pVGELVIS-SINBV -lucベクターから発現されるルシフェラーゼ活性は、SINBV-luc RNAベクターを 用いて観察されたルシフェラーゼ活性に比較して遅い時点で最大レベルであり、 その活性はそのRNAベクター由来の活性が減少し始める間、高いレベルを続ける 。 以下の実験を、ELVISベクター系によって提供された異種遺伝子発現の増強レ ベルを、ルシフェラーゼレポーター遺伝子に直接連結した同じRNAポリメラーゼI Iプロモーターと比較して示すために行った。簡潔に記載すると、シンドビスNSP を、高レベルのレポーター遺伝子発現のためのウイルス性酵素タンパク質に対す る要求性を示すために、pVGELVIS-SINBV-lucベクターから最初に欠失させる。こ れは、pVGELVIS-SINBV-luc DNAのBspEIでの消化、GENECLEANでの精製、希釈条件 下での連結により達成される。この構築物は、塩基422〜7,054の間の非構造遺伝 子が欠失され、および実施例3C節(上記)に記載したpVGSP6GENdlBsp構築物に類 似であり、そして図5に概略的に示される。本明細書に記載の構築物は、pVGELV IS-SINBVdlBsp-luc(dlNSP ELVIS-lucと略する)として知られている。ルシフェラ ーゼ遺伝子をMoMuLV LTRに直接連結するため、このレポーターを最初にpCDNA3ベ クター(Invitrogen,San Diego,CA)のBamHI部位とHindIII部位との間に挿入す る。このルシフェラーゼフラグメントを実施例3B節(上記)に記載のように正確 にpGL2プラスミドから誘導し、そしてHindIIIおよびBamHIでの消化、CIAPでの処 理、そして1%アガロース/TBEゲルでの精製により調製したpCDNA3の5428×bpの フラグメントに挿入する。この構築物はpCDNA3-lucとして知られている。MoMuLV LTRのU3領域を実施例2に記載のように、下記のPCRプライマーを用いるBAGベク ターから増幅する。正方向プライマー:BAGBgl2F1(緩衝配列/BglII認識配列/Mo-MLV LTRヌクレオチ ド1〜22): 5'-TATATAGATCTAATGAAAGACCCCACCTGTAGG(配列番号:15)逆方向プライマー:BAGwt441R2(SINヌクレオチド5〜1/Mo-MLV LTRヌクレオチ ド441〜406): 5'-TCAATCCCCGAGTGAGGGGTTGTGGGCTCTTTTATTGAGC(配列番号:16) この増幅産物をGENECLEANで精製し、そしてその末端をまずT4DNAポリメラーゼ で平滑化し、次いでBglIIで消化、GENECLEANで精製する。そしてこれを、HindII Iでの消化、クレノウ酵素および50μMdNTPを用いる平滑化、BglIIでの消化、そ して1%アガロース/TBEゲル電気泳動による精製により調製したpCDNA3-lucプラ スミドに連結する。この構築物はLTR-lucとして知られている。 プラスミドELVIS-luc、dlNSP ELVIS-luc、LTR-luc、およびpCDNA3をそれぞれ1 0μlのリポフェクタミンと複合体化し、そして35mMペトリディッシュ中に含まれ る5×105のBHK細胞にトランスフェクトする。そのルシフェラーゼ活性を、トラ ンスフェクションの48時間後に、各3サンプルから測定する。図10に与えたこの 研究の結果は、ELVIS系により提供された異種遺伝子発現増強のレベルが、同じ プロモーターを異種遺伝子に直接連結した場合に比べ、少なくとも100倍である ことを示している。dlNSP ELVIS-lucでトランスフェクトした細胞中の比較的低 いレベルのルシフェラーゼ発現は、この発現増強が機能的なシンドビスNSPの直 接の結果であることを示す。図8に図示したレポーター遺伝子mRNAの自己触媒的 増幅は、単純なプロモーター-異種遺伝子構築物由来の一次転写に比べて、遺伝 子発現レベルの点において有意な利点を提供する。従って、図8に図示したよう に、ELVISベクターのトランスフェクション後に、核内での一次転写および細胞 質へのベクターRNAの輸送は、ゲノムおよびサブゲノムmRNAの生産のためのテン プレートとして次に作用するアンチゲノム中間体を介して、異種遺伝子mRNAの増 大を触媒する、シンドビスウイルスNSPの合成を導く。 F 改変DNAを基にしたアルファウイルス発現ベクターの構築 ELVISベクターの全体の効率は、異種遺伝子の発現レベルにより決定したよう に、pVGELVIS-SINBV-lucベクターに対する幾つかの改変により増強される。これ らの改変としては、交互に繰り返すRNAポリメラーゼIIプロモーターおよび転写 終結シグナル、ベクター構築物におけるイントロン配列の付加、および小型プラ スミドベクターでの置換が挙げられる。これらの改変ELVISベクターの構築を以 下で詳述する。 改変ELVISベクターを、pUC9のカナマイシン耐性アナログであるプラスミドベ クターpBGS131(ATCC #37443)上で組み立てる(Sprattら、Gene 41:337-342,1986) 。pBGS131の増幅は、10μg/mlのカナマイシンを含むLB培地で行う。 SV40初期領域またはウシ成長ホルモン由来の転写終結シグナルを、pBGS131のS acIとEcoRIとの間に挿入する。初期領域転写終結配列を含むウイルスヌクレオチ ド2643〜2563の間のSV40のヌクレオチドを、下記のプライマー対およびテンプレ ートとしてpBR322/SV40プラスミド(ATCC #45019)を用いるPCR増幅により単離す る。正方向プライマーSSVTT2643(緩衝配列/SacI部位/SV40ヌクレオチド2643〜2613) 5'-TATATATGAGCTCTTACAAATAAAGCAATAGCATCACAAATTTC(配列番号:35)逆方向プライマーRSVTT2563R(緩衝配列/EcoRI部位/SV40ヌクレオチド2563〜2588 ): 5'-TATATGAATTCGTTTGGACAAACCACAACTAGAATG(配列番号:36) 上記プライマーを、30秒間の伸長時間を用い、本実施例を通じて記載するよう に、3温度サイクルプログラムでのPCR反応に使用する。その増幅産物をGENECLE AN(Bio 101,Vista,CA)を用いて精製し、SacIおよびEcoRIで消化し、GENECLEAN を用いて再び精製する。そしてその90bpのフラグメントを、SacIおよびEcoRIで の消化、およびCIAPでの処理によって得られるpBGS131の3,655bpのフラグメント に連結する。この構築物は、pBGS131-3'SV40TTとして知られている。 ウシ成長ホルモンの転写終結配列を、下記のプライマー対およびテンプレート としてpCDNA3プラスミド(Invitrogen,San Diego,CA)を用いて、PCR増幅により 単離する。正方向プライマーBGHTTF(緩衝配列/SacI部位/pCDNA3ヌクレオチド1132〜1161): 5'-TATATATGAGCTCTAATAAAATGAGGAAATTGCATCGCATTGTC(配列番号:37)逆方向プライマーBGHTTR(緩衝配列/EcoRI部位/pCDNA3ヌクレオチド1180〜1154) 5'-TATATGAATTCATAGAATGACACCTACTCAGACAATGCGATGC(配列番号:38) 上記のプライマーを、30秒間の伸長時間を用いる3温度サイクルプログラムで のPCR反応に使用する。その増幅産物をGENECLEAN(Bio 101,Vista,CA)を用いて 精製し、SacIおよびEcoRIで消化し、GENECLEANを用いて再び精製する。そしてそ の58bpのフラグメントを、SacIおよびEcoRIでの消化、およびCIAPでの処理によ って得られるpBGS131の3,655bpのフラグメントに連結する。この構築物は、pBGS 131-3'BGHTTとして知られている。 その転写終結シグナルをELVISベクターの3'末端に直接融合し、そしてポリア デニレートトラクトを欠失する。あるいは、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)のアン チゲノムリボザイム配列を、ELVIS-lucベクターの3'末端のポリアデニレートト ラクトと転写終結シグナルとの間に配置する。 HDVリボザイム含有構築物を、PCR技術および最小の84ヌクレオチドのアンチゲ ノムリボザイム配列(PerottaおよびBeen、Nature 350:434-6,1991)を含む重複す るオリゴヌクレオチドプライマーを用いて作製する。このHDV配列に加えて、こ のプライマーは、ELVISベクターの3'末端に挿入のための隣接するSacI認識部位 を含む。このHDVリボザイム配列は、下記の3つの重複するプライマーを用いて 作製する:正方向プライマーSHDVIF(緩衝配列/SacI部位/HDV RBZ配列): 5'-TATATGAGCTCGGGTCGGCATGGCATCTCCACCTCCTCGCGGTCCG(配列番号:39)ネスティッドプライマーHDV17〜68: 5'-TCCACCTCCTCGCGGTCCGACCTGGGCATCCGAAGGAGG-ACGCACGTCCACT-3'(配列 番号:40)逆方向プライマーSHDV84R(緩衝配列/SacI部位/HDV RBZ配列): 5'-TATATGAGCTCCTCCCTTAGCCATCCGAGTGGACGTGCGTCCTCCTTC(配列番号:41) 上記のプライマーを、30秒間の伸長時間を用いて、本実施例を通じて記載のよ うに、3温度サイクルプログラムでのPCR反応に使用する。その増幅産物をGENEC LEAN(Bio 101,Vista,CA)で精製し、SacIで消化し、GENECLEANで再び精製する 。そしてその94bpのフラグメントを、SacIで線状化しそしてCIAPで処理したpBGS 131-3'SV40TTまたはpBGS131-3'BGHTTに連結する。これらの構築物は、pBGS131/H DV/3'SV40TTおよびpBGS131/HDV/3'BGHTTとして知られている。SacI部位における 正しい方向のHDVリボザイムの挿入は、配列決定により決定される。さらに、よ り長いHDVリボザイム配列、または他の任意の触媒性リボザイム配列は、本明細 書中に提供された開示より容易に置換され得る。 第2のベクター3'配列中で、SV40またはBGH転写終結シグナルをシンドビスの ヌクレオチド11,700に対応するELVISベクターの3'末端に直接融合し、そしてポ リアデニレートトラクトを欠失させる。この構築は、pKSSINBVおよびpKSSINBV-l ucベクターのアセンブリのために、実施例3のA節およびB節で概説した工程に 従って実施する。しかし、この適用において、ベクターの3'末端プライマーは25 ポリアデニレートトラクトを含まない。このベクターの3'末端を下記のプライマ ー対を用いて合成する:正方向プライマー:SIN11664:(緩衝配列/NotI部位/SINヌクレオチド11664〜111 698): 5'-TATATGCGGCCGCTTTCTTTTATTAATCAACAAAATTTTGTTTTTAA(配列番号:42)逆方向プライマー:SSIN11700R(緩衝配列/SacI部位/SINヌクレオチド11700〜116 55): 5'-TATATGAGCTCGAAATGTTAAAAACAAAATTTTGTTG(配列番号:43) 上記のプライマーを、30秒間の伸長時間を用いて、本実施例を通じて記載のよ うに、3温度サイクルプログラムでのPCR反応に使用する。pKSSINBVおよびpKSSI NBV-lucベクターのアセンブリを実施例3、A節およびB節に正確に示す。これ らの構築物はpKSSINBVdlAおよびpKSSINBVdlA-lucとして知られている。 ELVIS発現ベクターを上記の種々の3'末端プロセシングプラスミド構築物上で さらに組み立てる。ポリアデニレートトラクトを含むシンドビスベクターを、HD Vリボザイム配列、およびSV40またはBGH転写終結シグナルを含むプラスミド構築 物と連結する。この構築は、pBGS131/HDV/3'SV40TTおよびpBGS131/HDV/3'BGHTT プラスミドへの、pKSSINBVおよびpKSSINBV-lucベクター配列の挿入に対応する。 あるいは、ウイルスヌクレオチド11,700に対応するウイルス3'末端で正確に終結 するシンドビスベクターを、SV40またはBGH転写終結シグナルに直接連結する。 この構築は、pBGS131/HDV/3'SV40TTおよびpBGS131/HDV/3'BGHTTプラスミドへの 、pKSSINBVdlAおよびpKSSINBVdlA-lucベクター配列の挿入に対応する。 そのシンドビスベクターpKSSINBVおよびpKSSINBV-lucを、SacIおよびBglIIで 消化し、そしてその5,522bp(pKSSINBV)または8211bp(pKSSINBV-luc)フラグメン トを、1%アガロース/TBEゲル電気泳動により精製し、SacIおよびBglIIで消化 し、そしてCIAPでの処理により調製した線状化pBGS131/HDV/3'SV40TTおよびpBGS 131/HDV/3'BGHTTプラスミドに挿入する。これらの構築物は以下のものとして知 られている: pBGS131/dlproSINBV/HDV/3'SV40TT pBGS131/dlproSINBV-luc/HDV/3'BGHTT 上記の同じストラテジーを用いて、そのシンドビスベクターpKSSINBVdlAおよ びpKSSINBVdlA-lucを、SacIおよびBglIIで消化する。そしてその5,497bp(pKSSIN BVdlA)または8186bp(pKSSINBVdlA-luc)フラグメントを、1%アガロース/TBEゲ ル電気泳動により精製し、SacIおよびBglIIでの消化およびCIAPでの処理により 調製した線状化pBGS131/3'SV40TTおよびpBGS131/3'BGHTTプラスミドに挿入する 。これらの構築物は以下のものとして知られている: pBGS131/dlproSINBV/3'SV40TT pBGS131/dlproSINBV-luc/3'BGHTT RNAポリメラーゼIIプロモーターおよびシンドビスヌクレオチド1〜2289の付 加は、下記の4つの構築物の改変ELVIS発現ベクターの構築を完了するために要 求される最終工程である: pBGS131/dlproSINBV/HDV/3'SV40TT pBGS131/dlproSINBV-luc/HDV/3'BGHTT pBGS131/dlproSINBV/3'SV40TT pBGS131/dlproSINBV-luc/3'BGHTT これらの4つの構築物は、シンドビスのヌクレオチド2289に対応する唯一のBg lII制限酵素部位を含む。このRNAポリメラーゼIIプロモーターおよびシンドビス ヌクレオチド1〜2289を、実施例2においてpVGELVIS構築について記載した重複 PCR技術によりこれらの構築物中に挿入する。RNAポリメラーゼIIプロモーターお よびシンドビス2289ヌクレオチドを挿入するために、上記の4つの構築物をBglI Iで消化し、そしてCIAPで処理する。 モロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)由来の長末端反復(LTR)のU3領域を、 最初の転写ヌクレオチドがインビボでキャップ化される単一のG残基であり、シ ンドビス5'末端が続くように、ウイルスの5'末端に配置する。第1の一次PCR反 応におけるMo-MLV LTRの増幅を、BAGベクター(Priceら、PNAS 84:156-160,1987) および以下のプライマー対を含む反応において達成する:正方向プライマー:BAGBgl2F1(緩衝配列/BglII認識配列/Mo-MLV LTRヌクレオチ ド1〜22): 5'-TATATAGATCTAATGAAAGACCCCACCTGTAGG(配列番号:15)逆方向プライマー:BAGwt441R2(SINヌクレオチド5〜1/Mo-MLV LTRヌクレオチ ド441〜406): 5'-TCAATCCCCGAGTGAGGGGTTGTGGGCTCTTTTATTGAGC(配列番号:16) 上記プライマーを、30秒間の伸長時間を用い、3温度サイクルプログラムでの PCR反応に使用する。 第2の一次PCR反応におけるシンドビス5'末端の増幅を、pVGSP6GENrepクロー ンおよび以下のプライマー対を含む反応において達成する:正方向プライマー:(Mo-MLV LTRヌクレオチド421〜441/SINヌクレオチド1〜16) 5'-CCACAACCCCTCACTCGGGGATTGACGGCGTAGTAC(配列番号:17)逆方向プライマー:(SINヌクレオチド3182〜3160): 5'-CTGGCAACCGGTAAGTACGATAC(配列番号:18) 上記プライマーを、3分間の伸長時間を用い、3温度サイクルプログラムを有 するPCR反応に使用する。 一次PCR反応由来の457bp産物および3202bp産物をGENECLEANを用いて精製し、 そして以下のプライマー対と共にPCR反応に使用する:正方向プライマー:BAGBgl2F1(緩衝配列/BglII認識配列/Mo-MLV LTRヌクレオチ ド1〜22): 5'-TATATAGATCTAATGAAAGACCCCACCTGTAGG(配列番号:15)逆方向プライマー:(SINヌクレオチド2300〜2278): 5'-GGTAACAAGATCTCGTGCCGTG(配列番号:19) 上記プライマーを、3分間の伸長時間を用い、3温度サイクルプログラムでの PCR反応に使用する。 第1の一次PCRアンプリコン産物の3'末端の25塩基は、第2の一次PCRアンプリ コン産物の5'末端の25塩基と重複している;得られる2,752bpの重複する二次PCR アンプリコン産物を、1%アガロース/TBE電気泳動により精製し、BglIIで消化 し、そしてその2,734bpの産物を上記の4つのELVIS構築物に連結する。これらの 構築物を以下のように命名する: MpLTRELVIS/D/S MpLTRELVIS-luc/D/B MpLTRELVIS/S MpLTRELVIS-luc/B 同じ重複PCRアプローチを用いて、このCMVプロモーターを、転写の開始が、シ ンドビス5'末端の単一の非ウイルス性ヌクレオチドの付加をもたらすように、5' ウイルス末端に配置する。第1の一次PCR反応におけるCMVプロモーターの増幅を 、pCDNA3プラスミド(Invitrogen,San Diego,CA)および以下のプライマー対を 含む反応において達成する。正方向プライマー:pCBgl233F(緩衝配列/BglII認識配列/CMVプロモーターヌクレ オチド1〜22): 5'-TATATATAGATCTTTGACATTGATTATTGACTAG(配列番号:44)逆方向プライマー:SNCMV1142R(SINヌクレオチド8〜1/CMV proヌクレオチド11 42〜1108): 5'-CCGTCAATACGGTTCACTAAACGAGCTCTGCTTATATAGACC(配列番号:45) 上記プライマーを、1分間の伸長時間を用い、3温度サイクルプログラムでの PCR反応に使用する。 第2の一次PCR反応におけるシンドビス5'末端の増幅を、pVGSP6GENrepクロー ンおよび以下のプライマー対を含む反応において達成する:正方向プライマー:CMVSINIF(CMV proヌクレオチド1124〜1142/SINヌクレオチド 1〜20): 5'-GCTCGTTTAGTGAACCGTATTGACGGCGTAGTACACAC(配列番号:46)逆方向プライマー:(SINヌクレオチド3182〜3160): 5'-CTGGCAACCGGTAAGTACGATAC(配列番号:18) 上記プライマーを、3分間の伸長時間を用い、3温度サイクルプログラムでの PCR反応に使用する。 一次PCR反応由来の600bpおよび3200bpの産物を、GENECLEANを用いて精製し、 そして以下のプライマー対とともにPCR反応に使用する:正方向プライマー:pCBgl233F(緩衝配列/BglII認識配列/CMVプロモーターヌクレ オチド1〜22): 5'-TATATATAGATCTTTGACATTGATTATTGACTAG(配列番号:44)逆方向プライマー:(SINヌクレオチド2300〜2278): 5'-GGTAACAAGATCTCGTGCCGTG(配列番号19) 上記のプライマーを、3分間の伸長時間を用い、3温度サイクルプログラムで のPCR反応に使用する。 第1の一次PCRアンプリコン産物の3'末端の26塩基は、第2の一次PCRアンプリ コン産物の5'末端の26塩基と重複している;得られる2,875bpの重複する二次PCR アンプリコン産物を、1%アガロース/TBE電気泳動により精製し、BglIIで消化 し、そして上記の4つのELVIS構築物に連結する。これらの構築物を以下のよう に命名する: MpCMVELVIS/D/S MpCMVELVIS-luc/D/B MpCMVELVIS/S MpCMVELVIS-luc/B 同じ重複PCRアプローチを用いて、このSV40後期領域プロモーターを、転写開 始の主要なキャップ部位が、シンドビス5'末端の単一の非ウイルス性ヌクレオチ ドの付加をもたらすように、5'ウイルス末端に配置する。第1の一次PCR反応に おけるSV40プロモーターの増幅を、pBR322/SV40プラスミド(ATCC #45019)および 以下のプライマー対を含む反応において達成する:正方向プライマー:B2SVpr250F(緩衝配列/BglII認識配列/SV40ヌクレオチド250 〜231): 5'-TATATATAGATCTGGTGTGGAAAGTCCCCAGGC(配列番号:47)逆方向プライマー:SINSV5235R(SINヌクレオチド13〜1/SV40ヌクレオチド5235〜 10): 5'-CTACGCCGTCAATGCCGAGGCGGCCTCGGCC(配列番号:48) 上記のプライマーを、30秒間の伸長時間を用い、3温度サイクルプログラムで のPCR反応に使用する。 第2の一次PCR反応におけるシンドビス5'末端の増幅は、pVGSP6GENrepクロー ンおよび以下のプライマー対を含む反応において達成する:正方向プライマー:SVSINIF(SV40ヌクレオチド3〜5235/SINヌクレオチド1〜25 ): 5'-GGCCGCCTCGGCATTGACGGCGTAGTACACACTATTG(配列番号:49)逆方向プライマー:(SINヌクレオチド3182〜3160): 5'-CTGGCAACCGGTAAGTACGATAC(配列番号:18) 上記のプライマーを、3分間の伸長時間を用い、3温度サイクルプログラムで の PCR反応に使用する。 その一次PCR反応由来の280bpおよび3,194bpの産物を、GENECLEANで精製し、そ して以下のプライマー対とともにPCR反応に用いる:正方向プライマー:B2SVpr250F(緩衝配列/BglII認識配列/SV40ヌクレオチド250 〜231): 5'-TATATATAGATCTGGTGTGGAAAGTCCCCAGGC(配列番号:47)逆方向プライマー:(SINヌクレオチド2300〜2278) 5'-GGTAACAAGATCTCGTGCCGTG(配列番号:19) 上記のプライマーを、3分間の伸長時間を用い、3温度サイクルプログラムで のPCR反応に使用する。 第1の一次PCRアンプリコン産物の3'末端の25塩基は、第2の一次PCRアンプリ コン産物の5'末端の25塩基と重複する;得られる2,543bpの重複する二次PCRアン プリコン産物を、1%アガロース/TBE電気泳動により精製し、BglIIで消化し、 そして上記の4つのELVIS構築物に連結する。これらの構築物を以下のように命 名する: MpSV40ELVIS/D/S MpSV40ELVIS-luc/D/B MpSV40ELVIS/S MpSV40ELVIS-luc/B BHK細胞のトランスフェクション後のルシフェラーゼ発現レベルを、所望の配 列を決定するために、上で詳述した完全な改変ELVIS構築物を含むレポーター遺 伝子の各々を用いて測定する。異種遺伝子を、実施例3B節のルシフェラーゼ遺 伝子の挿入について記載したように、ELVISベクターのマルチクローニング部位 に挿入する。 機能的なベクターRNAを細胞質に移送する点で、核DNAテンプレート当たりのEL VIS系の効率を上昇させるために、このSV40小型t抗原イントロンをELVIS発現ベ クター中に挿入し得る。このSV40小型t抗原イントロン配列の挿入を、5'シンド ビス配列のすぐ下流の唯一のXhoI部位、あるいは3'シンドビス配列のすぐ上流の NotI部位で行う。 ELVISベクターのXhoI部位への挿入のために、SV40小型t抗原イントロン配列 の増幅を、pBR322/SV40プラスミド(ATCC #45019)および以下のプライマー対を含 む反応において達成する:正方向プライマー:XSVSD4647F(緩衝配列/XhoI認識配列/SV40ヌクレオチド4647 〜4675): 5'-TATATATCTCGAGAAGCTCTAAGGTAAATATAAAATTTACC(配列番号:50)逆方向プライマー:XSVSA4562R(緩衝配列/XhoI認識配列/SV40ヌクレオチド4562 〜4537): 5'-TATATATCTCGAGAGGTTGGAATCTAAAATACACAAAC(配列番号51) 上記のプライマーを、30秒間の伸長時間を用いて、3温度サイクルプログラム でのPCR反応に使用する。その増幅産物をGENECLEANで精製し、Xho Iで消化し、G ENECLEANで再び精製する。そしてそれを、XhoIで線状化してCIAPで処理した完全 な改変ELVISベクター(上記)に挿入する。ELVISベクター中の正しい方向のSV40小 型t抗原の挿入を、配列決定により決定する。 ELVISベクターのNotI部位への挿入のために、SV40小型t抗原イントロン配列の 増幅をpBR322/SV40プラスミド(ATCC #)および以下のプライマー対を含む反応に おいて達成する:正方向プライマー:NSVSD4647F(緩衝配列/NotI認識配列/SV40ヌクレオチド4647 〜4675): 5'-TATATATGCGGCCGCAAGCTCTAAGGTAAATATAAAATTTACC(配列番号:52)逆方向プライマー:XSVSA4562R(緩衝配列/NotI認識配列/SV40ヌクレオチド4562- 4537): 5'-TATATATGCGGCCGCAGGTTGGAATCTAAAATACACAAAC(配列番号:53) 上記のプライマーを、30秒間の伸長時間を用い、3温度サイクルプログラムで のPCR反応に使用する。その増幅産物をGENECLEANで精製し、NotIで消化し、GENE CLEANで再び精製する。そしてそれを、NotIで線状化してCIAPで処理した完全な 改変ELVISベクター(上記)に挿入する。ELVISベクター中の正しい方向のSV40小型 t抗原の挿入を、配列決定により決定する。あるいは、SV40小型t抗原を、本明 細書中に提供した開示を用いて、ELVISベクター内の他の部位に挿入し得、これ はベクターの機能を害さない。 ELVISベクターを含むSV40小型t抗原イントロンでのBHK細胞のトランスフェク ション後の、ルシフェラーゼの発現レベルを、所望の配列を決定するためにアッ セイする。その異種遺伝子を実施例3B節のルシフェラーゼ遺伝子の挿入につい て記載したように、ELVISベクターのマルチクローニング部位に挿入する。 リンカー配列を、異種配列の挿入を容易にするために、pKSSINBVおよびpVGELV IS-SINBV構築物に挿入する。このリンカーは、ハイブリダイズさせた場合に、Xh oIおよびXbaI適合性付着末端を有する二重鎖を形成する2つの相補的な35ヌクレ オチドを用いて構築する。 SINBVLinkF:5'TCGAGCACGTGGCGCGCCTGATCACGCGTAGGCCT(配列番号:54) SINBVLinkR:5'CTAGAGGCCTACGCGTGATCAGGCGCGCCACGTGC(配列番号:55) このオリゴヌクレオチドをT4ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化し、90℃に 加熱し、そしてハイブリダイゼーションが生じるようにゆっくりと冷却する。次 いでこのハイブリッドを、XhoIおよびXbaIでの消化、その後のアルカリホスファ ターゼによる処理、そしてアガロースゲル精製後に得られるpKSSINBV-Lucの10.6 kbのフラグメントに連結する。得られる構築物は、シンドビス接合領域とシンド ビス3'末端との間に唯一の部位として、XhoI、PmlI、AscI、BclI、MluI、StuI、Xb aI、およびNotIを含む。この構築物はpKSSINBV-リンカーとして知られている。 このリンカーをまた、pVGELVIS-SINBV構築物中にクローン化する。このリンカ ーをSfiIおよびNotIでのpVGELVIS-SINBV-lucの消化により挿入する。この10.1kb のフラグメントをアガロースゲル精製し、そしてこのフラグメントをpKSSINBV- リンカーのSfiI/NotI消化由来のゲル精製した2.6kbのフラグメントに連結した。 得られる構築物は、シンドビス接合領域とシンドビス3'末端との間に唯一の部位 として、XhoI、PmlI、AscI、MluI、およびNotIを含む。この構築物はpVGELVIS-SIN BV-リンカーとして知られている。 実施例4 A.シンドビスベクターへのアデノウイルス初期領域E3遺伝子の挿入 反復投与による治療が望ましい場合の適用において、ベクター感染細胞中で発 現されるウイルス特異的タンパク質に対する宿主CTL指向応答を阻害するために 、アデノウイルス2型(Ad2)E3/19K遺伝子ATCC受託番号第VR-846号を、pKSSINdlJ Rsjrcプラスミドの接合領域コアのすぐ下流にクローン化する。 簡単に説明すると、Ad2を許容細胞株(例えば、HeLa細胞またはVero細胞)中 で増殖させ、細胞病理学的効果が確認された後、ビリオンを細胞溶解物から精製 し、そしてAd2 DNAをウイルスから精製する。 Ad2 DNA E3/19K遺伝子(アミノ末端シグナル配列と、その後の管腔内(intralu minal)ドメインおよびE3 19Kタンパク質自身を小胞体内に埋め込ませるカルボキ シ末端細胞質テールを含有する)を、ウイルスヌクレオチド28,812と29,288との 間に配置する。ウイルスゲノムDNAからのAd2 E3 19K遺伝子の単離は、以下に示 されるプライマー対を用いてPCR増幅により達成される: Ad2 E3正方向プライマー(Ad2ヌクレオチド28,812〜28,835): 5'-TAT ATC TCC AGA TGA GGT ACA TGA TTT TAG GCT TG-3'(配列番号56) Ad2 E3逆方向プライマー(Ad2ヌクレオチド29,241〜29,213): 5'-TAT ATA TCG ATT CAA GGC ATT TTC TTT TCA TCA ATA AAA C-3'(配列番号5 7) Ad2の相補的配列に加えて、両方のプライマーは、PCRアンプリコン産物の効率 的な酵素消化のための5つのヌクレオチド「緩衝配列」をその5’末端に含有す る。正方向プライマーにおけるこの配列の後にはXhoI認識部位が続き、そして逆 方向プライマーではこの配列の後にClaI認識部位が続く。従って、5’から3’ の方向に、E3/19K遺伝子はXhoIおよびClaI認識部位が隣接している。Ad2 DNAか らのE3/19K遺伝子の増幅は、以下のPCRサイクルプロトコルを用いて達成される : 増幅に続いて、451bpのアンプリコンを1.5%アガロースゲルで精製し、続いて 、XhoIおよびClaI酵素で消化し、あらかじめXhoIおよびClaIで消化しCIAPで処理 したpKSSINdlJRsjrcプラスミドに連結させる。このクローンを、pKSSINdlJRsjrc AdE3と呼ぶ。同じクローニングストラテジーを用いて、実施例2に記載の改変合 成接合領域ベクターのすべてにAd2 E3/19K遺伝子を挿入する。 B.シンドビスベクターへのヒトサイトメガロウイルスH301遺伝子の挿入 反復投与による治療が望まれる場合の適用において、ベクター感染細胞中で発 現されるウイルス特異的タンパク質に対する宿主CTL指向応答を阻害するために 、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)H301遺伝子を、pKSSINdlJRsjrcプラスミドの 接合領域コアのすぐ下流にクローン化する。 簡単に説明すると、HCMV AD169株(ATCC受託番号第VR-538号)を許容細胞株(例 えば、一次ヒト包皮線維芽細胞(HFF)(GIBCO/BRL,Gaithersburg,MD)中で増殖させ 、細胞病理学的効果が確認された後、ビリオンを細胞溶解物から精製する。 続いて、HCMV DNAをビリオンから精製する。 HCMV H301遺伝子を、ウイルスヌクレオチド23,637と24,742の間に配置する。 ウイルスゲノムDNAからのHCMV H301遺伝子の単離は、以下に示されるプライマー 対を用いてPCR増幅により達成される: HCMV H301正方向プライマー(緩衝配列/XhoI部位/HCMVヌクレオチド23,637〜23,6 60): 5'-TAT ATC TCC AGA TGA TGA CAA TGT GGT GTC TGA CG-3'(配列番号58) HCMV H301逆方向プライマー(緩衝配列/ClaI部位/HCMVヌクレオチド24,744〜24,7 22): 5'-TAT ATA TCG ATT CAT GAC GAC CGG ACC TTG CG-3'(配列番号59) HCMV H301遺伝子の相補的配列に加えて、両方のプライマーは、PCRアンプリコ ン産物の効率的な酵素消化のための5つのヌクレオチド「緩衝配列」をその5’ 末端に含有する。正方向プライマーにおけるこの配列の後にはXhoI認識部位が続 き、そして逆方向プライマーにおけるこの配列の後にClaI認識部位が続く。従っ て、5’から3’の方向に、HCMV H301遺伝子はXhoIおよびClaI認識部位が隣接 している。HCMV DNAからのHCMV H301遺伝子の増幅は、以下のPCRサイクルプロト コルを用いて達成される: 増幅に続いて、1.0%アガロースゲルで1,129bpのアンプリコン産物を精製し、 続いて、XhoIおよびClaI酵素で消化し、あらかじめXhoIおよびClaIで消化しCIAP で処理したpKSSINdlJRsjrcプラスミドに連結する。このクローンをpKSSINdlJRsj rcH301と呼ぶ。同じクローニングストラテジーを用いて、実施例3に記載の改変 合成接合領域ベクターのすべてにHCMV H301遺伝子を挿入する。 実施例5 シンドビスベクターからの多数の異種遺伝子の発現 プラスミドpBS-ECAT(Jangら、J.Virol 63:1651,1989)は、内部リボゾーム侵入 部位(IRES)を含有する、ウイルスゲノムのヌクレオチド260〜848からの脳心筋 炎ウイルス(EMCV)の5’非翻訳領域を含む。EMCVヌクレオチド260〜827は、以 下のプライマー対を用いてPCRによりpBS-ECATから増幅される: EMCV IRES正方向プライマーA(ベクターpKSSINBVdlJRのApaI部位で無能力化した 接合領域の隣への挿入のため): 5'-TAT ATG GGC CCC CCC CCC CCC CCC AAC G-3'(配列番号60) EMCV IRES正方向プライマーB(ClaI部位で終結し、NcoI部位で開始する異種遺伝 子の間への挿入のため): 5'-TAT ATA TCG ATC CCC CCC CCC CCC CCA ACG-3'(配列番号61) EMCV IRES逆方向プライマー(プライマーAまたはBのいずれかとともに使用さ れる): 5'-TAT ATC CAT GGC TTA CAA TCG TGG TTT TCA AAG G-3'(配列番号62) 正方向プライマーAおよび逆方向プライマーでの増幅から得られるアンプリコ ンは、5bpの「緩衝配列」内のApaIおよびNcoI認識部位により隣接している。 正方向プライマーBおよび逆方向プライマーでの増幅から得られるアンプリコ ンは、5bpの「緩衝配列」内のClaIおよびNcoI認識部位により隣接している。 pBS-ECATプラスミドからのEMCV IRES配列の増幅は、以下のPCRサイクルプロト コルを用いて達成される: pKSSINBVdlJRベクターへの挿入のために、589bpのアンプリコンをApaIおよびN coIで消化し、1%アガロースゲルで精製し、そしてApaIおよびNcoIで消化しCIA Pで処理したベクターに連結する。EMCV IRESインサートのすぐ下流に挿入される 異種遺伝子の開始コドンに対応するATGを、NcoI部位(CCATGG)を含有するように 改変する。 異種遺伝子の間のpKSSINBVまたはpKSSINBVdlJRsjrcベクターへの挿入のために 、589bpのアンプリコンをClaIおよびNcoIで消化し、1%アガロースゲルで精製 し、そしてClaIおよびNcoIで消化しCIAPで処理した2シストロン性異種遺伝子ベ クターに連結させる。2シストロン性異種遺伝子の構造では、上流異種遺伝子の 3’末端をClaI認識部位で終結するように改変する。EMCV IRESインサートのす ぐ下流に挿入される第2の下流異種遺伝子の開始コドンに対応するATGを、NcoI 部位(CCATGG)を含有するように改変する。従って、5’から3’への成分の順序 は:pKSSINBVまたはpKSSINBVdlJRsjrc−遺伝子#1−Cla/Nco EMCV IRES遺伝子 #2−3’SINである。実施例2に記載の全ての改変接合領域ベクターへの挿入 は、pKSSINBVまたはpKSSINBVdlJRsjrcベクターについてここで記載したストラテ ジーに従う。 2シストロン性異種構造を含有するpKSSINBVdlJRベクターを、上記の各EMCV I RESアンプリコンを用いて構築する。上記のように第1のEMCV IRESアンプリコン は、ApaIおよびNcoI部位で隣接しており、そして無能力化した接合領域のすぐ下 流にApaI部位で挿入される。このEMCV IRES配列の後に、ClaI認識部位で終結す る第1の異種遺伝子が続く。この第1の異種遺伝子の後に、ClaIおよびNcoI認識 部位で隣接するアンプリコンを用いて、第2のEMCV IRES配列が続く。第2の異 種遺伝子は第2のEMCV IRES配列の後に続く。すなわち、5’から3’への成分 の順序は:SINBVdlJR-Apa/Nco EMCV IRES遺伝子#1−Cla/Nco EMCV IRES遺伝子 #2−3’SINである。 プラスミドpP2-5’(Pelletierら、Mol.Cell Biol.8:1103,1988)は、ウイルス ゲノム(ポリオIRESを含有する)のヌクレオチド1〜1,872のポリオウイルスP2 /Lansing株の5’非翻訳領域を含む。ポリオウイルスヌクレオチド320〜631を 以下のプライマー対を用いてPCRによりpP2-5'から増幅する: ポリオIRES正方向プライマーA(ベクターpKSSINBVdlJRの無能力化した接合領域 の隣へのApaI部位での挿入のため): 5'-TAT ATG GGC CCT CGA TGA GTC TGG ACG TTC CTC-3'(配列番号63) ポリオIRES正方向プライマーB(ClaI部位で終結しNcoI部位で開始する異種遺伝 子の間への挿入のため): 5'-TAT ATA TCG ATT CGA TGA GTC TGG ACG TTC CTC-3'(配列番号64) ポリオIRES逆方向プライマー(プライマーAまたはBのいずれかとともに使用さ れる): 5'-TAT ATC CAT GGA TCC AAT TTG CTT TAT GAT AAC AAT C-3'(配列番号65) 上記のポリオIRES正方向プライマーA/逆方向プライマー対によるPCRから得 られるアンプリコンは、5bpの「緩衝配列」内でApaIおよびNcoI認識部位により 隣接している。上記のポリオIRES正方向プライマーB/逆方向プライマー対での PCRから得られるアンプリコンは、5bpの「緩衝配列」内でClaIおよびNcoI認識 部位により隣接している。pP2-5'プラスミドからのポリオIRES配列の増幅は、実 施例5に示されるPCRプロトコルを用いて達成される。 pKSSINBVdlJRベクターへの挿入のために、333bpのアンプリコンをApaIおよびN coIで消化し、1.5%アガロースゲルで精製し、そしてApaIおよびNcoIで消化しCI APで処理したベクターに連結する。ポリオIRESインサートのすぐ下流に挿入され る異種遺伝子の開始コドンに対応するATGを、NcoI部位(CCATGG)を含有するよ うに改変する。 異種遺伝子の間のpKSSINBVまたはpKSSINBVdlJRsjrcベクターへの挿入のために 、333bpのアンプリコンをClaIおよびNcoIで消化し、1.5%アガロースゲルで精製 し、そしてClaIおよびNcoIで消化しCIAPで処理した2シストロン性異種遺伝子ベ クターに連結する。2シストロン性異種遺伝子の構造では、上流異種遺伝子の3 ’末端をClaI認識部位で終結するように改変する。ポリオIRESインサートのすぐ 下流に挿入される第2の下流異種遺伝子の開始コドンに対応するATGを、NcoI部 位(CCATGG)を含有するように改変する。すなわち5’から3’へ、成分の順序 は:pKSSINBVまたはpKSSINBVdlJRsjrc−遺伝子#1−Cla/NcoポリオIRES遺伝子 #2−3’SINである。実施例3に記載の全ての改変接合領域ベクターへの挿入 は、pKSSINBVまたはpKSSINBVdlJRsjrcベクターについてここで記載したストラテ ジーに従う。 2シストロン性異種構造を含有するpKSSINBVdlJRベクターを、上記の各ポリオ IRESアンプリコンを用いて構築する。第1のポリオIRESアンプリコンはApaIおよ びNcoI部位により隣接し、そして上記のように無能力化した接合領域のすぐ下流 にApaI部位で挿入される。このポリオIRES配列の後に、ClaI認識部位で終結する 第1の異種遺伝子が続く。この第1の異種遺伝子の後に、ClaIおよびNcoI認識部 位により隣接するアンプリコンを用いる、第2のポリオIRES配列が続く。第2の 異種遺伝子は第2のポリオIRES配列の後に続く。すなわち、5’から3’へ、成 分の順序は:SINBVdlJR−Apa/NcoポリオIRES遺伝子#1−Cla/Nco EMCV IRES遺 伝子#2−3’SINである。 ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質mRNAの5'リーダー領域に対応する220 bpのBiP cDNAを、PCRを用いてクローンpGEM5ZBiP5'から増幅する。BiP cDNAに 対応する配列を、元々ヒトGRP78遺伝子のバクテリオファージλhu28-1クローン( TingおよびLee,DNA 7:275-286,1988)中で決定した。このPCR反応で使用される 正方向プライマーは、BiP cDNAが挿入されるシンドビスベクターに依存して異な る。このPCR反応の逆方向プライマーは、全てのシンドビスベクターについて 同じである。シンドビスベクターpKSSINBVdlJRの無能力化した接合領域のすぐ下 流への挿入のためのプラスミドからのpGEM5ZBiP5'からのBiP cDNA配列の増幅は 、以下の正方向プライマーを用いる増幅により達成される: 5'-TAT ATG GGC CCG GTC GAC GCC GGC CAA GAC-3'(配列番号66) ヌクレオチド12で始まるBIP cDNAの相補的配列に加えて、このプライマーは、 PCRアンプリコン産物の効率的な酵素消化のための5つのヌクレオチド「緩衝配 列」をその5’末端に含有する。この配列の後にApaI認識部位が続く。 シンドビスベクターpKSSINBVまたはpKSSINBVdlJRsjrcへの挿入のためのpGEM5Z BiP5’プラスミドからのBiP cDNA配列の増幅は、以下に示す下記の正方向プラ イマーを用いて増幅により達成される。これらのベクターについては、BiP cDNA を、シンドビス構造遺伝子に対応する領域に置かれる2つの異種遺伝子の間に挿 入する。 5'-TAT ATA TCG ATG GTC GAC GCC GGC CAA GAC-3'(配列番号67) ヌクレオチド12で始まるBiP cDNAの相補的配列に加えて、このプライマーは、 PCRアンプリコン産物の効率的な酵素消化のための5つのヌクレオチド「緩衝配 列」をその5'末端に含有する。この配列の後にClaI認識部位が続く。 シンドビスベクターpKSSINBVdlJR,pKSSINBV、またはpKSSINBVdlJRsjrcへの挿 入のためのpGEM5ZBiP5'プラスミドからのBiP cDNA配列の増幅のための逆方向プ ライマーは、以下のものである: 5'-TAT ATC CAT GGT GCC AGC CAG TTG GGC AGC AG-3'(配列番号68) ヌクレオチド12で始まるBiP cDNAの相補的配列に加えて、逆方向プライマーは 、PCRアンプリコン産物の効率的な酵素消化のための5つのヌクレオチド「緩衝 配列」をその5’末端に含有する。この配列の後にNcoI認識部位が続く。pGEM5Z Bi P5’からのBiP cDNAの増幅を、上記のPCRプロトコルを用いて達成する。 pKSSINBVdlJRベクターへの挿入のために、242bpのアンプリコンをApaIおよびN coIで消化し、2%アガロースゲルで精製し、そしてApaIおよびNcoIで消化しCIA Pで処理したベクターに連結する。BiP cDNAインサートのすぐ下流に挿入される 異種遺伝子の開始コドンに対応するATGを、NcoI部位(CCATGG)を含有するように 改変する。 異種遺伝子の間のpKSSINBVまたはpKSSINBVdlJRsjrcベクターへの挿入のために 、242bpのアンプリコンをClaIおよびNcoIで消化し、2%アガロースゲルで精製 し、ClaIおよびNcoIで消化しCIAPで処理した2シストロン性異種遺伝子ベクター に連結する。2シストロン性異種遺伝子の構造では、上流異種遺伝子の3'末端 をClaI認識部位で終結するように改変する。BiP cDNAインサートのすぐ下流に挿 入される第2の下流異種遺伝子の開始コドンに対応するATGを、NcoI部位(CCATG G)を含有するように改変する。すなわち、5'から3'へ、成分の順序は:pKSSI NBVまたはpKSSINBVdlJRsjrc−遺伝子#1−Cla/Nco BiP−遺伝子#2−3'SINで ある。実施例2に記載の全ての改変された接合領域ベクターへの挿入は、pKSSIN BVまたはpKSSINBVdlJRsjrcベクターについてここで記載したストラテジーに従う 。 2シストロン性異種構造を含有するpKSSINBVdlJRベクターを、上記の各BiP cD NAアンプリコンを用いて構成する。第1のBiP cDNAアンプリコンはApaIおよびNc oI部位により隣接し、そして上記のように無能力化した接合領域のすぐ下流にAp aI部位で挿入される。このBiP配列の後に、ClaI認識部位で終結する第1の異種 遺伝子が続く。この第1の異種遺伝子の後に、ClaIおよびNcoI認識部位により隣 接するアンプリコンを用いる、第2のBiP cDNA配列が続く。第2の異種遺伝子は 第2のBiP配列の後に続く。すなわち、5’から3’へ、成分の順序は:SINBVdl JR−Apa/Nco BiP−遺伝子#1−Cla/Nco BiP−遺伝子#2−3’SINである。 リボゾーム読み通しを促進する配列は、pKSSINBVdlJRベクター中の無能力化し た接合領域のすぐ下流に置かれ、これは非構造遺伝子終結から異種遺伝子へのゲ ノムmRNAのリボゾームスキャニングを可能にする。この異種タンパク質はリボゾ ームスキャニングによりゲノム長mRNAから発現される。このベクターに感染した 細胞中でサブゲノム転写は起きないため、これは感染した標的細胞の寿命を延長 させる。さらに、これらの同じリボゾームスキャニング配列は、ポリシストロン 性サブゲノムmRNAに含有される異種遺伝子の間に置かれる。pKSDINBVdlJRベクタ ー中およびポリシストロン性mRNA領域における異種遺伝子の間で使用されるリボ ゾームスキャニング配列は、以下の通りである: 5'-TTA ATT AAC GGC CGC CAC CAT GG-3'(配列番号69) 太字のコドンは、それぞれオーカー停止コドンおよびAUG開始コドンをいう。 停止コドンの周りの下線を引いた塩基はPacI認識部位をいい、そして開始コドン の周りの下線を引いた塩基はNcoI認識部位をいう。以前に示されているように、 開始コドンと停止コドンとの間の15bpのシストロン間距離は、効率的なリボゾー ム読み通しを可能にする(Levineら、Gene 108:167-174,1991)。塩基−9から+ 1までのATG開始コドンの周りの配列は、効率的な翻訳開始のためのコザックコ ンセンサス配列(Kozak,Cell 44:283-292,1986)に一致する。可能な場合は、カル ボキシ末端アミノ酸に対応する3'末端ヌクレオチドを、部位特異的変異誘発に よりTに変化させる。また、下流のシストロン中のアミノ末端アミノ酸に対応す る5'末端ヌクレオチドは、部位特異的変異誘発によりGに変化させる。 異種遺伝子間、または上記のように改変したベクターpKSDINBVdlJR中の無能力 化した接合領域の下流へのシストロン間配列(intercistronic sequence)の挿入 は、適合性のPacI/NcoI末端中に以下に示す2本鎖オリゴヌクレオチド対を挿入 することにより達成される: 読み通しセンスオリゴヌクレオチド: 5'-TAA CGG CCG CCA C-3'(配列番号70) 読み通しアンチセンスオリゴヌクレオチド: 5'-CCA TGG TGG CGG CCG TTA AT-3'(配列番号71) 上記のオリゴヌクレオチドを10mMのMgCl2の存在下で等モル量で混合し、95℃ で5分間加熱し、次にゆっくりと室温まで冷却して、PacIおよびNcoI部位により 隣接する所望のシストロン間配列を得る。次にこのシストロン間配列を、PacIお よびNcoI適合性部位を含有する適切なベクター中で連結する。 実施例6 同時パッケージングによる多数の異種遺伝子の発現 同じアルファウイルスベクター粒子中に多数のRNA分子を同時パッケージング する能力は、単一のアルファウイルスベクター粒子からの多数の異種遺伝子産物 の発現に有用であり得る。さらに、非常に大きな遺伝子がアルファウイルスベク ターRNA(非構造遺伝子を含む)とは別のRNA分子上で運ばれるのを可能にするた めに、この概念はまた適応され得、従って、非常に長いベクターRNA分子をパッ ケージングする必要性が避けられる。 このような同時パッケージングを達成するために、全てのRNAフラグメントは 、アルファウイルスRNA、負の鎖合成のためのアルファウイルスRNAポリメラーゼ 認識配列、および少なくとも1コピーのRNAパッケージング配列の転写を開始し 得る5'配列を含まなければならない。少なくとも1つのRNAフラグメントはまた 、アルファウイルス非構造タンパク質をコードする配列を含まなければならない 。本発明の好ましい実施態様において、同時パッケージングされるべき、1つ以 上のRNAフラグメントもまた、異種遺伝子に続くウイルス接合領域を含む。 A.多数の異種遺伝子の発現のための同時パッケージングした発現カセットの構 多数の異種遺伝子の発現を可能にする同時パッケージングの実用性を証明する ために、2つのベクター構築物を作成した。第1の構築物は、シンドビスウイル スRNAの転写を開始することができる5'配列、パッケージングに必要なシンドビ スRNA配列、非構造タンパク質1〜4の合成をコードする配列、シンドビス接合 領域、ルシフェラーゼ遺伝子、および負のRNA鎖の合成に必要なシンドビス3'配 列よりなる。第2の構築物は、シンドビスウイルスの転写を開始することができ る5'配列、シンドビス接合領域、パッケージングに必要なシンドビス配列、Lac Z遺伝子をコードする配列、および負のRNA鎖の合成に必要なシンドビス3'配列 よりなる。1つのパッケージング細胞株にトランスフェクトされたこれらの構築 物のRNA転写物は、同時パッケージングされてルシフェラーゼおよびβ−ガラク トシダーゼの両方の発現を同じ真核細胞に移行させることができるベクター粒子 を産生する。 β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子をシンドビスベーシックベクター(pK SSINBV)に挿入し、次にベクターからシンドビス非構造タンパク質の一部を欠失 させる。この構築物からのRNAを、シンドビスルシフェラーゼベクター(pKSSINBV -luc)からのRNAで同時トランスフェクトして、実施例7に記載の方法の1つによ り同時パッケージングさせる。同時パッケージングされたRNA発現カセットを含 有するベクター粒子により新鮮なBHK-21細胞を感染させると、同じ細胞内でルシ フェラーゼとβ−ガラクトシダーゼとの両方を発現するにちがいない。 B.β−ガラクトシダーゼ発現カセットの構築 pKSSINBV-リンカーを、酵素SacIで消化し、これはシンドビス3'末端およびポ リA配列の直後で切断する。消化されたフラグメントを、アルカリホスファター ゼで処理し、そしてGenecleanを用いて精製する。ハイブリダイズした場合、Sac I適合性末端とともにPmeI部位を形成する以下の2つの12マーのオリゴヌクレオ チド 5'GGTTTAAACAGGAGCT3'(配列番号72) 5'CCTGTTTAAACCAGCT3'(配列番号73) をリン酸化し、そしてSacI消化したベクター内に連結した。この構築物は、pKSS INBV-リンカー-PmeIとして知られる。SP6転写の前のプラスミドの線状化のため の部位を作るために、PmeI認識部位をSacI部位に置換する。lacZ遺伝子はいくつ かのSacI部位を含む。pKSSINBV-リンカー-PmeIをPmlIおよびBclIで消化し、続い てGENECLEANで精製する。酵素HindIIIを用いたpSV βガラクトシダーゼベクター DNA(Promega Corp.,Madison,WI)の消化により、lacZ遺伝子を得る。クレノウDNA ポリメラーゼおよびdNTPを用いて、消化物を平滑末端化する。クレノウを熱失活 し、そしてプラスミドをさらにBamHIおよびXmnIで消化する。XmnIは、lacZフラ グメントのゲル精製を簡単にするために、残っているベクターフラグメントのサ イズを小さくする。3.7kbpのlacZフラグメントを1%アガロースゲルから精製し 、そしてPmlI/BclI消化したpKSSINBV-リンカー-PmeIフラグメントに連結する。 こ の構築物はpKSSINBV-lacZとして知られる。pKSSINBV-lacZをBspEIで消化し、そ して希釈条件下で再連結する。これにより、ヌクレオチド番号422〜7054の間の シンドビス非構造タンパク質の除去がもたらされる。このシンドビス構築物は、 pKSSINBVdlNSP-lacZとして知られる。 pKSSINBVdlNSP-lacZおよびpKSSINBV-lucをそれぞれPmeIおよびSacIで線状化し 、そしてSP6転写物を実施例3に記載されるように調製する。これらのRNA転写物 を、実施例7に記載される機構の1つによりシンドビス構造タンパク質を発現す るパッケージング細胞内に同時トランスフェクトする。各RNA転写物は、シンド ビスウイルスの転写を開始することができる5'配列、パッケージングに必要なR NA配列、シンドビス接合領域、レポーター遺伝子、および負のRNA鎖の合成に必 要なシンドビス3'配列を含有する。pKSSINBV-luc転写物はまた、シンドビス非 構造タンパク質を含有する。同時トランスフェクトされた細胞において、両方の RNA転写物は複製され、そしていくつかのウイルス粒子は、同じ粒子内に同時パ ッケージングされた両方のRNA転写物を含有する。同時パッケージングされたRNA 粒子で新鮮な細胞を感染させると、ルシフェラーゼとβ−ガラクトシダーゼとの 両方を発現する細胞が得られる。 C.パッケージング能を上げるための多数の発現カセットの同時パッケージング 第VIII因子のような大きな遺伝子は同時パッケージングの恩恵を受け得る。簡 略に述べると、第VIII因子をコードするcDNAをシンドビスベーシックベクター( pKSSINBV)に挿入すると、長さが約16kbのRNA転写物が得られる。この増加した 長さのために、このRNAは効率的に複製またはパッケージングができない。上記 のアプローチを用いて、シンドビス非構造タンパク質および第VIII因子遺伝子は 長さが約8kbおよび約9kbの別々のRNA分子に分けられて、そして同じ粒子に同 時パッケージングされ得る。 D.第VIII因子発現カセットの構築 pKSSINBV-リンカー-PmeI構築物を酵素BspEIで消化し、そして希釈条件下で再 連結する。これにより、ヌクレオチド番号422〜7054の間のシンドビス非構造タ ンパク質の除去がもたらされる。この構築物は、pKSSINBVdlNSP-リンカー-PmeI として知られる。pKSSINBVdlNSP-リンカー-PmeI構築物を酵素PmlIおよびStuIで 消化し、そしてGenecleanを用いて精製する。第VIII因子cDNAの起源は、クロー ンpSP64-VIII(完全長ヒトタンパク質をコードするcDNAを有する受託番号39812 下のATCCクローン)である。pSP64-VIIIをSalIで消化し、末端をT4 DNAポリメラ ーゼおよび50μMの各dNTPで平滑化し、そして約7700bpのフラグメントを、0.7% アガロース/TBEゲルで電気泳動し、そしてGenecleanで精製する。第VIII因子を コードする7.7kbフラグメントを、0.7%アガロースゲルで精製し、そして次にPm lI/StuIで消化したpKSSINBVdlNSP-リンカー-PmeIフラグメントに連結する。この 構築物は、pKSSINBVdINSP−第VIII因子として知られる。 pKSSINBVdlNSP−第VIII因子およびpKSSINBV構築物を、それぞれPmeIおよびSac Iで線状化する。SP6転写物を、実施例3に記載されるように調製する。これらの RNA転写物を、実施例7に記載される機構の1つにより、シンドビス構造タンパ ク質を発現するパッケージング細胞に同時トランスフェクトする。両方のRNA転 写物は、シンドビスRNAの転写を開始し得る5’配列、RNAパッケージングに必要 な配列、シンドビス接合領域、および負のRNA鎖の合成に必要なシンドビス3’ 配列を含む。さらに、pKSSINBV転写物は、シンドビス非構造タンパク質遺伝子を 含み、そしてpKSSINBVdlNSP−第VIII因子構築物は、第VIII因子遺伝子を含むが 、シンドビス非構造タンパク質遺伝子を含まない。同時トランスフェクトされた 細胞において、両方のRNA転写物は複製され、そしていくつかのウイルス粒子は 、同じベクター粒子に同時パッケージングされた両方のRNA転写物を含む。両方 のRNA分子が同じ細胞に存在した場合にのみ、同時パッケージングされたRNAを用 いた新鮮なBHK-21細胞の感染は、第VIII因子の発現をもたらす。 E.アウラウイルス同時パッケージングベクターの構築 シンドビスについて記載した系と類似のアウラウイルス発現系を開発するため に、当該分野で公知の標準的な技術(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)および本明細 書中に記載した具体的なアプローチを、構築のために利用する。ATCCから得られ たウイルスを、培養した細胞で増殖させ、そのビリオンRNAを抽出し、そしてゲ ノム全体にわたるcDNAを合成し、そして従来法を用いてクローン化する。次にこ のcDNAを用いて、上記のものと原理的に類似の遺伝子移行ベクター系を構築す る。これは、異種遺伝子を運搬することができるレプリコン、構造タンパク質遺 伝子を発現するパッケージング細胞株、およびこの系に独特の、さらなる異種遺 伝子を運搬できる別のパッケージング適合性のサブゲノムベクターを包含するが 、これらに限定されない。アウラウイルスサブゲノムRNAはパッケージングシグ ナルを含有するため、異種遺伝子で置換中の不活性化を防止するために、この配 列を同定するために予備的な実験が行われる。パッケージング配列の同定の後に 、このアウラベース系の各エレメントが構築される。 以下の最小エレメントを含有するように、基本的なレプリコンベクターが構築 される:複製に必要なアウラ5'配列、非構造タンパク質コード領域、サブゲノ ムmRNA合成のための改変されたまたは改変されていない接合領域、異種遺伝子の 挿入のためのマルチクローニング部位、1コピー以上のパッケージングシグナル 、および複製に必要な3'アウラ配列(ポリアデニル化配列を含む)。レプリコ ンRNAのインビトロ転写のために上流のバクテリオファージRNAポリメラーゼプロ モーターが利用される。あるいは、cDNAから直接転写するために、真核細胞RNA ポリメラーゼプロモーターが利用される。 以下の最小エレメントを含有するように、パッケージング適合性のサブゲノム ベクターがまた構築される:改変されたまたは改変されていない接合領域、異種 遺伝子の挿入のためのマルチクローニング部位、1コピー以上のパッケージング シグナル、および複製/負の鎖の合成に必要な3'アウラ配列(ポリアデニル化 配列を含む)。このサブゲノムベクターは、ある場合には、ベクターがアンプリ コンとして作用するように、接合領域の上流に配置されるアウラ5'複製配列と ともに構築され得る。サブゲノムベクターRNAの転写は、バクテリオファージRNA ポリメラーゼプロモーターを用いてインビトロで、または真核細胞RNAポリメラ ーゼプロモーターを用いてインビボでcDNAにより達成され得る。さらに一次転写 物はセンス構造またはアンチセンス構造の転写産物であり得る。 1つ以上の構造タンパク質のmRNAが接合領域から転写され、そしてアウラレプ リコンにより誘導されるように、シンドビスベクターについて以前に記載したよ うにパッケージング細胞株がまた構築される。他の場合には、誘導性または構成 性真核細胞プロモーターの制御下で、1つ以上の構造タンパク質が発現され得る 。 それぞれの場合に、レプリコンによるこれらの配列のカプシド化を防止するため に、構造タンパク質遺伝子中に存在する任意のパッケージング配列に特異的な不 活性化突然変異が作成される。これらの変異は通常、コードされるアミノ酸に影 響を与えない、コドンの3番目の位置のサイレントな(silent)変化である。 多数の異種遺伝子をパッケージングする能力は、多くの治療用途に活用され得 る。これらには、多数のサイトカイン、多数のCTLエピトープ、免疫提示を増強 するためのサイトカインとCTLエピトープとの組合せ、治療用タンパク質の多数 のサブユニット、治療用タンパク質とアンチセンスRNAとの組合せなどの発現を 包含するが、これらに限定されない。多数の異種遺伝子の発現のための有用性に 加えて、ビリオンへのサブゲノムmRNAのパッケージングはまた、このベクター系 が非常に長い異種配列を移行することを可能にする。さらに、この多くの部分に 分かれたアプローチは、プロデューサー細胞株の開発に有用であり、ここで、レ プリカーゼタンパク質および構造タンパク質が安定に発現され、次いで、サブゲ ノムベクター中に含まれる任意の異種遺伝子が安定な組み込み体として容易に導 入され得る。 実施例7 アルファウイルスパッケージング細胞株の構築 A.アルファウイルスパッケージング細胞株の開発のための親細胞株の選択 1.持続的にまたは慢性的に感染可能な細胞 アルファウイルスパッケージング細胞株を作り出すための潜在的な親細胞株の 選択における1つの重要な判断基準は、アルファウイルスベクター粒子の適切な 産生の前に細胞病理学的効果をほとんどまたは全く示さない細胞株の選択である 。この判断基準は、長期間にわたって増殖させ得、そしてベクターの安定的供給 源として使用し得るアルファウイルスベクタープロデューサー細胞株の開発にと って必要不可欠のものである。大部分の哺乳動物細胞のアルファウイルス感染が 、細胞病理学および細胞の溶解をもたらすことがわかっている。しかし、さまざ まな昆虫細胞株由来のパッケージング細胞に由来することによってこの問題を回 避し得る。例えば、昆虫細胞株(例えば、Aedes albopictus,Aedes aegypti、Sp od optera frugiperda、およびDrosophila melanogaster細胞)は、パッケージング 細胞株を構築するために利用され得る。例えば、1つの実施態様において、アル ファウイルスパッケージング細胞株は、これらの細胞タイプにおいて活性な誘導 性または非誘導性のプロモーターの制御下で、アルファウイルス構造タンパク質 の発現を可能にする安定にトランスフェクトされた発現カセットベクターを含み 、そして選択マーカーを同時発現する、Aedes albopictusのような昆虫親細胞株 を使用する構造を用いて提供される。 最近、感染したいくつかのAedes albopictus細胞の中でのシンドビスウイルス の産生のダウンレギュレーションに結びつけられた細胞起源のシンドビスウイル ス誘導タンパク質が同定され、そして精製された(Virology 194 : 44)。この タンパク質は、抗ウイルス状態を誘導し得、そして49Sまたは26Sの両方のウイル スRNA合成を阻害し得る、約3200Daの小さい疎水性ペプチドである。抗ウイルス 性ペプチドで処理された細胞は、通常、未感染細胞内で96時間細胞分裂の静止性 停止を示し、次いで正常な成長速度を回復する。感染に先立ってこのペプチドに 曝された細胞は、シンドビスウイルスを複製することができず、そして10ヵ月の 連続的な継代を通して抗ウイルス性タンパク質を構成的に産生することによって この表現型を維持するように思われる。 Aedes albopictus細胞内でのシンドビス複製に対するこの細胞応答が、これら の細胞における組換えアルファウイルスベクター産生系の効率を減少させる可能 性があるということが認められる。アルファウイルスベクター産生の効率を改善 するために、ウイルス誘導された細胞抗ウイルス性タンパク質を不活性化させる ことによりベクター粒子の力価の減少をことごとく防止する2つの方法が考案さ れた。第1の方法は、上記のこの細胞タンパク質の精製および、当該分野で公知 の確立された技術を用いての、一次アミノ酸配列の一部の決定を必要とする。次 いで、得られたアミノ酸配列は、可能な対応するゲノム配列を誘導するのに用い られ、特定の細胞配列を増幅するのに使用できる縮重PCRプライマー対を設計す ることができるようになる。次いで、この増幅した配列は、この阻害タンパク質 をコードする遺伝子の不連続領域を得るため、当該技術分野において公知の標準 的な技術を用いてクローン化される。このクローンのヌクレオチド配列の決定に よって、次に相同な組換えによってこのシンドビス阻害遺伝子内に特異的に組込 まれ、そして機能的タンパク質を発現するその能力を「ノックアウトする」こと になるベクターを設計することが可能になる。ノックアウト配列を含む細胞クロ ーンは、ベクターで細胞をトランスフェクトする前に、阻害タンパク質の不連続 なクローン化領域内へ選択マーカーを挿入することによって同定される。 このシンドビスウイルス阻害タンパク質を不能にするための第2の方法は、変 異原(例えば、BUDR(5−ブロモデオキシウリジン))でのAedes albopictus由 来パッケージング細胞の処置を含む。この変異誘発されたパッケージング細胞株 集団は、次に、ネオマイシン耐性マーカーを発現できるシンドビスベクターでト ランスフェクトまたは形質導入される。高濃度のG418薬物の下で、大量のシンド ビスベクターを産生する、従って、シンドビス阻害遺伝子を発現することができ ない細胞のみが生存できる。選択後、耐性コロニーをプールし、希釈クローン化 し、そして高力価のシンドビス産生について試験する。 2.アルファウイルス発現に対する感受性を減少させるための細胞の改変:ア ポトーシスの抑制および細胞病理学 潜在的な親細胞株(例えば、イヌのD-17およびcf2;ヒトのHT1080および293;ウ ズラQT-6;仔ハムスター腎臓BHK-21;マウス神経芽腫N18;およびラット前立腺腺ガ ンAT-3)におけるbcl-2遺伝子産物の過剰発現により、パッケージング細胞株は また、改変され得る。持続的感染可能な状態へのこれらの細胞の変換は、レトロ ベクタープロデューサー株のものと同様に、アルファウイルスパッケージング細 胞株およびプロデューサー細胞株としてのこれらの使用を可能にする。 このようなパッケージング細胞を構築するために、プラスミドp84(Nature 336 :259)由来の910塩基対のEcoRI cDNAフラグメントを、構成性プロモーターを含有 しかつ選択マーカーをコードする任意の市販の発現ベクター(例えば、pCDNA3(In vitrogen,San Diego,CA))に挿入するために、標準的な組換えDNA技術の使用によ り、bcl-2発現ベクターを構築する。アルファウイルス核酸配列と他の形質導入 されたベクターとの間のいずれのタイプのホモロジーも避けるために、注意深く 考慮しなければならない。組換えシンドビス粒子中の選択マーカーまたはbcl-2 オンコジーンの望ましくないパッケージングを導き得る組換え事象を防ぐた めに、この用心をすべきである。本明細書に記載されるアルファウイルスベクタ ー系を生物学的治療としての使用のために設計するので、これは重要な点である 。一旦、bcl-2発現ベクターを構築したら、親細胞株(すなわち、BHK-21細胞)を 任意の標準的な技術を用いてトランスフェクトし、そして適切なマーカーを用い て24時間後に選択する。耐性コロニーをプールし、その後に希釈クローン化し、 次に個々のクローンを増殖させ、そしてbcl-2発現についてスクリーニングする 。一旦、発現を確認したら、持続性のシンドビス感染を試験し、その後に、アル ファウイルスパッケージング細胞株の開発のための親細胞株としてそれは使用さ れる。 bcl-2オンコジーンに加えて、アポトーシスを抑制する他の遺伝子産物もまた 、アルファウイルスパッケージング細胞株またはプロデューサー細胞株において 同様に発現され得る。特に好ましい3つのウイルス遺伝子は:19kDタンパク質を コードするアデノウイルスE1B遺伝子(Raoら、PNAS 89:7742-7746,1992)、単純ヘ ルペスウイルス1型γ134.5遺伝子(ChouおよびRoizman,PNAS 89:3266-3270,1992 )、およびAcMNPVバキュロウイルスp35遺伝子(Clemら、Science 254:1388-1390,1 991)を含む。標準的な技術を用いて、適切な構成性真核細胞転写プロモーターの 制御下で、選択マーカーもまた含有する任意の市販のプラスミド発現ベクター中 に、これらの個々の遺伝子を挿入し得る。続いて、発現ベクター構築物を、上記 のような細胞株にトランスフェクトし、そして適切な選択を適用する。これらの 遺伝子の安定な組み込みおよびそれらの産物の構成的な発現のための選択は、ア ルファウイルス誘導性アポトーシス事象に感受性であることが見出された細胞株 における、より広範なベクター産生を可能にするにちがいない。さらに、各遺伝 子産物がそれ自身の独特の機構によりアポトーシスを阻害することは、可能であ る。従って、遺伝子はまた、より強い抑制効果を得るために、種々の組合せでパ ッケージング細胞株またはプロデューサー細胞株へ導入され得る。最終的に、ア ポトーシスに同様の効果を有する他の遺伝子産物もまた、それらが同定されるよ うなパッケージング細胞株へ容易に組み込まれ得る。 アルファウイルスベクターパッケージング細胞株およびプロデューサー細胞株 の誘導において、ベクターおよびベクターパッケージングカセットの両方で安定 的に形質転換されたプロデューサー細胞株を誘導することができるように、ウイ ルス遺伝子の発現を制御するための多くのアプローチが概説されている。これら のアプローチは、誘発性および/または細胞分化感受性プロモーター、アンチセ ンス構造遺伝子、異種制御系、および持続性ウイルス感染が樹立されている蚊ま たはその他の細胞が含まれる。アルファウイルスベクタープロデューサー細胞株 の最終的構造にかかわらず、ウイルス遺伝子発現の結果として持続性感染または 少なくとも細胞死の遅れを樹立する能力がアポトーシスを阻害することによって 増強され得る。例えば、アデノウイルス、HPV,SV40、およびマウスポリオーマ ウイルス(Py)を含むDNA腫瘍ウイルスは、網膜芽腫(Rb)遺伝子産物p105およびそ の密接に関係する遺伝子産物p107、ならびにサイクリンA,p33cdk2およびp34cd c2 を含む細胞サイクルの制御に関与する他の遺伝子産物に対して結合し、そして 不活性化することによって、細胞を部分的に形質転換させる。Pyを除いてこれら のウイルスは全て、p53に結合し、そしてそれを不活性化する遺伝子産物をコー ドする。唯一、Pyは、膜チロシンキナーゼ、src、およびこのウイルスの完全な 形質転換ポテンシャルのために必要とされるホスファチジルイノシトール-3-キ ナーゼにも結合しこれを活性化する中間T抗原(mT)をコードする(Talmageら、 Cell 59:55〜65,1989)。Rbおよびp53劣性オンコジーン産物に対する結合および その不活性化は、これらのDNA腫瘍ウイルスにより形質転換された細胞がアポト ーシス経路に入るのを防ぐ。p53は、一部には、C-fos,hsc70およびbcl-2を含む 細胞増殖に関連したタンパク質の発現を阻害することによって、細胞分裂を停止 させることができるということが知られている(Miyashitaら、Cancer Research 54:3131〜3135,1994)。 アルファウイルスベクターの産生の持続期間を延長するため、または持続性感 染状態を促進するために、パッケージング細胞およびプロデューサー細胞を、Py またはSV40由来のウイルスゲノムDNAを用いて形質転換する。特に、SV40およびP yで形質転換された細胞株を樹立し、そしてウイルス感染後のシンドビス産生の 動態およびレベルならびに細胞病理学が決定される。ハムスター細胞内でシンド ビス増殖の特徴であるアポトーシス事象が低減したならば、その後の各々のプロ トタイプアルファウイルスパッケージング細胞株およびプロデューサー細胞株は 、 これらの細胞からのパッケージングされたベクターの収量を増大させるために、 PyまたはSV40で形質転換される。 3.アルファウイルス発現に対する感受性を減少させるための細胞の改変:活 性化依存性ベクター粒子の産生 前駆体PE2としてシンドビスE2糖タンパク質を合成する。このPE2前駆体は、第 2のウイルス糖タンパク質E1とともに、小胞体の中で会合し、そしてプロセシン グされ、そしてビリオン取込みのためのヘテロダイマーとして感染した細胞膜ま で輸送される。このプロセシングの間の或る点で、PE2はE3と成熟ビリオン糖タ ンパク質E2とに切断される。E3は、PE2の64個のアミノ末端残基であり、そして 成熟の間に細胞外空隙の中で失われる。より大きな切断産物E2は、E1と会合し、 そしてウイルスエンベロープとなるものの中に係留される。宿主細胞のプロテア ーゼが、PE2前駆体のプロセシングを担い、高度に保存された規範的な4アミノ 酸(aa)残基モチーフ、塩基性-X-塩基性-塩基性アミノ酸のすぐ後に続く部位に おいて切断する。RPE.40と呼ばれる、CHO-K1株に由来する変異細胞株(Watsonら 、J.Virol.65:2332-2339、1991)は、PE2前駆体をE3および成熟E2形態にプロセシ ングする能力がないことから、シンドビスウイルスAR339株の産生において不完 全である。従って、RPE.40細胞株において産生されるシンドビスビリオンのエン ベロープは、PE2/E1ヘテロダイマーを含む。RPE.40細胞は、親CHO-K1細胞よりも シンドビスウイルス感染に対して少なくとも100倍強い耐性をもち、このことは 、ビリオンを含むPE2がこれらの細胞を感染させる能力が非効率的であることを 示唆する。RPE.40細胞株により産生される不完全なビリオンは、トリプシンでの 処理によって完全に感染性の形態に変換され得る。 パッケージング細胞株およびプロデューサー細胞株において、ベクターと構造 タンパク質遺伝子RNAとの間の組換えにより産生されるあらゆる野生型アルファ ウイルスは、細胞を再感染させ、そして迅速に増幅される;従って、パッケージ ングされたベクター調製物を著しく汚染し、そして力価を著しく低下させる。RP E.40株から開発されたパッケージング細胞およびプロデューサー細胞は、ベクタ ーの産生およびパッケージング間に生成されるあらゆる野生型ウイルスの非効率 的な増幅のために、アルファウイルス感染に対して許容的な他の細胞株の代替物 である。従って、ベクター調製物は、野生型ウイルスにより著しく汚染されない 。さらに、この系の利益は、当該分野で公知の技術を用いて類似の細胞プロテア ーゼ内の「ノックアウト」変異体を開発することによって他のパッケージング細 胞株およびプロデューサー細胞株にも拡大される。 4.ホッピング細胞株の開発 以前に議論したようなアルファウイルスホッピング細胞株を、異なる細胞レセ プター向性について偽型化された感染性RNAベクター粒子を一過的に産生するた めに用いる。ホッピング細胞株がベクター粒子をひとたび産生すると、それはも はや必要でなくなる。なぜなら、上記で議論した元々のアルファウイルスパッケ ージング細胞株を形質導入するのには、感染性培養上清だけが必要とされるから である。従って、ベクター粒子を一過的に産生するためには、ホッピング細胞株 がアルファウイルスによる持続性感染を示す必要はない。この場合、親細胞株は 、持続性感染を示す昆虫細胞株、または生産的アルファウイルス感染の後、24時 間〜72時間以内に溶解するようである哺乳動物細胞株のいずれかであり得る。唯 一の基準は、その細胞株が、アルファウイルスRNAベクターの導入に先立って細 胞の増殖に影響を及ぼすことなく、適切なアルファウイルス構造タンパク質を伴 うかまたは伴わずにVSV-Gタンパク質またはレトロウイルスgag/polおよびenvタ ンパク質のいずれかを発現することができるということである。従って、アルフ ァウイルスホッピング細胞株は、bcl-2オンコジーン発現のような以前に議論し たさらなる細胞の改変を伴わずにアルファウイルスまたはレトロウイルスのいず れかの複製を支持することのできる上述の親細胞株のいずれかであり得る。 VSV-G偽型化アルファウイルスベクター粒子の作成は、少なくとも3つの別の アプローチにより達成され得る。そのうちの2つは、細胞へのVSV-G発現カセッ トの安定的組み込みに依存する。VSV-Gタンパク質は、細胞中で発現した場合、 非常に細胞傷害性であることが知られている。従って、発現カセットによるこの タンパク質の合成を、誘導性プロモーターにより制御する。特に、VSV-Gタンパ ク質遺伝子を含有するDNAフラグメントを、BamHIでの消化によりプラスミドpLGR NL(Emiら、J.Virol.65:1202-1207,1991)から単離し、クレノウフラグメント酵素 およびdNTPを使用して末端を平滑化し、そして1.7kbのフラグメントを1%アガ ロースゲルから精製する。プラスミドベクターpVGELVIS-SINBV-リンカー(実施 例3から)を、シンドビス非構造タンパク質のコード配列ヌクレオチド422〜705 4を取り除くために酵素BspEIで消化し、そして残りのベクターをプラスミドpVGE LVISdlNSP-BV-リンカーを作成するためにそれ自身に再連結する。次いで、この プラスミドをXhoIで消化し、そしてクレノウフラグメント酵素およびdNTPを使用 して末端を平滑化する。続いて、以前に精製したVSV-Gフラグメントを、このベ クターDNAと連結し、そして得られたクローンを適切なVSV-G挿入方向についてス クリーニングする。pVGELVISに基づく、このVSV-G発現構築物を、pVGELVISdl-G と呼ぶ。ここで、VSV-G合成は、シンドビスレプリコン誘導性接合領域によって 制御される。 あるいは、同様のシンドビスレプリコン誘導性VSV-G発現カセットを、アンチ センス構造において作成し得る。特に、プラスミドベクターであるpKSSINBV-リ ンカー(実施例3に記載)を、シンドビス非構造タンパク質コード領域の大部分 に対する酵素ApaIおよびBamHIで消化し、そして得られた3309bpのベクターフラ グメントを1%アガロースゲルから精製する。さらに、プラスミドpd5'-26s(本 実施例、第B.3.節に記載)もまた、酵素ApaIおよびBamHIで消化する。HDVリボザ イム/シンドビス5'末端融合を含有する得られた400bpフラグメントを、1%アガ ロースゲルから精製し、そして続いて精製されたpKSSINBV-リンカーベクターフ ラグメントを用いて連結してpd5'-BVリンカーと称するプラスミドを作成する。 続いて、プラスミドpd5'-BVリンカーをXhoIで消化し、クレノウフラグメント酵 素およびdNTPを使用して末端を平滑化し、そして以前に精製したVSV-Gフラグメ ントを用いて連結する。発現カセットエレメントHDV抗ゲノムリボザイム/シンド ビス5'末端299ヌクレオチド/シンドビス接合領域/VSV-Gタンパク質遺伝子/シン ドビス3'末端非翻訳領域を含有する、得られた構築物をプラスミドpd5'-BV-Gと 称する。pcDNA3ベクターへのこのVSV-G遺伝子カセットの挿入は、以下の通りで ある。プラスミドpd5'-BV-Gを酵素PmeIおよびApaIで消化し、そしてT4 DNAポリ メラーゼおよびdNTPの添加により末端を平滑化する。完全な2.5kb VSV-Gタンパ ク質遺伝子カセットを、1%アガロースゲルで精製する。プラスミドpcDNA3を、 酵素HindIIIおよびApaIで消化し、そしてT4 DNAポリメラーゼおよびdNTPの添加 により末端を平滑化する。そして5342bpのベクターを、1%アガロースゲルで精 製する。続いて、2つの精製された平滑末端DNAフラグメントを連結し、そして 得られたVSV-Gタンパク質遺伝子発現カセットベクターは、プラスミドpCMV/d5'V SV-Gとして知られる。今回のネオマイシン耐性の代わりに他の選択マーカー(例 えば、ハイグロマイシン耐性またはE.coli gpt)を使用するか、あるいは今回のC MV、MuLV、およびSV40プロモーターの代わりに他のプロモーターエレメント(例 えば、Drosophiliaメタロチオネインまたはhsp70)を使用するためのVSV-G発現カ セットpVGELVISdl-GおよびpCMV/d5'VSV-Gのさらなる改変を、本明細書中に提供 される開示によれば容易に達成され得る。 第1のVSV-G/アルファウイルスホッピング細胞株構造において、VSV-G発現カ セットプラスミドDNA(pVGELVISdl-GまたはpCMV/d5'VSV-G、あるいはその改変物) を適切な細胞型(例えば、BHK-21細胞)にトランスフェクトし、そしてG418耐性 についての選択を、本実施例の他の場所で記載されたように400μg/mlのG418を 含有する培地を用いて適用する。G418耐性細胞を限界希釈によりクローン化し、 そして個々の細胞株をスクリーニングのために拡大する。VSV-G発現カセットを 誘導するために任意の非構造タンパク質遺伝子を含有するRNAベクター(実施例 3を参照のこと)を用いたトランスフェクションと、その後の、記載されたよう なポリクローナルウサギ抗VSV抗体(RoseおよびBergmann,Cell 34:513-524,1983) を用いる免疫蛍光法により、VSV-G発現細胞株を検出する。続いて、安定にトラ ンスフェクトされたVSV-G発現細胞株を、いくつかの場合において、1つ以上の シンドビス構造タンパク質(本実施例の他の場所に記載される)を発現するプラ スミド発現カセットを用いて、トランスフェクトする。VSV-G偽型化アルファウ イルス粒子の産生のために、適切なベクターRNAをVSV-Gホッピング細胞株へトラ ンスフェクトし、そしてベクター粒子を含有する上清を、トランスフェクション 後少なくとも24時間で回収する。 第2のVSV-G/アルファウイルスホッピング細胞株構造において、VSV-G発現カ セットDNA(pVGELVISdl-GまたはpCMV/d5'VSV-G、あるいはその改変物)を、以前に 得られたアルファウイルスパッケージング細胞株(本実施例の他の場所に記載さ れる)へトランスフェクトし、そして適切な選択を以前に記載されたように適 用する。選択された細胞を限界希釈によりクローン化し、そして個々の細胞株を スクリーニングのために拡大する。VSV-G発現カセットを誘導するために任意の 非構造タンパク質遺伝子を含有するRNAベクター(実施例3を参照のこと)を用 いるトランスフェクションと、その後の、記載されたようなポリクローナルウサ ギ抗VSV抗体(RoseおよびBergmann,Cell 34:513-524,1983)を用いた免疫蛍光法に より、VSV-G発現細胞株を検出する。VSV-G偽型化アルファウイルス粒子の産生の ために、適切なベクターRNAをVSV-Gホッピング細胞株へトランスフェクトし、そ してベクター粒子を含有する上清を、トランスフェクション後少なくとも24時間 で回収する。 第3のVSV-G/アルファウイルスホッピング細胞株構造において、VSV-G発現カ セットDNAを、以前に得られたアルファウイルスパッケージング細胞株(本実施 例の他の場所に記載される)へ適切なベクターRNAを用いて、同時トランスフェ クトする。偽型化ベクター粒子を含有する上清を、トランスフェクション後少な くとも24時間で回収する。 レトロウイルスパッケージング細胞株の中でのアルファウイルスベクターの偽 型化のために、レトロウイルスパッケージング配列を含むように操作されたアル ファウイルスRNAベクターをパッケージングするために、レトロウイルスのgag-p ol配列およびenv配列を発現する文献内に参照されるあらゆる細胞株を使用する ことができる。サブゲノムRNAではなくゲノム長のベクターのみがレトロウイル スエンベロープタンパク質によってパッケージングされるように、レトロウイル スpsiパッケージング配列を、不活性化された接合領域と合成接合領域縦列反復 との間に挿入する。アルファウイルスベクターRNAを含むレトロウイルスに基づ く粒子は、前述した手順を用いて、インビトロ転写されたアルファウイルスベク ターRNAをトランスフェクトすることによって産生される。アルファウイルスRNA ベクターを含む偽型化レトロウイルス粒子を有する上清を、トランスフェクショ ン後24時間で回収し、次いで、これらの上清を用いてアルファウイルスパッケー ジング細胞株を形質導入する。 5.ヒト補体による不活性化に対して耐性を有するアルファウイルスを産生す る親細胞株の同定 組換えアルファウイルス粒子の好結果の静脈内投与は、ベクターが血清中の不 活性化に耐性を有することを必要とする。BHK細胞で増殖したシンドビスは、有 効ウイルス力価に関して不活性化に対して感受性であることが当業者には周知で ある。ヒト補体による不活性化に対して耐性を有するシンドビス粒子を産生する 親細胞株を同定するために、多数の細胞型で増殖したシンドビスウイルスの血清 不活性化のレベルを試験する。試験した細胞型(例えば、293またはHT1080(ATCC 受託番号第CCL 121号)は、ヒトを含む多くの種に由来する。 ヒト補体の供給源として、患者から約70mlの血液を血清分離チューブ(Becton Dickinson,Los Angeles,CA)に集める。血液を室温で1時間30分凝固させておく 。凝固の後、血清を4℃で10分間2000gで遠心分離する。血清を回収し、そして1 5mlのコニカルチューブ(Corning,Corning,NY)に入れ、そして氷上に置く。約1.1 mlの血清のアリコートを2mlの凍結バイアルに入れ、ドライアイス/エタノール浴 中で凍結し、そしてその後の血清不活性化アッセイのために-70℃で貯蔵する。5 6℃で30分間のコントロールアリコートの熱不活性化により、補体不活性化コン トロールを調製する。 血清不活性化についてシンドビスを試験するために、1.1mlの100%非熱不活性 化ヒト血清を含有する2つのバイアルを、種々のウイルス調製物のために使用す る。第1の血清バイアルを37℃で急速に解かす。次いで、血清中に存在する補体 を加熱不活性化するために、血清を56℃で30分間加熱する。不活性化の後、血清 を氷上に置く。第2のバイアルを37℃で急速に解かす。解凍後、血清を氷上に置 く。 約1.0mlの非熱不活性化血清、培地、および熱不活性化血清を、別々の1.5mlチ ューブ(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)に入れ、そして105プラーク形成単位 (PFU)のシンドビスウイルスとともに混合し、そして37℃で1時間インキュベー トする。インキュベート後、チューブを氷上に置く。 ヒト血清不活性化に耐性を有するアルファウイルスの親細胞株宿主を同定する ために、非熱不活性化血清、培地、および熱不活性化血清ウイルス調製物を、BH K細胞でのプラークアッセイにより力価測定した。非熱不活性化血清、培地、ま たは熱不活性化血清を用いるインキュベーションに関係なく、同等のウイルス力 価は、得られるシンドビスウイルスがヒト補体不活性化に耐性を有する親細胞株 宿主を示す。 B.構造タンパク質発現構築物 1.誘導性および構成性構造タンパク質ベクター発現カセット アルファウイルスパッケージング細胞株の開発は、高い細胞内レベルの必要な 構造タンパク質すなわちカプシド、pE2および/またはE2ならびにE1を合成する能 力に依存している。残念なことに、これらのタンパク質、特に外被糖タンパク質 E2およびE1の高レベル発現は、それに付随する細胞病理および偶発的細胞死を導 く可能性がある。従って、構造タンパク質発現カセットは、構成的発現レベルを 維持するその他のものに加えて、遺伝子発現のレベルを制御する誘導可能な調節 エレメントを用いて設計されてきた。 第1の形態においては、アルファウイルス構造タンパク質の発現は、誘導可能 なlacオペロン配列と組合わせてRSV LTRの制御下にある。これは、pOP13およびp ORRSV1ベクター(Stratagene)内へのウイルス構造タンパク質遺伝子に対応するア ルファウイルスcDNAの挿入により達成される。別々に使用されるこれらのベクタ ーは、lacリプレッサー「i」タンパク質を発現するp3'SSベクター(Stratagene) を用いて同時トランスフェクトされる。例えば、イソプロピル−B−D−チオガ ラクトピラノシド(IPTG)といった誘導物質が無い場合、ルシフェラーゼリポータ ー遺伝子の基礎的、すなわち、構成的、発現レベルは、細胞1つにつき10〜20コ ピーであると報告されてきた。IPTGの添加は、リプレッサータンパク質のコンホ ーメーションの変化結果をもたらし、こうしてlac-オペレーター配列に対するla c iタンパク質の親和力は減少し、異種遺伝子の高レベル発現を可能にする。IPT Gの存在下での95倍という誘導レベルが、pOP13ベクター内に含まれている異種遺 伝子について報告されている。 詳細には、シンドビス構造タンパク質遺伝子(SP)cDNAを、以下の通りpOP13 およびpOPRSV1ベクター内に挿入する。SPコード領域は、シンドビスnt 7638での 効率のよい翻訳開始のためのコザックコンセンサス配列に対応する周囲のヌクレ オチドを含め、本来のAUG翻訳開始部位およびUGA翻訳停止部位に対してそれぞれ マッピングされる5’末端をもつプライマー対を用いて全体として増幅される。 正方向プライマーは、シンドビスnts7638〜7661に対し相補的であり、逆方向プ ライマーはシンドビスnts 11,384〜11,364に対して相補的である。構造タンパク 質遺伝子に対応するシンドビスcDNAのPCR増幅は、以下のオリゴヌクレオチド対 を用いて、標準的な3温度サイクルプロトコルによって達成される。 正方向プライマー(7638F): 5'-TATATGCGGCCGCACCACCACCATGAATAGAGGATTCTTTAACATGC-3' (配列番号74) 逆方向プライマー(11384R): 5'-TATATGCGGCCGCTCATCTTCGTGTGCTAGTCAG-3' (配列番号75) 指示されたシンドビスntsに対するそのそれぞれの相補性に加えて、NotI認識 配列が続く5ヌクレオチド「緩衝配列」を、各プライマーの5’末端に結合する 。PCR増幅の後、1%のアガロースゲル中で3763bpのフラグメントを精製し、そ の後続いて、NotI酵素で消化する。その後、3749bpの生成フラグメントを、別々 にpOP13およびpOPRSV1ベクター内に連結する。これらのベクターはNotIで消化さ れ、仔ウシ小腸アルカリホスファターゼで処理されている。シンドビス構造タン パク質のコード能力範囲全体を含むこれらの発現カセットベクターは、pOP13-SI NSPおよびpORRSV1-SINSPとして知られている。 lacオペロン−シンドビス構造タンパク質の遺伝子発現カセットの変化型はま た、その他のウイルス、細胞または昆虫ベースのプロモーターを用いて構築し得 る。当該分野において公知の一般的な分子生物学技術を用いて、lacオペロンお よびRSV LTRプロモーターまたは単にRSV LTRプロモーターのみの配列をStratage neのpOP13およびpOPRSV1ベクターから取り出し、サイトメガロウイルス主要即時 プロモーター(pOPCMV-SINSP);アデノウイルス主要後期プロモーター(pOPAMLP-SI NSP);SV40プロモーター(pOPSV-SINSP):またはDrosophilaメタロチオネイン誘導 性プロモーター(pMET-SINSP)、Drosophilaアクチン5C遠位プロモーター(pOPA5C- SINSP)、熱ショックプロモーターHSP65またはHSP70(pHSP-SINSP)を含む昆虫 プロモーター配列、またはバキュロウイルスポリヘドリンプロモーター(pPHED-S INSP)といった他のプロモーター配列により置換され得る。 2.タンパク質発現レベルを増大させるためのカセットの改変 mRNA転写物のレベルが増大した場合、アルファウイルス構造タンパク質の発現 を増大させ得る。mRNA転写物のレベルの増大は、アルファウイルスの非構造タン パク質がこれらの転写物を認識し、次に、メッセージをより高いレベルに複製す るように、発現カセットを改変することによって達成され得る。この改変は、ア ンチセンスの構造タンパク質遺伝子の転写物を産生させるために、翻訳のための 第1の本来のATG開始部位の前で、そしてベクター内で発現カセットを逆転させ る、シンドビス構造タンパク質コード領域の5’末端の近くに野生型の最小接合 領域コア(ヌクレオチド7579〜7602)を付加することによって実施される。この ことは、シンドビス構造タンパク質cDNAをpOP13およびpOPRSV1発現ベクター内に 入れるために上記と同じPCR増幅技術に従うことで達成され得る。この手順に対 する唯一の改変は、コード領域の第1のATGとNotI制限酵素部位との間の接合領 域コアヌクレオチド7579〜7602を含む類似のプライマーによる7638F正方向プラ イマー(以下)の置換である: 正方向プライマー(JUN 7638F): 5'-TATATGCGGCCGCATCTCTACGGTGGTCCTAAATAGTACCACCACC- ATGAATAGAGGATTC-3'(配列番号76) PCR増幅に続いて、1%のアガロースゲル中で、得られる3787bpフラグメント を精製し、続いてNotI酵素で消化する。その後、3773bpの生成フラグメントを別 々に、pOP13およびp0PRSV1ベクターと連結する。これらのベクターをNotIで消化 し、仔ウシ小腸アルカリホスファターゼで処理する。生成発現カセットベクター は、pOP13-JUNSINSPおよびpOPRSV1-JUNSINSPとして公知である。しかし、構造タ ンパク質発現カセット内への接合領域配列の導入は、望ましくない組換え事象を もたらし得る、野生型ウイルスの生成を導く配列を導入することになる、という ことに留意すべきである。 3.アルファウイルスベクターを介する構造タンパク質の誘導可能な発現 構造タンパク質の発現からの潜在的な細胞傷害効果のため、これらのタンパク 質のまさに適度の基礎レベルを発現する誘導可能なパッケージング細胞株の樹立 は、必ずしも好ましいものではあり得ない。従って、アルファウイルスベクター によりトランスで供給された非構造タンパク質を介する構造タンパク質合成の高 レベルの誘導のための調節エレメントを含むが、適切な刺激を受けるまでは基礎 的なレベルの合成を全くもたないパッケージング細胞株発現カセットが構築され る。 この形態においては、隣接するアルファウイルス接合領域配列から構造タンパ ク質遺伝子の転写が起こるようにする構造タンパク質遺伝子カセットが構築され る。このカセットの主な特徴は、転写開始が本来のアルファウイルスのヌクレオ チド1で始まるような、アルファウイルスのヌクレオチド1の近くに隣接して位 置するRNAポリメラーゼIIプロモーター、トランスクリプターゼ(transcriptase )認識に必要な5'末端アルファウイルス配列、構造タンパク質遺伝子のmRNA発 現のためのアルファウイルス接合領域配列、アルファウイルス構造タンパク質の 遺伝子配列、複製に必要な3'末端アルファウイルス配列、および転写終結/ポ リアデニル化配列である。構造タンパク質遺伝子のAUG開始部位前の翻訳終結コ ドンで終る上流オープンリーディングフレームのため、アルファウイルス構造タ ンパク質の発現は、ベクター供給された非構造タンパク質によるマイナス鎖RNA の合成後のみに生じ得、その後、接合領域からの構造タンパク質遺伝子のmRNA転 写が起こり得る。従って、この系の誘導性は、アルファウイルスベクター自体に よって供給され、インビトロ転写されたRNAまたは適切なプロモーターエレメン トの下流に位置するcDNAのいずれかとして導入される、非構造タンパク質の存在 に完全に依存している。さらに、5'および3'末端のアルファウイルス配列は、 構造タンパク質遺伝子カセットのこのRNA転写物が同じベクター供給の非構造タ ンパク質によって増幅されることを可能にする(図11参照)。 詳細には、ポジティブセンスのベクター誘導可能なシンドビスパッケージング カセットの構築は以下の通りに達成される。簡潔に述べると、前述のpVGELVISベ クターを、酵素BspEIで消化して、非構造遺伝子コーディング配列の大部分を含 むヌクレオチド422〜7054を除去し、残りの9925bpフラグメントを0.8%のアガロ ースゲルで精製し、その後自分自身に再連結してpLTR/Sind1BspEとして公知の構 築物を生成する(図11)。この欠失は、nts60-62にある5'末端の本来の翻訳開始 コドンをそのままに残し、それぞれnts.7130〜7132および7190〜7192(当初の番 号付け)でのインフレーム(in-frame)の下流UAAおよびUGA停止コドンを作り出す 。従って、下流の構造タンパク質遺伝子のオープンリーディングフレームの翻訳 を防いでいる。pLTR/Sind1BspEパッケージングカセット構築物をひき続きBHK細 胞(ATCC#CLL 10)内にトランスフェクトし、400μg/mlにてG418薬物を用いて、 トランスフェクタントを選択し、そして限界希釈によりクローン化する。トラン スフェクトされたクローン化株の拡大後、パッケージング能力についてのスクリ ーニングを前記のシンドビスルシフェラーゼ(Sin-Luc)ベクターRNAのトランスフ ェクトによって行う。図12に示したデータにより、いくつかのこれらのクローン 化LTR/Sind1BspEパッケージング細胞内へのSin-lucベクターRNAのトランスフェ クトは、回収された上清がSin-lucベクターRNAをBHK細胞の新鮮な単層に転移す るが示されるように、Sin-luc RNAを含む感染性シンドビス粒子の産生をもたら す、ということを実証する。 BspEI欠失を作り出すための初期材料としてpVG-ELVISdクローン(前記)を用 いて、類似のパッケージング構築物もまた作られ得る。このクローン内において 、シンドビス3'末端配列の後には、シンドビスの3’末端配列に隣接する一次 転写物のより正確なプロセシングを可能にする触媒リボザイム配列が続いている 。さらに、これらのパッケージングカセット構成の広範な種々の変化体は、例え ば、現行のMuLV LTRに対する他のRNAポリメラーゼプロモーターの置換、RNAポリ メラーゼプロモーターと第1のシンドビスヌクレオチドとの間での1つ以上のヌ クレオチドの付加、他のリボザイムプロセシング配列の置換、またはトランスク リプターゼ認識に必要な5'末端シンドビス配列を保持もしくは保持し得ない、 構造タンパク質遺伝子配列の上流の非シンドビスがコードするオープンリーディ ングフレームの置換を含み、これらは、本明細書中の開示により作製され得る。 さらに、これらの構築物は、前記のように他の細胞株にトランスフェクトされ得 る。 別のベクター誘導可能なパッケージング形態において、発現カセットは、その 天然の接合および3'未翻訳領域が隣接するアルファウイルス構造タンパク質遺 伝子配列のcDNAコピーを含有し、プロモーターからの一次転写がアンチセンス構 造タンパク質遺伝子RNA分子を産生するような配向で発現ベクター内に挿入され ている。さらに、これらの構築物は、接合領域に隣接して、ウイルスのトランス クリプターゼによる認識に必要なアルファウイルス5'末端配列および5'末端配 列のアルファウイルスヌクレオチド1にすぐ近くに隣接して位置する触媒リボザ イム配列を含有する。このため、このリボザイムは、第1のアルファウイルスヌ クレオチドの後で正確に一次RNA転写物を切断する。このアンチセンス配向にお いて、構造タンパク質遺伝子は翻訳され得ず、その発現に先立つポジティブ鎖の mRNAへの転写のために、アルファウイルスウイルス非構造タンパク質の存在に完 全に依存している。これらの非構造タンパク質は、アルファウイルスベクター自 体により再び提供される。さらに、この形態は正確なアルファウイルスゲノムの 5'および3'末端配列を含むことから、構造タンパク質遺伝子の転写物は、アル ファウイルスベクターにより提供された同じ非構造タンパク質を利用することに よって増幅される。 詳細には、シンドビス構造タンパク質遺伝子cDNAは、ゲノムクローンpVGSP6GE Nから取出され、以下のとおり、pcDNA3(Invitrogen Corp.,San Diego,CA)発現ベ クター内に挿入される。第1に、プラスミドpVGSP6GENを、非構造タンパク質1 ,2,3および大部分の4をコードする遺伝子を含むヌクレオチド7335までの全 てのシンドビス配列を除去するために酵素ApaIおよびBamHIで消化する。シンド ビス構造タンパク質遺伝子を含む残りの7285bpのベクターフラグメントを、0.8 %のアガロースゲルで精製し、その後、2つの合成オリゴヌクレオチドをアニー ルすることによって得られるSinMCSと呼ばれるポリリンカー配列と連結する。オ リゴヌクレオチドSinMCSIおよびSinMCSIIは、ClaI、BglIIおよびSpeIの認識部位 を含み、アニーリング後、ApaIおよびBamHI末端を有する。それらの配列は以下 のとおりである: SinMCSI: 5'-CTCATCGATCAGATCTGACTAGTTG-3'(配列番号77) SinMCSII: 5'-GATCCAACTAGTCAGATCTGATCGATGAGGGCC-3'(配列番号78) 次に、pMCS-26sとして公知の、生成構築物を、重複PCR増幅を用いて、デルタ 型肝炎ウイルス(HDV)の抗ゲノム鎖からの84ヌクレオチドリボザイム配列(Nature 350:434)に融合されたシンドビスの5'末端の299ヌクレオチドを含むように改 変する。2つのプライマー対を、最初は別々の反応において使用し、その後2回 目のPCRにおいて、その重複合成を行なう。反応#1では、正方向プライマー(HD V49-XC)はHDVゲノムのヌクレオチド823-859に対して相補的であり、逆方向プラ イマー(HDV17-68)はHDVゲノムのヌクレオチド839-887に対して相補的である。配 列は以下の通りである: 正方向プライマー(HDV49-XC) 5'-ACTTATCGATGGTTCTAGACTCCCTTAGCCATCCGAGTGGACGTG- CGTCCTCCTTC-3'(配列番号79) 逆方向プライマー(HDV17-68) 5'-TCCACCTCCTCGCGGTCCGACCTGGGCATCCGAAGGAGGACGCAC- GTCCACT-3'(配列番号80) そのそれぞれの相補性に加えて、プライマーHDV49-XCは、5’末端に隣接する XbaIおよびClaI認識配列を含有する。HDV配列のPCR増幅は、これらのプライマー およびVentポリメラーゼを用いる標準的な3温度サイクルプロトコルによって達 成される。反応#2では、正確にHDVおよびシンドビス配列と接合する正方向プ ライマー(SIN-HDV)は、シンドビスのヌクレオチド1〜21およびHDVのゲノムヌク レオチド871〜903に対し相補的であり、20ヌクレオチド分だけプライマーHDV17- 68(以上から)の配列と重複し、逆方向プライマー(SIN276-SPE)はシンドビスの ヌクレオチド299〜276に対し相補的である。配列は以下の通りである: 正方向プライマー(SIN-HDV) 5'-TCGGACCGCGAGGAGGTGGAGATGCCATGCCGACCCATTGACGGC- GTAGTACACACT-3'(配列番号81) 逆方向プライマー(SIN276-SPE) 5'-CTGGACTAGTTAATACTGGTGCTCGGAAAACATTCT-3'(配列番号82) そのそれぞれの相補性に加えて、プライマーSIN276-SPEは、その5’末端に隣 接するUAA翻訳終了コドンおよびSpeI認識配列を含有する。HDVリボザイム配列に 融合されたシンドビス5’末端配列を含むフラグメントのPCR増幅は、テンプレ ートとしてのpVGSP6GENプラスミド、これらのプライマーおよびVentポリメラー ゼを用いて、標準的な3温度サイクルプロトコルにより達成される。一回目のPC R増幅後、反応#1および反応#2の各々からの合計量の1/20を組合わせ、プ ライマーHDV49-XCおよびSIN276-SPEをさらに投入し標準的な3温度サイクルプロ トコルを用いて2回目のPCR増幅におけるテンプレートとしてこれを使用する。 2回目のPCR後、414bpのアンプリコンをMERMAIDキット(BiolOl,La Jolla,CA)を 用いて精製し、酵素ClaIおよびSpeIで消化する。消化したアンプリコンを1%の アガロースゲルで精製し、その後同様にClaIおよびSpeIで消化し、そして1%の アガロースゲルで精製したプラスミドpMCS-26sに連結する。生成構築物は、発現 カセットエレメントHDVアンチゲノムリボザイム/シンドビス5’末端の299nts. /シンドビス接合領域/シンドビス構造タンパク質遺伝子/シンドビス3’末端 の未翻訳領域を含み、pd5'26sとして公知である。 pd5'26sからpcDNA3ベクター内への構造タンパク質遺伝子カセットの挿入は、 以下の通りに行なわれる。プラスミドpd5'26sを酵素XbaIで消化し、3’陥凹末 端を、クレノウ酵素およびdNTPの添加により平滑末端にする。4798bpの構造タン パク質遺伝子カセット全体を1%のアガロースゲルで精製する。プラスミドpcDN A3を酵素HindIIIおよびApaIで消化し、T4 DNAポリメラーゼ酵素およびdNTPを添 加することによって末端を平滑にし、1%のアガロースゲルで5342bpのベクター を精製する。その後、精製された2つの平滑末端DNAフラグメントを連結する。 生成構造タンパク質遺伝子の発現カセットベクターは、pCMV−d5'26sとして公知 である(図11参照)。細胞内へのこのDNAのトランスフェクションおよびG418耐 性についての選択を、前記のように行う。 また、CMVプロモーター/アンチセンス−シンドビス構造タンパク質ベクター の改変体は、他のウイルス、細胞または昆虫ベースのプロモーターを用いて構築 され得る。当該分野において公知の一般的分子生物学的技術を用いて、CMVプロ モーターをInvitrogen pcDNA3ベクターから取り出し得、そして以前に列挙した ようなプロモーターにより置換され得る。このアンチセンスパッケージングカセ ットの他の変化体としては、以下のものを含むが、これらに限定されない:第1 のシンドビスヌクレオチドと触媒リボザイムとの間での1つ以上のヌクレオチド の付加、転写物のプロセシングのための、より長いかまたはより短いHDVの使用 、あるいは他の触媒リボザイム配列の使用、触媒リボザイム配列のための正確な 転写終了シグナルの置換、または構造タンパク質遺伝子のmRNAの転写をもたらす RNAポリメラーゼによって認識されるあらゆる下流配列を用いた構造タンパク質 遺伝子カセットのアンチセンス発現が挙げられる。 さらに、記載されたベクター誘導可能な構築物の各々がシンドビスベクター自 体に対し相同な配列を含有するということに留意すべきである。従って、2つの RNA分子との間での組換えによる野生型ウイルスの生成の潜在性が存在する。以 下で記述する通り、この可能性を無くするためにさらなる改変が行われ得る。 4.組換えを防ぐための構造タンパク質遺伝子の分離 構造タンパク質遺伝子の組込みおよび発現を分離し、重複しない独立したRNA 分子としてのそれらの転写を可能にするパッケージング細胞株をまた生成し得る 。例えば、糖タンパク質E2およびE1とは独立したカプシドタンパク質の発現、ま たは3つのタンパク質の各々の互いから独立した発現は、ベクターRNAとの組換 えおよびその後の汚染性の野生型ウイルスの生成の可能性を除外する。 詳細には、カプシドタンパク質は、誘導可能な発現ベクターから独立して発現 される。そのために、ベクターRNAとの組換えをもたらし得る配列は除外される 。一例を挙げると、カプシドタンパク質遺伝子は、ヌクレオチド7632〜7655(正 方向プライマー)および8415〜8439(逆方向プライマー)に対し相補的なプライ マー対を用いてプラスミドpVGSP6GENから増幅される。配列は以下の通りである : 正方向プライマー(Sin7632F): 5'-GTCAAGCTTGCTAGCTACAACACCACCACCATGAATAGAG-3' (配列番号83) 逆方向プライマー(Sin8439R): 5'-CAGTCTCGAGTTACTACCACTCTTCTGTCCCTTCCGGGGT-3' (配列番号84) そのそれぞれの相補性に加えて、正方向プライマーはその5’末端にNheIおよ びHindIIIの認識配列を含み、逆方向プライマーはその5’末端にUAGおよびUAA 翻訳ストップコドンおよびXhoI認識配列の両方を含有する。標準的な3温度サイ クルプロトコルを用いて増幅が達成され、得られるアンプリコンを酵素NheIおよ びXhoIで消化し、1%のアガロースゲルで精製する。デキサメタゾン−誘導可能 なMMTV LTRプロモーター配列を含む発現プラスミドpMAM(Clontech)を酵素NheIお よびXhoIで消化し、プラスミドDNAを1%のアガロースゲルで精製する。カプシ ドタンパク質遺伝子フラグメントを、pMAMベクター内に連結する。生成構築物は pMAM-SinCとして公知である。プラスミドpMAM-SinCを、前述のように適切な細胞 株内にトランスフェクトし、MulliganおよびBerg(PNAS 78:2072-2076,1981)に記 載されたように透析ウシ胎児血清、マイコフェノール酸およびキサンチンを補充 したHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)培地を用いて、安定なト ランスフェクタントについての選択を達成する。カプシドタンパク質を発現する 細胞株を、ポリクローナルウサギ抗シンドビス抗体を用いる免疫蛍光によりデキ サメタゾン誘導後、同定する。 あるいは、前記のlac誘導可能ベクター(Stratagene)を用いてカプシドタンパ ク質を発現させる。プライマーSin7623FおよびプライマーSin8439R(前述)を用 いたPCRにより、シンドビスカプシドタンパク質遺伝子を増幅し、そしてTAベク ターDNA(Stratagene)と連結する。TA/SinCと呼ばれる生成プラスミドをEcoRIで 消化し、クレノウフラグメント酵素およびdNTPの添加によりその末端を平滑化し 、そしてカプシドタンパク質遺伝子を1%アガロースゲルから精製する。プラス ミドベクターpOP13およびpORSV1を、NotIで消化し、クレノウフラグメント酵素 お よびdNTPの添加によりその末端を平滑化し、そして続いて仔ウシ小腸アルカリホ スファターゼで処理する。カプシドタンパク質遺伝子をpOP13およびpORSV1ベク ターDNAの両方と連結して、それぞれ、pOP13CAPおよびpORSV1CAPと呼ばれる発現 構築物を生成する。各プラスミドを、前述の適切な細胞株へp3'SSとともに同時 トランスフェクトし、そして安定なトランスフェクタントのための選択を、G418 およびハイグロマイシン選択を用いて達成する。IPTG誘導の後に、ポリクローナ ルウサギ抗シンドビス抗体を用いた免疫蛍光法によって、カプシドタンパク質を 発現する細胞株を同定する。 糖タンパク質遺伝子E1およびE2を、前述の誘導可能な系の1つを用いて一緒に 発現させる。例えば、シンドビスE1およびE2遺伝子を、シンドビスのヌクレオチ ド8440〜8459(正方向プライマー)およびシンドビスnts11,384〜11,364(逆方 向プライマー)に対して相補的なプライマー対を用いて、プラスミドpVGSP6GEN から増幅する。PCR増幅を、標準的な3温度サイクルプロトコルおよび以下のオ リゴヌクレオチド対を用いて行なう: 逆方向プライマー(11384R): 5'-TATATGCGGCCGCTCATCTTCGTGTGCTAGTCAG-3' (配列番号75) 正方向プライマー(8440F) 5'-TATATGCGGCCGCACCACCATGTCCGCAGCACCACTGGTCACG-3' (配列番号85) そのそれぞれの相補性に加えて、正方向プライマーは、「インフレーム」AUG 翻訳開始コドンを含み、そして両方のプライマーは、その5'末端にNotI認識配 列を含む。PCR増幅の後、アンプリコンをNotI酵素で消化し、そして1%のアガ ロースゲルで精製する。次いで、生成フラングメントを、別々にpOP13およびpOP RSV1ベクター(Stratagene)に連結し、NotIで消化し、そして前述のように仔ウシ 小腸アルカリホスファターゼで処理する。カプシドタンパク質発現構築物で以前 にトランスフェクトされた細胞をトランスフェクトするために、これらの糖タ ンパク質発現ベクターを使用し、そして安定な糖タンパク質遺伝子トランスフェ クタントを、G418およびハイグロマイシン耐性についての選択により同定する。 あるいは、E1およびE2糖タンパク質を前述のレプリコン誘導可能な接合領域プ ロモーターの制御下で発現させる。ELVIS発現プラスミドpVGELVISOSINBV-リンカ ー(実施例3)を、酵素NotIで消化し、そして仔ウシ小腸アルカリホスファター ゼで処理する。次いで、NotIで消化したPCR増幅シンドビスE1およびE2糖タンパ ク質遺伝子(前段落)をELVISベクターと連結し、pVGELVIS-E1/E2と呼ばれる構 築物を生成する。続いて、プラスミドpVGELVIS-E1/E2を、酵素BspE1で消化して 非構造タンパク質遺伝子コード領域の大部分を取り除き、そして残ったE1および E2の含有ベクターDNAをそれ自身と再度連結し、pVGELVdl-E1/E2として同定され る誘導可能な発現カセットを作り出す。この糖タンパク質発現ベクターを用いて 、以前にカプシドタンパク質発現構築物でトランスフェクトされた細胞をトラン スフェクトし、そして安定な糖タンパク質遺伝子トランスフェクタントを、G418 耐性についての選択により同定する。カプシドおよびエンベロープ糖タンパク質 の両方の発現カセットについて、哺乳動物または非哺乳動物(昆虫を含む)由来 のプロモーターは、誘導可能であってもよく、誘導可能でなくてもよく、それは 、当該分野で公知の標準的な技術を用いて、上記のプロモーターと容易に置換さ れる。 5.アルファウイルスパッケージング細胞株を作出するための成分のアセンブ 例示目的のために、BHK-21細胞株およびレプリコン誘導性パッケージング発現 カセットを用いて、成分のアセンブリを証明する。しかし、他の潜在的な親細胞 株を使用してアルファウイルスパッケージング細胞株を作製し得る。これについ ては以前に議論した。簡単に述べると、BHK-21細胞(CCL 10)を37℃、5%CO2で 、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、2mM L-グルタミン、および10%ウシ胎児 血清(最適培地)中で増殖させる。供給者によって示されるように、無血清培地条 件において、35mMペトリディッシュで増殖させた約5×105BHK-21細胞を、5μl のTransfectam(Promega)陽イオン脂質試薬を用いて、5μgのpLTR/SindIBspEで トランスフェクトする。しかし、いずれのトランスフェクション法でも、すなわ ち、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈澱により、または一般に当該 分野で公知の任意の容易に入手可能な陽イオンリポソーム処方および手順の使用 により、すぐに代用される。トランスフェクション後24時間で、細胞をトリプシ ン処理し、そして上記のように、400μg/mlのG418(Gibco/BRL)を補充した10mlの 最適培地を含む100mmディッシュに再播種し、5日〜7日の期間にわたって選択 する。次いで、G418薬剤に耐性を示すコロニーをプールし、希釈物をクローン化 し、そして増殖させる。個々のクローンを、高レベルのシンドビス構造タンパク 質の発現、およびSacI線状化プラスミドpKSSINBV-luc(実施例3を参照のこと) からインビトロ転写されたシンドビス-ルシフェラーゼベクターRNAを用いたトラ ンスフェクション後の機能的なパッケージングについて、スクリーニングする。 詳細には、60mmペトリディッシュで増殖させたクローン由来pLTR/SindlBspEでト ランスフェクトされたBHK-21細胞(LTR/SindlBspEまたはBK-Bsp細胞と呼ぶ)を 、2μgのシンドビス-ルシフェラーゼベクターRNAでトランスフェクトし、そし て3mlの最適培地でおおう(上記を参照のこと)。トランスフェクション後24時 間で上清を取り除き、そしてSorvall RT6000B卓上遠心機で3000rpmで30分間の遠 心により、上清を透明化する。さらに、製造者により記載されたようにトランス フェクトされた細胞単層を、レポーター溶解緩衝液(Promega)中で溶解し、そし て前記のようにルシフェラーゼ発現についてアッセイする。 ルシフェラーゼ活性(および機能的パッケージング)の転移を、60mmディッシ ュ中の新鮮なBHK-21細胞単層を感染させるために、1mlの上記の上清を用いるこ とにより試験する。感染後20時間で、上記のように細胞単層を溶解し、ルシフェ ラーゼ発現について試験する。図12に示されたように、3つのクローン(#13、1 8および40)は、パッケージングされたシンドビスルシフェラーゼベクターを産生 し、そしてアルファウイルスパッケージング細胞株の最初の例である。さらに、 トランスフェクトされたクローン#18細胞を、トランスフェクション後の時間経 過にわたって増加したベクターパッケージングについて試験する。上記のように 、トランスフェクトされたクローン#18細胞からの上清を、トランスフェクショ ン後20、45および70時間で採集し、新鮮なBHK-21細胞単層を感染させるために使 用する。図13は、トランスフェクション後20時間と比較して、トランスフェクシ ョ ン後45時間でシンドビス-ルシフェラーゼベクターパッケージングが顕著に増加 することを示す。ポリクローナルウサギ抗シンドビス抗体(文献で入手可能)を 用いて、発現もまたウエスタンブロット分析により試験し得る。 C.アルファウイルスプロデュサー細胞株のための誘導可能なベクターおよび構 造タンパク質の発現 1.ウイルスプロモーターの使用 アルファウイルスベクタープロデュサー細胞株を開発しようとする挑戦は、哺 乳動物の細胞がそれに感染するとほぼ排他的に生産的な溶解的細胞死をもたらす ウイルスを改変してこれらの同じ細胞中で持続性感染を樹立させ得ることができ るか否か、という問題にある。1つのアプローチは、感染後にウイルスの持続性 がしばしば生じる場合、蚊細胞からのアルファウイルスベクタープロデュサー株 を生成することにある。しかしながら、持続的に感染を受けた蚊細胞の中で産生 された感染性ウイルスの力価は、わずか約1×104PFU/mlにすぎず、これは、BHK 細胞のシンドビスによる溶解的な感染の後に見られる力価よりも少なくとも5ケ タ小さいものである。 いくつかのストラテジーが、生産的な細胞溶解感染が適正な刺激の後にのみ起 こるように、ベクターおよびウイルスの構造遺伝子カセットの両方を含む誘導可 能なアルファウイルスベクタープロデュサー細胞株について記述されてきた。こ れらのアプローチは「フィードフォワード」レベルで作用することから、系内に 漏出性があるとアルファウイルスの複製サイクルの開始および、おそらくは細胞 死をもたらす。従って、強固に調節された制御機構が、このような系には必要で ある。 開発の保証は、分化状態依存性の遺伝子発現パターンである。簡単に述べると 、遺伝子発現パターンは、未分化状態と最終の分化状態との間で大きく異なって いる。従って、その分化状態が制御され得る細胞は、アルファウイルスベクター プロデュサー細胞株を誘導する理想的な宿主であるようである。このような形態 では、ベクター発現カセット、およびある場合には、構造的成分は、記述された ELVISストラテジーに従って、最終分化の状態誘導性プロモーターに結合され、 未分化の宿主細胞を安定に形質転換するために使用される。適切な刺激による誘 導 の後の宿主プロデュサー細胞の最終分化は同時に、アルファウイルス複製サイク ルの誘導とパッケージングされたベクターの産生という結果をもたらす。アンチ センス構造遺伝子および異種ウイルス発現系を含む、本明細書に記述されている 他のストラテジーは、以下で記述する細胞分化の状態依存性プロモーターと容易 に結合される。 このアプローチでは、最終的な分化細胞のみにおいて活性であるウイルスまた は細胞プロモーターのいずれかを用いた4例について記述する。 マウスポリオーマウイルス(Py)、SV40およびモロニーマウス白血病ウイルス (M-MuLV)は全て、未分化のマウス胚のガン腫(EC)細胞に感染しその中に浸入し 得るが、それらの遺伝子(および異質遺伝子)の発現およびウイルス産生性感染 の樹立は阻止されている、ということが示されてきた(SwartzendruberおよびLeh man,J.Cell.Physiol.85:179-188,1975;Periesら、J.Natl.Cancer Inst,59 463-4 65,1977)。これらのウイルス増殖特性は、マウス奇形ガン腫の悪性幹細胞に由来 する2つの細胞株PCC4およびF9においてもまた実証された。ウイルス増殖の阻止 は、転写および複製のレベルで起こり、ウイルス非コーディング制御領域内に含 まれたエンハンサーに対しマッピングされる(Linneyら、Nature 308:470-472,19 84;Fujimuraら、Cell 23:809-814,1981;KatinkaおよびYaniv,Cell 20:393-399,1 980)。M-MuLVが未分化のEC細胞に感染した時点で、ウイルスDNAはゲノム内に組 込まれる。しかしながら、上記のように、ウイルス遺伝子または異種遺伝子の発 現は阻止される。ウイルス発現のこの阻止はレチノイン酸を増殖培地に添加する ことによってEC細胞の最終分化の時点で解除される。 EC細胞内のpVGELVIS構築物のRNA発現特性を試験するため、プラスミドDNAとLI POFECTAMINE(GIBCO-BRL,Gaithersburg,MD)とを供給業者が提案する条件(約5μ gのDNA/8mgの脂質試薬)に従って複合体化し、約75%のコンフルエントで未分 化のPCC4またはF4細胞(Fujimuraら、1981.Cell 23:809-814)を含む35mmのウェル に添加する。細胞傷害効果(CPE)の発生および培地上清のプラークアッセイによ り定量化されたシンドビスウイルス産生性感染のレベルを、未分化および分化の トランスフェクトされたPCC4またはF9細胞において5日にわたって定期的な間隔 で測定する。F9およびPCC4細胞の分化は、1μMの最終濃度でレチノイン酸 (Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo)の添加によって達成される。 M-MuLVベクターの感染を受けた未分化のEC細胞において観察される異種遺伝子 の相対的な発現の階層が一部には挿入依存性のものであり得るということが提案 されてきた(Linneyら、1987,J.Virol.61;3248-3253)。従って、pVGELVISでトラ ンスフェクトされた未分化のEC細胞は、シンドビスゲノムcDNAの転写そして今度 はウイルス生活環の開始という点で、異なる結果をもたらし得るようである。こ の場合、pVGELVISでトランスフェクトされた未分化EC細胞のG418選択の後、残り の細胞はクローン化され拡大される。次いで、細胞クローンを1μMの最終濃度 でレチノイン酸(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo)を添加することによる分化後 のシンドビスウイルスの産生について試験する。 シンドビスNSPの存在下で、その構造タンパク質の産生が細胞の分化状態に依 存しているベクターパッケージング細胞株を分離するため、上述のとおり、未分 化F9およびPCC4細胞をpLTR/SINdIBspEを用いてトランスフェクトし、G418選択を する。次に、パッケージングされたSIN-lucベクターを用いた高い多重度での感 染により、分化の状態感受性クローンを選択する。細胞溶解に対して耐性である か、またはパッケージングされたSIN-lucベクター粒子を産生しないクローンは 、ベクターパッケージングクローンの候補である。これらの候補クローンを、記 述の通り、レチノイン酸による最終分化の後のSIN-lucベクター分子産生につい て試験する。 マウス野生型ポリオーマウイルス(Py)は、奇形ガン腫細胞株PCC4またはF9の 中で複製できない。未分化細胞内でのこの複製ブロックは、早期領域(すなわち T抗原)遺伝子の転写レベルで起こり、ビタミンAでの最終分化の誘導により解 除される。未分化のPCC4およびF9細胞内でウイルス産生性感染を樹立し得るPy変 異体は、ウイルスエンハンサー領域に対しマッピングされる。胚組織特異的転写 エンハンサーエレメントの発生は、これらの変異体をもたらした。未分化の奇形 ガン腫細胞株内のPy複製の阻害のこの特性を活用するために、エンハンサーを含 むウイルス調節非コード領域を、ELVISストラテジーに従って、シンドビスウイ ルスのゲノムcDNAに結合する。Py早期領域の正確な転写開始部位が決定されてき た(Tooze,DNA腫瘍ウイルス参照)。PCC4およびF9細胞株は、Py−シンドビスベ クターを用いて安定に形質転換される。このモデルにおいて、培養培地にレチノ イン酸を添加し最終分化を誘導させた後、シンドビスウイルス産生性感染が起こ る。 ウイルスエンハンサー、21bpの反復、複製起点、CAATおよびTATAボックス、お よび早期mRNA転写5’キャップ部位に対応する配列を含む、塩基5021-152からの Py非コード領域は、5’ウイルス端部に配置され、その結果、n vivoでは、わず か1つのキャップされたC残基のみがシンドビスの5’末端に付加される。Py非 コード領域およびシンドビス5’末端の並置が、以下で詳述するようにPCRを重 複させることによって達成される。第1の一次PCR反応におけるPy非コード領域 の増幅が、pBR322/Py、菌株A2プラスミド(ATCC番号45017-p53,A6.6(pPy-1))およ び以下のプライマー対を含む反応で達成される:正方向プライマー:Pybgl5021F(緩衝配列/BglII認識配列/Py nts 5021-5043): 5'-TATATAGATCTCTTGATCAGCTTCAGAAGATGGC(配列番号86)逆方向プライマー:SINPy152R(SIN nts 5-1/Py nts 152-134): 5'-TCAATGGCGGGAAGAGGCGGTTGG(配列番号87) 以上に示したプライマー対を用いたPy非コード領域のPCR増幅を、テルメラー ゼ熱安定性DNAポリメラーゼ(Ameresco Inc.,Solon.Ohio)および供給業者が供給 した1.5mM MgCl2を含む緩衝液を用いて行なう。さらに、反応は以下に示すPCR増 幅プロトコルを用いて、5%のDMSOおよびHot Star Waxビーズ(Perkin-Elmer) を含む: 第2の一次PCR 反応でのシンドビス5’末端の増幅が、pVGSP6GENクローンお よび以下のプライマー対を含む反応で達成される:正方向プライマー(Py nts 138-152/SIN nts 1-16): 5'-CCGCCTCTTCCCGCCATTGACGGCGTAGTAC(配列番号88)逆方向プライマー(SIN nts 3182-3160) : 5'-CTGGCAACCGGTAAGTACGATAC(配列番号18) 上記のプライマー対を用いたシンドビス5’末端領域のPCR増幅は、以下のPCR 増幅プロトコルを用いて、上記の反応条件によるものである。 一次PCR反応からの442bpおよび3202bpの産物を、GENECLEAN(BIO 101)で精製し 、以下のプライマー対を用いてPCR反応の中で一緒に用いる:正方向プライマー:Pybgl5021F(緩衝配列/BglII認識配列/Py nts 5021-5043): 5'-TATATAGATCTCTTGATCAGCTTCAGAAGATGGC(配列番号89)逆方向プライマー:(SIN nts 2300-2278): 5'-GGTAACAAGATCTCGTGCCGTG(配列番号19) 上記のプライマー対でのプライマーPCRアンプリコン産物のPCR増幅は、以下の PCR増幅プロトコルを用いて、上記の反応条件によるものである。 第1の一次PCRアンプリコン産物の20個の3’末端塩基は、第2の一次PCRアン プリコン産物の20個の5’末端塩基と重複する;得られる2,742bpの重複する二次 PCRアンプリコン産物を、0.8%のアガロース/TBE電気泳動により精製し、BglII で消化し、2,734bpの産物をBglIIおよびCIAPで処理したpcDNASINbgl/xba(実施例 3参照)内に連結する。生成構築物は16,641bpであり、ELVIS-PySINとして知られ ている。ベクターパッケージング細胞株の誘導のためのpLTR/Sind1Bspに類似し た構造タンパク質発現ベクターを構築するために、ELVIS-PySIN構築物をBspEIを 用いて完全に消化し、そして塩基422-7054間の非構造タンパク質の欠失を達成す るため、希釈条件下でこれを再結合する。この構築物は、ELVIS-PySINdlBspEと して知られている。 ELVIS-PySINプラスミドDNAを、LIPOFECTAMINE(GIBCO-BRL,Gaithersbery,MD) と供給業者により示された条件(約5μgのDNA/8μgの脂質試薬)に従って複 合体化し、約75%のコンフルエントで未分化のPCC4またはF9細胞を含む35mmウェ ルに添加する。細胞傷害効果(CPE)の発生および培地上清のプラークアッセイに よって定量化されるシンドビスウイルス産生性感染レベルを、未分化および分化 のPCC4またはF9細胞において5日の定期的間隔で測定する。F9およびPCC4細胞の 分化は、1mMの最終濃度でレチノイン酸(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo)を 添加することによって達成される。 未分化のEC細胞がELVIS-PySINでのトランスフェクションに対する異種性応答 を示す場合、pVGELVISでトランスフェクトされた未分化EC細胞のG418選択後のシ ンドビスウイルスの増殖により溶解されなかった残りの細胞をクローン化し、そ して拡大する。その後、1mMの最終濃度でレチノイン酸(Sigma Chemical Co.,S t.Louis,Mo)を添加することにより、分化後のシンドビスウイルスの産生につい て細胞クローンを試験する。 シンドビスNSPの存在下で構造タンパク質の細胞分化状態に依存する発現パタ ーンを有する、ELVIS-PySINdlBspEで安定にトランスフェクトされたベクターパ ッケージング細胞株の分離を、pLTR/Sind1BspEプラスミドについて上記の通りに 達成する。 誘導性のシンドビスベクタープロデュサー細胞株の可能性を証明するために、 ELVIS-lucベクター(この構築物を実施例3、セクションEに記載する)由来の レポーター遺伝子発現を、BHK細胞および未分化F9細胞のトランスフェクション 後、決定する。さらに、両細胞型をパッケージングされたSIN-lucベクターで感 染する。その作製を実施例3、第C節に記載する。この後者の実験グループは、 発現制限(もしあるなら)が、独特の細胞型におけるレセプターの差異よりもむ しろ転写レベルにあるコントロールとして役立つ。図14で示されたこの研究の結 果は、ルシフェラーゼの発現は未分化F9細胞において阻害されることを証明する 。ELVIS-lucでトランスフェクトされたBHK細胞、およびBHK細胞ならびにパッケ ージングされたSIN-lucベクターで感染された未分化F9細胞におけるルシフェラ ーゼ発現のレベルは類似する。従って、ELVIS-lucでトランスフェクトされた未 分化F9細胞において、LTRからの転写およびその後のシンドビスベクター自己触 媒経路を介するルシフェラーゼ発現を阻害する。この研究により、シンドビスベ クターの合成またはシンドビスベクターパッケージングが、誘導可能であり、そ して細胞の分化状態により制御される場合、パッケージング細胞株を開発し得る ことが証明される。 2.細胞プロモーターの使用 このストラテジーの第3の例は、β−グロビン遺伝子座制御領域を使用する。 β−グロビン多重遺伝子クラスタは、5つの発生的に調節された遺伝子を含有す る。ヒトの発生の早期段階において、胚の卵黄嚢は造血組織であり、ε−グロビ ン遺伝子を発現する。この後、胎児の肝臓内のγ−グロビン遺伝子および成人骨 髄内のδ−およびβ−グロビン遺伝子へ変わる(CollinsおよびWeissman,1984,P rog,Nucleic Acid Res.Mol.Biol.31:315)。 少なくとも2つのマウス赤白血病株(MELおよびFriend)が、β−グロビンの 最終分化に依存する発現のモデルとして役立つ。増殖培地に2%のDMSOを添加す ることにより最終分化の誘導後のみにこれらの株においてβ−グロビンの発現が 観察される。 β−グロビン遺伝子座全体は、遺伝子座制御領域(LCR)により調節される。LCR 内には、コード領域の5’であるDNaseI過敏性領域内にある優性制御領域(DCR) が存在する。DCRは、5つのDNaseI過敏性(HS1〜HS5)部位を含む。DCRは、トラン スジェニックマウスおよび安定にトランスフェクトされたマウスの赤白血病(MEL )細胞において結合されたヒトβ−グロビン遺伝子に関して組込み依存せず、コ ピー数に依存する発現の高レベル部位を導く。(Grosveldら、1993,CSHSQB 58:7- 12)。最近の研究では(Ellisら、1993 EMBO 12:127-134)、HS2内の配列に一致す る合成コアのコンカテマーが、遺伝子座制御領域として機能することが示された 。 アルファウイルスベクターの分化状態に依存する発現を達成するため、ウイル スのゲノムcDNAを、LCR HS2部位に対応する縦列合成コアを含むプロモーターと 並置させる。あるいは、相同組換えにより内因性β−グロビン遺伝子内のLCRの 下流に所望のアルファウイルスベクター構築物を挿入し得る。このようなストラ テジーにおいて、アルファウイルスベクターを正確に開始部位に置くために、最 終分化後のβ−グロブリン転写開始部位をまず決定する。 宿主細胞の分化状態によって溶解性ウイルスの生活環の開始が制御される、こ れは、ウイルスが誘導する細胞病理の制御が望まれるその他の系において利用可 能である。 分化状態感受性プロモーターによるアルファウイルス遺伝子発現の調節に対す るなお別のアプローチは、レチノイン酸レセプター(RARA)および急性前骨髄単球 性白血病細胞(APL)の使用である。APL細胞は、高増殖率および分化停止により特 徴づけられるクローン性の骨髄性前駆体である。非ランダム染色体転座中断点、 t(15;17)(q22;21)は、APLを有するほとんど全ての患者で存在する。RARA遺伝子 は染色体17q21に位置していた。患者由来のAPL mRNAの分析は、多くのAPL中 断点がRARA遺伝子の第2イントロンに存在し、そして異常な融合転写物をもたら すことを示した。RARAおよびPML-RARA融合cDNAを用いた同時トランスフェクショ ンアッセイにより、得られる融合タンパク質はレチノイン酸の存在下で野生型RA RAと拮抗し得ることが証明された。これらの研究は、APLの分子的病因をPML-RAR A融合タンパク質に関連させる。重要なことに、非常に多くの患者は、全トラン スレチノイン酸処置(ATRA)後、完全に鎮静する。高濃度のATRAは、核内の高レベ ルのRAを導くRARA欠損を克服し得る。APL細胞の分化を、RARA応答遺伝子の活性 化により達成し得る。RAは、多くの細胞株(ヒト白血球株HL-60を含む)の分化を 誘導し得る。 レチノイン酸レセプターは、甲状腺およびステロイドホルモンレセプターを誘 導する多くの核レセプタースーパーファミリーのメンバーである。4つの異なる ヒトRAR型が同定されており、そしてその対応するcDNAがクローン化され、特徴 づけられている。シンドビスベクターの分化状態に依存した発現を達成するため に、ウイルスゲノムcDNAを、RARA DNA結合部位と並列し、ELVIS-RARASINを作製 する。このストラテジーを用いて、未分化EC細胞におけるELVIS-PySIN発現で提 案されたように、分化に感受性のELVIS-RARASIN発現細胞を単離する。 3.分化状態により制御される誘導可能なプロモーター内へのベクター構築物 の挿入 実施例3に記述されているようなELVIS形態に配置されたシンドビスベクター からの異種遺伝子の発現が分化状態に依存するクローンの生成を、pVGELVIS,pL TR/Sind1BspEプラスミドについて上記のとおりに達成する。そのベクター粒子の 産生が分化状態に依存しているクローンの生成を、ELVIS異種遺伝子発現ベクタ ーを用いて上記の分離した分化に依存するベクターパッケージングクローンをト ランスフェクトすることによって達成する。レチノイン酸により誘導された分化 後に望ましい表現型またはベクター産生を有するクローンを、上記のとおりに分 離する。 D.異種アストロウイルス接合領域からの構造タンパク質の発現 ベクターパッケージング系の重要な特性の中には、ベクターと構造遺伝子成分 との間の組換えを通して野生型ウイルスの創出を伴うことなく、感染性粒子を生 成するのに必要な構造的成分を細胞が発現することである。パッケージング細胞 株のこれら2つの望ましい特性は、個々の異種のRNAポリメラーゼII発現カセッ ト上のgag/polおよびenv遺伝子の構成的発現を通して、レトロウイルスベースの 系において達成される。 ベクターパッケージング細胞株のもう1つの重要な局面は、野生型ウイルスの 正常な複製ストラテジーをできるかぎり完全に模倣する系を誘導することである 。この問題は、パッケージングされた組換え型ベクターの観察された力価レベル を考察して重要である。アルファウイルス感染中のウイルス構造タンパク質の合 成は、接合領域プロモーターからの高レベルのサブゲノムmRNAの転写後に達成さ れ、その後、構造タンパク質への効率的な翻訳が行われる。接合領域プロモータ ーは、アンチセンス配向においてのみ機能し、アンチゲノムRNAの合成は、非構 造タンパク質の翻訳の後に起こり、従って、構造タンパク質の発現が遅延する。 このため、アルファウイルスに関して、構造タンパク質の合成が接合領域プロモ ーターから開始されるパッケージング細胞株を構築し、これは次いで組換え型ベ クター分子から発現された非構造タンパク質によって活性化されることが望まし いということになる。 比較的高頻度の組換えが、RNAゲノム分子との間で選択模写メカニズム(a copy choice machanism)を介してシンドビスウイルスによる感染の間に起こることが 知られている(PNAS 88:3253-3257 1991)。ベクターと接合領域/構造遺伝子カセ ットとの間の組換えは、恐らくはパッケージングされたベクター粒子100万につ き1つの野生型ウイルスのレベルで野生型シンドビスウイルスの生成をもたらす (Liljestrom Bio/Technology 9:1356-1361,1991)。野生型ウイルスの生成を 緩和する1つの方法は、構造遺伝子を別々の発現カセットに分離することである 。これは、実施例7で前記したアプローチである。 アルファウイルスベクターパッケージング細胞株内での野生型ウイルス産生レ ベルを低下させるもう1つのアプローチは、アストロウイルス遺伝子エレメント の制御下で構造タンパク質を発現することである。この形態の概略図を図15に示 す。アルファウイルスウイルスと同様に、アストロウイルスの構造タンパク質の 発現は、高いレベルの構造タンパク質が、サブゲノムメッセージから合成される 接合領域ストラテジーを取り入れている。アストロウイルス発現カセットは、以 下の順序のエレメントの2つのうちの1つから構成され得る:(1)誘導可能な プロモーター/アストロウイルス5’末端/アストロウイルス接合領域/アルフ ァウイルス構造遺伝子/アストロウイルス3’末端、または(2)アンチセンス アストロウイルス3’末端/アンチセンスアルファウイルス構造遺伝子/アンチ センスアストロウイルス接合領域/アンチセンスアストロウイルス5’末端/デ ルタ型肝炎ウイルスリボザイムあるいは、実施例7に記述された他の形態。両方 の形態において、発現ユニットは、ウイルス複製の間に起こる同じメカニズムを 通してアストロウイルスの非構造タンパク質によって増幅される。接合領域から 開始される多数回にわたるサブゲノムmRNA合成は、各々の発現ユニットから生じ ることから、アストロウイルスの非構造タンパク質による発現ユニットの増幅は 、きわめて高レベルのアルファウイルスの構造タンパク質の産生をもたらす。上 記のアルファウイルスの構造タンパク質発現カセットの第2の形態は、毒性のア ルファウイルス構造遺伝子の一次転写物がアンチセンスであるので、第1の形態 よりもうまく機能し得る。第1の形態における構造遺伝子の発現は、ネガティブ 鎖の合成とそれに続く接合領域からのポジティブサブゲノムRNAの合成までは起 こらないはずであるけれども、第2の形態における一次転写物のアンチセンス性 は、細胞傷害性タンパク質の発現を防ぐさらなる制御レベルを表わしている。 アルファウイルスのウイルス構造タンパク質がアストロウイルスの接合領域発 現カセットから個別に合成されるパッケージング細胞株内では、いかなる野生型 ウイルスも生成されないようである。ベクターの非構造タンパク質領域とアスト ロウイルスの構造タンパク質発現カセットとの間での組換えは、アストロウイル スシスエレメントが、生存不能な組合せである、アルファウイルスウイルス遺伝 子と結合した分子をもたらす。アルファウイルスのシスおよびトランスエレメン トの適正な結合には、ベクターとアストロウイルス発現カセットとの間、アスト ロウイルス接合領域と構造遺伝子ATGとの間、そして構造遺伝子終止コドンとア ストロウイルス3’末端との間での2つの正確な組換え事象を必要とする。野生 型ウイルスを生成するためには、この2重組換え事象が、3つの別々のアルファ ウイルス構造遺伝子を取り込むために同じ分子上で3回(合計6回の事象)起こ らなくてはならない。 アストロウイルスタンパク質の考えられる毒性を減少させるために、アストロ ウイルス発現カセットの合成が誘導可能なプロモーターにより制御され得る。1 つの可能性は、実施例7で前述した「lac-スイッチ」系に従ってlacオペロンを 使用することである(Stratagene)。余分な誘導物質IPTGの不在下のlacオペロ ンで制御された遺伝子の構成的発現レベルは、細胞1個につき約10コピーのRNA である。アストロウイルス/アルファウイルス構造遺伝子発現カセットに対応す る誘導可能なプロモーターは、lacオペロンまたは非常に低い構成的発現レベル を有する他の適切なプロモーターであり得る。異種ウイルスによりアルファウイ ルスタンパク質の制御が導かれているこれらの形態のパッケージング細胞株の構 築は、高力価の野生型ウイルスを含まないパッケージングされたベクター粒子の 生成をもたらすはずである。 実施例8 別のウイルスベクターパッケージング技術 ベクター構築物を有する組換えアルファウイルスを産生するために、さまざま な別の系を使用することができる。これらの系の各々は、バキュロウイルスおよ び哺乳動物ウイルス、ワクチンおよびアデノウイルスが近年、遺伝子がクローン 化された任意の所定のタンパク質を大量に作るように適用させられたという事実 を利用するものである(Smithら、Mol.Cell.Biol.3 : 12,1983 ; Picciniら 、Meth.Enzymology 153 : 545,1987;およびMansourら、Proc.Natl.Acad.S ci. USA 82 : 1359,1985)。 これらのウイルスベクターは、ウイルスベクター内への適切な遺伝子の挿入に より組織培養細胞内でタンパク質を産生するために使用され得、そしてアルファ ウイルスベクター粒子を作るように適用され得る。 アデノウイルスベクターは、核複製ウイルスに由来し、そして欠損状態であり 得る。これらのベクター内に遺伝子を挿入し、インビトロ構築(Ballayら、EMBO J.4 : 3861,1985)、または細胞内の組換え(Thummelら、J.Mol.Appl.Gen etics 1 : 435,1982)のいずれかにより哺乳動物細胞内でタンパク質を発現す るのにこの遺伝子を使用する。 1つの好ましい方法は、(1)アルファウイルス非構造タンパク質、および( 2)改変されたアルファウイルスベクター構築物、を駆動するアデノウイルス主 要後期プロモーター(MLP)を使用してプラスミドを構築することである。この形 態における改変されたアルファウイルスベクターは、転写されたRNA ベクターが 天然の状況下でそうであるように、自己複製し得るようにする改変された接合領 域をなおも含む。 次いで、これらのプラスミドを、インビトロでアデノウイルスゲノムを作るの に使用することができる(Ballayら、EMBO.J.4 : 3861,1985)。複製欠損で あるこれらのアデノウイルスゲノムを、293細胞(アデノウイルスE1Aタンパク質 を作っているヒト細胞株)の中にトランスフェクトし、欠損アデノウイルスベク ター内に別々に有されたアルファウイルス構造タンパク質およびアルファウイル スベクターの純粋なストックを得る。このようなベクターの力価は代表的に107 〜1011/mlであることから、これらのストックを、高い感染多重度で同時に組織 培養細胞を感染させるのに使用することができる。次いで、細胞は、アルファウ イルスタンパク質およびベクターゲノムを高いレベルで産生する。アデノウイル スベクターは欠損性であることから、大量の直接的細胞溶解は起こらず、ベクタ ーを細胞上清から回収できる。 同じ要領で、初代細胞からベクターを生成するために、例えば無関係のベクタ ー(例えばRSV,MMTV またはHIV)に由来するその他のウイルスベクターを使用す ることも可能である。一つの実施態様においては、これらのアデノウイルスベク ターを初代細胞と合わせて使用してアルファウイルスベクター調製物を得る。 キメラHIV/ポリオウイルスゲノムが、融合タンパク質を発現することのできる キメラミニレプリコンの生成(J.Virol.65 : 2875,1991)を生じる別の発現系 についても記載されている。これらのキメラポリオウイルスミニレプリコンは後 に、包膜され、キメラミニレプリコンにおいて欠損性である置換されたポリオウ イルスカプシド前駆体P1タンパク質を発現する組換えワクシニアウイルス(VV− P1)を用いることによって感染性粒子を産生することが実証された(J.Virol.6 7 : 3712,1993)。この研究において、HIV-1 gag-pol 配列は、ポリオウイルス のP1カプシドのVP2およびVP3カプシド遺伝子に置換された。同様の方法で、アル ファウイルスベクターゲノムをP1カプシド配列に置換し、この系において、イン ビトロ転写されたアルファウイルスベクターRNA転写物を細胞株内にトランスフ ェクトした後ポリオ偽型化アルファウイルスベクターを提供するための手段とし て使用することが可能である。逆に、アルファウイルス構造タンパク質はまた、 VP2およびVP3配列を置換し、その後アルファウイルスベースのベクターのための 別のパッケージング細胞株系を提供することができる。 1つの別の系においては、以下の成分が用いられる: 1.Smithら、(前出)に記載されているものと類似の要領でバキュロウイルス 系において(または酵母またはE.coliといったようなその他のタンパク質産生 系において)で作られたアルファウイルス構造タンパク質; 2.公知のT7またはSP6あるいはその他のインビトロRNA 生成系(Flamantら、J .Virol.62 : 1827,1988)において作られたウイルスベクターRNA ; 3.酵母または哺乳動物組織培養細胞から精製されたまたは(2)の通りに作 られたtRNA; 4.リポソーム(包埋されたenv タンパク質を伴う);および 5.RNAプロセシングおよびいずれかのまたはその他の必要な細胞由来の機能 を提供するとして同定された場合(代表的にはマウス細胞から)細胞抽出物また は精製された必要な成分。 この手順内で、(1),(2)および(3)が混合され、その後、env結合ア ルファウイルスタンパク質、細胞抽出物およびプレリポソーム混合物(適切な溶 媒中の脂質)が添加される。(1),(2)および(3)の混合物に結果として 得られたリポソーム包埋envを付加する前に、リポソーム内にアルファウイルスe nvタンパク質を包埋することが必要であり得る。薬品のリポソーム包膜のための 方法と同じ要領で、脂質+包埋アルファウイルスenvタンパク質で発生期のウイ ルス粒子を包膜できるようにするために、混合物を処理する(例えば、音波処理 、温度操作または回転透析による)(Gould-Fogeriteら、Anal.Biochem.148 : 15,1985)。この手順は、中間パッケージング細胞株を樹立する必要なしに、 高力価の複製不能アルファウイルスベクターを産生する。 実施例9 細胞株または組織特異的アルファウイルスベクター 「ハイブリッドエンベロープ」 アルファウイルスの組織および細胞型特異性は、ウイルスにコードされたエン ベロープタンパク質E1およびE2により主に決定される。これらのビリオン構造タ ンパク質は、ウイルス粒子が感染細胞の表面から出芽したときに得られる宿主細 胞由来の脂質エンベロープの中に包埋された膜貫通糖タンパク質である。このエ ンベロープは、単一のカプシドタンパク質の複数の高度に整然としたコピーと複 合体化されたゲノムRNAで構成されている二十面体ヌクレオカプシドを取り囲ん でいる。E1およびE2エンベロープ糖タンパク質は、3量体構造内にアセンブルす ると報告されているヘテロダイマーとして複合体化され、ビリオン表面上に特徴 的な「スパイク」を形成する。さらに、これらのタンパク質の細胞質テイルはヌ クレオカプシドと相互作用し、新たなウイルス粒子のアセンブルを開始する(Vi rology 193 : 424,1993)。個々のシンドビスウイルスの糖タンパク質に起因す る特性としては、糖タンパク質E2によるレセプター結合(Virology 181 : 694, 1991)、および細胞質内へのヌクレオカプシド粒子の送達を生じるビリオンエン ベロープとエンドソーム膜の糖タンパク質E1媒介性融合(New Aspects of Positi ve-Stranded RNA Virus,166〜172頁、1990)が挙げられる。 本発明は、糖タンパク質活性(特にE2であるがこれに限定されるわけではない )を破壊しインタクトな異種糖タンパク質を同時発現させること、または、ハイ ブリッドエンベロープ遺伝子産物(すなわち詳細には、同じタンパク質分子内で 天然には見出されない外因性結合ドメインおよびその天然の細胞質および膜貫通 領域を有するアルファウイルスエンベロープ糖タンパク質)を作ること、または その組織向性においてベクターの起源のものとは異なるその他のアルファウイル スまたはその誘導体の糖タンパク質とこれらのE2および/またはE1糖タンパク質 を置換することによって、ビリオンアセンブリにとって必要とされる細胞質機能 を破壊することなく宿主範囲特異性を変えることができる、ということを認めて いる。従って、導入されたタンパク質分子またはドメインの向性に応じて、予 め選択された標的細胞に対して強い親和性を有する組換えアルファウイルスベク ター粒子を産生することができる。 第1の形態においては、組織向性を変えるために、その他のアルファウイルス またはその変異体由来の類似のエンベロープ糖タンパク質E1および/またはE2の 置換が用いられる。例えば、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス(VEE)は、そのシ ンドビスウイルス相対物とは異なり、リンパ系起源の細胞に対する向性を示すア ルファウイルスである。従って、VEE 構造タンパク質を発現する細胞株内にパッ ケージングされたシンドビスベクターは、パッケージング細胞構造タンパク質遺 伝子カセットが得られた親VEEウイルスと同じリンパ向性特性を示す。 詳細には、VEE ウイルスのトリニダードロバ(Trinidad donkey)株(ATCC #VR-6 9)をBHK 細胞内で増殖させ、シンドビスのクローニングについて記載したものと 類似の手順を用いてビリオンRNAを抽出する(実施例1)。構造タンパク質コー ド領域全体を、周囲のコザックコンセンサス配列を含む真正AUG翻訳開始部位お よびUGA翻訳終止部位に対してその5’−末端がそれぞれマップされるプライマ ー対を用いて増幅させる。正方向プライマーはVEEヌクレオチド7553−7579に対 し相補性であり、逆方向プライマーは、VEEヌクレオチド11206〜11186に対し相 補的である(Virology 170 : 19 からの配列)。構造タンパク質遺伝子に対応する VEE cDNAのPCR 増幅は、シンドビスについて記載されたとおりの2工程逆転写酵 素−PCRプロトコル、鋳型としてのVEE ゲノムRNA および以下のオリゴヌクレオ チド対を用いて、達成される。 正方向プライマー(VEE 7553F): 5'-TATATGCGGCCGCACCGCCAAGATGTTCCCGTTCCAGCCA-3' (配列番号90) 逆方向プライマー(VEE 11206R): 5'-TATATGCGGCCGCTCAATTATGTTTCTGGTTGGT-3' (配列番号91) 表示されたVEE ヌクレオチドに対するそのそれぞれの相補性に加えて、各々の プライマーには、その5’末端に NotI認識配列が含まれている。PCR 増幅に続 いて、3800bpのフラグメントを1%のアガロースゲルの中で精製し、その後酵素 NotIで消化する。次いで、結果として得られたフラグメントを前述のpOP13 お よびpOPRSV1 ベクター(Stratagene)の中に別々に連結させ、これらのベクター を NotIで消化し、そして仔ウシ腸アルカリホスファターゼで処理する。完全な VEE 構造タンパク質コード配列を含む、これらの結果として得られたベクターは 、pOP13-VEESP およびpOPRSV1-VEESPとして知られている。パッケージング細胞 株の開発におけるこれらのクローンの使用は、シンドビスパッケージング株につ いて記載されたものに従う。あるいは、NotIで消化されたPCR増幅VEE構造タンパ ク質遺伝子フラグメントを、実施例7に記載のレプリコン誘導性ELVISカセット 中で消化する。プラスミドpVGELVISBV-リンカーをBspEIで消化して、大部分の非 構造タンパク質コード配列を除去し、そして次いでこのベクターをそれ自体と再 連結させて構築物pVGELVISdl-リンカーを生成する。次に、このプラスミドを、N otIで消化し、仔ウシ腸アルカリホスファターゼで処理し、そしてNotI消化VEEフ ラグメントと連結して、発現カセットpVGELVdlVEEを生成する。この構築物のプ ラスミドDNAを適切な細胞株にトランスフェクトし、そしてG418耐性についての 選択を実施例7に記載のように実施する。さらに、本明細書において記載された 他の系を用いて、ベクター誘導性またはlacオペロン−VEE構造タンパク質遺伝子 発現ベクターの変形も構築する。さらに、実施例7に記載のように、1つのアル ファウイルス(例えば、シンドビス)のカプシドタンパク質遺伝子と、別のアル ファウイルス(例えば、VEE)のエンベロープ糖タンパク質遺伝子とを分割(split )遺伝子アプローチで組み合わせて構築する。さらに、VEEの変異体、および組 織向性が異なっているその他のアルファウイルスおよびその変異体が、このアプ ローチに従う場合に有用である。 第2の形態では、エンベロープアルファウイルスベクター粒子を産生すること のできるパッケージング細胞株の脂質2重層の中で、異種糖タンパク質または細 胞リガンドが発現される。この形態は、VSV-G偽型化アルファウイルスベクター の産生について実施例8で記載したものと類似している;ただし、この形態では 、E2レセプター結合機能は、挿入、欠失または塩基特異的配列変異誘発によって 不 活性化される。E2のレセプター結合機能は、異種糖タンパク質または細胞リガン ドにより供給されるものにベクター粒子向性を制限するように不活性化される。 VSV-G 偽型の例に加えて、アルファウイルスパッケージング細胞株内に安定にト ランスフェクトされた標準ベクターから発現される場合には、特定の細胞レセプ ター(例えばCD4細胞標的化のためのレトロウイルスHIV gp 120タンパク質)を 標的化するその他のウイルス糖タンパク質が利用される。 第3の形態では、インビトロで特定の細胞株またはインビボで組織タイプへと アルファウイルスウイルスベクターを標的化することを可能にするキメラ糖タン パク質も調製される。このようなキメラ糖タンパク質を構築するためには、アル ファウイルス構造タンパク質発現ベクターへと置換され得るインサート配列を増 幅させるのに、所望のレセプターのリガンド結合ドメインおよび相同性アルファ ウイルス配列(唯一の特異的制限エンドヌクレアーゼ部位を含む)を含む特異的 オリゴプライマーが用いられる。あるいは、許容的な挿入部位に消化し戻すため に便利な制限酵素部位からの限定的なBal-31消化を行ない、その後続いて、小さ いレセプター結合ドメインをコードするフラグメント、あるいは全ウイルス糖タ ンパク質または細胞表面リガンドの平滑末端連結を行う。一例を挙げると、HIV gp 120エンベロープタンパク質(Virology 185 : 820,1991)の主要な中和ドメ インに対応するペプチドを、正常なE2向性を破壊しCD4 細胞標的化を提供するの に用いることができる。 HIV gp 120の例は1つのハイブリッドタンパク質を例示しているが、可能性が ウイルス糖タンパク質に制限されているわけではない。例えば、ヒトインターロ イキン−2のレセプター結合部分は、IL−2レセプターを有する細胞内にベクタ ーを標的化するようにアルファウイルスのエンベロープタンパク質と組み合わさ れ得る。さらに、抗体のFc部分を認識するエンベロープタンパク質を用いて組換 えアルファウイルスベクター粒子を作製するために、前述の技術を使用する。次 いで、予め選択された標的細胞のみを認識するモノクローナル抗体を、このよう なFcレセプター保持アルファウイルスベクター粒子に結合させ、その結果ベクタ ー粒子が予め選択された標的細胞(例えば、腫瘍細胞)のみに結合しこれを感染 させるようにする。あるいは、ビオチン化された抗体またはその他のリガンドで コートされた細胞を標的化するため、アビジンの結合ドメインを有するハイブリ ッドエンベロープが使用される。患者をまず抗体でフラッドし(flood)、次にベ クターの投与に先立ち未結合のおよび非特異的に結合した抗体を一掃する時間を 経る。ビオチンに対するアビジン結合部位の高い親和性(10-15)は、モノクロ ーナル「イメージ」により同定されたもとの組織に対する正確かつ効率の良い標 的化を可能にする。 実施例10 組換えアルファウイルスのベクターのラクトース処方物 粗製の組換えアルファウイルスのベクターはCelliganバイオリアクター(New Brunswick、NJ)から入手し、組換えアルファウイルスベクターでトランスフェ クトまたは形質導入されたパッケージング細胞を含有し、そしてバイオリアクタ ーマトリックスのビーズに結合されている。細胞は、連続的流れプロセス(conti nuous flow process)において細胞を通る増殖培地の中に、組換えアルファウイ ルスベクターを放出する。バイオリアクターを出る培地を集め、そして最初に 0 .8ミクロンのフィルター、次いで0.65ミクロンのフィルターに通過させて、粗製 の組換えアルファウイルスベクターを澄明化する。交差流濃縮システム(Filtro n、Boston,MA)を利用して、濾液を濃縮する。濃縮物の1mlあたり約50単位のDN ase(Intergen、New York,NY)を添加して、外因性DNA を消化する。消化物を同 一の交差流システムを用いて150mM のNaCl,25mMのトロメタミン、pH7.2 に対し てダイアフィルトレートする。50mMのNaCl,25mMのトロメタミン、pH7.4 中で平 衡化した、Sephadex S−500 ゲルカラム(Pharmacia、Piscataway,NJ)上にダ イアフィルトレート物をロードする。精製組換えアルファウイルスベクターを50 mMのNaCl,25mMのトロメタミン、pH7.4 中でSephadex S−500 ゲルカラムから 溶出する。 ラクトースを含有する処方物緩衝液を2×濃縮ストック溶液として調製する。 この処方物緩衝液は、25mMのトロメタミン、70mMのNaCl,2mg/mlのアルギニン 、10mg/mlのヒト血清アルブミン(HSA)、および 100mg/mlのラクトースを 100m lの最終容積でpH7.4 において含有する。 1部のS−500精製組換えアルファウイルスベクターに1部の2×ラクトース 処方緩衝液を添加することによって、精製組換えアルファウイルスベクターを処 方する。処方した組換えアルファウイルスベクターを−70℃〜−80℃において保 存するか、または乾燥することができる。 Supermodulyo 12K凍結乾燥器に取り付けられたEdwards Refrigerated Chambe r(3Shelf RC3Sユニット)(Edwards High Vacuum、Tonawanda,NY)中で、処方し たアルファウイルスベクターを凍結乾燥する。凍結乾燥サイクルが完結したとき 、わずかの窒素ガスの放出後真空下でバイアルに栓をする。取り出す際に、バイ アルをアルミニウムのシールでクリンプする。凍結乾燥した組換えレトロウイル スを1.0ml の水またはその他の生理学的に受容可能な希釈液で再構成する。 実施例11 組換えアルファウイルス粒子の投与 エクスビボプロトコルで自己CD34+細胞を形質導入するかまたは患者の骨髄に ベクターを直接注入することにより、ゴシェ病の治療のために使用される治療用 シンドビスベクター(実施例17)を投与することができる。組換え型多価ベクタ ーからのGCの最長の治療的発現を達成するため、最良の投与様式は、例えば単球 またはマクロファージといった臨床的に冒された細胞タイプの長寿命細胞前駆体 を形質導入することである。冒された細胞タイプの最も早期の前駆体を形質導入 することにより、細胞前駆体は、自己更新し、成熟GC陽性細胞で抹消血を再集団 させる(repopulate)ことができる。今日までに研究されてきた最も早期の多能性 造血幹細胞は、健常骨髄集団の1%〜4%または抹消血集団の 0.1%までを構成 するCD34+細胞である。CD34+細胞を形質導入できるということは、単球/マクロ ファージ系列についてのみならず治療用タンパク質について標的化されているあ らゆる造血細胞について長期にわたる発現を維持する上で重要である。CD34+細 胞を形質導入するための2つのアプローチとして、エクスビボおよびインビボプ ロトコルが挙げられる。インビボプロトコルは、患者の骨髄の中にベクターを直 接注射することにより骨髄細胞の無差別集団を形質導入することに焦点をあてて いる。エクスビボプロトコルは、患者の骨髄または乳児患者のさい帯血からCD 34+陽性幹細胞を分離すること、ベクターで細胞を形質導入すること、次いで自 己細胞を患者に注射し戻すことに焦点をあてている。両方のアプローチが実施可 能であるが、エクスビボプロトコルは、CD34+細胞の特定の培養された集団を形 質導入することによりベクターを最も効率良く使用されることを可能にする。エ クスビボ方法の詳細を以下の節で記す。多価GCシンドビスベクターのエクスビボ投与 技術に習熟した医師によって行なわれた注射器吸引により、患者の骨髄からCD 34+細胞を収集する。あるいは、患者が出生前に診断を受けた場合には乳児のさ い帯血からCD34+細胞を得ることもできる。一般に骨髄がCD34+細胞の供給源であ る場合、局部または全身麻酔下で後腸骨稜からまたは大髄骨幹を穿刺することに よって、20の骨髄吸引物が得られる。次いで、骨髄吸引物をプールし、1mlあた り100ユニットのヘパリンと100μg/mlのデオキシリボヌクレアーゼIを含むHe pes緩衝化ハンクス平衡塩溶液の中で懸濁し、次にFicoll勾配分離に供す。次い thell,WA)(CD34)Separationシステムに従って洗浄する(米国特許第5,215,927 号;同第5,225,353号;同第5,262,334号;同第5,215,926号およびPCT/US91/0764 6を参照のこと)。その後、洗浄済みのバフィコート化細胞を、順次抗−CD34モ カラム上にロードする。ビオチン標識細胞はカラム上に吸着されるが、一方標識 ってリンスし、ゲルベッドを手動でかきまぜることによるカラムの撹拌によりCD 34+細胞を溶出させる。CD34+細胞がひとたび精製されると、精製された幹細胞を 計数し、20%のプールされ熱不活性化されていないヒトAB血清(hAB 血清)を含 むIscoveの改変Dulbecco培地(IMDM ; Irvine Scientific,Santa Ana,CA)中で 1×105細胞/mlの濃度でプレートする。 精製の後、精製された幹細胞を形質導入するいくつかの方法を実施することが できる。1つのアプローチは、ベクタープロデューサー細胞に由来するベクター 含有上清培養物で精製幹細胞集団の即時形質導入を含む。第2のアプローチは、 非接着CD34+細胞の精製された集団との、ベクタープロデューサー細胞の照射済 み単層の同時培養を含む。第3のそして好ましいアプローチは、類似の同時培養 アプローチを含むが、精製CD34+細胞はさまざまなサイトカインで予め刺激され 、照射済みのベクタープロデューサー細胞との同時培養より48時間前に培養され る。最近の出版物によると、レトロウイルスベクターを用いての細胞の形質導入 に先立ち幹細胞を予め刺激すると、これらの細胞タイプへの遺伝子移入のレベル が上昇するということが実証されている。(Noltaら、Exp.Hematol.20 : 1065 ,1992)。形質導入レベルの上昇は、効率の良いレトロウイルス形質導入に必要 な幹細胞の増殖の増大に起因する。シンドビスベクターは、複製しない細胞を感 染させることができることから、これらの細胞の予備刺激は、必要でないかもし れない。しかし、増殖をひき起こすこれらの培養物の予備刺激は、患者への再注 入のために増大した細胞集団を提供する。 CD34+細胞の予備刺激は、IL−1,IL−3,IL−6およびマスト細胞増殖因子( MGF)を含む成長因子およびサイトカインの組み合わせとともに用いて細胞をイン キュベートすることによって行なわれる。予備刺激は、48時間、骨髄刺激培地を 含むT25組織培養フラスコ内で培地1mlあたり1〜2×105のCD34+細胞を培養す ることによって行なわれる。骨髄刺激培地は、30%の熱不活性化されていないhA B 血清、2mMのL−グルタミン、0.1mMの2−メルカプトエタノール、1Mのヒ ドロコルチゾンおよび1%の脱イオンウシ血清アルブミンを含むIMDMから成る。 骨髄培養において用いられる全ての試薬は、顆粒球、赤血球、マクロファージ、 巨核球、正常骨髄由来のコロニー形成単位の最大数を支持するその能力について スクリーニングされるべきである。予備刺激のための精製された組換えヒトサイ トカインおよび成長因子(Immunex Corp.,Seattle,WA)は、以下の濃度で使用 されるべきである:E.coli由来のIL−1(100U/ml)、酵母由来のIL−3(5ng /ml)、IL−6(50U/ml)およびMGF(50ng/ml)(Anderson ら、Cell Growth Differ.2 : 373,1991)。 CD34+細胞の予備刺激の後、次いでこれらの細胞は、刺激培地の連続的存在下 で、照射済みのシンドビスプロデューサー細胞株(GC治療用ベクターを発現する )との同時培養により感染される。シンドビスベクタープロデューサー細胞株 はまずトリプシン処理され、照射(10,000ラド)を受け、骨髄刺激培地1mlあた り1〜2×105細胞で再プレートされる。翌日、シンドビスベクタープロデュー サー細胞株単層に、1mlあたり1〜2×105の予備刺激されたCD34+細胞を添加す る。細胞の同時培養は、48時間行なう。同時培養の後、培地で激しく洗浄するこ とによって接着性シンドビスベクタープロデューサー細胞単層からCD34+細胞を 収集し、すべての移動したベクタープロデューサー細胞の接着をさせるように2 時間プレートする。CD34+細胞を収集し、さらに72時間拡大する。次いで、細胞 を収集し、1本のバイアルあたり1×107個の細胞のアリコート内で凍結保護物 質を用いて液体窒素中で凍結させる。偶発性の物質が存在しないことについて処 理されたCD34+細胞をひとたびテストしたならば、凍結した形質転換CD34+細胞を 解凍し、1×105細胞/mlの濃度までプレートし、骨髄刺激培地内でさらに48時 間培養することができる。形質転換細胞を収集し、2回洗浄し、通常生理食塩水 の中に再懸濁する。輸液によって患者に注入し戻すのに用いられる形質導入細胞 の数は、注入部位1つあたり患者一人あたり最低1〜10×107個の細胞で計画さ れ、4つの注入部位までを必要とする。輸液は、患者の骨髄の中に直接戻すかま たは末梢血流内に直接戻すように行なうことができる。自己形質導入骨髄細胞を 受けた患者は、既存の骨髄集団を涸渇させるよう、部分的にかまたは全身的の照 射を受けることができる。処置は、GC活性を測定するための輸液後さまざまな時 点で、そして分化した細胞タイプ内の発現の長さについて、評価され得る。フォ ローアップ手順の経過の間のある時点で発現が低下するかまたは存在しない場合 、形質導入自己細胞を患者の体内に再注入することができる。 実施例12 シンドビス接合領域の制御下でのレポータータンパク質発現 細胞株の感染による調製物中のベクター単位の決定 β−ガラクトシダーゼ発現レポーター細胞株の 感染による調製物中のベクター単位の決定 個体に適正な治療用量のベクターを投与するためには、調製物中に含まれるベ クター感染性単位を容易に測定することのできる方法を誘導することが望ましい 。 これは、その細胞内に機能的シンドビス非構造タンパク質が存在する場合にのみ 、β−ガラクトシダーゼまたは別のレポーター遺伝子を発現する細胞株を生成す ることによって達成される。個々の細胞が1つより多いベクター粒子による感染 を受けず、力価またはベクター単位を決定できるように、漸増希釈度のシンドビ スベクター調製物で細胞株を感染させることができる。従って、この細胞株は、 ベクター調製物の中に存在する機能的粒子のアッセイである。 A.シンドビス非構造タンパク質の制御下で機能的β−ガラクトシダーゼタンパ ク質を発現する細胞株の生成 1つの形態においては、シンドビスRNA の転写を開始させることのできる5’ −末端配列、シンドビス接合領域、レポーター遺伝子およびマイナス鎖合成のた めの3’−末端シンドビスRNA ポリメラーゼ認識配列を含む真核性発現カセット が構築される。このカセットは、真核性転写プロモーターに隣接してアンチセン ス配向で配置される。さらに、これらの構築物はまた、5’−末端配列のシンド ビスヌクレオチド1に直ぐ隣接して、正確にこのシンドビスヌクレオチドの後で 一次RNA転写物の切断を生じる触媒リボザイム配列を含んでいてもよい。このア ンチセンス配向では、レポーター遺伝子は翻訳され得ず、レポーター遺伝子発現 に先立つポジティブ鎖のmRNA内への転写のためのシンドビス非構造タンパク質の 存在に完全に依存している。これらの非構造タンパク質は、力価測定されたシン ドビスベクター調製物によって提供される。さらに、この形態は、正確なシンド ビスゲノム5’−および3’−末端配列を含むよう設計された場合、シンドビス ベクターによって提供されるものと同じ非構造タンパク質を利用することにより 、レポーター遺伝子の転写物が増幅を受けることができるようにする。 このアンチセンス力価測定構築の実施例は、以下のとおりである。簡潔に記載 すると、酵素ApaIおよびBam HIを用いてプラスミドpKSSINBV-lacZ(実施例6に 記載)を消化する。これはシンドビス5’およびシンドビス非構造タンパク質配 列の除去を生じる。7kbのフラグメントを0.7%アガロースゲル上で精製する。 このフラグメントは、pd5'26s(実施例7に記載)のApaIおよびBamHIでの消化、 およびその後のHDVリボザイムおよび5’シンドビス配列を含む0.4kbのフラグメ ントのゲル精製により得られるフラグメントに連結される。得られる構築物は、 pKSd5'BV-lacZとして知られている。pKSd5'BV-lacZを、ApaIおよびPmeIで消化し 、その後、0.7%アガロースゲル上で7.4kbのフラグメントを精製する。このフラ グメントは、HDVリボザイム、シンドビス5’末端、結合領域、LacZ遺伝子、お よびシンドビス3’末端配列を含む。このフラグメントは、ApaIおよびEcoRVでp cDNA3を消化し、続いてGENECLEANで精製することにより、アンチセンス方向で、 pcDNA3(Promega Corp.,Madison,WI)に連結される。この結果生じる構築物(シン ドビス3’末端配列/LacZ遺伝子/接合領域/シンドビス5’-末端配列/HDVリ ボザイム、の配置のアンチセンスレポーターカセットRNAを転写するCMVプロモー ターを含む)は、pSINjra-galとして知られる。 ポリカチオン試薬Transfectam(Promega,Madison,WI)と複合体化された pSIN jra−gal ベクター5μgを用いて、60mmのペトリ皿の中で増殖させた5×105の BHK-21細胞のトランスフェクションによって、BHKSINjra−gal細胞を誘導する。 トランスフェクションの24時間後に、培地に 400μg/mlのG418(GibcoBRL,Gai thersburg,MD)を補足する。非トランスフェクト細胞が全て死滅し、G418耐性コ ロニーが分裂し始めた後、細胞をトリプシン処理によってプレートからとり除き 、プールし、その後限界希釈法によりクローニングする。既知の力価のシンドビ スウイルスの野生型ストックでの感染による機能的β−ガラクトシダーゼの産生 について、いくつかのクローンを試験する。まず2%のホルムアルデヒド(37% ストック溶液)/0.2%のグルタルアルデヒドを含む溶液でPBSリンスされた細胞 を固定し、次に0.5mMのフェリシアン化カリウム/0.5mMのフェロシアン化カリウ ム/2mMの MgCl2/1mg/mlのXgalを含む溶液で細胞を染色することによって、 感染6時間後に、候補のBHKSINjra−galクローン中の機能的β−ガラクトシダー ゼの産生を決定する。3時間以内に青色細胞が明確に見える。シンドビスウイル スストックが高レベルの欠損干渉(DI)粒子を含んでいない、BHK-21細胞上での プラークアッセイによって決定されるウイルス力価は、BHKSINjra−gal細胞上で のX-gal染色により観察される力価と類似であるはずである。 実施例7に記載されているもののようなパッケージング細胞株から産生された 、ベクター単位で表わされた、さまざまなアルファウイルスベクター調製物の力 価は、いくつかのベクターの希釈物でのBHKSINjra−gal細胞のコンフルエントな 単 層の感染によって決定される。ベクター調製物の力価は、上記のとおり、β−ガ ラクトシダーゼタンパク質を産生する細胞の視覚化によって、感染6時間後に決 定される。記載されたアルファウイルスベクターが構造遺伝子に対応するウイル ス領域を含まないことから、BHK-21細胞におけるプラークアッセイによりベクタ ー調製物の力価を決定することは不可能である。 あるいは、真核性プロモーター/ウイルストランスクリプターゼにより認識さ れる5’−末端シンドビス配列/シンドビス接合領域/レポーター遺伝子/マイ ナス鎖合成のためのシンドビスRNAポリメラーゼ認識配列から成る異なるレポー ターカセット形態を用いることによって、力価測定細胞株が産生され、センス方 向で発現される。このレポーター発現カセットは、レポーター遺伝子をコードす るサブゲノムメッセージの転写に先立って、ベクターにより供給されるシンドビ ス非構造タンパク質によるアンチセンスRNA 分子への合成を必要とする。 詳細には、センス方向のパッケージング構築物は、以下のように作製される。 酵素ApaIを用いてプラスミドpVGELVISを消化する。これはシンドビス3’−末 端のちょうど下流でヌクレオチド11737で切断する。T4 DNAポリメラーゼおよびd NTPの添加ならびに10分間16℃でのインキュベーションにより ApaI−消化され たDNA を平滑末端にする。ポリメラーゼの熱不活性化の後、DNA フラグメントを 酵素 SfiIで消化し、1%のアガロースゲル内で10041bp のフラグメントを精製 する。プラスミドpSKSINBV-lacZ を酵素PmeIおよびSfiIで消化する。1%のアガ ロースゲル中で6.4kbpのフラグメントを精製する。次に6.4kbpのpSKSINBV-lacZ フラグメントを、精製されたpVGELVISフラグメント中に連結させてプラスミドpE LVIS-βgalを作製する。このプラスミドは、MuLV LTRプロモーターの制御下で完 全なシンドビス非構造タンパク質、シンドビス接合領域、LacZ遺伝子およびシン ドビス3’−末端レプリカーゼ認識配列を含む。プラスミドpELVIS-βgalをBspE Iで消化し、GENECLEAN(Bio 101 Corp.,San Diego,CA)で精製し、自己再連結 させる。Bsp EIはnts 422-7054の間のシンドビス非構造タンパク質遺伝子配列を 除去する。再連結された構築物は、全てMuLV-LTRプロモーターの転写制御下にあ りかつ下流にある、シンドビスRNA の転写を開始することのできる5’配列、シ ンドビス接合領域、LacZ遺伝子をコードする配列、そしてマイナス鎖のRNA の 合成のために必要とされるシンドビス3’−末端配列を含んでいる。この構築物 は、pELVISdINSP-βgalとして知られている。 プラスミドpELVISdlNSP-βgalを、BHK細胞中にトランスフェクトし、前述のと おりに試験する。BHK pELVISdlNSP-gal細胞は、シンドビストランスクリプター ゼにより認識される5’-末端配列、シンドビス接合領域、LacZ遺伝子をコード する配列そしてマイナス鎖RNA の合成のために必要とされるシンドビス3’末端 配列を有するRNA転写物を産生する。Bsp EI欠失により作製された終止コドンお よび上流のオープンリーディングフレームのため、一次転写物からのβ−ガラク トシダーゼ発現が防がれる。力価測定されたシンドビスベクターによって提供さ れたシンドビス非構造タンパク質の添加は、アンチセンス中間体の初期合成の後 、シンドビス接合領域からの活性lacZ転写物の転写を生じる。さらに、この形態 は、正確なシンドビスゲノム5’−および3’−末端配列を含むよう設計されて いる場合、シンドビスベクターにより提供されたものと同じ非構造タンパク質を 利用することによって、レポーター遺伝子の転写物が増幅を受けることができる ようにする。 別の形態においては、センス方向で配置されたアンチセンスレポーター遺伝子 とそれに続く3’−末端アルファウイルスレプリカーゼ認識配列を含む発現カセ ットを用いて、力価測定細胞株が産生される。この構築物は、真核性プロモータ ーの制御下で、力価測定されるべきベクターによって提供されるアルファウイル ス非構造タンパク質により認識され転写されるRNA 転写物を産生する。アルファ ウイルス非構造タンパク質は、一次レポーター転写物中の配列を認識し、次にセ ンスレポーター転写物を合成する。この構築物はレポーター遺伝子転写物の増幅 から恩恵を受けないが、ベクター力価測定を可能にするのに充分な転写物をなお 提供するはずである。 このタイプの力価測定用カセットの構成は、以下のとおりである。簡潔に記載 すると、pSV-β−ガラクトシダーゼベクター(Promega Corp.,Madison,WI)を 酵素Hind IIIで消化し、上記のとおり平滑末端にする。プラスミドをさらに酵素 Bam HIおよび XmnIで消化して、LacZ遺伝子を除去し、残りのフラグメントの サイズを低減させる。LacZ遺伝子を含む3737ntフラグメントを1%のアガロース ゲ ルの中で精製し、酵素Bam HIおよびEcoR Vで消化されたpcDNA3(Invitrogen,Sa n Diego,CA)内に連結させる。この新しいプラスミド構築物は、pcDNAaLacZとし て知られている。このプラスミドを、酵素ApaIで消化し、上記のとおり平滑末 端にし、酵素 XhoIでさらに消化する。プラスミドpSKSINBV(前述)を SacIで 消化し、上記のとおり平滑末端化し、その後 XhoIで消化する。シンドビス3’ レプリカーゼ認識配列を含む、結果として得られた146nt のフラグメントを、1. 2%のアガロースゲル中で精製し、消化されたpcDNAaLacZベクター内に連結させ る。再連結された構築物は、アンチセンスLacZ遺伝子および3’シンドビスレプ リカーゼタンパク質認識配列を、CMVプロモーターの下流に含んでいる。結果と して得られた構築物は、pcDNAaLacZ-3'Sinとして知られている。この構築物はBH K 細胞内にトランスフェクトされ、前述の通りに利用される。 B.シンドビス非構造タンパク質の制御化で機能的なルシフェラーゼタンパク質 を発現する細胞株の生成 レポーター遺伝子のセンス配置および発現利用のために必要な非構造タンパク 質に基づいて構築物を力価測定するための別のレポーターはルシフェラーゼであ る。再度、非構造的タンパク質を、力価測定されたシンドビスベクター調製物に よりトランスで供給する。この構築物を生成するために、pELVIS-lucをEco47III およびHpaIで消化する。この消化は、非構造コード領域内からヌクレオチド1407 〜6920を取り除く。酵素の熱不活性化の後、消化されたベクターは、希釈条件下 で再連結される。この構築物は、pELVISdlE-Hlucとして知られている。この構築 物はBHK細胞にトランスフェクトされ、上記記載のように利用される。 実施例13 免疫応答の誘導のためのHBV 抗原を発現するベクター構築物の生成 A.HBV E /コア配列の分離 B型肝炎の全プレコア/コアコード領域を含む1.8kbフラグメントを、BamHI消 化およびゲル精製の後プラスミドpAM6(ATCC No.45020)から得、KSII+(Stratagen e,La Jolla,CA)のBamHI部位内に連結させる。このプラスミドは、KS II+HBpc /cと呼称される。XhoIリンカーを、KS II+HBpc/c内のプレコア/コアの Stu I部位(ヌクレオチド配列1,704)に付加し、ひきつづきHincIIで切断する(ヌ クレオチド配列2,592)。結果として得られた877 塩基対 XhoI−HincIIプレコ ア/コアフラグメントを、SK II+の XhoI/HincII部位内にクローン化する。こ のプラスミドはSK+HBeと呼称される。 B.PCR を利用する配列の調製 1.PCR を利用するHBV E/コア配列の部位特異的変異誘発 プラスミドKS II+HBpc/c中のプレコア/コア遺伝子を配列決定して、プレコア /コアコード領域が適正であるか否かを決定する。この配列は、コドン84および 85において2つの連続するインフレームのTAG終止コドンを生じるコドン79にお けるフレームシフトをひき起こす単一塩基対欠失を有することが見出された。こ の欠失は、プラスミドSK+ HBe 内のプレコア/コアコード領域のPCR 重複伸張( Hoら、Gene.77 : 51,1989)によって補正される。欠失を補正するために行な われる3回のPCR 反応のためには、4つのオリゴヌクレオチドプライマーが使用 される。 第1の反応は2つのプライマーを利用する。センスプライマー配列は、adw株 のヌクレオチド配列1,805〜1,827に対応し、5’末端に2つの XhoI制限部位を 含む。ヌクレオチド配列番号付けはGenbank(Intelligenics,Inc.,Mountain Vi ew,CA)から得られる。 5’CTC GAG CTC GAG GCA CCA GCA CCA TGC AAC TTT TT-3' (配列番号92) 第2のプライマー配列は、B型肝炎ウイルスのadw株のアンチセンスヌクレオ チド配列2,158〜2,130に対応し、コドン79,84および85を含む。 5'-CTA CTA GAT CCC TAG ATG CTG GAT CTT CC-3' (配列番号93) 第2の反応も2つのプライマーを利用する。センスプライマーはadw株のヌク レオチド配列2,130〜2,158に対応し、コドン79,84および85を含む。 5'-GGA AGA TCC AGC ATC TAG GGA TCT AGT AG-3' (配列番号94) 第2のプライマーはSK+プラスミドポリリンカー由来のアンチセンスヌクレオ チド配列に対応し、HBV プレコア/コアコード領域の終止コドンより135bp 下流 に ClaI部位を含む。 5'-GGG CGA TAT CAA GCT TAT CGA TAC CG-3' (配列番号95) 第3の反応も2つのプライマーを利用する。センスプライマーはadw株のヌク レオチド配列5〜27に対応し、5’末端に2つの XhoI制限部位を含む。 5'-CTC GAG CTC GAG GCA CCA GCA CCA TGC AAC TTT TT (配列番号92) 第2のプライマー配列は、SK+プラスミドポリリンカー由来のアンチセンスヌ クレオチド配列に対応し、HBV プレコア/コアコード領域の終止コドンより135b p 下流に ClaI部位を含む。 5'-GGG CGA TAT CAA GCT TAT CGA TAC CG-3' (配列番号96) 第1のPCR反応は、アンチセンス鎖内の欠失を補正し、第2の反応はセンス鎖 内の欠失を補正する。PCR反応1および2は、コドン79内で起こるCCからCCAへの 突然変異およびコドン81内のTCAからTCTへの塩基対置換を補正する。プライマー 1は、HBV eコード領域のATGコドンの10bp上流に2つの連続的XhoI部位を含ん でおり、プライマー4はHBV プレコア/コアコード領域の終止コドンより135bp 下流にClaI部位を含む。第1および第2のPCR 反応の産物は、第3のPCR 反応 において伸張されて、正しい配列を有する1つの完全なHBVプレコア/コアコー ド領域を生成する。 以下の循環条件を用いてPCR 反応が行なわれる:最初に、サンプルを2分間94 ℃で加熱する。溶融工程と呼ばれるこの工程は2本鎖DNA を合成のための1本鎖 に分離する。次にサンプルを30秒間56℃で加熱する。アニーリング工程と呼ばれ るこの工程はプライマーを第1工程で生成された1本鎖DNAにアニールさせる。 次にサンプルを30秒間72℃で加熱する。伸張ステップと呼ばれるこのステップは 、第1工程で生成された1本鎖DNAの相補鎖を合成する。第2の溶融ステップを3 0秒間94℃で行ない、その後に30秒間56℃でのアニーリングステップを行ない、 これに続いて30秒間72℃での伸張ステップを行なう。次いで、この手順を35サイ クル反復し、所望のDNA産物の増幅を結果として得る。 PCR 反応産物を 1.5%のアガロースゲル電気泳動によって精製し、NA45紙(Sc hleicher and Schuell,Keene,NH)上へ移す。400μlの高塩緩衝液(1.5MのNa Cl,20mMのTris、pH8.0、および0.1mM のEDTA)の中で65℃で30分間インキュベー トすることにより、所望の787bp DNA フラグメントをNA45紙から溶出させる。溶 出の後、500μlのフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24 :1)を溶液に加える。混合物をボルテックスし、次にBrinkmann Eppendorf遠 心分離機(5415L)内で5分間14,000rpmで遠心分離する。所望のDNAフラグメン トを含む水相を新たな1.5ml のマイクロ遠心分離管に移し、100%のEtOHを1.0ml 加える。この溶液を5分間ドライアイス上でインキュベートし、その後10,000rp mで20分間遠心分離する。上清をデカンテーションし、ペレットを70%のEtOH 50 0lでリンスする。Savant Speed-Vac濃縮機の中で真空下10,000rpmでの遠心分離 によりペレットを乾燥させ、次に10μlの脱イオン水の中に再懸濁する。PCR 産 物1マイクロリットルを、1.5%のアガロースゲル電気泳動により分析する。 78 7 XhoI− ClaIプレコア/コアPCR 増幅フラグメントをSK+ プラスミドの Xho I− ClaI部位の中にクローン化する。このプラスミドはSK+ HBe-c と呼称され る。E.coli(DH5α,Bethesda Research Labs,Gaithersburg,MD)をSK+ HB e-c プラスミドで形質転換し、増幅させてプラスミドDNA を生成する。次に、こ のプラスミドを本質的にBirnboimらが記載する通りに単離し精製する(Nuc.Aci d Res.7 : 1513,1979 ;Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Sambrook ら(編),Cold Spring Harbor Press、1989も参照のこと)。プレコア/コア遺伝 子の配列を確認するため、SK+HBe-c プラスミドを分析する(図4)。 2.HBV コア配列の単離 プラスミドSK+HBe 中の単一塩基対欠失を、実施例13Bで記載されている通りPC R 重複伸張によって補正する。簡単に記載すると、変異を補正するよう行なわれ るPCR 反応のために、4つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用する。 第1の反応は2つのプライマーを利用する。センスプライマーはSK+HBe プラ スミドのT−7プロモーターのためのヌクレオチド配列に対応する。 5'-AAT ACG ACT CAC TAT AGG G-3' (配列番号97) 第2のプライマーは、adw株のアンチセンス配列2,158〜2,130に対応し、コド ン79,84および85を含む。 5'-CTA CTA GAT CCC TAG ATG CTG GAT CTT CC-3' (配列番号98) 第2の反応は2つのプライマーを利用する。アンチセンスプライマーはSK+HBe プラスミドの中に存在するT−3プロモーターのためのヌクレオチド配列に対 応する。 5'-3':ATT AAC CCT CAC TAA AG (配列番号99) 第2のプライマーは、adw株のセンスヌクレオチド配列2,130〜2,158に対応し 、 コドン79,84および85を含む。 5'-GGA AGA TCC AGC ATC TAG GGA TCT AGT AG-3' (配列番号100) 第3の反応は2つのプライマーを利用する。アンチセンスプライマーは、SK+H Be プラスミドの中に存在するT−3プロモーターのためのヌクレオチド配列に 対応する。 5'-ATT AAC CCT CAC TAA AG-3' (配列番号101) 第2のプライマーはSK+HBe プラスミド内に存在するT−7プロモーターのセ ンス配列に対応する。 5'-AAT ACG ACT CAC TAT AGG G-3' (配列番号102) 第3の反応由来のPCR 産物は、HBV プレコア/コアコード領域についての正し い配列を生成する。 HBV コアコード領域を単離するため、コアコード領域のATG 開始コドンの上流 に XhoI制限部位を導入しHBV プリコード領域の29アミノ酸リーダー配列を削除 するようにプライマーを設計する。第4の反応では、第3の反応由来のPCR 産物 および以下の2つのプライマーを用いてHBV コアコード領域を産生する。 センスプライマーは、adw株のヌクレオチド配列1,885〜1,905に対応し、5’ 末端に2つの XhoI部位を含む。 5'-CCT CGA GCT CGA GCT TGG GTG GCT TTG GGG CAT G-3' (配列番号103) 第2のプライマーは、SK+HBe プラスミド内に存在するT−3プロモーターの ためのアンチセンスヌクレオチド配列に対応する。第4のPCR反応由来の約600bp のPCR産物は、5’末端にHBV コアコード領域および新規の XhoI制限部位を、 そしてSK+HBe プラスミドのマルチクローニング部位の中に存在した3’末端のC laI制限部位を含んでいる。 5'-ATT ACC CCT CAC TAA AG-3' (配列番号104) 第4のPCR 反応の後、溶液を新たな1.5mlのマイクロ遠心分離管の中に移す。 この溶液に3Mの酢酸ナトリウムを50マイクロリットル添加し、その後 500μl のクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)を加える。混合物をボルテッ クスし、次に5分間14,000rpmで遠心分離する。新たなマイクロ遠心分離管に水 相を移し、1.0ml の 100% EtOH を添加する。この溶液を 4.5時間−20℃でイン キュベートし、その後20分間10,000rpmで遠心分離する。上清をデカンテーショ ンし、ペレットを 500μlの70% EtOH でリンスする。真空下で10,000rpm で遠 心分離することによりペレットを乾燥させ、次に10μlの脱イオン水の中に再懸 濁する。PCR 産物の1マイクロリットルを、1.5%のアガロースゲル電気泳動法 により分析する。約600bpのXhoI-ClaI HBVコアPCRフラグメントを、SK+プラスミ ドのXhoI-ClaI部位にクローン化する。このプラスミドはSK+HBcと称する。 3.HBV X抗原の単離 B型肝炎ウイルスXオープンリーディングフレームを含む642bp の NCOI− T aqIフラグメントを、pAM6プラスミド(adw)(ATCC 45020)から得、クレノウフ ラグメントにより平滑末端にし、SK+(Stratagene,La Jolla,CA)のHincII部位の 中に連結させる。E.coli(DH5α、Bethesda Research Laboratories、Gaithersbu rg,MD)をライゲーション反応物で形質転換し、そして増殖させた。 このフラグメントはいずれの配向ででも挿入できることから、SK+マルチクロ ーニング部位の中の XhoIおよび ClaI部位に関してセンス配向を有するクロー ンが選択される。より詳細には、ミニプレップDNAを判断用の制限酵素BamHIで 消化する。正しい配向でのインサートは、サイズが3.0kb および0.6kb の2つの フラグメントを生じる。正しくない配向でのインサートは、3.6kb および0.74kb の2つのフラグメントを生じる。正しい配向でのクローンが選択され、SK−XAg と呼称される。 4.HBV E ,HBV コアおよびHBV X を発現するシンドビスベクターの構築 HBVe配列を発現するシンドビスベクターの構築は、HBVe-c配列をコードするcD NAフラグメントを放出するためにXhoIおよびXbaIでSK+HBe-c プラスミドを消 化することによって達成される。次いで、フラグメントは、アガロースゲル電気 泳動によって単離され、GENECREANTM(BIO 101,San Diego,CA)で精製され、Xho IおよびXbaIでの消化によって調製されCIAPで処理されたpKSSINBV(実施例3 を参照のこと)の中に挿入される。このベクターを、pLSSIN-HBe,と称す。同様 のベクターは実施例3で記載した他のシンドビスベクターからも作製され得る( 例えば、pKSSINdlJRsjrc,pKSSINdlJRsjrPC,pKSSINdlJRsjrNP(7582-7601)およびp KSSINdlJRsexjr)。 HBV コア配列を発現するシンドビスベクターの構築は、SK+HBc(上記)プラスミ ドをXhoIおよびXbaIで消化することにより達成される。HBcフラグメントを、ア ガロースゲル電気泳動で単離し、GENECLEANTMで精製し、XhoIおよびXbaI部位 でpKSSINBV中に連結される。このシンドビス−HBベクターを、pKSSIN-HBcと称す 。 HBV-X 抗原配列を発現するシンドビスベクターの構築は、HBV-X 配列をコード するcDNAフラグメントを放出するようXhoIおよびXbaIでプラスミドSK−X Agを 消化することによって達成される。フラグメントは、アガロースゲル電気泳動に より単離され、GENECLEANTMを用いて精製され、XhoIおよびXbaI酵素で予め処 理されたpKSSINBVに挿入される。このシンドビス−HBxベクターを、pKSIN-HBxと 称す。 上記のシンドビスHBV 発現ベクターも、ベクター感染細胞の実験または処理の 必要に応じて、選択可能な薬剤耐性マーカーを同時発現するように改変すること もできる。特に、上記のシンドビスHBV 発現ベクターのいずれも、G418耐性につ いて同時発現するように設計することもできる。これは、ベクターのマルチクロ ーニング部位を用いてベクターの終端3’末端の5’側およびHBV コード配列の 3’側に配置された細菌ネオマイシンホスフォトランスフェラーゼ遺伝子が後に つづく内部のリボゾーム侵入部位(実施例5)を組み込むことによって達成され る。これらのG418耐性ベクター構築物は以下の節でHBV 特異的CTL 標的の生成の ためにベクター感染細胞を選択するために使用することができる。 D.シンドビスベクターに感染した細胞の発現 1.ELISA 1.0×107個の培養細胞をPBS で洗浄し、PBS 中で合計 600μlの量に細胞を再 懸濁し、Branson 超音波処理機350 型(Fisher,Pittsburgh,PA)内で30の設定 値で2回5秒間超音波処理するかまたは3回凍結融解させることによって、HBV 発現ベクターのいずれかにより感染された細胞由来の細胞溶解物を作製する。5 分間10,000rpmでの遠心分離により溶解物を澄明化する。 細胞溶解物中のコア抗原およびプレコア抗原および培養上清中の分泌されたe 抗原を、Abbott HBe,rDNA EIA キット(Abbott Laboratories Diagnostic Divis ion,Chicago,IL)を用いてアッセイする。細胞溶解物中のプレコア抗原ならび に培養上清中の分泌されたe抗原についての別の感度の高いEIAアッセイを、Inc star ETI-EBキット(Incstar Corporation,Stillwater,MN)を用いて行なう。 Biogen(Geneva,Switzerland)から得たe抗原および組換え型B型肝炎コアの 希釈物から、標準曲線を生成する。 図16に示すように、これらの手順を用いて、約100〜200ng/mlのHEV e抗原が、 細胞溶解液中で発現され、300〜400ng/mlのHEV e抗原が、Sin BV HB eベクター がで感染したBHK細胞から分泌される。 図17に示すように、これらの手順を用いて、約40ng/mlのHBVコア抗原が、SinB V HBコアで感染した106個のBHK細胞由来の細胞溶解物中に発現される。組換えHB コアシンドビスベクターで感染したマウス線維芽細胞は、組換えHBコアレトロウ イルスベクター形質導入細胞(WO 93/15207)より6〜7倍高いレベルのHBVコアタ ンパク質を発現する。図18に示すように、これらの手順を用いて、約12〜14ng/m lのHBVコア抗原が、SinBVHBコアベクターで感染した106個のL-M(TK-)細胞由 来の細胞溶解物中で発現される。それに対して、組換えHBコアレトロウイルスベ クター形質導入細胞から発現されるHBVコア抗原は約2ng/mlである。 2.免疫沈降法/ウエスタンブロット ベクター感染細胞により発現されたプレコア/コアおよびe抗原の特徴づけは 、免疫沈降法とそれに続くウエスタンブロット分析によって行なわれる。詳細に は、PBS または培養上清中の 0.5〜1.0ml の細胞溶解物を、G−Sepharose(Pha rmacia LKB,Uppsala、Sweden)に結合されたポリクローナルウサギ抗B型肝炎 コア抗原(DAKO Corporation,Carpinteria,CA)と混合し、4℃で一晩インキ ュベートする。サンプルを20mMのTris−HCl,pH8.0,100mM のNaCl,10mMのEDTA の中で2度洗浄し、0.5%の2−メルカプトエタノールを含むサンプルローディ ング緩衝液中で煮沸する。SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によってタン パク質をまず分離し、その後Immobilon(Millipore Corp.,Bedford,ME)へ移し 、DAKOポリクローナルウサギ抗B型肝炎コア抗原とおよびその後の125I−プロ テインAでプローブする。 E.免疫応答の試験 1.細胞傷害性アッセイ (a)近交系マウス 1×106個のシンドビスHBeまたはHBコアベクターで1週間の間隔で2回、6〜 8週齢の雌性C3H/HEマウス(Charles River,MA)に腹腔内(i.p.)注射する。7〜 14日後に動物を屠殺し、脾細胞(3×106/ml)を、T−25フラスコ(Corning, Cor ning,NY)の中でそのそれぞれの照射された(10,000ラド)レトロウイルスベク ター形質導入細胞(6×104/ml)(WO 93/15207)と共にインビトロで培養する。培 養培地は、RPMI1640,5%の熱不活性化ウシ胎児血清、1mMのピルビン酸ナトリ ウム、50μg/mlのゲンタマイシンおよび10-5Mの2−メルカプトエタノール( Sigma,St.Louis,MO)から成る。4〜7日後にエフェクター細胞を回収し、標 準的なクロム放出アッセイにおいて96ウェルのマイクロタイタープレート(Corn ing,Corning,NY)の中でさまざまなエフェクター:標的細胞比を用いて試験す る。標的は、レトロウイルスベクター形質導入L-M(TK-)細胞(ATCC No.CCL1.3 )であり、一方非形質導入同系細胞株をネガティブコントロールとして使用 する。CTL標的はまた、G418耐性マーカーを同時発現するシンドビスHBeまたはH Bコアベクターで同系細胞を感染させることにより生成され得る。次いで、感染 細胞を2週間、800μg/mlのG418を用いて選択する。詳細には、200μlの最終容 積内でさまざまなエフェクター対標的細胞比で、Na2 51CrO4標識(Amersham,Arl ington Heights,IL)(100uCi,37℃で1時間)標的細胞(1×104細胞/ウェル )をエフェクター細胞と混合する。インキュベーションの後、100μlの培養培 地を取り出し、Beckman ガンマ分光計(Beckman,Dallas,TX)の中で分析する。 標的+培地からのCPMとして自然的放出(SR)を決定し、標的+1MのHCl から のCPM として最大放出(MR)を決定する。標的細胞溶解百分率を、〔(エフェク ター細胞+標的CPM)−(SR)/(MR)−(SR)〕×100 として計算する。標的の 自然放出値は、代表的にはMRの10%〜20%である。 いくつかのCTLアッセイのためには、エフェクターを、例えば一次インビトロ 刺激の後8〜12日目に、複数回インビトロ刺激し得る。より詳細には、照射され た(10,000ラド)6×105個の刺激細胞(stimulator cell)と、照射された(3,00 0ラド)の2×107個の「フィラー(filler)」細胞(以下で記載する通りに調製さ れる)と107個ののエフェクター細胞を、10mlの「完全」RPMI培地の中で混合す る。(RPMIは以下を含む:5%の熱不活性化ウシ胎児血清。2mMのL−グルタミ ン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1×非必須アミノ酸、および5×105Mの2− メルカプトエタノール)。エフェクター細胞のインビトロ刺激のための刺激細胞 を、照射レトロウイルスベクター形質導入(10,000ラド)L-M(TK-)から生成する 。室温で3,000ラドで照射を受けた、RPMI中で再懸濁された、特定の投薬を受け たことのない(naive)同系マウス脾細胞から「フィラー」細胞を調製する。脾細 胞をRPMIで洗浄し、5分間室温で3,000rpm で遠心分離し、ペレットをRPMI中で 再懸濁する。再懸濁された細胞を3〜5分間37℃で1.0ml のtris−塩化アンモニ ウム(100mlの0.17Mのtris-base、pH7.65、+900mlの0.155MのNH4Cl;最終溶液 をpH7.2に調整する)で処理する。その後二次インビトロ再刺激物を、CTLアッセ イにおける試験の前に5〜7日間培養する。2〜10Uの組換えヒトIL−2(200U /ml、カタログ#799068,Boehringer Mannheim、W.Germany)を添加しながら、 前述のとおり、その後の全ての再刺激物を培養する。 これらの手順を用いて、HBVe抗原に対するCTLの誘発が可能であることを示す ことができる。 (b)HLA A2.1トランスジェニックマウス HBeまたはHBコアを発現する1.0×106pfuのシンドビスベクターで、1週間の間 隔をおいて、6〜8週齢の雌性HLA A2.1トランスジェニックマウス(V.Engelha rd,Charlottesville,VA)に2回腹腔内(i.p.)注射する。7日後に動物を屠 殺し、脾細胞(3×106/ml)を、フラスコ(T−25,Corning,Corning.NY)内 で、照射(10,000ラド)レトロウイルスベクター形質導入Jurkat A2/Kb細胞(WO 93/15207)またはペプチドコーティングされたJurkat A2/Kb細胞(6×104/ml)と 共にインビトロで培養する。残りのクロム放出アッセイは、標的が形質導入およ び非形質導入EL4 A2/Kb(WO 93/15207)およびJurkat A2/Kb細胞である実施例13E1 .a中で記載されている通りに行なわれる。非形質導入細胞株を、ネガティブコン トロールとして利用する。標的はまた、ペプチドコーティングされたEL4 A2/Kb 細胞であってもよい。 (c)ベクター構築物でのヒト細胞の形質導入 B95-8,EBV 形質転換マルモセット白血球(ATCC CRL 1612)の3週間培養物の 上清から取った新鮮なエプスタイン−バールウイルス(EBV)でそのB細胞を感染 (形質転換)させることにより、各患者についてリンパ芽球様細胞株(LCL)を樹 立する。EBV 形質転換の3週間後に、HBV コアまたはe抗原およびG418耐性を発 現するシンドビスベクターでLCL を感染させる。4.0ml の培地を含む6cmのプレ ート中で 1.0×106個の照射(10,000ラド)シンドビスベクタープロデューサー 細胞と 1.0×106個ののLCL 細胞とを同時培養することまたは感染性(fectious )ベクター上清を添加することによって、LCL のベクター感染を達成する。培養 培地は、RPMI1640,20%の熱不活性化ウシ胎児血清(Hyclone,Logan,UT)、5. 0mM のピルビン酸ナトリウムおよび0.5mM の非必須アミノ酸から成る。37℃およ び5%CO2での一晩の同時培養後、LCL 懸濁細胞を、照射(10,000 ラド)シンド ビスベクタープロデューサー細胞から取り出す。感染したLCL 細胞を、800μg /mlのG418を添加することによって選択する。本質的にLCL 細胞の感染について 記載した通りに、Jurkat A2/Kb細胞(L.Sherman,Scripps Insttute,San Diego,CA)を感染させる。 (d)ヒトCTLアッセイ Ficoll(Sigma,St.Louis,MO)勾配遠心分離により、ヒトPBMCを分離する。詳 細には、5分間室温で3,000rpm で細胞を遠心分離する。PBMCをインビトロでそ の自己レトロウイルスベクター形質導入(WO 93/15207)LCLまたはHLA適合細胞を 用いて10日間、10:1のエフェクター:標的比で再刺激する。培養培地は、予備 スクリーニングしたロットの5%の熱不活性化ウシ胎児血清、1mMのピルビン酸 ナトリウムおよび50μg/mlのゲンタマイシンを含むRPMI1640から成る。結果と して得られる刺激されたCTL エフェクターを、標準的なクロム放出アッセイ(実 施例13,l.a.)で標的としてシンドビスベクター感染した自己LCLまたはHLA適合 細胞を用いて、CTL 活性について試験する。大部分の患者はEBV に対する免疫を 有することから、ネガティブコントロールとして使用される非形質導入EBV形質 転換B細胞(LCL)も、形質導入を受けたLCLとともにEBV特異的CTL により標的と して認識される。EBV 特異的CTL による標識標的細胞の傷害による高いバックグ ランドを低減させるため、50:1の比で、標識標的細胞に対して非標識形質導入 LCLを添加することが必要である。 2.体液性免疫応答の検出 HBV コアおよびe抗原に特異的なマウスにおける体液性免疫応答をELISA によ り検出する。ELISA プロトコルは、96ウェルのプレートをコーティングするため 、 100μg/ウェルの組換えHBV コアおよび組換えHBV e抗原(Biogen,Geneva 、Swizerland)を利用する。次に、HBV コアまたはHBV e抗原を発現するベクタ ーで免疫化されたマウス由来の血清を、抗原コーティングされたウェル内にて段 階希釈し、室温で1〜2時間インキュベートする。インキュベーションの後、同 等の力価を有するウサギ抗マウスIgG1,IgG2a,IgG2bおよびIgG3の混合物をウェ ルに添加する。各々のウェルに西洋ワサビペルオキシダーゼ(「HRP」)−結合 ヤギ抗ウサギ抗血清を添加し、サンプルを室温で1〜2時間インキュベートする 。インキュベーションの後、適切な基質を付加することにより反応性を視覚化す る。HBV コアまたはHBV e抗原に特異的なIgG 抗体を含むウェルの中で、発色が 見られる。 3.T細胞増殖 HBV コアまたはe抗原を発現するシンドビスベクターの2回または3回の注入 の結果得られる抗原誘導性Tヘルパー活性をインビトロで測定する。詳細には、 免疫化されたマウス由来の脾細胞を、ネガティブコントロールとしてHBV コアま たはe抗原を発現しない細胞でまたはHBV コアまたはe抗原を発現する細胞で、 予め定められた比率でインビトロで再刺激する。5%のFBS,1.0mMのピルビン酸 ナトリウムおよび10-5の2−メルカプトエタノールを含むRPMI1640培地中での5 %のCO2および37℃で5日間の後、上清をIL−2活性について試験する。HBVコア またはe抗原により刺激されたTヘルパー細胞によって特異的にIL−2が分泌さ れ、CTL クローン、CTLL−2(ATCC TIB 214)を用いてその活性を測定する。簡 潔に記載すると、CTLL−2クローンは増殖に関しIL−2に依存しており、IL−2 非存在下で増殖しない。96−ウェルのプレート内で上清試験サンプルの段階希釈 物に対してCTLL−2細胞を添加し、3日間37℃で5%のCO2にてインキュベート する。その後、CTLL−2細胞に 0.5μのCi3H−チミジンを添加する。CTLL−2細 胞が増殖する場合にのみ、0.5μのCi3H−チミジンを取り込む。一晩インキュベ ートした後、細胞をPHDセルハーベスター(Cambridge Teehnology Inc.,Watert own,MA)を用いて回収し、Beckman ベーターカウンターで計数する。サンプル 中のIL−2の量を、Boehringer Mannheim(Indianapslis,IN)から得た組換えIL− 2標準から生成された標準曲線から決定する。 F.投与プロトコル 1.マウス (a)直接ベクター投与 HBVコアまたはe抗原をコードするシンドビスベクターの直接投与による体液 性および細胞媒介性の免疫応答の誘導を評価するのに、マウス系を用いることも 可能である。簡潔には、6〜8週齢の雌性C3H/Heマウスに、0.1mlの(無菌脱イ オン蒸留水で)再構成されたHBVコアまたはHBV eを発現するシンドビスベクター を筋肉内(i.m.)注射するか、または1.0mlの凍結乾燥されたHBVコアまたはHBV eを発現するシンドビスベクターを腹腔内(ip)注射する。1週間離して2回の 注射を行なう。2回目の注射から7日後に、動物を安楽死させる。次いで、本質 的に実施例13E l.a.に記載されている通りにクロム放出CTLアッセイを行なう。 2.チンパンジー投与プロトコル B型肝炎ウイルスに慢性的に感染したチンパンジーにベクターを投与するプロ トコルを決定するために、上記のマウス系で生成されたデータを使用する。マウ スにおけるHBV特異的CTLの誘導に基づいて、チンパンジー試行の被験体は、2つ の連続的に増加する用量の群で与えられる、7日間隔でのコアまたはe抗原をコ ードするベクターの4回の用量を受ける。コントロール被験体は、処方媒質から 成るプラシーボを受ける。用量は、注射日毎に1.0mlを4回の筋肉内注射で与え られる107または108fuのいずれかである。血清アラニンアミノトランスフェラー ゼ(ALT)レベル、B型肝炎e抗原の存在、B型肝炎e抗原に対する抗体の存在、 血清HBV DNAレベルを測定し、処置の安全性および許容度を評価するために、0 日目、14日目、28日目、42日目、56日目、70日目および84日目に血液サンプルを 採取する。Abbott HB e rDNA EIAキット(Abbott Laboratories Diagnostic Div ision,Chicago、IL)により、B型肝炎e抗原およびHBe抗原に対する抗体を検 出し、そして血清HBV DNAレベルをChiron bDNAアッセイにより測定する。B型肝 炎コアまたはe抗原に対するCTLの誘導の効力を、実施例13E l.c.におけるよう に決定し得る。 チンパンジー研究からの安全性および効力の結果に基づいて、ヒト試験におけ る被験体に対するベクター投与のために、用量および接種スケジュールを決定す る。これらの被験体は、血清ALTレベル、HBVe抗原の存在、HBVe抗原に対する 抗体の存在および血清HBV DNAレベルについて、本質的に前述のとおりにモニタ ーされる。B型肝炎コアまたはe抗原に対するヒトCTLの誘導は、実施例13E l.c .におけるように決定される。 G.免疫反応の誘導のためのHBV抗原を発現するELVISベクター構築物の生成 1.HBV E-C,HBVコアおよびHBV Xを発現するELVISベクターの構築 HBV e抗原を発現するELVISベクターの構築は、HBVe-c配列をコードするcDNAフ ラグメントを放出するためにXhoIおよびNotIでSK+HBe-cプラスミドを消化するこ とにより達成される。次いで、このフラグメントを、アガロースゲル電気泳動に より単離し、GENECLEAN(BIO101,San Diego,CA)を用いて精製し、先にXhoIおよ びNotIで消化することにより調製したpVGELVIS-SINBV-リンカーベクターに挿入 する。この構築物を、pVGELVIS-HBeと称する。 上記のHBコアPCR産物を、XhoIおよびClaIで消化し、アガロースゲル電気泳動 により単離し、GENECLEANを用いて精製し、XhoIおよびClaIで消化したSK+II(Bl uescript,Stratagene,CA)に連結する。この構築物を、SK+HBコアと称する。HBV コア配列を発現するELVISベクターの構築は、HBVコア配列をコードするcDNAフラ グメントを放出するために、SK+HBコアプラスミドをXhoIおよびNotIで消化する ことにより達成される。次いでこのフラグメントを、アガロースゲル電気泳動に より単離し、GENECLEANを用いて精製し、そしてXhoIおよびNotIで消化すること により調製したpVGELVIS-SINBV-リンカーベクターに挿入する。この構築物を、p VGELVIS-HBコアと称する。 HBV-X抗原配列を発現するELVISベクターの構築は、HBV-X配列をコードするcDN Aフラグメントを放出するために、XhoIおよびNotIでプラスミドSK-X Agを消化す ることにより達成される。次いでこのフラグメントを、アガロースゲル電気泳動 により単離し、GENECLEANを用いて精製し、そしてXhoIおよびNotIで消化するこ とにより調製したpVGELVIS-SINBV-リンカーベクターに挿入する。この構築物を 、pVGELVIS-HBXと称する。 上記の3つのいずれの構築物もが、続く節において、HBV特異的CTL標的を生成 するための、ベクター感染細胞を選択するために用いられ得る。 2.ELVIS ベクターでトランスフェクトされた細胞の発現 pVGELVIS-HBeプラスミドDNAを単離および精製し、そして2μgのpVGELVIS-HBe DNAを10μlのリポフェクタミン(GIBCO-BRL,Gaithersburg,MD)と複合体化し、そ して35mMペトリプレートに含まれる2×105のBHK細胞にトランスフェクトする。 トランスフェクションの2日後、上清および全細胞溶解物を回収し、ELISAアッ セイ(下記参照)を用いてHBV-e抗原の発現量を決定した。 トランスフェクトしたすべての姉妹pVGELVIS-HBeベクターにより感染された細 胞由来の細胞溶解物を、1.0×106の培養細胞をPBSで洗浄し、この細胞をPBS中総 用量600μlに再懸濁し、Brason超音波破砕機(Model 350(Fisher,Pittsburgh,PA) )中で2回5秒間30の設定で超音波破砕するか、または凍結解凍を3回行うか によって作製する。溶解物を、10,000rpm、5分間遠心分離することにより明澄 化する。 細胞溶解物中のコア抗原およびプレコア抗原ならびに培養上清中に分泌された e抗原を、Abbott HBe,rDNA EIAキット(Abott Laboratories Diagnostic Divisio n,Chicago,IL)を用いてアッセイする。細胞溶解物中のプレコア抗原および培養 上清中に分泌されたe抗原について別の感度の高いEIAアッセイを、Incstar ETI- EBキット(Incstar Corporation,Stillwater,MN)を用いて行う。標準曲線は、Bio gen(Geneva,Switzerland)から得られる組換えB型肝炎コアおよびe抗原の希釈物 から生成する。 図19に示すように、これらの手順を用いて、約2ng/mlのHBV e抗原が細胞溶解 物中に発現されており、そしてまたpVGELVISHBeプラスミドの異なるクローンで トランスフェクトしたBHK細胞から分泌されている。 ベクターでトランスフェクトされた細胞により発現されるプレコア/コアおよ びe抗原の特徴付けを、免疫沈降およびそれに続くウェスタンブロット分析によ り行う。詳細には、0.5ml〜1.0mlのPBS中の細胞溶解物または培養上清を、G-Sep harose(Pharmacia LKB,Uppsala,Sweden)に結合したポリクローナルウサギ抗B型 肝炎コア抗原(DAKO Corporation,Carpinteria,CA)と混合し、そして4℃で一晩 インキュベートする。サンプルを、20mM Tris-HCl(pH8.0)、100mM NaCl、10mM E DTAで2回洗浄し、そして0.5% 2-メルカプトエタノールを含むサンプルローディ ング緩衝液中で煮沸する。タンパク質を、最初にSDSポリアクリルアミド電気泳 動で分離し、次いでImmobilon(Millipore Corp.,Bedford,ME)に移し、そしてDAK Oポリクローナルウサギ抗B型肝炎コア抗原およびそれに続く125IプロテインA でプローブする。 3.免疫応答試験 (a)投与プロトコル マウスモデル系もまた、HBVコアまたはe抗原を発現するELVISベクターの直接 投与に続く体液性のおよび細胞媒介性の免疫応答の誘導を評価するために用いる 。簡潔には、6〜8週齢の雌性Balb/c、C57B1/6、C3H/HEマウス(CHARLES RIVER, MA)およびHLA A2.1トランスジェニックマウス(V.Engelhard,Charlottesville,V A)に、例えば、50μg以上のpVGELVIS-HBコア、pVGELVIS-HBVeまたはpVGELVIS-HB XベクターDNAを筋肉内(i.m.)注入する。2回の注入は1週間離して行う。2回目 の注入の7日〜14日後、動物を屠殺する。クロム放出CTLアッセイを、本質的に 実施例13E l.a.に記載のように行う。マウスにおける体液性の免疫応答の検出を 、本質的に実施例13E2に記載のように行い、マウスにおけるT細胞増殖の検出を 、本質的に実施例13E3に記載のように行う。 実施例14 免疫応答の誘導またはウイルス宿主細胞相互作用のブロッキングのための ウイルスタンパク質発現シンドビスベクター 以下の実施例は、HIVウイルス抗原を発現することにより免疫応答を生成する ことのできるシンドビスベクターを構築するための手順を記載するものである。 免疫応答の誘導および発現を試験する方法も示されている。 免疫応答を惹起するために用いられるシンドビスベクター A.HIV IIIB ENV 発現ベクター HIVプロウイルスクローンBH10-R3(配列につては、Ratnerら,Nature 313 : 27 7,1985を参照のこと)から2.7kbのKpnI-XhoI DNAフラグメントを単離し、IIIe xE7deltaenv(nt.5496までBal31欠失)由来の約400bp SalI−KpnI DNAフラグ メントを、プラスミドSK+中のSalI部位の中に連結した。このクローンから、3. 1kbのenv DNAフラグメント(XhoI−ClaI)を精製し、前述したXhoIおよびClaで 予め消化したシンドビスベクターの中に連結した。 B.HIV 特異的抗原を発現するプロデューサー細胞株の作製 上記のベクターに由来するHIV IIIB envを発現するベクター産生細胞株を構築 するために、シンドビスパッケージング細胞株(実施例7)中にインビトロ転写 RNA転写物をトランスフェクトする。詳細には、HIV特異的配列をコードするcDNA シンドビスベクタークローンから転写するのに用いられるSP6インビトロ転写RNA ポリメラーゼ系を用いて、シンドビスRNAベクター分子を最初に産生する。次い で、生成されたインビトロRNAベクター産物を、24時間以内に一次的感染性ベク ター粒子の産生を導くシンドビスパッケージングまたはホッピング細胞株中にト ランスフェクトする。次いで、これらのベクター粒子を細胞株培養物の上清から 収集し、次に0.45ミクロンのフィルターを通してろ過して細胞汚染を防ぐ。次い で、ろ過した上清を用いてシンドビスパッケージング細胞の新鮮な単層を感染さ せる。感染から24時間以内に、シンドビス非構造タンパク質およびHIV特異的配 列をコードするポジティブ鎖のシンドビス組換えRNAを含むシンドビスベクター 粒子が産生される。 シンドビスHIV IIIB envベクターの別の形態は、選択マーカーを含むプロモー ター駆動cDNAシンドビス構築物である。この形態では、特異的HIV IIIB env配列 を含む上記のXhoI〜ClaIフラグメントは、バクテリオファージポリメラーゼ認 識配列に代わって、構成性プロモーターにより駆動される類似のcDNAシンドビス ベクターの中に配置される。この形態を使用して、発現ベクタープラスミドをパ ッケージング細胞株内へトランスフェクションし、そしてトランスフェクション から24〜48時間後に薬剤耐性遺伝子について選択する。次いで、(使用される選 択マーカーに応じて)14日後に耐性コロニーをプールし、そして希釈しクローニ ングする。次に、いくつかの希釈クローンを増殖させ、そして最高のベクター力 価についてアッセイする。次いで、最高の力価のクローンを拡大し、凍結保存す る。保存したクローンを、HIV特異的タンパク質の産生および免疫応答の誘導に ついて試験する。 C.HIV 特異的タンパク質の産生および免疫応答についての試験 ウエスタンブロット分析により、HIV特異的タンパク質の産生について、シン ドビスHIVプロデューサー細胞株由来の細胞溶解物を試験する。インビトロで発 現をトランスファーするベクターの能力を試験するために、ウイルスベクターを 含むろ過された上清でBHK-21細胞を感染させ、感染から24時間後にウエスタンブ ロット分析によりアッセイする。タンパク質発現が一旦確認されたならば、ベク ター処理後の外来性抗原を発現する同系の細胞の、(a)感染同系細胞または感 染性ベクターの調製物のいずれかを注入することによりマウスにおいてCTL応答 を惹起する能力;(b)ヒトインビトロ培養系においてCTL応答を惹起する能力 ;(c)初代細胞を含むヒト、チンパンジーおよびマカク細胞を感染させ、その 結果これらをCTL応答の惹起に使用し得かつCTLアッセイにおいて標的として役 立ち得る能力;(d)免疫応答エピトープをマッピングする能力;および(e) マウスCMV(MCMV)などのその他の非HIV抗原に対するCTL応答を惹起し測定する能 力、を実証するため、インビボでのマウスおよび霊長類の研究を行なうことがで きる。 1.シンドビスウイルスベクターにコードされる抗原に対する免疫応答 シンドビスHIV IIIB envベクターで形質導入された細胞株から惹起された免疫 応答を試験するため、HIV IIIBベクターを有する組換えシンドビスウイルスで、 マウス腫瘍細胞株(B/C 10ME)(H−2d)(Patekら,Cell Immunol.72 : 113,1 982)を感染させる。次いで、同系(すなわちMHCが同一の)Balb/c(H−2d)マウ スにおいてHIV env特異的CTLを刺激するために、HIV env発現細胞株(B/C 10ME− IIIB)を利用した。B/C 10ME−IIIB細胞(1×107細胞)を腹腔内注射することに よりマウスを免疫化し、7〜14日目に追加免疫する(追加免疫が必要とされない 場合もある)。これらの免疫化されたマウスから応答脾細胞懸濁液を調製し、1 :50の刺激細胞:応答細胞比で、B/C 10ME−IIIB(B Cenv)またはB/C 10ME(BC) のいずれかのマイトマイシンC処理細胞の存在下で、4日間インビトロで細胞を 培養する。これらの培養物からエフェクター細胞を回収し、計数し、標準的な4 〜5時間の51Cr−放出アッセイにおいてさまざまなエフェクター:標的(E:T )細胞比で放射性標識(51Cr)標的細胞(すなわちB/C 10ME env-29またはB/C 1 0ME)と混合する。インキュベーションの後、マイクロタイタープレートを遠心 分離し、100μlの培養上清を取り出し、Beckmanガンマ分光計で溶解した細胞か ら放出された放射性標識の量を定量する。標的細胞溶解を以下のとおり計算した :%標的溶解=Exp CPM-SR CPM/MR CPM-SR CPM×100。ここで、1分あたりの実 験的計数(Exp CPM)はエフェクター+標的を表わし、自然放出(SR)CPMは標的単 独を表わし、最大放出(MR)CPMは1MのHClの存在下での標的を表わす。 2.組換えシンドビスベクターの直接注入によるマウスにおける免疫応答の刺 マウスにおける直接注入の後のHIVエンベロープタンパク質の発現を誘導する 組換えシンドビスウイルスベクターの能力を評価するために、実験を行なう。HI V IIIB envベクター構築物を有する約104〜105(pfu)の組換えシンドビスウイル スを、腹腔内(i.p.)または筋肉内(i.m.)経路のいずれかで3週間間隔で2回 注射する。このシンドビスウイルスの量は、免疫応答を刺激するとみなされてい る量よりも低くなるように決定される。2回目のベクター注射から約7〜14日後 にCTL用に脾細胞を調製する。 D.組換えシンドビスベクターから発現されるウイルスタンパク質アナログに由 来するブロッキング剤 多数の感染性疾患、ガン、自己免疫疾患およびその他の疾病には、細胞とウイ ルス粒子、細胞と細胞、または細胞と因子との相互作用が関与している。ウイル ス感染においては、ウイルスは一般に感受性細胞の表面上のレセプターを介して 細胞内に入る。ガンにおいては、細胞はその他の細胞または因子からのシグナル に対し不適切に応答するかまたは全く応答しないかもしれない。自己免疫疾患に おいては、「自己」マーカーの不適切な認識が存在する。これらの相互作用は、 インビボで相互作用におけるいずれかのパートナーに対するアナログを産生する ことによって、ブロックされ得る。 このブロッキング作用は、細胞内、細胞膜上または細胞外で起こり得る。ブロ ッキング剤に対する遺伝子を有するウイルスの、または特にシンドビスベクター のブロッキング作用は、感受性細胞の内側からまたは病原性相互作用を局所的に ブロックするブロッキングタンパク質の一形態を分泌することによって媒介され 得る。 HIVの場合、相互作用の2つの物質は、gp 120/gp 41エンベロープタンパク質 およびCD4レセプター分子である。従って、適切なブロッカーは、病原性効果を ひき起こすことなくHIVの侵入をブロックするHIV envアナログかまたはCD4レセ プターアナログのいずれかを発現するベクター構築物となる。CD4アナログは、 隣接する細胞を防御するように分泌され機能するが、一方gp 120/gp 41はベクタ ー含有細胞のみを防御するよう細胞内でのみ分泌または産生される。安定性また は補体溶解を増強するために、ヒト免疫グロブリンH鎖またはその他の成分をCD 4に添加することが有利であり得る。このようなハイブリッド−可溶性CD4をコー ドするレトロウイルスベクターの宿主への送達は、安定したハイブリッド分子の 連続的供給をもたらす。 HIV envアナログの発現を導くベクター粒子も、上記のとおりに構築され得る 。どの部分が、明白な病原性の副作用なくウイルス吸着をブロックすることがで きるかは、当業者にとって明らかなことである(Willyら,J.Virol.62 : 139, 1988 ; Fishenら,Science 233 : 655,1986)。 実施例15 A.免疫反応の誘導のためのFIV ENV/REV/RREシンドビスベクターの構築 FIV env/rev/RRE遺伝子をコードする配列を、以下のプライマーを用いて、プ ラスミドpFIV-14-Petaluma(NIH Research and Reference Reagent Program,Mary land)から増幅し、単離する。 センスプライマー配列は、クローン34F10(Talbottら、PNAS 86:5743-5747,198 9)の6020位の5’末端に配置される2つの連続的なXhoI制限部位を有する: (配列番号105) 5'-3':CC CTC GAG CTC GAG GGG TCA CTG AGA AAC TAG AAA AAG AAT TAG アンチセンスプライマー配列は、クローン34F10の9387位の配列に相補的であ る。プライマーの5’末端はNotI部位を有する。 (配列番号106) 5'-3':CC GCG GCC GC GTA TCT GTG GGA GCC TCA AGG GAG AAC 次いで、PCR産物を、pBluescript KSII+プラスミド(Stratagene,CA)中に配置 し、そしてDNA配列決定により確認する。この構築物を、pBluescript KSII+FIV env/rev/RREと称する。次いで、XhoI-NotIフラグメントを切り出し、そしてシ ンドビス骨格に挿入する。 FIV env/rev/RRE配列を発現するシンドビスベクターの構築は、FIV env/rev/R RE配列をコードするcDNAフラグメントを放出するためにXhoIおよびNotI制限酵素 部位でSK+FIV env/rev/RREプラスミドを消化することにより達成される。次いで 、このフラグメントを、アガロースゲル電気泳動により単離し、GENECLEANTM(BI O101,San Diego,CA)で精製し、そしてXhoIおよびNotIで消化することにより調製 した所望のシンドビスベクター骨格に挿入する。実施例3に記載のシンドビスベ クターは、FIV env/rev/RRE配列の挿入に適切である。このようなシンドビスベ クターには、pKSSINBV、pKSSINd1JRsjrc,pKSSINd1JRsjrPC、pKSSINd1JRsjrNP(7 582-7601)、およびpKSSINd1JRsexjrが含まれる。 上記のシンドビスFIV env/rev/RRE発現ベクターを、ベクター感染細胞の実験 または処理の必要性に依存して、選択薬剤耐性マーカーを同時発現するように改 変し得る。上記のいかなるシンドビスFIV env/rev/RRE発現ベクターもまた、G41 8耐性について同時発現するように設計され得る。これは、FIV env/rev/RREコー ド配列の3’側かつベクターの末端3’の5’側にベクターのマルチクローニン グ部位を用いて配置された細菌性ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子 が続く、内部リボゾーム侵入部位(実施例5)を組み込むことにより達成される 。これらのG418耐性ベクター構築物を、続く節においてFIV env/rev/RRE特異的C TL標的の生成のためのベクター感染細胞を選択するために使用し得る。 B.FIV ENV/REV/RRE を発現するシンドビスベクターを用いるネコ細胞の感染 ネコ腎臓細胞株(CRFK)を、10%FBSを含むDMEM中で増殖させる。CRFK細胞を、 実施例3および実施例7に記載のようにシンドビスベクターで感染させ、ウェス タンブロット解析を用いてネコ細胞におけるベクター発現を示すために用いる。 C.感染細胞の発現 すべてのFIV env/rev/RRE発現ベクターにより感染された細胞由来の細胞溶解 物を、PBSで1.0×107の培養細胞を洗浄し、細胞をPBS中で総容量が600μlになる ように再懸濁し、Branson超音波破砕機 Model 350(Fisher,Pittsburg,PA)中で2 回5秒間30の設定で超音波破砕するか、または3回凍結融解することにより作製 する。溶解物を10,000rpmで5分間遠心分離することにより明澄化する。 SDSポリアクリルアミド電気泳動により、タンパク質をそれらの分子量(MW)に 従って分離する。次いで、タンパク質を、ゲルからIPVH Immobilon-P膜(Millipo re Corp.,Bedford,MA)に移す。Hoefer HSI TTEトランスファー装置(Hoefer Sc ientific Instruments,CA)を用いて、タンパク質をゲルから膜に移す。次いで、 この膜を、FIV env gp100に対するモノクローナル抗体である、CE4-13B1またはC E3-8のいずれかでプローブする。結合した抗体を、オートラジオグラフィーによ り形質導入されたタンパク質を可視化することを可能にする125I標識プロテイン Aを用いて検出する。 D.細胞性免疫反応の試験 1.近交系マウス 6〜8週齢の雌性Balb/c(H-2d)、C57B1/6(H-2b)およびC3H/HE(H-2k)マウス(Ch arles River,MA)を、1週間の間隔で、1×106pfuのシンドビスFIV env/rev/RRE ベクターで2回腹膜内(i.p.)注入する。7日後、動物を屠殺し、T-25フラスコ(C orning,Corning,NY)内で、照射(10,000ラド)レトロウイルスベクター形質導入同 系細胞(WO 94/06921)(6×104/ml)とともに脾臓細胞(3×106/ml)をインビトロ で培養する。これらの形質導入細胞は、マウス線維芽細胞細胞株であるBC10ME(H -2d)(ATCC受託番号TIB85)、B16(H-2b)およびL-M(TK-)(H-2k)(ATCC受託番号CCL1. 3)を含む。これらの細胞株を、4500mg/Lのグルコース、584mg/LのL−グルタミ ン(Irvine Scientific,Santa Ana,CA)および10% FBS(Gemini,Calabasas,CA)を含 むDMEM培地中で増殖させる。培養培地は、RPMI 1640、5%熱失活性ウシ胎児血 清、1mMピルビン酸ナトリウム、50g/mlゲンタマイシン、および10-5M2−メル カプトエタノール(Sigma,St.Louis,MO)からなる。エフェクター細胞を4日〜7 日後に回収し、そして種々のエフェクター:標的細胞比を用いて、標準的クロム 放出アッセイにおいて96穴マイクロタイタープレート(Corning,Corning,NY)にお いて試験する。標的は、レトロウイルスベクター形質導入同系細胞(WO 94/06921 )であり、一方非形質導入同系細胞株をネガティブコントロールとして用いる。C TL標的はまた、G418耐性マーカーを同時発現するシンドビスFIV env/rev/RREベ クターで同系細胞を感染させることから生成され得る。次いで感染細胞を、2週 間、800μg/mlのG418を用いて選択する。詳細には、Na2 51CrO4標識(Amersham,Ar lington Heights,IL)(100 uCi、1時間、37℃)標的細胞(1×104細胞/ウェル )を、エフェクター細胞と種々のエフェクター対標的細胞比で最終容量が200μl になるように混合する。インキュベーションの後、100mlの培養培地 を取り出し、Beckmanガンマ分光計(Beckman,Dallas,TX)で分析する。自然放出(S R)は標的+培地由来のCPMとして決定し、最大放出(MR)は標的+1M HCl由来のCP Mとして決定する。%標的細胞溶解は、[(エフェクター細胞+標的CPM)-(SR)/(MR )-(SR)]×100として計算される。標的の自然放出値は、代表的にはMRの10%〜20% である。 あるCTLアッセイについては、エフェクターをインビトロで複数回、例えば、 一次インビトロ刺激の8〜12日後に刺激し得る。より詳細には、107のエフェク ター細胞を6×105の照射(10,000ラド)刺激細胞と混合し、そして2×107の照射 (3,000ラド)「フィラー」細胞(下記のように調製される)と、10mlの「完全」R PMI(5%熱失活性ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリ ウム、1×非必須アミノ酸、および5×105M 2−メルカプトエタノールを含有 するRPMI)培地中で混合する。エフェクター細胞のインビトロ刺激のための刺激 細胞を、照射レトロウイルスベクター形質導入同系細胞から生成する。「フィラ ー」細胞を、RPMI中に再懸濁し、室温で3,000ラド照射した未処理同系マウスの 脾臓細胞から調製する。牌臓細胞をRPMIで洗浄し、3,000 rpmで5分間、室温で 遠心分離し、そしてペレットをRPMI中に再懸濁する。再懸濁された細胞を、1.0m lのTris-塩化アンモニウム(100mlの0.17M Tris base(pH 7.65)+900mlの0.155M NH4Cl;最終溶液をpH 7.2に調整する)で37℃にて3〜5分間処理する。次いで、 二次インビトロ再刺激物を、CTLアッセイにおいて試験する前に5〜7日培養す る。すべての後の再刺激物を、上記のように2〜10Uの組換えヒトIL-2(200U/ml 、カタログ番号799068、Boehringer Mannheim,W.Germany)を添加して培養する。 2.ネコ ベクターはネコを処置するために利用されるので、ネコにおける免疫学的効力 を示すアッセイが必要である。以下は、標準51Cr放出アッセイ(Brownら、J.Vir. 65:3359-3364,1991)のための再刺激細胞および標的細胞のために必要な自己T細 胞株の生成の記載である。簡潔には、末梢血単核細胞(PBMC)を、静脈せん刺およ びFicoll-ジアトリゾエートナトリウム(Histopaque-1077;Sigma,St.Louis,MO)密 度勾配遠心分離の後に得る。これらのPBMCを、5μg/mlのコンカナバリンA (Con A,Sigma)で3日間刺激し、そして25U/mlのヒト組換えインターロイキン2( IL-2)(Boehringer Mannheim Biochemicals,Indianapolis,IN)および10%ウシT細 胞増殖因子(TCGF)を含む培地中で維持する。細胞を、200μlの完全RPMIの最終容 量中に、5×104照射(3,000ラド)自己PBMC、10%ウシTCGF、および25U/mlのIL-2 を含む1ウェルあたり平均1または0.3細胞で、丸底96ウェルマイクロタイター プレートに播種する。完全RPMIは、10% FBS、2mM L-グルタミン、5×10-5M 2- メルカプトエタノール、および50μg/mlのゲンタマイシンを含むRPMI1640培地か らなる。クローンを、連続的に48ウェルプレートおよび24ウェルプレートに拡大 する。数週間後、細胞をFIV env/rev遺伝子(WO 94/06921)を発現するレトロウイ ルスベクターで形質導入し、G418で選択する。これらの細胞株の発現を、実施例 15Cに記載のようにウェスタンブロット分析によりモニターする。高レベルの所 望のタンパク質を発現する細胞株は、実施例15D1におけるように、標準的51Cr放 出アッセイにおける刺激細胞および標的として機能する。エフェクター細胞を、 CTLアッセイのために、静脈せん刺およびFicoll-ジアトリゾエートナトリウム密 度勾配遠心分離の後に得た末梢血単核細胞(PBMC)から回収する。 E.投与プロトコル 6〜8週齢の雌性Balb/C、C57B16またはC3H/Heマウスに、0.1mlの(無菌の脱 イオン蒸留水で)再構成されたFIV env/rev/RRE発現シンドビスベクターを筋肉 内(i.m.)注射するか、または1.0mlの凍結乾燥されたFIV env/rev/RRE発現シン ドビスベクターを腹腔内(i.p.)注射する。1週間離して2回の注射を行なう。2 回目の注射から7日後に、動物を屠殺する。次いで、本質的に実施例13D1に記 載されている通りにクロム放出CTLアッセイを行なう。 ネコにもまた、0.5mlの(無菌の脱イオン蒸留水で)再構成されたFIV env/rev /RRE発現シンドビスベクターを筋肉内(i.m.)注射するか、または2.0mlの凍結 乾燥されたFIV env/rev/RRE発現シンドビスベクターを腹腔内(i.p.)注射する。 1週間離して2回の注射を行なう。2回目の注射から7日後に、CTLアッセイの ためにPBMCを抜き取る。次いで、本質的に実施例13D2に記載されている通りに クロム放出CTLアッセイを行なう。 実施例16 組織特異的細胞性RNAを用いる無能力化アルファウイルスベクターの 活性化による組織特異的発現: 結腸直腸ガンの処置のためのアルファウイルス腫瘍特異的発現ベクターの構築 A.CEA 腫瘍マーカーの発現に依存する組換えシンドビスベクター(SIN-CEA)の構 前述し、図20に図示したように、無能力化接合ループアウトモデルを、選択さ れたRNAに相同である逆位反復配列によって隣接されるベクターの接合領域を用 いて構築する。この実施例では、CEA腫瘍抗原cDNA(Beaucheminら,Molec.and C ell.Biol.7 : 3221,1987)由来の配列を、逆位反復中に使用する。CEA RNA応 答性シンドビスベクターを構築するため、接合領域に、6塩基対のヒンジドメイ ンによって分離された2つのCEAアンチセンス配列ドメイン(A1およびB1)が 先行する。A1に対し相補的である単一の20塩基対CEAセンス配列(A2)を、接合 領域の3’末端に配置する。正しいA1およびB1アンチセンス配列を選択するにあ たり、2つだけの必要条件は、それらが標的RNA配列に対して特異的であること およびアンチセンス配列が3ヌクレオチドにより分離された2つのRNA配列ドメ インに対してハイブリダイズすることである。この3ヌクレオチドギャップは、 ポリメラーゼをホップさせて読取り鎖をスイッチさせベクターの非構造タンパク 質ドメインをベクターの接合領域に架橋するためのヒンジドメインとして作用す る(図5)。このような形態を構築するために、5’および3’末端に便利な制 限酵素部位を含むフラグメントインサートを作製するために、互いに相補する2 つのオリゴヌクレオチドを合成する。次いで、このオリゴヌクレオチドフラグメ ントインサートを、シンドビスベクターのマルチクローニング部位と無能力化接 合領域との間でシンドビスベクター内に連結する。センスオリゴヌクレオチド鎖 は、5’から3’へ、ApaI制限部位とそれに続くA1アンチセンスドメイン、6b pのヒンジドメイン、B1アンチセンスドメイン、合成接合領域ドメインおよびA2 アンチセンスドメインとそれに続くXhoI制限酵素部位を含むはずである。CEA R NA応答性シンドビスベクターを設計するために、以下のオリゴヌクレオチド配列 を使用する。ヌクレオチド番号配列は、Beaucheminら,Molec.and Cell Biol. 7 : 3221,1987から得られる。5’−3’CEA センス鎖 CEA 618 CEA 589 ApaI *--------------------------------------* CGC GC G GGC CCT GT G ACA T TG AAT AGA GT G AGG G TC CTG TTG GG(配列番号107) CEA 651 CEA 622 *---------------------------------* * 合成 A AAG G TT TCA CAT TT G TAG C TT GCT GTG TC A TTG C GA TCT CTA CG(配列番号108) CEA 599 CEA 618 接合コア * *--------------------* XhoI G TGG T CC TAA ATA GT T CAC T CT ATT CAA TG T CAC A CT CGA GCC GG(配列番号109) 5’−3’CEAアンチセンス鎖は、上記のオリゴヌクレオチドに対して相補的 である。両方のオリゴヌクレオチドを合成した後、オリゴヌクレオチドを10mMの Mgの存在下で混合し、5分間100℃まで加熱し、ゆっくりと室温まで冷却する。 次いで、オリゴヌクレオチド対をApaIおよびXhoI制限酵素で消化し、同じ酵素 で予め消化されたプラスミドpCMV-SINまたはpMET-SINにインサートのモル比25: 1で混合し連結する。これらの構築物をそれぞれpCMV/SIN-CEAおよびpMET/SIN-C EAと称する。γインターフェロンを発現するSIN-CEAベクターおよびプロデューサー細胞株(SI N-CEA/γIFN)の構築 ヒトγインターフェロン遺伝子を、レトロウイルスベクタープラスミドpHu-IF N(Howardら、Ann.N.Y.Acad.Sci.716:167-187,1994)から、XhoIおよびClaIで消化 することにより、サブクローン化する。結果として生じるγ-IFNのコード配列を 含む500bpのフラグメントを1%アガロースゲルから単離する。 あるいは、ヒトγ−IFN cDNAを、チオシアン酸グアニジニウム抽出とそれに続 くCsCl勾配を通す超遠心分離によって、PHA刺激JurkatT細胞から単離されたRNA から誘導する。次に、RNA(Sigma,St.Louis,MO)をインビトロで逆転写させ、 遺伝子特異的オリゴヌクレオチド対を使用して、Taqポリメラーゼを用いるポリ メラーゼ連鎖反応によってγ−IFN cDNAを増幅させる。PCR DNAをT4 DNAポリメ ラーゼおよびクレノウで修復し、CIAPで処理したSK+プラスミド(Stratagene,Sa n Diego,CA)のHincII部位の中にクローン化する。センス配向で、cDNAの5’末 端は、SK+ポリリンカーのXhoI部位に隣接しており、3’末端はClaI部位に隣 接している。ヒトγ−IFN分子をコードする512塩基対フラグメントを、pCMV/SIN -CEAまたはpMET/SIN-CEAベクターのいずれかのXhoI/ClaI部位に配置する。こ れらの新しいプラスミドをそれぞれ、pCMV/SIN-CEA/IFNまたはpMET/SIN-CEA/I FNと称する。 B.チミジンキナーゼを発現するSIN-CEAベクターおよびプロデューサー細胞株( SIN-CEA/TK)の構築 pHS1TK3KB(Mcknightら,Nuc.Acids.Res.8 : 5949,1980)クローンを標的DN Aとして使用して、5’XhoIおよび3’ClaI制限酵素部位に隣接された単純ヘ ルペスチミジンキナーゼ(「HSVTK」)のcDNAクローンを含むPCR増幅産物を得る 。PCR増幅のために使用されるプライマーについての配列は、公表された配列(W agnerら,PNAS,78 ; 1442,1981)から得られる。次いで、1,260塩基対の増幅 産物を、XhoIおよびClaIで消化し、pCMV/SIN-CEAまたはpMET/SIN-CEAベクター のいずれかのXhoI/ClaI部位に連結する。これらの新しいプラスミドを、それ ぞれpCMV/SIN-CEA/HSVTKまたはpMET/SIN-CEA/HSVTKと称する。 C.CEA RNA 依存性シンドビスベクタープロデューサー細胞株の作製 プロデューサー細胞株の作製の前出の実施例(実施例7)とは異なり、ベクタ ートランスフェクションにより、パッケージング細胞株内への一回のみの遺伝子 トランスファーが可能であり得る。これらのベクターは無能力化され完全ゲノム ベクターの合成において防止されていることから、シンドビスパッケージング細 胞株の新鮮な層の再感染は、これらのベクターが活性状態になるためにCEA RNA の存在に依存しているので、頓座感染(aborted infection)に終わる。RT−PCR 技術を用いて、トランスフェクトされたプロデューサー細胞株を希釈クローニン グすることによって、より高い力価を達成することが可能である。 実施例17 組換えアルファウイルスベクターを用いる置換遺伝子治療 以下の実施例は、治療的タンパク質を生成し得るアルファウィルスベクターの 構築を記載する。 A.シンドビス第VIII因子ベクターの構築 血友病Aは、血漿凝固因子である第VIII因子が欠如していることを特徴とする 。およそ2万人に1人の男性が、血液凝固カスケードを完成させる羅患した個人 の能力がないことにより、出血障害として疾病状態を示す血友病Aを有している 。 血友病Aを有する個人の処置は、第VIII因子タンパク質での置換である。ヒト 第VIII因子の唯一の供給源はヒト血漿である。第VIII因子の精製のためにヒト血 漿を処理するためには、ヒトドナーサンプルを1000人以上のドナーのロットでプ ールする。第VIII因子タンパク質が不安定なものであるため、結果として得られ る薬学的産物は非常に不純であり、重量純度の見積りは約0.04%である。さらに 、とりわけ、B型肝炎ウイルスおよびヒト免疫不全ウイルスといったような、血 液供給源を汚染し、従って第VIII因子タンパク質と潜在的に同時精製され得る感 染性疾患の深刻な脅威が存在する。 第VIII因子cDNAクローンは約8,000bpsである。pKSSINBV内への第VIII因子cDNA の挿入は約15,830bpsのベクター/異種遺伝子ゲノムサイズを生じる。この大き なベクターRNAの粒子へのパッケージングが非効率的であるならば、第VIII因子 インサートの「B−ドメイン」を削除することにより、インサートのサイズをさ らに減少させることができる。ひきつづき発現されるタンパク質の機能に影響を 及ぼすことなく、cDNAから第VIII因子B−ドメイン領域を除去することが可能で あるということが示されている。 シンドビス−第VIII因子ベクターを以下のように構築する。第VIII因子cDNAを クローンpSP64-VIII(全長ヒトタンパク質をコードするcDNAを有する受託番号39 812のATCCクローン)から得る。pSP64-VIIIをSalIで消化し、末端をT4 DNAポリ メラーゼ および50μMの各dNTPを用いて平滑末端化し、そして約7700bpのフラグメントを 1%のアガロース/TBEゲル上で電気泳動し、GENECLEANで精製する。次に、平滑 末端を含む第VIII因子のcDNAを、HincIIでの消化により調製し、CIAPで処理し、 1%アガロースから精製したpKS II3'SIN(実施例3)の中へ連結する。このプラ スミドをpF83'SINと称する。 実施例3に記載されているさまざまなシンドビスベクター内への第VIII因子の 挿入のために、プラスミドpF83'SINをXhoIおよび限定的SacI消化で消化し、結 果として得られる7,850bpのフラグメントを0.7%のアガロース/TBEゲル上で単 離する。次いでこの第VIII因子−3'SINフラグメントを以下に列挙するベクター の各々の中に挿入する。このフラグメントの挿入に先立って、XhoIおよびSacI での消化によりプラスミドを調製し、CIAPで処理し、1%のアガロース/TBEゲ ル電気泳動により単離し、GENECLEANで精製する: ベクター 機能的接合領域(+/-) pKSSINBV + pKSSINdlJRsjrc + pKSSINdlJRsjrPC + pKSSINdlJRsjrNP(7,582-7,601) + pKSSINdlJRsexjr + 第VIII因子cDNAの挿入の後、これらのベクターをそれぞれ、以下のように称す る: pKSSINBVF8 pKSSINdlJRsjrcF8 pKSSINdlJRsjrPCF8 pKSSINdlJRsjrNP(7,582-7,601)F8 pKSSINdlJRsexjrF8 第VIII因子cDNAを含むベクターのパッケージングは、(実施例7に記載の)パ ッケージング細胞株の、インビトロ転写されたベクター/第VIII因子RNAでのト ランスフェクションによって達成される。パッケージング効率は、パッケージン グされたベクターで感染された細胞内の第VIII因子発現のレベルを測定し、実施 例3に記載されるpKSSIN-lucベクターを用いて行なわれる同様の実験に比較する ことによって、決定される。 B.グルコセレブロシダーゼシンドビスベクターの構築 ゴシェ病は、酵素グルコセレブロシダーゼの欠損により特徴付けられる遺伝病 である。この酵素欠損は、体内の全ての細胞のリソソーム内のグルコセレブロシ ドの蓄積に導く。しかし、疾患の表現型は、この疾患の非常にまれなニューロパ シー形態を除いて、マクロファージにおいてのみ発現される。この疾患は、通常 肝臓および脾臓の肥大ならびに骨の傷害に導く(総説については、Science 256: 794,1992およびThe Metabolic Basis of Inherited Disease,第6版,Scriverら 、第2巻、1677頁を参照のこと)。 グルコセレブロシダーゼシンドビスベクターを以下のように構築する。簡潔に は、cDNAコード配列の5’にXhoI制限酵素部位を、そしてcDNAコード配列の3 ’にClaI制限酵素部位を含むグルコセレブロシダーゼ(GC)cDNAクローンをま ず生成する。このクローンは、NcoIでpMFG-GC(Ohashiら、PNAS 89 : 11332 : 1992)を消化し、末端をT4 DNAポリメラーゼおよびdNTPで平滑末端化し、XhoI リンカーと連結し、そして1%アガロースゲルからGC遺伝子を精製することによ って生成される。続いてGCフラグメントをXhoIで消化し、これもまたXhoIで消化 しておいた所望のシンドビスベクター(例えば、pKSSINBV)と連結する。シンドビ スグルコセレブロシダーゼベクターのパッケージングは、実施例7に記載のいず れかのパッケージング細胞株へのベクターRNAの導入(例えば、インビトロ転写R NAのトランスフェクション)により達成される。 シンドビス第VIII因子およびシンドビスグルコセレブロシダーゼベクターの両 方はまた、直接送達またはベクタープロデューサー細胞株の樹立における使用の ためのベクターの複製および異種遺伝子発現を開始するプラスミドDNAベースの ベクターに容易に変換し得る(実施例3および7を参照のこと)。 実施例18 シンドビスウイルスのベクターから発現される配列特異的アンチセンスまたはリ ボザイム分子によるヒト乳頭腫ウイルスの病原性の阻害 今日まで、上皮起源の細胞について顕著な向性を有する、ヒト乳頭腫ウイルス (HPV)の60より多い型が単離されそして特徴付けされている。HPV群の中には、ヒ トの肛門性器路を感染する実質的な数の型が存在する。この群のHPVは、肛門性 器路の良性または悪性の増殖に関連する型にさらに細分化され得る。 米国において1年につき13,000〜20,000の間の子宮頸ガンの死亡が存在する。 発展途上国において、子宮頸ガンは最も頻繁な悪性疾患であり、そして先進国に おいて子宮頸ガンは、乳ガン、肺ガン、子宮ガン、および卵巣ガンの後に等級づ けられる。肛門性器の増殖が増大しつつある健康の問題であるという見解を特に 支持する1つの統計は、性器いぼについての医学的相談が1966年における169,00 0件から1988年における2百万件より多くに増加したことである。 HPVを子宮頸部の増殖疾患の病原性に関連させるいくつかの方向の証拠が存在 する。型の1つの明確なサブセット、いわゆる「低危険性HPV」は子宮頸部の良 性の増殖状態に関連するが(例えば、HPV 6,11,43,44)、型の別のサブセット 、「高危険性HPV」は悪性状態に進行し得る病変に関連する(例えば、HPV 16,1 8,31,33,35 など)。子宮頸腫瘍のほぼ95%はHPVを含有し、HPV16または18型 のDNAがそれらの約70%において見出される。 若い性的に活性な女性の集団におけるHPVの頻度は非常に高いようである。事 実、454人の大学の女性の最近の研究において、213人、すなわち、46%はHPV陽 性であった。HPV陽性の群の中で、3%はHPV 6/11陽性であり、そして14%はHP V 16/18陽性であった。これらの454人の女性のうちで、33人(7.3%)は、細胞学 により決定したとろ、異常な子宮頸部増殖を有した。 HPVに標的化されるアンチセンスおよびリボザイム治療物質の設計に関して、 標的化すべきHPV型(すなわち、尖圭コンジロームに関連する型または悪性子宮 頸部増殖に関連する型)および標的化すべきHPV発現遺伝子(HPV遺伝子E2,E6、 またはE7を包含するが、これらに限定されない)に関して考慮すべき重要なパラ メーターが存在する。 一般に、HPV遺伝子の発現は時間的に2つの期に定義される。すなわち、ウイ ルスDNA複製の前に発現される初期(E)遺伝子、およびウイルスDNA複製の後に 発現される後期(L)遺伝子である。7つの初期の酵素HPV遺伝子、および2つ の後期の構造HPV遺伝子が存在する。 上に示した議論に基づいて、ウイルスE2遺伝子を標的化する、HPV 6/11群に 対するアンチセンス/リボザイム治療物を構築し得る。E2タンパク質の発現の阻 害によってウイルスの組込みを駆動する機構により、E2遺伝子標的は、HPV 16/1 8群に関して不確かであることがあり得る可能性があるようである。従って、HPV 16/18型中のE6/E7遺伝子を直接標的化すべきであるようである。 HPV 16型E6およびE7のRNAに対して特異的なシンドビスウイルスのベクター( 実施例2に記載)の中へのアンチセンスおよびリボザイム治療物の構築を以下に 記載する。HPVのアンチセンスおよびリボザイム部分の挿入は、シンドビスベク ターのClaIおよびXbaI部位の間である。 A.HPV 16 E6/E7 アンチセンス治療物の構築 HPV16ウイルスゲノムクローン、pHPV−16(ATCC No.45113)を、ウイルスE6/E7 遺伝子からの特定の配列の増幅のためのPCR反応におけるテンプレートとして使 用する。HPV 16アンチセンス部分をまずプラスミドベクターpKS II+の中に挿入 する;プラスミドベクターからのアンチセンス治療物の取り出しおよび種々のシ ンドビスベクター骨格中への挿入は、唯一のアンチセンス部分の末端のClaIお よびXbaI制限エンドヌクレアーゼ部位を介して達成される。HPV 16 E6/E7遺伝 子の一部分の増幅は、以下に示すプライマーの対を使用して達成される: 正方向プライマー(緩衝配列/XbaI部位/HPV 16ヌクレオチド201-222): TATATTCTAGAGCAAGCAACAGTTACTGCGACG(配列番号110) 逆方向プライマー(緩衝配列/ClaI部位/HPV 16ヌクレオチド759-738): TATATATCGATCCGAAGCGTAGAGTCACACTTG (配列番号111) HPV 16 E6/E7相補的配列に加えて、両方のプライマーはPCRアンプリコン産物 の効率よい酵素消化のためにそれらの5’末端に5ヌクレオチドの「緩衝配列」 を含有する。上に示すプライマーを使用するHPV 16アンプリコンの生成は、実施 例4に記載するPCRプロトコルを使用して達成される。感染子宮頸部上皮中のE6 /E7mRNAは3つの形態、すなわち、スプライスされていないおよび2つのスプラ イスされたオルタナティブ(E6*およびE6**)で存在し、1つはE6のヌクレオチ ド226-525が成熟メッセージ中に存在しないことが以前に示された(Smotkinら、J .Virol 63 : 1441-1447,1989)。本明細書に記載するアンチセンス部分とHPV16 ゲノムとの間の相補性の領域は、ウイルスのヌクレオチド201-759である。従っ て、アンチセンス部分はE6/E7のスプライスされていないメッセージおよびスプ ライスされたE6*およびE6**のスプライスされたメッセージに結合しそしてそれ らの翻訳を阻害することができる。 HPV 16 E6/E7の580bpのアンプリコン産物をまず「GENECLEAN」(Bio 101、San Diego、CA)で精製し、制限酵素ClaIおよびXbaIで消化し、そして1%アガロ ース/TBEゲル上で電気泳動する。次いで、568bpのバンドをゲルから切り出し、 DNAを「GENECLEAN」で精製し、そしてClaIおよびXbaIでの消化、CIAPでの処理 、および「GENECLEAN」での処理により調製されるpKS II+プラスミドの中に連結 する。このプラスミドをpKSaHPV16E6/E7と称する。 B.HPV 16 E6/E7 ヘアピンリボザイム治療物の構築 HPV 16のE6およびE7タンパク質の発現を効率よく阻害するために、E6 mRNAに 対する標的の特異性を有するヘアピンリボザイム(HRBZ)を構築する。HPV 16リ ボザイム部分をまずプラスミドベクターpKS II+の中に挿入する;プラスミドベ クターからのリボザイム治療物の取り出しおよび種々のシンドビスベクター骨格 中への挿入は、唯一のリボザイム部分の末端のClaIおよびXbaI制限エンドヌク レアーゼ部位を介して達成される。 HRBZは下に示すHPV 16 E6 RNA(ヌクレオチド414-431)に対して相同性である: TTAACTGTCAAAAGCCAC (配列番号112) HRBZは、TCTCヘアピンリボザイムループ5基質モチーフ(上に下線で示す)中 のT残基の後で切断するように設計される。切断後、HRBZはリサイクルされ、そ して他のスプライスされていないE6/E7 mRNAまたはE6*のスプライスされたmRNA 分子にハイブリダイズし、そしてそれを切断し得る。 以前定義された二本鎖HRBZ(Hampelら、Nucleic Acids Research 18 : 299-304 ,1990)(これは、4塩基「テトラループ」3および延長したヘリックス4を含 有し、上に示したHPV 16 E6 RNAに対する特異性を有する)を化学的に合成し、 それらはそれぞれ、ClaIおよびXbaI部位を5’および3’末端の両方に含む。 化学的に合成されたHPV 16 E6 HRBZ鎖の配列を下に示す: HPV 16 E6 HRBZ、上部鎖(5’→3’): CGATGTGGCTTTTAGATGTTAAACCAGAGAAACACACGGACTTCGGT CCGTGGTATATTAGCTGGTAT (配列番号113) HPV 16 E6 HBRZ、下部鎖(5’→3’): CTAGATACCAGCTAATATACCACGGACCGAAGTCCGTGTGTTTCTCTGG TTTAACATCTAAAAGCCACAT (配列番号114) ClaIおよび XbaIの粘着末端を有する二本鎖HPV 16 E6特異的HRBZを形成する ために、等量のオリゴヌクレオチドを10mMのMg2+中で一緒に混合し、95℃で5分 間加熱し、次いで室温にゆっくり冷却して鎖をアニーリングさせる。 ClaIおよびXbaI粘着末端を有する二本鎖HPV 16 E6 HRBZをまずClaIおよびX baIでの消化、CIAPでの処理、および「GENECLEAN」での処理により調製されたp KS II+プラスミドベクター中に連結する。このプラスミドをpKSHPV16E6HRBZと称 する。 HPV 16アンチセンスおよびヘアピンリボザイム部分を、ClaIおよびXbaIでの 消化、アガロースの電気泳動および「GENECLEAN」での精製によりそれらのプラ スミドベクター、それぞれ、pKSaHPV16E6/E7およびpKSHPV16E6HRBZから遊離させ 、そしてClaIおよびXbaIでの消化およびCIAPでの処理により調製された、所望 の ベクター骨格中に挿入する。いくつかの可能なシンドビスベクター(そのいくつ かは下に示されており、そしてその詳細な構築は実施例2に記載されている)は 、HPV16アンチセンスおよびリボザイム治療物部分の挿入のために適切である: ベクター 機能的接合領域(+/-) pKSSINBV + pKSSINBVdlJR − pKSSINdlJRsjrc + pKSSINdlJRsjrPC + pKSSINdlJRsjrNP(7582-7601) + pKSSINdlJRsexjr + アンチセンスおよびリボザイム治療物はRNAのレベルで作動するので、これら の部分を含有するベクターが機能的接合領域を含有する必要はない。すなわち、 シンドビス構造タンパク質に相当する領域の翻訳は、サブゲノムRNAからのみ起 こる。しかし、アンチセンスおよびヘアピンリボザイム治療物の翻訳は問題では ないので、これらの部分はポジティブ鎖シンドビスゲノムベクターRNAのレベル からそれらの影響を発揮する。 他方において、反復用量を個体に投与することが望ましくあり得る;従って、 アンチセンスおよびヘアピン緩和剤が、アデノウイルスE3またはヒトサイトメガ ロウイルスH301遺伝子の下流に挿入され、これらは感染細胞におけるMHCクラス I分子の発現をダウンレギュレートする。アンチセンスおよびヘアピン緩和剤の 挿入は、以下に示す実施例3および4由来のベクター中、ClaIおよびXbaI部位 の間で達成される: ベクター 機能的接合領域(+/-) pKSSINdlJRsjrcAdE3 + pKSSINdlJRsjrcH301 + サブゲノムmRNAがこれらのベクター中で合成され、これはAd E3およびCMV H30 1遺伝子のための翻訳テンプレートとして作用する。従って、これらの構築物に おいて、機能的HPV 16アンチセンスおよびヘアピンリボザイム緩和剤は、サブゲ ノムおよびポジティブ鎖ゲノムの両方のシンドビスベクターRNAのレベルで存在 する。 さらに、HPV 16アンチセンスおよびヘアピンリボザイム緩和剤は、記載される シンドビスベクターの中に挿入された異種遺伝子の下流に挿入され得る。例えば 、HPV 16アンチセンスおよびヘアピンリボザイム緩和剤を、例えば、E6/E7また はL1タンパク質由来の、HPV 16の免疫原性エピトープをコードする異種遺伝子の 下流に挿入し得る。これらのベクターにおいて、免疫調節Ad E3またはCMV H301 遺伝子を含有させることは所望されない。 高および低危険性の両方のHPV群での感染の間のE6/E7遺伝子の発現が、子宮 頸部上皮の増殖のために必要とされる。試験したすべてのHPV型由来のHPV E7タ ンパク質は網膜芽細胞腫タンパク質と複合体を形成し、そしてHPV 16および18型 由来のE6タンパク質は細胞性p53タンパク質に結合しそしてそれを分解する。p53 および網膜芽細胞腫の細胞性遺伝子産物は、細胞の増殖制御に関与し、そしてこ れらのタンパク質の発現または機能の変更は冒された細胞における増殖制御を解 放し得る。従って、両方のHPV群に対するアンチセンスまたはリボザイム治療物 は、これらの遺伝子の一方または両方の発現を直接または究極的に減少するはず である。E6/E7遺伝子の発現は、ウイルスE2タンパク質によりトランス活性化さ れる。しかし、オルタナティブスプライシングストラテジーを利用することによ って、E2タンパク質はまたトランス−リプレッサーとして作用し得る。腫瘍形成 性HPV型の組込みはウイルスE2領域において起こり、そしてE2タンパク質の発現 を阻止する。腫瘍形成性HPV型による組込みは、子宮頸ガンの明白な誘導および /または維持において極めて重要な事象であるようである。この事象はE6/E7遺 伝子の構成的発現を生ずる。組込まれた状態において、E6/E7遺伝子の発現は感 染ケラチノサイト中に存在する因子によりトランス活性化される。E6/E7発現の 細胞性ケラチノサイト因子の活性化に応答するウイルスE2の制御機構の不活性化 は、ウイルスの組込みにおいて重要な事象であり得る。 HPV 16型E6およびE7 RNAに対して特異的なシンドビスウイルスベクター(実施 例2に記載)中へのアンチセンスおよびリボザイム治療物の構築を以下に記載す る。HPVアンチセンスおよびリボザイム部分の挿入は、シンドビスベクターのCla IおよびXbaI部位の間である。 C.HPV 16 E6/E7 アンチセンス治療物の構築 HPV 16ウイルスゲノムクローン、pHPV−16(ATCC番号45113)を、ウイルスE6/E 7遺伝子からの特定の配列の増幅のためのPCR反応におけるテンプレートとして使 用する。HPV 16アンチセンス部分をまずプラスミドベクター pKS II+中に挿入す る;プラスミドベクターからのアンチセンス治療物の除去および種々のシンドビ スベクター骨格中への挿入を、唯一のアンチセンス部分末端のClaIおよび Xba I制限エンドヌクレアーゼ部位を介して達成する。HPV 16 E6/E7遺伝子の一部分 の増幅を、下記のプライマー対を用いて達成する: HPV 16正方向プライマー(緩衝配列/XbaI部位/HPV 16 ヌクレオチド201〜222) : 5'-TAT ATT CTA GAG CAA GCA ACA GTT ACT GCG ACG-3' (配列番号115) HPV 16逆方向プライマー(緩衝配列/ ClaI部位/HPV 16 ヌクレオチド759〜738 ): 5'-TAT ATA TCG ATC CGA AGC GTA GAG TCA CAC TTG-3' (配列番号116) HPV 16 E6/E7相補的配列に加えて、両方のプライマーはPCRアンプリコン産物 の効率的な酵素消化のためにそれらの5'末端に5ヌクレオチドの「緩衝配列」を 含有する。上記のプライマーを用いるHPV 16アンプリコンの生成は、実施例4に 記載のPCRプロトコルを使用して達成される。感染頸部上皮中のE6/E7mRNAは3つ の形態、すなわち、スプライスされていない形態および2つのスプライスされた オルタナティブ形態(E6*およびE6**)で存在する(ここでE6のヌクレオチド226 〜525は、成熟メッセージ中に存在しない)ことが知られている(Smotkinら、J. Virol 63 : 1441,1989)。アンチセンスとHPV 16 ゲノムとの間の相補性の領域 は、ウイルスのヌクレオチド201〜759である。従って、アンチセンス部分は、E6 /E7のスプライスされていないメッセージおよびスプライスされたE6*およびE6** メッセージに結合し、そしてそれらの翻訳を阻害し得る。 HPV 16 E6/E7の580bp のアンプリコン産物を,まず「GENECLEAN」(Bio 101、S an Diego CA)で精製し、制限酵素 ClaIおよび XbaIで消化し、そして1%ア ガロース/TBE ゲル電気泳動により単離する。次いで568 bpのバンドをゲルから 切り出し、GENECLEANTMで精製し、そして ClaIおよび XbaIでの消化により調 製し、CIAPで処理し、そしてGENECLEANTMで処理したpKS II+プラスミド中に連結 する。このプラスミドをpKSHPV16E6/E7と称する。 D.HPV 16 E6/E7 ヘアピンリボザイム治療物の構築 HPV 16 E6およびE7タンパク質の発現を効率よく阻害するために、E6 mRNAに対 する標的特異性を有するヘアピンリボザイム(HRBZ)を構築する。HPV 16リボザ イム部分を、まずプラスミドベクターpKS II+中に挿入する;プラスミドベクタ ーからのリボザイム治療物の除去および種々のシンドビスベクター骨格中への挿 入を、唯一のリボザイム部分末端のClaIおよびXbaI制限エンドヌクレアーゼ部 位を介して達成する。 HRBZは以下に示すHPV 16 E6 RNAヌクレオチド配列414〜431に相同である: 5'-TTA ACT GTC AAA AGC CAC-3’(配列番号117) HRBZは、TGTCヘアピンリボザイムループ5基質モチーフ(上に下線で示す)中 の最初のT残基の後で切断するように設計されている。切断後、HRBZはリサイク ルされ、そして別のスプライスされていないE6/E7 mRNAまたはE6*スプライスmRN A分子にハイブリダイズし、そしてそれを切断し得る。 二本鎖HRBZ(Hampelら、Nucleic Acids Research 18:299,1990)(これは4塩 基の「テトラループ」3および伸長したヘリックス4を含有し、上に示したHPV 16 E6 RNAに対する特異性を有する)を化学的に合成し、そしてそれはClaIおよ び XbaI部位を、それぞれ5'および3'末端に含む。化学的に合成されたHPV 16 E 6 HRBZ鎖の配列を以下に示す: HPV 16 E6 HRBZ、センス鎖: 5'- CGA TGT GGC TTT TAG ATG TTA AAC CAG AGA AAC ACA CGG ACT TCG GTC CGT GGT ATA TTA GCT GGT AT-3' (配列番号118) HPV 16 E6 HBRZ、アンチセンス鎖: 5'- CTA GAT ACC AGC TAA TAT ACC ACG GAC CGA AGT CCG TGT GTT TCT CTG GTT TAA CAT CTA AAA GCC ACA T-3' (配列番号119) ClaIおよび XbaI粘着末端を有する二本鎖HPV 16 E6特異的HRBZを形成するた めに、等量のオリゴヌクレオチドを10mM MgCl2中で混合し、95℃で5分間加熱し 、次いで室温にゆっくり冷却して鎖をアニーリングさせる。 ClaIおよび XbaI粘着末端を有する二本鎖HPV 16 E6 HRBZを、pKS II+プラス ミドベクター中に連結する。pKS II+ベクターをまずClaIおよびXbaIで消化し 、CIAPで処理し、そして連結前にGENECLEANTMで精製する。このプラスミドをpKS HPV16E6HRBZと称する。 HPV 16アンチセンスおよびヘアピンリボザイム部分を、それらのプラスミドベ クター、それぞれ、pKSaHPV16E6/E7およびpKSHPV16E6HRBZから ClaIおよび Xba Iでの消化により遊離させ、アガロースゲル電気泳動により単離し、そしてGENE CLEANTMを用いて精製する。次いで、それらを所望のベクター骨格中に連結する 。ベクターの骨格を、ClaIおよび XbaIでの消化により調製し、そしてCIAPで 処理する。いくつかの可能なシンドビスベクターが、HPV 16アンチセンスおよび リボザイム治療物部分の挿入のために適切である。実施例2から、これらのベク ターのいくつかを以下に示す: ベクター 機能的接合領域(+/-) pKSSINBV + pKSSINBVdlJR − pKSNdlJRsjrc + pKSNdlJRsjrPC + pKSSINdlJRsjrNP(7,582-7,601) + pKSSINdlJRsexjr + アンチセンスおよびリボザイム治療物はRNAレベルで作動するので、これらの 部分を含有するベクターが、機能的接合領域をも含有する必要はない。詳細には 、シンドビス構造タンパク質に対応する領域の翻訳は、サブゲノムRNAからのみ 生じる。しかし、アンチセンスおよびヘアピンリボザイム治療物の翻訳は問題で はないので、これらの部分はポジティブ鎖シンドビスゲノムベクターRNAのレベ ルからそれらの影響を発揮する。 他方において、反復用量を個体に投与することが望ましくあり得る;従って、 アンチセンスおよびヘアピン緩和剤は、アデノウイルスE3またはヒトサイトメガ ロウイルスH301遺伝子の下流に挿入される。(E3および有301は、感染細胞にお いてMHCクラスI分子の発現をダウンレギュレーションする。)アンチセンスお よびヘアピン緩和剤の挿入を、実施例3および4からのベクターにおいて、Cla I制限部位とXbaI制限部位との間で達成する: ベクター 機能的接合領域(+/-) pKSSINdlJRsjrcAdE3 + pKSSINdlJRsjrcH301 + サブゲノムmRNAはこれらのベクターにおいて合成され、Ad E3およびCMV H301 遺伝子のための翻訳テンプレートとして作用する。従って、これらの構築物にお いて、機能的HPV 16アンチセンスおよびヘアピンリボザイム緩和剤は、サブゲノ ムおよびポジティブ鎖ゲノムの両方のシンドビスベクターRNAのレベルで存在す る。 さらに、HPV 16アンチセンスおよびヘアピンリボザイム緩和剤は、記載される シンドビスベクター中に含有される異種遺伝子の下流に挿入され得る。例えば、 HPV 16アンチセンスおよびヘアピンリボザイム緩和剤は、HPV 16 E6/E7またはL1 タンパク質の免疫原性エピトープをコードする異種遺伝子の下流に挿入され得る 。これらのベクターにおいて、免疫調節性のAd E3またはCMV H301遺伝子を含有 させることは所望されない。 実施例19 シンドビスウイルスベクターから発現される配列特異的リボザイム分子による 感染細胞におけるヒトインターフェロンA発現の阻害 インターフェロン(IFN)は小さいタンパク質のファミリーからなり、これら のタンパク質は、MHC抗原の発現、細胞増殖制御を調節するいくつかの遺伝子の 発現、およびウイルス感染に対する耐性を包含する、哺乳動物細胞における広い 範囲の生物学的活性をもたらす(Pestkaら、Ann.Rev.Biochem.56:727-777,19 87)。IFNの3つのクラス、すなわち、α、βおよびγのうちで、IFN-α、すなわ ち、白血球インターフェロンは、感染細胞におけるウイルスの複製を制限する活 性を担う。 IFN-αの抗ウイルス効果は、感染細胞におけるウイルスの生活環を阻害する2 つの細胞性酵素の誘導に関連する。1つの酵素は二本鎖RNA依存性68kDaタンパク 質キナーゼであり、これはタンパク質合成開始因子eIF-2のaサブユニットのリ ン酸化を触媒する。IFN-αにより誘導される第2の酵素は2',5'-オリゴアデニレ ートシンセターゼ(2',5'-OAS)であり、これは二本鎖RNAの存在下で潜在的(late nt)エンドヌクレアーゼ、RNaseL(これはウイルスおよび細胞のRNAの分解を担 う)を活性化する(JohnstonおよびTorrence,Interferons 3:189-298,Friedma n(編)、Elsevier Science Publishers,B.V.,Amsterdam,.1984)。 それらの複製ストラテジーは二本鎖RNA中間体を含むので、RNAウイルスは特に インターフェロンの強いインデューサーである。シンドビスウイルスに関しては 、二本鎖RNA分子はポジティブ鎖およびネガティブ鎖の両方のゲノム長分子の複 製 の間、およびサブゲノムmRNAの転写の間に存在する。シンドビスウイルスでの細 胞の感染はインターフェロンの誘導を生ずることが実証されている(Saito,J.I nterferon Res.9:23-24,1989)。 治療緩和剤の長期の発現が所望される適用において、感染細胞におけるIFNの 発現は、シンドビスベクター中のIFN-α mRNAに対する特異性を有するヘアピン リボザイムの含有により阻害される。このように、IFN-α発現の阻害は、eIF-2 タンパク質キナーゼおよび2',5'-OASを包含する、細胞性タンパク質のカスケー ドの誘導を軽減し、これは感染細胞においてウイルスが複製し得る程度を阻害す る。ベクター感染細胞に標的化された免疫応答の誘導を伴わない治療緩和剤の延 長された発現は、抗原提示以外のすべての適用において所望され、そして例えば 、全身性タンパク質産生、アンチセンスおよびリボザイム、ならびにアクセサリ ー分子を包含する。 A.インターフェロンA mRNAに対する標的化された特異性を有するヘアピンリ ボザイムの構築 シンドビスベクターで感染された細胞におけるインターフェロンAタンパク質 の発現を効率的に阻害するために、インターフェロンA mRNAに対する標的特異 性を有するヘアピンリボザイム(HRBZ)を構築する。IFN-αリボザイム部分をま ずプラスミドベクター pKS II+(Stratagene,La Jolla,CA)中に挿入する;プラ スミドベクターからのリボザイム治療物の除去および種々のシンドビスベクター 骨格中への挿入を、唯一のリボザイム部分末端 ClaIおよびXbaI制限エンドヌ クレアーゼ部位を介して達成する。 HRBZは、以下に示すヒトインターフェロンα遺伝子IFN-α4bのヌクレオチド10 26〜1041に、そして配列決定されたすべてのIFN-a遺伝子(5、6、7、8、お よび14を包含するが、遺伝子16を包含しない(Hencoら、J.Mol.Biol.185 : 22 7-260,1985))に相同である: TCT CTG TCC TCC ATG A (配列番号120) HRBZはTGTCヘアピンリボザイムループ5基質モチーフ(上に下線で示す)中の T残基の後で切断するように設計されている。切断後、HRBZはリサイクルされ、 そして別のIFN-a mRNA 分子にハイブリダイズし、そしてそれを切断し得る。 既に定義された二本鎖HRBZ(Hampelら、Nucleic Acids Research 18:299-304, 1990)(これは、4塩基のテトラループ3および伸長されたヘリックス4を含有 し、上に示したIFN-a mRNAに対する特異性を有する)を化学的に合成し、そして これは、ClaIおよびXbaI部位を、それぞれ5'および3'末端に含む。化学的に合 成されたIFN-a HRBZ鎖の配列を以下に示す: IFN-a HRBZ 、センス鎖(5'から3'): TCG AGT CAT GGA GAG AGG AGA ACC AGA GAA ACA CAC GGA CT T CGG TCC GTG GTA TAT TAC CTG GAT (配列番号121) IFN-a HBRZ 、アンチセンス鎖(5'から3'): CGA TCC AGG TAA TAT ACC ACG GAC CGA AGT CCG TGT GTT TCT CTG GTT CTC CTC TCT CCA TGA C (配列番号122) ClaIおよびXbaI粘着末端を有する二本鎖IFN-a特異的HRBZを形成するために 、等量のオリゴヌクレオチドを10mMのMg2+中で一緒に混合し、95℃で5分間加熱 し、次いで室温にゆっくり冷却して鎖をアニーリングさせる。 ClaIおよびXbaI粘着末端を有する二本鎖IFN-αHRBZを、まずpKS II+プラス ミドベクター中に連結する。pKS II+ベクターは、ClaIおよびXbaIでの消化、C IAPでの処理、および「GENECLEAN」での処理により調製される。このプラスミド はpKSIFNaHRBZとして知られる。 IFN-αヘアピンリボザイム部分を、pKSIFNaHRBZプラスミドから、ClaIおよび XbaIでの消化により遊離させ、2%Nu-Sieve/1%アガロース電気泳動および 「GENECLEAN」により精製し、そして所望のベクター骨格中へ挿入する。このベ クター骨格は、ClaIおよびXbaIでの消化、およびCIAPでの処理により調製され る。いくつかの可能なシンドビスベクター(それらのいくつかを以下に示し、そ してそれらの詳細な構築を実施例2、3、および4に記載する)は、IFN-aヘア ピンリボザイム部分の挿入のために適切である: ベクター 機能的接合領域(+/-) pKSSINBV + pKSSINBVdlJR − pKSSINdlJRsjrc + pKSSINdlJRsjrPC + pKSSINdlJRsjrNP(7582-7601) + pKSSINdlJRsexjr + pKSSINdlJRsjrcAdE3 + pKSSINdlJRsjrcH301 + リボザイム活性はRNAのレベルで作動するので、この領域が部分サブゲノムmRN Aとして発現される必要はない。しかし、機能的接合領域の下流に配置される場 合、合成されるリボザイムのレベルは、ずっと多くそしてIFN-αRNA標的の切断 においておそらくより有効である。 さらに、いくつかの適用(例えば、タンパク質の全身的発現)において、個体 への複数回用量の投与が必要とされる。これらの適用において、ベクター感染細 胞に標的化された免疫応答の誘導を伴わない治療緩和剤の延長された発現が所望 される。この配置において、IFN-aHRBZ部分は、アデノウイルスE3またはヒトサ イトメガロウイルスH301遺伝子(これらは感染細胞においてMHCクラスI分子の 発現をダウンレギュレーションする)の上流に挿入され得る。MHCクラスI発現 を調節する遺伝子の後に、連続的に、実施例5に記載の群の中から選択されるIR ESエレメント、および治療緩和剤が続く。ベクター接合領域と3'末端との間のベ クターの中に位置するマルチクローニング配列に沿っての、ヘアピンリボザイム 、Ad E3またはCMV H301、IRES、および問題の成分の異種遺伝子の順序付けられ た挿入は、成分の5'および3'末端の適切な制限酵素認識部位を用いる改変により 達 成される。これらの構築物において、機能的IFN-aヘアピンリボザイム緩和剤は 、サブゲノムおよびポジティブ鎖ゲノムの両方のシンドビスベクターRNAのレベ ルで存在する。 実施例20 サイトカイン、サイトカインレセプター、または薬物増強剤 (drug potentiator)を発現する組換えアルファウイルスベクター粒子または アルファウイルスプラスミドDNAベクターの投与によるヒトガンの エクスビボおよびインビボ処置 A.ベクター構築 1.γインターフェロン マウスγインターフェロンを、レトロウイルスベクタープラスミドpMuγ-IFN (Howardら、Ann.N.Y.Acad.Sci.716:167-187,1994)から、ClaIで消化し、 そしてその末端をクレノウ酵素およびdNTPにより平滑化することにより、サブク ローン化する。クレノウ酵素の熱失活の後、ベクターをXhoIで消化する。得られ るγインターフェロンのコード配列を含有する800 bpのフラグメントを、1%ア ガロースゲルから単離する。pKSSINBV(実施例3)をXhoIおよびStuIで消化し、 そしてベクターをGENE-CLEANTMにより精製し、そしてγインターフェロンインサ ートと連結する。得られるベクター構築物は、pKSSINMuγとして知られる。ヒト γインターフェロン遺伝子(Howardら、前出)を、同じストラテジーを用いてpK SSINBVに同様に挿入する。得られるベクター構築物はpKSSINHuγとして知られる 。次いで、インターフェロン発現シンドビスベクターを、シンドビスビリオン中 にパッケージングする。これは、実施例7に記載のように、これらのベクター由 来のRNAをパッケージング細胞株に導入することにより達成される。 マウスおよびヒトインターフェロン遺伝子をまた、pVGELVISSINBV-リンカー( 実施例3を参照のこと)中にもクローン化する。簡潔に記載すると、pVGELVISSI NBV-リンカーをまずAscIで消化し、そして末端をクレノウ酵素およびdNTPの添加 により平滑化する。クレノウを熱失活させ、次いでベクターをXhoIで消化する。 このベクターをGENE-CLEANTMにより精製し、そして上記のように調製したγイン ターフェロンインサートに連結する。得られるベクターを、それぞれpVGELVIS-M uγおよびpVGELVIS-Huγと記載する。 2.インターロイキン-2 ヒトIL-2遺伝子を、PCR増幅によりKT-3レトロウイルス骨格(Howardら、Ann N .Y.Acad.Sci.716:167-187,1994)中へクローン化する。IL-2遺伝子のための 供給源は、IL-2 cDNAを含有するpBR322に基づくプラスミド(ATCC#61391)であ る。cDNAを、実施例3に記載の標準的な3温度プロトコルを使用してPCR増幅す る。5'プライマーは、ATG開始コドンで始まる5'コード領域に相補的なhIL-2遺伝 子のセンス配列である。さらに、XhoI部位をプライマー配列の5'末端に組み入れ てある。 5'hIL-2(配列番号123) GCCTCGAGACAATGTACAGGATGCAACTCCTGTCT 3'プライマーは、TAA終止コドンで終結する3'コード領域に相補的なhIL-2遺伝 子のアンチセンス配列である。さらに、ClaI部位をプライマー配列の5'末端に組 み入れてある。 3'hIL-2(配列番号124) GAATCGATTTATCAAGTCAGTGTTGGAGATGATGCT PCRアンプリコンを1%アガロースゲルにおいて精製する。IL-2遺伝子をKT-3 レトロウイルス骨格中に入れるために、pMuγ-IFNをXhoIおよびClaIで消化して 、インターフェロン遺伝子を除去する。ホスファターゼでの処理の後、ベクター を1%アガロースゲル中で精製する。ベクターおよびIL-2インサートを、標準的 な手順を用いて連結および形質転換し、そして組換えクローンを制限酵素分析に よりスクリーニングする。得られるベクターをpKThIL-2と称する。 ヒトIL-2を、レトロウイルスベクターpKThIL2から、pKSSINBVベクター中に、 マウスγインターフェロンについて用いたストラテジーと同じストラテジーを用 いてサブクローン化する。得られるベクター構築物は、pKSSIN-huIL-2として知 られる。ヒトIL-2遺伝子をまた、γインターフェロン遺伝子について上記したよ うに、pVGELVISSINBV-リンカー中にもクローン化する。得られる構築物を、pVGE LVIS-IL-2と称する。 3.HSV-TK HSV-1チミジンキナーゼ遺伝子(HSV-TK)のコード領域および転写終結シグナ ルを、pBR322中にクローン化されたプラスミド322TK(McKnightら、Nuc.Acids Res.8:5949,1980)(ATCC No.31344)由来の1.8 kb BglII/PvuIIフラグメン トとして単離する。末端を、クレノウ酵素およびdNTPの添加により平滑化する。 1.8 kbフラグメントを1%アガロースゲルで単離し、そしてpKS SINBV(これは 予めStuIで消化され、ホスファターゼ処理され、そしてゲル精製されている)に 連結する。この構築物はpKSSINBV-TKとして知られる。身体的遺伝子移入実験に おける使用のために、TK遺伝子をpVGELVIS-SINBV-リンカー中に同様にクローン 化する。ベクターを、PmlIでの消化、ホスファターゼ処理により調製し、そして 1%アガロースゲルで単離する。このベクター構築物はpVGELVISBV-TKとして知 られる。 B.投与 上記のベクター構築物のすべてを、動物への(直接的なまたは間接的なのいず れかの)投与のための、あるいは標的細胞を感染させるための適切な組換えアル ファウイルス粒子を産生するために、実施例7に記載のパッケージング細胞株と ともに使用し得る。このようなベクター構築物をまた、「裸の」DNA分子として 、種々のリポソーム処方物とのDNA複合体として、またはアルファウイルスDNAベ クター分子を含有するDNAリガンド複合体として(例えば、ポリリジンのような ポリカチオン化合物、レセプター特異的リガンド、またはソラレン不活性化ウイ ルス(例えば、センダイウイルスまたはアデノウイルス)とともに)、標的細胞 に直接導入し得る。 上記から、本発明の特定の実施態様が本明細書中に例示の目的のために記載さ れたが、種々の改変が本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得る ことが認識される。従って、本発明は添付の請求の範囲によって以外では限定さ れない。さらに、配列表は、米国特許法第1.821条(およびその次を参照)の規 定に従って本明細書中に含まれている。明細書、図面および配列表の間になんら かの不一致が存在すれば、明細書または図面は一次的文書に分割されるべきであ る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12Q 1/02 C12N 5/00 B // A61K 38/00 ADY A61K 37/02 ADY 38/45 ADU 37/52 ADU 38/55 ABB 37/64 ABB ABN ABN (C12N 7/00 C12R 1:92) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),AU,CA,JP,MX (72)発明者 イバネス,カルロス イー. アメリカ合衆国 カリフォルニア 92129, サンディエゴ,ミルポンド ウェイ 13592 (72)発明者 チャン,スティーブン エム.ダブリュ ー. アメリカ合衆国 カリフォルニア 92129, サンディエゴ,ビア カセラス 9838 (72)発明者 ジョリー,ダグラス ジェイ. アメリカ合衆国 カリフォルニア 92024, ルーカディア,ヒルクレスト ドライブ 277 (72)発明者 ドライバー,デイビッド エイ. アメリカ合衆国 カリフォルニア 92117, サンディエゴ,ビルトモア ストリート 5142 (72)発明者 ベリ,バーバラ エイ. アメリカ合衆国 カリフォルニア 92122, サンディエゴ,トスカーナ ウェイ ナン バー732 5295

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.アルファウイルスベクター構築物であって、cDNAからのインビトロにおける ウイルスRNAの合成を開始させ得る5'プロモーター、アルファウイルスの転写を 開始させ得る5'配列、アルファウイルス非構造タンパク質をコードするヌクレオ チド配列、サブゲノムフラグメントのウイルス転写が妨げられるように不活性化 されたウイルス接合領域、およびアルファウイルスRNAポリメラーゼ認識配列を 含む、アルファウイルスベクター構築物。 2.アルファウイルスベクター構築物であって、cDNAからのインビトロにおける ウイルスRNAの合成を開始させ得る5'プロモーター、アルファウイルスの転写を 開始させ得る5'配列、アルファウイルス非構造タンパク質をコードするヌクレオ チド配列、サブゲノムフラグメントのウイルス転写が減少されるように改変され たウイルス接合領域、およびアルファウイルスRNAポリメラーゼ認識配列を含む 、アルファウイルスベクター構築物。 3.アルファウイルスベクター構築物であって、cDNAからのインビトロにおける ウイルスRNAの合成を開始させ得る5'プロモーター、アルファウイルスの転写を 開始させ得る5'配列、アルファウイルス非構造タンパク質をコードするヌクレオ チド配列、サブゲノムフラグメントのウイルス転写が妨げられるように不活性化 された第1のウイルス接合領域、サブゲノムフラグメントのウイルス転写が減少 されるように改変された第2のウイルス接合領域、およびアルファウイルスRNA ポリメラーゼ認識配列を含む、アルファウイルスベクター構築物。 4.アルファウイルスcDNAベクター構築物であって、cDNAからのウイルスRNAの 合成を開始させ得る5'プロモーターおよびそれに続くアルファウイルスの転写を 開始させ得る5'配列、アルファウイルス非構造タンパク質をコードするヌクレオ チド配列、サブゲノムフラグメントのウイルス転写が妨げられるように不活性化 されているかまたは活性であるかのいずれかであるウイルス接合領域、アルファ ウイルスRNAポリメラーゼ認識配列、ならびに転写終結を制御する3'配列を含む 、アルファウイルスcDNAベクター構築物。 5.アルファウイルスcDNAベクター構築物であって、cDNAからのウイルスRNAの 合成を開始させ得る5'プロモーターおよびそれに続くアルファウイルスの転写を 開始させ得る5'配列、アルファウイルス非構造タンパク質をコードするヌクレオ チド配列、サブゲノムフラグメントのウイルス転写が減少されるように改変され たウイルス接合領域、アルファウイルスRNAポリメラーゼ認識配列、ならびに転 写終結を制御する3'配列を含む、アルファウイルスcDNAベクター構築物。 6.アルファウイルスcDNAベクター構築物であって、cDNAからのウイルスRNAの 合成を開始させ得るプロモーターおよびそれに続くアルファウイルスの転写を開 始させ得る5'配列、アルファウイルス非構造タンパク質をコードするヌクレオチ ド配列、サブゲノムフラグメントのウイルス転写が妨げられるように不活性化さ れた第1のウイルス接合領域およびそれに続くサブゲノムフラグメントのウイル ス転写が減少されるように改変された第2のウイルス接合領域、アルファウイル スRNAポリメラーゼ認識配列、ならびに転写終結を制御する3'配列を含む、アル ファウイルスcDNAベクター構築物。 7.さらにポリアデニル化配列を含む、請求項1〜6のいずれか1つに記載のベ クター構築物。 8.前記アルファウイルスが、アウラウイルス、フォートモーガンウイルス、ベ ネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス、ロス川ウイルス、セムリキ森林ウイルスおよび マヤロウイルスからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか1つに記載 のベクター。 9.前記アルファウイルスがシンドビスウイルスである、請求項1〜6のいずれ か1つに記載のベクター。 10.前記ベクター構築物が選択された異種配列を含む、請求項1〜6のいずれ か1つに記載のベクター。 11.前記ベクター構築物が100塩基より大きな異種ヌクレオチド配列を含む、 請求項10に記載のベクター。 12.前記ベクター構築物が8kbより大きな異種ヌクレオチド配列を含む、請求 項10に記載のベクター。 13.前記選択された異種配列が、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7 、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、γ-IFN、G-CSF、 およびGM-CSFからなる群から選択されるタンパク質をコードする配列である、請 求項10に記載のベクター。 14.前記選択された異種配列が、インフルエンザウイルス、RSウイルス、HPV 、HBV、HCV、EBV、HIV、HSV、FeLV、FIV、ハンタウイルス、HTLV I、HTLV IIお よびCMV からなる群から選択されるウイルスから得られる、請求項10に記載の ベクター。 15.前記選択された異種配列が、アンチセンス配列、非コードセンス配列、ま たはリボザイム配列である、請求項10に記載のベクター。 16.前記アンチセンス配列または非コードセンス配列が、インフルエンザウイ ルス、RSウイルス、HPV、HBV、HCV、EBV、HIV、HSVおよびCMV配列に相補的であ る配列からなる群から選択される、請求項15に記載のベクター。 17.前記ベクターがアルファウイルス構造タンパク質遺伝子を全く含んでいな い、請求項1〜6のいずれか1つに記載のベクター。 18.選択された異種配列が前記ウイルス接合領域の下流に位置する、請求項1 ,2、4、または5に記載のベクター。 19.選択された異種配列が前記第2のウイルス接合領域の下流に位置する、請 求項3または6に記載のベクター。 20.前記ウイルス接合領域に続いて位置するポリリンカーをさらに含む、請求 項18に記載のベクター。 21.前記ポリリンカーが野生型アルファウイルス制限エンドヌクレアーゼ認識 配列を含まない、請求項18に記載のベクター。 22.前記選択された異種配列が、アルファウイルス非構造タンパク質をコード するヌクレオチド配列内に位置する、請求項10に記載のベクター。 23.前記改変されたウイルス接合領域が、図3に示される、ヌクレオチド番号 7579からヌクレオチド7597までのヌクレオチド配列からなる、請求項1または4 に記載のベクター。 24.前記第2のウイルス接合領域の下流に位置するアデノウイルスE3遺伝子ま たはCMV H301遺伝子をさらに含む、請求項3または6に記載のベクター。 25.前記第1のウイルス接合領域と前記第2のウイルス接合領域との間に位置 するレトロウイルスパッケージング配列をさらに含む、請求項3または6に記載 のベクター。 26.機能的ウイルス接合領域を含まない、単離された組換えアルファウイルス ベクター。 27.サブゲノムフラグメントのウイルス転写の減少を生じる、単離された組換 えアルファウイルスベクター。 28.アルファウイルス構造タンパク質発現カセットであって、プロモーターお よび1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質遺伝子を含み、該プロモーター が該アルファウイルス構造タンパク質の発現を指示し得る、発現カセット。 29.前記アルファウイルス構造タンパク質が、アウラウイルス、フォートモー ガンウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス、ロス川ウイルス、セムリキ森 林ウイルス、シンドビスウイルス、およびマヤロウイルスからなる群から選択さ れるアルファウイルスに由来する、請求項28に記載の発現カセット。 30.前記アルファウイルス構造タンパク質が、アルファウイルスカプシドタン パク質である、請求項28に記載の発現カセット。 31.前記アルファウイルス構造タンパク質が、アルファウイルス構造タンパク 質6K、E3、E2、およびE1からなる群から選択される、請求項28に記載の発現カ セット。 32.アルファウイルス構造タンパク質発現カセットであって、プロモーター、 1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質、および異種リガンド配列を含み、 該プロモーターが該アルファウイルス構造タンパク質および該異種配列の発現を 指示し得る、発現カセット。 33.前記プロモーターが、メタロチオネイン、Drosophilaアクチン5C遠位、SV 40、熱ショックタンパク質65、熱ショックタンパク質70、Py、RSV,BK、JC、MuL V,MMTV、アルファウイルス接合領域、CMVおよびVA1 RNAからなる群から選択さ れる、請求項28〜32のいずれか1つに記載の発現カセット。 34.BHK細胞内への導入に際して、感染後少なくとも24時間生存可能である感 染細胞を産生する、組換えアルファウイルス粒子。 35.組換えアルファウイルス粒子であって、BHK細胞内への導入に際して、感 染後少なくとも24時間生存可能である感染細胞を産生し、該粒子がまたアルファ ウイルス粒子で感染された標的細胞において少なくとも1つの抗原またはその改 変された形態の発現を指示するベクター構築物も有しており、該抗原またはその 改変された形態が動物内で免疫応答を刺激し得る、組換えアルファウイルス粒子 。 36.前記発現された抗原が細胞媒介性免疫応答を惹起する、請求項35に記載 の組換え粒子。 37.前記発現された抗原がHLAクラスI拘束性免疫応答を惹起する、請求項3 5に記載の組換えアルファウイルス粒子。 38.前記発現された抗原が、さらにHLAクラスII拘束性免疫応答を惹起する、 請求項35に記載の組換えアルファウイルス。 39.組換えアルファウイルス粒子であって、アルファウイルス粒子で感染され た細胞において緩和剤の発現を指示し得るベクター構築物を有し、該緩和剤が病 原性物質の病原性に必要な機能を阻害し得る、組換えアルファウイルス粒子。 40.前記病原性物質がガン細胞またはガン促進成長因子である、請求項39に 記載の組換えアルファウイルス粒子。 41.病原性物質に関連した物質が感染された標的細胞に存在することに応答し て、該感染された標的細胞における毒性緩和剤の発現を指示する、請求項39に 記載の組換えアルファウイルス粒子。 42.前記緩和剤が病原性遺伝子の発現を選択的に阻害し得る、請求項39に記 載の組換えアルファウイルス粒子。 43.前記緩和剤が病原性物質により産生されたタンパク質の活性を阻害し得る 、請求項39に記載の組換えアルファウイルス粒子。 44.前記緩和剤が病原性に必要なRNA配列に相補的なアンチセンスRNAを含む、 請求項39に記載の組換えアルファウイルス粒子。 45.前記緩和剤が病原性に必要なRNA配列に相補的なセンスRNAを含む、請求項 39に記載の組換えアルファウイルス粒子。 46.前記緩和剤が病原性物質の欠損構造タンパク質を含み、該タンパク質が病 原性物質のアセンブリを阻害し得る、請求項39に記載の組換えアルファウイル ス粒子。 47.そうでなければ不活性である前駆体を病原性物質の活性インヒビターに活 性化し得る遺伝子産物の発現を指示する、請求項39に記載の組換えアルファウ イルス粒子。 48.ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子産物の発現を指示する、請求項39に記 載の組換えアルファウイルス粒子。 49.病原に必要とされるRNA分子に特異的なリボザイムとして機能するRNA分子 の発現を指示する、請求項39に記載の組換えアルファウイルス粒子。 50.アルファウイルス粒子で感染された標的細胞における免疫系の1つ以上の エレメントを抑制し得る遺伝子の発現を指示する、組換えアルファウイルス粒子 。 51.請求項34〜50のいずれか1つに記載の組換えアルファウイルス粒子で 感染された、哺乳動物細胞。 52.抗原に対する免疫応答を刺激する方法であって、アルファウイルスで感染 された標的細胞における少なくとも1つの抗原またはその改変された形態の発現 を指示する組換えアルファウイルス粒子で感受性標的細胞を感染させる工程を包 含し、該抗原またはその改変された形態が動物内で免疫応答を刺激し得る、方法 。 53.前記標的細胞がインビボにおいて感染される、請求項52に記載の方法。 54.前記発現される抗原がHLAクラスI拘束性免疫応答を惹起する、請求項5 2に記載の方法。 55.前記発現される抗原が、さらにHLAクラスII拘束性免疫応答を惹起する、 請求項52に記載の方法。 56.標的細胞を感染させる工程の前または後に、クラスIまたはクラスIIのMH Cタンパク質、あるいはその組合せ、あるいはCD3、ICAM-1、LFA-3、またはその アナログからなる群から選択されるタンパク質のいずれかをコードする核酸分子 を標的細胞に導入する工程を包含する、請求項52に記載の方法。 57.病原性物質を阻害する方法であって、アルファウイルス粒子で感染された 細胞における緩和剤の発現を指示する組換えアルファウイルス粒子で感受性標的 細胞を感染させる工程を包含し、該緩和剤が病原性に必要な病原性物質の機能を 阻害し得る、方法。 58.前記病原性物質がガン細胞またはガン促進成長因子である、請求項57に 記載の方法。 59.前記組換えアルファウイルス粒子が、病原性物質に関連した物質が感染さ れた標的細胞内に存在することに応答して、該感染された標的細胞における毒性 緩和剤の発現を指示する、請求項57に記載の方法。 60.前記緩和剤が、病原性に必要なRNA配列に相補的なアンチセンスRNA を含 む、請求項57に記載の方法。 61.前記緩和剤が、病原性に必要なRNA配列に相補的なセンスRNAを含む、請求 項57に記載の方法。 62.前記緩和剤が、病原性物質の欠損構造タンパク質を含み、該タンパク質が 病原性物質のアセンブリを阻害し得る、請求項57に記載の方法。 63.前記アルファウイルス粒子が、そうでなければ不活性な前駆体を病原性物 質の活性なインヒビターに活性化し得る遺伝子産物の発現を指示する、請求項5 7に記載の方法。 64.前記アルファウイルス粒子がヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子産物の発現 を指示する、請求項57に記載の方法。 65.前記アルファウイルス粒子が、病原に必要とされるRNA分子に特異的なリ ボザイムとして機能するRNA分子の発現を指示する、請求項57に記載の方法。 66.細胞に結合されたレセプターへの物質の結合を阻害する方法であって、ア ルファウイルス粒子で感染された細胞におけるブロッキングエレメントの発現を 指示する組換えアルファウイルス粒子で感受性標的細胞を感染させる工程を包含 し、該ブロッキングエレメントがレセプター/物質相互作用がブロックされるよ うにレセプターまたは物質のいずれかに結合し得る、方法。 67.請求項34〜50のいずれかに記載の組換えアルファウイルス粒子で感染 された、エクスビボ細胞。 68.レトロウイルス構築物を有する組換えアルファウイルス粒子で感染された 、エクスビボ細胞。 69.生理学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組合わせて、請求項34〜 50のいずれか1つに記載のアルファウイルス粒子を含む、薬学的組成物。 70.アルファウイルス粒子を産生する、パッケージング細胞株。 71.アルファウイルス粒子を産生する、哺乳動物パッケージング細胞株。 72.アルファウイルス粒子を産生する、非哺乳動物パッケージング細胞株。 73.アルファウイルス粒子を産生する、昆虫パッケージング細胞株。 74.前記昆虫パッケージング細胞が蚊パッケージング細胞である、請求項73 に記載のパッケージング細胞株。 75.前記パッケージング細胞株が、ベクター構築物の導入の際に、ヒト細胞を 感染し得るアルファウイルス粒子を産生する、請求項70〜74に記載のパッケ ージング細胞株。 76.前記パッケージング細胞株が、1つ以上の因子に応答してアルファウイル ス粒子を産生する、請求項70〜74に記載のパッケージング細胞株。 77.アルファウイルス阻害タンパク質が産生されない、請求項70〜74のい ずれか1つに記載のパッケージング細胞株。 78.アルファウイルスベクターのパッケージングおよび産生のために適切なレ トロウイルス由来プロデューサー細胞株であって、gag/polの発現を指示する発 現カセット、envの発現を指示する発現カセット、およびレトロウイルスパッケ ージング配列を含有するアルファウイルスcDNAベクター構築物を含む、細胞株。 79.アルファウイルスベクターのパッケージングおよび産生のために適切なVS V-G由来パッケージング細胞であって、VSV-Gの発現を指示する安定に組み込まれ た発現カセットを含む、細胞。 80.1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質の発現を指示する安定に組み 込まれた発現カセットをさらに含む、請求項79に記載のパッケージング細胞株 。 81.組換えアルファウイルス粒子を産生し得る、アルファウイルスプロデュー サー細胞株。 82.前記組換えアルファウイルス粒子がヒト細胞を感染し得る、請求項81に 記載のアルファウイルスプロデューサー細胞株。 83.前記プロデューサー細胞株が、1つ以上の因子に応答して組換えアルファ ウイルス粒子を産生する、請求項81に記載のアルファウイルスプロデューサー 細胞株。 84.前記プロデューサー細胞株が、該プロデューサー細胞株の分化状態に応答 してアルファウイルス粒子を産生する、請求項81に記載のアルファウイルスプ ロデューサー細胞株。 85.真核細胞重層ベクターイニシエーション系であって、cDNAからのRNAの5' 合成を開始し得るプロモーター、異種核酸配列を発現し得る、細胞において自律 的に複製し得る構築物、および転写終結を制御する3'配列を含み、ここで該真核 細胞重層ベクターイニシエーション系はアルファウイルス非構造タンパク質をコ ードする配列を含まない、真核細胞重層ベクターイニシエーション系。 86.前記自律的に複製し得る構築物が、前記プロモーターおよび前記転写終結 を制御する3'配列と逆方向にある、請求項85に記載の真核細胞重層ベクターイ ニシエーション系。 87.安定に組み込まれた請求項85または86に記載の真核細胞重層ベクター イニシエーション系を含有する、哺乳動物細胞。 88.真核細胞重層ベクターイニシエーション系であって、cDNAからのRNAの5' 合成を開始し得るプロモーター、異種核酸配列を発現し得る、細胞において自律 的に複製し得る構築物、および転写終結を制御する3'配列を含む、真核細胞重層 ベクターイニシエーション系。 89.真核細胞重層ベクターイニシエーション系であって、cDNAからのRNAの5' 合成を開始し得るDNAプロモーター、異種リボ核酸配列を発現し得る、細胞にお いて自律的に複製し得る構築物、および転写終結を制御する3'DNA配列を含む、 真核細胞重層ベクターイニシエーション系。 90.前記構築物がアルファウイルスベクター構築物である、請求項88または 89に記載の真核細胞重層ベクターイニシエーション系。 91.前記構築物が、ポリオウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス 、風疹ウイルス、黄熱病ウイルス、HCV、TGEV、IBV、MHV、BCV、パラインフルエ ンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス、インフル エンザウイルス、RSV、MoMLV、HIV、HTLV、デルタ型肝炎ウイルスおよびアスト ロ ウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来する、請求項88または89 に記載の真核細胞重層ベクターイニシエーション系。 92.前記プロモーターが、MoMLVプロモーター、メタロチオネインプロモータ ー、グルココルチコイドプロモーター、SV40プロモーター、およびCMVプロモー ターからなる群から選択される、請求項88または89に記載の真核細胞重層ベ クターイニシエーション系。 93.さらにポリアデニル化配列を含む、請求項88または89に記載の真核細 胞重層ベクターイニシエーション系。 94.前記選択された異種配列が、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7 、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、γ-IFN、G-CSF、 およびGM-CSFからなる群から選択されるタンパク質をコードする配列である、請 求項88または89に記載の真核細胞重層ベクターイニシエーション系。 95.前記選択された異種配列が、インフルエンザウイルス、RSウイルス、HPV 、HBV、HCV、EBV、HIV、HSV、FeLV、FIV、ハンタウイルス、HTLV I、HTLV IIお よびCMV からなる群から選択されるウイルスから得られる、請求項88または8 9に記載の真核細胞重層ベクターイニシエーション系。 96.前記選択された異種配列が、アンチセンス配列、非コードセンス配列、ま たはリボザイム配列である、請求項88または89に記載の真核細胞重層ベクタ ーイニシエーション系。 97.前記アンチセンス配列または非コードセンス配列が、インフルエンザウイ ルス、RSウイルス、HPV、HBV、HCV、EBV、HIV、HSVおよびCMV配列に相補的であ る配列からなる群から選択される、請求項88または89に記載の真核細胞重層 ベクターイニシエーション系。 98.温血動物に異種核酸配列を送達するための方法であって、該温血動物に、 請求項88または89に記載の真核細胞重層ベクターイニシエーション系を投与 する工程を包含する、方法。 99.血清中で不活性化に対して耐性である、組換えアルファウイルス粒子。 100.組換えアルファウイルス粒子を力価測定するための方法であって、以下 の工程: (a) 請求項88に記載の細胞を組換えアルファウイルス粒子で感染させる工程 ;および (b) 異種核酸配列の発現を測定し、その結果該力価が測定され得る工程、 を包含する、方法。
JP8519023A 1994-11-30 1995-11-30 組換えアルファウイルスベクター Pending JPH11504802A (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US34847294A 1994-11-30 1994-11-30
US08/348,472 1994-11-30
US37618495A 1995-01-18 1995-01-18
US08/376,184 1995-01-18
PCT/US1995/015490 WO1996017072A2 (en) 1994-11-30 1995-11-30 Recombinant alphavirus vectors

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11504802A true JPH11504802A (ja) 1999-05-11

Family

ID=26995739

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP8519023A Pending JPH11504802A (ja) 1994-11-30 1995-11-30 組換えアルファウイルスベクター

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11504802A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002541814A (ja) * 1999-04-14 2002-12-10 カイロン コーポレイション アルファウイルスに基づくベクター系を利用する免疫応答を生成するための組成物および方法
WO2010044365A1 (ja) * 2008-10-17 2010-04-22 国立大学法人東京海洋大学 鮮度測定用試薬キット
JP4790984B2 (ja) * 2001-09-06 2011-10-12 アルファヴァックス,インコーポレイテッド アルファウイルスレプリコンベクター系
JP2013544504A (ja) * 2010-10-11 2013-12-19 ノバルティス アーゲー 抗原送達プラットフォーム

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002541814A (ja) * 1999-04-14 2002-12-10 カイロン コーポレイション アルファウイルスに基づくベクター系を利用する免疫応答を生成するための組成物および方法
JP4637368B2 (ja) * 1999-04-14 2011-02-23 ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド アルファウイルスに基づくベクター系を利用する免疫応答を生成するための組成物および方法
JP4790984B2 (ja) * 2001-09-06 2011-10-12 アルファヴァックス,インコーポレイテッド アルファウイルスレプリコンベクター系
WO2010044365A1 (ja) * 2008-10-17 2010-04-22 国立大学法人東京海洋大学 鮮度測定用試薬キット
JP2016101176A (ja) * 2008-10-17 2016-06-02 国立大学法人東京海洋大学 鮮度測定用試薬キットの製造方法
JP5969731B2 (ja) * 2008-10-17 2016-08-17 国立大学法人東京海洋大学 鮮度測定用試薬キット
JP2013544504A (ja) * 2010-10-11 2013-12-19 ノバルティス アーゲー 抗原送達プラットフォーム
JP2017205126A (ja) * 2010-10-11 2017-11-24 ノバルティス アーゲー 抗原送達プラットフォーム

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4188947B2 (ja) 組換えアルファウイルスベクター
US7572628B2 (en) Eukaryotic layered vector initiation systems
JP4383530B2 (ja) 細胞巨大分子合成の阻害が減少したアルファウイルスベクター
US7811812B2 (en) Recombinant alphavirus-based vectors with reduced inhibition of cellular macromolecular synthesis
JPH11505128A (ja) キメラインテグラーゼタンパク質に媒介される真核生物ゲノム中へのベクター構築物の位置特異的組み込み
JPH11504802A (ja) 組換えアルファウイルスベクター
AU747650B2 (en) Recombinant alphavirus vectors
US20060121011A1 (en) Combination gene delivery vehicles
AU2934202A (en) Recombinant alphavirus vectors