JP3941963B2 - 全長第viii因子のレトロウイルス送達 - Google Patents

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Description

発明の技術分野
本発明は、レトロウイルス媒介遺伝子治療に関する。詳細には、本発明は、全長第VIII因子をコードする核酸構築物を患者に送達し得る組換えレトロウイルスベクター、そのようなレトロウイルスベクターを含む薬学的組成物、およびそれらを作製および使用する方法に関する。
発明の背景
脊椎動物細胞を遺伝的に操作するための多数の方法が存在する。特に興味深い方法は、種々のポリペプチド(例えば、エリスロポエチンおよび第VIII因子)の大量の生産を可能にするため、および種々の疾患(例えば、重篤なウイルス感染、ガン、および遺伝病)を処置するために哺乳動物細胞を操作するのに用いられ得る方法である。核酸分子を細胞に首尾良く導入するための1つの方法として、模範的な例であるレトロウイルス由来のベクターを含む、ウイルスベクターの使用が挙げられる。
レトロウイルスは、それらのゲノムがRNAを含むことを意味するRNAウイルスである。複製細胞への感染に際し、レトロウイルスゲノムはDNAへと逆転写され、次いでこれは二本鎖にされる。次いで、二本鎖DNAコピーは感染細胞の染色体中に安定的に組み込まれ、任意の他の遺伝子と同様に娘細胞により遺伝される「プロウイルス」を形成する。
野生型レトロウイルスゲノム(およびそれらのプロウイルスコピー)は、代表的には3つの遺伝子gag、pol、envを含み、これらの前にはパッケージングシグナル(φ)が存在し、そして2つの長末端反復配列(LTR)がどちらかの末端に隣接する(図1を参照のこと)。gag遺伝子は内部構造(ヌクレオカプシド)タンパク質をコードする。Polは、RNAゲノムを逆転写するRNA依存性DNAポリメラーゼをコードし、一方envはレトロウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする。5'および3'LTRは、レトロウイルスRNAの転写およびポリアデニル化を促進するために必要なcis作動性エレメントを含む。
5'LTRには、ゲノムの逆転写に必要な配列(tRNAプライマー結合部位)および粒子中へのレトロウイルスRNAの効率的なカプシド形成に必要な配列(φ配列)が隣接している。パッケージングシグナルの除去は、ゲノムRNAのカプシド形成(感染性のビリオンへのレトロウイルスRNAのパッケージング)を妨害するが、得られる変異体はなおもウイルスゲノム中にコードされる全てのタンパク質の合成を指示し得る。
レトロウイルスベクター(天然に存在するレトロウイルスの遺伝的に操作された形態)は、多くの重要な特質を有し、それには以下のようなものが挙げられる:(1)細胞中への遺伝物質(ベクターゲノム)の効率的な侵入;(2)標的細胞核への侵入の活性な、効率的な過程;(3)比較的高レベルの遺伝子発現;および(4)ベクター-標的細胞結合の制御および遺伝子発現の組織特異的な制御を通しての特定の細胞サブタイプへの標的化の可能性。例えば、目的の外来遺伝子が通常のレトロウイルスRNAの代わりにレトロウイルス中に取り込まれ得る。レトロウイルスが細胞へそのRNAを注入すると、その外来遺伝子もまたその細胞中へ導入され、そして次に、それがあたかもレトロウイルス自身であるかの如くに、宿主細胞DNA中に組み込まれる。その宿主内でのこの外来遺伝子の発現は、その宿主細胞による外来タンパク質の発現をもたらす。
レトロウイルスベクターおよびその様々な使用が、Mannら、(Cell 33:153,1983)、CaneおよびMulligan(Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 81:6349,1984)、Warnerら、(1991),AIDS Res. Hum. Retroviruses,第7巻,645頁、Jollyら(1986)、Mol. Cell. Biol.,第6巻,1141頁、1993年10月12日に出願された米国特許出願第08/136,739号、WO 93/10814、WO 93/15207、および1993年11月18日に出願された米国特許出願第08/155,994号を含む多数の出願に記載されている。レトロウイルスベクターの複製する脊椎動物細胞中への組み込み能は、それを遺伝子治療目的に対して、有用なものにした(Millerら、Methods in Enzymology 217:581,1993)。代表的に、遺伝子治療は、新しいまたは付加的な遺伝物質を(1)インビボの患者細胞、あるいは(2)取り出された患者細胞に添加し、そして引き続いて形質導入する工程を含み、そしてそれらは直ちに患者に再導入されるか、または再導入の前にエキソビボで拡大される。
血友病は重篤な血液凝固欠失により特徴付けられる遺伝病である。それ自体、遺伝子治療による処置を受容する。血友病Aでは、遺伝的欠損と関連したX染色体で第VIII因子(第X因子の活性化において、第IXa因子とともに補因子として作用する微量の血漿糖タンパク質)をコードする遺伝子が破壊されている。ヒトでは、第VIII因子遺伝子は2,351アミノ酸をコードしている。このタンパク質は、アミノ末端からカルボキシ末端へそれぞれA1、A2、B、A3、C1、およびC2と命名された6つのドメインを有し(Woodら、Nature 312:330,1984;Veharら、Nature 312:337,1984;およびTooleら、Nature 312:342,1984)、推定分子量は約280キロダルトン(kD)である。このタンパク質の活性化された凝固原形態では、980アミノ酸のBドメインは欠失される。さらに、その天然のタンパク質において、2つのポリペプチド鎖、Bドメインに隣接するaおよびbには2価のカルシウムカチオンが結合している。
血友病Aを引き起こす遺伝的失損は、10,000人の男性に約1人発症する。結果として起こる凝固欠失のために、この疾患を患う者は、小さな怪我による重篤な出血の発症、内出血、および関節症(血友病罹患の主因)へとつながる関節出血に苦しむ。第VIII因子の正常なレベルは、血漿で平均50〜200ng/mLの間である(Mannucci,P.M. in Practical Laboratory Hematology、Koepke,J.A.編、Churchill Livingstone, N.Y.、347頁〜371頁、1990);しかし軽度から中度の血友病Aを患う患者は代表的には、2〜60ng/mLより相当低い血漿レベルを有し、一方約2ng/mLより低いレベルは重篤な血友病をもたらす。
以前から、血友病Aに対する治療は、1000を越すドナーから多量にプールした血液製剤から精製されたヒト第VIII因子を反復投与することに関していた。しかし、第VIII因子タンパク質の不安定性のために、天然のタンパク質を用いて得られる薬学的産物は、高度に不純である(純度は重量で約0.04%(総タンパク質に対する第VIII因子)と見積もられる)。投与の頻繁さおよびそのような調製物から種々のヒト病原体を除去し得ないことにより、血友病Aを患う者の90%より多くが1980年代には、それらの療法の結果として、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した。HIV感染患者および他のHIV陰性血友病患者の多くはまた、同じ経路でB型肝炎に感染した。しかし、幸運にも、遺伝子工学における近年の進歩により、ヒト病原体の混入を含まない組換え形態のタンパク質が商業的に利用可能になった。しかし、この形態の治療は費用が嵩みそして長引く。さらに、米国における殆どの血友病A患者は、第VIII因子の維持療法を受けず、その代わりに外科手術のような出血の原因となり得る活動または事象の前に、あるいは自発性出血を処置するためにそのポリペプチドを与えられるだけである。興味深いことに、このことは、血友病関節症が代表的には1kg体重当たり24〜40IU、1週間に3回第VIII因子の予防的な量を早い年齢から投与することにより防がれ得ることを示す反対の証拠(despite evidence)である。そのような治療は、第VIII因子の濃度が正常の1%未満に落ちることを防いだ(Nillsonら、J.Internal Med. 232:23,1992)。これらの理由のために、連続的、長期間の治療的に有効な第VIII因子の発現レベルまたは量を可能にする、すなわち血友病Aに関連した凝固障害の重篤度を減少させるまたは除去するための遺伝子治療は、大いに有益である。
しかし、全長第VIII因子は、そのcDNAが約8,800塩基対(bp)の長さである遺伝子によりコードされる(Zatloukalら、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 91:5148,1994)。レトロウイルスゲノムは一般的に10,000よりも少ないヌクレオチドを含むので、約10,000よりも多いヌクレオチドが存在する場合、パッケージング効率は劇的に下がる。ほとんどの場合には、目的の遺伝子(所望の産物をコードする)を含むレトロウイルスベクターは一般に10kbを超えないので、これは問題ではない。しかし、第VIII因子cDNAは代表的な哺乳動物cDNAよりもはるかに大きいため、その全長cDNAが感染性のビリオン中に効率的に取り込まれ得るレトロウイルスベクター中に含まれ得、標的細胞に伝達され、そしてその中で発現され得るとは考えられそうもない。結果的に、現在までの、レトロウイルスベクター中へ第VIII因子cDNAを取り込ませるための成功した試みは、Zatloukalら、(上述)により開示されたように、その遺伝子の欠失された形態を含む。そのような欠失は、全長第VIII因子cDNA由来のものとは異なる核転写物を生じ得る。結果的に、短縮されたRNAは、異なってプロセスおよび輸送され得、得られるタンパク質も同様に異なり得る。実際、Tooleら(Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA, 83:5939,1986)は、Bドメイン欠失タンパク質が、全長タンパク質よりも容易に形質導入細胞中でプロセスされることを報告した。Hoebenら(Thrombosis and Haemostasis, 67(3):341,1992)は、Bドメインのほとんど全てを欠く第VIII因子コード領域およびネオマイシン耐性遺伝子を保有するレトロウイルスベクターを、単離したマウス骨髄細胞を形質導入するのに用いた場合、インビボでの第VIII因子発現は、前駆細胞の形質導入直後の初期転写であるにもかかわらず、mRNAレベルまたはタンパク質レベルのいずれにおいても、前駆細胞由来細胞中では検出され得なかったことを報告した。しかし、サザン分析は、薬物耐性細胞がそのベクターを含んでいることを示していた。
本発明の目的は、感染性レトロウイルス粒子中に効率的にパッケージされ得る全長第VIII因子cDNAを含む組換えレトロウイルスベクターを提供することである。そのようなレトロウイルス粒子は、インビボまたはエキソビボのいずれかで細胞を形質導入するために用いられ得る。そのような形質導入細胞から発現される第VIII因子は、正常に機能する第VIII因子遺伝子の発現産物と類似の様式でプロセスされ、そして輸送される。それ故、そのようなベクターを保有するレトロウイルス粒子は血友病Aの処置に有用である。
発明の要旨
簡潔に述べると、本発明は全長第VIII因子ポリペプチドの発現を指示するレトロウイルスベクター、そのようなベクターを含むレトロウイルス粒子、ならびにそれらを作製および使用する方法を提供する。本発明の1つの局面では、トランスフェクトされた宿主細胞中で全長第VIII因子をポリペプチドの発現を指示するレトロウイルスベクターが提供される。本発明のこの局面の種々の実施態様では、このレトロウイルスベクターは、MoMLV、GALV、FeLV、およびFIVからなる群から選択されるレトロウイルスに由来する。
別の実施態様は、全長第VIII因子ポリペプチドが、(ウラシル(「U」)が各チミジン(「T」)に置き換わることを除いて)配列番号1に記載の核酸配列、配列番号1に記載のヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、および遺伝コードの縮重がなければそのようなヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する核酸分子によりコードされるレトロウイルスベクターに関する。
別の実施態様では、そのようなレトロウイルスベクターは、レトロウイルスLTRプロモーター、SV40プロモーター、CMV MIEプロモーター、およびMPMVプロモーターからなる群から選択されるプロモーターを含み、ここでそのプロモーターは全長第VIII因子ポリペプチドをコードする核酸分子に作動可能に連結されている。好ましい実施態様では、そのレトロウイルスベクターは全長第VIII因子ポリペプチドをコードするMoMLVに由来するレトロウイルス骨格を含む。ここで全長第VIII因子ポリペプチドは、(ウラシル(「U」)が各チミジン(「T」)に置き換わることを除いて)配列番号1に記載の核酸配列;そのようなヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列;および遺伝コードの縮重がなければ上記ヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する核酸分子によりコードされる。
本発明の別の局面は、全長第VIII因子ポリペプチドの発現を指示するレトロウイルスベクターによりトランスフェクトまたは形質導入された宿主細胞に関する。1つの実施態様では、そのような宿主細胞は、全長第VIII因子ポリペプチドをコードするMoMLVに由来するレトロウイルス骨格を含むレトロウイルスベクターによりトランスフェクトまたは形質導入される。ここで全長第VIII因子ポリペプチドは、(ウラシル(「U」)が各チミジン(「T」)に置き換わることを除いて)配列番号1に記載の核酸配列;そのようなヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド;および遺伝コードの縮重がなければ前記ヌクレオチド配列のいくらかにハイブリダイズするヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する核酸分子によりコードされる。本発明のこの局面の1つのそのような実施態様では、宿主細胞はパッケージング細胞であり、そしてさらにレトロウイルス構造ポリペプチドをコードする1つ以上の核酸分子を含む。特に好ましいのは、そのレトロウイルス構造ポリペプチドがenv、pol、gagポリペプチドを含むパッケージング細胞である。
本発明のさらに別の局面では、全長第VIII因子ポリペプチドの発現を指示し得るレトロウイルスベクターを含むレトロウイルス粒子がまた本明細書中に提供される。本発明のこの局面の種々の実施態様は、アンホトロピック、エコトロピック、ポリトロピック、またはキセノトロピックのレトロウイルス粒子のいずれかであるレトロウイルス粒子を提供する。別の実施態様では、そのようなレトロウイルス粒子は、哺乳動物補体系(特にヒト補体系)による不活化に耐性である。
本発明のさらに別の実施態様はそのようなレトロウイルス粒子を作製する方法に関する。この方法は、全長第VIII因子の発現を指示するためのレトロウイルスベクターをコードする核酸分子でパッケージング細胞を形質導入およびトランスフェクトする工程、ならびにレトロウイルスベクターのコピーが生産されそして感染性レトロウイルス粒子中に取り込まれるような適切な条件下でパッケージング細胞を培養する工程を含む。
本発明のさらに別の局面では、レトロウイルスベクターで形質導入またはトランスフェクトされた宿主細胞中で全長第VIII因子ポリペプチドの発現を指示し得るレトロウイルスベクターを含むレトロウイルス粒子を含む薬学的組成物が提供される。1つの実施態様では、そのような組成物は凍結乾燥される。別の実施態様では、その薬学的組成物は本発明のレトロウイルス粒子および薬学的に受容可能な希釈剤を含む。本発明のなおもさらなる局面では、血友病を患う哺乳動物を処置するための方法が提供され、ここでこの哺乳動物は本発明に従って生産された治療的に有効量のレトロウイルスベクターを投与される。本発明のこの局面の好ましい実施態様では、処置されるべき動物はヒトであり、そして血友病Aを患っている。別の好ましい実施態様では、血友病Aを患うヒトは、治療的に有効量のレトロウイルス粒子(好ましくは薬学的に受容可能な希釈剤中にレトロウイルス粒子を含む薬学的組成物中の)をこの患者に投与することにより処置される。
本発明の別の実施態様は、全長第VIII因子ポリペプチドをコードする核酸分子を含むレトロウイルス粒子に関する。ここで全長第VIII因子ポリペプチドは、イヌ、ネコ、ウシ、サル、ネズミ、ヒツジ、トリ、ウマ、ブタ、ウサギ、ラット、およびヒトの全長第VIII因子からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
本発明のさらに別の局面では、そのようなプラスミドで形質導入またはトランスフェクトされた宿主細胞中で全長第VIII因子ポリペプチドの発現を指示するレトロウイルスベクターをコードする核酸分子を含むプラスミドが提供される。
本発明のさらに別の局面は、全長第VIII因子ポリペプチドのインビボでの産生方法に関する。ここで全長第VIII因子ポリペプチドの治療的に有効量の発現を指示し得るレトロウイルスベクターが患者の細胞へ送達される。この局面の好ましい実施態様では、そのレトロウイルスベクターは、レトロウイルスベクターを含むレトロウイルス粒子によって細胞に送達される。好ましい実施態様では、レトロウイルス粒子はレトロウイルスベクターの送達を患者の細胞の特定のサブセットに標的化する。特に好ましい細胞のサブセットとして、造血細胞、内皮細胞、肝細胞、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい造血細胞は骨髄または臍帯血由来の幹細胞である。そのような方法は、レトロウイルスベクターの細胞へのエキソビボまたはインビボ送達のいずれかを含む。本発明のレトロウイルスベクターのインビボ送達の特に好ましい方法として、非経口的投与および肺投与が挙げられる。本発明のこの局面の特に好ましい実施態様では、全長第VIII因子のインビボ生産は、レトロウイルスのプロウイルス形態からの全長第VIII因子ポリペプチドの安定的な発現から生じる。
本発明の別の局面は、全長第VIII因子ポリペプチドの発現を指示し得るレトロウイルスベクターでの形質導入後に、全長第VIII因子を安定的に発現する宿主細胞に関する。好ましい実施態様では、そのような宿主細胞はヒト起源である。
本発明のこれらおよび他の局面ならびに実施態様は、以下の詳細な説明および付随の図面を参照することにより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
図1は、全長第VIII因子をコードする2つのレトロウイルスベクターJW-2およびND-5模式図である。
図2は、ヒトの凝固経路を示す。
図3は、インビボでの第VIII因子のプロセッシングを示す。N末端(「N」)に19アミノ酸のリーダーペプチド(平行線の陰影を付した領域)を含む全長第VIII因子翻訳産物が示される。A1とA2ドメインとの間およびBとA3ドメインとの間の酸性領域は影で示される。切断点はアミノ酸番号により示される。トロンビンによる切断は「IIa」により示される。「h.c.」および「l.c.」は、それぞれ重鎖および軽鎖を示す。種々のボックス内の番号は、相対的分子量(kD)を表す。「PL」は「リン脂質」を意味する。
図4は、2つのグラフ、4Aおよび4Bを含む。グラフ4Aは、Coatestアッセイにより測定された初代ヒト線維芽細胞内での第VIII因子の発現を示す。サンプル1および2は非形質導入コントロールを表し、そしてサンプル3〜6は、それぞれHX/JW-2を含む0.44mL、0.133mL、0.400mL、および1.2mLの上清で形質導入した線維芽細胞からの発現レベルである。グラフ4BはCoatest検量線である。
用語の定義
以下の用語が本明細書中を通じて用いられる。他に示さない限り、これらの用語は以下のように定義される:
「第VIII因子」は、不活性前駆形態として血液中に見出される非酵素的補因子である。前駆体第VIII因子は、血漿プロテアーゼ(特にトロンビンおよび第IXa因子)による特異的部位での限定タンパク質分解によって、活性補因子第VIIIa因子に変換される。大部分の第VIII因子は、おそらく単鎖遺伝子産物の細胞内および細胞周囲でのプロセシングによって2本鎖ヘテロダイマーとして循環する。その2本の鎖は金属イオン依存的な様式で非共有結合的に会合する。
第VIII因子の「生物学的活性」は、生物学的な系またはそのインビトロ複写において、そのポリペプチドまたはそのフラグメントによりなされる機能または機能の組をいう。一般的に、生物学的活性は、エフェクターおよび補因子活性を含み得る。エフェクター活性は、第VIII因子またはそのフラグメントの他のタンパク質または細胞への結合を含む。エフェクター活性は、補因子活性を強化し得るか、または補因子活性に必要とされ得る。補因子活性は、第IXa因子(「テナーゼ」)による第X因子の活性化の増強を含み、そしておそらく活性化プロテインCによる第Va因子および第VIIIa因子の不活化の増強を含み得る。第VIII因子の生物学的活性は、第IXa因子および第X因子のための膜結合部位を、前者による後者の活性化のために適したコンホメーションで形成する能力、およびおそらく活性化プロテインCによる第Va因子または第VIIIa因子の不活性化を強化するためにプロテインSと相乗的に作用する第VIII因子前駆体のBドメインの能力によって特徴づけられ得る。これは、リン脂質、von Willebrand因子、または特異的細胞表面分子に結合する第IX因子または第X因子の活性化、およびトロンビン、第IXa因子、活性化プロテインC、または適切な条件化で他の特異的プロテアーゼに対する感受性の標準的なアッセイ、ならびに血友病Aを患う個体由来の血漿中の凝固欠損または活性化プロテイナーゼC耐性を患う個体中のプロトロンボティシン(prothromboticn)欠損を補正するアッセイを含む。
「第VIII因子cDNA分子」とは、全長第VIII因子ポリペプチドをコードする分子である。ヒト全長第VIII因子コード領域は7,056ヌクレオチドである。
「全長第VIII因子」ポリペプチドは、配列番号1に示したアミノ酸配列の少なくとも95%、あるいは2215アミノ酸を含むタンパク質をいう。また、この定義には、以下により詳細に考察されるように1つ以上のアミノ酸が、置換、欠失、または挿入されている。全長第VIII因子のアミノ酸配列の少なくとも95%、または2215アミノ酸を含む種々の第VIII因子アナログまたは改変形態が含まれる。任意のそのようなアナログは、第VIII因子の認識されている生物学的活性の少なくとも1つを有する。全長第VIII因子をコードする核酸とは、全長第VIII因子ポリペプチドをコードする核酸をいう。
「持続的な(persistent)」形質導入とは、所望の異種遺伝子を細胞にエピソーマル(染色体外)複製が可能な遺伝因子とともに導入することをいう。これは、宿主または受容細胞の染色体へのベクターの組み込みまたはベクターのプロウイルス形態なしに、明らかに安定な形質転換を導き得る。「安定な」形質転換とは、感染または形質導入細胞の染色体への所望の異種遺伝子の導入をいう。少なくともその遺伝子、および潜在的には全ベクターのほとんどまたは全てが挿入され、そしてその細胞のゲノムの永久的な成分となる。対照的に、「一過性の」とは、導入された遺伝物質が宿主細胞のゲノムに組み込まれないか、または複製されず、従って細胞分裂の間に遺伝的に受け渡されない状況をいう。
「ストリンジェントな条件」とは、相補的な核酸配列を有する核酸配列のアニーリングおよび安定化を促進するが、相補的な核酸分子のアニーリングおよび/または安定化を遅延させる核酸ハイブリダイゼーション条件である。当業者が理解するように、ハイブリダイゼーションに影響を与える因子として、とりわけ、核酸のサイズおよびヌクレオチド組成、温度、塩、イオン強度、pH、反応物質濃度、カオトロピック剤を含む他の分子の存在、およびハイブリダイゼーション時間の長さが挙げられる。
「事象-特異的プロモーター」とは、転写プロモーター/エンハンサーまたは座位規定エレメント、または上記のように遺伝子発現を調節する他のエレメントをいい、この転写活性は細胞刺激に応答して変化する。そのような事象特異的プロモーターの代表例として、チミジンキナーゼまたはチミジン酸シンターゼプロモーター、αまたはβインターフェロンプロモーターおよびホルモン(天然、合成、または他の非宿主生物由来のいずれか)の存在に応答するプロモーターが挙げられる。
「組織特異的プロモーター」とは、転写プロモーター/エンハンサーまたは座位規定エレメント、または上記のように遺伝子発現を調節する他のエレメントをいい、これらは限定された数の組織型において優先的に活性である。そのような組織特異的プロモーターの代表例として、PEPCKプロモーター、HER2/neuプロモーター、カゼインプロモーター、IgGプロモーター、絨毛性胚抗原(Chorionic Embryonic Antigen)プロモーター、エラスターゼプロモーター、ポルホビリノーゲンデアミナーゼプロモーター、インスリンプロモーター、成長ホルモン因子プロモーター、チロシンヒドロキシラーゼプロモーター、アルブミンプロモーター、α-フェトプロテインプロモーター、アセチルコリンレセプタープロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、αまたはβグロビンプロモーター、T細胞レセプタープロモーター、またはアステオカルシンプロモーターが挙げられる。
「形質導入」は、複製欠損、組換え型レトロウイルス粒子と細胞レセプターとの会合、それに続く粒子により運搬される核酸の細胞への導入を含む。「トランスフェクション」とは、レトロウイルス粒子を用いない物理的遺伝子移入の方法をいう。
「独特の核酸フラグメント」は、別の核酸分子中に存在することが知られていない連続するヌクレオチド配列を含むものである。独特のフラグメントは、第VIII因子コード領域中に見出される特定のヌクレオチド配列を選択する工程、およびそのような配列を、FASTATM(Genetics Computer Group, Madison, WI)およびBLAST(NCBI)のような公的に利用可能なコンピューターアルゴリズムを用いてGenbank(National Center for Biotechnology Information[NCBI]、European Molecular Biology Library[EMBL]、およびGeneSeqTM(Intelligenetics, Inc., Mountain View, CA)から利用可能)を含む種々のヌクレオチド配列データベースに見出されるものと比較することにより同定され得る。
「ベクター構築物」、「レトロウイルスベクター」、「組換えベクター」、および「組換えレトロウイルスベクター」は、全長第VIII因子遺伝子の発現を指示し得る核酸構築物をいう。このレトロウイルスベクターは、少なくとも1つの転写プロモーター/エンハンサーまたは座位を限定するエレメント(単数または複数)、あるいは選択的スプライシング、核RNA輸送、メッセンジャーの翻訳後修飾、またはタンパク質の転写後修飾のような他の手段による遺伝子発現を調節する他のエレメントを含むにべきである。さらに、レトロウイルスベクターは、全長第VIII因子遺伝子の存在下で転写された場合、それらに作動可能に連結され、そして翻訳開始配列として作用する核酸分子を含むべきである。そのようなベクター構築物はまた、パッケージングシグナル、長末端反復配列(LTR)、またはそれらの一部、ならびに用いられるレトロウイルスに適切な正鎖プライマーおよび負鎖プライマー結合部位を含み得る(これらがまだレトロウイルスベクター中に存在していない場合)。必要に応じて、そのベクター構築物はまた、ポリアデニル化を指示するシグナル、ならびに1つ以上の制限部位および翻訳終結配列を含み得る。例えば、そのようなベクターは、代表的には5'LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2鎖DNA合成の起点、および3'LTRまたはそれらの一部を含む。そのようなベクターから全長第VIII因子ポリペプチドを発現させるために、全長第VIII因子コード領域がまた含まれ得る。
本発明の多数の局面および利点が、本発明の実施の説明を提供する以下の詳細な説明を考慮することで当業者に明らかとなる。
発明の詳細な説明
本発明は、全長第VIII因子をコードする核酸分子を含むレトロウイルスベクターが感染性レトロウイルス粒子中に効率的にパッケージされ得、かつそのようなベクターでインビボで形質導入された細胞が生物学的に活性な第VIII因子を産生するという予期しない発見に基づいている。結果として、全長第VIII因子をコードするレトロウイルスベクターは遺伝子治療法の目的に用いられ得る。このようなレトロウイルスベクターのより安全な記載、それらの産生およびパッケージング、およびそれらの使用が以下に提供される。
試験されたヒトおよび他の哺乳動物中で、第VIII因子遺伝子は第X染色体上に位置し、そして約186kb(キロベース)より多くにわたっていることが知られている。この遺伝子の転写は、その全長ポリペプチドをコードする約8,800ヌクレオチドのmRNAの最終的産生を生じる。第VIII因子コード領域のヌクレオチド配列は配列番号1に示され、そして種々の場所で刊行されている。例えば、Woodら(Nature, 312:330、1984;米国特許第4,965,199号)を参照のこと。このコード領域は、翻訳停止コドンTGAを除く5'および3'非翻訳配列を除外すれば、7,056ヌクレオチドにわたる。生物学的に活性な全長第VIII因子をコードする本配列の対立遺伝子変異体が存在するようであり、そしてまた本発明の実施に用いられ得る。このような対立遺伝子変異体は、核酸レベルでのみ検出可能な、すなわち保存的核酸置換に起因する差異を含み得る。他方、それらは、全体配列中の1つまたはそれ以上のアミノ酸の差異により、すなわち1つまたはそれ以上のアミノ酸の欠失、挿入、置換、または逆位により顕示され得る。しかし、配列番号1のヌクレオチドの約95%(数により)未満を含むこのような変異体はない。
インビボにおいて、第VIII因子の主要産生部位は肝臓であると考えられているが、第VIII因子のmRNAはまた、脾臓、腎臓、およびリンパ節でも検出されている[Whiteら、Blood, 73:1, 1989]。しかし、このタンパク質を通常発現しない他の型の細胞(主要血管系の平滑筋細胞を含む)が、このポリペプチドを発現し得る[Powellら、FEBS Letters, 303(2, 3):173,1992]。結果として、造血細胞が、特に魅力的な遺伝子治療の標的である[Hoebenら、前掲]。
天然のヒト全長第VIII因子は、2351のアミノ酸を含有し、リーダーペプチドとして機能し、後に切断されるN末端の19残基を有する熱不安定な単鎖糖タンパク質である。残る2332残基は、以下のように整列した、6つの異なったドメインを含む:A1-A2-B-A3-C1-C2。Aドメイン(それぞれ約330アミノ酸の長さ)は、第V因子および血漿銅結合タンパク質セルロプラスミンと相同性を共有する。同様に、2つのCドメイン(それぞれ約150アミノ酸)は、第V因子および他のリン脂質結合タンパク質のドメインに相同的である。Bドメインは、前凝固活性に必要ではないけれども、N結合グリコシル化のための25の潜在的部位(Asn-X-Ser/Thr)のうち19を含む。分泌前の細胞内プロセッシングの間に、このポリペプチドは残基1313および残基1648の後ろで切断され、重鎖(「a」)および軽鎖(「b」)をそれぞれ生じる。a鎖の観察された相対分子量は、SDS-PAGEにより測定したとき、約200kDであり、そしてb鎖の相対分子量は約80kDである。次いで、この2つの鎖は、2価金属イオンの周りに非共有結合複合体に会合する。
プロセッシングの間に、第VIII因子はまた、6つのTyr残基(アミノ酸残基346、718、719、723、1664、および1680)上で硫酸化される。硫酸化は、完全な機能活性には必要であるが、合成または分泌には必要ではない(Pittmanら、Biochemistry, 31:3315,1992)。Huttnerら、Mol. Cell. Biol., 6:97,1988は、全長第VIII因子中の7つの潜在的硫酸化部位に相当する、チロシン硫酸化のためのコンセンサス配列を提唱した。トロンビンと相互作用することが知られる多くのタンパク質(例えば、ヒルジン、フィブリノーゲン、ヘパリン補因子II、ウシ第X因子、ビトロネクチン、第V因子、および第VIII因子)は、1つまたはそれ以上の硫酸化チロシン残基を有する。ヒルジンにおいては、C末端領域のTyr硫酸化は、トロンビンのアニオンが結合する外部位(exosite)への結合親和性を増大させる(Rydelら、Science,249:277,1990;Niehrsら、J.Biol.Chem.,262:16467,1990)。第VIII因子中の硫酸化されるすべての部位は、トロンビン、第IXa因子、または活性化プロテインC切断部位に近似している。種々の技術、例えば、部位特異的変異誘発を用いて、より少ないまたは付加的な硫酸化部位を有する全長第VIII因子をコードする核酸が容易に生成され得る。
活性化の前に、血漿中を循環する第VIII因子は、それを安定化するvon Willebrand因子(vWf)に結合した。第VIII因子は約12時間の血漿半減期を有する。第VIII因子およびvWfは、非共有結合複合体として血漿中を循環する。vWfは血管障害の部位で血小板-血管相互作用の媒介に必要である(Saenkoら、J.Biol.Chem.,269(15):11601,1994)。第VIII因子重鎖は、最小ではA1-A2ドメインにより表され、そしてそれは隣接するBドメインのいくらかまたは全ての存在のために異質性を示す。軽鎖はA3-C1-C2ドメインに相当し、そしてvWf(Lollarら、J.Biol.Chem.,263:10451,1988;Hamerら、Eur.J.Biochem.,166:37,1987)、活性化プロテインC(Walkerら、J.Biol.Chem.,265:1484,1990)、およびリン脂質(Fosterら、Blood,75:1999,1990;Bloom,J.W. Thromb.Res.,48:439,1987)に結合するための部位を含む。vWFは、第VIII因子のリン脂質および血小板への結合を防ぐ(Fayら、J. Biol. Chem.,266:2172, 1991;Nesheimら、J. Biol. Chem., 266:17815, 1991)。トロンビンによる活性化に際して、第VIIIa因子はvWfから解離する(Lollarら、前掲)。C2ドメインのみを含み、そしてE.coli中で発現されたポリペプチドは、用量依存的様式でホスファチジルセリンまたはvWfに結合する。vWf結合部位はアミノ酸2303〜2332に位置し、その占拠はまた第VIII因子-ホスファチジルセリン結合を妨げることが知られている(Fosterら、前掲)。残基1673〜1689(軽鎖酸性領域の部分)および硫酸化Tyr1680はまた、残基1689でのトロンビン切断がvWf結合の損失に至るように、第VIII因子軽鎖へのvWfの高親和性結合に必要とされ得る(Leyteら、J.Biol.Chem.,266:740,1991)。
第VIII因子は、90kDの重鎖および73kDの軽鎖を生じる、2つのトロンビン切断部位(Arg739とSer740との間およびArg1689とSer1690との間)(Tooleら、前掲)を有する。第VIIIa因子は、潜在的に血小板または内皮細胞の表面上で、第X因子を活性化して第Xa因子を形成するために、(第XIa因子または第VIIa因子により活性化された)第IXa因子、カルシウムイオン、およびリン脂質とともに補因子として作用する。トロンビン切断は第VIII因子の前凝固活性を20倍から200倍に活性化する。次いで第VIIIa因子は種々のタンパク質分解活性により不活化される。第VIII因子プロセッシングの描写については図3を参照のこと。
配列番号2に示したアミノ酸配列を含む全長第VIII因子ポリペプチドをコードすることに加えて、本発明はまた、1つまたはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、または挿入されている全長第VIII因子のアナログをコードする組換えレトロウイルスベクターを予見する。このような改変は、発現の向上、安定性の強化、機能的特性の改変の提示、血清半減期の改変、およびクリアランス時間の改変、異なったパターンのグリコシル化などのために講じられ得る。代表例として、1つまたはそれ以上の硫酸化部位、グリコシル化部位などの付加、欠失、または移動が挙げられる。また、金属イオン結合またはトロンビン相互作用を向上させるため、安定性を増大させるために新規なジスルフィド架橋を導入させるなどのための変化はが操作され得る。本発明の好ましい実施態様では、全長第VIII因子アナログは、トロンビンによる活性化のために必要とされるそれらの配列を保持し得る。種々の全長第VIII因子アナログのトロンビン活性化は、天然の血漿由来第VIII因子トロンビン活性化のカイネティックスを、アナログのどれに対して比較することによりアッセイされ得る。活性化は、標準的な凝固アッセイ(実施例3、下記)、または他のアッセイ中で精製タンパク質を用いる無血漿テナーゼアッセイを用いて測定され得る。
全長第VIII因子ポリペプチドアナログをコードする核酸は、配列番号1に示したヌクレオチド配列と比較して1つまたはそれ以上のヌクレオチドが異なる。改変が、ランダム変異誘発、部位特異的変異誘発、または固相核酸合成を含む種々の技術により導入され得る。例えば、レトロウイルスベクター中に存在する全長第VIII因子遺伝子の全てまたは一部が、処理されるべき特定の種における発現に好まれる、1つまたはそれ以上の縮重コドン(すなわち、同一アミノ酸をコードする異なるコドン)を含むように改変され得る。特定の種において「発現に好ましいコドン」は、ランダムに期待され得るよりもより大きな割合で、その種の構造遺伝子を高度に発現することで示されるコドンである。いずれにしても、「好ましい」コドンは、遺伝コードの縮重性質のために置換されたコドンと同一のアミノ酸をコードする。コドン優先は、多くの種について知られ、そしてまだそのような優先がまだ決定されていない種において高度に発現されるタンパク質をコードする遺伝子におけるコドン利用の統計的分析により推定され得る。1つかまたはそれ以上の好ましいコドンが、部位特異的変異誘発、あるいは部分的または完全な合成的遺伝子合成を含む、種々の方法により核酸分子へ組み込まれ得る。あるいは、その遺伝子の全てまたは一部は、翻訳または転写後プロセッシングの効率を引き下げ得る二次構造の形成を最小限にするように改変され得る。例えば、Lynchら(Human Gene Therapy,4:259,1993)は、必須ではないBドメイン配列の一部または全部を欠く短縮形態の第VIII因子のトランスファーおよび発現用のレトロウイルスベクターの使用を研究した。発現およびウイルス力価は、他のcDNAを含む同一のレトロウイルス骨格由来の力価およびタンパク質産生よりも約100倍低かった。この減少は、他のベクターRNAに比べて、第VIII因子レトロウイルスベクターRNAの100倍より低い蓄積と相関している。分析によって、ベクターRNA蓄積を阻害し得る第VIII因子コード領域中の配列の存在が明らかとなった。そのような配列の1つまたはそれ以上が、周知の技術を用いて改変され得る。
組換えレトロウイルスベクターの生成
上記のように、本発明は組換えレトロウイルスベクターを含む組成物および方法を提供する。組換えレトロウイルスベクターの構築は、「組換えレトロウイルス」(本明細書によりその全体が参考として援用される米国特許出願第07/586,603号、1990年9月21日に出願、を参照のこと)と題された出願中により詳細に記述される。これらの組換えレトロウイルスベクターは、それらを適切なパッケージング細胞株に導入することにより形質導入コンピテントレトロウイルスベクター粒子を生じるために用いられ得る(本明細書によりその全体が参考として援用される米国特許出願第07/800,921号を参照のこと)。
最も広い用語において、本発明のレトロウイルスベクターは、転写プロモーター/エンハンサーまたは遺伝子座を規定するエレメント(単数または複数)、あるいは選択的スプライシング、核RNA輸送、メッセンジャーの翻訳後修飾、またはタンパク質の転写後修飾のような他の手段により遺伝子発現を制御する他のエレメントを含む。さらに、このレトロウイルスベクターは、全長第VIII因子遺伝子の存在下で転写された場合、それに作動可能に連結されそして翻訳開始配列として作用する核酸分子を含まなければならない。このようなベクター構築物はまた、パッケージングシグナル、長末端反復配列(LTR)またはその一部、および用いられるレトロウイルスに対する適切な+鎖および−鎖プライマー結合部位(もしもこれらがレトロウイルスベクター中にまだ存在しない場合)を含まなければならない。必要に応じて、このベクター構築物はまた、ポリアデニル化を指示するシグナル、ならびに1つまたはそれ以上の制限部位および翻訳停止配列を含み得る。例により、このようなベクターは、代表的には、5'LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2のDNA鎖合成の起点、および3'LTRまたはその一部を含む。このようなベクターは、1つまたはそれ以上の完全なgag、pol、またはenv遺伝子を含まず、それによりそれらを複製不能にする。さらに、選択マーカーをコードする核酸分子は、必要でも、好まれることもない。
好ましいレトロウイルスベクターは、gagをコードする配列の一部、好ましくはスプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を含む部分、全長第VIII因子コード領域から上流に隣接して配置されるように位置するスプライスアクセプター部位を含む。特に好ましい実施態様では、gag転写プロモーターは、それから開始したRNA転写物が5'gagUTRおよび全長第VIII因子コード領域を含むように配置される。全長第VIII因子コード領域の発現を制御するためのgagプロモーターの代わりとして、他の適切なプロモーター、下記のいくつかが用いられ得る。さらに、全長第VIII因子の発現レベルを増加するために交差エンハンサーが用いられ得る。
本発明の好ましい実施態様では、レトロウイルスベクター、特にモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)を基礎としたレトロウイルスベクターが用いられる。MoMLVは、マウス細胞以外には感染性に乏しいマウスレトロウイルスである。親縁のアンホトロピックN2ウイルスは、ヒト、マウス、および他の生物由来の細胞に感染する。本発明の実施において用いられ得る他の好ましいレトロウイルスとして、他のC型レトロウイルス(Weiss,RNA Tumor Viruses,第I巻および第II巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y.)由来の本発明に従うレトロウイルスーベクターがまた生成され得るけれども、テナガザル白血病ウイルス(GALV)(Todaroら、Virology,67:335,1975;Wilsonら、J.Vir.,63:2374,1989)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)(Talbattら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,86:5743,1984)、およびネコ白血病ウイルス(FeLV)(Leprevetteら、J.Vir.,50:884,1984;Elderら、J.Vir.,46:871,1983;Stewardら、J.Vir.,58:825,1986;Riedelら、J.Vir.,60:242,1986)が挙げられる。
同様に、必ずしもこれらに限定されないが、サイトメガロウイルス主要即時型プロモーター(CMV MIE)、初期および後期SV40プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、チミジンキナーゼまたはチミジレートシンターゼプロモーター、αまたはβインターフェロンプロモーター、事象または組織特異的プロモーターなどを含む他のプロモーターが用いられ得る。プロモーターは、所望により、強く発現を駆動するように、または比較的弱く発現を生ずるように選択され得る。当業者に理解されるように、多数のRNAポリメラーゼIIおよびRNAポリメラーゼIII依存的プロモーターが本発明を実施することに利用され得る。
別の好ましい実施態様では、レトロウイルスベクターはスプライスドナー(SD)部位およびスプライスアクセプター部位(SA)部位を含み、ここでSAは、全長第VIII因子コード領域(「遺伝子」)が組換えレトロウイルスベクター中に挿入される部位の上流に位置する。好ましい実施態様では、SDおよびSA部位は短い(すなわち400ヌクレオチド未満)のイントロン配列によって分離されている。このような配列は、RNA転写物を安定化するために供し得る。そのような安定化配列は、代表的には、全長第VIII因子のコード領域の5'に位置するSD-イントロン-SA構成を含む。
本発明の組換えレトロウイルスベクターはまた、好ましくは、全長第VIII因子コード領域を含む得られた転写物が、第VIII因子コード領域上流の5'gagUTR(非翻訳領域)をさらに含むように作動可能に配置させたgag領域由来の転写プロモーターを含む。
1つの実施態様では、全長第VIII因子遺伝子を含む組換えレトロウイルスベクターは、事象特異的プロモーターの活性化に際して、全長第VIII因子コード領域が発現されるように、事象特異的プロモーターの転写制御下にある。多数の事象特異的プロモーターが本発明の状況下で利用され得る。例えば、チミジンキナーゼまたはチミジレートシンターゼプロモーター(Merrill、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,86:4987,1989;Dengら、Mol.Cell.Biol.,9:4079,1989)のような細胞増殖(または他の細胞周期依存性);またはトランスフェリンレセプタープロモーター、これは、第VIII因子を血流中に優先的に発現および分泌されるこれらのプロモーターからの転写を活性化し得る因子を含む、急速に増殖する細胞(例えば造血細胞)中で主に転写的に活性である;細胞がウイルスにより感染される時に活性化されるαまたはβインターフェロンプロモーターのようなプロモーター(FanおよびManiatis,EMBO J., 8:101, 1989;Goodbournら、Cell,45:601,1986);およびホルモンの存在により活性化されるプロモーター、例えばエストロゲン応答性プロモーター。Tooheyら、Mol.Cell.Biol.,6:4526,1986を参照のこと、が含まれる。
別の実施態様では、組織特異的プロモーターの活性化に際して第VIII因子遺伝子が発現されるように、組織特異的プロモーターの転写制御下に全長第VIII因子コード領域を含む組換えレトロウイルスベクターが提供される。広範な種々の組織特異的プロモーターが本発明の状況内で利用され得る。そのようなプロモーターの代表例として以下のものが挙げられる:ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(「PEPCK」)(Hatzoglouら、J.Biol. Chem.,263:17798,1988;Benvenistyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,86:1118,1989;Vaulontら、Mol.Cell.Biol.,6:4409,1989)、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター(Felder,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,86:5903,1989)、ならびにアルブミンプロモーターおよびアルファフェトタンパク質プロモーター(Feuermanら、Mol.Cell.Biol.,9:4204,1989;CamperおよびTilghman,Genes Develop., 3:537,1989)のような肝臓特異的プロモーター;IgGプロモーターのようなB細胞特異的プロモーター;エラスターゼプロモーターのような膵臓腺房細胞特異的プロモーター(Swiftら、Genes Develop.,3:687,1989)およびインスリンプロモーターのような膵臓β細胞に特異的なプロモーター(Ohlssonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,85:4228,1988;Karlssonら、Mol.Cell.Biol.,9:823,1989);カゼインプロモーターのような乳房上皮特異的プロモーター(Dopplerら、Proc. Natl. Acad.Sci. USA,86:104,1989)およびホエー(wap)プロモーター;myo-D結合プロモーターのような骨格筋を調節するプロモーター(Burden, Nature, 341:716,1989;Weintraubら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:5434,1989);成長ホルモン因子プロモーターのような脳下垂体特異的なプロモーター(Ingrahamら、Cell,55:519,1988;Bodnerら、Cell,55:505,1988);チロシンヒドロキシラーゼプロモーターのようにメラノソームに特異的プロモーター;T細胞レセプタープロモーターのようなT細胞特異的プロモーター(Andersonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,85:3551,1988;WinotoおよびBaltimore、EMBO J., 8:29,1989);オステオカルシンプロモーターのような骨特異的プロモーター(Markoseら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,87:1701,1990;McDonnellら、Mol.Cell.Biol,9:3517,1989;Kernerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,86:4455,1989)、IL-2プロモーター、IL-2レセプタープロモーター、およびMHCクラスIIプロモーター、および造血組織特異的プロモーター、例えばポルフォビリノーゲンデアミナーゼプロモーターのような赤血球細胞中で活性な赤血球特異的転写プロモーター(Mignotteら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,86:6458,1990)、αまたはβグロビン特異的プロモーター(van Assendelftら、Cell,56:969,1989, Forresterら、Proc. Natl. Acad. Sci.USA,86:5439,1989)、vWfプロモーターのような内皮細胞特異的プロモーター、β-トロンボグロブリンのような巨核球特異的プロモーター、および他の多くの組織特異的プロモーター。
本発明に従うレトロウイルスベクターはまた、非LTRエンハンサーまたはプロモーター、例えば、第VIII因子遺伝子の発現を制御するために用いられる他のエレメントと作動可能に結びついたCMVまたはSV40エンハンサーを含み得る。さらに、3'LTRエンハンサーが欠失された(それにより宿主細胞ゲノムへの組み込みに際し5'LTRを不活化する)レトロウイルスベクターがまた本発明により意図される。遺伝子発現を制御する種々の他のエレメント(例えば、β-グロビン遺伝子およびCD2(T細胞マーカー)のような遺伝子座規定エレメントが挙げられる)がまた、本発明の状況内で利用され得る。さらに、スプライシング、核外輸送、および/または翻訳のレベルで発現を制御するエレメントがまた、レトロウイルスベクター内に含まれ得る。代表例として、β-グロビンイントロン配列、HIV-1由来のrevおよびrreエレメント、メイソン-パイツァ−サルウイルス(MPMV)由来構成的輸送エレメント(CTE)、rev陰性HIVプロウイルスクローンのrev非依存的複製を可能にする219ヌクレオチド配列、そしてコザック配列が挙げられる。Revタンパク質は、スプライスされていないおよび一度スプライスされたHIV RNA分子の核外輸送を可能にするように機能する。MPMVエレメントは、イントロン含有mRNAの核外輸送を可能にする。CTEエレメントは、MPMVヌクレオチド8022〜8240aにマップされる(Brayら、Biochemistry,91:1256,1994)。
好ましい実施態様において、本発明のレトロイウルスベクターは、そのプロモーターと全長第VIII因子コード領域との間の5'側に位置する「シス」エレメントを含む。このような「シス」エレメントは一般的に、短い介在する非コード配列によって、分離されたスプライスドナーおよびスプライスアクセプター部位を含む。特に好ましいシスエレメントは、以下の実施例1に記載のように、短いCMVイントロン配列により分離された、CMV由来のスプライスドナー部位および免疫グロブリン由来のスプライスアクセプターを含む。
本発明に記載のレトロウイルスベクターは、しばしばプラスミド(宿主細胞中への導入に際して、増幅、分離および染色体外での維持が可能である核酸分子)上にコードされる。当業者に理解されるように、あらゆる広範囲の既存のまたは新しいプラスミドが、本発明の実施に用いられ得る。そのようなプラスミドは複製起点を含み、そして代表的には組換え的使用を容易にするために1つまたはそれ以上のマルチプルクローニングサイトを含むように改変される。好ましくは、本発明に従って使用されるプラスミドは真核および原核宿主細胞の両方中で増幅し得る。
パッケージング細胞の生成
本発明の別の局面は、本明細書中に記載のレトロウイルスベクターを取り込むレトロウイルス粒子を産生する方法に関する。1つの実施態様において、ベクターはパッケージング細胞の使用を通して感染性ビリオン中にパッケージされる。簡潔に記載すると、パッケージング細胞は、その天然の遺伝的相補物(genetic complement)に加えて、レトロウイルスゲノムをパッケージするために必要なそれらのレトロウイルス構造ポリペプチドをコードする付加的核酸(組換え(すなわちレトロウイルスベクター)またはその他である)を含む細胞である。レトロウイルス粒子は、パッケージング細胞中で、形質導入能力のある、好ましくは複製欠損性のビリオンを作製するために、レトロウイルスゲノムをカプシドおよびエンベロープと結合させることにより、作製され得る。簡潔に記載すると、これらのおよび他のパッケージング細胞は、レトロウイルスベクターを感染性ビリオン中にパッケージするために必要とされる種々のポリペプチド(例えば、gag、pol、およびenv)をコードする、1つそして好ましくは2つまたはそれ以上の核酸分子を含む。レトロウイルスベクターをコードする核酸分子の導入に際し、パッケージング細胞は、感染性レトロウイルス粒子を産生する。本発明に従い、レトロウイルスベクターでトランスフェクトされた、感染性ビリオンを産生するパッケージング細胞株は、「プロデューサー」細胞株といわれる。
広範な種類の動物細胞(制限なしに、上皮細胞、線維芽細胞、肝細胞、内皮細胞、筋原細胞、星細胞、リンパ球などを含む)が、本発明のパッケージング細胞を調製するために利用され得る。優先的に、レトロウイルスベクター構築物に相同的であるゲノム配列、gag/pol発現カセット、およびenv発現カセットを欠く細胞株が、利用されるために、選択される。相同性を決定するための方法は、例えば、ハイブリダイゼーション分析(Martinら、Proc.Natl.Acad.Sci., USA, 78巻:4892〜96、1981;および米国特許出願第07/800,921号)により容易に行われ得る。
MoMLVベクターシステム(psi2、PA12、PA317)に用いられるほとんどの一般的なパッケージング細胞株(PCL)は、マウス細胞株由来である。しかし、マウス細胞株は、代表的にはヒトの治療的使用を意図するレトロウイルスを産生するための好ましい選択ではない。なぜならば、そのような細胞株は、以下のことが知られているからである:そのいくつかが本明細書中で使用したMLVベクター系に対し配列およびレトロウイルスの型において非常に関連性のある、内在性レトロウイルスを含むこと;効率的にパッケージされることが知られる、非レトロウイルスまたは欠陥レトロウイルス配列を含むこと;およびマウス細胞膜成分の存在のために悪影響を生じること。
本発明において有用なパッケージング細胞株を開発することにおける重要な要件は、それからの複製不能ビリオンの産生、または複製能のあるレトロウイルス(RCR)生成の回避である(Munchauら、Virology、176巻:262〜65、1991)。このことは、本発明の組換えレトロウイルスベクターを保有する感染性レトロウイルス粒子が、インビトロまたはインビボにある標的細胞中で独立に複製し得ないことを保証する。生じる独立の複製は、野生型ウイルスの産生を誘導し得、そしてそれは順番に患者細胞の染色体(単数または複数)への多数の組み込みを誘導し得、それによって挿入による変異誘発の可能性およびそれに関連した問題が増加する。RCR産生は、少なくとも2つの方法で生じ得る:(1)パッケージング細胞株中に存在する治療的プロウイルスDNAとレトロウイルス構造遺伝子(「gag/pol」および「env」)をコードするDNAとの間の相同的組換えによって、および(2)パッケージドング細胞株中に見出された非常に多数の欠陥内生プロウイルスを有するプロウイルスDNAの相同的組換えによる複製能力のあるウイルスの生成。
マウスに基づいた組換えレトロウイルスの使用に関連する固有の安全性の問題を回避するために、本発明の実施において好ましいものとして、パッケージング細胞株は種々の非マウス細胞株由来であり得る。これらは、ヒト、イヌ、サル、ミンク、ハムスター、およびラットを含む種々の哺乳動物由来の細胞株を含む。当業者が理解するように、多数のパッケージング細胞株が当該分野で公知の技術を用いて作製され得る(例えば、米国特許出願第08/156,789号および米国特許出願第08/136,739号を参照のこと)。好ましい実施態様においては、細胞株は、ハイブリダイゼーション分析によりMoMLVの配列に相同的なゲノム配列を欠くことの知られている(Martinら、前掲)イヌおよびヒト細胞株由来である。特に好ましいイヌ細胞の親株はD17(A.T.C.C.受託番号CRL8543)である。HT-1080(A.T.C.C.受託番号CCL121;Grahamら、Vir., 52巻:456,1973)および293細胞(Felgnerら、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 84:7413,1987)が特に好ましいヒト細胞の親株である。MoMLVに基づく組換えレトロウイルスベクターと組み合わせて使用するためのこれらの細胞株由来のパッケージング細胞株の構築は、米国特許出願第08/156,789号(前掲)に詳しく記載される。
したがって、遺伝子治療におけるレトロウイルス使用のための所望の必要条件は、複製能力のあるまたは「野生型の」ウイルスを産生し得ないパッケージング細胞株が利用可能であることである。パッケージング細胞株は、レトロウイルスベクターが感染性レトロウイルス粒子にアセンブルするために必要とされる構造タンパク質をコードする1つまたはそれ以上の核酸分子を含むため、これらの種々の構築物間の組換え事象は、複製能力のあるウイルス(すなわち、独立の複製に必要とされるパッケージングシグナルを含む、構造遺伝子および調節エレメントの全てをコードするゲノムを含む感染性レトロウイルス粒子)を生じ得る。過去数年間、多くの異なる構築物がこの問題を未然に防ぐための試みで開発されてきた。そのような構築は、以下を含む:3'LTR中および5'LTRの一部の欠失(MillerおよびButtimore、Mol.Cell.Biol.,第6巻:2895-2902,1986)、ここで2つの組換え事象がRCRを形成するために必要である;2つの別のプラスミドの間で分離された、1方がgagおよびpolを含み、そして他方がenvを含むヘルパーウイルスの相補的部分の使用(Markowitzら、J.Virol.,第62巻:1120-1124;およびMarkowitzら、Virology,第167巻:600-606,1988を参照のこと)、ここでは3つの組換え事象がRCRを生じるために必要である。
より最近、複製不能なレトロウイルスの産生を阻害するためのさらに改良した方法および組成物が開発された。同時所有の米国特許出願第09/028,126号、1994年9月7日出願を参照のこと。簡潔に記載すると、組換えレトロウイルスベクターとレトロウイルス構造タンパク質をコードする1つまたはそれ以上の核酸構築物との間の組換え事象を通して作製された複製可能なレトロウイルスの拡散は、生物学的に活性でない阻害分子をコードするベクターを提供することによって防ぎ得るが、そのような組換えの事象において生物学的に活性な阻害分子をコードする核酸分子を産生する。阻害分子の発現は、その事象が生じたプロデューサー細胞(単数または複数)を殺すこと、あるいはその中でのレトロウイルスベクターの産生を抑制することのいずれかによりRCRの産生を防ぐ。複製能力のあるウイルスのRNA転写物を切断するリボザイム、またはリシンA、テタヌスのような毒素、またはジフテリアトキシン、ヘルペスチミジンキナーゼなどのような種々の阻害分子が使用され得る。当業者に理解されように、それらのなかの教示が本明細書に容易に応用され得る。
安全性の問題に加えて、パッケージング細胞株のための宿主細胞株の選択は、レトロウイルス粒子の多くの生物学的特性(例えば、力価)および物理学的特性(例えば、安定性)が宿主細胞の特性により指図されるため重要である。例えば、その宿主細胞は、効率的にベクターRNAゲノムを発現(転写)し、第1鎖合成のために、細胞tRNAを用いてベクターをプライムし、MLV構造タンパク質を許容しかつ共有結合的に修飾し(タンパク質分解、グリコシル化、ミリスチル化、およびリン酸化)、そして細胞膜からのビリオン出芽を可能としなければならない。例えば、マウスパッケージング株PA317から作製されたベクターは、0.3ミクロンのフィルターにより保持され、その一方、本明細書で記載されるCA株から作製されたベクターは通過することが見出された。さらに、ヒトを含む霊長類由来の(種々の下等哺乳動物またはトリ由来のものではなく)血清が、抗体非依存的な補体溶解法(complement lysis memod)によりレトロウイルスを不活化することが知られている。このような活性は種々の遠縁のレトロウイルスに対して非選択的である。トリ、マウス(MoMLVを含む)、ネコ、およびサル起源のレトロウイルスは、正常ヒト血清により不活化および溶解される。Welshら、(1975)Nature,第257巻:612-614;Welshら、(1976)Virology,第74巻:432-440;Banapourら、(1986)Virology,第152巻:268-271;およびCooperら、(1986)Immunology of the Complemem System, American Press, Inc.出版,139頁-162頁。さらに、インビボで霊長類へ静脈内注射された複製能力のあるマウスアンホトロピックレトロウイルスは、全体でまたは部分的に霊長類補体により媒介されるプロセスにより15分以内に浄化される(Cornettaら、(1990),Human Gene Therapy,第1巻:15-30;Cornettaら、(1991),Human Gene Therapy,第2巻:5-14)。しかし、ヒト血清による補体不活化に対するレトロウイルス耐性が、少なくともいくつかの例で、レトロウイルス粒子が産生されたパッケージング細胞株により媒介されることが最近発見された。種々のヒトパッケージング細胞株から産生されたレトロウイルスは、ヒト血清、おそらくは補体の成分による不活化に耐性であったが、ヒヒおよびマキー(macque)由来の血清には感受性であった。同時所有の米国特許出願第、_/_,_号、代理人書類番号第930049.441号(本明細書と同日に出願した)を参照のこと。それゆえ、本発明の好ましい実施態様において、全長第VIII因子をコードする組換えレトロウイルス粒子は、ヒトパッケージング細胞株、特に好適で心あるHT1080または293細胞由来のパッケージング細胞株を用いて産生される。
上記のような感染性の、複製欠損組換えレトロウイルスを生成することに加えて、少なくとも2つの他の代わりの系が、そのベクター構築物を保有する組換えレトロウイルスを産生するために用いられ得る。1つのそのような系(Webbら、BBRC, 190:536, 1993)は、昆虫ウイルスのバキュロウイルスを使用し、その一方その他は哺乳動物ウイルスのワクシニアウイルスおよびアデノウイルス(Paviraniら、BBRC, 145:234, 1987)を利用する。これらの系のそれぞれは、その遺伝子がクローン化された大量の任意の所定のタンパク質を作製し得る。例えば、Smithら(Mol.Cell.Biol., 3:12, 1983);Picciniら(Meth. Enzymology, 153:545, 1987);およびMansourら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:1359, 1985)を参照のこと。これらのレトロウイルスベクターは、適切な遺伝子の挿入により組織培養細胞中でタンパク質を産生するために用いられ得、それゆえ、組織培養由来のレトロウイルスベクター粒子を作製するために適用され得る。アデノウイルスの系において、遺伝子がベクターに挿入され得、インビトロ構築(Ballayら,4:3861, 1985)または細胞中での組換え(Thummelら、J. Mol. Appl. Genetics, 1:435, 1982)のいずれかにより哺乳動物細胞中でのタンパク質発現に用いられ得る。
より本当に細胞外性である別のアプローチでは、レトロウイルス構造遺伝子が、Smithら(前掲)に記載のものと同様の様式でバキュロウイルスの系(あるいは、酵母またはE. coliのような他のタンパク質産生系)において作製される。組換えレトロウイルスゲノムは、インビトロRNA合成(例えば、FlamantおよびSorge、J.Virol., 62:1827, 1988を参照のこと)により作製される。次いで、構造タンパク質およびRNAゲノムはtRNAと混合され、引き続き、包埋envタンパク質および細胞抽出物(代表的にはマウス細胞から)または精製した成分(envおよび他の必要なプロセッシング、および任意のまたは他の必要な細胞由来機能を提供する)とともにリポソームが添加される。次いでこの混合物を処理して(例えば、超音波処理、温度操作、または回転透析)発生レトロウイルス粒子のカプセル化を可能にする。この手順は、病原性レトロウイルスまたは複製能力のあるレトロウイルスの混入なしに高力価で、複製能力のない組換えレトロウイルスの産生を可能とする。
パッケージング細胞株の選択において考慮するべき別の重要な因子は、レトローウイルスベクターが産生される核酸分子の導入後にそれから産生されるウイルスの力価である。多くの因子がウイルスの力価を制限し得る。最も重要な制限因子の1つは、パッケージングタンパク質gag、pol、およびenvの発現レベルである。レトロウイルス粒子の場合、プロウイルス由来のレトロウイルスベクターRNAの発現はまた、顕著に力価を制限し得る。高レベルの必要とされる産物を発現するパッケージング細胞および得られたプロデューサー細胞を選択するために、適切な力価アッセイが必要とされる。以下により詳細に記載したように、適切なPCRに基づいた力価アッセイが開発された。
ウイルスベクターの骨格に対して相同的な、パッケージングのためのタンパク質、例えば、レトロウイルスベクターのパッケージングのためのレトロウイルスgag、pol、およびenvタンパク質を供給するパッケージングおよびプロデューサ細胞株を調製することに加え、キメラウイルス粒子を生じるパッケージングおよびプロデューサーの系、例えばDNAウイルスカプシド中にパッケージされたMoMLVに基づいたレトロウイルスベクターがまた用いられ得る。ウイルスベクターのそれと無関係なウイルスに基づいた多くの他のパッケージングおよびプロデューサーの系がまた、当業者に理解されるように、利用され得る。
組換えレトロウイルス粒子の宿主範囲の改変
本発明の別の局面は、改変された宿主範囲を有するレトロウイルスベクターに関する。レトロウイルスの宿主細胞範囲特異性は、脂質エンベロープに存在するenv遺伝子産物により一部分決定される。興味深いことに、1つのレトロウイルス由来のエンベロープタンパク質は、しばしば別のレトロウイルスのエンベロープタンパク質と様々な程度に置換し得、これにより得られたベクターの宿主範囲が改変する。従って、パッケージング細胞株(PCL)は、アンホトロピック、エコトロピック、キセノトロピック、またはポリトロピックエンベロープのいずれかを発現するために産生され得る。さらに、「ハイブリッド」または「キメラ」エンベロープタンパク質を含む本発明に従ったレトロウイルスが同様に産生され得る。任意のこれらのパッケージング細胞株から産生されたベクターは、対応し異なったレセプターを含む任意の細胞を感染するために使用され得る(ReinおよびSchultz,Virology,136:144,1984)。
レトロウイルスのアセンブリは、出芽レトロウイルス粒子へのレトロウイルスゲノムおよびアクセサリータンパク質の選択的な封入により特徴付けられる。興味深いことに、非マウスレトロウイルス起源由来のエンベロープタンパク質は、宿主範囲を改変するためにベクターをプソイドタイピング(pseudotyping)(すなわち、別の種のウイルスタンパク質による、ある種由来のウイルスRNAのカプシド化)のために使用され得る。一部の細胞膜が出芽してレトロウイルスエンベロープを形成するので、細胞膜中に通常存在する分子はこのウイルスエンベロープのために運搬され得る。従って、多くの異なる潜在的なリガンドは、ベクターが産生されるパッケージング細胞株の操作によるか、または特定の表面マーカーを有する種々の型の細胞株の選択によりレトロウイルス粒子の表面上に加えられ得る。
Millerら(Mol.Cell.Biol.,5:431,1985)は、感受性細胞にジヒドロ葉酸レダクターゼを導入するようにMoMLV由来のレトロウイルスベクターを構築し、そしてベクターの宿主範囲を広げるために関連するアンホトロピックレトロウイルス4070A由来のエンベロープ領域を含有させた。同様に、アンホトロピック、エコトロピック、ポリトロピック、およびキセノトロピックレトロウイルス由来のエンベロープタンパク質が利用され得る。さらに、宿主範囲における改変は、異種の膜結合タンパク質(すなわち、レトロウイルス粒子中に、ベクター粒子のヌクレオカプシドタンパク質の起源のように、同じウイルスファミリーのウイルスとは別の少なくとも1つの起源を有する膜結合タンパク質)を導入することによりもたらされ得る。例えば、ラブドウイルスファミリーのメンバーである水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、レトロウイルスとともにプソイドタイプの形成に関係することが知られる。1991年2月19日に提出された米国特許出願第07/658,632号を参照のこと。
簡単に述べると、本局面において、本発明は以下を含むエンベロープ化レトロウイルス粒子を提供する:レトロウイルスである第1のウイルス由来の起源を有するヌクレオカプシドタンパク質を含むヌクレオカプシド;このヌクレオカプシドに結合する全長第VIII因子をコードするパッケージング可能な核酸分子;および宿主範囲を決定する膜結合タンパク質(この膜結合タンパク質は、第1のレトロウイルスと同じ分類学的ファミリーのレトロウイルスとは異なる)。好ましくは、膜結合タンパク質は、第1のウイルスとは異なる宿主範囲を有する第2のウイルス由来の膜結合タンパク質(例えば、VSV Gタンパク質のような天然に存在する膜結合タンパク質)である。
本発明の別の好ましい形態において、ベクター粒子の膜結合タンパク質は、外部レセプター結合ドメインおよび膜結合ドメインを含むキメラタンパク質またはハイブリッドタンパク質であり、少なくとも一部の外部レセプター結合ドメインは、少なくとも一部の膜結合ドメインとは異なる起源に由来する。キメラタンパク質は、好ましくは、2つの起源に由来し、ここで2つの起源のうちレトロウイルスは1つを超えない。さらに、少なくとも一部の外部レセプター結合ドメインは、VSV Gタンパク質に由来することが好ましい。
本発明の本局面の別の実施態様は、前記のベクター粒子を産生する細胞株に関する。好ましくは、このような細胞株は、膜結合タンパク質をコードする核酸分子を用いて安定にトランスフェクトされ、その発現は誘導性プロモーターにより駆動される。
改変された宿主範囲を提供するための良好な候補物であるVSV Gタンパク質とは別の膜結合タンパク質は、本発明に従って使用される場合、宿主レセプターに結合し、そして感染を促進する他のエンベロープ化ウイルス由来のタンパク質を含む。当業者に理解されるように、このようなタンパク質をコードする核酸分子を組み込むベクターは、改変された宿主範囲を有するレトロウイルス粒子が産生され得るパッケージング細胞株を作製するために容易に使用され得る。例えば、1つの適切な代替物は、HSV(ヘルペス単純ウイルス)由来のgD遺伝子であり、これはヒト神経節組織を含む宿主範囲を得るために使用され得る。
本発明に従うレトロウイルス粒子は、その細胞型に特異的な細胞表面レセプターに結合する、成分(最も頻繁にはポリペプチドまたは炭水化物)をレトロウイルス粒子に含有させることにより、特定の細胞型に標的化され得る。このような標的化は、細胞特異的結合ドメインと共にウイルス粒子アセンブリに必要とされるenvタンパク質の一部を含むキメラenvタンパク質を発現するパッケージング細胞株を調製することにより達成され得る。別の実施態様において、得られたウイルス粒子は1つを超えるの種のenvタンパク質を含むように、1つを超えるウイルス型に由来するenvタンパク質が使用され得る。なお別の実施態様は、標的特異性を提供するように、レトロウイルスカプシドまたはエンベロープ中の細胞特異的リガンドの封入を含む。本発明の本局面での好ましい実施態様において、使用されるenv遺伝子は、細胞表面レセプターと相互作用することが知られているポリペプチドリガンドのレセプター結合ドメインと共にレトロウイルスアセンブリに必要とされるenvタンパク質の全てまたは一部をコードする。細胞表面レセプターの組織分布は、標的化されるべき細胞型(例えば、血管の管腔表面に位置する内皮細胞)に限定される。これに関しては、標的細胞表面に高レベルで発現されるレセプターに結合するか、あるいは標的組織において他の細胞と比較して比較的より高レベルで発現されるレセプター結合ドメインを利用することが好適であり得る。
組織標的化に加えて、またはその代わりに、組織特異的プロモーターが、特定の細胞型のみにおいて全長第VIII因子の発現を駆動するために使用され得る。
例えば、使用されるウイルスベクターは受容細胞染色体へのウイルスゲノムの組み込みを導く場合、患者のゲノム中への特異的部位の組み込みを制御するために、レトロウイルス感染の場合において起こるように、特異的部位への挿入を指向する改変インテグラーゼ酵素の相同的組換えまたは使用が利用され得る。全長第VIII因子遺伝子のこのような部位特異的挿入は、遺伝子置換治療を提供し得、挿入変異誘発の可能性を低下させ得、患者DNAに存在する他の配列からの干渉を最少化し得、そして患者DNA中の所望されない遺伝子(例えば、ウイルスまたは腫瘍形成遺伝子)の発現を低下、または除去するために特異的標的部位での挿入を可能にし得る。
非ウイルス膜結合タンパク質はまた、ベクター粒子の宿主範囲を改変するために使用され得る。代表的な例として、所定の細胞表面レセプターリガンドまたは他の細胞表面部分に対するリガンドとして作用するポリペプチドが挙げられる。問題のタンパク質に対するレセプターの組織分布に依存して、レトロウイルスベクターは、広範囲のヒト細胞に対して、サブセットの細胞に対して、または単一の細胞型に対して標的化され得る。従って、例えば、全ヒト細胞、全白血球、またはTヘルパー細胞のみが標的化され得る。
レトロウイルスエンベロープ中に含まれるべきリガンドが天然に存在する膜結合タンパク質でない場合、好ましくは「ハイブリッド」または「キメラ」エンベロープタンパク質を作製することにより、リガンドを膜と結合させることは必要である。このようなハイブリッドエンベロープタンパク質は、他のウイルスまたはレトロウイルスenvタンパク質とは別のタンパク質由来の細胞外ドメインを含み得ることが理解されることが重要である。これを達成するために、リガンドをコードする遺伝子は、膜結合ドメインをコードする配列と機能的に組み合わされ得る。「天然に存在する膜結合タンパク質」とは、インビボで脂質膜とともにその天然状態に存在するタンパク質(例えば、細胞膜と結合するか、またはウイルスエンベロープ上に存在するとわかったタンパク質)を意味する。このように、ハイブリッドエンベロープは、レトロウイルス由来のenvタンパク質の細胞外成分が特異的なレセプター結合を担うように、全長第VIII因子をコードするレトロウイルスベクターの親和性を調整するため(そして効果的に力価を増大させるため)に使用され得る。一方、これらのタンパク質の細胞質ドメインはビリオン形成において役割を果たす。本発明は、多くのハイブリッドenv遺伝子産物(すなわち、詳細には、天然に共に存在しない細胞質領域および細胞外結合領域を有するレトロウイルスenvタンパク質)が産生され得、そして宿主範囲特異性を改変し得ることを認める。結果として、標的細胞に特異的に結合する組換えレトロウイルスが産生され得る。
好ましい実施態様において、これは、VSV Gタンパク質、または所定のカプシドタンパク質と安定にアセンブリする他のレトロウイルスに由来するエンベロープタンパク質の膜結合ドメインに近接するリガンド(またはレセプター結合活性を授与するその一部)をコードする遺伝子を組み換えることにより達成される。得られた構築物は、細胞標的化およびレトロウイルス脂質エンベロープにおける封入が可能な二機能性キメラタンパク質をコードする。
本発明の好ましい実施態様において、感受性T細胞または単球は、CD4+細胞へのベクター粒子の吸着を指向するために、VSV G、HIV envまたはハイブリッドenvを有するベクターを用いて標的化され得る。例えば、ウイルスベクターは、HIV envタンパク質(gp120)をレセプターとして用いる細胞を感染するベクター粒子を産生することにより標的化され得る。好ましい実施態様において、このようなHIVトロピックウイルスは、その細胞膜に天然に高レベルのCD4タンパク質(例えば、Sup T1細胞)および/またはCD26タンパク質を有する細胞から構築されるMLVに基づいたパッケージング細胞株から、あるいはこのようなタンパク質を発現する「操作された」任意の細胞型から産生され得る。細胞膜自身からの出芽により形成して得られたビリオンは、その膜においてCD4(および/またはCD26)タンパク質を含む。CD4(およびCD26)を含む膜は、HIV envを有する膜と融合することが知られているので、これらのビリオンはHIV envを含む細胞と融合し、そしてその表面にgp120を有するHIV感染細胞の特異的な感染をもたらすはずである。このようなパッケージング細胞株は、感染性ビリオンが生じるように適切なビリオンのアセンブリおよび出芽を可能にするために、MLV envタンパク質の存在を必要とし得る。そうであれば、ウイルス侵入がCD4(および/またはCDCC)/HIV env相互作用によってのみ起こり、そして感染に対してHIV-envの存在におそらく依存しないMLV env細胞レセプターによって起こらないように、ヒト細胞に感染しないMLV env(例えば、エコトロピックenv)が使用される。あるいは、MLV envに対する要求は、ハイブリッドエンベロープにより満足し得、ここでアミノ末端結合ドメインはCD4および/またはCD26のアミノ末端HIV-env結合ドメインにより置換されている。正常なウイルス-レセプター相互作用のこの変換は、全ての型のウイルスに使用され得、これらのウイルスの対応する細胞レセプターは同定されている。
本明細書中に記載の非天然膜結合リガンドを有するベクター粒子は、有利には、膜結合タンパク質のリガント-レセプター相互作用により決定される宿主範囲を有する。従って、全長第VIII因子をコードするレトロウイルスベクターの標的化送達のために、改変した宿主範囲を有するベクター粒子は、本発明の方法を用いて産生され得る。リガンドは標的化細胞型を含む宿主範囲を提供するために選択される。多くの異なる標的化ストラテジーは、本発明の本局面と共に使用され得る。例えば、血液細胞に分化する骨髄において見出される多くの前駆細胞型が存在する。多くの血液細胞は、比較的短い寿命を有し、それゆえ、前駆細胞は失った細胞を取り換えるために持続的に分裂および分化しなければならない。好ましい実施態様において、血友病の遺伝子治療は、多能性幹細胞を含む造血前駆細胞を標的化する。これらの前駆細胞は、種々の技術(蛍光活性化細胞分取(FACS)およびポジティブとネガティブな選択(米国特許第5,061,620号を参照のこと)を含む)により他の細胞型からの組織学的同定、分離が可能な独特の細胞決定基を有することが知られており、この細胞決定基は、本発明のベクター粒子の膜結合タンパク質の細胞レセプターとして使用され得る。
本明細書中で使用するように、造血幹細胞は、原始的、または未熟で、自己再生可能な細胞であり、そして全ての造血系統の前駆体細胞に分化し得る(すなわち、「全能性(totipotent)」と呼ばれる)細胞である。本発明に従う組換えベクターは、このような細胞、または任意のそのさらに分化した子孫(例えば、種々の原始的祖先、および種々の造血細胞系統を生じるさらなる系統拘束前駆体細胞)に導入され得る。このような初期造血細胞の1つのマーカーは、CD34であり、これはモノクローナル抗体を用いて同定され得る。米国特許第4,714,680号;1993年12月23日に刊行されたWO 93/25216を参照のこと。WO 93/25216は、表現型CD34+/CD38-/HLA-DR-を有し、そして系統拘束抗原CD33、CD10、CD5、およびCD71を欠く、あるクラスの造血幹細胞を記載する。抗CD34抗体の代表的な例として、12.8(Andrewsら、Blood,f67:842,1986)およびMy10(Civinら、J.Immunol.,133:157,1984,HPCA-2の名称でBecton Dickinsonから市販されている)が挙げられる。他の抗体(例えば、CD4+T細胞を標的化する抗CD4抗体およびCD8+細胞を標的化する抗CD8抗体)もまた、選択した細胞型を標的化するために使用され得る(一般には、Wilchekら、Anal.Biochem.,171:1,1988を参照のこと)。
このような前駆細胞型の独特の細胞決定基に結合する膜結合タンパク質をコードする発現可能な遺伝子を含有することにより、ベクターを構築し、遺伝子送達のためにこれらの細胞型を標的化し得る。本発明のベクター粒子を用いて標的化され得るこのような前駆細胞型の例として、多能性幹細胞、赤芽球、リンパ芽球、骨髄芽球、および巨核球が挙げられる。
当業者はまた、脂質エンベロープに組み込まれるか、あるいはその脂質またはタンパク質成分に化学的に連結され得るかのいずれかであるレトロウイルス粒子に対して外因的にリガンド分子を添加し得ることを認識する。
染色体上の予め決定された遺伝子座への全長第VIII因子をコードするレトロウイルスベクターの標的化はまた使用され得る。この標的化の明らかな利点として、挿入変異誘発の回避、および転写的に活性であることが知られている部位における組み込みの保証が挙げられる。特定の部位へのプロウイルス組み込みの標的化の技術は、インテグラーゼ改変を含む。米国特許出願第08/156,789号、前出を参照のこと。
本発明の治療はインビボまたはインビトロのいずれかで行われることがさらに意図される。インビトロ治療(「エクスビボ治療」とも呼ばれる)の場合、細胞が取り出され、そしてインビトロで形質導入される。適切な宿主範囲を決定する膜結合タンパク質を有するベクター粒子の場合、インビトロで標的化されるべき細胞を精製する必要はない。なぜなら、ベクターは標的化細胞のみを特異的に形質導入するからである。従って、骨髄サンプルは被験体から取り出され得、そして所望の細胞型が形質導入され得る。次いで、形質導入細胞は同じ患者またはHLAが適合する患者に戻され得る。
さらに、広範な種々の高親和性結合対は、標的化エレメントとして使用され得る。代表的な例として、10-15Mの親和性(KD)を有するビオチン/アビジン(Richards,Meth.Enz.,184:3,1990;Green,Adv.;Protein Chem.,29:85,1985)および10-14Mの親和性を有するシスタチン/パパイン(Bjorkら、Biochemistry,29:1770,1990)が挙げられる。
広範な種々の他の高親和性結合対はまた、例えば、高親和性を有する選択された抗体を認識する抗体を調製し、そして選択することにより、開発され得る(一般に、米国特許第RE 32,0l1号、同第4,902,614号、同第4,543,439号、および同第4,411,993号を参照のこと;Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,Kennett,McKearnおよびBechtol編、1980、およびAntibodies:A Laboratory Manual,HarlowおよびLane編、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988もまた参照のこと)。このような抗体(代表的には他の抗体または抗体フラグメント)の結合対は、組換え技術により生成され得る(Huseら、Science,246:1275,1989;Sastryら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,86:5728,1989;およびMichelle Alting-Meesら、Strategies in Molecular Biology,3:1,1990もまた参照のこと)。
本明細書中に提供される開示により当業者にとって明らかであるように、親和性結合対のメンバー(または分子)は、レトロウイルス粒子またはこのような粒子が含まれるビヒクル(例えば、リポソーム)に結合されるか、または逆に標的エレメントに結合され得る。それにもかかわらず、本発明の好ましい実施態様において、2つの親和性結合対の大きい方(例えば、アビジン/ビオチン対のアビジン)が、レトロウイルス粒子または他のビヒクルに結合される。標的化の情況に利用されるように、用語「結合」は、非共有結合相互作用または共有結合相互作用のいずれかを意味し得るが、一般には共有結合が好ましい。例えば、N-スクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(「SPDP」;Carlsonら、J.Biochem.,173:723,1978)および当該分野に公知の他のこのような化合物のような架橋剤の使用を含む、多くの結合方法が利用され得る。
本発明の特に好ましい実施態様において、高親和性結合対のメンバーは、レトロウイルス粒子において発現されるか、またはレトロウイルス粒子の完全な部分として(例えば、レトロウイルス脂質エンベロープとして)含まれるかのいずれかである。例えば、高親和性結合対のメンバーは、ハイブリッドタンパク質としてエンベロープタンパク質と共に同時に発現され得る。
組換えレトロウイルス粒子の調製および精製
本発明の別の局面は、組換えレトロウイルス粒子の調製に関する。本発明のレトロウイルス粒子は、当業者が理解する種々の方法で産生され得る。例えば、プロデューサー細胞(すなわち、レトロウイルスベクターパッケージングに必要な全ての成分(レトロウイルスベクターをコードする核酸分子を含む)を含有する細胞)は、ローラーボトル、バイオリアクター、中空繊維装置、および細胞ホテル(cell hotel)中で増殖され得る。細胞は、液体培地中の固体支持体上で維持されるか、または懸濁物として増殖され得る。広範な種々のバイオリアクターの配置およびサイズが本発明の実施において用いられ得る。
細胞工場(cell factory)(「細胞ホテル」とも呼ばれる)は、代表的に2、10、または40のトレイを含有し、未使用のポリスチレンから形作られ、Nuclon D表面を提供するように処理され、そして互いに超音波溶接されることにより組み立てられる。一般に、これらの工場は2つのポートチューブを有する。このポートチューブは、試薬を添加するためか、または培養液を除去するためのチャンバーへの接近を可能にする。10層工場は、細胞を増殖させるための6000cm2の表面面積を提供する。これは、おおよそ27個のT-225フラスコに相当する。細胞工場は、例えば、Nuncを含む種々の製造業者から入手可能である。ほとんどの細胞型は、3〜6日間、高力価ベクターを産生し得、これは複数の収集を可能にする。各々の細胞型は、播種後の至適な収集時間および至適な収集日数を決定するために試験される。細胞は、代表的には、細胞工場に播種するのに必要とされる細胞数が得られるまで、最初に、ローラーボトル中の2〜20%FBSを補充したDMEM中で増殖される。次いで、細胞はこの工場に播種され、そしてベクターを含有する2リットルの培養物上清が適切な時間の後に収集される。新鮮な培地が、培養物を補給するために用いられる。
中空繊維培養法もまた用いられ得る。簡単に説明すると、中空繊維培養を用いる高力価レトロウイルスの産生は、縮小された容積の培地において細胞が高密度に培養される間に増大するウイルスの濃度に基づく。細胞は栄養素を与えられ、そして廃棄産物は、多数の毛細管繊維の管腔を通って循環するより大容積の新鮮な培地を用いて希釈される。細胞は、バイオリアクターチャンバー中の毛細管繊維の外部スペースにおいて培養される。ここで、細胞の廃棄産物は、毛細管繊維の30kD細孔を通じる拡散によって栄養素と交換される。この細胞株から産生されるレトロウイルスは大きすぎて細孔を通過し得ず、従って、細胞の側にて中空繊維バイオリアクター中で濃縮される。細胞の側で培養される培地の容積は、組織培養ディッシュまたはフラスコ中で培養される等価な細胞密度に必要とされる容積よりも約10〜100倍低い。中空繊維レトロウイルスの力価を組織培養ディッシュまたはフラスコと比較する場合、この容積の減少倍数は、力価の誘導倍数と逆相関する。この力価における10〜100倍の誘導は、個々のレトロウイルスのプロデューサー細胞株が中空繊維増殖条件に友好的である場合に見られる。最大の細胞密度を達成するために、個々の細胞は、非常に近接し、そして互いの上面で増殖し得なければならない。多くの細胞株は、この様式では増殖せず、そしてこれらの型の細胞株に基づくレトロウイルスパッケージング細胞株は、力価において10倍の増加を達成し得ない。非常に良好に増殖する細胞株は、非接着細胞株であり、そして非接着細胞株に基づくレトロウイルスプロデューサー株は、組織培養ディッシュまたはフラスコと比較して力価において100倍の増加を達成し得ると考えられる。
レトロウイルス粒子および産生方法に関わらず、高力価(約107〜1011cfu/mL)ストックが調製され得る。このストックは、適切な細胞への導入において所望の産物の高レベル発現を引き起こす。レトロウイルス粒子アセンブリに必要とされる全ての成分が存在する場合、高レベル発現が生じ、それにより高力価ストックが産生される。そして高力価ストックが好ましいが、約103〜106cfu/mLの範囲の力価を有するレトロウイルス調製物もまた用いられ得、このレトロウイルスの力価は、以下に記載されるような、種々の精製方法により増大され得る。
適切な手段による産生の後、感染性組換えレトロウイルス粒子は、粗製形態または精製形態で保存され得る。粗製のレトロウイルス粒子は培養された感染細胞により産生され、ここでウイルス粒子は培養培地中に細胞から放出される。ウイルスは、最初に組換えウイルスを含有する培養培地に十分な量の処方物緩衝液を添加し、水性懸濁物を形成することにより、粗製形態で保存され得る。
組換えレトロウイルス粒子はまた、精製形態で保存され得る。より詳細には、処方物緩衝液の添加の前に、上記の粗製レトロウイルス調製物は、フィルターを通過させられることにより明澄化され、次いで例えば、クロスフロー濃縮システム(Filtron Technology Corp., Nortborough, MA)により濃縮される。1つの実施態様では、外来DNAを消化するためにDNaseが濃縮物に添加される。次いで、消化物はダイアフィルトレートされて、過剰の培地成分が除去され、そしてより好ましい緩衝化溶液中に組換えウイルスが樹立される。次いで、ダイアフィルトレート物は、ゲル濾過Sephadex S-500ゲルカラムを通過させられ、そして精製組換えウイルスが溶出される。
粗製組換えレトロウイルス調製物は、イオン交換カラムクロマトグラフィー(例えば、U.S.S.N.出願番号08/093,436により詳細に記載されているような)によって精製され得る。一般に、粗製調製物は、フィルターを通過させられることにより明澄化され、そしてこの濾過物は、高度にスルホン化されたセルロースマトリックスを含有するカラム上に載せられる。ここで、セルロースの1グラム当たりの硫酸塩の量は、約6〜15μgの範囲である。組換えレトロウイルスは、高塩類緩衝液を用いることにより精製形態でカラムから溶出される。次いで、高塩類緩衝液は、溶出物を分子排除カラムに通過させることによってより好ましい緩衝液に交換される。次いで、精製された調製物は、処方されるか、または(好ましくは−70℃で)保存され得る。
さらに、本発明の組換えレトロウイルスを含有する調製物は、組換えレトロウイルスの力価を増大させるために精製の間に濃縮され得る。広範な種々の方法が、レトロウイルス濃度を増大させるために利用され得る。これには、例えば、硫酸アンモニウムを用いる組換えレトロウイルスの沈澱、ポリエチレングリコール(「PEG」)沈澱、遠心分離(PERCOLLのようなグラジエント有りまたは無しのいずれか、またはスクロースのような「クッション」、濃縮フィルター(例えば、Amicon filtration)、および2相分離)による濃縮が挙げられる。
簡単に説明すると、硫酸アンモニウムを用いる組換えレトロウイルスの沈澱による濃縮を達成するために、硫酸アンモニウムは、適切な濃度まで緩徐に添加され、引き続いて遠心分離され、そして透析または疎水性カラムでの分離のいずれかにより硫酸アンモニウムが除去される。
あるいは、組換えレトロウイルスは、PEGを用いて培養培地から濃縮され得る(Greenら、PNAS 67:385-393, 1970;Syrewiczら、Appl.Micro.24:488-494, 1972)。このような方法は、迅速であり、簡単であり、そして安価である。しかし、硫酸アンモニウム沈澱と同様に、PEGの使用はまた、溶液から他のタンパク質を濃縮する。
他の実施態様では、組換えレトロウイルスは、遠心分離、より詳細には低速遠心分離によって濃縮され得る。この低速遠心分離は、高速遠心分離に伴うペレット化に関連する困難さ(例えば、ウイルス破壊または不活化)を回避する。
第VIII因子をコードする組換えレトロウイルスもまた、水性2相分離法により濃縮され得る。簡単に説明すると、ポリマー性水性2相系が、水中に2つの異なる非適合性ポリマーを溶解することにより調製され得る。水溶性ポリマーの多くの組がこのような2相系の構築に用いられ得、これには例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)またはメチルセルロース、およびデキストランまたはデキストラン硫酸が含まれる(WalterおよびJohansson, Anal.Biochem. 155:215-242, 1986;Albertsson, 「Partition of Cell Particles and Macromoloeclue」Wiley, New York, 1960を参照のこと)。以下の実施例13により詳細に記載されるように、5%〜8%(好ましくは6.5%)の範囲の濃度のPEG、および0.4%〜1%(好ましくは0.4%)の範囲の濃度のデキストラン硫酸を用いて、水性2相系が、組換えレトロウイルスを精製するのに適切であることが証明され得る。このような手順を用いて、約100倍の濃度が、総開始レトロウイルスの約50%以上の収率で達成され得る。
説明のために、いくつかの濃縮工程を組み合わせた代表的な濃縮プロセスが以下に示される。簡単に説明すると、組換えレトロウイルスは、濃縮の前に、ローラーボトル、細胞工場、またはバイオリアクターのいずれかから調製され得る。組換えレトロウイルスを含有する取り出された培地は、プロセシングの前に、−70℃で凍結されるか、またはより好ましくは、大きなプールされたバッチ中で2℃〜8℃で保存され得る。
バイオリアクターから得られた物質については、組換えレトロウイルスプールは、最初に0.65μmフィルターに連続して繋がれた0.8μmフィルター(1.2μmガラス繊維プレフィルター、0.8μ酢酸セルロース)を通して明澄化される。このフィルター配列は、約2平方フィートのフィルターを提供し、そして目詰まりするまで約15〜20リットルのプールされた物質のプロセッシングを可能にする。ローラーボトルまたは細胞工場から得られた物質については、40リットルまでの容積では単一の0.65μmカートリッジ(2平方フィート)で通常十分である。80リットル細胞工場プロセッシングについては、5平方フィートフィルターが必要とされ得る。
好ましくは、明澄化後、フィルターは緩衝液(例えば、150mM NaCl,25mM Tris, pH7.2〜7.5)でリンスされる。明澄化後、組換えレトロウイルスは、300,000mwカットオフを有するカセットを利用する接線フロー(tangential flow)限外濾過によって濃縮される。バイオリアクター物質(12%〜16%FBSを含む)については、1カセット当たり4〜5Lの物質が濃縮され得る。12〜16%FBSのローラーボトルまたは細胞工場については、1カセット当たり5〜6Lの物質が濃縮され得る。最後に、10%FBSを含む細胞工場については、1カセット当たり8〜9Lの物質が濃縮され得る。濾過と保持との間の適切な圧力差(pressure differential)でこのような手順を利用して、80リットルまでの物質が2時間までに500mL未満の容積に濃縮され得る。このプロセスはまた、約80%の収率を提供する。
限外濾過の工程に続いて、DNAseが50U/mLの濃度で添加され、そして30分間、閉じられた濾過ラインでより遅いポンプ速度にて再循環される。次いで、非連続的なダイアフィルトレーションは、付加的な緩衝液を添加し、そして上記と同じ交差性差次的圧力(cross differential pressure)を利用することにより達成される。一般に、この工程の後の回収率は約70%である。
次いで、濃縮された物質は、最小塩濃度およびイオン強度濃度として50mM NaClおよび25mM Tris pH7.2〜7.5を用いて、Phamacia S-500HGサイズ排除ゲルにおけるカラムクロマトグラフィーに供される。一般に、組換えレトロウイルスは、最初のピークに溶出される。
接線フロー濾過がもう一度用いられ、調製物の容積がさらに縮小され得る。その後、濃縮された物質は、0.2μm Milliporeフィルターを通じる濾過によって滅菌される。
インビボ産生の代わりとして、レトロウイルスパッケージングタンパク質が、適切な細胞から、一緒にまたは別々に産生され得る。しかし、ウイルスベクターの産生を可能にする核酸分子を導入する代わりに、インビトロパッケージング反応が指向され、これには、gag、pol、およびenvタンパク質、レトロウイルスベクター、tRNA、および他の必要な成分が含まれる。次いで、得られるレトロウイルス粒子は精製され、そして所望であれば濃縮される。
薬学的組成物の処方
本発明の別の局面は、上記の組換えレトロウイルスベクターを、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせて含む薬学的組成物に関する。このようなレトロウイルスベクターを含むレトロウイルス粒子は、粗製、または好ましくは精製形態で処方され得る。このような薬学的組成物は、液体溶液として、または投与前に溶液中に再懸濁される固体形態(例えば凍結乾燥された)のいずれかで調製され得る。さらに、この組成物は、局所投与、注入、または鼻、口、膣、舌下、吸入、眼内、腸、または直腸投与のための適切なキャリアまたは希釈剤を用いて調製され得る。
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤は、用いられる投与量および濃度で受容体に非毒性である。注入溶液用のキャリアまたは希釈剤の代表的な例は、水、好ましくは生理学的pHに緩衝化された等張生理食塩水溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水またはTris緩衝化生理食塩水)、マンニトール、デキストロース、グリセロール、およびエタノール、ならびにヒト血清アルブミン(HSA)のようなポリペプチドまたはタンパク質を含む。特に好ましい組成物は、10mg/mLマンニトール、1mg/mL HSA、20mM Tris,pH7.2,および150mM NaCl中にベクターまたは組換えウイルスを含む。この場合、組換えレトロウイルスベクターは、約1μgの材料に相当するので、それは、高分子量材料の1%未満であり、そして総材料(水を含む)の1/100,000未満であり得る。この組成物は、-70℃で少なくとも6ケ月の間安定である。
本発明の薬学的組成物はまた、細胞分裂を刺激し、そしてそれ故、組換えレトロウイルスベクターの摂取および取り込みを刺激する因子をさらに含み得る。さらに、このような組成物は、αガラクトースエピトープ(例えば、B-ジサッカライド-R(Chembiomed)、B-ジサッカライド(Dextra)、B-トリサッカライド(Dextra)、B-テトラサッカライド(Dextra)、A-フコシル化トリサッカライド-R、6-O-B-D-ガラクトピラノシル-D-ガラクトース、A-フコシル化トリサッカライド-R、崩壊促進因子、およびHRF20(Neethlingら、Transplantation,第57巻、959〜963頁、1994;Hayashiら、Transplantation Proceedings,第26巻、no.3、1243-1244頁、1994)に対して予め存在するヒト抗体と競合するサッカライドのような補体活性化のインヒビターを含み得る。このような補体インヒビターは、この組成物が投与されるべき患者の種とは異なる種由来のパッケージング細胞株で産生される組換えレトロウイルスとともに用いられる場合、特に有効であり得る。
本発明の薬学的組成物はまた、全長の第VIII因子をコードするレトロウイルス粒子に対する免疫応答を抑制する因子をさらに含み得る。さらに、本発明の薬学的組成物は、このような薬学的組成物の使用に関する説明書を提供するパッケージング材料とともに容器またはキット内に配置され得る。一般に、このような説明書は、試薬濃度、および特定の実施態様では、薬学的組成物を再構成するために必要であり得る賦形剤成分または希釈剤(例えば水、生理食塩水またはPBS)の相対量を記載する。
組換えウイルスを保存するための特に好適な方法および組成物は、「組換えウイルスの保存方法」と題する米国特許出願に記載されている(1993年10月12日に出願された米国特許出願第08/135,938号、および1993年11月15日に出願された米国特許出願第8/153,342号、これらはその全体が参考として援用される)。
患者を処置するための組換えレトロウイルスの使用には、製品が、組換えレトロウイルスの感染力および生存力が保持されるような所望の温度で輸送および長期間貯蔵され得ることが必要である。低温貯蔵および低温輸送なく組換えレトロウイルスを保存する困難性は、第三世界の国々で問題を提示する。そこでは、適切な冷蔵能力をしばしば欠いている。例えば、アフリカでは、毎年、数百万人の子供が麻疹のような感染病が原因で死亡している。このような疾患の予防に必要なワクチンは、冷蔵に容易にアクセスできないので広く配布され得ない。
抗毒素、抗原および細菌の保存のための乾燥形態の材料の初期安定化が記載されている(Flosodortら、J.Immunol.,29:389, 1935)。しかし、このプロセスの制限は、周囲温度で水性状態から乾燥した場合タンパク質の部分的変性を含むことであった。凍結状態からの乾燥はこの変性の減少を助け、そして細菌およびウイルスを含む他の生物学的材料の効果的保存を導いた(Stampら、J.Gen.Microbiol.,1:251,1947;Roweら、Virology, 42:136, 1970;およびRoweら、Cryobiology,8:153, 1971)。より最近には、スクロース、ラフィノース、グルコースおよびトレハロースのような糖類が、ウイルスの凍結乾燥の前に安定化剤として種々の組み合わせで添加された。後の増殖のためにほんのいくらかのウイルス生存のみを必要とする研究目的について、糖類の使用は、生存ウイルスの回収率を高めた。
本発明による組換えレトロウイルスは、液体、または好適には、凍結乾燥形態で貯蔵され得る。安定性に影響する因子は、処方(液体、凍結乾燥、その構成成分など)および貯蔵条件(温度、貯蔵容器、光への曝露などを含む)を含む。あるいは、本発明によるレトロウイルス粒子は、低温で液体として貯蔵され得る。好適な実施態様では、本発明の組換えレトロウイルスは、凍結乾燥形態で、高温で感染力を保存し、そしてこの形態のため、再構成後、患者中への注入に適切でるように処方される。組換えレトロウイルスは、粗製または精製形態で保存され得る。粗製のレトロウイルス調製物は、種々の細胞培養法により産生され得、そこではレトロウイルス粒子が細胞から培養培地中に放出される。レトロウイルス粒子は、十分な量の処方緩衝液を添加することにより粗製形態で保存され得る。代表的には、処方緩衝液は、1つまたはそれ以上のサッカライド、高分子量構造添加剤、緩衝化成分、および/またはアミノ酸のような種々の成分を含む水性溶液である。
本明細書で記載される組換えレトロウイルスはまた、精製形態で保存され得る。例えば、処方緩衝液の添加の前に、上記のような粗製調製物は濾過により清澄化され得、次いで濃縮される。DNaseを濃縮物に添加し得、外因性DNAを消化し、次いでダイアフィルトレーションして過剰の培地成分を除去し、そしてより望ましい緩衝化溶液に置換する。次いで、ダイアフィルトレーション液を、SephadexTMS-500ゲルカラムのようなゲル濾過カラム上に通過させ、そして溶出されたレトロウイルス粒子が保持され得る。次いで十分な量の処方緩衝液を溶出液に添加し、成分の所望の最終濃度に到達し、そしてレトロウイルス調製物の希釈を最小限にし得る。次いで水性懸濁液は、好ましくは-70℃で貯蔵、または直ちに処方され得る。
別の手順では、粗製調製物は、共同所有の米国特許出願第08/093,436号で記載されるように、イオン交換カラムクロマトグラフィーにより精製され得る。簡単に述べれば、粗製組換えウイルスは濾過により清澄化され、次いで高度にスルホン化されたセルロースマトリックスを含むカラム上にロードされる。高度に精製された組換えレトロウイルスを、高塩緩衝液を用いてカラムから溶出し、次いで分子排除カラムに溶出液を通過させることにより、より望ましい緩衝液に交換する。回収後、次いで、処方緩衝液を添加し、上記のように最終濃度を調整した後、低温貯蔵または直ちに処方し得る。
乾燥処方が望まれる場合、粗製または精製レトロウイルス調製物を含む水性調製物を凍結乾燥または蒸発することにより調製し得る。凍結乾燥は、水性調製物を、ガラス転移温度未満、または溶液の共融点温度未満に冷却すること、および昇華により水を除去することを含む。例えば、Phillipsら(Cryobiology, 18巻:414, 1981)により記載されるような多工程凍結乾燥手順を用いて、処方された組換えウイルスを、好ましくは、-40℃〜-45℃の温度で凍結乾燥し得る。得られる組成物は、10重量%より少ない水を含むはずである。一旦凍結乾燥されると、このような調製物は安定であり、そして-20℃〜25℃で貯蔵され得る。
蒸発法では、水を、周囲温度でレトロウイルス調製物水性懸濁液から蒸発により除去する。蒸発は、噴霧乾燥(EP 520,748を参照のこと)を含む種々の技法により達成され得る。噴霧乾燥では、調製物は、通常空気である予熱されたガスの流れの中に送達され、その際に水が、懸濁液の小滴から急速に蒸発する。一旦脱水されると、組換えレトロウイルスは安定であり、そして-20℃〜25℃で貯蔵され得る。
先に述べたように、処方に用いられる本発明によるレトロウイルスを含む水性調製物は、代表的には、1つまたはそれ以上のサッカライド、高分子量構造添加剤、緩衝化成分、および水からなり、そしてまた、1つまたはそれ以上のアミノ酸を含み得る。これらの成分の組み合わせが、凍結および凍結乾燥、または蒸発による乾燥の際に作用し、組換えウイルスの活性を保存することが見出されている。1993年11月15日に出願された共同所有の米国特許出願第08/153,342号を参照のこと。スクロース、マンニトール、グルコース、トレハロース、イノシトール、フルクトース、マルトース、およびガラクトースを含む、種々のサッカライドが単独または組み合わせて用いられ得、ラクトースが特に好適である。サッカライドの濃度は、0.1重量%〜30重量%、好ましくは、約1重量%〜12重量%の範囲であり得る。ラクトースの特に好適な濃度は3重量%〜4重量%である。さらに、サッカライドの組み合わせもまた使用され得、ラクトースおよびマンニトール、またはスクロースおよびマンニトールを含む。凍結乾燥処方物を室温貯蔵することが意図される場合、水性溶液中に特定のサッカライドを用いるのが好適であり得ることもまた、当業者に明らかである。特に、ラクトースまたはトレハロースのようなジサッカライドがこのような処方に好適である。
1つまたはそれ以上の高分子量構造添加剤は、凍結の間にレトロウイルス凝集防止を補助するために用いられ得、そして凍結乾燥または乾燥状態で構造的支持体を提供する。本発明の意味では、構造添加剤は、それらが5000ダルトンより大きい場合、「高分子量」であると考えられる。好適な高分子量構造添加剤は、ヒト血清アルブミン(HSA)であるが、ヒドロキシエチル-セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、デキストラン、セルロース、ゼラチン、ポビドンなど他の物質もまた使用され得る。好ましくは、高分子量構造添加剤の濃度は、0.05%〜20%の範囲であり得、0.1重量%〜10重量%が好ましく、そして0.1重量%の濃度のHSAが特に好ましい。
アミノ酸は、存在する場合、レトロウイルス感染力をさらに保存する傾向がある。好ましいアミノ酸はアルギニンであるが、リジン、オルニチン、セリン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸またはアスパラギン酸のような他のアミノ酸もまた用いられ得る。好ましくは、アミノ酸濃度は、0.1重量%〜10重量%の範囲である。特に好ましいアルギニン濃度は0.1重量%である。
種々の緩衝化成分を用いて、所望のpH範囲に依存して、好ましくは7.0〜7.8の間の比較的一定のpHを維持し得る。適切な緩衝液は、リン酸緩衝液およびクエン酸緩衝液を含む。特に好ましい処方pHは7.4であり、そして好適な緩衝液はトロメタミンである。
処方物中に中性塩を含み、最終の等浸透圧塩濃度を調整することもまた好ましい。適切な中性塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化マグネシウムを含み、塩化ナトリウムが好適である。
次の再構成のために凍結乾燥状態で組換えレトロウイルスを保存する特に好適な方法は以下の工程を包含する:(a)組換えレトロウイルスに加えて、(i)4重量%のラクトース、(ii)0.1重量%のヒト血清アルブミン、(iii)0.03重量%以下のNaCl、(iv)0.1重量%のアルギニン、および約7.4のpHを提供するに十分な量のトロメタミンを含む、水性組換えレトロウイルス調製物を調製する工程;(b)この調製物を、約-40℃〜-45℃の温度まで冷却し、凍結調製物を形成する工程;および(c)昇華により凍結調製物から水を除去し、2重量%より少ない水を含む凍結乾燥組成物を形成する工程。組換えレトロウイルスが複製欠損であり、そして再構成に際しヒトへの投与に適切であることが好ましい。
本発明の凍結乾燥されるかまたは脱水されたウイルスは、種々の物質を用いて再構成され得るが、好ましくは、水を用いて再構成される。特定の例では、最終処方物を等浸透圧にする希釈塩溶液もまた用いられ得る。さらに、再構成されたウイルスの活性を増強することが知られている成分を含む水性溶液を用いることが有利であり得る。このような成分には、IL-2のようなサイトカイン、硫酸プロタミンのようなポリカチオン、または再構成ウイルスの形質導入効率を高める他の成分が含まれる。凍結乾燥されるかまたは脱水された組換えウイルスは、任意の便利な容量の水、あるいは凍結乾燥または脱水サンプルを実質的に、そして好ましくは完全な可溶化を可能にする上記の再構成剤を用いて再構成され得る。
組換えレトロウイルス粒子の投与
本発明の別の局面は、血友病Aを処置するための方法を提供し、この方法は、温血動物、特にヒトに、上記のような組換えレトロウイルスベクターを、治療的に有効な量の第VIII因子が産生されるように投与する工程を包含する。本明細書で用いられる用語、第VIII因子の「治療的に有効な量」は、患者における血液凝固を、患者が第VIII因子で処理されなかったときに観察される血液凝固より大きな程度に促進する量である。本発明によるレトロウイルスベクターの「治療的に有効な量」は、特定の患者において、第VIII因子の治療的に有効な量を産生するために投与されなければならない量をいう。血友病を患っている患者では、レトロウイルスベクターの治療的に有効な量は、治療的に有益な凝固を生成するに十分な第VIII因子の産生を惹起する量であり、そしてそれ故、一般に、患者の各担当医により決定されるが、約0.2ng/mL(「正常」レベルの約0.1%)またはそれ以上の血清レベルが治療的に有益である。代表的な投与量は、約105〜1012の感染性レトロウイルス粒子の範囲であり、好ましくは、107〜1010の感染性粒子の投与量である。他の投与量の尺度には、本発明によるレトロウイルス粒子で処置される患者の血液中で検出される第VIII因子の国際単位数が含まれ、適切なアッセイ、例えば、以下に述べるようなCoatestアッセイにより測定され得る。
いくつかの場合では、本発明によるレトロウイルスベクターは、ホルモン、放射線、および/または化学療法処置のような、他の治療の付加物として投与される。投与される全長の第VIII因子をコードするレトロウイルス粒子の量に影響を与える因子は、患者の年齢および全身状態、患者により生成される内因性の、すなわち非組換え第VIII因子の量などを含む。血友病Aは、血清第VIII因子レベルに依存して以下の4つの群に分類されている:重症(正常の第VIII因子レベルの1%未満)、中程度、軽度、および無症状(Brinkhous,K.M.,Thrombosis Research,67:329,1992)。
本発明の種々の実施態様で、組換えレトロウイルスベクターは、以下により詳細に記載されるように、インビボ、またはエクスビボの種々の経路により投与され得る。あるいは、本発明のレトロウイルスベクターはまた、種々の他の方法により患者に投与され得る。代表的な例は、リポフェクション(Felgnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7413,1989)、直接DNA注入(Acsadiら、Nature,352:815,1991;マイクロプロジェクタイルボンバードメント(Williamsら、Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA,88:2726,1991);数種のタイプのリポソーム(Wangら、Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA,84:7851,1987を参照のこと);CaPO4(Dubenskyら、Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA,81:7529,1984);DNAリガンド(Wuら、J.Biol.Chem.264:16985,1989);または核酸単独の投与(WO 90/11092)ような種々の物理的方法によるトランスフェクションを含む。他の可能な投与方法は、血液中または、あるいは、1つまたはそれ以上の特定の組織中、本発明によるレトロウイルスベクターで形質導入された細胞を含む移植組織などへのプロデューサー細胞株の注入を含み得る。
本発明による薬学的組成物が、インビボで、すなわち患者から細胞を前もって除去することなく患者の細胞に投与される場合、投与は1つまたはそれ以上の経路であり得る。この意味で「投与」は「送達」と等価である。代表的な投与経路は、筋肉内(i.m.)、皮下(sub-q)、静脈内(i.v.)、および腹腔内(i.p.)注入のような、従来の非経口経路を含む。他の適切な経路は、鼻、肺、および、肝臓、骨髄などの特定組織中への直接投与さえ含む。さらに、以下に記載するように、他の経路も用いられ得る。
本発明によるレトロウイルスベクターを含む薬学的組成物の経皮または局所塗布は、投与の代替経路として用いられ得る。何故なら、皮膚は、ヒト身体の最も広くかつ容易に接近し得る器官であるからである。経皮送達系(TDS)は、無傷の皮膚を介してレトロウイルス粒子を送達し得、治療的に有効であるのに十分な量で全身循環に到達する。TDSは、胃腸吸収問題および肝初回通過効果の排除、投与量および投与間隔の減少、ならびに改善された患者の応諾を含む、種々の利点を提供する。TDSの主要成分は、ポリマー、組換えレトロウイルスがコードする全長第VIII因子、賦形剤、およびエンハンサーから構成される制御された放出デバイス、ならびにこのデバイスを皮膚に固定する固定化システムである。多くのポリマーが記載されており、そしてこれらはゼラチン、アラビアゴム、パラフィンワックス、および酢酸フタル酸セルロース(Sogibayasiら、J.Controlled Release,29:177,1994)を含むがこれらに限定されない。これらのポリマーは、皮膚科学的に水相、粉末相、または油相中に処方され得る。種々の組み合わせが、単独または乳化剤の助けで、ローション、ペースト、軟膏、クリーム、およびゲルを生産し得る。
さらに、イオン浸透療法を用いて、電場の付与により皮膚中にまたは皮膚を通ってイオン化物質の増加した浸透を引き起こし得る。この方法は、拍動様式で薬物を送達し得る利点を有する(Singhら、Dermatology,187:235,1993)。
局所投与はまた、リポソーム中にレトロウイルス粒子をカプセル化することにより達成され得る。ヒアルロン酸が、リポソームの形成のための生体接着リガンドとして用いられ、火傷および創傷治癒の場合に細胞外マトリックスへの接着および保持を増大する(Yerushalmiら、Arch.Biochem.and Biophys,313:267,1994)。当業者が理解するように、リポソーム調製の方法は、サイズおよび形態を制御するために作製され得る。リポソームはまた、特定の細胞型を標的化するために、1つまたはそれ以上の標的化要素を含むように作られ得る。
眼投与は本明細書中に記載の組成物の送達を達成する代替経路である。結膜および鼻粘膜との接触により全身吸収が起こり、後者は、鼻涙管を通る排液の結果として起こる。上記のような処方物は、緩衝液、キレート剤、抗酸化剤、および保存剤のような不活性成分をさらに含み、そして複数投与使用に意図される眼内投薬形態中に取り込まれ得る。処方物はまた、水性懸濁液、軟膏、ゲル、挿入物、生体接着物、マイクロパーティクル、およびナノパーティクルからなり得る。
鼻腔はまた、全長の第VIII因子をコードするレトロウイルスベクターを含む組成物のための代替投与経路を提供する。例えば、ヒト鼻腔は、約150cm2の総表面積を有し、そして多くの血管がある粘膜層によって覆われている。円柱細胞、杯細胞、毛様体立方細胞から構成される気道上皮は、鼻腔の大部分を覆う(Chienら、Crit.Rev.in Therap. Drug Car. Sys.,4:67,1987)。上皮下組織は、密な血管のネットワークを含み、そして鼻からの静脈血は、直接に全身循環中に通り、肝臓における初回通過代謝を避ける。従って、鼻腔の上部領域への送達は、レトロウイルス粒子のより遅い浄化および増大した生物学的利用能を生じ得る。この領域で線毛がないことは、滴下に比べた場合の鼻噴霧の増加した有効性における重要な因子である。メチルセルロースなどの増粘剤の添加は、鼻内適用の沈着および浄化パターンを変化させ得る。さらに、鼻腔中の滞留時間を延長する手段として生体接着剤を用い得る。吸収促進剤の添加を伴うかまたは伴わないスプレー、滴下、および粉末を含む種々の処方物が、記載されている(Wearley,L.前出を参照のこと)。
経口投与は、舌下、頬、および胃腸送達を含む。舌下および頬(ほお)送達は、レトロウイルス粒子の急速な全身吸収を可能にし、そして肝初回通過代謝および胃と腸における分解を避ける。一方向性頬送達デバイスを、口腔粘膜吸収のみのために設計し得る。さらに、これらのデバイスは、拡散制限性の粘液形成を防ぎ、増強した吸収を可能にし得る。胃腸管を介する送達は、薬物放出の正確な標的化を可能にする。処方に依存して、組換えレトロウイルスは、胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、結腸、または直腸中の領域に特異的に送達され得る。経口処方物は、錠剤、カプセル、水性懸濁液、およびゲルを含む。これらは、生体接着性ポリマー、流体力学的にバランスをとった系、腸膨張性送達デバイス、胃腸内保持形態、腸溶性コーティング、賦形剤、または腸吸収促進剤を含み得る(Ritschel,W.A.,Meth.Exp.Clin.Pharmacol.,13:313,1991)。
ヒト直腸は、200〜400cm2の間の表面積を有し、そして血管およびリンパ管に富む。これは、本発明による組成物を投与するための代替経路を提供する。投与の実際の部位に依存して、肝臓による初回通過代謝を回避することが可能であり得る。全身循環を標的化することは、ビヒクルを内部直腸括約筋の後ろの領域に送達することにより達成され得、これは、下大静脈中への直接吸収を可能にし、これにより門脈循環を回避し、そして肝臓における代謝を避ける。肝臓は、ビヒクルを、直腸膨大部領域に送達することにより標的化され得、門脈系中への吸収を可能にする(Ritschel、前出)。興味深いことに、肝臓移植は、血友病Aを矯正し、そして第VIII因子mRNAが肝臓および単離肝細胞中で検出可能である(Zatloukalら、前出)。これらの結果は、本明細書で記載されるようなレトロウイルスベクターを、直接的または間接的に肝臓へ送達することが、とりわけ、本発明の実施において好適であることを示唆している。
あるいは、肺投与がエアロゾル投与により達成され得る。肺は高度に血管化されているので、この型の投与は全身送達を可能にする。エアロゾル生成に通常用いられる3つの系は、噴霧器、加圧メーター投与量吸入器、および乾燥粉末吸入器であり、これらすべては当該分野で公知である。エアロゾル療法は閉塞性気管支疾患において非常に一般的であるが、全身疾患の処置についても同様に用いられ得る。ヒト成人肺の表面積は約75m2であり、そして数秒以内にこの全領域を覆うためにひと吹きのエアロゾルを必要とするに過ぎない。肺深部にある肺胞の壁は極めて薄いので吸収は急速に起こる。吸収および浄化は、粒子サイズおよび溶解度を含む多くの因子に依存する(Wearley,L.前出)。好ましくは、粒子は5μmより小さい直径である。
膣粘膜は層を成す鱗状上皮からなる。遺伝子送達ビヒクルは、膣口を通して粘膜上に投与され得る。処方物は、軟膏、クリーム、および坐剤を含む。これらおよび他の投与経路に関するさらなる情報は、本願と同日に出願された米国特許出願第 / ,号、代理人書類番号930049.429に見出され得る。
本発明のレトロウイルスベクターおよび粒子のインビボ投与に対する代替として、エクスビボ投与を使用し得る。エクスビボ処置は、患者から細胞集団の引き抜きまたは取り出しを予見する。模範的な細胞集団は、骨髄細胞、肝臓細胞、および新生児のへその緒由来の血液細胞を含む。このような細胞を処理して、上記の手順の前に、形質導入用に所望の細胞を精製し得、例えば、CD34+骨髄前駆細胞のようなこのような細胞集団のサブセットが得られ得る。好適な精製方法は、司種々の細胞選別技法(例えば、抗体パニング、FACS、および所望の細胞型に特異的に反応する抗体に結合したマトリックスを用いるアフィニティクロマトグラフィー)を含む。次いで、単離された細胞を形質導入し、その後それらを回収した患者に直ちに再導入し得る。あるいは、細胞を、再導入に先だって当業者に公知の種々の技法により培養中で拡大し得る。
本発明の別の実施態様では、全長の第VIII因子をコードするレトロウイルスベクターを、他の治療化合物と組み合わせて血友病患者に投与する。当業者が理解するように、このような化合物は、米国特許出願第 / ,号(代理人書類番号930049.428、本願と同日に出願)に記載されるように、患者に1つまたはそれ以上の他の治療遺伝子を送達するために設計された他の遺伝子送達ビヒクルを含み得るが、これに限定されない。例えば、血友病Aを患う患者はまた、HIVおよび/またはHBVで感染され得る。従って、このような患者はまた、このような疾患を処置するために設計された遺伝子送達ビヒクルで、例えば、患者の免疫系を刺激することにより[米国特許出願第08/136,739号、前出を参照のこと、また1993年3月17日に出願された米国特許出願第08/032,385号も参照のこと]、または後に投与される細胞傷害性化合物に感受性になるように感染細胞を調製することにより[1993年11月18日に出願された米国特許出願第08/155,944号を参照のこと]処置され得る。
実施例
以下の実施例は、本発明をより十分に説明するために含まれる。さらに、これらの実施例は、本発明の好適な実施態様を提供し、そしてその範囲を限定することを意味しない。以下の実施例で記載される手順の多くについての標準的方法、または適切な代替手順は、例えば、「Molecular Cloning」第2版(Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1987)および「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubelら、編、Greene Associates/Wiley Interscience, NY, 1990)のような分子生物学の広く再編成されたマニュアルに提供されている。
実施例1
全長の第VIII因子遺伝子を含むレトロウイルスベクターの構築
この実施例は、全長の第VIII因子ポリペプチドをコードする核酸分子を含むいくつかのレトロウイルスベクターの構築を記載する。当業者に明らかであるように、他の匹敵するレトロウイルスベクターが同様に構築され得る。
A.レトロウイルス骨格KT-3およびKT-1をコードするプラスミドの調製
N2ベクター(Armentanoら,J. Vir., 61:1647,1987;Eglitasら,Science 230:1395,1985)由来のモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)5'長末端反復(LTR)EcoRI-RcoRIフラグメント(gag配列を含む)をプラスミドSK+(Stratagene, La Jolla, CA)に連結する。得られた構築物をN2R5と名づける。このN2R5構築物を、ATG開始コドンをATTに変える部位特異的インビトロ変異誘発によって変異させ、gag発現を防止する。変異させたこのフラグメントは200塩基対(bp)長であり、そしてPstI制限部位が隣接している。PstI-PstI変異フラグメントをSK+プラスミドから精製し、そしてそれをプラスミドpUC31中のN2 MoML V5' LTRのPstI部位に挿入することによって、変異していない200bpフラグメントを置換する。プラスミドpUC31はpUC19(Stratagene, La Jolla, CA)に由来し、そして追加の制限部位XhoI、BglII、BssHIIおよびNcoIをポリリンカーのEcoRI部位とSacI部位との間に含む。この構築物をpUC31/N2R5gMと名づける。
次に、N2由来の1.0KbのMoMLV 3' LTR EcoRI-EcoRIフラグメントをプラスミドSK+中にクローニングして、N2R3-と称する構築物を得る。次いで、1.0kbのClaI-HindIIIフラグメントをこの構築物から精製する。
ネオマイシン(neo)ホスホトランスフェラーゼ遺伝子の発現を駆動するSV40初期プロモーターを含む、pAFVXMレトロウイルスベクター(Krieglerら,Cell 38:483,1984;St. Louisら,(1988)Proc. Nat'l, Acad. Sci. USA,第85巻:3150-3154頁)由来のClaI-ClaI優性選択マーカー遺伝子フラグメントを、SK+プラスミド中にクローニングする。この構築物をSK+SV2-neoと名づける。次いで、1.3kbのClaI-BstBI遺伝子フラグメントをSK+SV2-neoプラスミドから精製する。
1.0kbのMoMLV 3' LTR ClaI-HindIIIフラグメント(N2R3-由来)を、同様に消化したpUC31/N2R5gM中に連結することによって、KT-3(pKT-3)レトロウイルスベクターをコードするプラスミドを生成する。次に、neo遺伝子をコードする1.3KbのClaI-BstBIフラグメントを、得られたプラスミド構築物のClaI部位に挿入する。
KT-3に類似のレトロウイルス骨格をコードするプラスミドpKT-1もまた、構築される。但し、このプラスミドには、優性の選択マーカー遺伝子neoは挿入されていない。pKT-1を用いて、全長の第VIII因子遺伝子を含むKT-1を基礎にしたレトロウイルスベクターを産生する。
B.全長の第VIII因子をコードするプラスミドベクターの産生
以下に、全長の第VIII因子cDNAをコードするいくつかのレトロウイルスベクターの構築を記載する。レトロウイスベクターのパッケージングの制約により、そして形質導入細胞の選択は治療に必要とされないために、選択マーカー遺伝子を欠くレトロウイルス骨格(例えば、KT-1)を用いる。
全長の第VIII因子をコードする遺伝子を、種々の供給源から入手し得る。1つのこのような供給源は、プラスミドpCIS-F8(EP 0 260 148 A2、1993年3月3日公開)である。このプラスミドは、全長の第VIII因子cDNAを含み、その発現はCMV主要即時型(CMV MIE)プロモーターおよびエンハンサーの制御下にある。第VIII因子cDNAは、第VIII因子遺伝子由来の約80bpの5'非翻訳配列および約500bpの3'非翻訳領域を含む。さらに、CMVプロモーターと第VIII因子配列との間には、CMVイントロン配列、または「シス」エレメントがある。このシスエレメントは、約280bpにわたり、Ig可変領域イントロンにより供給される介在領域とともに、免疫グロブリン遺伝子由来のスプライスアクセプターの約140bp上流にCMV主要即時型プロモーター由来のスプライスドナー部位を含む。この領域の配列、スプライスドナーからスプライスアクセプターまでを配列番号3に示す。
i.レトロウイルスベクターJW-2をコードするプラスミドの構築
全長の第VIII因子を発現するためのレトロウイルスベクターをコードするプラスミドpJW-2を、pKT-1由来のKT-1骨格を用いて構築する。pKT-1中への第VIII因子cDNA挿入物の方向性クローニングを容易にするために、唯一のXhoI部位を、部位特異的変異誘発によりNotI部位に変換する。次いで得られたプラスミドベクターをNotIおよびClaIで開裂する。pCIS-F8を、ClaIおよびEagI(それらには2つの部位がある)で完全消化し、全長の第VIII因子をコードするフラグメントを遊離させる。次いで、このフラグメントを、NotI/ClaI制限消化ベクター中に連結し、pJW-2と称するプラスミドを生成する。
ii.レトロウイルスベクターND-5をコードするプラスミドの構築
pND-5と称する、第VIII因子cDNAの3'非翻訳領域の約80%(約370bp)の短縮型をコードするプラスミドベクターを以下のように、pKT-1ベクター中に構築する:pJW-2について記載されるように、用いたpKT-1ベクターは、そのXhoI制限部位がNotI制限部位に置き換えられている。第VIII因子の挿入物は、pCIS-F8をClaIおよびXbaIで消化することにより作製される。後者の酵素は、第VIII因子停止コドンの5'を切断する。次いで、第VIII因子遺伝子3'コード領域以外のすべてを含む約7kbフラグメントを精製する。pCIS-F8をまた、XbaIおよびPstIで消化し、この遺伝子の終止コドンを含む121bpのフラグメントを遊離する。このフラグメントをまた精製し、次いで第VIII因子遺伝子の残りの部分をコードするより大きなフラグメントおよびClaI/PstI制限消化したBLUESCRIPT▲R▼KS+プラスミド(Stratagene、前出)と3点連結(three way ligation)で連結し、pND-2と称するプラスミドを作製する。
次いで、pND-2中の唯一のSmaI部位を、希釈条件下で、ClaIリンカー(New England Biolabs,Beverly,MA)をSmaI消化により作成される平滑末端に連結することにより、ClaI部位に変更する。再環状化および連結の後、2つのClaI部位を含むプラスミドを同定し、そしてpND-3と称する。
pND-3内の第VIII因子配列(ClaI部位により結合し、そして3'非翻訳領域の多くを短縮させた全長遺伝子を含む)を、以下のように、pJW-1のNotI/ClaI消化物由来のプラスミド骨格中(XhoI部位で切断し、クレノウで平滑化し、そしてNotIリンカー(New England Biolabs)を挿入することによるpKT-1誘導体)にクローン化する。このプラスミド骨格は、5.2kbのNotI/ClaIフラグメントを生じる。pCIS-F8をEagIおよびEcoRVで切断し、そして約4.2kbの生成フラグメント(全長の第VIII因子遺伝子の5'部分をコードする)を単離する。pND-3をEcoRVおよびClaIで消化し、そして3.lkbのフラグメントを単離する。次いで、第VIII因子遺伝子の部分を含むこの2つのフラグメントをNotI/ClaI消化ベクター骨格中に連結し、pND-5と称するプラスミドを作製する。
当業者に明らかであるように、上記のようなレトロウイルスベクターをコードするプラスミドの構築後、次いでこのようなプラスミドは、感染性組換えレトロウイルスを産生し得る種々の細胞株の産生に用いられ得る。このような細胞株の産生を以下の実施例に記載する。
実施例2
全長の第VIII因子遺伝子を含むレトロウイルスベクター粒子を生成する細胞株の産生
この実施例では、全長の第VIII因子をコードする組換えレトロウイルス粒子を生成し得るパッケージングおよびプロデューサー細胞株を生成するための手順を記載する。詳細には、3つのパッケージング細胞株、DA(イヌ細胞株D17由来のアンホトロピックパッケージング細胞株)、HX(ヒト細胞株HT1080由来のキセノトロピックパッケージング細胞株)、およびそれらのパッケージング中間体の産生を以下に記載する。
A.アンホトロピックパッケージング細胞株の生成
gag/polパッケージング細胞株中間体を生成する最初の工程として、D17細胞およびHT1080を、1μgのメトトレキセート耐性ベクターpFR400(Grahamおよびvan der Eb, Virology, 52:456,1973)、および10μgのMoMLV gag/pol発現ベクターpSCV10を用いて、リン酸カルシウム共沈殿(Grahamおよびvan der Eb、前出)により同時トランスフェクトする。pSCV10は、CMV MIE転写プロモーター(Boshartら、Cell,41:521,1985)を含む0.7kb HincII/XmaIIIフラグメント、gag/polコード領域を包含するMoMLVプロウイルスプラスミドMLV-K(Millerら、Mol.Cell.Biol,5:531,1985)由来の5.3kbPstI(部分的)/ScaIフラグメント、およびSV40後期転写終結、シグナルを含むSV40 DNA(残基2717〜2363)由来の0.35kb DraIフラグメントを、BLUESCRIPT▲R▼ベクターSK+中に、リンカーおよびその他の標準的組換えDNA技法を用いて組み合わせることにより生成する。
トランスフェクトされた細胞を、ジピリミドールおよびメトトレキセートを用いて選択する。個々の薬物耐性細胞コロニーを拡大し、そして細胞外逆転写酵素(RT)活性(Goffら、J.Virol.,38:239, 1981を改変)によりgag/pol発現について、および抗p30抗体(National Cancer Instituteからのヤギ抗血清#77S000087)を用いるウェスタンブロットにより細胞内p30gagについて分析する。この方法は、各細胞型において、標準のマウスアンホトロピックパッケージング細胞株PA317(1991年11月27日に出願された米国特許出願第07/800,921;ATCC CRL 9078)により産生される両方のタンパク質のレベルと比べて10〜50倍高いレベルの両タンパク質を発現する個々の細胞クローンを同定した。
アンホトロピックパッケージング細胞株を作成するために、高レベルのgag/polを発現するD17およびHT1080細胞株を、1μgのフレオマイシン耐性ベクターpUT507(Mulsantら、14:243,1988)、および10μgのアンホトロピックエンベロープ発現ベクターpCMVenvAmNheを用いたことを除いて、上記のように同時トランスフェクトする。フレオマシンで選択した後、個々の薬物耐性細胞コロニーを拡大し、そして抗gp70(N.C.I.からのヤギ抗血清#79S000771)を用いるウェスタンブロットにより細胞内gp80env発現について分析する。相対的に高いレベルのgag/polおよびアンホトロピックenvの両方を発現する、各細胞型のいくつかのクローンを同定する。
i.「Gホッピング」
最も高い力価は、レトロウイルスベクターを感染(トランスフェクションに対抗して)によりパッケージング細胞株に導入する場合に得られる(Millerら、Somat.Cell Mol.Genet.,12:175,1986)。アンホトロピックMLVベクターは、これらの宿主細胞型に感染することが知られているが、パッケージング細胞株DAおよびHAは、アンホトロピックenvタンパク質を発現するために、感染について、アンホトロピックベクターによりブロックされる(すなわち、「ウイルス干渉」)。「ウイルス干渉」の問題を克服するために、アンホトロピックエンベロープタンパク質を発現する細胞株は、それらの細胞型を別に感染し得るアンホトロピックMLVベクターにより後期感染をブロックすることにより、他のウイルスエンベロープ(例えば、アンホトロピックレセプター以外の細胞レセプターに結合する、キセノトロピックenvまたはVSV Gタンパク質)を含むベクター粒子を以下の様式で生成し得る。パッケージングされるべきレトロウイルスベクターをコードする10μgのプラスミドDNAを、キセノトロピックenvまたはVSV Gタンパク質のいずれかを発現する10μgのDNAとともに、高レベルのgag/polを発現する細胞株に同時トランスフェクトする。それぞれ、キセノトロピックenvまたはVSV Gタンパク質を含む得られたベクターを、同時トランスフェクトした細胞において一過的に産生する。トランスフェクションの2日後、無細胞上清を見込みのあるパッケージング細胞株(gag、pol、およびenvを発現する)に添加する。両型のベクターは、アンホトロピックレトロウイルスによる感染についてブロックされた細胞に効率的に感染する。次いで、無細胞上清を、コンフルエントな単層から回収し、そしてPCRにより力価測定する。最も高い力価を産生する細胞クローンを、パッケージング細胞株として選択し、そしてDA(アンホトロピックenvを発現するD17)細胞およびHA(アンホトロピックenvを発現するHT1080)細胞と呼ぶ。
B.キセノトロピックパッケージング細胞株の生成
アンホトロピックレトロウイルス粒子と対照的に、キセノトロピックパッケージング細胞株から産生された粒子は、広い宿主範囲を示し、従ってより広いスペクトルの細胞型および/または異なる種からの細胞を形質導入するのに有用であるらしい。このようなキセノトロピックパッケージング細胞株から産生されたレトロウイルス粒子はまた、より高い形質導入効率などを示し得る。キセノトロピックパッケージング細胞株を、アンホトロピックパッケージング細胞株を作製するために記載されたものと同様の様式で生成し得る。例えば、gag/pol過剰発現体として同定されたHT1080細胞株を、1μgのpUT507(前掲)および10μgのキセノトロピックエンベロープ発現ベクターpCMVxenoを用いた以外は、上記のように同時トランスフェクトする。pCMVxenoを、リンカーおよび他の標準的な組換えDNA技術を用いて、pSCV10(前掲)について記載されたCMV初期プロモーターおよびSV40後期終結シグナルを、CMVプロモーター-エンベロープ-終結シグナルの順に、クローンNZB9-1(O'Neillら、J.Virol.,53:100,1985)から得られたキセノトロピックエンベロープ由来のコード領域を含む単離した2.2kb NaeI/NheIフラグメントと結合させて作製した。フレオマイシン選択の後、個々の薬剤耐性細胞クローンを拡大し、そして特定の抗血清を用いたウエスタンブロットにより、MLVp30gagおよびgp75envタンパク質の細胞内発現について分析する。比較的高レベルのgag/polおよびキセノトロピックenvの両方を発現するクローンを維持する。
さらに、キセノトロピックHT1080プロデューサー細胞株(すなわち全長第VIII因子をコードする感染性レトロウイルス粒子を産生する)の産生の間のウイルス干渉を避けるために、上記のような「Gホッピング」を用い得る。10μgのパッケージされるべきレトロウイルスベクター(例えば、pJW-2またはpND-5)をコードするプラスミドDNAを、VSV Gタンパク質が発現される10μgのDNAとともに、高レベルのgag/polを発現する細胞株に同時トランスフェクトする。組換えレトロウイルス粒子を一過的に産生する。トランスフェクションの2日後、無細胞上清を、gag、pol、およびキセノトロピックenvを発現する見込みのあるHT1080パッケージング細胞株に添加する。次いで、無細胞上清をコンフルエントな単層から回収し、そしてPCRにより力価測定する。最も高い力価を産生する細胞クローンを、パッケージング細胞株として選択し、そしてHX(キセノトロピックenvを発現するHT1080)細胞と呼ぶ。
C.ポリトロピックパッケージング細胞株の生成
ポリトロピックエンベロープを含む組換えレトロウイルス粒子は、ヒト細胞型にはほとんど形質導入されず、従って、細胞膜上のポリトロピックレセプターを発現するそれらの細胞型のみに対して、本発明の組換えレトロウイルスベクターを標的化する努力において用いられ得る。ポリトロピックパッケージング細胞株の生成の例として、1μgのフレオマイシン耐性ベクターpUT507(前掲)および10μgのポリトロピックエンベロープ発現ベクターpCMVMCF(pSCV10のMoMLV gag/pol(前掲)の代わりにMCF-247W(Hollandら、J.Viol,53:152,1985)のポリトロピックエンベロープをコードする2kb BamHI/NheIフラグメントを含む)を使用した以外は、HT1080に対しgag/polオーバーエクスプレッサーを、上記の同じ技術により同時トランスフェクトする。フレオマイシン選択の後、個々の薬剤耐性クローンを拡大し、そして特定の抗血清を用いたウエスタンブロットにより、MLVgp70envタンパク質の細胞内発現について分析する。
上記のように、VSV Gタンパク質を含むレトロウイルスベクター粒子を、パッケージされるべきレトロウイルスベクター(pJW-2またはpND-5)をコードする10μgのプラスミドDNAの使用により作製し、高レベルのgag/polを発現する細胞株中でVSV Gタンパク質を発現する10μgのDNAとともに同時トランスフェクトする。この培養物由来の無細胞上清を用いて、比較的高レベルのgag/polおよびポリトロピックenvの両方を発現するHT1080クローンに形質導入する。無細胞上清をコンフルエントな単層から回収し、そして上記のように力価測定する。比較的高レベルのgag/polおよびポリトロピックenvの両方を発現するクローンを同定し、維持し、そして「HP」(ポリトロピックenvを発現するHT1080)と呼ぶ。
D.複製可能なレトロウイルス(RCR)の検出
複製可能なレトロウイルスを産生するための上記のパッケージング細胞の性質を、ベクターN2を含む同時培養HXおよびDAパッケージング細胞により、厳密に試験する。アンホトロピックベクターは、キセノトロピックエンベロープを産生する細胞に感染し得、そしてその逆もあり得るので、連続交差感染が起こり得、これによりRCRを産生する可能性が増加する。293またはMus dunni細胞(NIH NIAID Bethesda,MD)(両細胞はアンホトロピックおよびキセノトロピックレトロウイルスを検出し得る)でのベクターレスキューアッセイによる判断と同様に、アンホトロピックおよびキセノトロピックレトロウイルスの産生に関するアッセイにより、RCRを検出する。
i.拡大S + L - アッセイ
拡大S+L-アッセイは複製可能感染性ウイルスが目的の細胞株の上清中に存在するかどうかを決定する。このアッセイは感染性レトロウイルスが指向細胞株MiCl1(ATCC寄託番号CCL 64.1)上にフォーカスを生成するという実験的観察に基づいている。MiCl1細胞株はマウス肉腫ウイルス(MSV)による形質導入によってMv1Luミンク細胞株(ATCC寄託番号CCL 64)に由来する。これは複製欠損マウス肉腫プロウイルスを含有する(S+)が、複製可能マウス白血病プロウイルスを含有しない(L-)非プロデューサー非形質転換復帰変異クローンである。複製可能レトロウイルスによるMiCl1細胞の感染は、MSVゲノムを「活性化」してフォーカス形成をもたらす「形質転換」を誘発する。
複製可能レトロウイルスの存在について試験すべき細胞株から上清を取り出し、そして0.45μフィルターに通してすべての細胞を除去する。1日目に、Mv1Lu細胞を2mlのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、10%FBSおよび8μg/mlポリブレン中で1.0×105細胞/ウェル(試験されるべき1サンプルあたり1ウェル)で6ウェルプレートに播種する。陽性および陰性コントロールのために、Mv1Lu細胞を同じ方法で別の6ウェルプレートに播種する。細胞を37℃、10%CO2で一晩インキュベートする。2日目に、1.0mlの試験上清をMv1Lu細胞に加える。陰性コントロールプレートを、1.0mlの培地とともにインキュベートする。陽性コントロールは、MAウイルス(Millerら,Molec. and Cell Biol. 5:431,1985)の3種類の希釈(それぞれ1.0ml培地中200フォーカス形成単位(ffu)、20ffuおよび2ffu)からなり、これを陽性コントロールウェル中の細胞に加える。細胞を一晩インキュベートする。3日目に、培地を吸引し、そして3.0mlの新鮮なDMEMおよび10%FBSを細胞に加える。細胞をコンフルエントまで増殖させ、そして6日目および10日目に1:10に分割して、すべての複製可能レトロウイルスを増幅する。13日目に、Mv1Lu細胞上の培地を吸引し、そして2.0mlのDMEMおよび10%FBSを細胞に加える。さらに、MiCl1細胞を2.0mlのDMEM、10%FBSおよび8μg/mlポリブレン中で1.0×105細胞/ウェルでプレートする。14日目に、Mv1Lu細胞由来の上清をMiCl1細胞の対応するウェルに移し、そして37℃、10%CO2で一晩インキュベートする。15日目に、培地を吸引し、そして3.0mlの新鮮なDMEMおよび10%FBSを細胞に加える。21日目に、細胞を細胞の単層上のフォーカス形成(単層を覆いかつ付着したままの密集屈折性細胞として現れる)について調べる。フォーカスがMiCl1細胞上に現れれば、その試験物は複製可能レトロウイルスで汚染されていると決定される。これらの手順を用いて、全長の第VIII因子プロデューサー細胞株が複製可能レトロウイルスで汚染されていないことを示し得る。
ii.プロデューサー細胞株の同時培養およびMdHマーカーレスキューアッセイ
ベクタープロデューサー細胞株におけるRCRの存在を試験するための別の方法として、プロデューサー細胞を同数のMus dunni細胞とともに同時培養する。0日日に、5.0×105のMus dunni細胞を5.0×105のプロデューサー細胞と混合し、そしてその混合物を10cmプレート(10mlの標準培養培地/プレート、4μg/mlポリブレン)中に播種することによって、小規模同時培養を行なう。プロデューサー細胞株を効果的に希釈除去(dilute out)し、そしてRCRの最大増幅を提供するために、3〜4日毎に培養物を1:10の比率で分割し、そして5.0×105Mus dunni細胞を各培養プレートに加える。14日目に、培養上清を収集し、0.45μのセルロース-アセテートフィルターに通し、そしてMdHマーカーレスキューアッセイで試験する。1.0×108のMus dunni細胞と1.0×108のプロデューサー細胞との混合物を合計20のT-150フラスコ(30mlの標準培養培地/フラスコ、4μg/mlポリブレン)に播種することによって、大規模同時培養を行なう。培養物を3、6および13日目に1:10の比率で分割し、そして9日目に1:20の比率で分割する。15日目に、最終上清を収集し、ろ過し、そしてそれぞれの一部をMdHマーカーレスキューアッセイで試験する。
MdHマーカーレスキュー細胞株を、LHL(ハイグロマイシンB耐性遺伝子をコードするレトロウイルスベクター(Palmerら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:1055-1059,1987)で形質導入されたMus dunni細胞のプールからクローニングする。このレトロウイルスベクターを、RCRによる細胞の感染時に、MdH細胞からレスキューし得る。4μg/mlポリブレンを含む標準培養培地(10%FBS、1%200mM L-グルタミン、1%非必須アミノ酸を含むDMEM)2ml中に1×105のMdH細胞を含む6ウェルプレートのウェルに1mlの試験サンプルを加える。24時間後に、培地をポリブレンを含まない標準培養培地で置換する。2日後、MdH培養上清の全量を0.45μのセルロース-アセテートフィルターに通し、そしてポリブレンを含む標準培養培地2ml中の5.0×104のMus dunni標的細胞を含む6ウェルプレートのウェルに移す。24時間後、上清を250μg/mlのハイグロマイシンBを含む標準培養培地で置換し、その後2日目および5日目に、200μg/mlのハイグロマイシンBを含む培地で置換する。選択後9日目に、ハイグロマイシンBに耐性なコロニーが現れ、そしてそれらは0.2%クマシーブルーで染色することによって可視化される。
実施例3
全長第VIII因子をコードするレトロウイルスベクター粒子の産生
ヒトキセノトロピックパッケージング細胞株およびイヌアンホトロピックパッケージング細胞株、それぞれHXおよびDA由来の全長第VIII因子をコードするJW-2およびND-5組換えレトロウイルス粒子の産生を以下に記載する。
A.pND-5によるパッケージング細胞株HXおよびDAの一過性プラスミドDNAトランスフェクション
1日目に、パッケージング細胞株HXをDMEMおよび10%ウシ胎児血清(FBS)とともに10cm組織培養皿に5.0×105細胞で接種する。2日目に、トランスフェクションの4時間前に、培地を5.0mLの新鮮な培地で置換する。40.0μlの2.5M CaCl2、10μgのpJW-2またはpND-5のいずれか、および脱イオンH2Oを混合して総容積を400μlにすることによって、標準的なリン酸カルシウム-DNA共沈を行なう。次いでこのDNA-CaCl2溶液を、一定に攪拌しながら400μlの沈澱緩衝液(50mM HEPES-NaOH, pH7.1;0.25M NaCl,および1.5mM Na2HPO4-NaH2PO4)に滴下する。この混合物を室温で10分間インキュベートする。得られた細かい沈降物を細胞の培養ディッシュに加える。細胞をDNA沈澱物とともに37℃で一晩インキュベートする。3日目に、培地を吸引し、そして新鮮な培地を加える。上清を4日目に取り出し、0.45μlのフィルターに通し、そして−80℃で保存する。
B.パッケージング細胞株形質導入
1日目に、DAパッケージング細胞を、2ml DMEMおよび10%FBS、4μg/mlポリブレン(Sigma, St, Louis, MO)中に5.0×105細胞/3cm組織培養ディッシュで播種する。2日目に、3.0ml、1.0mlおよび0.2mlの新たに採集したJW-2またはND-5レトロウイルス含有HX培地を細胞に加える。細胞を37℃で一晩インキュベートする。3日目に、細胞をプレートから取り出し、その細胞懸濁液を計数し、その細胞懸濁液を10細胞/mlまで希釈し、そして96ウェルプレート(Corning, Corning, NY)の各ウェルに0.1ml(1細胞/ウェル)を加えることによって、この細胞のプールを限界希釈によりクローン化する。細胞を37℃、10%CO2で14日間インキュベートする。JW-2を産生する24クローンおよびND-5を産生する24クローンを選択し、そして24ウェルプレート、6ウェルプレート、次いで10cmプレートまで拡大し、この時点で、それらのクローンを適切なレトロウイルスベクターの発現についてアッセイし、上清を集め、ウイルス力価についてアッセイする。
またパッケージング細胞株HXは、HX上清由来のDA細胞の形質導入に関して記載したものと同様の様式でDAプロデューサー細胞株から生成させたJW-2またはND-5組み換えレトロウイルスベクターのいずれかで形質導入し得る。
上記の手順を用いて、培養物中で1×106cfu/ml以上の力価を有するJW-2またはND-5のいずれかを産生するDAおよびHX細胞株を誘導する。
C.力価アッセイ
全長第VIII因子をコードする組換えレトロウイルスベクター(例えば、JW-2およびND-5)は、選択マーカーをコードする遺伝子を含まず、薬剤耐性コロニーの選択に基づくもの以外の力価測定アッセイが必要とされる。この目的ために、抗体およびPCRアッセイ(下記の後者)が、レトロウイルスベクターの力価(すなわち、本発明のレトロウイルスベクターを含む感染性粒子の数)を決定するために使用し得る。本発明のレトロウイルスベクターに独特な配列を増幅するためのPCRの使用のために、種々のプライマーが必要とされる。このようなプライマーは、当業者により容易に設計され得、そして使用されたレトロウイルスベクター骨格およびその成分、増幅されるべき所望の特定の領域(単数または複数)などに依存する。特定のプライマー対の代表的な例として、LTR配列、パッケージングシグナル配列、またはレトロウイルス骨格の他の領域に特異的なものが挙げられ、そしてまたベクター中の全長第VIII遺伝子に特異的なプライマー(これは内性第VIII因子ゲノム配列に存在するらしいイントロン配列を欠く、cDNA由来の誘導体に、帰する)も挙げられる。このようなPCR力価測定アッセイを用いることにおけるさらなる利点として、ゲノム転移(rearrangement)などについてアッセイする能力が挙げられる。当業者が認識するように、下記のPCR力価測定アッセイもまた、レトロウイルス系以外の遺伝子移送系に適用可能である。例えば、これは、アデノウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、直接または「裸の」DNAなどに由来する遺伝子移送系のための力価を測定するために用い得る。
本発明の実施において、PCR力価測定アッセイを、全長第VIII因子発現を指向し得るレトロウイルスベクターで形質導入した、既知の数のHT1080細胞、代表的には1×105細胞を、収穫前に少なくとも16時間6ウェルプレートで増殖させることにより実施する。これらの形質導入に使用したレトロウイルスベクターは、細胞培養上清または血液のいずれかから得る。プレートあたり1ウェルを細胞計測のために確保する。他のウェルからの細胞を溶解し、そしてその内容物を単離する。DNAを血液用のQIAmp血液キットおよび細胞培養PCR(QIAGEN,Inc.,Chatsworth,CA)を用いて調製する。DNAを5×106細胞等価物/mLに再懸濁し、ここで1つの細胞等価物は1つの細胞のDNA含有量と等しい。
力価を算定するために、標準曲線を、非形質導入HT1080細胞(ネガティブコントロール)、および既知のベクターで形質導入しかつ細胞ゲノムあたり1コピーのそのベクターを有するHT1080細胞(ポジティブコントロール)から単離されたDNAを用いて作製する(例えば、ネオマイシン耐性のような選択マーカーをコードするレトロウイルスベクターで形質導入したパッケージング細胞株から調製され得る)。ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールの両方について、DNAを5×106細胞等価物/mLに再懸濁する。この標準曲線を、異なる量のポジティブコントロールDNAおよびネガティブコントロールDNAを混合し、一方総DNA量を一定に保ち、そしてレトロウイルスベクターの特定の領域に特異的なプライマーを用いるPCRにより、それから特異的な配列を増幅することにより作製する。標準曲線作製のための混合物の代表群を以下に示す:
Figure 0003941963
各チューブからの5μLを、8個の反応チューブの1つに置き(2連をまた調製する)、残りを-20℃で保存する。各サンプルDNA調製物からの5μLを、2連でそれら自身の反応チューブに置く。次いで、PCR反応(50μL総容量)を、試験されるべきチューブあたり以下の成分を含む45.0μLの反応混合物を添加することにより開始する:24.5μLの水、5μLの10×反応PCR緩衝液、4μLの25mM MgCl2、4μLのdNTP(2.5mMのdATP、dGTP、dCTP、およびdTTPのそれぞれを含む)、5μLのプライマー混合物(100ngまたは各プライマー)、0.25μLのTaqStartモノクローナル抗体(Clontech Laboratories,Inc.,Palo Alto,CA)、1.00μL TaqStart緩衝液(Clontech Labs,Inc.)、および0.25μL AmpliTaq DNAポリメラーゼ(Perikin-Elmer,Inc.,Norwalk,CN)。反応混合物を反応チューブにアリコートする直前に、1μLのα-32P dCTP(250μCi;3000C/mmol,10mCi/mL,Amersham Corp.,Arlington Heights,IL)を、反応混合物に添加する。45.0μLの反応混合物を各反応チューブにアリコートした後、チューブに蓋をしそしてサーモサイクラーに置く。特定の変性、アニーリング、伸長時間および温度、ならびにサーモサイクルルの数は、使用するプライマー対のサイズおよびヌクレオチド組成に依存して変化する。次いで、20〜25の増幅サーモサイクルを実施する。次いで、5μLの各反応物を、DE81イオン交換クロマトグラフィーペーパー(Whatman,Maidstone,England)上にスポットし、そして10分間風乾する。次いで、そのフィルターを、1回の洗浄あたり100mL(50mM Na2PO4、pH7、200mM NaCl)で5回洗浄し、その後風乾し、次いでサランラップにサンドイッチする。定量は、PhosphoImager SI(Molecular Dynamics,Sunnyvale,CA)で実施する。代表的には、フィルターは蛍りん光体(phosphor)スクリーンに曝露し、これは適切な期間(代表的には約120分)で電離放射線からのエネルギーを貯蔵する。曝露後、蛍リン光体スクリーンをスキャンし、これにより光は元のフィルター上の放射能に比例して放射する。次いで、スキャンの結果をダウンロードし、そしてcpm(縦座標)対ポジティブコントロールDNAの%(横座標)として対数スケールで表す。各サンプルの力価(感染単位/mL)は、、細胞を形質導入するために使用したレトロウイルスベクターの容量で割った、検出放射能に基づく標準曲線から決定される%(10進法の形態に変換される)により、DNAを単離した細胞の数を掛けることにより計算する。当業者により認識されるように、比色定量法のような他の検出方法が、増幅産物を標識するために使用し得る。
D.1つのパッケージング細胞株を介するND-5プロデューサー細胞株の産生
いくつかの情況において、プロデューサー細胞株の産生プロセスにおいて1つ以上の細胞株の使用を避けることが所望され得る。例えば、1日目に、DA細胞をDMEMおよび10%照射(最少2.5メガラド)FBSを含む10cm組織培養皿上に5.0×105細胞で播種する。2日目に、培地をトランスフェクションの4時間前に、5.0mLの新鮮培地で置換する。標準的なリン酸カルシウムDNA共沈を、60μlの2.0M CaCl2、VSV Gを発現する10μgのプラスミド、10μgのpND-5レトロウイルスベクタープラスミド、および脱イオン水を400μl容量で混合することにより実施する。次いで、DNA-CaCl2溶液を、一定に撹拌しながら、400μlの2×沈澱緩衝液(50mM HEPES-NaOH(pH7.1)、0.25M NaClおよび1.5mM Na2HPO4-NaH2PO4)に滴下する。この混合物を、室温で10分間インキュベートする。得られた良好な沈殿物を、前日に播種したDA細胞の培養皿に添加する。細胞を、37℃で一晩DNA沈殿物とともにインキュベートする。3日目に、培地を取り除き、そして新鮮な培地を添加する。4日目に、G偽型ウイルスを含む上清を取り出し、0.45μmフィルターを通過させ、そしてこれを用いて以下のようにDAパッケージング細胞に感染させる。
1日目に、DA細胞を10mLのDMEMおよび10%FBS、4mg/mLポリブレン(Sigma,St.Louis,MO)を含む10cm組織培養皿上に、5.0×105細胞で播種する。2日目に、2.0mL、1.0mL、または0.5mLの新たに回収しそして濾過したG偽型レトロウイルス含有上清を細胞に添加する。この細胞を、37℃で一晩レトロウイルスとともにインキュベートする。レトロウイルス上には選択マーカーは保有されないので、選択工程は用いない。そのかわりに、細胞プールを発現について試験し、次いでプレートから細胞を取り出し、細胞懸濁液を計算し、細胞懸濁液を10細胞/mL以下に希釈し、そして0.1mLを96ウェルプレートの各ウェル(1細胞/ウェル)に添加すことにより希釈クローン化する。細胞を、37℃、10%CO2で2週間インキュベートする。多数のクローンを選択し、そして24ウェルプレート、次いで6ウェルプレート、最後に10cmプレートにまで拡大し、この時点でクローンを発現についてアッセイし、そして上清を回収し、そして上記のようにレトロウイルス力価についてアッセイする。
E.第VIII因子発現のレトロウイルスベクター媒介性転移
第VIII因子発現を転移するために本明細書中の教示に従って作製されたレトロウイルスベクターの能力を試験するために、細胞をこのようなベクターおよび培地を用いて形質導入するか、または治療処置の場合において、血液を産生された第VIII因子の量について分析しなければならない。本発明に従うレトロウイルスベクターで形質導入された細胞株または患者細胞を、Coatest第VIII因子:C分析により、または標準凝固アッセイにより、第VIII因子の発現について試験する。
i.Coatestアッセイ
凝固カスケードは、カルシウムおよびリン脂質の存在下での第IXa因子による第X因子(第Xa因子になる)の活性化により始まり、そして補因子として作用する第VIII因子により非常に強化される。カルシウムおよびリン脂質が最適量でかつ第IXa因子および第X因子が過剰である、インビトロアッセイ(COATEST▲R▼,Chromogenix AB,Monlndal,Sweden)を用いることにより、第X因子の活性化速度は第VIII因子量に単に依存する。第Xa因子は、発色基質S-2222(Bz-Ile-Glu(γ-OR)-Gly-Arg-pNA)を加水分解し、405nmで分光光度計で検出し得るpNAを放出することが知られている。シグナル強度は第VIII因子の活性に比例する。そのようなアッセイを用いて、組織培養物中および患者に産生された第VIII因子の量を測定し得る。第VIII因子の1国際単位(IU)は、1.0mLのプールされた正常なヒト血漿中に測定された活性量である。このアッセイは、以下のように実施する:
第VIII因子を含む無細胞培地を得る。患者サンプルについて、9容量の血液を、1容量の0.1Mクエン酸ナトリウム(pH7.5)と混合し、そして20〜25℃で5〜20分間、2,000×gで遠心分離し、細胞をペレット化する。第VIII因子の熱不安定性のため、血漿サンプルは単離の30分以内に試験するか、またはすぐに-70℃に保存すべきであるが、第VIII因子活性の20%ほどが、凍結および解凍の間に損失し得る。培養培地をアッセイする場合、細胞を同様に遠心分離および等量の作業(working)緩衝液(Coatest Kit)により取り出す。
上記のように、非血友病患者の第VIII因子の血清レベルは、200ng/mLの範囲内である。正常値の20%以上または以下のいずれかであることが予想される第VIII因子の範囲に依存して、以下の2つの手順のいずれかを使用する。いずれの場合においても、正常なヒト血漿(1.0IU第VIII因子/mL)の希釈に基づいた標準曲線を使用し、そしてこのアッセイはプラスチックチューブ中で行うべきである。第VIII因子レベルが正常値の20%以上であることが予想される場合、1容量のブタ脳から乳化したリン脂質、ならびに製造者により記載されるように5容量で再構築した、凍結乾燥第IX因子および第X因子を含む溶液を調製する。この溶液を2〜8℃で保存する。96ウェルFalconプレートにおける使用のために、Coatestアッセイ手順の適応において、40μlのこの溶液を、20μLの作業緩衝液+20μLの血漿と混合した。この混合物を4〜5分間、37℃でインキュベートし、この後20μLの0.025M CaCl2ストック溶液を添加し、続いて5分、37℃でインキュベートする。次いで、40μLの発色試薬(20mgのS-2222、335μgの合成トロンビンインヒビターI-2581、10mL中)をこの中に混合する。37℃で5分間のインキュベーションの後、20μLの20%酢酸または2%のクエン酸を添加し、反応を停止する。次いで、吸光度を50mM Tris(pH7.3)および0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むブランクに対して測定する。
ii.G偽型JW-2を用いるHT1080中への発現の移入
1.0×104HT1080細胞を、2mLのDMEM、10%FBS、および4mg/mLポリブレンを含む6ウェルプレートの各ウェルに播種する。翌日、VSV Gをコードする発現ベクターおよびpJW-2でトランスフェクトしたDA細胞から得た1〜2mLの上清を、各ウェルに添加する。細胞がコンフルエント(通常、感染後5〜6日)になった後、培地を各ウェルから収穫し、そしてCoatestアッセイに供する。
iii.HX/JW-2を用いるHT1080中への発現の移入
1.0×104HT1080細胞を、2mLのDMEM、10%FBS、および4mg/mLポリブレンを含む6ウェルプレートの各ウェルに播種する。翌日、pJW-2を用いてトランスフェクトしたHX細胞から得られた1〜2mLの上清を、各ウェルに添加する。細胞がコンフルエントになった後、培地を各ウェルから収穫し、そしてCoatestアッセイ供する。これらの結果は、プールした正常なヒト血漿希釈物を用いて作製した標準曲線のものと相関する場合、HX/JW-2で形質導入したHT1080細胞は、培地中に約30ng/日/106細胞の第VIII因子を分泌することを示す。
iv.HX/ND-5を用いるHT1080中への発現の移入
希釈クローン化されたHX/ND-5プロデューサー細胞株から産生されたレトロウイルスベクターで形質導入されたHT1080細胞を用いること、および1.2×104ベクター/mLのPCR測定力価を有すること以外は、HX/JW-2についてのものと同様の実験により、第VIII因子が、HX/JW-2で観察されたものの少なくとも5倍のレベルで、形質導入されたHT1080細胞中で産生され、そして分泌されることが明らかになる。
v.HX/JW-2を用いる一次ヒト線維芽細胞中への発現の移入
ヒトボランティアの前腕から採取した皮膚パンチ生検から得た一次ヒト線維芽細胞中への発現の移入を、6ウェルプレートの各ウェルに約3×104個の一次ヒト線維芽細胞を播種することにより行う。細胞を、2mL/ウェルの15%FBSおよび200mM Lグルタミンを含む改変イーグル培地(Irvine Scientific,Santa Ana,CA)中で増殖させる。播種後の日に、総容量1〜2mLに希釈したVSV Gをコードする発現ベクターおよびpJW-2でトランスフェクトしたDA細胞から得た種々の上清量(44μL、133μL、および400μL)を各ウェルに添加する。細胞がコンフルエント(通常、感染後3〜6日)になった後、培地を各ウェルから収穫し、そしてCoatestアッセイに供する。これらの細胞から発現された第VIII因子のレベルを(Coatestアッセイにより測定した)図4に示す。
実施例4
全長第VIII因子をコードするレトロウイルスベクター粒子の産生
A.産生および精製
全長第VIII因子をコードする粗製組換えレトロウイルス粒子を、バイオリアクターマトリックスのビーズに結合した本発明による組換えレトロウイルスベクターで形質導入されたDAまたはHX細胞を含むCelliganバイオリアクター(New Brunswick,NJ)から得る。細胞は連続的なフロープロセス中の細胞にパスオーバーされる増殖培地中に組み換えレトロウイルス粒子を放出する。バイオリアクターに存在する培地を回収し、そして上清の不純物を取り除くために、最初に0.8μmフィルターを通過させ、次いで0.65μmフィルターを通過させる。このレトロウイルス粒子含有濾過物を、交差フロー濃縮システム(Filtron,Boston,MA)を利用して濃縮する。1mLの濃縮物あたり約50単位のDNase(Intergen,New York,NY)を添加し、外部のDNAを消化する。この消化物を、150mM NaCl、25mMトロメタミン、pH7.2に対して同じ交差フローシステムにおいてダイアフィルトレートする。このダイアフィルトレート物を、50mM NaCl、25mMトロメタミン、pH7.4で平衡化したSephadex S-500ゲルカラム(Pharmacia,Piscataway,NJ)にロードする。精製された組換えレトロウイルスを、50mM NaCl、25mMトロメタミン、pH7.4でSephadex S-500カラムから溶出する。
B.処方
ラクトース、マンニトール、スクロース、またはトレハロースを含む処方緩衝液を、2×濃縮ストック溶液で調製する。この処方緩衝液は、最終容量100ml、pH7.4で、25mMトロメタミン、70mM NaCl、2mg/mLアルギニン、10mg/mLヒト血清アルブミン(HSA)、および100mg/mLラクトース、マンニトール、スクロース、またはトレハロースを含有する。
精製された組換えレトロウイルスを、1部の2×処方緩衝液を1部のS-500で精製した組み換えレトロウイルスに添加することにより処方する。処方した組み換えレトロウイルス粒子は、-70℃〜-80℃の液体中で、または乾燥して保存し得る。
レトロウイルス調製物を乾燥するために、処方レトロウイルス粒子をバイアル中にアリコートし、そしてSupermodulyo 12K凍結乾燥器(Edwards High Vaccum,Tonawanda,NY)に装着したEdwards冷却チャンバー(3Shelf RC3Sユニット)において凍結乾燥する。凍結乾燥周期が完了すると、わずかに窒素ガスを抜いた後、真空下でバイアルに詮をし、そしてアルミニウムのシールをそのうえにクリンプする。その凍結乾燥産物は、力価の有意な損失なしに(PCR力価測定アッセイ(前掲)により測定された)、長期間-20℃で保存し得、その後再構築される。
凍結乾燥組換えレトロウイルスを1.0mlの水を用いて再構築する。再構築組み換えレトロウイルスの感染性を、力価活性アッセイにより決定する。このアッセイは、HT1080線維芽細胞または3T3マウス線維芽細胞株(ATCC CCL 163)で実施する。詳細には、1.0×105細胞を6cmプレート上に播種し、そして37℃、10%CO2で一晩インキュベートする。10マイクロリットルの連続希釈再構築組換えレトロウイルスを、4μg/mLのポリブレン(Sigma,St.Louis,MO)の存在下で細胞に添加し、そして37℃、10%CO2で一晩インキュベートする。インキュベート後、細胞をG418を含む培地でネオマイシン耐性について選択し、そして37℃、10%CO2で5日間インキュベートする。最初の選択後に、細胞にG418を含む新鮮な培地を再度与え、そして5〜6日間インキュベートする。最終選択後、細胞をコロニー検出のためにクマシーブルーで染色する。このサンプルの力価をコロニーの数、使用した希釈および容量から決定する。
本発明は概説的および好ましい実施態様の両方により上述したが、変形および改変が、前掲の説明の点から当業者に生じることが理解される。従って、添付した請求の範囲は、請求された本発明の範囲内に生じる全てのこのような改変を包含することが意図される。
さらに、本発明の背景を解明するため、そして特に、詳細な説明および実施例に記載されたようなその実施に関するさらなる詳細を提供するために、引用される出版物および他の物質は、本明細書により全体が参照として援用される。
配列表
(1)一般的情報:
(i)出願人:カイロン バイアジーン,インコーポレイテッド
(ii)発明の名称:完全長第VIII因子のレトロウイルス送達
(iii)配列数:3
(iv)連絡住所:
(A)名称:カイロン バイアジーン,インコーポレイテッド
(B)番地:インテレクチュアル プロパティー-R440
(C)市:エミリービル
(D)州:カリフォルニア
(E)国:アメリカ合衆国
(F)郵便番号:94662-8097
(v)コンピューター読み出し形態:
(A)媒体型:フロッピーディスク
(B)コンピューター:IBM PC互換用
(C)OS:PC-DOS/MS-DOS
(D)ソフトウェア:パテントイン リリース#1.0,バージョン#1.25
(vi)現在の出願データ:
(A)出願番号:未指定
(B)出願日:提出と同日
(C)分類:
(viii)代理人/事務所情報:
(A)氏名:クルース,ノーマン ジェイ.
(B)登録番号:35,235
(C)照会/記録番号:1152.100
(ix)電話回線情報:
(A)電話:(510)601-3250
(B)テレファックス:(510)655-3542
(C)テレックス:N/A
(2)配列番号1の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:8967塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:両形態
(D)トポロジー:不明
(ii)配列の種類:cDNA
(ix)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号:CDS
(B)存在位置:110..7165
(xi)配列:配列番号1:
Figure 0003941963
Figure 0003941963
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Figure 0003941963
Figure 0003941963
(2)配列番号2の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:2351アミノ酸
(B)型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:タンパク質
(xi)配列:配列番号2:
Figure 0003941963
Figure 0003941963
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Figure 0003941963
Figure 0003941963
(2)配列番号3の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:224塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(xi)配列:配列番号3:
Figure 0003941963

Claims (43)

  1. レトロウイルスベクターであって、該レトロウイルスベクターで形質導入またはトランスフェクトされた宿主細胞中で全長第VIII因子ポリペプチドの発現を、指示し、少なくとも1つのプロモーター、パッケージングシグナル、および長末端反復配列(LTR)またはそれらの一部分に作動可能に連結された全長第VIII因子ポリペプチドをコードする核酸分子を含む、レトロウイルスベクター。
  2. MoMLV、GALV、FeLV、およびFIVからなる群から選択されるレトロウイルスに由来する、請求項1に記載のレトロウイルスベクター。
  3. 請求項1に記載のレトロウイルスベクターであって、ここで前記全長第VIII因子ポリペプチドが:
    (a)ウラシル(「U」)が全てのチミジン(「T」)に置き換わることを除いて、配列番号1に記載のヌクレオチド配列;および
    (b)ストリンジェントな条件下で(a)のヌクレオチド配列にハイブリダイズし、第VIII因子の機能を有するポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列からなる群から選択される核酸分子によりコードされる、レトロウイルスベクター。
  4. 請求項1に記載のレトロウイルスベクターであって、さらにレトロウイルスLTRプロモーター、SV40プロモーター、CMV MIEプロモーター、およびMPMVプロモーターからなる群から選択されたプロモーターを含み、ここで該プロモーターは、全長第VIII因子ポリペプチドをコードする核酸分子と作動可能に結合されている、レトロウイルスベクター。
  5. 全長第VIII因子ポリペプチドをコードするMoMLV由来のレトロウイルス骨格を含むレトロウイルスベクターであって、ここで該全長第VIII因子ポリペプチドが:
    (a)ウラシル(「U」)が各チミジン(「T」)に置き換わることを除いて、配列番号1に記載のヌクレオチド配列;および
    (b)ストリンジェントな条件下で(a)のヌクレオチド配列にハイブリダイズし、第VIII因子の機能を有するポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列からなる群から選択される核酸分子によりコードされる、レトロウイルスベクター。
  6. 請求項1に記載のレトロウイルスベクターによってトランスフェクトまたは形質導入された宿主細胞。
  7. 請求項5に記載のレトロウイルスベクターによってトランスフェクトまたは形質導入された宿主細胞。
  8. 前記宿主細胞が、レトロウイルス構造ポリペプチドをコードする1つ以上の核酸分子をさらに含有するパッケージング細胞である、請求項6に記載の宿主細胞。
  9. 前記レトロウイルス構造ポリペプチドが、env、pol、およびgagポリペプチドを含有する、請求項8に記載の宿主細胞。
  10. レトロウイルス粒子であって、該レトロウイルスベクターで形質導入またはトランスフェクトされた宿主細胞中で全長第VIII因子ポリペプチドの発現を指示す能力を有し、少なくとも1つのプロモーター、パッケージングシグナル、および長末端反復配列(LTR)またはそれらの一部分に作動可能に連結された全長第VIII因子ポリペプチドをコードする核酸分子を含む、レトロウイルスベクターを含有する、レトロウイルス粒子。
  11. 請求項5に記載のレトロウイルスベクターを含有するレトロウイルス粒子。
  12. 請求項10に記載のレトロウイルス粒子を作製する方法であって、該方法が、該レトロウイルスベクターをコードする核酸分子でパッケージング細胞を形質導入またはトランスフェクトする工程、および該レトロウイルスベクターのコピーが産生され、そして感染性レトロウイルス粒子に取り込まれるような適切な条件下で該パッケージング細胞を培養する工程を包含する、方法。
  13. 請求項11に記載のレトロウイルス粒子を作製する方法であって、該方法が、該レトロウイルスベクターをコードする核酸分子でパッケージング細胞を形質導入またはトランスフェクトする工程、および該レトロウイルスベクターのコピーが産生され、そして感染性レトロウイルス粒子に取り込まれるような適切な条件下で該パッケージング細胞を培養する工程を包含する、方法。
  14. アンホトロピックレトロウイルス粒子、エコトロピックレトロウイルス粒子、キセノトロピックレトロウイルス粒子、およびポリトロピックレトロウイルス粒子からなる群から選択される、請求項11に記載のレトロウイルス粒子。
  15. 哺乳動物補体系による不活化に耐性である、請求項14に記載のレトロウイルス粒子。
  16. ヒト補体系による不活化に耐性である、請求項15に記載のレトロウイルス粒子。
  17. ヒト補体系による不活化に耐性である、請求項10に記載のレトロウイルス粒子。
  18. 請求項10に記載のレトロウイルス粒子および薬学的に受容可能な希釈剤を含有する、血友病を処置するための薬学的組成物。
  19. 請求項10に記載のレトロウイルス粒子を含有する凍結乾燥された、血友病を処置するための薬学的組成物。
  20. 請求項11に記載のレトロウイルス粒子および薬学的に受容可能な希釈剤を含有する、血友病を処置するための薬学的組成物。
  21. 請求項11に記載のレトロウイルス粒子を含有する凍結乾燥された薬学的組成物。
  22. 血友病を患う哺乳動物を処置するための薬学的組成物であって、請求項1に記載のレトロウイルスベクターの治療的に有効な量を含む、薬学的組成物。
  23. 前記哺乳動物がヒトであり、そして血友病Aを患っている、請求項22に記載の薬学的組成物。
  24. 血友病Aを患うヒトを処置する薬学的組成物であって、請求項10に記載のレトロウイルス粒子の治療的に有効量を含む、薬学的組成物。
  25. 血友病を患う哺乳動物を処置するための薬学的組成物であって、請求項5に記載のレトロウイルスベクターの治療的に有効量を含む、薬学的組成物。
  26. 血友病Aを患うヒトを処置するための薬学的組成物であって、請求項11に記載のレトロウイルス粒子の治療的に有効な量および受容可能な希釈剤を含有する、薬学的組成物。
  27. 血友病Aを患うヒトを処置するための薬学的組成物であって、請求項10に記載のレトロウイルス粒子の治療学的に有効な量および薬学的に受容可能な希釈剤を含有する、薬学的組成物。
  28. 血友病Aを患うヒトを処置するための薬学的組成物であって、請求項11に記載のレトロウイルス粒子の治療学的有効量および薬学的に受容可能な希釈剤を含む、薬学的組成物。
  29. プロモーターが作動可能に連結された、全長第VIII因子ポリペプチドをコードする核酸分子を含有するレトロウイルス粒子であって、ここで該全長第VIII因子ポリペプチドが、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、トリ、ウマ、ブタ、およびヒトの全長第VIII因子からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、レトロウイルス粒子。
  30. 請求項1に記載のレトロウイルスベクターをコードする核酸分子を含有する、プラスミド。
  31. 請求項5に記載のレトロウイルスベクターをコードする核酸分子を含有する、プラスミド。
  32. 請求項30に記載のプラスミドで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞。
  33. 請求項31に記載のプラスミドで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞。
  34. 全長第VIII因子ポリペプチドのインビボ生産のためのキットであって、該キットは、レトロウイルスベクターを患者の細胞に送達する手段を備え、
    ここで該ウイルスベクターが、該ベクターからの全長第VIII因子の治療的に有効量の発現を指示する能力を有し、少なくとも1つのプロモーター、パッケージングシグナル、および長末端反復配列(LTR)またはそれらの一部分に作動可能に連結された全長第VIII因子ポリペプチドをコードする核酸分子を含む、キット。
  35. 前記手段が前記レトロウイルスベクターを含有するレトロウイルス粒子である、請求項34に記載のキット。
  36. 前記レトロウイルス粒子が、前記患者の細胞の特定のサブセットにレトロウイルスベクターの送達を標的化する、請求項35に記載のキット。
  37. 前記レトロウイルス粒子によりレトロウイルスベクターが標的化される前記細胞のサブセットが、造血細胞、内皮細胞、肝細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項36に記載のキット。
  38. 骨髄または臍帯由来の造血幹細胞が前記レトロウイルス粒子により標的化される細胞である、請求項37に記載のキット。
  39. 前記レトロウイルスベクターによる患者の細胞への該レトロウイルスベクターの送達がエキソビボで実施される、請求項35に記載のキット。
  40. 前記レトロウイルスベクターによる患者の細胞への該レトロウイルスベクターの送達が、非経口的投与および肺投与からなる群から選択される方法によってインビボで実施される、請求項35に記載のキット。
  41. 全長第VIII因子のインビボ生産が、前記レトロウイルスベクターのプロウイルス形態からの該全長第VIII因子ポリペプチドの安定な発現から生じる、請求項34に記載のキット。
  42. 全長第VIII因子ポリペプチドの発現を指示し、少なくとも1つのプロモーター、パッケージングシグナル、および長末端反復配列(LTR)またはそれらの一部分に作動可能に連結された全長第VIII因子ポリペプチドをコードする核酸分子を含むレトロウイルスベクターで形質導入され、そして全長第VIII因子を安定して発現する宿主細胞。
  43. ヒト細胞である、請求項42に記載の宿主細胞。
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