JPH1147247A - 消臭性組成物、消臭シートおよび消臭方法 - Google Patents

消臭性組成物、消臭シートおよび消臭方法

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JPH1147247A
JPH1147247A JP9200603A JP20060397A JPH1147247A JP H1147247 A JPH1147247 A JP H1147247A JP 9200603 A JP9200603 A JP 9200603A JP 20060397 A JP20060397 A JP 20060397A JP H1147247 A JPH1147247 A JP H1147247A
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JP
Japan
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deodorant
deodorizing
polymer
film
composition
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JP9200603A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Ayukawa
洋 鮎川
Eiji Mizuno
英二 水野
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3M Co
Original Assignee
Minnesota Mining and Manufacturing Co
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 臭気物質を中和可能な消臭物質と、消臭物質
の失効を指示可能なpH指示薬とを含む消臭性組成物に
関し、消臭材として利用でき、消臭力の失効点を正確に
視認でき、保存安定性にすぐれた組成物を提供すること
を目的とする。 【解決手段】 消臭物質が、少なくとも1つの消臭性官
能基を有する重合単位を含む消臭性ポリマーを含有し、
その際、前記重合単位が、消臭性ポリマーの全重量に対
して、10〜100重量%の範囲の量で存在し、そして
pH指示薬が、消臭性ポリマー100重量部に対して、
0.001〜10重量部の範囲の量で存在するように、
構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゴミ箱等の収納容
器や、冷蔵庫、靴箱等の収納庫内などの臭気源から発散
される臭気物質を中和することにより消臭作用を発揮す
る方式の、消臭性組成物、消臭シート、そして消臭方法
に関する。なお、「臭気物質」とは、それを本願明細書
において使用した場合、本発明により中和反応により捕
捉せしめられて消臭作用を生じることのできる物質全般
を包含し、場合により臭気そのものであってもよい。
【0002】
【従来の技術】従来、多種多様の臭気源から発散される
臭気物質に対応するため、いろいろなタイプの消臭材や
消臭方法が開発され、実用に供されている。たとえば、
臭気物質を中和することにより消臭作用を発揮させるた
め、酸性官能基を有する物質を利用した消臭材等が次の
ような特許公開公報に開示されている。
【0003】特開昭62−237924号公報:ポリビ
ニルアルコールを出発物質として形成した親水性ポリマ
ー繊維の表面を硫酸処理してスルホン酸基を導入した、
陽イオン交換繊維を用いた脱臭方法。 特開平4−239504号公報:親水性モノマーとして
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を
含むモノマー成分を紫外線重合することにより調製され
たポリマー(共重合体)からなる水性ゲルと、フマル酸
等の低分子量のカルボン酸化合物からなる消臭剤とを含
有する消臭性組成物。この組成物は、ポリマー濃度がせ
いぜい20重量%であり、上記低分子量の消臭剤の添加
を必須としている。また、ゲル状であるので、それ自体
にフィルム形成能はない。
【0004】また、これらの2つの公開公報に開示の方
法では、消臭性組成物の消臭力の変化を視認することは
できない。たとえば、酸性基のすべてが中和され、消臭
力が有効に発揮できなくなる失効点を、消臭にたずさわ
る人(以下、「消臭作業者」又は単に「作業者」と記
す;また、この語は、以下、本発明品あるいは本発明方
法を使用する人を含めた一般人を指すものとする)が目
で見て知ることはできない。
【0005】さらに、累積使用時間が視認できるインジ
ケータ、またはそれを併用した消臭材等の物品として、
次のようなものが開示されている。 特公平7−122057号公報:長さ方向を有する容器
の中に高粘性液体もしくはゲル状物質を消臭材として封
入し、その封入物質を着色もしくは変色せしめ得る染色
物質を容器の長さ方向一端において封入物質と接触させ
たものであって、接触からの時間経過が視認できるタイ
ム・インジケータ。この公報には、上記染色物質として
pH指示薬が使用できることが開示されているが、タイ
ム・インジケータの変色は単純に時間経過に支配され、
併用される消臭材の消臭力の変化とは必ずしも一致しな
いという不都合がある。
【0006】特開昭61−264258号公報:支持体
と、その支持体に担持された酸性物質または塩基性物
質、pH指示薬およびポリオキシエチレングリコール等
の湿潤剤を含む層とからなる、脱臭剤の残余脱臭性能を
指示可能なインジケータ。酸性物質としては、リンゴ酸
等の低分子化合物が使用できることが開示されている。
【0007】特開昭62−149322号公報:脱臭フ
ィルターと、脱臭フィルターの寿命、すなわち、消臭力
の失効点を呈色反応により示すインジケータとして機能
する寿命判定フィルターとを組み合わせた、脱臭フィル
ターの消臭能力の判定方法。寿命判定フィルターには、
クエン酸等の低分子化合物と、pH指示薬とを不織布フ
ィルターに含浸させたものが用いられる。この判定方法
では、悪臭物質(アンモニアガス等)を含む空気が脱臭
フィルターを通過した後、判定フィルターを通過するよ
うなフィルター配置が採用されている。
【0008】特公平1−28899号公報:アクリロニ
トリル系繊維からなる基材に、基材に対し0.02〜
0.2重量%の割合のpH指示薬と、pH指示薬に対し
3〜140倍の重量の酸との混合物を担持させてなる、
冷蔵庫用インジケータ。酸としては、燐酸等の低分子化
合物が使用されている。
【0009】特開平6−71137号公報:脱臭フィル
ターと、アンモニアガスと反応して変色するインジケー
タとを組み合わせた脱臭装置。この脱臭装置で用いられ
るインジケータは、アクリル樹脂粒子に硫酸酸性チモー
ルブルーのエタノール溶液を浸み込ませて真空乾燥した
ものを、さらに紙や不織布に添着したものである。
【0010】しかしながら、これらの公報に開示のイン
ジケータ等の変色は、消臭材等の消臭力の変化とは直接
連動していない。すなわち、事前に一定の条件下で消臭
力がどの程度の期間で失効するかを確かめ、その期間に
見合って変色するようにインジケータを設計しない限
り、消臭力の失効点を正確に視認することはできない。
したがって、このようなインジケータを用い、いろいろ
な環境下でも使用可能な消臭材を提供することは、実質
的に不可能である。
【0011】さらにまた、消臭剤あるいは脱臭剤自体が
変色することを特徴とする消臭材等の物品として、次の
ようなものが開示されている。 実開平4−5844号公報:塩基性ガスを吸着するにし
たがって変色するpH指示薬を含有させた脱臭剤を、複
数の細孔を穿った任意形状の透明容器に充填してなる脱
臭材。脱臭剤には、ミョウバン、硫酸アルミニウム等の
低分子量の酸性化合物が使用されている。
【0012】特開昭62−236551号公報:揮発性
の消臭剤(安定化二酸化塩素など)と、pH指示薬とを
組み合わせて形成した変色性インジケータを兼ねる消臭
シート。この消臭シートは、揮発性の消臭剤と、pH指
示薬とを含有する樹脂液を不織布等の基材の上に塗布し
たものである。この消臭シートでは、消臭剤の揮発の進
行、すなわち、消臭剤の減少に伴ってpHが変化し、シ
ートが変色する。
【0013】特開昭63−166433号公報:プラス
チック基材に、鉄(II)化合物と有機酸とからなる複合
体、およびpH指示薬を含有させてなる脱臭材。基材の
材料としては、アクリル酸エステル等の樹脂が使用され
ている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】従来の消臭材等は、上
記したように、解決されるべき多くの問題点をかかえて
いる。たとえば、第1の公報群に開示される消臭材等
は、フィルムの形で使用しにくいばかりか、消臭力の変
化を視認することもできない。また、第2の公報群に開
示される消臭材等の場合、消臭材の消臭力の実際の変化
と、インジケータの色の変化とはそれぞれ別の化学変化
に起因するものであるので、消臭材の失効点を正確に視
認することはできない。さらにまた、第3の公報群に開
示される消臭材等の場合は、消臭材の消臭力の実際の変
化とインジケータの変色とが連動可能であるというもの
の、しかしながら、低分子量の消臭物質を含む消臭材を
使用しているので、保存中に消臭物質の分離、しみだ
し、揮散等による消臭作用の低下が生じやすく、保存安
定性を高めることが困難である。
【0015】すなわち、本発明の第1の目的は、消臭材
として利用可能な組成物であって、消臭力の失効点を消
臭作業者が容易かつ正確に視認でき、かつ保存安定性が
高められた新規な消臭性組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、本発明の新規な消臭性組成物を
使用した消臭シートを提供することにある。
【0016】本発明の第3の目的は、本発明の新規な消
臭性組成物を使用した消臭方法を提供することにある。
本発明のこれらの目的およびその他の目的は、以下の詳
細な説明から容易に理解することができるであろう。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明は、その1つの面
において、(1)臭気物質を中和可能な消臭物質と、
(2)該消臭物質の失効を指示可能なpH指示薬とを含
んでなる消臭性組成物において、前記消臭物質が、少な
くとも1つの消臭性官能基を有する重合単位を含む消臭
性ポリマーを含有し、その際、前記重合単位が、前記消
臭性ポリマーの全重量に対して、10〜100重量%の
範囲の量で存在し、そして前記pH指示薬が、前記消臭
性ポリマー100重量部に対して、0.001〜10重
量部の範囲の量で存在することを特徴とする消臭性組成
物にある。
【0018】本発明による消臭性組成物は、本発明の好
ましい1態様に従うと、その消臭性ポリマーが、消臭性
官能基を持たない親水性化合物を含む重合単位をさらに
含み、該親水性化合物を含む重合単位は、消臭性ポリマ
ーの全重量に対して、1〜90重量%の範囲の量で存在
しかつ、これに対応して、前記消臭性官能基を有するる
重合単位は、消臭性ポリマーの全重量に対して、10〜
99重量%の範囲の量で存在する。
【0019】本発明は、そのもう1つの面において、少
なくとも1つの主要面を有する基材と、該基材の主要面
に積層された消臭フィルムの層とを含んでなり、該消臭
フィルムの層は、本発明による消臭性組成物を含んでな
ることを特徴とする消臭シートにある。さらに、本発明
は、そのもう1つの面において、臭気物質を中和するこ
とにより消臭を行う消臭方法において、(a)本発明に
よる消臭性組成物を、臭気物質を発生する臭気源から、
該臭気物質と相互作用するのに十分な間隔をおいて配置
すること、および(b)作業者が視覚的に、消臭物質の
失効を示す前記消臭性組成物の変色を確認できるように
することを含んでなることを特徴とする消臭方法にあ
る。なお、ここで、「臭気物質と相互作用するのに十分
な間隔」とは、臭気物質を発生する臭気源までの距離
が、たとえば0.1〜50cmの範囲、好適には1〜40
cmの範囲であることを指す。本発明方法では、作業者
は、消臭物質の失効を示す変色を視覚的に確認でき、引
き続いて消臭性組成物を新品のものに交換することがで
きる。
【0020】本発明による消臭性組成物は、上記したよ
うに、少なくとも1つの消臭性官能基を有する重合単位
を含む消臭性ポリマーをその消臭物質中に含有し、ま
た、本発明の好ましい1態様に従うと、前記消臭性ポリ
マーがさらに、消臭性官能基を持たない親水性化合物を
含む重合単位を含有する。ここで定義しておくと、「消
臭性官能基を有する重合単位を含む消臭性ポリマー」
は、たとえば、「少なくとも1つの消臭性官能基を分子
内に有する重合性の消臭性化合物を含む重合性成分」か
ら誘導される。換言すれば、ここで言う消臭性ポリマー
は、「重合性の消臭性化合物を含む重合性成分」の重合
反応生成物である。したがって、ポリマー分子内の「消
臭性官能基を有する重合単位」は上記消臭性化合物に由
来する。
【0021】また、「親水性化合物を含む重合単位」を
含む消臭性ポリマーは、たとえば、「少なくとも1つの
親水性官能基を分子内に有する重合性の親水性化合物」
と上記消臭性化合物とを含む重合性成分から誘導され
る。換言すれば、ここで言う消臭性ポリマーは、上記消
臭性化合物に加えて、さらに「重合性の親水性化合物」
を含む重合性成分の重合反応生成物である。したがっ
て、ポリマー分子内の「親水性化合物を含む重合単位」
は上記親水性化合物に由来する。なお、親水性化合物
が、「消臭性官能基を持たない」という用語は、「親水
性化合物を含む重合単位」と、「消臭性官能基を有する
重合単位」とを明確に区別するために用いている。すな
わち、親水性化合物の「親水性基」は、同一ポリマー分
子内に含まれる「消臭性官能基」とは異なると定義され
る。しかしながら、本発明の効果を損なわない範囲で、
「消臭性官能基を有する重合単位」が、その消臭性官能
基の他に親水性基を有していてもよい。これらの官能基
の詳細については後述する。
【0022】本発明による消臭性組成物では、消臭のメ
カニズムおよび消臭力の失効点の指示のメカニズムとし
て、臭気源からの臭気物質と消臭物質との間の中和反応
を利用している。すなわち、酸性基または塩基性基(本
願明細書では、以下に詳細に説明するように、このよう
な直接的に消臭に関与し得る基を、特に「消臭性官能
基」と呼ぶ)を有する消臭性ポリマーを消臭性組成物の
主たる成分の1つとして利用し、その消臭性ポリマーの
中和機能の結果として、塩基性または酸性の臭気物質を
中和することにより、すぐれた消臭作用を発揮してい
る。この消臭性組成物では、その消臭力の失効点は、消
臭性ポリマーの中和点と実質的に一致する。したがっ
て、消臭性ポリマーの中和点を考慮に入れて、消臭性ポ
リマーにpH指示薬を効果的に組み合わせ、指示薬の反
応による色の変化により、消臭性組成物の失効点を正確
に視認できる。
【0023】また、消臭物質が消臭性ポリマーであるの
で、従来の消臭材等のように低分子量の消臭物質を使用
した場合のような使用前あるいは保存中の消臭作用の低
下は実質的に生じない。なぜならば、本発明で用いられ
る消臭性ポリマーの、消臭性官能基を有する重合単位
は、消臭性ポリマー分子内に化学結合によって組み込ま
れているので、消臭性組成物中での分離や、組成物から
のしみだし、揮散等による、消臭作用の低下を引き起こ
すような、消臭物質の含有量の減少は生じないからであ
る。また、低分子量の消臭物質を比較的多量に含む場
合、しみだしたり揮散した消臭物質により周囲を汚染す
るおそれがあるけれども、本発明の組成物では、そのよ
うな心配がない。すなわち、消臭性官能基を有する重合
単位の含有量を多くし、中和能力の増大の帰結として消
臭力を効果的に高めることができる。したがって、消臭
性官能基を有する重合単位の量、すなわち、消臭性化合
物に由来する重合単位の含有割合を、消臭性ポリマーの
全重量に対して、10〜100重量%の範囲とし、消臭
力を効果的に高めることが可能である。消臭性官能基を
有する重合単位の量は、好適には12〜99重量%、さ
らに好適には15〜98重量%である。
【0024】消臭物質たる消臭性ポリマーと組み合わせ
て用いられるpH指示薬は、消臭性組成物中に、消臭性
ポリマー100重量部に対して、0.001〜10重量
部の範囲で含有せしめられる。pH指示薬の含有割合が
0.001重量部未満であると、失効点を視認できない
おそれがあり、反対に10重量部を超えると、pH指示
薬がポリマー成分と分離してしまい、失効点前に部分的
に変色したり、斑状に変色して外観を損なうおそれがあ
る。このような観点から、pH指示薬の含有割合は、好
適には0.01〜5重量部、特に好適には0.02〜1
重量部の範囲である。
【0025】ところで、中和能力を高めるためには、重
合性成分中の消臭性化合物の量を可及的に多くすること
は有効である。しかしながら、消臭作用の速効性を高め
たり、フィルム状の消臭性組成物を形成する場合に、重
合性成分を含む塗料の塗布を容易にするためには、消臭
性官能基を持たない重合性の親水性化合物(以下、「親
水性化合物」と呼ぶこともある)を重合性の消臭性化合
物に併用することが有効である。親水性化合物の量は、
親水性化合物に由来する重合単位の含有割合が、消臭性
ポリマーの全重量に対して、1〜90重量%の範囲にな
るように選ばれ、また、これに対応して、消臭性化合物
に由来する重合単位の含有割合が、消臭性ポリマーの全
重量に対して、10〜99重量%の範囲になるように選
ばれる。また、中和能力、消臭作用の速効性および塗料
の塗布特性を効果的にバランスさせるために、好適に
は、親水性化合物に由来する重合単位の含有割合が、消
臭性ポリマーの全重量に対して5〜85重量%の範囲
で、かつ消臭性化合物に由来する重合単位の含有割合
が、消臭性ポリマーの全重量に対して15〜95重量%
の範囲である。特に好適には、親水性化合物の重合単位
の含有割合が10〜80重量%の範囲で、かつ消臭性化
合物の重合単位の含有割合が20〜90重量%の範囲で
ある。
【0026】さらに、本発明の消臭性組成物は、消臭作
用の速効性および塗料の塗布特性を効果的に高め、かつ
失効点における発色性を高めるために、水を含有するこ
とができる。この場合の水の含有量は、消臭性ポリマー
100重量部に対して、好適には5〜250重量部、特
に好適には10〜200重量部である。水の含有量が5
重量部より少ないと、上記のような効果が得られない
(たとえば発色性が低下する)おそれがある。反対に、
水の含有量が250重量部を上回ると、中和能力が低下
するおそれがある。
【0027】本発明の消臭性組成物を用いて消臭材を形
成する場合、いろいろな形態を採用できるけれども、消
臭シートの形態が好適である。たとえば、従来品のよう
な、繊維表面にのみ消臭物質を含む消臭フィルター等の
消臭材では、消臭材に含まれる消臭物質の量を多くする
ためには繊維の量を増す必要があり、必然的に嵩高くな
ってしまう。嵩高い消臭材は、冷蔵庫、タンス、靴箱等
の比較的狭く限られた収納空間を有する収納庫において
使用する場合に不利である。なぜならば、配置されたこ
のような消臭材は、収納空間の一部を必然的に占有する
ことになるので、空間を収納のために最大限に利用する
ことは実質的に不可能である。また、ゴミ箱やトイレの
便器等の、内部に臭気源を含む容器のそばに配置するこ
とは可能であるが、容器の使用を妨げることなく、この
ような消臭材を臭気源に近接させて配置することは実質
的に不可能である。
【0028】さらに、空気等の気体中に漂う臭気物質を
効果的に捕捉するには、その気体と消臭材とが十分な接
触面積にて接触する必要がある。したがって、ビン等の
容器に収容して使用する必要がある液状またはゲル状の
消臭材では、この接触面積を大きくするために容器の容
積を大きくする必要がある。したがって、これらの場合
も、上記の場合と同様に、収納空間を最大限に利用する
こと、および消臭剤を含有する容器を臭気源に近接させ
て配置し、消臭効果を高めることは、実質的に不可能で
ある。
【0029】すなわち、従来品とは対照的に、本発明の
消臭シートは、収納空間を最大限に利用すること、およ
び、臭気源に近接させて配置し、消臭効果を高めること
を可能にする。本発明の消臭シートは、前記したよう
に、少なくとも1つの主要面を有する基材と、その基材
の主要面に積層された、本発明の消臭性組成物を含む消
臭フィルム層とを含むように構成するのが好ましい。
【0030】本発明の実施において、本発明の消臭性組
成物および消臭シートは、中和反応による消臭性組成物
の変色が消臭作業者から視認できるようにし、かつ臭気
物質を発生する臭気源に近接させて配置して使用するの
が好適である。これにより、作業者は、消臭性組成物の
失効点を正確に視認でき、かつ消臭効果を効果的に高め
ることができる。たとえば、ゴミ箱やトイレの便器等の
容器の蓋の内側面に、消臭性組成物または消臭シートを
配置し、蓋の開閉のたびに作業者が消臭性組成物または
消臭シートの色あるいは変色を確認できるようにするこ
とができる。消臭性組成物の配置方法は任意であり、た
とえば、通気性シートからなる袋、箱等の収納容器に視
認用の窓を開けておき、その中に消臭性組成物を収納
し、その収納容器を上記したような蓋などに接着するこ
とができる。通気性シート全体が光透過性である場合、
視認窓を必要としない。また、消臭シートの場合、基材
の消臭フィルム層が積層されていない側の面を、上記蓋
に接着して配置することができる。この場合は、収納容
器を必要としない。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明をその好ましい実施
の形態について説明する。消臭性ポリマー 本発明で使用される消臭性ポリマーは、少なくとも1つ
の消臭性官能基を分子内に有する重合性の消臭性化合物
を含む、重合性成分を重合してなるポリマーである。
「消臭性官能基」は、先にも説明したように、臭気物質
を中和して捕捉する能力を有する官能基である。すなわ
ち、臭気物質が塩基性の場合は酸性の官能基、そして臭
気物質が酸性の場合は塩基性の官能基である。たとえ
ば、臭気物質が塩基性のアミン系化合物の場合、消臭性
官能基は、スルホン酸、リン酸、カルボン酸、またはこ
れらの酸の金属塩が有効である。官能基が金属塩を形成
する場合、銅、鉄、亜鉛等の金属が有効である。また、
臭気物質が酸性の場合は、消臭性官能基はアミノ基が有
効である。消臭性化合物は、1種類の化合物を単独で使
用してもよく、複数種の化合物を混合して使用してもよ
い。
【0032】消臭性化合物が重合性であるためには、た
とえば、エチレン性不飽和結合等の重合性官能基を少な
くとも1つ分子内に有することが必須である。ここで
「エチレン性不飽和結合」とは、ビニル基または(メ
タ)アクリル基(すなわち、アクリル基またはメタクリ
ル基)を意味する。エチレン性不飽和結合を有する化合
物の反応は、熱または紫外線、電子線等の放射線により
進行させる。反応を効率良く行わせるために、重合開始
剤、促進剤、触媒等の添加剤を併用することができる。
また、本発明の効果を損なわない限り、重合反応とし
て、活性水素を含有する官能基と、イソシアネート基ま
たはエポキシ基との反応も利用できる。
【0033】消臭性化合物は、通常はモノマーまたはオ
リゴマーである。しかしながら、本発明の効果を損なわ
ない限り、ポリマーの形の消臭性化合物を使用してもよ
い。消臭性化合物の分子量は、通常65〜1,000、
好適には70〜300の範囲である。なお、ここで言う
「分子量」は、分子式からの計算値あるいは数平均分子
量である。
【0034】臭気物質が塩基性の場合、消臭性官能基
は、スルホン酸基、リン酸基、またはこれらの金属塩が
好適である。これにより、他の消臭剤を併用することな
く、塩基性物質に対する高い消臭作用を発揮することが
できる。かかる消臭性官能基を有する重合単位が導びか
れる消臭性化合物の好適な具体例を挙げると、(メタ)
アクリルアミドアルカンスルホン酸、スチレンスルホン
酸、リン酸(メタ)アクリロイルオキシエチル、および
これらいずれかの金属塩である。臭気物質が酸性の場
合、消臭性官能基としてはアミノ基が好適である。
【0035】消臭性組成物に含有される消臭性ポリマー
の量は、通常30〜100重量%(消臭性組成物の重量
に基づく)である。消臭性ポリマーの含有量が少なすぎ
ると、消臭作用を高めるのが困難になる。一方、消臭性
ポリマーの含有量が多い場合、組成物の酸性または塩基
性が比較的強くなる傾向がある。このような強酸性また
は強塩基性が、その組成物と一緒に用いられる基材や容
器、または組成物を含む消臭材が配置された周囲の物体
を変質させるおそれがある場合、消臭性ポリマーの含有
量を減らすことが望ましい。このような観点から、消臭
性ポリマーの含有量は、好適には40〜99重量%、特
に好適には50〜95重量%の範囲である。また、同様
の観点から、消臭性組成物の全重量に対する消臭性化合
物に由来する重合単位は、通常10〜99重量%、好適
には20〜95重量%である。
【0036】また、消臭性ポリマーは、重合性の親水性
化合物または/および架橋剤を含む出発原料から調製さ
れるのが好適である。親水性化合物 親水性化合物は、消臭性ポリマー分子内に組み込まれた
時に、同じ分子内に共存する消臭性官能基が水(たとえ
ば、空気中からの水分など)と常に接触することを助
け、中和反応が効果的に起こるように作用する化合物で
ある。この作用により、消臭作用の速効性を高め、失効
点における色の変化を明確にすることができる。
【0037】また、親水性化合物は、少なくとも1つの
親水性の官能基と、少なくとも1つの重合性官能基、た
とえばエチレン性不飽和結合等を分子内に有する化合物
である。親水性官能基の具体例としては、水酸基、ポリ
エチレングリコール基(−(CH2 CH2 O)n −;こ
こで、nは自然数である)、アミノ基(ただし、消臭作
用の対象となる臭気物質が塩基性の場合に限る)、アミ
ド基、カルボキシル基(ただし、消臭作用の対象となる
臭気物質が酸性の場合に限る)等を挙げることができ
る。また、親水性化合物は、通常はモノマーまたはオリ
ゴマーである。しかしながら、本発明の効果を損なわな
い限り、ポリマーの形で親水性化合物を使用してもよ
い。親水性化合物の分子量は、通常65〜1,000、
好適には70〜300の範囲である。親水性化合物の具
体例として、数平均分子量が約200〜800のメチル
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、4−ヒ
ドロキシブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチ
ルアクリルアミド、分子内に(メタ)アクリル基を有す
るポリビニルアルコール等を挙げることができる。
【0038】pH指示薬 pH指示薬としては、酸−塩基滴定に用いられる通常の
指示薬が使用できる。たとえば、消臭性官能基が酸性基
の場合、ブロモフェノールブルー、m−クレゾールパー
プル、メチルオレンジ等の、pH1〜6の範囲に変色点
を有する酸性−指示薬が使用できる。また、消臭性官能
基が塩基性基の場合、1,3,5−トリニトロベンゼ
ン、チモールフタレイン、フェノールフタレイン、チモ
ールブルー、ナイルブルー、クレゾールレッド、ブロモ
クレゾールパープル、オルトクレゾールパープル、ダイ
アモンドグリーン等の、pH8〜13の範囲に変色点を
有する塩基性−指示薬が使用できる。本発明の消臭性組
成物においては、その消臭性組成物中に最初から含まれ
る水分、または空気中から組成物に吸収された水分に溶
解したpH指示薬が、臭気物質または消臭性官能基と反
応して発色する。後者の空気中からの水分の吸収につい
て説明すると、本発明の消臭性組成物では、ポリマー中
の消臭性官能基は水との親和性が強く、かつ消臭性官能
基を有する重合単位が10〜100重量%の範囲で存在
するので、有効量の水分を吸収できる。
【0039】臭気物質が実質的に1種類である場合、臭
気物質、消臭性官能基、およびpH指示薬との組み合わ
せにより、臭気物質による消臭性官能基の正確な中和点
で、消臭性組成物の色が変化するように調整できる。た
とえば、臭気物質がアンモニア等のアミン化合物(弱塩
基)を含み、消臭性官能基がスルホン酸基(強酸)の場
合、pH指示薬は、ブロモフェノールブルー、クリスタ
ルバイオレット、メチルバイオレット、エチルバイオレ
ット、コンゴーレッド、またはペンタメトキシレッドが
好適である。しかしながら、消臭性組成物を複数の臭気
物質を中和する目的で使用する場合、消臭性官能基の中
和点より手前の、組成物の中和能力が低下した時点で色
が変化するように、臭気物質、消臭性官能基、およびp
H指示薬を選び、作業者に、使用中の消臭シート等の消
臭材を新品に交換することを促すようにしてもよい。
【0040】消臭シート 本発明の消臭性組成物は、臭気物質を中和して捕捉する
消臭作用にすぐれるので、消臭材としての用途に適して
いる。「消臭材」は、消臭性組成物を含み、消臭性組成
物が臭気物質を含む気体(通常は空気)と接触可能なよ
うに構成された材料である。かかる「消臭材」としての
好適な形態の1つとして、消臭シートを挙げることがで
きる。消臭シートは、たとえば、少なくとも1つの主要
面を有する基材と、その基材の主要面に積層された、消
臭性組成物を含む消臭フィルムの層とを有する。
【0041】本発明の消臭シートにおいて、その基材の
厚みは、通常10〜2,000μm、好適には20〜
1,000μmである。この基材が薄すぎると、基材と
しての補強効果に乏しく、消臭シートの取扱が困難にな
るおそれがあり、反対に厚すぎる場合、省スペース効果
が期待できないおそれがある。基材の材料には、ポリエ
ステル、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリウレタ
ン、ポリカーボネート等のプラスチック、アルミニウ
ム、銅、ステンレス鋼等の金属箔、紙、織布、不織布等
の繊維質シートなどが使用できる。
【0042】消臭フィルムの層の厚みは、通常10〜
3,000μm、好適には50〜2,000μm、特に
好適には75〜1,000μmである。このフィルムが
薄すぎると、機械的強度が低下し、加工や取り扱いが困
難になり、また、消臭作用が低下するおそれがある。反
対に厚すぎると、省スペース化の点で不利になるおそれ
があり、また、可撓性が低下し、被着体の曲面への貼り
付けが困難になる。
【0043】また、消臭フィルムの表面を、臭気物質を
透過せしめる通気性シートで被覆することができる。通
気性シートは、消臭フィルムの表面の汚損を防止しつ
つ、消臭フィルムの消臭作用を発揮可能にする保護材料
として機能する。また、消臭フィルムが強酸性または強
塩基性の化合物を含む場合、人体や金属に直接触れない
ようにして使用することができる。
【0044】通気性シートの厚みは、通常10〜3,0
00μm、好適には50〜2,000μm、特に好適に
は75〜1,000μmの範囲である。この通気性シー
トが薄すぎると、保護材料としての機能が不十分になる
おそれがあり、反対に厚すぎると、消臭作用が低下する
傾向がある。通気性シートの密度は、通常0.1〜1.
0g/cm3 、好適には0.2〜0.9g/cm3 、特に好
適には0.3〜0.8g/cm3 の範囲である。通気性シ
ートの密度が高すぎると、消臭作用が低下するおそれが
あり、反対に密度が低すぎると、保護機能が低下する。
【0045】通気性シートとしては、紙、不織布、布帛
等の繊維質シートが好適である。繊維質シートは、上記
のような保護材料として有用であるとともに、通気性シ
ート自体が軽いので、消臭シートの全体が重くなること
を容易に防止できる。通気性シートは、たとえば、その
シートの通気性を実質的に損なわないように注意しなが
ら、接着手段を用いて消臭フィルムと積層する。通気性
シートの通気性を実質的に損なわないようにするには、
接着手段としてフォーム状の粘着テープを使用する方
法、接着剤を消臭フィルムの表面に非塗布部分を有する
ように部分的に塗布した後、通気性シートを圧着する方
法、超音波によりスポット融着する方法、等を挙げるこ
とができる。接着剤を部分的に塗布するには、例えば、
フィルム表面の周囲のみに塗布する方法や、フィルム表
面のほぼ全面にパターン状に塗布する方法などが採用で
きる。また、後述するように、消臭フィルムが自己粘着
性を有する場合は、別途接着手段を用いることなく通気
性シートを積層することができる。
【0046】また、通気性シートの光透過性が不十分
で、消臭フィルムの色が消臭作業者から見えにくい場
合、通気性シートの一部に開口を形成して透視窓を設け
ることもできる。透視窓を、本発明の効果を損なわない
範囲で、透明プラスチックフィルムで被覆することもで
きる。本発明の消臭シートを配置した雰囲気中に、過剰
量の臭気物質が存在する場合、消臭フィルムの失効前に
一時的にフィルムの周縁部が変色する場合がある。この
ような場合、透視窓の位置を通気性シートの中央部に変
更すれば、作業者にはこのような一時的な変色を見るこ
とはなく、したがって失効点を見誤ることがない。
【0047】さらに、消臭フィルムと通気性シートと
を、消臭フィルムが表裏両方の外側面に配置されるよう
に交互に重ねて(たとえば、通気性シートと合わせて3
〜11枚)に積層して、多層型の消臭シートを形成する
こともできる。このような多層シートは、消臭フィルム
単体を比較的厚く形成しにくい場合、消臭シートの厚み
を所望の厚みまで大きくしつつ、消臭作用を増大させる
ために有効である。
【0048】一方、実質的に通気性のない2枚のプラス
チックフィルムと、それらの間で重合された消臭フィル
ムとからなる積層体を形成し、使用直前に少なくとも一
方のプラスチックフィルムを除去し、消臭作用を発揮さ
せることもできる。この場合、使用直前まで消臭フィル
ムが実質的に未反応の状態で、安定に保存できる点で有
利である。また、他方のプラスチックフィルムの背面
(すなわち、消臭フィルムと接していない面)に、両面
粘着テープ等の接着手段を具備させておき、収納庫の内
側面の所望位置に備え付けて使用することもできる。
【0049】消臭シートの全体の厚みは、通常5mm以
下、好適には100〜4,500μm、特に好適には1
20〜4,000μmの範囲である。本発明の消臭シー
トは、冷蔵庫等の比較的狭く限られた収納空間を有する
収納庫内に配置した場合に、庫内空間を収納のために最
大限に利用することを可能にし、換言すると、すぐれた
省スペース効果を奏することができる。その際の消臭シ
ートの使用方法は、収納物の邪魔にならない場所、例え
ば、収納庫の壁面、天井面、扉内面等の内側面に接着手
段により備え付け、臭気物質を含む気体と、十分な接触
面積で接触可能なように配置する。また、曲面の程度と
消臭シートの可撓性の程度にもよるが、自動車のダッシ
ュボードの表面等の曲面にも追従して備え付け可能であ
り、備え付け場所の選択の自由度が比較的大きいことも
特長の1つである。
【0050】消臭性組成物の調製 消臭性組成物は、たとえば、次のようにして調製するこ
とができる。まず、消臭性化合物を含む重合性成分と、
pH指示薬とを含有する液状の出発原料を調製する。こ
の出発原料を基材の上に、所定の厚みになるように塗布
した後、その塗膜に重合処理を施し、重合性成分を重合
させて消臭性ポリマーを形成する。これにより、基材上
に形成された消臭性組成物からなる消臭フィルムの層を
得ることができる。重合処理は、加熱または放射線照射
により行うことができる。
【0051】消臭性化合物が、常温で、または塗布操作
の際に加熱された時に、十分な流動性を持たない場合、
第2の重合性成分としての親水性化合物、または/およ
び水とを含有する、液状の出発原料を使用することがで
きる。消臭性組成物の好適な1例は、消臭性化合物と、
親水性化合物と、架橋剤とからなる重合性成分と、pH
指示薬とを含有し、消臭性化合物(D)と親水性化合物
(H)の配合重量比率(D:H)が、10:90〜4
0:60の範囲であり、そして水等の非重合性の溶媒を
含まない出発原料に重合処理を施して形成した消臭性組
成物である。この場合、消臭性組成物は、架橋された消
臭性ポリマーを含む、常温で固形状の物質である。消臭
性化合物の配合比率(D)が、10未満では消臭作用を
高めるのが困難であり、反対に60を超えると、消臭性
官能基に由来する酸性または塩基性が強くなり過ぎて、
組成物と一緒に用いられる基材や容器等を変質させるお
それがある。このような観点から、配合重量比率(D:
H)は、特に好適には15:85〜50:50である。
例えば、消臭性官能基がスルホン酸基のような強酸性基
の場合、D:H=15:85〜60:40の範囲が好ま
しい。また、この例におけるpH指示薬としては、コン
ゴーレッド、ペンタメトキシレッド等が好適である。
【0052】消臭性組成物の別の好適な例は、消臭性化
合物と、親水性化合物と、架橋剤とからなる重合性成分
と、水とを含有し、消臭性化合物(D)と親水性化合物
(H)の配合重量比率(D:H)が、20:80〜8
5:15の範囲が好適であり、そして重合性成分の濃度
が30〜70重量%である出発原料に重合処理を施して
形成した消臭性フィルムである。この場合、消臭性フィ
ルムは、架橋された消臭性ポリマーと水とを含有する
が、実質的に常温で固体の物質である。消臭性化合物の
配合比率(D)が、20未満では消臭作用を高めるのが
困難であり、反対に85を超えると、消臭性官能基に由
来する酸性または塩基性が強くなり過ぎるおそれがあ
る。このような観点から、特に好適な配合重量比率は、
D:H=30:70〜80:20である。例えば、消臭
性官能基がスルホン酸基のような強酸性基の場合、3
0:70〜75:25の範囲が好ましい。また、この例
におけるpH指示薬としては、ブロモフェノールブル
ー、クリスタルバイオレット、メチルバイオレット、エ
チルバイオレット等が好適である。
【0053】上記したように、消臭性ポリマーは架橋さ
れるのが好適である。ポリマーの架橋により、消臭性組
成物の保水性が高められ、消臭作用の速効性および経時
安定性が向上する。架橋反応には、通常、2個以上の重
合性官能基を分子内に有するモノマーまたはオリゴマー
からなる架橋剤を用いる。架橋剤の分子量は、通常15
0〜1,500、好適には170〜1,300の範囲で
ある。架橋剤の重合性官能基は、消臭性ポリマーまたは
その出発原料となる重合性化合物の架橋点となる官能基
の種類に応じて適宜選択される。たとえば、架橋点がエ
チレン性不飽和結合の場合、架橋剤もエチレン性不飽和
結合を有することができる。また、消臭性ポリマーの架
橋点が水酸基の場合、架橋剤として、イソシアネート化
合物またはエポキシ化合物が使用できる。
【0054】エチレン性不飽和結合を有する架橋剤の例
として、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジ
エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレ
ングリコール(メタ)アクリレート等のアクリレート化
合物を挙げることができる。架橋剤の量は、消臭性ポリ
マーまたはそのポリマーを形成する出発物質(重合性成
分)100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、
好適には0.2〜7重量部、特に好適には0.5〜5重
量部の範囲である。架橋剤が0.1重量部を下回ると、
保水性やフィルム強度を高めることができないおそれが
あり、反対に10重量部を上回ると中和能力が低下する
おそれがある。
【0055】ポリマーの架橋は、たとえば、(i)消臭
性ポリマーを形成する重合性成分に架橋剤を添加し、重
合処理の段階で行うことができ、さもなければ、(ii)
消臭性ポリマーを含む消臭性組成物の前駆体に架橋剤を
添加し、架橋処理を施して行うことができる。架橋処理
は、加熱または放射線照射によって行う。また、本発明
の効果を損なわない限り、他の架橋手段によっても、消
臭性ポリマーの架橋を行うことができる。たとえば、消
臭性ポリマーがスルホン酸またはその金属塩等の強酸性
官能基を含み、消臭性組成物が水を含有する場合、架橋
剤を用いることなくイオン的に架橋することができる。
イオン架橋とは、水を媒介とするイオン結合が極性官能
基の間に形成され、ポリマーどうしが架橋されることを
いう。この場合、消臭性組成物に含まれる水の量は、組
成物の全重量に対して通常5〜70重量%の範囲であ
る。また、本発明の効果を損なわない限り、イオン架橋
と架橋剤による架橋とを併用することもできる。
【0056】消臭性組成物の出発原料には上記成分の
他、本発明の効果を損なわない範囲において、光重合開
始剤、連鎖移動剤、連鎖停止剤、紫外線吸収剤、酸化防
止剤、充填剤、着色剤、可塑剤、非重合性の親水性物質
等の各種添加剤を含有させることができる。非重合性の
親水性物質としては、炭素数5〜12の脂肪族アルコー
ル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリ
セリン等の多価アルコール、これらの多価アルコールの
縮合物、界面活性化合物などを挙げることができる。
【0057】また、消臭性組成物が、消臭作用に有効な
量の水または非重合性の親水性物質を含む場合、重合性
の親水性化合物の配合を省略することができる。一方、
親水性化合物は、非イオン性の親水性基を有するのが好
ましい。ここで「非イオン性の親水性基」とは、水酸
基、ポリエチレングリコール基(−(CH 2 CH2 O)
n −;ここで、nは自然数である)、アミド基等の、水
に溶解した時に実質的にイオン解離を生じない官能基で
ある。「イオン解離を生じない」とは、解離イオンが、
消臭性ポリマーと臭気物質との中和反応を著しく阻害し
ない状態を意味する。このような化合物を用いた場合、
消臭性官能基の機能を妨げることなく、高い消臭作用を
発揮させることができ、また、フィルムの可塑性あるい
は可撓性を高め、取り扱い性や裁断、曲げ等の加工性を
良好にすることができる。
【0058】また、基材を持たない消臭性フィルムを形
成することもできる。たとえば、基材の消臭フィルムと
の接触面を、予めシリコーン等の剥離剤によって剥離処
理しておけば、基材は容易に除去でき、消臭フィルムを
単離することができる。その他の消臭材 本発明の消臭性組成物は、消臭シート以外の形態でも有
利に使用することができる。本発明の消臭性組成物を用
いた消臭材の、別の好適な形態について、ここでいくつ
か説明する。
【0059】たとえば、消臭性組成物からなる消臭フィ
ルムを、通気性シートから形成された容器に収容し、消
臭材を形成することができる。このような容器は、たと
えば、図1に示されるように、消臭フィルムよりひと回
り大きな平面寸法の、2枚の通気性シート12および1
3の周囲の一部を開放したまま接着(融着を含む)して
袋状の容器として形成することができる。この容器に、
消臭フィルム11を入れた後、開放部を閉じると、消臭
材10を完成することができる。ここで、両方の通気性
シート12および13の光透過性が不十分である場合、
どちらかの通気性シートに透視窓を設けるのがよい。ま
た、この場合、開放部を繰り返し開閉可能なように閉
じ、消臭フィルムの交換のみで消臭材を再生できるよう
にすることができる。また、消臭性フィルムに代えて、
水を比較的多く含むゲル状の消臭性組成物を用いること
もできる。
【0060】通気性シートを用いた消臭材では、通気性
シートの表面に、印刷、染色等の装飾手段により、文
字、図案等のイメージを設けることができる。本発明に
よる消臭材は、薄型化および軽量化が容易であるので、
室内の壁、窓や戸棚のガラス等の垂直面に備え付けて使
用することができる。この場合、表面に装飾性を持た
せ、室内の美観を損なわない利点を有する。たとえば、
通気性シートとしてポスターやカレンダー等の装飾シー
トを用い、装飾シートの裏面に消臭フィルムを直接、ま
たは接着手段を介して貼り付けて使用することができ
る。消臭フィルムが強酸性の化合物を含む場合、消臭フ
ィルムと装飾シートの間に別の耐酸性通気性シート、例
えばポリエチレンテレフタレートの繊維質シートが介在
するようにして、装飾シートの表面の変質を効果的に防
止することもできる。また、装飾シートおよび必要に応
じて通気性シートに透視窓を設けておくのが好ましい。
【0061】また、消臭フィルムを、その表裏両面とも
に臭気物質を含む気体に接触可能なように配置した消臭
シートは、中和能力を高める点で好適である。たとえ
ば、比較的通気性の高い通気性シートを消臭フィルムの
表裏両面に配置した消臭シートを、一方の通気性シート
を収納庫の内面等の被着面に貼り付けることで、被着面
に向かい合う消臭フィルムの裏面も、収納庫内の雰囲気
と十分に接触可能なように配置できる。
【0062】また、本発明によると、図2に示されるよ
うな消臭材を形成することができる。この消臭材20
は、支持体21と、支持体21の幅方向wの寸法よりも
大きな幅方向寸法を有し、支持体21の幅方向の両端近
傍部にのみに固着され、固着部分以外は支持体21から
離れて配置された消臭フィルム22とを含んでなる。図
中、参照番号23は、保護のために配置した通気性シー
トである。この通気性シートにも、必要に応じて透視窓
を設けることができる。図中のh、すなわち、消臭フィ
ルム22の裏面と支持体21との距離(最大距離)は、
好適には1〜30mm、特に好適には2〜15mmの範囲で
ある。距離hが小さすぎると、消臭作用の向上効果が不
十分になり、反対に大きすぎると、消臭用物品が嵩高く
なり、省スペース化が難しくなる。
【0063】また、図2に示した消臭材20において、
支持体21が消臭剤を含んでいてもよい。本発明の消臭
性組成物と併用できる消臭剤の具体例として、消臭作用
を持つ植物性抽出物、活性炭、イオン交換樹脂、フタロ
シアニン系金属塩等を挙げることができる。さらに、消
臭性組成物を含有する多孔質シートから形成された消臭
材も有用である。このような消臭材は、たとえば、紙、
不織布、布帛等の繊維を含む多孔質シートに、消臭性組
成物の原料となる重合性成分を含有する液体を、その細
孔中に含浸させた後、重合処理を行うことにより形成で
きる。この場合、重合後の液体、すなわち、消臭性組成
物は、常温(約25℃)でゲル状のものも使用できる
が、固形状であるものが好適である。これにより、ビン
や袋等の容器を使用することなく、シート状の消臭材を
そのまま所望の場所に配置できる。
【0064】一方、消臭フィルムが自己粘着性を有する
場合、別途接着手段を用いることなく、基材や収納庫の
内面等の被着面に備え付けることができる。消臭フィル
ムに対して自己粘着性を持たせるには、(i)前記重合
性成分に、炭素数4〜14のアルキル基を有するアルキ
ルアクリレート、例えばイソオクチルアクリレート、2
−エチルヘキシルアクリレートおよびブチルアクリレー
トを含有させること、(ii)前記出発原料にエマルジョ
ン粘着剤を含有させること、等の方法がある。
【0065】また、消臭フィルムが透明である場合、収
納庫の壁面等が透明なガラスやプラスチックである場合
や、ゴミ箱の蓋が透明である場合に、外観を損なわない
ようにして消臭フィルムを貼り付けることができる。ま
た、トイレの便器の蓋のように、開蓋状態ではその内面
が人目に触れる場合に、美観を損なわないようにするこ
と、すなわち、貼り付けられていることを視認されにく
いようにすることも可能である。この場合、必要に応じ
て使用される、接着剤、粘着テープ等の接着手段や、通
気性シート、支持基材等の積層材料も、透明である必要
がある。透明な消臭フィルムは、たとえば、重合性成分
をアクリル系化合物だけからなるようにし、それを重合
した消臭性ポリマーを、水と相溶可能なようにすること
により調製できる。これは、アクリル系化合物以外の成
分から重合されたポリマーの混入は、ポリマーどうしの
相分離を引き起こし、透明性が低下するおそれがあるか
らである。また、消臭性ポリマーの水との相溶性を改良
するには、親水性化合物の量を比較的多くすることが好
ましい。
【0066】また、消臭フィルムが、その表面において
外気と連通し、内部では互いに適度に連通した多数の細
孔を有する密度が0.8g/cm3 以下の多孔質フィルム
である場合、外気との接触面積の増加により消臭作用を
容易に高めることができる。このような多孔質フィルム
は、出発原料に例えばアゾビスイソブチロニトリル等の
発泡剤の使用により発泡処理を行った後、重合処理を行
う等の方法により形成できる。
【0067】さらに、消臭性組成物の出発原料を、収納
庫内の壁面等の消臭フィルムを配置したい場所に、直接
塗布し、重合処理を施して、その場所に消臭フィルムを
形成することもできる。その他の用途 その他の用途について説明すると、本発明の消臭性組成
物は、ガス吸収材としても使用できる。たとえば、消臭
性組成物の消臭性官能基がスルホン酸基の場合、硬化後
のコンクリートから発生するアンモニア等の塩基性ガス
の吸収に効果的である。完成直後の建物のコンクリート
からは、バクテリア等の微生物の死骸の分解により、ア
ンモニアガスが比較的長期の間発生する。このガスは、
通常は建物内部にいる人間が臭気として感じない程度の
濃度で空気中に充満する。しかしながら、絵画等の美術
品の色材を徐々に変色させる危険性がある。したがっ
て、建物完成後の数週間から数か月間は、建物を使用せ
ず、ガスの濃度が低下するまで放置する場合がある。本
発明の消臭性組成物を含む消臭材、たとえば消臭シート
等は、このようなアンモニアガスの吸収能力にすぐれる
ので、上記放置期間を短縮することができる。また、コ
ンクリートの床面や壁面に消臭性組成物の層が近接また
は接するように本発明の消臭シートを配置し、コンクリ
ート表面から発生し続ける微量なガスを捕捉し、建物の
室内へのガスの放散を長期にわたり防止することも可能
である。
【0068】また、本発明の消臭シートまたは消臭フィ
ルム単体は、ガスセンサーとしても使用できる。たとえ
ば、消臭性官能基が強酸性で、pH指示薬が酸性−指示
薬である場合、本発明の消臭シート等は塩基性ガスセン
サーとして次のように作動することができる。センサー
が配置された雰囲気が比較的高濃度の塩基性ガスで充満
した場合、消臭フィルムは変色する。しかしながら、こ
のような変色は一時的であり、雰囲気中のガス濃度が低
下すれば元の色に復元する。すなわち、消臭フィルムの
変色および色の復元により、雰囲気中のガス濃度が所定
値より高いかそうでないかを視認できる。このような塩
基性ガスセンサーは、たとえば、実験室のドラフトチャ
ンバーの扉のガラス窓の内側面に貼り付けて使用するこ
とができる。この時、酸性側で薄く発色し、塩基性側で
酸性側の発色よりも濃く発色し、はっきりと視認できる
ようにpH指示薬を選択して消臭シートを形成し、その
消臭シートを切り抜いて文字シート(たとえば「注意」
など)を作り、ガラス窓に貼り付けることにより、ガス
濃度が所定値より高い時期をより明確に視認することが
できる。
【0069】
【実施例】次いで、本発明をその実施例を参照して説明
する。なお、本発明はこれらの実施例によって限定され
るものではないことを理解されたい。例1 (1)消臭性組成物の出発原料の調製 容積10mLのガラス容器(スクリュー管)に下記の成分
(a)および(b)を加えて、容器の回転下に攪拌し
た。均一な溶液が得られた。
【0070】(a)重合後に、消臭性官能基を有する重
合単位を与える消臭性化合物:ACMPS(2−アクリ
ルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、和光純薬工
業社製)…4g (b)溶媒:イオン交換水…4g 得られた溶液に、下記の成分(c)〜(f)をさらに加
え、均一な溶液になるまで攪拌した。消臭性組成物の調
製のための液状の出発原料が得られた。
【0071】(c)親水性化合物:NKエステルM90
G(メチルポリエチレングリコールメタクリレート、新
中村化学工業社製)…2g (d)架橋剤:NKエステル2G(ジエチレングリコー
ルジメタクリレート、新中村化学工業社製)…0.06
g (e)pH指示薬:ブロモフェノールブルー…0.06
g (f)重合開始剤:ダロキュアー1173(メルク社
製)…0.06g (2)消臭性組成物および消臭シートの調製 先の工程で調製した出発原料を2枚のPETフィルムの
間に挟み、ナイフコーターを用いて溶液部分の厚みをお
よそ100μmに調整した。ここで、使用したPETフ
ィルムの厚みは50μmであり、一方のPETフィルム
は剥離フィルムであり、その出発原料との接触面はシリ
コーンコーティングで軽剥離処理済みであった。次い
で、サンドイッチ構造体の一方のPETフィルムの上か
ら紫外線を照射し、重合処理を行い、消臭性ポリマーを
形成した。これにより、黄色透明(黄色に着色した透
明;以下、他色についても同様に記載)な消臭性組成物
からなる消臭フィルムと、その消臭フィルムの一方の主
要面に接着したPETフィルムからなる基材と、その消
臭フィルムの他方の主要面に積層された剥離フィルムと
からなる消臭シートが得られた。なお、重合処理のため
の紫外線照射は、ウシオ電機社製の80WのUVランプ
を、一方のPETフィルムの上方200mmの位置に配置
し、合計照射量が900mJ/cm2 になるような条件下で
実施した。
【0072】本例において得られた消臭性組成物および
したがって消臭フィルムは、消臭性ポリマー(上記成分
(a)+(c)+(d)の重合成分の重合体)の含有量
が60重量%であり、裁断操作においてもフィルムの形
状を安定にとどめることが可能な固体であった。また、
消臭性化合物(a)の重合単位が消臭性ポリマー全体に
占める割合は、66重量%であった。 (3)消臭性能の評価 本例において得られた消臭シートの消臭性能を評価する
ため、消臭試験を次のようにして行った。なお、この試
験の方法は、平成3年6月20日に株式会社「ぎょうせ
い」が発行した「Q&A家庭用品の安全対策−すべてが
わかる有害物質含有家庭用品規制法」に記載の、「一般
消費者用芳香脱臭剤の自主基準」に準じたものである。
【0073】まず、容積6Lのデシケータ中にスライド
ガラスを1枚置き、その上に、臭気物質として、25重
量%濃度のアンモニア水を50μL滴下した。デシケー
タの蓋を閉じて密閉した状態で、60分間そのまま放置
した。デシケータ内の空気中のアンモニア濃度を、ガス
テック社製の検知管No.3を用いて測定したところ、
検知管の測定限界(30ppm )を超えた濃度であった
(すなわち、消臭操作を全く行わない状態では、アンモ
ニア濃度は30ppm よりも大である)。
【0074】次いで、本例の消臭シート(平面寸法:1
0cm×10cm、消臭性フィルムのみの重量は約1g)か
ら剥離フィルムを剥がし、上記のようにして濃度調整し
たアンモニアガスを含むデシケータ内に、消臭フィルム
表面が空気と十分に接触するようにして配置した。再び
デシケータの蓋を閉じ、下記の第1表に記載の所定の時
間の経過後にデシケータ内の空気中の残存アンモニア濃
度を上記と同様にして測定した。得られた結果を、消臭
フィルムの色とともに、次の第1表に示す。
【0075】
【表1】
【0076】上記第1表に記載の結果から、本例の消臭
シートは、水および親水性化合物を含む組成物からなる
消臭フィルム層を有していたので、消臭作用の速効性が
高いことが示された。また、120分経過後、デシケー
タ内のアンモニア濃度は十分に低下し、フィルムの色は
変色せず、消臭効果(中和能力)はまだ失われていない
ことが示された。
【0077】引き続いて、デシケータの蓋を開け、スラ
イドガラスの上に、25重量%濃度のアンモニア水をさ
らに50μL滴下し、デシケータの蓋を閉じ、上記と同
様にして残存アンモニア濃度を測定した。得られた結果
を次の第2表に示す。
【0078】
【表2】
【0079】上記第2表に記載の結果から、次のような
考察が導びかれる。デシケータ内のアンモニアが過剰の
状態では、一時的に、しかも消臭フィルムの周縁の近傍
部分のみが青色に変色(中央部は黄色)したが、消臭フ
ィルムの中和能力はまだ失われていなかったので、消臭
作用が持続した。1080分経過後、アンモニア濃度は
十分に低下し、フィルムの色も元の色に復元した。すな
わち、この消臭フィルムの中和能力はまだ失われていな
いことが示された。
【0080】さらに続けて、上記と同様にして、デシケ
ータ内にアンモニア水を再度滴下し、残存アンモニア濃
度を測定した。得られた結果を次の第3表に示す。
【0081】
【表3】
【0082】上記第3表に記載の結果から、次のような
考察が導びかれる。アンモニア滴下直後からしばらく、
消臭フィルムの中和能力はまだ失われていなかったので
消臭作用は持続した。しかし、150分経過後には失効
し、フィルム全体が青色に変色した。このことは、55
20分経過後も、アンモニア濃度の低下はほとんど見ら
れず、フィルムの色も復元しなかったことからも明らか
であった。
【0083】さらに付け加えると、本例の消臭フィルム
は、有効時の黄色よりも、失効時の青色の方が鮮やかで
あり、フィルムの失効点を明確に視認できた。例2 前記例1に記載の手法を繰り返した。しかし、本例で
は、架橋剤成分(d)として、NKエステル2Gに代え
てライトアクリレート14EG−A(ポリエチレングリ
コールジアクリレート、共栄化学社製)を同量で使用
し、また、pH指示薬(e)の量を0.003gに変更
した。本例の消臭シートの消臭試験を前記例1と同様に
して行ったところ、本例の消臭シートでは、60分経過
後のデシケータ内の残存アンモニア濃度を5ppm 以下に
低減することができた。また、本例の消臭フィルムの色
は、有効時には黄色透明、失効時には青色透明であっ
た。
【0084】例3 前記例1に記載の手法を繰り返した。しかし、本例で
は、pH指示薬(e)として、ブロモフェノールブルー
に代えてクリスタルバイオレットを同量で使用した。本
例の消臭シートの消臭試験を前記例1と同様にして行っ
たところ、本例の消臭シートでは、60分経過後のデシ
ケータ内の残存アンモニア濃度を5ppm 以下に低減する
ことができた。また、本例の消臭フィルムの色は、有効
時にはうす緑色透明、失効時には青紫色透明であった。
【0085】例4 前記例2に記載の手法を繰り返した。しかし、本例で
は、pH指示薬(e)として、ブロモフェノールブルー
に代えてメチルバイオレットを同量で使用した。本例の
消臭シートの消臭試験を前記例1と同様にして行ったと
ころ、本例の消臭シートでは、60分経過後のデシケー
タ内の残存アンモニア濃度を5ppm 以下に低減すること
ができた。また、本例の消臭フィルムの色は、有効時に
はうす緑色透明、失効時には濃い紫色透明であった。
【0086】例5 前記例2に記載の手法を繰り返した。しかし、本例で
は、pH指示薬(e)として、ブロモフェノールブルー
に代えてエチルバイオレットを同量で使用した。本例の
消臭シートの消臭試験を前記例1と同様にして行ったと
ころ、本例の消臭シートでは、60分経過後のデシケー
タ内の残存アンモニア濃度を5ppm 以下に低減すること
ができた。また、本例の消臭フィルムの色は、有効時に
はうす緑色透明、失効時には濃い紫色透明であった。
【0087】例6 前記例1に記載の手法を繰り返した。しかし、本例で
は、下記の成分(a),(c−1),(c−2),
(d)および(e)を記載の配合量にて用い、水を含ま
ない出発原料を調製した。 (a)消臭性化合物:ACMPS…2g (c−1)第1の親水性モノマー:アクリルアミド(和
光純薬工業社製)…2g (c−2)第2の親水性モノマー:N,N−ジメチルア
クリルアミド(興人社製)…6g (d)架橋剤:ライトアクリレートTM14EG−A(共
栄化学社製)…0.06g (e)pH指示薬:コンゴーレッド…0.003g 本例において得られた消臭シートの消臭試験を前記例1
と同様にして行ったところ、本例の消臭シートでは、6
0分経過後のデシケータ内の残存アンモニア濃度を5pp
m 以下に低減することができた。また、本例の消臭フィ
ルムの色は、有効時にはうす青色透明、失効時には赤色
透明であった。
【0088】例7 前記例6に記載の手法を繰り返した。しかし、本例で
は、pH指示薬(e)として、コンゴーレッドに代えて
ペンタメトキシレッドを同量で使用した。本例の消臭シ
ートの消臭試験を前記例1と同様にして行ったところ、
本例の消臭シートでは、60分経過後のデシケータ内の
残存アンモニア濃度を5ppm 以下に低減することができ
た。また、本例の消臭フィルムの色は、有効時には濃い
紫色透明、失効時にはほとんど無色であった。
【0089】例8〜例12 前記例1に記載の手法を繰り返した。しかし、本例で
は、消臭性組成物の出発原料の調製のため、下記の成分
(a),(b),(d),(e)および(f)を記載の
配合量にて用いた。 (a)消臭性化合物:N−1[3(N′,N′−ジメチ
ルアミノ)プロピル]アクリルアミド(興人社製)…4
g (b)溶媒:イオン交換水…1g (d)架橋剤:ライトアクリレート14EG−A(共栄
化学社製)…0.04g (e)pH指示薬:(下記第4表参照)…0.004g (f)重合開始剤:ダロキュアー1173…0.04g それぞれの例において、得られた消臭シートの消臭性能
を評価した。特に、それぞれの例において、消臭シート
中で使用した消臭性化合物がアミノ基を有するので、酢
酸、すなわち、酸性の臭気物質に対する消臭性能にすぐ
れていることが認められた。
【0090】さらに続けて、酢酸臭の除去に関して、そ
れぞれの消臭フィルムの色を有効時と失効時(酢酸臭で
中和された後)とで比較したところ、次の第4表に示す
ように、明確な色の変化が視認可能であった。
【0091】
【表4】
【0092】例13 前記例1に記載の手法を繰り返した。しかし、本例で
は、消臭シートの製造の際、PETフィルムに代えて、
2枚とも剥離フィルムを使用した。本例において得られ
た消臭シートは、次のようにして用いることにより、消
臭フィルムの自着作用によりガラス面に接着して使用す
ることができた。まず、2枚のうちの一方の剥離フィル
ムを剥がして、消臭フィルムの表面を露出させ、この露
出面をドラフトチャンバーのガラス扉のガラス面に直接
接触させ、圧着し、剥離フィルム(1枚)付き消臭フィ
ルムをガラス面に接着した。次に、他方の剥離フィルム
も剥がして、消臭フィルムの表面が臭気物質を含む空気
と接するようにした。この状態で約半年間放置したが、
消臭フィルムはガラス面から剥がれ落ちることはなかっ
た。また、フィルムは変色せず、消臭効果はまだ失われ
ていなかった。
【0093】
【発明の効果】以上に詳細に説明したように、本発明に
よれば、フィルム及びその他の形状の消臭材として利用
可能であり、消臭力の失効点を消臭作業者(使用者一般
を含む)が正確に視認でき、また、保存安定性にすぐれ
た消臭性組成物が得られる。この組成物では、消臭性ポ
リマーの使用に由来して、少量でも大きな消臭効果を発
揮することができる。また、このすぐれた消臭性組成物
を使用することを通じて、今までになくすぐれた消臭シ
ートおよび消臭方法も提供することができる。特に消臭
シートは、その薄くてフラットな小型形状のため、使用
が容易であり、広汎な利用分野を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による消臭材の好ましい1形態を示した
断面図である。
【図2】本発明による消臭材のもう1つの好ましい形態
を示した斜視図である。
【符号の説明】
10…消臭材 11…消臭フィルム 12…通気性シート 13…通気性シート 20…消臭材 21…支持体 22…消臭フィルム 23…通気性シート

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)臭気物質を中和可能な消臭物質
    と、 (2)該消臭物質の失効を指示可能なpH指示薬とを含
    んでなる消臭性組成物において、 前記消臭物質が、少なくとも1つの消臭性官能基を有す
    る重合単位を含む消臭性ポリマーを含有し、その際、前
    記重合単位が、前記消臭性ポリマーの全重量に対して、
    10〜100重量%の範囲の量で存在し、そして前記p
    H指示薬が、前記消臭性ポリマー100重量部に対し
    て、0.001〜10重量部の範囲の量で存在すること
    を特徴とする消臭性組成物。
  2. 【請求項2】 前記消臭性ポリマーが、消臭性官能基を
    持たない親水性化合物を含む重合単位をさらに含み、該
    親水性化合物を含む重合単位は、前記消臭性ポリマーの
    全重量に対して、1〜90重量%の範囲の量で存在しか
    つ、これに対応して、前記消臭性官能基を有する重合単
    位は、前記消臭性ポリマーの全重量に対して、10〜9
    9重量%の範囲の量で存在することを特徴とする請求項
    1に記載の消臭性組成物。
  3. 【請求項3】 少なくとも1つの主要面を有する基材
    と、該基材の主要面に積層された消臭フィルムの層とを
    含んでなり、該消臭フィルムの層は、請求項1に記載の
    消臭性組成物を含んでなることを特徴とする消臭シー
    ト。
  4. 【請求項4】 臭気物質を中和することにより消臭を行
    う消臭方法において、 (a)請求項1に記載の消臭性組成物を、臭気物質を発
    生する臭気源から、該臭気物質と相互作用するのに十分
    な間隔をおいて配置すること、および(b)作業者が視
    覚的に、消臭物質の失効を示す前記消臭性組成物の変色
    を観察できるようにすることを含んでなることを特徴と
    する消臭方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100826510B1 (ko) * 2002-04-05 2008-05-02 닛폰 에쿠스란 고교 가부시키가이샤 인디케이터부착 소취성 섬유구조물
JP2016029953A (ja) * 2014-07-25 2016-03-07 理研ビタミン株式会社 消臭性紫外線硬化型樹脂組成物及びその製造方法並びに消臭剤
JP2016029954A (ja) * 2014-07-25 2016-03-07 理研ビタミン株式会社 消臭性紫外線硬化型樹脂組成物及びその製造方法並びに消臭剤

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KR100826510B1 (ko) * 2002-04-05 2008-05-02 닛폰 에쿠스란 고교 가부시키가이샤 인디케이터부착 소취성 섬유구조물
JP2016029953A (ja) * 2014-07-25 2016-03-07 理研ビタミン株式会社 消臭性紫外線硬化型樹脂組成物及びその製造方法並びに消臭剤
JP2016029954A (ja) * 2014-07-25 2016-03-07 理研ビタミン株式会社 消臭性紫外線硬化型樹脂組成物及びその製造方法並びに消臭剤

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