JPH11345525A - 絶縁電線 - Google Patents

絶縁電線

Info

Publication number
JPH11345525A
JPH11345525A JP10155062A JP15506298A JPH11345525A JP H11345525 A JPH11345525 A JP H11345525A JP 10155062 A JP10155062 A JP 10155062A JP 15506298 A JP15506298 A JP 15506298A JP H11345525 A JPH11345525 A JP H11345525A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
weight
resin composition
coating layer
parts
flame
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP10155062A
Other languages
English (en)
Inventor
Hitoshi Yamada
仁 山田
Masami Nishiguchi
雅己 西口
Masaru Hashimoto
大 橋本
Michihisa Tasaka
道久 田坂
Satoyuki Kajiyama
学之 梶山
Shinzo Saito
伸三 斉藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Furukawa Electric Co Ltd
Original Assignee
Furukawa Electric Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Furukawa Electric Co Ltd filed Critical Furukawa Electric Co Ltd
Priority to JP10155062A priority Critical patent/JPH11345525A/ja
Publication of JPH11345525A publication Critical patent/JPH11345525A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Insulated Conductors (AREA)
  • Organic Insulating Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 高い耐熱性を有し、低温特性、柔軟性に優
れ、絶縁体が白化しにくく、任意の色に着色でき、廃棄
時においては、重金属化合物の溶出や、多量の煙、腐食
性ガスの発生がない絶縁電線を提供する。 【解決手段】 導体1の周囲に設けられた難燃樹脂組成
物からなる一次被覆層2と二次被覆層3を有する絶縁電
線であって、一次被覆層はエチレン・酢酸ビニル共重合
体及び/又はエチレン・アクリル酸エチル共重合体(A
1)0〜85重量%とビニル芳香族系熱可塑性エラスト
マー樹脂組成物(A2)100〜15重量%からなる樹
脂100重量部に対して、金属水和物80〜140重量
部、赤リン2.5〜14.5重量部を配合した難燃樹脂
組成物(A)から構成され、二次被覆層は特定のビニル
芳香族系熱可塑性エラストマー樹脂組成物(A2)10
0重量部に対して、ポリリン酸アンモニウム系難燃剤2
0〜80重量部を配合した難燃樹脂組成物(B)から構
成された絶縁電線。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気・電子機器の
内部および外部配線に使用される絶縁電線に関するもの
であり、埋立、燃焼などの廃棄時において、重金属化合
物の溶出や、多量の煙、腐食性ガスの発生がなく、さら
に非常に高い耐熱性を有し、低温特性、柔軟性に優れ、
高度な難燃特性を有しさらに電線を折り曲げた際に絶縁
体が白化しにくい絶縁電線に関する。
【0002】
【従来の技術】電気・電子機器の内部および外部配線に
使用される絶縁電線の被覆材料には、ポリ塩化ビニル
(PVC)コンパウンドや分子中に臭素原子や塩素原子
を含有するハロゲン系難燃剤を配合したエチレン系共重
合体を主成分とする樹脂組成物を使用することがよく知
られている。しかし、これらを適切な処理をせずに廃棄
した場合、被覆材料に配合されている可塑剤や重金属安
定剤が溶出したり、またこれらを燃焼させると被覆材料
に含まれるハロゲン化合物から腐食性ガスが発生するこ
とがあり、近年、この問題が議論されている。このた
め、有害な重金属の溶出やハロゲン系ガスなどの発生の
恐れがないノンハロゲン難燃材料で電線を被覆する技術
が検討されはじめている。ノンハロゲン難燃材料は、ハ
ロゲンを含有しない難燃剤を樹脂に配合することで難燃
性を発現させており、この難燃剤としては、例えば、水
酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水和
物が、また、前記樹脂としては、エチレン・1−ブテン
共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・
酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重
合体、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体など
が用いられている。このようなノンハロゲン難燃材料に
高度の難燃性を付与する場合、金属水和物を多量(例え
ば、樹脂100重量部に対して、金属水和物120重量
部より多い量)に配合する必要があり、この結果とし
て、難燃材料の機械特性が低下するという問題がある。
この問題を解決するために、金属水和物の配合量を少量
(例えば、樹脂100重量部に対して、金属水和物12
0重量部以下)にして、赤リンを配合する方法がとられ
ており、高度の難燃性と機械特性を両立させたノンハロ
ゲン難燃材料が検討されている。ちなみに、高度の難燃
性が要求される電気・電子機器用絶縁電線には、例え
ば、UL1581(電線、ケーブルおよびフレキシブル
コードのための関連規格(Reference Standard for Ele
ctrical Wires, Cables, and Flexible Cords))などに
規定されている垂直燃焼試験(Vertical Flame Test)
(VW−1)に合格する難燃性が必要とされる。
【0003】ところで、電気・電子機器に使用される絶
縁電線の被覆材料には、絶縁電線の種類や接続部を区別
するなどの目的で、絶縁電線の表面に印刷をおこなった
ものや、数種類の色(例えば、白、黒、鼠、茶、赤、
橙、黄、緑、青など)に着色されたものが使用されてい
る。印刷内容がわかりやすい白色や、区別しやすい任意
の色に着色された絶縁電線は、目的の色に着色された樹
脂組成物を導体上に押出被覆することで製造されてい
る。ところが、高度の難燃性と機械特性を両立させるた
めに金属水和物と赤リンを配合したノンハロゲン難燃材
料は、赤リンの発色のため、白色や任意の色に着色する
ことができず、容易に種類や接続部を区別することがで
きる絶縁電線ができないという問題が生じている。この
問題を解決する方法としては、絶縁電線の被覆層を二層
構造にする方法が考えられている。二層構造をとる絶縁
電線の例としては、特開昭62−12006号、特開平
1−258310号などに開示されているが、押出成形
性に問題があり、また高度な難燃性VW−1試験には適
合しない。
【0004】特開昭62−12006号には、ケーブル
を二層構造として、その内層をオレフィン系樹脂組成物
(具体的にはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン
(PP)、ポリスチレン(PS)、エチレン・プロピレ
ン共重合体(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエン
三元共重合体(EPDM)、スチレンブタジエンゴム
(SBR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル
ブタジエンゴム(NBR)、エチレン・アクリル酸エチ
ル共重合体(EEA)、エチレン・酢酸ビニル共重合体
(EVA)が例示されている)とし、外層を高機能ポリ
マー組成物(具体的には、熱可塑性ポリエステルエラス
トマー(TPEE)、ポリアミド(PA)、ポリエーテ
ルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PS
U)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホ
ン(PES)などが例示されている)とするケーブルの
例が開示されている。しかしながら、外層に使用される
高機能ポリマーはオレフィン系樹脂と比較して押出成形
が難しく、高価であるという欠点を有している。さらに
この場合は電線・ケーブルの柔軟性に乏しく、またケー
ブルを曲げた際に絶縁被覆層が折り曲げた部分で白くな
る白化現象が生じてしまい、絶縁電線に必要とされる特
性を満足するものではないという問題がある。さらに、
内層、外層に使用される樹脂が異なっているため内層と
外層が剥離しやすく、特に絶縁電線を屈曲した場合に、
内層と外層が剥離しやすいという問題がある。また、特
開平1−258310号には、電線・ケーブルを二層構
造とし、内層はポリオレフィン、無機水和物、赤リンを
含有する難燃性組成物で構成し、外層はポリオレフィ
ン、無機水和物を含有し、赤リンを含有しない難燃性組
成物で構成する電線・ケーブルの例が開示されている。
しかしながら、外層の樹脂組成物が赤リンを含有してい
ないため、電線・ケ−ブルの難燃性に限界があり、難燃
性を向上させるために無機水和物の配合量を増加しても
難燃特性に適合しないだけでなく、逆に機械特性が著し
く低下したり、電線・ケーブルの表面に外傷がつきやす
くなるという問題が生ずる。またケーブルを曲げた際に
絶縁被覆層が曲げられた部分で白化の現象が生じる問題
もある。また耐熱性の面においても不十分であり、13
0℃以上の温度にさらされると溶融してしまうという点
も問題である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
点を解決し、使用時においては、高度の難燃性と優れた
機械特性を有しながら、非常に高い耐熱性を有し、低温
特性、柔軟性に優れ、さらに電線を折り曲げた際に絶縁
体が白化しにくく、任意の色に着色でき、埋立、燃焼な
どの廃棄時においては、重金属化合物の溶出や、多量の
煙、腐食性ガスの発生がない絶縁電線を提供することを
目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明においては、(1)導体の周囲に設けられた
難燃樹脂組成物からなる一次被覆層と一次被覆層の周囲
に設けられた難燃樹脂組成物からなる二次被覆層を有す
る絶縁電線であって、一次被覆層はエチレン・酢酸ビニ
ル共重合体及び/又はエチレン・アクリル酸エチル共重
合体(A1)0〜85重量%とビニル芳香族系熱可塑性
エラストマー樹脂組成物(A2)100〜15重量%か
らなる樹脂100重量部に対して、金属水和物80〜1
40重量部、赤リン2.5〜14.5重量部を配合した
難燃樹脂組成物(A)から構成され、二次被覆層はビニ
ル芳香族系熱可塑性エラストマー樹脂組成物(A2)1
00重量部に対して、ポリリン酸アンモニウム系難燃剤
20〜80重量部を配合した難燃樹脂組成物(B)から
構成されたことを特徴とする絶縁電線(但し、ビニル芳
香族系熱可塑性エラストマー樹脂組成物(A2)とは、
(a)ビニル芳香族化合物をその構成成分の主体とした
少なくとも2個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合
物をその構成成分の主体とした少なくとも1個の重合体
ブロックBとからなるブロック共重合体、および/また
はこれを水素添加して得られる水添ブロック共重合体1
00重量部に対して、(b)非芳香族系ゴム用軟化剤5
0〜150重量部、(c)ポリプロピレン樹脂40〜6
00重量部、並びに(d)有機パーオキサイド0.01
〜5重量部を配合した樹脂組成物である。)、及び
(2)一次被覆層の占める体積をVa、二次被覆層の占
める体積をVbとした場合 Va/Vb≧2.8 の関係を満たす一次被覆層および二次被覆層を有するこ
とを特徴とする(1)項記載の絶縁電線が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】まず、本発明の絶縁電線における
一次被覆層、二次被覆層を構成する樹脂組成物とその配
合量について説明する。 エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル
酸エチル共重合体 絶縁被覆層中、一次被覆層に用いられるエチレン・酢酸
ビニル共重合体及び/又はエチレン・アクリル酸エチル
共重合体(A1)としては特に制限はないが、酢酸ビニ
ル(以下VAと略記する場合もある)又はアクリル酸エ
チル(以下EAと略記する場合もある)含有率が13〜
30重量%程度であるものが好ましい。VA又はEA含
有量が13重量%より小さくなると難燃性に問題が生じ
るだけでなく、柔軟性やワイヤーを曲げた際の白化特性
が低下する場合がある。またVA或いはEA含有量が多
くなるとケーブル自体の柔軟性が大きくなるが、この値
が30重量%を越えるとケーブル表面に傷がつきやすく
なりまた強度が低下する場合がある。また、本発明にお
いては、これらの共重合体(A1)は、それぞれ単独で
使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよ
い。
【0008】ビニル芳香族系熱可塑性エラストマー樹
脂組成物 ビニル芳香族系熱可塑性エラストマー樹脂組成物(A
2)とは、(a)ビニル芳香族化合物をその構成成分の
主体とした少なくとも2個の重合体ブロックAと、共役
ジエン化合物をその構成成分の主体とした少なくとも1
個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体、お
よび/またはこれを水素添加して得られる水添ブロック
共重合体100重量部に対して、(b)非芳香族系ゴム
用軟化剤50〜150重量部、(c)ポリプロピレン樹
脂40〜600重量部、並びに(d)有機パーオキサイ
ド0.01〜5重量部を配合した樹脂組成物である。ビ
ニル芳香族系熱可塑性エラストマー樹脂組成物(A2)
は、混練・熱処理されると(d)成分の存在により
(a)成分が架橋され、一方、(c)成分は熱分解して
適度に低分子量化することにより、組成物全体としては
押出性に優れた部分架橋物となる。
【0009】(a)成分 ブロック共重合体 本発明の成分(a)は、ビニル芳香族化合物をその構成
成分の主体とした少なくとも2個の重合体ブロックA
と、共役ジエン化合物をその構成成分の主体とした少な
くとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重
合体又はこれを水素添加して得られるもの、あるいはこ
れらの混合物であり、例えば、A−B−A、B−A−B
−A、A−B−A−B−Aなどの構造を有するビニル芳
香族化合物‐共役ジエン化合物ブロック共重合体あるい
は、これらの水素添加されたもの等を挙げることができ
る。上記(水添)ブロック共重合体(以下、(水添)ブ
ロック共重合体とは、ブロック共重合体及び/又は水添
ブロック共重合体を意味する)は、ビニル芳香族化合物
を5〜60重量%、好ましくは、20〜50重量%含
む。ビニル芳香族化合物をその構成成分の主体とする重
合体ブロックAは好ましくは、ビニル芳香族化合物のみ
から成るか、または50重量%より多い、好ましくは7
0重量%以上のビニル芳香族化合物と(水素添加され
た)共役ジエン化合物(以下、(水素添加された)共役
ジエン化合物とは、共役ジエン化合物及び/又は水素添
加された共役ジエン化合物を意味する)との共重合体ブ
ロックである。(水素添加された)共役ジエン化合物を
その構成成分の主体とする重合体ブロックBは好ましく
は、(水素添加された)共役ジエン化合物のみから成る
か、または50重量%より多い、好ましくは70重量%
以上の(水素添加された)共役ジエン化合物とビニル芳
香族化合物との共重合体ブロックである。これらのビニ
ル芳香族化合物をその構成成分の主体とする重合体ブロ
ックA、(水素添加された)共役ジエン化合物をその構
成成分の主体とする重合体ブロックBのそれぞれにおい
て、分子鎖中のビニル芳香族化合物または(水素添加さ
れた)共役ジエン化合物由来の繰り返し単位の分布がラ
ンダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増
加または減少するもの)、一部ブロック状またはこれら
の任意の組合せでなっていてもよい。ビニル芳香族化合
物をその構成成分の主体とする重合体ブロックA或いは
(水素添加された)共役ジエン化合物をその構成成分の
主体とする重合体ブロックBが2個以上ある場合には、
それぞれが同一構造であっても異なる構造であってもよ
い。
【0010】(水添)ブロック共重合体を構成するビニ
ル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチル
スチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンな
どのうちから1種または2種以上が選択でき、中でもス
チレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例
えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエ
ン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどのうち
から1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、
イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。共役ジエ
ン化合物をその構成成分の主体とする重合体ブロックB
におけるミクロ構造は任意に選ぶことができる。例えば
ポリブタジエンブロックにおいては、1,2−ミクロ構
造が20〜50%、特に25〜45%であるものが好ま
しく、ブタジエンに基づく脂肪族二重結合の少なくとも
90%が水素添加されたものが好ましい。ポリイソプレ
ンブロックにおいては、該イソプレン化合物の70〜1
00重量%が1,4−ミクロ構造を有し、かつ該イソプ
レン化合物に基づく脂肪族二重結合の少なくとも90%
が水素添加されたものが好ましい。上記構造を有する本
発明に用いる(水添)ブロック共重合体の重量平均分子
量は好ましくは5,000〜1,500,000、より
好ましくは10,000〜550,000、さらに好ま
しくは100,000〜550,000、特に好ましく
は100,000〜400,000の範囲である。分子
量分布(重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(M
n)の比(Mw/Mn))は好ましくは10以下、更に
好ましくは5以下、より好ましくは2以下である。(水
添)ブロック共重合体の分子構造は、直鎖上、分岐状、
放射状あるいはこれらの任意の組合せのいずれであって
もよい。
【0011】これらの(水添)ブロック共重合体の製造
方法としては数多くの方法が提案されているが、代表的
な方法としては、例えば特公昭40−23798号公報
に記載された方法により、リチウム触媒またはチーグラ
ー型触媒を用い、不活性溶媒中にてブロック重合させて
得ることができる。また、例えば、上記方法により得ら
れたブロック共重合体に、不活性溶媒中で水素添加触媒
の存在下にて水素添加することにより水添ブロック共重
合体が得られる。上記(水添)ブロック共重合体の具体
例としては、SBS(スチレン・ブタジエンブロックコ
ポリマー)、SIS(スチレン・イソプレンブロックコ
ポリマー)、SEBS(水素化SBS)、SEPS(水
素化SIS)等を挙げることができる。本発明におい
て、特に好ましい(水添)ブロック共重合体は、スチレ
ンをその構成成分の主体とする重合体ブロックAと、イ
ソプレンをその構成成分の主体としかつイソプレンの7
0〜100重量%が1,4−ミクロ構造を有し、かつ該
イソプレンに基づく脂肪族二重結合の少なくとも90%
が水素添加されたところの重合体ブロックBとからなる
重量平均分子量が50,000〜550,000の水添
ブロック共重合体である。更に好ましくは、イソプレン
の90〜100重量%が1,4−ミクロ構造を有する上
記水添ブロック共重合体である。
【0012】(b)成分 非芳香族系ゴム用軟化剤 本発明の成分(b)としては、非芳香族系の鉱物油また
は液状もしくは低分子量の合成軟化剤を用いることがで
きる。ゴム用として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族
環、ナフテン環およびパラフィン鎖の三者の組み合わさ
った混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の
50%以上を占めるものをパラフィン系とよび、ナフテ
ン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族
炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別さ
れている。本発明の成分(b)として用いられる鉱物油
系ゴム用軟化剤は上記区分でパラフィン系およびナフテ
ン系のものである。芳香族系の軟化剤は、その使用によ
り成分(a)が可溶となり、架橋反応を阻害し、得られ
る組成物の物性の向上が図れないので好ましくない。成
分(b)としては、パラフィン系のものが好ましく、更
にパラフィン系の中でも芳香族環成分の少ないものが特
に好ましい。これらの非芳香族系ゴム用軟化剤の性状
は、37.8℃における動的粘度が20〜500cS
t、流動点が−10〜−15℃、引火点(COC)が1
70〜300℃を示すものが好ましい。成分(b)の配
合量は、(a)成分100重量部に対して50〜150
重量部、好ましくは80〜120重量部である。150
重量部を越える配合は、軟化剤のブリードアウトを生じ
やすく、最終製品に粘着性を与えるおそれがあり、機械
的性質も低下させる。また、配合量が50重量部未満で
は、得られる組成物の柔軟性が失われることになる。
(b)成分の一部をパーオキサイド存在下での熱処理の
後に配合することもできるが、ブリードアウトを生じる
要因となることがある。成分(b)は、重量平均分子量
が100〜2000のものが好ましい。
【0013】(c)成分 ポリプロピレン樹脂 ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン、ラ
ンダム型のポリプロピレン、ブロック型のポリプロピレ
ンや、プロピレンと他の少量のα−オレフィン例えば1
−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等
との共重合体を用いることができる。この(c)成分の
ポリプロピレン樹脂は、本発明においてエラストマー組
成物(A2)を加熱処理に付して部分架橋物として製造
するに際して、その一部を熱処理(架橋)後に配合する
こともできる。熱(架橋)処理前に(A2)に配合した
ポリプロピレン樹脂は、その後の加熱処理で、(d)成
分の存在により熱分解して適度に低分子量化する。熱処
理前に配合するポリプロピレン樹脂としては、MFR
(ASTM‐D‐1238、L条件、230℃)が好ま
しくは0.1〜10g/10分、より好ましくは0.1
〜5g/10分、さらに好ましくは0.1〜3g/10
分のものを用いる。ポリプロピレン樹脂のMFRが0.
1g/10分未満では、熱処理後でもポリプロピレン樹
脂の分子量が低下せず、得られるエラストマーの成形性
が悪く、一方、MFRが10g/10分を越えると、低
分子量となりすぎて、得られるエラストマー組成物のゴ
ム弾性が悪化するので好ましくない。熱処理後に配合す
る場合のポリプロピレン樹脂としては、被覆層を形成す
る押出し時の条件に合致するものであればよく、MFR
が好ましくは5〜200g/10分、より好ましくは8
〜150g/10分、更に好ましくは10〜100g/
10分のものを用いる。熱処理後に配合する場合、ポリ
プロピレン樹脂のMFRが5g/10分未満では、得ら
れるエラストマーの成形性が悪く、MFRが200g/
10分を越えると、得られるエラストマー組成物のゴム
弾性が悪化するので好ましくない。このポリプロピレン
樹脂(c)の配合量は、成分(a)100重量部に対し
て40〜600重量部、好ましくは50〜500重量
部、さらに好ましくは100〜200重量部である。こ
のポリプロピレンの配合量が40重量部より小さくなる
と強度が著しく低下し、また押出変動が大きくなる。一
方、配合量が600重量部を越えると、柔軟性が著しく
低下する。
【0014】(d)有機パーオキサイド 本発明で用いられる有機パーオキサイドとしては、例え
ば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパ
ーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(te
rt−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル
−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン
−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソ
プロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチル
パーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサ
ン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパー
オキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−
クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベ
ンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ
ベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピ
ルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイ
ルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサ
イドなどを挙げることができる。これらのうち、臭気
性、着色性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル
−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサ
ン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチ
ルペルオキシ)ヘキシン−3が最も好ましい。パーオキ
サイドの(d)添加量は、(a)成分100重量部に対
して0.01〜5重量部の範囲であり、好ましくは0.
1〜4重量部である。0.01重量部未満では、必要と
する架橋が得られない。5重量部を越えると架橋が進み
すぎて、部分架橋物の分散が悪くなる。
【0015】本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物
(A2)の製造においては、有機パーオキサイドによる
部分架橋処理に際し、ジビニルベンゼン、トリアリルシ
アヌレートのような多官能性ビニルモノマー、又はエチ
レングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコー
ルジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタク
リレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、
トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメ
タクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー
を架橋助剤として配合することができる。このような化
合物により、均一かつ効率的な架橋反応が期待できる。
特に、本発明においては、トリエチレングリコールジメ
タクリレートが、取扱いやすく、前記ポリプロピレン樹
脂との相溶性が良好であり、かつパーオキサイド可溶化
作用を有し、パーオキサイドの分散助剤として働くた
め、熱処理による架橋効果が均一かつ効果的で、硬さと
ゴム弾性のバランスのとれた部分架橋熱可塑性エラスト
マーが得られるため、最も好ましい。本発明で用いられ
る架橋助剤の添加量は、(a)成分100重量部に対し
て0.02〜15重量部の範囲が好ましく、さらに好ま
しくは0.2〜10重量部であり、より好ましくは1.
0〜7.5重量部である。また、架橋助剤の添加量は、
重量比でパーオキサイドの添加量の約2〜2.5倍量と
することが好ましい。(a)成分100重量部に対して
0.02重量部未満では、必要とする架橋が得られな
い。一方、15重量部を越えると余剰の架橋助剤の重合
が進みすぎて架橋ゲルが形成されやすくなる。
【0016】本発明の絶縁電線において、一次被覆層を
構成する難燃樹脂組成物(A)は、エチレン・酢酸ビニ
ル共重合体及び/又はエチレン・アクリル酸エチル共重
合体(A1)0〜85重量%とビニル芳香族系熱可塑性
エラストマー樹脂組成物(A2)100〜15重量%、
好ましくは(A1)30〜70重量%と(A2)70〜
30重量%からなる樹脂(以下、一次被覆層用難燃樹脂
組成物(A)のベース樹脂ともいう)を含有してなる。
一次被覆層用難燃樹脂組成物(A)のベース樹脂中、エ
チレン・酢酸ビニル共重合体及び/又はエチレン・アク
リル酸エチル共重合体(A1)の量が85重量%を越え
ると、得られる絶縁電線の強度が低下する。また、本発
明の絶縁電線において、二次被覆層を構成する難燃樹脂
組成物(B)の樹脂成分はビニル芳香族系熱可塑性エラ
ストマー樹脂組成物(A2)である。
【0017】金属水和物 本発明において用いられる金属水和物としては、特に限
定はしないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マ
グネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシ
ウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトな
どの水酸基あるいは結晶水を有する化合物を単独もしく
は2種以上組み合わせて使用することができる。これら
の金属水和物においては、水酸化マグネシウム、例え
ば、「キスマ5」(商品名、協和化学工業社製)などの
市販品が好ましく、特に「キスマ5A」「キスマ5B」
「キスマ5J」などの表面処理を施したグレ−ドが好ま
しい。一次被覆層における金属水和物の配合量は、一次
被覆層用難燃樹脂組成物(A)のベース樹脂100重量
部に対して80〜140重量部であり、好ましくは95
〜125重量部である。金属水和物の配合量が80重量
部より少ないと、十分な難燃性(例えば垂直難燃性)を
得ることができない。一方、140重量部をこえると引
張強度、引張伸びなどの機械特性が低下するため好まし
くない。
【0018】赤リン 本発明においては、絶縁電線の難燃性を向上させること
を目的として、一次被覆層に赤リンを配合する。赤リン
は、一次被覆層にのみ配合するもので、その配合量は、
一次被覆層用難燃樹脂組成物(A)のベース樹脂100
重量部に対して2.5〜14.5重量部であり、好まし
くは5〜12重量部である。赤リンの配合量が2.5重
量部より少ないと、十分な難燃性を得ることができず、
14.5重量部をこえると引張強度、引張伸びなどの機
械特性が著しく低下するため好ましくない。また、赤リ
ンについては、熱、水分に対する安定性や樹脂組成物中
における分散性の点から、表面処理を施したものが好ま
しく、さらに、樹脂組成物の物性低下の抑制や難燃性の
向上の点から、平均粒径が10μm以下のものや、その
形状が球状のものが好ましい。このようなものとしては
「ノーバレット」「ノーバエクセル」「ノーバクエル」
(商品名、燐化学工業社製)などが挙げられる。
【0019】ポリリン酸アンモニウム系難燃剤 本発明においては、絶縁電線に難燃性を付与しつつ、任
意の色に着色できるようにすることを目的として、二次
被覆層に、それ自体は無色のポリリン酸アンモニウム系
難燃剤を配合する。ポリリン酸アンモニウム系難燃剤と
しては、ポリリン酸アンモニウム単独もしくは、イソシ
アヌル酸またはその誘導体を含有したもの、メラミン/
ホルムアルデヒド樹脂などで被覆されたものなどがあげ
られる。イソシアヌル酸もしくはその誘導体を含有した
ポリリン酸アンモニウムを使用した場合、絶縁電線の難
燃性を向上させることができ、なかでも、トリス(2−
ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トが、ポリプロピレ
ン樹脂との親和性や難燃性の点で好ましい。また、メラ
ミン/ホルムアルデヒド樹脂などで被覆したポリリン酸
アンモニウムを使用した場合、絶縁電線の耐水性を向上
させることができる。このようなものとしては「ホスタ
フラムAP422」「ホスタフラムAP423」「ホス
タフラムAP462」「ホスタフラムAP745」(商
品名、クラリアント社製)、「スミセーフP」「スミセ
ーフPM」(商品名、住友化学社製)、「テラージュ」
(商品名、チッソ社製)などが挙げられる。ポリリン酸
アンモニウム系難燃剤の配合量は、二次被覆層用難燃樹
脂組成物(B)中、エラストマー樹脂組成物(A2)1
00重量部に対して20〜80重量部であり、好ましく
は40〜60重量部である。ポリリン酸アンモニウム系
難燃剤の配合量が20重量部より少ないと、電気・電子
機器に使用される絶縁電線の被覆材料として十分な難燃
性(例えば垂直難燃性)を得ることができず、80重量
部をこえると引張強度、引張伸び、耐摩耗性などの機械
特性が低下するため好ましくない。
【0020】本発明におけるビニル芳香族系熱可塑性エ
ラストマー組成物(A2)の部分架橋成形体は柔軟性を
有し、また屈曲させた際に白化を生じさせにくいのみな
らず、赤リンや金属水和物等のフィラーを大量に加えた
場合にも屈曲させた際に白化を生じにくい特性を有して
いる。また通常のポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹
脂等のポリオレフィン樹脂をベース樹脂と使用し、赤リ
ンや金属水和物を大量に加えていくと、強度低下が非常
に大きいが、ベース樹脂にこのビニル芳香族系熱可塑性
エラストマー組成物(A2)を加えまたは用いることに
よりこれらのフィラーを加えても強度低下は最小限に抑
制され、電線被覆材料として満足する特性が得られる。
本発明における絶縁電線の一次被覆層、二次被覆層を構
成する樹脂組成物には、電線・ケーブルにおいて、一般
的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止
剤、金属不活性剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤などを
本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することがで
きる。特に、赤リンを配合せず、ビニル芳香族系熱可塑
性エラストマー樹脂組成物(A2)とポリリン酸アンモ
ニウム系難燃剤からなる難燃樹脂組成物(B)から構成
された二次被覆層は、白色であることから、着色剤、ポ
リオレフィン系樹脂をベース樹脂とするカラーバッチを
配合することで、容易に任意の色に着色することができ
る。
【0021】酸化防止剤としてはペンタエリスリチル−
テトラキス(3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒド
ロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3
−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニ
ル)プロピオネート、1, 3,5−トリメチル−2, 4,
6−トリス(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキ
シベンジル)ベンゼン等のフェノール系抗酸化剤、4,
4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N, N’−ジフ
ェニル−p−フェニレンジアミン、2, 2, 4−トリメ
チル−1, 2−ジヒドロキノリンの重合物などのアミン
系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アル
キルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニ
ル)スルフィド、2−メルカプトベンヅイミダゾールお
よびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス
(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系
酸化防止剤などを挙げることができる。これらは単独で
または二種以上を併用して用いることができるが、前記
フェノール系酸化防止剤を他の酸化防止剤と併用するこ
とが好ましい。金属不活性剤としては、N, N’−ビス
(3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェ
ニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロ
イル)アミノ−1, 2, 4−トリアゾール、2, 2' −
オキサミドビス−(エチル3−(3, 5−ジ−t−ブチ
ル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などが
あげられる。難燃(助)剤、充填剤としては、カーボ
ン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグ
ネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコ
ーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグ
ネシウム、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボンなどがあげら
れ、特に、「SFR−100」(商品名、Genera
l Electric社製)、「トレフィルE」「トレ
フィルF」「トレフィルR」(商品名、東レ・ダウ・コ
ーニング社製)などのシリコーン化合物は、金属水和
物、赤リン、ポリリン酸アンモニウム系難燃剤の難燃効
果を向上させることに有効である。また、難燃剤とし
て、金属水和物を二次被覆層に添加してもよく、ポリリ
ン酸アンモニウム系難燃剤を一次被覆層に添加してもよ
い。滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミ
ド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系などが
あげられ、なかでも、「ワックスE」「ワックスOP」
(商品名、Hoechst社製)などの内部滑性と外部
滑性を同時に示すエステル系滑剤が好ましい。
【0022】また、本発明の絶縁電線においては、部分
架橋物である難燃樹脂組成物を押出被覆してそのまま被
覆層を形成することができ、そのような被覆層は再利用
できるものであるが、さらに耐熱性を向上させることを
目的として、押出後の被覆層を架橋させることも可能で
ある。架橋の方法としては、常法による電子線架橋法や
化学架橋法が採用できる。電子線架橋法の場合は、一次
被覆層、二次被覆層を構成する樹脂組成物を押出成形し
て被覆層とした後に電子線を照射することにより架橋を
おこなう。電子線の線量は1〜30Mradが適当であ
り、効率よく架橋をおこなうために、一次被覆層、二次
被覆層を構成する樹脂組成物に、トリメチロールプロパ
ントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、ト
リアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミ
ド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を
架橋助剤として配合してもよい。化学架橋法の場合は、
一次被覆層、二次被覆層を構成する樹脂組成物に、ヒド
ロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペ
ルオキシド、ペルオキシエステル、ケトンペルオキシエ
ステル、ケトンペルオキシドなどの有機過酸化物を架橋
剤として配合し、押出成形して被覆層とした後に、常法
により加熱処理により架橋をおこなう。
【0023】以下、本発明を図示した実施態様に基づい
て説明する。図1は、本発明の絶縁電線の一実施態様を
示す概略断面図で、1は例えば軟銅製などの単線または
撚線導体であり、その上に、所定量の(A1)および
(A2)からなるベース樹脂に金属水和物、赤リンを所
定量配合した難燃樹脂組成物(A)からなる一次被覆層
(2)が設けられ、さらに、その上に、ビニル芳香族系
熱可塑性エラストマー樹脂組成物(A2)にポリリン酸
アンモニウム系難燃剤を所定量配合した難燃樹脂組成物
(B)からなる二次被覆層(3)が設けられている。本
発明の絶縁電線において、一次被覆層は、所定量の金属
水和物と赤リンを配合した難燃樹脂組成物(A)からな
り、絶縁電線に高度の難燃性を付与することができる。
一方、二次被覆層は、所定量のポリリン酸アンモニウム
系難燃剤を配合した難燃樹脂組成物(B)からなり、燃
焼時に強い殻を形成することにより絶縁電線の難燃性を
低下させずに、また着色や印刷を可能にする働きがあ
る。また本発明の目的を損わない範囲内で1次被覆層と
2次被覆層の間に中間層を設けても良い。このような中
間層に用いられる樹脂組成物としては前記難燃樹脂組成
物(A)もしくは(B)、または公知の他の難燃樹脂組
成物を用いることができる。一次被覆層、(もしあれば
中間層)、二次被覆層は、導体上に順次押出被覆して設
けてもよいし、同時に押出被覆してもよい。本発明の絶
縁電線においては、導体の周りに形成される全絶縁層の
肉厚は特に限定しないが通常0.15mm〜1mm程度であ
る。
【0024】本発明の絶縁電線は、絶縁層中で前記一次
被覆層と二次被覆層の占める体積をそれぞれVa、Vb
としたときに、Va/Vb≧2.8 であることが好ま
しい。Va/Vbが2.8より小さくなると難燃性が低
下し、難燃性が得られなくなる場合がある。また第2次
被覆層の厚さは特には限定しないが30μmより薄くな
ると着色が著しく困難になることがあるため所望の色に
合わせて30μmより厚い肉厚を設定することが好まし
い。
【0025】次に、本発明の電線被覆層に用いられるビ
ニル芳香族系熱可塑性エラストマー樹脂組成物(A2)
の製造方法を説明する。第1工程において、まず成分
(a)および成分(b)の全量、および成分(c)の少
なくとも一部(好ましくは、成分(c)の使用量中5〜
100重量%、さらに好ましくは30〜100重量
%)、場合により、更に充填剤、抗酸化剤、光安定剤、
着色剤等の各種添加剤を、予め溶融混練する。混練温度
は、好ましくは160〜240℃である。混練方法とし
ては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法で
あれば満足に使用でき、例えば、一軸押出機、二軸押出
機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダ
ーなどが用いられる。この工程により、各成分が均一に
分散された組成物を得ることができる。第2工程は、第
1工程で得られた組成物に、(d)成分の有機パーオキ
サイドおよび所望により架橋助剤等を加え、更に加熱下
に混練して部分架橋を生じせしめる。このときの温度
は、好ましくは180〜240℃である。このように成
分(a)〜成分(c)を予め溶融混練してミクロな分散
を生じせしめてから、有機パーオキサイド(d)を加え
て混練を加熱処理下に行い、部分架橋物を生成させるこ
とが、特に好ましい物性をもたらす。この工程は、一般
に、二軸押出機、バンバリーミキサー等を用いて混練す
る方法で行うことができる。上記第1および第2工程に
ついては、単一工程とし、各成分を混合して溶融混練す
ることも可能である。第3工程は、第2工程で得られた
部分架橋した組成物に、各成分の残量を加えて混練す
る。混練温度は、好ましくは180〜240℃である。
混練は、一般に、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バ
ンバリーミキサーあるいは各種のニーダーなどを用いて
行うことができる。この工程で、各成分の分散がさらに
進むと同時に、反応が完了する。また、前記第1、第2
および第3工程を併せて単一工程とし、各成分を一括し
て溶融混練することも可能である。また、前記第1工程
において成分(c)の全量を加え、その後第2工程を経
て本発明の電線被覆用樹脂組成物を得てもよい。本発明
において、好ましくは、ビニル芳香族系熱可塑性エラス
トマー組成物(A2)を部分架橋物として得た後、この
組成物(A2)に(A1)と金属水和物と赤リン、また
はポリリン酸アンモニウムを添加、混練し、得られた樹
脂組成物(A)、(B)を導体上に押出すことが好まし
い。
【0026】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細
に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。なお、数字は特に記載がない場合、重量部を示す。
【0027】(a)の成分として水素化スチレン・ブタ
ジエンブロックコポリマー(SEPS)、(b)の成分
としてパラフィンオイル、(c)の成分としてホモポリ
プロピレン(MFR8g/10分)、(d)の成分とし
てジクミルパーオキサイドを用い、各成分を表1に示す
ような配合量としてビニル芳香族系熱可塑性エラストマ
ー組成物(表1に記載した組成物A〜E)を3段階で製
造した。まず、表1に示した成分(c)、成分(d)以
外の(a)および(b)の各成分の全量および、成分
(c)のうちの5重量%を溶融混練し(第1工程)、次
いで、押出機の途中から成分(d)および架橋助剤とし
てトリエチレングリコールジメタクリレート5重量部を
加えて溶融混練し(第2工程)、さらに、押出機の途中
から成分(c)の残部を加えて溶融混練した(第3工
程)。2軸押出機(L/D=47)を使用して、スクリ
ュー回転数100rpmにて溶融混練を行い、各工程の
溶融混練温度は次の通りであった:第1工程:230〜
240℃、第2工程:180〜240℃、第3工程:2
00〜220℃。
【0028】
【表1】
【0029】(実施例1〜14、比較例1〜13)ま
ず、表2〜7に示す各成分を室温にてドライブレンド
し、バンバリーミキサーを用いて溶融混練して、一次被
覆層用樹脂組成物と二次被覆層用樹脂組成物を用意し
た。次に、電線製造用の押出被覆装置を用いて、導体
(導体径:0.95mmφ錫メッキ軟銅撚線 構成:2
1本/0. 18mmφ)上に、予め溶融混練した上記の
一次被覆層用樹脂組成物および二次被覆層用樹脂組成物
を表2〜7に示すそれぞれの体積比で共押出により被覆
して外径2.63mmの各実施例、比較例に対応する絶縁
電線を製造した。
【0030】得られた各絶縁電線について、外観、引張
特性、加熱変形性、難燃性、低温特性、白化性、柔軟
性、色外観を評価し、その結果を表2〜7に併せて示し
た。試験方法、評価条件については以下に示す。 ・外観 押出し直後の外観を目視で確認し、良好なものを○、若
干悪いものを△、ざらついていて悪いものを×で示し
た。×と△のものは実用に供することができない。 ・引張特性(抗張力、破断時の伸び) 各絶縁電線の被覆層を管状片にし、その抗張力(MP
a)と伸び(%)を定速型引張り試験機を用いて、標線
間25mm、引張速度500mm/minの条件で測定
した。抗張力が10MPa以下、伸びが150%以下の
ものは実用に供することができない。 ・難燃性 各絶縁電線について、JIS C 3005に規定され
る水平燃焼試験とJIS C 3005に規定される6
0℃傾斜燃焼試験、及びUL1581に規定される垂直
燃焼試験(Vertical Flame Test)
をおこない、合格したものの数/試験数で示した。少な
くともJIS C 3005に規定される水平燃焼試験
および60 °傾斜燃焼試験においては、試験したものが
全て合格でないと実用に供することができない。 ・加熱変形特性 UL1581で規定される加熱変形試験を180℃で行
った。結果を加熱前に対する加熱後の変形の割合(%)
で示した。この値が50%以上のものは実用に供するこ
とができない。 ・低温特性 −30℃で自己径の金属棒に巻き、絶縁層に割れが生じ
たかどうかを目視で確認した。合格したものの数/試験
数で示した。試験したのもが全て合格でないと実用に供
することができない。 ・白化性 電線の同じ部分を3回折り曲げた時の白化の度合いを目
視にて確認した。白化がみられなければ○、やや白化が
見られれば△、著しい白化が認められれば×で示した。
△と×のものは実用上好ましくない。 ・柔軟性 各絶縁電線を長さ20cmに切断したものをサンプル
(11)とし、その一方の端部を図2に試験方法の模式
図を示した様に、垂直に直立した壁(12)に固定し、
固定位置と他端部の高さの差L(cm)を測定した。高
さの差(L)が1cm未満の場合は×、1cm以上3c
m未満の場合は△、3cm以上の場合は○で示した。×
のものは柔軟性に乏しく絶縁電線として実用に供するこ
とができない。 ・色外観 絶縁電線の色を目視により観察し、十分な着色や印刷が
可能な絶縁電線を○、不十分な絶縁電線をその程度の悪
い方から×または△で示した。△と×のものは実用上好
ましくない。
【0031】なお、表2〜7に示す各成分は下記のもの
を使用した。 (01)エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA) 日本ユニカー社製 商品名:V−527−4 VA含有
率=17重量% (02)エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EE
A) 日本ユニカー社製 商品名:NUC6510 EA含有
率=25重量% (03)組成物C(表1) (04)組成物A(表1) (05)組成物B(表1) (06)水酸化マグネシウム 協和化学社製 商品名:キスマ5J (07)赤リン 燐化学工業社製 商品名:ノーバレット120UF (08)フェノール系抗酸化剤 N, N’−ビス(3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−
ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン Ciba−Geigy社製 商品名:イルガノックスM
D1024 (09)滑剤 モンタン酸部分ケン化エステルワックス Hoechst社製 商品名:ワックスOP (10)ポリリン酸アンモニウム系難燃剤 チッソ社製 商品名:テラージュC−60 (11)酸化チタン 大日精化工業社製 商品名:CR−60 (12)組成物E(表1) (13)組成物D(表1)
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】
【表7】
【0038】表2〜7の結果から、一次被覆層が所定量
の赤リン、金属水和物をベース樹脂に添加した樹脂組成
物から構成され、かつ、二次被覆層が所定量のポリリン
酸アンモニウムをベース樹脂に添加した樹脂組成物から
構成された本発明の絶縁電線(実勢例1〜14)は、非
常に高い耐熱性を有し、垂直難燃性、低温特性、外観が
よく、しかも曲げたときに白化を生じないなど絶縁電線
に要求される特性に優れるものであったことがわかる。
【0039】
【発明の効果】本発明の絶縁電線は、一次被覆層、二次
被覆層がノンハロゲン難燃材料から構成されており、埋
立、燃焼などの廃棄時において、重金属化合物の溶出
や、多量の煙、腐食性ガスの発生がない。さらに本発明
の絶縁電線は、耐熱性、低温特性、柔軟性に優れ、高い
難燃性を有し、かつ絶縁層を形成する絶縁体の耐白化特
性にも優れており、環境問題を考慮した電気・電子機器
用配線材として、非常に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の絶縁電線の一実施態様を示す概略断面
図である。
【図2】柔軟性の試験方法を示した模式図である。
【符号の説明】 1 導体 2 一次被覆層 3 二次被覆層 11 電線サンプル 12 壁 L 高さの差(cm)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 梶山 学之 埼玉県浦和市領家3−20−3 (72)発明者 斉藤 伸三 東京都大田区東糀谷1−9−9

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導体の周囲に設けられた難燃樹脂組成物
    からなる一次被覆層と一次被覆層の周囲に設けられた難
    燃樹脂組成物からなる二次被覆層を有する絶縁電線であ
    って、一次被覆層はエチレン・酢酸ビニル共重合体及び
    /又はエチレン・アクリル酸エチル共重合体(A1)0
    〜85重量%とビニル芳香族系熱可塑性エラストマー樹
    脂組成物(A2)100〜15重量%からなる樹脂10
    0重量部に対して、金属水和物80〜140重量部、赤
    リン2.5〜14.5重量部を配合した難燃樹脂組成物
    (A)から構成され、二次被覆層はビニル芳香族系熱可
    塑性エラストマー樹脂組成物(A2)100重量部に対
    して、ポリリン酸アンモニウム系難燃剤20〜80重量
    部を配合した難燃樹脂組成物(B)から構成されたこと
    を特徴とする絶縁電線。(但し、ビニル芳香族系熱可塑
    性エラストマー樹脂組成物(A2)とは、(a)ビニル
    芳香族化合物をその構成成分の主体とした少なくとも2
    個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物をその構成
    成分の主体とした少なくとも1個の重合体ブロックBと
    からなるブロック共重合体、および/またはこれを水素
    添加して得られる水添ブロック共重合体100重量部に
    対して、(b)非芳香族系ゴム用軟化剤50〜150重
    量部、(c)ポリプロピレン樹脂40〜600重量部、
    並びに(d)有機パーオキサイド0.01〜5重量部を
    配合した樹脂組成物である。)
  2. 【請求項2】 一次被覆層の占める体積をVa、二次被
    覆層の占める体積をVbとした場合 Va/Vb≧2.8 の関係を満たす一次被覆層および二次被覆層を有するこ
    とを特徴とする請求項1記載の絶縁電線。
JP10155062A 1998-06-03 1998-06-03 絶縁電線 Pending JPH11345525A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10155062A JPH11345525A (ja) 1998-06-03 1998-06-03 絶縁電線

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10155062A JPH11345525A (ja) 1998-06-03 1998-06-03 絶縁電線

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11345525A true JPH11345525A (ja) 1999-12-14

Family

ID=15597844

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10155062A Pending JPH11345525A (ja) 1998-06-03 1998-06-03 絶縁電線

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11345525A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011198507A (ja) * 2010-03-17 2011-10-06 Furukawa Electric Co Ltd:The 多層電線
CN103435743A (zh) * 2013-08-30 2013-12-11 段宝荣 一种阻燃与耐光性涂料的制备方法
US8722823B2 (en) 2012-05-08 2014-05-13 Industrial Technology Research Institute Polymers, polymer blends, and flame retardant materials

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011198507A (ja) * 2010-03-17 2011-10-06 Furukawa Electric Co Ltd:The 多層電線
US8722823B2 (en) 2012-05-08 2014-05-13 Industrial Technology Research Institute Polymers, polymer blends, and flame retardant materials
US9428640B2 (en) 2012-05-08 2016-08-30 Industrial Technology Research Institute Polymers and flame retardant materials
CN103435743A (zh) * 2013-08-30 2013-12-11 段宝荣 一种阻燃与耐光性涂料的制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5896626B2 (ja) シラン架橋性難燃ポリオレフィンとシラノール触媒樹脂組成物からなる電線成形体の製造方法
US7053145B1 (en) Fire-retardant resin composition and molded part using the same
JP6329948B2 (ja) 耐熱性シラン架橋樹脂成形体及びその製造方法、並びに、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を用いた耐熱性製品
WO2013147148A1 (ja) 耐熱性樹脂組成物の製造方法、並びに、その製造方法で製造された耐熱性樹脂組成物及び該耐熱性樹脂組成物を用いた成形品
JP3515439B2 (ja) 難燃性樹脂組成物とそれを用いた成形部品
JP6140140B2 (ja) 耐熱性シラン架橋樹脂成形体、架橋性樹脂成形体、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物及びそれらの製造方法、シランマスターバッチ、並びに耐熱性製品
JPH01246708A (ja) 剥離容易性半導電性樹脂組成物
JP5598843B2 (ja) 多層電線およびその製造方法
JP4828240B2 (ja) 難燃性熱可塑性樹脂組成物及びその成形体
JP3515469B2 (ja) 難燃性樹脂組成物とそれを用いた成形部品
JP2003192846A (ja) 耐熱性・耐候性に優れた絶縁樹脂組成物および絶縁電線
JP2002105255A (ja) 難燃性樹脂組成物とそれを用いた成形部品
JP2001060414A (ja) 絶縁樹脂組成物および絶縁電線
JP5995813B2 (ja) 耐熱性シラン架橋樹脂成形体及びその製造方法、並びに、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を用いた耐熱性製品
JP3464410B2 (ja) 絶縁樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線と絶縁部材
JP2003128849A (ja) 難燃性熱可塑性エラストマー組成物
JP4205384B2 (ja) 難燃性樹脂組成物およびこれを用いた配線材
JP2002042553A (ja) 絶縁樹脂組成物および絶縁電線
JP5683972B2 (ja) シラン架橋樹脂成形体の製造方法及びそれを用いた成形体
JPH11312418A (ja) 絶縁電線
JP3566857B2 (ja) 電線被覆用樹脂組成物および絶縁電線
EP3666823B1 (en) Thermoplastic resin composition for wire-coating and heat resistant wire
JPH11345525A (ja) 絶縁電線
JPH0931267A (ja) 被覆材料及びそれを用いた電線
JP2003221479A (ja) 絶縁樹脂組成物および絶縁電線