JPH11343249A - セラミド誘導体を含有する脂肪乳剤、製造方法、および用途 - Google Patents

セラミド誘導体を含有する脂肪乳剤、製造方法、および用途

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JPH11343249A
JPH11343249A JP15012898A JP15012898A JPH11343249A JP H11343249 A JPH11343249 A JP H11343249A JP 15012898 A JP15012898 A JP 15012898A JP 15012898 A JP15012898 A JP 15012898A JP H11343249 A JPH11343249 A JP H11343249A
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fat emulsion
ceramide
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carbon atoms
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JP15012898A
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Yutaka Mizushima
裕 水島
Toshisato Igarashi
理慧 五十嵐
Noboru Mizushima
昇 水島
Mitsuko Takenaga
美津子 武永
Yoshitomi Morisawa
義富 森澤
Toshiaki Nakayama
利明 中山
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Asahi Glass Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】癌転移抑制剤として有用なセラミド誘導体含有
脂肪乳剤を提供する。 【解決手段】N−アセチル−ジ−O−アセチル−D−エ
リスロ−スフィンゴシン等のセラミド誘導体(式1)を
有効成分とする脂肪乳剤、該脂肪乳剤を用いた癌転移抑
制剤。R1 およびR2 は、水素原子、炭素数1〜24の
アルキル基、または炭素数1〜24のアルケニル基、R
3 は、炭素数1〜24のアルキル基または炭素数1〜2
4のアルケニル基。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、癌転移抑制剤とし
て有効な、セラミド誘導体を含有する脂肪乳剤、製造方
法、および癌転移抑制剤としての用途に関する。
【0002】
【従来の技術】セラミドは、グリセロールを含まない脂
質であるスフィンゴリピッドの一種であり、具体的には
スフィンゴシン塩基のアミノ基に脂肪酸が酸アミド結合
したN−アシル誘導体である。セラミドは、動植物の組
織に広く分布しているが、その量はきわめて少量であ
り、該動植物の組織から医薬品として利用できる量を確
保するのはきわめて困難である。スフィンゴシン塩基の
アミノ基に酸アミド結合した脂肪酸残基は、炭素数1
6、18、22または24の脂肪酸の残基であり、セラ
ミドの種類によって異なっている。スフィンゴミエリン
は、このセラミドのホスホコリン誘導体で、生体内中の
主要なリン脂質となっている。
【0003】セラミドやその誘導体については、化粧品
の材料としての用途のほか、抗リウマチ剤(特開昭62-2
73919 )、血管形成促進剤(特開昭61-505830 )、腫瘍
マーカー(特開昭63-45293、特開昭63-297531 )、HI
V感染予防剤(特開平3-17020 )、免疫抑制剤(特開平
3-255028)、抗炎症剤(特開平6-500330、特開平6-8205
14)、癌診断薬および癌治療薬(特開平6-122634)、エ
イズに関する医薬品組成物(特開平6-65100 )、糖尿病
治療剤(特開平6-506943)、皮膚の老化防止(特開平6-
279259、特開平6-256158)、制癌剤(特開平8-27032
)、および骨髄細胞増殖促進剤(特開平6-802168)等
の医薬品としての用途が報告されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一般にセラミド誘導体
は細胞特異性がなく、アポトーシス(細胞自らが積極的
に引き起こす細胞死)を誘導する問題が報告されている
(H.S.Byn ら,J.Org.Chem.,59,6495,1994、Y.A.Hannun
ら,J.Biol.Chem.,269,3125,1994、C.K.Josephら,J.Bi
ol.Chem.,268,20002,1993 )。また、セラミド誘導体に
よるHL−60細胞の増殖抑制や、DNAの断片化など
も報告されている(M.G.Cifon ら,J.Exp.Med.,180,154
7,1994、A.Bielawska ら,J.Biol.Chem.,268,26226,199
4 )。
【0005】一方、制癌剤としては非常に多くの薬剤が
開発されているが、正常細胞と癌細胞との選択性、臓器
選択性、または溶解性等が不充分であるものが多く、ま
た薬剤そのものの性質についても解明が不完全である問
題がある。この問題を解決する方法の一つに、ドラッグ
デリバリーシステム(DDS) がある。DDSは、薬物
の効果を高め、副作用を低減させる試みであり、薬物を
必要なときに必要とされる場所に送り届けることによ
り、その目的が達せられる。
【0006】DDSに用いられるキャリアーとしては種
々のものが知られており、たとえば、リポソームや脂肪
乳剤(リピッドミクロスフェア)などが挙げられる。リ
ポソームは、天然に存在するレシチンやコレステロール
などの脂質を有機溶媒に溶解して、超音波処理などによ
り水中に拡散させ、これに薬物を封入したものである。
また、脂肪乳剤としては、大豆油等の脂質をレシチンと
共に水に懸濁させたものが代表例であり、レシチンがそ
の表面に、内部に薬物が封入された構造を有する。
【0007】リポソームや脂肪乳剤を用いたDDSにお
いては、薬物は主に物理的な結合により内部に封入され
ている。ところが、リポソームは包埋できる薬剤に大き
な制限があり、リポソームそのものの安定性が低い欠点
もある。すなわち、製造可能なリポソームの大きさが限
定されているため、包埋可能な薬剤の分子の大きさも限
定され、また、脂溶性、水溶性に関しても選択範囲が狭
く、これらの性質がリポソームの安定性に大きく影響を
及ぼす問題がある。
【0008】セラミドは、水溶性であるために細胞選択
性に乏しく、医薬品として用いるためには、DDS等の
効果により、細胞選択性や臓器選択性を付与する必要が
あった。しかし、セラミドまたは従来のセラミド誘導体
を、脂肪乳剤に封入してDDSを製造しようとする場
合、封入効率が低い問題があり、さらに生成した脂肪乳
剤の化学的安定性も低い問題が認められた。すなわち、
セラミド誘導体を封入した脂肪乳剤の入手は困難であ
り、合成したものの安定性を保持することも困難であっ
た。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明者らは、
上記の問題を解決するセラミド誘導体を見いだし、該セ
ラミド誘導体を用いたDDSを構築するために、種々誘
討を行った。その結果、セラミドの有する2個の水酸基
をアシル化したセラミド誘導体を脂肪乳剤にすると、該
脂肪乳剤におけるセラミド誘導体の封入効率は高く、ま
たその化学的安定性にも優れることを見いだした。さら
に、該脂肪乳剤を用いて優れた癌転移抑制剤を提供しう
ることも見いだした。すなわち本発明は、下式1で表さ
れるセラミド誘導体を有効成分とする脂肪乳剤、および
該脂肪乳剤を有効成分とする癌転移抑制剤を提供する。
【0010】
【化2】
【0011】ただし、式中の記号は以下の意味を示す。 R1 、R2 :それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜2
4のアルキル基、または炭素数1〜24のアルケニル
基。 R3 :炭素数1〜24のアルキル基または炭素数1〜2
4のアルケニル基。
【0012】
【発明の実施の形態】式1中、R1 、R2 は、それぞれ
独立に、水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、また
は炭素数1〜24のアルケニル基を示す。R1 およびR
2 は、それぞれ炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、
具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル
基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、およびオク
チル基が挙げられる。また、式1中、R3 は炭素数1〜
24のアルキル基または炭素数1〜24のアルケニル基
を示す。未精製のセラミドにおけるR3 は、一般に、炭
素数の異なるアルキル基および/または炭素数の異なる
アルケニル基の混合物であり、精製したセラミドにおけ
るR3 は、一般に、炭素数1(メチル基)または炭素数
7(ヘプチル基)であるのが好ましい。R3 が、これら
であるセラミドは市販されており、入手が容易である点
で、好ましい。
【0013】式1中のR3 は、炭素数1〜24のアルキ
ル基が好ましく、特に炭素数1〜17のアルキル基が好
ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル
基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、ウンデシル
基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ウンデセニル
基、ペンタデセニル基、ヘプタデセニル基等が好まし
い。R1 およびR2 は同一である、またはR1 、R2
およびR3 は同一であるのが好ましい。さらに、式1中
のR1 、R2 、およびR3 は、全てがメチル基であるの
が好ましい。式1で表されるセラミド誘導体の具体例と
しては下記化合物が挙げられる。N−アセチル−ジ−O
−アセチル−D−エリスロ−スフィンゴシン。
【0014】
【化3】
【0015】N−オクタノイル−ジ−O−アセチル−D
−エリスロ−スフィンゴシン。N−アセチル−ジ−O−
プロパノイル−D−エリスロ−スフィンゴシン。N−オ
クタノイル−ジ−O−プロパノイル−D−エリスロ−ス
フィンゴシン。
【0016】式1で表されるセラミド誘導体は、構造中
に不斉炭素を少なくとも2個有する。該不斉炭素原子の
絶対配置は特に限定されない。すなわち、該セラミド誘
導体は、光学活性であっても、光学活性でなくてもよ
い。また、該セラミド誘導体は、不斉炭素の絶対配置が
異なる2種以上の化合物の混合物であってもよい。さら
に、式1で表されるセラミド誘導体は、D−エリスロ型
である場合のセラミド誘導体(式1)であるのが好まし
い。本発明にあるセラミド誘導体(式1)は、以下の方
法で合成するのが好ましい。
【0017】[製造方法1]製造方法1はセラミド等か
ら合成する方法の例である。すなわち、セラミド誘導体
におけるR3 が目的化合物におけるR3 と同一の基であ
り、R1 およびR2が水酸基である化合物(たとえば、
セラミド)に、有機塩基と不活性溶媒の存在下、また
は、塩基性溶媒存在下で、カルボン酸ハライドまたはカ
ルボン酸無水物を反応させてR1 およびR2 が、それぞ
れ炭素数1〜24のアルキル基または炭素数1〜24の
アルケニル基であるセラミド誘導体(式1)を合成でき
る。該合成方法における好ましい目的化合物は、R1
2 が同一である化合物である。
【0018】カルボン酸ハライドとしては、R1 COX
1 およびR2 COX2 で表される化合物である。ここ
で、R1 とR2 とは式1における意味と同じであり、X
1 およびX2 は、それぞれ独立にハロゲン原子を示す。
1 とR2 とは同一であるのが好ましく、X1 およびX
2 は同一であるのが好ましい。さらにカルボン酸ハライ
ドとしては、カルボン酸フルオリド、カルボン酸クロリ
ド、カルボン酸ブロミド、カルボン酸ヨージド等が好ま
しく、特に酢酸フルオリド、酢酸クロリド、酢酸ブロミ
ド、酢酸ヨージド、プロピオン酸クロリド、ブタン酸ク
ロリド、ヘキサン酸クロリド、オクタン酸クロリド、デ
カン酸クロリド、ドデカン酸クロリド、ヘキサデカン酸
クロリド、オクタデカン酸クロリド等が挙げられる。
【0019】カルボン酸無水物としては、(R1 CO)
2 Oおよび(R2 CO)2 Oで表される化合物が好まし
い。ここで、R1 とR2 とは式1における意味と同じで
ある。カルボン酸無水物としては、無水酢酸、無水プロ
ピオン酸、無水酪酸、無水オクタン酸等が挙げられ、特
に無水酢酸が好ましい。
【0020】有機塩基としては、4−ジメチルアミノピ
リジン、ピリジン、トリエチルアミン、およびエチルジ
イソプロピルアミン等が挙げられる。不活性溶媒として
は、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、ヘキサ
ン、またはベンゼン等が挙げられる。塩基性溶媒として
は、ピリジン、2,6−ルチジン、N−メチルモルホリ
ン等が挙げられる。
【0021】該反応の反応温度は、0℃〜溶媒還流温度
が好ましく、反応時間は、0.1〜48時間が好まし
い。有機塩基量は、対応するセラミドに対して0.1倍
モル〜反応溶媒量が好ましい。不活性溶媒量または塩基
性溶媒量は、それぞれ対応するセラミドに対して1〜1
000倍重量が好ましい。
【0022】[製造方法2]製造方法2は、スフィンゴ
シンから製造する方法である。すなわち、スフィンゴシ
ンを、有機塩基と不活性溶媒存在下、または、塩基性溶
媒の存在下、でR1、R2 、およびR3 に対応する残基
を有するカルボン酸ハライドまたはカルボン酸無水物と
反応させることによりセラミド誘導体(式1)を合成で
きる。該合成方法における好ましい目的化合物は、R
1 、R2 、およびR3 が同一である化合物である。
【0023】カルボン酸ハライドとしては、R1 COX
1 、R2 COX2 、およびR3 COX3 で表される化合
物である。ここで、R1 、R2 およびR3 は、式1にお
ける意味と同じであり、X1 、X2 、およびX3 は、そ
れぞれ独立にハロゲン原子を示す。R1 、R2 およびR
3 は同一であるのが好ましく、X1 、X2 、およびX3
は同一であるのが好ましい。
【0024】カルボン酸ハライド、カルボン酸無水物、
有機塩基、不活性溶媒、および塩基性溶媒の具体例とし
ては、製造方法1と同じものが挙げられる。また、それ
らの使用量も、製造方法1と同様である。カルボン酸ハ
ライド、またはカルボン酸無水物の量は、スフィンゴシ
ンに対して0. 5〜100倍モルが好ましく、特に1〜
10倍モルが好ましい。
【0025】製造方法1または2で得た反応生成物は、
反応終了後、必要に応じてシリカゲルクロマトグラフィ
ー法や、再結晶法、晶析法によって精製して、高純度の
ものとするのが好ましい。
【0026】本発明は、上記で合成したセラミド誘導体
を有効する脂肪乳剤である。本発明のセラミド誘導体
は、脂溶性が適切に調節された構造であるため、リポソ
ームとする場合に比較して、はるかに安定なDDSを製
造できる。本発明における脂肪乳剤は、セラミド誘導体
(式1)および脂質を加熱して脂質を溶解させ、つぎに
ホモジナイズすることにより合成できる。
【0027】脂質としては、グリセリドまたは、グリセ
リドとリン脂質を併用するのが好ましい。グリセリドと
しては特に大豆油が好ましい。脂肪乳剤中のグリセリド
の量は、5〜50%(W/V)が好ましい。リン脂質を
併用する場合にはグリセリドに対してリン脂質量を1〜
50重量%とするのが好ましく、特に5〜30重量%と
するのが好ましい。また、脂肪乳剤を合成する際には、
必要に応じて乳化補助剤、安定化剤、高分子物質、また
は等張化剤を添加してもよい。
【0028】乳化補助剤としては、炭素数6〜22(好
ましくは炭素数12〜20)の脂肪酸またはその塩が好
ましい。該脂肪酸は、医薬品に添加可能なものから選択
するのが好ましい。脂肪酸は、直鎖構造または分岐構造
のいずれでもよく、直鎖状のステアリン酸、オレイン
酸、リノール酸、パルミチン酸、リノレン酸、またはミ
リスチン酸などを用いるのが好ましい。また、脂肪酸の
塩は、生理的に受け入れられる塩から選択するのが好ま
しく、たとえばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウ
ム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩など)
などが挙げられる。乳化補助剤を添加する場合には、脂
肪乳剤中に0.3%(W/V)以下とするのが好まし
い。
【0029】安定化剤としては、コレステロール類、ま
たはホスファチジン酸が好ましい。コレステロール類や
ホスファチジン酸は医薬用として使用可能なものから選
択するのが好ましい。コレステロール類の量は、脂肪乳
剤中に0.5%(W/V)以下とするのが好ましく、特
に0.1%(W/V)以下とするのが好ましい。コレス
テロール類の量は、脂肪乳剤中に5%(W/V)以下と
するのが好ましく、特に1%(W/V)以下とするのが
好ましい。
【0030】高分子物質としては、アルブミン、デキス
トラン、ビニル重合体、非イオン性界面活性剤、ゼラチ
ン、ヒドロキシエチル澱粉などが好ましい。該アルブミ
ンとしては、抗原性の問題からヒト由来のものを用いる
のが好ましい。ビニル重合体としてはポリビニルピロリ
ドンが好ましい。
【0031】高分子物質としての非イオン性界面活性剤
としては、アルキレングリコール(ポリエチレングリコ
ールが好ましく、その平均分子量は1000〜1000
0が好ましく、特に4000〜6000が好まし
い。)、ポリオキシアルキレン共重合体(ポリオキシエ
チレンポリオキシプロピレン共重合体が好ましく、その
平均分子量は1000〜20000が好ましく、特に6
000〜10000が好ましい。)、硬化ヒマシ油ポリ
オキシアルキレン誘導体(硬化ヒマシ油ポリオキシエチ
レン−(40)−エーテル、同−(20)−エーテル、
または同−(100)−エーテルが好ましい。)、ヒマ
シ油ポリオキシアルキレン誘導体(ヒマシ油ポリオキシ
エチレン−(20)−エーテル、同−(40)−エーテ
ル、または同−(100)−エーテルが好ましい)が好
ましい。高分子物質の量は、セラミド誘導体(式1)の
1重量部に対して0.1〜5重量部とするのが好まし
く、特に0.5〜1重量部とするのが好ましい。
【0032】等張化剤としては、グリセリン、ブドウ糖
等が好ましい。等張化剤の濃度は、脂肪乳剤中に1×1
-4〜1Mが好ましく、特に1×10-3〜1Mが好まし
い。
【0033】本発明の脂肪乳剤中のセラミド誘導体(式
1)の含有量は、乳剤の形態、用途などによって適宜変
更できるが、一般的には脂肪乳剤中に極微量であるのが
好ましく、具体的には100mg/cc〜0.1μg/
ccが好ましく、特に10mg/cc〜0.2μg/c
cが好ましい。
【0034】グリセリドとしては、大豆油が好ましく、
特に純度が高い精製大豆油が好ましく、とりわけ精製大
豆油を、たとえば水蒸気蒸留法等により、高純度に精製
した高純度の精製大豆油が好ましい。高純度の精製大豆
油の純度は、トリグリセリド、ジグリセリドおよびモノ
グリセリドの総量が99.9%以上であるものが好まし
い。
【0035】リン脂質としては、卵黄レシチン、大豆レ
シチン等が挙げられ、特に精製されたこれらのリン脂質
が好ましい。リン脂質の精製方法は、常法の有機溶媒に
よる分画法が採用できる。たとえば、冷やしたn−ヘキ
サンとアセトンとの混液に粗卵黄リン脂質を溶解し、撹
拌下に、徐々にアセトンを添加し、不溶物を濾別回収
し、この操作をさらにもう一度繰り返した後に溶媒を留
去することによって精製リン脂質を得ることができる。
【0036】精製リン脂質は、ホスファチジルコリン、
およびホスファチジルエタノールアミンを主成分とする
ものが好ましく、該主成分にホスファチジルイノシトー
ル、ホスファチジルセリン、またはスフィンゴミエリン
等が加わっていてもよい。
【0037】本発明の脂肪乳剤は、具体的にはつぎの方
法で製造するのが好ましい。すなわち、所定量のセラミ
ド誘導体(式1)、大豆油、水、および、必要に応じ
て、リン脂質、および前記の添加剤等を、混合し、加熱
して溶液となし、通常のホモジナイザー(たとえば、加
圧噴射型ホモジナイザー、超音波型ホモジナイザーな
ど)を用いて、約80〜90℃の温度下に均質化処理を
することにより油中水型分散液を作り、つぎに必要量の
水を加え、再び前記のホモジナイザーで均質化を行って
水中油型乳剤に変換する方法により、脂肪乳剤を製造す
ることができる。本発明の脂肪乳剤の粒子系は、該脂肪
剤を静脈投与する場合も考慮して1μm以下であるのが
好ましく、特に0.05〜0.8μmであるのが好まし
い。また、安定化剤、等張化剤などの添加剤は、脂肪乳
剤の生成後に加えてもよい。
【0038】本発明の脂肪乳剤は、癌転移抑制作用を有
することから、癌転移抑制剤として有用である。脂肪乳
剤を投与する際には、静脈投与するのが好ましく、場合
によっては持続注入することもできる。以下に本発明を
実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限
定されない。
【0039】
【実施例】[例1]N−アセチル−ジ−O−アセチル−
D−エリスロ−スフィンゴシン(以下、CeRa−03
と記す。)の合成例 スフィンゴシン(フナコシ社製、商品名A−44)10
0mg(0.33mmol)をピリジン(3cc)に溶
解し、無水酢酸0.6ccを加え、室温で22時間撹拌
した。ピリジンを減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラ
ムクロマトグラフィー(溶離液はクロロホルム/メタノ
ール=10/1(容積比))にて精製して、表掲化合物
(CeRa−03)を100mg得た。
【0040】1H-NMR(CDCl3) δ(ppm):0.90(3H,t,J=7.0H
z),1.2-1.4(22H,m),2.00(3H,s),2.08(3H,s),2.09(3H,
s),2.0-2.1(2H,m),4.04(1H,dd,J=3.9,11.7Hz,CH 2 -OCOCH
3),4.30(1H,dd,J=6.1,11.7Hz,CH 2 OCOCH3),4.35-4.40(1
H,m,CHNHCO-),5.28(1H,dd,J=6.3,6.9Hz,-CHOCO),5.39(1
H,dd,J=15.4,7.6Hz,-CH=CH-),5.68(1H,d,J=9.0Hz,NH),
5.79(1H,dt,J=7.8,15.4Hz,-CH=CH-).
【0041】[例2]N−アシル−ジ−O−アセチル−
D−エリスロ−スフィンゴシン(CeRa−02)の合
成例(式1におけるR3 が炭素数の異なるアルキル基お
よびアルケニル基の混合物であり、R1 およびR2 がメ
チル基である化合物。) セラミド(フナコシ社製、商品名A−4、式1における
3 が炭素数の異なるアルキル基およびアルケニル基の
混合物であり、−COR1 および−COR2 に該当する
部分が水素原子である化合物。)170mg(0.2m
mol)をピリジン(9cc)に溶解し、無水酢酸1c
cを加え、室温で22時間撹拌した。ピリジンを減圧下
留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー
(溶離液はクロロホルム/メタノール=10/1)にて
精製して、表掲化合物(CeRa−02)を175mg
得た。
【0042】1H-NMR(CDCl3) δ(ppm):0.90
(6H,t,J=7.0Hz),1.2−2.0
(m),2.04(3H,s),2.05(3H,
s),4.03(1H,dd,J=3.5,12.2H
z,C −OCOCH),4.30(1H,dd,
J=5.9,12.2Hz,C OCOCH),
4.38−4.48(1H,m,CNHCO−),
5.38(1H,dd,J=15.0,8.7Hz,−
CHOCO−),5.46(1H,dd,J=15.
7,5.2Hz,−CH=CH−),5.61(1H,
d,J=8.7Hz,NH),5.80(1H,dt,
J=7.0,15.7Hz,−CH=CH−).
【0043】[例3]N−アセチル−ジ−O−アセチル
−D−エリスロ−スフィンゴシン(CeRa−03)の
脂肪乳剤の製造例 例1により製造したCeRa−03の100mgに、精
製大豆油10g、および精製卵黄レシチン1.2gを加
え、90℃でホモジナイザーを用い、90℃で加熱溶解
させた。これに日本薬局方グリセリン2.5gおよび注
射用蒸留水90ccを加え、90℃でホモジナイザーを
用い粗乳化した。これをマントンガウリン型ホモジナイ
ザーを用いて、乳化させ、最終濃度1mg/ccの脂肪
乳剤を調製した。なお、脂肪乳剤化されていないCeR
a−03について、同様にグリセリン2.5gおよび注
射用蒸留水90ccを加え、90℃でホモジナイザーを
適用したが、溶解も分散もしなかった。
【0044】[例4]癌細胞のチミジン取り込みに及ぼ
すセラミド誘導体の影響について 正常単球細胞(U937細胞)または癌細胞(Meth
A細胞)に及ぼすセラミド誘導体の影響を、以下の方
法で評価した。
【0045】(1)Thymidine uptake法による癌細胞増
殖作用の評価 Meth A細胞を1×104 cells/100μL
に調製して、96マイクロプレートに100μL/we
llずつまいた。ここに、0.5〜10μMの濃度に段
階希釈したN−アセチル−D−エリスロ−スフィンゴシ
ン(フナコシ社製:商品名C2−cer)、および例3
で合成したCeRa−03を0.5〜10μMの濃度に
段階希釈し、それぞれ、10μL/wellずつ添加し
た。また、C2−cerおよびCeRa−03を加えな
いものを、コントロールとして準備した。
【0046】さらに、該マイクロプレートを、37℃、
5%CO2 下で、1日培養した。培養には、10%FC
S(ウシ胎児血清)が添加されたRPMI−1640メ
ディウム(以下、FCS添加メディウムと記す。)また
はFCSが添加されないRPMI−1640メディウム
(以下、FCS無添加メディウムと記す。)を用いた。
【0047】つぎに、プレートに[ 3H]−チミジンを
10μL/well(最終濃度0.2μCi/wel
l)ずつ添加し、4時間培養した後、細胞をハーベスト
して放射活性(cpm)をMicroBeta TRL
UXで測定した。C2−cerおよびCeRa−03を
加えないものの放射活性を100とした場合の各放射活
性を求め、これを細胞増殖率とした。結果を表1に示
す。本発明のCeRa−03は、スフィンゴシンと同等
の癌細胞増殖抑制効果を示した。
【0048】
【表1】
【0049】[例5]in vivoで投与した場合の
マウス癌転移に及ぼす作用 Balb/cメス6週マウスを用いて、Meth Aマ
ウス癌細胞をマウスあたり2×104 cellsで静脈
内投与した。例3で調製したCeRa−03脂肪乳剤
を、癌細胞接種15分前および癌細胞接種1日後、3日
後、6日後、8日後、10日後、および13日後の計7
回、静脈内に投与した。
【0050】癌細胞接種2週間後に、肺を摘出し、70
v/v%エタノールで固定した。肺の表面に見られる肺
転移結節数を実体顕微鏡を用いて計数した。この結果を
図1に示す。図1の縦軸は肺転移結節数(単位:個)で
あり、横軸は、薬剤を含まない脂肪乳剤(Vehicl
e)およびCeRa−03脂肪乳剤(lipo−Cer
a03)である。CeRa−03脂肪乳剤は癌転移を有
意に抑制していた。
【0051】
【発明の効果】本発明のセラミド誘導体を有効成分とす
る脂肪乳剤は、セラミド誘導体の封入効率が高く、その
安定性にも優れることから、優れた薬理活性を有する有
用な脂肪乳剤である。該脂肪乳剤は、優れた癌細胞増殖
抑制作用、優れたアポトーシス誘導作用、および優れた
癌転移抑制作用を示す。したがって、本発明の脂肪乳剤
は、DDSとして有用な薬剤である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係わるCeRa−03脂肪乳
剤の癌転移抑制効果を示すグラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 武永 美津子 神奈川県川崎市宮前区菅生2−30−1 (72)発明者 森澤 義富 神奈川県横浜市神奈川区羽沢町1150番地 旭硝子株式会社内 (72)発明者 中山 利明 神奈川県横浜市神奈川区羽沢町1150番地 旭硝子株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下式1で表されるセラミド誘導体を有効成
    分とする脂肪乳剤。 【化1】 ただし、式中の記号は以下の意味を示す。 R1 、R2 :それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜2
    4のアルキル基、または炭素数1〜24のアルケニル
    基。 R3 :炭素数1〜24のアルキル基または炭素数1〜2
    4のアルケニル基。
  2. 【請求項2】R1 、R2 、およびR3 が、それぞれ独立
    に、炭素数1〜24のアルキル基である請求項1記載の
    脂肪乳剤。
  3. 【請求項3】R1 およびR2 が同一の基である、または
    1 、R2 、およびR3 が同一の基である請求項1また
    は2記載の脂肪乳剤。
  4. 【請求項4】R1 、R2 、およびR3 が、それぞれメチ
    ル基である請求項3記載の脂肪乳剤。
  5. 【請求項5】請求項1、2、3、または4記載の脂肪乳
    剤を用いた癌転移抑制剤。
  6. 【請求項6】請求項1、2、3、または4記載のセラミ
    ド誘導体、脂質、および水を加熱して脂質を溶解させ、
    つぎにホモジナイズすることを特徴とする脂肪乳剤の製
    造方法。
JP15012898A 1998-05-29 1998-05-29 セラミド誘導体を含有する脂肪乳剤、製造方法、および用途 Pending JPH11343249A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3805761A4 (en) * 2018-06-08 2022-04-27 Kyungpook National University Industry-Academic Cooperation Foundation COMPOSITION FOR DIAGNOSIS OF DISEASES ASSOCIATED WITH COX2 OVEREXPRESSION AND SCREENING METHODS THEREOF

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EP3805761A4 (en) * 2018-06-08 2022-04-27 Kyungpook National University Industry-Academic Cooperation Foundation COMPOSITION FOR DIAGNOSIS OF DISEASES ASSOCIATED WITH COX2 OVEREXPRESSION AND SCREENING METHODS THEREOF

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