JP3930919B2 - ピペリジン誘導体及びそれを構成成分とする薬物担体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なピペリジン誘導体およびそれを構成成分とする薬物担体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、リポソーム、エマルジョン、リピッドマイクロスフェアなどの閉鎖小包を薬物担体としてドラッグデリバリーシステム(以下、DDSと称す)に応用しようとする研究が盛んに行われている。これら閉鎖小包は一般的にリン脂質あるいはその誘導体、またはステロールやリン脂質以外の脂質等を基本膜構成成分として調製される、しかしながら、これら基本構成成分のみでは、閉鎖小包同士の凝集、体内における滞留性の低下などの実際に応用していくうえでの様々な面での困難を克服することはできなかった。さらに、実際にDDS製剤として目的の部位に薬物に到達させることは非常に困難であった。
【0003】
そこで、薬物封入率の向上および閉鎖小包の細胞接着性の向上を目的として、ステアリルアミン等のカチオン化脂質を少量配合することにより、閉鎖小包体の表面を生理的pH範囲でカチオン化する試みも行われている。特にDNAを含むカチオン性のリポソームはDNAの細胞中への移動、すなわち、トランスフェクションを促進することが知られているが、さらに導入効率、発現率、安全性の高いものが切望されている。しかし、カチオン化脂質として選択できる脂質は限られており、安全性が高く、高機能を発現する薬物担体用カチオン化脂質の開発が強く望まれている。現在のところ、そのようなカチオン化脂質としては、米国特許第4897355号、米国特許第5334761号、日本特許公報特開平2−292246号、日本特許公報特開平4−108391号が報告されているが十分な効果は得られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、効率良くかつ安全にDNAを細胞中へ導入でき、またDNAの細胞中への移動以外の目的、例えば血管内皮損傷部位、腎炎、腎ガン、肺炎、肺ガン、肝炎、肝ガン、膵ガン、リンパ腫などの患部に確実に、効率良くかつ安全に薬物のターゲッティングが行えDDS療法に有効な薬物担体の開発が強く望まれている。
【0005】
従って本発明の目的は、核酸、ポリヌクレオチド、遺伝子およびその類縁体を細胞へ効率良くしかも安全にトランスフェクションを行える薬物担体、およびそれを形成しうるカチオン化脂質を提供することである。また本発明の目的は薬物、ペプチドおよびタンパク質を目的の部位に効果的に送達する薬物担体、およびそれを形成しうるカチオン化脂質および薬物担体を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1)下記一般式1または2で示されるピペリジン誘導体を構成成分とする薬物担体。
【0007】
【化6】
【0008】
式1中、R1は、水素、炭素数1〜8のアルキル基またはアルケニル基であり、R2及びR3は、同一または異なって、水素(ただし、R2及びR3が共に水素の場合は除く)、炭素数1〜25のアルキル基またはアルケニル基であり、R4は、水素、炭素数1〜8のアルキル基またはアルケニル基、Xは、−O−または−S−であり、mは、0または1であり、nは、0または1〜10の整数を示す。また分子内に不斉炭素が存在する場合、その化合物はラセミ体、光学活性体のいずれでも良い。
【0009】
【化7】
【0010】
式2中、R1及びR5は、同一または異なって、炭素数1〜8のアルキル基またはアルケニル基であり、R2及びR3は、同一または異なって、水素(ただし、R2及びR3が共に水素の場合は除く)、炭素数1〜25のアルキル基またはアルケニル基であり、R4は、水素、炭素数1〜8のアルキル基またはアルケニル基、Xは、−O−または−S−であり、mは、0または1であり、nは、0または1〜10の整数を示す。また分子内に不斉炭素が存在する場合、その化合物はラセミ体、光学活性体のいずれでも良い。
【0011】
(2)前記薬物担体に診断および/または治療するための薬物を封入してなる上記(1)に記載の薬物担体。
(3)前記担体の径が0.02〜250μmである微小粒子よりなる上記(1)乃至(2)に記載の薬物担体。
(4)前記担体が巨大分子、微集合体、微粒子、微小球、ナノ小球、リポソームおよびエマルジョンのうちの少なくとも一つから構成される上記(1)乃至(3)に記載の薬物担体。
【0012】
(5)前記担体がリン脂質あるいはその誘導体、および/またはリン脂質以外の脂質あるいはその誘導体、および/または安定化剤、および/または酸化防止剤、および/またはその他の表面修飾剤を含有する上記(1)乃至(4)に記載の薬物担体。
(6)前記診断および/または治療するための薬物が、核酸、ポリヌクレオチド、遺伝子およびその類縁体である上記(2)乃至(5)に記載の薬物担体。
(7)前記診断および/または治療するための薬物が、抗炎症剤、抗癌剤、酵素剤、酵素阻害剤、抗生物質、抗酸化剤、脂質取り込み阻害剤、ホルモン剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン受容体拮抗剤、平滑筋細胞の増殖・遊走阻害剤、血小板凝集阻害剤、ケミカルメデイエーターの遊離抑制剤、血管内皮細胞の増殖または抑制剤、アルドース還元酵素阻害剤、メサンギウム細胞増殖阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、免疫賦活剤、抗ウイルス剤あるいはラジカルスカベンチャーである上記(2)乃至(5)に記載の薬物担体。
【0013】
(8)前記診断および/または治療するための薬物が、グリコサミノグリカンおよびその誘導体である上記(2)乃至(5)に記載の薬物担体。
(9)前記診断および/または治療するための薬物が、オリゴおよび/または多糖、およびそれらの誘導体である上記(2)乃至(5)に記載の薬物担体。
(10)前記診断および/または治療するための薬物が、タンパク質またはペプチドである上記(2)乃至(5)に記載の薬物担体。
(11)前記診断および/または治療するための薬物が、X線造影剤、放射性同位元素標識核医学診断薬、核磁気共鳴診断用診断薬等の各種体内診断薬である上記(2)乃至(5)に記載の薬物担体。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の化合物は、いずれも新規化合物であり、一般式(1)で表される化合物は下記一般式(3)で表されるカルボン酸誘導体に、カルボン酸活性化剤を反応させてカルボキシル基における反応性誘導体に導き、ついで、下記一般式(4)で表されるアミン誘導体と反応させることによって製造することができる。また必要に応じ公知の方法により保護基を脱離させる。
【0016】
【化8】
【0017】
式3中、R1は、水素、炭素数1〜8のアルキル基またはアルケニル基、適当な保護基(例えばベンジルオキシカルボニル基)であり、R4は、水素、炭素数1〜8のアルキル基またはアルケニル基、Xは、−O−または−S−であり、mは、0または1であり、nは、0または1〜10の整数を示す。
【0018】
【化9】
【0019】
式4中、R2及びR3は、同一または異なって、水素(ただしR2及びR3が共に水素の場合は除く)、炭素数1〜25のアルキル基またはアルケニル基を示す。
【0020】
カルボン酸誘導体(3)とカルボン酸活性化剤との反応において、カルボン酸活性化剤としては、例えば塩化チオニル、五塩化リン、クロロギ酸エステル(クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル)、塩化オキサリル、カルボジイミド類(例えば、N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC))、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(BOP)などがあげられるが、カルボジイミド類とN−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4−ジメチルアミノピリジンまたはヒドロキシコハク酸イミドを併用してもよい。この反応は通常、例えば塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドまたはこれらの混合溶媒などの存在下に行われる。反応温度は通常−10℃〜50℃である。
【0021】
この反応において、カルボン酸活性化剤として、塩化チオニル、塩化オキサリルまたは五塩化リンを用いた場合は反応性誘導体として酸ハロゲン化物が得られ、カルボン酸活性化剤としてクロロギ酸エステルを用いた場合には反応性誘導体とした混合酸無水物が得られ、またカルボン酸活性化剤としてカルボジイミド類を用いた場合には反応性誘導体として活性エステルが得られる。
【0022】
カルボン酸誘導体(3)のカルボキシル基における反応性誘導体とアミン誘導体(4)との反応は、該反応誘導体が酸ハロゲン化物である場合は例えば塩化メチレン、テトラヒドロフラン、アセトンなどの溶媒中、脱酸剤(ピリジン、トリエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなど)の存在下に無水または含水条件下に行なわれる。反応温度は−50℃〜100℃、好ましくは−10℃〜30℃である。該反応性誘導体が活性エステルまたは混合酸無水物である場合はカルボン酸誘導体(3)のカルボン酸活性化剤との反応で用いた溶媒と同様な溶媒中で行うことができる。この場合の反応温度は通常0〜30℃で反応時間は通常1〜5時間である。
【0023】
また、一般式(2)で示される化合物は、一般式(1)で示される化合物と同様にカルボン酸誘導体(5)とアミン誘導(4)を反応させることにより製造できる。または、一般式(1)で示される化合物を公知の方法に従い、アルキル化またはアルケニル化することにより製造することができる。
【0024】
【化10】
【0025】
式5中、R1及びR5は、同一または異なって、炭素数1〜8のアルキル基またはアルケニル基であり、R4は、水素、炭素数1〜8のアルキル基またはアルケニル基、Xは、−O−または−S−であり、mは、0または1であり、nは、0または1〜10の整数を示す。
【0026】
このように製造されるピペリジン誘導体(1)および(2)は、自体公知の分離、精製手段(例えば、クロマトグラフィー、再結晶)などにより単離採取することができる。
【0027】
本発明の担体は、粒径が0.02〜250μm、とりわけ0.05〜0.4μmの大きさが好ましい。また、その構造は様々な形態が考えられ、限定する必要はないが、特にその内部に薬物を高濃度封入することのできる潜在的機能を有する、巨大分子、微集合体、微粒子、微小球、ナノ小球、リポソームおよびエマルジョンのうちより少なくとも一つ以上からなることが最も望ましい。
【0028】
本発明において、薬物担体の構成成分としては、上記の形態を形成できるものであれば特にその配合に限定する必要はないが、その安全性や、生体内において安定性を考慮すると、リン脂質あるいはその誘導体、リン脂質以外の脂質あるいはその誘導体、または安定化剤、酸化防止剤、その他の表面修飾剤の配合が望ましい。
【0029】
リン脂質としては、ホスファチジルコリン(=レシチン)、ホスファジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、カルジオリビン等の天然あるいは合成のリン脂質、またはこれらを常法にしたがって水素添加したもの等を挙げることができる。
【0030】
安定化剤としては、膜流動性を低下させるコレステロールなどのステロール、あるいはグリセロール、シュクロースなどの糖類が挙げられる。
酸化防止剤としては、トコフェロール同族体すなわちビタミンEなどが挙げられる。トコフェロールには、α、β、γ、δの4個の異性体が存在するが本発明においてはいずれも使用できる。
【0031】
その他の表面修飾剤としては、親水性高分子やグルクロン酸、シアル酸、デキストランなどの水溶性多糖類の誘導体が挙げられる。
前記親水性高分子としては、ポリエチレングリコール、デキストラン、プルラン、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、合成ポリアミノ酸、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチン、カラギーナンなどが挙げられる。その中でもポリエチレングリコールは血中滞留性を向上させる効果が顕著である。
【0032】
また前記親水性高分子は、長鎖脂肪族アルコール、ステロール、ポリオキシプロピレンアルキル、またはグリセリン脂肪酸エステル等の疎水性化合物と結合させた誘導体を用いることによって、疎水性化合物部位を薬物担体(例えばリポソーム)の膜へ安定に挿入することができる。そのことにより、薬物担体表面に親水性高分子を存在させることができる。本発明において具体的に用いることができる親水性高分子誘導体としては、ポリエチレングリコール−フォスファチジルエタノールアミン等が挙げられる。
【0033】
本発明において、薬物担体に封入する薬剤としては、診断および/または治療の目的に応じて薬学的に許容し得る薬理的活性物質、生理的活性物質または診断用物質を用いることができる。
封入する薬剤の性質としては、基本的にはどの物質においても問題ないが、担体の表面が陽電荷を持つ特徴から、電気的に中性あるいはアニオン性である物質の方が高封入率が期待できる。
【0034】
封入する治療するための薬剤の種類としては、薬物担体の形成を損ねないがぎり特に限定されるものではない。具体的には、核酸、ポリヌクレオチド、遺伝子およびその類縁体、抗炎症剤、抗癌剤、酵素剤、抗生物質、抗酸化剤、脂質取り込み阻害剤、ホルモン剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン受容体拮抗剤、平滑筋細胞の増殖・遊走阻害剤、血小板凝集阻害剤、ケミカルメデイエーターの遊離阻害剤、血管内皮細胞の増殖促進または抑制剤、アルドース還元酵素阻害剤、メサンギウム細胞増殖阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、免疫賦活剤、抗ウイルス剤、ラジカルスカベンチャー、タンパク質、ペプチド等が挙げられる。
【0035】
また、封入する診断するための薬剤の種類としては、薬物担体の形成を損ねないがぎり特に限定されるものではない。具体的には、X線造影剤、放射性同位元素標識核医学診断薬、核磁気共鳴診断用診断薬等が挙げられる。
【0036】
本発明の薬物担体は常法によって容易に得ることができるが、その一例を以下に示す。フラスコ内に一般式(1)乃至(2)で示されるピペリジン誘導体およびリン脂質等の他の担体構成成分を、クロロホルム等の有機溶媒により混合し、有機溶媒を留去後真空乾燥することによりフラスコ内壁に薄膜を形成させる。次に、当該フラスコ内に薬物を加え、激しく攪拌することにより、リポソーム分散液を得る。得られたリポソーム分散液を遠心分離し、上清をデカンテーションし封入されなかった薬物を除去することにより、薬物担体を分散液として得ることができる。また、上記の各構成成分を混合し、高圧吐出型乳化機により高圧吐出させることにより得ることもできる。
【0037】
【実施例】
次に実施例、試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例、試験例に限定されるものではない。
(実施例1)
N,N−ジオクタデシル−2−(ピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミドの合成
1−(ベンジルオキシカルボニル)−4−(カルボキシメトキシ)ピペリジン1.17g、ジオクタデシルアミン2.09gとベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェ−ト1.95gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(20ml)−塩化メチレン(20ml)溶液に、氷冷下、トリエチルアミン1.21gを加え、室温で一夜攪拌した。水を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を順に希酸、水、希アルカリ、水で洗い、無水硫酸マグネウムで乾燥し、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、クロロホルム溶出画分より N,N−ジオクタデシル−2−(1−(ベンジルオキシカルボニル)ピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミド3.14gを得た(収率100%、油状物質)。
【0038】
水素雰囲気下、 N,N−ジオクタデシル−2−(1−(ベンジルオキシカルボニル)ピペリジン−4−イル−オキシ)−アセトアミド1.89g、10%パラジウム炭素500mgのエタノール(15ml)懸濁液を一夜攪拌した。触媒を濾過後、濾液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、5%メタノール−クロロホルム溶出画分よりN,N−ジオクタデシル−2−(ピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミド540mgを得た(収率34%、無色結晶、融点89−90℃)。このものの機器分析デ−タは、下記の式(6)の構造を支持する。
【0039】
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):4.15(2H,s),3.82−3.76(1H,m),3.39−3.08(8H,m),2.21−1.99(4H,m),1.58−1.46(4H,m),1.34−1.19(60H,m),0.88(6H,t,J=6.80Hz)
FAB−MS(m/z) 664(M+1)
【0040】
【化11】
【0041】
(実施例2)
N,N−ジオクタデシル−2−(1−メチルピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミドの合成
N,N−ジオクタデシル−2−(ピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミド1.33g、ホルマリン(37%)179mgとギ酸1mlの混合溶液を90℃で2時間攪拌した。希酸を加え、減圧濃縮し、希アルカリを加え塩化メチレンで抽出し、有機層を順に希アルカリ、水で洗い、無水硫酸マグネウムで乾燥し、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、5%メタノール−クロロホルム溶出画分よりN,N−ジオクタデシル−2−(1−メチルピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミド1.24gを得た(収率92%、無色結晶、融点50℃)。このものの機器分析デ−タは、下記の式(7)の構造を支持する。
【0042】
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):4.14(2H,s),3.52−3.43(1H,m),3.28(2H,t,J=8.00Hz),3.23(2H,t,J=8.00Hz),2.80−2.71(2H,m),2.37−2.18(2H,m),2.31(3H,s),2.03−1.93(2H,m),1.77−1.64(2H,m),1.60−1.46(4H,m),1.31−1..23(60H,m),0.88(6H,t,J=7.4Hz)
FAB−MS(m/z) 678(M+1)
【0043】
【化12】
【0044】
(実施例3)
N,N−ジオクタデシル−2−(1,1−ジメチルピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミドの合成
N,N−ジオクタデシル−2−(1−メチルピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミド1.24gの塩化メチレン(20ml)溶液に、ヨウ化メチル779mgを加え、一夜還流攪拌した。反応溶液を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、5%メタノール−クロロホルム溶出画分よりN,N−ジオクタデシル−2−(1,1−ジメチルピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミド730mgを得た(収率49%、無色結晶、融点214−217℃、再結晶アセトニトリル)。このものの機器分析データは、下記の式(8)の構造を支持する。
【0045】
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):4.22(2H,s),3.93−3.88(1H,m),3.83−3.63(2H,m),3.55(3H,s),3.43(3H,s),3.27(2H,t,J=8.0Hz),3.10(2H,t,J=8.0Hz),2.34−2.22(2H,m),2.15−2.03(2H,m),1.60−1.46(4H,m),1.33−1.19(60H,m),0.88(3H,t,J=7.8Hz)
【0046】
【化13】
【0047】
(実施例4)
実施例1で合成したN,N−ジオクタデシル−2−(ピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミドを3μM、コレステロールを6μM、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を21μMを容量10mlのナス型フラスコに秤りとり1mlのクロロホルムにて完全に溶解する。エバポレータによりクロロホルムを減圧留去しフラスコ内壁に脂質薄膜を形成した。ついで0.5μMのカルセインを含む10mMTris−HCl緩衝液1mlをフラスコに加え、激しく浸透攪拌することにより、リポソーム(MLV)分散液を得た。
【0048】
(実施例5)
実施例4と同様にして、実施例2で合成したN,N−ジオクタデシル−2−(1−メチルピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミド3μM、コレステロール6μM、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)21μMおよびカルセインを含むリポソーム分散液を得た。
【0049】
(実施例6)
実施例4と同様にして、実施例3で合成したN,N−ジオクタデシル−2−(1−ジメチルピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミド3μM、コレステロール6μM、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)21μMおよびカルセインを含むリポソーム分散液を得た。
【0050】
(試験例1)
カルセインの封入率の測定
カルセインのリポソームへの封入率は、次のように求めた。50倍の希釈した調製したリポソーム懸濁液40μlを2.0mlの10mMTris―HCl緩衝液に添加し、蛍光強度を測定する(励起波長490nm,蛍光波長530nm)。この時の蛍光強度をFtとする。つぎに10mMCoCl2水溶液を20μl添加しリポソームに封入されなかったカルセインを消光させ、リポソームの内部に封入されたカルセインの蛍光を測定する。この時の蛍光強度をFinとする。さらに20%TritonX―100溶液を20μl添加することにより、リポソームを破壊し、すべてのカルセインをCo2+と結合させ消光させる。この時の蛍光強度を、Fqとする。リポソームの保持効率は以下の式にて計算される。
【0051】
保持効率(%)=(Fin−Fq×r)/(Ft−Fq× r)×100
【0052】
式中のrは、リポソーム懸濁液および薬物の添加に伴う反応液の体積変化を補正した値で本実験ではr=(2.0+0.04+0.02+0.02)/2.0=1.04である。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
(実施例7)
実施例1で合成したN,N−ジオクタデシル−2−(ピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミドを10μM、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)を20μM、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を20μM秤りとり、1mlのクロロホルム溶液Aとする。クロロホルム溶液Aの20μlを容量10mlのナス型フラスコに取りさらに1mlのクロロホルムを加えた。エバポレータによりクロロホルムを減圧留去しフラスコ内壁に脂質薄膜を形成した。
β-galactosodaseの遺伝子を組み込んだプラスミドpcDNA/Amp(Invitrogen社)20μgを溶解した水溶液1mlをフラスコ内に加え、激しく浸透攪拌することによりDNA封入リポソームを得た。
【0055】
(試験例2)
細胞の調製とトランスフェクション
細胞:大日本製薬株式会社より購入した、Cos―1細胞(ATCC No. CRL-1650)を10%牛胎児血清(FCS)を含むIscove's modified Dulbecco's medium(IMDM)を用いて5%CO2,95%O2,37℃のインキュベータ中で継代培養した。
【0056】
トランスフェクション:10%FCS IMDM培地(1ml)を添加した、6穴マルチウェルプレートに約2×104のCos−1細胞を加え細胞培養を行った。約24時間培養後FCSを含まない新鮮培地と交換し、0.2μgのDNAを含むリポソーム懸濁液を加える。16時間培養後、10%FCS IMDM培地にて培地交換し、さらに48時間培養した。細胞を、ホルムアルデヒドで固定し、β-galactosidaseの基質である、5-bromo-4chloro-3-indolyl-β-galactopyranoside(X-gal)を加え、β-galactosidaseを発現した細胞を同定した。発色した細胞の全体に対する割合は、画像処理により測定した。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
(急性毒性)
ICR系雄性マウス(5週齢)を用いて経口および静脈内投与により急性毒性試験を行った結果、本発明の化合物のLD50はいずれも320mg/kg以上であり有効性に比べて高い安全性が確認された。
【0059】
【発明の効果】
上述した通り、本発明により新規ピペリジン誘導体が供給される。本発明のピペリジン誘導体を構成成分とする薬物担体は、試験例に示されるように、従来の薬物担体に比べ細胞への薬物の導入効率が高いことが明らかとなった。
このような特徴から、薬学的に許容し得る薬理的活性物質、生理的活性物質または診断用物質を封入させた本発明の薬物担体は、治療および診断という目的に対して非常に効果的である。
Claims (12)
- 下記一般式1または2で示されるピペリジン誘導体を構成成分とする薬物担体。
- 前記薬物担体に診断および/または治療するための薬物を封入してなる請求項1に記載の薬物担体。
- 前記担体の径が0.02〜250μmである微小粒子よりなる請求項1乃至請求項2に記載の薬物担体。
- 前記担体が巨大分子、微集合体、微粒子、微小球、ナノ小球、リポソームおよびエマルジョンのうちの少なくとも一つから構成される請求項1乃至請求項4に記載の薬物担体。
- 前記担体がリン脂質あるいはその誘導体、および/またはリン脂質以外の脂質あるいはその誘導体、および/または安定化剤、および/または酸化防止剤、および/またはその他の表面修飾剤を含有する請求項1乃至請求項4に記載の薬物担体。
- 前記診断および/または治療するための薬物が、核酸、ポリヌクレオチド、遺伝子およびその類縁体である請求項2乃至請求項5に記載の薬物担体。
- 前記診断および/または治療するための薬物が、抗炎症剤、抗癌剤、酵素剤、酵素阻害剤、抗生物質、抗酸化剤、脂質取り込み阻害剤、ホルモン剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン受容体拮抗剤、平滑筋細胞の増殖・遊走阻害剤、血小板凝集阻害剤、ケミカルメデイエーターの遊離抑制剤、血管内皮細胞の増殖または抑制剤、アルドース還元酵素阻害剤、メサンギウム細胞増殖阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、免疫賦活剤、抗ウイルス剤あるいはラジカルスカベンチャーである請求項2乃至請求項5に記載の薬物担体。
- 前記診断および/または治療するための薬物が、グリコサミノグリカンおよびその誘導体である請求項2乃至請求項5に記載の薬物担体。
- 前記診断および/または治療するための薬物が、オリゴおよび/または多糖、およびそれらの誘導体である請求項2乃至請求項5に記載の薬物担体。
- 前記診断および/または治療するための薬物が、タンパク質またはペプチドである請求項2乃至5に記載の薬物担体。
- 前記診断および/または治療するための薬物が、X線造影剤、放射性同位元素標識核医学診断薬、核磁気共鳴診断用診断薬等の各種体内診断薬である請求項2乃至請求項5に記載の薬物担体。
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