JP4827277B2 - リポソーム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、能動的ターゲッティング性を有し、かつ血中での安定性が確保されているリポソームであって、さらにそれが、病変部の組織および/または臓器において、様々な種類のプロテオグリカンの産生を伴うような疾患、特に腎疾患の診断および/または治療に用いられるリポソームに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、薬物を効率よく目的臓器へ分布させるいわゆるターゲッティング技術に基づくドラッグデリバリーシステム(DDS)の研究が盛んになってきている。リポソームは内部に薬物を封入させることができることから、このようなDDSとして最も研究されているものの一つである。
【0003】
しかしながら、これらリポソームの実用化に際しては、克服すべき様々な問題点があり、中でも生体側の異物認識機構からの回避や、体内動態の制御の困難さが問題となってきた。すなわち、リポソームが血液中のオプソニンなどをはじめとした各種血しょう蛋白質との相互作用により、血液中で凝集を引き起こしたり、肝臓、脾臓等の細網内皮系組織(RES)で捕捉されるため、リポソームを標的とする組織や細胞へ選択的に送達することが困難な状況であった。
【0004】
近年、リポソームの表面をポリエチレングリゴ−ル(PEG)等の親水性高分子で被覆することにより、オプソニンなどをはじめとした各種血しょう蛋白質などのリポソーム表面への吸着を防止して、リポソームの血中での凝集を防止し、またRESによる捕捉を回避することが可能となってきた(USP5013556、USP5676971)。
これらの技術を背景にした目標組織へのタ−ゲティングについての研究は、腫瘍組織、血管透過性亢進部位、炎症組織、肝臓、脳、リンパ組織等については多く見受けられるが、これらはすべてRESによる捕獲を回避し、血中安定性を高めた結果引き起こされる、いわゆる受動的ターゲッティング性による効果によるものであり(Advanced Drug Delivery Reviews 24(1997)337-334)、目標とする組織への結合能をもつ、いわゆる能動的ターゲッティング技術によりターゲッティング機能を強化したリポソームの開発が望まれていた。
【0005】
能動的ターゲッティング技術に関していえば、リポソーム表面を、抗体、抗体フラグメント、アミノ酸、ペプチド、糖類などのターゲット因子で修飾する研究がされ、またリポソーム表面をカチオン化する技術などが研究されてきた。特にカチオン化については、遺伝子導入技術として、遺伝子などを細胞内へ送達する能力を持つことに加えて、血管内皮が傷害を受けた部分などへの集積性が向上するなどから(特開平 7-89874号公報)好ましい修飾技術の一つとして挙げられる。しかしながら、カチオン化リポソームによっては、血中蛋白を介した凝集などが中性またはアニオン化リポソームより強く観察され(Biochimica et Biophysica Acta 1280(1996)149-154) 、そのままでは生体内において能動的ターゲッティング性が十分に引き出されなかった。
【0006】
一方で、細胞表面をアニオン性に保っているプロテオグリカンは、カチオン化リポソームとの相互作用が期待される成分の一つである。多数の臓器(肝臓、肺、心臓、膵臓、骨髄、動脈)の線維化病変や、大腸ガンなどの腫瘍、細胞増殖性腎炎、その他炎症疾患などの疾患においては、その組織内で、様々な種類のプロテオグリカンの過剰産生が起こることが報告されている(Acta Pathol Jpn,36(6):827,(1986)、FEBS Lett.,244:315,(1988) 、J Rheumatol 18(10):1466,(1991)、J Dent Res 71(9):1587,(1992))。この生体内の反応は創傷治癒の過程で起こる過剰修復反応や、腫瘍などでの過剰な細胞増殖の結果と考えられ、上記に記されたような疾患の病巣の病理学的指標にもなっている。
【0007】
しかしながら、これらプロテオグリカンを過剰産生している組織および/または臓器への能動的ターゲッティングを目的とした報告はほとんど報告されていない。例えば、特開平 8-27030号公報には、生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物により表面を修飾した薬物担体が腎臓の皮質部分に集積することが記載されているが、腎糸球体、なかんずく傷害により炎症を引き起こした腎糸球体や、それに代表されるプロテオグリカンを産生する組織および/または臓器に特異的に集積するようなターゲッティング技術を開示する報告はなかった。
【0008】
病変部において、様々な種類のプロテオグリカンの産生が亢進することが報告されている疾患の一つに糸球体腎炎がある(Clin Exp Immunol 108:69,(1997)、Kidney International 49: supple 54, s55(1996) 、J Am Soc Nephrol 2:s88(1992))。この糸球体腎炎を例にとるだけでも、プロテオグリカンを過剰産生する組織および/または臓器へ薬物をターゲティングすることの重要性は容易に推定される。
【0009】
1996年の日本透析医学会の資料によれば、腎不全により透析に導入される患者は、約2万7千人とされており、その約50%が慢性腎症、約30%が糖尿病性腎症によるものとされている。慢性腎症、糖尿病性腎症ともにその原発性疾患は糸球体腎炎によるものであり、糸球体腎炎の有効な治療法が確立されれば、これらの患者は透析生活を送る必要はなくなる。しかし現在に至るまで糸球体腎炎の有効な治療法は見いだされていない。
【0010】
例えば、IgA腎症と呼ばれる糸球体腎炎は、日本人に最も多く認められる糸球体腎炎であり、患者は日本だけで推定30万人近くに数えられ、成人の糸球体腎炎の40%前後、小児のそれの30%近くを占めると言われている。最近我が国で行われた20年間のフォローアップスタディの結果、IgA腎症の約40%、年間で推定5−6千人(平成7年度)が末期腎不全に至り透析に導入されることが判明し、IgA腎症に対する特異的治療法の開発がこれまでに増して世界的に急務と考えられるようになっている。しかし、その治療には、充分な手段がなく、毎年5千名近い患者が透析に導入されてきた。
【0011】
現在日本において、ネフローゼ症候群や急速進行性糸球体腎炎に対して積極的に用いられて有効性が確立しているとされるステロイド療法は、IgA腎症に関しても、10年間の臨床での有用性評価の結果、進行性IgA腎症の早期に2−3年間継続的に使用することにより長期的に腎機能を保持し得る可能性が報告されている。
【0012】
しかし、一方で、このような慢性疾患に一定期間にわたって継続的に投与する場合には、副作用が大きな問題となり、成人においては動脈硬化症、骨粗鬆症、免疫能低下、小児においては低成長などの問題が回避不可能である。その結果、患者のQOL(quality of life )が低下するだけでなく、副作用により投与継続ができないこと、および、特に長期間の投与が不可能であること等によりその有効性が十分にあげ得ないことが問題となっている。
【0013】
この問題を解決するためには、上述したような副作用の発現しない投与量で、薬効のみを発現させる工夫が必要であり、そのためには傷害され炎症を引き起こした糸球体に効率よく薬物を送達する工夫が望まれる。
【0014】
同様なことは、病変部の組織および/または臓器にプロテオグリカンが過剰に産生されるような、他の疾患についてもあてはめられ、強い薬効を示しながらも、その毒性により使用できない薬物を目的臓器に積極的にターゲッティングすることによって、副作用を発現させず、十分な治療効果を得ることが求められている。
【0015】
従って、この問題は、傷害され炎症を引き起こした腎臓糸球体に代表されるような、プロテオグリカンの産生を伴う組織および/または臓器に効率的に集積するようなリポソームに薬物を封入し、薬物をこれら組織に効率的に送達させ持続的に作用させることにより解決される。このことは、能動的ターゲッティング性を有し、かつ血中での安定性が確保されているリポソームであって、さらにそれが、様々な種類のプロテオグリカンの産生を伴うような病変部の組織および/または臓器への集積性を有するリポソームを実現することにより解決される。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、本発明は、能動的ターゲッティング性を有し、かつ血中での安定性が確保されているリポソームであって、さらにそれが、病変部の組織および/または臓器において、様々な種類のプロテオグリカンの産生を伴うような疾患、特に腎疾患の診断および/または治療に用いられるリポソームを提供することを課題とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、リポソームの体内動態を制御するファクターについて研究を進めていく過程において、驚くべきことに、一定範囲の配合比で、生理的pH範囲において陽電荷を帯びる塩基性化合物を組み込み、さらにその表面に、その量を一定の範囲に制御された親水性高分子を結合させたリポソームにおいて、その血液中での安定性が確保され、肝臓等における捕捉も回避され、血中滞留性が向上するにもかかわらず、病変部におけるプロテオグリカンの認識性が飛躍的に向上する性質を見出した。
【0018】
さらに、その主要粒度範囲が90〜200nmである場合には、生体内においてプロテオグリカンが過剰産生する組織および/または臓器、特に腎糸球体への集積性と選択性ならびに効果の持続性が向上することを見出した。ここで、主要粒度範囲とは、レーザー散乱光によりリポソームの粒径を測定した場合の、散乱強度分布によりリポソームの粒径を測定した場合の、散乱強度分布において70%以上が占める粒度の範囲をいう。
【0019】
本発明者は、上記の新規知見に基づき更に鋭意研究を重ね、本発明を完成した。即ち、本発明は、薬物を内封するリポソームであって、その膜構成成分が、(1)3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン、その塩酸塩、N,N−ジオクタデシル−2−(ピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミド、N’−ペンタデシルジエチレントリアミン、1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン、1,2−ジパルミトイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン、およびN’,N”−ジペンタデシルトリエチルテトラミンからなる群から選択される化合物、(2)ポリエチレングリコールの脂質誘導体、および(3)リン脂質および/またはリン脂質の水素添加物からなり、これらの構成比が、(3)に対して(1)が1〜20mol%、また(1)と(3)の和に対して(2)が0.2〜5mol%であることを特徴とするリポソームを提供する。
【0020】
さらに好ましくは、その膜構成成分の構成比が、(3)に対して(1)が5〜15mol%、また(1)と(3)の和に対して(2)が0.2〜5mol%であることを特徴とするリポソームである。
【0021】
前記、生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物が、アミジノ基を有する塩基性化合物、アミノ基を2個以上有する塩基性化合物、ピペリジン環を有する塩基性化合物、4級アミンを有する塩基性化合物であることがこのましく、さらには、下記式1〜4のいずれかに記載されたものであるのが好ましい。
【化5】
【0022】
なお、式1の化合物はWO97/42166に、式2および3の化合物は特開平9-263579号公報に、式4はChem.Papers,39(1),125-134(1985) に記載の化合物であるが、これらの公報には、能動的ターゲッティング性を有し、かつ血中での安定性が確保されているリポソームであって、さらにそれが、病変部の組織および/または臓器において、様々な種類のプロテオグリカンの産生を伴うような疾患、特に腎疾患の診断および/または治療に用いられるリポソームについての記載は一切されていない。
【0023】
【化6】
(式1中、Aは芳香環を表す。R1 及びR2 は炭素数10〜25のアルキル基またはアルニケル基を表し、R1 およびR2 は同一であっても異なっていてもよい。X1 およびX2 は−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CONH−または−NHCO−を表し、X1 およびX2 は同一であっても異なっていてもよい。mは0または1、nは0または1〜6の整数を表す。)
【0024】
【化7】
(式2中、R3 は水素または炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルニケル基を表す。R4 は水素または炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルニケル基を表す。R5 およびR6 は水素または炭素数1〜25のアルキル基もしくはアルニケル基を表し(但し、R5 およびR6 が共に水素である場合を除く。)、R5 およびR6 は同一であっても異なっていてもよい。X3 は−O−または−S−を表す。pは0または1、qは0または1〜10の整数を表す。)
【0025】
【化8】
(式3中、R7 およびR8 は炭素数1〜8のアルキル基またはアルニケル基を表し、R7 およびR8 は同一であっても異なっていてもよい。R9 は水素または炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルニケル基を表す。R10およびR11は水素または炭素数1〜25のアルキル基もしくはアルニケル基を表し(但し、R10およびR11が共に水素である場合を除く。)、R10およびR11は同一であっても異なっていてもよい。X4 は−O−または−S−を表す。rは0または1、sは0または1〜10の整数を表す。)
【0026】
【化9】
【0027】
前記親水性高分子の脂質誘導体がポリエチレングリコールの脂質誘導体であるのが好ましく、該ポリエチレングリコールの脂質誘導体がポリエチレングリコール鎖とジアシルグリセロールを1分子内に含む化合物であるのがより好ましい。
【0028】
前記親水性高分子の分子量が1000〜7000であるのが好ましい。
【0029】
前記リポソームに内封されている薬物が、腎疾患の診断および/または治療を目的とする薬物、もしくは、病変部の組織および/または臓器にプロテオグリカンの過剰産生を伴う疾患の診断および/または治療を目的とする薬物であるのが好ましい。
【0030】
前記腎疾患の診断および/または治療を目的とする薬物が、副腎皮質ステロイドおよび/またはその誘導体であるのが好ましい。
【0031】
前記リポソームは、その主要粒度範囲が90〜200nmであることが好ましい。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のリポソームの膜構成成分は、生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物、親水性高分子脂質誘導体およびリポソームを構成する脂質とからなり、必要に応じ、安定化剤、酸化防止剤等を用いることも可能である。
リポソームを構成する脂質としてはリポソームを形成できるものであれば特に限定されないが、生体内において安定なリポソームを提供するという点から、リン脂質あるいはその誘導体、リン脂質以外の脂質あるいはその誘導体が好適に用いられる。
【0033】
前記リン脂質は、例えば、リン脂質は、例えばホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエアノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、カルジオリビン等の天然または合成のリン脂質、あるいはこれらを常法に従って水素添加したものが挙げられる。
安定化剤は、例えば、膜流動性を低下させるコレステロール等のステロール;グリセロール、シュクロース等の糖類が挙げられる。
酸化防止剤は、例えば、トコフェロール同族体、即ち、ビタミンEが挙げられる。トコフェロールにはα、β、γおよびδの4個が異性体で存在するが、本発明にはいずれも用いることができる。
【0034】
本発明のリポソームは、膜構成成分として生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物(以下、塩基性化合物と言うことがある)および親水性高分子脂質誘導体を含有する。生理的pH範囲とは、生体の状態によって異なるので限定できないが、例えば7.0〜7.5の範囲である。
【0035】
リポソーム表面を生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物は、リポソームの構造安定を損なうものでなければ特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族第一級アミノ基、脂肪族第二級アミノ基、脂肪族第三級アミノ基、脂肪族第四級アミノ基;アミジノ基;グアニジノ基;芳香族第一級アミノ基、芳香族第二級アミノ基、芳香族第三級アミノ基、芳香族第四級アミノ基を有し、これらの基を直接あるいは、適度なスペーサーを介して、長鎖脂肪族アルコール、ステロール、ポリオキシプロピレンアルキル、またはグリセリン脂肪酸エステル等の疎水性化合物と結合させた脂質誘導体が挙げられる。疎水性化合物と結合していると、生理的pH範囲で陽電荷を帯びる部分がリポソームの表面に位置しやすい。これらのうちで、アミジノ基を有する塩基性化合物、アミノ基を2個以上有する塩基性化合物、ピペリジン環を有する塩基性化合物、4級アミンを有する塩基性化合物が相互作用の強さにおいて好適である。
【0036】
なお、これらの塩基性化合物がリン酸基のような生理的pH範囲で負に荷電する置換基を介して疎水性化合物と結合させられている場合(例えば、ジアシルグリセロフォスファチジルコリン、ジアシルグリセロフォスファチジルエタノールアミン、およびアミド結合を介して中性もしくは陰性の置換基がエタノールアミン置換基に結合しているようなジアシルグリセロフォスファチジルエタノールアミンの誘導体など)は、この負電荷の影響で生理的pH範囲では中性あるいは陰性に荷電するため、生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物には含まれないことは言うまでもない。
【0037】
これらの塩基性化合物は、単独で用いてもよく、2以上を併用してもよい。上記化合物の具体例としては、 DOTMA(特許第61161246号公報)、 DOTAP(特許第5508626 号公報)、 Transfectam(特許第2292246 号公報)、TMAG(特許第 4108391号公報)、DOSPA 、TfxTM-50、 DODAC、 DC-CHOL、 DMRIE等公知の化合物が挙げられる。より好適なものとして、塩基性化合物が上記式1〜4のいずれかに記載されたものが挙げられる。
【0038】
生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物の配合量は、該塩基性化合物および親水性高分子を除く、他の膜構成成分、すなわち、リポソームを構成する脂質に対して、1〜20mol%であるのが好ましい。1mol%未満であるとプロテオグリカンを産生する組織および/または臓器への集積性が劣る場合があり、20mol%を越えるとリポソームの生体内での物理的安定性を損なう場合がある。
【0039】
さらには、生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物の配合量は、該塩基性化合物および親水性高分子を除く、他の膜構成成分、すなわち、リポソームを構成する脂質に対して、5〜15mol%であるのが、より好ましい。この範囲においては、プロテオグリカンのなかでも特にコンドロイチン硫酸プロテオグリカンに対する選択性に優れ、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンを産生する組織および/または臓器への集積性に特に優れる。
【0040】
本発明のリポソームは、表面が生理的pH範囲で陽電荷を帯びており、それによってプロテオグリカンを産生する組織および/または臓器への集積性が発現する。
また、本発明のリポソームは、親水性高分子により修飾されており、それによって血中での安定性並びにRES回避効果をもたらす。
【0041】
リポソーム表面を親水性高分子により修飾するには、様々な方式が挙げられ特に限定されないが、該親水性高分子を長鎖脂肪族アルコール、ステロール、ポリオキシプロピレンアルキル、またはグリセリン脂肪酸エステル、リン脂質等の疎水性化合物と結合させて、該疎水性化合物の部分をリポソーム膜へ挿入する方式が好ましい。
【0042】
親水性高分子の脂質誘導体は、リポソームの構造安定を損なうものでなければ特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、プルラン、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、合成ポリアミノ酸、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチン、カラギーナン等の脂質誘導体が挙げられるが、中でもポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールの脂質誘導体が好ましい。
【0043】
ポリエチレングリコールの脂質誘導体は、特に限定されないが、ポリエチレングリコール鎖とジアシルグリセロールを1分子内に有する化合物であるのが好ましい。
親水性高分子の分子量は、1000〜7000であるのが好ましい。
特に分子量1000〜7000のポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールの脂質誘導体は、血中滞留性を向上させる効果が顕著であり、好ましい。
【0044】
親水性高分子脂質誘導体の配合量は、その分子量や添加方法にもよるが、生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物およびリポソームを構成する脂質の和に対して、0.2〜5mol%であるのが好ましい。この範囲であるとプロテオグリカンを産生している組織および/または臓器への集積性が優れる。
【0045】
その理由は、以下の通りである。親水性高分子脂質誘導体の配合量が上記範囲であると、血漿蛋白とリポソームとの相互作用がリポソーム表面の親水性高分子により阻害されるため、血中での安定性に優れる。一方、親水性高分子脂質誘導体の配合量が上記範囲であると、リポソームとある種の生体高分子成分との結合は阻害されない。プロテオグリカンの構成成分であるコンドロイチン硫酸やデルマタン硫酸などは、糸状のアニオン性生体高分子成分であるガラクトサミノグリカン(GAG)であるが、本発明の所定量の親水性高分子脂質誘導体の配合量では、このような糸状のアニオン性生体高分子とリポソームとの結合は阻害されない。本発明のリポソームは、このようなGAGを持つプロテオグリカンを産生する組織および/または臓器を選択的に認識する。
【0046】
このような親水性高分子による修飾により、リポソームの血中濃度がある程度の時間維持されるという効果は、従来より知られている。一方親水性高分子脂質誘導体は、リポソームの表面を親水性にして臓器への集積性を損なう面がある。しかし、親水性高分子で修飾してもリポソーム表面の特性が損なわれないこと、また、一定の濃度範囲の親水性高分子で修飾することにより逆にその特性を高めることができるということは全く知られていなかった。
【0047】
例えば、その他の脂質と生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物と親水性高分子脂質誘導体を20:1:1の範囲で配合したリポソームが、Biochemistry,37:12875,(1998)に開示されている。この報告では、それ自体がアニオンである親水性高分子と塩基性化合物とをそれぞれ約5モル%配合した場合にカチオン化リポソームの細胞への結合が、親水性高分子により阻害されることが述べられているが、本発明の配合比において、血中安定性に優れ、かつプロテオグリカンとの相互作用を介して細胞と結合するリポソームが作成可能であることは全く述べられていない。
また、Biochimica et Biophysica Acta,1326:236,(1997) には、カチオン性ではないリポソームと細胞との相互作用が1〜5モル%の親水性高分子脂質誘導体の配合で阻害されることが報告されている。しかし試験例1に示すように、カチオン化リポソームの細胞との相互作用は、中性、またはアニオン性リポソームのそれとは全く異るものであり、また、カチオン化リポソームの細胞との結合性の強さは生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物の配合比が増えるに従って増加する(試験例3、4)ため、このような点について検討されていない本報告は、カチオン化リポソームと細胞との相互作用に最適な親水性高分子の配合比については全く参考にならないものである。
【0048】
WO96/10391には親水性高分子脂質誘導体として、PEGセラミドを配合したカチオン化リポソームが開示されている。この中で生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物を他の脂質に対して約17.5モル%(全脂質の約15モル%)以上を含むリポソームの場合には10モル%以上のPEGセラミドの配合により血中の安定性が維持されることと、5モル%のPEGセラミドの配合では、細胞との相互作用が維持(保持)されることが開示されている。しかしながら、本発明の配合比(その他の脂質に対して、1〜20モル%、好ましくは5〜15モル%の塩基性化合物と0.2〜5モル%の親水性高分子誘導体の配合)において、血中の安定性が維持され、プロテオグリカンを介した細胞との相互作用が最適化されたリポソームが作製できることはなんら開示されていない。
WO98/51285には、生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物と、PEGとジラウロイルフォスファチジルエタノールアミンの結合体を含むリポソーム、あるいは、塩基性化合物と、PEG誘導体のほかに、その他の脂質として、ジフタノイルフォスファチジルエタノールアミンを含むリポソームが開示されている。このリポソームにおいては、塩基性化合物は他の脂質に対して50%含まれるものが開示されているが、本発明の範囲の配合比のものはなんら開示されていない。
【0049】
本発明においては、生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物と親水性高分子脂質誘導体の配合比が決定的に重要である。特に従来リポソームの血液中での安定性に関しては、血漿たんぱく質との相互作用とそれを介したRES系への取り込みが重要視されてきたが、カチオン化リポソームにおいては、これに加えて、細胞表面のプロテオグリカンの構成成分であるGAGなどの糸状のアニオン性生体高分子成分との相互作用が重要である。
【0050】
糸球体腎炎においては、糸球体のメサンギウム細胞が、増殖性変化を起こし、病変の進展の原因となる。試験例1には、その他の脂質に対して、8.7mol%の塩基性化合物(3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩)を含むリポソームのメサンギウム細胞との結合性が、塩基性化合物を含まないリポソームと比較して、示されている。塩基性化合物の存在下でのみリポソームはメサンギウム細胞と結合する。また、試験例2に示すようにこの結合は細胞表面のプロテオグリカンに結合しているGAGを切断すると失われ、この結合が、プロテオグリカンのGAGを介するものであることが示されている。さらに、試験例1には、その結合性が、親水性高分子の添加量とともに減少し、親水性高分子の配合量は5mol%を越えないことが望ましいことが示されている。
【0051】
一方で、試験例4には、親水性高分子が5モル%以下の場合、他の脂質に対して20モル%を越える量の生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物を配合すると、血液中での凝集を十分には抑制できないことが示されている、すなわち、塩基性化合物の配合比はその他の脂質に対して20mol%以下とすることが好ましい。
【0052】
プロテオグリカンのある種のものは、血管の表面を覆っている内皮細胞にも存在している。従って、このような内皮細胞との相互作用が強い場合には、血液中のリポソームはこの内皮細胞との相互作用により物理的安定性が損なわれ、病変部への効率的な送達が阻害される可能性がある。従って、目的とするリポソームは病変部のプロテオグリカンとは結合できるが、血管内皮細胞のプロテオグリカンとは相互作用しないことがより望ましい。驚くべきことに、このようなリポソームは、試験例3、4に基づく本発明者等の研究により、塩基性化合物の配合比をその他の脂質に対して、1モル%以上、20モル%以下、好ましくは5モル%以上、15モル%以下とした場合に実現されることが明らかとなった。
【0053】
以上のように、血中での安定性を確保しながら、プロテオグリカンを産生する病変部の組織及び/または臓器と結合できるリポソームは、きわめて限定された範囲におけるカチオン化脂質と親水性高分子の配合比により初めて実現されるものであり、本発明のリポソームは、既知のリポソームとは構成、目的ともはっきりと異なるものである。
本発明においては、親水性高分子脂質誘導体以外の表面修飾剤を併用することもできる。親水性高分子以外の表面修飾剤は、例えば、グルクロン酸、シアル酸等の水溶性多糖類などが挙げられる。
【0054】
リポソームが内封する薬物は、腎疾患及び、病変部の組織および/または臓器においてプロテオグリカンを過剰産生するその他の疾患の診断および/または治療の目的に応じて、薬学的に許容し得る薬理的活性物質、生理的活性物質および/または診断用物質を用いることができる。
リポソームが内封する薬物の性質は特に限定されないが、電気的に中性またはアニオン性であると、リポソームの表面が生理的pH範囲で陽電荷を帯びる置換基で修飾されているため、高い封入率を得ることができるので好ましい。
【0055】
リポソームが内封する薬物の種類としては、リポソームの形成を損なうものでなければ特に限定されない。例えば、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン等の副腎皮質ステロイド;アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、メフェナム酸、フェニルブタゾン等の非ステロイド抗炎症剤;ヘパリン、低分子ヘパリン等のメザンギウム細胞増殖阻害剤;シクロスポリンなどの免疫抑制剤;カプトプリルなどのアンギオテンシン変換酵素(ACE、angiotensin converting enzyme )阻害剤;メチルグアニジンなどのAGE(advanced glycation endoproduct)阻害剤;バイグリカン、デコリン等のTGF-β拮抗薬;PKC(protein kinase C)阻害剤;PGE1、PGI2等のプロスタグランジン製剤;パパベリン系薬、ニコチン酸系薬、トコフェロール系薬、Ca拮抗薬等の末梢血管拡張薬;フォスホジエステラーゼ阻害剤;チクロピジン、アスピリン等の抗血栓薬;ワーファリン、ヘパリン、抗トロンビン剤等の抗凝固剤;ウロキナーゼなどの血栓溶解薬;ケミカルメディエーター遊離抑制剤;抗生物質;抗酸化剤;酵素剤;脂質取込抑制剤;ホルモン剤;ビタミンC;ビタミンE;SOD等のラジカルスキャベンジャー;メサンギウム細胞の増殖抑制作用を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド;制癌剤;デコイあるいは遺伝子;X線造影剤;放射性同位元素標識核医学診断剤;MRI造影剤などが挙げられる。中でも、副腎皮質ステロイドおよび/またはその誘導体および/または他の成分も含む合剤等は、効果が強く、一方、全身性副作用も非常に大きいため、従来は継続的または長期的な本発明においては、副作用を最小限に抑制することができるので好適に用いられる。
【0056】
また、対象となる病変部の組織及び/または臓器にプロテオグリカンが過剰に産生される疾患としては、糸球体に炎症が生じている腎疾患の他に、肝臓、肺、心臓、膵臓、骨髄、動脈などの臓器が線維化する疾患、大腸ガンなどの腫瘍、炎症疾患等が挙げられる。
また、上記腎疾患は、例えば、原発性糸球体腎炎としては、微小変化型、巣状糸球体硬化症、IgA腎症、メサンギウム増殖性腎炎、膜性腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎I型、II型及び III型、管内性増殖性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎(=管外性増殖性糸球体腎炎)が、続発性糸球体腎炎としては、ループス腎炎、グットパスチャー症候群、糖尿病性腎症、全身性血管炎、血栓性微小血管炎、糸球体内血栓、良性腎硬化症、悪性腎硬化症、進行性全身性硬化症(強皮症)、感染症に伴う糸球体障害、薬剤性腎障害が挙げられる。
【0057】
本発明のリポソームに最適な大きさは、主要粒度範囲が90〜200nmである。この範囲であると、後の試験例8に示すようにリポソームは、血管から傷害されて炎症を引き起こした腎糸球体をはじめとするプロテオグリカンを産生する組織および/または臓器へ移行しやすい。主要粒度範囲が90nm未満であると正常な組織および/または臓器へも移行し易くなり、200nmを越えると傷害された組織へ到達しづらくなる。一方平均粒径は、同じく光散乱法により測定される全粒子径の平均値であるが、この値は主要粒度範囲の範囲内の値であり、その範囲も当然90〜200nmであるのが好ましい。
【0058】
本発明のリポソームは、常法によって容易に得ることができる。その一例を以下に示す。
生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物およびリン脂質、安定化剤、酸化防止剤等の他の膜構成成分を、フラスコ内のクロロホルム等の有機溶媒中で混合し、有機溶媒を留去した後、真空乾燥することによりフラスコ内壁に薄膜を形成させる。次に前記フラスコ内に薬物を加え、激しくかくはんすることにより、リポソーム分散液を得る。得られたリポソーム分散液を遠心分離し、上清をデカンテーションして封入されなかった薬物を除去する。更に、親水性高分子脂質誘導体溶液を加えて加温することにより、本発明のリポソームが得られる。なお、親水性高分子脂質誘導体溶液を膜構成成分の混合時に加えることによっても、本発明のリポソームが得られる。親水性高分子脂質誘導体溶液の添加方法は、いずれでも特に問題はないが、膜構成成分の混合時に添加する方法ではリポソーム内部にも親水性高分子が入ることとなり、実質的な表面修飾率の低下と内封容積の低下を招く場合がある。
また、上記の各構成成分を混合し、高圧吐出型乳化機により高圧吐出させることにより本発明のリポソームを得ることもできる。
【0059】
本発明のリポソームは、プロテオグリカンを産生する組織および/または臓器、特に傷害されて炎症を起こした腎糸球体に特異的に集積する。本発明のリポソームの正常な組織および/または臓器への集積量に対する傷害された組織および/または臓器への集積量の割合は、投与後ある一定時間経過した時点で比較した場合、約2〜10倍である。従って、本発明のリポソームを用いれば、薬物を傷害されたプロテオグリカン過剰産生組織および/または臓器、特に傷害された腎糸球体に効率的に送達し、薬物を持続的に作用させることができる。また、薬物として副作用の大きい薬物を用いた場合でも、その副作用を最小限に抑えることができるので、例えば、副腎皮質ステロイドおよび/またはその誘導体を用いた場合は、IgA腎症等の糸球体腎炎に対して、好適に用いることができる。
【0060】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
1.各種リポソームの調製
(調製例1)3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩およびポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体(PEG-PE)を膜構成成分として含有するリポソームの調製
下記3種類の膜構成成分をそれぞれクロロホルム溶液として、容積50mlのナス型フラスコに加え、混合した。
・フォスファチジルコリン(濃度100mM):3.0mL
・コレステロール(濃度100mM):2.54mL
・下記式で表される3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩(100mM):4.6mL
【0061】
【化10】
クロロホルムを留去した後、一晩真空乾燥することによりフラスコ内壁に脂質薄膜を形成した。次いで、150mM塩化ナトリウム溶液10mLをフラスコ内に加え、バス型ソニケーターで処理することにより、リポソーム(MLV)分散液を得た。これを孔径0.4μmのポリカーボネートフィルムを用いて圧送し、次いで0.1μmのポリカーボネートフィルムを用いて圧送することによって整粒を行った。このリポソーム分散液に、下記式で示されるポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体を生理食塩水にて溶解した溶液(濃度0.0125、0.025 、0.05、0.1 、0.2 、および0.4W/V%)を等容量加えた後60℃で30分加温することによって、表面が親水性高分子脂質誘導体にて修飾されているPEG-PE誘導体量の異なるリポソーム分散液をそれぞれ6種類得た。
【0062】
【化11】
得られたリポソーム100μLをとり、150mM塩化ナトリウム水溶液3mLに分散させ、Malvern 社製粒度分布計Zetamaster-Sにて粒子径を測定したところ、平均粒子径は127.1〜132.5nm、主要粒度範囲は90〜200nmであった。
また、フォスファチジルコリン含量をコリンオキシダーゼ法にて、コレステロール含量をコレステロールオキシダーゼ・フェノール法にて、さらに3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩含量を液体クロマトグラフ法にて測定したところ、3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩含量は他の脂質に対して8.7mol%であった。
また、得られたリポソーム分散液を 100,000gで超遠心し、上清をデカンテーションにて分離した。この上清についてピクリン酸試液発色法にてポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体(PEG-PE)含量を求め、添加量からこの値を差し引くことによりPEG-PE誘導体の修飾率を求めた。得られたリポソームのPEG-PE誘導体修飾率はそれぞれ0.11、0.23、0.45、0.91、1.8及び3.8mol%であった。
【0063】
(調製例2)N,N−ジオクタデシル−2−(ピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミドおよびポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体を膜構成成分として含有するリポソームの調製
下記3種類の膜構成成分をそれぞれクロロホルム溶液として、容積50mlのナス型フラスコに加え、混合した。
・フォスファチジルコリン(濃度100mM):3.0mL
・コレステロール(濃度100mM):2.54mL
・下記式で表されるN,N−ジオクタデシル−2−(ピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミド(10mM):4.6mL
【0064】
【化12】
以下、調製例1と同様の方法により、表記のリポソーム分散液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に測定したところ、平均粒子径は112.4〜127.8nm、主要粒度範囲は90〜200nm、N,N−ジオクタデシル−2−(ピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミド含量は他の脂質に対して8.7mol%、PEG-PE誘導体修飾率はそれぞれ0.11、0.23、0.45、0.91、1.8及び3.8mol%であった。
【0065】
(調製例3)N’−ペンタデシルジエチレントリアミンおよびポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体を膜構成成分として含有するリポソームの調製
下記3種類の膜構成成分をそれぞれクロロホルム溶液として、容積50mlのナス型フラスコに加え、混合した。
・フォスファチジルコリン(濃度100mM):3.0mL
・コレステロール(濃度100mM):2.54mL
・下記式で表されるN’−ペンタデシルジエチレントリアミン(10mM):4.6mL
【0066】
【化13】
以下、調製例1と同様の方法により、表記のリポソーム分散液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に測定したところ、平均粒子径は111.7〜125.8nm、主要粒度範囲は90〜200nm、N’−ペンタデシルジエチレントリアミン含量は他の脂質に対して8.7mol%、PEG-PE誘導体修飾率はそれぞれ0.11、0.23、0.45、0.91、1.8及び3.8mol%であった。
【0067】
(調製例4)グルカミンパルミテートおよびポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体を膜構成成分として含有するリポソームの調製
下記3種類の膜構成成分をそれぞれクロロホルム溶液として、容積50mlのナス型フラスコに加え、混合した。
・フォスファチジルコリン(濃度100mM):3.0mL
・コレステロール(濃度100mM):2.54mL
・下記式で表されるグルカミンパルミテート(10mM):4.6mL
【0068】
【化14】
以下、調製例1と同様の方法により、表記のリポソーム分散液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に測定したところ、平均粒子径は112.5〜124.5nm、主要粒度範囲は90〜200nm、グルカミンパルミテート含量は他の脂質に対して8.7mol%、PEG-PE誘導体修飾率はそれぞれ0.11、0.23、0.45、0.91、1.8及び3.8mol%であった。
【0069】
(調製例5)1、2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウムプロパンおよびポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体を膜構成成分として含有するリポソームの調製
下記3種類の膜構成成分をそれぞれクロロホルム溶液として、容積50mlのナス型フラスコに加え、混合した。
・フォスファチジルコリン(濃度100mM):3.0mL
・コレステロール(濃度100mM):2.54mL
・下記式で表される1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(10mM):4.6mL
【0070】
【化15】
以下、調製例1と同様の方法により、表記のリポソーム分散液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に測定したところ、平均粒子径は113.4〜130.1nm、主要粒度範囲は90〜200nm、1、2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン含量は他の脂質に対して8.7mol%、PEG-PE誘導体修飾率はそれぞれ0.11、0.23、0.45、0.91、1.8及び3.8mol%であった。
【0071】
(調製例6)1,2−ジパルミトイル−3−ジメチルアンモニウムプロパンおよびポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体を膜構成成分として含有するリポソームの調製
下記3種類の膜構成成分をそれぞれクロロホルム溶液として、容積50mlのナス型フラスコに加え、混合した。
・フォスファチジルコリン(濃度100mM):3.0mL
・コレステロール(濃度100mM):2.54mL
・下記式で表される1、2−ジパルミトイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(10mM):4.6mL
【0072】
【化16】
以下、調製例1と同様の方法により、表記のリポソーム分散液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に測定したところ、平均粒子径は113.4〜130.1nm、主要粒度範囲は90〜200nm、1,2−ジパルミトイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン含量は他の脂質に対して8.7mol%、PEG-PE誘導体修飾率はそれぞれ0.11、0.23、0.45、0.91、1.8及び3.8mol%であった。
【0073】
(調製例7)中性リポソーム製剤の調製
下記の2種類の膜構成成分をそれぞれクロロホルム溶液として、容積50mlのナス型フラスコに加え、混合した。
・フォスファチジルコリン(濃度100mM):3.48mL
・コレステロール(濃度100mM):2.54mL
以下、調製例1と同様の方法により、表記のリポソーム分散液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に測定したところ、平均粒子径は111.4〜126.5nm、主要粒度範囲は90〜200nm、PEG-PE誘導体修飾率はそれぞれ0.11、0.23、0.45、0.91、1.8及び3.8mol%であった。
【0074】
(調製例8)3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩およびポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体を膜構成成分として含有するリポソームの調製
下記3種類の膜構成成分をそれぞれクロロホルム溶液として、容積50mlのナス型フラスコに加え、混合した。
・フォスファチジルコリン(濃度100mM):3.12mL
・コレステロール(濃度100mM):2.66mL
・3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩(10mM):2.3mL
以下、調製例1と同様の方法により、表記のリポソーム分散液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に測定したところ、平均粒子径は124.5〜132.4nm、主要粒度範囲は90〜200nm、3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩含量は他の脂質に対して4.2mol%、PEG-PE誘導体修飾率はそれぞれ0.11、0.23、0.45、0.91、1.8及び3.8mol%であった。
【0075】
(調製例9)3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩およびポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体を膜構成成分として含有するリポソームの調製
下記3種類の膜構成成分をそれぞれクロロホルム溶液として、容積50mlのナス型フラスコに加え、混合した。
・フォスファチジルコリン(濃度100mM):2.76mL
・コレステロール(濃度100mM):2.36mL
・3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩(100mM):8.63mL
以下、調製例1と同様の方法により、表記のリポソーム分散液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に測定したところ、平均粒子径は113.3〜123.2nm、主要粒度範囲は90〜200nm、3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩含量は他の脂質に対して17.6mol%、PEG-PE誘導体修飾率はそれぞれ0.11、0.23、0.45、0.91、1.8及び3.8mol%であった。
【0076】
(調製例10)3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩およびポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体を膜構成成分として含有するリポソームの調製
下記3種類の膜構成成分をそれぞれクロロホルム溶液として、容積50mlのナス型フラスコに加え、混合した。
・フォスファチジルコリン(濃度100mM):2.28mL
・コレステロール(濃度100mM):1.94mL
・3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩(100mM):1.73mL
以下、調製例1と同様の方法により、表記のリポソーム分散液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に測定したところ、平均粒子径は125.3〜133.3nm、主要粒度範囲は90〜200nm、3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩含量は他の脂質に対して42.9mol%、PEG-PE誘導体修飾率はそれぞれ0.11、0.23、0.91、1.8及び3.8mol%であった。
【0077】
(調製例11)1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウムプロパンおよびポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体を膜構成成分として含有するリポソームの調製
下記3種類の膜構成成分をそれぞれクロロホルム溶液として、容積0.150mlのナス型フラスコに加え、混合した。
・フォスファチジルコリン(濃度100mM):3.24mL
・コレステロール(濃度100mM):2.75mL
・1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(10mM):0.29mL
以下、調製例1と同様の方法により、表記のリポソーム分散液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に測定したところ、平均粒子径は115.4〜126.3nm、主要粒度範囲は90〜200nm、1,2−ジパルミトイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン含量は他の脂質に対して0.5mol%、PEG-PE誘導体修飾率はそれぞれ0.11、0.23、0.91、1.8及び3.8mol%であった。
【0078】
(調製例12)1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウムプロパンおよびポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体を膜構成成分として含有するリポソームの調製
下記3種類の膜構成成分をそれぞれクロロホルム溶液として、容積0.150mlのナス型フラスコに加え、混合した。
・フォスファチジルコリン(濃度100mM):3.06mL
・コレステロール(濃度100mM):2.66mL
・1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(10mM):2.88mL
以下、調製例1と同様の方法により、表記のリポソーム分散液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に測定したところ、平均粒子径は114.5〜128.1nm、主要粒度範囲は90〜200nm、1,2−ジパルミトイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン含量は他の脂質に対して5.3mol%、PEG-PE誘導体修飾率はそれぞれ0.11、0.23、0.91、1.8及び3.8mol%であった。
【0079】
(調製例13)N’,N”−ジペンタデシルトリエチルテトラミンおよびポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体を膜構成成分として含有するリポソームの調製
下記3種類の膜構成成分をそれぞれクロロホルム溶液として、容積0.150mlのナス型フラスコに加え、混合した。
・フォスファチジルコリン(濃度100mM):3.24mL
・コレステロール(濃度100mM):2.75mL
・下記式で表されるN’,N”−ジペンタデシルトリエチルテトラミン(10mM):0.29mL
【0080】
【化17】
以下、調製例1と同様の方法により、表記のリポソーム分散液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に測定したところ、平均粒子径は111.4〜123.1nm、主要粒度範囲は90〜200nm、N’,N”−ジペンタデシルトリエチルテトラミン含量は他の脂質に対して0.5mol%、PEG-PE誘導体修飾率はそれぞれ0.11、0.23、0.91、1.8及び3.8mol%であった。
【0081】
(調製例14)N’,N”−ジペンタデシルトリエチルテトラミンおよびポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体を膜構成成分として含有するリポソームの調製
下記3種類の膜構成成分をそれぞれクロロホルム溶液として、容積0.150mlのナス型フラスコに加え、混合した。
・フォスファチジルコリン(濃度100mM):3.06mL
・コレステロール(濃度100mM):2.66mL
・N’,N”−ジペンタデシルトリエチルテトラミン(10mM):2.88mL
以下、調製例1と同様の方法により、表記のリポソーム分散液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に測定したところ、平均粒子径は122.5〜130.5nm、主要粒度範囲は90〜200nm、N’,N”−ジペンタデシルトリエチルテトラミン含量は他の脂質に対して5.3mol%、PEG修飾率はそれぞれ0.11、0.23、0.91、1.8及び3.8mol%であった。
【0082】
(調製例15)3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジンおよびポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体を膜構成成分として含有し、かつリン酸プレドニゾロンナトリウムを内封するリポソームの調製
下記4種類の膜構成成分をそれぞれクロロホルム溶液として、容積0.150mlのナス型フラスコに加え、混合した。
・フォスファチジルコリン(濃度100mM):4.2mL
・コレステロール(濃度100mM):1.20mL
・3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩(10mM):5.75mL
・ポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体(1 mM):12mL
クロロホルムを留去した後、一晩真空乾燥することによりフラスコ内壁に脂質薄膜を形成した。次いで、140mMリン酸プレドニゾロンナトリウム・10mM塩化ナトリウム水溶液10mLをフラスコ内に加え、バス型ソニケーターで処理することにより、リポソーム(MLV)分散液を得た。これを孔径0.4μmのポリカーボネートフィルムを用いて圧送し、次いで0.1μmのポリカーボネートフィルムを用いて圧送することによって整粒を行い、標記のリポソーム分散液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に測定したところ、平均粒子径は133.1nm、主要粒度範囲は90〜200nmであった。
【0083】
(比較例1)
調整例15における140mMリン酸プレドニゾロンナトリウム・10mM塩化ナトリウム水溶液の代わりに生理食塩水を用いた他は調整例15と同様に操作して作製したリポソーム。平均粒子径は103.4nm、主要粒度範囲は90〜200nmであった。
【0084】
(調製例16)平均粒子径が200nm超となるリポソームの調製
整粒を孔径0.4μmのポリカーボネートフィルムのみを用い、孔径0.1μmのポリカーボネートフィルムを用いなかった以外は調製例1と同様の方法により、標記のリポソーム液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に粒子径を測定したところ、平均粒子径は273nm、主要粒度範囲は180〜350nmであった。
【0085】
(調製例17)平均粒子径が90nm未満となるリポソームの調製
整粒を孔径0.4μmのポリカーボネートフィルム、孔径0.1μmのポリカーボネートフィルムを用いた後、さらに孔径0.05μmのポリカーボネートフィルムを用いて行った以外は調製例1と同様の方法により、標記のリポソーム液を得た。
得られたリポソームを調製例1と同様に粒子径を測定したところ、平均粒子径は79.6nm、主要粒度範囲は40〜90nmであった。
【0086】
2.各種リポソームの性能の試験例
得られた各種リポソームの性能を試験した。
(試験例1)プロテオグリカン産生細胞との親和性(1)
この試験の目的は、生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基化合物による表面修飾がプロテオグリカン産生細胞との接着・取り込み性に及ぼす影響、さらにそれに際して親水性高分子脂質誘導体が及ぼす影響を知ることである。
<方法>
ラットメサンギウム細胞を12穴マイクロプレートにて培養し、細胞数として4×104 個/穴程度まで増殖させた。これに調製例1および調製例7に準じて調製されたローダミン−PEにてリポソーム膜を標識したローダミン標識リポソームを脂質量として50μg添加した。37℃で24時間インキュベートし、その後生理食塩水にて2回洗浄した。0.1%SDS溶液を加えて溶解し、蛍光強度を測定することにより細胞に接着・取り込まれたリポソーム量を算出した。
【0087】
<結果>
結果を図1に示した。
表面を生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基化合物によって修飾されたリポソームをポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体にて様々な濃度にて修飾した際、ポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体の修飾がない場合は実験中に凝集を起こした。また高濃度修飾では細胞への接着・取り込み量が低下した。また、表面を生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物を持たないリポソームではいずれにおいても細胞への接着・取り込みは起こらなかった。
即ち、安定にプロテオグリカン産生細胞への接着・取り込み性を確保するためには、表面を生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基化合物によって修飾されていることが必要であり、さらに安定的に取り込まれるためには親水性高分子脂質誘導体の修飾量は5mol%以下であることが必要である。
【0088】
(試験例2)プロテオグリカン産生細胞との親和性(2)
この試験の目的は、表面を生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物によって表面修飾されたリポソームの、プロテオグリカン産生細胞との接着性におけるプロテオグリカンの重要性を知ることである。
<方法>
ラットメサンギウム細胞を12穴マイクロプレートにて培養し、細胞数として4×104 個/穴程度まで増殖させた。その後、コンドロイチナーゼABCで酵素処理し、細胞表面のプロテオグリカンを除いた。
これに調製例1に準じて調製されたローダミン−PEにてリポソーム膜を標識したローダミン標識リポソームでポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体修飾率が0.45mol%のものを脂質量として50μg添加した。37℃で3時間インキュベートし、その後生理食塩水にて2回洗浄した。0.1%SDS溶液を加えて溶解し、蛍光強度を測定することにより細胞に接着・取り込まれたリポソーム量を算出した。
【0089】
<結果>
結果を図2に示した。
表面がプロテオグリカンに覆われている状態の細胞には、表面を生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物によって表面修飾されたリポソームは接着するが、コンドロイチナーゼABCによってプロテオグリカンからコンドロイチン硫酸を切り離した場合には処理された細胞への接着性は著しく低下した。
即ち、表面を生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物によって表面修飾されたリポソームはをその分子中のコンドロイチン硫酸などのGAGを介して細胞表面のプロテオグリカンと結合することにより、接着している。
【0090】
(試験例3)プロテオグリカン産生細胞との親和性(3)
この試験の目的は、表面を生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物の含量が、プロテオグリカン産生細胞との親和性に及ぼす影響を知ることである。
<方法>
ラットメサンギウム細胞を12穴マイクロプレートにて培養し、細胞数として4×104 個/穴程度まで増殖させた。これに調製例8、調製例1、調製例9および調製例10、調製例11〜調製例14に準じて調製されたローダミン−PEにてリポソーム膜を標識したローダミン標識リポソームを脂質量として50μg添加した。37℃で24時間インキュベートし、その後生理食塩水にて2回洗浄した。0.1%SDS溶液を加えて溶解し、蛍光強度を測定することにより細胞に接着・取り込まれたリポソーム量を算出した。
同様に、ヒト血管内皮細胞を12穴マイクロプレートにて培養し、細胞数として4×104 個/穴程度まで増殖させ、これに調製例8、調製例1、調製例9および調製例10、調製例11〜調製例14に準じて調製されたローダミン−PEにてリポソーム膜を標識したローダミン標識リポソームを脂質量として50μg添加した。その後はラットメサンギウム細胞の場合と同様に操作し、細胞に接着・取り込まれたリポソーム量を算出した。
【0091】
<結果>
結果を図3〜図6に示した。
細胞表面の生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物含量によって、細胞への接着性が異なる。
塩基性化合物含量が0.5mol%以下であると、ラットメサンギウム細胞やヒト血管内皮細胞への接着が全く起こらないが、1mol%以上となると、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンを多く産生するラットメサンギウム細胞への接着性が向上する(図3および図5)。また、塩基性化合物含量を上げていくとラットメサンギウム細胞への接着性が高まっていく。しかし、20mol%以上となると、ヘパラン硫酸プロテオグリカンを多く産生するヒト血管内皮細胞への接着も増加する(図4および図6)。また、メサンギウム細胞への接着性は塩基性化合物の種類によってその強さが異なり、概ね5mol%以上ではどの膜材でも接着性が確保されるが1〜5mol%の範囲でも膜材によってはメサンギウム細胞への接着性を示した。
即ち、カチオン化膜材含量は1mol%以上でプロテオグリカン産生細胞との接着性を有する。好ましくは5mol%以上である。また5〜15mol%の場合には、血管内皮細胞との結合がなく、病変部位における標的細胞の産生するプロテオグリカンに限定した接着性を示すリポソームを作製できることから、特に好ましい。
【0092】
(試験例4)各種リポソームと血清中安定性
この試験の目的は、リポソーム表面の生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物の含量が、血清中でのリポソームの安定性に及ぼす影響を知ることである。
<方法>
ラット血清100μLに、調製例8、調製例1、調製例9及び調製例10で得られたリポソームを生理食塩水にて総脂質として10mMに希釈した分散液100μLを加えて混合し、37℃1時間加温した。冷却後生理食塩水2mLを加えて希釈し、吸光度450nmにて濁度を測定した。
<結果>
結果を図7に示した。
生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物含量によって、血清中におけるリポソームの凝集性が異なる。
塩基性化合物が15mol%以下の場合には血清中での凝集性は全く問題ない。15〜20mol%の場合には、 PEG−PE誘導体−PE修飾率が0.5mol%以上の場合には凝集が防止される。また塩基性化合物が20mol%以上となると2mol%の PEG−PE誘導体−PEを加えても凝集し、安定性が損なわれる。
即ち、血液中でリポソームの凝集を防止し、安定性を確保するためには、塩基性化合物含量を20mol%以下とすることが最適である。
【0093】
(試験例5)各種リポソームのプロテオグリカンとの親和性
この試験の目的は、表面を生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物によって修飾されたリポソームとプロテオグリカンとの接着に際して親水性高分子脂質誘導体が及ぼす影響を知ることである。
<方法>
コンドロイチン硫酸Cを生理食塩水に溶解し、0.1mg/mLとなるよう調製した。この溶液0.5mLに、調製例1で得られた各リポソームを生理食塩水にて総脂質濃度10mMに希釈したもの0.5mLを加えて、37℃で1時間加温した。冷却後、吸光度550nmにて濁度を測定し、濁度とリポソームのポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体修飾率の相関から、コンドロイチン硫酸Cの接着に及ぼすポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体修飾率の影響を検討した。
<結果>
結果を図8に示した。
ポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体にて様々な濃度にて修飾した際、修飾濃度が低いほどプロテオグリカンの接着量が多かった。また、プロテオグリカンと接着できるのは、修飾量が5mol%以下の場合であった。
即ち、親水性高分子脂質誘導体にてリポソーム表面を修飾することにより、表面を生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物によって修飾されたリポソームのプロテオグリカンとの接着性を制御でき、それには5mol%以下が最適である。
【0094】
(試験例6)親水性高分子脂質誘導体修飾による血中での安定化
この試験の目的は、ポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体による修飾が血液中でのリポソームの安定性に及ぼす影響を知ることである。
<方法>
クエン酸採血されたヒト血液を3500回転で15分遠心し、ヒト血漿を得た。このヒト血漿1.95mLに、調製例4で得られたリポソーム0.05mLを加えて混合し、37℃1時間加温した。冷却後、吸光度550nmにて濁度を測定し、凝集したリポソームのポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体修飾率を算出した。
<結果>
結果を図9に示した。
ポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体にて様々な濃度にて修飾した際、低濃度の修飾範囲では凝集を起こし、その修飾範囲は0.2mol%以下であった。
即ち、血液中でリポソームの凝集を防止し、安定性を確保するためには、親水性高分子脂質誘導体の修飾率を0.2mol%以上とすることが最適である。
【0095】
(試験例7)腎臓への集積性の検討(1)
この試験の目的は、生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基化合物による表面修飾が傷害された腎臓に代表されるプロテオグリカン産生組織への集積性に及ぼす影響を知ることである。
<方法>
CD(SD)雄性ラットの尾静脈より抗Thy−1抗体溶液を静注することにより、抗Thy−1抗体腎炎ラットを作成した。抗Thy−1抗体投与後5日目に調製例1及び調製例7に準じて調製されたローダミン−PEにてリポソーム膜を標識したローダミン標識リポソームでポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体修飾率が0.45mol%のもの500μlを尾静脈より静注した。24時間後にラットの腎臓を摘出した。摘出した腎臓の未固定凍結切片を作成し、蛍光顕微鏡にてその分布状況を観察した。
比較のために、正常なCD(SD)雄性ラットについて上記と同様の方法で腎臓へのリポソームの分布状況を観察した。
<結果>
図10および図11に示した。図10および図11は、約400倍の蛍光顕微鏡写真をもとに作製した模式図である。図10は調製例1、図11は調製例7に準じたリポソームを用いた場合である。
生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物であるアミジノ基を有する化合物(3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩)を用いて調製したリポソーム(調製例1)と用いずに調製したリポソーム(調製例7)では、前者が炎症を起こした腎臓、特に糸球体へ特異的に集積していることが確認された。(図10中、白色に見えるのがローダミン標識リポソームである)。また図示してはいないが、調製例1のリポソームは正常な腎臓には集積しないことが確認された。
即ち表面が生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物により修飾されたリポソームは、傷害された腎臓特に傷害されて炎症を引き起こした糸球体に代表されるプロテオグリカンを過剰に産生する組織および/または臓器への集積性に優れている。
【0096】
(試験例8)腎臓への集積性の検討(2)
この試験の目的は、リポソームの平均粒子径が、傷害された腎臓に代表されるプロテオグリカン産生組織への集積性に及ぼす影響を知ることである。
<方法>
CD(SD)雄性ラットの尾静脈より抗Thy−1抗体溶液を静注することにより、抗Thy−1抗体腎炎ラットを作成した。抗Thy−1抗体投与後5日目に、調製例1、調製例16及び調製例17に準じて調製されたローダミン−PEにてリポソーム膜を標識したローダミン標識リポソームでポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体修飾率が0.45mol%のもの500μlをそれぞれ尾静脈より静注した。24時間後にラットの腎臓を摘出した。摘出した腎臓からローダミン−PEを抽出し、蛍光強度を測定することにより腎臓へのリポソームの分布量を算出した。
比較のために、正常なCD(SD)雄ラットについて上記と同様の方法で腎臓へのリポソームの分布量を算出した。
<結果>
図12に示すとおりであった。
平均粒子径が122.2nm、主要粒度範囲が90〜200nmであるリポソーム(調製例1)は、病態腎(傷害された腎臓)への集積性に優れることが確認された。平均粒子径が273nm、主要粒度範囲が180〜350nmであるリポソーム(調製例16)は、病態腎への集積量が調製例の2/3以下と少なく、正常腎への集積量が調製例1と同程度であり、また、平均粒子径が79.6nm主要粒度範囲が40〜90nmであるリポソーム(調製例17)は、病態腎への集積量が調製例1の約2/3と少なく、正常腎への集積量が調製例1の2倍程度と多いことが確認された。
即ち、正常な組織および/または臓器への集積を抑え、かつ、病態腎に代表されるプロテオグリカン過剰産生組織および/または臓器への選択的に集積させるためには、主要粒度範囲および平均粒径が90〜200nmとなるように制御することが最適である。
【0097】
(試験例9)腎臓への集積性の測定(3)
この試験の目的は、表面が生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物により修飾されているリポソームについて、塩基性化合物の種類が傷害された腎臓に代表されるプロテオグリカンを過剰に産生する組織および/または臓器への集積性に及ぼす影響を知ることである。
<方法>
CD(SD)雄性ラットの尾静脈より抗Thy−1抗体溶液を静注することにより、抗Thy−1抗体腎炎ラットを作成した。抗Thy−1抗体投与後5日目に、調製例1、調製例2および調製例3に準じて調製されたローダミン−PEにてリポソーム膜を標識したローダミン標識リポソームでポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体修飾率が0.45mol%のリポソーム500μlをそれぞれ尾静脈より静注した。24時間後にラットの腎臓を摘出した。摘出した腎臓からローダミン−PEを抽出し、蛍光強度を測定することにより腎臓へのリポソームの分布量を算出した。
比較のために、正常なCD(SD)雄性ラットについて上記と同様の方法で腎臓へのリポソーム分布量を算出した。
<結果>
図13に示した。
いずれの塩基化合物を有するリポソームでも、正常腎に比べて病態腎への集積性が向上し、表面が生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物により修飾されていることが、病態腎への積極的なターゲッティングに重要であることが確認された。また、塩基性化合物によってその集積性にも差があり、3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩(調製例1)またはN,N−ジオクタデシル−2−(ピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミド(調製例2)を用いた場合に特に優れた集積性を示すことが確認された。
【0098】
(試験例10)薬物を封入した本発明リポソームの薬理学的効果
この試験の目的は、上記試験例1〜試験例9で確認された本発明のリポソームにおいて、実際に薬理学的効果がどの程度発揮されるかを知ることである。
<方法>
CD(SD)雄性ラットの尾静脈より抗Thy−1抗体溶液を静注することにより、抗Thy−1抗体腎炎ラットを作成した。抗Thy−1抗体投与後5日目に、調製例15で得られたリポソーム分散液(リン酸プレドニゾロンナトリウムとして1mg)を静注した。抗Thy−1抗体投与後10日目に採尿し、総蛋白量を測定した。
比較のために、比較例1(薬物を内封しないリポソーム分散液)、あるいは、生理食塩水を上記と同様の方法で投与し、抗Thy−1抗体投与後10日目に採尿し、総蛋白量を測定した。
また、リポソーム化されていないリン酸プレドニゾロンナトリウム溶液(リン酸プレドニゾロンナトリウムとして1mg)を抗Thy−1抗体投与後5日目に1回のみ、あるいは、該溶液を抗Thy−1抗体投与後5日目から5回(1回/日で5日間)投与し、抗Thy−1抗体投与後10日目に採尿し、総蛋白量を測定した。
無処置の正常ラットからも採尿し、総蛋白量を測定した。
<結果>
結果を図14に示した。
図14中の記号は、▲1▼:リン酸プレドニゾロンナトリウム溶液1回投与群、▲2▼:リン酸プレドニゾロンナトリウム溶液5回投与群、▲3▼:薬物を含有しないリポソーム分散液投与群(比較例1)、▲4▼:生理食塩水投与群、である。
本発明の実施例のリポソームである調製例15のリポソームを投与した場合は、尿中への蛋白排泄を抑制する効果が顕著に見られた。その効果は本発明のリポソームの含有する量のリン酸プレドニゾロンナトリウムを5日間連続、すなわち総投与量として5倍量のリン酸プレドニゾロンナトリウムをリポソーム化せずに投与した場合と比べても、優れていた。
また、薬物を内封しないリポソームを投与した場合や、本発明のリポソームの含有する量と同量のリン酸プレドニゾロンナトリウムをリポソーム化せずに1回だけ投与した場合には、生理食塩水を投与した場合と比べて尿中蛋白排泄量がほとんど変わらず、効果は見られなかった。
即ち、本発明のリポソームは、1回のみの投与で、リポソーム化されていない薬物を連続投与した場合と同程度以上の薬理効果を発揮し得るものである。従って、本発明のリポソームを用いると、薬物の有効性を確保し、かつ、薬物の総投与量を低減できることが確認された。
【0099】
(試験例11)急性毒性
この試験の目的は、本発明のリポソームの毒性が、従来のものの毒性と比較してどの程度であるかを知ることである。そのために、薬物を内封していないこと以外は本発明のリポソーム、および、従来のリポソーム(同様に、薬物は内封していない)のそれぞれについて、ラットに対する致死毒性試験を行った。
<被験液の調製>
(1)3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩及びポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体を含有する本発明のリポソーム分散液
調製例1でポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体修飾率が0.45mol%である本発明のリポソームを限外ろ過膜を用いて濃縮し、さらに必要に応じて生理食塩水で希釈して被験液とした。
(2)従来のリポソーム分散液
調製例7でポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン誘導体修飾率が0.45mol%である本発明のリポソームを限外ろ過膜を用いて濃縮し、さらに必要に応じて生理食塩水で希釈して被験液とした。
<方法>
検疫した5週齢のマウスを1群5匹に区分し、尾静脈より上記の被験液を100mL/kg投与した。一方、溶媒対照群は、生理食塩水を100mL/kg投与した。
被験液投与後、7日間にわたって少なくとも1日1回、注意深く一般状態を観察して毒性徴候、死亡状況を記録した。また、7日後に剖検し、各臓器を摘出した。各臓器について病理切片を作成し観察を行った。
<結果>
薬物を内封していないこと以外は本発明と同様のリポソーム((1)のリポソーム分散液)については、従来のリポソーム((2)のリポソーム分散液)と同様に、観察期間中、死亡例を認めなかった。また、7日後の各臓器の病理観察においては、問題となるような病理所見は認められなかった。
即ち、本発明のリポソームは、極めて毒性が低く、安全性の高いものであることが確認された。
【0100】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明のリポソームは、従来のリポソームと比較して、傷害された腎臓、特に傷害により炎症を起こした糸球体に代表されるプロテオグリカンを過剰に産生する組織および/または臓器へのターゲッティング性が高く、また、安全性も高い。
従って、本発明のリポソームは、糸球体腎炎などの様に、病変部の組織および/または臓器においてプロテオグリカンの過剰産生を伴う疾患の診断及び治療という目的に対して非常に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物および親水性高分子脂質誘導体によって修飾されたリポソームにおけるプロテオグリカン産生細胞であるラットメサンギウム細胞との親和性の関係を表した図である。
【図2】 生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物および親水性高分子脂質誘導体によって修飾されたリポソームとプロテオグリカン産生細胞であるラットメサンギウムとの親和性におけるプロテオグリカンの関与を表した図である。
【図3】 リポソーム構成脂質中の生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物含量とラットメサンギウム細胞との親和性の関係を表した図である。
【図4】 リポソーム構成脂質中の生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物含量とヒト血管内皮細胞との親和性の関係を表した図である。
【図5】 リポソーム構成脂質中の生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物含量とラットメサンギウム細胞との親和性の関係を表した図である。
【図6】 リポソーム構成脂質中の生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物含量とヒト血管内皮細胞との親和性の関係を表した図である。
【図7】 リポソーム構成脂質中の生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物の含量と血清中でのリポソームの安定性の関係を表した図である。
【図8】 生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物によって修飾されたリポソームにおける親水性高分子脂質誘導体修飾とプロテオグリカンとの親和性の関係を表した図である。
【図9】 生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物によって修飾されたリポソームにおける親水性高分子脂質誘導体修飾量と血漿中安定性の関係を表した図である。
【図10】 生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物によって修飾されたリポソームが傷害された腎臓へ集積することを示す模式図である。
【図11】 表面が中性のリポソームが傷害された腎臓へ集積しないことを示す模式図である。
【図12】 リポソームの平均粒径と傷害された腎臓への集積性の関係を表した図である。
【図13】 リポソームの表面修飾に用いられる塩基性化合物の種類と傷害された腎臓への集積性の関係性を表した図である。
【図14】 本発明のリポソームの薬理学的効果を表した図である。
Claims (10)
- 薬物を内封するリポソームであって、その膜構成成分が、(1)3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン、その塩酸塩、N,N−ジオクタデシル−2−(ピペリジン−4−イル−オキシ)アセトアミド、N’−ペンタデシルジエチレントリアミン、1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン、1,2−ジパルミトイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン、およびN’,N”−ジペンタデシルトリエチルテトラミンからなる群から選択される化合物、(2)ポリエチレングリコールの脂質誘導体、および(3)リン脂質および/またはリン脂質の水素添加物からなり、これらの構成比が、(3)に対して(1)が1〜20mol%、また(1)と(3)の和に対して(2)が0.2〜5mol%であることを特徴とするリポソーム。
- 前記構成比が、(3)に対して(1)が5〜15mol%、また(1)と(3)の和に対して(2)が0.2〜5mol%である請求項1に記載のリポソーム。
- 前記ポリエチレングリコールの脂質誘導体が、ポリエチレングリコール鎖とジアシルグリセロールを1分子内に含む化合物である請求項1または2に記載のリポソーム。
- 前記ポリエチレングリコールの脂質誘導体の分子量が1000〜7000である請求項1〜3のいずれかに記載のリポソーム。
- 前記リポソームに内封されている薬物が、腎疾患の診断および/または治療を目的とする薬物である請求項1〜4のいずれかに記載のリポソーム。
- 前記腎疾患の診断および/または治療を目的とする薬物が、副腎皮質ステロイドおよび/またはその誘導体である請求項5に記載のリポソーム。
- 前記リポソームに内封されている薬物が、病変部の組織および/または臓器においてプロテオグリカンの産生を伴う疾患の、診断および/または治療を目的とする薬物である請求項1〜6のいずれかに記載のリポソーム。
- 前記リポソームの主要粒度範囲が90〜200nmである請求項1〜7のいずれかに記載のリポソーム。
- 安定化剤あるいは酸化防止剤をさらに含む請求項1〜8のいずれかに記載のリポソーム。
- 炎症腎の治療用薬剤の製造のための、請求項1または2のリポソームの使用。
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