JPH11335351A - N−カルボベンゾキシ−s−フェニルシステインの精製方法 - Google Patents

N−カルボベンゾキシ−s−フェニルシステインの精製方法

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JPH11335351A
JPH11335351A JP13851598A JP13851598A JPH11335351A JP H11335351 A JPH11335351 A JP H11335351A JP 13851598 A JP13851598 A JP 13851598A JP 13851598 A JP13851598 A JP 13851598A JP H11335351 A JPH11335351 A JP H11335351A
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JP
Japan
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phenylcysteine
carbobenzoxy
benzyl
purifying
acid
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Application number
JP13851598A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Murao
博 村尾
Yasuyoshi Ueda
恭義 上田
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡便かつ効率的に、N−ベンジル−S−フェ
ニルシステインとN−カルボベンゾキシ−S−フェニル
システインとの混合物から、N−カルボベンゾキシ−S
−フェニルシステインを取得する方法を提供する。 【解決手段】 N−ベンジル−S−フェニルシステイン
とN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインとの
混合物から、N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシス
テインを取得する方法であって、N−カルボベンゾキシ
−S−フェニルシステインが塩基との塩として存在し、
N−ベンジル−S−フェニルシステインが遊離の酸とし
て存在する状態とする工程(a1)、N−ベンジル−S
−フェニルシステインを分離する工程(b1)、更に酸
性化してN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイ
ンを遊離の酸とする工程(c1)、及び、N−カルボベ
ンゾキシ−S−フェニルシステインを分離取得する工程
(d1)からなることを特徴とするN−カルボベンゾキ
シ−S−フェニルシステインの精製方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、下記式(1)で表
されるN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイン
の精製方法に関する。
【0002】
【化1】
【0003】式中、*は、不斉炭素の位置を表す。N−
カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイン、特に、L
体であるN−カルボベンゾキシ−S−フェニル−L−シ
ステインは、WO96/23756号公報、EP604
185A1号公報等に記載されているように、HIV−
プロテアーゼ阻害剤の中間体の原料として重要な化合物
である。
【0004】
【従来の技術】N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシ
ステインの代表的合成方法は、既に特開平10−299
73号公報に記載されている。この方法は、アルカリ溶
液中でS−フェニルシステインとカルボベンゾキシクロ
ライドとを反応させることにより、N−カルボベンゾキ
シ−S−フェニルシステインのアルカリ溶液を得るもの
である。
【0005】この方法においては、濾過性の良いN−カ
ルボベンゾキシ−S−フェニルシステイン結晶を単離す
る方法として、N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシ
ステインのアルカリ溶液中に、撹拌下、酸をN−カルボ
ベンゾキシ−S−フェニルシステインに対して1.5m
ol/Hr以下の速度で添加する方法が良いと記載され
ている。
【0006】また、この方法においては、濾過性の良好
なN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイン結晶
スラリーを得るためには、pH5.0〜6.0に到達し
た時点で結晶の熟成を起こさせた後、アルカリ溶液中に
溶存するN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイ
ンに対して等モル量の酸を40分以上かけて添加するの
がより好ましいことが記載されている。
【0007】なお、同公報の実施例の記載によれば、共
存する塩基により消費(中和)される酸分を除くと、酸
添加による晶析・結晶化(スラリー化)において実質的
に有効な酸使用量は、N−カルボベンゾキシ−S−フェ
ニルシステインに対して2倍モルに満たず、この方法に
よれば、晶析・結晶化(スラリー化)時のpHは1付近
であるか又は0よりも高いことが判った。
【0008】ところで、本発明者らの検討により、この
方法により得られるN−カルボベンゾキシ−S−フェニ
ルシステインには、不純物として、下記式(2)で表さ
れるN−ベンジル−S−フェニルシステインが含まれる
ことが判った。
【0009】
【化2】
【0010】式中、*は、不斉炭素の位置を表す。この
不純物の副生は、反応試剤であるカルボベンゾキシハラ
イド及び/又は合成プロセス(N−カルボベンゾキシ化
反応)に起因している。
【0011】N−ベンジル−S−フェニルシステイン
は、N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインの
カルボベンゾキシ基がベンジル基に置き換わっただけの
構造を有する構造類似不純物である。周知のように、構
造類似不純物は一般にその除去が難しく、最終製品まで
同伴しやすい。最終製品が医薬品である場合は、極微量
の構造類似不純物の混在が極めて重大な問題を引き起こ
すことがある。
【0012】そこで、医薬品原料であるN−カルボベン
ゾキシ−S−フェニルシステインについても高純度のも
のを得ることが必須であり、そのためには、N−ベンジ
ル−S−フェニルシステインを完全に除去する必要があ
る。既存の方法においては、共存するN−ベンジル−S
−フェニルシステインの有効な除去方法は開示されてい
なかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記に鑑
み、簡便かつ効率的に、N−ベンジル−S−フェニルシ
ステインとN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステ
インとの混合物から、N−カルボベンゾキシ−S−フェ
ニルシステインを取得する方法を提供することを目的と
するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の第一は、N−ベ
ンジル−S−フェニルシステインとN−カルボベンゾキ
シ−S−フェニルシステインとの混合物から、N−カル
ボベンゾキシ−S−フェニルシステインを取得する方法
であって、N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステ
インが塩基との塩として存在し、N−ベンジル−S−フ
ェニルシステインが遊離の酸として存在する状態とする
工程(a1)、N−ベンジル−S−フェニルシステイン
を分離する工程(b1)、更に酸性化してN−カルボベ
ンゾキシ−S−フェニルシステインを遊離の酸とする工
程(c1)、及び、N−カルボベンゾキシ−S−フェニ
ルシステインを分離取得する工程(d1)からなること
を特徴とするN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシス
テインの精製方法である。
【0015】また、本発明の第二は、N−ベンジル−S
−フェニルシステインとN−カルボベンゾキシ−S−フ
ェニルシステインとの混合物から、N−カルボベンゾキ
シ−S−フェニルシステインを取得する方法であって、
N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインが遊離
の酸として存在し、N−ベンジル−S−フェニルシステ
インが酸との塩として存在する状態とする工程(a
2)、及び、遊離のN−カルボベンゾキシ−S−フェニ
ルシステインを分離する工程(b2)からなることを特
徴とするN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイ
ンの精製方法である。本明細書において、N−カルボベ
ンゾキシ−S−フェニルシステイン、及び、N−ベンジ
ル−S−フェニルシステインに関して使用する「遊離」
又は「遊離の酸」なる用語は、N−カルボベンゾキシ−
S−フェニルシステイン、及び、N−ベンジル−S−フ
ェニルシステインが、他の塩基性化合物と結合していな
い状態を意味するものとする。以下に本発明を詳述す
る。
【0016】本発明は、一般に、水性媒体中で実施する
のが好ましい。この場合、本発明に係るN−ベンジル−
S−フェニルシステインとN−カルボベンゾキシ−S−
フェニルシステインとの混合物は、N−ベンジル−S−
フェニルシステインとN−カルボベンゾキシ−S−フェ
ニルシステインとが共存する水性媒体となる。水性媒体
には、水に、悪影響のない範囲内で他の溶剤等を含ませ
ることができる。
【0017】本発明の第一においては、まず、上記混合
物中において、N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシ
ステインが塩基との塩として存在し、N−ベンジル−S
−フェニルシステインが遊離の酸として存在する状態と
する工程(a1)を実施する。
【0018】上記塩基としては特に限定されず、例え
ば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化
物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、ア
ンモニア等を挙げることができるが、好ましくはアルカ
リ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、
水酸化リチウム等)であり、一般的には水酸化ナトリウ
ムである。
【0019】上記状態には、例えば、水性媒体中pHを
5〜6に調整して行うのが好ましい。pHが5未満であ
ると、N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイン
と塩基との塩から、N−カルボベンゾキシ−S−フェニ
ルシステインへの変換が高まり、N−カルボベンゾキシ
−S−フェニルシステインはN−ベンジル−S−フェニ
ルシステインとともに、難溶化(不溶化)する。pHが
6を超えると、N−ベンジル−S−フェニルシステイン
はその塩基との塩への変換が高まり、N−ベンジル−S
−フェニルシステインと塩基との塩は、N−カルボベン
ゾキシ−S−フェニルシステインと塩基との塩ととも
に、可溶化する。N−ベンジル−S−フェニルシステイ
ンを効率的に難溶化(不溶化)し、N−カルボベンゾキ
シ−S−フェニルシステインを完全に可溶化している
か、又は、そのほとんどが可溶化している状態とするた
めには、特に、pH5〜6で操作するのが好ましい。
【0020】pH5〜6への調整は、N−ベンジル−S
−フェニルシステインとN−カルボベンゾキシ−S−フ
ェニルシステインとが共存する水性媒体が、上記pHよ
り高い、例えば、塩基性を示す場合には、酸で酸性化す
ることによって行うことができ、上記水性媒体が、上記
pHより低い場合には、塩基を加えることによっても行
うことができる。
【0021】本発明において、酸性化等に使用する酸と
しては、例えば、強酸を挙げることができ、より具体的
には、例えば、塩化水素又はその溶液(例えば、塩
酸)、硫酸、硝酸等の鉱酸を挙げることができる。好ま
しくは、塩化水素又はその溶液(例えば、塩酸)や硫酸
であり、一般的には塩酸である。使用する酸は必ずしも
これらに限定されない。
【0022】本発明の第一においては、次いで、N−ベ
ンジル−S−フェニルシステインを分離する工程(b
1)を実施する。上記分離の方法としては、例えば、濾
過分離、遠心分離、有機溶剤を用いる抽出分離等を挙げ
ることができるが、好ましくは、濾過分離、遠心分離で
ある。
【0023】上記のようにしてN−ベンジル−S−フェ
ニルシステインを分離して除いた後、本発明の第一にお
いては、次いで、更に酸性化してN−カルボベンゾキシ
−S−フェニルシステインを遊離の酸とする工程(c
1)を実施する。
【0024】上記酸性化の目安はpH約5以下である。
N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインのロス
を最少限とするためには、pH約4以下で行うのがより
好ましく、更に、N−ベンジル−S−フェニルシステイ
ンの除去を最大限とするためには、後述するように、よ
り低いpH(例えば、pH0より低いpH)で行うこと
ができる。
【0025】本発明の第一においては、上記酸性化によ
るN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインの形
成後、これの分離取得工程(d1)を実施する。上記分
離方法としては特に限定されず、例えば、濾過分離、遠
心分離、有機溶剤を用いる抽出分離等を挙げることがで
きるが、好ましくは、濾過分離、遠心分離である。有機
溶剤を用いる抽出分離の場合、上記(c1)工程、及
び、上記(d1)工程において、水性媒体中、難溶化
(不溶化)したN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシ
ステインは、例えば、トルエン、酢酸エチル等の水と混
和しないか又は水と混和しにくい有機溶剤に可溶である
ので、(c1)工程、及び/又は、(d1)工程におい
て、上記有機溶剤を共存させることにより、有機溶剤相
中に、N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイン
を分配、抽出分離することができる。
【0026】本発明の第二においては、まず、上記混合
物中において、N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシ
ステインが遊離の酸として存在し、N−ベンジル−S−
フェニルシステインが酸との塩として存在する状態とす
る工程(a2)を実施する。
【0027】上記状態にするには、極めて強酸性の条件
で、例えば、水性媒体中のpHが0より低いpHに調整
することによって行うのが好ましい。pHが上記より高
い場合には、N−ベンジル−S−フェニルシステインが
酸との塩から、N−ベンジル−S−フェニルシステイン
への変換が高まり、N−ベンジル−S−フェニルシステ
インはN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイン
とともに難溶化(不溶化)する。N−ベンジル−S−フ
ェニルシステインを効率的に可溶化(易溶化)し、N−
カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインは、完全に
難溶化(不溶化)しているか、又は、そのほとんどが難
溶化(不溶化)している状態とするためには、特に、上
記pHで操作することが好ましい。
【0028】この場合、上記共存状態にするため使用す
る酸量(共存する塩基により消費(中和)される酸分を
除く実質的な酸使用量)は、各種条件にもよるが、N−
カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインに対して、
およそ5倍モル以上である。N−ベンジル−S−フェニ
ルシステインが多くなれば、酸量をより高める等して、
上記の好ましいpHに調整するのが好ましい。
【0029】本発明の第二においては、次いで、遊離の
N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインを分離
する工程(b2)を実施する。上記分離方法としては、
例えば、濾過分離、遠心分離、有機溶剤を用いる抽出分
離等を挙げることができるが、好ましくは、濾過分離、
遠心分離である。有機溶剤を用いる抽出分離の場合、上
記(a2)工程、及び、上記(b2)工程において、水
性媒体中、難溶化(不溶化)したN−カルボベンゾキシ
−S−フェニルシステインは、例えば、トルエン、酢酸
エチル等の水と混和しないか又は混和しにくい有機溶剤
に可溶であるので、(a2)工程、及び/又は、(b
2)工程において、上記有機溶剤を共存させることによ
り、有機溶剤相中に、N−カルボベンゾキシ−S−フェ
ニルシステインを分配、抽出分離することができる。
【0030】本発明は、普通、室温付近又はそれ以下で
実施することができる。実施温度は特に制限されない
が、N−ベンジル−S−フェニルシステインの除去率の
向上、N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイン
の収量の増大や結晶性状の改善等のために、必要に応
じ、加温、冷却することができる。
【0031】本発明において使用する上記分離方法とし
て、濾過分離、遠心分離を採用することにより、N−ベ
ンジル−S−フェニルシステインの除去と、N−カルボ
ベンゾキシ−S−フェニルシステインの取得とを、有機
溶媒を用いることなく、簡便かつ効率的に実施できる点
に、本発明は特に大きな利点がある。
【0032】本発明は、N−ベンジル−S−フェニルシ
ステインとN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステ
インとの混合物からN−カルボベンゾキシ−S−フェニ
ルシステインを取得する場合、いったんそのようにして
取得したN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイ
ンに共存する微量のN−ベンジル−S−フェニルシステ
インを更に除去する場合等に適用することができる。
【0033】本発明のN−ベンジル−S−フェニルシス
テインとN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイ
ンとの混合物は、例えば、カルボベンゾキシハライドを
用いるS−フェニルシステインのN−カルボベンゾキシ
化を含む製造方法で得られる。この場合には、塩基性溶
液中でのS−フェニルシステインのカルボベンゾキシハ
ライドによるN−カルボベンゾキシ化によって生成する
N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインを、N
−ベンジル−S−フェニルシステインを除去して精製取
得することとなる。また、クロロアラニンをカルボベン
ゾキシハライドでN−カルボベンゾキシ−クロロアラニ
ンとし、次いでクロロ基をフェニルチオ基に置換するこ
とによって得ることもできる。
【0034】言うまでもなく、本発明は、L体、D体又
はDL体等の光学異性を問わず適用することができる
し、本発明の第一と本発明の第二とを組み合わせて実施
することもできる。
【0035】本発明においては、pHが重要な要因であ
るが、一般に市販されているpH測定計、通常ガラス電
極法によるpH測定計を用いることにより、好適にpH
を測定することができる。上記pH測定計としては、例
えば、堀場製作所社製ハンディpHメーターD−13型
(ガラス電極法)、ハンディpHメーターD−21S型
(ガラス電極法)等を挙げることができる。
【0036】
【実施例】以下に実施例、比較例、参考例を挙げて本発
明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定され
るものではない。なお、以下の実施例等において使用し
たN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインは、
すべてL体であった。また、以下の実施例等では、堀場
製作所社製ハンディpHメーターD−13型(ガラス電
極法)を、JIS Z 8802 pH測定方法で定め
られたフタル酸塩標準液、中性リン酸塩標準液及びホウ
酸塩標準液を用いた3点校正を行ったうえで用いた。ま
た、以下の実施例等で行ったN−カルボベンゾキシ−S
−フェニルシステイン及びN−ベンジル−S−フェニル
システインの定量は、UV検出器を備えたHPLCを用
いて行った。
【0037】実施例1 純度が98.4重量%である、N−カルボベンゾキシ−
S−フェニルシステイン粗結晶20.04g(純分量1
9.72g、N−ベンジル−S−フェニルシステイン
0.5重量%含有)に、水170ml、30重量%水酸
化ナトリウム水溶液8.04g(N−カルボベンゾキシ
−S−フェニルシステインに対して1.0倍モル)を加
えた後、約25℃で1時間攪拌して溶解させ、N−カル
ボベンゾキシ−S−フェニルシステイン濃度10.1重
量%の溶液195.25gを得た。この溶液のpHは1
0.7であった。次いで、約25℃、強撹拌下、35重
量%塩酸560mg(N−カルボベンゾキシ−S−フェ
ニルシステインに対して0.1倍モル)を5分かけて滴
下し、1時間攪拌を継続したところ、結晶が析出した。
この溶液のpHは5.8であった。析出した結晶を濾別
して、濾液194.07gを得た。この濾液は、N−カ
ルボベンゾキシ−S−フェニルシステイン19.11g
(収率97%)を含有し、N−ベンジル−S−フェニル
システイン含量は0.2重量%であった。
【0038】更に、得られた濾液189.97g(N−
カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイン18.71
g含有)に、約25℃、強撹拌下、35重量%塩酸1
7.10g(N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシス
テインに対して2.9倍モル、有効酸量2.0倍モル)
を1時間かけて添加した後、1時間攪拌を継続して、充
分に晶析を行った。この溶液のpHは0.2であった。
続いて、析出した結晶を濾過し、減圧乾燥(1〜30m
mHg、20〜40℃、10時間)して、結晶18.8
1gを得た。この結晶は、N−カルボベンゾキシ−S−
フェニルシステイン18.66g(収率100%)を含
有し、純度99.2重量%、N−ベンジル−S−フェニ
ルシステイン含量0.2重量%であった。
【0039】実施例2 純度が98.4重量%である、N−カルボベンゾキシ−
S−フェニルシステイン粗結晶20.12g(純分量1
9.80g、N−ベンジル−S−フェニルシステイン
0.5重量%含有)に、水170ml、30重量%水酸
化ナトリウム水溶液8.02g(N−カルボベンゾキシ
−S−フェニルシステインに対して1.0倍モル)を加
えた後、約25℃で1時間攪拌して溶解させ、N−カル
ボベンゾキシ−S−フェニルシステイン濃度10.4重
量%の溶液190.41gを得た。この溶液のpHは1
0.4であった。次いで、約25℃、強撹拌下、35重
量%塩酸37.34g(N−カルボベンゾキシ−S−フ
ェニルシステインに対して6.0倍モル、有効酸量5.
0倍モル)を2時間かけて添加した後、1時間攪拌を継
続して、充分に晶析を行った。この溶液のpHは−0.
3であった。続いて、析出した結晶を濾過し、減圧乾燥
(1〜30mmHg、20〜40℃、10時間)して、
結晶19.82gを得た。この結晶は、N−カルボベン
ゾキシ−S−フェニルシステイン19.71g(収率1
00%)を含有し、純度99.4重量%、N−ベンジル
−S−フェニルシステイン含量0.1重量%であった。
【0040】比較例1 純度が98.4重量%である、N−カルボベンゾキシ−
S−フェニルシステイン粗結晶20.07g(純分量1
9.75g、N−ベンジル−S−フェニルシステイン
0.5重量%含有)に、水170ml、30重量%水酸
化ナトリウム水溶液8.05g(N−カルボベンゾキシ
−S−フェニルシステインに対して1.0倍モル)を加
えた後、約25℃で1時間攪拌して溶解させ、N−カル
ボベンゾキシ−S−フェニルシステイン濃度10.1重
量%の溶液195.03gを得た。この溶液のpHは1
0.7であった。次いで、約25℃、強撹拌下、35重
量%塩酸18.68g(N−カルボベンゾキシ−S−フ
ェニルシステインに対して3.0倍モル、有効酸量2.
0倍モル)を2時間かけて滴下した後、1時間攪拌を継
続して、充分に晶析を行った。この溶液のpHは0.2
であった。続いて、析出した結晶を濾過し、減圧乾燥
(1〜30mmHg、20〜40℃、10時間)して、
結晶19.96gを得た。この結晶は、N−カルボベン
ゾキシ−S−フェニルシステイン19.68g(収率1
00%)を含有し、純度98.6重量%、N−ベンジル
−S−フェニルシステイン含量0.4重量%であった。
【0041】参考例1 N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイン19.
72g、N−ベンジル−S−フェニルシステイン0.5
5gを含有するアルカリ水溶液196.56gに、35
重量%塩酸を滴下しながら、溶液の一部をサンプリング
し、析出した結晶を濾別して、得られた濾液中のN−カ
ルボベンゾキシ−S−フェニルシステイン、及び、N−
ベンジル−S−フェニルシステインの重量%濃度(溶解
度)を測定した。各pHにおける両化合物の溶解度の測
定結果を、図1に示した。
【0042】実施例3 純度が98.1重量%である、N−カルボベンゾキシ−
S−フェニルシステイン粗結晶20.17g(純分量1
9.78g、N−ベンジル−S−フェニルシステイン
0.8%含有)に、水170ml、30重量%水酸化ナ
トリウム水溶液8.30g(N−カルボベンゾキシ−S
−フェニルシステインに対して1.0倍モル)を加えた
後、約25℃で1時間攪拌して溶解させ、N−カルボベ
ンゾキシ−S−フェニル−L−システイン濃度10.1
重量%の溶液195.55gを得た。この溶液のpHは
11.0であった。次いで、約25℃、強撹拌下、35
重量%塩酸560mg(N−カルボベンゾキシ−S−フ
ェニルシステインに対して0.1倍モル)を5分かけて
滴下した後、1時間攪拌を継続したところ、結晶が析出
した。この溶液のpHは5.8であった。析出した結晶
を濾別して、濾液194.99gを得た。この濾液は、
N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイン19.
35g(収率98%)を含有し、N−ベンジル−S−フ
ェニルシステイン含量は0.2重量%であった。
【0043】更に、得られた濾液190.53g(N−
カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイン18.91
g含有)に、約25℃、強撹拌下、35重量%塩酸3
5.19g(N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシス
テインに対して5.9倍モル、有効酸量5.0倍モル)
を2時間かけて添加し、1時間攪拌を継続して、充分に
晶析を行った。この溶液のpHは−0.3であった。続
いて、析出した結晶を濾過し、減圧乾燥(1〜30mm
Hg、20〜40℃、10時間)して、結晶18.99
gを得た。この結晶は、N−カルボベンゾキシ−S−フ
ェニルシステイン18.86g(収率100%)を含有
し、純度99.3重量%、N−ベンジル−S−フェニル
システイン含量0.1重量%未満であった。
【0044】
【発明の効果】本発明は、上述の構成よりなり、構造の
類似したN−ベンジル−S−フェニルシステインが不純
物として共存するN−カルボベンゾキシ−S−フェニル
システインから、簡便かつ効率的に、当該不純物を除去
してN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインを
精製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイ
ン(1)(図中、黒ぬりの□で表す。)とN−ベンジル
−S−フェニルシステイン(2)(図中、黒ぬりの◇で
表す。)との溶解度のpH依存性を示す図である。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 N−ベンジル−S−フェニルシステイン
    とN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインとの
    混合物から、N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシス
    テインを取得する方法であって、N−カルボベンゾキシ
    −S−フェニルシステインが塩基との塩として存在し、
    N−ベンジル−S−フェニルシステインが遊離の酸とし
    て存在する状態とする工程(a1)、N−ベンジル−S
    −フェニルシステインを分離する工程(b1)、更に酸
    性化してN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイ
    ンを遊離の酸とする工程(c1)、及び、N−カルボベ
    ンゾキシ−S−フェニルシステインを分離取得する工程
    (d1)からなることを特徴とするN−カルボベンゾキ
    シ−S−フェニルシステインの精製方法。
  2. 【請求項2】 N−ベンジル−S−フェニルシステイン
    とN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインとの
    混合物は、N−ベンジル−S−フェニルシステインとN
    −カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインとが共存
    する水性媒体であり、工程(a1)は、前記水性媒体を
    pH5〜6に調整することにより行われるものである請
    求項1記載のN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシス
    テインの精製方法。
  3. 【請求項3】 工程(c1)は、水性媒体をpH4以下
    とすることにより行うものである請求項2記載のN−カ
    ルボベンゾキシ−S−フェニルシステインの精製方法。
  4. 【請求項4】 工程(c1)は、水性媒体を0より低い
    pHとすることにより行うものである請求項3記載のN
    −カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインの精製方
    法。
  5. 【請求項5】 工程(b1)は、濾過分離及び遠心分離
    のうち少なくとも1種を用いて行うものである請求項
    1、2、3又は4記載のN−カルボベンゾキシ−S−フ
    ェニルシステインの精製方法。
  6. 【請求項6】 N−ベンジル−S−フェニルシステイン
    とN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインとの
    混合物は、カルボベンゾキシハライドを用いるN−カル
    ボベンゾキシ化を含む製造方法により得られるものであ
    る請求項1、2、3又は4記載のN−カルボベンゾキシ
    −S−フェニルシステインの精製方法。
  7. 【請求項7】 N−ベンジル−S−フェニルシステイン
    とN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインとの
    混合物から、N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシス
    テインを取得する方法であって、N−カルボベンゾキシ
    −S−フェニルシステインが遊離の酸として存在し、N
    −ベンジル−S−フェニルシステインが酸との塩として
    存在する状態とする工程(a2)、及び、遊離のN−カ
    ルボベンゾキシ−S−フェニルシステインを分離する工
    程(b2)からなることを特徴とするN−カルボベンゾ
    キシ−S−フェニルシステインの精製方法。
  8. 【請求項8】 N−ベンジル−S−フェニルシステイン
    とN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインとの
    混合物は、N−ベンジル−S−フェニルシステインとN
    −カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインとが共存
    する水性媒体であり、工程(a2)は、前記水性媒体を
    0より低いpHに酸性化することにより行われるもので
    ある請求項7記載のN−カルボベンゾキシ−S−フェニ
    ルシステインの精製方法。
  9. 【請求項9】 工程(b2)は、濾過分離及び遠心分離
    のうち少なくとも1種を用いて行うものである請求項7
    又は8記載のN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシス
    テインの精製方法。
  10. 【請求項10】 酸性化に使用する実質的に有効な酸量
    が、N−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステイン1
    モルに対して約5倍モル以上である請求項8記載のN−
    カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインの精製方
    法。
  11. 【請求項11】 N−ベンジル−S−フェニルシステイ
    ンとN−カルボベンゾキシ−S−フェニルシステインと
    の混合物は、カルボベンゾキシハライドを用いるN−カ
    ルボベンゾキシ化を含む製造方法により得られるもので
    ある請求項7、8、9又は10記載のN−カルボベンゾ
    キシ−S−フェニルシステインの精製方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2000043360A1 (fr) * 1999-01-21 2000-07-27 Kaneka Corporation Procede d'isolation de s-phenylcysteine n-protegee

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