JP2001114744A - N−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸の製造方法 - Google Patents

N−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸の製造方法

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JP2001114744A JP29508699A JP29508699A JP2001114744A JP 2001114744 A JP2001114744 A JP 2001114744A JP 29508699 A JP29508699 A JP 29508699A JP 29508699 A JP29508699 A JP 29508699A JP 2001114744 A JP2001114744 A JP 2001114744A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 煩雑な精製工程を経ることなく、簡単な操作
で高純度のN−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸を得
ることが出来、しかも溶媒の再利用が容易なN−炭化水
素オキシカルボニルアミノ酸の製造方法を提供する。 【解決手段】 水溶性有機溶媒と水との混合溶液中で、
その水溶液が塩基性を示すアミノ酸塩とジカーボネート
化合物とを反応させて、目的物であるN−炭化水素オキ
シカルボニルアミノ酸の塩、並びに反応副生物であるア
ルコール及びN−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸エ
ステルを含む反応液を得た後、該反応液からアルコール
及び水溶性有機溶媒を除去し、次いでアルコール及び水
溶性有機溶媒除去後の水性溶液から非水溶性有機溶媒を
用いて上記N−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸エス
テルを抽出、除去した後、目的物の塩を含む水性溶液と
酸とを接触させることを特徴とするN−炭化水素オキシ
カルボニルアミノ酸の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、N−炭化水素オキ
シカルボニルアミノ酸を高純度で製造する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】N−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸
は、アミノ酸のアミノ基がアルコキシカルボニル基のよ
うな炭化水素オキシカルボニル基で保護されたものであ
り、抗生物質、ペプチド、タンパク質、甘味料、HIV
プロテアーゼ阻害剤およびその他の生理活性物質の中間
体として極めて重要な化合物である。
【0003】従来のN−炭化水素オキシカルボニルアミ
ノ酸の製造方法としては、水溶性有機溶媒と水との混合
溶液中でアミノ酸アルカリ金属塩とジアルキルジカーボ
ネートとを反応させ、さらに酸を加えて中和する方法が
知られている{オーガニック・シンセシス(Organ
ic Synthesis 63巻、160〜170
頁、1985年)}。
【0004】すなわち、該文献には、水溶性有機溶媒で
ある1,4−ジオキサンおよび水の混合溶液からなる溶
媒中で、アミノ酸を化学量論以上の水酸化ナトリウムや
トリエチルアミン等の塩基と反応させて水溶性の塩とし
た後、ジアルキルジカーボネートを反応させた後に、該
反応中に1,4−ジオキサンやジアルキルジカーボネー
トが分解して生成するアルコールを反応液から減圧留去
し、得られたN−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸塩
を含有する水相を酸で中和してN−炭化水素オキシカル
ボニルアミノ酸が製造できることが記載されている。
【0005】そして、該文献は、N−炭化水素オキシカ
ルボニルアミノ酸の単離方法として、中和後に得られる
水溶液又は水懸濁液から目的物であるN−炭化水素オキ
シカルボニルアミノ酸をジエチルエーテルや酢酸エチル
等の有機溶媒を用いて抽出し、得られた抽出溶液を硫酸
ナトリウムや、硫酸マグネシウム等の固体脱水剤を用い
て脱水した後に上記有機溶媒を濃縮する方法が開示され
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来方法により合成・単離されるN−炭化水素オ
キシカルボニルアミノ酸には、反応中に副生するN−炭
化水素オキシカルボニルアミノ酸エステルが不純物とし
て含まれており、該不純物を取り除くためには、さらに
再結晶、再沈等の精製操作を行わなければならないとい
う問題があった。
【0007】また、工業的見知から反応後に反応液から
分離された1,4−ジオキサンは、反応溶媒として再利
用するのが好ましいが、上記従来方法で分離される1,
4−ジオキサンには副生するアルコールが含まれている
ため、再利用に際しては、蒸留等によりアルコールを分
離除去しなければならないという問題があった。
【0008】このように、前記従来のN−炭化水素オキ
シカルボニルアミノ酸の製造方法は、工業的に有利な方
法であるとは必ずしも言えなかった。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記問題を
解決すべく鋭意検討を行った。その結果、従来法と同様
にしてアミノ酸金属塩とジアルキルカーボネートとを反
応させた反応液から水溶性有機溶媒と副生アルコールと
を除去した後、中和反応を行う前に非水溶性有機溶媒を
用いて抽出を行うと副生物であるN−炭化水素オキシカ
ルボニルアミノ酸が効率よく除去できることを見いだ
し、本発明を完成するに至った。
【0010】即ち、本発明は、水溶性有機溶媒と水との
混合溶液中で、その水溶液が塩基性を示すアミノ酸塩と
ジカーボネート化合物とを反応させて、目的物であるN
−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸の塩、並びに反応
副生物であるアルコール及びN−炭化水素オキシカルボ
ニルアミノ酸エステルを含む反応液を得た後、該反応液
からアルコール及び水溶性有機溶媒を除去し、次いでア
ルコール及び水溶性有機溶媒除去後の水性溶液から非水
溶性有機溶媒を用いて上記N−炭化水素オキシカルボニ
ルアミノ酸エステルを抽出、除去した後、目的物の塩を
含む水性溶液と酸とを接触させることを特徴とするN−
炭化水素オキシカルボニルアミノ酸の製造方法である。
【0011】該製造方法によれば、再結晶、再沈といっ
た煩雑な操作を伴う精製を行うことなく、高純度のN−
炭化水素オキシカルボニルアミノ酸を得ることが出来
る。
【0012】また、上記本発明の製造方法において、水
溶性有機溶媒として副生物であるアルコールと同種のア
ルコールを使用する場合には、反応後に除去された該水
溶性有機溶媒およびアルコールをそのまま反応溶媒とし
て再使用することが可能である。そして、この様な水溶
性有機溶媒(アルコール)の再使用を行った製造方法
は、廃棄物が少なく、プロセス的に優れた製造方法であ
る。
【0013】上記本発明の製造方法においては、入手の
容易性の観点からジカーボネート化合物として下記一般
式(I)
【0014】
【化1】
【0015】(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル
基、炭素数1〜10のアルケニル基または炭素数1〜1
0のアラルキル基を示す。)で表されるジカーボネート
化合物が好適に用いられる。該ジカーボネート化合物は
原料であるアミノ酸塩と反応して最終的にアミノ酸のア
ミノ基の水素の1つが下記一般式(II)
【0016】
【化2】
【0017】(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル
基、炭素数1〜10のアルケニル基または炭素数1〜1
0のアラルキル基を示す。)で示される1価の炭化水素
基が結合したオキシカルボニル基で置換された(該基で
アミノ基が保護された)N−炭化水素オキシカルボニル
アミノ酸が製造される。
【0018】尚、上記式(II)におけるR1は、反応
に影響を与えない範囲であれば、炭素および水素以外の
元素を含んでいてもよく、生成物であるN−炭化水素オ
キシカルボニルアミノ酸における炭化水素基は必ずしも
炭素と水素とのみから成ることを意味するものではな
い。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明で使用する「その水溶液が
塩基性を示すアミノ酸塩」は、分子内に少なくとも1個
のアミノ基と1個のカルボキシル基を有する公知のアミ
ノ酸と塩基との塩であって、その水溶液が塩基性を示す
ものであれば特に制限されない。ここでアミノ基とは1
級または2級のアミノ基を意味し、例えばアルキル基、
またはアラルキル基、などの炭化水素基で置換されたモ
ノ置換アミノ基、ピロリジル基等、窒素原子に少なくと
も1個の水素原子が結合しているグループである。
【0020】本発明の製造方法において、かかるアミノ
酸塩は、最初からこのような塩の形もののを用いること
もできるが、原料の入手のし易さの観点から、反応系内
で予めアミノ酸と塩基とを接触させて塩を調製し、これ
をそのまま使用するのが好適である。
【0021】このときに好適に使用できるアミノ酸を具
体的に例示すれば、グリシン、フェニルグリシン、N−
メチルグリシン、N−エチルグリシン、N−ベンジルグ
リシン、ヒドロキシフェニルグリシン、アラニン、N−
メチルアラニン、N−エチルアラニン、N−ベンジルア
ラニン、β−アラニン、N−メチル−β−アラニン、N
−エチル−β−アラニン、N−ベンジル−β−アラニ
ン、セリン、ホモセリン、イソセリン、O−ベンジル−
セリン、システイン、S−アセトアミド−システイン、
シスチン、ホモシスチン、トレオニン、O−ベンジル−
トレオニン、メチオニン、ホモメチオニン、バリン、N
−メチルバリン、N−エチルバリン、N−ベンジルバリ
ン、ノルバリン、N−メチルノルバリン、N−エチルノ
ルバリン、N−ベンジルノルバリン、ロイシン、N−メ
チルロイシン、N−エチルロイシン、N−ベンジルロイ
シン、ノルロイシン、N−メチルノルロイシン、N−エ
チルノルロイシン、N−ベンジルノルロイシン、イソロ
イシン、N−メチルイソロイシ、N−エチルイソロイシ
ンン、N−ベンジルイソロイシンン、フェニルアラニ
ン、N−メチルフェニルアラニン、N−エチルフェニル
アラニン、N−ベンジルフェニルアラニン、ヒドロキシ
フェニルアラニン、チロシン、O−ベンジル−チロシ
ン、チロニン、O−ベンジル−チロニン、プロリン、ヒ
ドロキシプロリン、O−ベンジル−ヒドロキシプロリ
ン、トリプトファン、アスパラギン酸、アスパラギン、
グルタミン酸、ホモグルタミン酸、グルタミン、アルギ
ニン、N−トシルアルギニン、N−ベンジルアルギニ
ン、リシン、オルニチン、ヒスチジン、α−アミノ酪
酸、β−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、α−アミノイソ
酪酸、リジン等を挙げることができる。
【0022】これらのアミノ酸は、それぞれ置換基を有
していてもよく、それらが保護されてもよく、光学活性
体でもよく、光学異性体を含むラセミ混合物であっても
よく、更に異種のアミノ酸混合物であってもよい。な
お、これらのアミノ酸はすべて試薬又は工業原料として
入手可能である。
【0023】また、上記アミノ酸と接触させて塩を形成
するために使用する塩基としては、アルカリ金属あるい
はアルカリ土類金属の水酸化物、あるいは炭酸塩等の無
機塩基、又は各種有機塩基等の公知の塩基が制限なく使
用できる。
【0024】このような塩基を具体的に例を挙げると、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、
水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウ
ム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウ
ム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等を挙げる
ことができる。また、有機塩基としては、ピリジン、4
−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、トリブ
チルアミン、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリ
ジン、1−プロピルピペリジン、1−ブチルピペリジ
ン、1−メチルピロリジン、2−エチルピロリジン、2
−プロピルピロリジン、2−ブチルピロリジン、4−メ
チルモルホリン、4−エチルモルホリン、4−プロピル
モルホリン、4−ブチルモルホリン等を挙げることがで
きる。これらの塩基はすべて試薬および工業原料として
入手可能である。
【0025】上記の様な塩基を用いて塩の形にすること
により、アミノ酸のアミノ基等とジカーボネート化合物
とが円滑に反応するようになる。該塩基の使用量は、ジ
カーボネート化合物との上記反応を有効に進行させ、ア
ミノ酸の利用率が高く、しかも反応後の中和に要する酸
の量を少なくするために、アミノ酸1当量に対して、
0.2〜2.0当量、特に0.5〜1.5当量の範囲か
ら選ぶことが好ましい。
【0026】本発明で使用する、ジカーボネート化合物
は、アミノ酸のアミノ基等と反応し、炭酸ガスとアルコ
ールを副生しながら該アミノ基等をN−炭化水素オキシ
カルボニル化するものであれば特に限定されない。しか
しながら、入手の容易さ(合成の容易さ)の観点から、
下記一般式(I)
【0027】
【化3】
【0028】(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル
基、炭素数1〜10のアルケニル基または炭素数1〜1
0のアラルキル基を示す。)で表されるジカーボネート
化合物を使用するのが好適である。
【0029】上記一般式(I)中の、R1は、炭素数1
〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、
又は炭素数1〜10のアラルキル基であるが、これら各
基は置換基を有していてもよい。但し、置換基を有する
場合の上記各基の炭素数は置換基に含まれる炭素原子の
数を含む。これら置換基としては、フッ素原子、塩素原
子、臭素原子等のハロゲン原子;シクロヘキシル基等の
シクロアルキル基;グリシジル基;フェニル基等のアリ
ール基;水酸基;アルコキシ基;アシル基;メトキシカ
ルボニル基、アセトキシ基等のエステル基;ジアルキル
アミノ基;カルバモイル基等が挙げられる。
【0030】R1として好適な基を具体的に例示すれ
ば、アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロ
ピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル
基、t−ブチル基、t−アミル基等が挙げられ、アルケ
ニル基としてはアリル基、グリシジル基が挙げられ、ア
ラルキル基としてはベンジル基が挙げられる。
【0031】本発明において好適に使用されるジカーボ
ネート化合物を具体的に例示すると、ジメチルジカーボ
ネート、ジエチルジカーボネート、ジイソプロピルジカ
ーボネート、ジイソブチルジカーボネート、ジ−t−ブ
チルジカーボネート、ジ−t−アミルジカーボネート、
ジアリルジカーボネート、ジベンジルジカーボネート等
を挙げることができる。
【0032】これらのジカーボネート化合物のほとんど
試薬および工業原料として入手可能である。また、試薬
や工業原料として入手できないものに関しては以下の方
法にて合成可能である。
【0033】すなわち、まず前記R1に対応するアルコ
ール及びアルカリ金属を用いてアルカリ金属アルコキサ
イドを調整し、該アルカリ金属アルコキサイドと二酸化
炭素とを常圧または加圧下で反応させ炭酸モノ炭化水素
アルカリ金属塩へ誘導し、次いでこれを芳香族スルホニ
ルハライドと反応させることにより合成することが出来
る。
【0034】本発明の製造方法では、先ず、前記アミノ
酸塩とジカルボーネートとを水溶性有機溶媒と水との混
合溶液中で反応(以下、この時の反応を「炭化水素オキ
シカルボニル化反応」ともいう。)させる。該炭化水素
オキシカルボニル化反応では、最終目的物であるN−炭
化水素オキシカルボニルアミノ酸の前駆体となる塩が生
成し、反応に伴うジアルキルジカーボネートの分解によ
り炭酸ガス(二酸化炭素)とアルコールとが副生する。
また、このとき、その生成メカニズムの詳細は不明であ
るが、目的物のN−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸
のカルボキシル基と上記副生アルコールが脱水縮合した
構造を有するN−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸エ
ステルも副生する。
【0035】上記炭化水素オキシカルボニル化反応で反
応溶媒の一成分として使用する水溶性有機溶媒は、水に
溶解する有機溶媒であれば特に限定されず、アルコール
類、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、ス
ルホキシド類等の公知の水溶性有機溶媒が使用できる。
しかし、これら水溶性有機溶媒の中でも、溶媒のリサイ
クル使用を考慮すると、アルコール類、特に反応で副生
するのと同種のアルコールを使用するのが好適である。
【0036】例えば、ジカーボネート化合物として前記
一般式(I)で示されるものを使用した場合には、水溶
性有機溶媒としてR1OH{但し、R1は前記一般式
(I)におけるR1と同義である。}で示される構造の
アルコールを使用するのが好適である。すなわち、使用
するジカーボネート化合物の種類に応じて、メタノー
ル、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチル
アルコール、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコ
ール、アリルアルコール、ベンジルアルコール等のアル
コールから適宜選択して使用すればよい。
【0037】これら水溶性有機溶媒は水と混合して反応
溶媒として使用される。水と水溶性有機溶媒との混合比
は使用するアミノ酸塩の種類、ジカーボネート化合物の
種類によっても異なるため一概には言えないが、通常、
両者混合液全体の重量基準で水が5〜95重量%、特に
10〜90重量%の範囲となるように選択すればよい。
また、該混合溶液の使用量は特に限定されないが、通常
はアミノ酸塩の濃度が0.5%〜95重量%となるよう
な範囲から選ばれる。
【0038】上記炭化水素オキシカルボニル化反応で使
用するジカーボネート化合物の使用量は特に限定されな
いが、経済性の観点から通常は、N−炭化水素オキシカ
ルボニル化したいアミノ酸のアミノ基等の1当量に対し
て、0.5〜2.0当量、特に0.8〜1.2当量の範
囲で選ぶことが好ましい。
【0039】上記、炭化水素オキシカルボニル化反応の
方法は、特に限定されず、例えば、反応器に水及び水溶
性有機溶媒を仕込み、−50〜50℃に温度調整してか
らこれに塩基およびアミノ酸を添加してアミノ酸塩を調
製し、次いでジカーボネート化合物を添加する方法によ
り好適に行うことが出来る。
【0040】上記炭化水素オキシカルボニル化反応の反
応条件は、使用するアミノ酸、塩基、ジカーボネート化
合物の種類、及び量等に応じて適宜決定すればよいが、
該反応は発熱反応であるため、反応温度としては、−4
0〜0℃、特に−20〜50℃の範囲から選択すると良
い。
【0041】本発明の製造方法では、このようにして得
られた、N−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸の塩、
及び副生物としてのアルコール及びN−炭化水素オキシ
カルボニルアミノ酸エステルを含む反応液から、先ず副
生アルコール及び溶媒として使用した水溶性有機溶媒
(以下、総称して副生アルコール等ともいう。)を除去
する。この様な分離操作をすることにより、最終的に得
られるN−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸の収量を
多くすることが出来る。
【0042】反応液から副生アルコール等を除去する方
法は特に限定されないが、N−炭化水素オキシカルボニ
ルアミノ酸塩のラセミ化防止、及び操作の簡便性等の理
由により、減圧化で留去するのが好適である。このとき
の温度としては、副生アルコール等の種類にもよるが、
あまり温度が高いとN−炭化水素オキシカルボニルアミ
ノ酸塩がラセミ化を生じ、あまり温度が低いと留去時間
が長期化するため、通常は0℃〜100℃、好ましくは
10℃〜90℃、さらに好ましくは20℃〜80℃の範
囲で行うのが良い。減圧度はこの様な温度範囲で副生ア
ルコール等が充分な速度で留出するような減圧度に適宜
調製すれば良いが、通常は0.1〜750torrの範
囲から選択される。
【0043】反応液から副生アルコール等の除去は、副
生アルコール等が反応液から完全に無くなるまで行う必
要は必ずしも無く、副生アルコール等の量が炭化水素オ
キシカルボニル化反応終了時の20重量%以下、好まし
くは10重量%以下となる程度に行えばよい。また、こ
のときに水の一部が副生アルコール等と一緒に除去され
ても問題はない。
【0044】この分離工程で回収された副生アルコール
は、水を添加したり、さらに水溶性有機溶媒を加えて濃
度調整を行ったりした後、次の炭化水素オキシカルボニ
ル化反応の反応溶媒として再使用することができる。
【0045】本発明の製造方法では、次いでこのように
して反応液から副生アルコール等を除去して得られる水
性溶液から非水溶性有機溶媒を用いて副生物であるN−
炭化水素オキシカルボニルアミノ酸エステルを抽出し、
除去する。なお、上記分離工程後に得られる水性溶液に
は、水、N−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸塩、N
−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸エステルの他に、
場合によっては、塩基、水溶性有機溶媒、副生アルコー
ル、未反応のアミノ酸塩、未反応のジカーボネート化合
物等が含まれており、この時の抽出・除去操作では、同
時に未反応のジアルキルジカーボネート化合物も抽出・
除去される。このため、該操作を行うことにより、目的
物の純度が高くなるばかりでなく、最終的にN−炭化水
素オキシカルボニルアミノ酸を結晶として単離する際の
結晶性が著しく向上する。
【0046】上記抽出・除去工程で使用する非水溶性有
機溶媒は、非水溶性でN−炭化水素オキシカルボニルア
ミノ酸エステルを溶解するものであれば特に限定されな
い。好適に使用できる非水溶性有機溶媒を具体的に例示
すると、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジク
ロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン等のハロ
ゲン化脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−プロピ
ル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチ
ル、酢酸t−ブチル、ギ酸エチル、ギ酸n−プロピル、
ギ酸イソブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n
−ブチル、プロピオン酸t−ブチル等のエステル類、ベ
ンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−
キシレン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼン、o−ジ
クロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロ
ベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、ジエチルエー
テル、エチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、
ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、メチルエチル
ケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチ
ルカーボネート等のカーボネート類、n−ペンタン、n
−ヘキサン、n−ヘプタン、トリメチルペンタン等の脂
肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水
素類等が挙げられる。
【0047】これらの中でも、取り扱い易さの観点か
ら、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロ
エタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、
酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル
ギ酸エチル、ギ酸n−プロピル、ギ酸イソブチル、プロ
ピオン酸エチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、
m−キシレン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼン、o
−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、ジ
エチルエーテル、エチルメチルエーテル、ブチルエチル
エーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン、メチル
イソブチルケトン等のケトン類、ジメチルカーボネート
等のカーボネート類、n−ペンタン、n−ヘキサン、n
−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の
環状脂肪族炭化水素類等を用いるのが特に好適である。
なお、これらの非水溶性有機溶媒は2種類以上組み合わ
せて使用しても良い。
【0048】上記の抽出・分離操作は、前記水性溶液に
非水溶性有機溶媒を加え、攪拌した後、静置して水相と
非水溶性有機溶媒層とを分離させ、分液することにより
好適に行うことが出来る。
【0049】抽出条件は特に限定されないが、使用する
非水溶性有機溶媒の量としては、抽出効率の点から、水
性溶液の容積を基準として、その0.1〜20倍の範囲
となる量使用するのが好適である。また、抽出の際の温
度としては、使用する非水溶性有機溶媒の種類等にもよ
るが、あまり温度が高いとN−炭化水素オキシカルボニ
ルアミノ酸塩がラセミ化を生じ、あまり温度が低いと界
面を形成するのに時間を要したり、大量のエマルジョン
を発生させる原因となるため、0℃〜使用する溶媒の沸
点以下の温度、通常は5℃〜60℃、好ましくは10℃
〜50℃の範囲で行うのが良い。水性溶液と非水溶性有
機溶媒との混合時間は溶解度にもよるが1分〜30分も
あれば十分である。静置時間は比重、メニスカスの発
生、エマルジョンの発生の有無にもよるが、1分〜10
0分の範囲で様子を見ながら決めれば良い。
【0050】この様な抽出操作は、水性溶液中からN−
炭化水素オキシカルボニルアミノ酸エステルがなくなる
まで行うのが好ましい。水性溶液中からN−炭化水素オ
キシカルボニルアミノ酸エステルが無くなったかどうか
の確認は、抽出操作後の水性溶液を高速液体クロマトグ
ラフィー(以後、HPLCと略す)で分析することによ
り確認することが出来る。通常は、上記のような抽出操
作を2回繰り返せば、N−炭化水素オキシカルボニルア
ミノ酸エステルは検出されなくなる。
【0051】本発明の製造方法では、上記のようにして
N−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸エステルが抽出
された後の水性溶液と酸とを接触させて、N−炭化水素
オキシカルボニルアミノ酸塩をN−オキシカルボニルア
ミノ酸に転化させる。
【0052】この時使用する酸は、特に限定されない。
好適に使用できる酸を例示すれば、塩酸、硫酸、硝酸、
りん酸等の鉱酸類;硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウ
ム、りん酸水素カリウム、りん酸水素ナトリウム等のア
ルカリ金属塩;酢酸、ぎ酸、蓚酸、クエン酸等の有機酸
を挙げることができる。
【0053】使用する酸の量は、水性溶液に含まれるN
−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸塩の種類や量、場
合によって残存する塩基の種類や量等によって異なるた
め一概には規定できないが、通常、水性溶液のpHが1
〜4の範囲になるまで加えることが好ましい。
【0054】水性溶液と酸とを接触させる方法は特に限
定されず、例えば、pHをモニターしながら水性溶液に
攪拌条件下で酸を添加することにより好適に行うことが
出来る。このときの液温度は、あまり温度が高いとN−
炭化水素オキシカルボニル基の脱離反応が起るため、0
℃〜50℃、特に0℃〜40℃で実施することが好まし
い。
【0055】この様にして得られたN−炭化水素オキシ
カルボニルアミノ酸は、上記酸との接触後に結晶として
析出している場合には固液分離操作により、また、結晶
として析出していない場合には抽出分離することによ
り、単離することができる。
【0056】従来の製造方法であれば、この段階でN−
炭化水素オキシカルボニルアミノ酸を結晶として単離す
ると、該化合物中に、N−炭化水素オキシカルボニルア
ミノ酸エステルが混在しているため結晶純度が低かった
が、本発明の製造方法では、N−炭化水素オキシカルボ
ニルアミノ酸が混在しないため、この段階で結晶として
単離しても高純度のものが得られる。
【0057】N−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸が
結晶として析出している場合における固液分離法として
は、自然ろ過、加圧ろ過、減圧ろ過等のろ過方法、デカ
ンテーション、あるいは遠心分離等の公知の方法が特に
制限されることなく採用される。なお、ここで、結晶に
付着した塩(上記の酸との接触操作で中和により副生し
た塩)を除去するために、冷却した水で結晶を洗浄して
も良い。かかる操作により得られたN−炭化水素オキシ
カルボニルアミノ酸は減圧乾燥、温風乾燥、温風減圧乾
燥、風乾等の乾燥操作により該化合物を乾燥させる。乾
燥温度としては、あまり温度が高いとN−炭化水素オキ
シカルボニル基の脱離が生じるため、通常は0℃〜10
0℃、好ましくは10℃〜90℃、さらに好ましくは2
0℃〜80℃の範囲から選択すれば良い。
【0058】一方、前記酸との接触操作後、N−炭化水
素オキシカルボニルアミノ酸が結晶として析出しない場
合は、非水溶性有機溶媒によって抽出を行うことにより
単離することができる。該抽出に使用できる非水溶性有
機溶媒としては、非水溶性でN−炭化水素オキシカルボ
ニルアミノ酸を溶解する有機溶媒であれば特に限定され
ず、抽出したいN−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸
の種類に応じて最適なものを適宜選択して使用すればよ
い。好適に使用できる非水溶性有機溶媒としては、N−
炭化水素オキシカルボニルアミノ酸エステルの抽出の際
に使用する非水溶性有機溶媒について好適に使用できる
ものとして例示したものと同じものが挙げられる。抽出
条件も、N−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸エステ
ルの抽出の抽出条件とほぼ同じである。なお、抽出操作
後の非水溶性有機溶媒溶液中には、未反応の原料のアミ
ノ酸が残存する場合があるので、このような時は、該非
水溶性有機溶媒溶液を水または食塩水で洗浄するのが好
適である。該洗浄は、目的物収量および洗浄後の洗浄液
との分離のし易さの観点から0℃〜60℃、特に5℃〜
50℃の範囲で行うのが好適である。
【0059】このようにして得られた、非水溶性有機溶
溶液(抽出溶液)から非水溶性有機溶媒を減圧留去して
濃縮後、濃縮液から目的物の性状に応じて目的物を単離
する事が出来る。非水溶性有機溶媒を減圧留去する際の
条件は非水溶性有機溶媒の種類等に応じて適宜決定すれ
ばよいが、減圧留去の際の温度については、目的物から
のN−炭化水素オキシカルボニル基の脱離の防止、およ
び留去時間の短縮の観点から0℃〜100℃、特に20
℃〜80℃の範囲で行うのが好適である。濃縮後、該化
合物が固体、油状または液状で、容易に溶媒と分離でき
る場合はそのまま分離して単離しても良いし、反応液に
貧溶溶媒を添加して結晶化させてから固液分離して単離
してもよい。ここで、結晶化させる時の温度、貧溶媒の
種類は使用するアミノ酸の種類や抽出に使用する非水溶
性有機溶媒の種類によっても異なるため、これらに応じ
て適宜選択すれば良い。
【0060】なお、用途によっては、濃縮後、濃縮液か
らN−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸を単離せず
に、該濃縮液をそのまま使用することもできる。例え
ば、N−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸をペプチド
カップリング反応、増反反応に使用する場合には、特に
単離する必要はない。
【0061】この様にして単離されたN−炭化水素オキ
シカルボニルアミノ酸は、十分に高い純度を有するもの
であるが、さらに高純度のものが必要な場合には、該N
−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸が貧溶な有機溶
媒、あるいは抽出に使用した非水溶性有機溶媒を冷却し
たもの等で洗浄すればよい。
【0062】この様にして得られた、N−炭化水素オキ
シカルボニルアミノ酸の中には水和物を形成するものが
あるが、本発明においては、無水物、水和物の制限はな
い。
【0063】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0064】実施例1 攪拌機、温度計、コンデンサーを備え付けた2L四つ口
フラスコに、10℃以下に液温を保ちながら水800m
l、水酸化ナトリウム44.00g(1.1mol)、
L−フェニルアラニン165.19g(1.0mo
l)、t−ブチルアルコール250ml(193.8
g)を加え攪拌した。その後、反応液の液温をを35℃
に調節し、ジ−t−ブチルジカーボネート218.25
g(1.0mol)を45℃以下で滴下した。滴下終了
後、さらに6時間室温で攪拌し、N−炭化水素オキシカ
ルボニル化反応を行った。
【0065】反応終了後、HPLCで反応液を分析した
ところ、塩基、反応液の溶媒及び副生したt−ブチルア
ルコール以外の組成はL−フェニルアラニンのナトリウ
ム塩0.50モル%、N−t−ブトキシカルボニル−L
−フェニルアラニンのナトリウム塩99.10モル%、
N−t−ブトキシカルボニル−L−フェニルアラニン−
t−ブチルエステル0.40モル%であった。
【0066】次に、反応溶媒として使用したt−ブチル
アルコールおよびジ−t−ブチルジカーボネートの分解
により生成したt−ブチルアルコールをその残存量が留
去前に対して1重量%以下となるまで内温30〜50
℃、減圧度20〜600torrの範囲で減圧留去し
た。
【0067】次に、t−ブチルアルコール除去後の反応
液にヘプタン200mlを加え、攪拌後静置して分液す
る洗浄操作を2回繰り返した。洗浄該操作後、水相をH
PLCで分析したところ、不純物のN−t−ブトキシカ
ルボニル−L−フェニルアラニン−t−ブチルエステル
は検出されず、ヘプタン中に該不純物が抽出されている
ことが確認された。
【0068】その後、上記洗浄操作後の水相に、20℃
以下で12N−塩酸92ml(1.1mol)を加えて
攪拌し、中和を行った。
【0069】中和終了後の上記水相に、酢酸エチル20
0mlを加えて目的物である、N−t−ブトキシカルボ
ニル−L−フェニルアラニンを室温で抽出した。抽出
は、3回行い、抽出後の酢酸エチル相をあわせて、10
重量%食塩水100mlで洗浄した。洗浄終了後、酢酸
エチルをその残存量が留去前に比べて3重量%以下にな
るまで内温30〜50℃、減圧度20〜600torr
の範囲で減圧留去した。留去後、室温でヘプタン700
mlを加え晶析し、減圧濾過により固液分離後、室温で
24時間真空乾燥して目的物を得た。
【0070】目的物の収量は239gで、原料アミノ酸
モル数基準の収率90.0モル%であった。また、得ら
れた目的物をHPLCで分析したところ、その純度は9
9.80モル%でN−t−ブトキシカルボニル−L−フ
ェニルアラニン−t−ブチルエステルは検出されなかっ
た。
【0071】実施例2 実施例1で除去・回収されたt−ブチルアルコール33
1.5g(水66gを含有)から242.2g(水48
g含有)採取し、水752mlを加えて反応溶媒とし、
実施例1と同様にして、反応およびその後の後処理を行
ったところ、収量240g、収率90.5モル%で目的
物を単離する事ができた。また、単離された目的物につ
いて実施例1と同様にHPLC分析を行ったところ、そ
の純度は、99.70モル%であり、N−t−ブトキシ
カルボニル−L−フェニルアラニン−t−ブチルエステ
ルは検出されなかった。なお、同様に回収されたt−ブ
チルアルコールを更に3回繰り返し使用したが、いずれ
の場合も上記と同様の結果であった。
【0072】比較例1 実施例1と同様にしてN−炭化水素オキシカルボニル化
反応を行い、塩基、溶媒および副生t−ブチルアルコー
ル以外の組成がL−フェニルアラニンのナトリウム塩
0.51モル%、N−t−ブトキシカルボニル−L−フ
ェニルアラニンのナトリウム塩99.10モル%、N−
t−ブトキシカルボニル−L−フェニルアラニン−t−
ブチルエステル0.39モル%である組成物を含む反応
液を得た。
【0073】次に、実施例1と同様にして、t−ブチル
アルコールを減圧留去した。
【0074】留去後、20℃以下で12N−塩酸92m
l(1.1mol)を加え中和し、その後、酢酸エチル
200mlを用いて目的物であるN−t−ブトキシカル
ボニル−L−フェニルアラニンを室温で抽出した。抽出
は3回行い、抽出した酢酸エチル相をあわせてこれを1
0重量%食塩水100mlで洗浄した。洗浄後、酢酸エ
チルの残存量が留去前に比べて3重量%以下になるまで
減圧留去した。
【0075】留去後、室温でヘプタン700mlを加え
晶析し、減圧濾過により固液分離した後、室温で24時
間真空乾燥することにより収量239g、収率90.0
モル%で目的物を単離した。また、単離された目的物に
ついて実施例1と同様にHPLC分析を行ったところ、
その純度は99.60モル%であり、0.35モル%の
N−t−ブトキシカルボニル−L−フェニルアラニン−
t−ブチルエステルを含んでいた。
【0076】実施例3 原料アミノ酸としてL−プロリン115.13g(1.
0mol)を用い、ジ−t−ブチルジカーボネート滴下
終了後の攪拌時間を5時間とする他は実施例1と同様に
してN−炭化水素オキシカルボニル化反応を行った。反
応終了後、HPLCで反応液を分析したところ、塩基、
反応溶媒、及び副生t−ブチルアルコール以外の組成
は、L−プロリンの塩0.10モル%、N−t−ブトキ
シカルボニル−L−プロリンの塩99.45モル%、N
−t−ブトキシカルボニル−L−プロリン−t−ブチル
エステル0.45モル%であった。
【0077】次に、実施例1と同様にしてt−ブチルア
ルコールの減圧留去、ヘキサンを用いた洗浄操作(N−
炭化水素オキシカルボニルアミノ酸エステルの抽出)、
及び酸との接触(中和)を行ったところ、目的物である
N−t−ブトキシカルボニル−L−プロリンが結晶とし
て析出した。析出物を減圧濾過により固液分離し、水2
00mlで洗浄後、室温で30時間真空乾燥したとこ
ろ、目的物が収量198g、収率92.0モル%で得ら
れた。得られた目的物について実施例1と同様にしてH
PLC分析を行ったところ、目的物の純度99.90モ
ル%であり、N−t−ブトキシカルボニル−L−プロリ
ン−t−ブチルエステルは検出されなかった。
【0078】実施例4 実施例3で回収したt−ブチルアルコール329.0g
(水66gを含有)から242g(水48g)を秤取り
これ水752gを加えて調整した溶媒を用いる他は実施
例3と同様にしてN−炭化水素オキシカルボニル化反
応、およびその後の処理を行った。その結果、目的物の
収量は200gであり、収率は92.9モル%であっ
た。また、得られた目的物の純度は99.80モル%で
あり、N−t−ブトキシカルボニル−L−プロリン−t
−ブチルエステルは検出されなかった。
【0079】比較例2 実施例3と同様にしてN−炭化水素オキシカルボニル化
反応を行い、塩基、反応溶媒、及び副生t−ブチルアル
コールを除く組成がL−プロリンの塩0.09モル%、
N−t−ブトキシカルボニル−L−プロリンの塩99.
44モル%、N−t−ブトキシカルボニル−L−プロリ
ン−t−ブチルエステル0.47モル%である反応液を
得た。
【0080】次に、反応溶媒として使用したt−ブチル
アルコールおよび副生したt−ブチルアルコールをその
残存量が留去前に対して1重量%以下となるまで減圧留
去した後、10℃以下で12N−塩酸92ml(1.1
mol)を加え中和したところ、N−t−ブトキシカル
ボニル−L−プロリンが結晶として析出した。析出物を
減圧濾過により固液分離し、水200mlで洗浄後、室
温で30時間真空乾燥したところ目的物が収量195
g、収率90.6モル%で得られた。得られた目的物を
HPLCで分析したところ、その純度は99.60モル
%であり、0.35モル%のN−t−ブトキシカルボニ
ル−L−プロリン−t−ブチルエステルが検出された。
【0081】実施例5〜11 表1に示したアミノ酸、アルコール、ジアルキルジカー
ボネートを用いてN−炭化水素オキシカルボニル化反応
を行い、得られた反応液から副生したN−炭化水素オキ
シカルボニルアミノ酸エステルを抽出するための溶媒と
して表1に示す溶媒を用い、中和後にN−炭化水素オキ
シカルボニルアミノ酸を抽出するための溶媒として表1
に示す溶媒を用い、さらに抽出液から目的物を晶析させ
る際に加える溶媒(晶析溶媒)として表1に示す溶媒を
用いる他は、実施例1と同様に操作した。その結果を表
1に示す。なお、表1において晶析溶媒がなしとなって
いるのは、晶析溶媒を加えなくても結晶が析出したこと
を意味する。
【0082】
【表1】
【0083】実施例12 攪拌機、温度計、コンデンサーを備え付けた2L四つ口
フラスコに、10℃以下に液温を保ちながら水800m
l、水酸化ナトリウム44.00g(1.1mol)、
L−バリン117.15g(1.0mol)、t−ブチ
ルアルコール250ml(193.8g)を加え攪拌し
た。その後、反応液の液温をを35℃に調節し、ジ−t
−ブチルジカーボネート240.08g(1.1mo
l)を45℃以下で滴下した。滴下終了後、さらに10
時間室温で攪拌し、N−炭化水素オキシカルボニル化反
応を行った。
【0084】反応終了後、HPLCで反応液を分析した
ところ、塩基、反応液の溶媒、及び副生したt−ブチル
アルコール以外の組成はL−バリンの塩0.50モル
%、N−t−ブトキシカルボニル−L−バリンの塩9
9.10モル%、N−t−ブトキシカルボニル−L−バ
リン−t−ブチルエステル0.40モル%であった。
【0085】次に、反応溶媒として使用したt−ブチル
アルコールおよびジ−t−ブチルジカーボネートの分解
により生成したt−ブチルアルコールをその残存量が留
去前に対して1重量%以下となるまで内温30〜45
℃、減圧度10〜500torrの範囲で減圧留去し
た。
【0086】次に、t−ブチルアルコール除去後の反応
液にn−ヘキサン300mlを加え、攪拌後静置して分
液する洗浄操作を2回繰り返した。洗浄該操作後、水相
をHPLCで分析したところ、不純物のN−t−ブトキ
シカルボニル−L−バリン−t−ブチルエステルは検出
されず、n−ヘキサン中に該不純物が抽出されているこ
とが確認された。
【0087】その後、上記洗浄操作後の水相に、10℃
以下で2N−塩酸550ml(1.1mol)を加えて
攪拌し、中和を行った。この時、中和と同時に白色結晶
が析出したため、遠心分離により固液分離し、5℃に冷
却した水300mlで結晶を洗浄した。さらに、45℃
で24時間温風乾燥して目的物を得た。
【0088】目的物の収量は196gで、原料アミノ酸
モル数基準の収率90.0モル%であった。また、得ら
れた目的物をHPLCで分析したところ、その純度は9
9.80モル%でN−t−ブトキシカルボニル−L−バ
リン−t−ブチルエステルは検出されなかった。
【0089】実施例13〜19 用いるアミノ酸、塩基以外は実施例12と同様に操作し
た。その結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
【発明の効果】本発明によれば、再結晶、再沈等の煩雑
な精製工程を経ることなく、不純物としてのN−炭化水
素オキシカルボニルアミノ酸エステルを含まない高純度
のN−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸を容易に得る
ことが出来る。
【0092】また、工業的見知から反応を連続的に或い
は繰り返して行う際に反応溶媒を再利用するのが好まし
いが、本発明では、反応後の後処理工程で分離された水
溶性有機溶媒をそのまま或いは簡単な調製操作をするだ
けで再使用することが出来る。
【0093】この様に、本発明は、操作性および経済性
の観点から工業的に優れたN−炭化水素オキシカルボニ
ルアミノ酸の製造方法であるといえる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水溶性有機溶媒と水との混合溶液中で、
    その水溶液が塩基性を示すアミノ酸塩とジカーボネート
    化合物とを反応させて、目的物であるN−炭化水素オキ
    シカルボニルアミノ酸の塩、並びに反応副生物であるア
    ルコール及びN−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸エ
    ステルを含む反応液を得た後、該反応液からアルコール
    及び水溶性有機溶媒を除去し、次いでアルコール及び水
    溶性有機溶媒除去後の水性溶液から非水溶性有機溶媒を
    用いて上記N−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸エス
    テルを抽出、除去した後、目的物の塩を含む水性溶液と
    酸とを接触させることを特徴とするN−炭化水素オキシ
    カルボニルアミノ酸の製造方法。
  2. 【請求項2】 水溶性有機溶媒として副生物であるアル
    コールと同種のアルコールを使用することを特徴とする
    請求項1記載のN−炭化水素オキシカルボニルアミノ酸
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 反応後に除去された水溶性有機溶媒およ
    びアルコールを反応溶媒として再使用することを特徴と
    する請求項1または請求項2記載のN−炭化水素オキシ
    カルボニルアミノ酸の製造方法。
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JP2014125447A (ja) * 2012-12-26 2014-07-07 Eiweiss Kk 化合物およびそれからなる光脱離保護剤

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