JPH11335330A - β−ケトエステルの製造方法 - Google Patents

β−ケトエステルの製造方法

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JPH11335330A
JPH11335330A JP10141770A JP14177098A JPH11335330A JP H11335330 A JPH11335330 A JP H11335330A JP 10141770 A JP10141770 A JP 10141770A JP 14177098 A JP14177098 A JP 14177098A JP H11335330 A JPH11335330 A JP H11335330A
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ketone
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Katsumasa Harada
勝正 原田
Kiyotaka Yoshii
清隆 吉井
Masayoshi Ogami
雅良 大上
Shuji Yamada
修二 山田
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  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、メチル(アルキルメチル)ケトン
から選択的にα位がメチレン基であるβ-ケトエステル
を得ることが出来る、工業的に好適なβ-ケトエステル
の製造方法を提供することを課題とする。 【解決手段】 本発明の課題は、メチル(アルキルメチ
ル)ケトンと炭酸ジアルキルとを塩基の存在下で反応さ
せて、α位がメチレン基であるβ−ケトエステル及び/
又はその塩を生成させて反応を完結させ、引き続き、そ
の反応混合物を塩基及びアルコールの存在下で更に加熱
処理した後、中和してβ-ケトエステルを得ることを特
徴とするβ-ケトエステルの製造方法によって解決され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医薬、農薬の合成
中間体として有用なα位がメチレン基であるβ-ケトエ
ステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、一般式(3)
【0003】
【化4】 (式中、R1及びR2はアルキル基を示す。)で示される
α位がメチレン基であるβ-ケトエステルの製造方法と
しては、メチルプロピルケトンと炭酸ジメチルとを水素
化ナトリウム存在下、ジエチルエーテル中で反応させ
て、メチル 3-オキソヘキサノエートを合成する方法
(J.Chem.Soc.Perkin Trans.I.,1397(1995))や、メチ
ルヘキシルケトンと炭酸ジエチルとを水素化ナトリウム
存在下、ジオキサン中で反応させて、エチル 3-オキソ
ノナノエートを合成する方法(特開昭63-258872号公
報)が開示されている。しかしながら、上記の方法で
は、いずれも工業的に取り扱いが困難な水素化ナトリウ
ムを用いなければならず、又同時に、目的とするα位が
メチレン基であるβ-ケトエステルとの分離が困難な副
生成物である一般式(4)
【0004】
【化5】 (式中、R1及びR2はアルキル基を示す。)で示される
α-アセチルエステル(α位がメチン基であるβ-ケトエ
ステル)が多く生成する等の問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、即
ち、上記問題点を解決し、一般式(1)で示されるメチ
ル(アルキルメチル)ケトンから選択的にα位がメチレ
ン基であるβ-ケトエステルを得ることが出来る、工業
的に好適なβ-ケトエステルの製造方法を提供するもの
である。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の課題は、一般式
(1)
【0007】
【化6】 (式中、R1はアルキル基を示す。)で示されるメチル
(アルキルメチル)ケトンと、一般式(2)
【0008】
【化7】 (式中、R2はアルキル基を示す。)で示される炭酸ジ
アルキルとを塩基の存在下で反応させて、一般式(3)
【0009】
【化8】 (式中、R1及びR2はアルキル基を示す。)
【0010】で示されるα位がメチレン基であるβ−ケ
トエステル及び/又はその塩を生成させて反応を完結さ
せ、引き続き、その反応混合物を塩基及びアルコールの
存在下で更に加熱処理した後、中和してβ-ケトエステ
ルを得ることを特徴とするβ-ケトエステルの製造方法
によって解決される。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の反応において使用する一
般式(1)で示されるメチル(アルキルメチル)ケトン
中のR1はアルキル基である。アルキル基としては、特
に炭素数1〜15のアルキル基が好ましく、例えば、メチ
ル基、エチル基、プロピル基(直鎖状又は分岐状)、ブ
チル基(直鎖状又は分岐状)、ペンチル基(直鎖状又は
分岐状)、ヘキシル基(直鎖状又は分岐状)、ヘプチル
基(直鎖状又は分岐状)、オクチル基(直鎖状又は分岐
状)、ノニル基(直鎖状又は分岐状)、デシル基(直鎖
状又は分岐状)、ウンデシル基(直鎖状又は分岐状)、
ドデシル基(直鎖状又は分岐状)、トリデシル基(直鎖
状又は分岐状)、テトラデシル基(直鎖状又は分岐
状)、ペンタデシル基(直鎖状又は分岐状)が挙げられ
るが、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、
n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル
基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデ
シル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシ
ル基、n-ペンタデシル基が挙げられる。
【0012】本発明の反応において使用する一般式
(1)で示されるメチル(アルキルメチル)ケトンの具
体例としては、メチルエチルケトン、メチルプロピルケ
トン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、
メチルペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、メ
チルネオペンチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチ
ルイソヘキシルケトン、メチルネオヘキシルケトン、メ
チルヘプチルケトン、メチルイソヘプチルケトン、メチ
ルネオヘプチルケトン、メチルオクチルケトン、メチル
イソオクチルケトン、メチルネオオクチルケトン、メチ
ルノニルケトン、メチルイソノニルケトン、メチルネオ
ノニルケトン、メチルデシルケトン、メチルイソデシル
ケトン、メチルネオデシルケトン、メチルウンデシルケ
トン、メチルイソウンデシルケトン、メチルネオウンデ
シルケトン、メチルドデシルケトン、メチルイソドデシ
ルケトン、メチルネオドデシルケトン、メチルトリデシ
ルケトン、メチルイソトリデシルケトン、メチルネオト
リドデシルケトン、メチルテトラデシルケトン、メチル
イソテトラデシルケトン、メチルネオテトラデシルケト
ン、メチルペンタデシルケトン、メチルイソペンタデシ
ルケトン、メチルネオペンタデシルケトン、メチルヘキ
サデシルケトン、メチルイソヘキサデシルケトン、メチ
ルネオヘキサデシルケトンが挙げられるが、好ましくは
メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブ
チルケトン、メチルペンチルケトン、メチルヘキシルケ
トン、メチルヘプチルケトン、メチルオクチルケトン、
メチルノニルケトン、メチルデシルケトン、メチルウン
デシルケトン、メチルドデシルケトン、メチルトリデシ
ルケトン、メチルテトラデシルケトン、メチルペンタデ
シルケトンが使用される。
【0013】本発明の反応において使用する一般式
(2)で示される炭酸ジアルキル中のR 2はアルキル基
である。アルキル基としては、特に炭素数1〜10のアル
キル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロ
ピル基(直鎖状又は分岐状)、ブチル基(直鎖状又は分
岐状)、ペンチル基(直鎖状又は分岐状)、ヘキシル基
(直鎖状又は分岐状)、ヘプチル基(直鎖状又は分岐
状)、オクチル基(直鎖状又は分岐状)、ノニル基(直
鎖状又は分岐状)、デシル基(直鎖状又は分岐状)が挙
げられるが、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル
基(直鎖状又は分岐状)、ブチル基(直鎖状又は分岐
状)が挙げられる。
【0014】本発明の反応において使用する一般式
(2)で示される炭酸ジアルキルの具体例としては、炭
酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジn-プロピル、炭酸ジ
i-プロピル、炭酸ジn-ブチル、炭酸ジi-ブチル、炭酸ジ
t-ブチル、炭酸ジn-ペンチル、炭酸ジi-ペンチル、炭酸
ジt-ペンチル、炭酸ジn-ヘキシル、炭酸ジi-ヘキシル、
炭酸ジt-ヘキシル、炭酸ジn-ヘプチル、炭酸ジi-ヘプチ
ル、炭酸ジt-ヘプチル、炭酸ジn-オクチル、炭酸ジi-オ
クチル、炭酸ジt-オクチル、炭酸ジn-ノニル、炭酸ジi-
ノニル、炭酸ジt-ノニル、炭酸ジn-デシル、炭酸ジi-デ
シル、炭酸ジt-デシルが挙げられるが、好ましくは炭酸
ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジn-プロピル、炭酸ジi-
プロピル、炭酸ジn-ブチル、炭酸ジi-ブチル、炭酸ジt-
ブチルが使用される。これら炭酸ジアルキルの使用量
は、メチル(アルキルメチル)ケトンに対して好ましく
は1〜50倍モル、更に好ましくは1.5〜10倍モルである。
【0015】本発明の反応において使用する塩基は金属
アルコラート、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属
のアルコラートであり、その具体例としては、ナトリウ
ムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムn-プ
ロポキシド、ナトリウムi-プロポキシド、ナトリウムn-
ブトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムメトキ
シド、カリウムエトキシド、カリウムn-プロポキシド、
カリウムi-プロポキシド、カリウムn-ブトキシド、カリ
ウムt-ブトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシ
ウムエトキシド、マグネシウムn-プロポキシド、マグネ
シウムi-プロポキシド、マグネシウムn-ブトキシド、カ
ルシウムメトキシド、カルシウムエトキシド、カルシウ
ムn-プロポキシド、カルシウムi-プロポキシドが挙げら
れるが、好ましくはナトリウムメトキシド、ナトリウム
エトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシ
ド、更に好ましくはナトリウムメトキシドが使用され
る。これら金属アルコラートの使用量は、メチル(アル
キルメチル)ケトンに対して好ましくは0.5〜2.5倍モ
ル、更に好ましくは1.0〜2.0倍モルである。
【0016】前記金属アルコラートは、粉末又は低級ア
ルコール溶液のいずれの状態で用いても良い。前記低級
アルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロ
パノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノー
ル、t-ブタノールが挙げられる。この時使用する低級ア
ルコールの量は、金属アルコラートに対して好ましくは
1〜30重量倍、更に好ましくは2〜20重量倍である。
【0017】本発明の反応では溶媒を使用しても良く、
例えば、トルエン、エチルベンゼン、クメン、n-ブチル
ベンゼン、i-ブチルベンゼン、s-ブチルベンゼン、t-ブ
チルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、
o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルトルエ
ン、シメン、t-ブチルトルエン、o-ジエチルベンゼン、
p-ジエチルベンゼン、m-ジエチルベンゼン、トリメチル
ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタ
ン、i-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-ノナン、
n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-トリデカン、
n-テトラデカン、n-ペンタデカン等の鎖状の脂肪族炭化
水素類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオク
タン等の環状の脂肪族炭化水素類が好適に使用される。
これら溶媒の使用量は、メチル(アルキルメチル)ケト
ンに対して好ましくは1〜80重量倍、更に好ましくは1〜
40重量倍である。
【0018】本発明の反応は、塩基(金属アルコラー
ト)の存在下、メチル(アルキルメチル)ケトンと炭酸
ジアルキルを液相で接触させることが好ましく、例え
ば、金属アルコラート、メチル(アルキルメチル)ケト
ン及び炭酸ジアルキルを混合し、加熱攪拌する等の方法
によって、反応液を全還流させながら、又は、反応
液の一部(生成するアルコール等)を留出させながら、
常圧下又は減圧下で行われる。その際の反応温度は、好
ましくは30〜150℃、更に好ましくは60〜120℃である。
【0019】本発明の反応では、塩基(金属アルコラー
ト)の存在下、メチル(アルキルメチル)ケトンと炭酸
ジアルキルを液相で接触させることで、一般式(3)
【化9】 (式中、R1及びR2はアルキル基を示す。)
【0020】 で示される目的とするα位がメチレン基で
あるβ-ケトエステルとの分離が困難な副生成物である
一般式(4)
【化10】 (式中、R1及びR2はアルキル基を示す。)
【0021】で示されるα-アセチルエステル(α位が
メチン基であるβ-ケトエステル)が同時に生成する
が、このα-アセチルエステルは、目的とするα位がメ
チレン基であるβ−ケトエステル及び/又はその塩を生
成させて反応を完結させた(原料のメチル(アルキルメ
チル)ケトンが実質的に消費された)後、引き続き、塩
基(金属アルコラート)及びアルコールの存在下で反応
混合物を加熱処理することによって選択的に分解するこ
とが出来る。即ち、反応液を全還流させながら反応さ
せた場合には、反応系内のアルコールをそのまま用い
て、或いは、反応液の一部(生成するアルコール等)
を留出させながら反応させた場合には、新たにアルコー
ルを反応系内に添加するか、又は前記反応中に留出させ
た反応液の一部(生成するアルコール等)を再び反応系
内に添加するかのいずれかの方法によってアルコールを
存在させて、好ましくは30〜150℃、更に好ましくは60
〜120℃で反応混合物を加熱処理(例えば、全還流)し
て、副生成物であるα-アセチルエステル(α位がメチ
ン基であるβ-ケトエステル)のみを選択的に分解する
ことが出来る。
【0022】 反応液の一部(生成するアルコール等)を
留出させながら反応させた場合、α-アセチルエステル
(α位がメチン基であるβ-ケトエステル)の分解に必
要なアルコールの添加量は、留出液に対して好ましくは
0.1〜1重量倍、更に好ましくは0.15〜0.75重量倍であ
る。分解に要する時間は、反応温度、反応スケールに著
しく影響を受けるが好ましくは0.5〜50時間、更に好ま
しくは1〜20時間、特に好ましくは2〜10時間である。
【0023】以上のようにして得られる、目的とするα
位がメチレン基であるβ-ケトエステルは、硫酸、塩
酸、硝酸、リン酸等の無機酸;シュウ酸、酢酸等の有機
酸で反応混合物を中和した後、蒸留や再結晶等の公知の
方法によって分離精製される。
【0024】また、反応混合物を中和後、或いは蒸留や
再結晶等による精製後に、尚も目的とするα位がメチレ
ン基であるβ-ケトエステル中に副生成物であるα-アセ
チルエステル(α位がメチン基であるβ-ケトエステ
ル)が混在している場合には、再び前記の条件下で加熱
処理を行い、α-アセチルエステルのみを選択的に分解
することで、より高い純度のα位がメチレン基であるβ
-ケトエステルを得ることが出来る。
【0025】
【実施例】次に、実施例及び比較例を用いて、本発明を
具体的に説明する。なお、収率は仕込みメチル(アルキ
ルメチル)ケトン基準である。
【0026】実施例1 ナトリウムメトキシド粉末16.2g(0.3mol)、炭酸ジメチ
ル108.1g(1.2mol)の懸濁液を攪拌しながら90℃まで加熱
した後、全還流条件下でメチルエチルケトン14.4g(0.2m
ol)を10分かけて滴下し、これを15分間全還流させて目
的とするメチル3-オキソペンタノエートのナトリウム塩
を含む反応混合物を生成させた(反応を完結させた)
後、更に5時間全還流させた。その後、反応混合物を冷
却し、10℃以下を保ちながら希塩酸で中和した後、有機
相を分離した。この有機相をガスクロマトグラフィーに
より分析したところ、目的とするメチル 3-オキソペン
タノエート16.9g(収率64.9%)、副生成物であるメチル
2-メチル-3-オキソブチレート0.7g(収率2.7%)が生成し
ていた。この時の目的物と副生成物の生成モル比は96:
4であった。この溶液を減圧蒸留(20torr/75〜78℃)し、
メチル 3-オキソペンタノエート16.1g(収率61.9%)を単
離した。
【0027】比較例1 ナトリウムメトキシド粉末16.2g(0.3mol)、炭酸ジメチ
ル108.1g(1.2mol)の懸濁液を攪拌しながら90℃まで加熱
した後、全還流条件下でメチルエチルケトン14.4g(0.2m
ol)を10分かけて滴下し、これを15分間全還流させて目
的とするメチル3-オキソペンタノエートのナトリウム塩
を含む反応混合物を生成させた(反応を完結させた)。
その後、更に全還流させることなく、反応混合物を冷却
し、10℃以下を保ちながら希塩酸で中和した後、有機相
を分離した。その結果、目的とするメチル 3-オキソペ
ンタノエート17.2g(収率66.1%)、副生成物であるメチ
ル 2-メチル-3-オキソブチレート7.0g(収率26.9%)が生
成していた。この時の目的物と副生成物の生成モル比は
71:29であった。
【0028】実施例2 ナトリウムメトキシド粉末16.2g(0.3mol)、炭酸ジメチ
ル108.1g(1.2mol)の懸濁液を攪拌しながら90℃まで加熱
した後、メタノールと炭酸ジメチルの混合溶液を常圧下
で留去しながらメチルエチルケトン14.4g(0.2mol)を10
分かけて滴下し、引き続き、常圧下でメタノールと炭酸
ジメチルの混合溶液を留去しながら20分間反応させて反
応を完結させ、次いで、この反応混合物にメタノール5.
1gを添加し、更に4時間全還流させた。その後、反応混
合物を冷却し、10℃以下を保ちながら希塩酸で中和した
後、有機相を分離した。その結果、目的とするメチル 3
-オキソペンタノエート17.1g(収率65.7%)、副生成物で
あるメチル 2-メチル-3-オキソブチレート0.5g(収率1.9
%)が生成していた。この時の目的物と副生成物の生成
モル比は97:3であった。
【0029】比較例2 ナトリウムメトキシド粉末16.2g(0.3mol)、炭酸ジメチ
ル108.1g(1.2mol)の懸濁液を攪拌しながら90℃まで加熱
した後、メタノールと炭酸ジメチルの混合溶液を常圧下
で留去しながらメチルエチルケトン14.4g(0.2mol)を10
分かけて滴下し、引き続き、常圧下でメタノールと炭酸
ジメチルの混合溶液を留去しながら20分間反応させた
(反応を完結させた)。その後、更に全還流させること
なく、反応混合物を冷却し、10℃以下を保ちながら希塩
酸で中和した後、有機相を分離した。その結果、目的と
するメチル 3-オキソペンタノエート17.4g(収率66.8
%)、副生成物であるメチル 2-メチル-3-オキソブチレ
ート5.5g(収率21.1%)が生成していた。この時の目的物
と副生成物の生成モル比は76:24であった。
【0030】実施例3 実施例2で用いたナトリウムメトキシド粉末16.2g(0.3m
ol)をナトリウムメトキシドを28重量%含有するメタノ
ール溶液57.9g(0.3mol)に変えたこと以外は、実施例2
と同様に反応と加熱処理を行った。その結果、目的とす
るメチル 3-オキソペンタノエート16.4g(収率63.0%)、
副生成物であるメチル 2-メチル-3-オキソブチレート0.
6g(収率2.3%)が生成していた。この時の目的物と副生
成物の生成モル比は96:4であった。
【0031】実施例4 実施例2において、ナトリウムメトキシド粉末と炭酸ジ
メチルの懸濁液にシクロヘキサン30gを加え、反応温度
を80℃に変えたこと以外は、実施例2と同様に反応と加
熱処理を行った。その結果、目的とするメチル 3-オキ
ソペンタノエート16.6g(収率63.8%)、副生成物である
メチル 2-メチル-3-オキソブチレート0.6g(収率2.3%)
が生成していた。この時の目的物と副生成物の生成モル
比は97:3であった。
【0032】実施例5 実施例2で用いたナトリウムメトキシド粉末16.2g(0.3m
ol)をナトリウムエトキシド20.4g(0.3mol)に、炭酸ジメ
チル72.1g(0.8mol)を炭酸ジエチル94.5g(0.8mol)に変え
たこと以外は、実施例2と同様に反応と加熱処理を行っ
た。その結果、目的とするエチル 3-オキソペンタノエ
ート18.2g(収率63.1%)、副生成物であるエチル 2-メチ
ル-3-オキソブチレート0.6g(収率2.1%)が生成してい
た。この時の目的物と副生成物の生成モル比は97:3で
あった。
【0033】実施例6 実施例2で用いたメチルエチルケトン14.4g(0.2mol)を
メチルブチルケトン20.0g(0.2mol)に変えたこと以外
は、実施例2と同様に反応と加熱処理を行った。その結
果、目的とするメチル 3-オキソヘプタノエート25.8g
(収率81.5%)、副生成物であるメチル 2-アセチルペン
タノエート1.2g(収率3.8%)が生成していた。この時の
目的物と副生成物の生成モル比は96:4であった。この
反応混合物を減圧蒸留(4〜5torr/77〜80℃)し、メチル
3-オキソヘプタノエート24.8g(収率78.4%)を単離し
た。
【0034】実施例7 ナトリウムメトキシド粉末16.2g(0.3mol)、炭酸ジメチ
ル72.1g(0.8mol)の懸濁液を攪拌しながら90℃まで加熱
した後、メタノールと炭酸ジメチルの混合溶液を常圧下
で留去しながらメチルトリデシルケトン45.3g(0.2mol)
を10分かけて滴下し、引き続き、常圧下でメタノールと
炭酸ジメチルの混合溶液を留去しながら20分間反応させ
て反応を完結させ、次いで、この反応混合物にメタノー
ル5.0gを添加し、更に4時間全還流させた。その後、反
応混合物にトルエンを加えて、冷却し、10℃以下を保ち
ながら希塩酸で中和した後、有機相を分離した。その結
果、目的とするメチル 3-オキソヘキサデカノエート48.
3g(収率84.9%)、副生成物であるメチル 2-アセチルテ
トラデカノエート1.7g(収率3.0%)が生成していた。こ
の時の目的物と副生成物の生成モル比は97:3であっ
た。この反応混合物中の溶媒を減圧下で留去し、釜残に
メタノール20mlと水40mlを加えて一旦50℃まで加温して
均一溶液にしたものを、5℃まで冷却した。析出した結
晶を濾過し、30℃で減圧乾燥させて、無色粉末の3-オキ
ソヘキサデカノエート44.5g(収率78.2%)を単離した。
【0035】
【発明の効果】本発明により、メチル(アルキルメチ
ル)ケトンと炭酸ジアルキルを反応させ、副生成物であ
るα-アセチルエステル(α位がメチン基であるβ-ケト
エステル)を選択的に分解させて、高選択率で目的とす
るα位がメチレン基であるβ-ケトエステルを得ること
が出来る、工業的に好適なβ-ケトエステルの製造方法
を提供することが出来る。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年4月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正内容】
【化1】 (式中、R1はアルキル基を示す。)で示されるメチル
(アルキルメチル)ケトンと、一般式(2)
【化2】 (式中、R2はアルキル基を示す。)で示される炭酸ジ
アルキルとを塩基の存在下で反応させて、一般式(3)
【化3】 (式中、R1及びR2はアルキル基を示す。)で示される
α位がメチレン基であるβ-ケトエステル及び/又はそ
の塩を生成させ、原料のメチル(アルキルメチル)ケト
ンを実質的に消費させて反応を完結させた後、引き続
き、塩基及びアルコールの存在下、反応混合物を、更に
加熱処理して一般式(4)
【化4】 (式中、R1 及びR2 はアルキル基を示す。)で示される
α-アセチルエステルを分解させた後に、中和してβ-ケ
トエステルを得ることを特徴とするβ-ケトエステルの
製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医薬、農薬の合成
中間体として有用なα位がメチレン基であるβ-ケトエ
ステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、一般式(3)
【0003】
【化5】 (式中、R1及びR2はアルキル基を示す。)
【0004】で示されるα位がメチレン基であるβ-ケ
トエステルの製造方法としては、メチルプロピルケトン
と炭酸ジメチルとを水素化ナトリウム存在下、ジエチル
エーテル中で反応させて、メチル 3-オキソヘキサノエ
ートを合成する方法(J.Chem.Soc.Perkin Trans.I.,139
7(1995))や、メチルヘキシルケトンと炭酸ジエチルと
を水素化ナトリウム存在下、ジオキサン中で反応させ
て、エチル 3-オキソノナノエートを合成する方法(特
開昭63-258872号公報)が開示されている。しかしなが
ら、上記の方法では、いずれも工業的に取り扱いが困難
な水素化ナトリウムを用いなければならず、又同時に、
目的とするα位がメチレン基であるβ-ケトエステルと
の分離が困難な副生成物である一般式(4)
【0005】
【化6】 (式中、R1及びR2はアルキル基を示す。)
【0006】で示されるα-アセチルエステル(α位が
メチン基であるβ-ケトエステル)が多く生成する等の
問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、即
ち、上記問題点を解決し、一般式(1)で示されるメチ
ル(アルキルメチル)ケトンから選択的にα位がメチレ
ン基であるβ-ケトエステルを得ることが出来る、工業
的に好適なβ-ケトエステルの製造方法を提供するもの
である。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の課題は、一般式
(1)
【0009】
【化7】 (式中、R1はアルキル基を示す。)
【0010】で示されるメチル(アルキルメチル)ケト
ンと、一般式(2)
【0011】
【化8】 (式中、R2はアルキル基を示す。)
【0012】で示される炭酸ジアルキルとを塩基の存在
下で反応させて、一般式(3)
【化9】 (式中、R1及びR2はアルキル基を示す。)
【0013】で示されるα位がメチレン基であるβ-ケ
トエステル及び/又はその塩を生成させ、原料のメチル
(アルキルメチル)ケトンを実質的に消費させて反応を
完結させた後、引き続き、塩基及びアルコールの存在
下、反応混合物を、更に加熱処理して一般式(4)
【0014】
【化10】 (式中、R1 及びR2 はアルキル基を示す。)
【0015】で示されるα-アセチルエステルを分解さ
せた後に、 中和してβ-ケトエステルを得ることを特徴
とするβ-ケトエステルの製造方法によって解決され
る。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の反応において使用する一
般式(1)で示されるメチル(アルキルメチル)ケトン
中のR1はアルキル基である。アルキル基としては、特
に炭素数1〜15のアルキル基が好ましく、例えば、メチ
ル基、エチル基、プロピル基(直鎖状又は分岐状)、ブ
チル基(直鎖状又は分岐状)、ペンチル基(直鎖状又は
分岐状)、ヘキシル基(直鎖状又は分岐状)、ヘプチル
基(直鎖状又は分岐状)、オクチル基(直鎖状又は分岐
状)、ノニル基(直鎖状又は分岐状)、デシル基(直鎖
状又は分岐状)、ウンデシル基(直鎖状又は分岐状)、
ドデシル基(直鎖状又は分岐状)、トリデシル基(直鎖
状又は分岐状)、テトラデシル基(直鎖状又は分岐
状)、ペンタデシル基(直鎖状又は分岐状)が挙げられ
るが、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、
n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル
基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデ
シル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシ
ル基、n-ペンタデシル基が挙げられる。
【0017】本発明の反応において使用する一般式
(1)で示されるメチル(アルキルメチル)ケトンの具
体例としては、メチルエチルケトン、メチルプロピルケ
トン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、
メチルペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、メ
チルネオペンチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチ
ルイソヘキシルケトン、メチルネオヘキシルケトン、メ
チルヘプチルケトン、メチルイソヘプチルケトン、メチ
ルネオヘプチルケトン、メチルオクチルケトン、メチル
イソオクチルケトン、メチルネオオクチルケトン、メチ
ルノニルケトン、メチルイソノニルケトン、メチルネオ
ノニルケトン、メチルデシルケトン、メチルイソデシル
ケトン、メチルネオデシルケトン、メチルウンデシルケ
トン、メチルイソウンデシルケトン、メチルネオウンデ
シルケトン、メチルドデシルケトン、メチルイソドデシ
ルケトン、メチルネオドデシルケトン、メチルトリデシ
ルケトン、メチルイソトリデシルケトン、メチルネオト
リドデシルケトン、メチルテトラデシルケトン、メチル
イソテトラデシルケトン、メチルネオテトラデシルケト
ン、メチルペンタデシルケトン、メチルイソペンタデシ
ルケトン、メチルネオペンタデシルケトン、メチルヘキ
サデシルケトン、メチルイソヘキサデシルケトン、メチ
ルネオヘキサデシルケトンが挙げられるが、好ましくは
メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブ
チルケトン、メチルペンチルケトン、メチルヘキシルケ
トン、メチルヘプチルケトン、メチルオクチルケトン、
メチルノニルケトン、メチルデシルケトン、メチルウン
デシルケトン、メチルドデシルケトン、メチルトリデシ
ルケトン、メチルテトラデシルケトン、メチルペンタデ
シルケトンが使用される。
【0018】本発明の反応において使用する一般式
(2)で示される炭酸ジアルキル中のR 2はアルキル基
である。アルキル基としては、特に炭素数1〜10のアル
キル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロ
ピル基(直鎖状又は分岐状)、ブチル基(直鎖状又は分
岐状)、ペンチル基(直鎖状又は分岐状)、ヘキシル基
(直鎖状又は分岐状)、ヘプチル基(直鎖状又は分岐
状)、オクチル基(直鎖状又は分岐状)、ノニル基(直
鎖状又は分岐状)、デシル基(直鎖状又は分岐状)が挙
げられるが、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル
基(直鎖状又は分岐状)、ブチル基(直鎖状又は分岐
状)が挙げられる。
【0019】本発明の反応において使用する一般式
(2)で示される炭酸ジアルキルの具体例としては、炭
酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジn-プロピル、炭酸ジ
i-プロピル、炭酸ジn-ブチル、炭酸ジi-ブチル、炭酸ジ
t-ブチル、炭酸ジn-ペンチル、炭酸ジi-ペンチル、炭酸
ジt-ペンチル、炭酸ジn-ヘキシル、炭酸ジi-ヘキシル、
炭酸ジt-ヘキシル、炭酸ジn-ヘプチル、炭酸ジi-ヘプチ
ル、炭酸ジt-ヘプチル、炭酸ジn-オクチル、炭酸ジi-オ
クチル、炭酸ジt-オクチル、炭酸ジn-ノニル、炭酸ジi-
ノニル、炭酸ジt-ノニル、炭酸ジn-デシル、炭酸ジi-デ
シル、炭酸ジt-デシルが挙げられるが、好ましくは炭酸
ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジn-プロピル、炭酸ジi-
プロピル、炭酸ジn-ブチル、炭酸ジi-ブチル、炭酸ジt-
ブチルが使用される。これら炭酸ジアルキルの使用量
は、メチル(アルキルメチル)ケトンに対して好ましく
は1〜50倍モル、更に好ましくは1.5〜10倍モルである。
【0020】本発明の反応において使用する塩基は金属
アルコラート、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属
のアルコラートであり、その具体例としては、ナトリウ
ムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムn-プ
ロポキシド、ナトリウムi-プロポキシド、ナトリウムn-
ブトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムメトキ
シド、カリウムエトキシド、カリウムn-プロポキシド、
カリウムi-プロポキシド、カリウムn-ブトキシド、カリ
ウムt-ブトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシ
ウムエトキシド、マグネシウムn-プロポキシド、マグネ
シウムi-プロポキシド、マグネシウムn-ブトキシド、カ
ルシウムメトキシド、カルシウムエトキシド、カルシウ
ムn-プロポキシド、カルシウムi-プロポキシドが挙げら
れるが、好ましくはナトリウムメトキシド、ナトリウム
エトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシ
ド、更に好ましくはナトリウムメトキシドが使用され
る。これら金属アルコラートの使用量は、メチル(アル
キルメチル)ケトンに対して好ましくは0.5〜2.5倍モ
ル、更に好ましくは1.0〜2.0倍モルである。
【0021】前記金属アルコラートは、粉末又は低級ア
ルコール溶液のいずれの状態で用いても良い。前記低級
アルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロ
パノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノー
ル、t-ブタノールが挙げられる。この時使用する低級ア
ルコールの量は、金属アルコラートに対して好ましくは
1〜30重量倍、更に好ましくは2〜20重量倍である。
【0022】本発明の反応では溶媒を使用しても良く、
例えば、トルエン、エチルベンゼン、クメン、n-ブチル
ベンゼン、i-ブチルベンゼン、s-ブチルベンゼン、t-ブ
チルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、
o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルトルエ
ン、シメン、t-ブチルトルエン、o-ジエチルベンゼン、
p-ジエチルベンゼン、m-ジエチルベンゼン、トリメチル
ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタ
ン、i-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-ノナン、
n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-トリデカン、
n-テトラデカン、n-ペンタデカン等の鎖状の脂肪族炭化
水素類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオク
タン等の環状の脂肪族炭化水素類が好適に使用される。
これら溶媒の使用量は、メチル(アルキルメチル)ケト
ンに対して好ましくは1〜80重量倍、更に好ましくは1〜
40重量倍である。
【0023】本発明の反応は、塩基(金属アルコラー
ト)の存在下、メチル(アルキルメチル)ケトンと炭酸
ジアルキルを液相で接触させることが好ましく、例え
ば、金属アルコラート、メチル(アルキルメチル)ケト
ン及び炭酸ジアルキルを混合し、加熱攪拌する等の方法
によって、反応液を全還流させながら、又は、反応
液の一部(生成するアルコール等)を留出させながら、
常圧下又は減圧下で行われる。その際の反応温度は、好
ましくは30〜150℃、更に好ましくは60〜120℃である。
【0024】本発明の反応では、塩基(金属アルコラー
ト)の存在下、メチル(アルキルメチル)ケトンと炭酸
ジアルキルを液相で接触させることで、一般式(3)
【0025】
【化11】 (式中、R1及びR2はアルキル基を示す。)
【0026】で示される目的とするα位がメチレン基で
あるβ-ケトエステルとの分離が困難な副生成物である
一般式(4)
【0027】
【化12】 (式中、R1及びR2はアルキル基を示す。)
【0028】で示されるα-アセチルエステル(α位が
メチン基であるβ-ケトエステル)が同時に生成する
が、このα-アセチルエステルは、目的とするα位がメ
チレン基であるβ−ケトエステル及び/又はその塩を生
成させて反応を完結させた(原料のメチル(アルキルメ
チル)ケトンが実質的に消費された)後、引き続き、塩
基(金属アルコラート)及びアルコールの存在下で反応
混合物を加熱処理することによって選択的に分解するこ
とが出来る。即ち、反応液を全還流させながら反応さ
せた場合には、反応系内のアルコールをそのまま用い
て、或いは、反応液の一部(生成するアルコール等)
を留出させながら反応させた場合には、新たにアルコー
ルを反応系内に添加するか、又は前記反応中に留出させ
た反応液の一部(生成するアルコール等)を再び反応系
内に添加するかのいずれかの方法によってアルコールを
存在させて、好ましくは30〜150℃、更に好ましくは60
〜120℃で反応混合物を加熱処理(例えば、全還流)し
て、副生成物であるα-アセチルエステル(α位がメチ
ン基であるβ-ケトエステル)のみを選択的に分解する
ことが出来る。
【0029】反応液の一部(生成するアルコール等)を
留出させながら反応させた場合、α-アセチルエステル
(α位がメチン基であるβ-ケトエステル)の分解に必
要なアルコールの添加量は、留出液に対して好ましくは
0.1〜1重量倍、更に好ましくは0.15〜0.75重量倍であ
る。分解に要する時間は、反応温度、反応スケールに著
しく影響を受けるが好ましくは0.5〜50時間、更に好ま
しくは1〜20時間、特に好ましくは2〜10時間である。
【0030】以上のようにして得られる、目的とするα
位がメチレン基であるβ-ケトエステルは、硫酸、塩
酸、硝酸、リン酸等の無機酸;シュウ酸、酢酸等の有機
酸で反応混合物を中和した後、蒸留や再結晶等の公知の
方法によって分離精製される。
【0031】また、反応混合物を中和後、或いは蒸留や
再結晶等による精製後に、尚も目的とするα位がメチレ
ン基であるβ-ケトエステル中に副生成物であるα-アセ
チルエステル(α位がメチン基であるβ-ケトエステ
ル)が混在している場合には、再び前記の条件下で加熱
処理を行い、α-アセチルエステルのみを選択的に分解
することで、より高い純度のα位がメチレン基であるβ
-ケトエステルを得ることが出来る。
【0032】
【実施例】次に、実施例及び比較例を用いて、本発明を
具体的に説明する。なお、収率は仕込みメチル(アルキ
ルメチル)ケトン基準である。
【0033】実施例1 ナトリウムメトキシド粉末16.2g(0.3mol)、炭酸ジメチ
ル108.1g(1.2mol)の懸濁液を攪拌しながら90℃まで加熱
した後、全還流条件下でメチルエチルケトン14.4g(0.2m
ol)を10分かけて滴下し、これを15分間全還流させて目
的とするメチル3-オキソペンタノエートのナトリウム塩
を含む反応混合物を生成させた(反応を完結させた)
後、更に5時間全還流させた。その後、反応混合物を冷
却し、10℃以下を保ちながら希塩酸で中和した後、有機
相を分離した。この有機相をガスクロマトグラフィーに
より分析したところ、目的とするメチル 3-オキソペン
タノエート16.9g(収率64.9%)、副生成物であるメチル
2-メチル-3-オキソブチレート0.7g(収率2.7%)が生成し
ていた。この時の目的物と副生成物の生成モル比は96:
4であった。この溶液を減圧蒸留(20torr/75〜78℃)し、
メチル 3-オキソペンタノエート16.1g(収率61.9%)を単
離した。
【0034】比較例1 ナトリウムメトキシド粉末16.2g(0.3mol)、炭酸ジメチ
ル108.1g(1.2mol)の懸濁液を攪拌しながら90℃まで加熱
した後、全還流条件下でメチルエチルケトン14.4g(0.2m
ol)を10分かけて滴下し、これを15分間全還流させて目
的とするメチル3-オキソペンタノエートのナトリウム塩
を含む反応混合物を生成させた(反応を完結させた)。
その後、更に全還流させることなく、反応混合物を冷却
し、10℃以下を保ちながら希塩酸で中和した後、有機相
を分離した。その結果、目的とするメチル 3-オキソペ
ンタノエート17.2g(収率66.1%)、副生成物であるメチ
ル 2-メチル-3-オキソブチレート7.0g(収率26.9%)が生
成していた。この時の目的物と副生成物の生成モル比は
71:29であった。
【0035】実施例2 ナトリウムメトキシド粉末16.2g(0.3mol)、炭酸ジメチ
ル108.1g(1.2mol)の懸濁液を攪拌しながら90℃まで加熱
した後、メタノールと炭酸ジメチルの混合溶液を常圧下
で留去しながらメチルエチルケトン14.4g(0.2mol)を10
分かけて滴下し、引き続き、常圧下でメタノールと炭酸
ジメチルの混合溶液を留去しながら20分間反応させて反
応を完結させ、次いで、この反応混合物にメタノール5.
1gを添加し、更に4時間全還流させた。その後、反応混
合物を冷却し、10℃以下を保ちながら希塩酸で中和した
後、有機相を分離した。その結果、目的とするメチル 3
-オキソペンタノエート17.1g(収率65.7%)、副生成物で
あるメチル 2-メチル-3-オキソブチレート0.5g(収率1.9
%)が生成していた。この時の目的物と副生成物の生成
モル比は97:3であった。
【0036】比較例2 ナトリウムメトキシド粉末16.2g(0.3mol)、炭酸ジメチ
ル108.1g(1.2mol)の懸濁液を攪拌しながら90℃まで加熱
した後、メタノールと炭酸ジメチルの混合溶液を常圧下
で留去しながらメチルエチルケトン14.4g(0.2mol)を10
分かけて滴下し、引き続き、常圧下でメタノールと炭酸
ジメチルの混合溶液を留去しながら20分間反応させた
(反応を完結させた)。その後、更に全還流させること
なく、反応混合物を冷却し、10℃以下を保ちながら希塩
酸で中和した後、有機相を分離した。その結果、目的と
するメチル 3-オキソペンタノエート17.4g(収率66.8
%)、副生成物であるメチル 2-メチル-3-オキソブチレ
ート5.5g(収率21.1%)が生成していた。この時の目的物
と副生成物の生成モル比は76:24であった。
【0037】実施例3 実施例2で用いたナトリウムメトキシド粉末16.2g(0.3m
ol)をナトリウムメトキシドを28重量%含有するメタノ
ール溶液57.9g(0.3mol)に変えたこと以外は、実施例2
と同様に反応と加熱処理を行った。その結果、目的とす
るメチル 3-オキソペンタノエート16.4g(収率63.0%)、
副生成物であるメチル 2-メチル-3-オキソブチレート0.
6g(収率2.3%)が生成していた。この時の目的物と副生
成物の生成モル比は96:4であった。
【0038】実施例4 実施例2において、ナトリウムメトキシド粉末と炭酸ジ
メチルの懸濁液にシクロヘキサン30gを加え、反応温度
を80℃に変えたこと以外は、実施例2と同様に反応と加
熱処理を行った。その結果、目的とするメチル 3-オキ
ソペンタノエート16.6g(収率63.8%)、副生成物である
メチル 2-メチル-3-オキソブチレート0.6g(収率2.3%)
が生成していた。この時の目的物と副生成物の生成モル
比は97:3であった。
【0039】実施例5 実施例2で用いたナトリウムメトキシド粉末16.2g(0.3m
ol)をナトリウムエトキシド20.4g(0.3mol)に、炭酸ジメ
チル72.1g(0.8mol)を炭酸ジエチル94.5g(0.8mol)に変え
たこと以外は、実施例2と同様に反応と加熱処理を行っ
た。その結果、目的とするエチル 3-オキソペンタノエ
ート18.2g(収率63.1%)、副生成物であるエチル 2-メチ
ル-3-オキソブチレート0.6g(収率2.1%)が生成してい
た。この時の目的物と副生成物の生成モル比は97:3で
あった。
【0040】実施例6 実施例2で用いたメチルエチルケトン14.4g(0.2mol)を
メチルブチルケトン20.0g(0.2mol)に変えたこと以外
は、実施例2と同様に反応と加熱処理を行った。その結
果、目的とするメチル 3-オキソヘプタノエート25.8g
(収率81.5%)、副生成物であるメチル 2-アセチルペン
タノエート1.2g(収率3.8%)が生成していた。この時の
目的物と副生成物の生成モル比は96:4であった。この
反応混合物を減圧蒸留(4〜5torr/77〜80℃)し、メチル
3-オキソヘプタノエート24.8g(収率78.4%)を単離し
た。
【0041】実施例7 ナトリウムメトキシド粉末16.2g(0.3mol)、炭酸ジメチ
ル72.1g(0.8mol)の懸濁液を攪拌しながら90℃まで加熱
した後、メタノールと炭酸ジメチルの混合溶液を常圧下
で留去しながらメチルトリデシルケトン45.3g(0.2mol)
を10分かけて滴下し、引き続き、常圧下でメタノールと
炭酸ジメチルの混合溶液を留去しながら20分間反応させ
て反応を完結させ、次いで、この反応混合物にメタノー
ル5.0gを添加し、更に4時間全還流させた。その後、反
応混合物にトルエンを加えて、冷却し、10℃以下を保ち
ながら希塩酸で中和した後、有機相を分離した。その結
果、目的とするメチル 3-オキソヘキサデカノエート48.
3g(収率84.9%)、副生成物であるメチル 2-アセチルテ
トラデカノエート1.7g(収率3.0%)が生成していた。こ
の時の目的物と副生成物の生成モル比は97:3であっ
た。この反応混合物中の溶媒を減圧下で留去し、釜残に
メタノール20mlと水40mlを加えて一旦50℃まで加温して
均一溶液にしたものを、5℃まで冷却した。析出した結
晶を濾過し、30℃で減圧乾燥させて、無色粉末の3-オキ
ソヘキサデカノエート44.5g(収率78.2%)を単離した。
【0042】
【発明の効果】本発明により、メチル(アルキルメチ
ル)ケトンと炭酸ジアルキルを反応させ、副生成物であ
るα-アセチルエステル(α位がメチン基であるβ-ケト
エステル)を選択的に分解させて、高選択率で目的とす
るα位がメチレン基であるβ-ケトエステルを得ること
が出来る、工業的に好適なβ-ケトエステルの製造方法
を提供することが出来る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山田 修二 山口県宇部市大字小串1978番地の5 宇部 興産株式会社宇部研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(1) 【化1】 (式中、R1はアルキル基を示す。)で示されるメチル
    (アルキルメチル)ケトンと、一般式(2) 【化2】 (式中、R2はアルキル基を示す。)で示される炭酸ジ
    アルキルとを塩基の存在下で反応させて、一般式(3) 【化3】 (式中、R1及びR2はアルキル基を示す。)で示される
    α位がメチレン基であるβ−ケトエステル及び/又はそ
    の塩を生成させて反応を完結させ、引き続き、その反応
    混合物を塩基及びアルコールの存在下で更に加熱処理し
    た後、中和してβ-ケトエステルを得ることを特徴とす
    るβ-ケトエステルの製造方法。
  2. 【請求項2】塩基が金属アルコラートである請求項1記
    載のβ-ケトエステルの製造方法。
  3. 【請求項3】加熱処理の温度が30〜150℃である請求項
    1記載のβ-ケトエステルの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN102515997A (zh) * 2011-11-29 2012-06-27 宁波蓝鼎电子科技有限公司 一种以离子液体为反应介质制备碳酸二甲酯衍生物的方法

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