JPH11335182A - 炭素繊維強化炭素複合材料からなるブレーキ用材料 - Google Patents

炭素繊維強化炭素複合材料からなるブレーキ用材料

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JPH11335182A
JPH11335182A JP10156893A JP15689398A JPH11335182A JP H11335182 A JPH11335182 A JP H11335182A JP 10156893 A JP10156893 A JP 10156893A JP 15689398 A JP15689398 A JP 15689398A JP H11335182 A JPH11335182 A JP H11335182A
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carbon fiber
carbon
brake
pitch
composite material
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Minoru Takahata
稔 高畠
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Petoca Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 (i) 炭素繊維の体積含有率が30〜
65容積%、(ii)原料炭素繊維の(イ) 結晶子寸法Lc
(002)が10nm以上、 (ロ)引張弾性率が380G
Pa以上、 (ハ)室温測定時の熱伝導率が110W/mK
以上、(iii) マトリックス炭素の光学的組織は、その等
方性又は異方性領域が微細なモザイク組織である炭素繊
維強化炭素複合材料からなるブレーキ用材料。 摩擦
係数が、相対滑り速度2.5〜25.0m/secでの
測定値が0.20〜0.60。 マトリックス炭素前
駆体としてピッチ系重質油をニトロ化して得られた光学
的等方性ピッチを、原料炭素繊維または炭素繊維構造体
に含浸し、炭化、必要に応じて黒鉛化して熱処理して製
造されたブレーキ用材料。 【効果】 動摩擦係数が高い割に摩耗に強く、非酸化性
雰囲気での熱安定性が極めて優れ、ブレーキ操作時の発
熱で変質、変形しにくい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い動摩擦係数を
有し、かつ摩耗量が少ない利点を持つ、炭素繊維強化炭
素複合材料からなるブレーキ用材料に関する。より詳細
には、本発明のブレーキ用材料(摺動材料)は、同一材
料同士或いは金属等の面と摺動する際の摩擦力が大き
く、しかも摩耗が少ない利点を有しており、ブレーキデ
ィスク材料、ブレーキドラム材料、ブレーキライニング
材料、ブレーキシュー材料等に用いて優れた性能を示
す。また、本発明のブレーキ用材料は、非酸化性雰囲気
での熱安定性が極めて優れていると共に、ブレーキ操作
時の大きな発熱により変質、変形することなく、また発
熱により該材料が溶融して性能が急激に劣化することも
なく、ブレーキ材料の信頼性が高い特徴を有する。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維強化炭素複合材料は、軽量であ
り、且つ高温においても高強度・高弾性率を維持し、更
に低熱膨張率、高熱伝導率等の優れた特性を有している
ため、航空宇宙機器の耐熱部品、原子力部材の他、従来
より航空機、鉄道車輌及び自動車用のブレーキ用材料と
して、特に高負荷使用の要求に対して適用が試みられて
いる。現在では、航空機関連で実用化しており、レーシ
ングカー又は次世代新幹線等のブレーキディスク材料と
しての適用化が進められている。
【0003】ブレーキディスク材としての炭素繊維強化
炭素複合材料は、耐摩耗性に優れ、摩擦係数が安定し、
かつ安価であることが必要であり、各炭素繊維強化炭素
複合材料製造業者は要求特性を満足するべく原材料であ
る強化材炭素繊維及びマトリックスの種類、強化材炭素
繊維の配列方法、織り形態、炭素複合材料の成形(製造
方法)等に独自のものを開発している。 (i) これらのうち、ブレーキの摺動特性及び製作コスト
に最も影響するのは、ブレーキ用材料の製造方法であ
り、現状では主として樹脂含浸炭素化法、化学的気相蒸
着法(CVD法)及び加圧炭素化法(HIP法)等があ
る。
【0004】(イ) 樹脂含浸炭素化法は、炭素繊維に樹脂
を含浸したプリプレグを作って成形した後、窒素やアル
ゴン等の非酸化性ガス雰囲気中で熱処理(炭素化処理:
約1000℃)し、更に2000℃以上で黒鉛化処理をする方法
である。この場合、炭素化や黒鉛化の工程で分解ガスが
放出されて空孔が生じ、低密度、低強度となるため、再
度樹脂を含浸させ炭素化黒鉛化処理を行う。この工程を
繰り返して高密度な緻密化された炭素繊維強化炭素複合
材料を作製する。このように含浸緻密化工程が極めて煩
雑で製造に長時間を費やし、量産化も困難であるため製
品価格が極めて高価になっている。
【0005】(ロ)CVD法は、減圧下にメタン、プロパ
ン、ベンゼン等の原料ガスを1000℃以上の温度で熱分解
して得られる炭素を炭素繊維構造物の上に直接蒸着させ
た後に炭化処理する緻密化工程を繰り返し、最後に1000
〜3000℃で熱処理して製造される。しかし、この方法も
処理時間は数ヶ月を必要とし、上述の樹脂含浸炭素化法
と同様に生産性や経済性の面から不利である。
【0006】(ハ)加圧炭化法は、熱間等方加圧(HI
P)装置を用いて、不活性ガスを圧力媒体として炭素繊
維強化炭素複合材料前駆体に数10MPa以上の高圧力
を加えながら炭素化し、更に不活性ガス中で約2000
℃で加熱することにより黒鉛化処理する方法である。こ
の場合、製造時間の短縮化に伴う製造価格の低下を狙っ
たものであるが、種々の摩擦摩耗試験の結果、この工法
は前二者の緻密化処理材に比べ摩擦係数のバラツキ及び
比摩耗量が大きく、現状ではブレーキディスク材への適
用に不安が残ることが特開平8−326803号公報で
指摘されている。また、炭素繊維強化炭素複合材料のマ
トリックス/炭素繊維界面のボイド及び微細クラックが
前二者に比べて多いことに起因していると言われてい
る。
【0007】(ii)更なる高密度化処理として、マトリッ
クス樹脂を再度含浸して再焼成し炭素化する操作を反復
する方法やCVD法等の方法により、焼成の際に生じる
気孔を埋める方法は、何れにしろ必要とされている。こ
のような、従来からの炭素繊維強化炭素複合材料は、摩
擦材として使用した場合、強度不足やマトリックス/繊
維間の界面状況が不十分なことにより耐摩耗性及び摩擦
係数(μ)安定性の上で改良すべき点があると言える。
これらの問題点に対して、特許第02578354号で
は、高強度を有し、耐熱、耐摩耗性の優れた摩擦材及び
その製法を開発し、具体的には炭素繊維及びバインダー
を含む原料素材を成形、焼成した炭素繊維強化炭素複合
材料に1〜10vol%の樹脂を含浸、硬化せしめたも
のであり、さらに400℃前後で後硬化せしめても良い
としている。この場合、炭素繊維の気孔に熱硬化性樹脂
を含浸させて硬化の段階で処理を終了させるのは、樹脂
の炭素化による強度低下を抑えるためであり、さらにこ
のようにして得られた摩擦材の使用中の摩擦過程で安定
した炭化膜を生成させて耐摩耗、摩擦安定性を向上させ
るためである。
【0008】含浸する樹脂量を炭素繊維強化炭素複合材
料の体積の1〜10vol%と限定したのは、1vol
%未満では上記効果が期待できず、10vol%を越え
ると本来の高負荷での使用目的に対してフェード等の現
象により本来の効果を損なうためである。このために含
浸樹脂量が制限されている。この方法は、炭素繊維強化
炭素複合材料に存在するマトリックス内或いはマトリッ
クス/繊維界面に発生した亀裂、剥離等の欠陥を樹脂等
の成分により埋め込み、炭素繊維強化炭素複合材料の強
度向上改善を図り、従来材料が有する欠陥に起因する異
常摩耗を低減させる意味で優れた工法である。何れにし
ろ摺動摩擦時における発生熱により樹脂成分の炭素化層
が形成されることになり、材料強度の低下が余儀なくさ
れるため寿命の面での課題が残されている。
【0009】(iii) ディスクパッド型ブレーキは、回転
するディスクにパッドを押し付けて制動力を得るもので
ある。押し付けられることにより、擦れ合う摩擦材の摺
動部分は摩擦力を生じ、これを制動力として利用する。
摺動する部分を持つ表面全体を摺動面と呼び、この摺動
面の中には非摺動部分が含まれる。ディスクの摺動面
は、制動中に摺動部分と非摺動部分が連続的に移動する
が、パッドの摺動面は、制動中に常に摺動することが一
般的である。ディスクの有する摩擦材表面の摺動部分は
大気に曝されるため、摩擦熱による酸化の侵襲を受け易
い。
【0010】これに対し、パッドの摺動面は制動中常時
摺動するため、制動中に摺動面が大気に曝されないが、
単位表面積あたりの摺動時間が長くなり、摩擦熱受熱量
も高くなる。パッドはその裏面に押し付け及び切り離し
用の駆動装置を配する必要があるため、裏面への断熱を
考慮する必要もある。このようにディスクパッド型ブレ
ーキでは、ディスクとパッドの役割分担や使用条件が異
なるため、その摩擦材に各々独自の特性を付与すること
が重要である。
【0011】(iv)炭素繊維強化炭素複合材料は、その構
成要素をピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、レーヨ
ン系炭素繊維等、熱硬化性樹脂炭素、熱可塑性樹脂炭
素、及びCVD炭素の中から適宜強化繊維系とマトリッ
クス炭素系を組み合わせて作製される。従って、複数の
複合材料構成要素成分の組み合わせも可能である。しか
し、ピッチ系の炭素繊維とマトリックス炭素を使用して
作製される炭素繊維強化炭素複合材料は、PAN系炭素
繊維と熱硬化性樹脂炭素とで作製される炭素繊維強化炭
素複合材料と比べ、摩擦熱の吸収と放散に寄与する熱伝
導率が高めやすいと共に、耐酸化性に優れ、摩擦熱によ
る酸化消耗を低減することができると期待される。
【0012】(v) 摩擦熱はブレーキパッドとブレーキロ
ータ間で発生し、その大半が一時的にブレーキロータの
温度上昇という形で蓄えられ、その後大気に放出され
る。ベンチレーティッドフィンをディスクブレーキに付
けるのは放熱を速めるためである。しかし、減速Gが高
い領域では一時的な温度上昇が大きく、これを小さくす
るためには熱容量を上げる必要がある。最高巡航速度の
速い車ほど、車輌重量に対するブレーキユニットサイズ
が大きく、温度上昇を抑えている。ロータ重量は小型乗
用車だと前輪片輪だけで約5kgf〜8kgfである。ロータ
を大きくすると取り付け部も大きくなる。これは、運動
性能、燃費、スペース上の制約などを考えると好ましい
ことではない。そこで、サイズを上げずに能力を上げる
ための材料開発が必要となる。ロータには耐熱構造部材
としての強度と高い熱伝導率が必要である。特に、耐熱
亀裂性に関しては強度と熱伝導率の適度なバランスが重
要で、単に高温強度が高いだけでは良い結果は得られな
い。
【0013】(vi)軽量、高強度、耐熱性、高熱伝導
性、低熱膨張性等の諸特性を活かした炭素繊維強化炭素
複合材料製ブレーキ材が期待されている。炭素繊維強化
炭素複合材料製ブレーキ材料では、摩擦係数μは一般に
使用温度が高いほど増加し、これに伴い摩耗も増加する
(μが低い時は、摩耗は酸化に支配され、μが高いほど
摩耗はアブレーションに支配される)。200℃以下の
使用温度ではμが低く、また高温では損傷が大きく、温
度管理が難しい。また、黒鉛化工程での熱処理温度が高
いほどμが高くなる傾向にあるとも言われている。しか
し、通常の鋳鉄ロータ、樹脂マトリックスパッドの組み
合わせと比較すると、耐熱性が卓越しており、特に、高
速域での制動性能が重視され、コストの制限が少ない戦
闘機、旅客機、レーシングカーなどで用いられているの
が現状である。低温域でのμ向上、耐久性、低コスト等
の課題解決が望まれている。
【0014】(vii)炭素繊維強化炭素複合材料製ブレー
キディスクの現状は、高速車輌における摺動環境では、
摩擦面については良好な面状態であるが、炭素繊維強化
炭素複合材料製ブレーキディスクの最高使用温度が約9
00℃にもなることから、内外周端面でマトリックスが
損耗する酸化損耗が認められる。その程度は、外周より
も内周で顕著である。これはディスクの回転による軸方
向から外周への空気の流れに影響されたものと思われ
る。この様な部分には酸化防止処理を施す必要がある。
この問題は、炭素繊維強化炭素複合材料の耐酸化性能向
上を狙い、耐酸化性能の優れたセラミックス粉末をマト
リックス中に混在させることにより解決の方向性を見出
すことができるかに思えるが、該セラミックスの相手材
料攻撃性が高く、低速における摩擦係数が改善されてい
るが、高速時にμが下がるという問題が生じる。該セラ
ミックスの研削効果により、異常摩耗を引き起こし、機
械的な破壊にまでも及ぶことがある。
【0015】また、セラミックス混在系の製造熱処理過
程で、母相マトリックスの前駆体樹脂類とセラミックス
が反応し、得られる材料の強度が低下することがあり、
好ましくない。当該セラミックス自体の熱膨張係数は、
炭素系材料のそれと比較し大きなものであり、いわゆる
熱膨張率のミスマッチングが発生し、複合材料の破壊に
までは到らぬものの、材料系内に多数の微細クラックを
有するものとなる。耐酸化性能の向上をはかる上では、
非摺動部への耐酸化処理を目的とした材料のコーティン
グ又は、耐酸化性能を付与することができる材料系ペー
ストのペインティングが実行上は効果的であるとされて
いる。この様な対処を必要とする炭素繊維強化炭素複合
材料ではあるが、抜群の耐熱性と低熱膨張性に起因した
寸法安定性から、当該用途分野では必須の材料系であ
り、摩擦摩耗特性の改善とあわせて耐酸化性能の向上へ
の期待は大きい。
【0016】(viii) 炭素繊維強化炭素複合材料製ブレ
ーキ材では、当該材料系が持ち備えた高熱伝導特性が原
因で、トラブルを発生することがある。ディスクパッド
形式では、自動車の場合油圧式パッドとなるため、摩擦
熱がキャリパーに伝わり、べーパロックすることもあ
る。いたずらに熱伝導率を向上させることは好ましくな
い。摩擦熱は、発生と同時に材料の熱容量に応じ、炭素
繊維強化炭素複合材料自体を温める。そこで当該ディス
ク材料を車軸に固定するための軸受けに熱伝達される。
温度上昇の点でブレーキ装置各部の内で最も厳しい箇所
は軸受けである。軸受けには、高速回転での軸受け自体
の発熱による温度上昇にブレーキ時のディスクからの輻
射等による温度上昇が加算される。軸受け内に封入して
あるグリースの仕様限度温度は190℃であり、ブレー
キが常用される場合を想定した繰り返しブレーキ時にお
いても軸受けの上限温度はグリースの使用限度温度以下
にすることが必要である。
【0017】(ix) その様なことから、炭素繊維強化炭
素複合材料のロータディスクには、空冷孔が加工されて
いる。ディスク断面にベンチレーティドホールが外周か
ら中心に向けて加工されている。ブレーキ材炭素繊維強
化炭素複合材料に強度が必要となる理由がここにもあ
る。炭素繊維強化炭素複合材料をブレーキ材料とする際
に、一般的に知得されている課題として、低速、低温、
低荷重の3条件が揃うと、摩擦係数μが安定せず、しか
も低レベルであることが知られている。実用面で改善を
望まれる点である。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】従来の炭素繊維強化炭
素複合材料からなるブレーキ材料は、成形炭化時におい
て、マトリックス内や強化材炭素繊維とマトリックスと
の界面に発生する亀裂や剥離が存在し、複合材自体の機
械的強度の不足、摩擦係数が低い割には摩耗量が多くな
るといった問題点、並びに該亀裂や該剥離を多数回マト
リックス炭素前駆体を含浸することにより、処理する必
要があるために必然的に生じる製造コストの上昇という
問題点があった。本発明では、これらの課題を解決し、
優れた機械的特性を有するとともに、低速、低温、低荷
重時においても安定した高いレベルの摩擦係数μを示す
炭素繊維強化炭素複合材料からなるブレーキ用材料を経
済的に、更には好適に成形された状態で提供することを
目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記の課題に
ついて種々検討した結果、(イ) 炭素繊維の体積含有率を
特定の範囲とし、(ロ)原料炭素繊維として、特定の組織
及び特性を有する炭素繊維、好ましくは、高温で熱処理
した高密度・高熱伝導率を有するピッチ系(高弾性率)
炭素繊維又は該炭素繊維からなる構造体を用い、(ハ)マ
トリックス炭素の光学的組織を制御することにより、マ
トリックス内部や繊維/マトリックス界面部分に亀裂・
剥離等の欠陥の発生が少なく、機械的特性に優れたブレ
ーキ用材料にすることができ、且つ該ブレーキ用材料の
動摩擦係数が高くて摺動による摩耗量を減少させるばか
りか、酸化損耗をも減少させ、特に、低温、低速、低荷
重下でも動摩擦係数が高くできることを見出し、本発明
を完成するに至った。
【0020】即ち、本発明は: (i) ブレーキ材料を構成する炭素繊維の体積含有率
が30〜65容積%であり、(ii)原料炭素繊維原料の
(イ) 結晶子寸法Lc(002)が10nm以上で、 (ロ)
引張弾性率が380GPa以上で、 (ハ)室温測定時の熱
伝導率が110W/mK以上であり、(iii) マトリック
ス炭素の光学的組織が等方性又は異方性領域が微細なモ
ザイク組織である炭素繊維強化炭素複合材料からなるブ
レーキ用材料を提供する。また、 摩擦係数が、同じ材料同士で互いに平滑な平面に対
して相対滑り速度2.5〜25.0m/secで測定し
た時に、0.20〜0.60である点にも特徴を有す
る。また、
【0021】 炭素繊維がピッチ系炭素繊維である点
にも特徴を有する。また、 炭素繊維強化炭素複合材料が、マトリックス炭素前
駆体としてピッチ系重質油をニトロ化して得られた光学
的等方性ピッチを、炭素繊維または炭素繊維構造体に含
浸し、炭化、必要に応じて黒鉛化して熱処理することに
より製造される点にも特徴を有する。また、 ブレーキ用材料製造時の最高熱処理温度が1500
℃以上2500℃以下である点にも特徴を有する。
【0022】以下、本発明を詳細に説明する。 〔1〕ブレーキ用材料の特徴: (i) 炭素繊維体積含有率:炭素繊維体積含有率は30〜
65容積%である。炭素繊維体積含有率が30容積%未
満の場合には、低温低速時における動摩擦係数0.2を
確保することが難しくなる。また炭素繊維強化炭素複合
材料の機械的強度が低くなるので好ましくない。また、
炭素繊維体積含有率が65容積%を越える場合には、炭
素繊維強化炭素複合材料内の炭素マトリックスが過少と
なり、含浸後の熱処理の際にマトリックス炭素中に隙間
が発生することを阻止することが難しくなり摩耗量が増
える。更にはマトリックス炭素の容積%が減少すること
により、材料としての各種特性の異方性が向上し、全体
的には従来材料に近い特性を有する炭素繊維強化炭素複
合材料となるので好ましくない。 従って、炭素繊維体
積含有率は、好ましくは30〜65容積%、より好まし
くは、35〜55容積%である。ここで、炭素繊維体積
含有率とは、主に炭素マトリックスと共にブレーキ用材
料を構成する炭素繊維強化炭素複合材料中に存在する炭
素繊維の体積当たりの百分率であり、炭素繊維強化炭素
複合材料における炭素繊維の充填量の割合を示す。
【0023】(ii) 原料炭素繊維の結晶構造及び特性:
本発明において原料炭素繊維とは、マトリックス炭素前
駆体を含浸する前の炭素繊維を指し、以下の結晶構造及
び特性を示すことが好ましい。 原料炭素繊維のX線による結晶寸法Lc(002) が1
0nm以上、より好ましくは11〜25nmである。原
料炭素繊維のX線による結晶子寸法Lc(002) が大きい
ほど得られたブレーキ材料の動摩擦係数が大きく、耐摩
耗性も高くなる傾向が見られ、このため10nm未満で
はブレーキ材としての性能が低く好ましくない。一方、
上限は特に限定されるものではないが、結晶子寸法Lc
(002) の大きな物ほど炭素繊維の製造コストが高くなる
ため、ブレーキ材としての性能向上効果を勘案し25n
m程度が好ましい範囲となる。ここで、X線による結晶
子寸法Lc(002) とは、(002) 回折線から求めた結晶子
のC軸方向の厚みのことであり、学振法により測定した
値をいう。
【0024】 原料炭素繊維の引張弾性率が380G
Pa以上である。引張弾性率の上限は特に制限されない
が、通常500GPa程度である。原料炭素繊維の引張
弾性率が380GPa未満では、耐摩耗性は比較的良好
ではあるが、動摩擦係数が低くて高速摺動時に十分な制
動が得られない。ここで炭素繊維の引張弾性率とは、引
張試験により測定されたものであり、最大破断応力の3
0%及び70%近傍2点における応力変位を、その2点
間歪み量で割った値である。
【0025】 原料炭素繊維の室温測定時の熱伝導率
が110W/mK以上である。原料炭素繊維の熱伝導率
が高いとブレーキ材としての熱伝導率も高く、ブレーキ
材の蓄熱が防げるため好ましい。原料炭素繊維の熱伝導
率が110W/mK未満では、特に耐摩耗性が要求され
る低温熱処理のブレーキ材において、熱伝導率が低くな
り、ブレーキ材の蓄熱が大きくなるため好ましくない。
熱伝導率の上限は高ければ耐熱衝撃性の面で好ましい
が、前述の様に、高熱伝導性によるトラブルの発生の原
因にもなるため、通常120W/mK程度に制限するこ
とが好ましい。また、このため、原料炭素繊維の密度が
2.0g/cc以上、好ましくは2.05g/cc以上
であることが、熱伝導率を高くする面で好ましい。な
お、原料炭素繊維の密度の上限は、なるべく高い方が熱
エネルギー吸収の点で望ましいが、製造法により若干違
いはあるが、通常では2.20g/ccが限界である。
【0026】(iii) 原料炭素繊維の種類及び形態: 1)原料炭素繊維は特に制限されないが、上記の結晶構
造や特性を持つ面からは、PAN系やレーヨン系の炭素
繊維よりも、好ましくは石油系や石炭系等のピッチから
のピッチ系炭素繊維、より好ましくは光学的異方性含有
ピッチや応力、熱により容易に光学的異方性に転化する
ピッチからのピッチ系炭素繊維が好ましい。 2)原料炭素繊維の形態としては、連続長繊維、これを
用いた織物、三次元織物、一方向配列シート、不織布
(シート)や、或いは適当な長さに切断したチョップド
ストランド、紡績糸のような短繊維も適用可能であり、
繊維形態に左右されることはない。しかし、高速摺動に
よる摩擦摩耗が想定される場合には、発生する摩擦熱も
大きく、材料にかかる熱応力負荷は大きくなるため、材
料強度のより高いものが要求され、機械的特性に優れる
連続長繊維または、連続長繊維によって構成される炭素
繊維構造体が望ましい。
【0027】(iv) 炭素繊維強化炭素複合材料中のマ
トリックス炭素の特徴:マトリックス炭素の光学的組織
は、等方性或いは光学的異方性領域が微細モザイク組織
に制御されていることが良く、このことによって、従来
の異方性を示すマトリックス炭素使用における材料の欠
点である層間剪断強度が向上改善され、各種力学特性が
優れた炭素繊維強化炭素複合材料となる。なお、マトリ
ックス炭素の光学的組織の主たる領域が光学的等方性
で、部分的に微細モザイク組織が混在したものも同等の
改善効果が見られ、本発明の範囲に含まれる。ここで
「微細」とは、光学的異方性領域最大幅の平均1μm以
下であることを言い、このような光学的組織は、以下で
説明する様に、特定の原料を用い、特定の処理によって
得られる等方性ピッチをマトリックス炭素として用いる
ことで達成される。
【0028】(v) ブレーキ用材料の摩擦特性:本発明
の炭素繊維強化炭素複合材料からなるブレーキ用材料の
摩擦係数は、同じ材料の平滑平面に対して接触面圧5k
g/cm2 、相対滑り速度2.5〜25.0m/sec
で測定したときに、0.20〜0.60、好ましくは
0.23〜0.50、最も好ましくは0.25〜0.4
5であるものが望ましい。本発明のブレーキ用材料の場
合、動摩擦係数が大きい程ブレーキとしての能力は大き
くなるが、摩擦係数が0.60を越えて大きくなると、
摩耗量の増大又は相手材料によっては摩擦相手を摩耗す
る能力が大きくなるので、ブレーキシステム全体として
のメンテナンス費用が増大するので好ましくない。ま
た、ブレーキ材料の摩擦係数が0.20未満と小さい場
合は、摩耗量が少なくなって耐摩耗性は向上するが、急
制動がかけられなくなり好ましくない。
【0029】〔II〕ブレーキ用材料の製造面からの特
徴:本発明の炭素繊維強化炭素複合材料からなるブレー
キ材料の製造方法は特に限定されるものではなく、常法
に従って、マトリックス炭素前駆体を、炭素繊維または
炭素繊維構造体に含浸し、炭化、必要に応じて黒鉛化し
て熱処理することにより製造される。しかしながら、マ
トリックスとしては、前述のような炭素組織を持たすこ
とが重要であり、このためには、ピッチ系重質油をニト
ロ化して得られた光学的等方性ピッチを、マトリックス
炭素前駆体として使用することが望ましい。また、複合
材料(ブレーキ材料)の製造時の最終熱処理温度を15
00℃以上2500℃以下と特定する点にも技術的意義
がある。
【0030】以下、原料炭素繊維、マトリックス炭素前
駆体、及び炭素繊維強化炭素複合材料の製造方法の具体
例を示す。 (i) 原料炭素繊維の製造 1)ピッチ原料、特に光学的異方性ピッチ原料を常法の
紡糸方法(メルトスピニング法、スパンボンド法、メル
トブロー法、遠心紡糸法等)により紡糸してピッチ系炭
素繊維を得る。 2)次いで、常法により、例えば酸化雰囲気中で200
〜400℃の比較的低温で熱処理して不融化繊維とし、
さらに該不融化繊維を常法により、例えば2000〜2
800℃で熱処理することにより前述のような特性を持
つ原料炭素繊維を得ることが出来る。 3)原料炭素繊維は、そのままで用いても良いが、必要
に応じて、サイジング剤処理した後、常法により成形
(賦形)加工して種々の形状の炭素繊維構造体とし用い
ても良い。
【0031】(ii) マトリックス炭素前駆体の製造 1)マトリックス炭素前駆体の原料としては、ピッチ系
重質油原料であれば、石油系石炭系等特に限定されるも
のではなく、例えば、石油系としては、石油精製におけ
る原油熱分解で生成する重質油、流動接触分解(FC
C)の残渣油、エチレンボトム油或いはこれらを分解重
合処理した重質油等を用いることができ、石炭系として
は、石炭乾留時に産出するコールタールやアスファルト
等ピッチ類を用いることができる。 2)該ピッチ系重質油原料を、所定量の硝酸又は濃硝酸
等ニトロ化試薬を添加混合反応させてニトロ化した後、
成分調整のための後処理することで、マトリックス炭素
前駆体としての等方性ピッチを得ることが出来る。ニト
ロ化は、ピッチ系重質油100重量%に対し、硝酸或い
は濃硝酸等(他に硝酸アセチル、二酸化窒素等)のニト
ロ化試薬を10〜40重量%添加し、60〜110℃の
温度で行われる。ニトロ化反応が充分に進行したら、蒸
留水等の添加によりニトロ化反応を停止し、未反応のニ
トロ化試薬を抽出等により分離し、更に必要に応じて不
活性ガス吹き込み或いは減圧蒸留等の方法により水分除
去した後、減圧蒸留により未反応軽質油分を除去するこ
とが望ましい。
【0032】(iii) 炭素繊維強化炭素複合材料の製造 1)原料炭素繊維或いこれを用いた炭素繊維構造体の表
面を、マトリックス炭素前駆体としての光学的等方性ピ
ッチにより含浸処理を施す。この場合、光学的等方性ピ
ッチは、予めテトラヒドロフラン等の極性溶媒に分散溶
解させておいてから含浸工程に処されることが、含浸液
の粘度調整の面から好ましい。極性溶媒は光学的等方性
ピッチと親和性を有するので、極性溶媒を用いると比較
的均質分散又は溶解した処理液が得られる。 2)次いで、必要に応じて硬化処理し、常法に従って
(不融化)炭化・黒鉛化を行うことにより、炭素繊維強
化炭素複合材料を得ることが出来る。 3)更に、必要に応じ、マトリックス炭素前駆体を該炭
素繊維強化炭素複合材料に再度含浸した後炭素化する緻
密化処理を繰り返しても良い。
【0033】(iv) ブレーキ用材料製造時の熱処理温度 1)本発明のブレーキ材料を構成する炭素成形物の熱処
理温度は、1500℃以上2500℃以下、好ましくは
1700℃以下2300℃以上であることが良い。得ら
れる炭素成形物のマトリックス炭素組織は、光学的に等
方性或いは異方性領域が微細なモザイク組織である。こ
の場合に、炭素成形物の熱処理温度が1500℃未満で
は、炭素成形物の引張り、曲げ、圧縮、層間剪断等の各
種力学特性の内、引張特性が低くなり、引張り、曲げ、
圧縮等の機械的強度は、等方化する傾向にあるものの、
材料自体の破壊は極端な脆性的挙動を示すようになり好
ましくない。また、マトリックス炭素は硬質化してお
り、摺動時に発生する摩耗粉も硬質であるため、摺動初
期段階は摩擦係数も低く耐摩耗性を示すものの、この摩
耗粉が、ディスク、パッド等の材料表面を傷つけ摩擦係
数が突然上昇し、摩耗量も急増する。更に、ブレーキ材
料自体が局所的に破壊を生じたりして、ブレーキとして
性能が低下するため好ましくない。
【0034】一方、炭素成形物の熱処理温度が2500
℃よりも高いと、マトリックス炭素の光学的組織は等方
性又は異方性領域が微細なモザイク組織とはならず、繊
維とマトリックス炭素の熱膨張係数の差に起因した熱応
力黒鉛化現象により異方性組織となるため、従来材料系
と同様な炭素繊維強化炭素複合材料となり、機械的特性
は従来材料系と比較し優れた物ではあるが、摺動特性に
特徴を見出すことはできなくなる。
【0035】2)炭素繊維強化炭素複合材料の高温(6
00〜800℃程度)大気中における酸化消耗を熱重量
(TG)分析により検討したところ、酸化重量減少は必
ずしも、一般的に考えられている様に複合材料熱処理温
度の高い物が少なくなるわけではなく、ある特定の熱処
理条件が満たされれば、複合材料熱処理温度が低くても
或る程度酸化されにくくなることを知得した。その条件
とは、炭素繊維とマトリックス炭素の界面部分に発生す
る炭素繊維強化炭素複合材料製造時の熱処理工程での残
留歪みを減らすことである。即ち、熱処理温度を高める
ことで、マトリックス炭素は構造変化しこの残留歪みを
解放させることができるが、この時にはマトリックス組
織内に亀裂等の欠陥が発生するため、空気酸化反応場が
増加するので、好ましい方策ではない。従って、高温熱
処理過程でマトリックス炭素に熱収縮亀裂等の欠陥を発
生させずに残留歪みを最小限に抑える上記特定範囲の熱
処理条件(最高熱処理温度)を選ぶことにより、目的を
達成できるのである。
【0036】本発明のブレーキ用材料を構成するマトリ
ックス炭素は、その光学的組織は等方性或いは異方性領
域が微細なモザイク組織であることから、炭素繊維強化
炭素複合材料の製造熱処理過程における熱収縮歪み量
は、従来から使用されている積層欠陥構造をつくりやす
いピッチやフェノール樹脂、フラン樹脂によるマトリッ
クス炭素と比べ、少なくしかも等方的である。従って、
得られる炭素繊維強化炭素複合材料は、炭素繊維/マト
リックス炭素界面での残留歪み量は少なく、酸化消耗量
も少なくなる利点を有している。
【0037】
【作用】本発明においては、高弾性率炭素繊維、特にピ
ッチ系炭素繊維を用い特定のマトリックス炭素前駆体を
使用して製造された炭素繊維強化炭素複合材料からなる
ブレーキ用材料は、高速摺動時における摩擦係数が高
く、かつ耐酸化性が改善され酸化損耗量が減少し、耐摩
耗性が大きい特徴を有する。即ち、(イ) ピッチ系炭素繊
維を強化材とし、かつ (ロ)複合材料を構成するマトリッ
クス炭素前駆体としてピッチ系重質油、例えば石油類の
蒸留残渣或いは、コールタール等のピッチ原料重質油を
硝酸或いは濃硝酸等のニトロ化試薬でニトロ化した光学
的等方性ピッチを使用し、 (ハ)得られる炭素繊維成形体
の熱処理温度を1500℃以上2500℃以下とするこ
とにより、マトリックス炭素は、その光学的に等方性或
いは異方性領域が微細なモザイク組織となり、強化材で
ある該高弾性率炭素繊維との密着性及び非酸化性雰囲気
中での熱安定性に優れており、高温空気中での耐酸化性
にも優れている。従って、ブレーキ用材料として優れた
性能の炭素繊維強化炭素複合材料を形成できる。
【0038】
【実施例】本発明は、以下の実施例により詳細に説明さ
れるが、これらは本発明の範囲を制限するものではな
い。 (実施例1)光学的異方性成分がほぼ100%の石油系
ピッチを溶融紡糸し、300℃で空気酸化により不融化
し、250℃から5℃/分の昇温速度により最高温度2
250℃で炭化を行った。得られた原料炭素繊維は、X
線による結晶子寸法Lc(002) =13nm、引張弾性率
=500GPa、繊維直径=10μm、密度=2.10
g/cc、熱伝導率=120W/mKであった。この原料
炭素繊維フィラメント2000本によって構成される炭
素繊維束で炭素繊維織物(平織り物:12本繊維束数/
25mm)を作製してから、約200mm×200mm
に裁断し、これを積層した。
【0039】マトリックス炭素前駆体を次のように調製
した。まず、石油精製における流動接触分解(FCC)
残渣油を濾過処理して、ピッチ原料重質油とし(数平均
分子量Mn=170、重量平均分子量Mw=206)、
該ピッチ原料重質油100重量%を耐熱ガラス製セパラ
ブルフラスコに入れ、羽根付き攪拌棒で攪拌(50rp
m)しながら液温60℃に加熱した。そこに濃硝酸30重
量%を約30分間かけて滴下混合し、更に1時間攪拌保持
した。濃硝酸の添加による発熱で、この攪拌保持中に液
温は60〜90℃まで上昇した。液温が低下してきたな
らば、蒸留水を添加した後、攪拌をやめ、静置し水分と
油分とに分離し、水分を除去した。引き続き、窒素ガス
を毎分20cc吹き込みながら反応器系内を100℃に
昇温し、1時間保持した。ここで処理収率(ニトロ化収
率)は、張り込んだ原料重質油に対し116wt%とな
った。
【0040】こうして得られたニトロ化重質油を180
℃、3torrで減圧蒸留処理して、この条件で留出す
る軽質油分を約20wt%カットし、ピッチを得た。こ
のピッチの赤外線吸収分光分析を行ったところ、135
8cm-1と1525cm-1にニトロ基の対称・ 非対称の
伸縮振動による強い吸収線を認めることができた。ま
た、窒素ガス雰囲気中800℃までの熱重量(TG)分
析を行い、当ピッチの炭素化収率を計測したところ58
wt%の炭素残分が計測された。このTG残分であるピ
ッチ炭素の偏光顕微鏡による組織観察では、当該ピッチ
炭素が光学的に等方性であることが確認された。
【0041】こうして得られたピッチをテトラヒドロフ
ラン(THF)に溶解分散させた。溶解分散濃度は約4
5wt%であった。このようにして調製したピッチ/T
HF溶解分散液をマトリックス炭素前駆体とし、炭素繊
維織物積層材料に含浸した。風乾後、当該原料炭素繊維
/ピッチ複合材をホットプレス金型に入れ、不活性ガス
雰囲気中、約100kg/cm2 のプレスをかけながら
650℃まで予備炭素化をして、これを炭素繊維強化炭
素複合材料スケルトンとした。この時の炭素繊維体積含
有率は約48容積%であった。
【0042】引き続き、前記石油系硝酸処理ピッチを再
度含浸処理し、窒素ガス雰囲気中で650℃まで炭素化
した。この緻密化処理を2回行い、嵩密度約1.85g
/ccの炭素成形物を得た。この炭素成形物を2000
℃まで昇温し、2時間保持した。得られた炭素繊維強化
炭素複合材料を内径105mm、外径139mm、厚さ
7mmのリングに加工し、また同一材料を使って、接触
面積2cm2 のチップを作製し、以下の通りのチップオ
ンリング式摩擦摩耗試験を行った。相対滑り速度は14
m/sec、接触圧15kg/ cm2 、接触時間10秒、
繰り返し回数500回とし、平均摩擦係数、摩耗量(減
肉厚みmm/回)を求めた。平均摩擦係数0.32、摩
耗量3.2×10-3mm/回であった。
【0043】(実施例2)実施例1と、ピッチ系炭素繊
維の引張弾性率、炭素繊維強化炭素複合材料を構成する
炭素成形物の熱処理温度及び炭素繊維体積含有率を変え
た以外同様にして、チップ製作し、実施例1と同様にチ
ップオンリング式摩擦摩耗試験を行った。相対滑り速度
3m/sec.の低速摺動における摩擦摩耗試験結果と
併せて、結果を表1に示した。(試験No.1〜No.
13)
【0044】(比較例1)実施例1記載のピッチ原料重
質油を減圧蒸留し軽質油分を80wt%カットし、これ
を改めてピッチ原料重質油とした。このピッチ原料重質
油(Mn=270、Mw=330)に空気を吹き込み、
攪拌しながら280〜360℃の温度に加熱し、10時
間加熱攪拌保持した。更に3Torr減圧下、380℃
で軽質油分を除去し、ピッチ状物を得た。該ピッチは光
学的等方性ピッチであり、軟化点150℃、800℃T
G残分による炭素化収率は52wt% であった。この
800℃ピッチ炭素の偏光顕微鏡による光学的組織は、
バルクメソフェーズ由来の「流れ」構造を形成するもの
であった。該ピッチと実施例1で得た原料炭素繊維を用
い、実施例1と同様にして炭素繊維強化炭素複合材料を
作製し、最終熱処理温度を1400〜2600℃まで変
えた完成品を作製し、実施例1と同様に摩擦摩耗試験を
行った。その結果を表1の試験番号14〜18に示し
た。
【0045】(実施例3、比較例2)実施例1の炭素繊
維強化炭素複合材料により構成される摩擦子(A)及び
比較例の炭素繊維強化炭素複合材料(HTT=2000
℃)により構成される摩擦子(B)を作製し、片状黒鉛
鋳鉄JIS FC250製のリングとのチップオンリン
グ式摩擦摩耗試験を行った。試験は実施例1記載の条件
で行った。摩擦子(A)では平均摩擦係数0.22、摩
耗量2.4×10-3mm/回と良好な結果であった。こ
れに対し、摩擦子(B)では平均摩擦係数0.17、摩
耗量4.2×10-3mm/回と摩擦子(A)に比較し性
能の劣るものであった。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】本発明の炭素繊維強化炭素複合材料から
なるブレーキ用材料は、同一材料同士或いは金属等の面
と摺動する際の摩擦力が大きく、しかも摩耗量が少ない
利点を有しており、ブレーキディスク材料、ブレーキド
ラム材料、ブレーキライニング材料、ブレーキシュー材
料等に用いて優れた性能を示す。また、本発明のブレー
キ用材料は、非酸化性雰囲気での熱安定性が極めて優れ
ていると共に、ブレーキ操作時の大きな発熱により変
質、変形することが少なく、また発熱により該材料が溶
融して急激に性能劣化することもなく、ブレーキ材料の
信頼性が高い。本発明のブレーキ用材料は、動摩擦係数
が高い割に摩耗に強いことから、カセットテープの押さ
え部材、高速ミシンの下糸ボビンケースのように、停止
時に急激に停止し、しかも走行時の抵抗が少ない、軽量
のブレーキ材料として使用することができる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (i) 炭素繊維の体積含有率が30〜65
    容積%であり、 (ii)原料炭素繊維の(イ) 結晶子寸法Lc(002)が1
    0nm以上で、 (ロ)引張弾性率が380GPa以上で、
    (ハ)室温測定時の熱伝導率が110W/mK以上であ
    り、 (iii) マトリックス炭素の光学的組織が等方性又は異方
    性領域が微細なモザイク組織であることを特徴とする炭
    素繊維強化炭素複合材料からなるブレーキ用材料。
  2. 【請求項2】 摩擦係数が、同じ材料同士で互いに平滑
    な平面に対して相対滑り速度2.5〜25.0m/se
    cで測定した時に、0.20〜0.60であることを特
    徴とする請求項1記載のブレーキ用材料。
  3. 【請求項3】 原料炭素繊維がピッチ系炭素繊維である
    ことを特徴とする請求項1又は2記載のブレーキ用材
    料。
  4. 【請求項4】 炭素繊維強化炭素複合材料が、マトリッ
    クス炭素前駆体としてピッチ系重質油をニトロ化して得
    られた光学的等方性ピッチを、原料炭素繊維または炭素
    繊維構造体に含浸し、炭化、必要に応じて黒鉛化して熱
    処理することにより製造されることを特徴とする請求項
    1〜3のいずれかに記載のブレーキ用材料。
  5. 【請求項5】 ブレーキ用材料製造時の最高熱処理温度
    が1500℃以上2500℃以下であることを特徴とす
    る請求項4記載のブレーキ用材料。
JP10156893A 1998-05-22 1998-05-22 炭素繊維強化炭素複合材料からなるブレーキ用材料 Pending JPH11335182A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008539315A (ja) * 2005-04-26 2008-11-13 ボーグワーナー・インコーポレーテッド 摩擦材料
CN115353404A (zh) * 2022-09-16 2022-11-18 方达能源英国有限公司 C/c复合材料及其制备方法、刹车片和偏航制动器

Cited By (3)

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