JPH11322317A - 黒鉛化電気炉 - Google Patents

黒鉛化電気炉

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JPH11322317A
JPH11322317A JP10135679A JP13567998A JPH11322317A JP H11322317 A JPH11322317 A JP H11322317A JP 10135679 A JP10135679 A JP 10135679A JP 13567998 A JP13567998 A JP 13567998A JP H11322317 A JPH11322317 A JP H11322317A
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清 根橋
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至康 松田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 原料粉末を加熱処理する過程において電極間
の電気抵抗が変動した場合でも、これに容易に対応して
適正な黒鉛粉末を安定して製造することを目的とする。 【解決手段】 炉本体1に投入された原料粉末を、炉本
体1に設けられた電極5,6間の通電により加熱して黒
鉛化し、この黒鉛粉末を炉本体1から取り出すようにし
た黒鉛化電気炉であって、炉本体1の下部から炉本体1
内部に所定ガスを吹き込むためのガス供給手段11,1
2と、電極5,6間に位置する原料粉末の嵩密度を変え
るためのガス供給手段11,12の駆動状態を指示する
制御手段19とを備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、黒鉛粉末を製造す
るための黒鉛化電気炉に関し、特に、炉本体内部で原料
粉末を加熱する領域の温度制御を容易に行い、黒鉛粉末
の製造を安定して実施できるようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、黒鉛粉末を工業的に製造するに
は、カーボン粉末等の原料粉末を例えば不活性雰囲気下
において約3000℃〜3500℃に加熱処理し、原料
粉末を黒鉛化することにより行う。この加熱処理に用い
られる装置としては、従来、特開平7−252726号
公報、特公平3−330号公報、特許第2579561
号公報などに記載のようなアチソン炉が用いられてい
る。アチソン炉は、ケース内に原料粉末を充填した後に
これを加熱して黒鉛化し、これを冷却した後にケースか
ら黒鉛粉末を取り出すといったバッチ式の製造プロセス
を行うものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記し
たアチソン炉には、次のような問題点を有している。 原料粉末の周囲に充填した加熱材料(通電によって発
熱する)の配合を変えることにより電気抵抗を変えるた
め、電気抵抗を短時間に変えることができず、自由度が
少ない。 温度上昇に伴い加熱材料の電気抵抗も変化する(例え
ば炭粉の場合では常温かた温度が上昇するに従い電気抵
抗が下がり、700℃〜1000℃付近で最低となる
が、その後の温度上昇に従い逆に電気抵抗が上昇す
る。)ため、加熱処理の進展に伴って電流・電圧を適宜
調整し、投入電力を維持しなければならない。 電源仕様を、抵抗率が変化した場合でも投入電力を維
持できるように余裕をもって決定する必要があり、設備
費が高価となる。
【0004】また、アチソン炉のようにバッチ式ではな
く、炉本体の上部から原料粉末を投入するとともに原料
粉末が降下する間に加熱して黒鉛化させ、黒鉛粉末を炉
本体の下部から連続して取り出すといった連続式の黒鉛
化電気炉が考えられる。この黒鉛化電気炉では、連続的
な製造を安定して実施できることが望まれ、炉本体内部
で原料粉末を加熱する黒鉛化領域の温度制御を容易に行
い、黒鉛化領域の安定化を図ることが望まれている。
【0005】本発明は、このような問題点に鑑みてなさ
れたもので、原料粉末を加熱処理する過程において電極
間の電気抵抗が変動した場合でも、これに容易に対応し
て、適正な黒鉛粉末を安定して製造することができ、さ
らには黒鉛粉末の連続的な製造プロセスに好適な黒鉛化
電気炉を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、請求項1に係る発明は、炉本体に投入された原料粉
末を、炉本体に設けられた電極間の通電により加熱して
黒鉛化し、この黒鉛粉末を炉本体から取り出すようにし
た黒鉛化電気炉であって、炉本体の下部から炉本体内部
に所定ガスを吹き込むためのガス供給手段と、電極間に
位置する原料粉末の嵩密度を変えるためのガス供給手段
の駆動状態を指示する制御手段とを備える技術が採用さ
れる。この黒鉛化電気炉では、ガス供給手段の駆動状態
を変えて、電極間に位置する原料粉末(黒鉛粉末)の嵩
密度を全体的または局部的に変えることにより電極間の
電気抵抗を容易に変更することが可能となり、これによ
り、例えば加熱処理温度の全体的または部分的な変更な
ど、操業条件の変更が容易かつ迅速に行われ、投入され
た原料粉末を効率よく加熱処理することが可能となる。
【0007】請求項2に係る発明は、請求項1の黒鉛化
電気炉において、制御手段が、電極間の電気抵抗を検出
してこの抵抗値が所定値となるようにガス供給手段の駆
動状態を指示する技術が適用される。この黒鉛化電気炉
では、制御手段が電極間の抵抗値をモニタし、検出した
抵抗値が所定値となるように所定ガスの吹き込み量を変
えるなどガス供給手段の駆動状態を指示するため、原料
粉末の黒鉛化に必要な加熱温度を適宜調節して、加熱処
理の最適化を図ることが可能であり、例えば連続式の製
造プロセスにおいて自動化を図ることが可能となる。
【0008】請求項3に係る発明は、請求項2の黒鉛化
電気炉において、制御手段が、電極間の電圧および電流
から電極間の電気抵抗を検出する技術が適用される。こ
の黒鉛化電気炉では、電極間の電気抵抗を電極間の電圧
および電流に基づいて検出するため、抵抗値の検出が容
易かつ正確に行われ、加熱処理の最適化をより一層効果
的に行うことが可能となる。
【0009】請求項4に係る発明は、請求項1、2また
は3の黒鉛化電気炉において、制御手段が、ガス供給手
段による吹き込み量の調整、および炉本体への吹き込み
箇所の変更の少なくとも一方を選択してガス供給手段に
指示する技術が適用される。この黒鉛化電気炉では、ガ
ス吹き込み量の調整と、吹き込み箇所の変更との中、一
方または双方によりガス供給手段の駆動状態が変更され
るため、駆動状態の変化を多様化させ、電極間の電気抵
抗をきめ細かく調整することにより加熱処理の最適化を
容易に実施可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
図1〜図3を参照して説明する。図1は、本発明に係る
黒鉛化電気炉を示す断面図である。この黒鉛化電気炉
は、堅型構造であって、炉本体1には、上部の投入口2
を介して図示しない原料粉末の供給手段が接続されると
ともに、下部に管状部材4を介して図示しない黒鉛粉末
の回収手段を収容するチャンバ3が接続され、対向する
側壁にそれぞれ縦長の電極5、6が取り付けられる。そ
して、この黒鉛化電気炉は、炉本体1の電極5、6より
上方を予熱ゾーンaとし、電極5、6間の黒鉛化領域7
を含む部分を加熱ゾーンbとし、電極5、6より下方を
冷却兼排出ゾーンcとしている。
【0011】炉本体1は、図1に示すように、下部にい
くに従い絞るような形状に形成されており、これにより
冷却効率を高めているが、このように下部を絞るか否か
は任意である。また、炉本体1は、水平断面が円形また
は角形のいずれであってもよく、さらに予熱ゾーンa、
加熱ゾーンb、冷却兼排出ゾーンcのいずれかに対応し
て水冷(液冷)または空冷(ガス冷)等の冷却手段を設
けてもよい。
【0012】原料粉末の供給手段としては、原料粉末を
所定流量で連続的に投入するスクリューコンベアやベル
トコンベア、ターンテーブル等が用いられ、これらの駆
動速度によって原料粉末の単位時間あたりの投入量が設
定される。また、投入される原料粉末としては、粉状体
および粒状体を含むものであって、高温度で加熱すれば
黒鉛化でき、加熱温度域で導電性を有するような、例え
ば炭素材、炭素の前駆体等が用いられる。
【0013】チャンバ3に収容される回収手段として
は、管状部材4から送られる黒鉛粉末を連続的に切り出
すターンテーブルやスクリューコンベア、ベルトコンベ
アが用いられ、これらの駆動速度によって黒鉛粉末の時
間あたりの取り出し量が設定され、これにより原料粉末
(黒鉛粉末)の炉本体1内部の滞留時間を調節してい
る。なお、チャンバ3に液冷またはガス冷の冷却手段を
設けるか否かは任意である。
【0014】電極5、6は、図2に示すように、加熱部
bの黒鉛化領域7に対応して炉本体1の対向する側壁に
絶縁材8、9を介して取り付けられ、直流または交流の
電源10に接続される。そして、電極5、6間に通電す
る(例えば50V,1000A)ことによって原料粉末
(黒鉛粉末)は固有抵抗に応じたジュール熱で自ら発熱
し、約2500℃〜3500℃となる楕円形状の領域が
黒鉛化領域7を形成してこの領域で黒鉛化する。ちなみ
に、予熱ゾーンaの熱源は、この加熱ゾーンbからの熱
伝導によって得られるが、予熱ゾーンaの原料粉末は、
加熱ゾーンbからの熱放散を制限する断熱層としても機
能する。
【0015】電極5、6の配置は、図1に示すように同
一水平レベルに配置することや、図3に示すように炉本
体1の中心を挟んで対称に配置することに限定されず、
それぞれズレた状態で配置するものであってもよい。さ
らに、複数組の電極をそれぞれ対向配置させ、電極5、
6を含めてスイッチングすることにより所定の時間間隔
でいずれか一組の電極に順次通電させるような構成であ
ってもよい。なお、この構成により、黒鉛化領域7は楕
円形状から略円形に形成されることになる。
【0016】図1に戻り、管状部材4の取り入れ口4a
は、黒鉛化領域7の直下に配置される。この取り入れ口
4aの位置は、黒鉛化領域7において適正に黒鉛化され
た原料粉末、すなわち希望する温度領域で加熱処理され
た黒鉛粉末を効率よく取り出すために、図1点線で示す
炉本体1内での原料粉末(黒鉛粉末)の安息角を考慮し
て決定される。ただし、取り入れ口4aの位置は任意に
設定可能であり、例えば炉本体1の下端底面部分など冷
却兼排出ゾーンcに配置してもよい。
【0017】また、この黒鉛化電気炉には、炉本体1内
部に所定ガスを吹き込むための二つのガス供給手段1
1,12が設けられ、さらに炉本体1上部の予熱ゾーン
aに排出ノズル13が設けられる。ただし、二つのガス
供給手段11,12を用いることに限定されず、いずれ
か一方であってもよい。なお、排出ノズル13は、炉本
体1の上部一周にわたって等間隔で複数設けられ、それ
ぞれ環状管18に接続されている。
【0018】ガス供給手段11は、ノズル3aをからチ
ャンバ3内に所定ガスを送り込み、管状部材4を介して
炉本体1内の黒鉛化領域7に所定のガスを吹き込むもの
であり、その流路途中で流量調整用のバルブ14が設け
られている。供給するガスとしては、原料粉末の黒鉛化
に支障のないガス、例えば酸素を含まない窒素ガスやア
ルゴンガスなどが用いられる。
【0019】ガス供給手段12は、炉本体1の下部周囲
にわたって複数箇所に設けられたノズル15と、これら
ノズル15が接続される環状管16とを介して、炉本体
1の冷却兼排出ゾーンcに所定のガスを吹き込むもので
あり、その流路途中で流量調整用のバルブ17が設けら
れている。供給するガスとしては、ガス供給手段11と
同様である。なお、ノズル15が一定間隔で配置される
ことにより、炉本体1へのガスの吹き出し分布を均等に
近づけてるようにしている。ただし、ノズル15の本数
および配置をこれに限定するものではない。
【0020】このように、ガス供給手段11,12によ
って炉本体1にガスを吹き込むことにより、炉本体1内
部へ空気が浸入しないように所定圧力に設定することが
可能となる。また、この黒鉛化電気炉は、ガス供給手段
11,12におけるバルブ14,17の開閉を行い、こ
れらガス供給手段11,12の駆動状態を指示する制御
手段19が設けられる。ここで、電極5,6間の電圧は
電圧計Vにより検知され、また電流は電流計Aにより検
知され、それぞれその検知信号が制御手段19に入力さ
れる。
【0021】制御手段19は、これら電圧および電流の
値から電極5,6間の電気抵抗を算出し、この電気抵抗
と所望する抵抗値とを比較してガス供給手段11,12
のバルブ14,17にそれぞれ開閉を指示する。この指
示の内容としては、バルブ17を閉じたままバルブ14
の開放量の指示や、これとは逆にバルブ14を閉じたま
まバルブ14の開放量の指示、バルブ14,17双方の
開放量の指示がある。
【0022】このように、ガス供給手段11,12の駆
動状態が変更されることにより、原料粉末(黒鉛粉末)
の嵩密度が変更し、その結果、電極5,6間の電気抵抗
が変更される。すなわち、原料粉末(黒鉛粉末)は、ガ
スの吹き込みにより浮力が作用して嵩密度が変わり、そ
れに伴い原料粉末の電気抵抗も変わる。通常、吹き込み
ガス量が増えると嵩密度は小さくなり(粉粒体の隙間が
大きくなって電流の流路面積が減るため、電流が流れに
くくなり)、電気抵抗が大きくなる。一方、吹き込みガ
ス量を減らすと嵩密度は大きくなり(粉粒体の隙間が小
さくなって電流の流路面積が増えるため、電流が流れ易
くなり)、電気抵抗が小さくなる。
【0023】また、ガス供給手段12において、各ノズ
ル15に開閉弁を設け、制御手段19からの信号に基づ
いて弁を開閉させるようにしてもよい。これにより、ガ
ス供給手段12を使用する場合にガスを吹き出すノズル
15の選択も可能となり、原料粉末の局部的な嵩密度を
変えることもできる。さらに、制御手段19は、電極
5,6間の電流および電圧を用いて電気抵抗を検出して
いるが、これに限定するものではなく、例えば電極5,
6とは別個に両者間の電気抵抗を検出する各種装置から
の検出結果を用いてもよい。
【0024】続いて、以上のように構成された黒鉛化電
気炉の動作について説明する。本発明に係る黒鉛化電気
炉では、前工程で準備される原料粉末を多量に貯留する
ことなく、連続的に黒鉛化処理する。先ず、供給手段か
ら所定流量で送られる原料粉末を投入口2から炉本体1
の予熱ゾーンaに投入し、合わせて回収手段を駆動して
管状部材4から黒鉛粉末を所定流量切り出すことにより
炉本体1内で原料粉末を降下させる。なお、投入時の原
料粉末の温度は室温であるが、これに限定されず、供給
手段において原料粉末を加熱してもよい。
【0025】そして、電極5、6間を通電することによ
り、加熱ゾーンbにおいて原料粉末の固有抵抗に応じた
ジュール熱により原料粉末自体が加熱される。なお、投
入された原料粉末は予熱ゾーンaにおいて加熱ゾーンb
からの熱伝導により予熱されるため、投入段階で非導電
性であっても、予熱により導電性となるものが使用可能
である。また、粉粒体は一般的に熱伝導率が小さい。従
って、原料粉末自体が断熱機能を果たすため、外部の熱
は炉本体1外側に放散する一方、内部の熱は逃げにくく
なり、その結果、黒鉛化領域7が2500℃〜3500
℃の温度に保持されることになる。ただし、黒鉛化領域
7の温度は、炉本体1の寸法、炉本体1内での原料粉末
の移動速度によって適宜設定可能であり、さらに黒鉛化
領域7の範囲も同様に設定できる。
【0026】予熱ゾーンaに投入された原料粉末は、予
熱ゾーンaで予熱されながら、回収手段による黒鉛粉末
の切り出し量に応じて時間経過とともに降下し、加熱ゾ
ーンbの黒鉛化領域7を通過する間に加熱処理されて黒
鉛化する。その後、黒鉛粉末は、取り入れ口4aから管
状部材4に取り込まれ、この管状部材4を通過する間に
冷却されるとともにチャンバ3内の回収手段により切り
出されて他の装置等へ送られる。このように、供給手段
によって原料粉末を炉本体1に連続的に投入しつつ、黒
鉛化領域7において形成された黒鉛粉末を回収手段によ
り連続的に取り出している。
【0027】ここで、黒鉛化領域7の温度は、電極5、
6間の原料粉末(黒鉛粉末)の嵩密度によって変動す
る。すなわち、嵩密度が小さいと原料粉末の隙間が大き
くなって電流の流路面積が減るため、電流が流れにくく
なって電気抵抗が大きくなり、黒鉛化領域7の温度を上
昇させる一方、嵩密度が大きいと原料粉末の隙間が小さ
くなって電流の流路面積が増えるため、電流が流れ易く
なって電気抵抗が小さくなり、黒鉛化領域7の温度を低
下させる。これに対し、黒鉛化領域7の温度は、適正に
黒鉛粉末を製造するうえで一定の温度に維持することが
好ましい。
【0028】従って、制御手段19は、電極5,6間の
電気抵抗を一定化して原料粉末への投入電力を所定の値
に維持することにより原料粉末(黒鉛粉末)の黒鉛化領
域7の温度変動を抑制するように制御する。なお、投入
電力は電圧と電流の積に比例する。従って、電流が一定
の場合、電圧が一定ならば投入電力は一定となる。一
方、電圧は電流と抵抗の積であるから電流一定で電圧を
測定すれば、抵抗の変化が検出される。
【0029】図3は、制御手段19による制御の一例を
示すものである。先ず、予め黒鉛化領域7の設定温度か
ら電極5,6間の抵抗値として目標値を設定し、これに
加えて許容できる上限値および下限値を設定する。そし
て、操業に伴い電極5,6間の電圧を電圧計Vでモニタ
し、また電流を電流計Aでモニタする。これら電圧計V
および電流計Aからの電圧値および電流値は、制御手段
19に入力されて電極5,6間の抵抗値を検出する。
【0030】図3に示すように、抵抗値が上昇してP点
において上限値を超えたとき、すなわち原料粉末の嵩密
度が小さく、電流が流れにくくなって抵抗値が上昇した
ときには、制御手段19は、P点に対応するP’点から
ガス供給手段11または(及び)12に対してガス吹き
込み量を減らすように指示する。これにより嵩密度が大
きくなり、抵抗値は降下する。そして、抵抗値がQ点に
おいて目標値なったときに、Q点に対応するQ’点のガ
ス吹き込み量を維持する。なお、Q’点でのガス吹き込
み量は、以前のガス吹き込み量より少なくなった状態と
なる。
【0031】その後、抵抗値が下降してR点において下
限値を超えたとき、すなわち原料粉末の嵩密度が大き
く、電流が流れ易くなって抵抗値が下降したときには、
制御手段19は、R点に対応するR’点からガス供給手
段11または(及び)12に対してガス吹き込み量を増
やすように指示する。これにより嵩密度が小さくなり、
抵抗値は上昇する。そして、抵抗値がS点において目標
値なったときに、S点に対応するS’点のガス吹き込み
量を維持する。なお、S’点でのガス吹き込み量は、以
前のガス吹き込み量より多くなった状態となる。
【0032】このように、ガス供給手段11,12によ
るガス吹き込み量を変更することにより、原料粉末(黒
鉛粉末)の嵩密度を変更して電極5,6間の電気抵抗を
一定化し、投入電力の一定化を図ることにより黒鉛化領
域7の温度を一定に維持するようにしている。なお、前
記制御ではガス吹き込み量の増減によって抵抗値を制御
しているが、これに限定されず、例えばガス吹き込み箇
所の変更等や、ガス吹き込み量およびガス吹き込み箇所
双方の変更を用いるようにしてもよい。
【0033】さらに、黒鉛化領域7の温度変化を積極的
に行う場合は、抵抗値を一定化する制御に変えて、時間
とともに抵抗値を変化させる制御を行う。例えば操業開
始から終了までを予め決められた所定のパターンで電力
投入したい場合(所定のパターンで黒鉛化領域7を温度
変化させたい場合)、制御手段19は、前記パターンに
より変化する抵抗値(目標値)となるようにガス供給手
段11、12の駆動状態を指示する。
【0034】また、図3のように上限値および下限値な
どのしきい値で管理する他に、いわゆるPID制御を用
いて、ガス供給手段11,12のガス吹き込み量の加減
を行うようにしてもよい。さらに、複数組の電極を用い
てこれらをスイッチングする場合には、各組の電極間ご
とに電気抵抗を検出するか、ある特定の電極間において
電気抵抗を検出するか、いずれであってもよい。
【0035】なお、炉本体1に吹き込まれたガスは、排
出ノズル13から環状管18を介して外部に排出され、
燃焼等により処理される。ところで、予熱ゾーンaで原
料粉末を予熱する過程で、熱分解等により原料粉末から
不純ガス(例えばCmHnガス等)が発生し、このCm
Hnガスは、温度が低下すると凝縮して液化し、予熱部
aでの原料粉末の棚吊りを生じさせる原因となる。従っ
て、炉本体1に吹き込まれた後に加熱ゾーンbを通過し
て加熱されたガスは、不純ガスを凝縮させることなくキ
ャリアガスとなって不純ガスを排出ノズル13から排出
される。これにより、不純ガスの凝縮によるタール状物
や固形物の形成を防止し、棚吊りを効果的に抑制して加
熱ゾーンbへの原料粉末の降下をスムーズにできる。
【0036】また、排出ノズル13が炉本体1の側壁上
部に配置されることにより、原料粉末を通過したガスを
効率よく捕集できる。なお、ガス供給手段11では、炉
本体1へ供給されるガスが管状部材4を通過することに
より、管状部材4を通過する黒鉛粉末の冷却と、管状部
材4内での棚吊りとを抑制し、管状部材4内の黒鉛粉末
の流動化を促進している。
【0037】本発明に係る黒鉛化電気炉にあっては、原
料粉末が炉本体1内部を降下する間に黒鉛化領域7で黒
鉛粉末となって炉本体から取り出されるため、供給手段
により原料粉末を連続的に投入しながら回収手段によっ
て良質な黒鉛粉末を効率よく連続的に取り出すことがで
き、原料粉末を長期間貯留させることなく生産性の高い
黒鉛粉末の連続式の製造プロセスを実現できる。
【0038】また、装置全体がコンパクトであり、少量
生産にも容易に適応でき、仮に操業途中の不具合により
操業を中止しても損害は少なく、操業再開も早くでき
る。アチソン炉のように原料粉末を充填するケースが不
要となり、ケースからの汚染の問題がないだけでなく、
ケースへの充填および排出時の粉塵の発生も少なくなっ
て良好な作業環境を維持できる。炉本体1への原料粉末
の投入および黒鉛粉末の取り出しを機械化することがで
き、装置の自動化を容易に実施できる。
【0039】さらに、黒鉛化領域7における原料粉末の
滞留時間が原料粉末供給量および黒鉛粉末回収量の調整
により設定されるので、黒鉛化に必要な滞留時間を原料
粉末供給量等で容易に設定でき、連続式製造プロセスに
おける生産効率の最適化を簡単な制御で確実に行うこと
ができる。
【0040】また、管状部材4の取り入れ口4aが黒鉛
化領域7の近傍に配置されるため、黒鉛化領域7、すな
わち希望する温度領域で加熱処理された黒鉛粉末を効率
よく管状部材4に取り込んで炉本体1の外側に取り出す
ことにより品質の均一化を図ることができ、しかも黒鉛
粉末が管状部材4を通過する間に適宜冷却され、炉本体
1から取り出された黒鉛粉末のその後の処理が容易とな
る。
【0041】なお、図1に示す炉本体1では、管状部材
4の外側にある黒鉛粉末はそのまま排出されずに滞留す
ることになるが、この滞留する黒鉛粉末によって、黒鉛
粉末の異材との汚染を防止するとともに断熱材としても
機能する。しかも、ガス供給手段12によりガスが吹き
込まれるため、黒鉛粉末の冷却化および流動化を図るこ
とができる。
【0042】また、前記実施の形態において示した各構
成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明
の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき
種々変更可能である。図示のものでは原料粉末を炉本体
1の上部から投入し、かつ炉本体1の下部から取り出し
ているが、例えば原料粉末(黒鉛粉末)をガス圧等によ
って強制的に移動させること場合には、炉本体1の左方
から原料粉末を投入し、炉本体1の右方に黒鉛粉末を取
り出すような構成であってもよい。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係る黒
鉛化電気炉は、ガス供給手段の駆動状態を変えて、電極
間に位置する原料粉末(黒鉛粉末)の嵩密度を全体的ま
たは局部的に変えることにより電極間の電気抵抗を容易
に変更することができ、これにより、黒鉛化領域におけ
る加熱処理温度の全体的または部分的な変更など、操業
条件の変更が操業中においても容易かつ迅速に行われ、
例えば加熱の進行に伴って原料粉末の抵抗が変化して
も、ガス供給手段の駆動状態の変更といった簡単な操作
により投入電力の一定化を図ることができ、原料粉末を
効率よく加熱処理できる。逆にとらえると、この黒鉛化
電気炉は、一旦操業を開始した後でも、電極間の電気抵
抗をガス供給手段の駆動状態で変更できるため、投入電
力の変更をいつでも容易にできる。また、この黒鉛化電
気炉は、電極間の電気抵抗を変えることにより投入電力
を維持するため、電源仕様を、抵抗率の変化に対応した
大型のものにする必要はなく、必要最小限のもので足
り、設備を安価にできる。
【0044】請求項2に係る黒鉛化電気炉は、制御手段
が電極間の抵抗値をモニタし、検出した抵抗値が所定値
となるように所定ガスの吹き込み量を変えるなどガス供
給手段の駆動状態を指示するため、原料粉末の黒鉛化に
必要な加熱温度を適宜調節して、加熱処理の最適化を図
ることができ、連続式の製造プロセスにおいて容易に自
動化を図ることができる。
【0045】請求項3に係る黒鉛化電気炉は、電極間の
電気抵抗を電極間の電圧および電流に基づいて検出する
ため、抵抗値の検出が容易かつ正確に行われ、加熱処理
の最適化をより一層効果的に行うことができる。
【0046】請求項4に係る黒鉛化電気炉は、ガス吹き
込み量の調整と、吹き込み箇所の変更との中、一方また
は双方によりガス供給手段の駆動状態が変更されるた
め、駆動状態の変化を多様化させ、電極間の電気抵抗を
きめ細かく調整できるようにして加熱処理の最適化を容
易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る黒鉛化電気炉の実施形態を示す
断面図である。
【図2】 図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】 制御手段による制御の一例を示すグラフ図で
ある。
【符号の説明】
1 炉本体 5,6 電極 11,12 ガス供給手段 19 制御手段 A 電流計 V 電圧計
フロントページの続き (72)発明者 西 賢一 神奈川県横浜市磯子区新中原町1番地 石 川島播磨重工業株式会社横浜エンジニアリ ングセンター内 (72)発明者 飯島 重樹 神奈川県横浜市磯子区新中原町1番地 石 川島播磨重工業株式会社横浜エンジニアリ ングセンター内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炉本体に投入された原料粉末を、前記炉
    本体に設けられた電極間の通電により加熱して黒鉛化
    し、この黒鉛粉末を前記炉本体から取り出すようにした
    黒鉛化電気炉であって、 前記炉本体の下部から当該炉本体内部に所定ガスを吹き
    込むためのガス供給手段と、電極間に位置する原料粉末
    の嵩密度を変えるための前記ガス供給手段の駆動状態を
    指示する制御手段とを備えることを特徴とする黒鉛化電
    気炉。
  2. 【請求項2】 前記制御手段は、前記電極間の電気抵抗
    を検出してこの抵抗値が所定値となるように前記ガス供
    給手段の駆動状態を指示することを特徴とする請求項1
    記載の黒鉛化電気炉。
  3. 【請求項3】 前記制御手段は、前記電極間の電圧およ
    び電流から当該電極間の電気抵抗を検出することを特徴
    とする請求項2記載の黒鉛化電気炉。
  4. 【請求項4】 前記制御手段は、前記ガス供給手段によ
    る吹き込み量の調整、および前記炉本体への吹き込み箇
    所の変更の少なくとも一方を選択して、当該ガス供給手
    段に指示することを特徴とする請求項1、2または3記
    載の黒鉛化電気炉。
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