JPH11319539A - 温度変化により可逆的に結晶化するイオン性コロイド系およびそれを利用するコロイド結晶の製造方法 - Google Patents

温度変化により可逆的に結晶化するイオン性コロイド系およびそれを利用するコロイド結晶の製造方法

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JPH11319539A
JPH11319539A JP14509598A JP14509598A JPH11319539A JP H11319539 A JPH11319539 A JP H11319539A JP 14509598 A JP14509598 A JP 14509598A JP 14509598 A JP14509598 A JP 14509598A JP H11319539 A JPH11319539 A JP H11319539A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 各種のイオン性コロイド系から、特殊な装置
や複雑な工程を必要とせずに比較的簡単にコロイド結晶
を製造することのできる技術を提供する。 【解決手段】 表面に電荷を有するコロイド粒子、該コ
ロイド粒子を分散させる液体媒質、および該液体媒質中
において解離度が温度変化とともに変化する弱電離物質
を含むイオン性コロイド系を外部から加熱または冷却す
ることによりコロイド結晶を生成させる。この弱電離物
質含有コロイド系は温度変化により可逆的に結晶化し物
性が変化するので、この性質を利用して、コロイド結晶
の製造以外にも応用することができる。特に好ましい例
は、コロイド粒子がシリカ粒子であり、液体媒質が水で
あり、弱電離物質がピリジンまたはピリジン誘導体であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コロイドの技術分
野に属し、特に、温度変化により可逆的に結晶化するイ
オン性コロイド系およびそれを利用するコロイド結晶の
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】コロイドとは、数nmから数μmの大き
さを有するコロイド粒子が媒質中に分散している状態を
指称し、多くの工業的用途を持つ。例えば、シリカなど
の無機微粒子から成るコロイドは、ゴム・プラスチック
の充填剤、複写・感光紙のコーティング剤、インク用マ
イクロフィラー、半導体の研磨剤、耐火物用バインダ
ー、化粧品の顔料などに広く用いられている。また、高
分子ラテックスなどの有機粒子コロイドは、医療検査用
試薬、細胞研究試料、電子顕微鏡用の標準試料などとし
て、さらに、金属微粒子から成るコロイドは磁気材料、
導電性フィラー、および触媒などとして、工業的に重要
である。
【0003】これら従来の用途においては、主としてコ
ロイド系の微粒子としての特性が利用されているが、近
年、コロイド粒子が液体中で形成する結晶構造(コロイ
ド結晶)に着目した応用展開が検討されている。コロイ
ド結晶は粒子が三次元的に規則正しく配列した集合体で
あり、1)表面に電荷を持つイオン性コロイド粒子(シ
リカ、イオン性高分子ラテックス等)が水等の極性液体
中において、粒子間の強い静電的相互作用により安定化
され形成する場合と、2)非イオン性コロイド粒子がパ
ッキングして形成する場合があるが、本発明が対象とす
るのは、前者のイオン性コロイド粒子系である。
【0004】コロイド結晶の結晶面間隔は、原子・分子
系結晶の場合よりはるかに大きく、しばしば用いられる
実験条件(イオン性粒子系の場合、粒径 0.1〜1μm、
粒子の体積分率10-2〜10-1)において、可視光の波長の
オーダーとなる。このため、コロイド結晶は可視光のBr
agg 回折により、イリデセンスと呼ばれる虹色の光を発
し、また、可視光に対する特異的な吸収帯(フォトニッ
クバンドギャップ)を持つ。これらの特性に基づき、コ
ロイド結晶を用いて新規な特性を持つ光学素子を作製す
る試みが近年盛んに行われている。
【0005】イオン性コロイド系由来のコロイド結晶の
生成を制御する手法としては、これまでに、イオン性高
分子ラテックス/水分散系に対して、せん断力を与えた
り [B. J. AckersonおよびN. A. Clark, Phys. Rev. A
30, 906, (1984)]、電場による[T. Palberg, W. Moenc
h, J. SchwarzおよびP. Leiderer, J. Chem. Phys. 10
2, 5082, (1995)]、可逆的な結晶化実験が報告されてい
るが、これらの方法を応用するにあたっては、前者の場
合、せん断場印加のために特殊な装置が必要とされるこ
と、また後者については、電極反応により不純物イオン
が生じ、これが結晶化を妨げること、等の難点があるも
のと思われる。この他に、イオン性コロイド結晶を高分
子ゲルを用いて固定化し、温度変化によるゲルの体積変
化を利用して結晶面間隔を制御した報告 [J. M. Weissm
an, H. B. Sunkara, A. S. Tse andS. A. Asher, Scien
ce, 274, 959, (1996)]があるが、この場合にはコロイ
ド結晶の固定化にあたって煩雑な工程が必要であり、ま
た、無秩序な粒子配列状態からの結晶の生成は試みられ
ていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の主目的は、各
種のイオン性コロイド系から、特殊な装置や複雑な工程
を必要とせずに比較的簡単にコロイド結晶を製造するこ
とのできる技術を確立することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、このたび、
イオン性コロイド分散系に特定の電離物質を共存させる
と温度変化によりコロイド結晶が可逆的に形成し得ると
いう事実を発見し、本発明を導き出した。
【0008】かくして、本発明に従えば、上記の目的を
達成するものとして、表面に電荷を有するコロイド粒子
が液体媒質中に分散されているコロイド分散系に、該液
体媒質中における解離度が温度変化とともに変化するよ
うな弱電離物質を添加して、外部からの加熱または冷却
により前記コロイド粒子を結晶化させることを特徴とす
るコロイド結晶の製造方法が提供される。本発明の方法
が適用される特に好ましい例は、コロイド粒子がシリカ
粒子であり、液体媒質が水であり、弱電離物質がピリジ
ンまたはピリジン誘導体である場合である。
【0009】さらに、本発明は、上記のコロイド結晶の
製造に利用されるのみならず、各種の機能性材料に応用
することができるコロイド系も対象とする。すなわち、
本発明は、表面に電荷を有するコロイド粒子、該コロイ
ド粒子を分散させる液体媒質、および該液体媒質中にお
いて解離度が温度変化とともに変化する弱電離物質を含
むことを特徴とするコロイド系も提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のコロイド結晶の製造方法
に従えば、温度変化とともに解離度(電離度)が変化す
るような弱電離物質(弱電解質)をイオン性コロイド分
散系に添加するだけで、外部からの加熱または冷却によ
り熱可逆的にイオン性コロイド分散系を結晶化させるこ
とができる。前述のように、イオン性コロイド系におい
ては粒子間静電的相互作用の増加に伴って結晶化が起こ
り、ここで、静電的相互作用の大きさは、粒子の有効表
面電荷密度(σe ) の増加、粒子の体積分率(φ)の増
加、または添加塩濃度(Cs )の減少により増加するこ
とが本発明者らにより見出されている〔例えば、J. Yam
anaka, T. Koga, N. Ise およびT. Hashimoto,Phys. R
ev. E 53, R 4314, (1996) 〕。本発明に従い、温度変
化とともに解離度が変化するような弱電離物質を添加、
共存させると、コロイド粒子のσe (有効表面電荷密
度)が温度に依存して変化し、したがって、温度変化に
よりイオン性コロイド系の結晶化を制御できるものと理
解される。
【0011】これまでσe 値の制御は、コロイド粒子の
表面電荷密度を積極的に変化させるべきとの考えから、
コロイド分散系に専ら強電離物質(強電解質)を添加す
ることにより行われていた。例えば、本発明者らも、以
前の実験では、シリカコロイド系に水酸化ナトリウムN
aOHを添加し、シリカ粒子表面の弱酸性シラノール基
(Si−OH)の解離度を変化させるように試みた〔上
述の論文Phys. Rev. E53, R 4314, (1996) 〕。NaO
Hは強塩基であり、その解離(NaOH→Na+ +OH
- )は温度によらずほぼ完全であると見なせる。
【0012】本発明者は、このたび、そのような従来の
考え方とは異なり、弱電離物質の解離度が温度に依存す
ることに注目し、これをイオン性コロイドの結晶化に利
用した。例えば、弱塩基であるピリジン(Py;水溶液
中でPy+H2 O→PyH+ +OH- と解離)の解離度
は昇温と共に増加する(電気伝導度測定により決定し
た、ピリジンの無塩水溶液におけるpKb 値は、10およ
び50℃において9.28および8.53であり、温度と共に直線
的に減少した)。従って、Py(ピリジン)をシリカコ
ロイド分散系のようなコロイド分散系に共存させた場
合、昇温に伴いコロイド粒子のσe 値が増加すると考え
られる。しかも、種々の温度における上記の解離は、通
常の使用条件において系の温度変化に要する時間よりも
はるかに短時間で平衡状態となる。すなわち、σe 値は
試料温度により一義的に決まり、それまでの温度履歴等
に依らないため、結晶化が熱可逆的に起こる。
【0013】弱電離物質 本発明においては、温度変化により解離度が変化(増加
または減少)するような各種の弱塩基、弱酸または塩を
弱電離物質として使用することができる。以下、本発明
において使用され得る弱塩基、弱酸および塩を例示する
が、本発明において使用される弱電離物質はこれらに限
定されるものではない。
【0014】好ましい弱塩基としては、例えば、ピリジ
ンおよびピリジン誘導体(モノメチルピリジン、ジメチ
ルピリジン、トリメチルピリジン等)が挙げられ、これ
らは温度上昇とともに解離度が増加する。これらのピリ
ジンまたはピリジン誘導体は、シリカ粒子の結晶化に対
して好適なpKb 値を有し、またpKb 値の温度による
変化が充分に大きいという理由から本発明において用い
られるのに特に好ましい。弱塩基としては、この他に、
ウラシル、キノリン、トルイジン、アニリン(およびそ
の誘導体)等も使用することができ、これらも昇温とと
もに解離度が増加する。
【0015】本発明において使用される弱酸としては、
水溶液中で温度上昇とともに解離度が減少する酸、例え
ば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロル酢酸、リ
ン酸、シュウ酸、マロン酸等を挙げることができる。一
方、ホウ酸や炭酸のように、昇温とともに解離度が増加
するような酸を用いることもできる。さらに、上記のご
とき弱塩基と弱酸の中和により得られる塩も解離度に温
度依存性があり、本発明における弱電離物質として使用
できる。温度に依存して解離度が増加するか減少するか
は、当該酸と塩基の強さの大小関係に依る。
【0016】コロイド分散系 本発明のコロイド結晶の製造方法が適用されるのに特に
好ましいコロイド分散系の例は、シリカ微粒子が水に分
散された系である。このシリカ微粒子は、水中に分散さ
れると、その表面を覆っている弱酸性のシラノール基
(Si−OH)のOHが一部解離してマイナスの電荷
(O- )をもつとともに、その周囲に対イオンと呼ばれ
るブラスイオン(H+ )が分布している。ここで、この
系に前述したようなピリジンのような電離物質を添加す
るとシラノール基の解離度が変化し、粒子の電荷密度
(単位表面積あたりの電荷量)が変化する。このように
電荷密度が比較的容易に制御できるという特性はシリカ
粒子のメリットであり、これを利用してコロイド結晶を
調製することができる。
【0017】しかしながら、本発明のコロイド結晶の製
造方法は、シリカ−水系に限られず、表面に弱酸または
弱塩基に由来する電荷を有するコロイド粒子が液体媒質
に分散され、上述したような弱電離物質を添加すると該
電離物質が液体媒質中で解離(電離)するとともに、コ
ロイド粒子表面の電荷が変化し得るようなその他のイオ
ン性コロイド分散系にも適用できる。
【0018】すなわち、コロイド粒子として、表面に弱
酸を有するものであればシリカと同様に使用可能であ
り、例えば、酸化チタン微粒子やカルボキシ変成ラテッ
クス(表面にカルボキシル基を有するラテックス)等を
使用することができる。さらに、表面に弱塩基を持つも
のであれば、弱酸を添加することにより、シリカ+ピリ
ジン系と類似の機能を発現されることもでき、これに該
当するコロイド粒子としては酸化アルミニウムやアミノ
基を有するラテックス等を挙げることができる。
【0019】また、弱酸と弱塩基の両方をもつ球状タン
パク質や粘度鉱物から成るコロイド系にも適用可能であ
る。さらに、アミノ基を有するシランカップリング剤を
用いてシリカ粒子表面に弱塩基を導入するなどの表面修
飾法により、種々の弱酸や弱塩基が粒子表面に導入され
た各種のコロイド粒子を含む系にも本発明は適用でき
る。
【0020】また、液体媒質に関しては、コロイド粒子
表面の解離基(電荷付与基)、および添加した弱電離物
質(弱酸、弱塩基、塩)が解離できるような高い誘電率
を呈することができれば、水以外の液体も使用可能であ
る。例えば、フォルムアミド類(例えば、ジメチルフォ
ルムアミド)やアルコール類(例えば、エチレングリコ
ール類)を使用することができる。これらはコロイド粒
子および添加する弱電離物質の組合せによってはそのま
ま使用することもできるが、一般的には水との混合物と
して使用するのが好ましい。
【0021】結晶化方法 本発明の方法に従いコロイド結晶を生成させるには、上
述したようなコロイド粒子と液体媒質とから成るコロイ
ド分散系に弱電離物質(弱塩基、弱酸、塩)を添加し
て、系を外部から加熱または冷却すればよい。すなわ
ち、温度上昇とともに解離度が増加するような弱電離物
質を用いる場合には加熱することによりコロイド結晶が
生成し、他方、温度上昇とともに解離度が減少するよう
な弱電離物質を用いる場合には冷却することによりコロ
イド結晶が生成する。
【0022】弱電離物質を添加するコロイド分散系は、
市販のコロイド用粒子を水などの適当な液体媒質に分散
させたり、ゾル−ゲル法などにより合成したものを用い
ればよいが、一般に、コロイド結晶は微量の塩(イオン
性不純物)の存在によってその生成が阻害されるため、
コロイド分散系の調製にあたっては充分な脱塩が必要で
ある。例えば、水を用いる場合には、まず精製水に対し
て、用いた水の電気伝導度が使用前の値と同程度になる
まで透析を行い、次に充分に洗浄したイオン交換樹脂
(陽イオンおよび陰イオン交換樹脂の混床)を試料に共
存して少なくとも1週間保つことにより、脱塩精製を行
う。
【0023】さらに、コロイド粒子の粒径およびその分
布にも注意を払う必要がある。例えば、シリカ粒子の場
合、粒径が数1000Å以上のシリカ粒子は、沈降が著しい
ため不適であり、1000Å程度以下の粒子を用いることが
望ましい。また粒径分布が広い試料は結晶を生じにく
く、分布が10%程度以下の粒子を用いることが望まし
い。
【0024】次に、弱電離物質を添加、共存させ、これ
に温度変化を起こさせることによりコロイド結晶を生成
させることができる。この場合、前述したように、イオ
ン性コロイド系における結晶化を支配するコロイド粒子
間の静電的相互作用は、該粒子の有効表面電荷密度(σ
e )に加えて、粒子の体積分率(φ)および添加塩濃度
(Cs )によっても影響される。したがって、結晶化が
生じる温度や弱電離物質の添加量は、当初のコロイド分
散系のφやCs によって異なる。例えば、ピリジン(P
y)を添加する場合、一定温度およびφ条件下で比較し
たとき、一般に、Cs 値が高いほどPy濃度の高い条件
で結晶化が起こる。
【0025】一般的には、φ(コロイド粒子の体積分
率)として0.01〜0.05程度、またCs(添加塩濃度)と
して2〜10μM程度のコロイド分散系を調製し、これに
弱電離物質を添加する。このためには、コロイド粒子の
比重をピクメーター法などにより求め、この値を用いて
精製したコロイド分散系のφ値を絶乾法により決定す
る。これを精製した水などの液体媒質で希釈することに
より、所定のφ値を有する分散系を調製する。φ値は、
コロイド結晶が望まれる特性に応じた結晶面間隔を有す
るように算出する。また、必要に応じ、NaClなどの
低分子塩水溶液を添加してCs 値を制御する。
【0026】以上の試料調製にあたっては、イオン性不
純物による汚染を可能な限り避ける必要がある。この
点、ガラスからは塩基性不純物が水中に溶出し、粒子の
σe 値を増加させるため、ガラス製の容器および器具の
使用は避ける。また空気中の二酸化炭素は水に溶解して
炭酸を生じるため、窒素等の雰囲気下で調製を行うこと
が望ましい。さらに、容器、器具類は精製水(電気伝導
度 0.6μS/cm以下)で充分洗浄したのち使用する。
【0027】以上のように調製したコロイド系を加熱ま
たは冷却し、結晶の有無を確認し、結晶化温度を評価す
ればよい。結晶生成の確認には、イリデセンスの観察の
他、X線散乱法、光学顕微鏡法および分光光度法(反射
または透過スペクトル測定)等が適用できる。
【0028】本発明のコロイド結晶製造方法の効果 本発明の方法では、単に外部から系を加熱または冷却す
るという簡単な手段により、熱可逆的にコロイド粒子の
結晶化を生じさせることができる。この結晶化は、ピリ
ジン等の弱電離物質の濃度を変化させることにより、制
御できるが、その際、弱電離物質の濃度はNaOHのよ
うな強塩基を添加する場合のように厳密である必要もな
い。すなわち、添加した弱電離物質の濃度に比べその解
離種の濃度がごく少量であるため、弱電離物質濃度に対
するコロイド粒子の表面電荷密度(σe )の変化が強塩
基を添加した場合より緩やかであり、ある程度の濃度範
囲が許容されることも利点である。
【0029】また、本発明においては系を密閉系に保つ
ことができるため、イオン性不純物による汚染を防いで
高性能のコロイド結晶を得ることができる。かくして、
本発明は、光応答特性を制御できる光学素子などの製造
に、広範な応用が期待される。
【0030】弱電離物質含有コロイド系のその他の用途 叙上のように、本発明のコロイド結晶の製造方法は、表
面に電荷を有するコロイド粒子、該コロイド粒子を分散
させる液体媒質、および該液体媒質中において解離度が
温度変化とともに変化する弱電離物質を含むコロイド系
を利用し、これに外部から温度変化を与えてコロイド結
晶を生成させることに基づくものである。このような弱
電離物質含有コロイド系は温度変化により可逆的に結晶
化し物性が変化するので、この性質を利用して、コロイ
ド結晶の製造以外にも応用することが可能である。
【0031】例えば、温度変化により物性が変わること
を利用した新規な感熱性材料(感熱性塗料、温度センサ
ーなど)の開発が可能となる。また、昇温によりコロイ
ド系が結晶化するような系を用いれば、系の粘性は温度
とともに増加することが期待される。一方、通常の単純
液体においては、一般に粘性は温度増加にともない単調
に減少する。このような特異な粘性−温度特性を利用し
て、例えば従来の応力伝達系に用いられる液体(クラッ
チ用のオイルなど)の温度特性の改善などへの応用も期
待される。
【0032】これらの用途に適用される場合の弱電離物
質含有コロイド系におけるコロイド粒子、液体媒質およ
び弱電離物質の内容は、コロイド結晶の製造方法に関連
して説明したのと本質的には同じである。但し、これら
の用途においては、弱電離物質含有コロイド系は、コロ
イド結晶を製造する場合のようなコロイド溶液(ゾル)
のみならず、必要に応じてゲル状態をとることもある。
したがって、この場合のコロイド系とは、ゾル状態およ
びゲル状態の両方を指称するものとする。
【0033】
【実施例】本発明の特徴を一層明らかにするため、シリ
カ−水コロイド系にピリジン(Py)を添加して結晶化
の相図を求めた例を示すが、本発明はこの実施例によっ
て限定されるものではない。日本触媒社製シリカコロイ
ド粒子KE−P10W(直径0.12±0.01μm、比重2.24)
を透析法およびイオン交換法により充分に精製し、実験
に用いた。電気伝導度測定により決定したPy無添加時
におけるσe 値は、約 0.1μC/cm2 であった。Cs
は添加した塩(NaCl)の濃度と、用いた水中のイオ
ン性不純物濃度(2μM)の和として決定した。
【0034】φ=0.03、Cs =7μMの条件下で、種々
のPy濃度においてイリデセンス観察により結晶化の相
図を決定した。結果を図1に示す。白および黒丸は、イ
リデセンスが観察された条件および認められなかった条
件を示し、それぞれ結晶相、無秩序相に対応する。本実
施例の場合、10-4MオーダーのPyを共存することによ
り、約0〜50℃の温度範囲において、加熱により結晶化
するシリカコロイド分散系を得ることができた。結晶化
は熱可逆的であり、加熱により結晶化した試料を冷却す
ると、系は無秩序状態となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従いシリカ−水コロイド分散系にピリ
ジンを添加してコロイド結晶が生成される条件を示す相
図である。
【手続補正書】
【提出日】平成11年8月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に電荷を有するコロイド粒子が液体
    媒質中に分散されているコロイド分散系に、該液体媒質
    中における解離度が温度変化とともに変化するような弱
    電離物質を添加して、外部からの加熱または冷却により
    前記コロイド粒子を結晶化させることを特徴とするコロ
    イド結晶の製造方法。
  2. 【請求項2】 コロイド粒子がシリカ粒子であり、液体
    媒質が水であり、弱電離物質がピリジンまたはピリジン
    誘導体であることを特徴とする請求項2のコロイド結晶
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 表面に電荷を有するコロイド粒子、該コ
    ロイド粒子を分散させる液体媒質、および該液体媒質中
    において解離度が温度変化とともに変化する弱電離物質
    を含むことを特徴とするコロイド系。
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