JPH11315094A - ステロイド類似構造を有する物質、その製造方法及び該物質を含有する抗腫瘍剤 - Google Patents

ステロイド類似構造を有する物質、その製造方法及び該物質を含有する抗腫瘍剤

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JPH11315094A
JPH11315094A JP11043072A JP4307299A JPH11315094A JP H11315094 A JPH11315094 A JP H11315094A JP 11043072 A JP11043072 A JP 11043072A JP 4307299 A JP4307299 A JP 4307299A JP H11315094 A JPH11315094 A JP H11315094A
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Dairyu Han
台龍 潘
Shigeru Goto
茂 後藤
Choryu Chin
肇隆 陳
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Hisamitsu Pharmaceutical Co Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、冬虫夏草が有する抗腫瘍効果をも
つ化合物を純粋な状態で得ることができる分離方法を提
供する。さらに、かかる抗腫瘍効果を有する化合物の化
学構造を明らかにする。さらには、該化合物を含有する
抗腫瘍剤を提供することを目的とする。 【解決手段】 本発明にかかる方法は、冬虫夏草の子実
体部分を乾燥し、前記乾燥した子実体部分を粉砕して乾
燥粉砕試料を調製し、前記試料を水混和性溶媒で抽出し
て抽出液を調製し、前記抽出液を濃縮して粗抽出物を調
製し、前記粗抽出物を少なくとも1回、シリカゲルカラ
ムクロマトグラフィーにより腫瘍細胞増殖抑制作用を有
する溶出留分を分離して活性留分とし、さらに、前記活
性留分をクロマトグラフィーにより、腫瘍細胞増殖抑制
作用を有する活性成分を分離精製して得ることを特徴と
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗腫瘍活性を有す
る冬虫夏草の活性留分とそれに含まれる活性成分の分離
方法、および該活性成分の化学構造に関する。さらに
は、該活性留分または活性成分を含有する抗腫瘍剤に関
する。
【0002】
【従来の技術】冬虫夏草は蝶蛾類鱗翅目及び鞘翅目の昆
虫またはその幼虫に寄生してその体内に菌核を形成し、
夏季に宿主である昆虫またはその幼虫の体表面に形成さ
れる子実体である。冬虫夏草は、世界におよそ350種
が知られており、古くから人体に対して全く毒性が無
く、様々な効果を示すために漢方薬として経口投与され
る物質であり、今日では中国の漢方薬に関する書物であ
る「中草葯学」や「中葯大辞典」などに収載され、本邦
においても「新訂和漢薬」その他多数の漢方書に記載さ
れている。
【0003】各種文書に記載されている薬理作用として
は、精力増強、滋養強壮、循環器系疾患(日本薬理学会
誌、67巻、213頁、1995年)、糖尿病〔Biol.Pharm.Bu
ll.,16、1291−1293(1993)、同,19,294−296(19
96)〕、肝疾患〔Prog.Med.,12,1172−1174(199
2)〕等に効果があるとされている。さらに、近年来の
薬理学上の研究によって、冬虫夏草真菌は多方面にわた
り活性と薬理作用を有することが実証されており、抗腫
瘍、免疫増強作用など〔「日本免疫学会学術記録」18
巻、665頁(1988年),「日本細菌学会誌」45巻、763頁
(1990年)、J.Kanazawa「Med.Univ.,」17,330−3
35(1992)〕も報告されている。
【0004】しかし、完全に純化された冬虫夏草の活性
成分を研究及び臨床的に用いた例は極めて少なく〔J.
Am.Pharm.Ass.,46,114−118(1957)、特開平8−8
1386号公報〕、そのため純化されていない抽出物の投与
時には多量の冬虫夏草原未、或いは錠剤が必要であると
いう問題点や、薬理作用の均一性や信頼性の点について
も問題があった。さらに冬虫夏草からの活性種の分類や
限定、および薬理作用の発現機序などに関する研究はほ
とんどなされていないため、最も多種の冬虫夏草の生息
が確認されている中国をはじめアジア諸国では葛根湯な
どの薬草を煎じて服用するなど、地域ごとの慣習と信仰
によって用いられているのが現状であり、確実で安定的
な薬理効果を維持するまでには至っていない。
【0005】したがって、冬虫夏草の薬理作用、特に抗
腫瘍、免疫増強等の薬理効果を確実かつ有効的に利用す
るためには、冬虫夏草の成分の中で該活性をもつ活性成
分を分離する方法の開発が強く望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、冬虫夏草が
有する抗腫瘍効果に着目し、該効果をもつ化合物を純粋
な状態で得ることができる分離方法を提供することを目
的とする。さらに、本発明は、かかる抗腫瘍効果を有す
る化合物を提供することを目的とする。さらには、該化
合物を含有する抗腫瘍剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、冬虫夏草の子
実体部分を乾燥し、前記乾燥した子実体部分を粉砕して
乾燥粉砕試料を調製し、前記試料を水混和性溶媒で抽出
して抽出液を調製し、前記抽出液を濃縮して粗抽出物を
調製し、前記粗抽出物を少なくとも1回、シリカゲルカ
ラムクロマトグラフィーにより腫瘍細胞増殖抑制作用を
有する溶出留分を分離して活性留分とし、さらに、前記
活性留分をクロマトグラフィーにより、腫瘍細胞増殖抑
制作用を有する活性成分を分離精製して得ることを特徴
とする、冬虫夏草の抗腫瘍活性留分および活性成分を分
離する方法を提供するものである。
【0008】また、分離される活性成分が、次の(1)〜
(6)の特性、(1) 性状:茶褐色、油状(室温);
(2) 分子式:C31H5806;(3) 主マスフラグメント
ピーク(FAB)(m/z):512(ベースピーク)、482、4
37、393、349、305、261、217、175、149、133;(4)I
R吸収スペクトル(cm-1):3300、1725、1645、1430、1
370、1172、1138;(5)UV吸収スペクトル(λmax;n
m):225を満たす化合物であることを特徴とする方法を
提供するものである。
【0009】さらには、本発明は、前記分離される活性
成分が、下記式(I)で表される化合物であることを特
徴とする方法を提供するものである。
【0010】
【化2】
【0011】(式中、Rは−CO(CH2nCH3で表
わされるアシル基であり、式中nは0〜5の整数であ
る。) また、本発明は、前記活性留分、前記活性成分、前記化
合物(I)、又は化合物(II)の少なくとも1つを含有する
抗腫瘍剤を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】A. 本発明は、冬虫夏草に含ま
れる抗腫瘍活性留分および活性成分を分離する方法であ
って、冬虫夏草の子実体部分を乾燥し、前記乾燥した子
実体部分を粉砕して乾燥粉砕試料を調製し、前記試料を
水混和性溶媒で抽出して抽出液を調製し、前記抽出液を
濃縮して粗抽出物を調製し、前記粗抽出物を少なくとも
1回、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより腫瘍
細胞増殖抑制作用を有する溶出留分を分離して活性留分
とし、さらに、前記活性留分をクロマトグラフィーによ
り、腫瘍細胞増殖抑制作用を有する活性成分を分離精製
して得ることを特徴とするものである(図1A)。
【0013】本発明において使用可能な抽出原料である
冬虫夏草の子実体には特に制限はなく、一般に知られて
いる蝶蛾類鱗翅目および鞘翅日の昆虫又はその幼虫に寄
生してその体内の菌核を形成し、夏季に宿主である昆虫
又はその幼虫の体表面に形成される子実体であればよ
い。本発明においては特に好ましく使用可能な冬虫夏草
としては、コウモリ蛾科の幼虫(Hepialus armoricanus
Ober)に寄生してその体内に菌核を形成し、夏季に頭
部から根棒状の子実体を形成するコルダイセプシネンシ
ス(Cordyceps sinensis)が挙げられる。また、コルダ
イセプシネンシス以外の冬虫夏草で生薬として薬効のあ
るものとしてはセミタケ(Cordyceps sobolifera B)や
サナギタケ(Cordyceps militaris Link)、ミミカキタ
ケ(Cordyceps nutans Pat)などが知られており、これ
らも本発明において好ましく使用できるものである。本
発明にかかる方法により、これらの冬虫夏草であって、
以下説明する抗腫瘍効果を有する活性成分を産生するも
のであればいずれの場合も抽出(分離)可能である。ま
た、本発明にかかる方法を用いることにより、子実体又
は被子体の区別なく抽出可能であるが、特に高収量で得
るためには、コルダイセプシネンシスの子実体からの抽
出が好ましい。
【0014】該原料から、抗腫瘍活性を有する活性留分
もしくは活性成分を抽出分離する方法としては、一般的
に植物から物質を抽出するために通常用いられる方法を
特に制限なく使用することができるが、本発明において
特に好ましい抽出分離する方法を下記に示す。なお、抗
腫瘍活性を有する活性留分、または活性成分を分離する
ために用いる該活性の判定方法についても特に制限はな
く、通常公知の方法を選択して使用することは容易であ
る。具体的には、特定の腫瘍細胞を選択し、該細胞の増
殖を抑制する効果に基づいて判定することが可能であ
る。
【0015】図1Aに一般的に示したように、本発明に
かかる方法は、以下の工程からなる。 (1)原料となる冬虫夏草の子実体部分を乾燥する工程で
あって、これは、原料である冬虫夏草の含水量が非常に
高い場合、後続の抽出時に極性物質も共に抽出されるこ
とから、クロマトグラフィーによる分離精製処理に悪影
響を与えることが多いからである。該乾燥方法について
は特に制限はないが、適当な大きさの乾燥箱を用いるこ
とが好ましい。また、乾燥温度も特に制限はないが、35
〜60℃程度の温度範囲が好ましい。必要ならば送風乾燥
を行うことも好ましい。また不要な光による分解を防止
するため、暗所での乾燥が好ましい。 (2)(1)で乾燥した子実体部分を粉砕して乾燥粉砕試料を
調製する工程であって、これにより以下の抽出の効果を
高めることができる。粉砕する方法についても特に制限
はなく、通常使用される研磨機あるいは粉砕機で研磨あ
るいは粉砕することができる。 (3)(2)で得られた乾燥粉砕試料を溶媒を用いて抽出する
工程であって、これにより溶媒を除いた後粗抽出物を得
ることができる。本発明において使用できる抽出溶媒と
しては、水混和性溶媒、または水不混和性溶媒のどちら
でもよい。水混和性溶媒としては、具体的にはメタノー
ル又はその他の低級アルコールを単独で、または緩衝
液、水と組み合わせて用いるものが挙げられる。また、
水不混和性溶媒としては、具体的にはジエチルエーテ
ル、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタンなどが
挙げられる。特に、メタノール又は酢酸エチルによる抽
出が最も高い回収率、抽出率を与えることから好まし
い。 (4)さらに、抽出溶媒を除いて濃縮して粗抽出物を調製
する工程についても特に制限はなく、例えば減圧下で溶
媒を除去することが可能である。さらに、必要ならば、
粗抽出物を減圧で乾燥することも可能である。 (5)(4)で得られる粗抽出物を、カラムクロマトグラフィ
ーにより腫瘍細胞増殖抑制作用を有する成分を分離する
工程であり、これにより、該成分を含む溶出留分を得る
ことができる。この工程は必要ならば2回以上繰り返す
ことが好ましい。ここで、抗腫瘍活性を有する活性留分
を判別するためには、順に溶出された各フラクションの
留分について該活性を測定することで可能である。
【0016】カラムクロマトグラフィーは、公知の種々
の性質のカラム材質を使用することが可能であるが、本
発明においてはシリカゲルカラムクロマトグラフィーが
好ましく使用できる。また、使用可能なシリカゲルの種
類、粒径、充填量、カラムの長さ等の条件については、
前記粗抽出物の量、不純物の量、望ましい分離の程度
(純度)等に鑑みて適宜選択することは当業者にとって
容易である。さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィ
ーを二回以上繰り返すことによりより純度の高い活性留
分が得られる。
【0017】最初(第1回目)のシリカゲルカラムクロ
マトグラフィーの溶出溶媒としては特に制限はなく、非
極性溶媒、非極性溶媒と極性溶媒との組み合わせ、また
は極性溶媒のみを単独で、または組み合わせて使用する
ことができる。本発明においては、特にn−へキサン−
酢酸エチル、酢酸エチル−メタノールなどの溶媒混合液
の使用が好ましく、これらの溶媒混合物の混合比を適宜
調整して用いることは当業者にとって容易である。溶出
フラクションの数についても特に制限はなく、各フラク
ションの活性の変化がそれぞれ区別可能となる程度に分
けることができればよい(具体的には実施例1では図1
Bで示すように、5フラクション程度)。溶出される各
フラクションのうち、最も活性(腫瘍細胞に特異的な増
殖抑制作用を有す活性)の高い留分(具体的には実施例
1では図1Bで示すF4)を取得する。
【0018】より、高い純度の活性留分を取得するた
め、または、活性成分を単離する場合、このフラクショ
ンを再びシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供する
ことができる。この場合には、溶出溶媒はより非極性と
することが好ましく、具体的にはジクロロメタンとメタ
ノールの混合液とし、溶媒混合の比を漸次調節すること
により、より高い純度の活性留分(具体的には実施例1
では図1Bで示すC5)を得ることが可能である。溶出
フラクションの数についても特に制限はなく、各フラク
ションの活性の変化がそれぞれ区別可能となる程度に分
けることができればよい(具体的には実施例1では図1
Bで示すように10フラクション程度)。(6)(5)で得ら
れる活性留分からクロマトグラフィーにより、活性成分
を単離する工程であり、これにより、冬虫夏草に含まれ
る抗腫瘍活性を有する活性成分たる化合物(I)を分離
することができる。この目的のために種々の高い分離能
を有するクロマトグラフィーの方法が使用可能である
が、特に薄層クロマトグラフィー(以下TLCとする)
および/または高効率液体クロマトグラフィー(以下H
PLCとする)の使用が好ましい。これらの担体として
は順相でも逆相でもよいが、特に逆相の使用が好まし
い。かかるクロマトグラフィー処理により、さらに純化
を進行させ、HPLC上で単一ピークを示す完全に純化
された活性成分〔化合物(I)〕を得ることができる
(図2)。かかる条件下でのHPLCにおけるピーク位
置(例えば保持時間)またはTLCにおけるスポット位
置(例えばRf値)は、本発明にかかる化合物(I)の
同定、確認に利用できるものである。TLCの担体の種
類、展開溶媒、またはHPLCの担体の種類、カラムの
長さ、溶出溶媒の種類、溶媒の流量等の条件についての
選択は、通常公知の方法に従い当業者にとっては容易で
ある。
【0019】本発明にかかる方法を用いると、前記化合
物(I)は冬虫夏草の子実体100gに対して100mgから10m
g取得可能であるが、必要に応じて抽出方法を変更する
ことでさらに高収量、高収率を得ることも可能である。 B.上で説明したように、本発明にかかる方法により分
離精製される、本発明にかかる冬虫夏草に含まれる抗腫
瘍活性成分である化合物(I)の一般的な化学構造は、
種々の物理化学的測定結果(性状、種々の化学特性試
験、元素分析、分子量測定、質量分析、赤外線共鳴吸収
スペクトル、紫外可視吸収スペクトル、核磁気共鳴吸収
スペクトルその他の化学構造分析方法等に基づく)によ
り、一般的に以下の式(I)で表されるステロイド類似
構造を有する物質である。
【0020】
【化3】
【0021】ここで、Rは一般に−CO(CH2nCH
3で表わされるアシル基である(nは0〜5の整数であ
る)。
【0022】より具体的には、Rは、アセチル基、プロ
ピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ヘキサノイル
基、へプタノイル基である。実施例1で分離されたもの
は、n=0のアセチル基のものである(式(II))。かか
る構造から、今まで知られていない全く新規なステロイ
ド骨格に類似する化合物であることがわかる。なお、当
該化合物には異性体(幾何異性体、光学異性体を含む)
も含まれる。
【0023】これら化合物はまた、上で説明した本発明
にかかる方法に従い得ることが可能であるが、これに限
定されることはない。これらの化学構造式に基づいて、
従来公知のステロイド類似体の化学合成方法を利用する
ことにより容易に合成経路をデザインし、かつそれに基
づいて合成することが可能である。 C.本発明にかかる抗腫瘍剤は、上のA.およびB.で
説明した冬虫夏草に含まれる抗腫瘍活性の活性留分また
は活性成分を含有することを特徴とするものである。す
なわち、上記の方法で得られた化合物(I)は、腫瘍細
胞に対して特異的に顕著な増殖抑制効果を有する。その
作用機序としては、化合物(I)により、直接又は間接
的に腫瘍細胞のDNAが分断されることが予想される。す
なわち化合物(I)は、正常細胞には全く増殖抑制作用
を示さないにも関わらず、腫瘍細胞に特異的に増殖抑制
効果があるので、抗腫瘍剤として用いることができる。
【0024】化合物(I)を医薬品製剤として使用する
場合、単独で若しくは公知の抗ガン剤、ステロイド類な
どの治療薬と組み合わせて、そのまま若しくは公知の賦
形剤と共に錠剤、カプセル剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、
クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、エアゾール剤、口
腔剤、硬膏剤、シップ剤、点眼剤等、適宜の薬剤剤型と
して用いることが可能である。
【0025】通常、全身的にあるいは局所的に、経口的
にまたは非経口的に投与することができる。投与量は、
対象の症状、被投与者の年齢、性別等に応じて適宜決定
されるが、通常成人に対して投与する場合、式(I)の
化合物を1回の投与量として10〜500mg程度を1日に約1〜
数回程度投与することができる。
【0026】以下に本発明の実施例を示すが、本発明は
以下の実施例の記載によって何ら制限されるものではな
い。
【0027】
【実施例】(実施例1)抗腫瘍活性成分の抽出 図1Bのフローチャートに従って行った。冬虫夏草の子
実体部分100gを乾燥箱(温度45〜50℃の暗所)で加熱乾
燥し、粉砕機で粉砕後、10倍量のメタノール(w/v)に
24時間浸漬し、抽出液を減圧濃縮した。その後、粗抽出
物を1段階目のシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3
5×300mm,Silica ge1 60,63〜100μm,Merck社製)に
供し、溶媒としてn−へキサン、1:1のn−へキサン/酢
酸エチル、酢酸エチル、1:1の酢酸エチル/メタノー
ル、メタノールと漸次極性を増加させたものを用い、
1:1の酢酸エチル/メタノールによる溶出部分(F4層)
を分離した。
【0028】次いで、F4層を第2段階目のシリカゲルカ
ラムクロマトグラフィー(35×300mm、Silica ge1 60,
63〜100μm,Merck)に供し、抽出溶媒にジクロロメタ
ンとメタノール混合液を用い、メタノールの混合比を漸
次上げて行き、C5層の溶出部分を得た。さらに活性成分
を得るために、展開液をn−へキサン/酢酸エチル(1:
1 v/v)としたシリカゲル薄層クロマトグラフィー(T
LC Plate Silica ge1 60,F254、Merck社製)を2回展
開し、C5層の不純物を除去し、Rf値が0.5〜0.7の範囲
の試料を回収した。
【0029】次いで、回収した試料を、溶出溶媒として
1%(vol/vol)のメタノールを含むジクロロメタンを
使用し、カラム固定相をシリカカラム(3.9×150mm,No
va−Pak C18,NovaBiochemicals社製)とし、溶出溶媒
の流速を1ml/min、紫外スペクトル測定器の波長を254n
mに設定した、逆相式高効率液体クロマトグラフィーに
添加し、完全に純化した活性成分50mgを得た。完全に純
化された該化合物の逆相クロマトグラムによる分析結果
を図2に示したが、この条件では単一ピークを示した。
さらに、得られた活性成分化合物は以下の物理化学的性
質を満たすものである。 (1) 性状:茶褐色、油状(室温) (2) 分子式:C31H5806 (3) マスフラグメント(FAB)(m/z):512(ベー
スピーク、以下同じ)、482、437、393、349、305、26
1、217、175、149、133(図3) (4)IR吸収スペクトル(cm−1):3300(OH)、1725
(C=0)、1645(C=C)、1430(CH3)、1370(CH3C
O)、1172(C−CO)、1138(C−0) (5)UV吸収スペクトル(λmax;nm):225 この結果から前記得られた化合物の化学構造式は、以下
の式(II)で与えられる。
【0030】
【化4】
【0031】(試験例1)冬虫夏草より抽出した活性化
合物を含む活性留分が腫瘍細胞の増殖に対して特異的な
抑制作用を示すことを証明するため、VeroおよびHeLa細
胞を用いて増殖抑制作用の検討を行なった。ここでVero
は、ミドリサルの腎臓より得られる腫瘍細胞系統であ
り、HeLaはヒト子宮頚より得られる腫瘍細胞系統であ
る。
【0032】これら細胞をFCS−MEM培地を用いて培養
し、各細胞にトリプシン処理を施し、FCSを含まないRPM
I培養液で3回洗浄した。試験前の細胞密度は50000個/m
lに調整した。各細胞の懸濁液を96穴平底プレートに200
μlずつ滴下した。
【0033】1日後、培養液を吸引し、試験穴に活性成
分溶液200μlを、対照穴にはDMSO200μlを滴下し、5
%CO2雰囲気下37℃で3日間培養した。染色試薬であるAl
armer Blue試薬を10μlずつ添加した後さらに3時問培
養し、分光学的測定(570nm及び600nm)によって以下の
式より、腫瘍細胞増殖抑制作用を決定した。
【0034】式:増殖抑制作用=100%−[(試験穴の
吸光度/対照穴の吸光度)×100%] また、同様の実験を繊維芽細胞でも評価した。その結果
を図4〜図6に示した。
【0035】図4は活性留分C5の腫瘍増殖細胞の抑制
作用の濃度依存性を示したものであり、それぞれの細胞
についてともに用量依存的に抑制作用が認められた。図
5は各留分C1〜C5(およびコントロールとしてのD
MSO添加)のVero細胞の増殖の抑制作用(細胞生
存率として表した)を示したものであり、すべての留分
がコントロールに比較して顕著な抑制作用を有すること
が認められた。また、図6は各留分C1〜C5(および
コントロールとしてのDMSO添加)のHela細胞の
増殖の抑制作用(細胞生存率として表した)を示したも
のであり、特にC5留分がコントロールに比較して極め
て顕著な抑制作用を有することが認められた。
【0036】これらの結果から、本発明の活性留分、お
よび活性成分は腫瘍細胞に特異的な著しい増殖抑制作用
を示すことが明らかとなった。 (試験例2)冬虫夏草より抽出した活性留分が腫瘍が腫
瘍細胞のDNAに対して特異的な分断作用を示し、抗腫瘍
作用を有する証明として、HeLa細胞におけるDNA分断を
検討した。Φ10cmの培養皿にHela細胞を1×106個/mlの
密度に調製、培養し、活性留分溶液200μlを滴下し
た。24、48、72時間後に細胞を50μlずつ分取し、400
μlの培養液(Tris−EDTA、S DS、Proteinase Kを含
む)中5%CO2雰囲気下37℃で一晩培養した。これを塩に
添加して分解タンパク質を遠心分離し、上清をエタノー
ル中に沈殿させた。
【0037】該沈殿物をRNaseA含有Tris−EDTA緩衝溶液
中に懸濁させ、2時間後アガロースゲルに展開し、臭化
エチジウムで染色後に電気泳勤し、UV光を照射して観察
した。その結果、図7及び図8に示すように、細胞核内に
クロマチン凝集が確認され、また、図9に示すように電
気泳動の結果からもDNAが低分子量化していることか
ら、活性化合物によって腫瘍細胞にアポトーシスが生起
していることが明らかとなった。
【0038】
【発明の効果】本発明により、冬虫夏草に含まれる抗腫
瘍活性留分または活性成分を分離するすることが可能と
なる。さらに、該活性を有する成分の化学構造が明らか
となる。また、冬虫夏草に含まれる抗腫瘍活性留分また
は活性成分を含む抗腫瘍剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本発明による冬虫夏草より活性
留分及び活性成分を抽出する一般的なフローチャート図
であり、図1(b)は、実施例1で使用した本発明による冬
虫夏草より活性留分及び活性成分の抽出フローチャート
図である。
【図2】図2は、実施例1で得られた本発明により分離
精製された化合物(II)の逆相クロマトグラムを示す図で
ある。ここで矢印は化合物(II)のピークである。ここで
保持時間はサンプル注入時を0分として測定した。
【図3】図3は、実施例1で得られた本発明の活性成分
である化合物(II)のマススペクトルデータを示す図であ
る。
【図4】図4は、本発明の活性留分(図1(b)のC5留
分)の細胞増殖抑制作用(濃度依存性)を示す図であ
る。ここで○は繊維芽細胞を、●はHela細胞をそれ
ぞれ用いた場合の結果を示す。
【図5】図5は、本発明により分離、抽出された各留分
(図1(b)のC1〜C10留分)の、Vero細胞に対す
る細胞増殖抑制作用を示す図である。
【図6】図6は、本発明により分離、抽出された各留分
(図1(b)のC1〜C10留分)の、Hela細胞に対する
細胞増殖抑制作用を示す図である。
【図7】図7は、DNAフラグメンテーションの結果、Hel
a細胞内のクロマチンの凝集(24時間)を示す図であ
る。
【図8】図8は、DNAフラグメンテーションの結果、Hel
a細胞内のクロマチンの凝集(72時間)を示す図であ
る。
【図9】図9は、Hela細胞DNAの電気泳動の結果を示
す図である。ここで、レーン1〜4は24時間後、レー
ン5〜8は48時間後、レーン9〜12は72時間後の
結果を示す。Mおよび数字はは分子量マーカーおよびマ
ーカー用分子量を示す。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 冬虫夏草の子実体部分を乾燥し、前記乾
    燥した子実体部分を粉砕して乾燥粉砕試料を調製し、前
    記試料を水混和性溶媒で抽出して抽出液を調製し、前記
    抽出液を濃縮して粗抽出物を調製し、前記粗抽出物を少
    なくとも1回、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに
    より腫瘍細胞増殖抑制作用を有する溶出留分を分離して
    活性留分とし、さらに、前記活性留分をクロマトグラフ
    ィーにより、腫瘍細胞増殖抑制作用を有する活性成分を
    分離精製して得ることを特徴とする、冬虫夏草の抗腫瘍
    活性留分および活性成分の分離方法。
  2. 【請求項2】 前記活性成分が、下記の(1)〜(6)の特性
    を満たす化合物であることを特徴とする請求項1に記載
    の方法。 (1) 性状:茶褐色、油状(室温) (2) 分子式:C31H5806 (3) 主マスフラグメントピーク(FAB)(m/z):51
    2(ベースピーク)、482、437、393、349、305、261、2
    17、175、149、133 (4)IR吸収スペクトル(cm-1):3300、1725、1645、1
    430、1370、1172、1138 (5)UV吸収スペクトル(λmax;nm):225
  3. 【請求項3】 前記活性成分が、下記式(I)で表され
    る化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方
    法。 【化1】 (式中、Rは−CO(CH2nCH3で表わされるアシ
    ル基であり、式中nは0〜5の整数である。)
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の活性留分を含有する抗
    腫瘍剤。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載の活性成分を含有する抗
    腫瘍剤。
  6. 【請求項6】 請求項2に記載の化合物を含有する抗腫
    瘍剤。
  7. 【請求項7】 請求項3に記載の化合物を含有する抗腫
    瘍剤。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100443202B1 (ko) * 2002-01-03 2004-08-04 정헌택 눈꽃동충하초 자실체로부터 분리한(3r,6r)-4-메틸-6-(1-메틸에틸)-3-페닐메틸-1,4-퍼하이드로옥사진-2,5-디온 및 그를 함유하는 아폽토시스 유도제조성물
JP2009084248A (ja) * 2007-10-02 2009-04-23 Iwate Univ 冬虫夏草の培養方法及び冬虫夏草を有効成分とする免疫賦活剤、がん細胞増殖抑制剤、抗炎症剤、又は抗酸化剤
JP2012162479A (ja) * 2011-02-04 2012-08-30 Nippon Tablet Kk 冬虫夏草(Cordyceps)及びその菌糸体培養液から抽出される成分を含有する抗ガン作用を有する組成物並びに該抗ガン作用を有する組成物を含有する食品及び薬品
JP2013151558A (ja) * 2013-05-01 2013-08-08 Iwate Univ 冬虫夏草を有効成分とする免疫賦活剤、がん細胞増殖抑制剤、抗炎症剤、又は抗酸化剤

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