JPH11302821A - 浸炭処理における浸炭防止方法 - Google Patents

浸炭処理における浸炭防止方法

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JPH11302821A
JPH11302821A JP11257598A JP11257598A JPH11302821A JP H11302821 A JPH11302821 A JP H11302821A JP 11257598 A JP11257598 A JP 11257598A JP 11257598 A JP11257598 A JP 11257598A JP H11302821 A JPH11302821 A JP H11302821A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】被処理成品の浸炭を防止する部分に、密着強度
が強く、浸炭処理後にあっては被処理成品の表面から容
易に剥離することのできる金属被膜をブラスト加工によ
り形成し、金属被膜により覆われた部分に炭素が拡散す
ることを防止する。 【解決手段】被処理成品Wの表面に所望パターンのマス
ク材12を取り付け、前記被処理成品Wよりも低硬度、
低融点の金属粉体15を噴射速度80m/sec 以上又は噴
射圧力0.3MPa 以上で噴射し、前記金属粉体15を溶
着させてマスキングされていない被処理成品Wの浸炭を
防止する部分に、金属被膜14を形成した後、固体浸
炭、液体浸炭、ガス浸炭などの既知の浸炭方法により浸
炭処理する。被処理成品Wの表面に形成された金属被膜
15により、被処理成品表面に炭素が拡散することを防
止できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、浸炭処理される
被処理成品の表面のうち浸炭を防止する部分を金属被膜
で被覆して、金属被膜で被覆された部分の被処理成品表
面の浸炭を防止する方法に関し、より詳細には、前記金
属被膜を、被処理成品の表面に金属粉体を噴射すること
により形成する、浸炭処理における浸炭防止方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】鋼の耐摩耗性を向上させるために、焼入
れにより硬さを高くしている。この硬さは、鋼に含有す
る炭素量に依存するが、高炭素鋼に焼入れした場合、全
体が硬化して脆く、疲労強度が低下する。そこで、一般
に炭素量が0.15%程度の低炭素鋼に浸炭して、表面
から内部への炭素濃度勾配を生じさせたものを焼入れし
て、表面は硬く、内部は硬さの低い鋼としている。
【0003】この浸炭処理方法の種類は、固体浸炭法、
液体浸炭法、ガス浸炭法があるが、現在、ガス浸炭法が
主流となっている。
【0004】一方、目的によってはそのうち一部分だけ
を浸炭して、その他の部分は浸炭処理を施さずにそのま
まに残しておく場合がある。このような場合、浸炭処理
を希望しない部分の被処理成品の表面に炭素が拡散する
のを防止する浸炭防止方法として、浸炭防止剤の塗布、
銅メッキ、浸炭払い法などがある。
【0005】浸炭防止剤とは、浸炭処理において、浸炭
を欲しない部分に塗布する薬剤をいい、その中でもっと
も一般的なものが、耐火粘土(耐火粘土2、水ガラス
1、水1/10)である。また、SiO2、AI2O3 、Cu、Na
2O、H2O を主成分とする塗布剤は、SiO2、AI2O3 、Na2O
を粘着剤としてCuを塗布するものである。
【0006】銅メッキは、ガス浸炭処理の雰囲気ガスに
用いられるメタンなどに対して、鉄に比べて還元性を示
さず中性である銅を、一般的には電気メッキ法を用い
て、電解槽の電着液内に陰極の被処理成品と陽極の銅を
投入して通電し、電解によって陽極の銅を陰極の被処理
成品の表面に析出させて銅被覆を行う。
【0007】また、浸炭払い法とは、浸炭を欲しない被
処理成品の表面部分に、予め駄肉をつけておき、浸炭処
理後、その駄肉を削り取る方法である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前述した従来の浸炭防
止方法にあっては、以下の問題点があった。
【0009】(1)浸炭防止剤として耐火粘土を用いた
場合、浸炭防止効果は低く、剥がれやすいという問題点
があった。
【0010】また、塗布剤は浸炭防止効果は耐火粘土よ
りも高いが、一般的に浸炭処理温度は930℃程度と高
いために、塗布剤が固着し、浸炭処理後の除去が困難で
あり、これを考慮して低密度で塗布して除去し易くする
と、塗布部分も浸炭されて、不良品が発生するという問
題点があった。
【0011】耐火粘土、塗布剤ともに塗布後、乾燥の必
要があり、時間を要するという問題点があった。
【0012】(2)銅メッキによる場合、一般に酸、化
学薬品等を使用する電気メッキ法を用いるために、これ
ら酸や化学薬品による公害や、前記酸、化学薬品に浸漬
された被処理製品が脆弱化する等の問題があるだけでな
く、被処理成品の表面に銅が析出されてメッキが形成さ
れるまでに長時間を要し、さらには、細密なメッキ層を
形成するために低電圧で電着を行う場合にはより一層の
時間を要する。そのために、メッキ作業に長時間を要し
コスト高になるという問題点があった。
【0013】また、浸炭処理のされた被処理成品を溶接
する場合、溶接する部分の銅メッキを除去する必要があ
るが、こり銅メッキは除去することが困難なだけでな
く、銅メッキの除去に化学薬品等より成る剥離剤等を使
用する場合、該化学薬品等による公害を生ずるおそれが
ある。
【0014】さらに、浸炭処理する部分には銅メッキが
形成されないように所望パターンに形成したマスク材を
取り付けるが、このマスク材が高価であり、加えて電解
液が被処理成品と前記マスク材の間に浸入しないよう
に、確実にマスク材を取り付ける必要があり該作業が煩
雑である。
【0015】(3)浸炭払い法においては、駄肉をつけ
る必要があるためにコスト高になり、また浸炭処理後、
この駄肉部分を所定の加工精度で削り取る必要があり、
該作業に余分な労力を強いられることとなる。
【0016】本発明は、途上の問題を解決するために開
発されたもので、被処理成品の浸炭を欲しない部分の浸
炭を防止する浸炭防止方法に関し、比較的安価かつ簡単
な方法であり、しかも公害発生の生じ難いブラスト加工
により、短時間で被処理成品の表面に対する密着強度が
強く、浸炭処理後にあっては被処理成品の表面から容易
に剥離することのできる金属被膜を形成することを可能
にし、被処理成品の浸炭を防止する部分に該金属被膜を
施し、金属被膜の形成された被処理成品を浸炭処理した
際に、金属被膜により覆われた部分に炭素が拡散するこ
とを良好に防止できる浸炭防止方法を提供することを目
的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の浸炭処理における浸炭防止方法は、低炭素
鋼、その他浸炭処理の対象である金属より成る被処理成
品W、その一部を浸炭処理の対象となる金属により形成
された被処理成品W、及び浸炭処理の対象となる金属成
分を含む被処理成品Wの表面の浸炭を防止する部分に、
前記被処理成品Wよりも低硬度、低融点の金属粉体15
を噴射して前記金属粉体15を溶着させて、金属被膜1
4を形成した後、固体浸炭、液体浸炭、ガス浸炭などの
既知の浸炭方法により浸炭処理することを特徴とする。
【0018】前記金属粉体15の噴射を、好ましくは噴
射速度80m/sec 以上又は噴射圧力0.3MPa 以上で行
う。
【0019】また、噴射される前記金属粉体15を、平
均粒径20〜300μm 、好ましくは20〜100μm
、より好ましくは20〜60μm とする。
【0020】さらに、前記浸炭処理は、好ましくはガス
浸炭法により行う。
【0021】また、前記被処理成品の表面に前記金属被
膜14を形成しない部分を被覆する所望パターンに形成
されたマスク材12を取り付け後、前記金属粉体15を
噴射すると、前記マスク材を取り付けた部分には前記金
属被膜14が形成されない。
【0022】また、前記金属粉体15は、好ましくは錫
(Sn)又は錫合金の粉体を使用する。
【0023】なお、被処理成品の表面に形成された金属
被膜は、浸炭処理後もそのまま残すこともできるが、必
要に応じて浸炭処理後の該被処理成品の表面に形成され
た金属被膜をサンドブラストにより剥離することもでき
る。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態につき添
付図面を参照しながら説明する。
【0025】本発明の浸炭処理における浸炭防止方法
は、所望パターンに形成されたマスク材12などにより
被覆された被処理成品Wの表面に金属被膜14となる金
属粉体15を噴射することにより、噴射された金属粉体
15を被処理成品Wに溶着させて金属被膜14を形成
し、この金属被膜14の形成された被処理成品Wを浸炭
処理して金属被膜14により被覆された被処理成品Wの
表面に炭素が拡散することを防ぐものである。
【0026】なお、前述の浸炭処理は、固体浸炭法、液
体浸炭法、ガス浸炭法等の既知の各種浸炭法を適用可能
であるが、好ましくはガス浸炭法により浸炭処理を行
う。
【0027】被処理成品Wの表面に噴射されて金属被膜
14を形成する金属粉体15は、平均粒径20〜300
μm 、好ましくは20〜100μm 、より好ましくは2
0〜60μm であり、その材質は、被処理成品Wよりも
低融点でかつ低硬度の種々の金属を使用することができ
るが、亜鉛やニッケル等の金属にあっては、被処理成品
Wの材質によっては被膜が形成され難いものもあり、好
ましくは広範囲な材質の加工材料に対して使用できる錫
(Sn)又は錫合金を使用する。
【0028】錫(Sn)から成る金属粉体15の噴射により
形成された錫被膜14は、浸炭処理後に錫被膜に対して
サンドブラストにより容易に被処理成品の表面から剥離
することができるが、浸炭処理後の被処理成品を溶接す
る必要がある場合、従来は電気メッキなどにより被処理
成品表面に形成された銅メッキなどを完全に除去してか
ら溶接を行う必要があったが、前記錫被膜14は、除去
しなくても溶接可能である。
【0029】また、金属粉体15の形状は球状のもの、
多角形状のものなど種々のものを使用することができる
が、被処理成品Wの表面が研摩され難い球状のものを好
ましく使用する。
【0030】前記金属粉体15を噴射する噴射装置は、
乾式により金属粉体15を所定速度又は所定圧力で噴射
し得る構成のものであればいかなるものでも使用可能で
あり、具体的には遠心作用により金属粉体15を噴射す
る遠心式ブラスト加工装置、圧縮空気等の気体流と共に
金属粉体15を噴射するエア式のブラスト加工装置な
ど、金属粉体15の噴射装置として既知の各種ブラスト
加工装置を使用することができる。
【0031】なお、前記エア式のブラスト装置は、特に
金属粉体15の投入されたタンク内に圧縮空気を供給
し、該圧縮空気により搬送された金属粉体15を別途与
えられた圧縮空気の空気流に乗せてブラストガンにより
噴射する直圧式のブラスト加工装置、金属粉体15のタ
ンクから重力により落下した金属粉体15を圧縮空気に
乗せて噴射する重力式のブラスト加工装置を使用してい
る。
【0032】以下、本発明の方法に使用する噴射装置の
一例として、重力式のブラスト加工装置を添付図面を参
照して説明する。
【0033】図2及び図3は重力式ブラスト加工装置の
正面図及び左側面図であるが、図2及び図3において、
61はキャビネットで、被処理成品Wを出し入れする投
入口を備え、キャビネット61内に前記投入口から投入
した被処理成品Wに金属粉体15を噴射するブラストガ
ン40を設ける。
【0034】また、前記キャビネット61の下部にはホ
ッパ68が設けられ、ホッパ68の最下端は導管65を
介してキャビネット61の上部に設置された金属粉体1
5を回収する回収タンク70の上部に連通する。
【0035】回収タンク70はいわゆるサイクロンで、
粉塵を金属15から分離する装置であり、図2に示すよ
うに上部に円筒状を成す円筒部と、下部に下方に向けて
徐々に狭くなる円錐状を成す円錐部とから成り、回収タ
ンク70の円筒部の上部の側壁に流入口73を設け、こ
の流入口73に連通管75を介して前記導管65の先端
を連通する。
【0036】前記連通管75の軸線方向は、横断面円形
状を成す円筒部の内壁面の接線方向に位置しているの
で、連痛管75から回収タンク70内へ流入した気流は
円筒部の内壁に沿って回りながら降下してゆく。
【0037】回収タンク70の円錐部の下端はブラスト
ガン40から噴射される金属粉体15の噴射量を調整す
る調整器78を備え、この調整器78にブラストガン4
0を連通している。
【0038】一方、回収タンク70の上端壁面の略中央
には連通管74が設けられ、この連結管74は排出管6
7を介してダストコレクタ66に連通している。
【0039】ダストコレクタ66は、排風機69を回転
しダストコレクタ66内の空気を外気へ放出している。
この排風機69によりブラスト加工装置60のキャビネ
ット61、導管65、回収タンク70内の空気を吸引
し、各部がそれぞれ負圧になり、また図示せざる圧縮空
気供給源から供給された空気が金属粉体15と共にブラ
ストガン40から噴射されるので、キャビネット61か
ら順に導管65、回収タンク70、ダストコレクタ66
へ気流が流れる。
【0040】以上のように構成されたブラスト加工装置
60のキャビネット61内に金属被膜14を形成する被
処理成品Wを投入し、この被処理成品Wの表面に対して
金属粉体15を噴射速度80m/sec 以上、又は噴射圧力
0.3MPa 以上で噴射する。
【0041】噴射された前記金属粉体15は、圧縮空気
に乗り高速で被処理成品Wの表面に衝突するが、金属粉
体15の衝突後の速度は衝突前の速度よりも減少する。
この衝突前と衝突後の速度の変化は、エネルギー不変の
法則により、その大部分は熱エネルギーに変換され、金
属粉体15が被処理成品Wの表面で衝突した変形部分の
みで交換され、部分的に高温になる。このとき、金属粉
体15は被処理成品Wよりも低融点、低硬度であるの
で、金属粉体15が被処理成品Wの表面で加熱されるた
めに、金属粉体15内の元素が被処理成品Wに溶着する
ものと考えられる。
【0042】また、被処理成品Wは、一般に浸炭処理に
用いられる低炭素鋼、低炭素合金鋼の他、浸炭処理の対
象となる各種の金属について適用可能であり、一部分に
浸炭処理の対象となる金属より成る部分を備えた被処理
成品、前記浸炭処理の対象となる金属成分を含む被処理
成品など、表面に炭素が拡散される性質を有するもので
あれば種々の被処理成品について可能である。
【0043】前記被処理成品Wの表面に対して所望パタ
ーンの金属被膜14を形成する場合には、被処理成品W
の表面の金属被膜を形成する部分以外をマスク材12に
より被覆する。そして、マスク材12により被覆された
被処理成品Wの表面に金属粉体15を噴射して金属被膜
14を形成すると、浸炭処理後、所望パターンに形成さ
れた該金属被膜14により被覆された被処理成品の浸炭
を防止することができる。
【0044】被処理成品Wの表面の被覆方法としては、
粘着剤の塗布された樹脂フィルムやテープをマスク材1
2と成し、これを被処理成品Wの表面に貼付けて金属被
膜15の非形成面を被覆することや、ゴム、樹脂等のマ
スク材12をスクリーン印刷等により被処理成品Wの表
面に直接印刷するなど、既知の方法で被覆する。
【0045】以上のようにして、金属被膜14の形成さ
れた被処理成品Wは、固体浸炭法、液体浸炭法又は、C
Oガス、メタンなどの浸炭性ガスを用いるガス浸炭法等
の既知の浸炭法により浸炭処理される。
【0046】このとき、前記金属粉体15の噴射により
金属被膜14の形成された被処理成品Wの部分には、前
記浸炭処理によっても炭素の拡散が行われず、したがっ
て、該部分の浸炭が好適に防止される。
【0047】なお、浸炭処理後の被処理成品Wの表面の
金属被膜14を除去する必要がある場合は、該金属被膜
14の表面にサンドブラストを行うことにより極めて容
易に該金属被膜14を被処理成品Wの表面より剥離する
ことができる。
【0048】従って、従来の電気メッキなどにより形成
された金属被膜14を、化学薬品等より成る剥離剤等を
使用して除去する場合に比較して、サンドブラストとい
う汚染、公害のおそれの少ない方法により容易に金属被
膜を剥離することができる。
【0049】
【実施例】前述の重力式ブラスト加工装置を用いて、被
処理成品として縦20mm×横100mm×厚さ5mmのSC
M415(組成を表1に示す。)の表面の一部に錫(Sn)
の粉体を噴射して約5μm の錫被膜を形成させた後、ガ
ス浸炭処理を行った。
【0050】
【表1】
【0051】加工条件は表2の通りである。
【0052】
【表2】
【0053】また、本実施例におけるガス浸炭処理は、
プロパンガス(C3H8)を使用し、図4に示すように92
0℃の温度下で80分間浸炭後、これを40分間920
℃に保持し、その後さらに850℃に20分間保持した
後、130℃のホットオイルに浸漬して油冷して焼入れ
したものを、120分間170℃に加熱後空冷して焼も
どしを行った。
【0054】上記実施例にて、被処理成品表面の浸炭処
理部(被膜なし)及び浸炭防止部(錫被膜あり)の断面
顕微鏡写真を図5及び図6に示す。図5及び図6に示す
顕微鏡写真において、被処理成品の表面においてやや黒
色に現れている部分が炭素が拡散した部分である。
【0055】また、比較例として、被処理成品表面に従
来の浸炭防止方法である銅メッキを20μm形成して浸
炭処理した後の被処理成品表面の断面顕微鏡写真を図7
に示す。
【0056】図5〜図7に示す顕微鏡写真より明らかな
ように、浸炭処理部(図5参照)の表面は黒色に現れて
いる部分、すなわち炭素の拡散が生じているが、本発明
の方法により形成された錫被膜、及び従来の方法による
銅メッキにより被服された浸炭防止部の表面には、この
黒色部分が現れておらず(図6及び図7参照)、好適に
浸炭防止が行われいる。
【0057】本発明の方法により錫被膜の形成された浸
炭防止部において、浸炭防止が行われていることは図8
に示す硬度分布図によっても明らかである。すなわち、
図8に示すように錫被膜の形成された浸炭防止部は、被
膜を形成することなく浸炭処理した部分ほどの硬度を得
ていない。
【0058】また、錫被膜の形成された浸炭防止部につ
きX線回折を行った結果、図9に示すように浸炭防止部
の表面はα-鉄の状態を示しており、浸炭により形成さ
れるオーステナイト結晶(炭素を固溶したγ-鉄)につ
いてはその存在が確認されるものの僅かである。
【0059】なお、図8に示す硬度分布からは、本発明
の方法により形成された錫被膜により被覆された浸炭防
止部においても硬度の上昇が生じており、該部分におい
ても僅かに浸炭が生じていると考えられるが、この程度
の浸炭は、通常の被処理成品に使用する場合には無視し
得る程度のものであり、耐火粘土、塗布剤等による浸炭
防止方法と比較した場合には同等以上の効果が得られて
いる。
【0060】また、例えばSn-Cu合金粉体を噴射した場
合にはより浸炭防止効果が向上し得ることが確認されて
おり、さらに浸炭防止部に対して前処理としてA#22
0(褐色アルミナ研削材、Al2O3:94.0% 以上、TiO2:1.5
〜4.0%)をブラストした後、本発明を実施したところ、
より一層の浸炭防止効果の向上が確認された。したがっ
て、噴射する金属粉体の材質を適当に選択し、また、被
処理成品の前処理等を適当に行うことにより、従来の銅
メッキと同等以上の浸炭防止効果の高い被膜を形成する
ことができる。
【0061】さらに、浸炭防止部に対して溶接を行った
ところ、従来の銅メッキによる浸炭防止部にあっては、
メッキを剥離することなく該部分に溶接することは不可
であったのに対し、本発明の方法による浸炭防止部は錫
被膜を除去することなく該部分に溶接をした場合であっ
ても好適に溶着等することが可能であった。
【0062】
【発明の効果】以上説明した本発明の構成により、金属
粉体の噴射という比較的簡単な方法によりかつ短時間で
被処理成品の表面に密着強度が強く、密度の高い金属被
膜を形成し、該被処理成品の浸炭処理後の該金属被膜の
形成された部分の被処理成品の表面に炭素が拡散するこ
とを好適に防止できる比較的低コストかつ低公害の浸炭
防止方法を提供することができた。
【0063】特に、噴射される金属粉体として錫(Sn)を
使用した場合には、被処理成品の材質を選ばず良好に金
属被膜を形成することができ、加えて、浸炭防止部の溶
接においても金属被膜を除去することなく溶接を可能と
することができた。
【0064】また、金属粉体の噴射により行われる金属
被膜の形成は、被処理成品の表面にマスク材を付着する
ことによって被処理成品の表面中の所望の範囲に容易に
行うことができ、被処理成品の表面中の所望部分を正確
に浸炭防止することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を示す概念図。
【図2】本発明の方法に使用されるブラスト加工装置の
一例を示す正面図。
【図3】図2に示すブラスト加工装置の左側面図。
【図4】実施例における浸炭処理パターンを示す図。
【図5】実施例により処理した被処理成品表面の断面顕
微鏡写真(浸炭処理部)。
【図6】実施例により処理した被処理成品表面の断面顕
微鏡写真(浸炭防止部)。
【図7】比較例により処理した被処理成品表面の断面顕
微鏡写真。
【図8】実施例及び比較例における硬度分布図。
【図9】実施例におけるX線回折結果を示す図。
【符号の説明】
12 マスク材 14 金属被膜 15 金属粉体 40 ブラストガン 60 ブラスト加工装置 63 投入口 65 導管 66 ダストコレクタ 67 排出管 68 ホッパ 69 排風機 70 回収タンク 73 流入口 74 連結管 75 連通管 78 調整器

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】被処理成品の表面の浸炭を防止する部分
    に、前記被処理成品よりも低硬度、低融点の金属粉体を
    噴射して前記金属粉体を溶着させて、金属被膜を形成し
    た後、浸炭処理することを特徴とする浸炭防止方法。
  2. 【請求項2】前記金属粉体の噴射を、噴射速度80m/se
    c 以上又は噴射圧力0.3MPa 以上で行うことを特徴と
    する請求項1記載の浸炭処理における浸炭防止方法。
  3. 【請求項3】前記金属粉体が、平均粒径20〜300μ
    m 、好ましくは20〜100μm 、より好ましくは20
    〜60μm である請求項1又は2記載の浸炭処理におけ
    る浸炭防止方法。
  4. 【請求項4】前記浸炭処理をガス浸炭法により行う請求
    項1〜3いずれか1項記載の浸炭処理における浸炭防止
    方法。
  5. 【請求項5】前記被処理成品の表面に所望パターンに形
    成されたマスク材を取り付け後、前記金属粉体を噴射す
    ることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の浸
    炭処理における浸炭防止方法。
  6. 【請求項6】前記金属粉体が、錫(Sn)又は錫合金より成
    る請求項1〜5いずれか1項記載の浸炭処理における浸
    炭防止方法。
  7. 【請求項7】浸炭処理後の前記被処理成品表面の金属被
    膜をサンドブラストにより除去することを特徴とする請
    求項1〜6いずれか1項記載の浸炭処理における浸炭防
    止方法。
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JP2014189857A (ja) * 2013-03-27 2014-10-06 Aisin Aw Co Ltd 複合部品の製造方法

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