JPH11302301A - セルロース誘導体 - Google Patents

セルロース誘導体

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JPH11302301A
JPH11302301A JP10626898A JP10626898A JPH11302301A JP H11302301 A JPH11302301 A JP H11302301A JP 10626898 A JP10626898 A JP 10626898A JP 10626898 A JP10626898 A JP 10626898A JP H11302301 A JPH11302301 A JP H11302301A
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敦子 原澤
Junichi Kaminaga
純一 神永
Hiroshi Kawasaki
浩志 河崎
Ryukichi Matsuo
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の目的は、セルロース誘導体とシランカ
ップリング剤を官能基同志の有機的な共有結合で複合化
させることで、有機、無機材料の特色を兼ね備えた複合
材料としてのセルロース誘導体を提供するものである。
これによって、従来のセルロース誘導体の短所を改善す
ると共に、本発明のセルロース誘導体を紙の含浸薬剤と
して、紙に含浸することにより、耐水性、及び堅さ(紙
の腰)や剛性、靭性、耐熱性、耐食性、耐溶剤性等を向
上させ、さらに含浸薬剤の主成分がセルロース誘導体で
ある為、紙との親和力増大による寸法安定性に優れた含
浸紙を提供することができる。 【解決手段】シランカップリング剤を付加あるいはグラ
フト重合したセルロース誘導体である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なセルロース
誘導体或いは澱粉誘導体からなる有機、無機複合材料に
関する。
【0002】
【従来の技術】日常生活で大量に消費されているポリオ
レフィンや芳香族ポリエステル等は、有限な資源である
石油から由来した材料であり、且つ年々増加するゴミの
問題となっている。対策としては、ゴミの分別回収によ
るマテリアルリサイクルやケミカルリサイクル、サーマ
ルリサクルで自然環境への負荷の低減を図っているが、
その為にかかるコストやリサイクル化された材料の物性
劣化、そして二酸化炭素放出による地球温暖化の問題、
さらに未だ行楽地での投げ捨てによる環境汚染が懸念さ
れる。
【0003】この様な状況下で、環境面、資源面で負荷
の少ない材料系が注目され、中でもセルロースは、天然
再生可能な地球上で無尽蔵に近い量で存在する天然高分
子資源であり、その加工品である紙は、最近、特に注目
され、リサイクルにおいても幅広い対応が可能で、且つ
近年、製紙業界では故紙の再利用(マテリアルリサイク
ル)が活発に行われる一方、他の可燃性のゴミと一緒に
なってもサーマルリサイクルによってエネルギーに変換
が可能であることから需要がますます増加している。
【0004】しかし、セルロースの加工品である紙の構
造は、セルロース分子が水素結合したものであり、本質
的に水に弱く剛性も乏しい。これは、紙の構成繊維が水
素結合で結びつけられている為で、この水素結合は水に
よって容易に切断されてしまうからである。また、紙は
耐熱性が低いことも問題である。建材関係において紙
は、 壁紙を代表として用いられているが、耐熱性等の物
性が要求される。また、近年、壁紙の燃焼による有害物
質の発生が問題となっているが、これは接着剤や紙中に
含まれる添加成分が原因であり、無公害な材料系が求め
られている状況である。
【0005】また、再生セルロースであるビスコースレ
ーヨンは、セルロース本来の特性から、湿潤強度が弱
い。さらに、澱粉も以前は「 のり」 としての需要が高か
ったが、やはり耐水性の課題や合成樹脂フィルムの接着
の為、各種合成接着剤へと移行していった。澱粉のりの
特徴は紙を強力に接着することにある。これは紙を構成
するセルロースと同じ多糖類であるため、親和性が高い
為である。その為、今でも、紙製の包装材料の接着の他
に製本にも用いられている。工業的には、段ボールの製
造の際の中芯とライナーの接着に使われている。しかし
ながら、最近、需要の高い耐水ダンボールでは、耐水性
の解決策として、澱粉のりにレゾシノール・ホルムアル
デヒド樹脂等を加えているが人体に有害な物質と言え
る。また、耐水化ダンボールに含浸されるワックスエマ
ルジョン等と澱粉のりとの接着力が課題となるケースが
ある。総じてセルロース誘導体や澱粉の欠点は、耐熱
性、耐光性、耐水性であると考えられる。
【0006】また、セルロースの加工品である紙の欠点
も同じようなもので、それを改善させる方法としては、
従来、撥水性を向上させる場合には、プラスチックやア
ルミニウムと貼り合わせることが多いが、これも本質的
な紙の耐水性の向上ではない。紙自体に、塗布あるいは
含浸させることにより耐水性を付与し向上させる方法と
しては、エポキシ樹脂やメラニン樹脂、ウレタン樹脂、
アクリル樹脂を被膜や含浸させたりアリジリン化合物や
エチレン尿素等を架橋剤として添加する方法があるが、
剛性が不十分である場合が多い。さらに、これらの含浸
紙、あるいはコーティング紙は、故紙の再生処理に適さ
ない、即ちアルカリ加水分解が不可能な材料や、あるい
は再生紙に悪影響を及ぼす含有量を有している場合があ
る。
【0007】各種樹脂系の塗布、或いは内添、含浸方法
による紙の物性においても、耐水性という面で、例えば
沸騰水に入れておくと、紙との界面剥離を引き起こして
しまうことが多い。これは、紙の構成成分であるセルロ
ースと各種樹脂との親和性が低いことが主たる原因と考
えられる。
【0008】紙との親和性が最も高いと考えられるもの
は、当然、その構成成分であるセルロースである。そし
て、セルロースは、前述の様に環境調和型の天然再生資
源であり、近年、問題となっている石油問題や環境汚染
問題に対応した材料系であることから、繊維素系樹脂、
即ちセルロース誘導体が紙との親和性において最も適切
と考えられる。紙との親和性が求められる添加剤として
は一つに紙力増強剤が挙げられるが、従来、カルボキシ
メチルセルロースやヒドロキシメチルセルロースといっ
たセルロース誘導体も使われている。
【0009】紙に強度を付与する含浸剤としてはその他
に、資源的にも豊富で環境的に負荷が少なくアルカリ加
水分解が可能なアルコキシ基を含有するシラン系の無機
材料(珪酸塩)が、強固なシロキサン結合を形成するこ
とから注目されている。
【0010】珪酸塩の特徴、及び優位性を挙げると、ま
ず資源的にみても、無尽蔵であり石油資源に依存しな
い。不燃性であり、無煙で有毒ガスがでない。炭素
- 炭素結合に比べて、無機のシロキサン結合は熱安定性
に優れ、熱分解しにくい。耐水・耐油・耐溶剤性が優
れている。塗膜は、固く摩耗しにくい。低公害で自
然にやさしい。等が考えられる。
【0011】これらの特徴は、前述のセルロース誘導体
や紙の特徴である自然環境への調和という点で合致し、
且つ短所である低い耐熱性、耐光性、耐水性を補う物性
であることから、セルロース誘導体や紙への応用展開が
問題解決の一つの手段と考えられる。
【0012】セルロース誘導体への珪酸塩の応用展開と
しては、最近話題のハイブリッド化、即ち有機、無機複
合化材料への展開が考えられ、珪酸塩でもシランカップ
リング剤という有機・無機複合材料があり、近年、特に
官能基を有したシランカップリング剤が開発され様々な
分野で利用されている。そこで、各種セルロース誘導体
と官能基を有したシランカップリング剤との複合化によ
る有機、無機ハイブリッド材料が考えられる。この複合
化により、セルロース誘導体の短所を補うだけでなく珪
酸塩の短所、即ちシロキサン結合の低柔軟性や低成形性
も補うことができる。即ち、材料としては、無機物の特
徴(高耐熱性、高弾性率、高強度、高耐食性、高耐候
性、高耐溶剤性、高密度)と有機物の特徴(高柔軟性、
高成形性、低密度)を兼ね備えた複合材料へ変換でき
る。
【0013】しかし、これまでの有機、無機複合材料の
多くは、合成高分子の中で多く検討されてきており、例
えば、ポリアリレンエーテルケトンとイソシアネート基
含有シランカップリング剤を反応させた尿素結合を有し
た複合材料や、酢酸ビニルとビニルトリエトキシシラン
の共重合体、そしてエポキシシランとメタクリロキシシ
ランさらにアルコキシチタンとメタクリレートを重合さ
せて複合化し硬化させることでコンタクトレンズ材料が
つくられている。これらも、石油資源に依存した現代の
産業を反映しているとも言える。また、数少ない各種セ
ルロース誘導体と金属アルコキシドとの複合化も、多い
のは混合(ブレンド)によるゾル・ゲル法であり、その
主たる相互作用はセルロース誘導体の水酸基とシロキサ
ン結合の水素結合であり、一部のシラノール基とセルロ
ース分子の官能基が直接反応するものがあると考えられ
ている材料系であり、シランカップリング剤の有機系炭
素に結合した官能基とセルロース誘導体の官能基が反応
し共有結合で複合化した材料系の明確な例は殆どない。
【0014】また、紙への従来の有機、無機複合化によ
る具体的な方法としては、ウレタン樹脂溶液に粒径0.02
〜10um範囲のシリカ系微粒子を混合させたものを紙に含
浸させ、耐水性を向上させるものがあるが、紙と含浸剤
の相互作用は、主に水素原子と酸素原子の水素結合のみ
であり強固な結合とは言えず、紙の構成成分であるセル
ロースとシリカでは水や熱等の外部因子に対する挙動が
異なる為、寸法安定性が低い場合が多い。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】この様な状況の中で、
近年、資源的、環境的に負荷が少ないことからも注目さ
れているセルロース誘導体と需要が増加している紙の課
題である耐熱性、耐光性、耐水性等を付与する含浸剤と
して、同じく資源的、環境的に負荷が少ないアルコキシ
シランを利用したものが報告されているが、紙の構成成
分であるセルロース分子との相互作用が水素結合のみで
弱く寸法安定性に欠け、また複合化というより混合(ブ
レンド)であるため無機材料の欠点である脆さ等が生じ
てしまう。本発明の目的は、セルロース誘導体とシラン
カップリング剤を官能基同志の有機的な共有結合で複合
化させることで、有機、無機材料の特色を兼ね備えた複
合材料としてのセルロース誘導体を提供するものであ
る。これによって、従来のセルロース誘導体の短所を改
善すると共に、本発明のセルロース誘導体を紙の含浸薬
剤として、紙に含浸することにより、耐水性、及び堅さ
(紙の腰)や剛性、靭性、耐熱性、耐食性、耐溶剤性等
を向上させ、さらに含浸薬剤の主成分がセルロース誘導
体である為、紙との親和力増大による寸法安定性に優れ
た含浸紙を提供することができる。
【0016】
【課題を解決する為の手段】本発明者らは、前記記載の
課題を達成すべく鋭意研究した結果、セルロース誘導体
の官能基とシランカップリング剤の官能基を付加、ある
いはグラフト重合させ新規な複合化機能性セルロース誘
導体の発明に到った。これにより、従来のセルロース誘
導体の短所を補う機能性セルロース誘導体を提供でき
た。さらに、本発明のセルロース誘導体を紙への含浸剤
として使用することで、無機物と有機物の特徴を兼ね備
えた、即ち耐水性、堅さ、剛性、耐熱性、寸法安定性等
に優れた機能紙を提供することができた。
【0017】すなわち、本発明の上記目的は、以下の構
成により達成できる。
【0018】請求項1に関わる発明は、下記一般式1で
表わされるシランカップリング剤を付加あるいはグラフ
ト重合したセルロース誘導体である。
【0019】
【化8】 一般式1
【0020】(式中、R2及びR3はそれぞれ同一若し
くは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は
硝酸エステル基を表わし、R7は炭素数2〜8のアルキ
ル基、シクロヘキシル基又はフェニル基、ナフチル基を
表わし、R8、R9、R10は同一又は異なる炭素数1
〜4の低級アルキル基を表わし、R12はエポキシ基を
有する化合物が開環した2価の基を表わし、P は1以上
の整数、qは10以上の整数を表わす。)
【0021】請求項2に関わる発明は、一般式2で表わ
されるシランカップリング剤を付加あるいはグラフト重
合したセルロース誘導体である。
【0022】
【化9】
【0023】一般式2
【0024】(式中、R2及びR3はそれぞれ同一若し
くは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は
硝酸エステル基を表わし、R7は炭素数2〜8のアルキ
ル基、シクロヘキシル基又はフェニル基、ナフチル基を
表わし、R8、R9及びR10は同一又は異なる炭素数
1〜4の低級アルキル基を表わし、R12はエポキシ基
を表わし、R13はジカルボン酸無水物又はエポキシ基
を有する化合物の2価の基を表わし、P は1以上の整
数、qは10以上の整数を表わす。)
【0025】請求項3に関わる発明は、一般式3で表わ
される無水ジカルボン酸と、エポキシ基含有シランカッ
プリング剤を同時に反応させて、シランカップリング剤
とオリゴエステル化したセルロース誘導体である。
【0026】
【化10】 一般式3
【0027】(式中、R2及びR3はそれぞれ同一又は
異なるエステル基を表わし、R7は炭素数2〜8のアル
キル基、シクロヘキシル基又はフェニル基、ナフチル基
を表わし、R8、R9及びR10は同一又は異なる炭素
数1〜4の低級アルキル基を表わし、R12はエポキシ
基を有する化合物が開環した2価の基を表わし、P は1
以上の整数、qは10以上の整数を表わす。)
【0028】請求項4に関わる発明は、前記一般式1、
一般式2及び一般式3で表わされる記載のシランカップ
リング剤を付加あるいはグラフト重合したセルロース誘
導体は、一般式4で表わされるセルロース誘導体出発原
料として得られることを特徴とする請求項1〜3記載の
セルロース誘導体である。
【0029】
【化11】 一般式4
【0030】(式中、R1及びR4はそれぞれヒドロキ
シル基又は同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アル
キルエステル基若しくは硝酸エステル基を表わし、R1
及びR4の少なくとも1つはヒドロキシル基であり、R
2、R3、R5及びR6はそれぞれ同一若しくは異なる
炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステ
ル基を表わし、nは5以上の整数を表わす。)
【0031】請求項5に関わる発明は、一般式1で表わ
せる記載のシランカップリング剤を付加あるいはグラフ
ト重合したセルロース誘導体が、一般式4で表わされる
セルロース誘導体に下記一般式5で表わせるジカルボン
酸無水物を反応させて下記一般式6で表わせるジエステ
ル化セルロース二塩基酸モノエステルを生成し、次いで
下記一般式7で表わせるシランカップリング剤と反応し
て得られたものであることを特徴する請求項1記載のセ
ルロース誘導体。
【0032】
【化12】 一般式5
【0033】(式中、R7は炭素数2〜8のアルキル
基、シクロヘキシル基又はフェニル基、ナフチル基を表
わす。)
【0034】
【化13】 一般式6
【0035】(式中、R2、R3、R5及びR6はそれ
ぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエ
ステル基又は硝酸エステル基を表わし、R7は炭素数2
〜8のアルキル基又はフェニル基を表わし、nは5以上
の整数を表わす。)
【0036】
【化14】 一般式7
【0037】(式中、R8、R9及びR10は同一又は
異なる炭素数1〜4の低級アルキル基を表わし、R11
はエポキシ基を有する化合物の1価の基を表わす。)
【0038】請求項6に関わる発明は、前記一般式1、
一般式2及び一般式3で表わされる記載のシランカップ
リング剤を付加あるいはグラフト重合したセルロース誘
導体が、天然多糖類、具体的はα- 1、 4結合構造の澱
粉を出発原料として得られることを特徴とする請求項1
〜3記載のセルロース誘導体である。
【0039】請求項7に関わる発明は、前記一般式1、
一般式2及び一般式3で表わされる記載のシランカップ
リング剤を付加あるいはグラフト重合したセルロース誘
導体が、天然多糖類として、天然多糖類としてマンナ
ン、ガラクタン、アラバン、キシラン、ペクチンを出発
原料として得られることを特徴とする請求項1〜3記載
のセルロース誘導体である。
【0040】本発明のシランカップリング剤をグラフト
化セルロース誘導体の主な特徴は、一般式1で表わす記
載のシランカップリング剤のアルコキシ基- OR8 、-
OR9 、- OR10を縮合・硬化し強固な、しかも耐熱
性、耐候性、耐溶剤性等優れて無機物の特性を有するシ
ロキサン三次元構造を形成することと、グラフト化させ
たセルロース誘導体が有機材料としての特徴である柔軟
性を付与しシロキサン結合の欠点である脆性を補ってい
ることにある。そして、特に紙に含浸させた際は、紙の
構成成分であるセルロース分子を本発明に関わる含浸薬
剤は基本骨格に有している為、紙との親和性を増大させ
寸法安定性を向上させている。
【0041】これらのことは、PETフィルム等にワイ
ヤーバーで塗工した際、単なるアルコキシシランである
場合には、加水分解によって縮合させた塗膜は分散状態
で形成できないのに対して、本発明のシランカップラー
グラフト重セルロース誘導体を同じく加水分解によって
縮合させた塗膜は一様に形成でき、且つ溶剤に不溶にな
っていることからも明らかである。
【0042】本発明の幹ポリマーであるセルロースの原
料は、高等植物のセルロース即ち、LBKP(針葉樹パ
ルプ)やNBKP(広葉樹パルプ)、又は綿花由来のコ
ットンリンターでも構わない。また、ジャガイモ、サツ
マイモ、トウモロコシ、小麦、タピオカから得られる澱
粉でも、同じ天然高分子の多糖類であることから構わな
い。その他、天然高分子の多糖類としてマンナン、ガラ
クタン、アラバン、キシラン、ペクチン等がある。ま
た、カニやエビの甲羅や菌類の菌糸体から得られるキチ
ン、キトサンも天然多糖類であるが、反応性に劣る為、
本発明には適さない。
【0043】一般式4のセルロース誘導体は、公知の方
法で合成するが、一般式5で表わされるジカルボン酸無
水物との反応はセルロース骨格で第6位の水酸基と反応
する傾向が強い為、一般式4のセルロース誘導体は、各
種カルボン酸エステルが操作し易いと考えられる。なぜ
なら、ジカルボン酸エステル化セルロースはトリカルボ
ン酸エステル化セルロースを加水分解させ合成するもの
で、その場合一般式4の式中のR1 とR4にあたる第6
位の置換基が優先的又は選択的に水酸基に戻るからであ
る。ニトロ(硝酸エステル)セルロースは、硝化混酸組
成比や反応時間で置換度の制御を行う場合が多く、必ず
しも第6位が水酸基とは限らず逆に硝酸エステル基であ
って一般式4式中のR2 やR3 ,或いはR5 やR6 の第
2位や第3位の置換基が水酸基になっている部位が全構
造中に含まれているが、第2位や第3位の水酸基は第6
位の水酸基に比べて非常に反応性が低いので、ジカルボ
ン酸無水物とは反応しないことが考えられる。そのため
に、カルボン酸エステル化セルロースを含めて第6位の
水酸基に対してのみ示した。また、ニトロセルロースの
利点としては、各種の溶剤に溶解することから、本発明
のシランカップラーグラフト化セルロース誘導体も溶剤
溶解性が向上する効果がある。溶剤溶解性の良いセルロ
ース誘導体としては、その他にセルロ−スアセテ−トプ
ロピオネ−トやセルロ−スジロピオネ−ト、又はセルロ
−スアセテ−トブチレ−トやセルロ−スジブチレ−ト等
がある。また、ジカルボン酸無水物との反応によるカル
ボキシル基の導入は、立体的に反応性が高い官能基を付
与する目的がある。この場合一般式5のR7は、炭素数
2〜8の飽和脂肪族又はシクロヘキシル基のような飽和
脂環式脂肪族、或いはフェニル基、ナフチル基のような
芳香族が望ましく、無水マレイン酸を反応させる場合の
ような不飽和脂肪族でも可能であるが、本発明の目的か
ら言って不飽和二重結合は副反応が予想されるのであま
り適当ではない。また、各種エステル基置換度は溶剤溶
解性や反応性、含浸紙の物性を考慮して、D.S.=
2.0以上2.7以下が望ましいと考えられる。
【0044】以上のような、エステル化セルロースは、
生産量の多いセルロース誘導体である酢酸セルロースと
硝酸セルロース、カルボキシメチルセルロースのうち前
者2つにあたり、環境に負荷を与えている合成樹脂の用
途、即ち、繊維やプラスチック、フィルム、バインダ
ー、塗料等に使用され得るセルロース誘導体は、その酢
酸セルロースと硝酸セルロースが主なものと言える。従
って、本発明の機能性セルロース誘導体は、合成樹脂用
途に対するセルロース誘導体の物性改善の目的があり、
その用途は多岐に渡ると考えられる。
【0045】一般式7で表わされるシランカップリンシ
ラング剤の- R11部位は反応性を有する官能基であり、
エポキシシクロヘキシル基、グリシジル基等エポキシ基
を含む脂肪族基、あるいは芳香族基であることが望まし
い。一般式6のジエステル化セルロース二塩基酸モノエ
ステルと一般式7で表わされるシランカップリング剤と
の反応は、溶剤を使用した均一反応系で、重合方法は各
々の官能基に適した公知の方法で酸、塩基による縮合や
開環重縮合、イオン重合等挙げられるが、アルコキシ基
が加水分解し縮合してシロキサン三次元構造を形成しな
い条件であることが望ましい。
【0046】請求項2記載の一般式2の中のシランカッ
プリング剤の官能基(一般式7の-R11)と反応する多
官能試薬−R13としては、ゲル化しない二官能が望ま
しい。具体的には、ジカルボン酸無水物、エピクロロヒ
ドリンやジグリシジルエーテルのようなエポキシド化合
物である。
【0047】請求項3記載の一般式3は、一般式5の無
水ジカルボン酸と一般式7のエポキシ基含有シランカッ
プリング剤を同モル濃度で反応させる、いわゆる木材セ
ルロースの可塑化技術として知られているオリゴエステ
ル化反応となる。この場合、一般式6のジエステルセル
ロース二塩基酸モノエステルに無水ジカルボン酸とエポ
キシ基含有シランカップリング剤を同モル濃度でオリゴ
エステル化させる場合と、未だカルボキシシル基の導入
を行っていない一般式4のジエステルセルロースに無水
ジカルボン酸とエポキシ基含有シランカップリング剤を
同モル濃度でオリゴエステル化させて、グラフト重合さ
せる(以下は、区別するために、オリゴエステル化と呼
ぶ)場合がある。後者の場合は、請求項1、2記載のよ
うに、セルロース原料から出発して三段階の反応が必要
であったのが、二段階で足りる利点を有している(請求
項3記載)。しかし、オリゴエステル化させる反応条件
としては前者が適している。
【0048】この反応条件は、溶媒として非プロトン性
の極性溶媒、特にN、N−ジメチルホルムアミド( DM
F)のような塩基性のものが好適であり、触媒として、
N、N−ジメチルベンジルアミンやピリジン、ピラジ
ン、トリエチルアミン、トリメチルアミン等の三級アミ
ンを用いる。これらの塩基触媒は、各々の塩基解離定数
(Kb )によって、触媒効果発現のための添加濃度を変
えることができ、沸点等の物性も考慮して使用すことが
望ましい。
【0049】さて、本発明に関わるシランカップラーグ
ラフト化セルロース誘導体あるいはシランカップラーオ
リゴエステル化セルロース誘導体の溶解液、即ち紡糸
液、含浸液、塗料等の主成分であるシランカップリング
剤のアルコキシシリル基を加水分解させ加熱処理による
縮合でシロキサン結合を形成させうる条件としては、一
般的にゾル・ゲル法の知見から、酸、又はアルカリを用
いp.H.=4以下、あるいはp.H.=10以上の条
件下で縮合が始まる。具体的には、酸として塩酸、硫
酸、硝酸、フッ酸等が使用できる。アルカリとしては、
処理後に揮発によって除去できるアンモニアやヒドロキ
シアミン等が使用できる。特に、p−トルエンスルホン
酸2水和物を使用した場合には、有機系のブレンステッ
ド酸であることからラッカーや乾式紡糸するための紡糸
液、含浸液、塗料さらには成形工程において溶剤を有機
溶媒で統一することができる。また、この場合、本発明
のシランカップラーグラフト化セルロース誘導体、ある
いはシランカップラーオリゴエステル化セルロース誘導
体のアルコキシ基の加水分解は、空気中の水分の影響も
あるが主たるものはp−トルエンスルホン酸に配位した
2分子の結晶水である為、加熱乾燥処理時に触媒効果と
同時に加水分解が起こると考えられ、溶解液の安定性が
良いと考えられる。また、溶解液の溶剤を有機系溶媒だ
けで統一できる為、固形分比(N.V.)を上げること
ができる。
【0050】また、本発明のシランカップリンラーグラ
フト化セルロース誘導体は固体であり、一度単離してか
ら使用用途に応じた溶剤に溶解させることも可能であ
る。しかし、単離されたシランカップリンラーグラフト
化セルロース誘導体、あるいはシランカップラーオリゴ
エステル化セルロース誘導体は、アルコキシシリル基の
アルキル鎖、即ち請求項5記載の一般式7のR8、R
9、R10の炭素数によっても安定性は異なるが、空気
中に放置しておくと経時的に加水分解−縮合してゲル化
していく傾向がある.一般的には、アルコキシシリル基
のアルキル鎖の炭素数が多い程、加水分解−縮合し難
い。その為、そのアルキル鎖の炭素数が大きい程、長期
保存が可能だが、特に良いのは、シランカップリング剤
をグラフト化、或いはオリゴエステル化の反応を行なっ
た反応液の状態で保存するのが望ましい。この場合、丁
度、ラッカーのような形態と言える。使用する際には、
その反応液にアルコキシシリル基を加水分解−縮合させ
得る前述のような触媒を添加すれば良い。
【0051】さらに、詳しく本発明に関わる各種溶解
液、具体的には紡糸液、含浸液、塗料等の製造方法を説
明すると、シランカップラーグラフト化、或いはオリゴ
エステル化バイオセルロース誘導体を有機溶剤に溶解し
て溶解液を調整するか、シランカップリング剤をバイオ
セルロース誘導体にグラフト化、或いはオリゴエステル
化させた反応液をそのまま溶解液とする2つの方法があ
る。ここで、用いる有機溶剤としては、シランカップラ
ーグラフト化、或いはオリゴエステル化バイオセルロー
ス誘導体を溶解するものであれば良く特に限定はされな
いが、各種用途の溶液としての塗液安定性を考慮し余り
揮発性の高い(低沸点)溶剤は好ましくない。また、人
体に害の少ないものが望ましい。具体的には、テトラヒ
ドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、エタノー
ル、プロパノールのようなアルコール類、アセトン、メ
チルエチルケトンのようなケトン類、トルエン、キシレ
ンのような芳香族炭化水素、酢酸エチルのようなエステ
ル類、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0052】<作用>本発明のシランカップラーグラフ
ト化セルロース誘導体は、資源的にも環境的にも負荷の
少ない材料系で構成させれおり、シロキサン三次元結合
を付与させることで、セルロース誘導体の物性の欠点を
改善したものである。即ち、セルロース誘導体の低い耐
熱性、耐光性、耐水性、耐溶剤性、耐食性を改善するこ
とで、セルロース誘導体から製造される塗料やラッカ
ー、含浸紙或いはその含浸液、澱粉のり、或いは澱粉の
りと接着不良なものへの塗膜、そしてフィルムや成形加
工品、繊維或いはその紡糸液、繊維処理剤等の物性及び
効果を向上させることができる。
【0053】
【実施例】次に本発明を実施例にに基づき、さらに具体
的に説明する。本実施例では、本発明のシランカップラ
ーグラフト化セルロース誘導体或いはシランカップラー
オリゴエステル化セルロース誘導体を紙への含浸薬剤と
して使用した場合についての効果を示す。
【0054】<製造例1>本発明ののシランカップラー
グラフト化セルロース誘導体或いはシランカップラーオ
リゴエステル化セルロース誘導体の出発原料としては、
LBKP(広葉樹クラフトパルプ)湿潤シートをJIS
−P8209に準拠して離解し、JIS−P8121に
準拠して叩解を行い、カナダ式標準型濾水度で411cs
f である0.3%のLBKPセルロースのスラリー液を
使った。300mlの三口フラスコに1g(β−1、4
−グルコシド単位のmol濃度;約2.67mmol)
のジアセチル化LBKPセルロースコハク酸モノエステ
ルをアセトニトリル100mlに溶解させ、LBKPセ
ルロース誘導体のカルボン酸当量の等molに相当する
0.64gの2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)
エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S
530)を仕込み、エポキシ基開環架橋用触媒としてS
nCl2 (塩化第一スズ)を0.0003mol/gの
濃度でメタノールに溶解させたものをLBKPセルロー
ス誘導体に対して0.0005mol量添加し、スター
ラーで撹拌しながら、約80℃で30分間反応させる
と、本発明のシランカップラーグラフト化LBKPセル
ロース誘導体の一つであるジアセチル化LBKPセルロ
ースコハク酸モノエステルとエポキシシクロヘキシル基
含有シランカップ剤の複合化体が製造できた。
【0055】<製造例2>製造例1と同じ0.3%のL
BKPセルロースのスラリー液を使った。300mlの
三口フラスコに4g(β−1、4−グルコシド単位のm
ol濃度;約10.67mmol)のジアセチル化LB
KPセルロースコハク酸モノエステル化体をDMF60
mlに溶解させ、セルロース誘導体のカルボン酸当量の
2倍molに相当する2.13gの無水カルボン酸と、
同じくセルロース誘導体のカルボン酸当量の2倍mol
に相当する5.26gの2−(3、4−エポキシシクロ
ヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)
製、商品名S530)を同時に仕込み、オリゴエステル
化用触媒として、N、N−ジメチルベンジルアミンをジ
アセチル化LBKPセルロースコハク酸モノエステル化
体に対して、0.001mol量添加し,スターラーで
攪拌しながら約70℃で1時間反応させると、本発明の
シランカップラーオリゴエステル化LBKPセルロース
誘導体の一つであるジアセチル化LBKPセルロースコ
ハク酸モノエステルと無水コハク酸、及びエポキシシク
ロヘキシル基含有シランカップ剤のオリゴエステル化反
応による複合体が製造できた。
【0056】次に、本発明のシランカップラーグラフト
化セルロース誘導体を利用した含浸紙の実施例を示す。 <実施例1>製造例1で製造した本発明に関わるシラン
カップラーグラフト化LBKPセルロース誘導体をアセ
トンに固形分比(N.V.)=10wt%で溶解させ、
それに硬化剤(東洋インキ( 株) 製、 p−トルエンスル
ホン酸2水和物含有50wt%i−プロパノ−ル溶液)
をセルロース誘導体に対して20wt%添加し攪拌した
ものを日本板紙( 株) 製のカップ原紙(坪量;320g
/m2)のノンクレイ面にワイヤーバーで塗工絶乾量2
g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し
含浸紙を得た。
【0057】<実施例2ー1>製造例2で製造した本発
明のシランカップラーオリゴエステル化LBKPセルロ
ース誘導体を酢酸エチルに固形分比(N.V.)=10
wt%で溶解させ、それに硬化剤(東洋インキ( 株)
製、 p−トルエンスルホン酸2水和物含有50wt%i
−プロパノ−ル溶液)をバイオセルロース誘導体に対し
て20wt%添加し攪拌したものを日本板紙( 株) 製の
カップ原紙(坪量;320g/m2)のノンクレイ面に
ワイヤーバーで塗工絶乾量4g/m2になるように塗工
し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0058】<実施例2ー2>含浸用原紙を宇都宮製紙
( 株) 製のクラフト原紙(坪量;310g/m2 )に替
えた以外、実施例2ー1と同じ。
【0059】<比較例1>本発明に関わる含浸液を塗工
しない実施例1と実施例2- 1で用いた日本板紙( 株)
製のカップ原紙を比較例1とした。
【0060】<比較例2>本発明に関わる含浸液を塗工
しない実施例2- 2で用いた宇都宮製紙( 株) 製のクラ
フト原紙を比較例2とした。
【0061】<比較例3ー1>本発明に関わる含浸薬剤
の原料である2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)
エチルトリメトキシシラン(チッソ( 株) 製、商品名S
530)を、酢酸エチルに固形分比(N.V.)=10w
t%で溶解させ、それに硬化剤(東洋インキ(株) 製、
p−トルエンスルホン酸2水和物含有50wt%i−プ
ロパノ−ル溶液)をシランカップリング剤に対して20
wt%添加し攪拌したものを日本板紙(株) 製のカップ
原紙(坪量;320g/m2)のノンクレイ面にワイヤ
ーバーで塗工絶乾量4g/m2になるように塗工し、1
20℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0062】<比較例3ー2>含浸用原紙を宇都宮製紙
( 株) 製のクラフト原紙(坪量;310g/m2 )に替
えた以外、比較例3ー1と同じ。
【0063】<試験例1> (含浸紙の強度と剛性評価
試験) 含浸紙の紙強度と剛性を評価する為にJIS P812
5「荷重曲げ方法による板紙のこわさ試験方法」を参考
にして、吉沢工業(株)製の「曲げこわさ試験機 BS
T−150M」を用いて評価した。測定方法は、紙試料
を塗工方向に対し平行に縦6cm×横4cmに切り取
り. 60℃の環境下で紙の片端を固定して紙中央部を折
り曲げることによって、降伏値(gf)とその時の角度
(初期勾配;deg)を求めた。降伏値は紙の折れるときの
強度、即ち堅さ、初期勾配は紙の折れ難さ(腰)、即ち
靭性、剛性の評価と考えられる。測定結果を表1、2に
記載する。
【0064】
【表1】
【0065】表1の結果から,本発明のシランカップリ
ング剤とLBKPセルロース誘導体を共有結合によりグ
ラフト化させた複合材料の含浸薬剤によるシロキサン三
次元構造を内部に有した含浸紙(実施例1)となにも含
浸されていないカップ原紙(比較例1)の物性の比較を
すると、含浸量が約2g/m2 という非常に少ない乾燥
塗布量でも、明らかに含浸効果による降伏値,及び初期
勾配の向上が認められ、堅さ、剛性共に向上しているこ
とが判った。
【0066】
【表2】
【0067】表2の結果から、やはり本発明のシランカ
ップリング剤をオリゴエステル化させたLBKPセルロ
ース誘導体の含浸紙(実施例2−1、2−2)は、何も
含浸してない原紙(比較例1、 2)に比べて、堅さ、及
び剛性が向上していることが判った。(なお、比較例1
の値が表1と異なるのは、紙のロット差によるものと考
えられ、各表中の測定は同じロットの紙で測定を行なっ
ている)。また、比較例3−1、3−2のシランカップ
リング剤単体の含浸紙と、本発明のシランカップリング
剤をオリゴエステル化させたLBKPセルロース誘導体
の含浸紙(実施例3−1、3−2)を比べても、本発明
のものの方が堅さ及び剛性が向上していることが判っ
た。
【0068】<試験例2> (含浸紙の吸水度、撥水性
試験) 上記で得られた含浸紙の表面吸水度と撥水度を評価する
為に、JIS P8140「紙及び板紙の吸水度試験方
法( コップ法) 」とJIS P8137「 紙及び板紙の
はっ水度試験方法」 を行った。本方法により、紙本来の
短所である低い耐水性に対する含浸紙の改善効果を測定
することが出来る。測定結果を表- 3に記載する。
【0069】
【表3】
【0070】表3の結果から、比較例- 1の原紙よりも
実施例- 1の本発明のシランカップラーグラフト化LB
KPセルロース誘導体の含浸紙の方が、吸水性及び撥水
性もかなり改善されていることが判る。
【0071】
【表4】
【0072】表4の結果から、比較例1、 2の原紙より
も実施例2−1及び実施例2−2の本発明のシランカッ
プラーオリゴエステル化LBKPセルロース誘導体の含
浸紙の方が、吸水性及び撥水性がかなり改善されている
吸水率も撥水度かなり向上していることが表1の結果と
同様に判る。(なお、比較例1の値が表3と表4で異な
るのは、紙のロット差によるものと考えられ、各表中の
測定は同じロットの紙で測定を行なっている)。また、
比較例3−1及び比較例3−2のシランカップリング剤
単体の含浸紙と吸水性及び撥水性もかなり改善されてい
る、本発明のシランカップリンラーオリゴエステル化L
BKPセルロース誘導体の含浸紙(実施例2−1及び実
施例2−2)を比べても、本発明のものの方が吸水性及
び撥水性が改善されていることが判った。
【0073】
【表5】
【0074】<試験例3> (含浸紙の 耐沸騰水性試
験) 上記で得られらた含浸紙の含浸面における耐水性の評価
として、耐沸騰水性をJIS K- 5400「 塗料の一
般試験8.20 耐沸騰水性」 を参考にして、沸騰水中
に30分とした以外は、同様に試験した。評価結果を表
5、6に記載する。表5の結果から、実施例1の本発明
のシランカップラーグラフト化LBKPセルロース誘導
体含浸紙は、非常に少量の塗布量(約2g/m 2 )にも関
わらず、耐沸騰水性は良好で含浸紙の層間剥離もなく本
発明に関わるシランカップラーグラフト化LBKPセル
ロース誘導体の紙への高い親和力から紙力増強剤として
も働いていることが判った。
【0075】
【表6】
【0076】表6の結果から、実施例−2−1及び実施
例−2−2の本発明のシランカップラーオリゴエステル
化LBKPセルロース誘導体含浸紙は、原紙(比較例
1、 2)に比べて、耐沸騰水性は非常に向上しているこ
とを確認した。(なお、原紙では、カップ原紙(比較例
1)の方がクラフト原紙(比較例2)よりも耐水性が高
く、その影響が他の含浸紙にも現れている)。シランカ
ップリング剤単体の含浸紙(比較例3−1及び比較例3
−2)については、原紙に比べて多少変化が少ない効果
に留まった。 ( 注1)表中 ◎; 極めて良好 ○; 良好、 △; やや良好 ×; 不良
【0077】
【発明の効果】本発明のシランカップラーグラフトセル
ロース誘導体、或いは天然多糖類誘導体は、環境に負荷
を与えない材料系で構成されており、即ちセルロース誘
導体、或いは天然多糖類誘導体の官能基とシランカップ
リング剤の官能基を反応させ有機的な共有結合で複合化
したアルコキシシリル基を有したハイブリッド化機能性
セルロース誘導体、或いは天然多糖類誘導体であり、ア
ルコキシシリル基を加水分解−縮合させることで強固
な、且つ無機的な物性を持つシロキサン三次元構造を形
成させることができる。これにより、従来セルロース誘
導体、或いは天然多糖類誘導体の短所であった低い耐水
性や耐光性、耐候性、耐熱性、耐溶剤性、耐食性等を改
善し、また幹ポリマーであるセルロースや多糖類の柔軟
性からシロキサン結合の短所である脆性を改善し剛性を
向上させている。この為、本発明のシランカップラーグ
ラフトセルロース誘導体、或いは天然多糖類誘導体の使
用用途は多岐にわたり、本発明を利用した塗料やラッカ
ー、澱粉のり、或いは澱粉のりと接着不良なものへの塗
膜、そしてフィルムや成形加工品、繊維或いはその紡糸
液に対し無機的な物性、具体的にはシロキサン三次元結
合を付与させることで、従来課題であった前記物性を改
善させる効果がある。さらに、セルロースの加工品であ
る紙へ含浸させた場合は紙の構成成分であるセルロース
分子との親和性も非常に高いため、寸法安定性に優れ
て、且つ堅さや剛性を向上させ、優れた耐水性、耐吸水
性、撥水性、耐沸騰水性を与えることが可能である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 神永 純一 東京都台東区台東1丁目5番1号 凸版印 刷株式会社内 (72)発明者 河崎 浩志 東京都台東区台東1丁目5番1号 凸版印 刷株式会社内 (72)発明者 松尾 龍吉 東京都台東区台東1丁目5番1号 凸版印 刷株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式1で表わされるシランカップリ
    ング剤を付加あるいはグラフト重合したセルロース誘導
    体。 【化1】 一般式1 (式中、R2及びR3はそれぞれ同一若しくは異なる炭
    素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル
    基を表わし、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロ
    ヘキシル基又はフェニル基、ナフチル基を表わし、R
    8、R9、R10は同一又は異なる炭素数1〜4の低級
    アルキル基を表わし、R12はエポキシ基を有する化合
    物が開環した2価の基を表わし、P は1以上の整数、q
    は10以上の整数を表わす。)
  2. 【請求項2】一般式2で表わされるシランカップリング
    剤を付加あるいはグラフト重合したセルロース誘導体。 【化2】 一般式2 (式中、R2及びR3はそれぞれ同一若しくは異なる炭
    素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル
    基を表わし、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロ
    ヘキシル基又はフェニル基、ナフチル基を表わし、R
    8、R9及びR10は同一又は異なる炭素数1〜4の低
    級アルキル基を表わし、R12はエポキシ基を表わし、
    R13はジカルボン酸無水物又はエポキシ基を有する化
    合物の2価の基を表わし、P は1以上の整数、qは10
    以上の整数を表わす。)
  3. 【請求項3】一般式3で表わされる無水ジカルボン酸
    と、エポキシ基含有シランカップリング剤を同時に反応
    させて、シランカップリング剤とオリゴエステル化した
    セルロース誘導体。 【化3】 一般式3 (式中、R2及びR3はそれぞれ同一又は異なるエステ
    ル基を表わし、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シク
    ロヘキシル基又はフェニル基、ナフチル基を表わし、R
    8、R9及びR10は同一又は異なる炭素数1〜4の低
    級アルキル基を表わし、R12はエポキシ基を有する化
    合物が開環した2価の基を表わし、P は1以上の整数、
    qは10以上の整数を表わす。)
  4. 【請求項4】前記一般式1、一般式2及び一般式3で表
    わされる記載のシランカップリング剤を付加あるいはグ
    ラフト重合したセルロース誘導体は、一般式4で表わさ
    れるセルロース誘導体を出発原料として得られることを
    特徴とする請求項1〜3記載のセルロース誘導体。 【化4】 一般式4 (式中、R1及びR4はそれぞれヒドロキシル基又は同
    一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル
    基若しくは硝酸エステル基を表わし、R1及びR4の少
    なくとも1つはヒドロキシル基であり、R2、R3、R
    5及びR6はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4
    の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表わ
    し、nは5以上の整数を表わす。)
  5. 【請求項5】一般式1で表わせる記載のシランカップリ
    ング剤あるいはグラフト重合したセルロース誘導体は、
    一般式4で表わされるセルロース誘導体に下記一般式5
    で表わせるジカルボン酸無水物を反応させて下記一般式
    6で表わせるジエステル化セルロース二塩基酸モノエス
    テルを生成し、次いで下記一般式7で表わせるシランカ
    ップリング剤と反応して得られたものであることを特徴
    する請求項1記載のセルロース誘導体。 【化5】 一般式5 (式中、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキ
    シル基又はフェニル基、ナフチル基を表わす。) 【化6】 一般式6 (式中、R2、R3、R5及びR6はそれぞれ同一若し
    くは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は
    硝酸エステル基を表わし、R7は炭素数2〜8のアルキ
    ル基、シクロヘキシル基又はフェニル基、ナフチル基を
    表わし、nは5以上の整数を表わす。) 【化7】 一般式7 (式中、R8、R9及びR10は同一又は異なる炭素数
    1〜4の低級アルキル基を表わし、R11はエポキシ基
    を有する化合物の1価の基を表わす。)
  6. 【請求項6】前記一般式1、一般式2及び一般式3で表
    わされる記載のシランカップリングを付加あるいはグラ
    フト重合したセルロース誘導体は、天然多糖類、具体的
    はα- 1、 4結合構造の澱粉を出発原料として得られる
    ことを特徴とする請求項1〜3記載のセルロース誘導
    体。
  7. 【請求項7】前記一般式1、一般式2及び一般式3で表
    わされる記載のシランカップリング剤を付加あるいはグ
    ラフト重合したセルロース誘導体は、天然多糖類として
    マンナン、ガラクタン、アラバン、キシラン、ペクチン
    を出発原料として得られることを特徴とする請求項1〜
    3記載のセルロース誘導体。
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