JP4032326B2 - アミノシラン重合体の含浸紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なアミノシラン重合体を紙に含浸させた含浸紙に関し、さらに詳しくは新規なアミノシラン重合体を紙に含浸させることにより耐水性、剛性等の紙の物性を改良した含浸紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
日常生活で大量に消費されているポリオレフィンや芳香族ポリエステル等は、有限な資源である石油から由来した材料であり、これらの消費は年々増加するゴミの問題となっている。同様に近年大量に消費されている飲料缶や食品缶の材料も、殺菌処理の熱処理工程に耐えうる耐水性や剛性が必要になる為、主にアルミニウムが使われているが、これらもゴミの分別回収によるマテリアルリサイクルにかかるコストや行楽地での投げ捨てによる環境汚染が問題となっている。
【0003】
このため、環境面、資源面で負担の少ない材料が注目されてきており、中でも紙は、植林事業の活発化から天然再生可能な資源であること、リサイクルにおいて幅広い対応が可能であること、さらに近年の製紙業界では故紙の再利用が活発に行われていること、他の可燃性のゴミと一緒になってもサーマルリサイクルによってエネルギーに変換可能であること等の理由からその需要がますます増加する傾向にある。
【0004】
しかし、紙は、セルロース分子が水素結合したものであるため、本質的に水に弱く剛性にも乏しい。また、紙は耐熱性も低い。建材関係において紙は、壁紙として代表的に用いられているが、耐熱性等の物性が要求される。壁紙は原紙自体が主な素材となる場合(紙壁紙)とその他の表面材の裏打ちになる場合とがある。裏打ち紙は、壁紙の製造工程や住宅用建材における耐熱性や難燃性が課題として挙げられる。近年、壁紙の燃焼による有毒物質の発生が問題となっているが、これは接着剤や紙中に含まれる添加成分が原因である。
【0005】
また、紙は適度に強い腰(剛性)を有しているが、液体紙容器等の包装材料や、化粧板等の積層板においては、補強用樹脂の含浸により改善している場合が多い。しかし、この補強用樹脂は石油資源由来のものであり、紙との親和性も低い。
【0006】
これら紙の欠点を改善する方法として、従来、撥水性を向上させる場合には、プラスチックやアルミニウムと貼り合わせることが多いが、これは本質的な紙の耐水性の向上にはならない。紙自体に塗布あるいは含浸させることにより耐水性を付与する方法としては、エポキシ樹脂やメラニン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂を被膜或いは含浸させたり、アリジリン化合物やエチレン尿素等を架橋剤として添加する方法があるが、剛性が不十分である場合が多い。さらに、これらの含浸紙、あるいはコーティング紙は、アルカリ加水分解が不可能な材料や、再生紙に悪影響を及ぼす含有量を有している場合があるため故紙の再生処理に適さない。
【0007】
その他に、紙に強度を付与する含浸剤として資源的にも豊富で環境的に負担が少なくアルカリ加水分解可能なアルコキシ基を含有するシラン系の無機材料が、強固なシロキサン結合を形成するために注目されている。従来の具体的な方法としては、ウレタン樹脂溶液に粒径0.02〜10μm範囲のシリカ系微粒子を混合させたものを紙に含浸させ、耐水性を向上させているものがあるが、紙と含浸剤の相互作用は、主に水素原子と酸素原子の水素結合のみであり強固な結合とは言い難く、水や熱等に対して寸法安定性が低い場合が多い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術では、紙自体の強度(堅さや腰)を向上させる方法として、各種補強用樹脂を含浸させたり貼り合わせたりする場合が多いが、樹脂使用量に対する物性向上率の改善や環境への負荷等の課題が考えられる。即ち、より少ない含浸量で紙強度を向上させることが望ましく、また、近年の環境問題の高まりから環境への負荷が少ない材料が要望されている。さらに従来の技術における耐水性の改善方法として、プラスチックやアルミニウムとの貼り合わせによる撥水性の効果が大きく、耐水性を付与する薬剤においても、剛性が不十分であったり、含浸薬剤と紙の構成成分であるセルロースとの相互作用が弱い為、外的環境変化によって形状が変化してしまう場合が多い。従って、本発明の目的は、有機物と無機物の両方の特性を有した応用範囲が広い有機・無機ハイブリット材料を提供し、且つそれを紙に含浸させることで耐水性や強度(堅さ、腰)を向上させ、さらに寸法安定性に優れた含浸紙を提供することにある。
【0009】
【課題を解決する為の手段】
本発明者らは、前記の課題を達成すべく鋭意研究した結果、環境の負担が少ない材料で耐水性及び剛性を付与し、且つ応用範囲の広い有機・無機ハイブリット材料を発明するに至り、それを含浸剤として紙に含浸させることによって、紙の強度(堅さや腰)や耐水性、耐熱性等の紙に劣っている物性を改善し、且つ紙の構成成分であるセルロース分子と含浸剤とを強い相互作用で結びつける架橋結合を有することにより、紙の腰(剛性)や寸法安定性に優れた含浸紙を発明するに到った。
【0010】
すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(1)下記一般式1で表されるアミノシラン重合体の少なくとも1種を紙に含浸した後、該アミノシラン重合体のアルコキシシリル基の少なくとも1つが加水分解・縮合された下記一般式2で表される三次元構造のシロキサン結合を有するアミノシラン重合体を含有する含浸紙。
一般式1
【0011】
【化7】
【0012】
(式中、R1は炭素数1〜4の低級アルキル基又は芳香族基を表す。R2、R3及びR4はそれぞれ同一又は異なっていてもよい炭素数1〜4の低級アルキル基を表す。R5はアルキレン基又はフェニレン基を表し、これらは置換基を有することができる。nは0又は1以上の整数を表す。)
一般式2
【0013】
【化8】
【0014】
(式中、R1は炭素数1〜4の低級アルキル基又は芳香族基を表す。R5はアルキレン基又はフェニレン基を表し、これらは置換基を有することができる。nは0又は1以上の整数を表す。p及びqはそれぞれ1〜3の整数を表す。)
(2)下記一般式3で表されるアミノシラン重合体の少なくとも1種を紙に含浸した後、該アミノシラン重合体のアルコキシシリル基の少なくとも1つが加水分解・縮合された下記一般式4で表される三次元構造のシロキサン結合を有するアミノシラン重合体を含有する含浸紙。
【0015】
一般式3
【0016】
【化9】
(式中、R 1 は炭素数1〜4の低級アルキル基又は芳香族基を表す。R 2 、R 3 及びR 4 はそれぞれ同一又は異なっていてもよい炭素数1〜4の低級アルキル基を表す。R 5 はアルキレン基又はフェニレン基を表し、これらは置換基を有することができる。nは0又は1以上の整数を表す。)
【0017】
一般式4
【0018】
【化10】
【0019】
(式中、R1は炭素数1〜4の低級アルキル基又は芳香族基を表す。R5はアルキレン基又はフェニレン基を表し、これらは置換基を有することができる。nは0又は1以上の整数を表す。p及びqは各々1〜3の整数を表す。)
(3)下記一般式5で表されるアミノシラン重合体の少なくとも1種を紙に含浸した後、該アミノシラン重合体のアルコキシシリル基の少なくとも1つが加水分解・縮合された下記一般式6で表される三次元構造のシロキサン結合を有するアミノシラン重合体を含有する含浸紙。
一般式5
【0020】
【化11】
(式中、R 1 は炭素数1〜4の低級アルキル基又は芳香族基を表す。R 2 、R 3 及びR 4 はそれぞれ同一又は異なっていてもよい炭素数1〜4の低級アルキル基を表す。R 5 はアルキレン基又はフェニレン基を表し、これらは置換基を有することができる。nは0又は1以上の整数を表す。)
【0021】
一般式6
【0022】
【化12】
【0023】
(式中、R1は炭素数1〜4の低級アルキル基又は芳香族基を表す。R5はアルキレン基又はフェニレン基を表し、これらは置換基を有することができる。nは0又は1以上の整数を表す。p、q及びrは1〜3の整数を表す。)
【0024】
【発明の実施の形態】
以下本発明についてさらに詳細に説明する。本発明のアミノシラン重合体は、非常に強固でしかも耐熱性等、無機物としての物性に優れたシロキサン結合を形成し得るアルコキシシリル基を有したアミノシランカップリング剤がその一級アミノ基の部位でジイソシアネートと重合したものである。また、本発明のアミノシラン重合体を紙に含浸させたものは堅いが反面脆いと考えられるシロキサン結合以外に、可とう性を付与する有機基R1−、R5−が含まれているため、三次元構造のシロキサン結合の欠点である脆さを補い剛性を向上させている。即ち、本発明のアミノシラン重合体は有機物と無機物の両方の特性を備えている。前記R1は炭素数1〜4の低級アルキル基、又はベンゼンやトルエン等の芳香族基を表す。また、R5はトルイル基、ジフェニルメタン基、キシリレン基、ヘキサメチレン基、テトラメチルキシリレン基、イソホロン基、シクロヘキシルジメチレン基等のアルキレン基又はフェニレン基を表す。
【0025】
また、本発明のアミノシラン重合体の有機部位の‐R1や‐R5は、撥水効果があるものと考えられる。
【0026】
さらに本発明のアミノシラン重合体は、ポリシロキサンに欠けている可撓性や撥水性を、‐R1や‐R5の有機基によって付与することが可能である。即ち、本発明のアミノシラン重合体の構成部位であるアミノ基やイミノ基は親水基である為、その含浸紙の物性の中で耐水性(低吸水性、撥水性)には、余り効果がないことが予想されるが、−R1や−R5の構造が撥水効果の高い芳香族系であれば、耐水性も改善されることが考えられる。
【0027】
本発明のアミノシラン重合体の基本的な反応はアミノシランカップリング剤の一級アミノ基とジイソシアネートのイソシアネート基の反応である。公知のこれらの反応では、まず尿素結合が形成され、さらに加熱により尿素結合中の二級アミノ基とイソシアネートが反応しビューレット結合の生成へと進行する。この反応の非溶媒系では激しい発熱反応(発熱温度≧100℃)の為、クロロホルム等の溶媒で環流条件下、反応温度を制御することも可能であり、それによって本発明のアミノシラン重合体はオリゴマーからポリマーまでの生成をコントロールすることができる。また加熱しなくても自然発熱反応でビューレット結合まで進行し重合することが生成物のIRスペクトル及び1H‐NMRの構造解析から確認された。
【0028】
このように、本発明のアミノシラン重合体の製造は、無触媒系で、且つ大気中、常温で混合するだけで行うことができるのでその製造は非常に簡便である。
【0029】
また、本発明のアミノシラン重合体は、ジイソシアネートと一級アミノ基含有シランカップリング剤との反応mol比を制御することにより、その構造、特に分子末端基を制御することも可能である。その基本構造は、一般式1、一般式3、及び一般式5に示されるように三種類ある。
【0030】
本発明の紙含浸剤であるアミノシラン重合体は、固体で取り扱い易く、特に芳香族を含む構造のものは(例えば、トルイレンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネートとアミノシランカップリング剤との重合体)結晶性の高さから固い生成物が得られる。また、市販されている数多いシランカップリング剤は全て液体であることからも、本発明のアミノシラン重合体が固体であることは1つの特徴である。しかも溶剤に対する溶解性に優れ、反応させる化合物によって溶解性を変化させることができる。安定性についても、固体のままで、1ヶ月程度、大気中に放置してもゲル化しないが、ジイソシアネートが脂肪族系のものの方が芳香族系のものより安定性は高い。
【0031】
また、イソシアネート基は、セルロース繊維の防しわ加工やパーマネントプレス加工の目的にも例があることから、本発明のアミノシラン重合体の含浸紙は、非常に高い寸法安定性や弾性を有している。また、セルロース繊維との水素結合においても、窒素原子と酸素原子との強固な水素結合の形成による効果から本発明のアミノシラン重合体とセルロース繊維との分子間力は非常に高いものと考えられる。
【0032】
本発明のアミノシラン重合体の含浸液の製造方法は、以上のような末端官能基が異なるアミノシラン重合体或いは各種化合物と反応させたアミノシラン重合体を用い、有機溶剤に溶解して含浸液を調節する。ここで、用いる有機溶剤としては、各種アミノシランカップリング剤を溶解するものであれば良く特に限定はされないが、含浸液としての塗液安定性を考慮し余り揮発性の高い(低沸点)溶剤は好ましくない。また、人体に害の少ないものが望ましい。具体的には、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、エタノール、プロパノールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、トルエン、キシレン、のような芳香族炭化水素、酢酸エチルのようなエステル類、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
本発明に使用する紙としては、和紙、模造紙、不織布、上質紙、アート紙、コート紙、純白ロール紙、バーチメント紙、クラフト紙、又は段ボール用途としてジュートライナー、クラフトライナー、コートライナー等が挙げられる。
【0034】
次に、本発明のアミノシラン重合体の含浸液の塗工方法としては、紙表面に通常のロールコート法、ドクターブレードコート法、ナイフエッジコート法、カーテンコート法、グラビアコート法、バーコート法、リバースコート法、キッスコート法等のいずれを使用しても含浸塗工することができる。なお、塗布速度、乾燥条件は特に限定されるものではないが、支持体の紙や含浸液に悪影響を及ぼさない範囲で行うのが望ましい。
【0035】
本発明のアミノシラン重合体の紙基材への有効な含浸量は通常1〜25g/m2で、標準としては、2g/m2(乾燥重量基準)という紙中含浸率(原紙に対する乾燥含浸剤の量比%)では約0.6%に相当する非常に少ない含浸量で、紙に優れた耐水性、堅さ、剛性等を付与することができる。もちろん、含浸量の増加により、耐水性や、堅さ、剛性はさらに向上させることができる。そして、三次元構造のシロキサン結合をもつ化合物の紙中含有量の増加で耐熱性も付与されてくる。含浸量または塗工量は、原紙及び含浸紙を120℃の電気乾燥機中で2時間置くことにより絶乾状態にして、含浸紙から同面積の原紙の重量を差し引き求めることができる。
【0036】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づき、さらに具体的に説明する。
【0037】
製造例1(一般式1のアミノシラン重合体の含浸液-1の製造法)
300mlのビーカーに10g(45.17mmol)のアミノプロピルトリエトキシシラン(チッソ(株)製、商品名;S330)をスターラーで撹拌している中に、等molに相等する7.59g(45.17mmol)のヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成(株)製)を加えて反応させた。すぐに発熱反応が起こり(約130℃)発熱が止まったら、反応を終了とした。生成物は高粘凋固体物でGPC測定により分子量を測定したところ、Mn=約10、000の高分子量体を含む二量体と四量体の混合物であった。また、1H‐NMR測定の結果、分子末端はイソシアネート基とアミノ基を約1:1の比で構成された化合物であることが判った。次に、反応生成物をi‐プロパノールに固形分比(N.V.)=20wt%で溶解させ、硬化剤(東洋インキ製、 p−トルエンスルホン酸2水和物含有50wt%のi‐プロパノール溶液)を添加して撹拌し、一般式1のアミノシラン重合体の含浸液‐1を作製した。
【0038】
製造例1と同様の反応をクロロホルム中で反応温度を制御(環流下)し行ったところ、得られた生成物は固体でGPC測定、及び1H‐NMRの構造解析の結果、高分子量体を含まない二量体、四量体の分子末端にイソシアネート基とアミノ基を約1:1の比で有する化合物であった。
【0039】
前項の結果、反応温度を制御することにより、生成するアミノシラン重合体の分子量をコントロールすることができることが判った。
【0040】
製造例2(一般式1のアミノシラン重合体の含浸液-2の製造法)
製造例1のジイソシアネートをトルイレンジイソシアネート(東京化成(株)製、2,4‐体:2,6‐体≒8:2)に代えた以外、前記製造例1と同様に製造して含浸液‐2を作製した。また、得られた生成物は固体でGPC測定及び1H‐NMRの構造解析の結果も製造例1と同様であった。
【0041】
製造例3(一般式1のアミノシラン重合体の含浸液−3の製造法)
製造例1記載のジイソシアネートをジフェニルメタンジイソシアネート(東京化成(株)製)に代えた以外は、前記製造例1と同様にして含浸液−3を作製した。
【0042】
次に、本発明のアミノシラン重合体の含浸紙の実施例を示す。原紙は、純粋なパルプ繊維で構成されたカップ原紙のものを‐(1)、化学再生パルプであるクラフト原紙のものを‐(2)とした。
【0043】
実施例‐1‐(1)
製造例1で製造した含浸液‐1を日本板紙(株)のカップ原紙(秤量;320g/m2)のノンクレイ面へワイヤーバーで塗工絶乾量4g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0044】
実施例‐1‐(1)
製造例1で製造した含浸液‐1を宇都宮製紙(株)のクラフト紙(秤量;310g/m2)の表面へワイヤーバーで塗工絶乾量4g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0045】
実施例‐2‐(1)
製造例2で製造した含浸液‐2を日本板紙(株)のカップ原紙(秤量;320g/m2)のノンクレイ面へワイヤーバーで塗工絶乾量4g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0046】
実施例‐2‐(2)
製造例2で製造した含浸液‐2を宇都宮製紙(株)のクラフト紙(秤量;310g/m2)の表面へワイヤーバーで塗工絶乾量4g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0047】
実施例‐3‐(1)
製造例3で製造した含浸液‐3を日本板紙(株)のカップ原紙(秤量;320g/m2)のノンクレイ面へワイヤーバーで塗工絶乾量4g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0048】
実施例‐3‐(2)
製造例3で製造した含浸液‐3を宇都宮製紙(株)のクラフト紙(秤量;310g/m2)の表面へワイヤーバーで塗工絶乾量4g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0049】
比較例‐1‐(1)
比較例‐1‐(1)として、本発明のアミノシラン重合体の含浸液を塗工しない実施例‐1‐(1)、実施‐2‐(1)、実施例‐3‐(1)で用いた日本板紙(株)のカップ原紙を比較例‐1‐(1)とした。
【0050】
比較例‐1‐(2)
比較例‐1‐(2)として、本発明のアミノシラン重合体の含浸液を塗工しない実施例‐1‐(2)、実施‐2‐(2)、実施例‐3‐(2)で用いた宇都宮製紙(株)のクラフト紙を比較例‐1‐(2)とした。
【0051】
比較例‐2‐(1)
製造例3で使用したアクリルポリオール(三菱レイヨン(株)製、商品名;LR209)をi―プロパノールに固形分比(N.V.)=20wt%で溶解させ撹拌したものを、日本板紙(株)のカップ原紙(秤量;320g/m2)のノンクレイ面へワイヤーバーで塗工絶乾量4g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0052】
比較例‐(2)
前項比較例‐2‐(1)の含浸させる原紙を宇都宮製紙(株)のクラフト紙に代えた以外同様の手順を行った含浸紙。
【0053】
試験例‐1(含浸紙の強度、剛性評価試験)
含浸紙の強度と剛性を評価する為にJIS P8125「荷重曲げ方法による板紙のこわさ試験方法」を参考にして、吉沢工業(株)製の「曲げこわさ試験機BST−150M」を用いて評価した。測定方法は、紙試料を塗工方向に対し平行に縦6cm×横4cm に切り取り、60℃の環境下で紙の片端を固定して紙中央部を折り曲げることによって、降伏値(gf)とその時の角度(初期勾配;deg)を求めた。降伏値は紙の折れる時の硬度、即ち堅さ、初期勾配は紙の折れ難さ(腰)、即ち靭性、剛性の評価とした。測定結果を表‐1〜2に示す。
【0054】
【表1】
表‐1 紙強度と剛性の評価結果‐1
【0055】
表‐1の結果から、本発明のアミノシラン重合体の含浸紙は、これを含浸していないものに比べて、堅さと剛性とともに、著しく向上していることが判る。
【0056】
次に、比較する実施例を代えて評価を行った。
【0057】
【表2】
表‐2 紙強度と剛性の評価結果‐2
【0058】
表‐2の結果から、本発明のアミノシラン重合体の含浸紙は、いずれのタイプも、表‐1の結果と同様に含浸していないものに比べて、堅さと剛性ともに著しく向上していることが判る。
【0059】
試験例‐2(含浸紙の吸水度、撥水度試験)
含浸紙の表面吸水度を評価するためにJIS P8140「紙及び板紙の吸水度試験方法(コッブ法)」とJIS P8137「紙及び板紙のはっ水度試験方法」を行った。本方法により、紙本来の短所である低い耐水性に対する含浸紙の改善効果を測定することが出来る。吸水率(%)は、原紙の吸水度を100%として、各含浸紙の吸水度を原紙の吸水度で除した値を各含浸紙の吸水率(%)とした。測定結果を表3に記載する。
【0060】
【表3】
表‐3 吸水度と撥水度の評価結果‐1
【0061】
上記の表‐3の結果、本発明のアミノシラン重合体の含浸紙は、その構成成分により異なることが判った。結果として、芳香族系のジイソシアネートで製造されたアミノシラン重合体の含浸紙(実施例−3−(1))の方が、脂肪族系のジイソシアネートで製造されたアミノシラン重合体の含浸紙(実施例−1−(1)より、低吸水性、撥水性ともに向上度合が大きいことが判った。
【0062】
このことから、試験例−1の表−2の紙の堅さと剛性の評価結果の考察に述べたように、本発明のアミノシラン重合体とアクリルポリオールのハイブリット体の含浸紙は、化学再生パルプであるクラフト紙(−(2)のタイプ)を原紙にした場合に、アクリルポリオール単体の含浸紙(比較例−2−(2))とほぼ同様の力学的強度であったが、耐水性においては、本発明の効果より低吸水性、及び撥水性への向上効果が明確に現れた。
【0063】
以上のように、本発明のアミノシラン重合体により、低耐水性と考えられるアクリルポリオール含浸紙に、紙の堅さや剛性の高さを失わず、耐水性(低吸水性、撥水性)を著しく向上させることができた。
【0064】
【発明の効果】
本発明のアミノシラン重合体の含浸紙は、含浸後、加水分解‐縮合させることでシロキサン三次元構造を形成し紙に堅さを与えるとともに、シランカップリング剤或いはジイソシアネート類の有機構造がシロキサン結合の脆性を補って可とう性を付与し剛性を向上させている。また、本発明のアミノシラン重合体は、イソシアネート基を分子末端に有する場合には、その反応性の高さから紙の構成成分であるセルロース繊維と化学的な結合が予想され、且つ窒素原子と酸素原子との強固な水素結合から、非常に高いセルロース繊維との分子間力が働いている。従って、その含浸紙の堅さや剛性、寸法安定性は非常に高い。さらに、本発明のアミノシラン重合体は、その構成成分の有機部位を変えることにより、含浸紙に高い耐水性(低吸水性、撥水性)も付与させることから、各種液体紙容器やアルミニウム代替可能なレトルト用紙容器、あるいは化粧紙や壁紙等への用途展開が可能である。
Claims (3)
- 下記一般式1で表されるアミノシラン重合体の少なくとも1種を紙に含浸した後、該アミノシラン重合体のアルコキシシリル基の少なくとも1つが加水分解・縮合された下記一般式2で表される三次元構造のシロキサン結合を有するアミノシラン重合体を含有する含浸紙。
一般式1
一般式2
- 下記一般式3で表されるアミノシラン重合体の少なくとも1種を紙に含浸した後、該アミノシラン重合体のアルコキシシリル基の少なくとも1つが加水分解・縮合された下記一般式4で表される三次元構造のシロキサン結合を有するアミノシラン重合体を含有する含浸紙。
一般式3
一般式4
- 下記一般式5で表されるアミノシラン重合体の少なくとも1種を紙に含浸した後、該アミノシラン重合体のアルコキシシリル基の少なくとも1つが加水分解・縮合された下記一般式6で表される三次元構造のシロキサン結合を有するアミノシラン重合体を含有する含浸紙。
一般式5
一般式6
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