JP3939853B2 - 耐水性及び剛性に優れた含浸紙 - Google Patents
耐水性及び剛性に優れた含浸紙 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、有機、無機複合材料に関し、耐水性及び剛性に優れた含浸紙に関わる。
【0002】
【従来の技術】
日常生活で大量に消費されているポリオレフィンや芳香族ポリエステル等は、有限な資源である石油から由来した材料であり、且つ年々増加するゴミの問題となっている。同じく、大量消費されている飲料缶や食品缶の材料は、殺菌処理の熱処理工程に耐えうる耐水性、剛性が必要となる為、主にアルミニウムが使われているが、ゴミの分別回収によるマテリアルリサイクルにかかるコストや未だ行楽地での投げ捨てによる環境汚染が懸念される。
【0003】
この様な状況下で、環境面、資源面で負荷の少ない材料系が注目され、中でも紙は、植林事業の活発化から天然再生可能な資源であり、リサイクルにおいても幅広い対応が可能で、且つ近年、製紙業界では故紙の再利用が活発に行われる一方、他の可燃性のゴミと一緒になってもサーマルリサイクルによってエネルギーに変換が可能であることから需要がますます増加している。
【0004】
しかし、紙の構造は、セルロース分子が水素結合したものであり、本質的に水に弱く剛性も乏しい。これは、紙の構成繊維が水素結合で結びつけられている為で、この水素結合は水によって容易に切断されてしまうからである。また、紙は耐熱性も低い。建装材関係において紙は、壁紙に代表されて用いられているが、耐熱性等の物性が要求される。また、近年、壁紙の燃焼による有害物質の発生が問題となっているが、これは接着剤や紙中に含まれる添加成分が原因であり、無公害な材料系が求められている。
【0005】
これら紙の欠点を改善させる方法として、従来、撥水性を向上させる場合には、プラスチックやアルミニウムと貼り合わせることが多いが、これは本質的な紙の耐水性の向上とはならない。紙自体に、塗布あるいは含浸させることにより耐水性を付与し向上させる方法としては、エポキシ樹脂やメラニン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂を被膜や含浸させたりアリジリン化合物やエチレン尿素等を架橋剤として添加する方法があるが、剛性が不十分である場合が多い。さらに、これらの含浸紙、あるいはコーティング紙は、故紙の再生処理に適さない、即ちアルカリ加水分解が不可能な材料や、あるいは再生紙に悪影響を及ぼす含有量を有している場合がある。
【0006】
各種樹脂系の塗布、或いは内添、含浸方法による紙の物性向上においても、耐水性という面で、例えば沸騰水に入れておくと、紙との界面剥離を引き起こしてしまうことが多い。これは、紙の構成成分であるセルロースと各種樹脂との親和性が低いことが主たる原因と考えられる。
【0007】
紙との親和性が最も高いと考えられるものは、当然、その構成成分であるセルロースである。そして、セルロースは、前述の様に環境調和型の天然再生資源であり、近年、問題となっている石油問題や環境汚染問題に対応した材料系であることから、繊維素系樹脂、即ちセルロース誘導体が紙との親和性において最も適切と考えられる。紙との親和性が求められる添加剤としては一つに紙力増強剤が挙げられるが、従来、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシメチルセルロースといったセルロース誘導体も使われている。
【0008】
その中でも、最近、注目されているものに、バイオセルロース(略してBC)という微生物(バクテリア)が産生するセルロースがある。BCは、主にある種の酢酸菌(Acetobacter属 xylinum,或いはacetigenus)が産生するセルロースであるが、従来、使われている植物由来のセルロースと比較して特徴的なところが多い。具体的には、植物セルロースに比べて、構造的に、高結晶性で純度が高く、均一な幅の超微細構造であり、重量平均重合度も倍近い。そのため、物性的に水に分散させた場合、高粘性で懸濁安定性に優れており、バイオセルロースをシートにした場合には高い力学強度と弾性が得られる。それらの特性を生かして特開昭62−36467号公報には製紙用の紙力増強剤が、また、特開平8−49188号公報にはバクテリアセルロース含有高力学強度シートが開示されており、紙との高い親和性と高い力学強度及び弾性を付与している。さらに、その応用として、特開昭61−281800号公報に音響振動板が開示されており、従来にない高いヤング率をもつスピーカーコーンとして既に市販されている。
【0009】
その他のBCを紙中に含有させた場合の例としては、特開昭63−295793号公報に開示されているような不透明性及び強度改良や、特開平1−246495号公報に開示されているような填量と微細繊維の歩留まり及び地合の改良等があり、紙に種々の機能を付与する添加剤として大いに期待されている。
【0010】
しかし、前述の方法を含む従来技術によって得られる、即ちバイオセルロースを含有するパルプスラリーを抄紙してなる紙においては、抄紙工程における濾水性の低下や、保水性の上昇に伴う搾水性の低下が生じてしまう問題があった。そのため、バイオセルロースの含有量には低い限界量があった。
【0011】
そこで、バイオセルロースを化学修飾化して、溶剤溶解性を付与し、紙に内添させるのではなく、含浸させれば良いと考えられる。しかし、これまでにそのような利用を検討した報告例はなく、違う用途として、特開平5−293343号公報のバイオセルロース誘導体を利用したガス分散用複合膜や特開平1−199604号公報のバクテリアセルロース含有濾過膜等に利用されている。
【0012】
さて、紙に強度を付与する含浸剤としてはその他に、資源的にも豊富で環境的に負荷が少なくアルカリ加水分解が可能なアルコキシ基を含有するシラン系の無機材料が、強固なシロキサン結合を形成することから注目されている。従来の具体的な方法としては、ウレタン樹脂溶液に粒径0.02〜10μm範囲のシリカ系微粒子を混合させたものを紙に含浸させ、耐水性を向上させるものがあるが、紙と含浸剤の相互作用は、主に水素原子と酸素原子の水素結合のみであり強固な結合とは言えず、紙の構成成分であるセルロースとシリカでは水や熱等の外部因子に対する挙動が異なる為、寸法安定性が低い場合が多い。
【0013】
そこで植物由来の各種セルロース誘導体とオルガノアルコキシシランとの複合化によって、無機物の特徴(高耐熱性、高弾性率、高強度、高耐食性、高耐候性、高耐溶剤性、高密度)と有機物の特徴(高柔軟性、高成形性、低密度)を兼ね備えた複合材料の研究、開発が、最近、各方面で行われている。
【0014】
従来、有機、無機複合材料の多くは、合成高分子の中で多く検討されてきており、例えば、ポリアリレンエーテルケトンとイソシアネート含有シランカップリング剤で尿素結合を有した複合材料や、酢酸ビニルとビニルトリエトキシシランの共重合体、そしてエポキシシランとメタクリロキシシラン、さらにアルコキシチタンとメタクリレートを重合させて複合化し硬化させることでコンタクトレンズ材料がつくられている。
【0015】
一方、植物由来の各種セルロース誘導体と金属アルコキシドとの複合化は、これまで、余り報告例がなく、その中でも多いのは混合(ブレンド)によるゾル、ゲル法であり、その主たる相互作用はセルロース誘導体の水酸基とシロキサン結合の水素結合であり、一部のシラノール基とセルロース分子の官能基が直接反応するものがあると考えられている材料系であり、オルガノシランの有機系炭素に結合した官能基とセルロース誘導体の官能基が反応し共有結合で複合化した材料系の明確な例は殆どなく、ましてや本発明の様なバイオセルロース誘導体とオルガノシランの複合材料の報告例はないに等しく、植物セルロース誘導体を使った近いものでラジカル重合性シリコンとセルロースアセテートの共重合による材料系が報告されている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
この様な状況の中で、近年、資源的、環境的に負荷が少ないことからも需要が増加している紙の欠点である耐水性や強度を付与する含浸剤として、同じく資源的、環境的に負荷が少ないアルコキシシランを利用したものが報告されているが、紙の構成成分であるセルロース分子との相互作用が水素結合のみで弱く寸法安定性に欠け、また複合化というより混合(ブレンド)であるため無機材料の欠点である脆さ等が生じてしまう。しかし、紙の耐水性や強度等の物性向上を目的としたセルロース誘導体とのハイブリッド材料は殆ど報告されていない。
本発明の目的は、既に抄紙工程での内添により高い力学的強度を付与することが公知のバイオセルロースを化学修飾化させ、その誘導体とオルガノシランを有機系の官能基同志の共有結合で複合化させることで、有機、無機材料の特色を兼ね備えた複合材料を含浸薬剤として用い、耐水性及び堅さや剛性、耐熱性、耐食性、耐溶剤性が向上した含浸紙の提供、さらに含浸薬剤の主成分がセルロース誘導体でそれが無修飾でも含有させても紙力増強性のあるバイオセルロースのため、紙との親和力の増大による寸法安定性に優れ、過酷な耐水条件下でも耐えうる含浸紙を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を達成すべく鋭意研究した結果、バイオセルロース誘導体の官能基とオルガノシランの官能基を付加、あるいはグラフト重合させ新規な複合化機能性セルロース誘導体を見出し、それを紙への含浸薬剤として使用することにより、無機物と有機物の両方の特徴を兼ね備えた、即ち耐水性、剛性、耐熱性、寸法安定性等に優れた含浸紙を提供することができた。また、含浸薬剤の幹ポリマーがバイオセルロース誘導体である為、紙との親和力が増大し、従来にない耐水性をもった含浸紙を提供することができた。
【0018】
すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0019】
下記一般式1で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を紙に含浸した後、該セルロース誘導体を加水分解−縮合してシロキサン三次元構造を有するセルロース誘導体として含有していることを特徴とする耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0020】
【化11】
一般式1
【0021】
(式中、R2及びR3はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表し、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、R8、R9及びR10は同一又は異なる炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、R12はエポキシ基を有する化合物が開環した2価の基を表し、pは1以上の整数、qは10以上の整数を表す。)
【0022】
下記一般式2で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を紙に含浸した後、該セルロース誘導体を加水分解−縮合してシロキサン三次元構造を有するセルロース誘導体として含有していることを特徴とする耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0023】
【化12】
一般式2
【0024】
(式中、R2及びR3はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表し、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、R8、R9及びR10は同一又は異なる炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、R12及びR13はそれぞれエポキシ基を有する化合物が開環した2価の基を表し、pは1以上の整数、qは10以上の整数を表す。)
【0025】
下記一般式3で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を紙に含浸した後、該セルロース誘導体を加水分解−縮合してシロキサン三次元構造を有するセルロース誘導体として含有していることを特徴とする耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0026】
【化13】
一般式3
【0027】
(式中、R2及びR3はそれぞれ同一又は異なるエステル基を表し、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、R8、R9及びR10はそれぞれ同一又は異なる炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、R12はエポキシ基を有する化合物が開環した2価の基を表し、pは1以上の整数を表し、qは10以上の整数を表す。)
【0028】
前記一般式1、一般式2及び一般式3で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体は微生物産生バイオセルロース誘導体を出発原料として得られることを特徴とする請求項1〜3記載のいずれか1に記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0029】
前記微生物産生バイオセルロース誘導体が一般式4で表されることを特徴とする請求項4記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0030】
【化14】
一般式4
【0031】
(式中、R1及びR4はそれぞれヒドロキシル基又は同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基若しくは硝酸エステル基を表し、R1及びR4の少なくとも1つはヒドロキシル基であり、R2、R3、R5及びR6はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表し、nは5以上の整数を表す。)
【0032】
前記一般式1記載のシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体は、前記一般式4で表される微生物産生バイオセルロース誘導体に下記一般式5で表されるジカルボン酸無水物を反応させて下記一般式6で表されるジエステル化セルロース二塩基酸エステルを生成し、次いで下記一般式7で表されるシランカップリング剤と反応させて得らたものであることを特徴とする請求項1記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0033】
【化15】
一般式5
【0034】
(式中、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表す。)
【0035】
【化16】
一般式6
【0036】
(式中、R2、R3、R5及びR6はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表し、エステル基の置換度は0.3以上1.0以下であり、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、nは5以上の整数を表す。)
【0037】
【化17】
一般式7
【0038】
(式中、R8、R9、R10は同一又は異なる炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、R11はエポキシ基を有する化合物の1価の基を表す。)
【0039】
前記一般式2記載のシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体は、前記一般式6で表されるジエステル化バイオセルロース二塩基酸モノエステルに前記一般式7で表されるシランカップリング剤とエポキシ基を有する化合物を反応させて得らたものであることを特徴とする請求項2記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0040】
前記一般式3記載のシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体は、前記一般式6のジエステル化バイオセルロース二塩基酸モノエステルに対して前記一般式5のジカルボン酸無水物と該ジカルボン酸無水物と同モル濃度の前記一般式7のシランカップリング剤を同時に反応させる場合又は前記一般式4の微生物産生バイオセルロース誘導体に対して前記一般式5のジカルボン酸無水物と該ジカルボン酸無水物と同モル濃度の前記一般式7のシランカップリング剤を同時に反応させる場合により得られたものであることを特徴とする請求項3記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0041】
紙に含浸させた前記一般式1で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を加水分解−縮合して得られたシロキサン三次元構造を有するセルロース誘導体は下記一般式8で表される構造単位を有することを特徴とする請求項1記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0042】
【化18】
一般式8
【0043】
(式中、R2及びR3はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表し、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、R12はエポキシ基を有する化合物が開環した2価の基を表し、pは1以上の整数、qは10以上の整数を表す。)
【0044】
紙に含浸させた前記一般式2で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を加水分解−縮合して得られたシロキサン三次元構造を有するセルロース誘導体は下記一般式9で表される構造単位を有することを特徴とする請求項2記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0045】
【化19】
一般式9
【0046】
(式中、R2及びR3はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表し、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、R12はエポキシ基を有する化合物が開環した2価の基を表し、R13はジカルボン酸無水物又はエポキシ基を有する化合物の2価の基を表し、pは1以上の整数、qは10以上の整数を表す。)
【0047】
紙に含浸させた前記一般式3で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を加水分解−縮合して得られたシロキサン三次元構造を有するセルロース誘導体は下記一般式10で表される構造単位を有することを特徴とする請求項3記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0048】
【化20】
一般式10
【0049】
(式中、R2及びR3はそれぞれ同一又は異なるエステル基を表し、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、R12はエポキシ基を有する化合物が開環した2価の基を表し、pは1以上の整数を表し、qは10以上の整数を表す。)
【0050】
本発明に関わるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体の主な特徴は、紙へ含浸させた後、シランカップリング剤のアルコキシ基(一般式7の−OR8、−OR9、−OR10)を縮合、硬化し強固な、しかも耐熱性のあるシロキサン三次元構造を形成することと、グラフト重合させたバイオセルロース誘導体が有機材料としての特徴である柔軟性を付与しシロキサン結合の欠点である脆さを補っている。そして、紙の構成成分であるセルロース分子を本発明に関わる含浸薬剤は基本骨格に有している為、紙との親和性を増大させ寸法安定性を向上させている。そのセルロース骨格は、バイオセルロースである為、その特性は植物セルロースよりも高い。さらに、シロキサン三次元構造を有している為、耐候性、耐溶剤性に優れている。
【0051】
これらのことは、PETフィルム等にワイヤーバーで塗工した際、単なるアルコキシシランである場合には、加水分解によって縮合させた塗膜は分散状態で形成できないのに対して、本発明のシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を同じく加水分解によって縮合させた塗膜は一様に形成でき、且つ溶剤に不溶になっていることからも明らかである。
【0052】
本発明の幹ポリマーであるバイオセルロースの原料は、ホヤやバロニアから得られるものでも良いが、各方面で研究されている酢酸菌(Acetobacter属 xylinum,或いはacetigenus)産生のものが好適と言える。この酢酸菌産生バイオセルロースは、静置培養、攪拌培養、振とう培養、又はそれらの組み合わせによって得ることが出来る。好ましくは、通気攪拌培養によって得られたバイオセルロースである。
【0053】
請求項記載の一般式4のバイオセルロース誘導体は、公知の方法で合成するが、一般式5のジカルボン酸無水物との反応はセルロース骨格で第6位の水酸基と反応する傾向が強い為、一般式4のセルロース誘導体は、各種カルボン酸エステルが操作し易いと考えられる。なぜなら、ジカルボン酸エステル化セルロースはトリカルボン酸エステル化セルロースを加水分解させて合成するもので、その場合一般式4の式中のR1とR4にあたる第6位の置換度が優先的又は選択的に水酸基に戻るからである。ニトロ(硝酸エステル)セルロースは、硝化混酸組成比や反応時間で置換度の制御を行う場合が多く、必ずしも第6位が水酸基とは限らず逆に硝酸エステル基であって一般式4の式中のR2やR3、或いはR5やR6の第2位や第3位の置換基が水酸基になっている部位が全構造中に含まれているが、第2位や第3位の水酸基は第6位の水酸基に比べて非常に反応性が低いので、ジカルボン酸無水物とは反応しないことが考えられる。そのため、カルボン酸エステル化バイオセルロースを含めて第6位の水酸基に対してのみ示した。また、ニトロセルロースの利点としては、各種の溶剤に溶解することから、本発明に関わるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体も溶剤溶解性が向上する効果がある。溶剤溶解性のよいセルロース誘導体としては、その他にセルロースアセテートプロピオネートやセルロースジプロピオネート、又はセルロースアセテートブチレートやセルロースブチレート等がある。またジカルボン酸無水物との反応によるカルボキシル基の導入は、立体的に反応性が高い官能基を付与する目的がある。この場合一般式5の(R7)は、炭素数2〜8の飽和脂肪族又はシクロヘキシル基のような飽和脂環式脂肪族、或いはフェニル基、ナフチル基のような芳香族が望ましく、無水マレイン酸を反応させる場合のような不飽和脂肪族でも可能だが、本発明の目的から言って不飽和二重結合は副反応が予想されるので余り適当ではない。また、各種エステル基置換度は溶剤溶解性や反応性、含浸紙の物性を考慮して、D.S.=2.0以上2.7以下が望ましいと考えられる。
【0054】
一般式7のシランカップリング剤のR11は反応性を有する官能基であり、エポキシシクロヘキシル基、グリシジル基等のエポキシ基を含む脂肪族基あるいは芳香族基であることが望ましい。一般式6のジエステル化バイオセルロース二塩基酸エステルと一般式7のシランカップリング剤との反応は、溶剤を使用した均一反応系で行われ、重合方法は各々の官能基に適した公知の方法で酸又は塩基による縮合や開環重縮合、イオン重合等により行われるが、アルコキシ基が加水分解し縮合してシロキサン三次元構造を形成しない条件であることが望ましい。
【0055】
さて、前記したように、本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体は、原料であるセルロースから出発して三段階の反応手順を必要としており、またシランカップリング剤とのグラフト化反応においては、その添加量を増やしていくとセルロース分子間の架橋が起こりゲル化してしまう傾向がある。この場合、各反応段階でセルロース分子に対して均一に誘導化されることが望ましく、原料が太い繊維質の植物セルロースよりも均一な超微細骨格のバイオセルロースの方が適している。
【0056】
請求項7記載のエポキシ基含有化合物としては、シランカップリング剤の官能基(一般式7の−R11)と反応するものが好ましく、ゲル化しない二官能性試薬が望ましい。具体的には、エピクロロヒドリンやジグリシジルエーテルのようなエポキシド化合物である。
【0057】
請求項3記載の一般式3は一般式5の無水ジカルボン酸と一般式7のエポキシ基含有シランカップリング剤を同モル濃度で反応させてグラフト化させる、いわゆる木材セルロースの可逆化技術として知られているオリゴエステル化反応となる。この場合、塑一般式6のジエステル化バイオセルロース二塩基酸モノエステルに無水ジカルボン酸とエポキシ基含有シランカップリング剤を同モル濃度でオリゴエステル化する場合と、未だカルボキシル基の導入を行っていない一般式4のバイオセルロースジエステル類に無水ジカルボン酸とエポキシ基含有シランカップリング剤を直接オリゴエステル化反応させて、グラフト重合させる(以下は、区別する為にオリゴエステル化と呼ぶ)場合が可能である。後者の場合には請求項1、2記載のように微生物産生バイオセルロース原料から出発して三段階の反応が必要であったが、二段階で足りる利点を有している(請求項3記載)。しかし、オリゴエステル化させる反応条件としては前者の方が適している。
【0058】
また、このオリゴエステル化反応の条件は、溶媒として非プロトン性の極性溶媒、特にN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のような塩基性のものが好適であり、触媒として、N,N−ジメチルベンジルアミンやトリエチルアミン等の三級アミンを用いる。
【0059】
さて、本発明に関わる含浸液の主成分であるシランカップリング剤のアルコキシシリル基を加水分解させ加熱処理による縮合でシロキサン結合を形成させうる条件としては、一般的にゾル、ゲル法の知見から、酸又はアルカリを用いpH=4以下、あるいはpH=10以上の条件下で縮合が始まる。具体的には、酸として塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸等が使用できる。アルカリとしては、処理後に揮発によって除去できるアンモニアやヒドロキシアミン等が使用できる。特に、p−トルエンスルホン酸2水和物を使用した場合には、有機系のブレンステッド酸(プロトン供与体)であることから有機溶媒に可溶であり、その含浸液は有機溶媒で統一することができる。
【0060】
また、この場合、本発明のシランカップラーグラフト化セルロース誘導体のアルコキシ基の加水分解は、空気中の水分の影響もあるがp−トルエンスルホン酸に配位した2分子の結晶水によって加熱乾燥処理時に加水分解が起こり同時にp−トルエンスルホン酸の触媒効果により縮合が起こるものと考えられ、液の安定性が良いと考えられる。また、含浸液の溶剤を有機系溶媒だけで統一できる為、本発明に関わるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体、或いはシランカップラーオリゴエステル化バイオセルロース誘導体の固形分比(N.V.)を上げることができる。
【0061】
また、本発明に関わる含浸薬剤であるシランカップリング剤をグラフト化或いはオリゴエステル化されたバイオセルロース誘導体は固体であり、一度単離してから含浸に適当な溶剤に溶解させることも可能である。しかし、単離されたシランカップリング剤をグラフト化させたバイオセルロース誘導体はアルコキシシリル基のアルキル基、即ち一般式7のR8,R9,R10の炭素数によっても安定性は異なるが、空気中に放置しておくと経時的に加水分解−縮合してゲル化していく傾向がある。一般的にはアルキル鎖の炭素数が多い程、加水分解−縮合し難い。その為、含浸薬剤を長期保存する場合には、シランカップリング剤をグラフト化、或いはオリゴエステル化の反応を行った反応液の状態で保存するのが望ましい。この場合、丁度、ラッカーのような形態と言える。紙に含浸させる際には、その反応液にアルコキシシリル基を加水分解−縮合させ得る前述のような触媒を添加して、紙に含浸し加熱乾燥させれば、本発明の耐水性、及び剛性に優れた含浸紙が製造される。
【0062】
さらに、詳しく本発明に関わる含浸紙の製造方法を説明すると、シランカップラーグラフト化、或いはオリゴエステル化バイオセルロース誘導体を有機溶剤に溶解して含浸液を調整するか、シランカップリング剤をバイオセルロース誘導体にグラフト化、或いはオリゴエステル化させた反応液をそのまま含浸液とする2つの方法がある。
【0063】
ここで、用いる有機溶剤としては、シランカップラーグラフト化、或いはオリゴエステル化バイオセルロース誘導体を溶解するものであれば良く特に限定はされないが、含浸液としての塗液安定性を考慮し余り揮発性の高い(低沸点)溶剤は好ましくない。また、人体に害の少ないものが望ましい。具体的には、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、エタノール、プロパノールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素、酢酸エチルのようなエステル類、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
本発明に使用する紙としては、和紙、模造紙、不織布、上質紙、アート紙、コート紙、純白ロール紙、バーチメント紙、クラフト紙、又はダンボール用途としてジュートライナー、クラフトライナー、コートライナー等が挙げられる。
【0065】
次に、本発明に関わる含浸薬剤の塗工方法としては、紙表面に通常のロールコート法、ドクターブレードコート法、ナイフエッジコート法、カーテンコート法、グラビアコート法、バーコート法、リバースコート法、キッスコート法等のいずれを使用しても含浸塗工することができる。なお、塗布速度、乾燥条件は特に限定されるものではないが、支持体の紙や含浸液に悪影響を及ぼさない範囲で行うのが望ましい。
【0066】
本発明に関わる含浸薬剤の紙基材への有効な含浸量は通常1〜25g/m2で、標準としては、2g/m2(乾燥重量基準)という紙中含浸率(原紙に対する乾燥含浸薬剤の量比%)では約0.6%に相当する非常に少ない含浸量で、紙に優れた耐水性、堅さ、剛性等を付与する。もちろん、含浸量の増加により、耐水性や、堅さ、剛性はさらに向上する。そして、シロキサン三次元構造の紙中含有量の増加で耐熱性も付与されてくる。含浸量または塗工量は、原紙及び含浸紙を120℃の電気乾燥機中で2時間置くことにより絶乾状態にして、含浸紙から同面積の原紙の重量を差し引き求めた。
【0067】
【作用】
本発明の環境に対応した高耐水、高剛性含浸紙は、資源的にも環境的にも負荷の少ない材料系で構成されており紙の物性の欠点を改善し向上させたものである。即ち、紙との親和性が最も高く力学的強度向上も考えられるバイオセルロース誘導体を幹ポリマーとし、それにシランカップリング剤を有機的な共有結合でグラフト化させ、或いはオリゴエステル化させ、紙に含浸後、酸によるアルコキシシリル基の加水分解−縮合によってシロキサン三次元構造を有した含浸紙である。これにより、無機物と有機物の特性を兼ね備え、紙の欠点とされてきた耐水性を大幅に改善し、且つ堅さ、剛性を向上させ、さらには耐熱性や耐候性、耐溶剤性を付与するものである。
【0068】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づき、さらに具体的に説明する。
【0069】
バイオセルロース原料の調整(酢酸菌の通気攪拌培養によるバイオセルロースの調整)
酢酸菌(Acetobacter属 xylinum)をグリセロールストックよりCSL(コーンスチープリカー)−Fru(フラクトース)培地100mlに仕込んだ750ml容ルーフラスコに1%植菌し、28℃で3日間静地培養した。培養後ルーフラスコをよく振って菌体をセルロース膜よりはがした後、菌液12.5mlを112.5mlの培地を含む500mlフラスコに植菌し、28℃180rpmの条件で3日間培養した。培養物をブレンダーにより無菌的に離解し、その60mlを540mlのCSL−Fru培地を仕込んだ容量1リットルのジャーファーメンター(培養槽)に植菌し、pHをNH3ガスおよび1規定H2SO4で4.9〜5.1に制御しながら、かつ溶存酸素量(DO)が3.0%以上になるように回転数を自動制御しながら、メイン培養を行った。
【0070】
なお、以上のバイオセルロース原料の調整で用いたCSL−Fruの組成は下記表1〜表3の通りである。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
培養終了後、得られた培養液を酢酸緩衝液で約5倍に希釈した後、遠心分離して沈殿物を回収した。沈殿を蒸留水で最初の培養液量の約8倍に希釈後、80℃で20分間加熱し、加熱後遠心分離により沈殿物を回収した。沈殿物を同じく8倍量の0.1規定NaOHに懸濁し80℃で20分間加熱し、加熱後遠心分離して沈殿物を回収することによりセルロースの洗浄を行った。同様の洗浄を3回行うことにより精製バイオセルロースを得た。
【0075】
前項で得られた湿潤バイオセルロース10g(乾燥重量:0.066g)を水1.5リットル中に加え、抄紙用の離解装置(2リットル容)で3000回/minの回転数下、5分間離解し0.66%のバイオセルロースのスラリー液を得た。
【0076】
本発明の関わるシランカップラーグラフト化、或いはオリゴエステル化バイオセルロース誘導体の出発原料は、以上の様に得られたスラリー状のバイオセルロースをDMF(ジメチルホルムアミド)やアセトニトリルのような水易溶性の非プロトン性極性溶媒中で分散させ、吸引濾過することによってスラリー中の水を極性有機溶媒で置換し反応に使った。
【0077】
LBKPセルロースの原料調整
比較用に検討した植物セルロース原料の調整方法は、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)湿潤シートをJIS−P8209に準拠して離解し、JIS−P8121に準拠して叩解を行い、カナダ式標準型濾水度で411csfである0.3%のLBKPセルロースのスラリー液を得た。
【0078】
比較用に反応を検討した、シランカップラーグラフト化、或いはオリゴエステル化植物セルロース誘導体の出発原料は、以上の様に得られたスラリー状のLBKPセルロースをバイオセルロースと同様にDMF(ジメチルホルムアミド)やアセトニトリルのような水易溶性の非プロトン性極性溶媒中で分散させ吸引濾過することによってでスラリー中の水を極性有機溶媒で置換し反応に使った。
【0079】
製造例−1
(製造例−1〜4までジアセチル化バイオセルロースコハク酸モノエステルとエポキシシクロヘキシル基含有シランカップリング剤の複合化体の製造例)
100mlの三口フラスコに1g(β−1,4−グルコース単位のmol濃度;約2.67mmol)のジアセチル化バイオセルロースコハク酸モノエステルをアセトニトリル100mlに溶解させ、セルロース誘導体のカルボン酸当量の等molに相当する0.64gの2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)を仕込み、エポキシ基開環架橋用触媒としてSnCl2(塩化第一スズ)を0.0003mol/gの濃度でメタノールに溶解させたものをバイオセルロース誘導体に対して0.0005mol量添加し、スターラーで攪拌しながら、約80℃で30分間反応させると、本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体の一つが製造できる。
【0080】
製造例−2
製造例−1のグラフト化させる2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)の添加量をセルロース誘導体のカルボン酸当量に対して2倍molに増加させた以外、前記製造例−1と同様に製造した本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体。
【0081】
製造例−3
製造例−1のグラフト化させる2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)の添加量をセルロース誘導体のカルボン酸当量に対して3倍molに増加させた以外、前記製造例−1と同様に製造した本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体。
【0082】
製造例−4
製造例−1のグラフト化させる2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)の添加量をセルロース誘導体のカルボン酸当量に対して4倍molに増加させた以外、前記製造例−1と同様に製造した本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体。しかし、これは溶剤不溶でゲル化した。
前記製造例−4でゲル化したことは、グラフト化させるシランカップリング剤の量を増加していくと起こったことであることから、バイオセルロース誘導体同志がシランカップリング剤により橋架けが起こった為と考えられる。このことから、本反応系でのシランカップリング剤の複合化による含浸剤の用途に対しては、セルロース誘導体のカルボン酸当量に対して4倍molが限度であることが判った。
【0083】
製造例−5
(製造例−5〜6までジアセチル化LBKPセルロースコハク酸モノエステルとエポキシシクロヘキシル基含有シランカップリング剤の複合化体の製造例)
300mlの三口フラスコに1g(β−1,4−グルコース単位のmol濃度:約2.67mmol)のジアセチル化LBKPセルロースコハク酸モノエステルをアセトニトリル100mlに溶解させ、LBKPセルロース誘導体のカルボン酸当量の等molに相当する0.64gの2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)を仕込み、エポキシ基開環架橋用触媒としてSnCl2(塩化第一スズ)を0.0003mol/gの濃度でメタノールに溶解させたものをLBKPセルロース誘導体に対して0.0005mol量添加し、スターラーで攪拌しながら、約80℃で30分間反応させると、本発明に関わるシランカップラーグラフト化LBKPセルロース誘導体の一つが製造できる。
【0084】
製造例−6
製造例−5のグラフト化させる2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)の添加量をLBKPセルロース誘導体のカルボン酸当量に対して2倍molに増加させた以外、前記製造例−1と同様に製造した本発明に関わるシランカップラーグラフト化LBKPセルロース誘導体。しかし、これは溶剤不溶でゲル化した。
前記製造例−6でゲル化したことは、製造例−5と同様にグラフト化させるシランカップリング剤の量を増加していくと起こったことであることから、LBKPセルロース誘導体同志がシランカップリング剤により橋架けが起こった為と考えられる。このことから、本反応系でのシランカップリング剤の複合化による含浸剤の用途に対しては、LBKPセルロース誘導体のカルボン酸当量に対して1倍molが限度であることが判った。
【0085】
製造例−1から6までの結果から、バイオセルロースの方がLBKPよりもシランカップリング剤のグラフト量を増やすことが可能であり、バイオセルロースの構造的特性から、LBKPのような植物セルロースに比べ反応が均一に進行すること推察された。
また、本製造例では、ジアセチル化セルロース誘導体にシランカップリング剤をグラフト化させて、溶剤溶解性による構造的変化(ゲル化)を調べているが、ジアセチル化セルロース誘導体は元来溶剤溶解性が低い為、他の誘導体(ニトロ化セルロース)等の場合には、グラフト化可能な量が増えることが判っている。
【0086】
製造例−7(ジアセチル化バイオセスロースコハク酸モノエステルと無水コハク酸、及びエポキシシクロヘキシル基含有シランカップリング剤のオリゴエステル化による複合体の製造例)
300mlの三口フラスコに4g(β−1,4−グルコース単位のmol濃度:約10.67mmol)のジアセチル化バイオセルロースモノコハク酸エステル化体をDMF60mlに溶解させ、バイオセルロース誘導体のカルボン酸当量の2倍molに相当する2.13gの無水カルボン酸と、同じくバイオセルロース誘導体のカルボン酸当量の2倍molに相当する5.26gの2−(3,4−2−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)を同時に仕込み、オリゴエステル化用触媒としてN,N−ジメチルヘンジルアミンをジアセチル化バイオセルロースモノコハク酸エステル化体に対して、0.001mol量添加し、スターラーで攪拌しながら、約70℃で1時間反応させると、本発明に関わるシランカップラーオリゴエステル化バイオセルロース誘導体の一つが製造できる。この時の反応生成物の理論収量に対する収率は約48%であった。
【0087】
製造例−8(ジアセチル化LBKPセルロースコハク酸と無水コハク酸、及びエポキシシクロヘキシル基含有シランカップリング剤のオリゴエステル化による複合体の製造例)
製造例−7の反応させるセルロース誘導体をLBKP由来のジアセチル化コハク酸モノエステル化にする以外、前記製造例−7と同様に製造した本発明に関わるシランカップラーグラフト化LBKPセルロース誘導体。
【0088】
次に、本発明のシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体を利用した含浸紙の実施例を示す。
【0089】
実施例−1
製造例−1で製造した本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体をアセトンに固形分比(N.V.)=10wt%で溶解させ、それに硬化剤(東洋インキ(株)製、p−トルエンスルホン酸2水和物含有50wt% i−プロパノール溶液)をバイオセルロース誘導体に対して20wt%添加し攪拌したものを日本紙業(株)製のカップ原紙(坪量;320g/m2)のノンクレイ面にワイヤーバーで塗工絶乾量2g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0090】
実施例−2
製造例−3で製造した本発明のシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体を使用する以外、前記実施例−1と同じ。
【0091】
実施例−3−1
製造例−6で製造した本発明に関わるシランカップラーオリゴエステル化バイオセルロース誘導体を酢酸エチルに固形分比((N.V.)=10wt%で溶解させ、それに硬化剤(東洋インキ(株)製、p−トルエンスルホン酸2水和物含有50wt% i−プロパノール溶液)をバイオセルロース誘導体に対して20wt%添加し攪拌したものを日本紙業(株)製のカップ原紙(坪量;320g/m2)のノンクレイ面にワイヤーバーで塗工絶乾量4g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0092】
実施例−3−2
含浸用原紙を宇都宮製紙(株)のクラフト原紙(坪量:310g/m2)に替えた以外、前記実施例−3−1と同じ。
【0093】
比較例−1
本発明に関わる含浸液を塗工しない実施例−1,2で用いた日本紙業(株)製のカップ原紙を比較例−1とした。
【0094】
比較例−2
製造例−5で製造した物性比較用のシランカップラーグラフト化LBKPセルロース誘導体をアセトンに固形分比(N.V.)=10wt%で溶解させ、それに硬化剤(東洋インキ(株)製、p−トルエンスルホン酸2水和物含有50wt%i−プロパノール溶液)をLBKP誘導体に対して20wt%添加し攪拌したものを日本紙業(株)製のカップ原紙(坪量;320g/m2)のノンクレイ面にワイヤーバーで塗工絶乾量2g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0095】
比較例−3
本発明に関わる含浸液を塗工しない実施例−3−2で用いた宇都宮製紙(株)のクラフト原紙を比較例−3とした。
【0096】
比較例−4−1
比較例3として、本発明に関わる含浸薬剤の原料である2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)を酢酸エチルに固形分比(N.V.)=10wt%で溶解させ、それに硬化剤(東洋インキ(株)製、p−トルエンスルホン酸2水和物含有50wt% i−プロパノール溶液)をシランカップリング剤に対して20wt%添加し攪拌したものを日本紙業(株)製のカップ原紙(坪量;320g/m2)のノンクレイ面にワイヤーバーで塗工絶乾量4g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0097】
比較例−4−2
含浸用原紙を宇都宮製紙(株)のクラフト原紙(坪量:310g/m2)に替えた以外、前記実施例−3−1と同じ。
【0098】
比較例−5−1
製造例−7で製造した物性比較用のシランカップラーオリゴエステル化LBKPセルロース誘導体を酢酸エチルに固形分比(N.V.)=10wt%で溶解させ、それに硬化剤(東洋インキ(株)製、p−トルエンスルホン酸2水和物含有50wt% i−プロパノール溶液)をLBKP誘導体に対して20wt%添加し攪拌したものを日本板紙(株)製のカップ原紙(坪量;320g/m2)のノンクレイ面にワイヤーバーで塗工絶乾量4g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0099】
比較例−5−2
含浸用原紙を宇都宮製紙(株)のクラフト原紙(坪量:310g/m2)に替えた以外、前記比較例−4−1と同じ。
【0100】
試験例−1(含浸紙の強度、剛性評価試験)
含浸紙の紙強度と剛性を評価する為にJIS P8125「荷重曲げ方法による板紙のこわさ試験方法」を参考にして、吉沢工業(株)製の「曲げこわさ試験機BST−150M」を用いて評価した。測定方法は、紙試料を塗工方向に対し平行に縦6cm×横4cmに切り取り、60℃の環境下で紙の片端を固定して紙中央部を折り曲げることによって、降伏値(gf)とその時の角度(初期勾配;deg)を求めた。降伏値は紙の折れるときの強度、即ち堅さ、初期勾配は紙の折れ難さ(腰)、即ち靭性、剛性の評価と考えられる。測定結果を表−4に記載する。
【0101】
【表4】
表−4 紙の堅さと剛性の評価結果−1
【0102】
表−4の結果から、本発明のシランカップリング剤とバイオセルロース誘導体を共有結合によりグラフト化させた複合材料の含浸薬剤によるシロキサン三次元構造を内部に有した含浸紙(実施例−1,2)と何も含浸されていないカップ原紙(比較例−1)の物性を比較すると、塗布量が2g/m2前後という非常に少ない乾燥塗布量でも、明らかに含浸効果による降伏値、及び初期勾配の向上が認められ、堅さ、剛性共に向上していることが判る。また、植物セルロース(LBKP)由来のシランカップリング剤を同じようにグラフト化させた複合材料の含浸薬剤によるシロキサン三次元構造を内部に有した含浸紙(比較例−2)との比較でも、バイオセルロース由来の含浸紙(実施例−1、2)の方が堅さ、剛性ともに優れており、原料のセルロースとしての力学的特性の差が現れている。
これは、紙に堅さを付与するシロキサン結合だけでなく、紙との親和性を向上させた本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体がより高い剛性を付与させたと考えられる。
【0103】
【表5】
表−5 紙の堅さと剛性の評価結果−2
【0104】
表-5の結果から、やはり本発明のシランカップリング剤をオリゴエステル化させたバイオセルロース誘導体の含浸紙(実施例−3−1,2)は、なにも塗工してない原紙(比較例−1,3)に比べて、堅さ、及び剛性が向上していることが判った。(尚、比較例−1の値が表-1と異なるのは、紙のLot差によるものと考えられ、各表の測定は同じLotの紙で測定を行っている)。また、比較例−4−1、2のシランカップリング剤単体の含浸紙と、本発明のシランカップリング剤をオリゴエステル化させたバイオセルロース誘導体の含浸紙(実施例−3−1、2)を比べても、本発明のものの方が力学的強度が向上していることが判った。さらに、植物セルロース(LBKP)由来のシランカップリング剤を同じようにオリゴエステル化させた複合材料の含浸薬剤によるシロキサン三次元構造を内部に有した含浸紙(比較例−5−1、2)との比較でも、バイオセルロース由来の含浸紙(実施例−3−1、2)の方が堅さ、剛性ともに優れており、この場合でも前記表−4と同様に原料のセルロースとしての力学的特性の差が現れており、バイオセルロースの効果が現れている。
【0105】
試験例−2(含浸紙の吸水度、撥水度試験)
含浸紙の表面吸水度と撥水度を評価する為にJIS P8140「紙及び板紙の吸水度試験方法(コップ法)」とJIS P8137「紙及び板紙のはっ水度試験方法」を行った。本方法により、紙本来の短所である低い耐水性に対する含浸紙の改善効果を測定することが出来る。測定結果を表−6に記載する。
【0106】
【表6】
表−6 吸水度と撥水度の評価結果−1
【0107】
表−6の結果から、比較例−1の原紙よりも実施例−1,2の本発明の含浸紙の方が、吸水率も撥水度もかなり向上していることが判る。また、実施例−1から2へとシランカップリング剤のグラフト量が増えるに従い、吸水率がさらに低下する効果が認められた。また、植物セルロースを使用したシランカップラーグラフト化誘導体の場合(比較例−2)、本発明のバイオセルロースを使った含浸紙で同じグラフト量のもの(実施例−1)とほぼ同等の吸水度を示しているが、グラフト化可能量の差から含浸紙の耐水性向上の限界値に差が生まれている。
【0108】
【表7】
表−7 吸水度と撥水度の評価結果−2
【0109】
表−7の結果から、比較例−1,3の原紙よりも実施例−3−1、2の本発明の含浸紙の方が、吸水率も撥水度もかなり向上していることが表−6の結果と同様に判る。(なお、比較例−1の値が表−6と表−7で異なるのは、紙のLot差によるものと考えられ、各表の測定は同じLotの紙で測定を行っている)。また、比較例−4−1、2のシランカップリング剤単体の含浸紙と、本発明のシランカップリング剤とオリゴエステル化させたバイオセルロース誘導体の含浸紙(実施例−3−1、2)を比べても、本発明のものの方が吸水率、及び撥水度が向上していることが判った。植物セルロース(LBKP)由来のシランカップリング剤を同じようにオリゴエステル化させた複合材料(比較例−5−1、2)との比較は、バイオセルロース由来の含浸紙(実施例−3−1、2)と本物性では差異が認められなかった。
【0110】
試験例−3(含浸紙の耐沸騰水性試験)
含浸紙の含浸面における耐水性の評価として、耐沸騰水性をJIS K−5400「塗料の一般試験8.20 耐沸騰水性」を参考にして、沸騰水中に30分とした以外は、同様に試験した。評価結果を表−8,9に記載する。
【0111】
【表8】
表−8 耐沸騰水性の評価結果
【表9】
表−9 耐沸騰水性の評価結果−2
【0112】
(注1)表中 ◎: 極めて良好
○: 良好
△: やや良好
×: 不良
【0113】
表−8の結果から、実施例−1、2の本発明のシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体含浸紙は、非常に少量の塗布量にも関わらず、耐沸騰水性は良好で含浸紙の層間剥離もなく本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体の紙への高い親和力から紙力増強剤としても働いていることが判った。また、比較例−2の植物セルロース(LBKP)由来の同じシランカップラーグラフト化体の含浸紙(比較例−2)は、本発明のバイオセルロース由来のもの(実施例−1、2)に及ばなかった。
【0114】
表−9の結果から、実施例−3−1,2の本発明のシランカップラーオリゴエステル化バイオセルロース誘導体含浸紙は、原紙(比較例−1,3)に比べて非常に向上していることを確認した。(なお、原紙では、カップ原紙(比較例−1)の方がクラフト原紙(比較例−3)よりも耐水性が高く、その影響が他の含浸紙にも現れている)。シランカップリング剤単体の含浸紙(比較例−4−1、2)については原紙に比べて多少変化が少ない効果に留まった。また、植物セルロース(LBKP)由来の同じシランカップラーオリゴエステル化体の含浸紙(比較例−4−1、2)は本発明のバイオセルロース由来のもの(実施例−3−1、2)に、表−8の結果と同様に及ばなかった。以上のことから、本発明のシランカップラーグラフト化或いはオリゴエステル化バイオセルロース誘導体含浸紙は、その塗布量を増加、あるいは紙へ全層含浸することによって、さらに耐水性が向上することが示唆された。
【0115】
【発明の効果】
本発明に関わるのシランカップラーグラフト化或いはオリゴエステル化バイオセルロース誘導体含浸紙は、環境に負荷を与えない材料系で構成されており、即ちバイオセルロース誘導体の官能基とオルガノシランの官能基を反応させ有機的な共有結合で複合化させたアルコキシシリル基を有した機能性バイオセルロース誘導体を含浸したもので、さらに含浸後アルコキシシリル基を加水分解−縮合させることで強固なシロキサン三次元構造が形成されている。これにより、従来、紙への内添により力学的強度、及びセルロース繊維間強度を向上させていたバイオセルロースの抄紙工程における濾水性の低下、保水性の上昇という問題もなく、紙の堅さや剛性を向上させるとともに、耐吸水性や撥水性、耐沸騰水性も向上しており、耐水性が優れている。また、バイオセルロース誘導体との複合材料であることからバイオセルロースの均一な繊維幅で構成された超微細構造の特性から、植物セルロースよりもシランカップリング剤のグラフト化可能量も多く、また、その剛性の高さからシロキサン結合の短所である脆性も改善している。
さらに、紙の構成成分である純粋なセルロース分子を幹ポリマーとし、バイオセルロースの紙との親和性の良さから紙との結着性が非常に高く、寸法安定性に優れて、従来にない耐水性を有している。従って、本発明のシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体含浸紙は、飲料缶や食品缶に使用されるアルミニウムに代替可能な高耐水剛性紙であり、レトルト殺菌処理のような過酷な耐水条件下にも耐えうる紙として適している。
【産業上の利用分野】
本発明は、有機、無機複合材料に関し、耐水性及び剛性に優れた含浸紙に関わる。
【0002】
【従来の技術】
日常生活で大量に消費されているポリオレフィンや芳香族ポリエステル等は、有限な資源である石油から由来した材料であり、且つ年々増加するゴミの問題となっている。同じく、大量消費されている飲料缶や食品缶の材料は、殺菌処理の熱処理工程に耐えうる耐水性、剛性が必要となる為、主にアルミニウムが使われているが、ゴミの分別回収によるマテリアルリサイクルにかかるコストや未だ行楽地での投げ捨てによる環境汚染が懸念される。
【0003】
この様な状況下で、環境面、資源面で負荷の少ない材料系が注目され、中でも紙は、植林事業の活発化から天然再生可能な資源であり、リサイクルにおいても幅広い対応が可能で、且つ近年、製紙業界では故紙の再利用が活発に行われる一方、他の可燃性のゴミと一緒になってもサーマルリサイクルによってエネルギーに変換が可能であることから需要がますます増加している。
【0004】
しかし、紙の構造は、セルロース分子が水素結合したものであり、本質的に水に弱く剛性も乏しい。これは、紙の構成繊維が水素結合で結びつけられている為で、この水素結合は水によって容易に切断されてしまうからである。また、紙は耐熱性も低い。建装材関係において紙は、壁紙に代表されて用いられているが、耐熱性等の物性が要求される。また、近年、壁紙の燃焼による有害物質の発生が問題となっているが、これは接着剤や紙中に含まれる添加成分が原因であり、無公害な材料系が求められている。
【0005】
これら紙の欠点を改善させる方法として、従来、撥水性を向上させる場合には、プラスチックやアルミニウムと貼り合わせることが多いが、これは本質的な紙の耐水性の向上とはならない。紙自体に、塗布あるいは含浸させることにより耐水性を付与し向上させる方法としては、エポキシ樹脂やメラニン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂を被膜や含浸させたりアリジリン化合物やエチレン尿素等を架橋剤として添加する方法があるが、剛性が不十分である場合が多い。さらに、これらの含浸紙、あるいはコーティング紙は、故紙の再生処理に適さない、即ちアルカリ加水分解が不可能な材料や、あるいは再生紙に悪影響を及ぼす含有量を有している場合がある。
【0006】
各種樹脂系の塗布、或いは内添、含浸方法による紙の物性向上においても、耐水性という面で、例えば沸騰水に入れておくと、紙との界面剥離を引き起こしてしまうことが多い。これは、紙の構成成分であるセルロースと各種樹脂との親和性が低いことが主たる原因と考えられる。
【0007】
紙との親和性が最も高いと考えられるものは、当然、その構成成分であるセルロースである。そして、セルロースは、前述の様に環境調和型の天然再生資源であり、近年、問題となっている石油問題や環境汚染問題に対応した材料系であることから、繊維素系樹脂、即ちセルロース誘導体が紙との親和性において最も適切と考えられる。紙との親和性が求められる添加剤としては一つに紙力増強剤が挙げられるが、従来、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシメチルセルロースといったセルロース誘導体も使われている。
【0008】
その中でも、最近、注目されているものに、バイオセルロース(略してBC)という微生物(バクテリア)が産生するセルロースがある。BCは、主にある種の酢酸菌(Acetobacter属 xylinum,或いはacetigenus)が産生するセルロースであるが、従来、使われている植物由来のセルロースと比較して特徴的なところが多い。具体的には、植物セルロースに比べて、構造的に、高結晶性で純度が高く、均一な幅の超微細構造であり、重量平均重合度も倍近い。そのため、物性的に水に分散させた場合、高粘性で懸濁安定性に優れており、バイオセルロースをシートにした場合には高い力学強度と弾性が得られる。それらの特性を生かして特開昭62−36467号公報には製紙用の紙力増強剤が、また、特開平8−49188号公報にはバクテリアセルロース含有高力学強度シートが開示されており、紙との高い親和性と高い力学強度及び弾性を付与している。さらに、その応用として、特開昭61−281800号公報に音響振動板が開示されており、従来にない高いヤング率をもつスピーカーコーンとして既に市販されている。
【0009】
その他のBCを紙中に含有させた場合の例としては、特開昭63−295793号公報に開示されているような不透明性及び強度改良や、特開平1−246495号公報に開示されているような填量と微細繊維の歩留まり及び地合の改良等があり、紙に種々の機能を付与する添加剤として大いに期待されている。
【0010】
しかし、前述の方法を含む従来技術によって得られる、即ちバイオセルロースを含有するパルプスラリーを抄紙してなる紙においては、抄紙工程における濾水性の低下や、保水性の上昇に伴う搾水性の低下が生じてしまう問題があった。そのため、バイオセルロースの含有量には低い限界量があった。
【0011】
そこで、バイオセルロースを化学修飾化して、溶剤溶解性を付与し、紙に内添させるのではなく、含浸させれば良いと考えられる。しかし、これまでにそのような利用を検討した報告例はなく、違う用途として、特開平5−293343号公報のバイオセルロース誘導体を利用したガス分散用複合膜や特開平1−199604号公報のバクテリアセルロース含有濾過膜等に利用されている。
【0012】
さて、紙に強度を付与する含浸剤としてはその他に、資源的にも豊富で環境的に負荷が少なくアルカリ加水分解が可能なアルコキシ基を含有するシラン系の無機材料が、強固なシロキサン結合を形成することから注目されている。従来の具体的な方法としては、ウレタン樹脂溶液に粒径0.02〜10μm範囲のシリカ系微粒子を混合させたものを紙に含浸させ、耐水性を向上させるものがあるが、紙と含浸剤の相互作用は、主に水素原子と酸素原子の水素結合のみであり強固な結合とは言えず、紙の構成成分であるセルロースとシリカでは水や熱等の外部因子に対する挙動が異なる為、寸法安定性が低い場合が多い。
【0013】
そこで植物由来の各種セルロース誘導体とオルガノアルコキシシランとの複合化によって、無機物の特徴(高耐熱性、高弾性率、高強度、高耐食性、高耐候性、高耐溶剤性、高密度)と有機物の特徴(高柔軟性、高成形性、低密度)を兼ね備えた複合材料の研究、開発が、最近、各方面で行われている。
【0014】
従来、有機、無機複合材料の多くは、合成高分子の中で多く検討されてきており、例えば、ポリアリレンエーテルケトンとイソシアネート含有シランカップリング剤で尿素結合を有した複合材料や、酢酸ビニルとビニルトリエトキシシランの共重合体、そしてエポキシシランとメタクリロキシシラン、さらにアルコキシチタンとメタクリレートを重合させて複合化し硬化させることでコンタクトレンズ材料がつくられている。
【0015】
一方、植物由来の各種セルロース誘導体と金属アルコキシドとの複合化は、これまで、余り報告例がなく、その中でも多いのは混合(ブレンド)によるゾル、ゲル法であり、その主たる相互作用はセルロース誘導体の水酸基とシロキサン結合の水素結合であり、一部のシラノール基とセルロース分子の官能基が直接反応するものがあると考えられている材料系であり、オルガノシランの有機系炭素に結合した官能基とセルロース誘導体の官能基が反応し共有結合で複合化した材料系の明確な例は殆どなく、ましてや本発明の様なバイオセルロース誘導体とオルガノシランの複合材料の報告例はないに等しく、植物セルロース誘導体を使った近いものでラジカル重合性シリコンとセルロースアセテートの共重合による材料系が報告されている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
この様な状況の中で、近年、資源的、環境的に負荷が少ないことからも需要が増加している紙の欠点である耐水性や強度を付与する含浸剤として、同じく資源的、環境的に負荷が少ないアルコキシシランを利用したものが報告されているが、紙の構成成分であるセルロース分子との相互作用が水素結合のみで弱く寸法安定性に欠け、また複合化というより混合(ブレンド)であるため無機材料の欠点である脆さ等が生じてしまう。しかし、紙の耐水性や強度等の物性向上を目的としたセルロース誘導体とのハイブリッド材料は殆ど報告されていない。
本発明の目的は、既に抄紙工程での内添により高い力学的強度を付与することが公知のバイオセルロースを化学修飾化させ、その誘導体とオルガノシランを有機系の官能基同志の共有結合で複合化させることで、有機、無機材料の特色を兼ね備えた複合材料を含浸薬剤として用い、耐水性及び堅さや剛性、耐熱性、耐食性、耐溶剤性が向上した含浸紙の提供、さらに含浸薬剤の主成分がセルロース誘導体でそれが無修飾でも含有させても紙力増強性のあるバイオセルロースのため、紙との親和力の増大による寸法安定性に優れ、過酷な耐水条件下でも耐えうる含浸紙を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を達成すべく鋭意研究した結果、バイオセルロース誘導体の官能基とオルガノシランの官能基を付加、あるいはグラフト重合させ新規な複合化機能性セルロース誘導体を見出し、それを紙への含浸薬剤として使用することにより、無機物と有機物の両方の特徴を兼ね備えた、即ち耐水性、剛性、耐熱性、寸法安定性等に優れた含浸紙を提供することができた。また、含浸薬剤の幹ポリマーがバイオセルロース誘導体である為、紙との親和力が増大し、従来にない耐水性をもった含浸紙を提供することができた。
【0018】
すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0019】
下記一般式1で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を紙に含浸した後、該セルロース誘導体を加水分解−縮合してシロキサン三次元構造を有するセルロース誘導体として含有していることを特徴とする耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0020】
【化11】
一般式1
【0021】
(式中、R2及びR3はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表し、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、R8、R9及びR10は同一又は異なる炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、R12はエポキシ基を有する化合物が開環した2価の基を表し、pは1以上の整数、qは10以上の整数を表す。)
【0022】
下記一般式2で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を紙に含浸した後、該セルロース誘導体を加水分解−縮合してシロキサン三次元構造を有するセルロース誘導体として含有していることを特徴とする耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0023】
【化12】
一般式2
【0024】
(式中、R2及びR3はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表し、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、R8、R9及びR10は同一又は異なる炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、R12及びR13はそれぞれエポキシ基を有する化合物が開環した2価の基を表し、pは1以上の整数、qは10以上の整数を表す。)
【0025】
下記一般式3で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を紙に含浸した後、該セルロース誘導体を加水分解−縮合してシロキサン三次元構造を有するセルロース誘導体として含有していることを特徴とする耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0026】
【化13】
一般式3
【0027】
(式中、R2及びR3はそれぞれ同一又は異なるエステル基を表し、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、R8、R9及びR10はそれぞれ同一又は異なる炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、R12はエポキシ基を有する化合物が開環した2価の基を表し、pは1以上の整数を表し、qは10以上の整数を表す。)
【0028】
前記一般式1、一般式2及び一般式3で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体は微生物産生バイオセルロース誘導体を出発原料として得られることを特徴とする請求項1〜3記載のいずれか1に記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0029】
前記微生物産生バイオセルロース誘導体が一般式4で表されることを特徴とする請求項4記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0030】
【化14】
一般式4
【0031】
(式中、R1及びR4はそれぞれヒドロキシル基又は同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基若しくは硝酸エステル基を表し、R1及びR4の少なくとも1つはヒドロキシル基であり、R2、R3、R5及びR6はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表し、nは5以上の整数を表す。)
【0032】
前記一般式1記載のシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体は、前記一般式4で表される微生物産生バイオセルロース誘導体に下記一般式5で表されるジカルボン酸無水物を反応させて下記一般式6で表されるジエステル化セルロース二塩基酸エステルを生成し、次いで下記一般式7で表されるシランカップリング剤と反応させて得らたものであることを特徴とする請求項1記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0033】
【化15】
一般式5
【0034】
(式中、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表す。)
【0035】
【化16】
一般式6
【0036】
(式中、R2、R3、R5及びR6はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表し、エステル基の置換度は0.3以上1.0以下であり、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、nは5以上の整数を表す。)
【0037】
【化17】
一般式7
【0038】
(式中、R8、R9、R10は同一又は異なる炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、R11はエポキシ基を有する化合物の1価の基を表す。)
【0039】
前記一般式2記載のシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体は、前記一般式6で表されるジエステル化バイオセルロース二塩基酸モノエステルに前記一般式7で表されるシランカップリング剤とエポキシ基を有する化合物を反応させて得らたものであることを特徴とする請求項2記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0040】
前記一般式3記載のシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体は、前記一般式6のジエステル化バイオセルロース二塩基酸モノエステルに対して前記一般式5のジカルボン酸無水物と該ジカルボン酸無水物と同モル濃度の前記一般式7のシランカップリング剤を同時に反応させる場合又は前記一般式4の微生物産生バイオセルロース誘導体に対して前記一般式5のジカルボン酸無水物と該ジカルボン酸無水物と同モル濃度の前記一般式7のシランカップリング剤を同時に反応させる場合により得られたものであることを特徴とする請求項3記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0041】
紙に含浸させた前記一般式1で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を加水分解−縮合して得られたシロキサン三次元構造を有するセルロース誘導体は下記一般式8で表される構造単位を有することを特徴とする請求項1記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0042】
【化18】
一般式8
【0043】
(式中、R2及びR3はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表し、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、R12はエポキシ基を有する化合物が開環した2価の基を表し、pは1以上の整数、qは10以上の整数を表す。)
【0044】
紙に含浸させた前記一般式2で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を加水分解−縮合して得られたシロキサン三次元構造を有するセルロース誘導体は下記一般式9で表される構造単位を有することを特徴とする請求項2記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0045】
【化19】
一般式9
【0046】
(式中、R2及びR3はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表し、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、R12はエポキシ基を有する化合物が開環した2価の基を表し、R13はジカルボン酸無水物又はエポキシ基を有する化合物の2価の基を表し、pは1以上の整数、qは10以上の整数を表す。)
【0047】
紙に含浸させた前記一般式3で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を加水分解−縮合して得られたシロキサン三次元構造を有するセルロース誘導体は下記一般式10で表される構造単位を有することを特徴とする請求項3記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【0048】
【化20】
一般式10
【0049】
(式中、R2及びR3はそれぞれ同一又は異なるエステル基を表し、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、R12はエポキシ基を有する化合物が開環した2価の基を表し、pは1以上の整数を表し、qは10以上の整数を表す。)
【0050】
本発明に関わるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体の主な特徴は、紙へ含浸させた後、シランカップリング剤のアルコキシ基(一般式7の−OR8、−OR9、−OR10)を縮合、硬化し強固な、しかも耐熱性のあるシロキサン三次元構造を形成することと、グラフト重合させたバイオセルロース誘導体が有機材料としての特徴である柔軟性を付与しシロキサン結合の欠点である脆さを補っている。そして、紙の構成成分であるセルロース分子を本発明に関わる含浸薬剤は基本骨格に有している為、紙との親和性を増大させ寸法安定性を向上させている。そのセルロース骨格は、バイオセルロースである為、その特性は植物セルロースよりも高い。さらに、シロキサン三次元構造を有している為、耐候性、耐溶剤性に優れている。
【0051】
これらのことは、PETフィルム等にワイヤーバーで塗工した際、単なるアルコキシシランである場合には、加水分解によって縮合させた塗膜は分散状態で形成できないのに対して、本発明のシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を同じく加水分解によって縮合させた塗膜は一様に形成でき、且つ溶剤に不溶になっていることからも明らかである。
【0052】
本発明の幹ポリマーであるバイオセルロースの原料は、ホヤやバロニアから得られるものでも良いが、各方面で研究されている酢酸菌(Acetobacter属 xylinum,或いはacetigenus)産生のものが好適と言える。この酢酸菌産生バイオセルロースは、静置培養、攪拌培養、振とう培養、又はそれらの組み合わせによって得ることが出来る。好ましくは、通気攪拌培養によって得られたバイオセルロースである。
【0053】
請求項記載の一般式4のバイオセルロース誘導体は、公知の方法で合成するが、一般式5のジカルボン酸無水物との反応はセルロース骨格で第6位の水酸基と反応する傾向が強い為、一般式4のセルロース誘導体は、各種カルボン酸エステルが操作し易いと考えられる。なぜなら、ジカルボン酸エステル化セルロースはトリカルボン酸エステル化セルロースを加水分解させて合成するもので、その場合一般式4の式中のR1とR4にあたる第6位の置換度が優先的又は選択的に水酸基に戻るからである。ニトロ(硝酸エステル)セルロースは、硝化混酸組成比や反応時間で置換度の制御を行う場合が多く、必ずしも第6位が水酸基とは限らず逆に硝酸エステル基であって一般式4の式中のR2やR3、或いはR5やR6の第2位や第3位の置換基が水酸基になっている部位が全構造中に含まれているが、第2位や第3位の水酸基は第6位の水酸基に比べて非常に反応性が低いので、ジカルボン酸無水物とは反応しないことが考えられる。そのため、カルボン酸エステル化バイオセルロースを含めて第6位の水酸基に対してのみ示した。また、ニトロセルロースの利点としては、各種の溶剤に溶解することから、本発明に関わるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体も溶剤溶解性が向上する効果がある。溶剤溶解性のよいセルロース誘導体としては、その他にセルロースアセテートプロピオネートやセルロースジプロピオネート、又はセルロースアセテートブチレートやセルロースブチレート等がある。またジカルボン酸無水物との反応によるカルボキシル基の導入は、立体的に反応性が高い官能基を付与する目的がある。この場合一般式5の(R7)は、炭素数2〜8の飽和脂肪族又はシクロヘキシル基のような飽和脂環式脂肪族、或いはフェニル基、ナフチル基のような芳香族が望ましく、無水マレイン酸を反応させる場合のような不飽和脂肪族でも可能だが、本発明の目的から言って不飽和二重結合は副反応が予想されるので余り適当ではない。また、各種エステル基置換度は溶剤溶解性や反応性、含浸紙の物性を考慮して、D.S.=2.0以上2.7以下が望ましいと考えられる。
【0054】
一般式7のシランカップリング剤のR11は反応性を有する官能基であり、エポキシシクロヘキシル基、グリシジル基等のエポキシ基を含む脂肪族基あるいは芳香族基であることが望ましい。一般式6のジエステル化バイオセルロース二塩基酸エステルと一般式7のシランカップリング剤との反応は、溶剤を使用した均一反応系で行われ、重合方法は各々の官能基に適した公知の方法で酸又は塩基による縮合や開環重縮合、イオン重合等により行われるが、アルコキシ基が加水分解し縮合してシロキサン三次元構造を形成しない条件であることが望ましい。
【0055】
さて、前記したように、本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体は、原料であるセルロースから出発して三段階の反応手順を必要としており、またシランカップリング剤とのグラフト化反応においては、その添加量を増やしていくとセルロース分子間の架橋が起こりゲル化してしまう傾向がある。この場合、各反応段階でセルロース分子に対して均一に誘導化されることが望ましく、原料が太い繊維質の植物セルロースよりも均一な超微細骨格のバイオセルロースの方が適している。
【0056】
請求項7記載のエポキシ基含有化合物としては、シランカップリング剤の官能基(一般式7の−R11)と反応するものが好ましく、ゲル化しない二官能性試薬が望ましい。具体的には、エピクロロヒドリンやジグリシジルエーテルのようなエポキシド化合物である。
【0057】
請求項3記載の一般式3は一般式5の無水ジカルボン酸と一般式7のエポキシ基含有シランカップリング剤を同モル濃度で反応させてグラフト化させる、いわゆる木材セルロースの可逆化技術として知られているオリゴエステル化反応となる。この場合、塑一般式6のジエステル化バイオセルロース二塩基酸モノエステルに無水ジカルボン酸とエポキシ基含有シランカップリング剤を同モル濃度でオリゴエステル化する場合と、未だカルボキシル基の導入を行っていない一般式4のバイオセルロースジエステル類に無水ジカルボン酸とエポキシ基含有シランカップリング剤を直接オリゴエステル化反応させて、グラフト重合させる(以下は、区別する為にオリゴエステル化と呼ぶ)場合が可能である。後者の場合には請求項1、2記載のように微生物産生バイオセルロース原料から出発して三段階の反応が必要であったが、二段階で足りる利点を有している(請求項3記載)。しかし、オリゴエステル化させる反応条件としては前者の方が適している。
【0058】
また、このオリゴエステル化反応の条件は、溶媒として非プロトン性の極性溶媒、特にN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のような塩基性のものが好適であり、触媒として、N,N−ジメチルベンジルアミンやトリエチルアミン等の三級アミンを用いる。
【0059】
さて、本発明に関わる含浸液の主成分であるシランカップリング剤のアルコキシシリル基を加水分解させ加熱処理による縮合でシロキサン結合を形成させうる条件としては、一般的にゾル、ゲル法の知見から、酸又はアルカリを用いpH=4以下、あるいはpH=10以上の条件下で縮合が始まる。具体的には、酸として塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸等が使用できる。アルカリとしては、処理後に揮発によって除去できるアンモニアやヒドロキシアミン等が使用できる。特に、p−トルエンスルホン酸2水和物を使用した場合には、有機系のブレンステッド酸(プロトン供与体)であることから有機溶媒に可溶であり、その含浸液は有機溶媒で統一することができる。
【0060】
また、この場合、本発明のシランカップラーグラフト化セルロース誘導体のアルコキシ基の加水分解は、空気中の水分の影響もあるがp−トルエンスルホン酸に配位した2分子の結晶水によって加熱乾燥処理時に加水分解が起こり同時にp−トルエンスルホン酸の触媒効果により縮合が起こるものと考えられ、液の安定性が良いと考えられる。また、含浸液の溶剤を有機系溶媒だけで統一できる為、本発明に関わるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体、或いはシランカップラーオリゴエステル化バイオセルロース誘導体の固形分比(N.V.)を上げることができる。
【0061】
また、本発明に関わる含浸薬剤であるシランカップリング剤をグラフト化或いはオリゴエステル化されたバイオセルロース誘導体は固体であり、一度単離してから含浸に適当な溶剤に溶解させることも可能である。しかし、単離されたシランカップリング剤をグラフト化させたバイオセルロース誘導体はアルコキシシリル基のアルキル基、即ち一般式7のR8,R9,R10の炭素数によっても安定性は異なるが、空気中に放置しておくと経時的に加水分解−縮合してゲル化していく傾向がある。一般的にはアルキル鎖の炭素数が多い程、加水分解−縮合し難い。その為、含浸薬剤を長期保存する場合には、シランカップリング剤をグラフト化、或いはオリゴエステル化の反応を行った反応液の状態で保存するのが望ましい。この場合、丁度、ラッカーのような形態と言える。紙に含浸させる際には、その反応液にアルコキシシリル基を加水分解−縮合させ得る前述のような触媒を添加して、紙に含浸し加熱乾燥させれば、本発明の耐水性、及び剛性に優れた含浸紙が製造される。
【0062】
さらに、詳しく本発明に関わる含浸紙の製造方法を説明すると、シランカップラーグラフト化、或いはオリゴエステル化バイオセルロース誘導体を有機溶剤に溶解して含浸液を調整するか、シランカップリング剤をバイオセルロース誘導体にグラフト化、或いはオリゴエステル化させた反応液をそのまま含浸液とする2つの方法がある。
【0063】
ここで、用いる有機溶剤としては、シランカップラーグラフト化、或いはオリゴエステル化バイオセルロース誘導体を溶解するものであれば良く特に限定はされないが、含浸液としての塗液安定性を考慮し余り揮発性の高い(低沸点)溶剤は好ましくない。また、人体に害の少ないものが望ましい。具体的には、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、エタノール、プロパノールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素、酢酸エチルのようなエステル類、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
本発明に使用する紙としては、和紙、模造紙、不織布、上質紙、アート紙、コート紙、純白ロール紙、バーチメント紙、クラフト紙、又はダンボール用途としてジュートライナー、クラフトライナー、コートライナー等が挙げられる。
【0065】
次に、本発明に関わる含浸薬剤の塗工方法としては、紙表面に通常のロールコート法、ドクターブレードコート法、ナイフエッジコート法、カーテンコート法、グラビアコート法、バーコート法、リバースコート法、キッスコート法等のいずれを使用しても含浸塗工することができる。なお、塗布速度、乾燥条件は特に限定されるものではないが、支持体の紙や含浸液に悪影響を及ぼさない範囲で行うのが望ましい。
【0066】
本発明に関わる含浸薬剤の紙基材への有効な含浸量は通常1〜25g/m2で、標準としては、2g/m2(乾燥重量基準)という紙中含浸率(原紙に対する乾燥含浸薬剤の量比%)では約0.6%に相当する非常に少ない含浸量で、紙に優れた耐水性、堅さ、剛性等を付与する。もちろん、含浸量の増加により、耐水性や、堅さ、剛性はさらに向上する。そして、シロキサン三次元構造の紙中含有量の増加で耐熱性も付与されてくる。含浸量または塗工量は、原紙及び含浸紙を120℃の電気乾燥機中で2時間置くことにより絶乾状態にして、含浸紙から同面積の原紙の重量を差し引き求めた。
【0067】
【作用】
本発明の環境に対応した高耐水、高剛性含浸紙は、資源的にも環境的にも負荷の少ない材料系で構成されており紙の物性の欠点を改善し向上させたものである。即ち、紙との親和性が最も高く力学的強度向上も考えられるバイオセルロース誘導体を幹ポリマーとし、それにシランカップリング剤を有機的な共有結合でグラフト化させ、或いはオリゴエステル化させ、紙に含浸後、酸によるアルコキシシリル基の加水分解−縮合によってシロキサン三次元構造を有した含浸紙である。これにより、無機物と有機物の特性を兼ね備え、紙の欠点とされてきた耐水性を大幅に改善し、且つ堅さ、剛性を向上させ、さらには耐熱性や耐候性、耐溶剤性を付与するものである。
【0068】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づき、さらに具体的に説明する。
【0069】
バイオセルロース原料の調整(酢酸菌の通気攪拌培養によるバイオセルロースの調整)
酢酸菌(Acetobacter属 xylinum)をグリセロールストックよりCSL(コーンスチープリカー)−Fru(フラクトース)培地100mlに仕込んだ750ml容ルーフラスコに1%植菌し、28℃で3日間静地培養した。培養後ルーフラスコをよく振って菌体をセルロース膜よりはがした後、菌液12.5mlを112.5mlの培地を含む500mlフラスコに植菌し、28℃180rpmの条件で3日間培養した。培養物をブレンダーにより無菌的に離解し、その60mlを540mlのCSL−Fru培地を仕込んだ容量1リットルのジャーファーメンター(培養槽)に植菌し、pHをNH3ガスおよび1規定H2SO4で4.9〜5.1に制御しながら、かつ溶存酸素量(DO)が3.0%以上になるように回転数を自動制御しながら、メイン培養を行った。
【0070】
なお、以上のバイオセルロース原料の調整で用いたCSL−Fruの組成は下記表1〜表3の通りである。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
培養終了後、得られた培養液を酢酸緩衝液で約5倍に希釈した後、遠心分離して沈殿物を回収した。沈殿を蒸留水で最初の培養液量の約8倍に希釈後、80℃で20分間加熱し、加熱後遠心分離により沈殿物を回収した。沈殿物を同じく8倍量の0.1規定NaOHに懸濁し80℃で20分間加熱し、加熱後遠心分離して沈殿物を回収することによりセルロースの洗浄を行った。同様の洗浄を3回行うことにより精製バイオセルロースを得た。
【0075】
前項で得られた湿潤バイオセルロース10g(乾燥重量:0.066g)を水1.5リットル中に加え、抄紙用の離解装置(2リットル容)で3000回/minの回転数下、5分間離解し0.66%のバイオセルロースのスラリー液を得た。
【0076】
本発明の関わるシランカップラーグラフト化、或いはオリゴエステル化バイオセルロース誘導体の出発原料は、以上の様に得られたスラリー状のバイオセルロースをDMF(ジメチルホルムアミド)やアセトニトリルのような水易溶性の非プロトン性極性溶媒中で分散させ、吸引濾過することによってスラリー中の水を極性有機溶媒で置換し反応に使った。
【0077】
LBKPセルロースの原料調整
比較用に検討した植物セルロース原料の調整方法は、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)湿潤シートをJIS−P8209に準拠して離解し、JIS−P8121に準拠して叩解を行い、カナダ式標準型濾水度で411csfである0.3%のLBKPセルロースのスラリー液を得た。
【0078】
比較用に反応を検討した、シランカップラーグラフト化、或いはオリゴエステル化植物セルロース誘導体の出発原料は、以上の様に得られたスラリー状のLBKPセルロースをバイオセルロースと同様にDMF(ジメチルホルムアミド)やアセトニトリルのような水易溶性の非プロトン性極性溶媒中で分散させ吸引濾過することによってでスラリー中の水を極性有機溶媒で置換し反応に使った。
【0079】
製造例−1
(製造例−1〜4までジアセチル化バイオセルロースコハク酸モノエステルとエポキシシクロヘキシル基含有シランカップリング剤の複合化体の製造例)
100mlの三口フラスコに1g(β−1,4−グルコース単位のmol濃度;約2.67mmol)のジアセチル化バイオセルロースコハク酸モノエステルをアセトニトリル100mlに溶解させ、セルロース誘導体のカルボン酸当量の等molに相当する0.64gの2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)を仕込み、エポキシ基開環架橋用触媒としてSnCl2(塩化第一スズ)を0.0003mol/gの濃度でメタノールに溶解させたものをバイオセルロース誘導体に対して0.0005mol量添加し、スターラーで攪拌しながら、約80℃で30分間反応させると、本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体の一つが製造できる。
【0080】
製造例−2
製造例−1のグラフト化させる2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)の添加量をセルロース誘導体のカルボン酸当量に対して2倍molに増加させた以外、前記製造例−1と同様に製造した本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体。
【0081】
製造例−3
製造例−1のグラフト化させる2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)の添加量をセルロース誘導体のカルボン酸当量に対して3倍molに増加させた以外、前記製造例−1と同様に製造した本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体。
【0082】
製造例−4
製造例−1のグラフト化させる2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)の添加量をセルロース誘導体のカルボン酸当量に対して4倍molに増加させた以外、前記製造例−1と同様に製造した本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体。しかし、これは溶剤不溶でゲル化した。
前記製造例−4でゲル化したことは、グラフト化させるシランカップリング剤の量を増加していくと起こったことであることから、バイオセルロース誘導体同志がシランカップリング剤により橋架けが起こった為と考えられる。このことから、本反応系でのシランカップリング剤の複合化による含浸剤の用途に対しては、セルロース誘導体のカルボン酸当量に対して4倍molが限度であることが判った。
【0083】
製造例−5
(製造例−5〜6までジアセチル化LBKPセルロースコハク酸モノエステルとエポキシシクロヘキシル基含有シランカップリング剤の複合化体の製造例)
300mlの三口フラスコに1g(β−1,4−グルコース単位のmol濃度:約2.67mmol)のジアセチル化LBKPセルロースコハク酸モノエステルをアセトニトリル100mlに溶解させ、LBKPセルロース誘導体のカルボン酸当量の等molに相当する0.64gの2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)を仕込み、エポキシ基開環架橋用触媒としてSnCl2(塩化第一スズ)を0.0003mol/gの濃度でメタノールに溶解させたものをLBKPセルロース誘導体に対して0.0005mol量添加し、スターラーで攪拌しながら、約80℃で30分間反応させると、本発明に関わるシランカップラーグラフト化LBKPセルロース誘導体の一つが製造できる。
【0084】
製造例−6
製造例−5のグラフト化させる2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)の添加量をLBKPセルロース誘導体のカルボン酸当量に対して2倍molに増加させた以外、前記製造例−1と同様に製造した本発明に関わるシランカップラーグラフト化LBKPセルロース誘導体。しかし、これは溶剤不溶でゲル化した。
前記製造例−6でゲル化したことは、製造例−5と同様にグラフト化させるシランカップリング剤の量を増加していくと起こったことであることから、LBKPセルロース誘導体同志がシランカップリング剤により橋架けが起こった為と考えられる。このことから、本反応系でのシランカップリング剤の複合化による含浸剤の用途に対しては、LBKPセルロース誘導体のカルボン酸当量に対して1倍molが限度であることが判った。
【0085】
製造例−1から6までの結果から、バイオセルロースの方がLBKPよりもシランカップリング剤のグラフト量を増やすことが可能であり、バイオセルロースの構造的特性から、LBKPのような植物セルロースに比べ反応が均一に進行すること推察された。
また、本製造例では、ジアセチル化セルロース誘導体にシランカップリング剤をグラフト化させて、溶剤溶解性による構造的変化(ゲル化)を調べているが、ジアセチル化セルロース誘導体は元来溶剤溶解性が低い為、他の誘導体(ニトロ化セルロース)等の場合には、グラフト化可能な量が増えることが判っている。
【0086】
製造例−7(ジアセチル化バイオセスロースコハク酸モノエステルと無水コハク酸、及びエポキシシクロヘキシル基含有シランカップリング剤のオリゴエステル化による複合体の製造例)
300mlの三口フラスコに4g(β−1,4−グルコース単位のmol濃度:約10.67mmol)のジアセチル化バイオセルロースモノコハク酸エステル化体をDMF60mlに溶解させ、バイオセルロース誘導体のカルボン酸当量の2倍molに相当する2.13gの無水カルボン酸と、同じくバイオセルロース誘導体のカルボン酸当量の2倍molに相当する5.26gの2−(3,4−2−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)を同時に仕込み、オリゴエステル化用触媒としてN,N−ジメチルヘンジルアミンをジアセチル化バイオセルロースモノコハク酸エステル化体に対して、0.001mol量添加し、スターラーで攪拌しながら、約70℃で1時間反応させると、本発明に関わるシランカップラーオリゴエステル化バイオセルロース誘導体の一つが製造できる。この時の反応生成物の理論収量に対する収率は約48%であった。
【0087】
製造例−8(ジアセチル化LBKPセルロースコハク酸と無水コハク酸、及びエポキシシクロヘキシル基含有シランカップリング剤のオリゴエステル化による複合体の製造例)
製造例−7の反応させるセルロース誘導体をLBKP由来のジアセチル化コハク酸モノエステル化にする以外、前記製造例−7と同様に製造した本発明に関わるシランカップラーグラフト化LBKPセルロース誘導体。
【0088】
次に、本発明のシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体を利用した含浸紙の実施例を示す。
【0089】
実施例−1
製造例−1で製造した本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体をアセトンに固形分比(N.V.)=10wt%で溶解させ、それに硬化剤(東洋インキ(株)製、p−トルエンスルホン酸2水和物含有50wt% i−プロパノール溶液)をバイオセルロース誘導体に対して20wt%添加し攪拌したものを日本紙業(株)製のカップ原紙(坪量;320g/m2)のノンクレイ面にワイヤーバーで塗工絶乾量2g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0090】
実施例−2
製造例−3で製造した本発明のシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体を使用する以外、前記実施例−1と同じ。
【0091】
実施例−3−1
製造例−6で製造した本発明に関わるシランカップラーオリゴエステル化バイオセルロース誘導体を酢酸エチルに固形分比((N.V.)=10wt%で溶解させ、それに硬化剤(東洋インキ(株)製、p−トルエンスルホン酸2水和物含有50wt% i−プロパノール溶液)をバイオセルロース誘導体に対して20wt%添加し攪拌したものを日本紙業(株)製のカップ原紙(坪量;320g/m2)のノンクレイ面にワイヤーバーで塗工絶乾量4g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0092】
実施例−3−2
含浸用原紙を宇都宮製紙(株)のクラフト原紙(坪量:310g/m2)に替えた以外、前記実施例−3−1と同じ。
【0093】
比較例−1
本発明に関わる含浸液を塗工しない実施例−1,2で用いた日本紙業(株)製のカップ原紙を比較例−1とした。
【0094】
比較例−2
製造例−5で製造した物性比較用のシランカップラーグラフト化LBKPセルロース誘導体をアセトンに固形分比(N.V.)=10wt%で溶解させ、それに硬化剤(東洋インキ(株)製、p−トルエンスルホン酸2水和物含有50wt%i−プロパノール溶液)をLBKP誘導体に対して20wt%添加し攪拌したものを日本紙業(株)製のカップ原紙(坪量;320g/m2)のノンクレイ面にワイヤーバーで塗工絶乾量2g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0095】
比較例−3
本発明に関わる含浸液を塗工しない実施例−3−2で用いた宇都宮製紙(株)のクラフト原紙を比較例−3とした。
【0096】
比較例−4−1
比較例3として、本発明に関わる含浸薬剤の原料である2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、商品名S530)を酢酸エチルに固形分比(N.V.)=10wt%で溶解させ、それに硬化剤(東洋インキ(株)製、p−トルエンスルホン酸2水和物含有50wt% i−プロパノール溶液)をシランカップリング剤に対して20wt%添加し攪拌したものを日本紙業(株)製のカップ原紙(坪量;320g/m2)のノンクレイ面にワイヤーバーで塗工絶乾量4g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0097】
比較例−4−2
含浸用原紙を宇都宮製紙(株)のクラフト原紙(坪量:310g/m2)に替えた以外、前記実施例−3−1と同じ。
【0098】
比較例−5−1
製造例−7で製造した物性比較用のシランカップラーオリゴエステル化LBKPセルロース誘導体を酢酸エチルに固形分比(N.V.)=10wt%で溶解させ、それに硬化剤(東洋インキ(株)製、p−トルエンスルホン酸2水和物含有50wt% i−プロパノール溶液)をLBKP誘導体に対して20wt%添加し攪拌したものを日本板紙(株)製のカップ原紙(坪量;320g/m2)のノンクレイ面にワイヤーバーで塗工絶乾量4g/m2になるように塗工し、120℃で1分間乾燥し含浸紙を得た。
【0099】
比較例−5−2
含浸用原紙を宇都宮製紙(株)のクラフト原紙(坪量:310g/m2)に替えた以外、前記比較例−4−1と同じ。
【0100】
試験例−1(含浸紙の強度、剛性評価試験)
含浸紙の紙強度と剛性を評価する為にJIS P8125「荷重曲げ方法による板紙のこわさ試験方法」を参考にして、吉沢工業(株)製の「曲げこわさ試験機BST−150M」を用いて評価した。測定方法は、紙試料を塗工方向に対し平行に縦6cm×横4cmに切り取り、60℃の環境下で紙の片端を固定して紙中央部を折り曲げることによって、降伏値(gf)とその時の角度(初期勾配;deg)を求めた。降伏値は紙の折れるときの強度、即ち堅さ、初期勾配は紙の折れ難さ(腰)、即ち靭性、剛性の評価と考えられる。測定結果を表−4に記載する。
【0101】
【表4】
表−4 紙の堅さと剛性の評価結果−1
【0102】
表−4の結果から、本発明のシランカップリング剤とバイオセルロース誘導体を共有結合によりグラフト化させた複合材料の含浸薬剤によるシロキサン三次元構造を内部に有した含浸紙(実施例−1,2)と何も含浸されていないカップ原紙(比較例−1)の物性を比較すると、塗布量が2g/m2前後という非常に少ない乾燥塗布量でも、明らかに含浸効果による降伏値、及び初期勾配の向上が認められ、堅さ、剛性共に向上していることが判る。また、植物セルロース(LBKP)由来のシランカップリング剤を同じようにグラフト化させた複合材料の含浸薬剤によるシロキサン三次元構造を内部に有した含浸紙(比較例−2)との比較でも、バイオセルロース由来の含浸紙(実施例−1、2)の方が堅さ、剛性ともに優れており、原料のセルロースとしての力学的特性の差が現れている。
これは、紙に堅さを付与するシロキサン結合だけでなく、紙との親和性を向上させた本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体がより高い剛性を付与させたと考えられる。
【0103】
【表5】
表−5 紙の堅さと剛性の評価結果−2
【0104】
表-5の結果から、やはり本発明のシランカップリング剤をオリゴエステル化させたバイオセルロース誘導体の含浸紙(実施例−3−1,2)は、なにも塗工してない原紙(比較例−1,3)に比べて、堅さ、及び剛性が向上していることが判った。(尚、比較例−1の値が表-1と異なるのは、紙のLot差によるものと考えられ、各表の測定は同じLotの紙で測定を行っている)。また、比較例−4−1、2のシランカップリング剤単体の含浸紙と、本発明のシランカップリング剤をオリゴエステル化させたバイオセルロース誘導体の含浸紙(実施例−3−1、2)を比べても、本発明のものの方が力学的強度が向上していることが判った。さらに、植物セルロース(LBKP)由来のシランカップリング剤を同じようにオリゴエステル化させた複合材料の含浸薬剤によるシロキサン三次元構造を内部に有した含浸紙(比較例−5−1、2)との比較でも、バイオセルロース由来の含浸紙(実施例−3−1、2)の方が堅さ、剛性ともに優れており、この場合でも前記表−4と同様に原料のセルロースとしての力学的特性の差が現れており、バイオセルロースの効果が現れている。
【0105】
試験例−2(含浸紙の吸水度、撥水度試験)
含浸紙の表面吸水度と撥水度を評価する為にJIS P8140「紙及び板紙の吸水度試験方法(コップ法)」とJIS P8137「紙及び板紙のはっ水度試験方法」を行った。本方法により、紙本来の短所である低い耐水性に対する含浸紙の改善効果を測定することが出来る。測定結果を表−6に記載する。
【0106】
【表6】
表−6 吸水度と撥水度の評価結果−1
【0107】
表−6の結果から、比較例−1の原紙よりも実施例−1,2の本発明の含浸紙の方が、吸水率も撥水度もかなり向上していることが判る。また、実施例−1から2へとシランカップリング剤のグラフト量が増えるに従い、吸水率がさらに低下する効果が認められた。また、植物セルロースを使用したシランカップラーグラフト化誘導体の場合(比較例−2)、本発明のバイオセルロースを使った含浸紙で同じグラフト量のもの(実施例−1)とほぼ同等の吸水度を示しているが、グラフト化可能量の差から含浸紙の耐水性向上の限界値に差が生まれている。
【0108】
【表7】
表−7 吸水度と撥水度の評価結果−2
【0109】
表−7の結果から、比較例−1,3の原紙よりも実施例−3−1、2の本発明の含浸紙の方が、吸水率も撥水度もかなり向上していることが表−6の結果と同様に判る。(なお、比較例−1の値が表−6と表−7で異なるのは、紙のLot差によるものと考えられ、各表の測定は同じLotの紙で測定を行っている)。また、比較例−4−1、2のシランカップリング剤単体の含浸紙と、本発明のシランカップリング剤とオリゴエステル化させたバイオセルロース誘導体の含浸紙(実施例−3−1、2)を比べても、本発明のものの方が吸水率、及び撥水度が向上していることが判った。植物セルロース(LBKP)由来のシランカップリング剤を同じようにオリゴエステル化させた複合材料(比較例−5−1、2)との比較は、バイオセルロース由来の含浸紙(実施例−3−1、2)と本物性では差異が認められなかった。
【0110】
試験例−3(含浸紙の耐沸騰水性試験)
含浸紙の含浸面における耐水性の評価として、耐沸騰水性をJIS K−5400「塗料の一般試験8.20 耐沸騰水性」を参考にして、沸騰水中に30分とした以外は、同様に試験した。評価結果を表−8,9に記載する。
【0111】
【表8】
表−8 耐沸騰水性の評価結果
【表9】
表−9 耐沸騰水性の評価結果−2
【0112】
(注1)表中 ◎: 極めて良好
○: 良好
△: やや良好
×: 不良
【0113】
表−8の結果から、実施例−1、2の本発明のシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体含浸紙は、非常に少量の塗布量にも関わらず、耐沸騰水性は良好で含浸紙の層間剥離もなく本発明に関わるシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体の紙への高い親和力から紙力増強剤としても働いていることが判った。また、比較例−2の植物セルロース(LBKP)由来の同じシランカップラーグラフト化体の含浸紙(比較例−2)は、本発明のバイオセルロース由来のもの(実施例−1、2)に及ばなかった。
【0114】
表−9の結果から、実施例−3−1,2の本発明のシランカップラーオリゴエステル化バイオセルロース誘導体含浸紙は、原紙(比較例−1,3)に比べて非常に向上していることを確認した。(なお、原紙では、カップ原紙(比較例−1)の方がクラフト原紙(比較例−3)よりも耐水性が高く、その影響が他の含浸紙にも現れている)。シランカップリング剤単体の含浸紙(比較例−4−1、2)については原紙に比べて多少変化が少ない効果に留まった。また、植物セルロース(LBKP)由来の同じシランカップラーオリゴエステル化体の含浸紙(比較例−4−1、2)は本発明のバイオセルロース由来のもの(実施例−3−1、2)に、表−8の結果と同様に及ばなかった。以上のことから、本発明のシランカップラーグラフト化或いはオリゴエステル化バイオセルロース誘導体含浸紙は、その塗布量を増加、あるいは紙へ全層含浸することによって、さらに耐水性が向上することが示唆された。
【0115】
【発明の効果】
本発明に関わるのシランカップラーグラフト化或いはオリゴエステル化バイオセルロース誘導体含浸紙は、環境に負荷を与えない材料系で構成されており、即ちバイオセルロース誘導体の官能基とオルガノシランの官能基を反応させ有機的な共有結合で複合化させたアルコキシシリル基を有した機能性バイオセルロース誘導体を含浸したもので、さらに含浸後アルコキシシリル基を加水分解−縮合させることで強固なシロキサン三次元構造が形成されている。これにより、従来、紙への内添により力学的強度、及びセルロース繊維間強度を向上させていたバイオセルロースの抄紙工程における濾水性の低下、保水性の上昇という問題もなく、紙の堅さや剛性を向上させるとともに、耐吸水性や撥水性、耐沸騰水性も向上しており、耐水性が優れている。また、バイオセルロース誘導体との複合材料であることからバイオセルロースの均一な繊維幅で構成された超微細構造の特性から、植物セルロースよりもシランカップリング剤のグラフト化可能量も多く、また、その剛性の高さからシロキサン結合の短所である脆性も改善している。
さらに、紙の構成成分である純粋なセルロース分子を幹ポリマーとし、バイオセルロースの紙との親和性の良さから紙との結着性が非常に高く、寸法安定性に優れて、従来にない耐水性を有している。従って、本発明のシランカップラーグラフト化バイオセルロース誘導体含浸紙は、飲料缶や食品缶に使用されるアルミニウムに代替可能な高耐水剛性紙であり、レトルト殺菌処理のような過酷な耐水条件下にも耐えうる紙として適している。
Claims (11)
- 下記一般式1で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を紙に含浸した後、該セルロース誘導体を加水分解−縮合してシロキサン三次元構造を有するセルロース誘導体として含有していることを特徴とする耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【化1】
一般式1
(式中、R2及びR3はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表し、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、R8、R9及びR10は同一又は異なる炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、R12はエポキシ基を有する化合物が開環した2価の基を表し、pは1以上の整数、qは10以上の整数を表す。) - 下記一般式2で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体を紙に含浸した後、該セルロース誘導体を加水分解−縮合してシロキサン三次元構造を有するセルロース誘導体として含有していることを特徴とする耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【化2】
一般式2
(式中、R2及びR3はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表し、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、R8、R9及びR10は同一又は異なる炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、R12及びR13はエポキシ基を有する化合物が開環した2価の基を表し、pは1以上の整数、qは10以上の整数を表す。) - 前記一般式1、一般式2及び一般式3で表されるシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体は微生物産生バイオセルロース誘導体を出発原料として得られることを特徴とする請求項1〜3記載のいずれか1に記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
- 前記一般式1記載のシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体は、前記一般式4で表される微生物産生バイオセルロース誘導体に下記一般式5で表されるジカルボン酸無水物を反応させて下記一般式6で表されるジエステル化バイオセルロース二塩基酸エステルを生成し、次いで下記一般式7で表されるシランカップリング剤と反応させて得らたものであることを特徴とする請求項1記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
【化5】
一般式5
(式中、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表す。)
【化6】
一般式6
(式中、R2、R3、R5及びR6はそれぞれ同一若しくは異なる炭素数1〜4の低級アルキルエステル基又は硝酸エステル基を表し、エステル基の置換度は0.3以上1.0以下であり、R7は炭素数2〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はナフチル基を表し、nは5以上の整数を表す。)
【化7】
一般式7
(式中、R8、R9、R10は同一又は異なる炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、R11はエポキシ基を有する化合物の1価の基を表す。) - 前記一般式2記載のシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体は、前記一般式6で表されるジエステル化バイオセルロース二塩基酸モノエステルに前記一般式7で表されるシランカップリング剤とエポキシ基を有する化合物を反応させて得らたものであることを特徴とする請求項2記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
- 前記一般式3記載のシランカップラーグラフト重合バイオセルロース誘導体は、前記一般式6で表されるジエステル化バイオセルロース二塩基酸モノエステル又は前記一般式4で表される微生物産生バイオセルロース誘導体に対して、前記一般式5のジカルボン酸無水物と該ジカルボン酸無水物と同モル濃度の前記一般式7のシランカップリング剤とを同時に反応させて得られたものであることを特徴とする請求項3記載の耐水性及び剛性に優れた含浸紙。
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