JPH11302262A - フェノキシ誘導体及びそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents

フェノキシ誘導体及びそれを用いた電子写真感光体

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JPH11302262A
JPH11302262A JP11085398A JP11085398A JPH11302262A JP H11302262 A JPH11302262 A JP H11302262A JP 11085398 A JP11085398 A JP 11085398A JP 11085398 A JP11085398 A JP 11085398A JP H11302262 A JPH11302262 A JP H11302262A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 残留電位を低くして、光感度を向上させるこ
とができ、特に単層型の感光体として好適に使用できる
新規なフェノキシ誘導体及びそれを用いた電子写真感光
体を提供する 【解決手段】 新規なフェノキシ誘導体は、下記一般式
(1)で表される化合物である。 【化1】 但し、一般式(1)中、Rは置換基としてアルキル基を
有するか又は置換基を有しないアリール基である。電子
写真感光体は、導電性基体上に、上記一般式(1)で表
されるフェノキシ誘導体を含有する感光層を形成したも
のである。感光層は、少なくとも電荷発生剤、前記一般
式(1)で表されるフェノキシ誘導体よりなる電子輸送
剤及び結着剤が分散状態にある単層構造のものである。
この感光層は、さらに電子受容性化合物を含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば静電式複
写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタ等の画像
形成装置に用いられる新規なフェノキシ誘導体及びそれ
を用いた電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】カールソンプロセスを用いた複写機、フ
ァクシミリ、レーザープリンタ等の画像形成装置におい
ては、種々の材料からなる電子写真感光体が使用されて
いる。その1つはセレンのような無機材料を感光層に用
いた無機感光体であり、他は有機材料を感光層に用いた
有機感光体(OPC)である。このうち、有機感光体は
無機感光体に比べて安価でしかも生産性が高く、無公害
である等の多くの利点を有していることから、広範な研
究が進められている。
【0003】有機感光体としては、電荷発生層と電荷輸
送層とを積層した積層型の感光体、いわゆる機能分離型
の感光体が多いが、電荷発生剤と電荷輸送剤とを単一の
感光層中に分散させた、いわゆる単層型の感光体も知ら
れている。
【0004】これらの感光体に使用される電荷輸送剤に
はキャリヤ移動度が高いことが要求されているが、キャ
リヤ移動度が高い電荷輸送剤のほとんどが正孔輸送性で
あるため、実用に供されている有機感光体は、機械的強
度の観点から、最外層に電荷輸送層が設けられた負帯電
型の積層型有機感光体に限られている。しかし、負帯電
型の有機感光体は負極性コロナ放電を利用するため、オ
ゾンの発生量が多く、環境を汚染したり、感光体を劣化
させるなどの問題が生じる。
【0005】そこで、このような欠点を排除するため
に、電荷輸送剤として電子輸送剤を使用することが検討
されており、例えば特開平1−206349号公報に
は、下記の化学式(7)で表されるジフェノキノン構造
を有する化合物を電子写真感光体用の電子輸送剤として
使用することが提案されている。
【0006】
【化2】 また、特開平8−113565号公報には、電子輸送剤
として下記の化学式(8)又は化学式(9)で表される
インデノキノキサリン化合物が挙げられている。
【0007】
【化3】
【0008】
【化4】
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記化学式
(7)で表されるジフェノキノン構造を有する化合物及
び化学式(8)で表されるインデノキノキサリン化合物
などの従来の電子輸送剤は、電荷発生剤との電位的マッ
チングが不適当であり、電荷発生剤から電子輸送剤への
電子注入が不充分になる。さらに、化学式(9)で表さ
れるインデノキノキサリン化合物よりなる電子輸送剤
は、電荷発生剤との電位的マッチングはよいが、溶剤に
対する溶解性が充分ではなく、結着樹脂との相溶性が乏
しく、ホッピング距離が長くなるため、低電界での電子
移動が生じ難い。従って、従来の電子輸送剤を含有する
感光体は、残留電位が高くなり、感度が低いという問題
があった。
【0010】また、前記のように現在、実用化されてい
る有機感光体の多くは積層型の感光層を備えたものであ
るが、これに比べて単層型の感光層を備えた感光体は構
造が簡単で製造が容易である上、被膜欠陥の発生を抑制
し、光学的特性を向上させる点でも多くの利点がある。
【0011】しかも、このような単層型の感光層を備え
た感光体は、例えば電荷輸送剤として電子輸送剤と正孔
輸送剤とを併用することで、1つの感光体を正帯電型及
び負帯電型の両方に使用でき、感光体の応用範囲を拡げ
られる可能性があるが、前記した従来の電子輸送剤は、
正孔輸送剤との相互作用により、電子及び正孔の輸送を
阻害するという問題があるため、かかる単層型の感光層
を備えた感光体は、広く実用化されるには至っていな
い。
【0012】この発明は、以上のような従来技術に存在
する問題点に着目してなされたものである。その目的と
するところは、残留電位を低くして、光感度を向上させ
ることができ、特に単層型の感光体として好適に使用で
きる新規なフェノキシ誘導体及びそれを用いた電子写真
感光体を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、この発明における第1の発明の新規な化合物は、下
記一般式(1)で表されるフェノキシ誘導体である。
【0014】
【化5】 但し、一般式(1)中、Rは置換基としてアルキル基を
有するか又は置換基を有しないアリール基である。
【0015】第2の発明の電子写真感光体は、導電性基
体上に、第1の発明の一般式(1)で表されるフェノキ
シ誘導体を含有する感光層を形成したものである。第3
の発明の電子写真感光体は、第2の発明において、前記
感光層は、前記一般式(1)で表されるフェノキシ誘導
体よりなる電子輸送剤に加え、電子受容性化合物を含有
するものである。
【0016】第4の発明の電子写真感光体は、第2又は
第3の発明において、前記感光層は、少なくとも電荷発
生剤、前記一般式(1)で表されるフェノキシ誘導体よ
りなる電子輸送剤及び結着剤が分散状態にある単層構造
のものである。
【0017】従って、第1及び第2の発明においては、
前記一般式(1)で表されるフェノキシ誘導体が、その
シアノ基(−C≡N)の作用に基づいて電子受容性に優
れている。また、該フェノキシ誘導体は非対称構造で、
前記基Rが置換基としてアルキル基を有するか又は置換
基を有しないアリール基であることにより、溶剤への溶
解性及び結着剤としての結着樹脂との相溶性が良好で、
感光層中に均一に分散される。
【0018】さらに、フェノキシ誘導体はLUMO〔基
底空分子軌道(Lowest UnoccupiedMolecular Orbital
)、つまり電子を有していない分子軌道の中で最もエ
ネルギー準位が低い軌道をいい、励起された電子は通常
この軌道に移動する。〕の拡がりが大きい。このため、
電子のホッピング距離が短く、特に低電界での電子輸送
性に優れており、かつ電荷発生剤との電位的マッチング
が優れている。
【0019】特に、前記フェノキシ誘導体は、上記各置
換基の作用によって本来的に電子輸送性及び電子受容性
に優れているので、さらに電子輸送性の向上が見られる
ものと推測される。
【0020】さらに、フェノキシ誘導体を含む感光層
は、低電界での電子輸送性に優れているとともに、層中
で電子と正孔が再結合する割合が減少し、見かけの電荷
発生効率が実際の値に近づく結果、感光体の感度が向上
する。
【0021】また、第3の発明においては、感光層に電
子受容性化合物が含有されており、その電子受容性化合
物はLUMOのエネルギー準位が電荷発生剤のそれより
も低いため、光照射による電荷発生剤での電子・正孔対
の生成の際に電荷発生剤から電子を引き抜く働きをし、
電荷発生効率が高められる。
【0022】第4の発明においては、単層構造の感光層
は、少なくとも電荷発生剤、前記フェノキシ誘導体より
なる電子輸送剤及び結着剤が分散状態にして形成され
る。この場合、フェノキシ誘導体は、電子及び正孔の輸
送を阻害したり、正孔輸送剤との相互作用を生じたりし
ないため、特に同じ層中に正孔輸送剤が含有される単層
型の感光層に使用した際に、より高感度の感光体を構成
することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、この発明の新規なフェノキ
シ誘導体及びそれを用いた電子写真感光体の実施形態に
ついて詳細に説明する。
【0024】新規なフェノキシ誘導体は、下記一般式
(1)で表される構造を有する化合物である。
【0025】
【化6】 但し、一般式(1)中、Rは置換基としてアルキル基を
有するか又は置換基を有しないアリール基である。
【0026】この一般式(1)で表されるフェノキシ誘
導体は、電子写真感光体の感光層に少なくとも一種が含
有される。一般式(1)中のRを示すアリール基として
は、例えばフェニル、トリル、キシリル、ビフェニリ
ル、o−テルフェニル、ナフチル、アントリル、フェナ
ントリルなどが挙げられる。その置換基は、アルキル基
であり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピ
ル、ブチルなどの低級アルキル基が好ましい置換基とし
て挙げられる。なお、置換基を有しない場合は、アリー
ル基そのものである。
【0027】このアリール基を有するフェノキシ誘導体
は特に電子輸送能に優れており、より高感度の感光体が
形成される。しかも、ガラス転移温度Tgが高いため、
感光層のTgを向上させることができ、例えば感光体表
面に圧接されたクリーニングブレードにより、装置の停
止時に感光体の表面に圧接痕がつくのを防止できるなど
の効果を発揮できる。また、上記アリール基に、置換基
としてアルキル基を置換させたものは、溶剤への溶解性
及び結着樹脂との相溶性が特に良好である。
【0028】一般式(1)で表されるフェノキシ誘導体
の具体例としては、例えば下記の化学式(2)で表され
る化合物が挙げられる。
【0029】
【化7】 この化学式(2)のフェノキシ誘導体は、前記一般式
(1)において、Rはp位に置換基としてイソプロピル
基〔−CH(CH3 2 〕を有するフェニル基(C6
5 −)である。
【0030】次に、一般式(1)で表されるフェノキシ
誘導体の製造方法を、上記化学式(2)のフェノキシ誘
導体の製造方法を例に挙げて説明する。下記式(A)に
示すように、ニンヒドリンを所定量のイソブチルアルコ
ールに溶解し、さらに1, 2−ジアミノ−4−フルオロ
ベンゼンをニンヒドリンと等モル量加えて、加熱反応さ
せる。この場合、反応溶媒はエタノール、テトラヒドロ
フラン等の極性溶媒、トルエン等の芳香族系溶媒であっ
てもよく、無溶媒であってもよい。反応温度は室温から
100℃程度の範囲で行われる。その反応溶液を冷却
後、濾過し、得られる固体をメタノールで洗浄して、中
間体としての化合物(イ)を得る。
【0031】
【化8】 続いて、下記式(B)に示すように、この化合物(イ)
とその化合物(イ)より過剰モルの化合物(ロ)を、脱
水したジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、窒
素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス気流下にて室温
で反応させる。その反応溶液を塩酸水に注ぎ、濾過す
る。得られる固体を水洗浄後乾燥する。そして、クロロ
ホルムとヘキサンの混合溶媒中で再結晶させて精製し、
中間体としての化合物(ハ)を得る。
【0032】
【化9】 次いで、下記式(C)に示すように、マロノニトリルを
ピリジンに溶解し、それに化合物(ハ)をマロノニトリ
ルと等モル量加え、室温で反応させる。その反応溶液を
塩酸水に注ぎ、濾過する。得られる固体を水洗浄後乾燥
する。そして、クロロホルムとヘキサンの混合溶媒中で
再結晶させて精製することにより、目的とするフェノキ
シ誘導体が得られる。
【0033】
【化10】 次に、電子写真感光体は、導電性基体上に、前記一般式
(1)で表されるフェノキシ誘導体を含有する感光層を
形成したものである。
【0034】上記導電性基体としては、導電性を有する
種々の材料が使用され、例えばアルミニウム、鉄、銅、
スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カ
ドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウ
ム、ステンレス鋼、真鍮等の金属単体や、上記金属が蒸
着又はラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アル
ミニウム、酸化スズ又は酸化インジウム等で被覆された
ガラス等が挙げられる。
【0035】この導電性基体はシート状、ドラム状等の
何れの形態であってもよく、基体自体が導電性を有する
か、あるいは基体の表面が導電性を有しておればよい。
また、導電性基体は、使用に際して、充分な機械的強度
を有するものが望ましい。
【0036】電子写真感光体は、前述のように導電性基
体上に設けた感光層に前記一般式(1)で表されるフェ
ノキシ誘導体を含有する感光層を形成したものである。
この電子写真感光体は、単層型と積層型のいずれであっ
てもよいが、単層型が電子輸送剤の使用による効果を顕
著に示すことから望ましい。
【0037】感光層には、前記一般式(1)で表される
フェノキシ誘導体に加え、電子受容性化合物を含有する
ことが望ましい。この電子受容性化合物は、LUMOの
エネルギー準位が電荷発生剤のそれよりも低いため、光
照射による電荷発生剤での電子・正孔対の生成の際に、
電荷発生剤から電子を引き抜く働きをする。従って、電
荷発生剤中での電子と正孔の再結合による消失の割合が
減少して、電荷発生効率が向上する。
【0038】さらに、この電子受容性化合物は、電荷発
生剤から引き抜いた電子を、電子輸送剤であるフェノキ
シ誘導体に効率良く伝達する作用もする。このため、フ
ェノキシ誘導体に電子受容性化合物を加えることによ
り、電荷発生剤からの電子の注入と輸送が円滑に行わ
れ、感光体の感度をさらに高めることができる。
【0039】しかも、電子受容性化合物は、その酸化還
元電位が−0.8〜−1.4Vの範囲内であることが望
ましい。酸化還元電位が−0.8Vよりも低いと、電子
受容性化合物はトラップと脱トラップを繰り返しながら
移動する電子を脱トラップ不可能なレベルに落とし込
み、キャリヤトラップを生じるために電子輸送の妨げに
なり、感光体の感度が低下する。逆に、酸化還元電位が
−1.4Vより高いと、LUMOのエネルギー準位が電
荷発生剤のそれよりも高くなり、電子・正孔対の生成の
際に電子を電荷発生剤から引き抜く働きをしないため、
電荷発生効率が向上せず、感光体の感度が低下する。
【0040】そのような電子受容性化合物としては、例
えばベンゾキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、
ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物等のキ
ノン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系
化合物、2, 4, 8−トリニトロチオキサントン、3,
4, 5, 7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフル
オレノン系化合物、ジニトロアントラセン、ジニトロア
クリジン、ニトロアントラキノンなどが用いられる。
【0041】但し、電荷発生剤や、前記フェノキシ誘導
体との相性を考慮すると、上記例示の各化合物の中で
も、下記一般式(3)で表されるベンゾキノン系化合物
又は一般式(4)で表されるジフェノキノン系化合物に
属し、かつ酸化還元電位が前記の範囲内である化合物が
最も好適に使用される。
【0042】
【化11】 この一般式(3)中、R2 、R3 、R4 及びR5 は、同
一又は異なるものであり、水素原子、アルキル基、アル
コキシ基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル
基又は置換基を有していてもよいアミノ基を示す。
【0043】
【化12】 この一般式(4)中のR6 、R7 、R8 及びR9 は、同
一又は異なるものであり、水素原子、アルキル基、アル
コキシ基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル
基又は置換基を有していてもよいアミノ基を示す。
【0044】なお、シクロアルキル基としては、例えば
シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シク
ロヘキシルなどの、炭素数3〜6のシクロアルキル基が
挙げられる。
【0045】また、置換基を有していてもよいアミノ基
としては、例えばアミノのほか、モノメチルアミノ、ジ
メチルアミノ、モノエチルアミノ、ジエチルアミノなど
が挙げられる。
【0046】一般式(3)で表されるベンゾキノン系化
合物の具体例としては、p−ベンゾキノン(酸化還元電
位−0.81V)や2,6−ジ(t−ブチル)−p−ベ
ンゾキノン(酸化還元電位−1.31V)などが挙げら
れる。
【0047】一般式(4)で表されるジフェノキノン系
化合物の具体例としては、例えば、3,5−ジメチル−
3′,5′−ジ(t−ブチル)−4,4′−ジフェノキ
ノン(酸化還元電位−0.86V)や3,5,3′,
5′−テトラキス(t−ブチル)−4,4′−ジフェノ
キノン(酸化還元電位−0.94V)などが挙げられ
る。
【0048】これらの電子受容性化合物は、それぞれ単
独で使用できる他、二種以上を併用することもできる。
この電子受容性化合物は電子輸送剤としても用いられ
る。また、電子受容性化合物(電子輸送剤)のほかに、
従来公知の他の電子輸送剤を感光層に含有させてもよ
い。そのような電子輸送剤としては、テトラシアノエチ
レン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラキノン、無
水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸
等が用いられる。
【0049】前記単層型の電子写真感光体は、導電性基
体上に単一の感光層を設けたものであって、この感光層
が、少なくとも電荷発生剤、前記一般式(1)で表され
るフェノキシ誘導体よりなる電子輸送剤及び結着剤が分
散状態にある単層構造のものである。この感光層には、
さらに正孔輸送剤が含有される。
【0050】この単層型感光体は正帯電及び負帯電のい
ずれにも適用可能であるが、特に正帯電型で使用するの
が好ましい。一方、積層型電子写真感光体は、導電性基
体上に少なくとも電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に
設けたものであって、前記電荷輸送層に電子輸送剤とし
て一般式(1)で表されるフェノキシ誘導体を含有する
ものである。この積層型電子写真感光体は、従来の積層
型電子写真感光体に比べて残留電位が大きく低下してお
り、感度が向上している。また、電荷発生層から電荷輸
送層への電子の授受をより円滑に行わせるために、電荷
発生層にもフェノキシ誘導体を含有させるのが好まし
い。
【0051】電子写真感光体に使用するフェノキシ誘導
体は、前述のように、溶剤への溶解性及び結着樹脂との
相溶性が良好であるとともに、電荷発生剤とのマッチン
グに優れていることから、電子の注入が円滑に行われ、
とりわけ低電界での電子輸送性に優れている。
【0052】従って、例えば正帯電の単層型感光体で
は、感光体への露光により光を吸収した電荷発生剤は、
イオン対〔正孔(+)と電子(−)〕を生成する。電荷
発生剤から放出された電子が前記一般式(1)で表され
るフェノキシ誘導体よりなる電子輸送剤にスムーズに注
入される。次いで、電子輸送剤間での電子の授受によ
り、電子が感光層の表面に移動し、あらかじめ感光層表
面に帯電された正電荷(+)が打ち消される。一方、正
孔(+)は正孔輸送剤に注入されて、途中でトラップさ
れることなく導電性基体の表面に移動し、導電性基体の
表面の負電荷(−)を打ち消す。このようにして正帯電
の単層型感光体の感度が向上するものと考えられる。負
帯電の単層型感光体は、上記と電荷移動の方向が逆にな
るだけであって、同様に感度が向上する。
【0053】前記電荷発生剤より生成したイオン対がフ
リーキャリヤとなり有効に表面電荷を打ち消すために
は、イオン対が再結合して消失してしまう割合が小さい
方がよい。
【0054】電子写真感光体は、前記フェノキシ誘導体
とともに、他の電子輸送剤を併用することができる。例
えば、酸化還元電位が−0.8〜−1.4Vである電子
輸送剤が好適に使用される。その理由は以下の通りであ
る。
【0055】酸化還元電位が−1.4Vより小さい電子
輸送剤を使用した場合は、LUMOのエネルギー準位が
電荷発生剤よりも高くなり、イオン対の生成の際に電子
が電子輸送剤に移動せず、電荷発生効率の向上につなが
らない。
【0056】これに対して、酸化還元電位が−1.4V
より大きい電子輸送剤を使用した場合は、LUMOのエ
ネルギー準位が電荷発生剤よりも低いため、イオン対の
生成の際に電子が電子輸送剤へ移動し、イオン対がキャ
リヤへ分離し易くなるからである。すなわち、電子輸送
剤が電荷発生に作用し、その発生効率を向上させるので
ある。
【0057】一方、高感度であるためには、フリーキャ
リヤの移動時に不純物によるキャリヤトラップが発生し
ないことも必要である。通常、フリーキャリヤの移動過
程には少量の不純物などによるトラップが存在し、フリ
ーキャリヤは、トラップと脱トラップを繰り返しながら
移動するが、酸化還元電位が−0.8Vよりも大きい電
子輸送剤を使用した場合は、分離したフリーキャリヤを
脱トラップ不可能なレベルに落とし込み、キャリヤトラ
ップを生じるため、その移動は中止される。
【0058】かかる電子輸送剤としては、その酸化還元
電位が−0.8〜−1.4Vの範囲内である化合物であ
れば特に制限はなく、前述した電子輸送剤又は電子受容
性化合物が挙げられる。
【0059】次に、上述した電荷発生剤としては、例え
ば無金属フタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニ
ン、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピ
ロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタ
ロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、
インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料などが
挙げられる。これらのうち、ペリレン顔料としては、下
記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0060】
【化13】 この一般式(5)中のR11及びR12は同一又は異なって
いてもよく、炭素数が18以下の置換又は未置換のアル
キル基、シクロアルキル基、アリール基、アルカノイル
基又はアラルキル基を示す。
【0061】この電荷発生剤としては、上記例示の電荷
発生剤のほかに、例えばセレン、セレン−テルル、セレ
ン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の
無機光導電材料の粉末や、ピリリウム塩、アンサンスロ
ン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、
トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系
顔料等の従来公知の電荷発生剤も用いられる。
【0062】また、上記例示の電荷発生剤は、所望の領
域に吸収波長を有するように、単独で又は2種以上を混
合して用いられる。さらに、電荷発生剤のうち、特に半
導体レーザーなどの光源を使用したレーザービームプリ
ンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置
には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体
が必要となるため、例えば無金属フタロシアニンやオキ
ソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が
好適に用いられる。なお、上記フタロシアニン系顔料の
結晶形については特に限定されず、種々のものが使用さ
れる。
【0063】一方、ハロゲンランプ等の白色の光源を使
用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置
には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるた
め、例えばペリレン顔料やビスアゾ顔料等が好適に用い
られる。
【0064】次に、正孔輸送剤について説明する。この
正孔輸送剤としては、高い正孔輸送能を有する種々の化
合物、例えばベンジジン誘導体、2,5−ジ(4−メチ
ルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等
のオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミ
ノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリ
ビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポ
リシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルア
ミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒ
ドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、イン
ドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾ
ール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系
化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、
トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環
式化合物等が用いられる。これらのうち、ベンジジン誘
導体としては、下記一般式(6)で表される化合物が挙
げられる。
【0065】
【化14】 この一般式(6)中のR13、R14、R15、R16、R17
びR18は同一又は異なっていてもよく、水素原子、ハロ
ゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換
基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有して
いてもよいアリール基を示す。a及びbは同一又は異な
っていてもよく、1〜4の整数を示し、c、d、e及び
fは同一又は異なっていてもよく、1〜5の整数を示
す。なお、a、b、c、d、e又はfが2以上のとき、
各R13、R14、R15、R16、R17及びR18は異なってい
てもよい。
【0066】これらの正孔輸送剤は、1種を単独で用い
るほか、2種以上を混合して用いてもよい。また、ポリ
ビニルカルバゾール等の成膜性を有する正孔輸送剤を用
いる場合には、結着樹脂は必ずしも必要でない。
【0067】前記正孔輸送剤のうち、イオン化電位(I
p)が4.8〜5.6eVのものを使用するのが好まし
く、電界強度3×105 V/cmで1×10-6cm2
/V・秒以上の移動度を有するものがより好ましい。
【0068】イオン化電位が前記範囲内にある正孔輸送
剤を用いることによって、より一層残留電位が低下し、
感度が向上する。その理由は必ずしも明らかではない
が、以下のようなものと考えられる。
【0069】すなわち、電荷発生剤から正孔輸送剤への
電荷の注入のし易さは正孔輸送剤のイオン化電位と密接
に関係しており、正孔輸送剤のイオン化電位が前記範囲
よりも大きい場合には、電荷発生剤から正孔輸送剤への
電荷の注入の程度が低くなるか、あるいは正孔輸送剤間
での正孔の授受の程度が低くなるため、感度の低下が生
じるものと推測される。一方、正孔輸送剤と電子輸送剤
とが共存する系では、両者の間の相互作用、より具体的
には電荷移動錯体の形成に注意する必要がある。両者の
間にこのような錯体が形成されると、正孔と電子との間
に再結合が生じ、全体として電荷の移動度が低下する。
正孔輸送剤のイオン化電位が前記範囲よりも小さい場合
には、電子輸送剤との間に錯体を形成する傾向が大きく
なり、電子と正孔との再結合が生じるために、見掛けの
量子収率が低下し、感度の低下に結びつくものと思われ
る。
【0070】さらに、電子輸送剤中に嵩高い基が存在す
る場合は、その立体障害により電荷移動錯体の形成を抑
制することができる。従って、電子輸送剤として用いら
れるフェノキシ誘導体には、できるだけ嵩高い置換基を
導入するのが好ましい。
【0071】次に、結着剤としての結着樹脂(バインダ
ー樹脂)について説明する。上記した各成分を分散させ
るための結着樹脂としては、従来より感光層に使用され
ている種々の樹脂を使用することができ、例えばスチレ
ン系重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン
−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共
重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重
合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、
塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレ
ン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、
ポリエステル、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタ
ン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホ
ン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニル
ブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂
等の熱可塑性樹脂や、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、
フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋
性の熱硬化性樹脂、さらにエポキシアクリレート樹脂、
ウレタン−アクリレート共重合樹脂等の光硬化性樹脂等
が挙げられる。これらの結着樹脂は1種又は2種以上が
混合して用いられる。これらのうち、好適な樹脂は、ス
チレン系重合体、アクリル系重合体、スチレン−アクリ
ル系共重合体、ポリエステル、アルキド樹脂、ポリカー
ボネート、ポリアリレート等である。
【0072】次に、電子写真感光体の製造方法について
説明する。単層型の電子写真感光体は、所定の電子輸送
剤を、電荷発生剤、正孔輸送剤、、電子受容性化合物、
結着樹脂等と共に適当な溶剤に溶解又は分散した塗布液
を、塗布等の手段によって導電性基体上に塗布し、乾燥
させることにより製造される。
【0073】単層型の感光体においては、結着樹脂10
0重量部に対して電荷発生剤は好ましくは0.1〜50
重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部の割合で
配合され、電子輸送剤は好ましくは5〜100重量部、
さらに好ましくは10〜80重量部の割合で配合され
る。また、正孔輸送剤は好ましくは5〜500重量部、
さらに好ましくは25〜200重量部の割合で配合され
る。さらに、正孔輸送剤と電子輸送剤との総量は、結着
樹脂100重量部に対して好ましくは20〜500重量
部、さらに好ましくは30〜200重量部である。単層
型の感光層に電子受容性化合物を含有させる場合は、電
子受容性化合物の含有量が結着樹脂100重量部に対し
て0.1〜40重量部であることが望ましく、0.5〜
20重量部であることがより望ましい。
【0074】また、単層型の感光層の厚さは好ましくは
5〜100μm、さらに好ましくは10〜50μmであ
る。また、積層型の電子写真感光体を得るには、まず導
電性基体上に、蒸着又は塗布等の手段によって電荷発生
剤を含有する電荷発生層を形成する。次いで、この電荷
発生層上に、電子輸送剤と結着樹脂とを含有する塗布液
を塗布等の手段によって塗布し、乾燥させることにより
電荷輸送層が形成される。
【0075】この積層型感光体においては、電荷発生層
を構成する電荷発生剤と結着樹脂とは、種々の割合で使
用することができるが、結着樹脂100重量部に対して
電荷発生剤を好ましくは5〜1000重量部、さらに好
ましくは30〜500重量部の割合で配合するのが適当
である。電荷発生層に電子受容性化合物を含有させる場
合は、電子受容性化合物を結着樹脂100重量部に対し
て好ましくは0.1〜40重量部、さらに好ましくは
0.5〜20重量部で配合するのが適当である。また、
電荷発生層に電子輸送剤を含有させる場合は、電子輸送
剤を結着樹脂100重量部に対して好ましくは0.5〜
50重量部、さらに好ましくは1〜40重量部で配合す
るのが適当である。
【0076】電荷輸送層を構成する電子輸送剤と結着樹
脂とは、電荷の輸送を阻害しない範囲及び結晶化しない
範囲で種々の割合で使用することができるが、光照射に
より電荷発生層で生じた電荷が容易に輸送できるよう
に、結着樹脂100重量部に対して電子輸送剤を好まし
くは10〜500重量部、さらに好ましくは25〜10
0樹脂の割合で配合するのが適当である。電荷輸送層に
電子受容性化合物を含有させる場合は、電子受容性化合
物を結着樹脂100重量部に対して好ましくは0.1〜
40重量部、さらに好ましくは0.5〜20重量部で配
合するのが適当である。
【0077】また、積層型の感光層の厚さは、電荷発生
層が望ましくは0.01〜5μm程度、さらに望ましく
は0.1〜3μm程度であり、電荷輸送層が望ましくは
2〜100μm、さらに望ましくは5〜50μm程度で
ある。
【0078】単層型感光体にあっては、導電性基体と感
光層との間に、また積層型感光体にあっては、導電性基
体と電荷発生層との間、導電性基体と電荷輸送層との間
又は電荷発生層と電荷輸送層との間に、感光体の特性を
阻害しない範囲でバリア層が形成されていてもよい。ま
た、感光体の表面には、保護層が形成されていてもよ
い。
【0079】単層型及び積層型の各感光層には、電子写
真特性に悪影響を与えない範囲で、それ自体公知の種々
の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項
クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、
可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワ
ックス、アクセプター、ドナー等を配合することができ
る。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテ
ルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の
公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0080】さらに、前記一般式(1)で表されるフェ
ノキシ誘導体とともに、高い電子輸送能を有する種々の
電子輸送剤を感光層に含有させてもよい。導電性基体上
に形成される感光層は、前記した各成分を含む樹脂組成
物を溶剤に溶解ないし分散した塗布液を導電性基体上に
塗布、乾燥して製造される。すなわち、前記例示の電荷
発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂等を、適当な溶剤ととも
に、公知の方法、例えば、ロールミル、ボールミル、ア
トライタ、ペイントシェーカーあるいは超音波分散器等
を用いて分散混合して塗布液を調製し、これを常法より
塗布、乾燥すればよい。
【0081】塗布液を調製するための溶剤としては、種
々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エ
タノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコー
ル類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂
肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳
香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩
化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジメ
チルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラ
ン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレン
グリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセト
ン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン
類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ジメチル
ホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルス
ルホキシド等が挙げられる。これらの溶剤は、1種又は
2種以上が混合して用いられる。
【0082】さらに、電荷輸送材料や電荷発生材料の分
散性、感光層表面の平滑性を良くするために界面活性
剤、レベリング剤等を使用してもよい。以上の実施形態
における前記一般式(1)で表されるフェノキシ誘導体
及びそれを用いた電子写真感光体によれば、次のような
効果を奏する。
【0083】・ 実施形態における前記一般式(1)で
表される新規なフェノキシ誘導体は、そのシアノ基(−
C≡N)の作用に基づいて電子受容性に優れている。 ・ 実施形態における前記フェノキシ誘導体は、非対称
構造で、しかも一般式(1)中の基R(置換基としてア
ルキル基を有するか又は置換基を有しないアリール基で
ある。)によって、溶剤への溶解性及び結着樹脂との相
溶性が良好で、感光層中に均一に分散される。さらに、
フェノキシ誘導体はLUMOの拡がりが大きい。
【0084】このため、電子のホッピング距離が短く、
特に低電界での電子輸送性に優れており、かつ電荷発生
剤との電位的マッチングが優れている。 ・ 従って、実施形態の電子写真感光体によれば、かか
るフェノキシ誘導体を電子写真感光体における電子輸送
剤として使用することにより、高感度な感光体を形成す
ることができる。
【0085】・ 実施形態の電子写真感光体によれば、
特に前記フェノキシ誘導体は、前記各置換基の作用によ
って本来的に電子輸送性及び電子受容性に優れているの
で、さらに電子輸送性を向上させることができる。
【0086】・ 実施形態の電子写真感光体によれば、
電子写真感光体は、導電性基体上に感光層を設けたもの
であって、この感光層が、一般式(1)で表されるフェ
ノキシ誘導体を含有している。このフェノキシ誘導体を
含む感光層は、低電界での電子輸送性に優れているとと
もに、層中で電子と正孔が再結合する割合が減少し、見
かけの電荷発生効率が実際の値に近づくことから、感光
体の感度を向上させることができる。
【0087】特に、かかるフェノキシ誘導体は、電子及
び正孔の輸送を阻害したり、正孔輸送剤との相互作用を
生じたりしないため、特に同じ層中に正孔輸送剤が含有
される単層型の感光層に使用した場合に、より高感度の
感光体を構成できる。
【0088】・ 実施形態の電子写真感光体によれば、
感光体の残留電位が低くなり、繰り返し露光を行った際
の感光層の安定性及び耐久性を向上させることができ
る。 ・ 実施形態の電子写真感光体によれば、前記感光層が
−0.8〜−1.4Vの酸化還元電位を有する電子輸送
剤を含有すると、感光体の感度をさらに向上させること
ができる。これは、前記電子輸送剤が、電荷発生剤から
電子を引き抜いてフェノキシ誘導体に伝達する働きを有
するため、電荷発生剤からフェノキシ誘導体への電子の
注入がさらに円滑になるためと推測される。
【0089】・ 実施形態における前記フェノキシ誘導
体は前述のように高い電子輸送能を有していることか
ら、その機能を利用し、太陽電池、エレクトロルミネッ
センス(EL)素子などの電子素子としてエレクトロニ
クス分野の用途にも使用できる。そのうえ、新規なフェ
ノキシ誘導体は、化学反応原料、中間原料等として利用
することができる。
【0090】
【実施例】以下、実施例及び比較例を挙げて前記実施形
態をさらに具体的に説明する。 (実施例1〜9及び比較例1〜16) 〔フェノキシ誘導体の製造〕前述した式(A)に示すよ
うに、ニンヒドリン3. 56g(0. 02モル)をイソ
ブチルアルコール60mlに溶解し、さらに1, 2−ジア
ミノ−4−フルオロベンゼン2. 52g(0. 02モ
ル)を加えて、40〜50℃で2時間反応させた。反応
溶液を冷却後、濾過し、得られた固体をメタノールで洗
浄して、中間体としての化合物(イ)を4. 1g得た
(収率82%)。
【0091】続いて、前記式(B)に示すように、この
化合物(イ)0. 30g(0. 0012モル)と化合物
(ロ)0. 30g(0. 0019モル)を、脱水したジ
メチルホルムアミド(DMF)に溶解し、アルゴンガス
気流下にて室温で1時間反応させた。その反応溶液を塩
酸水に注ぎ、濾過した。得られた固体を水洗浄後乾燥し
た。そして、クロロホルムとヘキサンの混合溶媒中で再
結晶させて精製し、中間体としての化合物(ハ)を0.
34g得た(収率77%)。
【0092】次に、式(C)に示すように、マロノニト
リル0. 26g(0. 004モル)をピリジン10mlに
溶解し、それに化合物(ハ)を1. 43g(0. 004
モル)加え、室温で2時間反応させた。その反応溶液を
塩酸水に注ぎ、濾過した。得られた固体を水洗浄後乾燥
した。そして、クロロホルムとヘキサンの混合溶媒中で
再結晶させて精製し、前記化学式(2)で表される目的
のフェノキシ誘導体を1. 4g得た(収率84%)。 〔同定のための分析〕得られたフェノキシ誘導体の構造
を決定するために、マススペクトル分析、赤外線吸収ス
ペクトル分析(IR分析)及び核磁気共鳴スペクトル分
析(NMR分析)を行った。そして、マススペクトル分
析の結果を図1及び図2に示し、IR分析の結果を図3
に示した。さらに、NMR分析の結果を図4に示した。
【0093】加えて、前記フェノキシ誘導体の融点は2
24〜226℃であった。これらの分析結果より、得ら
れた化合物が前記化学式(2)の構造を有するフェノキ
シ誘導体であることを確認した。 〔電子写真感光体の製造〕前記フェノキシ誘導体を電子
輸送剤として使用した。各実施例又は比較例の電子写真
感光体に用いた各成分は以下のとおりである。 (i) 電荷発生剤 PcH2 : 無金属フタロシアニン〔イオン化ポテンシ
ャル(Ip)=5.38eV〕 PcTiO: オキソチタニルフタロシアニン(Ip=
5.32eV) ペリレン系: 前述の一般式(5)で表されるペリレン
顔料(Ip=5.50eV) (ii) 正孔輸送剤 有: 前述の一般式(6)で表されるベンジジン誘導体
(Ip=5.56eV) 無: 正孔輸送剤を含有しない (iii) 電子輸送剤 (2): 前述の化学式(2)で表されるフェノキシ誘
導体 (iv) 電子受容性化合物又は電子輸送剤 a: p−ベンゾキノン b: 2,6−ジ(t−ブチル)−p−ベンゾキノン c: 3,5−ジメチル−3′,5′−ジ(t−ブチ
ル)−4,4′−ジフェノキノン d: 3,5,3′,5′−テトラ(t−ブチル)−
4,4′−ジフェノキノン e: 前述の化学式(8)で表されるインデノキノキサ
リン化合物 f: 前述の化学式(9)で表されるインデノキノキサ
リン化合物 〔単層型電子写真感光体の作製〕表1及び表2に示す電
荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤及び電子受容体を、
結着樹脂と溶媒と共に以下に示す割合で配合し、ボール
ミルで50時間混合分散して単層型感光層塗布液を調製
した。
【0094】 (成分) (重量部) 電荷発生剤 5 正孔輸送剤 50 電子輸送剤 30 結着樹脂(ポリカーボネート) 100 溶 媒(テトラヒドロフラン) 800 次いで、上記塗布液を、導電性基材であるアルミニウム
素管の表面にディップコート法にて塗布し、100℃で
60分間熱風乾燥させて膜厚15〜20μmの単層型電
子写真感光体を作製した。 〔積層型電子写真感光体の作製〕表1及び表2に示す電
荷発生剤100重量部、結着樹脂(ポリビニルブチラー
ル)100重量部及び溶媒(テトラヒドロフラン)20
00重量部をボールミルで50時間混合分散し、電荷発
生層用の塗布液を調製した。この塗布液を導電性基材で
あるアルミニウム素管の表面にディップコート法にて塗
布し、100℃で60分間熱風乾燥させて膜厚1μmの
電荷発生層を形成した。
【0095】次いで、表1及び表2に示す電子輸送剤1
00重量部、結着樹脂(ポリカーボネート)100重量
部及び溶媒(トルエン)800重量部をボールミルで5
0時間混合分散し、電荷輸送層用の塗布液を調製した。
そして、この塗布液を上記電荷発生層上にディップコー
ト法にて塗布し、100℃で60分間熱風乾燥させて膜
厚20μmの電荷輸送層を形成し、積層型電子写真感光
体を作製した。 (感光体特性の評価)上記実施例及び比較例で得られた
電子写真感光体について、下記の光感度試験を行い、そ
の感度特性を評価した。 (光感度試験)ジェンテック(GENTEC)社製のド
ラム型の感度試験機を用い、上記各実施例及び比較例の
感光体に電圧を印加して+700Vに帯電させた。次い
で、この感光体に光を照射して露光させ、露光から33
0ミリ秒後の感光体表面の電位を露光後電位Vr (V)
として測定した。
【0096】なお、光照射の条件は、以下に示すよう
に、電荷発生剤がフタロシアニン系のものとペリレン系
のものとによって分けた。 (1)フタロシアニン系顔料の場合 +700Vに帯電させた感光体表面に、バンドパスフィ
ルターを用いて780nm(半値幅20nm)に単色化
した光(ハロゲンランプ、光強度:16μW/cm2
80ミリ秒間照射した。 (2)ペリレン系顔料の場合 +700Vに帯電させた感光体表面にハロゲンランプの
白色光(光強度:147μW/cm2 )50ミリ秒間照
射した。
【0097】上記実施例及び比較例で使用した成分及び
露光後電位Vr の測定結果を表1及び表2に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】 表1及び表2に示したように、実施例1〜9の単層型又
は積層型の感光体は、前記化学式(2)で表されるフェ
ノキシ誘導体を含有している。従って、従来の電子輸送
剤を用いた感光体(比較例1〜11、13、14及び1
6)あるいは電子輸送剤を使用しなかった感光体(比較
例12及び15)に比べて、単層型又は積層型のそれぞ
れについて露光後の電位が低下しており、高い感度を発
揮できることがわかる。
【0100】なお、前記実施形態より把握される技術的
思想について以下に記載する。 (i ) 前記一般式(1)中のRは、置換基として炭素
数1から4の低級アルキル基を有するアリール基である
請求項1に記載のフェノキシ誘導体。
【0101】このように構成した場合、電子輸送剤とし
ての機能を確実に発揮でき、電子写真感光体における感
光層の感度をより確実に発揮させることができる。 (ii) 前記一般式(1)中のアリール基はフェニル基
である請求項1に記載のフェノキシ誘導体。
【0102】このように構成した場合、電子輸送剤とし
ての機能を確実に奏することができとともに、電子写真
感光体における感光層の感度をより確実に発揮させるこ
とができる。
【0103】(iii ) 前記フェノキシ誘導体は、一般
式(1)中のRが置換基として炭素数1から4の低級ア
ルキル基を有するアリール基である請求項2に記載の電
子写真感光体。
【0104】このように構成した場合、電子輸送剤とし
ての機能を確実に発揮でき、電子写真感光体における感
光層の感度をより確実に発揮させることができる。 (iv) 前記電子受容性化合物は、キノン系化合物であ
る請求項3に記載の電子写真感光体。
【0105】このように構成した場合、感光層中の電子
受容性化合物であるキノン系化合物が電荷発生効率をよ
り確実に向上させることができる。 (v ) 前記電子輸送剤の含有量は、結着剤100重量
部に対して5〜100重量部である請求項4に記載の電
子写真感光体。
【0106】このように構成した場合、電子輸送剤がそ
の機能を効果的に発揮でき、感光層の感度を向上させる
ことができる。 (vi) 前記電荷発生剤は、フタロシアニン系顔料又は
ペリレン系顔料である請求項4に記載の電子写真感光
体。
【0107】このように構成した場合、電荷発生剤によ
る電荷の発生を有効に、しかも確実に行うことができ
る。
【0108】
【発明の効果】この発明は、以上のように構成されてい
るため、次のような効果を奏する。この発明における第
1の発明のフェノキシ誘導体によれば、電子受容性に優
れ、電荷発生剤との電位的マッチングが良好であるとと
もに、溶剤への溶解性及び樹脂との相溶性が良好であ
る。従って、かかるフェノキシ誘導体を電子写真感光体
における電子輸送剤として使用することにより、高感度
な感光体を形成することができる。
【0109】第2の発明の電子写真感光体によれば、感
光層に含有されるフェノキシ誘導体は高い電子輸送能を
有することから、残留電位が効果的に低下し、高い光感
度を発揮することができる。
【0110】また、第3の発明の電子写真感光体によれ
ば、第2の発明の効果に加え、電子受容性化合物を含有
することから、より一層残留電位が低下し、さらに光感
度を向上させることができる。
【0111】さらに、第4の発明の電子写真感光体によ
れば、第2又は第3の発明の効果に加え、感光層の構成
が簡単で、被膜欠陥の発生を抑制でき、しかも光学的特
性を向上させることができる。
【0112】従って、この発明の電子写真感光体を使用
することにより、複写機やプリンター等の高速化を図る
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例のフェノキシ誘導体のマススペクトル
図。
【図2】 同じく実施例のフェノキシ誘導体のマススペ
クトル図。
【図3】 実施例のフェノキシ誘導体の赤外線吸収スペ
クトル図。
【図4】 実施例のフェノキシ誘導体の核磁気共鳴スペ
クトル図。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(1)で表されるフェノキシ
    誘導体。 【化1】 但し、一般式(1)中、Rは置換基としてアルキル基を
    有するか又は置換基を有しないアリール基である。
  2. 【請求項2】 導電性基体上に、請求項1に記載の一般
    式(1)で表されるフェノキシ誘導体を含有する感光層
    を形成した電子写真感光体。
  3. 【請求項3】 前記感光層は、前記一般式(1)で表さ
    れるフェノキシ誘導体よりなる電子輸送剤に加え、電子
    受容性化合物を含有する請求項2記載の電子写真感光
    体。
  4. 【請求項4】 前記感光層は、少なくとも電荷発生剤、
    前記一般式(1)で表されるフェノキシ誘導体よりなる
    電子輸送剤及び結着剤が分散状態にある単層構造のもの
    である請求項2又は請求項3に記載の電子写真感光体。
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