JPH11293188A - 硬化性樹脂組成物およびそのワニスならびに硬化物 - Google Patents

硬化性樹脂組成物およびそのワニスならびに硬化物

Info

Publication number
JPH11293188A
JPH11293188A JP10072498A JP10072498A JPH11293188A JP H11293188 A JPH11293188 A JP H11293188A JP 10072498 A JP10072498 A JP 10072498A JP 10072498 A JP10072498 A JP 10072498A JP H11293188 A JPH11293188 A JP H11293188A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
curable resin
group
resin composition
epoxy group
resin varnish
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP10072498A
Other languages
English (en)
Inventor
Takehiro Suzuki
健弘 鈴木
Yasushi Ariyoshi
泰 有吉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyo Ink Mfg Co Ltd
Original Assignee
Toyo Ink Mfg Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyo Ink Mfg Co Ltd filed Critical Toyo Ink Mfg Co Ltd
Priority to JP10072498A priority Critical patent/JPH11293188A/ja
Publication of JPH11293188A publication Critical patent/JPH11293188A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Epoxy Resins (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】コンクリート,モルタル,セラミック,石材,
金属板,ガラス等の無機基材上,あるいは紙,プラスチ
ックシート,フィルム,塗装面等の有機基材上で常温硬
化し,耐候性,潤滑性,離剥性に優れた塗膜を形成する
硬化性樹脂組成物およびそのワニスならびに硬化物を提
供すること。 【解決手段】a)脂環式エポキシ基を有するアルコキシ
シラン化合物,b)エポキシ基を有するオルガノポリシ
ロキサン化合物,およびc)液状エポキシ樹脂を含むエ
ポキシ混合物をc)金属キレート化合物を重合触媒に用
いて共重合して得られた硬化性樹脂組成物,およびそれ
をd)有機溶剤で希釈した硬化性樹脂ワニスを提供す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,コンクリート,モ
ルタル,セラミック,石材,金属板,ガラス等の無機基
材上,あるいは紙,プラスチックシート,フィルム,塗
装面等の有機基材上で常温硬化し,主として耐候性,潤
滑性,離剥性に優れ,落書き防止塗料,貼り紙防止塗
料,着氷着雪防止塗料等に有用な硬化性樹脂組成物およ
びそのワニスならびに硬化物に関する。
【0002】
【従来の技術】電話ボックス,電柱,街灯柱,配電塔,
橋脚,歩道橋,門扉,堀,壁等の公共建造物に対するポ
スターやチラシ等の貼り紙は,景観を著しく損なうだけ
でなく,社会衛生上も好ましくないが,これを取り除く
には手間を要する。従来では,金網,塩ビシート,ポリ
エチレンシート等の貼り紙防止材やシリコン系の塗布剤
のような貼り紙防止剤が利用されてきたが,それぞれ施
工作業性や耐久性等に一長一短があり,十分な満足は得
られなかった。特に,貼り紙の心理的抑制効果とその接
着面積を減らす目的で各種ビーズを配合した塗料も考え
られているが,多層で塗装工程が煩雑であったり,ビー
ズの配合によるコスト高はさけられない。
【0003】シリコン系塗料の中には,高い撥水・撥油
効果を得ているものも存在するが,一般にアクリルなど
の各種樹脂溶液とオルガノポリシロキサンとの相溶性の
低さから相分離を起こすなどの問題がある。とりわけ,
高分子量のオルガノポリシロキサンを樹脂中に含有させ
ることは困難であった。
【0004】最近,ポリジメチルシロキサン部分と架橋
基を有するビニル重合体部分とが存在する硬化性ポリジ
メチルシロキサン系ビニル共重合体(特開平9−100
445号公報,特開平9−208830号公報)等のよ
うに,落書き防止や貼り紙防止に優れた被覆組成物が提
案されているが,重合体主鎖が長い一方で架橋密度に限
界があるため,油性マジックインキ中の染料成分が溶剤
と共に被膜中に浸透し染み跡を残すという問題があっ
た。
【0005】一方,密に架橋する被覆組成物としてアル
コキシシランの縮合物を主成分とした無機塗料がある
が,縮合反応を制御して塗工液を調整するのが困難な上
に,強固な膜をつくるためには焼き付けを必要とした
り,縮合反応に伴う収縮を抑えて可撓性を改善するため
には結果的に樹脂を配合し耐溶剤性が悪くなる等の問題
があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,脂環式エポ
キシ基を有するアルコキシシラン,エポキシ基を有する
ポリオルガノシロキサン化合物,および液状エポキシ樹
脂を金属キレート化合物を触媒として用いて開環共重合
して得られた撥水・撥油性に優れたポリジメチルシロキ
サン鎖とアルコキシシリル基を有する樹脂が透明な被膜
を形成し,さらに高密度に架橋しすること利用して,落
書き防止塗料,貼り紙防止塗料,および着雪着氷防止塗
料等に有用な硬化性樹脂組成物および貯蔵および可使安
定性に優れた硬化性樹脂ワニスの提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,金属キレ
ート化合物をの触媒存在下,脂環式エポキシ基を有する
アルコキシシランとエポキシ基を有するポリオルガノシ
ロキサンと液状エポキシ樹脂を有する化合物を共重合し
た硬化性樹脂組成物が,塗工後さらにアルコキシシリル
基が高密度に架橋し,優れた落書き防止性能,貼り紙防
止性能を有する高硬度な膜を形成すること,さらにその
硬化性樹脂組成物をアルコールを含む有機溶剤で希釈し
た硬化性樹脂ワニスが貯蔵および可使安定性に優れてい
ることを見出し本発明に至った。
【0008】すなわち,第1の発明は、a)脂環式エポ
キシ基を有するアルコキシシラン化合物,b)エポキシ
基を有するオルガノポリシロキサン化合物,およびc)
液状エポキシ樹脂を有する化合物を含むエポキシ混合物
をd)金属キレート合物を重合触媒に用いて共重合して
得られた硬化性樹脂組成物である。第2の発明は,第1
発明の硬化性樹脂組成物,およびe)有機溶剤でからな
ることを特徴とする硬化性樹脂ワニスである。第3の発
明は,f)アルコキシシリル基の硬化促進剤を含むこと
を特徴とする第2発明記載の硬化性樹脂ワニスである。
【0009】第4の発明は,e)有機溶剤が,アルコー
ルを含む有機溶剤であることを特徴とする第2発明また
は第3発明記載の硬化性樹脂ワニスである。第5の発明
は,アルコールの炭素数が,a)脂環式エポキシ基を有
するアルコキシシランのアルコキシ基の炭素数より大き
いことを特徴とする第4発明記載の硬化性樹脂ワニスで
ある。第6の発明は,a)脂環式エポキシ基を有するア
ルコキシシラン化合物のアルコキシ基の当量よりも多い
e)アルコールを含むことを特徴とする硬化性樹脂ワニ
スである。
【0010】第7の発明は,第2発明〜第6発明いずれ
か記載の硬化性樹脂ワニスにて、被塗布基材がコンクリ
ート、モルタル、セラミック、石材、金属板、ガラスか
ら選ばれる無機基材または紙、プラスチックシート、プ
ラスチックフイルム、塗装面から選ばれる有機基材に塗
布、硬化されたことを特徴とする硬化物である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の硬化性樹脂組成物は,
a)エポキシ基含有アルコキシシランとb)エポキシ基
を有するオルガノポリシロキサンとc)液状エポキシ樹
脂を含むエポキシ混合物をd)金属キレート化合物を用
いて共重合し,必要に応じてe)有機溶剤で希釈,f)
アルコキシシリル基の硬化促進剤を添加して液状物とし
て使用される。
【0012】ここで言う液状には,常温で二種類以上の
化合物が完全に相溶して液状になっているものだけでな
く,液状化合物に液滴状あるいは粒子状化合物が分散し
ている不均一系も含まれる。
【0013】a)脂環式エポキシ基を有するアルコキシ
シラン化合物としては,2−(3,4−エポキシシクロ
ヘキシル)エチルトリメトキシシラン,2−(3,4−
エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等
が挙げられるが必ずしもこれに限定されるものではな
い。
【0014】b)エポキシ基を有するオルガノポリシロ
キサンとしては,一般に数平均分子量(以下,Mnとい
う)が500〜50000程度の下記構造式で表される
両末端官能型,片末端官能型,側鎖官能型のものが使用
できる。
【0015】構造式1
【0016】
【化1】
【0017】構造式2
【0018】
【化2】
【0019】両末端官能型のオルガノポリシロキサン
は,m=5〜200程度の直鎖状のポリシロキサン鎖の
両末端にl=1〜10,n=1〜10程度のアルキル基
が導入されエポキシ基を有する有機基XおよびYを有す
る上記構造式1のものである。また,一般にRにはメチ
ル基が導入されている。
【0020】エポキシ基を有する両末端官能型オルガノ
ポリシロキサンとしては,チッソ(株)製のサイラプレ
ーンFM−5511(上記構造式1において,l=n=
3,m=8,R= メチル基,X=Y=グリシドキシ基,
Mn=1000),サイラプレーンFM−5521(上
記構造式1において,l=n=3,m=62,R= メチ
ル基,X=Y=グリシドキシ基,Mn=5000),サ
イラプレーンFM−5525(上記構造式1において,
l=n=3,m=130,R= メチル基,X=Y=グリ
シドキシ基,Mn=10000)などが挙げられるが,
必ずしもこれに限定されものではない。(グリシドキシ
基XおよびYの末端がエポキシ基。)
【0021】脂環式エポキシ基を有する両末端官能型オ
ルガノポリシロキサンとしては,チッソ(株)製のサイ
ラプレーンXP−1004P(上記構造式1において,
l=n=3,m=15,R= メチル基,X=Y=2−
(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基,Mn=
1500)が挙げられるが,必ずしもこれに限定される
ものではない。(2−(3,4−エポキシシクロヘキシ
ル)エチル基XおよびYの末端が脂環式エポキシ基。)
【0022】片末端官能型のオルガノポリシロキサン
は,m=5〜200程度の直鎖状のポリシロキサン鎖の
片末端がY=メチル基,l=0〜10程度のアルキル基
で封止され,もう片末端にn=1〜10程度のアルキル
鎖が導入されグリシジル基を有する有機基Xが結合した
上記構造式1のものである。また,一般にRにはメチル
基が導入されている。
【0023】エポキシ基を有する片末端官能型オルガノ
ポリシロキサンとしては,チッソ(株)製のサイラプレ
ーンFM−0511(上記構造式1において,l=n=
3,m=9,R= メチル基,X=グリシドキシ基,Y=
メチル基,Mn=1000),サイラプレーンFM−0
521(上記構造式1において,l=n=3,m=6
3,R= メチル基,X=グリシドキシ基,Y=メチル
基,Mn=5000),サイラプレーンFM−0525
(上記構造式1において,l=n=3,m=131,R
= メチル基,X=グリシドキシ基,Y=メチル基,Mn
=10000)などが挙げられるが必ずしもこれに限定
されるものではない。(グリシドキシ基XおよびYの末
端がエポキシ基。)
【0024】側鎖官能型のオルガノポリシロキサンは,
(o+p+q)=5〜200程度の直鎖状のポリシロキ
サン鎖の一部のケイ素原子にエポキシ基末端に有するア
ルキル基が結合した上記構造式2のものである。なお,
一般にRはメチル基である。エポキシ基を有する側鎖官
能型シロキサンとしては,日本ユニカー(株)製のL−
9300,FZ−3720,東芝シリコーン(株)製の
YF−3965,XF42−A4439,XC96−A
4462,XC96−A4463,XC96−A446
4(上記構造式2においてR=メチル基,X=エポキシ
基を末端に有する有機基),脂環式エポキシ基を有する
側鎖感応型ポリオルガノシロキサンとしては,東芝シリ
コーン(株)製のTSF4730,XF42−A443
8(上記構造式2においてX=脂環式エポキシ基を有す
る有機基)などが挙げられる。
【0025】本発明で使用するb)エポキシ基オルガノ
ポリシロキサンは,両末端官能型,数平均分子量100
0〜15000,上記構造式1でR=メチル基であるも
のが好ましい。片末端型は,落書きのはじきや貼り紙の
防止性能には優れているものの,ポリジメチルシロキサ
ン鎖に自由度があるため分子量の小さな染料が溶剤と一
緒にしみこみやすく,薄いシミの除去ができない。数平
均分子量1000以下では撥水・撥油性能が弱く,数平
均分子量15000以上では他の成分との相溶性が悪
く,均一な塗液および透明な膜が得られない。
【0026】上記構造式のRがメチル基以外で代表的な
ものに,耐熱性および相溶性の向上を目的に一部フェニ
ル基に置き換えたものがあるが,貼り紙の粘着,油性汚
れあるいは油性落書きとの親和性が増し,性能が低下す
る。
【0027】a)脂環式エポキシ基を有するアルコキシ
シランに対するb)エポキシ基を有するオルガノポリシ
ロキサンの濃度は,0.1〜5重量%が好ましい。0.
1%より少ないとで落書き,貼り紙,汚れに対する効果
が得られず,5重量%より多いと均一な塗液および透明
な塗膜が得られない。また,両末端あるいは側鎖にエポ
キシ基を有するオルガノポリシロキサンのように二個以
上重合可能な官能基を有する場合,5重量%より多い
と,重合中にゲル化したり溶剤に不溶化する場合があ
る。
【0028】c)液状エポキシ樹脂としては,常温で液
状であり,1分子中に二つ以上エポキシを有するものな
ら任意のものが使用でき,エポキシ当量160〜230
のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂,ソルビトール
ポリグリシジルエーテル,ペンタエリスリトールポリグ
リシジルエーテル,トリメチロールプロパンポリグリシ
ジルエーテル,グリセロールポリグリシジルエーテル,
ジグリセロールポリグリシジルエーテル,ポリグリセロ
ールポリグリシジルエーテル,レゾルシンジグリシジル
エーテル,ネオペンチルグリコールジグリシジルエー
ル,1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル,
エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレン
グリコールジグリシジルエーテル,ポリエチレングリコ
ールジグリシジルエーテル,プロピレングリコールジグ
リシジルエーテル,ジプロピレングリコールジグリシジ
ルエーテル,ポリプロピレングリコールジグリシジルエ
ーテル,ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエ
ーテル,3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,
4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート,ビス−
(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジぺート等が挙
げられるが必ずしもこれに限定されるものではない。
【0029】a)脂環式エポキシ基を有するアルコキシ
シランに対する液状エポキシ樹脂化の濃度は,0.1〜
5重量%以下が好ましい。0.1重量%より少ないとア
ルコキシシリル基による架橋が進みすぎた場合,可撓性
が低下して膜にひびを生ずる場合があり,5重量%より
多いと重合転化率が低くなり膜物性に悪影響を与えると
共に,架橋密度も粗になり落書き,貼り紙,汚れに対す
る効果が十分得られない。
【0030】d)金属キレート化合物は任意のものが使
用できるが,アルミニウムキレート化合物,チタニウム
キレート化合物,ジルコニウムキレート化合物が好まし
い。特に好ましいのは,アルミニウムキレート化合物
で,例えば,エチルアセトアセテートアルミニウムジイ
ソプロピレート,アルミニウムトリス(エチルアセトア
セテート),アルキルアセトアセテートアルミニウムジ
イソプロピレート,アルミニウムモノアセチルアセトネ
ートビス(エチルアセトアセテート),アルミニウムト
リス(アセチルアセトネート)等が挙げられるが必ずし
もこれに限定されるものではない。
【0031】a)脂環式エポキシ基を有するアルコキシ
シランに対するc)金属キレート化合物の濃度は,0.
1〜100mmol%が望ましい。0.1mmol%よ
り少ないと低温では重合が起こり難く,100mmol
%より多いと重合転化率80%より低くくなり,塗工後
の膜物性に悪影響を与える。
【0032】a)脂環式エポキシ基を有するアルコキシ
シラン化合物,a)脂環式エポキシ基を有するアルコキ
シシランに対して0.1〜100mmol%の金属キレ
ート化合物,0.1〜5重量%のb)エポキシ基を有す
るオルガノポリシロキサン化合物,および0.1〜5重
量%のc)液状エポキシ樹脂を室温で混合することによ
り,重合転化率80%以上の液状樹脂混合物が得られ
る。重合転化率が80%以上であれば,脂環式エポキシ
基を有するアルコキシシランが残留していても,潜在的
な架橋剤となるため塗膜物性に影響はない。(重合転化
率は,GPCのピーク面積比から推定。)
【0033】重合転化率が80%未満,すなわち,脂環
式エポキシ基を有するアルコキシシランが20%以上残
留すると,アルコキシシリル基の架橋密度が増し収縮に
より膜にひび割れを生じる。
【0034】本発明の硬化性樹脂組成物は,液状でその
まま塗工することも可能であるが,湿気硬化による架橋
基アルコキシシリル基を多く含有するため,空気中にさ
らすと極めて保存安定性が悪い。そのため,任意のd)
有機溶剤で希釈して硬化性樹脂ワニスとして使用する。
【0035】d)有機溶剤に特に限定はないが,原料で
あるa)脂環式エポキシ基を有するアルコキシシランの
アルコキシ基の炭素数より大きい炭素数のアルコール
を,アルコキシ基の当量よりも多く含む有機溶剤である
ことが好ましい。
【0036】硬化性樹脂組成物の重合触媒に用いたc)
金属キレート化合物は,アルコキシシリルのアルコール
交換反応の触媒となるため,希釈溶剤にアルコキシシリ
ル基の炭素数より大きいアルコールを用いると,アルコ
キシシリル基の加水分解反応が遅くなり安定化する。
【0037】アルコールは,脂環式エポキシ基を有する
アルコキシシランのメトキシ基あるいはエトキシ基より
大きなアルキル基を有し,室温で留去するものが望まし
く。プロピルアルコール,イソプロピルアルコール,n
−ブタノール,ブチルセルロルブなど一般に塗料で用い
るアルコールが使用できるが,必ずしもこれに限定され
ない。他の溶剤も一般に塗料でも用いられる有機溶剤を
併用してもしなくてもよい。有効成分5〜60重量%が
好ましい。
【0038】2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)
エチルトリメトキシシランを用いた場合,メトキシシリ
ル基は加水分解しやすいため,それに続く縮合反応が起
こりやすく,無希釈あるいはアルコールを含まない有機
溶剤で希釈して保存すると皮ばりを生じたり,ゲル化し
やすい。
【0039】そこで,メトキシ基に比べて炭素数の多い
イソプロピルアルコール(以下IPAと略記する。)で
希釈すると,例えば75℃で1時間,または室温1週間
でほぼ完全にイソプロポキシ基に置換される。イソプロ
ポキシシリル基は,メトキシ基に比べて炭素数が大き
く,分岐しているため,加水分解されにくく,長期にわ
たって保存することができる。アルコール交換はGPC
による分子量の経時変化の追跡で確認できる。
【0040】重合およびアルコール交換反応は,室温で
も十分進行するが,重合後,液温が低下して増粘し,撹
拌効率が悪くなったり,アルコール交換率にバラツキを
生じる。品質を一定に保つためには,重合時およびアル
コールで希釈後1時間程度,70〜100℃の温度で加
熱すること望ましい。
【0041】アルコール交換反応は平衡反応なので,塗
布後,過剰のアルコールやその他の有機溶剤が乾燥によ
りなくなってしまえば,c)金属キレート化合物が触媒
として働き,加水分解および縮合反応が促進され,硬化
する。
【0042】しかし,c)金属キレート化合物は一部の
アルコキシシリル基と反応して重合開始剤やアルコール
交換触媒として働いたり,配位子がアルコールと反応す
るなどして十分な触媒活性を有していない。
【0043】そこで,架橋を促進するため,改めてf)
アルコキシシリル基の硬化促進剤を加えてから溶工する
ことが好ましい。f)アルコキシシリル基の硬化促進剤
は,c)金属キレート以外のもので,e)有機溶剤に溶
解しやすく,触媒活性に優れるものが望ましく,ジ−n
−ブチル錫ジラウレート,オクチル酸錫,アルキルチタ
ン酸塩,オクチル酸鉛などのカルボン酸金属塩,モノブ
チル錫サルファイド,ジ−n−ブチル錫ジ−オクチルメ
ルカプタイドなどのスルフィド型,メルカプチド型有機
錫化合物,p−トルエンスルフォン酸,フタル酸等の酸
性硬化促進剤,テトラエチルペンタミン,トリエチレン
ジアミン,N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピル
トリメトキシシランなどのアミン類,が挙げられる。こ
れらの硬化促進剤の添加量は,硬化性樹脂組成物に対し
て0.001〜10重量%で使用するのが好ましい。
0.001重量%より少ないと促進効果はほとんどな
く,10重量%より多いと硬化が速すぎて下地に対する
密着性が低下し膜の膨れひび割れの原因となる。通常,
硬化促進剤は主剤の希釈材と同じ有機溶剤で,1〜20
重量%に希釈して用いるが,直接添加してもかまわな
い。
【0044】本発明の硬化性樹脂ワニスのアルコキシシ
リル基は,有機溶剤中のより大きなアルキル基を有する
アルコールと交換反応が起こり,安定化されているため
硬化促進剤を添加しても可使時間が長い。一方,塗工
後,希釈溶剤がなくなると硬化反応が促進されるため1
時間以内に指触可能なまで硬化し,常温で約1日で落書
き/貼り紙防止性能が発現される。さらにそのまま放置
することにより,2週間から1ヶ月で鉛筆硬度4H以上
に達する。
【0045】本発明の硬化性樹脂組成物中には,種々の
目的のため,各種添加成分を加えることができる。例え
ば,硬化物性向上,粘度調節あるいはコストダウンのた
めにフィラー,希釈剤あるいは樹脂成分を加えたり,付
加価値を与えるために抗菌剤,防黴剤あるいは防腐剤等
を添加したり,着色するために顔料を添加することがで
きる。
【0046】
【実施例】以下に,実施例を挙げて本発明をさらに詳細
に説明する。
【0047】(表1〜7の説明)以下の様にに略記す
る。 S−530:サイラエースS−530,チッソ(株)
製,2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルト
リメトキシシラン FM−5525:サイラプレーンFM−5525,チッ
ソ(株)製,両末端エポキシ基含有ポリジメチルシロキ
サン(上記構造式1において,l=n=3,m=13
0,R= メチル基,X=Y=グリシドキシ基,Mn=1
0000) Ep−828:エピコート828,油化シェルエポキシ
(株)製,ビスフェノールA型エポキシ樹脂 Ex−313:デナコールEx−313,ナガセ化成工
業(株)製,グリセロールポリグリシジルエーテル Ex−830:デナコールEx−830,ナガセ化成工
業(株)製,ポリエチレングリコールジグリシジルエー
テル ALCH−TR:川研ファインケミカル(株)製,アル
ミニウムトリス(エチルアセトアセテート) IPA:イソプロピルアルコール 硬化促進剤:ジ−n−ブチル錫ジラウレートの5重量%
イソプロピルアルコール溶液 <硬化性樹脂の調整> [樹脂1〜4,]表1に従って,a)S−530,b)
官能基含有オルガノポリシロキサン,c)液状エポキシ
樹脂を混合し,これを75℃で撹拌しながら,c)AL
CH−TRを加えることにより,5〜10分後,100
〜180℃の発熱を伴うエポキシの開環重合が起こり,
表3に示す樹脂1〜4が得られた。
【0048】[樹脂5〜6]表1に従って,b)官能基
含有オルガノポリシロキサンまたはc)液状エポキシ樹
脂を75℃で撹拌しながら,c)ALCH−TRを加え
たが,発熱も増粘も起こらないまま樹脂5〜6が得られ
た。 [樹脂7]表1に従って,a)S−530,b)官能基
含有オルガノシロキサン,およびc)液状エポキシ樹脂
を混合し,表3に示す樹脂7が得られた。 <硬化性樹脂ワニスの調整> [樹脂ワニスA〜I]表2に従って,開環重合が終了し
75℃まで液温が下がった樹脂1〜4および樹脂5〜7
30gをそれぞれe)有機溶剤70gに溶解し,75
℃で1時間撹拌することにより表3に示す樹脂ワニスA
〜Iが得られた。 <塗液の調整> [実施例1〜5,比較例1〜4]表4に従って,調整し
た樹脂ワニスA〜I 100gと硬化促進剤 10gを
混合して実施例1〜5および比較例1〜4の塗液を調整
した。 <恒温室条件>温度25℃,湿度65%に設定した。 <塗布条件>調整した実施例1〜5および比較例1〜4
の塗液を,恒温室内でガラス板(20cm×10cm)
に5ミルのアプリケーターで塗布した。 <塗液の可使時間>調整した実施例1〜5および比較例
1〜4の塗液10gを50mlのサンプル管に入れ,密
栓して恒温室内で放置し,ななめに動かして流動性がな
くなるまでの時間を可使時間とした。
【0049】結果を表4に示す <塗膜の硬化時間>実施例1〜5および比較例1〜4の
塗液をガラス板に塗布後,恒温室内で指触により跡がつ
かなくなるまでの時間を塗膜の硬化時間とした。結果を
表4に示す。 <塗膜の表面状態>実施例1〜5および比較例1〜4の
塗液をガラス板に塗布後,恒温室内で24時間後,塗膜
状態を以下のように評価した。
【0050】 ○:透明かつ平滑。 △:平滑だが不透明。 ×:不透明で平滑でない。あるいは硬化・造膜しない。 結果を表4に示す。 <調整24時間後の塗膜の表面状態>実施例1〜5およ
び比較例1〜4の塗液10gを50mlのサンプル管入
れ密栓して,恒温室内で24時間保存してからガラス板
に塗布後,恒温室内で24時間後,塗膜状態を以下のよ
うに評価した。
【0051】 ○:透明かつ平滑。 △:平滑だが不透明。 ×:不透明で平滑でない。あるいは硬化・造膜しない。 結果を表4に示す。 <塗膜の硬度>実施例1〜5および比較例1〜4の塗液
をガラス板に塗布後,恒温室内で24時間後,塗膜硬度
をJIS K 5400 塗料一般試験方法 8.4
鉛筆引っかき値 8.4.2 手かき法に準拠して鉛筆
硬度として評価した。
【0052】結果を表5に示す。なお,比較例2〜4は
造膜しなかったので評価しなかった。 <塗膜の油性マジックインキ非着性能>塗膜の硬度試験
終了後,油性マジックインキで落書きを行い,その非着
性を以下の様に評価した。 ○:付着しにくい。 △:やや付着しにくい。 ×:付着する。
【0053】結果を表5に示す。なお,比較例2〜4は
造膜しなかったので評価しなかった。 <塗膜の油性マジックインキ汚れ除去性能>油性マジッ
クで落書きを行ってから24時間後に,乾布で擦り除去
性能を以下の様に評価した。 ○:容易に除去できる。 △:強く擦れば除去できる。 ×:除去できない。
【0054】結果を表5に示す。なお,比較例2〜4は
造膜しなかったので評価しなかった。 <塗膜のセロテープ非着性能>塗膜の硬度試験終了後,
長さ3cmのセロテープの半分を張り付けて,残り半分
を持ち上げてガラス板が持ち上がるかどうかで評価し
た。 ○:剥がれて持ち上がらない。 △:一部持ち上がるがすぐ剥がれる。 ×:完全持ち上がる。
【0055】結果を表5に示す。なお,比較例2〜4は
造膜しなかったので評価しなかった。 <硬化性樹脂ワニス経時変化の確認> [塗膜硬度の経時変化の確認 実施例6〜7]樹脂ワニ
スAおよびI 80gをサンプル瓶に入れて密栓し,5
0℃の恒温水槽に入れ,1ヶ月後の粘度変化を測定し
た。結果を表6に示す。 <硬化性樹脂組成物のポリマー分子量とポリマー/残留
モノマー比> [分子量分布の測定]硬化性樹脂ワニスA〜Fの分子量
分布を,定法に従って,GPC測定によって求め,図1
に示すように,開環重合によるポリマー(S−530を
主成分するモノマーの重合物)と残留モノマー(S−5
30,加水分解物,あるいはアルコール交換による生成
物)の比をピークの面積比から,それぞれの分子量を重
量平均分子量(Mwと略記)から求めた。結果を表3に
示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【発明の効果】本発明の硬化性樹脂組成物およびそのワ
ニスは,コンクリート,モルタル,セラミック,石材,
金属板,ガラス等の無機基材上,あるいは紙,プラスチ
ックシート,フィルム,塗装面等の有機基材上で常温硬
化し,耐候性,潤滑性,離剥性に優れた塗膜を形成する
ため,建築・土木分野等における落書き防止塗料,貼り
紙防止塗料,着氷着雪防止塗料等に有用な硬化性樹脂組
成物およびそのワニスならびに硬化物に関す。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、実施例1で用いた樹脂ワニスAのGPCに
よる分子量分布図である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】a)脂環式エポキシ基を有するアルコキシ
    シラン化合物,b)エポキシ基を有するオルガノポリシ
    ロキサン化合物,およびc)液状エポキシ樹脂を含むエ
    ポキシ混合物をd)金属キレート化合物を触媒に用いて
    共重合して得られた硬化性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】請求項1記載の硬化性樹脂組成物,および
    e)有機溶剤からなることを特徴とする硬化性樹脂ワニ
    ス。
  3. 【請求項3】f)アルコキシシリル基の硬化促進剤を含
    むことを特徴とする請求項2記載の硬化性樹脂ワニス。
  4. 【請求項4】e)有機溶剤が,アルコールを含む有機溶
    剤であることを特徴とする請求項2または3記載の硬化
    性樹脂ワニス。
  5. 【請求項5】アルコールの炭素数が,a)脂環式エポキ
    シ基を有するアルコキシシランのアルコキシ基の炭素数
    より大きいことを特徴とする請求項4記載の硬化性樹脂
    ワニス。
  6. 【請求項6】a)脂環式エポキシ基を有するアルコキシ
    シラン化合物のアルコキシ基の当量よりも多いe)アル
    コールを含むことを特徴とする請求項4または5記載の
    硬化性樹脂ワニス。
  7. 【請求項7】請求項2〜6いずれか記載の硬化性樹脂ワ
    ニスにて、被塗布基材がコンクリート、モルタル、セラ
    ミック、石材、金属板、ガラスから選ばれる無機基材ま
    たは紙、プラスチックシート、プラスチックフイルム、
    塗装面から選ばれる有機基材に塗布、硬化されたことを
    特徴とする硬化物。
JP10072498A 1998-04-13 1998-04-13 硬化性樹脂組成物およびそのワニスならびに硬化物 Pending JPH11293188A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10072498A JPH11293188A (ja) 1998-04-13 1998-04-13 硬化性樹脂組成物およびそのワニスならびに硬化物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10072498A JPH11293188A (ja) 1998-04-13 1998-04-13 硬化性樹脂組成物およびそのワニスならびに硬化物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11293188A true JPH11293188A (ja) 1999-10-26

Family

ID=14281584

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10072498A Pending JPH11293188A (ja) 1998-04-13 1998-04-13 硬化性樹脂組成物およびそのワニスならびに硬化物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11293188A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6835322B2 (en) * 2000-03-02 2004-12-28 Hokkaido Composition for member preventing accretion of snow or ice and member preventing accretion of snow or ice using the same
JP2006241320A (ja) * 2005-03-03 2006-09-14 Kyocera Chemical Corp エポキシ樹脂組成物および光半導体装置
JP2020073336A (ja) * 2017-10-12 2020-05-14 東洋紡株式会社 セラミックグリーンシート製造用離型フィルム

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6835322B2 (en) * 2000-03-02 2004-12-28 Hokkaido Composition for member preventing accretion of snow or ice and member preventing accretion of snow or ice using the same
JP2006241320A (ja) * 2005-03-03 2006-09-14 Kyocera Chemical Corp エポキシ樹脂組成物および光半導体装置
JP2020073336A (ja) * 2017-10-12 2020-05-14 東洋紡株式会社 セラミックグリーンシート製造用離型フィルム
JP2020073335A (ja) * 2017-10-12 2020-05-14 東洋紡株式会社 セラミックグリーンシート製造用離型フィルム
JP2020075510A (ja) * 2017-10-12 2020-05-21 東洋紡株式会社 セラミックグリーンシート製造用離型フィルム

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4110402B2 (ja) シリコーン系コーティング剤組成物
JP4775543B2 (ja) オルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物及びその製造方法、ならびに該組成物の被膜が形成された物品
US5905109A (en) Water-type dispersion composition
WO2019090456A1 (en) An anti-graffiti coating composition
WO1996035755A1 (fr) Composition de resine durcissable
JP3123351B2 (ja) 硬化性シリコーン組成物
CN113249033B (zh) 一种缩合型含氟离型剂及主要成分的制备方法
EP0572179A2 (en) Epoxy-silicone compositions
CN107532061B (zh) 压敏黏接剂
JP4600351B2 (ja) 撥水・撥油性樹脂組成物及び塗装品
EP0656016B1 (en) Rapidly curable vinyl ether release coatings
JP3772524B2 (ja) 水系コーティング樹脂組成物およびそれを用いた塗装品
US5162452A (en) Thermocurable compositions
JPH11293114A (ja) 硬化性樹脂組成物およびそのワニスならびに硬化物
JP4906219B2 (ja) 塗料組成物
JPH11217439A (ja) 硬化性樹脂組成物およびそのワニス
JPH0446306B2 (ja)
JPH11293188A (ja) 硬化性樹脂組成物およびそのワニスならびに硬化物
JP2805942B2 (ja) コーティング用材料
JPH11158250A (ja) 硬化性樹脂組成物
JPWO2011099505A1 (ja) 屋外設置用デバイスおよび屋外設置用デバイス用反射防止層
JP2008138059A (ja) オルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物及び該組成物の被膜が形成された物品
JP3242442B2 (ja) コーティング用組成物
JP2898200B2 (ja) 電子線硬化性剥離剤組成物
JPH0786182B2 (ja) コーティング樹脂組成物