JPH11292880A - 新規のサキシトキシン誘導体およびその製造方法 - Google Patents

新規のサキシトキシン誘導体およびその製造方法

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JPH11292880A
JPH11292880A JP9179798A JP9179798A JPH11292880A JP H11292880 A JPH11292880 A JP H11292880A JP 9179798 A JP9179798 A JP 9179798A JP 9179798 A JP9179798 A JP 9179798A JP H11292880 A JPH11292880 A JP H11292880A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 麻痺性貝毒の一種であるゴニオトキシン類の
11位にチオール基をもつ有機化合物を置換導入するこ
とを特徴とするサキシトキシン誘導体の製造法を提供す
ること。 【解決手段】 式(I): 【化1】 (式中、R1はH、CONH2またはCONHSO3 -であり、R2はHま
たはOHであり、R3はHまたはOSO3 -であり、およびR4はH
またはOSO3 -であり、但し、R3またはR4のいずれかがOSO
3 -であり且つR3およびR4の両方が同時にOSO3 -ではな
い。)の麻痺性貝毒ゴニオトキシン類を、少なくとも1
個のチオール基をもつ有機化合物と中性条件下に加熱し
反応させて、式(I)の11位のOSO3 -基を前記チオール
基のイオウ原子を介して前記有機化合物で置換し、式
(I)中R3またはR4のいずれかが−S-(有機化合物)であ
り且つR3およびR4の両方が同時に−S-(有機化合物)では
ないサキシトキシン誘導体を製造する方法、並びに、こ
のようにして得られるサキシトキシン誘導体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、麻痺性貝毒の一種
であるゴニオトキシン類の11位にチオール基をもつ有
機化合物をそのイオウ原子を介して置換導入することを
特徴とするサキシトキシン誘導体の製造方法に関する。
本発明はまた、このような方法で得ることができるサキ
シトキシン誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】麻痺性貝中毒は神経麻痺を主徴とする症
状を呈し、その原因毒はゴニオトキシン類およびサキシ
トキシン類であることが判明している[安元健、麻痺性
貝毒、食品衛生検査指針(理化学編、厚生省生活衛生局
監修)、第300−305頁、日本食品衛生協会、1991年]。
これらの原因毒は麻痺性貝毒と総称され、現在、イガ
イ、ハマグリ等の貝類に見出される貝毒としてゴニオト
キシン類、サキシトキシン類で20種以上が知られてい
る。
【0003】この貝毒はナトリウムチャンネルをブロッ
クする性質を有し且つ麻痺性であり、渦鞭毛藻という植
物プランクトンのうちの数種類がこの毒をもっており、
これを餌として食べた貝が毒をため込み毒化する。この
貝を食すると死亡率の高い食中毒を引き起こすため、水
産および食品衛生上大きな社会問題になっている。因み
に、麻痺性貝毒を0.5〜1.0μg経口摂取しただけで感覚
麻痺、悪心、下痢などの症状がでる。ヒトにおける致死
量は1〜3mgである。
【0004】このため、麻痺性貝毒を定量する方法が開
発されてきた。たとえば、公定法であるマウスを用いた
致死活性測定法[安元健、前掲;J.F. Jellettら, Tox
icon,30(10):1143-1156 (1992); W. Horwitz, Paralyti
c shellfish poison. In “Official Methods of Analy
sis of the Association of Official Analytical Chem
ists" (Assoc. Official Anal. Chem., Washington D.
C.) pp. 881-882 (1990)]、高速液体クロマトグラフィ
ー法[Y. Oshimaら, Mycotoxins and Phycotoxins'88(S.
Natoriら編), pp. 319-326, Elsevier, Amsterdam (19
89));特開平9−133669号公報]、神経芽細胞を用いる方
法[K. Kogureら,Toxicin,26:191−197(1989)]、抗
体を用いる方法[F.S. Chuら,J. Agri. Food Chem.,
44:4043−4047(1996)]などが知られている。致死活
性測定法は、マウスに試験原液を腹腔内に注射し、注射
の終了した瞬間からマウスが典型的な麻痺性貝毒による
症状を示して死亡する際の最後のあえぎまでの時間(致
死時間)を秒単位で記録する方法である。高速液体クロ
マトグラフィー法は、麻痺性貝毒を含む試料を高速液体
クロマトグラフィーにかけて麻痺性貝毒を分離し、溶出
液に酸化剤を加えてアルカリ中で反応させた後、生じた
蛍光性物質の蛍光を測定する方法である。神経芽細胞を
用いる方法は、ウアバインまたはベラトリジンがマウス
神経芽細胞系においてナトリウム流入を促進し、これに
よって細胞が膨潤し形態学的剛直性を失うという性質を
利用するものであり、このアッセイ系に麻痺性貝毒を含
む試料を添加したときには細胞の丸まりと細胞死が著し
く抑制されることを利用した方法である。さらに、免疫
学的方法は、麻痺性貝毒に対する抗体を用いて、たとえ
ば酵素免疫測定法(たとえばELISA)等の方法で直接試
料中の麻痺性貝毒を定量する方法である。
【0005】特に、本発明との関連において、F.S. Chu
ら(前掲)は抗サキシトキシン抗体/サキシトキシン−
西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体または抗ネオサキシ
トキシン抗体/ネオサキシトキシン−西洋ワサビペルオ
キシダーゼ結合体を用いるELISAによって麻痺性貝毒の
全量を測定するアッセイ方法を開示している。抗体の調
製は、F.S. Chuら, J. Assoc. Off. Anal. Chem. 198
5,68:13−16およびF.S. Chuら, J. AOAC Int. 199
2,75:341−345に従って調製されているが、その手順
は、Johnsonら(1964、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.,1
17,425)の方法に準じ、BSA、polylisineもしくはKeyho
le limpet(カサガイ)のヘモシアニンをホルムアルデヒ
ドを含む弱酸性水溶液中でサキシトキシンまたはネオサ
キシトキシンと反応させて得た結合体を、ウサギに皮下
注射してポリクローナル抗体を得ることによっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、致死活
性測定法および神経芽細胞法においては、動物や細胞の
管理、検出感度、精度、特異性などの点で問題がある
し、高速液体クロマトグラフィー法においては、操作は
簡単で、精度も高いが、麻痺性貝毒の種類によって感度
が異なること、精製された外部標準の供給がないことな
どの欠点を有している。また、免疫学的方法において
は、抗体の反応性がサキシトキシン誘導体の種類によっ
て異なるなどの点で問題がある。したがって、麻痺性貝
毒を簡便に精度高く、しかも貝毒の種類によらず感度一
定に測定する方法の開発が望まれてきた。
【0007】このような状況下にあって、本発明者ら
は、潜在的にこのような要求に応えることができるサキ
シトキシン誘導体を容易に製造しうる方法を今回見出し
た。本発明の誘導体を用いるならば、個々のサキシトキ
シン誘導体に対する特異抗体を調製することができると
ともに、この抗体をカラム担体に結合するときには麻痺
性貝毒を分離、除去することも可能になる。従来、麻痺
性貝毒は複雑な構造をもつため、その構造に他の分子を
化学的に共有結合させた例は知られていなかった。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ゴニオト
キシン類にチオール基をもつ有機化合物を作用させる
と、該化合物がそのイオウ原子を介してゴニオトキシン
類の11位のOSO3 -基と置換反応することを見出した。し
たがって、本発明は、式(I):
【0009】
【化4】
【0010】(式中、R1はH、CONH2またはCONHSO3 -であ
り、R2はHまたはOHであり、R3はHまたはOSO3 -であり、
およびR4はHまたはOSO3 -であり、但し、R3またはR4のい
ずれかがOSO3 -であり且つR3およびR4の両方が同時にOSO
3 -ではない。)の麻痺性貝毒ゴニオトキシン類を、少な
くとも1個のチオール基をもつ有機化合物と加熱し反応
させて、式(I)の11位のOSO3 -基を前記チオール基の
イオウ原子を介して前記有機化合物で置換し、式(I
I):
【0011】
【化5】
【0012】[式中、R1およびR2は前記定義のとおりで
あり、R3はHまたは−S-(有機化合物)であり、およびR4
はHまたは−S-(有機化合物)であり、但し、R3またはR4
のいずれかが−S-(有機化合物)であり且つR3およびR4
両方が同時に−S-(有機化合物)ではない。]のサキシト
キシン誘導体を得ることを含む、サキシトキシン誘導体
の製造方法を提供する。
【0013】本明細書中、「チオール基をもつ有機化合
物」とは、上記定義のゴニオトキシン類の11位のOSO3 -
基と置換反応しうるチオール基(または、もし同様の反
応を起こしうるならばジスルフィド基であってもよい)
をもつ任意の分子量の天然または非天然の有機化合物を
意味する。したがって、「−S−(有機化合物)」は、前
記有機化合物がゴニオトキシン類の11位のOSO3 -基と置
換反応した後の残基を示す。本発明はまた、式(II):
【0014】
【化6】
【0015】[式中、R1およびR2は前記定義のとおりで
あり、R3はHまたは−S-(有機化合物)であり、およびR4
はHまたは−S-(有機化合物)であり、但し、R3またはR4
のいずれかが−S-(有機化合物)であり且つR3およびR4
両方が同時に−S-(有機化合物)ではない。]のサキシト
キシン誘導体を提供する。
【0016】本発明の一実施態様により、式(II)中、
R3であり、R4がHであるサキシトキシン誘導体を提供す
る。本発明の別の実施態様により、式(II)中、R3が−
S-CH2CH2OHであり、R4がHであるサキシトキシン誘導体
を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明において、出発物質である
式(I)のゴニオトキシン類としては、たとえばカルバ
メート毒群のゴニオトキシン−1(R1がCONH2であり、R
2がOHであり、R3がHであり、R4がOSO3 -である)、ゴニ
オトキシン−2(R1がCONH2であり、R2がHであり、R3
Hであり、R4がOSO3 -である)、ゴニオトキシン−3(R1
がCONH2であり、R2がHであり、R3がOSO3 -であり、R4がH
である)、およびゴニオトキシン−4(R1がCONH2であ
り、R2がOHであり、R3がOSO3 -であり、R4がHである);
脱カルバモイル毒群のデカルバモイルゴニオトキシン−
1(R1がHであり、R2がOHであり、R3がHであり、R4がOS
O3 -である)、デカルバモイルゴニオトキシン−2(R1
がHであり、R2がHであり、R3がHであり、R4がOSO3 -であ
る)、デカルバモイルゴニオトキシン−3(R1がHであ
り、R2がHであり、R3がOSO3 -であり、R4がHである)、
およびデカルバモイルゴニオトキシン−4(R1がHであ
り、R2がOHであり、R3がOSO3 -であり、R4がHである);
N−スルフィカルバモイル毒群のC1エピゴニオトキシン
−8(R1がCONHSO3 -であり、R2がHであり、R3がHであ
り、R4がOSO3 -である)、C2ゴニオトキシン−8(R1がC
ONHSO3 -であり、R2がHであり、R3がOSO3 -であり、R4がH
である)、C3トキシン(R1がCONHSO3 -であり、R2がOHで
あり、R3がHであり、R4がOSO3 -である)、およびC4トキ
シン(R1がCONHSO3 -であり、R2がOHであり、R3がOSO3 -
であり、R4がHである)、等を挙げることができる。こ
れらはいずれも麻痺性貝毒として同定されたものである
(安元健、前掲)が、天然においては実際9割以上がゴ
ニオトキシン類として見出されており、サキシトキシン
類は痕跡程度しか含まれていないようである。本発明に
おいては、サキシトキシン類似体が得られるが、11位の
構造を除いて基本的にはゴニオトキシン類と同等の構造
を有する。
【0018】本発明において用いられるチオール基をも
つ有機化合物は、上記定義のとおり、ゴニオトキシン類
の11位のOSO3 -基と置換反応しうるチオール基(または
ジスルフィド基であってもよい)をもつ任意の分子量の
任意の有機化合物であり、上記反応性を有する限り化合
物の種類は問わない。一例を挙げれば、チオール基をも
つ有機化合物はメルカプトエタノール、システアミン
(cysteamine)、2−メルカプトプロピオン酸などの、
分子骨格の末端または内部にチオール基を有する化合物
である。このような化合物はまた、本発明の置換反応を
妨げない限り分子中に他の反応性基(たとえば、水酸
基、アミノ基、カルボキシル基など)を有することがで
きる。このような反応性基はたとえばタンパク性ハプテ
ン担体との結合に利用可能である。本化合物の他の例
は、分子骨格の末端または内部にシステイン残基をもつ
ペプチド(たとえば、グルタチオン)である。
【0019】サキシトキシンのような低分子化合物はハ
プテンに属し、それ自体は抗原性をもたないが、抗原性
をもつタンパク質を担体として、これと共有結合した複
合体はハプテンに対する特異抗体を産生する抗原とな
る。ハプテン−タンパク質複合体を免疫注射するとハプ
テン部分は抗原決定基として認識され、抗ハプテン抗体
が産生されると考えられている。このとき、余分な抗原
決定基ができにくい選択的な結合方法でハプテン抗原を
作製する必要がある。ハプテンの部分構造に対する認識
は、ハプテンと担体であるタンパク質の結合部位付近で
は弱く、より離れた部分構造を認識しやすい。したがっ
て、タンパク質と結合する際には、ハプテン中の適切な
結合位置を選択することが大切である。
【0020】ゴニオトキシン類またはサキシトキシン類
はそれ自体抗原性を有していないハプテンであるうえ
に、タンパク質と容易に結合できる官能基をもっていな
いため、ハプテン−タンパク質複合体を形成することが
困難であった。しかし、本発明に係る方法によってハプ
テンに官能基を導入することにより、免疫抗原として好
ましい複合体の形成が可能となる。
【0021】担体となるタンパク質としてはアルブミ
ン、ヘモシアニンなどである。ゴニオトキシン類または
サキシトキシン類を結合するためには、先ずこれらの分
子に後述する実施例2の手順でグルタチオンなどの上記
定義の有機化合物を導入した後、該有機化合物部分のア
ミノ基、カルボキシル基などの反応性基を利用して、担
体タンパク質とマレイミド法(T. Kitagawaら,J.Bioch
em.92:585-590,1982)やカルボジイミド法(D. Exley
ら,FEBS Lett.,91:162−165,1978)などで結合させ
ることができる。このように、本発明の方法を用いるこ
とにより、担体との結合位置を特定できるハプテン−タ
ンパク質複合体を得ることができる。
【0022】理論に拘束されるつもりはないが、本発明
においては、チオール基をもつ有機化合物のSH基がその
電子供与性のためにゴニオトキシン類の11位の炭素原子
を求核的に攻撃し、その結果OSO3 -基が離脱し、該11位
の炭素原子に−S-(有機化合物)が結合すると考えられ
る。
【0023】本発明においては、反応は中性条件下で反
応物質を加熱することによって起こる。一般にpH6.5〜
7.5、好ましくはpH7.0〜7.5の適切な緩衝液、たとえば
燐酸アンモニウム緩衝液、酢酸アンモニウム緩衝液等を
用いて反応を行うことができる。もちろん、本発明の目
的の反応が起こるならば、上記範囲外のpHも用いるこ
とができる。また、反応温度は、一般に室温〜約100
℃、好ましくは50℃〜80℃、より好ましくは約 70 ℃で
ある。反応条件は、一般にチオール基をもつ有機化合物
の種類によって変わり得るが、もし温度を高めるなど条
件をきつくする場合には生成物の一部はサキシトキシン
に変化することもありうる。
【0024】反応後、目的の生成物を、調製用高速液体
クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、イ
オン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィ
ー、逆相分配クロマトグラフィー等の手段を単独でまた
は組合わせて実施し、精製することができる。生成物の
同定は、赤外分光法、質量分析法、NMR法、元素分析、
アミノ酸分析などの通常の測定法によって行うことがで
きる。
【0025】本発明のサキシトキシン誘導体を、マウ
ス、ラット、ウサギ、ヤギ、等の哺乳動物に免疫するこ
とによって該誘導体に対するポリクローナルまたはモノ
クローナル抗体を作製することができる。通常、免疫原
溶液を等量のフロインド氏完全アジュバントまたは不完
全アジュバントと乳化混合し、動物に皮下注射した後、
2乃至4週間の間隔で同様の操作を行い数回免疫し、放
血して抗血清を得るか、あるいは、免疫後に脾臓を無菌
的に取り出し、脾臓細胞を調製した後、ミエローマ細胞
と融合し、ハイブリドーマをHAT培地等の選別用培地で
選別し、動物細胞培養用培地中で継代培養するか、また
はマウスもしくはラットの腹腔内に移植培養し腹水から
モノクローナル抗体を採取することができる。モノクロ
ーナル抗体の作製については、MilsteinとKholer,Natu
re256:495 (1976)、続生化学実験講座,免疫生化学研
究法(日本生化学会編)等に記載される方法を使用でき
る。
【0026】上記のようにして得られたポリクローナル
抗体またはモノクローナル抗体は、麻痺性貝毒を含むと
推定される食品等の検体中の貝毒を検出するために使用
することができる。検出は慣用の抗原抗体反応を用いて
行うことができ、固相法もしくは均質法、競合法もしく
は非競合法、サンドイッチ法などの方法を使用できる。
たとえば、サンドイッチ法を用いる場合には、過剰量の
標識化第二抗体を用いるが、標識としてペルオキシダー
ゼ、アルカリフォスファターゼ等の酵素、125I、32P等
の放射性同位体、FITC等の蛍光物質、アクリジニウム等
の化学発光物質を用いることができる。標識の種類に依
存して、ELISA等の酵素抗体法、ラジオイムノアッセ
イ、蛍光抗体法の使用が可能である。
【0027】さらに、本発明のサキシトキシン誘導体に
対する抗体は、臭化シアン等で活性化されたデキストラ
ン樹脂(たとえばSephadexTM類)、アガロース樹脂(た
とえばBio−GelTM類)、等の樹脂に結合するときには、
問題の貝毒を分離除去するためのアフィニティーカラム
担体とすることができる。
【0028】
【実施例】以下の実施例によって本発明をさらに具体的
に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限さ
れるものではない。なお、以下の実施例においては、大
船渡湾産ホタテガイの抽出物から活性炭、Bio−GelP−
2およびBio−Rex 70各カラムクロマトグラフィーで精製
した麻痺性貝毒[ゴニオトキシン−1およびゴニオトキ
シン−4の混合物(以下、GTX1,4と称する)]を出発物質
として用いた。
【0029】実施例1 メルカプトエタノール−ネオサキシトキシン複合体の調
凍結乾燥したGTX1,4混合物(2mg)を10mMのメルカプト
エタノールを含む50mM燐酸アンモニウム緩衝液50mL(p
H7.4)に混合し、70℃、120分加熱還流した。氷冷後、
希酢酸でpHを6.5に調製し、Bio-Gel P-2カラム(Bio-R
ad Laboratories, Fine,5×10cm)に添加した。水1L
でカラムを洗浄し、燐酸および未反応のメルカプトエタ
ノールを除去した後、0.1Mの酢酸で溶出する画分を集め
凍結乾燥した。本画分は目的成分の他に反応中に生じた
ネオサキシトキシンおよび未反応のGTX1,4を含むため、
これらの除去を目的としてHEMA IEC BIO 1000CMカラム
(7.5×250mm, Alltech)および移動相として1%酢酸
(流速1.0ml/分)を用いるHPLCで精製し、HPLC上およびT
LC上単一な1.0mgの標題の複合体を得た。同定結果は以
下のとおりである。
【0030】1HNMR(DMSO):δ4.35(1H,s,H5),4.05(1H,br
t,J=11.7Hz,H2'a),3.96(1H,dd,10.6, 3.9Hz,H13a),3.85
(1H,t,J=9.8Hz,H13b),3.74(1H,brd,J=11.2Hz,H2'b),3.6
6(1H,brm,10b),3.54(1H,dd,J=9.28,4.16Hz,H6),3.36(1
H,brm,10a),3.20(1H,t,J=9.28Hz,11),2.87(1H,brt,J=1
1.7Hz,H1'a),2.22(1H,brd,J=13.9Hz,1'a)13 CNMR(DMSO):δ159.34,156.88,156.21,95.57,84.53,6
4.54,60.22,58.66,54.24,46.25,35.86,23.27 質量分析(HRFABMS) m/z374.1290(M+H-H2O)+(C12H2ON7SO
5の計算値374.1247)
【0031】実施例2 グルタチオン−ネオサキシトキシン複合体の調製 凍結乾燥したGTX1,4混合物(5mg,モル比GTX1:GTX4=
3:1)を30mMの還元型グルタチオン(GluCysGly)(和
光純薬工業)を含む100mM燐酸アンモニウム緩衝液50mL(p
H7.4)に混合し、70℃で20分加熱還流した。氷冷後、希
酢酸でpHを6.5に調整した。実施例1の場合と同様に精
製し、2.9mgの標題の複合体を得た。同定結果は以下の
とおりである。
【0032】1HNMR(D2O):δ4.57(1H,s,H5),4.35(1H,dd,
J=7.8,5.2Hz,Cysα),4.26(1H,brd, J=12.2Hz,H13a),4.1
9(1H,J=12.2Hz,H13b),4.13*(1H,d,J=11.2Hz),3.90(1H,b
rm),3.7-3.6(5H,m),2.96(1H,dd,J=13.9,5.2Hz,Cysβ),
2.76(1H,dd,J=13.4,7.8Hz),2.4(2H,brm,Gluγ),2.05(2
H,brm,Gluβ) (*帰属は未定である。) 質量分析(ESIMS) m/z621 (M+H)+
【0033】
【発明の効果】本発明によって、麻痺性貝毒であるゴニ
オトキシン類の11位にチオール基をもつ有機化合物をそ
のイオウ原子を介して置換導入することができ、これに
よって得られるサキシトキシン誘導体は該貝毒に特異的
な抗体の作製に有用である。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(I): 【化1】 (式中、R1はH、CONH2またはCONHSO3 -であり、R2はHま
    たはOHであり、R3はHまたはOSO3 -であり、およびR4はH
    またはOSO3 -であり、但し、R3またはR4のいずれかがOSO
    3 -であり且つR3およびR4の両方が同時にOSO3 -ではな
    い。)の麻痺性貝毒ゴニオトキシン類を、少なくとも1
    個のチオール基をもつ有機化合物と加熱し反応させて、
    式(I)の11位のOSO3 -基を前記チオール基のイオウ原
    子を介して前記有機化合物で置換し、式(II) 【化2】 [式中、R1およびR2は前記定義のとおりであり、R3はH
    または−S-(有機化合物)であり、R4はHまたは−S-(有機
    化合物)であり、但し、R3またはR4のいずれかが−S-(有
    機化合物)であり且つR3およびR4の両方が同時に−S-(有
    機化合物)ではない。]のサキシトキシン誘導体を得る
    ことを含む、サキシトキシン誘導体の製造方法。
  2. 【請求項2】 チオール基をもつ有機化合物が、メルカ
    プトエタノールまたはグルタチオンであることを特徴と
    する請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 式(II)中、R3であり、R4がHであることを特徴とする請求項1または
    2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 式(II)中、R3が−S-CH2CH2OHであり、
    R4がHであることを特徴とする請求項1または2に記載
    の方法。
  5. 【請求項5】 pH7.0〜7.5、50℃〜80℃で反応するこ
    とを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 【請求項6】 式(II): 【化3】 [式中、R1およびR2は前記定義のとおりであり、R3はH
    または−S-(有機化合物)であり、およびR4はHまたは−S
    -(有機化合物)であり、但し、R3またはR4のいずれかが
    −S-(有機化合物)であり且つR3およびR4の両方が同時に
    −S-(有機化合物)ではない。]のサキシトキシン誘導体
  7. 【請求項7】 前記−S−(有機化合物)が、メルカプ
    トエタノールまたはグルタチオンに由来することを特徴
    とする請求項6に記載の誘導体。
  8. 【請求項8】 請求項1〜5のいずれかに記載の方法に
    よって得られることを特徴とする請求項6または7に記
    載の誘導体。
  9. 【請求項9】 R3であり、R4がHであることを特徴とする請求項6〜8の
    いずれかに記載の誘導体。
  10. 【請求項10】 R3が−S-CH2CH2OHであり、R4がHであ
    ることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の
    誘導体。
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