JPH11290286A - 導電性高分子ゲル、その製造法および用途 - Google Patents

導電性高分子ゲル、その製造法および用途

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JPH11290286A
JPH11290286A JP10103177A JP10317798A JPH11290286A JP H11290286 A JPH11290286 A JP H11290286A JP 10103177 A JP10103177 A JP 10103177A JP 10317798 A JP10317798 A JP 10317798A JP H11290286 A JPH11290286 A JP H11290286A
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JP
Japan
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polymer gel
conductive polymer
gel
acid amide
electrode
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Application number
JP10103177A
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English (en)
Inventor
Kazuhiro Yoshikawa
吉川  和宏
Shuichi Sasahara
秀一 笹原
Takahiko Fujita
貴彦 藤田
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Sekisui Kasei Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Plastics Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】導電性高分子ゲルおよびそれを使用した生体電
極を提供する。 【構成】一般式: CH2=CHNR1COR2 〔式中、R1及びR2 は、n=0〜6のCnH2n+
1を表す。〕で表されるN−ビニルカルボン酸アミドの
重合架橋高分子中に、少なくとも水と湿潤剤とを主成分
として電解質塩が均一に含有してなる導電性高分子ゲ
ル、その製造方法、および本導電性高分子ゲルを使用し
た生体用電極。 【効果】本導電性高分子ゲルは、生体電極として用いる
とき電気的に高性能であり、かつ優れた耐汗性を発揮す
る。このために、長時間の心電図等の測定においても、
発汗等により粘着力が低下したり、体表面から剥離する
ことがなく、精度よく測定を続けることができる。ま
た、インピーダンスが低く、微弱な電気信号でも精度よ
く測定できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、導電性高分子ゲル、そ
の製造方法および用途に関する。さらに詳細には、長時
間にわたって低いインピーダンスを維持することができ
るゲル状のN−ビニルカルボン酸アミド重合架橋高分子
をマトリックスとする導電性高分子ゲル、その製造方法
およびそれを使用する生体用電極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】導電性高分子ゲルは、電解コンデンサ、
バッテリの固形電解液、温度センサー、圧力センサーあ
るいは生体電極等に多方面で使用されている。その一用
途として、医学分野においては、適切な診断あるいは治
療を行うことを目的に、心電図や筋電図あるいは脳波等
の生体電位を測定したり、体内へ電気信号を送り込むこ
とによって電気的な治療を施すことが多くなっている
が、これらの測定や治療には、生体と外部装置との間に
介在する媒体としての生体用電極が重要な役割を担って
おり、導電性高分子ゲルが使用されている。
【0003】上記の生体用電極は、例えば生体電位を測
定する場合、微弱な電気信号を効率良く取り出して心電
図計等に誘導するため、生体の一部に直接的に接触させ
ることが必要になっているが、生体の皮膚に生体用電極
エレメントを接触させただけでは、生体用電極エレメン
トと生体とが電気的に接合されず、生体用電極エレメン
トと皮膚との不安定な接触による複雑な電位やインピー
ダンスが生じるため、生体電気信号を精度良く測定する
ことができない。
【0004】そこで、通常、上記の生体用電極は、皮膚
への刺激性が無いこと、生体用電極を皮膚に密着させる
ことによって安定した電気信号を生体から外部装置へ誘
導可能なことから、導電性高分子ゲルを介して生体に取
り付けられている。
【0005】このような導電性高分子ゲルとして、例え
ば特開平6−181894号公報には、架橋されたポリ
アクリルアミド系高分子中に、水および多価アルコール
とを主成分として電解質塩が均質含有された導電性高分
子材ゲルが開示されている。この導電性高分子材ゲル
は、長時間にわたって低いインピーダンスを維持するこ
とができ、しかも、高い粘着性を有するアクリルアミド
系の導電性高分子ゲルとして優れたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】特開平6−18189
4号公報に記載されたアクリルアミド系の導電性高分子
ゲルは、アクリルアミド系重合架橋高分子を使用してい
るので親水性に優れ、通常、溶媒、すなわち水のブリー
ドが発生せず安定なゲルである。しかしながら、生体に
長時間貼付する必要がある場合に、発汗などによって粘
着力が低下することがある。これは、上述したように、
親水性が高いポリアクリルアミドをマトリックスとして
使用しているために、前記のゲルは生体との界面部分で
汗を吸収することから、局部的に膨潤し、マトリックス
が湿潤剤である多価アルコールを保持しきれずにゲルの
表面にブリードしてくるためであると、推測される。
【0007】このような、多価アルコールのゲル表面へ
のブリードを防ぐために、湿潤剤である多価アルコール
の添加量を少なくすると、電極として使用する際に、ゲ
ルが乾燥しやすくなり、インピーダンスが増大するとい
う結果を招いてしまう。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、これらの
問題点を解決するために種々検討した結果、N−ビニル
カルボン酸アミドの重合架橋高分子がマトリックスとし
て好適に使用できることを見出し、さらに研究を進めて
本発明を完成したものである。すなわち、本発明は、 1)一般式(I) CH2=CHNR1COR2 (I) [式中、R1及びR2 は、n=0〜6のCn2n+1を表
す。]で表されるN−ビニルカルボン酸アミドの重合架
橋高分子中に、少なくとも水と湿潤剤とを主成分として
電解質塩が均一に含有されたことを特徴とする導電性高
分子ゲル、 2)上記1)項記載のN−ビニルカルボン酸アミドを重合
性単量体として、さらに架橋性単量体、水、多価アルコ
ール、及び電解質塩を混合した配合液に、重合開始剤を
添加して、重合架橋することを特徴とする導電性高分子
ゲルの製造方法、および 3)上記1)項記載の導電性高分子ゲルを使用したことを
特徴とする生体用電極、に関するものである。
【0009】本発明で使用するN−ビニルカルボン酸ア
ミドは、一般式(I)で表されるとおりであり、非イオ
ン性であり水溶性であると同時に、アルコール親和性を
有する。その具体例としては、N−ビニルホルムアミ
ド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオンア
ミド、N−ビニル,N−メチルホルムアミド、N−ビニ
ル,N−メチルアセトアミド、N−ビニル,N−メチル
プロピオンアミド、N−ビニル,N−エチルホルムアミ
ド、N−ビニル,N−エチルアセトアミド、N−ビニル
あるいはN−エチルプロピオンアミド等のN−ビニルア
ルキルアミド誘導体等を挙げることができる。
【0010】上記のN−ビニルカルボン酸アミド重合性
単量体の導電性高分子ゲル中での組成率は、10〜50
重量%の範囲に設定されているのが好ましい。この組成
率を10重量%未満にして導電性高分子ゲルを作成した
場合、ゲル中に占める高分子主鎖の割合が低すぎるため
十分に腰強度の大きなゲルを得ることができず、ゲルの
網目構造中に封じ込められた電解液を安定な状態に維持
することが困難となるため好ましくない。一方、N−ビ
ニルカルボン酸アミド重合性単量体の組成率が50重量
%を越えた場合、ゲル強度が高く且つ腰強度が過剰に大
きくなり、ゲルの網目構造が密になり過ぎるために、粘
着性能が低下すると共に、網目中に封じ込めることがで
きる電解液の絶対量が小さくなるので、得られるゲルの
電気性能、特に、インピーダンスが高くなるので好まし
くない。
【0011】本発明において、重合性単量体の原料とし
てポリN−ビニルカルボン酸アミドを使用するので、安
全性が高く、製造時の取り扱いが容易で、製造時の環境
を改善できるという長所がある。
【0012】次に、本発明の導電性高分子ゲルは、ポリ
N−ビニルカルボン酸アミドを重合性単量体として、こ
れに少なくとも架橋性単量体、水、多価アルコール、及
び電解質塩を混合した配合液に、重合開始剤を添加し
て、重合架橋することにより製造できる。
【0013】この架橋性単量体としては、たとえば脂肪
族不飽和結合を二官能以上有する化合物や、脂肪族不飽
和結合単官能と側鎖に脱離基を有する化合物が好まし
く、これらを1種もしくは2種以上組み合わせて使用す
ることが可能である。ここでいう2個以上の不飽和基を
有する化合物としては、具体的には、エチレングリコー
ルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ
(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、等のポリエチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリ
レート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ペン
タンジオールシ゛(メタ)アクリレート、ヘキサンジオー
ルジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メ
タ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレ
ート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレー
ト、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、
N'−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−アリ
ルアクリルアミド、アリル(メタ)アクリレート、クロ
チルメタクリレート、(メタ)アリルビニルアセテー
ト、クロチルビニルアセテート、アリルクロトネート、
クロチルクロトネート、アリル−4−ペンテノエート、
ジメタリルアミン、N−メチルジアリルアミン、N−エ
チルジアリルアミン、ジビニルベンゼン、トリビニルベ
ンゼン、N,N'−メチレンビス−N−ビニルアセトア
ミド、N,N'−エチレンビス−N−ビニルアセトアミ
ド、N,N'−プロピレンビス−N−ビニルアセトアミ
ド、N,N'−ブチレンビス−N−ビニルアセトアミ
ド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジエチ
レングリコールビスアリルカーボネート、ジアリルカー
ボネートが挙げられが、特に、エチレングリコールジ
(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)
アクリレート、等のポリエチレングリコールジ(メタ)
アクリレートが好ましい。また、脂肪族不飽和結合単官
能と側鎖に脱離基を有する化合物としては、 一般式(II): CH2=CR3HCOXR4OR5 (II) 〔式中、XはNまたはOを表し、R3は水素又はメチル
基を表す。また、R4はn=1〜6のCnH2nを表
し、R5 はn=0〜4のCnH2n+1を表す。〕で
表されるアルキル(メタ)アクリレートあるいはアルキ
ル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。一
般式(II)において、R4がn=1〜2、R5がn=0
〜2の化合物が特に好ましく、本化合物を使用すること
によって本発明の導電性高分子ゲルに、より優れた親水
性を付与することができ。
【0014】架橋性単量体として、脂肪族不飽和結合を
二官能以上有する化合物を使用する場合は、導電性高分
子ゲル中での組成率が0.1〜15重量%となるよう使
用するのが好ましく、より好ましくは0.2〜10重量
%である。この組成率が0.1重量%以下では、流動性
がありゲル化が不十分なゲルしか得られず、一方15重
量%以上では、架橋密度が高すぎるため、粘着性がな
く、さらには親水性も低くなり、ゲル中のその他の配合
成分が保持できず、経時的に前記配合成分がブリード
し、組成変化を起こすため電極として測定に用いる際に
支障をきたすので好ましくない。脂肪族不飽和結合を一
官能以上有する共有結合架橋性単量体を使用する場合に
は、その組成率が0.01〜8重量%となるよう使用するの
が好ましく、より好ましくは0.02〜5重量%である。こ
の場合、組成率が0.1%重量以下では、流動性があり
ゲル化が不十分なゲルしか得られず、一方30重量%以
上では、架橋密度が高すぎるため、粘着性がなく、さら
には親水性も低くなり、ゲル中のその他の配合成分が保
持できず、経時的に前記配合成分がブリードし、組成変
化を起こすため電極として測定に用いる際に支障をきた
すので好ましくない。
【0015】次に、湿潤剤としては、単糖類あるいは多
糖類を使用することもできるが、ソルビトール、グリコ
ールあるいはグリセリン等の多価アルコール類を用いる
方が、より優れた親水性を導電性高分子ゲルに付与する
ことができるので好ましい。また、湿潤剤は、導電性高
分子ゲル中での組成率が20〜65%の範囲に設定され
ていることが好ましい。湿潤剤の組成率が20%未満の
場合、乾燥性が増大して経時安定性が得られず、生体電
位の測定時に、ゲル体のインピーダンスが増加して徐々
に測定精度が低下し、高精度な測定を長時間にわたって
実施できないので好ましくない。一方、湿潤剤の組成率
が65%を越えると、ゲル体が65%を越える湿潤剤の
乾燥性の低下を得ることができる反面、湿潤剤がゲル体
を構成する網目構造中に充分に保持されなくなり、ゲル
体からブリードして粘着性を低下させるのでやはり好ま
しくない。さらに、相対的に水分量が低くなりすぎて、
目的とする低インピーダンスの導電性高分子ゲルを作成
することが困難になる。本発明における電解質塩として
は、塩化ナトリウム、塩化カリウムあるいは塩化マグネ
シウム等の全ての塩類、とりわけ中性塩類を好ましく用
いることができるが、なかでも価数が多く且つ分子量が
小さい塩類が好ましい。特に、Ag/AgClからなる
電極エレメントには、上記の価数が多く且つ分子量が小
さい塩化物が望ましい。導電性高分子ゲル中の電解質塩
は、組成率が0.5〜13%に、特に好ましくは1〜1
0%の範囲に設定される。電解質塩は水分量との相関関
係においてゲル体のインピーダンスに密接に関係し、電
極の性能を決定する主要な構成材料であり、組成率が
0.5%未満の場合、インピーダンスが高すぎて優秀な
電極が得られず、一方において組成率が13%を越える
場合には、水分量との関係で電離限界を越えるため、不
要な添加となり、他の構成部材の比率を低下させるだけ
で好ましくない。この電解質塩を導電性高分子ゲルに均
質に含有させるためには、所望の電解質塩を微細に粉砕
し、単量体配合液に混合撹拌する方法が短時間且つ効果
的に溶解させることができるので有利である。
【0016】本発明で使用する重合開始剤としては、ア
ゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2−
アミジノプロパン塩酸塩等のアゾ系化合物及び有機過酸
化物であるラジカル重合開始剤や、光ラジカル重合開始
剤である、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル
−プロパン−1−オン、1−4−2−ヒドロキシ−フェ
ニル−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1
−オン等のアセトフェノン系、ベンゾインメチルエーテ
ル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾインエーテル
系、ビス−2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4
−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド等のリ
ン系、4−ヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノ
ン系、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系等
の重合開始剤があげられる。また、重合開始剤は、必要
に応じて単独または2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】重合開始剤は、導電性高分子ゲル中での組
成率が0.001〜5重量%となるよう使用するのが好
ましい。重合開始剤の組成率を0.001%未満にして
導電性高分子ゲルを作成した場合、重合架橋反応持のラ
ジカル数が少ないため、反応性が低く、反応に時間がか
かると同時に、反応終了後の残存単体量が多くなる。一
方、重合開始剤の組成率が5%を越えて導電性高分子ゲ
ルを作成した場合、反応性が高く、短時間で反応が終了
し、一見残存単体量が少なくなるように思われるが、反
応開始時のラジカル数が多すぎるため、熱暴走し、突沸
したり、単量体が分解し、副反応物質が精製する危険性
が高くなる。また、熱暴走した場合、急激にラジカルを
消失するために、かえって残存単体量が増加する場合が
ある。暴走が起こらなかったとしても、未反応開始剤残
留物や、開始剤の分解副生成物が多くなり、異臭や着色
の原因となる。
【0018】本発明の導電性高分子ゲルには、必要に応
じて、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、安定剤、香料、界面活
性剤、着色剤、酵素あるいは金属イオン封止剤等が添加
されていても良い。本発明の導電性高分子ゲルは、次の
ような手順で製造できる。
【0019】まず、N−ビニルカルボン酸アミド重合性
単量体、架橋性単量体、湿潤剤および電解質塩の各所定
量を計量し、これに所定量の水を加えて撹拌して均一に
溶解、混合した配合液を作成する。湿潤剤に液状の多価
アルコールを用いると、水の量が他の成分を溶解できる
量より少なくても、N−ビニルカルボン酸アミドがアル
コール親和性を有するために、完全溶解が可能であり有
利である。
【0020】次に、重合開始剤を混合し、加熱又は、
光、電子線あるいは紫外線等を照射して重合架橋させる
ことにより導電性高分子ゲルを製造できる。とりわけ、
光、電子線あるいは紫外線等照射して重合架橋させる方
法が好ましい。加熱により重合架橋させる場合は、加熱
温度を40〜90℃に設定することにより20分以内に
重合架橋を殆ど終了することができる。この場合、遠赤
外線等を利用して加熱の効率を上げることにより、更に
短時間で反応させることも可能である。一方、光、電子
線あるいは紫外線等照射により、特に紫外線照射により
重合架橋する場合は、50ミリワット/cm2の強度の
紫外線を照射することにより、60秒以内に重合架橋を
終了できるので、工業的にはより好ましい実施態様であ
る。 上述のような操作によって、配合液が均一に重合
架橋され、全体に物性が均一化されるため、品質の良い
ゲルが得られる。特に、UV照射して重合架橋させた場
合には、非常に短時間で反応を終了することができるた
め、N−ビニルカルボン酸アミド重合性単量体の分解が
ほとんどなく、精製工程を要することなく安全性の高い
ゲル体を得ることができる。
【0021】本発明の導電性高分子ゲルは、ポリN−ビ
ニルカルボン酸アミドを重合性単量体として、これに少
なくとも架橋性単量体、水、多価アルコール、及び電解
質塩を混合した配合液に、重合開始剤を添加して、重合
架橋したポリN−ビニルカルボン酸アミド系の高分子か
らなっており、Ag/AgClや洋銀、カーボン等から
なる電極エレメントと接着一体化されて電極等として好
適に利用できる。本発明の導電性高分子ゲルを生体用電
極として用いる例を図1−図5に示す。図1の電極は、非
導電性支持部材1に導電性物質2をコーティングし、導電
性高分子ゲル3を貼り合わせたものである。導電性物質
のコーティングは印刷による方法、あるいはあらかじめ
フィルム状に形成された導電性物質を貼り合わせる方法
により実施できる。図2の電極は、非導電性支持部材1に
導電性物質2をコーティングし、導電性高分子ゲル3を貼
り合わせたものに、リード線と接合するためのスタッド
4を設け、さらに、導電性物質とスタッドとの接合部5を
設けたものである。図3の電極は、図2の電極において、
スタッド4およびスタッド接合部5の位置を電極の中央に
位置し、導電性高分子ゲル3を貼り合わせた場合の例で
ある。図4の電極は、非導電性支持部材1の中央部にボタ
ン型の導電性物質6を設け、導電性高分子ゲル3を粘着
し、導電性高分子ゲルと反対側をスタッド4に接合さ
せ、リード線に接合可能にした例である。ここで、非導
電性支持部材は、導電性高分子ゲルより面積が大きくな
っており、導電性高分子ゲルからはみ出した部分には、
粘着材7が塗布されている。図5の電極は、図4の電極に
おいて、非導電性支持部材1と、導電性高分子ゲル3の面
積が同一の場合の例である。
【0022】
【実施例】以下に実施例および比較例をあげて本発明を
さらに具体的に説明する。なお、以下の説明において
「%」は重量%を意味する。
【0023】ポリN-ビニルカルボン酸アミド系の導電性
高分子ゲルの例としてポリN-ビニルアセトアミド導電性
高分子ゲルを、また比較例としてポリN-ビニルアセトア
ミド/ポリアクリル酸共重合体アルミ架橋ゲルを各々用
いて作成した電極について、電極性能を測定し両者の電
気的特性を比較検討した。ポリN-ビニルアセトアミド導
電性高分子ゲルを作成するために、表1に示されるよう
に、重合性単量体としてのN-ビニルアセトアミド (A)
%、架橋性単量体としての液体ポリエチレングリコール
♯200のジアクリレート(B)%、架橋性単量体としてのN-
メチロールアクリルアミド (C)%、架橋性単量体として
のヒドロキシアクリレート (D)%、溶媒としてのイオン
交換水 (W)%、および電解質塩としての塩化ナトリウム
(S)%を、それぞれ秤量し、次いで湿潤剤としてのグリ
セリン (G)%を加えて混合及び溶解して、無色透明の単
量体配合液を作成した(表1の実施例1〜11、比較例
2〜5参照)。
【0024】
【表1】 次いで、上記の各単量体配合液に、重合開始剤としての
2−ヒドロキシー2メチルー1−フェニルプロパンー1−オ
ンを配合液全量に対して(I)%混合した。この配合液約
0.6gを直径20mmのポリプロピレン製の円形の容器に流し
込み、50mW/cm2の強度の紫外線を60秒間照射し、直径2
0mm、1mmの厚みを有する導電性高分子ゲルを作成した。
ここで、出力50mW/cm2の強度の紫外線を30秒間照射した
以外は同様にして比較ゲルを作成した(比較例1)。
【0025】一方、N-ビニルアセトアミドに代えてアク
リル酸ナトリウム、多官能架橋剤PEG♯200のジアクリレ
ートに代えてN,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA
A)をそれぞれ用いた以外は上記と同様にして比較ゲル
を作成した(比較例6)。
【0026】さらに比較例として、ポリN-ビニルアセト
アミド/アクリル酸共重合体アルミ架橋ゲルを作成し
た。すなわち、市販のN-ビニルアセトアミドとアクリル
酸の共重合体(9/1)を1%およびイオン交換水90%
と、乳酸アルミニウム0.2%を分散させた湿潤剤のプロ
ピレングリコール1%を混合し、40℃で4時間乾燥し
て比較ゲルを作成した(比較例7)。
【0027】また、N-ビニルアセトアミドに代えてアク
リルアミドを、多官能架橋剤PEG♯200のジアクリレート
に代えてNN'-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)をそ
れぞれ用いた以外は上記と同様にして比較ゲルを作成し
た(比較例8)。
【0028】次に、上記の各導電性高分子ゲルについ
て、それぞれAg/AgClエレメントを貼着したものを二組
ずつ用意し、互いのゲル部を接触させた電極対として、
AAMI(Association of Advancement for the Medical In
strumentation)の規格に従って、電極対インピーダンス
(Z)Ωおよび除細動耐性5秒後(V1)mV、5〜15秒後変
化率(V2)mV/sec.を測定した。この測定結果を表2に
示す。なお、除細動耐性測定値は三回の測定のうち、一
回目の測定値をもって代表値とした。
【0029】
【表2】 この結果から明らかなように、実施例1〜11によると、
乾燥性が比較的低くかつ安定したインピーダンスを示す
導電性ゲルが得られた。一方、比較例1、2、3および5に
よると、ゲル化をしないかまたはゲル化が十分ではな
く、電極性能の測定はできなかった。比較例4による
と、ゲル自体がもろく、ブリードも多いためにやはり電
気測定ができなかった。
【0030】インピーダンス測定結果から、実施例1〜
11で作成されたグリセリンと電解質塩を均一に含む導
電性高分子ゲルは、比較例6あるいは7で作成されたゲ
ルに比べて低いインピーダンスを有していることがわか
る。比較例6あるいは7で作成されたゲルは、電極として
用いるとき分極しやすく、また除細動耐性に乏しいこと
が明らかである。また、比較例7によると、ポリマー溶
液を金属で架橋する際、その粘度が数千〜数万cpsに達
するため電解質を均一に混合するのは困難であり、空気
泡が取り込まれる恐れもある。これに対し本発明による
と、重合前の単量体溶液の粘度は50〜100cpsであり、こ
れらの問題は起こりにくい。
【0031】さて、乾燥しやすいゲルを電極として用い
たとき、測定の安定性が著しく低下する原因になる。そ
こで乾燥性による電極性能の安定性を比較検討した。す
なわち、実施例2,6および10と比較例6,7および8で作成
されたゲルについて、JIS2級の雰囲気(温度23±5℃、
湿度50+20,-10%)下で放置したときの、インピーダンス
の経時変化を測定した。その結果を表3に示す。
【表3】 乾燥重量変化からみて、比較例6および7で作成されたゲ
ルは著しい乾燥性を示し、インピーダンスの経時安定性
が悪いことが明らかである。これに比較して、本発明の
実施例2、6および10で作成されたゲルは、インピーダン
スは経時的に安定であり、乾燥性に対する優位性が示さ
れた。生体電極として要求される重要な特性として、人
体に貼付したときに発汗などにより粘着力を失わないこ
とがあげられる。比較例8のように、従来の生体電極は
電極性能および除細動耐性は優れているものの、耐汗性
が低く、測定中に剥がれてしまう欠点があった。そこで
本発明で得られるゲルについて、生体電極を作成し、そ
の耐汗性を、従来品と比較した。すなわち、実施例6と
比較例8に示すゲルを胸部に貼り付け、例えばエアロバ
イクのような胸部の動きによって粘着性に影響を与えな
いような運動により発汗が起きたときの粘着力の変化を
検討した。その結果を表4に示す。
【0032】
【表4】 この結果、比較例8のゲルは汗により局所的に膨潤し、
内部のグリセリンなどがブリードするため、粘着力が低
下することにより落下した。それに比べて、実施例6の
ゲルは粘着力の低下は見られずゲルが剥がれ落ちること
がなかった。これはN-ビニルアセトアミドが適度な親水
性と親油性を有するためと考えられる。
【0033】そこで、このことを明らかにするために、
水およびエタノール吸収倍率を測定した。すなわち、N-
ビニルアセトアミドおよびアクリルアミドについて、実
施例6および比較例8で得られたゲルを乾燥粉砕したも
のを1g計り取ってティーバッグに入れ、24時間イオ
ン交換水、またはエタノールに浸積したのち重量を測定
し、吸収倍率を算出した。その結果を表5に示す。
【表5】 この結果から、N-ビニルアセトアミドは吸水性だけでな
く、吸油性をも有しているためにグリセリンなどを保持
しやすいことが明らかであり、N-ビニルアセトアミドの
ような両親媒性のポリマーマトリックスを用いると局所
的な膨潤によるブリードが防げるために、粘着力の低下
が起こりにくいことが示された。
【0034】
【発明の効果】本発明の導電性高分子ゲルは、架橋され
たポリN−ビニルカルボン酸アミドが非イオン性である
ために生体電極に用いた場合、電気的に高性能であると
共に、マトリックス自体が適度な親水性とアルコール親
和性を有するために、優れた耐汗性を発揮する。このた
めに心電図等の測定において、たとえば24時間以上に
わたるような長時間の測定に際しても、発汗等により粘
着力が低下したり、体表面から剥離したりすることがな
く、精度よく測定を続けることができる。
【0035】また、本発明の導電性高分子ゲルは、マト
リックスが親水性であると共に非電解質であるため、生
体用電極エレメントとの反発性が少なく、接触時のイン
ピーダンスが増大しない。したがって、本導電性高分子
ゲル自体のインピーダンスが低く、さらに電極エレメン
トとの電気的な接合性も良好であることから、全体とし
てもインピーダンスが低いものになっている。このよう
に低いインピーダンスであることから、微弱な電気信号
でも精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性高分子ゲル、非導電性支持部材
および導電性物質から構成された生体電極の一例を示
す。
【図2】本発明の生体電極において、リード線と接合す
るためのスタッドおよびスタッド接合部を設けた例を示
す。
【図3】図2において、スタッドおよびスタッド接合部
が中央部に設けられた例を示す。
【図4】本発明の生体電極において、導電性物質がボタ
ン型である例を示す。
【図5】図4において、導電性支持部材と導電性高分子ゲ
ルの面積が同一である例を示す。
【符号の説明】
1 非導電性支持部材 2,6 導電性物質 3 導電性高分子ゲル 4 スタッド 5 スタッド接合部 7 粘着材

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式: CH2=CHNR1COR2 〔式中、R1及びR2 は、n=0〜6のCn2n+1を表
    す。〕で表されるN−ビニルカルボン酸アミドの重合架
    橋高分子中に、少なくとも水と湿潤剤とを主成分として
    電解質塩が均一に含有されたことを特徴とする導電性高
    分子ゲル。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のN−ビニルカルボン酸ア
    ミドを重合性単量体として、さらに架橋性単量体、水、
    多価アルコール、及び電解質塩を混合した配合液に、重
    合開始剤を添加して、重合架橋することを特徴とする導
    電性高分子ゲルの製造方法。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の導電性高分子ゲルを使用
    したことを特徴とする生体用電極。
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