JPH11279839A - フィブリル化可能な混繊糸 - Google Patents

フィブリル化可能な混繊糸

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JPH11279839A
JPH11279839A JP10079173A JP7917398A JPH11279839A JP H11279839 A JPH11279839 A JP H11279839A JP 10079173 A JP10079173 A JP 10079173A JP 7917398 A JP7917398 A JP 7917398A JP H11279839 A JPH11279839 A JP H11279839A
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JP
Japan
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yarn
component
alkali
mixed
polyester
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Application number
JP10079173A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Ishida
石田  央
Yoshitomo Hattori
芳智 服部
Atsuko Ueda
敦子 植田
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Nippon Ester Co Ltd
Original Assignee
Nippon Ester Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フィブリルの発現が多く、極めてソフトで薄
起毛調の風合とハリ、コシを有する布帛を得ることがで
きるフィブリル化可能な混繊糸を提供する。 【解決手段】 アルカリ溶解性の異なる2種類のポリエ
ステル成分(易溶性成分B、難溶性成分A)が貼り合わ
されて鞘部が構成され、アルカリ減量処理を施すことに
よって、B成分が溶解除去され、微小なフィブリルが形
成される芯鞘型複合繊維(糸条X)と、ポリアルキレン
テレフタレートを主成分とする繊維(糸条Y)とからな
る混繊糸であって、糸条XのA成分とB成分との重量比
率(A/B)が50/50〜90/10であり、混繊糸
中の糸条Xと糸条Yとの重量比率(X/Y)が30/7
0〜80/20である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鞘部がアルカリ溶
解性の異なる2種類のポリエステル成分で構成された芯
鞘型複合繊維を一成分とする混繊糸であって、アルカリ
減量処理を施すことによって、フィブリルが生じ、起毛
していないにもかかわらず、極めてソフトでふくらみ感
や薄起毛調の風合を有する布帛を得ることができる混繊
糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】織編物等の布帛の風合を改良するため
に、種々のフィブリル化繊維が提案されている。中で
も、芯鞘型複合繊維の鞘部が溶解性の異なる2成分から
なる複合繊維にアルカリ減量処理を施すことによって、
フィブリルを生じさせたものがよく知られている。
【0003】アルカリ減量処理を施して、フィブリルを
生じさせるための芯鞘型複合繊維として、特開平2-2516
73号公報には、溶解性の異なる2成分としてナイロンと
ポリエステルを鞘部に配した複合繊維が、特開昭61-758
73号公報には、アルカリ易溶性ポリエステルと通常のポ
リエステルを鞘部に配した複合繊維が記載されている。
【0004】可紡性やコスト、得られた繊維の色調等を
考えると後者のアルカリ易溶性ポリエステルと通常のポ
リエステルを鞘部に配した複合繊維が好ましい。しかし
ながら、このような複合繊維は、アルカリ減量処理等の
化学的処理あるいは仮撚加工や起毛加工の機械処理によ
りフィブリルを発現させると、この繊維からなる布帛
は、引き裂き強力や破裂強力が低く、ハリ、コシにも乏
しいものとなるという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述のような
問題点を解決し、アルカリ減量処理を施すことによっ
て、多くのフィブリルが発現し、極めてソフトで薄起毛
調の風合を有し、かつ強力もあり、ハリ、コシにも優れ
た布帛を得ることができるフィブリル化可能な混繊糸を
提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意研究した結果、鞘部がアルカリ溶
解性の異なる2種のポリエステルからなり、アルカリ減
量処理によってフィブリルを形成する芯鞘型複合繊維
(糸条X)と、アルカリ減量処理によってフィブリルを
形成しない糸条Yとを混繊することによって、減量工程
で多くのフィブリルを発現させても強力の低下がなく、
ハリ、コシがあり、極めてソフトで暖かみのあるスパン
調風合を有する布帛とすることができることを見い出
し、本発明に到達した。
【0007】すなわち、本発明は、アルカリ溶解性の異
なる2種類のポリエステル成分(A、B成分)が貼り合
わされて鞘部が構成され、アルカリ減量処理を施すこと
によって、アルカリ易溶性の成分(B成分)が溶解除去
され、微小なフィブリルが形成される芯鞘型複合繊維
(糸条X)と、ポリアルキレンテレフタレートを主成分
とする繊維(糸条Y)とからなる混繊糸であって、糸条
Xの鞘部を構成するアルカリ難溶性の成分(A成分)と
アルカリ易溶性の成分(B成分)との重量比率(A/
B)が50/50〜90/10であり、混繊糸中の糸条
Xと糸条Yとの重量比率(X/Y)が30/70〜80
/20であることを特徴とするフィブリル化可能な混繊
糸を要旨とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明のフィブリル化可能な混繊
糸は、アルカリ減量処理によってフィブリルが形成され
る芯鞘型複合繊維(糸条X)とフィブリルが形成されな
い繊維(糸条Y)からなる混繊糸であって、混繊糸中の
糸条Xと糸条Yとの重量比率(X/Y)が30/70〜
80/20のものである。
【0009】まず、糸条Xについて説明する。糸条X
は、鞘部がアルカリ易溶性のB成分とアルカリ難溶性の
A成分のポリエステルからなり、A、B両成分が貼り合
わされて構成されている芯鞘複合繊維である。そして、
この複合繊維にアルカリ減量処理を施すことによって、
B成分が溶解除去され、フィブリルが多数形成されるも
のである。
【0010】糸条Xの断面形状の一例を図1を用いて説
明する。糸条Xは、鞘部を構成するA成分とB成分が重
量比率(A/B)が50/50〜90/10となるよう
に、貼り合わされたものであり、横断面において、鞘部
の一方の成分が他方の成分を包囲しない形状で接合し、
フィラメントの長手方向に沿って両成分が連続的に層状
に接合している形状が好ましい。このような形状とする
ことによって、紡糸、延伸操業性が良好となり、製品と
なってからの欠点も減少する。
【0011】このような多層構造の複合繊維を得るため
には、A成分とB成分を紡糸時にブレンドすることによ
り得ることができるが、工業的には、スタティックミキ
サーを使用する方法が好ましい。ミキサーの段数を多く
するほど多くの層が形成される。そして、層の数を多く
すればより細いフィブリルを、また、層の数を少なくす
ればより太いフィブリルを形成せしめることが可能とな
る。これらの層の数は8〜128程度とすることが好ま
しい。
【0012】鞘部を構成するA成分とB成分の比率(A
/B)は、50/50〜90/10、好ましくは60/
40〜80/20である。Bの比率がこれよりも大きく
なると、アルカリ減量中にフィブリルまで溶出し、残っ
たフィブリルもその後の加工で脱落しやすくなり、本発
明の目的とする風合いは得られない。一方、Bの比率が
これよりも小さくなると、溶解性の大なるポリエステル
成分が少なすぎ、微小なフィブリルが発現せず、本発明
の目的とする風合の布帛は得られない。
【0013】A成分のポリエステルは、酸成分が、テレ
フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボ
ン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等からなるもので
あり、中でも、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカ
ルボン酸が好ましく、これらの芳香族ジカルボン酸にア
ジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカル
ボン酸を少量共重合してもよい。
【0014】一方、グリコール成分としては、エチレン
グリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジ
オール、トリメチレングリコール、1,6−ヘキサンジ
オール、1,4−シクロヘキサンジオール、ネオペンチ
ルグリコール等を用いることができ、中でも、エチレン
グリコール、1,4−ブタンジオールを主成分とするも
のが好ましい。
【0015】中でも、A成分のポリエステルとしては、
紡糸時のポリマーの極限粘度が0.6以上で、湿熱処理
(沸水中、30分間)前後の極限粘度保持率が70〜9
2%のポリマーを用いることが好ましい。これによっ
て、紡糸時には十分な強度を有し、可紡性が良好とな
り、アルカリ減量処理によりフィブリルが発現した後、
染色等の熱処理を施すと、フィブリル部分の粘度を適度
に低下させることができるので、フィブリル部分がピリ
ングとなりにくくなり、摩耗白化の生じにくい布帛とす
ることができる。
【0016】A成分のポリマーの紡糸時の極限粘度が0.
6 未満では、紡糸時に糸切れ等が発生しやすく、操業性
が悪化し、得られる糸条の強度も低くなりやすい。紡糸
時のポリマーの極限粘度の上限は、0.9 程度とすること
が好ましい。なお、本発明における極限粘度とは、フェ
ノールと四塩化エタンとの等量混合物を溶媒とし、20
℃で測定した値である。
【0017】さらに、A成分のポリエステルの湿熱処理
前後の極限粘度保持率が70%未満では、繊維の湿熱処理
後の強度が低下しやすく、一方、湿熱処理前後の極限粘
度の保持率が92%を超えると、ピリングが生じた場合、
生じたピリングが容易に脱落しないため、この繊維から
なる布帛はピリングや摩耗白化が生じやすいものとな
る。
【0018】また、湿熱処理後の極限粘度は、染色等の
湿熱処理を施した後の糸条の強度が低くなりすぎないよ
うにするため、0.55以上とすることが好ましい。
【0019】糸条Xは複合繊維であるため、A成分のみ
を取り出して湿熱処理前後の極限粘度を測定することは
困難である。そこで、極限粘度保持率については、A成
分のみのポリエステルを用いて糸条を紡糸、延伸し、そ
の糸条を用いて、以下のように湿熱処理して求めた値と
する。A成分のみの延伸糸(単糸繊度1.5d)を沸水
中で30分間処理し、湿熱処理前の延伸糸の極限粘度
〔η〕0 と湿熱処理後の延伸糸の極限粘度〔η〕1 を求
め、次式により算出したものである。 極限粘度保持率(%)=(〔η〕1 /〔η〕0 )×10
【0020】A成分のポリエステルを前記のようなポリ
マーの極限粘度や湿熱処理前後の極限粘度保持率とする
ためには、ポリエステルの全酸成分に対して、以下の
(1)式で表されるリン化合物を0.5 〜1.5 モル%共重
合していることが好ましい。
【0021】
【化2】
【0022】(1)式で示される化合物としては、リン
酸、リン酸トリn−ブチル、ジメチルホスフェート、ジ
エチルホスフェート、ジブチルホスフェート等がある。
そして、このリン化合物は、酸成分とグリコール成分の
重縮合反応を開始するまでの任意の段階で添加すればよ
い。
【0023】一方、糸条Xの鞘部を構成するB成分のポ
リエステルは、アルカリ易溶性のポリエステルである
が、A成分のポリエステルよりも5倍以上の溶解性を有
するもの、更には15倍以上の溶解性を有するものが好
ましい。なお、ここで、溶解性は、100℃の2重量%
の水酸化ナトリウム水溶液中で30分処理した時の重量
減量率で比較を行ったものである。
【0024】B成分のポリエステルとしては、スルホネ
ート基を有する、例えば3,5−ジ(カルボメトキシ)
ベンゼンスルホン酸ナトリウム、5−ナトリウムスルホ
イソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸やポリ
エチレングリコールをA成分と同様のポリエステルを製
造する際に添加させた共重合ポリエステル等が挙げられ
る。
【0025】また、糸条Xの芯部を構成するポリエステ
ルは、繊維形成能を有し、B成分のポリエステルよりア
ルカリ溶解性の小さいものであれば特に限定されるもの
ではないが、A成分のポリエステルと同程度の溶解性を
有するものであって、機械的特性の点から、ポリエチレ
ンテレフタレートを用いることが好ましい。
【0026】以上のような鞘部のA、B成分のポリエス
テル、芯部のポリマーには、重縮合時、あるいは溶融紡
糸時に、顔料、艶消し剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、
酸化防止剤、制電剤及び有機アミン、有機カルボン酸ア
ミドなどのエーテル結合抑制剤等を必要に応じて種々添
加してもよい。
【0027】そして、芯部と鞘部の比率は、要求される
性能によって、任意に選ぶことができるが、断面積比で
芯/鞘=40/60〜15/85が好ましい。芯成分が
多すぎるとフィブリルの効果が充分に発揮されず目的と
する風合が得られない場合があり、逆に鞘成分が多い
と、強度が低下しやすい。
【0028】また、糸条Xの断面形状は、芯部或いは鞘
部ともに丸断面、三角断面、Y断面、U断面、偏平断面
等のいずれでもよいが、鞘部の形状は、フィブリル化の
されやすさから、三角断面、Y断面、U断面、偏平断面
等の異形断面が好ましい。芯部と鞘部の形状は同一であ
っても異なっていてもよい。
【0029】次に糸条Yについて説明する。糸条Yは糸
条Xと混繊されるものであり、糸条Xと糸条Yとの混繊
比率は重量比率で(糸条X/糸条Y)、30/70〜8
0/20、好ましくは40/60〜70/30である。
糸条Xの比率が混繊糸全体の8割を超えると、糸条Yが
占める割合が少なすぎるため充分な強度が得られない、
一方、糸条Yが混繊糸全体の7割を超えると、糸条Xが
占める割合が少なくなり、発現するフィブリルが十分で
なく、目的とする風合を有する布帛とすることができな
い。
【0030】糸条Yは、ポリアルキレンテレフタレート
を主成分とするポリエステルからなり繊維形成能を有す
るもので、糸条XのB成分より溶解性の小さいものであ
ればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ
ブチレンテレフタレート、あるいは、これらに少量の第
三成分を共重合させたものが挙げられる。
【0031】特に、糸条Yを構成するポリエステルとし
て、主成分であるポリアルキレンテレフタレートに、イ
ソフタル酸(IPA)又は2,2−ビス{4−(2−ヒ
ドロキシエトキシ)フェニル}プロパン(BAEO)を
3〜15モル%共重合したポリエステル、又はIPAと
BAEOを合わせて3〜15モル%共重合したポリエス
テルを用いることが好ましい。これは、このような共重
合ポリエステルとすることにより熱水収縮率が高くな
り、熱処理により収縮することによって、糸条Xのフィ
ブリルがより発現しやすくなり、この混繊糸からなる布
帛は、膨らみ感と起毛調の風合に優れたものとなる。
【0032】共重合成分であるIPA、BAEOを単独
もしくは併用した量が3モル%未満であると、熱水収縮
率を高くすることができないので、上記した効果が少な
くなり、15モル%を超えると、効果が飽和するばかり
か、融点が低下し、ポリマーの乾燥時にチップが融着す
ることがある。
【0033】さらに、布帛に難燃性を付与したい場合
は、糸条Yを構成するポリエステルを、主成分であるポ
リアルキレンテレフタレートにリン化合物を共重合した
ものとしてもよい。そして、糸条Yのポリエステルに
も、重縮合時、あるいは溶融紡糸時に、顔料、艶消し
剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制電剤及
び有機アミン、有機カルボン酸アミドなどのエーテル結
合抑制剤等を必要に応じて種々添加してもよい。
【0034】糸条Yの断面形状は、特に限定されるもの
ではなく、丸断面、三角断面、Y断面、U断面、偏平断
面等のいずれでもよく、糸条Xの断面形状と同一であっ
ても異なっていてもよい。
【0035】糸条Xと糸条Yからなる混繊糸は、糸条X
と糸条Yを別々の紡糸口金より紡糸し、それぞれを別に
延伸し、後加工等の段階で混繊するものでも、糸条Xと
糸条Yとを同一の紡糸口金で同時に紡糸し、紡糸段階で
混繊した後に延伸するものでもよいが、後者のほうが、
両糸条の物性差が少なく、染色斑が少なくなり、工程も
簡略化され、コストの面からも好ましい。
【0036】本発明の混繊糸にフィブリルを形成させる
ために施すアルカリ減量処理は、アルカリ水溶液等を用
いた処理が挙げられる。使用するアルカリとしては、水
酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭
酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。この中で
もコストが安く、溶出能力が大きい水酸化ナトリウムを
使用するのが好ましい。
【0037】このようなアルカリ化合物の濃度は、アル
カリ化合物の種類、処理条件等によって異なるが、通常
0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%であ
る。
【0038】また、アルカリ減量処理は、糸条の状態で
も織編物の状態で施してもよく、通常60〜100℃の
温浴中或いは100〜150℃の蒸気中にて、1分〜1
時間の範囲で、所望の風合となるように適宜条件を選択
して行うことが好ましい。過度に減量を行った場合は、
糸条Xのアルカリ難溶性のA成分と糸条Yの成分も溶解
されて混繊糸全体の強度等の物性が低下しやすくなり、
減量が少なすぎると、フィブリルが十分に発現しなくな
る。なお、混繊糸には、アルカリ減量処理を施す前や後
に、仮撚、擦過等の機械的屈折によりフィブリルを発現
させてもよい。
【0039】本発明の混繊糸は、このような減量処理に
よって糸条XのB成分が完全に、または一部が残った状
態で溶出することにより、糸条Xの鞘部にフィブリルが
生じたフィブリル化繊維となる。アルカリ減量処理は、
すべてのフィラメントのB成分が均一にかつ同程度に減
量される必要はなく、フィラメントによって減量率が異
なってもよい。
【0040】すなわち、フィラメントの中には、B成分
が完全に溶解除去されA成分のみのフィブリルとなった
ものや、或いは部分的にフィブリル化を受けたものが混
在している。その結果、これらのフィラメントでは、フ
ィブリル化後のフィラメント間の単糸デニールの変動が
生じるようになり、これにより、天然繊維ライクでソフ
ト感、ふくらみ感、温かみのある風合が発現される。
【0041】次に、本発明の混繊糸の製造方法について
説明する。前記したように、本発明の混繊糸は、糸条X
と糸条Yを同一の紡糸口金で同時に紡糸し、紡糸段階で
混繊した後に延伸を行うものが好ましく、このようにし
て製造する方法について図面を用いて説明する。図2
は、本発明の混繊糸の製造方法の紡糸工程の一実施態様
を示す工程図である。
【0042】押出機Aより糸条XのA成分を、押出機B
より糸条XのB成分を、押出機Cより糸条Yのポリエス
テル成分を溶融して紡糸口金1より吐出する。このと
き、外周側の紡糸孔よりA、B成分を鞘部とする糸条X
を紡糸し、内周側の紡糸孔より糸条Yを紡糸する。この
ように紡糸した糸条Xと糸条Yの混繊糸を冷却筒2によ
り冷却固化後、オイリング装置5で油剤を付与し、交絡
装置6により集束させる。そして、第1ゴデットローラ
7及び第2ゴデットローラ8へ導き、捲取機9によって
パッケージ10を得る。パッケージ10に巻き取られた
混繊糸は、必要に応じて延伸工程、仮撚工程に供給され
る。
【0043】このように、未延伸糸を一旦巻き取り別工
程で延伸や仮撚を行う二工程法を採用しても、紡糸と延
伸工程を連続して行う一工程法の直接紡糸延伸法を採用
してもよい。また、糸条Xと糸条Yの集束性を向上させ
るために、交絡装置を捲取機9の上流にも設けるなど、
任意の場所に設けてもよい。
【0044】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。なお、実施例中の測定や評価は次のように行った。 (a)極限粘度〔η〕 前記の方法で測定した。 (b)湿熱処理後の極限粘度保持率 前記の方法で測定し、算出した。 (c)強度 アルカリ減量処理前の糸条を用い、オリエンティック社
製テンシロン万能試験機 RTC-1210 型を用いて、試料長
500mm 、引張速度500mm/分で測定した。 (d)フィブリル発生量 得られた混繊糸を3本合糸し、筒編みした後、減量処理
(2重量%の水酸化ナトリウム水溶液中で100℃、3
0分間)を施し、走査電子顕微鏡(SEM)で測定を行
った際、表面に存在する微小フィブリルの発生度合いを
目視で観察し、微小フィブリルの発生量が多いものを
○、微小フィブリルの発生量が少ないものを×とした。 (e)抗ピリング性 (d)の評価に用いた減量処理後の筒編み地を用いて、
ICI法にてピリングの発生量を標準試料と比較しなが
ら、5本の試料を判定した。 (f)操業性 紡糸時の操業性について評価し、1錘、24時間あたり
の糸切れ回数で次のように評価した。 糸切れ回数:0〜1回・・○、2回・・△、3回以上・
・× (g)風合、減量率 得られた混繊糸を経糸と緯糸に用いて無撚の平織り(経
糸75本/2.54cm、緯糸75本/2.54cm)
を製織し、この織物を、NaOH濃度0.5 wt%、処理
温度95℃の処理条件でアルカリ減量して易溶出成分B成
分を除去した後、染色と仕上げ加工を行い、織、編、染
色技術者からなるパネラー10人に、布帛の風合(ソフト
な膨らみ感とハリとコシの有無)を10段階で触感による
評価させ、その合計点で評価した。このとき、アルカリ
減量処理前後の布帛の重量を測定し、減量率を測定し
た。
【0045】参考例1 〔糸条X:A成分(アルカリ難溶性)、芯成分のポリエ
ステル〕平均重合度9のエチレンテレフタレートオリゴ
マーにA1のみ重縮合反応前にリン酸の含有量が0.8
5モル%となるように添加し、重縮合を行い、ポリエス
テルA1〜A3を得た。得られたポリエステルA1〜A
3の極限粘度、極限粘度保持率、湿熱処理後の極限粘度
を表1に記載した。
【0046】
【表1】
【0047】〔糸条X:B成分のポリエステル(アルカ
リ易溶性)〕平均重合度9のエチレンテレフタレートオ
リゴマーにポリエステルを構成する全酸成分1モルに対
し、3,5−ジ(カルボ−β−ヒドロキシエトキシ)ベ
ンゼンスルホン酸ナトリウムと5−ナトリウムスルホイ
ソフタル酸ジメチルを60:40のモル比で混合した混
合液2.5モル%と酢酸ナトリウム15×10-4モルを
加えて重縮合を行ない、ポリエステルBを得た。
【0048】〔糸条Yのポリエステル〕平均重合度9の
エチレンテレフタレートオリゴマーに重縮合前にY2は
IPAとBAEOを4モル%ずつ共重合し、Y3はIP
Aを10モル%共重合したものとし、ポリエステルY1
〜Y3を得た。得られたポリエステルY1〜Y3の極限
粘度を表2に記載した。
【0049】
【表2】
【0050】実施例1〜7、比較例1〜3 糸条Xの芯部、鞘部、糸条Yに参考例1に示す種々のポ
リマーを用い、図2に示すような紡糸工程に従って、混
繊糸を製造した。このとき、複合紡糸装置を用い、糸条
Xの鞘部のA成分とB成分の比率(重量比)、芯部と鞘
部の比率(面積比)、糸条Xと糸条Yの混繊比率(重量
比)が表3に示すものとなるようにして、紡糸温度29
5℃で糸条Xと糸条Yを同一の紡糸口金より紡糸した。
この紡糸した混繊糸を冷却後、オイリングローラで油剤
を付与し、巻取速度3500m/分で巻き取った。な
お、糸条Xの鞘部のA成分とB成分は16層に貼り合わ
された形状であった。そして、得られた混繊糸(未延伸
糸)を、倍率1.5倍、速度730m/分、温度85℃
で延伸し、熱処理(150℃)した後、100d/36
fの混繊糸(糸条X:72d/24f、糸条Y:28d
/12f)を得た。
【0051】比較例4 紡糸口金より糸条Xのみを紡糸した以外は、実施例1と
同様に紡糸、延伸を行い、糸条Xのみからなる72d/
24fの糸条を得た。
【0052】実施例1〜7、比較例1〜3で得られた混
繊糸、比較例4で得られた糸条のアルカリ減量処理前後
の強度、アルカリ減量処理後のフィブリル発生量、抗ピ
リング性能、操業性の評価結果及び織物を製織し、アル
カリ減量処理を施した際の減量率、風合の評価結果を表
3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】表3より明らかなように、実施例1〜7の
混繊糸は操業性よく得ることができ、この繊維にアルカ
リ減量処理を施すと、フィブリルが多数生じ、抗ピリン
グ性能も高く、製織した後アルカリ減量処理を施して得
た織物は、極めて優れた薄起毛調でかつ、ハリとコシの
ある風合を有していた。特に、糸条XのA成分にリン酸
化合物を含有しているポリエステルA1を用いた実施例
1〜5のものは、減量処理後においてフィブリル部の極
限粘度が低下し、極めて良好な抗ピリング性を呈した。
また、糸条Yのポリエステル成分にBAEOやIPAを
共重合したY2やY3を用いたものは、減量処理や染色
中に大きく収縮し、フィブリル化繊維が布帛表面に浮き
上がり、ソフト感、膨らみ感、暖かみに優れたスパン調
風合を有するフィブリル化布帛を得ることができた。
【0055】一方、比較例1の混繊糸は、糸条Xにおけ
るA成分の割合が多いため、減量処理後のフィブリルの
発生が少なく、この混繊糸からなる布帛は目的とする風
合が得られなかった。比較例2の混繊糸は、糸条Xにお
けるB成分の割合が多いため、減量処理を施すと、B成
分と同時にA成分も溶解されてしまい、フィブリル発生
量に劣るものであった。比較例3の混繊糸は、繊維全体
を占める糸条Yの割合が多いため、混繊糸全体としては
フィブリルの発生が少なく、この混繊糸からなる布帛は
目的とする風合が得られなかった。比較例4は、糸条X
のみからなる繊維であり、ポリマーの極限粘度が低かっ
たため、操業性が悪く、この繊維からなる布帛は、ハ
リ、コシがなく膨らみ感にも欠けるものであった。
【0056】
【発明の効果】本発明のフィブリル化可能な混繊糸は、
アルカリ減量処理により混繊糸を構成する一方の糸にの
みフィブリルが生じるので、ハリ、コシ等に優れ、かつ
極めてソフトで膨らみ感に優れた薄起毛調の風合の布帛
を得ることができる。特に、混繊糸の糸条XのA成分を
特定の極限粘度を有するものとすることによって、減量
処理によって生じたフィブリル部の粘度が適度に低下
し、ピリングと摩耗白化がほとんど生じない布帛を得る
ことができる。また、混繊糸の糸条YをIPAやBAE
Oを共重合したポリエステルすることによって、熱水処
理により収縮し、糸条Xに生じたフィブリル部分が布帛
表面に浮き上がり、ソフト感、膨らみ感により優れたス
パン調風合を有する布帛を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の混繊糸を構成する糸条Xの一実施態様
を示す断面模式図である。
【図2】本発明の混繊糸の製造方法の一実施態様を示す
紡糸工程図である。
【符号の説明】
1 紡糸口金 2 冷却筒 5 オイリングローラ 6 交絡装置 7 第1ゴデットローラ 8 第2ゴデットローラ 9 捲取機 10 パッケージ A〜C 押出機
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI D01F 6/84 301 D06M 9/04

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルカリ溶解性の異なる2種類のポリエ
    ステル成分(A、B成分)が貼り合わされて鞘部が構成
    され、アルカリ減量処理を施すことによって、アルカリ
    易溶性の成分(B成分)が溶解除去され、微小なフィブ
    リルが形成される芯鞘型複合繊維(糸条X)と、ポリア
    ルキレンテレフタレートを主成分とする繊維(糸条Y)
    とからなる混繊糸であって、糸条Xの鞘部を構成するア
    ルカリ難溶性の成分(A成分)とアルカリ易溶性の成分
    (B成分)との重量比率(A/B)が50/50〜90
    /10であり、混繊糸中の糸条Xと糸条Yとの重量比率
    (X/Y)が30/70〜80/20であることを特徴
    とするフィブリル化可能な混繊糸。
  2. 【請求項2】 糸条Yが、ポリアルキレンテレフタレー
    トにイソフタル酸及び/または、2,2−ビス{4−
    (2−ヒドロキシエトキシフェニル)}プロパンを3〜
    15モル%共重合した共重合ポリエステルである、請求
    項1記載のフィブリル化可能な混繊糸。
  3. 【請求項3】 糸条Xの鞘部を構成するアルカリ難溶性
    の成分(A成分)が下記要件を満足する請求項1又は2
    記載のフィブリル化可能な混繊糸。 (a)紡糸時のポリマーの極限粘度が0.6以上 (b)湿熱処理(沸水中、30分間)前後の極限粘度保
    持率が70〜92%
  4. 【請求項4】 A成分のポリエステルが、全酸成分に対
    して(1)式で表すリン化合物を0.5〜1.5モル%
    含有している請求項3記載のフィブリル化可能な混繊
    糸。 【化1】
  5. 【請求項5】糸条Xと糸条Yとが同一の紡糸口金より溶
    融紡糸され、紡糸混繊されたものである請求項1、2、
    3又は4記載のフィブリル化可能な混繊糸。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1319737A1 (en) * 2001-12-11 2003-06-18 Nan Ya Plastics Corporation Manufacturing method for differential denier and differential cross section fiber and fabric
KR101151441B1 (ko) 2009-05-25 2012-06-01 한국섬유개발연구원 흡음성능이 향상된 복합섬유, 복합가공사 및 원단
JP2022550633A (ja) * 2019-12-24 2022-12-02 江蘇恒力化繊股▲ふん▼有限公司 編物に用いる自発巻縮弾性混繊糸の製造方法

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