JPH11279720A - 高温耐摩耗性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環 - Google Patents
高温耐摩耗性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環Info
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- JPH11279720A JPH11279720A JP8484098A JP8484098A JPH11279720A JP H11279720 A JPH11279720 A JP H11279720A JP 8484098 A JP8484098 A JP 8484098A JP 8484098 A JP8484098 A JP 8484098A JP H11279720 A JPH11279720 A JP H11279720A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 高温耐摩耗性にすぐれ、かつ相手攻撃性の小
さい遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環
を提供する。 【解決手段】 ピストンリング耐摩環を、重量%で、C
r:0.5〜5%、Mn:0.2〜1%、S:0.05
〜1%、B:0.05〜1%、C:0.5〜5%、N
i:1〜12%、Ti:0.5〜5%、Cu:1〜8
%、を含有し、さらに必要に応じてMo:0.1〜2
%、を含有し、残りがFeと不可避不純物からなる組
成、並びに素地はオーステナイト相を主体とし、かつ気
孔内には析出成長した遊離黒鉛が存在する組織を有する
遊離黒鉛析出鉄系焼結材料で構成する。
さい遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環
を提供する。 【解決手段】 ピストンリング耐摩環を、重量%で、C
r:0.5〜5%、Mn:0.2〜1%、S:0.05
〜1%、B:0.05〜1%、C:0.5〜5%、N
i:1〜12%、Ti:0.5〜5%、Cu:1〜8
%、を含有し、さらに必要に応じてMo:0.1〜2
%、を含有し、残りがFeと不可避不純物からなる組
成、並びに素地はオーステナイト相を主体とし、かつ気
孔内には析出成長した遊離黒鉛が存在する組織を有する
遊離黒鉛析出鉄系焼結材料で構成する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、すぐれた高温耐
摩耗性を有し、かつ相手攻撃性(ピストンリング攻撃
性)の小さい遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリン
グ耐摩環に関するものである。
摩耗性を有し、かつ相手攻撃性(ピストンリング攻撃
性)の小さい遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリン
グ耐摩環に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば特公昭57−32743号
公報に記載されるように、例えばトラック・バス用ディ
ーゼルエンジンのピストンが、図1(a)の概略縦断面
図および同(b)の要部縦断面図で示される構造を有
し、かつ図示される通りトップランド部直下のトップリ
ング溝にはピストンリング耐摩環がピストン鋳物本体の
鋳造時に鋳ぐるまれて設けられた構造をもつことは良く
知られるところである。また、ピストン鋳物本体が、主
としてSi:8〜13重量%を含有したAl−Si系合
金で構成され、さらに上記ピストンリング耐摩環には、
良好な耐摩耗性と相手攻撃性の低いFe−Ni−Cu系
焼結材料(組成:Fe−8〜25%Ni−3.5〜10
%Cu−2.0%以下C)や、Ni−Cu−Cr系オー
ステナイト鋳鉄であるニレジスト鋳鉄(組成:Fe−
1.5〜3.5%Cr−0.8〜1.5%Mn−3%以
下C−13〜22%Ni−8%以下Cu−1.0〜2.
8%Si、以上重量%、以下%は重量%を示す)などが
広く用いられていることも良く知られるところである。
公報に記載されるように、例えばトラック・バス用ディ
ーゼルエンジンのピストンが、図1(a)の概略縦断面
図および同(b)の要部縦断面図で示される構造を有
し、かつ図示される通りトップランド部直下のトップリ
ング溝にはピストンリング耐摩環がピストン鋳物本体の
鋳造時に鋳ぐるまれて設けられた構造をもつことは良く
知られるところである。また、ピストン鋳物本体が、主
としてSi:8〜13重量%を含有したAl−Si系合
金で構成され、さらに上記ピストンリング耐摩環には、
良好な耐摩耗性と相手攻撃性の低いFe−Ni−Cu系
焼結材料(組成:Fe−8〜25%Ni−3.5〜10
%Cu−2.0%以下C)や、Ni−Cu−Cr系オー
ステナイト鋳鉄であるニレジスト鋳鉄(組成:Fe−
1.5〜3.5%Cr−0.8〜1.5%Mn−3%以
下C−13〜22%Ni−8%以下Cu−1.0〜2.
8%Si、以上重量%、以下%は重量%を示す)などが
広く用いられていることも良く知られるところである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、自動車に対する
排気ガス規制は年々厳しさを増す傾向にあり、この対応
手段の1つとして、トラック・バス用ディーゼルエンジ
ンでは、ピストンのトップランド部直下のトップリング
溝の位置を上方へ移動させてトップランド部外周面、ト
ップリング上面、およびシリンダー内周面で形成される
空隙の容量を小さくし、もって未燃焼のまま大気に排出
されてしまう前記空隙部分のガス量を少なくする試みも
なされているが、このようにトップリング溝の位置を上
方へ移動すると、トップリング溝の温度が急激に高くな
り、この結果ピストンリング耐摩環が上記のFe−Ni
−Cu系焼結材料やニレジスト鋳鉄で構成されていて
も、これの摩耗進行の急速な進行は避けられず、この摩
耗現象は近年のエンジンの高出力化および大型化に伴っ
て一段と加速され、この摩耗部分からガス漏れが発生す
るようになるのが現状である。
排気ガス規制は年々厳しさを増す傾向にあり、この対応
手段の1つとして、トラック・バス用ディーゼルエンジ
ンでは、ピストンのトップランド部直下のトップリング
溝の位置を上方へ移動させてトップランド部外周面、ト
ップリング上面、およびシリンダー内周面で形成される
空隙の容量を小さくし、もって未燃焼のまま大気に排出
されてしまう前記空隙部分のガス量を少なくする試みも
なされているが、このようにトップリング溝の位置を上
方へ移動すると、トップリング溝の温度が急激に高くな
り、この結果ピストンリング耐摩環が上記のFe−Ni
−Cu系焼結材料やニレジスト鋳鉄で構成されていて
も、これの摩耗進行の急速な進行は避けられず、この摩
耗現象は近年のエンジンの高出力化および大型化に伴っ
て一段と加速され、この摩耗部分からガス漏れが発生す
るようになるのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、ピストンにおけるトップリング
溝の上方位置移動を可能にするピストンリング耐摩環を
開発すべく研究を行った結果、原料粉末として、基本的
にFeに、合金成分としてS(硫黄)成分、あるいはN
iおよびS成分、さらにCr、Mn、およびS成分、必
要に応じてMo成分をそれぞれ所定量含有させてなるア
トマイズFe合金粉末と、六方晶窒化ほう素(以下、h
−BNで示す)粉末および/またはほう酸粉末を用い、
さらに水素化チタン(以下、TiHx で示す)粉末、N
i粉末、Mo粉末、Mn粉末、Cu粉末、S(硫黄)粉
末、および黒鉛粉末を用い、これら原料粉末を所定の配
合組成に配合し、通常の条件で混合し、圧粉体にプレス
成形した状態で、前記圧粉体を、還元性雰囲気中、相対
的に高い焼結温度となる1100〜1250℃の範囲内
の所定温度に加熱し、所定時間保持後、相対的に遅い冷
却速度、望ましくは40℃/分以下の冷却速度で、少な
くとも600℃まで冷却の条件で焼結して、 Cr:0.5〜5%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 C :0.5〜5%、 Ni:1〜12%、 Ti:0.5〜5%、 Cu:1〜8%、 を含有し、さらに必要に応じて、 Mo:0.1〜2%、 を含有し、残りがFeと不可避不純物からなる組成を有
し、かつ望ましくは6.0〜7.2g/cm3 の密度、
さらに言い換えれば80〜95%の理論密度比をもった
鉄系焼結材料を形成すると、この鉄系焼結材料において
は、前記焼結温度で、素地を形成する上記Fe合金粉末
にC成分(黒鉛粉末)が固溶し、この固溶したC成分が
上記h−BN粉末およびほう酸粉末のB成分と前記Fe
合金粉末中に固溶のS成分の共働作用で、冷却過程で気
孔内に遊離黒鉛として析出し、成長して、すぐれた耐焼
付性と高温潤滑性を示すようになり、したがって前記鉄
系焼結材料からなるピストンリング耐摩環は、前記気孔
内に析出して成長した遊離黒鉛と、Ni、Cr,Mn、
およびTi成分、さらに必要に応じてMo成分が固溶し
て形成された耐熱性のすぐれたオーステナイト相を主体
とする素地とによって、低い相手攻撃性で、かつすぐれ
た高温耐摩耗性を発揮し、この結果ピストンにおけるト
ップリング溝の上方位置移動が可能になるという研究結
果を得たのである。
上述のような観点から、ピストンにおけるトップリング
溝の上方位置移動を可能にするピストンリング耐摩環を
開発すべく研究を行った結果、原料粉末として、基本的
にFeに、合金成分としてS(硫黄)成分、あるいはN
iおよびS成分、さらにCr、Mn、およびS成分、必
要に応じてMo成分をそれぞれ所定量含有させてなるア
トマイズFe合金粉末と、六方晶窒化ほう素(以下、h
−BNで示す)粉末および/またはほう酸粉末を用い、
さらに水素化チタン(以下、TiHx で示す)粉末、N
i粉末、Mo粉末、Mn粉末、Cu粉末、S(硫黄)粉
末、および黒鉛粉末を用い、これら原料粉末を所定の配
合組成に配合し、通常の条件で混合し、圧粉体にプレス
成形した状態で、前記圧粉体を、還元性雰囲気中、相対
的に高い焼結温度となる1100〜1250℃の範囲内
の所定温度に加熱し、所定時間保持後、相対的に遅い冷
却速度、望ましくは40℃/分以下の冷却速度で、少な
くとも600℃まで冷却の条件で焼結して、 Cr:0.5〜5%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 C :0.5〜5%、 Ni:1〜12%、 Ti:0.5〜5%、 Cu:1〜8%、 を含有し、さらに必要に応じて、 Mo:0.1〜2%、 を含有し、残りがFeと不可避不純物からなる組成を有
し、かつ望ましくは6.0〜7.2g/cm3 の密度、
さらに言い換えれば80〜95%の理論密度比をもった
鉄系焼結材料を形成すると、この鉄系焼結材料において
は、前記焼結温度で、素地を形成する上記Fe合金粉末
にC成分(黒鉛粉末)が固溶し、この固溶したC成分が
上記h−BN粉末およびほう酸粉末のB成分と前記Fe
合金粉末中に固溶のS成分の共働作用で、冷却過程で気
孔内に遊離黒鉛として析出し、成長して、すぐれた耐焼
付性と高温潤滑性を示すようになり、したがって前記鉄
系焼結材料からなるピストンリング耐摩環は、前記気孔
内に析出して成長した遊離黒鉛と、Ni、Cr,Mn、
およびTi成分、さらに必要に応じてMo成分が固溶し
て形成された耐熱性のすぐれたオーステナイト相を主体
とする素地とによって、低い相手攻撃性で、かつすぐれ
た高温耐摩耗性を発揮し、この結果ピストンにおけるト
ップリング溝の上方位置移動が可能になるという研究結
果を得たのである。
【0005】この発明は、上記の研究結果に基づいてな
されたものであって、 Cr:0.5〜5%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 C :0.5〜5%、 Ni:1〜12%、 Ti:0.5〜5%、 Cu:1〜8%、 を含有し、さらに必要に応じて、 Mo:0.1〜2%、 を含有し、残りがFeと不可避不純物からなる組成、並
びに素地はオーステナイト相を主体とし、かつ気孔内に
は析出成長した遊離黒鉛が存在する組織を有する遊離黒
鉛析出鉄系焼結材料で構成してなる、相手攻撃性が小さ
く、かつ高温耐摩耗性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結
材料製ピストンリング耐摩環に特徴を有するものであ
る。
されたものであって、 Cr:0.5〜5%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 C :0.5〜5%、 Ni:1〜12%、 Ti:0.5〜5%、 Cu:1〜8%、 を含有し、さらに必要に応じて、 Mo:0.1〜2%、 を含有し、残りがFeと不可避不純物からなる組成、並
びに素地はオーステナイト相を主体とし、かつ気孔内に
は析出成長した遊離黒鉛が存在する組織を有する遊離黒
鉛析出鉄系焼結材料で構成してなる、相手攻撃性が小さ
く、かつ高温耐摩耗性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結
材料製ピストンリング耐摩環に特徴を有するものであ
る。
【0006】つぎに、この発明のピストンリング耐摩環
において、これを構成する遊離黒鉛析出鉄系焼結材料の
成分組成を上記の通りに限定した理由を説明する。 (a)Cr Cr成分は、オーステナイト相を主体とする素地に固溶
して、これの耐熱性を向上させ、もってピストンリング
耐摩環の高温耐摩耗性向上に寄与する作用をもつが、そ
の含有量が0.5%未満では前記作用に所望の向上効果
が得られず、一方その含有量が5%を越えると、B成分
およびS成分による黒鉛の析出および成長作用が抑制さ
れるようになることから、その含有量を0.5〜5%、
望ましくは1〜3%と定めた。
において、これを構成する遊離黒鉛析出鉄系焼結材料の
成分組成を上記の通りに限定した理由を説明する。 (a)Cr Cr成分は、オーステナイト相を主体とする素地に固溶
して、これの耐熱性を向上させ、もってピストンリング
耐摩環の高温耐摩耗性向上に寄与する作用をもつが、そ
の含有量が0.5%未満では前記作用に所望の向上効果
が得られず、一方その含有量が5%を越えると、B成分
およびS成分による黒鉛の析出および成長作用が抑制さ
れるようになることから、その含有量を0.5〜5%、
望ましくは1〜3%と定めた。
【0007】(b)Mn Mn成分は、素地に固溶して強度を向上させる作用をも
つが、その含有量が0.2%未満では所望の強度向上効
果が得られず、一方その含有量が1%を越えると、B成
分およびS成分による黒鉛化が著しく阻害されるように
なることから、その含有量を0.2〜1%、望ましくは
0.4〜0.8%と定めた。
つが、その含有量が0.2%未満では所望の強度向上効
果が得られず、一方その含有量が1%を越えると、B成
分およびS成分による黒鉛化が著しく阻害されるように
なることから、その含有量を0.2〜1%、望ましくは
0.4〜0.8%と定めた。
【0008】(c)SおよびB これらの成分は、共働作用により固溶した黒鉛を冷却過
程で微細な遊離黒鉛として主に気孔内に積極的に析出さ
せ、成長させる作用をもち、このような黒鉛化作用は、
S成分については、原則的として予めFe、Fe−Ni
合金やFe−Ni−Mo合金、さらにFe−Cr−Mn
合金やFe−Cr−Mn−Mo合金にそれぞれ所定量の
S成分を含有させた溶湯をアトマイズして形成したFe
合金粉末、また、B成分については、ほう素源としてh
−BN粉末およびほう酸粉末をそれぞれ原料粉末として
用いることにより一段と促進されるものであるが、その
含有量が、SおよびB成分のいずれかでも0.05%未
満になると、所望の黒鉛化を図ることができず、この結
果耐焼付性および高温潤滑性の向上、すなわち高温耐摩
耗性の向上が不十分となるばかりでなく、硬質のセメン
タイト(Fe3 C)が析出するようになって、相手攻撃
性(ピストンリング攻撃性)が増大するようになり、一
方その含有量が、SおよびB成分のいずれかでも1%を
越えると、焼結性が低下し、所望の強度を確保すること
ができなくなるばかりでなく、素地にフェライト相が出
現するようになり、この結果オーステナイト相が減少す
るようになって所望の高温耐摩耗性を確保することがで
きなくなることから、その含有量を、それぞれS:0.
05〜1%、望ましくは0.1〜0.5%、B:0.0
5〜1%、望ましくは0.1〜0.5%と定めた。
程で微細な遊離黒鉛として主に気孔内に積極的に析出さ
せ、成長させる作用をもち、このような黒鉛化作用は、
S成分については、原則的として予めFe、Fe−Ni
合金やFe−Ni−Mo合金、さらにFe−Cr−Mn
合金やFe−Cr−Mn−Mo合金にそれぞれ所定量の
S成分を含有させた溶湯をアトマイズして形成したFe
合金粉末、また、B成分については、ほう素源としてh
−BN粉末およびほう酸粉末をそれぞれ原料粉末として
用いることにより一段と促進されるものであるが、その
含有量が、SおよびB成分のいずれかでも0.05%未
満になると、所望の黒鉛化を図ることができず、この結
果耐焼付性および高温潤滑性の向上、すなわち高温耐摩
耗性の向上が不十分となるばかりでなく、硬質のセメン
タイト(Fe3 C)が析出するようになって、相手攻撃
性(ピストンリング攻撃性)が増大するようになり、一
方その含有量が、SおよびB成分のいずれかでも1%を
越えると、焼結性が低下し、所望の強度を確保すること
ができなくなるばかりでなく、素地にフェライト相が出
現するようになり、この結果オーステナイト相が減少す
るようになって所望の高温耐摩耗性を確保することがで
きなくなることから、その含有量を、それぞれS:0.
05〜1%、望ましくは0.1〜0.5%、B:0.0
5〜1%、望ましくは0.1〜0.5%と定めた。
【0009】(d)C C成分は、素地に固溶して強度を向上させるほか、上記
の通り遊離黒鉛として気孔中に析出して耐焼付性および
高温潤滑性を向上させ、もって高温耐摩耗性の向上に寄
与すると共に、相手攻撃性を緩和する作用をもつが、そ
の含有量が0.5%未満では前記作用に所望の向上効果
が得られず、一方その含有量が5%を越えると、強度に
急激な低下傾向が現れるようになることから、その含有
量を0.5〜5%、望ましくは1〜3%と定めた。
の通り遊離黒鉛として気孔中に析出して耐焼付性および
高温潤滑性を向上させ、もって高温耐摩耗性の向上に寄
与すると共に、相手攻撃性を緩和する作用をもつが、そ
の含有量が0.5%未満では前記作用に所望の向上効果
が得られず、一方その含有量が5%を越えると、強度に
急激な低下傾向が現れるようになることから、その含有
量を0.5〜5%、望ましくは1〜3%と定めた。
【0010】(e)NiおよびTi これらの成分は、共に素地に固溶してオーステナイト相
の形成を促進し、かつ上記の通りCr成分との共存固溶
によってオーステナイト相の耐熱性を向上させ、もって
高温耐摩耗性の向上に寄与する作用をもつが、その含有
量が、それぞれNi:1%未満、Ti:0.5%未満で
は前記作用に所望の向上効果が得られず、一方その含有
量が、Niにあってはオーステナイト相の形成には12
%で十分であり、またTiにあっては5%を越えると強
度が低下するようになることから、その含有量を、それ
ぞれNi:1〜12%、望ましくは3〜8%、Ti:
0.5〜5%、望ましくは1〜3%と定めた。なお、T
i成分に関しては、原料粉末としてTiHx 粉末を用
い、焼結の活性化を図ると共に、焼結に際して分解水素
による強力な還元作用を発揮させるようにするのが望ま
しい。
の形成を促進し、かつ上記の通りCr成分との共存固溶
によってオーステナイト相の耐熱性を向上させ、もって
高温耐摩耗性の向上に寄与する作用をもつが、その含有
量が、それぞれNi:1%未満、Ti:0.5%未満で
は前記作用に所望の向上効果が得られず、一方その含有
量が、Niにあってはオーステナイト相の形成には12
%で十分であり、またTiにあっては5%を越えると強
度が低下するようになることから、その含有量を、それ
ぞれNi:1〜12%、望ましくは3〜8%、Ti:
0.5〜5%、望ましくは1〜3%と定めた。なお、T
i成分に関しては、原料粉末としてTiHx 粉末を用
い、焼結の活性化を図ると共に、焼結に際して分解水素
による強力な還元作用を発揮させるようにするのが望ま
しい。
【0011】(f)Cu Cu成分は、所定の強度を確保するのに不可欠な液相焼
結のために必要な成分であるが、その含有量が1%未満
では十分な焼結性が得られず、したがって所望の強度を
確保することができず、一方所望の良好な焼結性は8%
までの含有で十分であることから、その含有量を1〜8
%、望ましくは2〜4%と定めた。
結のために必要な成分であるが、その含有量が1%未満
では十分な焼結性が得られず、したがって所望の強度を
確保することができず、一方所望の良好な焼結性は8%
までの含有で十分であることから、その含有量を1〜8
%、望ましくは2〜4%と定めた。
【0012】(g)Mo Mo成分は、素地に固溶して強度を向上させる作用をも
つので、必要に応じて含有されるが、その含有量が0.
1%未満では所望の強度向上効果が得られず、一方その
含有量が2%を越えると、原料粉末(混合粉末)のプレ
ス成形性(圧縮性)が低下し、この結果焼結材料の密度
が6.0g/cm3 未満となってしまい、望ましい密度
である6.0〜7.2g/cm3 の密度が得られず、所
望の強度を確保することができなくなることから、その
含有量を0.1〜2%、望ましくは0.5〜1.5%と
定めた。
つので、必要に応じて含有されるが、その含有量が0.
1%未満では所望の強度向上効果が得られず、一方その
含有量が2%を越えると、原料粉末(混合粉末)のプレ
ス成形性(圧縮性)が低下し、この結果焼結材料の密度
が6.0g/cm3 未満となってしまい、望ましい密度
である6.0〜7.2g/cm3 の密度が得られず、所
望の強度を確保することができなくなることから、その
含有量を0.1〜2%、望ましくは0.5〜1.5%と
定めた。
【0013】
【発明の実施の形態】この発明のピストンリング耐摩環
を実施例により具体的に説明する。原料粉末として、い
ずれも10〜150μmの範囲内の所定の平均粒径を有
するアトマイズFe−S合金粉末(S:0.32%含
有)、アトマイズFe−Ni−Mo−S合金粉末(N
i:4.2%、Mo:1.5%、S:0.13%含
有)、アトマイズFe−Cr−Mn−S合金粉末(C
r:2.1%、Mn:0.75%、S:0.22%含
有)、TiHx 粉末、Ni粉末、Mo粉末、Mn粉末、
Cu粉末、S(硫黄)粉末、黒鉛粉末、h−BN粉末、
およびほう酸粉末を用意し、これら原料粉末を所定の配
合組成に配合し、潤滑材としてステアリン酸亜鉛を0.
7%添加してV型ミキサーで30分間混合し、6ton
/cm2 の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を
アンモニア分解ガス雰囲気中、温度:1140℃に1時
間保持した後、35℃/分の冷却速度で550℃まで徐
冷後放冷の条件で焼結することにより表1、2に示され
る成分組成を有し、かつ外径:120mm×内径:10
2mm×厚さ:7mmの寸法をもった本発明ピストンリ
ング耐摩環(以下、本発明耐摩環と云う)1〜29をそ
れぞれ製造した。上記本発明耐摩環1〜29は、いずれ
も6.2〜7.1g/cm3 の範囲内の密度を有し、素
地がオーステナイト相、あるいは主体がオーステナイト
相で僅かなパーライト相が存在する素地からなり、かつ
気孔内に遊離黒鉛が析出した光学顕微鏡組織観察結果を
示した。また、比較の目的で、通常の高周波溶解炉に
て、同じく表2に示される成分組成をもったニレジスト
鋳鉄の溶湯を調製し、これをシェルモールド鋳型に鋳造
して、同じ寸法をもった従来ピストンリング耐摩環(以
下、従来耐摩環と云う)を製造した。
を実施例により具体的に説明する。原料粉末として、い
ずれも10〜150μmの範囲内の所定の平均粒径を有
するアトマイズFe−S合金粉末(S:0.32%含
有)、アトマイズFe−Ni−Mo−S合金粉末(N
i:4.2%、Mo:1.5%、S:0.13%含
有)、アトマイズFe−Cr−Mn−S合金粉末(C
r:2.1%、Mn:0.75%、S:0.22%含
有)、TiHx 粉末、Ni粉末、Mo粉末、Mn粉末、
Cu粉末、S(硫黄)粉末、黒鉛粉末、h−BN粉末、
およびほう酸粉末を用意し、これら原料粉末を所定の配
合組成に配合し、潤滑材としてステアリン酸亜鉛を0.
7%添加してV型ミキサーで30分間混合し、6ton
/cm2 の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を
アンモニア分解ガス雰囲気中、温度:1140℃に1時
間保持した後、35℃/分の冷却速度で550℃まで徐
冷後放冷の条件で焼結することにより表1、2に示され
る成分組成を有し、かつ外径:120mm×内径:10
2mm×厚さ:7mmの寸法をもった本発明ピストンリ
ング耐摩環(以下、本発明耐摩環と云う)1〜29をそ
れぞれ製造した。上記本発明耐摩環1〜29は、いずれ
も6.2〜7.1g/cm3 の範囲内の密度を有し、素
地がオーステナイト相、あるいは主体がオーステナイト
相で僅かなパーライト相が存在する素地からなり、かつ
気孔内に遊離黒鉛が析出した光学顕微鏡組織観察結果を
示した。また、比較の目的で、通常の高周波溶解炉に
て、同じく表2に示される成分組成をもったニレジスト
鋳鉄の溶湯を調製し、これをシェルモールド鋳型に鋳造
して、同じ寸法をもった従来ピストンリング耐摩環(以
下、従来耐摩環と云う)を製造した。
【0014】ついで、上記の各種耐摩環を、通常の条件
で前処理、すなわち脱脂、乾燥、および温度:700℃
の後述の鋳造Al−Si系合金と同じ組成をもったAl
−Si系合金溶湯中に5分間浸漬の前処理を施した状態
で、それぞれピストン精密鋳造金型内に設置し、これに
Al−12.1%Si−1.05%Cu−0.96%M
g−1.12%Niの組成をもったAl−Si系合金溶
湯を鋳造してピストン本体を形成すると共に、前記耐摩
環を鋳包み、ついで前記耐摩環に切削加工にて外周面に
沿って溝深さ:7mm×溝幅:3mmの寸法のトップリ
ング溝を形成することにより、トップランド部上面とト
ップリング溝上面間の距離を5mm(この種のピストン
で従来採用されている前記距離は通常15mm)とした
トップリング溝上方位置移動のAl−Si系合金製ピス
トンをそれぞれ製造した。
で前処理、すなわち脱脂、乾燥、および温度:700℃
の後述の鋳造Al−Si系合金と同じ組成をもったAl
−Si系合金溶湯中に5分間浸漬の前処理を施した状態
で、それぞれピストン精密鋳造金型内に設置し、これに
Al−12.1%Si−1.05%Cu−0.96%M
g−1.12%Niの組成をもったAl−Si系合金溶
湯を鋳造してピストン本体を形成すると共に、前記耐摩
環を鋳包み、ついで前記耐摩環に切削加工にて外周面に
沿って溝深さ:7mm×溝幅:3mmの寸法のトップリ
ング溝を形成することにより、トップランド部上面とト
ップリング溝上面間の距離を5mm(この種のピストン
で従来採用されている前記距離は通常15mm)とした
トップリング溝上方位置移動のAl−Si系合金製ピス
トンをそれぞれ製造した。
【0015】さらに、これらのピストンを、排気量:8
200ccの直列6気筒直噴ディーゼルエンジンに組み
込み、回転数:3200rpm、エンジン冷却温度:8
0℃、運転モード:500時間連続運転、負荷:フル出
力の条件で加速運転試験を行ない、試験後の耐摩環のト
ップリング溝における外周面の最大溝幅を測定すること
により高温耐摩耗性を評価し、また上記トップリング溝
に嵌合されたピストンリング(Fe−2.7%Si−
3.5%Cの組成を有するCrメッキした球状黒鉛鋳鉄
製)の上下面における最大摩耗深さを測定することによ
り相手攻撃性を評価した。これらの測定結果を表3に示
した。
200ccの直列6気筒直噴ディーゼルエンジンに組み
込み、回転数:3200rpm、エンジン冷却温度:8
0℃、運転モード:500時間連続運転、負荷:フル出
力の条件で加速運転試験を行ない、試験後の耐摩環のト
ップリング溝における外周面の最大溝幅を測定すること
により高温耐摩耗性を評価し、また上記トップリング溝
に嵌合されたピストンリング(Fe−2.7%Si−
3.5%Cの組成を有するCrメッキした球状黒鉛鋳鉄
製)の上下面における最大摩耗深さを測定することによ
り相手攻撃性を評価した。これらの測定結果を表3に示
した。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
【発明の効果】表3に示される結果から、本発明耐摩環
1〜29は、いずれもトップリング溝の上方位置移動に
もかかわらず、すぐれた高温耐摩耗性を示し、かつ相手
攻撃性もきわめて小さいのに対して、ニレジスト鋳鉄か
らなる従来耐摩環は十分な高温耐摩耗性を具備するもの
でないために、トップリング溝の上方位置移動によって
摩耗進行が著しく加速されるようになることが明らかで
ある。上述のように、この発明のピストンリング耐摩環
は、トップリング溝の位置を上方へ移動した状態でAl
−Si系合金製ピストンに適用しても小さい相手攻撃性
で、すぐれた高温耐摩耗性を発揮することから、エンジ
ンの排気ガス規制に十分満足に対応することができるも
のである。
1〜29は、いずれもトップリング溝の上方位置移動に
もかかわらず、すぐれた高温耐摩耗性を示し、かつ相手
攻撃性もきわめて小さいのに対して、ニレジスト鋳鉄か
らなる従来耐摩環は十分な高温耐摩耗性を具備するもの
でないために、トップリング溝の上方位置移動によって
摩耗進行が著しく加速されるようになることが明らかで
ある。上述のように、この発明のピストンリング耐摩環
は、トップリング溝の位置を上方へ移動した状態でAl
−Si系合金製ピストンに適用しても小さい相手攻撃性
で、すぐれた高温耐摩耗性を発揮することから、エンジ
ンの排気ガス規制に十分満足に対応することができるも
のである。
【図1】ディーゼルエンジンのピストンを例示する概略
縦断面図(a)および同要部縦断面図(b)である。
縦断面図(a)および同要部縦断面図(b)である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年3月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正内容】
【0015】さらに、これらのピストンを、排気量:8
200ccの直列6気筒直噴ディーゼルエンジンに組み
込み、回転数:3200rpm、エンジンの冷却温度:
80℃、運転モード:500時間連続運転、負荷:フル
出力の条件で加速運転試験を行ない、試験後の耐摩環の
トップリング溝の溝幅を外周面にそって測定し、この測
定結果より算出した最大摩耗量(試験後の最大溝幅−試
験前の溝幅)をもって高温耐摩耗性を評価し、また上記
トップリング溝に嵌合されたピストンリング(Fe−
2.7%Si−3.5%Cの組成をもったCrメッキの
球状黒鉛鋳鉄製)の上下面における最大摩耗深さを測定
することにより相手攻撃性を評価した。これらの測定結
果を表3に示した。
200ccの直列6気筒直噴ディーゼルエンジンに組み
込み、回転数:3200rpm、エンジンの冷却温度:
80℃、運転モード:500時間連続運転、負荷:フル
出力の条件で加速運転試験を行ない、試験後の耐摩環の
トップリング溝の溝幅を外周面にそって測定し、この測
定結果より算出した最大摩耗量(試験後の最大溝幅−試
験前の溝幅)をもって高温耐摩耗性を評価し、また上記
トップリング溝に嵌合されたピストンリング(Fe−
2.7%Si−3.5%Cの組成をもったCrメッキの
球状黒鉛鋳鉄製)の上下面における最大摩耗深さを測定
することにより相手攻撃性を評価した。これらの測定結
果を表3に示した。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正内容】
【0018】
【表3】
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、 Cr:0.5〜5%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 C :0.5〜5%、 Ni:1〜12%、 Ti:0.5〜5%、 Cu:1〜8%、 を含有し、残りがFeと不可避不純物からなる組成、並
びに素地はオーステナイト相を主体とし、かつ気孔内に
は析出成長した遊離黒鉛が存在する組織を有する遊離黒
鉛析出鉄系焼結材料で構成したことを特徴とする高温耐
摩耗性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストン
リング耐摩環。 - 【請求項2】 重量%で、 Cr:0.5〜5%、 Mn:0.2〜1%、 S :0.05〜1%、 B :0.05〜1%、 C :0.5〜5%、 Ni:1〜12%、 Ti:0.5〜5%、 Cu:1〜8%、 を含有し、さらに、 Mo:0.1〜2%、 を含有し、残りがFeと不可避不純物からなる組成、並
びに素地はオーステナイト相を主体とし、かつ気孔内に
は析出成長した遊離黒鉛が存在する組織を有する遊離黒
鉛析出鉄系焼結材料で構成したことを特徴とする高温耐
摩耗性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストン
リング耐摩環。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP08484098A JP3346270B2 (ja) | 1998-03-31 | 1998-03-31 | 高温耐摩耗性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP08484098A JP3346270B2 (ja) | 1998-03-31 | 1998-03-31 | 高温耐摩耗性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11279720A true JPH11279720A (ja) | 1999-10-12 |
JP3346270B2 JP3346270B2 (ja) | 2002-11-18 |
Family
ID=13842000
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP08484098A Expired - Fee Related JP3346270B2 (ja) | 1998-03-31 | 1998-03-31 | 高温耐摩耗性のすぐれた遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製ピストンリング耐摩環 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3346270B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2270247A1 (en) * | 2008-03-27 | 2011-01-05 | Hitachi Metals, Ltd. | Piston ring material for internal combustion engine |
-
1998
- 1998-03-31 JP JP08484098A patent/JP3346270B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2270247A1 (en) * | 2008-03-27 | 2011-01-05 | Hitachi Metals, Ltd. | Piston ring material for internal combustion engine |
EP2270247A4 (en) * | 2008-03-27 | 2011-03-02 | Hitachi Metals Ltd | PISTON RING MATERIAL FOR A COMBUSTION ENGINE |
US8480821B2 (en) | 2008-03-27 | 2013-07-09 | Hitachi Metals Ltd. | Piston ring material for internal combustion engine |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP3346270B2 (ja) | 2002-11-18 |
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